説明

ヒンジピラーの補強構造

【課題】車両前部との衝突によって車幅方向に広がりを備えていない障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時であっても、この障害物が車室内に侵入することをより確実に抑制できるヒンジピラーの補強構造を提供することを目的とする。
【解決手段】フロントサイドフレーム3とダッシュパネル2との連結位置よりも車幅方向外側には、ダッシュパネル2の側端部に沿って上下に延びるように立設された左右一対のヒンジピラー8を備えており、車幅方向に延びて、インストルメントパネル27を支持するインパネメンバ28と、該インパネメンバ28をヒンジピラー8へ取り付けるインパネブラケット29とを備え、該インパネブラケット29と、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82とを車幅方向で連結する第3、第4ボルト17、18を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フロントサイドフレームとダッシュパネルとの連結位置よりも車幅方向外側で、該ダッシュパネルの側端部に沿って上下に延びるように立設されたヒンジピラーの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車室内の乗員を確実に保護するという観点から、障害物に対して車両前部が衝突した時、障害物の車室内への侵入をいかにして抑制するかが課題となっており、この課題を解決すべく、今日までに様々な構造が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、フロントサイドフレームの略真下に配設されたサブフレームの前端部とフロントサイドフレームとの間に衝突荷重伝達部材を介装したものが開示されている。
【0004】
下記特許文献1は、ポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に車両前部が衝突した時を想定したものであり、上記障害物の衝突時にその衝突荷重がサブフレームに加わると、上記衝突荷重伝達部材を介して上記衝突荷重をフロントサイドフレームに分散させることが可能になっている。この場合、最終的には、フロントサイドフレームが有する衝突エネルギー吸収機能によって上記衝突荷重を吸収することができる。
【0005】
また、この他にも、下記特許文献2では、車室の前壁部を構成するダッシュパネルの側端部に沿って上下に延びるように立設されたフロントピラー(ヒンジピラー)において、そのフロントピラーインナーパネル(ヒンジピラーインナ)の内面側にフロントドアチェッカーブラケットを内接するように配設すると共に、該フロントドアチェッカーブラケットとフロントピラーインナーパネルとの間に、ドラチェッカー補強ブラケットを配設したものが開示されている。
【0006】
下記特許文献2では、ドラチェッカー補強ブラケットを配設することによってフロントピラーの剛性向上を図っている。これにより、車両走行中に正面衝突またはオフセット衝突が発生した時、フロントピラーインナーパネルとフロントピラーアウターパネル(ヒンジピラーアウタ)との接合部分が剥離するいわゆる口開きを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−83258号公報
【特許文献2】特開2002−337733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、車両前部がポールのように車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突した時、特にフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した上記障害物が車室内に侵入することをより確実に抑制したいというニーズが高まっている。
【0009】
そこで、本発明者は、フロントサイドフレームの車幅方向外側から上記障害物が侵入する時に発生する現象について解析を行った。そして、本発明者は、鋭意研究の結果、フロントサイドフレームの車幅方向外側から上記障害物が侵入した時、該障害物の衝突荷重によってヒンジピラーで口開きが発生し、この口開きによって上記障害物が車室内に侵入し易くなることを見出した。
【0010】
ここで、上記特許文献1について見てみると、該特許文献1では、あくまでも上記障害物が車両前部の車幅方向中央部に衝突、侵入した時を想定しているに過ぎない。従って、フロントサイドフレームの略真下に配設されたサブフレームで上記障害物の衝突荷重を受け止める上記特許文献1の構成では、フロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した上記障害物が車室内へ侵入することを確実に抑制できない。
【0011】
また、上記特許文献2について見てみると、該特許文献2では、ドラチェッカー補強ブラケットを配設することにより、フロントピラーにおける口開きを防止するものではあるが、フロントサイドフレームの車幅方向外側から上記障害物が侵入した時の口開きを防止するものとしては必ずしも十分とは言えなかった。従って、このような構成では、フロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した上記障害物が車室内へ侵入することを確実に抑制できない。
【0012】
この発明は、車両前部との衝突によって車幅方向に広がりを備えていない障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した時であっても、この障害物が車室内に侵入することをより確実に抑制できるヒンジピラーの補強構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明のヒンジピラーの補強構造は、車室の前壁部を構成するダッシュパネルから車両前方に延出する左右一対のフロントサイドフレームを備えると共に、該フロントサイドフレームと上記ダッシュパネルとの連結位置よりも車幅方向外側には、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとから構成され、上記ダッシュパネルの側端部に沿って上下に延びるように立設された左右一対のヒンジピラーを備えており、車幅方向に延びて、インストルメントパネルを支持するインパネメンバと、該インパネメンバを上記ヒンジピラーへ取り付けるインパネブラケットとを備え、該インパネブラケットと、上記ヒンジピラーインナと、上記ヒンジピラーアウタとを車幅方向で連結する連結部材を備えたものである。
【0014】
この構成によれば、車両前部が車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突し、この障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した結果、ヒンジピラーに対し車両前方から大きな衝突荷重が加わったとしても、そこで口開きが発生することを確実に防止できる。従って、上記障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記車室の開口部を開閉するドアを上記ヒンジピラーへ取り付けるためのヒンジブラケットを備え、該ヒンジブラケットと、上記ヒンジピラーインナと、上記ヒンジピラーアウタとを連結する第2連結部材を備えたものである。
【0016】
この構成によれば、上記障害物の衝突荷重を、ヒンジブラケットを介してドアに伝達させることができる。この場合、上記衝突荷重をヒンジブラケットやドアを介して車両後方に分散させることができるため、上記障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記第2連結部材が、車幅方向に延びるボルトにより構成される一方、上記インパネブラケットは、上記第2連結部材との当接により位置規制がなされる位置規制部を有するものである。
【0018】
この構成によれば、ヒンジブラケットを連結するための第2連結部材を、インパネブラケットの位置決め部材として兼用でき、その結果、第2連結部材を有効利用することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記ダッシュパネルの側端部が、上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとの接合部分よりも車幅方向外側へ延出して設けられるものである。
【0020】
この構成によれば、上記障害物の衝突荷重を先ずはダッシュパネルの側端部で受け止めることができる。このため、上記接合部分に加わる上記衝突荷重を軽減でき、ヒンジピラーの口開きをより確実に防止できる。
【0021】
この発明の一実施態様においては、上記ヒンジピラーインナまたは上記ヒンジピラーアウタの少なくともいずれか一方の前端部が、上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとの接合部分よりも前方で該接合部分を覆うように車幅方向に延出して設けられるものである。
【0022】
この構成によれば、上記障害物の衝突荷重を先ずは上記前端部で受け止めることができ、ヒンジピラーの口開きをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、車両前部が車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突し、この障害物がフロントサイドフレームの車幅方向外側から侵入した結果、ヒンジピラーに対し車両前方から大きな衝突荷重が加わったとしても、そこで口開きが発生することを確実に防止できる。従って、上記障害物が車室内へ侵入することをより確実に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るヒンジピラーの補強構造を備えた車両の側面図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図2の要部拡大図。
【図4】ヒンジピラー及びその周辺の要部を示す分解斜視図。
【図5】インパネブラケットを示す正面図。
【図6】本発明に係るヒンジピラーの補強構造の他の実施形態を示す要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明に係るヒンジピラーの補強構造を備えた車両の側面図であり、図2は、図1のA−A線矢視断面図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示し、矢印(IN)は車体内方、矢印(OUT)は車体外方を示す。
【0026】
図1、図2に示すように、本実施形態に係る車両は、その前部において、エンジンルームEと車室1と仕切り、該車室1の前壁部を構成するダッシュパネル2を備えている。
【0027】
そして、車両前部では、ダッシュパネル2の車幅方向側端下部から車両前方に延出する左右一対のフロントサイドフレーム3(図面では、一方のみ示す)が配設されており、この左右一対のフロントサイドフレーム3の前端部には、車幅方向に延びるバンパレインフォースメント4が筒状のクラッシュカン5を介して連結されている。
【0028】
また、上述のダッシュパネル2から前方に離間した位置には、図示しない前輪に対応して車幅方向内側に膨出したサスペンションタワー6(以下単にサスタワー6と略記する)が配設され、フロントサイドフレーム3の中間部では、その車外側端部がサスタワー6に接合されている。そして、このサスタワー6の上部車幅方向外側には、フロントサイドフレーム3の上方でこれと略平行に車両前後方向に延びるエプロンレインフォースメント7が設けられている。なお、図2では、図示の便宜上、車両前部の左側のみを示すと共に、サスタワー6等、一部の部材の図示を省略している。
【0029】
また、ダッシュパネル2とフロントサイドフレーム3との接合位置よりも車幅方向外側には、ダッシュパネル2の側端部に沿って上下に延びる左右一対のヒンジピラー8(図面では、一方のみ示す)が立設されている。そして、このヒンジピラー8の上部には、前部が低く、後部が高くなるようにフロントピラー9が配設されると共に、上述したエプロンレインフォースメント7が、ヒンジピラー8の上部から車両前方に延びている。一方、ヒンジピラー8の下部には、フロントサイドフレーム3よりも車幅方向外側で車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル10(図面では、一方のみ示す)が配設されている。
【0030】
ここで、車室1は、その床面が、ダッシュパネル2の下端に前端を連結したフロアパネル11(図2参照)によって形成されており、上述したサイドシル10は、フロアパネル11の左右両側端部に位置している。そして、車室1の側部には、ヒンジピラー8や、フロントピラー9、サイドシル10等により側部開口部12を形成しており、この側部開口部12には、これを開閉するためのフロントドア13(図2参照)が備えられている。フロントドア13は、その前端部が、上下一対のドアヒンジ14、14を介してヒンジピラー8に取り付けられている。
【0031】
図3は、図2の要部拡大図であり、図4は、ヒンジピラー及びその周辺の要部を示す分解斜視図である。ヒンジピラー8は、図2〜図4に示すように、主にヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82とにより構成されており、これらの前端部に位置するフランジ部81a、82a(図3、図4参照)同士、及び後端部に位置するフランジ部81b、82b(図3、図4参照)同士を接合することにより、車両の上下方向に延びるピラー閉断面83を形成している。
【0032】
そして、ヒンジピラー8は、そのヒンジピラーインナ81において、これとダッシュパネル2の側端部とが接合されている。ここで、ダッシュパネル2の側端部には、図2、図3に示すように、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82との前側接合部分(フランジ部81a、82a同士の接合部分)を覆うべくこれよりも車幅方向外側に延出した延出部2aが形成されている。
【0033】
また、図1〜図4に示すように、ヒンジピラー8では、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82とが、閉断面83内を貫通するように配設された第1〜第4ボルト15〜18と、第1〜第4ナット19〜22とにより車幅方向で連結されている。
【0034】
そして、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82との間には、第1〜第4ボルト15〜18に対応して車幅方向に延びる筒状のスペーサ23〜26が設けられ、このスペーサ23〜26の中空部には、第1〜第4ボルト15〜18が挿通されるようになっている。スペーサ23〜26は、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82とを連結した時に、これらヒンジピラーインナ81及びヒンジピラーアウタ82に撓みが生じることを防止するためのものである。
【0035】
前側に位置する第1、第2ボルト15、16(第2連結部材)は、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82と、ドアヒンジ14の車体側ヒンジブラケット141(図3、図4参照)とを車幅方向に貫通しており、この第1、第2ボルト15、16と、第1、第2ナット19、20とにより、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82と、車体側ヒンジブラケット141とが車幅方向で連結されている。
【0036】
ここで、ドアヒンジ14は、図3、図4に示すように、主に上述した車体側ヒンジブラケット141と、ドア側ヒンジブラケット142と、ヒンジピン143とからなり、ドア側ヒンジブラケット142がヒンジピン143を介して車体側ヒンジブラケット141に回動可能に連結されることで、ドアヒンジ14が構成されている。
【0037】
一方、フロントドア13は、図2〜図4に示すように、車幅方向内側に位置するドアインナパネル131と、車幅方向外側に位置するドアアウタパネル132とを有し、これら両パネルを接合して一体化している。そして、フロントドア13のドアインナパネル131では、その前辺部の上下に、上述したドア側ヒンジブラケット142、142を取り付けている。
【0038】
本実施形態では、ドアインナパネル131の前辺部の上下にドア側ヒンジブラケット142、142を取り付けると共に、車体側ヒンジブラケット141の連結面141aをヒンジピラーアウタ82の車幅方向外側面に連結している。これにより、フロントドア13は、ドアヒンジ14(車体側ヒンジブラケット141、ドア側ヒンジブラケット142、ヒンジピン143)を介してヒンジピラー8に対して回動可能に取り付けられており、このフロントドア13のドアヒンジ14(ヒンジピン143)を中心とした回動により、側部開口部12を開閉可能としている。
【0039】
ところで、車室1には、図1、図2に示すように、その前部においてインストルメントパネル27が配設されており、車幅方向に延びるインパネメンバ28により支持されている。インストルメントパネル27には、例えば、図示しないステアリングホイールや各種メータ類の他、空調装置やオーディオ装置、乗員に対し目的地までの走行路を案内するナビゲーション装置等が備えられる。
【0040】
インパネメンバ28は、車室1の前部において車幅方向に延び、左右一対のヒンジピラー8、8同士を連結している。そして、本実施形態では、インパネメンバ28の側端部とヒンジピラー8(ヒンジピラーインナ81)とを、図1〜図5に示すような板状のインパネブラケット29を介して取り付けている。なお、図5は、インパネブラケットを示す正面図である。
【0041】
インパネブラケット29は、その中央部内側面にインパネメンバ28の側端部が取り付けられると共に、図3〜図5に示すように、その下端前部には、下縁部から上方に向かって凹む位置規制部としての係合部29aが形成され、後部及び下部には、挿通孔29b、29cが穿設されている。
【0042】
このうち、挿通孔29b、29cには、それぞれ後側に位置する第3、第4ボルト17、18(連結部材)が挿通されるようになっており、第3、第4ボルト17、18は、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82と、インパネブラケット29とを車幅方向に貫通している。そして、この第3、第4ボルト17、18と、第3、第4ナット21、22とにより、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82と、インパネブラケット29とが車幅方向で連結されている。
【0043】
また、係合部29aは、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82と、インパネメンバ29とが連結された状態において、第2ボルト16と対応する位置に形成されている。そして、係合部19aの上部は円弧状に形成され、その径は、第2ボルト16の径と略同じに設定されている。その一方で、第2ボルト16は、第1ボルト15よりも長尺とされ、その車幅方向内側端部がインパネブラケット29の係合部29aまで延出している。
【0044】
本実施形態では、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82と、インパネメンバ29とが連結されると、第2ボルト16の車幅方向内側端部が係合部29aの凹部に略隙間無く嵌合するようになっており、これによって、第2ボルト16とインパネブラケット29とが係合部29aで当接、係合している。このように、第2ボルト16とインパネブラケット29とが係合していることにより、インパネブラケット29の車両前後方向及び上下方向の位置は、第2ボルト16によって規制されている。
【0045】
ここで、本実施形態に係る車両において、その前部が、車幅方向に広がりを備えていないポールP(図2参照)に衝突し、このポールPがフロントサイドフレーム10の車幅方向外側から侵入した時を考えてみる。この時、ポールPは、図2に示すように、車幅方向において、フロントサイドフレーム10とサイドシル9との間の比較的剛性の低い領域に位置することになる。
【0046】
そして、ポールPが車両後方に向かってさらに侵入すると、いずれは、図2にて二点鎖線で示すようにヒンジピラー8の前端部の直ぐ前方に到達し、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82との前側接合部分に対して大きな衝突荷重が加わることになる。このようにして、ポールPの衝突荷重が上述した前側接合部分に加わると、ヒンジピラー8では、上記前側接合部分が剥離する口開きが発生し、その結果、ポールPが車室1へ接近する虞がある。
【0047】
そこで、本実施形態では、インパネブラケット29と、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ82とを、連結部材としての第3ボルト17、第4ボルト18により車幅方向で連結している。これにより、車両前部が車幅方向に広がりを備えていないポールPに衝突し、このポールPがフロントサイドフレーム3の車幅方向外側から侵入した結果、ヒンジピラー8に対し車両前方から大きな衝突荷重が加わったとしても、そこで口開きが発生することを確実に防止できる。従って、ポールPがフロントサイドフレーム3とサイドシル10との間の領域を経て車室1内に侵入することをより確実に抑制できる。
【0048】
また、車室1の側部開口部12を開閉するフロントドア13をヒンジピラー8へ取り付けるための車体側ヒンジブラケット141と、ヒンジピラーインナ81と、ヒンジピラーアウタ82とを、第2連結部材としての第1、第2ボルト15、16により連結することで、ポールPの衝突荷重を、車体側ヒンジブラケット141を含むドアヒンジ14を介してフロントドア13に伝達させることができる。この場合、上記衝突荷重を車体側ヒンジブラケット141(ドアヒンジ14)やフロントドア13を介して車両後方に分散させることができるため、ポールPが車室1内に侵入することをより確実に抑制できる。
【0049】
また、第2連結部材としての第2ボルト16が、係合部29aとの当接、係合によってインパネブラケット29の位置を規制することで、車体側ヒンジブラケット141を連結するための第2ボルト16を、インパネブラケット29の位置決め部材として兼用でき、その結果、第2ボルト16を有効利用することができる。
【0050】
また、ダッシュパネル2において上記前側接合部分よりも車幅方向外側へ延出する延出部2aを形成したことにより、ポールPの衝突荷重を先ずは延出部2aで受け止めることができる。このため、上記前側接合部分に加わる上記衝突荷重を軽減でき、ヒンジピラー8の口開きをより確実に防止できる。
【0051】
図6は、本発明に係るヒンジピラーの補強構造の他の実施形態を示す。図6(a)に示す実施形態では、ダッシュパネル202の側端部に延出部を形成しない代わりに、ヒンジピラー208を構成するヒンジピラーアウタ282において、その前端部に延出部282cが形成されている。ヒンジピラーアウタ282は、先の実施形態のヒンジピラーアウタ82と同様、その前後端部にフランジ部282a、282bを有しており、延出部282cは、ヒンジピラーインナ81とヒンジピラーアウタ282との前側接合部分(フランジ部81a、282aの接合部分)よりも前方で該前側接合部分を覆うように車幅方向内側に延出している。
【0052】
また、図6(b)に示す実施形態では、ダッシュパネル202の側端部に延出部を形成しない代わりに、ヒンジピラー308を構成するヒンジピラーインナ381において、その前端部に延出部381cが形成されている。ヒンジピラーインナ381は、先の実施形態のヒンジピラーインナ81と同様、その前後端部にフランジ部381a、381bを有しており、延出部381cは、ヒンジピラーインナ381とヒンジピラーアウタ82との前側接合部分(フランジ部381a、82aの接合部分)よりも前方で該前側接合部分を覆うように車幅方向外側に延出している。
【0053】
図6に示す本実施形態では、ヒンジピラーアウタ282、ヒンジピラーインナ381が、上記接合部分を覆う延出部282c、381cを有することで、ポールPの衝突荷重を先ずは延出部282c、381cで受け止めることができ、先の実施形態と同様、ヒンジピラー208、308の口開きをより確実に防止できる。
【0054】
なお、その他の作用効果は、上述した先の実施形態と同様である。また、図6において、図1〜図5に示す先の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0055】
ところで、図6に示す実施形態では、ヒンジピラーインナ、ヒンジピラーアウタの前端部のいずれか一方のみを車幅方向に延出させることとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、いずれか一方により上記前側接合部分を覆うことができれば、ヒンジピラーインナ、ヒンジピラーアウタの前端部の双方を車幅方向の同じ方向に延出させてもよい。
【0056】
また、本発明は、連結部材及び第2連結部材をボルトで構成することに必ずしも限定されない。例えば、この連結部材及び第2連結部材を棒状部材で構成してもよい。この場合、ヒンジピラーと、車体側ヒンジブラケットと、インパネブラケットとを、第1〜第4ボルト15〜18と同じように配置した上記棒状部材に溶接すれば、先の実施形態と同様、互いを車幅方向で連結することができる。
【0057】
また、第2ボルト16との当接によってインパネブラケット29の位置を規制できるのであれば、上述した係合部29aに限らず、例えば、第2ボルト16と略同じ径を有する挿通孔や、車幅方向内側に凹む凹部等によって位置規制部を構成してもよい。
【0058】
また、上述した各実施形態では、車両前部が車幅方向に広がりを備えていない障害物に衝突した例として、車両前部がポールPに衝突した時について説明したが、車幅方向に広がりを備えていない障害物であれば、必ずしもポールPに限定されるものではない。
例えば、車幅方向に広がりを備えていない障害物を、自動車道の中央分離帯や、ガードレールの端部、ブロック塀等としてもよい。
【0059】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、連結部材は、第3ボルト17、第4ボルト18に対応し、
以下同様に、
ヒンジブラケットは、車体側ヒンジブラケット141に対応し、
第2連結部材は、第1ボルト15、第2ボルト16に対応し、
位置規制部は、係合部29aに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…車室
2、202…ダッシュパネル
3…フロントサイドフレーム
8、208、308…ヒンジピラー
15…第1ボルト
16…第2ボルト
17…第3ボルト
18…第4ボルト
27…インストルメントパネル
28…インパネメンバ
29…インパネブラケット
29a…係合部
81、381…ヒンジピラーインナ
82、282…ヒンジピラーアウタ
141…車体側ヒンジブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前壁部を構成するダッシュパネルから車両前方に延出する左右一対のフロントサイドフレームを備えると共に、
該フロントサイドフレームと上記ダッシュパネルとの連結位置よりも車幅方向外側には、ヒンジピラーインナとヒンジピラーアウタとから構成され、上記ダッシュパネルの側端部に沿って上下に延びるように立設された左右一対のヒンジピラーを備えており、
車幅方向に延びて、インストルメントパネルを支持するインパネメンバと、
該インパネメンバを上記ヒンジピラーへ取り付けるインパネブラケットとを備え、
該インパネブラケットと、上記ヒンジピラーインナと、上記ヒンジピラーアウタとを車幅方向で連結する連結部材を備えた
ヒンジピラーの補強構造。
【請求項2】
上記車室の開口部を開閉するドアを上記ヒンジピラーへ取り付けるためのヒンジブラケットを備え、
該ヒンジブラケットと、上記ヒンジピラーインナと、上記ヒンジピラーアウタとを連結する第2連結部材を備えた
請求項1記載のヒンジピラーの補強構造。
【請求項3】
上記第2連結部材が、車幅方向に延びるボルトにより構成される一方、
上記インパネブラケットは、上記第2連結部材との当接により位置規制がなされる位置規制部を有する
請求項2記載のヒンジピラーの補強構造。
【請求項4】
上記ダッシュパネルの側端部は、上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとの接合部分よりも車幅方向外側へ延出して設けられる
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒンジピラーの補強構造。
【請求項5】
上記ヒンジピラーインナまたは上記ヒンジピラーアウタの少なくともいずれか一方の前端部が、上記ヒンジピラーインナと上記ヒンジピラーアウタとの接合部分よりも前方で該接合部分を覆うように車幅方向に延出して設けられる
請求項1〜3のいずれか一項に記載のヒンジピラーの補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−166741(P2012−166741A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30856(P2011−30856)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】