説明

ヒンジ装置

【課題】携帯電話機等の開閉式の携帯機器に用いられるヒンジ装置に関し、筐体の開操作が簡単に行なえかつ使用感が良く、耐久性にも優れたヒンジ装置を提供することを課題とする。
【解決手段】金属製のケース12と、係合凸部22,22が形成され、筐体の他方に取付けられる金属製の第一カム部材6と、ケース12内に軸方向に摺動自在かつ回動不能に収納され、頂部37,37に至る上りの第一の斜面部36,36、頂部から傾斜する下りの第二の斜面部38,38が形成され、第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材8と、第二カム部材よりも外形が大きく形成され、ケース12内に軽く圧入する状態で収納され、第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材9と、第一カム部材と第二カム部材との両者を係合方向に付勢するバネ部材10,11と、各部材を連結し軸支する軸体16と、を有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機等の開閉式の携帯機器に用いられるヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
折畳式の携帯電話機等においては、本体筐体(送話部)に対して開閉筐体(受話部)を回動可能に連結するヒンジ装置として、開閉筐体が所定の開位置(フリップポイント)を基準に、開方向或いは閉方向に回動付勢力が作用して自動的に開放、閉塞するヒンジが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す折畳み型携帯電話の本体と蓋とを結合するヒンジ部材は、図16に示すように、本体に取付けられるケーシング内に挿入される端面カム90とこれに接触するトレース部91を備えており、閉鎖された蓋を手で開け始めると、端面カム90はトレース部91を急斜面部93に沿って押し上げながら回動し、30°開いた位置においてトレース部91は凸部94を乗り越えて緩斜面部95へと進み、押圧手段により凹部92の開放停止位置(150°開いた位置)に至るまで自動的に降下し、これにより端面カム90には回転力が付与され自動的に蓋が開放される。
【0004】
また、特許文献2に示すヒンジ装置は、固定カム部とこのカム部に圧接するカムスライダーを有し、携帯電話機の送話部と受話部との相対的開成角度が25°になると、上記固定カム部側へ摺動付勢される上記カムスライダーの凸部は第一傾斜部を乗り越えて開かれ、45°付近になるとコンプレッションスプリングの弾力により自動的に150°まで開かれるというものである。また、本願出願人は先に、筐体の開操作が簡単で広い開放角度が得られるヒンジ装置を出願した(特願2007−210616)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−98228号公報
【特許文献2】特開2001−355371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、携帯電話機の多様化に伴い、片手でも簡単に開操作が行え、かつ開放停止角度も出来るだけ広くしたいというニーズも高まっている。一般に、上記特許文献に示すヒンジ装置は、バネの反発力を利用して自動的に筐体を開く構造であるため、上記フリップポイント周辺ではバネを大きく圧縮しているためその反発もつよい。このようなヒンジ装置は、カム同士が強く係合することからカム部材またカムを収納する筒部材等は金属製を用いる場合が多い。このため、ヒンジ装置の相対回動の勢いが強く、部品同士がガタついて金属的なノイズを発生させる場合があり、操作者に違和感を与える要因にもなっている。また、フリップヒンジを用いて筐体の開放角度を広くしたいというニーズから、本願出願人の先の出願のように一方のカムに壁面を設けて摺動路の範囲(角度)を広く確保した場合、他方のカムが上記壁面近傍では動作が不安定になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、筐体の開操作が簡単に行なえかつ使用感が良く、耐久性にも優れたヒンジ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の技術的課題を解決するため、本発明は図1に示すように、携帯機器の本体筐体と開閉筐体とを回動可能に連結するヒンジ装置において、上記筐体の一方に取付けられる有底筒状の金属製のケース12と、上記ケースの端部の外側に設けられ、基部の中心対称な両位置に係合凸部22,22がそれぞれ形成され、上記筐体の他方に取付けられる金属製の第一カム部材6と、上記ケース12内に軸方向に摺動自在かつ回動不能に収納され、上記第一カム部材6の係合凸部と向い合せに設けられ、これら係合凸部と向かい合う部位に各係合凸部が係合し摺動する係合斜面部34,34がそれぞれ形成され、各係合斜面部にはそれぞれ、頂部37,37に至る上りの第一の斜面部36,36、上記頂部から傾斜する下りの第二の斜面部38,38が形成され、上記第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材8と、上記第二カム部材よりも外形が大きく形成され、上記ケース12内の上記第二カム部材の奥側に軸方向に摺動可能にかつ回動不能に軽く圧入する状態でこのケースに収納され、上記第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材9と、上記ケース内に設けられ、上記第一カム部材と上記第二カム部材との両者を係合方向に付勢するバネ部材10,11と、上記ケースの底部、上記バネ部材、上記保持部材、上記第二カム部材及び上記第一カム部材を貫通して各部材を連結し軸支する軸体16と、を有する構成である。
【0009】
本発明に係るヒンジ装置は、携帯機器の本体筐体と開閉筐体とを回動可能に連結するヒンジ装置において、上記筐体の一方に取付けられる有底筒状の金属製のケース12と、上記ケースの端部の外側に設けられ、基部の中心対称な両位置に係合凸部がそれぞれ形成され、各係合凸部22,22の先端部の一方側には基部から先端部の近傍にかけて回動方向と垂直な壁面部23,23が、また他方側には上記先端部から上記基部に至る斜面部がそれぞれ形成され、上記筐体の他方に取付けられる金属製の第一カム部材6と、上記ケース内に軸方向に摺動自在かつ回動不能に収納され、上記第一カム部材の係合凸部と向い合せに設けられ、これら係合凸部と向かい合う部位に各係合凸部が係合し摺動する係合斜面部34,34がそれぞれ形成され、各係合斜面部にはそれぞれ、基部から回動方向と垂直に形成された壁面部35,35、この壁面部の上端部から頂部37,37に至る上りの第一の斜面部36,36、上記頂部から直線状に傾斜する第二の斜面部38,38が形成され、上記第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材8と、上記第二カム部材8よりも外形が大きく形成され、上記ケース内の上記第二カム部材の奥側に軸方向に摺動可能にかつ回動不能に軽く圧入する状態でこのケース12に収納され、上記第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材9と、上記ケース内に設けられ、上記第一カム部材と上記第二カム部材との両者を係合方向に付勢するバネ部材10,11と、上記ケースの底部、上記バネ部材、上記保持部材、上記第二カム部材及び上記第一カム部材を貫通して各部材を連結し軸支する軸体16と、を有する構成である。
【0010】
本発明に係るヒンジ装置は、上記第一カム部材6の上記壁面部23,23に、一部を周方向に突出させた突出部52,53を形成する一方、上記第二カム部材8の上記壁面部35,35に一部を周方向に窪ませ、上記突出部52,53を収納可能な切欠部54,55を形成し、上記第一カム部材の突出部52,53が、上記切欠部54,55の近傍の上記第一の斜面部36,36とカム係合するように両カム部材を係合させた構成である。
【0011】
本発明に係るヒンジ装置は、上記第二カム部材と係合する上記第一カム部材6の背部に、この第一カム部材6と嵌合して一体に回動し、第一カム部材6とともに上記筐体の他方に取付けられる合成樹脂製のストッパー部材7を設けた構成である。
【0012】
本発明に係るヒンジ装置は、上記ケース12と上記軸体16に、それぞれ電気抵抗の低い金属による表面処理を施し、各部材間の通電性を確保した構成である。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係るヒンジ装置によれば、金属製のケース、第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材、第二カム部材よりも外形が大きく形成され、ケース内の第二カム部材の奥側に軸方向に摺動可能にかつ回動不能に軽く圧入する状態でこのケースに収納され、第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材、バネ部材及び軸体を有する構成を採用したから、開閉筐体の開操作が簡単に行えて軽快な操作が行なえるとともに、部材同士の間でのガタつきが防止され、フリップポイント通過による衝撃に対してもクリックノイズなどの異音が発生せず、使用感がよく、また耐久性にも優れるという効果がある。
【0014】
本発明に係るヒンジ装置によれば、金属製のケース、係合凸部の先端部の一方側に壁面部が、また他方側に斜面部がそれぞれ形成される金属製の第一カム部材、ケース内に軸方向に摺動自在かつ回動不能に収納され、各係合斜面部にはそれぞれ、基部から回動方向と垂直に形成された壁面部、この壁面部の上端部から頂部に至る上りの第一の斜面部、頂部から直線状に傾斜する第二の斜面部が形成され、第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材、第二カム部材よりも外形が大きく形成され第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材、バネ部材、及び軸体を有する構成を採用したから、開閉筐体の開操作が簡単でかつ広い開放角度が得られるため操作利便性にも優れ、また部材同士の間でのガタつきが防止されて操作時にクリックノイズなどの異音が発生しないため使用感がよく、また耐久性にも優れるという効果がある。
【0015】
本発明に係るヒンジ装置によれば、第一カム部材の壁面部に、一部が周方向に突出した突出部を形成する一方、第二カム部材の壁面部に一部が周方向に窪み、突出部を収納可能な切欠部を形成した構成を採用したから、第一カム部材の端部が延長されて第二カム部材の壁面部から外れることがなく、全てのカム係合範囲において確実なカム係合が行なえ安全かつ安定した動作が確保できるという効果がある。
【0016】
本発明に係るヒンジ装置によれば、第二カム部材と係合する第一カム部材の背部に、この第一カム部材と嵌合して一体に回動し、第一カム部材とともに筐体の他方に取付けられる合成樹脂製のストッパー部材を設けたから、筐体の穴部に第一カム部材とともに嵌入させるストッパー部材を常に軽圧入の状態で嵌合することが可能となり、ヒンジ装置と筐体との間のクリックノイズの発生が防止できるという効果がある。
【0017】
本発明に係るヒンジ装置によれば、ケースと軸体に、それぞれ電気抵抗の低い金属による表面処理を施し、各部材間の通電性を確保したから、この表面処理によりヒンジ装置の軸体とケース間の導通特性及びヒンジ装置の自体の導通特性が改善され、携帯機器の本体筐体と開閉筐体間の通電特性に寄与するという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は実施の形態に係り、折畳み式の携帯電話機に用いられるヒンジ装置2の分解斜視図を示したものである。このヒンジ装置2は、第一カム部材6、ストッパー部材7、第二カム部材8、保持部材9、コイルバネ10,11、ケース12、Eリング14及び軸体16を構成部材としている。
【0019】
これら部材の内、第一カム部材6及び第二カム部材8によってヒンジ装置(フリップヒンジ)のカム機構が構成される。また上記携帯電話機は、後述するように本体筐体72と上記ヒンジ装置2により連結される開閉筐体70とを有している。なお、ヒンジ装置2は、携帯電話機の他に携帯ゲーム機等の折畳み式の携帯機器にも用いることができる。
【0020】
上記第一カム部材6及び第二カム部材8は、ともにステンレス鋼(SUS)からなるが、他にMIM(金属射出成形)、鋼(SPCC)等の金属材料を用いることができる。また、第一カム部材6及び第二カム部材8には無電解Niメッキ等の表面処理が施されている。上記ストッパー部材7及び保持部材9は、ともにPOM樹脂(ポリアセタール)等の合成樹脂材からなる。POM樹脂は、成形性、耐疲労性及び摩擦磨耗特性にすぐれる。
【0021】
上記ケース12はステンレス鋼(SUS)からなるが、他に金属、又は焼結、MIM(金属射出成形)により成形された金属材料を用いることができる。上記軸体16は硫黄複合快削鋼、アルミニウム等の金属材、コイルバネ10,11はSWP等の鋼材、Eリング14は鋼材からなる。そして、上記軸体16及びEリング14には表面処理としてそれぞれ金メッキを、またケース12の表面には無電解Ni(ニッケル)メッキなどの表面処理を施している。
【0022】
図2に示すように、上記第一カム部材6は断面小判状の基部20の軸方向の一方側には、基部の長尺側の中心対称な両位置に係合凸部22,22が形成され、基部20の他方側には基部の長尺側の中心対称な両位置に鋭角状の先端部25,25を有する係止凸部18,18が形成された形状である。各係合凸部22,22はそれぞれ、先端部25の一方側の近傍には垂直向き(カム部材の回動方向に対して)に壁面部23,23が形成され、また他方側には上記壁面部23に対して30度〜40度から次第に緩やかになる斜面部24,24が形成されている。また、各先端部25は僅かに丸みを帯びた形状に形成されている。
【0023】
上記壁面部23,23の内、一方の壁面部23には外側寄りの箇所に周方向に突出した突出部52が形成され、また他方の壁面部23には内側寄りの箇所に周方向に突出した突出部53が形成されている。これら突出部52,53のカム係合部には、それぞれ上記先端部25,25から直線状に傾斜する斜面部51,51が連続して形成されている。これら斜面部51,51は、下記第二カム部材8の第一の斜面部36,36とカム係合する。
【0024】
上記係止凸部18,18は、それぞれ基部20の端部から軸方向と平行に突出した形状であり、基部の面と平行な断面は基部の中心に向かうにつれて縮小する扇形に形成されている。そして、上記基部20の短尺側の部位には平坦な嵌合面部21,21が、また基部20の中央には軸方向に貫通する孔部32が設けられている。
【0025】
図3に示すように上記ストッパー部材7は、左右の長尺部位にそれぞれ凹部26,26が形成された小判形状をなし、短尺部位には平坦な嵌合面部27,27が形成され、中央には孔部28が設けられた形状である。また、上記嵌合面部27,27の両端部近傍にはそれぞれ突条(クラッシュリブ)29,29が軸方向向きに設けられている。
【0026】
上記第二カム部材8は図4(a)(b)に示すように、断面小判状の基部33の軸方向の一方側には、基部の中心対称な両側にそれぞれ垂直向き(カム部材の回動方向に対して)に壁面部35,35が形成され、また各壁面部の上端部からそれぞれ係合斜面部34,34が形成されている。基部33の他方側には、基部の中心対称な両位置にそれぞれ基部の端部から軸方向と平行に係止凸部31,31が突出形成されている。
【0027】
上記係合斜面部34,34は上りと下りの斜面部からなり、壁面部35,35の上端部からフリップポイントとしての頂部37,37に至る上りの第一の斜面部36,36、頂部37,37から直線状に傾斜する長い下りの第二の斜面部38,38、これと連続して傾斜が次第に急になる第三の斜面部39,39、及びここからさらに底部41,41に至り直線状に傾斜する第四の斜面部40,40を有している。
【0028】
これら斜面部36,38,39,40、上記頂部37、上記底部41、及び壁面部35により、上記第一カム部材6の係合凸部22,22と係合する係合凹部42,42が形成される。また、上記基部33の両側面には、それぞれケース12と係合して摺動する摺動凸部43,43が形成され、これら摺動凸部43,43は上記係止凸部31,31の向きと直交する向きに設けられている。そして、基部33の中央には軸方向に貫通する孔部44が設けられている。
【0029】
また上記壁面部35,35の内、一方の壁面部35は外側寄りの箇所に周方向に切り欠いた切欠部54が形成され、また他方の壁面部35は内側寄りの箇所に周方向に切り欠いた切欠部55が形成されている。図5(a)は上記第一カム部材6を示したものであり、図5(b)は上記第二カム部材8を示したものである。ここで、上記第二カム部材8の切欠部54,55は、それぞれ上記第一カム部材6の突出部52,53を逃げのために突入させ収納する部位である。
【0030】
図6に示すように、上記保持部材9は、小判形状の基部45の左右(長尺側)部位にそれぞれ凹部46,46が形成され、上下(短尺側)部位にはそれぞれ軸方向と平行に係止凸部47,47が突出形成されている。また、これら係止凸部47,47の外側にはそれぞれケース12と係合して摺動する摺動凸部48,48が設けられている。また、上記基部の中央には軸方向に貫通する孔部50が形成されている。
【0031】
上記ケース12は図7に示すように、断面小判状の筒部の一端側には中心部に挿通孔56が設けられた底部58が形成され、他端側は開放口57が形成された筒状の容器である。このケース12には、筒部の軸対称な部位にそれぞれ平坦な嵌合面部60,60が形成され、また各嵌合面部60には、それぞれ開放口57から軸方向にストレートに切り込まれたスリット62,62が形成されている。
【0032】
また図1に示すように、上記コイルバネ10とコイルバネ11とは太さ及び巻き径が異なり、小径のコイルバネ10は大径のコイルバネ11の内部に収納される形状である。このコイルバネ11の内部にコイルバネ10を収めた形態で用いることで、両方のバネ力を加えた強い付勢力を得ることができる。このようにヒンジ装置2のバネの付勢力を高めることで、開閉筐体70の閉塞時及び開放時の保持特性の強化が図れ、また適切かつ十分な開閉特性が得られる。なお、ここではコイルバネを2個用いたが、コイルバネを1個用いる形態とすることもできる。
【0033】
上記軸体16は、断面が円形状の軸部66、この軸部66の一端部に形成され円板状に拡径された頭部64からなり、上記軸部66の他端部近傍には環状の溝部67が形成されている。
【0034】
図8は、上記第一カム部材6の背部にストッパー部材7を嵌合した状態を示したものである。これは、ストッパー部材7の凹部26,26にそれぞれ第一カム部材6の係止凸部18,18を嵌入して一体化したものである。この第一カム部材6の外径(外周)はストッパー部材7の外径(外周)と同一(又は同程度)であり、ストッパー部材7の突条29,29を除いて特に差異は設けていない。
【0035】
図9は、上記第二カム部材8の背部に保持部材9を嵌合した状態を示したものである。これは、保持部材9の凹部46,46にそれぞれ第二カム部材8の係止凸部47,47を嵌入して一体化したものである。ここで、保持部材9の外形(周囲のケース12と接する部分の形状)は第二カム部材8の外形よりも一回り大きく形成されている。
【0036】
ここで、上記第二カム部材8の外形はケース12内に遊びをもって収納される大きさに形成され、上記保持部材9の外形はケース12内に軽く圧入する状態で収納される大きさに形成されている。また、保持部材9の摺動凸部48,48の幅は、上記ケース12のスリット62,62の溝幅と同じ(又は同程度)にして、上記摺動凸部48がスリット62に軽圧入の遊びのない状態で嵌合できるようにしている。なお、第二カム部材8の摺動凸部43,43の幅は、スリット62の溝幅より狭く形成し、両者の間には遊び(隙間)をもたせている。
【0037】
これは、上記第二カム部材8は金属であるため、上記遊びをもたせないとスリット62の溝部に高い負荷がかかり、また第二カム部材8がケース12内を摺動するのが困難となるおそれがあるためである。一方、上記保持部材9はケース12に対して遊びを持たせてないが、これは保持部材9は材料が合成樹脂(POM)であるため、金属のケース12と比べて軟らかく、初期の動作で合成樹脂が磨耗して馴染むのでケース12に対する負荷も少なく、またケース12内を摺動する保持部材9の摺動抵抗も低く上記と同様に馴染みが起こるので、軽圧入の状態であってもケース12内を摺動するのに特に支障がないためである。
【0038】
上記ヒンジ装置2の組み立てに際しては、まずストッパー部材7の凹部26,26にそれぞれ第一カム部材6の係止凸部18,18を嵌合して一体化し、これらを軸体16に嵌めてストッパー部材7を軸体16の頭部64に係止させる。次いで保持部材9の凹部46,46にそれぞれ第二カム部材8の係止凸部47,47を嵌合して一体化し、これらを軸体16に嵌め、この第二カム部材8と第一カム部材6とを向い合せにカム係合させる。さらに軸体16に、コイルバネ11内にコイルバネ10を内挿した状態で両コイルバネ10,11を嵌める。
【0039】
そして、上記ストッパー部材7及び第一カム部材6を残して他の部材をケース12内に収納し、上記コイルバネ10,11に抗して上記軸部66を、ケース12の底部58の挿通孔56からケース外に挿通させる。このとき、保持部材9の両摺動凸部48,48及び第二カム部材8の両摺動凸部43,43を、それぞれケース12のスリット62,62に軸方向摺動可能に嵌合させておく。そして、上記軸部66の先端の溝部67にEリング14を係止させ、バネ力により軸体16に各部材を拘束した状態でヒンジ装置2を組み立てる。図10は上記組み立てたヒンジ装置2の断面を示したものである。
【0040】
上記ヒンジ装置2は、保持部材9及び第二カム部材8がケース12と嵌合してこれらは一体に回動し、また第一カム部材6は第二カム部材8と係合しつつ第二カム部材8に対して相対回動する。また、第一カム部材6と嵌合するストッパー部材7は第一カム部材6と一体に回動する。そして、上記第一カム部材6及び第二カム部材8は、何れも軸体16の回動には拘束されずフリーな形態である。
【0041】
一方、コイルバネ10,11の付勢力により第一カム部材6と第二カム部材8とは相互に圧接する状態に押圧され、第一カム部材6と第二カム部材8との相対回動に伴い、第一カム部材6の係合凸部22,22が第二カム部材8の係合凹部42,42への上り及び下り移動を繰り返すカム機構を形成する。そして、上記第二カム部材8は保持部材9とともに第一カム部材6との相対回動に伴いケース12内を軸方向に往復移動し、その摺動凸部43,43及び保持部材9の摺動凸部48,48がともにケース12のスリット62,62に係合した状態で軸方向に摺動移動する。このようにヒンジ装置2は、上記カム機構を介して、ケース12(第二カム部材8)に対して第一カム部材6及びストッパー部材7が相対回動する。
【0042】
なお、上記第一カム部材6と第二カム部材8とは相対回動を行うものであり、構成上は両カム部材を向い合せた状態で配置位置を入れ替えることは可能であり、カム機構として同様な作用効果が得られる。この場合、第二カム部材8とストッパー部材7を軸体16の頭部64側に配置し、第一カム部材6と保持部材9をケース12内に収納し、各部材はそれぞれ各配置位置に適合するように構成する。また、第二カム部材8の摺動凸部は不要となるが、これら摺動凸部はそれぞれ第一カム部材6の該当位置に設ける。
また、上記ストッパー部材7、保持部材9を用いなくても、上記第一カム部材6と第二カム部材8との両カム部材同士(各係止凸部は不要)のカム係合及び作用に何ら差し支えがないことは言うまでもない。
【0043】
図11に示すように上記ヒンジ装置2の外形は、上述したようにケース12と第一カム部材6及びストッパー部材7とから形成され、軸に垂直な断面は全体に小判形状である。またヒンジ装置2は、保持部材9及び第二カム部材8がケース12内に収納され、第一カム部材6及びストッパー部材7はケース12の開放口57から突出した形態であるが、第一カム部材6及びストッパー部材7の各断面の外形はケース12の内形より小さく形成されており、この第一カム部材6及びストッパー部材7を軸方向に押圧することにより、コイルバネ10,11の圧縮に伴いケース12内に没入収納が可能である。
【0044】
携帯電話機の本体筐体72と開閉筐体70とを上記ヒンジ装置2で連結した場合、電子機器が組み込まれた上記両筐体同士は電気的にも接続(アース線等)されることになる。このため、このヒンジ装置2は電気導通性を確保するため、軸体16及びEリング14にそれぞれ金メッキを施し、かつケース12の表面に無電解Niメッキを施している。ここでのケース12はステンレス鋼(SUS)を用いているが、このステンレス鋼は表面の酸化被膜が導通を不安定にさせるため、あえて上記Niメッキを施したものである。上記メッキ等により、ヒンジ装置2の軸体16とケース12間の導通特性、及びヒンジ装置2自体の導通特性が改善された。
【0045】
さて、上記ヒンジ装置2は図12に示すように、折畳式の携帯電話機に取り付けられる。この携帯電話機は、液晶表示画面等が設けられた受話部からなる開閉筐体70と、操作キー等が設けられた送話部からなる本体筐体72とを有している。上記本体筐体72には、開閉筐体70を接続する第一接続部74が設けられている。この第一接続部74の一方側には、ヒンジ装置2の嵌装が可能な断面小判状の嵌合穴部76が設けられ、他方側にはピン78が取付けられる。上記嵌合穴部76の奥には、この嵌合穴部76より径の小さい第二穴部が設けられている。また、ヒンジ装置2は全体が上記嵌合穴部76に嵌入可能であり、且つヒンジ装置2のケース12(第二カム部材8)は嵌合穴部76内での回動が阻止される。
【0046】
一方の開閉筐体70には、筐体端部の両側部に本体筐体72と接続する第二接続部80、及び第三接続部82が設けられている。この内、ヒンジ装置2の一端部が固定される第二接続部80には、ヒンジ装置2の第一カム部材6及びストッパー部材7を嵌合しこれらの回動を阻止する断面小判状の固定穴部84が設けられている。また、上記ピン78が接続される第三接続部82には、このピン78の先端部が突入可能な穴部86が設けられ、この穴部86はピン78を回動可能に支持する。
【0047】
取付けに際しては、本体筐体72の嵌合穴部76に、ヒンジ装置2のケース12部分を軸方向に嵌入する。そして、上記ピン78を第三接続部82の穴部86に突入させる一方、第一カム部材6及びストッパー部材7を嵌合穴部76内に押し込み、この押圧状態のまま、本体筐体72の第一接続部74を開閉筐体70の第二接続部80に合わせる。ここで、ヒンジ装置2のコイルバネ10,11の反発力を利用して、第一カム部材6及びストッパー部材7を上記固定穴部84に軽圧入し固定させる。この軽圧入の際には、ストッパー部材7の突条29が押しつぶされて密着度の高い嵌入が行なえる。
【0048】
上記ヒンジ装置2の携帯電話機への取付けでは、本体筐体72に対して開閉筐体70を開放(開角度165°)した状態において、第一カム部材6の係合凸部22の先端部25は、第二カム部材8の第四の斜面部40の中間部位に当接係合した状態となり、上記先端部25が底部41に当達する直前の位置で停止するように取り付けられる。上記開放状態では、開閉筐体70と本体筐体72間に設けられたストッパー機構により、開閉筐体70はこれ以上の開移動が阻止される。上記開閉筐体70を開放(開角度165°)した状態において、操作者は通話及びキー操作等を行なう。
【0049】
次に、上記ヒンジ装置2の回動特性について説明する。
図13は、上記第二カム部材8における係合斜面部34のカム形状を平面に開いた展開図である。このカム形状は、第二カム部材8に対する第一カム部材6の回動角度が略0度から180度の範囲について示されている。
【0050】
第二カム部材8には壁面部35が形成され、これにより第一の斜面部36における第一カム部材6の始点30(ヒンジの回動角度が10度で開閉筐体の開角度が0度の開閉の開始位置)を高い位置に設けることができ、ここから僅かに第一の斜面部36を頂部37まで上った後は、底部41に向けて傾斜角度の異なる複数の斜面部を下る係合斜面部34が形成されている。上記壁面部35により、係合斜面部34の範囲を広く確保することができ、このため開閉筐体70の開角度を広くとることが可能になり、ここでは最大165度に開放した開角度が得られている。上記頂部37は、上記壁面部35の上端部の係合端部49から25度の位置に設けられている。
【0051】
上記係合斜面部34には、上記係合端部49から頂部37に至る第一の斜面部36、頂部37から下る直線状の第二の斜面部38、この第二の斜面部38に続き傾斜が次第に急になる第三の斜面部39、ここからさらに底部41に至る急な下りの第四の斜面部40が設けられている。上記第二の斜面部38を直線状にし、開閉筐体70を閉位置から僅かに開いた頂部37(フリップポイント)を通過後は、開閉筐体70を自動開放させるため、係合斜面部34におけるカム形状(外郭形状)は、第二の斜面部38から底部41に至るまでは、連続的な下り斜面としている。この係合斜面部34と、底部41から垂直に形成される壁面部35により凹形状の係合凹部42が形成される。
【0052】
図14は、第一カム部材6と第二カム部材8とのカム係合部を平面状に展開して示したものである。図14(a)は、ヒンジの回動角度(第二カム部材8に対する第一カム部材6の回動角度)が0度で開閉筐体70の開角度が−10度(説明の都合上の規定)を示している。ここで、ヒンジの回動角度が0度はヒンジの回動の始点を表す。ヒンジの使用に際しては、ヒンジを少し回動させたときに開閉筐体の開角度が0度(閉位置)となる状態で使用する。これは、ヒンジのカム部材同士の係合に余裕をもたせてカムがロックするのを防止するためである。このロック現象は、第一カム部材6が第二カム部材8の壁面部35を越えて(カムの落ち込み)カム部材同士がロックされるものである。
【0053】
図14(b)は、ヒンジの回動角度が10度で開閉筐体の開角度が0度を示している。このときには、第一カム部材6の先端部25は第二カム部材8の第一の斜面部36の途中に位置する。このとき、第一カム部材6の斜面部51,51は、第二カム部材8の第一の斜面部36,36とカム係合している。この状態では、コイルバネ10,11の付勢力により、第一カム部材6が第二カム部材8の第一の斜面部36を下る方向、即ち開閉筐体70を閉じる方向にヒンジ装置2の回動力が作用し、開閉筐体70を保持する。
【0054】
図14(c)は、ヒンジの回動角度が175度で開閉筐体の開角度が165度(筐体のストッパー機構による停止位置)を示す。このときには、第一カム部材6の先端部25は第二カム部材8の第四の斜面部40の途中に位置し、コイルバネ10,11の付勢力により、第一カム部材6が第二カム部材8の第四の斜面部40を下る方向、つまり開閉筐体70を開く方向にヒンジ装置2の回動力が作用し、開閉筐体70を保持する。また、第一カム部材6の突出部52,53は、それぞれ第二カム部材8の切欠部54,55に突入し収納された状態である。
【0055】
操作に際しては、本体筐体72に対して閉塞された開閉筐体70を少し開くと、コイルバネ10,11の付勢力に抗して、第一カム部材6の先端部25は第二カム部材8の第一の斜面部36を上り頂部37に至る。さらに、上記第一カム部材6の先端部25が第二カム部材8の頂部37を通過して第二の斜面部38に至ると、コイルバネ10,11の強い付勢力(頂部37の位置ではコイルバネは最大に圧縮)により先端部25は第二の斜面部38を摺動しつつ降下し、第二カム部材8に対して第一カム部材6は自動的に回動(相対回動)する。
【0056】
そして、第一カム部材6の先端部25が第二の斜面部38から第三の斜面部39を経由して第四の斜面部40に至り、この第四の斜面部40の中間位置の開閉筐体70の開角度が165度の位置に到達したとき、開閉筐体70は本体筐体72との間に設けられたストッパー機構により開動作が停止し、開閉筐体70はこの位置で保持される。これにより、操作者は片手の操作で簡単に開閉筐体70を開角度が165度の操作位置まで開くことができる。
【0057】
ここで、上記ヒンジ装置2のカム形状によるロック対策について説明する。
このヒンジ装置2では、第一カム部材6の壁面部23に突出部52を、また第二カム部材8の壁面部35に上記突出部52の逃げ場としての切欠部55をそれぞれ設けて上記ロックを防止している。
【0058】
上記両カム部材の各壁面部は、各カム部材の中心対称(180度隔てた)な位置に一対設けられている。そしてここでは、上記第一カム部材6に上記180度の範囲を越える(それぞれ角度で+10度)形態で上記突出部52,52を設け、この突出部52により上記壁面部23の位置を延長して余裕を確保し第一カム部材6の落ち込みを防止する。そして、上記突出部52の逃げ(収納)領域を確保するため、上記第二カム部材8の壁面部35に上記切欠部55,55(それぞれ角度で−13度)を設けている。
【0059】
図15は、第一カム部材6と第二カム部材8との両カム係合部を重ねて示したものである。図中、第一カム部材6のカムの一部が斜線(密)で、また第二カム部材8のカムの一部が斜線(疎)で表されており、これら両カム部材同士が係合した部位を両斜線を重ねた形状(網目模様)で表されている。
【0060】
図15(a)は、ヒンジの回動角度が10度で開閉筐体70の開角度が0度を示す。通常、この状態では上記突出部52,53がなくても第一カム部材6と第二カム部材8とはカム係合が保たれる。図15(b)は、ヒンジの回動角度が0度で開閉筐体70の開角度が−10度を示す。この状態では、上記第一カム部材6の突出部52,53がそれぞれ第二カム部材8の第一の斜面部36,36と係合しておりカム係合が保たれている。しかし、上記突出部52,53がない場合には、第二カム部材8の壁面部35,35から第一カム部材6が落ち込むことになり、開閉筐体70の開角度が0度の状態では10度程度の余裕しか確保できないことになる。
【0061】
図15(c)は、ヒンジの回動角度が−10度で開閉筐体70の開角度が−20度を示す。この状態では、上記突出部52,53が第二カム部材8の壁面部35,35から落ち込むことになる。しかし、上記第一カム部材6に突出部52,53を設けたことにより、開閉筐体70を閉塞(閉角度が0度)した状態において、第一カム部材6が第二カム部材8から脱落するまでには20度の角度の余裕が確保できたことになる。
【0062】
筐体に対するヒンジ装置2の取り付け誤差、或いは消耗によるズレ等により開閉筐体70を閉じた状態において、ヒンジ装置2の第二カム部材8に対する第一カム部材6の係合位置(回動角度)にズレが生じる可能性がある。これに対して、上記第一カム部材6の突出部52により回動角度に20度の余裕が確保できたことから、ヒンジ装置2の安全かつ安定した使用が確保できる。
【0063】
次に、開閉筐体70の開閉時のクリックノイズ対策について説明する。
上記ヒンジ装置2はフリップヒンジであり、開閉筐体70の開位置がヒンジ装置2のフリップポイント(頂部37)を通過すると、その後はヒンジ装置2のコイルバネ10,11に蓄積された反発力により、カム部材が回動し自動的に開閉筐体が開く動作を行なう。
【0064】
このため開閉筐体の開閉時に、第二カム部材8の頂部37を分岐点にして、第一カム部材6が第二カム部材8に与える力、これは第二カム部材8がケース12に与える力でもあるがこの力の作用が反転する。このため上記保持部材9を設けない場合、ケース12内に遊嵌状態で収納された第二カム部材8は、ケース12のスリット62,62に係合する摺動凸部43,43が、これまではスリットの一方側に押し付けられていたのが反転し、反対側に押し付けられ、このときの衝撃によりクリックノイズが発生する。
【0065】
これに対して、この実施の形態では、上記保持部材9を上記第二カム部材8と嵌合し一体化した状態で装着させており、この保持部材9はケース12内に軽く圧入する状態で収納され、また保持部材9の摺動凸部48,48はスリット62,62に軽圧入の遊びのない状態で嵌入されている。このため開閉時に、第一カム部材6が上記フリップポイントを通過して第二カム部材8がケース12に与える力の作用が反転しても、第二カム部材8は保持部材9に保持されかつ保持部材9はケース12に密着していることから上記クリックノイズは発生しない。
【0066】
また一方、ケース12に遊嵌状態で収納された第二カム部材8は、上記保持部材9を設けない場合には、上記力の作用が反転した場合、第二カム部材8の側部とケース12の内周部との間の遊びにより、両者が当接しあってクリックノイズが発生する。これについても、上記第二カム部材8を保持する保持部材9はケース12に対して軽く圧入し遊びのない状態で嵌合されていることから、ケース12との間でズレもなく上記クリックノイズは発生しない。
このように、第二カム部材8はケース12に遊嵌されているが、これを保持する保持部材9により効果的にクリックノイズが防止される。また、ヒンジ装置2内の部材間がガタついたり金属部材同士が当接することがないため、装置の耐久性が高められる。
【0067】
上記クリックノイズは、ヒンジ装置2自体に原因があるものであるが、次にヒンジ装置と筐体との間に原因がある場合の対策について説明する。
上記第一カム部材6は、ヒンジ装置から突出しており、これは一方側の筐体の穴部に嵌合して使用される。通常、カム部材は量産されるものであるが、製造(MIM製法等)された製品の寸法精度に多少の誤差が発生する可能性がある。このときの誤差により、第一カム部材6が筐体の穴部に軽圧入の状態で嵌合しないものであった場合、両者の間に少しの遊びが発生して、開閉筐体の回動の際に両者間にガタつきが発生し、上記フリップポイントの位置などでクリックノイズが発生する可能性がある。
【0068】
このため上記ヒンジ装置2では、上記ストッパー部材7を上記第一カム部材6に嵌合させて一体化した状態で装着している。ここで、ストッパー部材7と第一カム部材6とは外形上は特に差異は設けていないが、筐体への嵌入の際、合成樹脂製のストッパー部材7に設けた突条29,29により寸法の誤差はカバーされ、常に軽圧入の形態が確保できる。
また、ストッパー部材7は合成樹脂製であるため製品精度の誤差は少なく、この点でもストッパー部材7を第一カム部材6に一体化させることで、筐体の穴部内への軽圧入の形態が確保できる。
したがって上記ヒンジ装置2では、上記第一カム部材6をストッパー部材7と嵌合一体化したことから、常にこれら部材を筐体の穴部に軽圧入する状態で収納することが可能となり、ヒンジ装置2と筐体との間のクリックノイズの発生が防止できる。
【0069】
上記ヒンジ装置2を装着した携帯電話機は、本体筐体72に対して開閉筐体70を開閉すると、ヒンジ装置2が作動して第一カム部材6の係合凸部22は、第二カム部材8の係合斜面部34への上り下り移動を繰り返す。開閉筐体を開くときには、操作者が開閉筐体70を僅かに開くと係合凸部22は第二カム部材8の頂部37(フリップポイント)に至り、ここから係合凸部22が第二の斜面部38を下り(このとき第二カム部材8及び保持部材9はケース12内を外向きに摺動移動する)、これに伴い、開閉筐体70を開く方向に付勢力が作用し自動的に開閉筐体70が開く。
【0070】
このフリップポイントは、開閉筐体70を20度〜30度程度開いた位置に設定され、ここを基準にヒンジ装置に回動力が発生(反転)する。さらに、係合凸部22は第三の斜面部39を経由して、第四の斜面部40を下って底部41へ至る途中の位置(開閉筐体70が開放された開角度165度の位置)で、筐体同士のストッパー機構により開状態が停止しこの操作位置で開閉筐体70が保持固定される。
【0071】
開閉筐体70を閉じるときには、操作者は開閉筐体を閉移動させるが、このとき第一カム部材6の係合凸部22は第四の斜面部40を上り第三の斜面部39、第二の斜面部38から頂部37へと移動する。この状態では、第二カム部材8及び保持部材9はコイルバネ10,11を圧縮しながらケース12の奥へと摺動移動する。さらに第一カム部材6の係合凸部22の先端部25が頂部37を超えると、係合凸部22は第一の斜面部36へ至り、コイルバネ10,11の付勢力により第一の斜面部36を下り、その途中位置において開閉筐体70は本体筐体72と重なり閉塞状態を維持する。
【0072】
上記開閉筐体70の閉塞時或いは開放時における保持状態において、上記第一カム部材6の係合凸部22は、第二カム部材8の係合斜面部34への吸込み力が非常に強い状態で保持され、本体筐体72に対する開閉筐体70の閉塞状態及び通話操作などが行なえる開放状態が確実に保持される。このため、開閉筐体70が閉塞状態或いは操作位置でガタついたりすることがない。
【0073】
従って、上記実施の形態に係るヒンジ装置及びこのヒンジ装置を用いた携帯電話機によれば、開閉筐体の開操作が簡単でかつ広い開放角度が得られるため操作利便性にも優れ、また部材同士の間でのガタつきが防止されて操作時にクリックノイズなどの異音が発生しないため使用感がよく、またヒンジ装置内の部材間がガタついたり金属部材同士が当接することがないため、装置の耐久性が高められる。また、第一カム部材の端部を延長したことから、第二カム部材の壁面部から外れてロックされることがなく、全てのカム係合範囲において確実なカム係合が行なえ安全かつ安定した動作が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係るヒンジ装置の分解斜視図を示す。
【図2】実施の形態に係るヒンジ装置の第一カム部材の斜視図(a)(b)を示す。
【図3】実施の形態に係るヒンジ装置のストッパー部材の斜視図(a)(b)を示す。
【図4】実施の形態に係るヒンジ装置の第二カム部材の斜視図(a)(b)を示す。
【図5】実施の形態に係るヒンジ装置の第一カム部材(a)及び第二カム部材の(b)を示す。
【図6】実施の形態に係るヒンジ装置の保持部材の斜視図(a)(b)を示す。
【図7】実施の形態に係るヒンジ装置のケースの斜視図(a)(b)を示す。
【図8】第一カム部材とストッパー部材とを嵌合した状態を示す図である。
【図9】第二カム部材と保持部材とを嵌合した状態を示す図である。
【図10】実施の形態に係るヒンジ装置の断面を示す図である。
【図11】実施の形態に係るヒンジ装置の斜視図である。
【図12】ヒンジ装置の携帯電話機への取り付け形態を示す図である。
【図13】ヒンジ装置の第二カム部材における係合斜面部を平面状に表した展開図である。
【図14】ヒンジ装置の第一カム部材と第二カム部材とのカム係合部を平面状に示した展開図(a)(b)(c)である。
【図15】ヒンジ装置の第一カム部材と第二カム部材との両カム係合部を重ねて示した説明図(a)(b)(c)である。
【図16】従来例に係るヒンジ部材のカムを示す図である。
【符号の説明】
【0075】
6 第一カム部材
7 ストッパー部材
8 第二カム部材
9 保持部材
10,11 バネ部材(コイルバネ)
12 ケース
16 軸体
22 係合凸部
23,35 壁面部
25 先端部
34 係合斜面部
36 第一の斜面部
37 頂部
38 第二の斜面部
42 係合凹部
52,53 突出部
54,55 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器の本体筐体と開閉筐体とを回動可能に連結するヒンジ装置において、
上記筐体の一方に取付けられる有底筒状の金属製のケースと、
上記ケースの端部の外側に設けられ、基部の中心対称な両位置に係合凸部がそれぞれ形成され、上記筐体の他方に取付けられる金属製の第一カム部材と、
上記ケース内に軸方向に摺動自在かつ回動不能に収納され、上記第一カム部材の係合凸部と向い合せに設けられ、これら係合凸部と向かい合う部位に各係合凸部が係合し摺動する係合斜面部がそれぞれ形成され、各係合斜面部にはそれぞれ、頂部に至る上りの第一の斜面部、上記頂部から傾斜する下りの第二の斜面部が形成され、上記第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材と、
上記第二カム部材よりも外形が大きく形成され、上記ケース内の上記第二カム部材の奥側に軸方向に摺動可能にかつ回動不能に軽く圧入する状態でこのケースに収納され、上記第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材と、
上記ケース内に設けられ、上記第一カム部材と上記第二カム部材との両者を係合方向に付勢するバネ部材と、
上記ケースの底部、上記バネ部材、上記保持部材、上記第二カム部材及び上記第一カム部材を貫通して各部材を連結し軸支する軸体と、を有することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
携帯機器の本体筐体と開閉筐体とを回動可能に連結するヒンジ装置において、
上記筐体の一方に取付けられる有底筒状の金属製のケースと、
上記ケースの端部の外側に設けられ、基部の中心対称な両位置に係合凸部がそれぞれ形成され、各係合凸部の先端部の一方側には基部から先端部の近傍にかけて回動方向と垂直な壁面部が、また他方側には上記先端部から上記基部に至る斜面部がそれぞれ形成され、上記筐体の他方に取付けられる金属製の第一カム部材と、
上記ケース内に軸方向に摺動自在かつ回動不能に収納され、上記第一カム部材の係合凸部と向い合せに設けられ、これら係合凸部と向かい合う部位に各係合凸部が係合し摺動する係合斜面部がそれぞれ形成され、各係合斜面部にはそれぞれ、基部から回動方向と垂直に形成された壁面部、この壁面部の上端部から頂部に至る上りの第一の斜面部、上記頂部から直線状に傾斜する第二の斜面部が形成され、上記第一カム部材とは相対回動可能にカム係合する金属製の第二カム部材と、
上記第二カム部材よりも外形が大きく形成され、上記ケース内の上記第二カム部材の奥側に軸方向に摺動可能にかつ回動不能に軽く圧入する状態でこのケースに収納され、上記第二カム部材と嵌合して一体に回動する合成樹脂製の保持部材と、
上記ケース内に設けられ、上記第一カム部材と上記第二カム部材との両者を係合方向に付勢するバネ部材と、
上記ケースの底部、上記バネ部材、上記保持部材、上記第二カム部材及び上記第一カム部材を貫通して各部材を連結し軸支する軸体と、を有することを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
上記第一カム部材の上記壁面部に、一部を周方向に突出させた突出部を形成する一方、上記第二カム部材の上記壁面部に一部を周方向に窪ませ、上記突出部を収納可能な切欠部を形成し、上記第一カム部材の突出部が、上記切欠部の近傍の上記第一の斜面部とカム係合するように両カム部材を係合させたことを特徴とする請求項2記載のヒンジ装置。
【請求項4】
上記第二カム部材と係合する上記第一カム部材の背部に、この第一カム部材と嵌合して一体に回動し、第一カム部材とともに上記筐体の他方に取付けられる合成樹脂製のストッパー部材を設けたことを特徴とする請求項1,2又は3記載のヒンジ装置。
【請求項5】
上記ケースと上記軸体に、それぞれ電気抵抗の低い金属による表面処理を施し、各部材間の通電性を確保したことを特徴とする請求項1,2,3又は4記載のヒンジ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2009−299861(P2009−299861A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157442(P2008−157442)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(592044732)株式会社オーハシテクニカ (32)
【Fターム(参考)】