ヒータ及びこのヒータを搭載する像加熱装置
【課題】 発熱分布が均一で、装置が対応する最大サイズよりも小さなサイズをプリントする場合の非通紙部昇温を抑えられるヒータ、及びエンドレスベルトを用いた像加熱装置を提供する。
【解決手段】 基板長手方向に沿って設けられた第1導電体と第2導電体間に正の抵抗温度特性を有する電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体を設け、電気的に並列接続された複数本の発熱抵抗体を有する発熱ブロックが長手方向に沿って複数個直列に配置されており、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、または抵抗発熱体の間隔が端部のほうが広い設定とする。
【解決手段】 基板長手方向に沿って設けられた第1導電体と第2導電体間に正の抵抗温度特性を有する電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体を設け、電気的に並列接続された複数本の発熱抵抗体を有する発熱ブロックが長手方向に沿って複数個直列に配置されており、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、または抵抗発熱体の間隔が端部のほうが広い設定とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱定着装置に利用すれば好適なヒータ、及びこのヒータを搭載する像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに搭載する定着装置として、エンドレスベルトと、エンドレスベルトの内面に接触するセラミックヒータと、エンドレスベルトを介してセラミックヒータと定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を有する装置がある。この定着装置を搭載する画像形成装置で小サイズ紙を連続プリントすると、定着ニップ部長手方向において紙が通過しない領域の温度が徐々に上昇するという現象(非通紙部昇温)が発生する。非通紙部の温度が高くなり過ぎると、装置内の各パーツへダメージを与えたり、非通紙部昇温が生じている状態で大サイズ紙にプリントすると、小サイズ紙の非通紙部に相当する領域でトナーが高温オフセットすることもある。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、セラミック基板上の発熱抵抗体を正の抵抗温度特性を有する材質で形成し、発熱抵抗体に対してヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置することが考えられている。非通紙部が昇温すると非通紙部の発熱抵抗体の抵抗値が昇温し、非通紙部の発熱抵抗体に流れる電流が抑制されることにより非通紙部の発熱を抑制するという発想である。正の抵抗温度特性は、温度が上がると抵抗が上がる特性であり、以後PTC(Positive Temperature Coefficient)と称する。
【0004】
しかしながら、PTCの材質は体積抵抗が非常に低く、一本のヒータの発熱抵抗体の総抵抗を、商用電源で使用できる範囲内に設定するのは非常に難しい。そこで、セラミック基板上に形成するPTCの発熱抵抗体をヒータの長手方向で複数の発熱ブロックに分割し、各発熱ブロックではヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置する。更に複数の発熱ブロックを電気的に直列に繋ぐ構成が特許文献1に開示されている。また、この文献には、複数本の発熱抵抗体を二本の導電体の間に電気的に並列に接続して発熱ブロックを構成することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−209493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導電体の抵抗値はゼロではなく、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなることが判った。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。このように、一つの発熱ブロックで発熱ムラが生じると、ヒータ長手方向の発熱分布ムラも大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための本発明は、基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有し、電気的に並列接続された複数本の前記発熱抵抗体を有する発熱ブロックが形成されているヒータにおいて、一つの前記発熱ブロック中で、前記長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、または、一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の間隔が、前記長手方向の中央よりも端部のほうが広い、の少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータ長手方向における発熱分布ムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の像加熱装置の断面図。
【図2】実施例1のヒータ構成図。
【図3】実施例1のヒータの発熱分布説明図。
【図4】比較例のヒータ構成図。
【図5】比較例のヒータの発熱分布説明図。
【図6】実施例1のヒータの用紙サイズとの関係を示した図。
【図7】実施例1のヒータの非通紙部昇温抑制効果説明図。
【図8】実施例2のヒータ構成図。
【図9】実施例3のヒータ構成図。
【図10】実施例4のヒータ構成図。
【図11】実施例5のヒータ構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は像加熱装置の一例としての定着装置100の断面図である。定着装置100は、筒状のフィルム(エンドレスベルト)102と、フィルム102の内面に接触するヒータ200と、フィルム102を介してヒータ200と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ(ニップ部形成部材)108と、を有する。フィルムのベース層の材質は、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属である。
【0011】
加圧ローラ108は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金109と、シリコーンゴム等の材質の弾性層110を有する。ヒータ200は耐熱樹脂製の保持部材101に保持されている。保持部材101はフィルム102の回転を案内するガイド機能も有している。加圧ローラ108は不図示のモータから動力を受けて矢印方向に回転する。加圧ローラ108が回転することによってフィルム102が従動して回転する。
【0012】
ヒータ200は、セラミック製のヒータ基板105と、基板105上に発熱抵抗体を用いて形成された発熱ラインA(第1列)及び発熱ラインB(第2列)と、発熱ラインA及びBを覆う絶縁性(本実施例ではガラス)の表面保護層107を有する。ヒータ基板105の裏面側であって、プリンタで設定されている利用可能な最小サイズ紙(本例では封筒DL:110mm幅)の通紙領域にはサーミスタ等の温度検知素子111が当接している。温度検知素子111の検知温度に応じて商用交流電源から発熱ラインへ供給する電力が制御される。
【0013】
未定着トナー画像を担持する記録材(用紙)Pは、定着ニップ部Nで挟持搬送されつつ加熱されて定着処理される。ヒータ基板105の裏面側には、ヒータが異常昇温した時に作動して発熱ラインへの給電ラインを遮断するサーモスイッチ等の安全素子112も当接している。安全素子112も温度検知素子111と同様に最小サイズ紙の通紙領域に当接している。番号104は保持部材101に不図示のバネの圧力を加えるための金属製のステーである。
【0014】
本例の定着装置は、LETTERサイズ(約216mm×279mm)に対応するA4サイズ(210mm×297mm)対応プリンタに搭載するものである。つまり、基本的にA4サイズ紙を縦送りする(長辺が搬送方向と平行になるように搬送する)プリンタに搭載する定着装置であるが、A4サイズよりも若干幅が大きなLETTERサイズ紙も縦送りできるように設計してある。
【0015】
したがって、装置が対応している定型の記録材サイズ(カタログ上の対応用紙サイズ)のうち最も大きな(幅が大きな)サイズはLETTERサイズである。
【実施例1】
【0016】
図2はヒータの構造を説明するための図面である。図2(a)がヒータの平面図、図2(b)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA10を示した拡大図、図2(c)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA11を示した拡大図である。なお、発熱ラインA中の発熱抵抗体、及び発熱ラインB中の発熱抵抗体は、いずれもPTCである。
【0017】
発熱ラインA(第1列)は、20個の発熱ブロックA1〜A20を有し、発熱ブロックA1〜A20は直列に接続されている。発熱ラインB(第2列)も、20個の発熱ブロックB1〜B20を有し、発熱ブロックB1〜B20も直列に接続されている。
【0018】
また、発熱ラインAと発熱ラインBも電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0019】
導電パターンAaは基板長手方向で11本(Aa−1〜Aa−11)に分割されている。導電パターンAbは基板長手方向で10本(Aa−1〜Aa−10)に分割されている。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−6と、導電パターンAbの一部である導電パターンAb−5の間には複数本(本例では8本)の発熱抵抗体(A10−1〜A10−8)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA10を形成している。
【0020】
また、図2(c)に示すように、導電パターンAa−6と導電パターンAb−6の間にも8本の発熱抵抗体(A11−1〜A11−8)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA11を形成している。発熱ラインAでは、発熱ブロックA10と同様の構成の発熱ブロックが合計10個(A2、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20)設けられており、発熱ブロックA11と同様の構成の発熱ブロックが合計10個(A1、A3、A5、A7、A9、A11、A13、A15、A17、A19)設けられている。
【0021】
つまり、発熱ブロックA10と同様な発熱ブロックと発熱ブロックA11と同様な発熱ブロックが交互に直列に接続されて発熱ラインAを構成している。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0022】
ところで、上述したように、導電体の抵抗値はゼロではなく、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなることが判った。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。具体的には、一つの発熱ブロック中においてブロックの両端の発熱量が最も大きく、中央部の発熱量が小さくなる。
【0023】
そこで、本実施例では、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体を設定している。
【0024】
また、導電体の抵抗値はゼロではないので導電体で生じる発熱の影響を受ける。直列に接続されている、隣り合う発熱ブロックは、図2(a)のようにヒータ短手方向に折り返して(ジグザグに)給電する必要があるが、このような構成の場合、隣り合う発熱ブロック同士の導電体の発熱量が異なる。
【0025】
例えば、発熱ブロックA10と、発熱ブロックA11では、導電パターンAb−5、Aa−6、Ab−6による発熱量が、発熱ブロックA11よりも発熱ブロックA10の方が大きくなる。具体的には図4及び図5で説明を行う。そこで本実施例は、一つの発熱ブロック内の発熱分布ムラを抑えるだけでなく、発熱ブロック同士で生じる発熱分布ムラも抑えるものである。
【0026】
図2(b)は発熱ブロックA10の詳細図を示している。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−6と、導電パターンAbの一部である導電パターンAb−5の間には複数本(本例では8本)の発熱抵抗体(A10−1〜A10−8)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA10を形成している。
【0027】
発熱ブロックA10中の各発熱抵抗体のサイズ(線長(a−n)×線幅(b−n))、レイアウト(間隔(c−n))、及び抵抗値は、図2(b)のとおりである。図2に示すように、各発熱抵抗体は基板の長手方向及び記録材搬送方向に対して斜めに傾けて(角度θ)配置されている。
【0028】
なお、発熱ブロック長さcを、図2(b)で示すように、左端にある発熱抵抗体の短辺の中心から、右端にある発熱抵抗体の短辺の中心までのヒータ長手方向の長さとして定義する。ヒータ200では、発熱ブロックA10だけでなくその他の発熱ブロックにおいても発熱抵抗体間隔c−1〜c−8は等間隔であり、各間隔は全てc/8とする。
【0029】
発熱ブロックA10は発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A10−1〜A10−8の発熱量の均一性を改善している。発熱ブロックA10は中央部にある発熱抵抗体(A10−4,A10−5)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A10−1,A10−8)ほど抵抗値が高くなるように、それぞれの発熱抵抗体の線幅b−nを設定している。
【0030】
図2(b)に示す表には、発熱ブロックA10中の8本の発熱抵抗体のサイズ及び抵抗値を示している。ここでは発熱抵抗体の長さ(a―n:a−1〜a−8)、間隔(c−n:c−1〜c−8)は一定とし、線幅(b−n:b−1〜b−8)を変更することで発熱ブロックA10の発熱分布が均一になるようにしている。発熱抵抗体の抵抗値は、長さ/線幅に比例するため、線幅と同様に発熱抵抗体長さを変更して発熱抵抗体の抵抗値を調整してもよい。また、発熱抵抗体の抵抗値をシート抵抗値が異なる材質を用いることで調整してもよい。
【0031】
また図2(b)に示すように発熱抵抗体形状を長方形にすることで、発熱抵抗体に流れる電流分布をより均一にすることができる。例えば発熱抵抗体を平行四辺形にした場合、電流は抵抗体の最短経路に多くの電流が流れるため、発熱抵抗体に流れる電流分布に偏りが生じる場合があるが、長方形にすれば一つの発熱抵抗体全体を電流が均一に流れやすくなる。ただし、非通紙部昇温を抑制する効果は、平行四辺形の発熱抵抗体を用いた場合でも得ることができ、発熱抵抗体の形状を長方形に限るものではない。
【0032】
また、図2(b)のように、一つの発熱ブロック中では、複数の発熱抵抗体夫々の最短電流経路が、基板長手方向で隣り合う発熱抵抗体の最端電流経路に対して長手方向においてオーバーラップする位置関係となるように、複数の発熱抵抗体は長手方向及び記録材搬送方向に対して斜めに傾けて配置されている。
【0033】
この位置関係は、一つの発熱ブロック中の最端の発熱抵抗体(例えば発熱ブロックA10中の最も右側にある発熱抵抗体A10−8)と、隣の発熱ブロックの最端の発熱抵抗体(例えば発熱ブロックA11中の最も左側にある発熱抵抗体A11−1)との間においても同様である。
【0034】
本例の発熱抵抗体は形状が長方形であるため、一本の発熱抵抗体全域が最端電流経路となっている。本例では、図2(b)に示すように、一本の発熱抵抗体の長方形の短辺の中心部が、隣の発熱抵抗体の長方形の短辺の中心部と基板長手方向で重なりあうように、夫々の発熱抵抗体が並べてある。
【0035】
図2(c)は発熱ブロックA11の詳細図を示している。発熱ブロックA11の見た目の構造は発熱ブロックA10とほぼ同じなので説明は割愛する。発熱ブロックA11も、発熱ブロックA10と同様、発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A11−1〜A11−8の発熱量の均一性を改善している。
【0036】
発熱ブロックA11は中央部にある発熱抵抗体(A11−4,A11−5)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A11−1,A11−8)ほど抵抗値が高くなるように、それぞれの発熱抵抗体の線幅b−nを設定している。図2(c)に示す表には、発熱ブロックA11中の8本の発熱抵抗体のサイズ及び抵抗値を示している。
【0037】
ここで発熱ブロックA10及びA11を比較すると、発熱ブロックA11の発熱抵抗体の抵抗値は、発熱ブロックA10に比べて全体的に高い値となっている。前述したように導電パターンによる発熱量は、発熱ブロックA11よりも発熱ブロックA10の方が大きくなる。そのため、発熱ブロックA11の発熱抵抗体による発熱量を、発熱ブロックA10に比べて大きくすることで、隣り合う発熱ブロック同士の発熱量が均一になるようにしている。
【0038】
図3はヒータ200のヒータ長手方向への発熱分布を均一にする効果を説明するため、発熱ブロックA10、A11の等価回路図、及びシミュレーション結果を示す。図3(a)(b)は発熱ブロックA10及びA11の発熱分布を計算するための等価回路図である。ヒータ200の導電パターンのシート抵抗値を0.005Ω/□、発熱抵抗体のシート抵抗値を0.85Ω/□、発熱抵抗体の抵抗温度係数は1000ppmとする。発熱抵抗体の抵抗値は図2に示した値とする。発熱抵抗体の抵抗値は200℃時の値とする。
【0039】
発熱ブロックの隣り合う発熱抵抗体の両端部が、線長1.4mm、線幅1mmの導電パターンで接続されていると条件を簡単化すると、発熱抵抗体を接続する導電パターンrの抵抗値は0.007Ωとなる。上記の条件で発熱ブロックA10及びA11の発熱分布のシミュレーションを行った。
【0040】
図3(c)は上記の条件における、ヒータ200の発熱分布を示すシミュレーション結果である。図3(c)に示した発熱量(縦軸)は発熱ブロック中の導電パターン及び発熱抵抗体の発熱量の合計値である。シミュレーションの結果、発熱分布の上下限値は±0.2%以下の範囲に入っており、ヒータ200はヒータ基板の長手方向に均一な発熱分布を得ることができた。
【0041】
図4(a)はヒータ200のヒータ長手方向への発熱分布を均一にする効果を説明するための比較例(ヒータ400)を示している。ヒータ200の説明と一致する箇所は説明を省略する。ヒータ400では図2及び図3で説明した、発熱抵抗体の抵抗値調整方法を用いておらず、図4(b)(c)に示すように、全ての発熱抵抗体の抵抗値を同一(2.03Ω)に設定している。
【0042】
図5はヒータ400の等価回路図及び、シミュレーション結果を示す。図5(a)(b)は発熱ブロックA10及びA11の発熱分布を計算するための等価回路図である。ヒータ400の導電パターンのシート抵抗値を0.005Ω/□、発熱抵抗体のシート抵抗値を0.85Ω/□、発熱抵抗体の抵抗温度係数は1000ppmとする。発熱抵抗体の抵抗値は図4に示した値とする。発熱抵抗体の抵抗値は200℃時の値とする。発熱ブロックの隣り合う発熱抵抗体の両端部が、線長1.4mm、線幅1mmの導電パターンで接続されていると条件を簡単化すると、発熱抵抗体を接続する導電パターンrの抵抗値は0.007Ωとなる。上記の条件で発熱ブロックA10及びA11の発熱分布のシミュレーションを行った。
【0043】
図5(c)はヒータ300の発熱分布を示すシミュレーション結果である。シミュレーション結果から、発熱分布の上下限値は+8.5%〜−6%の範囲まで広がっていることがわかる。ヒータ400では図5で示したように、ヒータ長手方向に温度ムラを生じてしまう。具体的に発熱ムラが生じる理由を説明する。
【0044】
図5(a)の発熱ブロックA10及び、図5(b)の発熱ブロックA11の等価回路図に示すように、発熱抵抗体(A10−1〜A10−8)及び、発熱抵抗体(A11−1〜A11−8)を並列接続する導電パターンの抵抗値をrとした場合、発熱ブロックA10の発熱抵抗体A10−1が存在する領域WA10−1の導電パターンの発熱量は、導電パターンAa−6の抵抗値と導電パターンAa−6に流れる電流値の2乗の積(=r×I12)と、導電パターンAb−5の抵抗値と導電パターンAa−5に流れる電流値の2乗の積(=r×(I1+I2+I3+I4+I5+I6+I7+I8)2)の合計値となる。発熱ブロックA11の発熱抵抗体A11−1が存在する領域WA11−1の導電パターンの発熱量は、導電パターンAa−6の抵抗値と導電パターンAa−6に流れる電流値の2乗の積(=r×(I2+I3+I4+I5+I6+I7+I8)2)となる。
【0045】
発熱ブロックA10では電流がヒータ長手方向の一方に流れる場合、逆方向に電流が流れる戻りの電流経路を持つため、その分発熱ブロックA11に比べて、導電パターンによる発熱量が大きくなることが分かる。発熱ブロックA10の発熱抵抗体A10−2〜A10−8が存在する領域の導電パターンの発熱量も、発熱ブロックA11の発熱抵抗体A11−2〜A11−8が存在する領域の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。
【0046】
発熱ラインAでは、発熱ブロックA2、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20の導電パターンの発熱量は、発熱ブロックA1、A3、A5、A7、A9、A11、A13、A15、A17、A19の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。発熱ラインBも同様である。このように、ヒータ400では、導電パターンの発熱量が小さくなる発熱ブロックと、導電パターンの発熱量が大きくなる発熱ブロックが交互に接続されている。このように、一つの発熱ブロック内で生じる発熱ムラや、複数の発熱ブロック間で生じる発熱ムラによって、ヒータ長手方向の発熱分布ムラも大きくなる。
【0047】
そこで本実施例では、図2に示すように、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように設定している。更に、複数の発熱抵抗体は長手方向に対して斜めに傾けて配置されており、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体の抵抗値は、隣り合う発熱ブロック間で異なっているという構成にしている。この構成により、一つの発熱ブロック中の発熱分布ムラを抑えるだけでなく、隣り合う発熱ブロック同士の発熱量の違いも抑えられる構成にしている。
【0048】
図6はヒータ200の非通紙部昇温を説明するための図である。このヒータは、基板長手方向において発熱抵抗体が設けられている領域(発熱ライン長)の中央部がプリンタの記録材搬送基準Xと合うように配置されている。本例では、A4サイズ(210mm×297mm)紙を縦送りする場合(297mmの辺が搬送方向と平行になるように搬送する場合)を例として示しており、A4サイズ紙の210mmの辺の中央が基準Xと合うように記録材を搬送するプリンタに搭載される。
【0049】
ヒータ200は、US−LETTER紙(約216mm×279mm)を縦送りする場合に対応するため、220mmの発熱ライン長を有している。ところで、上述したように本例の定着装置を搭載するプリンタは、LETTERサイズに対応しているが、基本的にA4サイズ紙対応のプリンタである。したがって、A4サイズ紙を利用する頻度が最も多いユーザー向けのプリンタである。
【0050】
しかしながら、LETTERサイズにも対応しているため、A4サイズ紙をプリントする場合、発熱ラインの両端部に5mmずつ非通紙領域が生じる。定着処理中、記録材搬送基準X付近のヒータ温度を検知する温度検知素子111の検知温度が制御目標温度を維持するようにヒータへの供給電力が制御されている。したがって非通紙部では紙に熱を奪われないため、非通紙部の温度が通紙部に比べて上昇する。
【0051】
なお、本例ではLETTERサイズを最大サイズ、A4サイズを特定サイズとしている。図7はヒータ200の非通紙部昇温を抑制する効果を説明するためのシミュレーション結果を示したものである。
図7(a)の発熱ブロックA1及びB1の構成は、図3で説明した発熱ブロックA11と一致する。
【0052】
ここで、通紙領域の温度は200℃に制御されており、非通紙領域は300℃まで昇温している状態においてシミュレーションを行った。非通紙部の発熱抵抗体温度が300℃以上に達すると、加圧ローラ108の耐熱ゴム弾性体のローラ部110、フィルム102、フィルムガイド101などの耐熱温度の限界になり定着機がダメージを受ける可能性があるため、非通紙部昇温の温度を300℃に設定している。上記の設定温度は、材料や構成によって変わるため、特にこれにこだわらない。
【0053】
また、実際には非通紙領域や通紙領域端部において連続的な温度分布が存在するが、簡単化のため、非通紙領域と通紙領域の境界を発熱ラインAの発熱抵抗体A1−4とA1−5の間(発熱ラインBの発熱抵抗体B1−4とB1−5)とし、通紙領域の温度は200℃、非通紙領域の温度は300℃とする。
【0054】
非通紙領域では温度が300℃まで上昇しているため、抵抗温度係数の影響により、発熱抵抗体A1−1〜A1−4、また発熱抵抗体B1−1〜B1−4は、200℃の状態に比べて、抵抗値がそれぞれ10%上昇している。導電パターンは抵抗値が低く、抵抗温度係数は影響が少ないため、本シミュレーションでは温度による抵抗変化について考慮していない。
【0055】
図7(b)は上記の条件における、ヒータ200の端部の発熱分布を示すシミュレーション結果である。シミュレーション結果から、ヒータ200では通紙領域に比べて、非通紙領域の発熱量が少ないことが分かる。図の縦軸には発熱抵抗体と導電パターンの発熱量を合計した、ヒータ長手方向の単位長さあたりの発熱量を示している。発熱ブロックA1及びB1において、非通紙領域の単位長さあたりの平均発熱量は、通紙領域の平均に比べて約8%低減していることが分かる。
【0056】
このように一つの発熱ブロックを跨ぐ範囲で、非通紙部昇温による温度差が発生した場合には、非通紙部の発熱抵抗体の抵抗値が上昇するため、非通紙領域の発熱抵抗体に流れる電流量を低減できる。よって、非通紙部昇温を抑制することができる。最適な発熱抵抗体の形状は、導電パターンのシート抵抗値や発熱抵抗体の最小加工寸法などの条件によって異なる。
【0057】
本実施例では、上記の条件における一例を示している。上記のシミュレーションでは非通紙部領域の温度が300℃になった場合の発熱量を説明しているが、ヒータ200では非通紙部領域の温度上昇を抑えることができる。ヒータ200では非通紙領域で温度が上昇すると、図7で示したように非通紙領域の発熱量を抑制し、非通紙部の温度上昇を抑制できる。
【0058】
このように本提案の実施例1のヒータ200を用いることにより、非通紙部昇温を抑制し、通紙領域の発熱分布の均一性を向上できる、ヒータ及びヒータを備えた像加熱装置を提供できる。
【実施例2】
【0059】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例2を説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図8は実施例2のヒータ800の構成を示す図である。このヒータ800は、二つのヒータ駆動回路により発熱ラインA(第1列)と発熱ラインB(第2列)を独立駆動できる構成であり、そのために実施例1のヒータ200に対して電極CEを発熱ラインAとBの間に追加している。発熱ラインAは電極AEと電極CEを介して電力を供給され、発熱ラインBは電極BEと電極CEを介して電力を供給される。電極CEを追加した以外の構成はヒータ200と同じである。
【0060】
このように、発熱ラインAとBを独立して制御できる構成のヒータにも本発明を適用できる。
【実施例3】
【0061】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例3を説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図9は実施例3のヒータ900の構成を示す図である。このヒータ900は、ヒータ200の発熱ラインA(第1列)のみを有する構成であり、電極AE1とAE2を有している。発熱ラインAは電極AE1と電極AE2を介して電力を供給される。実施例1のヒータ200で説明した、ヒータ長手方向の発熱分布を均一にする方法は、発熱ラインが一つの場合にも用いることができる。
【0062】
図9(b)はヒータ900の発熱ブロックA1の詳細図を示している。発熱ブロックA1は線長a−1、線幅b−1、傾きθ−1の発熱抵抗体A1−1から、線長a−8、線幅b−8、傾きθ−8の発熱抵抗体A1−8まで、間隔c−1〜c−8で8本並べ、導電パターンを介して並列接続している。図9(b)に示す表には、発熱ブロックA−1の抵抗値を調整する方法の一例を示している。
【0063】
ここでは発熱抵抗体間の間隔を可変にして、発熱ブロックの発熱分布を均一にしている。発熱抵抗体間の間隔を調整するために、発熱抵抗体の傾き、長さを調整している。ヒータ900では発熱抵抗体の長さa、線幅bの比率は一定とし、発熱ブロックに含まれる、発熱抵抗体1〜8の抵抗値は同じ値になっている。
【実施例4】
【0064】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例4を説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。図10は実施例4のヒータ1000の構成を示す図である。このヒータ1000は、実施例1で説明したヒータ200に比べて、比較的高い抵抗値を持つPTC抵抗発熱体を用いている。
【0065】
図10(a)がヒータの平面図、図10(b)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA1を示した拡大図、図10(c)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA2を示した拡大図、なお、発熱ラインA中の発熱抵抗体、及び発熱ラインB中の発熱抵抗体は、いずれもPTCである。
【0066】
発熱ラインA(第1列)は、2個の発熱ブロックA1〜A2を有し、発熱ブロックA1〜A2は直列に接続されている。発熱ラインB(第2列)も、2個の発熱ブロックB1〜B2を有し、発熱ブロックB1〜B2も直列に接続されている。また、発熱ラインAと発熱ラインBも電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0067】
導電パターンAaは基板長手方向で2本(Aa−1〜Aa−2)に分割されている。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−1と、導電パターンAbの間には複数本(本例では47本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。また、図10(c)に示すように、導電パターンAa−2と導電パターンAbの間にも47本の発熱抵抗体(A2−1〜A2−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA2を形成している。つまり、発熱ブロックA1と発熱ブロックA2が直列に接続されて発熱ラインAを構成している。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0068】
ところで、抵抗値の高い発熱抵抗体を用いた場合にも、発熱ブロック長が長くなると、上述したように、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなる。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。具体的には、一つの発熱ブロック中においてブロックの両端の発熱量が最も大きく、中央部の発熱量が小さくなる。
【0069】
そこで、本実施例4では、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体を設定している。
【0070】
図10(b)は発熱ブロックA1の詳細図を示している。図10(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−1と、導電パターンAbの間には複数本(本例では47本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。
【0071】
発熱ブロックA1中の各発熱抵抗体のサイズ(線長(a−n)×線幅(b−n))、レイアウト(間隔(c−n))、及び抵抗値は、図10(b)のとおりである。図10(b)に示すように、各発熱抵抗体は基板の長手方向及び記録材搬送方向に対して斜めに傾けて(角度θ)配置されている。なお、発熱ブロック長さcを、図10(b)で示すように、左端にある発熱抵抗体の短辺の中心から、右端にある発熱抵抗体の短辺の中心までのヒータ長手方向の長さとして定義する。ヒータ1000では、発熱ブロックA1だけでなくその他の発熱ブロックにおいても発熱抵抗体間隔c−1〜c−47は等間隔であり、各間隔は全てc/47とする。
【0072】
発熱ブロックA1は発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A1−1〜A1−47の発熱量の均一性を改善している。発熱ブロックA1は中央部にある発熱抵抗体(A1−24)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A1−1,A1−47)ほど抵抗値が高くなるように、それぞれの発熱抵抗体の線幅b−nを設定している。
【0073】
図10(b)に示す表には、発熱ブロックA1中の47本の発熱抵抗体のサイズ及び抵抗値を示している。ここでは発熱抵抗体の長さ(a―n:a−1〜a−47)、間隔(c−n:c−1〜c−47)は一定とし、線幅(b−n:b−1〜b−47)を変更することで発熱ブロックA1の発熱分布が均一になるようにしている。発熱抵抗体の抵抗値は、長さ/線幅に比例するため、線幅と同様に発熱抵抗体長さを変更して発熱抵抗体の抵抗値を調整してもよい。また、発熱抵抗体の抵抗値をシート抵抗値が異なる材質を用いることで調整してもよい。また、実施例3で説明したように、発熱抵抗体の抵抗値は一定として、間隔cを調整しても良い。
【0074】
ヒータ1100の総抵抗値は9.52Ω、発熱ブロックA1及びA2の抵抗値は2.38Ω、抵抗発熱体のシート抵抗値は、23.1Ω/□である。実施例1で説明したヒータ200では、従来の像加熱装置に用いられている抵抗発熱体を用いているが、ヒータ1000では、従来の像加熱装置の発熱体として用いられてきた抵抗発熱体に比べて体積抵抗の高い、酸化ルテニウム(RuO2)等のPTC抵抗発熱材料を用いている。
【0075】
図10(c)は発熱ブロックA2の詳細図を示している。発熱ブロックA2の見た目の構造は発熱ブロックA1とほぼ同じなので説明は割愛する。発熱ブロックA2も、発熱ブロックA1と同様、発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A2−1〜A2−47の発熱量の均一性を改善している。
【0076】
このヒータ1000は、基板長手方向において発熱抵抗体が設けられている領域(発熱ライン長)の中央部がプリンタの記録材搬送基準Xと合うように配置されている。本例では、US−LETTER紙(約216mm×279mm)を横送りする場合(216mmの辺が搬送方向と平行になるように搬送する場合)を例として示しており、LETTERサイズ紙の279mmの辺の中央が基準Xと合うように記録材を搬送するプリンタに搭載される。
【0077】
ヒータ1000は、A3サイズ(297mm×420mm)紙を縦送りする場合に対応するため、307mmの発熱ライン長を有している。ところで、上述したように本例の定着装置を搭載するプリンタは、A3サイズに対応しているが、基本的にLETTERサイズ紙対応のプリンタである。したがって、LETTERサイズ紙を利用する頻度が最も多いユーザー向けのプリンタである。なお、本例ではA3サイズを最大サイズ、LETTERサイズを特定サイズとしている。
【0078】
このように本提案の実施例4のヒータ1000を用いることにより、非通紙部昇温を抑制し、通紙領域の発熱分布の均一性を向上できる、ヒータ及びヒータを備えた像加熱装置を提供できる。
【実施例5】
【0079】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例5を説明する。実施例4と同様の構成については説明を省略する。図11は実施例5のヒータ1100の構成を示す図である。
【0080】
発熱ラインA(第1列)は、1個の発熱ブロックA1を有し、発熱ラインB(第2列)も、1個の発熱ブロックB1を有している。1103は導電パターンである。また、発熱ラインAと発熱ラインBは電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0081】
導電パターンAaと、導電パターンAbの間には複数本(本例では47本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。つまり、一つの発熱ブロックA1によって発熱ラインAを構成している。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0082】
実施例4で説明したように、本実施例5で用いるヒータ1100においても、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体を設定している。このように一つの発熱ブロックで発熱ラインを構成している、実施例5のヒータ1100でも、非通紙部昇温を抑制できる。
【符号の説明】
【0083】
100 像加熱装置
200 ヒータ
A 発熱ラインA(第一列)
B 発熱ラインB(第二列)
A1〜A20 発熱ラインAの発熱ブロック
B1〜B20 発熱ラインBの発熱ブロック
Aa、Ab 発熱ラインAの導電パターン
Ba、Bb 発熱ラインBの導電パターン
A1−1〜A20−8、B1−1〜B20−8 発熱抵抗体
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱定着装置に利用すれば好適なヒータ、及びこのヒータを搭載する像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタに搭載する定着装置として、エンドレスベルトと、エンドレスベルトの内面に接触するセラミックヒータと、エンドレスベルトを介してセラミックヒータと定着ニップ部を形成する加圧ローラと、を有する装置がある。この定着装置を搭載する画像形成装置で小サイズ紙を連続プリントすると、定着ニップ部長手方向において紙が通過しない領域の温度が徐々に上昇するという現象(非通紙部昇温)が発生する。非通紙部の温度が高くなり過ぎると、装置内の各パーツへダメージを与えたり、非通紙部昇温が生じている状態で大サイズ紙にプリントすると、小サイズ紙の非通紙部に相当する領域でトナーが高温オフセットすることもある。
【0003】
この非通紙部昇温を抑制する手法の一つとして、セラミック基板上の発熱抵抗体を正の抵抗温度特性を有する材質で形成し、発熱抵抗体に対してヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置することが考えられている。非通紙部が昇温すると非通紙部の発熱抵抗体の抵抗値が昇温し、非通紙部の発熱抵抗体に流れる電流が抑制されることにより非通紙部の発熱を抑制するという発想である。正の抵抗温度特性は、温度が上がると抵抗が上がる特性であり、以後PTC(Positive Temperature Coefficient)と称する。
【0004】
しかしながら、PTCの材質は体積抵抗が非常に低く、一本のヒータの発熱抵抗体の総抵抗を、商用電源で使用できる範囲内に設定するのは非常に難しい。そこで、セラミック基板上に形成するPTCの発熱抵抗体をヒータの長手方向で複数の発熱ブロックに分割し、各発熱ブロックではヒータの短手方向(記録紙の搬送方向)に電流が流れるように二本の導電体を基板の短手方向の両端に配置する。更に複数の発熱ブロックを電気的に直列に繋ぐ構成が特許文献1に開示されている。また、この文献には、複数本の発熱抵抗体を二本の導電体の間に電気的に並列に接続して発熱ブロックを構成することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−209493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導電体の抵抗値はゼロではなく、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなることが判った。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。このように、一つの発熱ブロックで発熱ムラが生じると、ヒータ長手方向の発熱分布ムラも大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための本発明は、基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有し、電気的に並列接続された複数本の前記発熱抵抗体を有する発熱ブロックが形成されているヒータにおいて、一つの前記発熱ブロック中で、前記長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、または、一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の間隔が、前記長手方向の中央よりも端部のほうが広い、の少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヒータ長手方向における発熱分布ムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の像加熱装置の断面図。
【図2】実施例1のヒータ構成図。
【図3】実施例1のヒータの発熱分布説明図。
【図4】比較例のヒータ構成図。
【図5】比較例のヒータの発熱分布説明図。
【図6】実施例1のヒータの用紙サイズとの関係を示した図。
【図7】実施例1のヒータの非通紙部昇温抑制効果説明図。
【図8】実施例2のヒータ構成図。
【図9】実施例3のヒータ構成図。
【図10】実施例4のヒータ構成図。
【図11】実施例5のヒータ構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は像加熱装置の一例としての定着装置100の断面図である。定着装置100は、筒状のフィルム(エンドレスベルト)102と、フィルム102の内面に接触するヒータ200と、フィルム102を介してヒータ200と共に定着ニップ部Nを形成する加圧ローラ(ニップ部形成部材)108と、を有する。フィルムのベース層の材質は、ポリイミド等の耐熱樹脂、またはステンレス等の金属である。
【0011】
加圧ローラ108は、鉄やアルミニウム等の材質の芯金109と、シリコーンゴム等の材質の弾性層110を有する。ヒータ200は耐熱樹脂製の保持部材101に保持されている。保持部材101はフィルム102の回転を案内するガイド機能も有している。加圧ローラ108は不図示のモータから動力を受けて矢印方向に回転する。加圧ローラ108が回転することによってフィルム102が従動して回転する。
【0012】
ヒータ200は、セラミック製のヒータ基板105と、基板105上に発熱抵抗体を用いて形成された発熱ラインA(第1列)及び発熱ラインB(第2列)と、発熱ラインA及びBを覆う絶縁性(本実施例ではガラス)の表面保護層107を有する。ヒータ基板105の裏面側であって、プリンタで設定されている利用可能な最小サイズ紙(本例では封筒DL:110mm幅)の通紙領域にはサーミスタ等の温度検知素子111が当接している。温度検知素子111の検知温度に応じて商用交流電源から発熱ラインへ供給する電力が制御される。
【0013】
未定着トナー画像を担持する記録材(用紙)Pは、定着ニップ部Nで挟持搬送されつつ加熱されて定着処理される。ヒータ基板105の裏面側には、ヒータが異常昇温した時に作動して発熱ラインへの給電ラインを遮断するサーモスイッチ等の安全素子112も当接している。安全素子112も温度検知素子111と同様に最小サイズ紙の通紙領域に当接している。番号104は保持部材101に不図示のバネの圧力を加えるための金属製のステーである。
【0014】
本例の定着装置は、LETTERサイズ(約216mm×279mm)に対応するA4サイズ(210mm×297mm)対応プリンタに搭載するものである。つまり、基本的にA4サイズ紙を縦送りする(長辺が搬送方向と平行になるように搬送する)プリンタに搭載する定着装置であるが、A4サイズよりも若干幅が大きなLETTERサイズ紙も縦送りできるように設計してある。
【0015】
したがって、装置が対応している定型の記録材サイズ(カタログ上の対応用紙サイズ)のうち最も大きな(幅が大きな)サイズはLETTERサイズである。
【実施例1】
【0016】
図2はヒータの構造を説明するための図面である。図2(a)がヒータの平面図、図2(b)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA10を示した拡大図、図2(c)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA11を示した拡大図である。なお、発熱ラインA中の発熱抵抗体、及び発熱ラインB中の発熱抵抗体は、いずれもPTCである。
【0017】
発熱ラインA(第1列)は、20個の発熱ブロックA1〜A20を有し、発熱ブロックA1〜A20は直列に接続されている。発熱ラインB(第2列)も、20個の発熱ブロックB1〜B20を有し、発熱ブロックB1〜B20も直列に接続されている。
【0018】
また、発熱ラインAと発熱ラインBも電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0019】
導電パターンAaは基板長手方向で11本(Aa−1〜Aa−11)に分割されている。導電パターンAbは基板長手方向で10本(Aa−1〜Aa−10)に分割されている。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−6と、導電パターンAbの一部である導電パターンAb−5の間には複数本(本例では8本)の発熱抵抗体(A10−1〜A10−8)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA10を形成している。
【0020】
また、図2(c)に示すように、導電パターンAa−6と導電パターンAb−6の間にも8本の発熱抵抗体(A11−1〜A11−8)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA11を形成している。発熱ラインAでは、発熱ブロックA10と同様の構成の発熱ブロックが合計10個(A2、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20)設けられており、発熱ブロックA11と同様の構成の発熱ブロックが合計10個(A1、A3、A5、A7、A9、A11、A13、A15、A17、A19)設けられている。
【0021】
つまり、発熱ブロックA10と同様な発熱ブロックと発熱ブロックA11と同様な発熱ブロックが交互に直列に接続されて発熱ラインAを構成している。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0022】
ところで、上述したように、導電体の抵抗値はゼロではなく、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなることが判った。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。具体的には、一つの発熱ブロック中においてブロックの両端の発熱量が最も大きく、中央部の発熱量が小さくなる。
【0023】
そこで、本実施例では、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体を設定している。
【0024】
また、導電体の抵抗値はゼロではないので導電体で生じる発熱の影響を受ける。直列に接続されている、隣り合う発熱ブロックは、図2(a)のようにヒータ短手方向に折り返して(ジグザグに)給電する必要があるが、このような構成の場合、隣り合う発熱ブロック同士の導電体の発熱量が異なる。
【0025】
例えば、発熱ブロックA10と、発熱ブロックA11では、導電パターンAb−5、Aa−6、Ab−6による発熱量が、発熱ブロックA11よりも発熱ブロックA10の方が大きくなる。具体的には図4及び図5で説明を行う。そこで本実施例は、一つの発熱ブロック内の発熱分布ムラを抑えるだけでなく、発熱ブロック同士で生じる発熱分布ムラも抑えるものである。
【0026】
図2(b)は発熱ブロックA10の詳細図を示している。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−6と、導電パターンAbの一部である導電パターンAb−5の間には複数本(本例では8本)の発熱抵抗体(A10−1〜A10−8)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA10を形成している。
【0027】
発熱ブロックA10中の各発熱抵抗体のサイズ(線長(a−n)×線幅(b−n))、レイアウト(間隔(c−n))、及び抵抗値は、図2(b)のとおりである。図2に示すように、各発熱抵抗体は基板の長手方向及び記録材搬送方向に対して斜めに傾けて(角度θ)配置されている。
【0028】
なお、発熱ブロック長さcを、図2(b)で示すように、左端にある発熱抵抗体の短辺の中心から、右端にある発熱抵抗体の短辺の中心までのヒータ長手方向の長さとして定義する。ヒータ200では、発熱ブロックA10だけでなくその他の発熱ブロックにおいても発熱抵抗体間隔c−1〜c−8は等間隔であり、各間隔は全てc/8とする。
【0029】
発熱ブロックA10は発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A10−1〜A10−8の発熱量の均一性を改善している。発熱ブロックA10は中央部にある発熱抵抗体(A10−4,A10−5)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A10−1,A10−8)ほど抵抗値が高くなるように、それぞれの発熱抵抗体の線幅b−nを設定している。
【0030】
図2(b)に示す表には、発熱ブロックA10中の8本の発熱抵抗体のサイズ及び抵抗値を示している。ここでは発熱抵抗体の長さ(a―n:a−1〜a−8)、間隔(c−n:c−1〜c−8)は一定とし、線幅(b−n:b−1〜b−8)を変更することで発熱ブロックA10の発熱分布が均一になるようにしている。発熱抵抗体の抵抗値は、長さ/線幅に比例するため、線幅と同様に発熱抵抗体長さを変更して発熱抵抗体の抵抗値を調整してもよい。また、発熱抵抗体の抵抗値をシート抵抗値が異なる材質を用いることで調整してもよい。
【0031】
また図2(b)に示すように発熱抵抗体形状を長方形にすることで、発熱抵抗体に流れる電流分布をより均一にすることができる。例えば発熱抵抗体を平行四辺形にした場合、電流は抵抗体の最短経路に多くの電流が流れるため、発熱抵抗体に流れる電流分布に偏りが生じる場合があるが、長方形にすれば一つの発熱抵抗体全体を電流が均一に流れやすくなる。ただし、非通紙部昇温を抑制する効果は、平行四辺形の発熱抵抗体を用いた場合でも得ることができ、発熱抵抗体の形状を長方形に限るものではない。
【0032】
また、図2(b)のように、一つの発熱ブロック中では、複数の発熱抵抗体夫々の最短電流経路が、基板長手方向で隣り合う発熱抵抗体の最端電流経路に対して長手方向においてオーバーラップする位置関係となるように、複数の発熱抵抗体は長手方向及び記録材搬送方向に対して斜めに傾けて配置されている。
【0033】
この位置関係は、一つの発熱ブロック中の最端の発熱抵抗体(例えば発熱ブロックA10中の最も右側にある発熱抵抗体A10−8)と、隣の発熱ブロックの最端の発熱抵抗体(例えば発熱ブロックA11中の最も左側にある発熱抵抗体A11−1)との間においても同様である。
【0034】
本例の発熱抵抗体は形状が長方形であるため、一本の発熱抵抗体全域が最端電流経路となっている。本例では、図2(b)に示すように、一本の発熱抵抗体の長方形の短辺の中心部が、隣の発熱抵抗体の長方形の短辺の中心部と基板長手方向で重なりあうように、夫々の発熱抵抗体が並べてある。
【0035】
図2(c)は発熱ブロックA11の詳細図を示している。発熱ブロックA11の見た目の構造は発熱ブロックA10とほぼ同じなので説明は割愛する。発熱ブロックA11も、発熱ブロックA10と同様、発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A11−1〜A11−8の発熱量の均一性を改善している。
【0036】
発熱ブロックA11は中央部にある発熱抵抗体(A11−4,A11−5)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A11−1,A11−8)ほど抵抗値が高くなるように、それぞれの発熱抵抗体の線幅b−nを設定している。図2(c)に示す表には、発熱ブロックA11中の8本の発熱抵抗体のサイズ及び抵抗値を示している。
【0037】
ここで発熱ブロックA10及びA11を比較すると、発熱ブロックA11の発熱抵抗体の抵抗値は、発熱ブロックA10に比べて全体的に高い値となっている。前述したように導電パターンによる発熱量は、発熱ブロックA11よりも発熱ブロックA10の方が大きくなる。そのため、発熱ブロックA11の発熱抵抗体による発熱量を、発熱ブロックA10に比べて大きくすることで、隣り合う発熱ブロック同士の発熱量が均一になるようにしている。
【0038】
図3はヒータ200のヒータ長手方向への発熱分布を均一にする効果を説明するため、発熱ブロックA10、A11の等価回路図、及びシミュレーション結果を示す。図3(a)(b)は発熱ブロックA10及びA11の発熱分布を計算するための等価回路図である。ヒータ200の導電パターンのシート抵抗値を0.005Ω/□、発熱抵抗体のシート抵抗値を0.85Ω/□、発熱抵抗体の抵抗温度係数は1000ppmとする。発熱抵抗体の抵抗値は図2に示した値とする。発熱抵抗体の抵抗値は200℃時の値とする。
【0039】
発熱ブロックの隣り合う発熱抵抗体の両端部が、線長1.4mm、線幅1mmの導電パターンで接続されていると条件を簡単化すると、発熱抵抗体を接続する導電パターンrの抵抗値は0.007Ωとなる。上記の条件で発熱ブロックA10及びA11の発熱分布のシミュレーションを行った。
【0040】
図3(c)は上記の条件における、ヒータ200の発熱分布を示すシミュレーション結果である。図3(c)に示した発熱量(縦軸)は発熱ブロック中の導電パターン及び発熱抵抗体の発熱量の合計値である。シミュレーションの結果、発熱分布の上下限値は±0.2%以下の範囲に入っており、ヒータ200はヒータ基板の長手方向に均一な発熱分布を得ることができた。
【0041】
図4(a)はヒータ200のヒータ長手方向への発熱分布を均一にする効果を説明するための比較例(ヒータ400)を示している。ヒータ200の説明と一致する箇所は説明を省略する。ヒータ400では図2及び図3で説明した、発熱抵抗体の抵抗値調整方法を用いておらず、図4(b)(c)に示すように、全ての発熱抵抗体の抵抗値を同一(2.03Ω)に設定している。
【0042】
図5はヒータ400の等価回路図及び、シミュレーション結果を示す。図5(a)(b)は発熱ブロックA10及びA11の発熱分布を計算するための等価回路図である。ヒータ400の導電パターンのシート抵抗値を0.005Ω/□、発熱抵抗体のシート抵抗値を0.85Ω/□、発熱抵抗体の抵抗温度係数は1000ppmとする。発熱抵抗体の抵抗値は図4に示した値とする。発熱抵抗体の抵抗値は200℃時の値とする。発熱ブロックの隣り合う発熱抵抗体の両端部が、線長1.4mm、線幅1mmの導電パターンで接続されていると条件を簡単化すると、発熱抵抗体を接続する導電パターンrの抵抗値は0.007Ωとなる。上記の条件で発熱ブロックA10及びA11の発熱分布のシミュレーションを行った。
【0043】
図5(c)はヒータ300の発熱分布を示すシミュレーション結果である。シミュレーション結果から、発熱分布の上下限値は+8.5%〜−6%の範囲まで広がっていることがわかる。ヒータ400では図5で示したように、ヒータ長手方向に温度ムラを生じてしまう。具体的に発熱ムラが生じる理由を説明する。
【0044】
図5(a)の発熱ブロックA10及び、図5(b)の発熱ブロックA11の等価回路図に示すように、発熱抵抗体(A10−1〜A10−8)及び、発熱抵抗体(A11−1〜A11−8)を並列接続する導電パターンの抵抗値をrとした場合、発熱ブロックA10の発熱抵抗体A10−1が存在する領域WA10−1の導電パターンの発熱量は、導電パターンAa−6の抵抗値と導電パターンAa−6に流れる電流値の2乗の積(=r×I12)と、導電パターンAb−5の抵抗値と導電パターンAa−5に流れる電流値の2乗の積(=r×(I1+I2+I3+I4+I5+I6+I7+I8)2)の合計値となる。発熱ブロックA11の発熱抵抗体A11−1が存在する領域WA11−1の導電パターンの発熱量は、導電パターンAa−6の抵抗値と導電パターンAa−6に流れる電流値の2乗の積(=r×(I2+I3+I4+I5+I6+I7+I8)2)となる。
【0045】
発熱ブロックA10では電流がヒータ長手方向の一方に流れる場合、逆方向に電流が流れる戻りの電流経路を持つため、その分発熱ブロックA11に比べて、導電パターンによる発熱量が大きくなることが分かる。発熱ブロックA10の発熱抵抗体A10−2〜A10−8が存在する領域の導電パターンの発熱量も、発熱ブロックA11の発熱抵抗体A11−2〜A11−8が存在する領域の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。
【0046】
発熱ラインAでは、発熱ブロックA2、A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20の導電パターンの発熱量は、発熱ブロックA1、A3、A5、A7、A9、A11、A13、A15、A17、A19の導電パターンの発熱量に比べて大きくなる。発熱ラインBも同様である。このように、ヒータ400では、導電パターンの発熱量が小さくなる発熱ブロックと、導電パターンの発熱量が大きくなる発熱ブロックが交互に接続されている。このように、一つの発熱ブロック内で生じる発熱ムラや、複数の発熱ブロック間で生じる発熱ムラによって、ヒータ長手方向の発熱分布ムラも大きくなる。
【0047】
そこで本実施例では、図2に示すように、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように設定している。更に、複数の発熱抵抗体は長手方向に対して斜めに傾けて配置されており、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体の抵抗値は、隣り合う発熱ブロック間で異なっているという構成にしている。この構成により、一つの発熱ブロック中の発熱分布ムラを抑えるだけでなく、隣り合う発熱ブロック同士の発熱量の違いも抑えられる構成にしている。
【0048】
図6はヒータ200の非通紙部昇温を説明するための図である。このヒータは、基板長手方向において発熱抵抗体が設けられている領域(発熱ライン長)の中央部がプリンタの記録材搬送基準Xと合うように配置されている。本例では、A4サイズ(210mm×297mm)紙を縦送りする場合(297mmの辺が搬送方向と平行になるように搬送する場合)を例として示しており、A4サイズ紙の210mmの辺の中央が基準Xと合うように記録材を搬送するプリンタに搭載される。
【0049】
ヒータ200は、US−LETTER紙(約216mm×279mm)を縦送りする場合に対応するため、220mmの発熱ライン長を有している。ところで、上述したように本例の定着装置を搭載するプリンタは、LETTERサイズに対応しているが、基本的にA4サイズ紙対応のプリンタである。したがって、A4サイズ紙を利用する頻度が最も多いユーザー向けのプリンタである。
【0050】
しかしながら、LETTERサイズにも対応しているため、A4サイズ紙をプリントする場合、発熱ラインの両端部に5mmずつ非通紙領域が生じる。定着処理中、記録材搬送基準X付近のヒータ温度を検知する温度検知素子111の検知温度が制御目標温度を維持するようにヒータへの供給電力が制御されている。したがって非通紙部では紙に熱を奪われないため、非通紙部の温度が通紙部に比べて上昇する。
【0051】
なお、本例ではLETTERサイズを最大サイズ、A4サイズを特定サイズとしている。図7はヒータ200の非通紙部昇温を抑制する効果を説明するためのシミュレーション結果を示したものである。
図7(a)の発熱ブロックA1及びB1の構成は、図3で説明した発熱ブロックA11と一致する。
【0052】
ここで、通紙領域の温度は200℃に制御されており、非通紙領域は300℃まで昇温している状態においてシミュレーションを行った。非通紙部の発熱抵抗体温度が300℃以上に達すると、加圧ローラ108の耐熱ゴム弾性体のローラ部110、フィルム102、フィルムガイド101などの耐熱温度の限界になり定着機がダメージを受ける可能性があるため、非通紙部昇温の温度を300℃に設定している。上記の設定温度は、材料や構成によって変わるため、特にこれにこだわらない。
【0053】
また、実際には非通紙領域や通紙領域端部において連続的な温度分布が存在するが、簡単化のため、非通紙領域と通紙領域の境界を発熱ラインAの発熱抵抗体A1−4とA1−5の間(発熱ラインBの発熱抵抗体B1−4とB1−5)とし、通紙領域の温度は200℃、非通紙領域の温度は300℃とする。
【0054】
非通紙領域では温度が300℃まで上昇しているため、抵抗温度係数の影響により、発熱抵抗体A1−1〜A1−4、また発熱抵抗体B1−1〜B1−4は、200℃の状態に比べて、抵抗値がそれぞれ10%上昇している。導電パターンは抵抗値が低く、抵抗温度係数は影響が少ないため、本シミュレーションでは温度による抵抗変化について考慮していない。
【0055】
図7(b)は上記の条件における、ヒータ200の端部の発熱分布を示すシミュレーション結果である。シミュレーション結果から、ヒータ200では通紙領域に比べて、非通紙領域の発熱量が少ないことが分かる。図の縦軸には発熱抵抗体と導電パターンの発熱量を合計した、ヒータ長手方向の単位長さあたりの発熱量を示している。発熱ブロックA1及びB1において、非通紙領域の単位長さあたりの平均発熱量は、通紙領域の平均に比べて約8%低減していることが分かる。
【0056】
このように一つの発熱ブロックを跨ぐ範囲で、非通紙部昇温による温度差が発生した場合には、非通紙部の発熱抵抗体の抵抗値が上昇するため、非通紙領域の発熱抵抗体に流れる電流量を低減できる。よって、非通紙部昇温を抑制することができる。最適な発熱抵抗体の形状は、導電パターンのシート抵抗値や発熱抵抗体の最小加工寸法などの条件によって異なる。
【0057】
本実施例では、上記の条件における一例を示している。上記のシミュレーションでは非通紙部領域の温度が300℃になった場合の発熱量を説明しているが、ヒータ200では非通紙部領域の温度上昇を抑えることができる。ヒータ200では非通紙領域で温度が上昇すると、図7で示したように非通紙領域の発熱量を抑制し、非通紙部の温度上昇を抑制できる。
【0058】
このように本提案の実施例1のヒータ200を用いることにより、非通紙部昇温を抑制し、通紙領域の発熱分布の均一性を向上できる、ヒータ及びヒータを備えた像加熱装置を提供できる。
【実施例2】
【0059】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例2を説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図8は実施例2のヒータ800の構成を示す図である。このヒータ800は、二つのヒータ駆動回路により発熱ラインA(第1列)と発熱ラインB(第2列)を独立駆動できる構成であり、そのために実施例1のヒータ200に対して電極CEを発熱ラインAとBの間に追加している。発熱ラインAは電極AEと電極CEを介して電力を供給され、発熱ラインBは電極BEと電極CEを介して電力を供給される。電極CEを追加した以外の構成はヒータ200と同じである。
【0060】
このように、発熱ラインAとBを独立して制御できる構成のヒータにも本発明を適用できる。
【実施例3】
【0061】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例3を説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。
図9は実施例3のヒータ900の構成を示す図である。このヒータ900は、ヒータ200の発熱ラインA(第1列)のみを有する構成であり、電極AE1とAE2を有している。発熱ラインAは電極AE1と電極AE2を介して電力を供給される。実施例1のヒータ200で説明した、ヒータ長手方向の発熱分布を均一にする方法は、発熱ラインが一つの場合にも用いることができる。
【0062】
図9(b)はヒータ900の発熱ブロックA1の詳細図を示している。発熱ブロックA1は線長a−1、線幅b−1、傾きθ−1の発熱抵抗体A1−1から、線長a−8、線幅b−8、傾きθ−8の発熱抵抗体A1−8まで、間隔c−1〜c−8で8本並べ、導電パターンを介して並列接続している。図9(b)に示す表には、発熱ブロックA−1の抵抗値を調整する方法の一例を示している。
【0063】
ここでは発熱抵抗体間の間隔を可変にして、発熱ブロックの発熱分布を均一にしている。発熱抵抗体間の間隔を調整するために、発熱抵抗体の傾き、長さを調整している。ヒータ900では発熱抵抗体の長さa、線幅bの比率は一定とし、発熱ブロックに含まれる、発熱抵抗体1〜8の抵抗値は同じ値になっている。
【実施例4】
【0064】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例4を説明する。実施例1と同様の構成については説明を省略する。図10は実施例4のヒータ1000の構成を示す図である。このヒータ1000は、実施例1で説明したヒータ200に比べて、比較的高い抵抗値を持つPTC抵抗発熱体を用いている。
【0065】
図10(a)がヒータの平面図、図10(b)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA1を示した拡大図、図10(c)が発熱ラインA中の1つの発熱ブロックA2を示した拡大図、なお、発熱ラインA中の発熱抵抗体、及び発熱ラインB中の発熱抵抗体は、いずれもPTCである。
【0066】
発熱ラインA(第1列)は、2個の発熱ブロックA1〜A2を有し、発熱ブロックA1〜A2は直列に接続されている。発熱ラインB(第2列)も、2個の発熱ブロックB1〜B2を有し、発熱ブロックB1〜B2も直列に接続されている。また、発熱ラインAと発熱ラインBも電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0067】
導電パターンAaは基板長手方向で2本(Aa−1〜Aa−2)に分割されている。図2(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−1と、導電パターンAbの間には複数本(本例では47本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。また、図10(c)に示すように、導電パターンAa−2と導電パターンAbの間にも47本の発熱抵抗体(A2−1〜A2−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA2を形成している。つまり、発熱ブロックA1と発熱ブロックA2が直列に接続されて発熱ラインAを構成している。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0068】
ところで、抵抗値の高い発熱抵抗体を用いた場合にも、発熱ブロック長が長くなると、上述したように、導電体で生じる電圧降下の影響により、一つの発熱ブロック中、中央部の発熱抵抗体に印加される電圧は両端部の発熱抵抗体に印加される電圧に比べて小さくなる。発熱抵抗体の発熱量は印加電圧の二乗に比例するため、一つの発熱ブロックの中央部と両端部で発熱量が異なってしまう。具体的には、一つの発熱ブロック中においてブロックの両端の発熱量が最も大きく、中央部の発熱量が小さくなる。
【0069】
そこで、本実施例4では、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体を設定している。
【0070】
図10(b)は発熱ブロックA1の詳細図を示している。図10(b)に示すように、導電パターンAaの一部である導電パターンAa−1と、導電パターンAbの間には複数本(本例では47本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。
【0071】
発熱ブロックA1中の各発熱抵抗体のサイズ(線長(a−n)×線幅(b−n))、レイアウト(間隔(c−n))、及び抵抗値は、図10(b)のとおりである。図10(b)に示すように、各発熱抵抗体は基板の長手方向及び記録材搬送方向に対して斜めに傾けて(角度θ)配置されている。なお、発熱ブロック長さcを、図10(b)で示すように、左端にある発熱抵抗体の短辺の中心から、右端にある発熱抵抗体の短辺の中心までのヒータ長手方向の長さとして定義する。ヒータ1000では、発熱ブロックA1だけでなくその他の発熱ブロックにおいても発熱抵抗体間隔c−1〜c−47は等間隔であり、各間隔は全てc/47とする。
【0072】
発熱ブロックA1は発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A1−1〜A1−47の発熱量の均一性を改善している。発熱ブロックA1は中央部にある発熱抵抗体(A1−24)ほど抵抗値が低く、端部にある発熱抵抗体(A1−1,A1−47)ほど抵抗値が高くなるように、それぞれの発熱抵抗体の線幅b−nを設定している。
【0073】
図10(b)に示す表には、発熱ブロックA1中の47本の発熱抵抗体のサイズ及び抵抗値を示している。ここでは発熱抵抗体の長さ(a―n:a−1〜a−47)、間隔(c−n:c−1〜c−47)は一定とし、線幅(b−n:b−1〜b−47)を変更することで発熱ブロックA1の発熱分布が均一になるようにしている。発熱抵抗体の抵抗値は、長さ/線幅に比例するため、線幅と同様に発熱抵抗体長さを変更して発熱抵抗体の抵抗値を調整してもよい。また、発熱抵抗体の抵抗値をシート抵抗値が異なる材質を用いることで調整してもよい。また、実施例3で説明したように、発熱抵抗体の抵抗値は一定として、間隔cを調整しても良い。
【0074】
ヒータ1100の総抵抗値は9.52Ω、発熱ブロックA1及びA2の抵抗値は2.38Ω、抵抗発熱体のシート抵抗値は、23.1Ω/□である。実施例1で説明したヒータ200では、従来の像加熱装置に用いられている抵抗発熱体を用いているが、ヒータ1000では、従来の像加熱装置の発熱体として用いられてきた抵抗発熱体に比べて体積抵抗の高い、酸化ルテニウム(RuO2)等のPTC抵抗発熱材料を用いている。
【0075】
図10(c)は発熱ブロックA2の詳細図を示している。発熱ブロックA2の見た目の構造は発熱ブロックA1とほぼ同じなので説明は割愛する。発熱ブロックA2も、発熱ブロックA1と同様、発熱ブロック中のヒータ長手方向の発熱分布を均一にするため、発熱抵抗体の線幅を変えることで、発熱抵抗体A2−1〜A2−47の発熱量の均一性を改善している。
【0076】
このヒータ1000は、基板長手方向において発熱抵抗体が設けられている領域(発熱ライン長)の中央部がプリンタの記録材搬送基準Xと合うように配置されている。本例では、US−LETTER紙(約216mm×279mm)を横送りする場合(216mmの辺が搬送方向と平行になるように搬送する場合)を例として示しており、LETTERサイズ紙の279mmの辺の中央が基準Xと合うように記録材を搬送するプリンタに搭載される。
【0077】
ヒータ1000は、A3サイズ(297mm×420mm)紙を縦送りする場合に対応するため、307mmの発熱ライン長を有している。ところで、上述したように本例の定着装置を搭載するプリンタは、A3サイズに対応しているが、基本的にLETTERサイズ紙対応のプリンタである。したがって、LETTERサイズ紙を利用する頻度が最も多いユーザー向けのプリンタである。なお、本例ではA3サイズを最大サイズ、LETTERサイズを特定サイズとしている。
【0078】
このように本提案の実施例4のヒータ1000を用いることにより、非通紙部昇温を抑制し、通紙領域の発熱分布の均一性を向上できる、ヒータ及びヒータを備えた像加熱装置を提供できる。
【実施例5】
【0079】
次に像加熱装置に搭載するヒータを変更した実施例5を説明する。実施例4と同様の構成については説明を省略する。図11は実施例5のヒータ1100の構成を示す図である。
【0080】
発熱ラインA(第1列)は、1個の発熱ブロックA1を有し、発熱ラインB(第2列)も、1個の発熱ブロックB1を有している。1103は導電パターンである。また、発熱ラインAと発熱ラインBは電気的に直列に接続されている。発熱ラインA及びBには、給電用コネクタを繋ぐ電極AE及びBEから電力が供給される。発熱ラインAは、基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAa(発熱ラインAの第1導電体)と、導電パターンAaとは基板の短手方向で異なる位置に基板長手方向に沿って設けられている導電パターンAb(発熱ラインAの第2導電体)を有する。
【0081】
導電パターンAaと、導電パターンAbの間には複数本(本例では47本)の発熱抵抗体(A1−1〜A1−47)が電気的に並列に接続されており、発熱ブロックA1を形成している。つまり、一つの発熱ブロックA1によって発熱ラインAを構成している。発熱ラインBの構成は発熱ラインAと同様のため説明は省略する。
【0082】
実施例4で説明したように、本実施例5で用いるヒータ1100においても、一つの発熱ブロックに含まれる複数本の発熱抵抗体は、長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高くなるように、各発熱抵抗体を設定している。このように一つの発熱ブロックで発熱ラインを構成している、実施例5のヒータ1100でも、非通紙部昇温を抑制できる。
【符号の説明】
【0083】
100 像加熱装置
200 ヒータ
A 発熱ラインA(第一列)
B 発熱ラインB(第二列)
A1〜A20 発熱ラインAの発熱ブロック
B1〜B20 発熱ラインBの発熱ブロック
Aa、Ab 発熱ラインAの導電パターン
Ba、Bb 発熱ラインBの導電パターン
A1−1〜A20−8、B1−1〜B20−8 発熱抵抗体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有し、電気的に並列接続された複数本の前記発熱抵抗体を有する発熱ブロックが形成されているヒータにおいて、
一つの前記発熱ブロック中で、前記長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、
または、一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の間隔が、前記長手方向の中央よりも端部のほうが広い、
の少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記発熱ブロックが前記長手方向に沿って複数個設けられており、複数個の前記発熱ブロックが電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記複数の発熱抵抗体は前記長手方向に対して斜めに傾けて配置されており、一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の抵抗値は、隣り合う前記発熱ブロック間で異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記ヒータは、前記発熱ブロックを有する発熱ラインを前記記録材搬送方向に複数列有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記発熱抵抗体の形状は長方形であり、隣り合う前記発熱抵抗体と前記長手方向において一部が重なり合うように配置されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
エンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面に接触するヒータと、前記エンドレスベルトを介して前記ヒータと共にニップ部を形成するニップ部形成部材と、を有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ加熱する像加熱装置において、前記ヒータが請求項1から5いずれか1項に記載のヒータであることを特徴とする像加熱装置。
【請求項1】
基板と、前記基板上に基板長手方向に沿って設けられている第1導電体と、前記基板上に前記第1導電体とは基板短手方向で異なる位置に前記長手方向に沿って設けられている第2導電体と、正の抵抗温度特性を有しており前記第1導電体と前記第2導電体間に電気的に並列接続されている複数本の発熱抵抗体と、を有し、電気的に並列接続された複数本の前記発熱抵抗体を有する発熱ブロックが形成されているヒータにおいて、
一つの前記発熱ブロック中で、前記長手方向の中央に配置されている発熱抵抗体よりも端部に配置されている発熱抵抗体のほうが抵抗値が高い、
または、一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の間隔が、前記長手方向の中央よりも端部のほうが広い、
の少なくともいずれか一方の条件を満たしていることを特徴とするヒータ。
【請求項2】
前記発熱ブロックが前記長手方向に沿って複数個設けられており、複数個の前記発熱ブロックが電気的に直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のヒータ。
【請求項3】
前記複数の発熱抵抗体は前記長手方向に対して斜めに傾けて配置されており、一つの前記発熱ブロックに含まれる前記複数本の発熱抵抗体の抵抗値は、隣り合う前記発熱ブロック間で異なっていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記ヒータは、前記発熱ブロックを有する発熱ラインを前記記録材搬送方向に複数列有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載のヒータ。
【請求項5】
前記発熱抵抗体の形状は長方形であり、隣り合う前記発熱抵抗体と前記長手方向において一部が重なり合うように配置されていることを特徴とする請求項1から4いずれか1項に記載のヒータ。
【請求項6】
エンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面に接触するヒータと、前記エンドレスベルトを介して前記ヒータと共にニップ部を形成するニップ部形成部材と、を有し、前記ニップ部で画像を担持する記録材を挟持搬送しつつ加熱する像加熱装置において、前記ヒータが請求項1から5いずれか1項に記載のヒータであることを特徴とする像加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−151003(P2011−151003A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259294(P2010−259294)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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