説明

ヒータ装置を備えるディーゼル内燃機関用の改良されたフィルタ群

内部空間がフィルタ壁によって燃料用の入口流路および出口流路がそれぞれ開口する2つの独立したチャンバに分割されている外側筐体と、筐体の内部に取り付けられ、保護用ボディの内部に収容されていると共に制御回路に接続されている少なくとも1つのヒータと、少なくとも1つの温度センサとを備え、少なくとも1つの温度センサが、保護用ボディの外部に設置されていると共に、センサによって記録された温度に基づいてヒータ装置を管理する制御回路に接続されているディーゼル内燃機関用の改良されたフィルタ群を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ装置を備えるディーゼル内燃機関用のフィルタ群、特に、低温で固化する燃料中のパラフィンを溶融させるためのヒータ装置を備えるフィルタ群に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、ディーゼルサイクルエンジンは、度々、低温での始動の問題を有している。この問題は、ディーゼル燃料中のパラフィンの固化によるものである。実際には、固化したパラフィンはフィルタ壁の表面に固着して、フィルタ壁を通した燃料のろ過を妨げる。
【0003】
これは、ディーゼル燃料が、パラフィンの形成が開始される温度よりも低い温度に達した場合に生じる。
【0004】
この問題を解決するために、燃料温度がパラフィン化温度に近いかそれより低い場合に作動してディーゼル燃料を加熱し、固体パラフィンがフィルタ壁を閉塞させることなく通過してろ過されるように固体パラフィンを溶融させる抵抗ヒータ装置をフィルタ群に設けることが一般に行われている。この種の解決法が、本出願人による特許文献1に記載され示されている。
【0005】
上記に引用した文献には、燃料用の入口流路および出口流路が開口するフィルタ壁によって内部空間が2つの独立したチャンバに内部空間分割された外側筐体を備えるフィルタ群が例示され、記載されている。筐体の内部には抵抗ヒータが収容されており、このヒータは指令制御回路に接続されている。特に、このヒータ装置は、チャンバ内に延びる管状の保護用ボディ中に収容されている。チャンバからは入口燃料流路が延び、また、チャンバには燃料の流路のための複数の開口が設けられている。温度センサは、ヒータ装置も収容している保護用ボディの内部に収容されている。この温度センサは、フィルタ中に含まれている燃料の温度を検知するためのものである。センサによって発信される信号を用いて、記録された温度がパラフィンが形成される温度に近いかそれよりも低い場合にヒータ装置が作動される。ヒータは、センサにより記録された温度が所定のレベルに達した際に停止される。
【0006】
保護用ボディ内のヒータ装置近傍に配置された温度センサの収容部は、センサによって記録される燃料の温度がヒータ装置の温度によって影響されてフィルタ中に含まれる燃料の平均温度よりも高くなってしまう、という欠点を有する。従って、筐体中のパラフィンの全量が溶解する前にヒータ装置が停止されてしまう場合がある。これにより、ある特定の状況においては、上記の公知のエンジン始動問題が生じてしまう。
【0007】
結果として、信頼性の高いヒータが取り付けられたディーゼル燃料フィルタに対する強い要求が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1750824号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、この要求を満たすことが可能であると同時に、従来技術に関連している問題を未然に防ぐ構造的特徴および機能的特徴を示すフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1に記載のフィルタによって達成される。特に、本発明は、フィルタ壁によって、内部空間が燃料用の入口流路および出口流路がそれぞれ開口する2つの独立したチャンバにフィルタ壁によって分割されている外側筐体を備えるディーゼル内燃機関用のフィルタ群を提供する。
【0011】
少なくとも1つのヒータが、保護用ボディの内部に収容されている筐体内に設定され、少なくとも1つの温度センサが、保護用ボディの外部に設置されている。ヒータおよび温度センサの両方は、センサによって記録された温度に基づいてヒータ装置の機能を管理する制御回路に接続されている。
【0012】
ヒータが内部に収容されている保護用ボディは断熱性合成材料から形成されている。実施形態の好ましい形態において、この合成材料は電気絶縁性でもある。
本発明によれば、温度センサは、もう1つの形態として、フィルタ群筐体またはヒータ装置の保護用ボディに直接接続されることが可能である。
【0013】
第2の事例において、温度センサは、保護用ボディの外壁に接続され、好ましくは、保護用ボディの壁にチャネルとして構成されることが可能な適切な収容部中に設置される。
【0014】
従属請求項は、本発明に係るフィルタの実施形態のうち、特に有利で好ましい実施形態を示している。
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点を、添付の表と図を用い、非限定的な例を提供することにより、以下の詳細な説明により明らかにする。ここで、図1は、本発明に係るフィルタの軸断面図を示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ビーカ形状を有し、燃料用の入口流路4および出口流路5が取り付けられた蓋3によって上方が閉じられている外側筐体2を備えるフィルタ群1を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
環状のフィルタ壁7は、筐体1内に収容されていると共に下部ベース8によって下方で支持されている。その上部において、フィルタ壁7は蓋3から延びる突出部6に挿入されている。
【0018】
フィルタ壁7は、筐体2の内部空間を実質的に2つの独立したチャンバ9および10に区分けしており、その第1のチャンバ9はろ過されるべき燃料の入口流路4と連通し、第2のチャンバ10はろ過された燃料の出口流路5に連通している。
【0019】
筐体2は、装置12が収納されている孔部20を下部に有している。この装置12の内部には、温度記録用センサ13と燃料用の2つのPTC型ヒータ14とが収容されている。これらの両方が、指令制御回路に接続されていると共に電子基板15によって支持されている。
【0020】
装置12は、保護用ボディ16および下部ボックス21を備えている。これらの機能を本明細書中において以下に、より十分に説明する。
【0021】
ボディ16は、筐体2およびフィルタ壁7中に、シール17、18および19によって密閉されて挿入されるシャフト形状であり、フィルタ壁7と共にチャンバ9および10を画定するように突出部6近傍まで延在している。
【0022】
ボディ16は内部が中空であり、最上部に第1の開口22と、外表面にさらに2つの開口23とを備えている。図1においては、2つの開口23のうち一方のみが視認可能である。これらは、ボディ16内部への燃料の流入を可能とする。
【0023】
2つのPTCヒータ14は、ボディ16の内部に取り付けられている。ヒータ14の各々は、ボディ16内に延在する支持壁25にボルト24で固定されている。支持壁25は適切な導電性材料から形成されており、PTCヒータ14用の電気接点としても機能する。
【0024】
ボディ16の外表面には、温度センサ13の収容部となる縦チャネル26が設けられている。
【0025】
ボックス21はボディ16の最下部に設けられている。このボックス21は筐体2の外部に保持され、ボックス21の内部には電子基板15が収容されている。電子基板は、該電子基板15を車両の制御パネルに接続するためのコネクタ27に電気的に接続されている。
【0026】
既述のとおり、電子基板15は、センサ13によって記録される温度値に基づいてPTCヒータを作動させる指令制御回路を備えている。
【0027】
断熱性かつ電気絶縁性の合成材料からなるボディ16の外側の温度センサ13の収容部は、センサ13の温度の記録が2つのヒータ14の温度によって影響されることがなく、その結果フィルタに進入する燃料の平均温度がより高い信頼性をもって記録されるため、特に有利である。従って、本発明に係る装置は、従来技術に係る装置の問題を未然に防ぐ。
【0028】
最後に、他の実施形態において、装置12は、前述したものとは異なる数および/または種類のヒータが組み込まれることが可能であることに注目されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間がフィルタ壁によって燃料用の入口流路および出口流路がそれぞれ開口する2つの独立したチャンバに分割されている外側筐体と、
該筐体の内部に取り付けられ、保護用ボディの内部に収容されていると共に制御回路に接続されている少なくとも1つのヒータと、
少なくとも1つの温度センサとを備え、
該少なくとも1つの温度センサが、前記保護用ボディの外部に設置されていると共に、前記センサによって記録された温度に基づいて前記ヒータ装置を管理する前記制御回路に接続されていることを特徴とするディーゼル内燃機関用の改良されたフィルタ群。
【請求項2】
前記筐体が収容されている前記保護用ボディが、前記筐体内に着脱可能に挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記筐体は、前記保護用ボディの一部分が収容される孔部を有していることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのヒータおよび前記少なくとも1つの温度記録用センサに接続された前記回路が、前記筐体の外部に設置されたボックスの内部に収容されていると共に、その一端で前記保護用ボディに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのヒータが、PTC型ヒータであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記センサが、NTCセンサを備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記センサが、容器中に収容されている流体と接触する位置、および、前記少なくとも1つのヒータの温度によって影響されない位置において、前記筐体の内部に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのセンサが、前記筐体の壁に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのセンサが、前記保護用ボディの外表面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記温度センサが、前記保護用ボディの外表面のチャネルに収容されていることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記保護用ボディが、断熱性合成材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記保護用ボディが、断熱性かつ電気絶縁性の合成材料から形成されていることを特徴とする請求項1または請求項9に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532280(P2012−532280A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518947(P2012−518947)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059558
【国際公開番号】WO2011/003862
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(511259142)
【Fターム(参考)】