ヒートシンクの装着荷重調整機構並びにこれを適用したヒートシンク
【課題】 ヒートシンクを回路基板に装着する際、同じスプリング部材を用いながらも、回路基板上に固定する装着荷重が種々調整できるようにした新規な調整機構とヒートシンクを提供する。
【解決手段】 本発明の装着荷重調整機構7は、ヒートシンク本体2またはスプリング部材4または、これらの両部材間に、装着状態におけるスプリング部材4の変位量を調節する変位量調整体71を設け、これによりヒートシンク本体2を回路基板Bに固定する際の装着荷重を調整するようにしたことを特徴とする。また変位量調整体71は、放熱フィン22の形成を阻害しない位置及び形状に形成される。また変位量調整体71は、ヒートシンク本体2のベース部21と一体で形成され、ヒートシンク本体形成後の二次加工において、要求される装着荷重に応じて所望の長さにカットされることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の装着荷重調整機構7は、ヒートシンク本体2またはスプリング部材4または、これらの両部材間に、装着状態におけるスプリング部材4の変位量を調節する変位量調整体71を設け、これによりヒートシンク本体2を回路基板Bに固定する際の装着荷重を調整するようにしたことを特徴とする。また変位量調整体71は、放熱フィン22の形成を阻害しない位置及び形状に形成される。また変位量調整体71は、ヒートシンク本体2のベース部21と一体で形成され、ヒートシンク本体形成後の二次加工において、要求される装着荷重に応じて所望の長さにカットされることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプロセッサやインバータ等の電子部品(半導体回路素子)から発する熱を効率的に放出するためのヒートシンクに関するものであり、特にこのものを回路基板上に装着する際、同じスプリング部材を用いながらも、回路基板上に固定する装着荷重が種々調整できるようにした新規な調整機構と、これを適用したヒートシンクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装(搭載)される半導体回路素子は、電子機器の作動に伴い熱を発するため、この熱を効率的に放出すべく、回路基板には半導体回路素子に圧着(密着)するようにヒートシンク(熱交換部品)が装着される。そして半導体回路素子の高性能化に伴い、回路基板はますます高密度化し、ヒートシンクについても、高性能なものを狭い取付面積で迅速に且つ正確に固定できる必要性が高まってきている。
また、一般にヒートシンクと半導体回路素子との間には、熱交換効率を高めるべく熱伝導性シートが設けられるものであり、熱伝導性シートの効率は、そのシートに加わる圧力の大きさによって異なり、一般に圧力が高いほど、高い性能を発揮する。しかし、単にヒートシンクを回路基板上に強固に装着すれば良いのではなく、半導体回路素子の中には最大許容荷重(装着荷重)が定められているものがあり、ヒートシンク1の装着荷重を適正な範囲に収めることが要求されている。
【0003】
ところでヒートシンクを回路基板上に固定する装着方法の一つとして、ワイヤスプリングによる装着方法が広く採用されている。この方法は、アンカーと呼ばれる、ワイヤスプリングの両端部を引っ掛けるための略U字状の部品を予め回路基板に設置しておき、ワイヤスプリングでヒートシンクを押さえ込んだ後、スプリングの両端部分を撓めながらアンカーのU字状部分に引っ掛けて(嵌め入れて)、ヒートシンクを回路基板側に押圧固定するものである。
このようなワイヤスプリングによる装着方法では、装着荷重及びその圧力は、回路基板の厚さ、半導体回路素子の厚さ、半導体回路素子とヒートシンクとの接触面積、ヒートシンクのベース部の厚さ等によって種々変化してしまう。そのため、種々異なる厚さや大きさを持つ上記部材に対して、要求される荷重を満たすには、その都度、ワイヤスプリングを異なる形状に設計する必要があった。
【0004】
もちろん、同じワイヤスプリングを使用しながら、回路基板等の異なる厚さに対応しようという発想もあり、既に案出されている(例えば特許文献1参照)。すなわち、この特許文献1では、ワイヤスプリングの両端に、バネ性を有する弾性係止部を形成し、これを回路基板の孔に差し込んでヒートシンクを回路基板に装着するものであり、弾性係止部の間に、長さ調整可能な伸縮部を設け、この長さ調整によって、ヒートシンクサイズや基板厚さの変化等に対応しようというものである。
しかしながら、ワイヤスプリング自体を伸縮させる上記手法では、本来持続すべき弾性が維持できないことが懸念され、また作動時の振動等によって徐々に伸縮部が広がって(伸長して)しまうことも懸念された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−229003公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、ワイヤスプリング等のスプリング部材を用いて、ヒートシンクを回路基板上に装着する際、より簡易な構造、具体的にはスプリング部材の取り付け高さを変更する変位量調整体を設けることで、回路基板の厚さ、半導体回路素子の厚さ、ヒートシンクのベース部の厚さ等の違いを調整し、目標の装着荷重に収めるようにした新規な調整機構と、これを適用したヒートシンクの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するにあたり、ヒートシンク本体またはスプリング部材または、これらの両部材間に、装着状態におけるスプリング部材の変位量を調節する変位量調整体を設け、これによりヒートシンク本体を回路基板に固定する際の装着荷重を調整するようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1記載の要件に加え、前記変位量調整体は、放熱フィンの形成を阻害しない位置及び形状に形成されることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記変位量調整体は、ヒートシンク本体のベース部と一体で形成され、ヒートシンク本体形成後の二次加工において、要求される装着荷重に応じて所望の長さにカットされて成ることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記変位量調整体は、ヒートシンク本体やスプリング部材とは別の部材として形成されることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記変位量調整体は、スプリング部材が当接する当接先端部に、スプリング部材を受け入れ易くするガイドが形成されることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記スプリング部材とヒートシンク本体との間には、キャッチ片が可動状態に設けられ、またこのキャッチ片には常にスプリング部材の付勢が作用するものであり、前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する以前の段階で、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けたサブアッシー状態を得るにあたっては、前記キャッチ片の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体の一部にキャッチ片を係止させて、サブアッシー状態を得るようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載のヒートシンクは、回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するようにしたヒートシンクにおいて、前記ヒートシンク本体には、請求項1、2、3、4、5または6記載の装着荷重調整機構を適用して回路基板上に装着するようにしたことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち、請求項1または7記載の発明によれば、例えばヒートシンク本体に、装着状態におけるスプリング部材の変位量を調節する変位量調整体を設けるため、同じスプリング部材を共通的に適用しても、変位量調整体によって、ヒートシンクを回路基板上に固定する際の装着荷重を適切な範囲に調整することができる。すなわち、回路基板の厚さ、半導体回路素子の厚さ、ヒートシンク本体のベース部の厚さ等が種々異なっても、同じスプリング部材を用いて、ある範囲の装着荷重に収めることができる。
【0015】
また請求項2または7記載の発明によれば、既存の放熱フィンを妨げることなく、変位量調整体を形成するため、放熱効果を維持することができる。また、従来のヒートシンク本体形成工程(製作過程)を、ほぼ変更することなく変位量調整体を形成することができ、比較的容易に形成することができる。
【0016】
また請求項3または7記載の発明によれば、変位量調整体がヒートシンク本体と一体で形成されるため、変位量調整体がヒートシンク本体から分離することがない。このため例えばヒートシンクを、装着工程に供給する際、変位量調整体がヒートシンク本体から脱落してしまうことがなく、このような紛失の懸念を払拭することができる。
また、変位量調整体が、放熱フィンの形成を阻害しないように形成される場合、一般に変位量調整体は小さく形成されるため、二次加工でのカットも容易に行えるものである。
【0017】
また請求項4または7記載の発明によれば、変位量調整体がヒートシンク本体やスプリング部材とは別個に形成されるため、変位量調整体を取り付けるにあたり、ヒートシンクに設置(嵌め込んだり)したり、スプリング部材に嵌めたりする等、種々のヒートシンクに応じた色々な取付仕様が採り得る。
【0018】
また請求項5または7記載の発明によれば、変位量調整体の当接先端部(天端部)に、スプリング部材の受け入れ性を向上させるガイドが形成されるため、スプリング部材を変位量調整体に当接させた(載置した)際の安定性が向上する。また、装着時にはスプリング部材を撓める等の操作を行うが、このような操作を行ってもスプリング部材が変位量調整体から離反し難く(外れ難く)、安定した装着作業が行える。
更に、変位量調整体がヒートシンク本体やスプリング部材とは別個に形成されていれば、変位量調整体の先端部に、このようなガイドが形成し易いものである。
【0019】
また請求項6または7記載の発明によれば、ヒートシンクを回路基板に装着する前に、可動状態のキャッチ片によってスプリング部材(変位量調整体も)をヒートシンク本体に組み付けておくため、ヒートシンクを、装着工程に供給する際、変位量調整体はもちろんスプリング部材もヒートシンク本体から脱落してしまうことがなく、各種部材の紛失の懸念を払拭することができる。
また、サブアッシー状態を装着工程の初期位置に設定しておけば、ヒートシンクを装着工程に供給した後、即、装着作業に移行でき、装着作業の作業性向上も達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の装着荷重調整機構を具えたヒートシンクの一実施例を示す斜視図(a)と断面図(b)、並びに装着荷重調整機構である変位量調整体の形状を異ならせたヒートシンクを示す斜視図(c)である。
【図2】変位量調整体の当接先端部(天端部)に、ワイヤスプリングを受け入れ易くするガイドを形成した様子を示す説明図である。
【図3】ヒートシンク本体やワイヤスプリングとは別に形成した変位量調整体(スペーサ)を、ヒートシンク本体のベース部に取り付ける様子を示す説明図である。
【図4】変位量調整体として止めネジを適用したヒートシンクを示す説明図である。
【図5】ヒートシンク本体やワイヤスプリングとは別に形成した変位量調整体(C型カラー)を、ワイヤスプリングに取り付けた様子を示す説明図である。
【図6】可動状態に設けたキャッチ片によって装着以前にワイヤスプリングのサブアッシー化を図るようにしたヒートシンクを示す分解斜視図である。
【図7】同上図6のヒートシンクであって、サブアッシー状態を部分的に示す斜視図(a)と、装着状態を部分的に示す斜視図(b)である。
【図8】同上サブアッシー化したヒートシンクを回路基板に装着するにあたり、このヒートシンクを位置決めする様子を示す説明図(a)と、位置決め後の様子を示す説明図(b)である。
【図9】図6のヒートシンクについて、回路基板上で位置決めした状態(装着開始状態)から装着完了状態までを段階的に示す説明図である。
【図10】キャッチ片をスプリング部材の端部に固定したワイヤスプリングを示す斜視図(a)、並びに装着前のヒートシンクの様子を骨格的に示す平面図(b)、並びに装着後のヒートシンクの様子を骨格的に示す平面図(c)である。
【図11】スプリング部材としてコイルスプリングを用いた実施例を示す断面図(a)、並びに斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、本明細書では、ヒートシンク1を回路基板B上に固定する(取り付ける)ことを「装着」と称し、取り付けた状態を「装着状態」と称するものである。
また、本実施例では、略U字状を成すアンカー5を予め回路基板Bに突出状態に設置しておくものであり、このアンカー5にワイヤスプリング41等のスプリング部材4の両端部を引っ掛けて、ヒートシンク1を固定する装着方法を基本に説明する。すなわち、本実施例では、ワイヤスプリング41でヒートシンク本体2を押さえ込んだ後、スプリングの両端部分を撓めながらアンカー5のU字状内部に引っ掛けて(嵌め入れて)、ヒートシンク1を回路基板B側に押圧固定するものである。
また、説明にあたっては、本発明のヒートシンク1が装着される回路基板Bについて説明し、その後、ヒートシンク1の基本構造について説明した後、次いで本発明の装着荷重調整機構7について説明する。
【0022】
回路基板Bは、例えばGPUユニット、チップセットユニット、CPUユニット等の半導体回路素子Cが実装(搭載)されるものであり、この半導体回路素子Cが、電子機器の動作に伴い発熱するため、ヒートシンク1を半導体回路素子Cに圧着状態に装着することにより、半導体回路素子Cからの能率的な放熱を図っている。ここで、ヒートシンク1は、回路基板Bに対して取り外しできるように装着されるものである。
【0023】
そして、本発明の装着荷重調整機構7は、ワイヤスプリング41等のスプリング部材4を用いて、ヒートシンク1を回路基板B上に装着することを前提とし、装着時にスプリング部材4の変位量を調節する変位量調整体71を設けることが大きな特徴である。すなわち、この変位量調整体71により、例えばスプリング部材4の設置高(ベース部21〜ワイヤスプリング41載置面までの距離)が変更でき、装着時のスプリング部材4の変位量を種々異ならせることができるものである。このため、回路基板Bの厚さ、半導体回路素子Cの厚さ、ヒートシンク本体2のベース部21の厚さ等が各々異なっても多種多様のスプリング部材4を用いることなく、同じスプリング部材4を用いながらも目標の装着荷重に収めることができるものである。
【0024】
次にヒートシンク1の基本構造について説明する。ヒートシンク1は、一例として図1に示すように、主に放熱作用を担うヒートシンク本体2と、ヒートシンク本体2を回路基板B上に装着するための装着手段3とを具えて成るものである。
ヒートシンク本体2は、アルミニウム等の熱伝導性・放熱性に優れた素材によって形成され、板状のベース部21から放熱フィン22が多数突出形成された構造を基本とする。
またベース部21において、放熱フィン22が形成されていない方の面(裏側)は、半導体回路素子Cと圧着(密着)される接触面となり、ここには熱伝導を促進させる熱伝導性シートが設けられるのが一般的である。
【0025】
また、ヒートシンク1を、回路基板B上の規定位置に確実にセットするには、位置決め23を具えることが好ましく、これには例えば図1(b)に示すように、回路基板Bに、予め位置決め用のピン23aをヒートシンク1の内側(ヒートシンク1が装着される範囲の内側)に設けておき、またヒートシンク1の裏側に、このピン23aに対応した位置決め用の穴23bを未貫通状態に形成しておくものである。なお、位置決め23をヒートシンク1の内側に形成したのは、回路基板B面を少しでも有効に利用するためである。
【0026】
もちろん、位置決め23をヒートシンク1の外側(ヒートシンク1が装着される範囲の外側)に設けることは可能であり、その場合には、ベース部21よりも外側に張り出す張出部を、ヒートシンク1に形成しておき、ここで回路基板Bとの位置決めを図るのが一般的と考えられる。
因みに、装着時には、通常、ワイヤスプリング41をこじってしまうものであるが、その場合でも位置決め23があることで、ヒートシンク1の位置はずれないものである。また、このことは熱伝導性シートの損傷防止にも寄与するものである。
【0027】
次に装着手段3について説明する。装着手段3は、上述したように、ヒートシンク本体2を回路基板B上に装着(固定)するための手段であり、スプリング部材4とアンカー5とを具えて成るものである。もちろん、ここでは上述したように装着の際には、まず位置決め23によってヒートシンク本体2を規定の位置からずれないように保持した上で装着するため、このような位置決め23も装着手段3に含まれるものである。以下、スプリング部材4とアンカー5とについて説明する。
【0028】
スプリング部材4は、ヒートシンク1を回路基板B側に押し付けて装着を図るものであり、ここでは一例として図1に示すように、平面から視てほぼZ形状を成すワイヤスプリング41が適用される。すなわち、このワイヤスプリング41は、いわゆるトーションバータイプのバネであり、真ん中部分の中央トーション部42の両側にアーム部43を具えて成り、両方のアーム部43が捻じられた際の反発力を利用して、ヒートシンク1を回路基板Bに押し付け装着を図るものである。言い換えればワイヤスプリング41は、アンカー5を常に上向き(放熱フィン22の突出方向)に付勢するように作用するものである。
【0029】
ここで、本実施例では、中央トーション部42がほぼ真っ直ぐな直棒状に形成され、ここで全体的にヒートシンク1(ベース部21)を押さえる(中央トーション部42がベース部21に全体的に接触する)ように形成されるが、中央トーション部42は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば略V字状に形成され、中央トーション部42の真ん中のほぼ一点でベース部21を押さえることも可能である(いわゆる点接触状態)。
また両アーム部43の先端側はフック状に形成され(先端フック部43aとする)、この先端フック部43aが、アンカー5に引っ掛けられることで、ヒートシンク本体2が回路基板B側に押し付けられ、装着状態となるものである。
【0030】
次に、アンカー5について説明する。アンカー5は、上述したように回路基板Bにおいて、ヒートシンク1の装着面側に突出状態に設置されるものであり、ワイヤスプリング4の先端フック部43aを、アンカー5に掛止させることで、ヒートシンク1の装着を図るものである。そのため、アンカー5は、一例として図1に示すように、回路基板Bに設置された(嵌め込んだ)アンカー5の抜け止めを図る抜け止め部52と、先端フック部43aが引っ掛けられる掛止部5aとを具えて成るものである。
【0031】
以下、本発明の装着荷重調整機構7について更に詳細に説明する。装着荷重調整機構7は、一例として図1に示すように、変位量調整体71がヒートシンク本体2と一体で形成されて成るものである。すなわち、スプリング部材4によってベース部21が押圧される箇所、具体的にはヒートシンク本体2(ベース部21)のほぼ中央部に、調整用支柱71A(変位量調整体71の原形始発状態)を形成しておき(例えば放熱フィン22の形成時に併せて形成)、これをヒートシンク本体2の形成後に(いわゆる二次加工で)適宜の長さにカットし、ワイヤスプリング41の適切な設置高(取り付け高さ)を獲得するものである。換言すれば、変位量調整体71は、ベース部21からワイヤスプリング41までの距離を嵩上げする作用を担い、これにより装着力を適正な範囲内に調整するものである。もちろん、変位量調整体71は、放熱フィン22の形成を阻害しない位置及び形状に形成されることが好ましく、ここでは小円柱状に形成されている。
【0032】
因みに、変位量調整体71の高さ(設置高)を大きくするほど、装着の際にアーム部43を多く撓ませることになり、より大きな装着力となる。また、使用するワイヤスプリング41、回路基板Bの厚さ、ベース部21の厚さ等に対して、変位量調整体71の高さ(厚み)と得られる装着力との相関データを予め蓄積しておくことが好ましく、更にはこのようなデータから二次加工でのカットまでを自動で行い得る加工形態がより一層好ましいものである。
また、このような形態(原形始発状態の調整用支柱71Aを適宜の長さにカットして変位量調整体71を得る形態)は、カットによって無段階的に所望の装着力が得られるため、要求される装着力にきめ細かく対応できるものである。
【0033】
ここで図1(a)・(b)に示すヒートシンク1は、ワイヤスプリング41が変位量調整体71と点接触状態に当接するものであるが、変位量調整体71は、必ずしもワイヤスプリング41をピンポイント状態で受けるように形成される必要はなく、例えば同図1(c)に示すように、細長状もしくは幅広状の土台として形成することも可能であり、これはワイヤスプリング41に接触する当接面を線接触状態に形成するという思想である。この場合、例えば装着状態におけるワイヤスプリング41を、細長状もしくは幅広状の変位量調整体71によって安定的に載置できるものである。
【0034】
また、変位量調整体71の当接先端部(天端部)は、ワイヤスプリング41を受ける当接面であるため、例えば図2(a)・(b)に示すように、当接先端部をV字状(Vブロック状)や半円状に欠き込んで(ここを欠き込み72とする)、ワイヤスプリング41の受け入れ性ないしは載置性を向上させることが可能である。もちろん、このような欠き込み72を設けることで、ワイヤスプリング41の操作性も向上し得るものである。すなわち、装着時には、ワイヤスプリング41の先端フック部43aをアンカー5に引っ掛けるが、このような操作にあってはワイヤスプリング41をこじってしまうことが多く、その場合でも欠き込み72があることで、ワイヤスプリング41の姿勢が安定し(外れ防止となり)、操作がし易くなり、ひいては装着作業の向上が図れるものである。
因みに、変位量調整体71にV字状の欠き込み72を施す場合には、通常のVブロックのように、V字の鋭角部分に逃げを形成すれば、ここに掛かる応力が分散され、変位量調整体71の破損(損傷)を防止することができるものである。
【0035】
また、上述した変位量調整体71は、いずれもヒートシンク本体2(ベース部21)と一体的に形成されるものであるが、変位量調整体71は、必ずしもベース部21と一体に形成される必要はなく、例えば図3に示すように、ヒートシンク本体2とは別個の部材で形成することも可能である(もちろんスプリング部材4とも別体)。この場合、変位量調整体71は、あたかもワイヤスプリング41を嵩上げするスペーサの作用を担うものとなる。また、変位量調整体71をベース部21やスプリング部材4と別に形成する場合には、作用長(設置高)となる嵩上げ高さが異なる変位量調整体71(スペーサ)を、予め複数種形成しておき、要求される装着力に応じた変位量調整体71を選択して適用するのが現実的な方法と考えられる。
また、この場合、ベース部21に変位量調整体71を嵌め込み易くする、案内穴(未貫通)やガイドリブ等のガイド73を形成しておくと、変位量調整体71の嵌め込みが円滑且つ確実に行え、ワイヤスプリング41の載置(受け)も安定するものである。
また、ヒートシンク本体2とは別に変位量調整体71を形成する本実施例の場合、製造工程も別になるため、特に変位量調整体71の天端部に上記受け入れ用の欠き込み72が形成し易いと考えられる。
【0036】
また、変位量調整体71を、ヒートシンク本体2とは別個に形成する場合には、例えば図4に示すように、変位量調整体71として止めネジ(いわゆるイモネジ)を適用することも考えられる。すなわち、上記図1〜3に示した実施例では、一旦、変位量調整体71を設定した後は、調整体による設置高を可変とすることはできないが、変位量調整体71が止めネジであれば、これ自体のねじ込みによって高さ調整を行うことが可能となる。
なお、上記図4では、変位量調整体71(止めネジ)として、六角穴付き止めネジを図示したが、すり割り付き止めネジを適用することも可能であり、あるいは他の小ネジ類等を適用しても構わず、同様の効果が得られるものである。
【0037】
また、上記図3・4では、ヒートシンク本体2とは別に形成した変位量調整体71を、主にベース部21に嵌め込む(ねじ込む)等して取り付けるものであったが、別体の変位量調整体71は、例えば図5に示すように、ワイヤスプリング41(中央トーション部42)に取り付けることも可能である。すなわち、図5に示す実施例では、変位量調整体71をC型カラー状に形成し、これをワイヤスプリング41(中央トーション部42)に嵌め込んで、ワイヤスプリング41の設置高を調整するものである。
もちろん、ここでも予め肉厚の異なる変位量調整体71(C型カラー)を予め複数種用意しておき、要求される装着力に応じて、適した肉厚の変位量調整体71(C型カラー)を選択するのが現実的と考えられる。因みに、肉厚の厚い方が、設置高(嵩上げ高さ)としては高くなるため、大きな装着力となるものである。
【0038】
また、ヒートシンク1を回路基板B上の狭い場所でも簡易な操作で迅速に装着したい場合には、ヒートシンク1を装着する以前の段階で、予めワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けておき、装着工程にヒートシンク1を供給する際、ワイヤスプリング41がヒートシンク本体2から分離・脱落させないようにすることが好ましく、以下このような実施例について説明する。ここで、装着前にワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けることを「サブアッシー化」と称し、組み付けられた状態を「サブアッシー状態」とし、装着状態と区別する。
【0039】
このようなサブアッシー化形態は、例えば図6に示すように、スプリング部材4とヒートシンク本体2との間にキャッチ片6を可動状態に設けるものである。ここで、キャッチ片6が設けられるスプリング部材4とヒートシンク本体2との「間」という語句について説明する。ここでの「間」とは、スプリング部材4、キャッチ片6、ヒートシンク本体2(後述する組付用係止凸部25)において、力の掛かり方や伝達における作用上の経過としての中間という意味であり、単にサブアッシー状態等における位置関係・設置場所を示すものではない。言い換えれば、例えばサブアッシー状態では、スプリング部材4によってキャッチ片6が常に上向き(放熱フィン22の突出方向)に付勢され、この上向きに付勢されたキャッチ片6がヒートシンク本体2(組付用係止凸部25)に係止して当該状態を得るものであり、この力の経路上において、スプリング部材4とヒートシンク本体2との間にキャッチ片6が設けられることを意味している。
また、本実施例では、更にアンカー5をヒートシンク1の内側に設け、このアンカー5を位置決めとして兼用するようにしたものである。以下、本サブアッシー形態におけるアンカー5やキャッチ片6等、先に述べた図1・2の実施例と相違する部材から、まず説明する。
【0040】
アンカー5は、上述した図1・2の実施例と同様に、回路基板Bにおいて、ヒートシンク1の装着面側に突出状態に設置されるものである。ただし、本実施例では、ワイヤスプリング41に保持されたキャッチ片6を、アンカー5に掛止させることで、ヒートシンク1の装着を図るものである。そのため、アンカー5は、一例として図6に示すように、ピン状(軸状)の本体部51を主要部とし、このものの一端(末端部)に鍔状の抜け防止部52を具え、ここで回路基板Bに設置(圧入)したアンカー5の抜け止めを図るものである。また、アンカー5の先端寄りの位置には、本体部51よりも幾分細い小径部53が形成され、この小径部53と先端部とによってキャッチ片6を引っ掛ける掛止段差54が形成される。また、アンカー5は、回路基板Bへの差し込みや、キャッチ片6の受け入れが行い易いように、先端側が幾分窄り状(錐状)に形成されることが好ましく、特にこの部位を受入先端部55とする。
また図中符号56は、本体部51の末端付近に形成されたローレット部であり、これは回路基板Bに圧入したアンカー5の固定力を高めるための加工であるが、ローレットに代えてセレーションとすることも可能である(この場合、アンカー5が圧入される回路基板Bにもセレーションに対応した孔加工を施すことになる)。もちろんアンカー5を回路基板Bに強固に設置することができれば、このようなローレット加工等は特に行わず、接着剤やハンダ付け等で接合するだけでも構わない。因みに、図中符号Hは、アンカー5を固定(圧入)するために回路基板Bに開孔された取付孔である。
【0041】
また、本実施例では、上述したように、本来はヒートシンク1を装着(固定)するためのアンカー5を、ヒートシンク1の位置決め23として兼用するものである。そのためヒートシンク本体2(ベース部21)には、アンカー5の本体部51が貫通する位置決め用の孔(ここでは円状)が開口される。つまり、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する際には、まず回路基板B上に突出したアンカー5によりヒートシンク本体2を位置決めした上で(規定の位置に保持した状態で)行うため、ヒートシンク1の装着時に、ワイヤスプリング41のアーム部43をこじってしまっても、ヒートシンク1の位置がずれないものである。
【0042】
そして、ヒートシンク本体2に位置決め23(孔)を形成することから、この部位の放熱フィン22は、位置決め23と干渉しないように、例えばフィン幅がやや短く形成され、本実施例では、該部材によりキャッチ片6の上下方向の移動(可動)を規制するものである(これをポスト24とする)。
このポスト24には、サブアッシー状態(回路基板Bには未装着の状態)のキャッチ片6と係止する組付用係止凸部25が形成されており、このものはポスト24の上端部分を一部外側に突出させて成るものであり、組付用係止凸部25の下端部(段差)で、上方(放熱フィン22の突出方向)に付勢されるキャッチ片6を押さえ、サブアッシー状態を得るものである。すなわち、ワイヤスプリング41にキャッチ片6を保持させつつ、なお且つキャッチ片6をポスト24の組付用係止凸部25に係止させることで、ヒートシンク本体2とは全く別に形成されたワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けるようにしたものである。
【0043】
次にキャッチ片6について説明する。キャッチ片6は、ワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)されるものであり、これはサブアッシー状態で組付用係止凸部25に係止していたキャッチ片6の位置・姿勢を変更させることで、この係止を解除し、更にはキャッチ片6をアンカー5の掛止段差54に掛止させて、ヒートシンク1を装着状態とするためである。もちろんキャッチ片6がサブアッシー状態、つまり組付用係止凸部25に係止した状態では、アンカー5との掛止は解除されるものである。
【0044】
ここで本明細書における「係止」、「掛止」の用語の使い分けについて説明する。本明細書でいう「係止」とは、キャッチ片6が組付用係止凸部25(ヒートシンク本体2)に引っ掛かった状態(サブアッシー状態)を指すものであり、「掛止」は、キャッチ片6がアンカー5に引っ掛かった状態(装着状態)を指すものである。これは、いずれもキャッチ片6の上向きの付勢が規制(阻止)される状態であり、キャッチ片6を引っ掛けて結合を図るという点では、明確な区別(厳格な区別)はなく、本明細書では、理解し易いようにサブアッシー状態か装着状態かによって、端的に言えばキャッチ片6が係合する対象で区別したものである。ただ、一般的には、ヒートシンク1が回路基板Bに固定される装着状態では、安易に(不本意に)この状態が解除されることは、ほぼ完全に回避しなければならないため、互いにかける機構(形状)を積極的に持ち合って、強い引っ掛かりを発揮する装着状態を「掛止」としたものである。
【0045】
またキャッチ片6は、一例として図6に示すように、板状の本体部61にアンカ−受入用の開口部62が形成されて成るものであり、本体部61には、ワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)される被保持部63が形成される。具体的には、本体部61の一部が、フラット状の本体部61とほぼ平行になるように湾曲形成され(ここが被被保持部63)、本体部61と被保持部63とでワイヤスプリング41(主にアーム部43)を挟持状態に受け入れて、キャッチ片6を可動状態に保持するものである。より詳細には、本体部61によってワイヤスプリング41のアーム部43や折り返し部44(これについては後述)を上方から支持しながら、被保持部63によってアーム部43を下方からも支持して、キャッチ片6のスライド移動を可能とするものである。
【0046】
開口部62は、ポスト24の組付用係止凸部25やアンカー5の通過を許容する貫通用開口62aと、組付用係止凸部25の通過を阻む係止用開口62bと、アンカー5の本体部51の通過を阻む掛止用開口62cとを具えて成り、貫通用開口62aの両側に係止用開口62bと掛止用開口62cとが貫通用開口62aに連続して形成される。
開口部62について更に詳細に説明すると、貫通用開口62aは、一例として組付用係止凸部25やアンカー5の本体部51よりも大きな矩形状に開口され、これらの通過を許容するように形成される。また、係止用開口62bは、組付用係止凸部25が形成されていないポスト24部分のみを通過させ得る長方形状に形成されており、該開口端縁が組付用係止凸部25に係止し(図7(a)参照)、組付用係止凸部25の通過を阻むように形成される(サブアッシー状態)。また、掛止用開口62cは、アンカー5の小径部53よりは大きいが、本体部51よりも小さい長円状、つまり小径部53のみを嵌め込み得る大きさに形成されており、このため該開口端縁が掛止段差54に掛止し(図7(b)参照)、本体部51の通過を阻むものである(装着状態)。
【0047】
また、キャッチ片6には貫通用開口62aの両側(開口端縁の両側)に突起が形成され、貫通用開口62aと係止用開口62bとの境界部分に形成される突起は、組付用係止凸部25に係止したキャッチ片6が放熱フィン22の幅方向(横移動)にスライドすることを阻止するものであり(図7(a)参照)、言わば、サブアッシー状態を維持するためのロック機構である(これをサブアッシー状態ロック64とする)。一方、貫通用開口62aと掛止用開口62cとの境界部分に形成される突起は、アンカー5の掛止段差54に掛止したキャッチ片6のスライド(横移動)を阻止する作用を担うものであり(図7(b)参照)、言わば、装着状態を維持するためのロック突起である(これを装着状態ロック65とする)。
【0048】
また、キャッチ片6はワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)されることから、一例としてワイヤスプリング41(両アーム部43)の先端部は、中央トーション部42とほぼ平行になるように折り返されており(ここを折り返し部44とする)、アーム部43と折り返し部44とを利用して、キャッチ片6の保持(可動状態)を確実に行い得るように考慮されている。
なお、スプリング部材4は、上述したように本来、ヒートシンク1を回路基板B上に装着(固定)するための部材であるが、本実施例ではスプリング部材4を利用してサブアッシー化も図るものである。また、本実施例では、このキャッチ片6も装着手段3に含まれるものである。
【0049】
以下、本実施例の作動態様、つまりサブアッシー状態から装着状態に切り替える作動状況について説明する。なお説明にあたっては、ヒートシンク本体2にワイヤスプリング41を組み付けただけのサブアッシー状態(回路基板Bには未装着)と、これを装着する過程、すなわち回路基板B上で位置決めしたヒートシンク1を実際に装着するまでの状況とに分けて説明する。
(1)サブアッシー状態
サブアッシー化を図るには、キャッチ片6をワイヤスプリング41のアーム部43に保持させながら(接続しながら)、ワイヤスプリング41の弾性に抗するようにキャッチ片6を押さえつつ、図6の拡大平面図に示すように、貫通用開口62aと係止用開口62bとを利用してポスト24に嵌め入れる。この際、平面から視て貫通用開口62a内に組付用係止凸部25が収まるように、キャッチ片6を嵌め込むものである。もちろんワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にセットする際には、変位量調整体71に載せる(当接する)ようにワイヤスプリング41をセットするものである。
【0050】
また、キャッチ片6のポスト24への嵌め込みによって、貫通用開口62a(厳密にはサブアッシー状態ロック64)が、組付用係止凸部25よりも低い位置に至れば、キャッチ片6をスライド(横方向に移動)させることができるため、サブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25の下をくぐり抜けるようにキャッチ片6を移動(スライド)させ、キャッチ片6の下方への押さえ付けを解除する。この押さえ付け解除によって、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41により上向きに付勢されるが、図7(a)に示すように、係止用開口62bの端縁が組付用係止凸部25に係止し、キャッチ片6の上向きへの付勢が阻まれる。またサブアッシー状態では、キャッチ片6がこのような状態で固定されるため、結果的にキャッチ片6が、ワイヤスプリング41の両端部を押さえ付けるように作用し、ワイヤスプリング41がヒートシンク本体2に組み付けられるものである。
なお、ポスト24に嵌め込んだキャッチ片6を、サブアッシー化するためにスライド(横移動)させるこのような移動(図7(a)では左下方向への移動となる)を、ここでは「サブアッシー方向への移動(スライド)」と定義する。
【0051】
また、このサブアッシー状態では、サブアッシー状態ロック64(突起)によって、係止状態を解除する方向へのキャッチ片6のスライド、つまり貫通用開口62aを組付用係止凸部25に合致させるようなスライドが阻止されるため、サブアッシー状態は維持される。すなわち、ワイヤスプリング41は、キャッチ片6によってヒートシンク本体2とサブアッシー化されて、装着工程(最終の組立工程)に供給されるが、供給途中に搬送等に伴う振動が加わって、例えばキャッチ片6が係止状態を解除する方向にスライドしようとしても、サブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。また、このためサブアッシー化されたキャッチ片6やワイヤスプリング41が、供給中にヒートシンク1から脱落してしまうことがないものである。
【0052】
(2)位置決め
更に、本実施例では、一例として図8(a)に示すように、このサブアッシー状態(ロック状態)で、キャッチ片6の貫通用開口62aが、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)と合致するように形成されている。これは、サブアッシー化したヒートシンク1を回路基板B上で定位置に位置決めすれば、そのまま貫通用開口62aにアンカー5が臨み、即、装着工程に移行できるように考慮したためである。
すなわちサブアッシー状態(ロック状態)のヒートシンク1を、回路基板Bに装着するには、まず図8(a)に示すように、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)を、回路基板Bに固定されたアンカー5に嵌め込むことにより、ヒートシンク本体2の位置決めを行う。本実施例では、この位置決め(差し込み)操作によって、図8(b)に示すように、位置決め23(孔)を貫通したアンカー5(受入先端部55)が、開口部62の貫通用開口62aに臨むように位置するものである。もちろん、この位置決め完了状態は、上述したようにキャッチ片6を下方に押し込めば、アンカー5が相対的に上昇し、そのまま貫通用開口62aを通過する状態である。つまり、本実施例では、上記サブアッシー状態(ロック状態)が、装着工程での初期位置にもなるものである。
【0053】
このように本実施例では、サブアッシー状態でロックされたキャッチ片6が、この姿勢のままで位置決め姿勢となり、且つまた装着工程での初期位置にもなることが極めて画期的である。言い換えれば、サブアッシー状態ロック64を設けずに、ただキャッチ片6を用いてワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にサブアッシー化することは可能であり相応の効果が挙げられるが、サブアッシー状態でキャッチ片6がフリーに移動してしまうと、供給中にキャッチ片6の位置が不揃いとなり(バラバラになり)、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する際には、まずキャッチ片6の初期位置を一つずつ設定しなければならないことが考えられる。しかし、本実施例では、このようなキャッチ片6の初期位置設定がサブアッシー化と同時に行え(つまり不要となり)、より一層能率的にヒートシンク1の装着作業が行えるものである。
以下、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する態様について説明する。
【0054】
(3)装着態様(位置決め以降)
ヒートシンク1を回路基板B上で位置決めした後は、図9(a)に示すようにキャッチ片6を徐々に押し下げて行く(押し込んで行く)ものであり、このような操作によって、キャッチ片6が組付用係止凸部25の下端から離反すると、これによる係止(当接)が解除される。
また、このような押し込みを更に続けて、図9(b)に示すように、キャッチ片6のサブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25の下端よりも低い位置に至ると、サブアッシー状態のロックも完全に解除され、キャッチ片6を自由にスライドさせ得る状態となる。もちろん、このようなキャッチ片6の下方への押し込みに伴い、アンカー5の掛止段差54が相対的に上昇し、キャッチ片6の貫通用開口62aよりも高い位置に至るものである。
【0055】
その後、キャッチ片6の押し込み力・押し込み作用を維持しつつ、図9(c)に示すようにキャッチ片6をスライドさせ(図9では右側への移動)、キャッチ片6の掛止用開口62cをアンカー5の小径部53に嵌め込むようにする。この状態は、キャッチ片6の掛止用開口62cが、アンカー5の掛止段差54の下方に位置した状態でもある。ここで、キャッチ片6をこのような方向(装着状態を形成する方向)に移動させることを、「装着方向への移動(スライド)」と定義する。
【0056】
その後、掛止用開口62cに小径部53を嵌め入れた状態で、キャッチ片6に加えていた下方への押し込み(押し下げ)を解除すると、図9(d)や図7(b)に示すように、キャッチ片6がワイヤスプリング41の付勢により上昇し、掛止用開口62cの開口端縁がアンカー5の掛止段差54に下方から掛止する(密着する)。なお、図9(d)でキャッチ片6の上昇方向の矢印を破線で描いたのは、この作動は、上述したように人為的な操作を要することなく、ワイヤスプリング41の付勢によって行われるためである。
【0057】
また、この装着状態では、図7(b)や図9(d)に示すように、装着状態ロック65(突起)が、アンカー5の掛止段差54(受入先端部55)の近傍に位置した状態となり、キャッチ片6のサブアッシー方向への移動を阻止するものである。すなわち、電子機器の作動に伴う振動等がヒートシンク1に加わって、例えばキャッチ片6がサブアッシー方向にスライドしようとしても、装着状態ロック65(突起)がアンカー5の掛止段差54(受入先端部55)に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。また、このため回路基板Bへの装着が完了したヒートシンク1は、回路基板Bから脱落することがなく、キャッチ片6やワイヤスプリング41もヒートシンク1から分離することがないものである。
また、一旦、装着したヒートシンク1を、回路基板Bから取り外す際には、図9に示した操作を逆の順序で行い、ヒートシンク1を図9(a)に示したサブアッシー状態で取り外すものである。
因みに、本実施例では、アンカー5をヒートシンク1の内側に設け、且つこのアンカー5で装着時のヒートシンク1の位置決めを図るため、基板面の有効利用が達成される(回路基板Bの有効面積を減少させることがない)ものである。
【0058】
なお、上述した図6〜図9の実施例では、キャッチ片6をワイヤスプリング41に対し可動状態に設けるものであったが、例えば図10に示すように、キャッチ片6をワイヤスプリング41に対しカシメやスポット溶接等で固定、つまりキャッチ片6がワイヤスプリング41に対して移動しない状態に設けても構わない。もちろん、このような固定であってもキャッチ片6は、ワイヤスプリング41の撓みや捻じれに伴って動くものである。すなわち、本実施例では、図10(a)に示すように、キャッチ片6は、本体部61と被保持部63とが全体的に略U字状断面を成すように折り曲げられ、これらの間でワイヤスプリング41の端部(主に折り返し部44)を挟持するように、強固に固定されている。また、開口部62としては、アンカー5の小径部53に嵌まる掛止用開口62cのみが形成されており、これは本体部61の折り返し61aを分断するように形成されている。
【0059】
そして、このようなキャッチ片6を伴ったワイヤスプリング41によってヒートシンク1を回路基板Bに装着するには、まずヒートシンク1を回路基板B上の規定位置に載せながらアンカー5の嵌め込みによって位置決めを行うものである。ここで図10(b)に示すヒートシンク1は、このような位置決めまでを行った状態を示している。
その後、ワイヤスプリング41によってヒートシンク1を装着するものであり、それには、図10(b)に示すように、まずワイヤスプリング41を変位量調整体71に載せるようにセットしながら、ワイヤスプリング41の両端に固定されたキャッチ片6を、下方に押し込みながら、なお且つヒートシンク1(アンカー5)から離反させるように拡開させて行く。この操作により、キャッチ片6(折り返し61a)が、アンカー5の掛止段差54よりも低い位置に至ったところで、キャッチ片6の掛止用開口62cを、アンカー5の小径部53に嵌め込むものである。このように、本実施例では、アンカー5の横方向(アンカー5に対してほぼ直角方向)から、キャッチ片6を嵌め込んで行くものである。
【0060】
そして、キャッチ片6の掛止用開口62cに小径部53を嵌め込んだ状態で、キャッチ片6に加えていた下方への押し込みを解除すると、図10(c)に示すように、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41の弾性により上方に付勢されるが、掛止用開口62cの開口端縁が、掛止段差54(受入先端部55)の下部に当接し、ヒートシンク1が回路基板B上に装着(固定)される。
また、この装着状態では、図10(c)の斜視図に示すように、折り返し61aが掛止段差54(受入先端部55)に当接し得るため、この装着状態が維持ロックされるものである(折り返し61aが装着状態ロック65として機能する)。すなわち、電子機器の作動に伴う振動等がヒートシンク1に加わって、例えばキャッチ片6が、装着状態を解除する方向に移動しようとしても、折り返し61aがアンカー5の掛止段差54(受入先端部55)に当接するため、このような移動が阻止されるものである。また、このため回路基板Bに装着した後のヒートシンク1は、回路基板Bから脱落することがなく、ワイヤスプリング41もヒートシンク1から分離することがないものである。
【0061】
また、上述した実施例は、スプリング部材4として基本的にトーショーンバータイプのワイヤスプリング41を適用したが、スプリング部材4は必ずしもこのような形態に限定されるものではない。特に、キャッチ片6をスプリング部材4に対して可動状態に設ける場合にあっては、例えば図11(a)に示すようなコイルスプリング45を適用することが可能であり、例えばポスト24に、適宜の厚みを有するカラー状の変位量調整体71を先嵌めした後、その上にコイルスプリング45を嵌め込むことが考えられる。もちろん、この場合、図11(b)に示すように、キャッチ片6を押し下げながらスライドできるように形成するものである。
そして、ここでも要求される装着荷重に応じて、適宜の厚みの変位量調整体71(カラー)を選択することにより、コイルスプリング45の設置高が変更でき、装着時のコイルスプリング45の変位量を調節することができるものである。もちろん、コイルスプリング45の装着時の変位量を調節する観点からすれば、カラー状の変位量調整体71は、必ずしもコイルスプリング45の下部に位置させるだけでなく、コイルスプリング45の上部に位置させることも可能である。すなわち、その場合には、ポスト24にコイルスプリング45を先嵌めした後、カラー状の変位量調整体71を後嵌めする形態となる。
また、上記図11では一つのキャッチ片6に対し一つのアンカー5で、キャッチ片6の上向きの付勢を押さえるようにしているが、キャッチ片6の姿勢をより安定的に維持したい場合には、二つのアンカー5でキャッチ片6の上向きの付勢を押さえることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ヒートシンク(装着荷重調整機構を具えたヒートシンク)
2 ヒートシンク本体
3 装着手段
4 スプリング部材
5 アンカー
6 キャッチ片
7 装着荷重調整機構
2 ヒートシンク本体
21 ベース部
22 放熱フィン
23 位置決め
23a 位置決め用のピン
23b 位置決め用の穴
24 ポスト
25 組付用係止凸部
4 スプリング部材
41 ワイヤスプリング
42 中央トーション部
43 アーム部
43a 先端フック部
44 折り返し部
45 コイルスプリング
5 アンカー
5a 掛止部
51 本体部
52 抜け防止部
53 小径部
54 掛止段差
55 受入先端部
56 ローレット部
6 キャッチ片
61 本体部
61a 折り返し
62 開口部
62a 貫通用開口
62b 係止用開口
62c 掛止用開口
63 被保持部
64 サブアッシー状態ロック
65 装着状態ロック
7 装着荷重調整機構
71 変位量調整体
71A 調整用支柱
72 欠き込み
73 ガイド
B 回路基板
C 半導体回路素子
H 取付孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプロセッサやインバータ等の電子部品(半導体回路素子)から発する熱を効率的に放出するためのヒートシンクに関するものであり、特にこのものを回路基板上に装着する際、同じスプリング部材を用いながらも、回路基板上に固定する装着荷重が種々調整できるようにした新規な調整機構と、これを適用したヒートシンクに係るものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板に実装(搭載)される半導体回路素子は、電子機器の作動に伴い熱を発するため、この熱を効率的に放出すべく、回路基板には半導体回路素子に圧着(密着)するようにヒートシンク(熱交換部品)が装着される。そして半導体回路素子の高性能化に伴い、回路基板はますます高密度化し、ヒートシンクについても、高性能なものを狭い取付面積で迅速に且つ正確に固定できる必要性が高まってきている。
また、一般にヒートシンクと半導体回路素子との間には、熱交換効率を高めるべく熱伝導性シートが設けられるものであり、熱伝導性シートの効率は、そのシートに加わる圧力の大きさによって異なり、一般に圧力が高いほど、高い性能を発揮する。しかし、単にヒートシンクを回路基板上に強固に装着すれば良いのではなく、半導体回路素子の中には最大許容荷重(装着荷重)が定められているものがあり、ヒートシンク1の装着荷重を適正な範囲に収めることが要求されている。
【0003】
ところでヒートシンクを回路基板上に固定する装着方法の一つとして、ワイヤスプリングによる装着方法が広く採用されている。この方法は、アンカーと呼ばれる、ワイヤスプリングの両端部を引っ掛けるための略U字状の部品を予め回路基板に設置しておき、ワイヤスプリングでヒートシンクを押さえ込んだ後、スプリングの両端部分を撓めながらアンカーのU字状部分に引っ掛けて(嵌め入れて)、ヒートシンクを回路基板側に押圧固定するものである。
このようなワイヤスプリングによる装着方法では、装着荷重及びその圧力は、回路基板の厚さ、半導体回路素子の厚さ、半導体回路素子とヒートシンクとの接触面積、ヒートシンクのベース部の厚さ等によって種々変化してしまう。そのため、種々異なる厚さや大きさを持つ上記部材に対して、要求される荷重を満たすには、その都度、ワイヤスプリングを異なる形状に設計する必要があった。
【0004】
もちろん、同じワイヤスプリングを使用しながら、回路基板等の異なる厚さに対応しようという発想もあり、既に案出されている(例えば特許文献1参照)。すなわち、この特許文献1では、ワイヤスプリングの両端に、バネ性を有する弾性係止部を形成し、これを回路基板の孔に差し込んでヒートシンクを回路基板に装着するものであり、弾性係止部の間に、長さ調整可能な伸縮部を設け、この長さ調整によって、ヒートシンクサイズや基板厚さの変化等に対応しようというものである。
しかしながら、ワイヤスプリング自体を伸縮させる上記手法では、本来持続すべき弾性が維持できないことが懸念され、また作動時の振動等によって徐々に伸縮部が広がって(伸長して)しまうことも懸念された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−229003公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような背景を認識してなされたものであって、ワイヤスプリング等のスプリング部材を用いて、ヒートシンクを回路基板上に装着する際、より簡易な構造、具体的にはスプリング部材の取り付け高さを変更する変位量調整体を設けることで、回路基板の厚さ、半導体回路素子の厚さ、ヒートシンクのベース部の厚さ等の違いを調整し、目標の装着荷重に収めるようにした新規な調整機構と、これを適用したヒートシンクの開発を試みたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するにあたり、ヒートシンク本体またはスプリング部材または、これらの両部材間に、装着状態におけるスプリング部材の変位量を調節する変位量調整体を設け、これによりヒートシンク本体を回路基板に固定する際の装着荷重を調整するようにしたことを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1記載の要件に加え、前記変位量調整体は、放熱フィンの形成を阻害しない位置及び形状に形成されることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記変位量調整体は、ヒートシンク本体のベース部と一体で形成され、ヒートシンク本体形成後の二次加工において、要求される装着荷重に応じて所望の長さにカットされて成ることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項4記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記変位量調整体は、ヒートシンク本体やスプリング部材とは別の部材として形成されることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1、2、3または4記載の要件に加え、前記変位量調整体は、スプリング部材が当接する当接先端部に、スプリング部材を受け入れ易くするガイドが形成されることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載のヒートシンクの装着荷重調整機構は、前記請求項1、2、3、4または5記載の要件に加え、前記スプリング部材とヒートシンク本体との間には、キャッチ片が可動状態に設けられ、またこのキャッチ片には常にスプリング部材の付勢が作用するものであり、前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する以前の段階で、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けたサブアッシー状態を得るにあたっては、前記キャッチ片の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体の一部にキャッチ片を係止させて、サブアッシー状態を得るようにしたことを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載のヒートシンクは、回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するようにしたヒートシンクにおいて、前記ヒートシンク本体には、請求項1、2、3、4、5または6記載の装着荷重調整機構を適用して回路基板上に装着するようにしたことを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0014】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち、請求項1または7記載の発明によれば、例えばヒートシンク本体に、装着状態におけるスプリング部材の変位量を調節する変位量調整体を設けるため、同じスプリング部材を共通的に適用しても、変位量調整体によって、ヒートシンクを回路基板上に固定する際の装着荷重を適切な範囲に調整することができる。すなわち、回路基板の厚さ、半導体回路素子の厚さ、ヒートシンク本体のベース部の厚さ等が種々異なっても、同じスプリング部材を用いて、ある範囲の装着荷重に収めることができる。
【0015】
また請求項2または7記載の発明によれば、既存の放熱フィンを妨げることなく、変位量調整体を形成するため、放熱効果を維持することができる。また、従来のヒートシンク本体形成工程(製作過程)を、ほぼ変更することなく変位量調整体を形成することができ、比較的容易に形成することができる。
【0016】
また請求項3または7記載の発明によれば、変位量調整体がヒートシンク本体と一体で形成されるため、変位量調整体がヒートシンク本体から分離することがない。このため例えばヒートシンクを、装着工程に供給する際、変位量調整体がヒートシンク本体から脱落してしまうことがなく、このような紛失の懸念を払拭することができる。
また、変位量調整体が、放熱フィンの形成を阻害しないように形成される場合、一般に変位量調整体は小さく形成されるため、二次加工でのカットも容易に行えるものである。
【0017】
また請求項4または7記載の発明によれば、変位量調整体がヒートシンク本体やスプリング部材とは別個に形成されるため、変位量調整体を取り付けるにあたり、ヒートシンクに設置(嵌め込んだり)したり、スプリング部材に嵌めたりする等、種々のヒートシンクに応じた色々な取付仕様が採り得る。
【0018】
また請求項5または7記載の発明によれば、変位量調整体の当接先端部(天端部)に、スプリング部材の受け入れ性を向上させるガイドが形成されるため、スプリング部材を変位量調整体に当接させた(載置した)際の安定性が向上する。また、装着時にはスプリング部材を撓める等の操作を行うが、このような操作を行ってもスプリング部材が変位量調整体から離反し難く(外れ難く)、安定した装着作業が行える。
更に、変位量調整体がヒートシンク本体やスプリング部材とは別個に形成されていれば、変位量調整体の先端部に、このようなガイドが形成し易いものである。
【0019】
また請求項6または7記載の発明によれば、ヒートシンクを回路基板に装着する前に、可動状態のキャッチ片によってスプリング部材(変位量調整体も)をヒートシンク本体に組み付けておくため、ヒートシンクを、装着工程に供給する際、変位量調整体はもちろんスプリング部材もヒートシンク本体から脱落してしまうことがなく、各種部材の紛失の懸念を払拭することができる。
また、サブアッシー状態を装着工程の初期位置に設定しておけば、ヒートシンクを装着工程に供給した後、即、装着作業に移行でき、装着作業の作業性向上も達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の装着荷重調整機構を具えたヒートシンクの一実施例を示す斜視図(a)と断面図(b)、並びに装着荷重調整機構である変位量調整体の形状を異ならせたヒートシンクを示す斜視図(c)である。
【図2】変位量調整体の当接先端部(天端部)に、ワイヤスプリングを受け入れ易くするガイドを形成した様子を示す説明図である。
【図3】ヒートシンク本体やワイヤスプリングとは別に形成した変位量調整体(スペーサ)を、ヒートシンク本体のベース部に取り付ける様子を示す説明図である。
【図4】変位量調整体として止めネジを適用したヒートシンクを示す説明図である。
【図5】ヒートシンク本体やワイヤスプリングとは別に形成した変位量調整体(C型カラー)を、ワイヤスプリングに取り付けた様子を示す説明図である。
【図6】可動状態に設けたキャッチ片によって装着以前にワイヤスプリングのサブアッシー化を図るようにしたヒートシンクを示す分解斜視図である。
【図7】同上図6のヒートシンクであって、サブアッシー状態を部分的に示す斜視図(a)と、装着状態を部分的に示す斜視図(b)である。
【図8】同上サブアッシー化したヒートシンクを回路基板に装着するにあたり、このヒートシンクを位置決めする様子を示す説明図(a)と、位置決め後の様子を示す説明図(b)である。
【図9】図6のヒートシンクについて、回路基板上で位置決めした状態(装着開始状態)から装着完了状態までを段階的に示す説明図である。
【図10】キャッチ片をスプリング部材の端部に固定したワイヤスプリングを示す斜視図(a)、並びに装着前のヒートシンクの様子を骨格的に示す平面図(b)、並びに装着後のヒートシンクの様子を骨格的に示す平面図(c)である。
【図11】スプリング部材としてコイルスプリングを用いた実施例を示す断面図(a)、並びに斜視図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法を含むものである。
なお、本明細書では、ヒートシンク1を回路基板B上に固定する(取り付ける)ことを「装着」と称し、取り付けた状態を「装着状態」と称するものである。
また、本実施例では、略U字状を成すアンカー5を予め回路基板Bに突出状態に設置しておくものであり、このアンカー5にワイヤスプリング41等のスプリング部材4の両端部を引っ掛けて、ヒートシンク1を固定する装着方法を基本に説明する。すなわち、本実施例では、ワイヤスプリング41でヒートシンク本体2を押さえ込んだ後、スプリングの両端部分を撓めながらアンカー5のU字状内部に引っ掛けて(嵌め入れて)、ヒートシンク1を回路基板B側に押圧固定するものである。
また、説明にあたっては、本発明のヒートシンク1が装着される回路基板Bについて説明し、その後、ヒートシンク1の基本構造について説明した後、次いで本発明の装着荷重調整機構7について説明する。
【0022】
回路基板Bは、例えばGPUユニット、チップセットユニット、CPUユニット等の半導体回路素子Cが実装(搭載)されるものであり、この半導体回路素子Cが、電子機器の動作に伴い発熱するため、ヒートシンク1を半導体回路素子Cに圧着状態に装着することにより、半導体回路素子Cからの能率的な放熱を図っている。ここで、ヒートシンク1は、回路基板Bに対して取り外しできるように装着されるものである。
【0023】
そして、本発明の装着荷重調整機構7は、ワイヤスプリング41等のスプリング部材4を用いて、ヒートシンク1を回路基板B上に装着することを前提とし、装着時にスプリング部材4の変位量を調節する変位量調整体71を設けることが大きな特徴である。すなわち、この変位量調整体71により、例えばスプリング部材4の設置高(ベース部21〜ワイヤスプリング41載置面までの距離)が変更でき、装着時のスプリング部材4の変位量を種々異ならせることができるものである。このため、回路基板Bの厚さ、半導体回路素子Cの厚さ、ヒートシンク本体2のベース部21の厚さ等が各々異なっても多種多様のスプリング部材4を用いることなく、同じスプリング部材4を用いながらも目標の装着荷重に収めることができるものである。
【0024】
次にヒートシンク1の基本構造について説明する。ヒートシンク1は、一例として図1に示すように、主に放熱作用を担うヒートシンク本体2と、ヒートシンク本体2を回路基板B上に装着するための装着手段3とを具えて成るものである。
ヒートシンク本体2は、アルミニウム等の熱伝導性・放熱性に優れた素材によって形成され、板状のベース部21から放熱フィン22が多数突出形成された構造を基本とする。
またベース部21において、放熱フィン22が形成されていない方の面(裏側)は、半導体回路素子Cと圧着(密着)される接触面となり、ここには熱伝導を促進させる熱伝導性シートが設けられるのが一般的である。
【0025】
また、ヒートシンク1を、回路基板B上の規定位置に確実にセットするには、位置決め23を具えることが好ましく、これには例えば図1(b)に示すように、回路基板Bに、予め位置決め用のピン23aをヒートシンク1の内側(ヒートシンク1が装着される範囲の内側)に設けておき、またヒートシンク1の裏側に、このピン23aに対応した位置決め用の穴23bを未貫通状態に形成しておくものである。なお、位置決め23をヒートシンク1の内側に形成したのは、回路基板B面を少しでも有効に利用するためである。
【0026】
もちろん、位置決め23をヒートシンク1の外側(ヒートシンク1が装着される範囲の外側)に設けることは可能であり、その場合には、ベース部21よりも外側に張り出す張出部を、ヒートシンク1に形成しておき、ここで回路基板Bとの位置決めを図るのが一般的と考えられる。
因みに、装着時には、通常、ワイヤスプリング41をこじってしまうものであるが、その場合でも位置決め23があることで、ヒートシンク1の位置はずれないものである。また、このことは熱伝導性シートの損傷防止にも寄与するものである。
【0027】
次に装着手段3について説明する。装着手段3は、上述したように、ヒートシンク本体2を回路基板B上に装着(固定)するための手段であり、スプリング部材4とアンカー5とを具えて成るものである。もちろん、ここでは上述したように装着の際には、まず位置決め23によってヒートシンク本体2を規定の位置からずれないように保持した上で装着するため、このような位置決め23も装着手段3に含まれるものである。以下、スプリング部材4とアンカー5とについて説明する。
【0028】
スプリング部材4は、ヒートシンク1を回路基板B側に押し付けて装着を図るものであり、ここでは一例として図1に示すように、平面から視てほぼZ形状を成すワイヤスプリング41が適用される。すなわち、このワイヤスプリング41は、いわゆるトーションバータイプのバネであり、真ん中部分の中央トーション部42の両側にアーム部43を具えて成り、両方のアーム部43が捻じられた際の反発力を利用して、ヒートシンク1を回路基板Bに押し付け装着を図るものである。言い換えればワイヤスプリング41は、アンカー5を常に上向き(放熱フィン22の突出方向)に付勢するように作用するものである。
【0029】
ここで、本実施例では、中央トーション部42がほぼ真っ直ぐな直棒状に形成され、ここで全体的にヒートシンク1(ベース部21)を押さえる(中央トーション部42がベース部21に全体的に接触する)ように形成されるが、中央トーション部42は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば略V字状に形成され、中央トーション部42の真ん中のほぼ一点でベース部21を押さえることも可能である(いわゆる点接触状態)。
また両アーム部43の先端側はフック状に形成され(先端フック部43aとする)、この先端フック部43aが、アンカー5に引っ掛けられることで、ヒートシンク本体2が回路基板B側に押し付けられ、装着状態となるものである。
【0030】
次に、アンカー5について説明する。アンカー5は、上述したように回路基板Bにおいて、ヒートシンク1の装着面側に突出状態に設置されるものであり、ワイヤスプリング4の先端フック部43aを、アンカー5に掛止させることで、ヒートシンク1の装着を図るものである。そのため、アンカー5は、一例として図1に示すように、回路基板Bに設置された(嵌め込んだ)アンカー5の抜け止めを図る抜け止め部52と、先端フック部43aが引っ掛けられる掛止部5aとを具えて成るものである。
【0031】
以下、本発明の装着荷重調整機構7について更に詳細に説明する。装着荷重調整機構7は、一例として図1に示すように、変位量調整体71がヒートシンク本体2と一体で形成されて成るものである。すなわち、スプリング部材4によってベース部21が押圧される箇所、具体的にはヒートシンク本体2(ベース部21)のほぼ中央部に、調整用支柱71A(変位量調整体71の原形始発状態)を形成しておき(例えば放熱フィン22の形成時に併せて形成)、これをヒートシンク本体2の形成後に(いわゆる二次加工で)適宜の長さにカットし、ワイヤスプリング41の適切な設置高(取り付け高さ)を獲得するものである。換言すれば、変位量調整体71は、ベース部21からワイヤスプリング41までの距離を嵩上げする作用を担い、これにより装着力を適正な範囲内に調整するものである。もちろん、変位量調整体71は、放熱フィン22の形成を阻害しない位置及び形状に形成されることが好ましく、ここでは小円柱状に形成されている。
【0032】
因みに、変位量調整体71の高さ(設置高)を大きくするほど、装着の際にアーム部43を多く撓ませることになり、より大きな装着力となる。また、使用するワイヤスプリング41、回路基板Bの厚さ、ベース部21の厚さ等に対して、変位量調整体71の高さ(厚み)と得られる装着力との相関データを予め蓄積しておくことが好ましく、更にはこのようなデータから二次加工でのカットまでを自動で行い得る加工形態がより一層好ましいものである。
また、このような形態(原形始発状態の調整用支柱71Aを適宜の長さにカットして変位量調整体71を得る形態)は、カットによって無段階的に所望の装着力が得られるため、要求される装着力にきめ細かく対応できるものである。
【0033】
ここで図1(a)・(b)に示すヒートシンク1は、ワイヤスプリング41が変位量調整体71と点接触状態に当接するものであるが、変位量調整体71は、必ずしもワイヤスプリング41をピンポイント状態で受けるように形成される必要はなく、例えば同図1(c)に示すように、細長状もしくは幅広状の土台として形成することも可能であり、これはワイヤスプリング41に接触する当接面を線接触状態に形成するという思想である。この場合、例えば装着状態におけるワイヤスプリング41を、細長状もしくは幅広状の変位量調整体71によって安定的に載置できるものである。
【0034】
また、変位量調整体71の当接先端部(天端部)は、ワイヤスプリング41を受ける当接面であるため、例えば図2(a)・(b)に示すように、当接先端部をV字状(Vブロック状)や半円状に欠き込んで(ここを欠き込み72とする)、ワイヤスプリング41の受け入れ性ないしは載置性を向上させることが可能である。もちろん、このような欠き込み72を設けることで、ワイヤスプリング41の操作性も向上し得るものである。すなわち、装着時には、ワイヤスプリング41の先端フック部43aをアンカー5に引っ掛けるが、このような操作にあってはワイヤスプリング41をこじってしまうことが多く、その場合でも欠き込み72があることで、ワイヤスプリング41の姿勢が安定し(外れ防止となり)、操作がし易くなり、ひいては装着作業の向上が図れるものである。
因みに、変位量調整体71にV字状の欠き込み72を施す場合には、通常のVブロックのように、V字の鋭角部分に逃げを形成すれば、ここに掛かる応力が分散され、変位量調整体71の破損(損傷)を防止することができるものである。
【0035】
また、上述した変位量調整体71は、いずれもヒートシンク本体2(ベース部21)と一体的に形成されるものであるが、変位量調整体71は、必ずしもベース部21と一体に形成される必要はなく、例えば図3に示すように、ヒートシンク本体2とは別個の部材で形成することも可能である(もちろんスプリング部材4とも別体)。この場合、変位量調整体71は、あたかもワイヤスプリング41を嵩上げするスペーサの作用を担うものとなる。また、変位量調整体71をベース部21やスプリング部材4と別に形成する場合には、作用長(設置高)となる嵩上げ高さが異なる変位量調整体71(スペーサ)を、予め複数種形成しておき、要求される装着力に応じた変位量調整体71を選択して適用するのが現実的な方法と考えられる。
また、この場合、ベース部21に変位量調整体71を嵌め込み易くする、案内穴(未貫通)やガイドリブ等のガイド73を形成しておくと、変位量調整体71の嵌め込みが円滑且つ確実に行え、ワイヤスプリング41の載置(受け)も安定するものである。
また、ヒートシンク本体2とは別に変位量調整体71を形成する本実施例の場合、製造工程も別になるため、特に変位量調整体71の天端部に上記受け入れ用の欠き込み72が形成し易いと考えられる。
【0036】
また、変位量調整体71を、ヒートシンク本体2とは別個に形成する場合には、例えば図4に示すように、変位量調整体71として止めネジ(いわゆるイモネジ)を適用することも考えられる。すなわち、上記図1〜3に示した実施例では、一旦、変位量調整体71を設定した後は、調整体による設置高を可変とすることはできないが、変位量調整体71が止めネジであれば、これ自体のねじ込みによって高さ調整を行うことが可能となる。
なお、上記図4では、変位量調整体71(止めネジ)として、六角穴付き止めネジを図示したが、すり割り付き止めネジを適用することも可能であり、あるいは他の小ネジ類等を適用しても構わず、同様の効果が得られるものである。
【0037】
また、上記図3・4では、ヒートシンク本体2とは別に形成した変位量調整体71を、主にベース部21に嵌め込む(ねじ込む)等して取り付けるものであったが、別体の変位量調整体71は、例えば図5に示すように、ワイヤスプリング41(中央トーション部42)に取り付けることも可能である。すなわち、図5に示す実施例では、変位量調整体71をC型カラー状に形成し、これをワイヤスプリング41(中央トーション部42)に嵌め込んで、ワイヤスプリング41の設置高を調整するものである。
もちろん、ここでも予め肉厚の異なる変位量調整体71(C型カラー)を予め複数種用意しておき、要求される装着力に応じて、適した肉厚の変位量調整体71(C型カラー)を選択するのが現実的と考えられる。因みに、肉厚の厚い方が、設置高(嵩上げ高さ)としては高くなるため、大きな装着力となるものである。
【0038】
また、ヒートシンク1を回路基板B上の狭い場所でも簡易な操作で迅速に装着したい場合には、ヒートシンク1を装着する以前の段階で、予めワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けておき、装着工程にヒートシンク1を供給する際、ワイヤスプリング41がヒートシンク本体2から分離・脱落させないようにすることが好ましく、以下このような実施例について説明する。ここで、装着前にワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けることを「サブアッシー化」と称し、組み付けられた状態を「サブアッシー状態」とし、装着状態と区別する。
【0039】
このようなサブアッシー化形態は、例えば図6に示すように、スプリング部材4とヒートシンク本体2との間にキャッチ片6を可動状態に設けるものである。ここで、キャッチ片6が設けられるスプリング部材4とヒートシンク本体2との「間」という語句について説明する。ここでの「間」とは、スプリング部材4、キャッチ片6、ヒートシンク本体2(後述する組付用係止凸部25)において、力の掛かり方や伝達における作用上の経過としての中間という意味であり、単にサブアッシー状態等における位置関係・設置場所を示すものではない。言い換えれば、例えばサブアッシー状態では、スプリング部材4によってキャッチ片6が常に上向き(放熱フィン22の突出方向)に付勢され、この上向きに付勢されたキャッチ片6がヒートシンク本体2(組付用係止凸部25)に係止して当該状態を得るものであり、この力の経路上において、スプリング部材4とヒートシンク本体2との間にキャッチ片6が設けられることを意味している。
また、本実施例では、更にアンカー5をヒートシンク1の内側に設け、このアンカー5を位置決めとして兼用するようにしたものである。以下、本サブアッシー形態におけるアンカー5やキャッチ片6等、先に述べた図1・2の実施例と相違する部材から、まず説明する。
【0040】
アンカー5は、上述した図1・2の実施例と同様に、回路基板Bにおいて、ヒートシンク1の装着面側に突出状態に設置されるものである。ただし、本実施例では、ワイヤスプリング41に保持されたキャッチ片6を、アンカー5に掛止させることで、ヒートシンク1の装着を図るものである。そのため、アンカー5は、一例として図6に示すように、ピン状(軸状)の本体部51を主要部とし、このものの一端(末端部)に鍔状の抜け防止部52を具え、ここで回路基板Bに設置(圧入)したアンカー5の抜け止めを図るものである。また、アンカー5の先端寄りの位置には、本体部51よりも幾分細い小径部53が形成され、この小径部53と先端部とによってキャッチ片6を引っ掛ける掛止段差54が形成される。また、アンカー5は、回路基板Bへの差し込みや、キャッチ片6の受け入れが行い易いように、先端側が幾分窄り状(錐状)に形成されることが好ましく、特にこの部位を受入先端部55とする。
また図中符号56は、本体部51の末端付近に形成されたローレット部であり、これは回路基板Bに圧入したアンカー5の固定力を高めるための加工であるが、ローレットに代えてセレーションとすることも可能である(この場合、アンカー5が圧入される回路基板Bにもセレーションに対応した孔加工を施すことになる)。もちろんアンカー5を回路基板Bに強固に設置することができれば、このようなローレット加工等は特に行わず、接着剤やハンダ付け等で接合するだけでも構わない。因みに、図中符号Hは、アンカー5を固定(圧入)するために回路基板Bに開孔された取付孔である。
【0041】
また、本実施例では、上述したように、本来はヒートシンク1を装着(固定)するためのアンカー5を、ヒートシンク1の位置決め23として兼用するものである。そのためヒートシンク本体2(ベース部21)には、アンカー5の本体部51が貫通する位置決め用の孔(ここでは円状)が開口される。つまり、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する際には、まず回路基板B上に突出したアンカー5によりヒートシンク本体2を位置決めした上で(規定の位置に保持した状態で)行うため、ヒートシンク1の装着時に、ワイヤスプリング41のアーム部43をこじってしまっても、ヒートシンク1の位置がずれないものである。
【0042】
そして、ヒートシンク本体2に位置決め23(孔)を形成することから、この部位の放熱フィン22は、位置決め23と干渉しないように、例えばフィン幅がやや短く形成され、本実施例では、該部材によりキャッチ片6の上下方向の移動(可動)を規制するものである(これをポスト24とする)。
このポスト24には、サブアッシー状態(回路基板Bには未装着の状態)のキャッチ片6と係止する組付用係止凸部25が形成されており、このものはポスト24の上端部分を一部外側に突出させて成るものであり、組付用係止凸部25の下端部(段差)で、上方(放熱フィン22の突出方向)に付勢されるキャッチ片6を押さえ、サブアッシー状態を得るものである。すなわち、ワイヤスプリング41にキャッチ片6を保持させつつ、なお且つキャッチ片6をポスト24の組付用係止凸部25に係止させることで、ヒートシンク本体2とは全く別に形成されたワイヤスプリング41をヒートシンク本体2に組み付けるようにしたものである。
【0043】
次にキャッチ片6について説明する。キャッチ片6は、ワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)されるものであり、これはサブアッシー状態で組付用係止凸部25に係止していたキャッチ片6の位置・姿勢を変更させることで、この係止を解除し、更にはキャッチ片6をアンカー5の掛止段差54に掛止させて、ヒートシンク1を装着状態とするためである。もちろんキャッチ片6がサブアッシー状態、つまり組付用係止凸部25に係止した状態では、アンカー5との掛止は解除されるものである。
【0044】
ここで本明細書における「係止」、「掛止」の用語の使い分けについて説明する。本明細書でいう「係止」とは、キャッチ片6が組付用係止凸部25(ヒートシンク本体2)に引っ掛かった状態(サブアッシー状態)を指すものであり、「掛止」は、キャッチ片6がアンカー5に引っ掛かった状態(装着状態)を指すものである。これは、いずれもキャッチ片6の上向きの付勢が規制(阻止)される状態であり、キャッチ片6を引っ掛けて結合を図るという点では、明確な区別(厳格な区別)はなく、本明細書では、理解し易いようにサブアッシー状態か装着状態かによって、端的に言えばキャッチ片6が係合する対象で区別したものである。ただ、一般的には、ヒートシンク1が回路基板Bに固定される装着状態では、安易に(不本意に)この状態が解除されることは、ほぼ完全に回避しなければならないため、互いにかける機構(形状)を積極的に持ち合って、強い引っ掛かりを発揮する装着状態を「掛止」としたものである。
【0045】
またキャッチ片6は、一例として図6に示すように、板状の本体部61にアンカ−受入用の開口部62が形成されて成るものであり、本体部61には、ワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)される被保持部63が形成される。具体的には、本体部61の一部が、フラット状の本体部61とほぼ平行になるように湾曲形成され(ここが被被保持部63)、本体部61と被保持部63とでワイヤスプリング41(主にアーム部43)を挟持状態に受け入れて、キャッチ片6を可動状態に保持するものである。より詳細には、本体部61によってワイヤスプリング41のアーム部43や折り返し部44(これについては後述)を上方から支持しながら、被保持部63によってアーム部43を下方からも支持して、キャッチ片6のスライド移動を可能とするものである。
【0046】
開口部62は、ポスト24の組付用係止凸部25やアンカー5の通過を許容する貫通用開口62aと、組付用係止凸部25の通過を阻む係止用開口62bと、アンカー5の本体部51の通過を阻む掛止用開口62cとを具えて成り、貫通用開口62aの両側に係止用開口62bと掛止用開口62cとが貫通用開口62aに連続して形成される。
開口部62について更に詳細に説明すると、貫通用開口62aは、一例として組付用係止凸部25やアンカー5の本体部51よりも大きな矩形状に開口され、これらの通過を許容するように形成される。また、係止用開口62bは、組付用係止凸部25が形成されていないポスト24部分のみを通過させ得る長方形状に形成されており、該開口端縁が組付用係止凸部25に係止し(図7(a)参照)、組付用係止凸部25の通過を阻むように形成される(サブアッシー状態)。また、掛止用開口62cは、アンカー5の小径部53よりは大きいが、本体部51よりも小さい長円状、つまり小径部53のみを嵌め込み得る大きさに形成されており、このため該開口端縁が掛止段差54に掛止し(図7(b)参照)、本体部51の通過を阻むものである(装着状態)。
【0047】
また、キャッチ片6には貫通用開口62aの両側(開口端縁の両側)に突起が形成され、貫通用開口62aと係止用開口62bとの境界部分に形成される突起は、組付用係止凸部25に係止したキャッチ片6が放熱フィン22の幅方向(横移動)にスライドすることを阻止するものであり(図7(a)参照)、言わば、サブアッシー状態を維持するためのロック機構である(これをサブアッシー状態ロック64とする)。一方、貫通用開口62aと掛止用開口62cとの境界部分に形成される突起は、アンカー5の掛止段差54に掛止したキャッチ片6のスライド(横移動)を阻止する作用を担うものであり(図7(b)参照)、言わば、装着状態を維持するためのロック突起である(これを装着状態ロック65とする)。
【0048】
また、キャッチ片6はワイヤスプリング41に可動状態に保持(接続)されることから、一例としてワイヤスプリング41(両アーム部43)の先端部は、中央トーション部42とほぼ平行になるように折り返されており(ここを折り返し部44とする)、アーム部43と折り返し部44とを利用して、キャッチ片6の保持(可動状態)を確実に行い得るように考慮されている。
なお、スプリング部材4は、上述したように本来、ヒートシンク1を回路基板B上に装着(固定)するための部材であるが、本実施例ではスプリング部材4を利用してサブアッシー化も図るものである。また、本実施例では、このキャッチ片6も装着手段3に含まれるものである。
【0049】
以下、本実施例の作動態様、つまりサブアッシー状態から装着状態に切り替える作動状況について説明する。なお説明にあたっては、ヒートシンク本体2にワイヤスプリング41を組み付けただけのサブアッシー状態(回路基板Bには未装着)と、これを装着する過程、すなわち回路基板B上で位置決めしたヒートシンク1を実際に装着するまでの状況とに分けて説明する。
(1)サブアッシー状態
サブアッシー化を図るには、キャッチ片6をワイヤスプリング41のアーム部43に保持させながら(接続しながら)、ワイヤスプリング41の弾性に抗するようにキャッチ片6を押さえつつ、図6の拡大平面図に示すように、貫通用開口62aと係止用開口62bとを利用してポスト24に嵌め入れる。この際、平面から視て貫通用開口62a内に組付用係止凸部25が収まるように、キャッチ片6を嵌め込むものである。もちろんワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にセットする際には、変位量調整体71に載せる(当接する)ようにワイヤスプリング41をセットするものである。
【0050】
また、キャッチ片6のポスト24への嵌め込みによって、貫通用開口62a(厳密にはサブアッシー状態ロック64)が、組付用係止凸部25よりも低い位置に至れば、キャッチ片6をスライド(横方向に移動)させることができるため、サブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25の下をくぐり抜けるようにキャッチ片6を移動(スライド)させ、キャッチ片6の下方への押さえ付けを解除する。この押さえ付け解除によって、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41により上向きに付勢されるが、図7(a)に示すように、係止用開口62bの端縁が組付用係止凸部25に係止し、キャッチ片6の上向きへの付勢が阻まれる。またサブアッシー状態では、キャッチ片6がこのような状態で固定されるため、結果的にキャッチ片6が、ワイヤスプリング41の両端部を押さえ付けるように作用し、ワイヤスプリング41がヒートシンク本体2に組み付けられるものである。
なお、ポスト24に嵌め込んだキャッチ片6を、サブアッシー化するためにスライド(横移動)させるこのような移動(図7(a)では左下方向への移動となる)を、ここでは「サブアッシー方向への移動(スライド)」と定義する。
【0051】
また、このサブアッシー状態では、サブアッシー状態ロック64(突起)によって、係止状態を解除する方向へのキャッチ片6のスライド、つまり貫通用開口62aを組付用係止凸部25に合致させるようなスライドが阻止されるため、サブアッシー状態は維持される。すなわち、ワイヤスプリング41は、キャッチ片6によってヒートシンク本体2とサブアッシー化されて、装着工程(最終の組立工程)に供給されるが、供給途中に搬送等に伴う振動が加わって、例えばキャッチ片6が係止状態を解除する方向にスライドしようとしても、サブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。また、このためサブアッシー化されたキャッチ片6やワイヤスプリング41が、供給中にヒートシンク1から脱落してしまうことがないものである。
【0052】
(2)位置決め
更に、本実施例では、一例として図8(a)に示すように、このサブアッシー状態(ロック状態)で、キャッチ片6の貫通用開口62aが、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)と合致するように形成されている。これは、サブアッシー化したヒートシンク1を回路基板B上で定位置に位置決めすれば、そのまま貫通用開口62aにアンカー5が臨み、即、装着工程に移行できるように考慮したためである。
すなわちサブアッシー状態(ロック状態)のヒートシンク1を、回路基板Bに装着するには、まず図8(a)に示すように、ヒートシンク本体2の位置決め23(孔)を、回路基板Bに固定されたアンカー5に嵌め込むことにより、ヒートシンク本体2の位置決めを行う。本実施例では、この位置決め(差し込み)操作によって、図8(b)に示すように、位置決め23(孔)を貫通したアンカー5(受入先端部55)が、開口部62の貫通用開口62aに臨むように位置するものである。もちろん、この位置決め完了状態は、上述したようにキャッチ片6を下方に押し込めば、アンカー5が相対的に上昇し、そのまま貫通用開口62aを通過する状態である。つまり、本実施例では、上記サブアッシー状態(ロック状態)が、装着工程での初期位置にもなるものである。
【0053】
このように本実施例では、サブアッシー状態でロックされたキャッチ片6が、この姿勢のままで位置決め姿勢となり、且つまた装着工程での初期位置にもなることが極めて画期的である。言い換えれば、サブアッシー状態ロック64を設けずに、ただキャッチ片6を用いてワイヤスプリング41をヒートシンク本体2にサブアッシー化することは可能であり相応の効果が挙げられるが、サブアッシー状態でキャッチ片6がフリーに移動してしまうと、供給中にキャッチ片6の位置が不揃いとなり(バラバラになり)、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する際には、まずキャッチ片6の初期位置を一つずつ設定しなければならないことが考えられる。しかし、本実施例では、このようなキャッチ片6の初期位置設定がサブアッシー化と同時に行え(つまり不要となり)、より一層能率的にヒートシンク1の装着作業が行えるものである。
以下、ヒートシンク1を回路基板Bに装着する態様について説明する。
【0054】
(3)装着態様(位置決め以降)
ヒートシンク1を回路基板B上で位置決めした後は、図9(a)に示すようにキャッチ片6を徐々に押し下げて行く(押し込んで行く)ものであり、このような操作によって、キャッチ片6が組付用係止凸部25の下端から離反すると、これによる係止(当接)が解除される。
また、このような押し込みを更に続けて、図9(b)に示すように、キャッチ片6のサブアッシー状態ロック64(突起)が組付用係止凸部25の下端よりも低い位置に至ると、サブアッシー状態のロックも完全に解除され、キャッチ片6を自由にスライドさせ得る状態となる。もちろん、このようなキャッチ片6の下方への押し込みに伴い、アンカー5の掛止段差54が相対的に上昇し、キャッチ片6の貫通用開口62aよりも高い位置に至るものである。
【0055】
その後、キャッチ片6の押し込み力・押し込み作用を維持しつつ、図9(c)に示すようにキャッチ片6をスライドさせ(図9では右側への移動)、キャッチ片6の掛止用開口62cをアンカー5の小径部53に嵌め込むようにする。この状態は、キャッチ片6の掛止用開口62cが、アンカー5の掛止段差54の下方に位置した状態でもある。ここで、キャッチ片6をこのような方向(装着状態を形成する方向)に移動させることを、「装着方向への移動(スライド)」と定義する。
【0056】
その後、掛止用開口62cに小径部53を嵌め入れた状態で、キャッチ片6に加えていた下方への押し込み(押し下げ)を解除すると、図9(d)や図7(b)に示すように、キャッチ片6がワイヤスプリング41の付勢により上昇し、掛止用開口62cの開口端縁がアンカー5の掛止段差54に下方から掛止する(密着する)。なお、図9(d)でキャッチ片6の上昇方向の矢印を破線で描いたのは、この作動は、上述したように人為的な操作を要することなく、ワイヤスプリング41の付勢によって行われるためである。
【0057】
また、この装着状態では、図7(b)や図9(d)に示すように、装着状態ロック65(突起)が、アンカー5の掛止段差54(受入先端部55)の近傍に位置した状態となり、キャッチ片6のサブアッシー方向への移動を阻止するものである。すなわち、電子機器の作動に伴う振動等がヒートシンク1に加わって、例えばキャッチ片6がサブアッシー方向にスライドしようとしても、装着状態ロック65(突起)がアンカー5の掛止段差54(受入先端部55)に当接するため、このようなスライドが阻止されるものである。また、このため回路基板Bへの装着が完了したヒートシンク1は、回路基板Bから脱落することがなく、キャッチ片6やワイヤスプリング41もヒートシンク1から分離することがないものである。
また、一旦、装着したヒートシンク1を、回路基板Bから取り外す際には、図9に示した操作を逆の順序で行い、ヒートシンク1を図9(a)に示したサブアッシー状態で取り外すものである。
因みに、本実施例では、アンカー5をヒートシンク1の内側に設け、且つこのアンカー5で装着時のヒートシンク1の位置決めを図るため、基板面の有効利用が達成される(回路基板Bの有効面積を減少させることがない)ものである。
【0058】
なお、上述した図6〜図9の実施例では、キャッチ片6をワイヤスプリング41に対し可動状態に設けるものであったが、例えば図10に示すように、キャッチ片6をワイヤスプリング41に対しカシメやスポット溶接等で固定、つまりキャッチ片6がワイヤスプリング41に対して移動しない状態に設けても構わない。もちろん、このような固定であってもキャッチ片6は、ワイヤスプリング41の撓みや捻じれに伴って動くものである。すなわち、本実施例では、図10(a)に示すように、キャッチ片6は、本体部61と被保持部63とが全体的に略U字状断面を成すように折り曲げられ、これらの間でワイヤスプリング41の端部(主に折り返し部44)を挟持するように、強固に固定されている。また、開口部62としては、アンカー5の小径部53に嵌まる掛止用開口62cのみが形成されており、これは本体部61の折り返し61aを分断するように形成されている。
【0059】
そして、このようなキャッチ片6を伴ったワイヤスプリング41によってヒートシンク1を回路基板Bに装着するには、まずヒートシンク1を回路基板B上の規定位置に載せながらアンカー5の嵌め込みによって位置決めを行うものである。ここで図10(b)に示すヒートシンク1は、このような位置決めまでを行った状態を示している。
その後、ワイヤスプリング41によってヒートシンク1を装着するものであり、それには、図10(b)に示すように、まずワイヤスプリング41を変位量調整体71に載せるようにセットしながら、ワイヤスプリング41の両端に固定されたキャッチ片6を、下方に押し込みながら、なお且つヒートシンク1(アンカー5)から離反させるように拡開させて行く。この操作により、キャッチ片6(折り返し61a)が、アンカー5の掛止段差54よりも低い位置に至ったところで、キャッチ片6の掛止用開口62cを、アンカー5の小径部53に嵌め込むものである。このように、本実施例では、アンカー5の横方向(アンカー5に対してほぼ直角方向)から、キャッチ片6を嵌め込んで行くものである。
【0060】
そして、キャッチ片6の掛止用開口62cに小径部53を嵌め込んだ状態で、キャッチ片6に加えていた下方への押し込みを解除すると、図10(c)に示すように、キャッチ片6は、ワイヤスプリング41の弾性により上方に付勢されるが、掛止用開口62cの開口端縁が、掛止段差54(受入先端部55)の下部に当接し、ヒートシンク1が回路基板B上に装着(固定)される。
また、この装着状態では、図10(c)の斜視図に示すように、折り返し61aが掛止段差54(受入先端部55)に当接し得るため、この装着状態が維持ロックされるものである(折り返し61aが装着状態ロック65として機能する)。すなわち、電子機器の作動に伴う振動等がヒートシンク1に加わって、例えばキャッチ片6が、装着状態を解除する方向に移動しようとしても、折り返し61aがアンカー5の掛止段差54(受入先端部55)に当接するため、このような移動が阻止されるものである。また、このため回路基板Bに装着した後のヒートシンク1は、回路基板Bから脱落することがなく、ワイヤスプリング41もヒートシンク1から分離することがないものである。
【0061】
また、上述した実施例は、スプリング部材4として基本的にトーショーンバータイプのワイヤスプリング41を適用したが、スプリング部材4は必ずしもこのような形態に限定されるものではない。特に、キャッチ片6をスプリング部材4に対して可動状態に設ける場合にあっては、例えば図11(a)に示すようなコイルスプリング45を適用することが可能であり、例えばポスト24に、適宜の厚みを有するカラー状の変位量調整体71を先嵌めした後、その上にコイルスプリング45を嵌め込むことが考えられる。もちろん、この場合、図11(b)に示すように、キャッチ片6を押し下げながらスライドできるように形成するものである。
そして、ここでも要求される装着荷重に応じて、適宜の厚みの変位量調整体71(カラー)を選択することにより、コイルスプリング45の設置高が変更でき、装着時のコイルスプリング45の変位量を調節することができるものである。もちろん、コイルスプリング45の装着時の変位量を調節する観点からすれば、カラー状の変位量調整体71は、必ずしもコイルスプリング45の下部に位置させるだけでなく、コイルスプリング45の上部に位置させることも可能である。すなわち、その場合には、ポスト24にコイルスプリング45を先嵌めした後、カラー状の変位量調整体71を後嵌めする形態となる。
また、上記図11では一つのキャッチ片6に対し一つのアンカー5で、キャッチ片6の上向きの付勢を押さえるようにしているが、キャッチ片6の姿勢をより安定的に維持したい場合には、二つのアンカー5でキャッチ片6の上向きの付勢を押さえることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ヒートシンク(装着荷重調整機構を具えたヒートシンク)
2 ヒートシンク本体
3 装着手段
4 スプリング部材
5 アンカー
6 キャッチ片
7 装着荷重調整機構
2 ヒートシンク本体
21 ベース部
22 放熱フィン
23 位置決め
23a 位置決め用のピン
23b 位置決め用の穴
24 ポスト
25 組付用係止凸部
4 スプリング部材
41 ワイヤスプリング
42 中央トーション部
43 アーム部
43a 先端フック部
44 折り返し部
45 コイルスプリング
5 アンカー
5a 掛止部
51 本体部
52 抜け防止部
53 小径部
54 掛止段差
55 受入先端部
56 ローレット部
6 キャッチ片
61 本体部
61a 折り返し
62 開口部
62a 貫通用開口
62b 係止用開口
62c 掛止用開口
63 被保持部
64 サブアッシー状態ロック
65 装着状態ロック
7 装着荷重調整機構
71 変位量調整体
71A 調整用支柱
72 欠き込み
73 ガイド
B 回路基板
C 半導体回路素子
H 取付孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するにあたり、
ヒートシンク本体またはスプリング部材または、これらの両部材間に、装着状態におけるスプリング部材の変位量を調節する変位量調整体を設け、これによりヒートシンク本体を回路基板に固定する際の装着荷重を調整するようにしたことを特徴とする、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項2】
前記変位量調整体は、放熱フィンの形成を阻害しない位置及び形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項3】
前記変位量調整体は、ヒートシンク本体のベース部と一体で形成され、ヒートシンク本体形成後の二次加工において、要求される装着荷重に応じて所望の長さにカットされて成ることを特徴とする請求項1または2記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項4】
前記変位量調整体は、ヒートシンク本体やスプリング部材とは別の部材として形成されることを特徴とする請求項1または2記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項5】
前記変位量調整体は、スプリング部材が当接する当接先端部に、スプリング部材を受け入れ易くするガイドが形成されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項6】
前記スプリング部材とヒートシンク本体との間には、キャッチ片が可動状態に設けられ、またこのキャッチ片には常にスプリング部材の付勢が作用するものであり、
前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する以前の段階で、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けたサブアッシー状態を得るにあたっては、前記キャッチ片の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体の一部にキャッチ片を係止させて、サブアッシー状態を得るようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項7】
回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するようにしたヒートシンクにおいて、
前記ヒートシンク本体には、請求項1、2、3、4、5または6記載の装着荷重調整機構を適用して回路基板上に装着するようにしたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項1】
回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するにあたり、
ヒートシンク本体またはスプリング部材または、これらの両部材間に、装着状態におけるスプリング部材の変位量を調節する変位量調整体を設け、これによりヒートシンク本体を回路基板に固定する際の装着荷重を調整するようにしたことを特徴とする、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項2】
前記変位量調整体は、放熱フィンの形成を阻害しない位置及び形状に形成されることを特徴とする請求項1記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項3】
前記変位量調整体は、ヒートシンク本体のベース部と一体で形成され、ヒートシンク本体形成後の二次加工において、要求される装着荷重に応じて所望の長さにカットされて成ることを特徴とする請求項1または2記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項4】
前記変位量調整体は、ヒートシンク本体やスプリング部材とは別の部材として形成されることを特徴とする請求項1または2記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項5】
前記変位量調整体は、スプリング部材が当接する当接先端部に、スプリング部材を受け入れ易くするガイドが形成されることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項6】
前記スプリング部材とヒートシンク本体との間には、キャッチ片が可動状態に設けられ、またこのキャッチ片には常にスプリング部材の付勢が作用するものであり、
前記ヒートシンク本体を回路基板上に装着する以前の段階で、スプリング部材をヒートシンク本体に組み付けたサブアッシー状態を得るにあたっては、前記キャッチ片の位置を適宜変更させることで、ヒートシンク本体の一部にキャッチ片を係止させて、サブアッシー状態を得るようにしたことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の、ヒートシンクの装着荷重調整機構。
【請求項7】
回路基板上の半導体回路素子に圧着されるベース部と、このベース部から突出する放熱フィンとを具えて成るヒートシンク本体を、スプリング部材を用いて回路基板上に装着するようにしたヒートシンクにおいて、
前記ヒートシンク本体には、請求項1、2、3、4、5または6記載の装着荷重調整機構を適用して回路基板上に装着するようにしたことを特徴とするヒートシンク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−171583(P2011−171583A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35048(P2010−35048)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(510048037)
【出願人】(508269949)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(510048037)
【出願人】(508269949)
【Fターム(参考)】
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