説明

ヒートシールロール用瓶口形ヒートシール刃およびそれを用いたヒートシールロール

【課題】対をなすヒートシール刃の相互の近接変位に当っての、ヒートシール刃から被包装物およびシーラント層への熱伝達を有効に抑制してシール部分での発泡および皺の発生を抑えることにより、被包装物の充填が可能なシール温度幅を広げると共に、被包装物の高速充填下での安定した確実な融着接合を可能にする。
【解決手段】相互に近接させて互いに逆方向に回転駆動される一対のロールのそれぞれに取付けられ、表面が該ロールの周方向に沿って弧状をなすと共に、対向するこれらの相互間に包装用積層フィルムを挟持してその積層フィルムを融着接合させる、ヒートシールロール用ヒートシール刃であって、該ヒートシール刃表面の回転方向に先行する側の少なくとも1部が、窪んだ瓶口形シール刃にあっては、対向する該シール刃の少なくとも一方の瓶口凸部のうちの、シールに当って回転方向に先行する側の端部を除く高圧部分だけを、微細凹凸粗面部としてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装用フィルム、多くは積層フィルムにヒートシールを施すヒートシールロール用のヒートシール刃、なかでも、被包装物としての液体、液状物質等に対する夾雑物シールを行う自動充填包装装置に横シール刃として用いられるヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃および、それを用いたヒートシールロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動充填包装装置に用いられている前記ヒートシールロール用のヒートシール刃(以下、横シール刃とも言う。)の弧状表面は、一般的に、鏡面仕上げを施された平滑面とされ、図6に示すように、相互に近接して配置され、互いに逆方向に回転駆動される一対のロール111のそれぞれの胴周面上に、軸線方向に延在するように取付けられる。そして、自動充填包装装置による横シールは、前記一対のロール111が、図5に仮想線で示す位置から、実線で示す対向位置(シール位置)まで回動変位し、その位置において近接する包装用フィルム113を、横シール刃112によって相互に挟み付けることにより施すことができる。
【0003】
しかしながら、上記横シール方法においては、図5に仮想線で示す位置から、実線で示すシール位置に至るまでの間での、包装用フィルム113と横シール刃112との接触面積が大きいため、所定の設定温度に加熱されている横シール刃112から、包装用フィルム113を経て、その内側に連続的に供給される被包装物114に多量の熱が伝達されてしまう。このため、横シール刃112の表面温度が、図5に実線で示す作業位置に達するまでの間に低下し、一方で被包装物および、包装用フィルム113のシーラント層が不必要に加熱されてしまうという問題があった。
【0004】
なお、被包装物の不必要な加熱は、被包装物の各種の性質等を損ねるおそれがあり、また、シーラント層の不必要な加熱は、それの早期にして余剰の溶融をもたらしてシーラント層の粘度を低下させてしまうおそれがある。このシーラント層の粘度の低下は、図6に拡大断面図で例示するように、横シール時に被包装物114の一部を横シール部分115内に巻込む原因となり、この巻き込まれた被包装物114が、横シール刃112によるさらなる加熱によって融着接合された横シール部分115のシールを剥離させながら体積膨張(発泡)するという問題があった。
【0005】
上記問題点を解決するため、特許文献1では、横シール刃の表面全体に微細な凹凸粗面を形成し、横シール刃と包装用フィルムとの接触面積を小さくすることにより、横シール刃から包装用フィルムおよび被包装物への伝達熱量を抑え、横シール刃の温度低下および横シール部分への被包装物の巻込みおよびそれに起因する発泡の発生を抑える方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、シール刃のエッジ部分の表面温度は、そもそも放熱によって中央部に比べて低く、しかも特許文献1では、シール刃表面全体に均一に凹凸粗面を形成して包装用フィルムとの接触面積を小さくしているため、シール刃エッジ部分から包装用フィルムへの伝達熱量がさらに小さくなり、フィルムの未融着などのシール不良をもたらす虞がある。そのため、特許文献1の方法では、シール刃温度の下限値を、従来技術よりも高く設定しなければならないという問題点があった。
【0007】
とくに、ヒートシール刃表面の回転方向に先行する側の少なくとも1部が、窪んだ形状からなる瓶口形ヒートシール刃においては、該瓶口凸部の、シールに当って回転方向に先行する側の端部を除く部分が、他の部分に比べて高圧になっているため、同じ条件でヒートシールを行うと、その部分のシール圧力が高くなりすぎてしまい、シール部に皺ができたり、フィルムが切れて液漏れが発生するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−112454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題点を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、対をなすヒートシール刃の相互の近接変位に当っての、ヒートシール刃から被包装物およびシーラント層への熱伝達を有効に抑制してシール部分での発泡および皺の発生を抑えることにより、被包装物の充填が可能なシール温度幅(以下、シール許容温度幅と言う。)を広げると共に、被包装物の高速充填下での安定した確実な融着接合を可能にすることのできるヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃、とくには横シール刃を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、ヒートシール刃から包装用フィルムへの熱の伝わり方を、被包装物の種類等に合わせて有効にコントロールすることにより、シール許容温度幅を広げることのできるヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃、とくには横シール刃を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、従来技術が抱えている上述した問題を克服するために開発したものであり、相互に近接させて平行に対向配置され互いに逆方向に回転駆動される一対のロールの少なくとも一方に、その軸線方向に延在するように取付けられるものであって、表面が該ロールの周方向に沿って弧状をなすと共に、対向するこれらの相互間に包装用積層フィルムを挟持してその積層フィルムを融着接合させる、ヒートシールロール用ヒートシール刃であって、
該ヒートシール刃表面の回転方向に先行する側の少なくとも1部が、窪んだ瓶口形シール刃にあっては、対向する該シール刃の少なくとも一方の瓶口凸部のうちの、シールに当って回転方向に先行する側の端部(先行側端部)を除く高圧部分だけを、微細凹凸粗面部としてなることを特徴とするヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃を提案するものである。
【0011】
なお、本発明においては、前記凹凸粗面部の凹部深さが、1〜30μmであること、前記凹凸粗面部の凹凸平均間隔Smが15〜300μmの範囲および/または凹凸算術平均粗さRaが0.5〜5.0μmの範囲であること、前記凹凸粗面部は、軸線方向に平行なストライプ状粗面であること、および前記凹凸粗面部は、その粗さRaが中心に向って次第に、または回転方向に先行する側、あるいは後行する側に向って、傾斜状に粗くしたグラデーション状粗面であることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記ヒートシール刃の1〜複数個を、ロール本体の同周面上に、それの軸線方向に延在させた状態で着脱可能に配設してなるヒートシールロールを提案するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のヒートシール用の瓶口形ヒートシール刃によれば、一対のヒートシール刃の少なくとも一方の表面のうち、発泡の発生し易い中央部分にのみ、様々なパターンで凹凸粗面を形成することにより、ヒートシール刃から包装フィルムへの熱の伝わり方を有効にコントロールすることができるため、シール部内からの発泡の発生が抑制され、シール許容温度幅が広がり、生産性を高めることできると共に、高圧部分だけを凹凸粗面部としてシール温度を他の部分より低くすることで、シール部に皺ができたり、フィルムが切れたりすることがなく、包装用フィルムの、常に安定した確実な融着接合が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ヒートシール刃を用いた一対のヒートシールロールの、(a)一方のロール上に延在するヒートシール刃に凹凸粗面部を形成したもの(b)各ロール上に延在するヒートシール刃に凹凸粗面部を形成したものを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る瓶口形のヒートシール刃の一実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るヒートシール刃の凹凸粗面パターンを示す平面図である。
【図4】実施例1における、実施例および比較例のヒートシール部の外観を示す写真である。
【図5】自動充填包装装置の横シールロールの機能を示す略線縦断面図である。
【図6】横シール部分への被包装物の挟み込み残留状態を示す拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ヒートシールロールの一例として横シールロールを例示したものである。図中1は、相互に近接させて平行に配置されて、互いに逆方向に回転駆動される一対のロールを示し、2は、各ロール1に取付けられて、半径方向外方への突出下で、ロール1の軸線方向に延在するとともに、表面がロール1の円周方向に弧状をなすヒートシール刃、ここでは横シールを示す。なお、図1(a)は、一対のロール1のうち、一方のロール上に延在するヒートシール刃2に凹凸粗面部4が形成されたものであり、図1(b)は、一対の各ロール1上に延在するヒートシール刃2に、凹凸粗面部4が形成されたものである。
【0016】
それぞれのヒートシールロール3の横シール刃2は、ロール1に一本以上、多くは、それの円周方向に、等しい間隔をおいて複数本配設される。また、対をなすヒートシールロール3の横シール刃2のそれぞれは、それらのヒートシールロール3の同期した回転運動の下で、相互に協働して包装用フィルムを挟持し、そのフィルムのシーラント層を融着接合させてなる横シール部分を形成する。
【0017】
対をなすこのようなヒートシールロール3において、好ましくは、それぞれのロール1の各軸端部分に、横シール刃2表面より幾分半径方向に突出するフランジ5を設け、対をなすヒートシールロール3の、それぞれのフランジ周面の当接下で、相互にヒートシール位置に達したそれぞれの横シール刃2間に、包装用フィルムに対する所定の挟持クリアランスを確実に確保する。
【0018】
このように構成してなるヒートシールロール3を、自動充填包装装置に、横シールロールとして適用し、その横シールロールによって被包装物の夾雑物シールを行う場合には、包装用フィルムの巻取りロールから連続的に繰出し走行させたそのフィルムを、折返し手段によって幅方向に二つ折りにしてシーラント層を相互の対向姿勢とした後、二つ折りフィルムの遊端部分に、縦シールロールをもって連続的にヒートシールを施して、シーラント層がフィルムの長さ方向に融着接合された縦シール部分を形成し、次いで、縦シールを施されたフィルムの内側へ、充填ノズルを介して被包装物を連続的に供給し、続いて、図6に示すように、横シールロールとしての一対のヒートシールロール111、直接的には横シール刃112によって包装用フィルムに、それの長さ方向に所定の間隔をおいた横シール部分115を形成する。これによれば、所定量の被包装物を充填包装した包装袋が連続的に製造されることになる。
【0019】
ところで、本発明は、図1のヒートシールロールの周面上に配設される瓶口形ヒートシール刃について提案するものであり、図2に例示したようにヒートシール刃2’の回転方向上部の1部以上が窪んだ形状からなり、その瓶口凸部9のうちの先行側端部7aを除く部分全体に凹凸粗面部4が形成されている。この凹凸粗面部4の形成部分は、他の部分に比べて高圧になっているため、同じ条件でヒートシールを行うと、シール圧力が高くなりすぎてしまい、シール部に皺ができたり、フィルムが切れて液漏れが発生する虞がある。そこで、本発明では、前記高圧部分だけを凹凸粗面部4とし、シール温度を他の部分よりも低くすることにより、最適なシール状態を作ることにしたのである。なお、凹凸粗面部4は、ショットブラスト、サンドブラスト、グリットブラスト等あるいは磁石グラインダーや液体ホーニング等の粗面化処理の方法によって形成する。
【0020】
前述したように従来技術では、ヒートシール部内での発泡の発生を抑制するため、横シール刃112表面全体に凹凸粗面を形成して包装用フィルムとの接触面積を小さくすることを提案しているが、横シール刃112のエッジ部分と中央部分との表面温度およびシール圧力が、放熱や包装用フィルムとの接触面積の違いによって異なるため、従来技術の方法では、表面温度の低いシール刃エッジ部分から包装用フィルムへの伝達熱量が小さくなりすぎてしまい、フィルムの未融着などのシール不良をもたらす虞がある。そこで、本発明では、一対の瓶口形ヒートシール刃2’のうちの少なくとも一方の、瓶口凸部9表面のうち、表面温度の低い(発泡が発生し難い)先行側端部7aは平滑面とし、その他のシール圧力が高く、表面温度の高い(発泡が発生し易い)部分は、微細な凹凸粗面部4としたのである。
【0021】
このヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃2’を、横シール刃として用いた場合、横シール刃2’が、図5に仮想線で示す位置から、実線で示すヒートシール位置まで回動変位するまでの間、比較的小さな押圧力の下で包装用フィルムに接触しても、中央部分8は、包装用フィルム6に凸部だけで接触することになり、両者の接触面積は相当小さくなるので、横シール刃2’から包装用フィルム6および、それの内側の被包装物への伝達熱量を十分小さく抑えることができる。
【0022】
また、この伝達熱量の低減は、横シール刃2’の加熱温度を高くしても、被包装物等を不必要に加熱することがなく、従って、被包装物の変質等のおそれを十分に取り除くことができ、併せて、包装用フィルム6のシーラント層の早期にして余剰の溶融による粘度低下に起因する、横シール部分への被包装物の巻込み残留および発泡の発生の虞をもまた有効に取り除くことができる。
【0023】
しかも、本発明では、瓶口形横シール刃2’において表面温度の低い先行側端部7aには、凹凸粗面を形成しないため、端部7aからの包装用フィルム6への伝達熱量は、高いままに維持され、シール許容温度の下限値を従来技術よりも低温側に設定することができ、生産性を高めることができると共に、フィルムの未融着など、シール不良を生じる虞がなく、常に安定した確実な融着接合を行うことができる。
【0024】
したがって、本発明の瓶口形横シール刃2’によれば、横シール刃2’温度を、それの包装用フィルム6への接触タイミングの早遅にかかわらず、その全体にわたって十分均一にすることができ、結果として、被包装物の高速充填、いいかえれば、横シール刃2’と包装用フィルム6との接触時間を短縮させると共に、シール許容温度を広げてなお、発泡が発生することがなく、常に安定した確実な融着接合を行うことができるようになる。
【0025】
また、対をなす瓶口形横シール刃2’の瓶口凸部9に凹凸粗面部4を形成したことにより、横シール刃2’が、図5に実線で示すヒートシール位置に達したときは、包装用フィルム6を大きな押圧力で挟持して、瓶口凸部9表面の凸部を、包装用フィルム6の厚み方向の圧縮変形下でフィルム内へ十分に押込み、これにより、横シール刃2’の凹凸粗面部4は、凸部凹部の別なく、その全体にわたって包装用フィルム6に密着し、両者の大きな接触面積の下で、横シール刃2’から包装用フィルム6への、多量の熱量の供給が迅速に行われる。したがって、包装用フィルム6のシーラント層を、融着接合に必要な程度にまで溶融させることができるので、両シーラント層間からの被包装物の押し退けを適正に行うとともに、所期した通りの横シール部分を常に確実に形成することができる。
なお、瓶口凸部9の先行側端部7aは、平滑面であるため、従来技術よりも包装用フィルム6との接触面積が大きいが、先行側端部7a表面温度が低く、しかも面積が小さいため、先行側端部7aと包装用フィルム6との接触によって、被包装物の品質を損ねるほど、あるいは包装用フィルム6のシーラント層の粘度を下げ過ぎるほど加熱されるわけではないので、問題はない。
【0026】
なお、かかるヒートシール刃2’では、凹凸粗面4のJIS B0601で規定する平均間隔Smを、15〜300μmとすることが好ましく、この範囲にすることにより、加熱されたシール刃2’が、ヒートシール位置に達するまでの間での、シール刃2’と包装用フィルム6との接触面積を十分に低減させることができる。一方、凹凸平均間隔Smが300μmを越えると、包装用フィルム6がシール刃2’に、凸部以外の部分でも接触してしまい、それら両者の接触面積が大きくなるおそれがある。
【0027】
また、凹部の深さは、1〜30μmの範囲とすることが好ましい。凹部の深さが、1μm未満では、シール刃2’がヒートシール位置に達する前にシール刃2’の凹部が包装用フィルム6に接触するおそれが高く、一方、それが30μmを越えると、シール刃2’がヒートシール位置に達して、シール刃2’による包装用フィルムの挟持力が大きくなってなお、シール刃2’の凹部が包装用フィルム6に十分に接触できなくなって、シール刃表面と包装用フィルム6との接触面積を十分に増加させ得なくなる虞がある。
【0028】
また、前記凹凸粗面部4の、JIS B0601で規定する算術平均粗さRaは、0.5〜5.0μmの範囲とすることが好ましく、この範囲にすることにより、ヒートシール位置に達した際に、シール刃2’の接触圧力(押圧力)が弱くても、シール刃2’の凹部が包装用フィルム6に十分均一に接触し、熱が伝達されるため、極めて安定したヒートシールの高速充填が可能となる。
【0029】
また、本発明においては、シール刃の瓶口凸部9に形成する凹凸粗面部4は、その粗さやパターンによってシール刃2’から包装用フィルム6への熱の伝わり方が異なるため、被包装物の種類等によって凹凸粗面部4の粗さやパターンを変えることが好ましい。
【0030】
例えば、図3(a)に示すようにシール刃の瓶口凸部9全体に凹凸粗面部4を形成する場合には、瓶口凸部9からの熱の伝わりを全体的に少なくすることができる。なお、被包装物として、液体や粘体物全般を適用することができる。
【0031】
また、図3(b)のようにロール円周方向にストライプ状に粗面を形成すると、シール刃瓶口凸部9からの包装フィルム6への熱の伝わりを断続的に変化させることができるため、同一シール刃2’内でシール温度をコントロールすることができる。つまり、シール刃瓶口凸部9全体に連続的に凹凸粗面部4を形成すると、凹凸粗面部4がある粗さ以上になると、ヒートシール時に完全溶着できず、シール部が剥離する可能性があるが、凹凸粗面部4をストライプ状にすると、シール刃2’から包装フィルム6へ断続的に熱が供給されるため、粗面部4が前記と同じ粗さでもシール部が剥離する可能性を低くすることができる。また、被包装物としては液体や粘体物全体に使用することができ、幅広シールとしても使用することができる。
【0032】
また、図3(c)に示すように、シール刃の瓶口凸部9の表面粗さRaが、中心に向って次第に、または回転方向に先行する側の端部に向ってグラデーション状に粗くなっていることが好ましい。このようにグラデーション状に粗面を形成すると、シール板中央部8からの包装用フィルム6への熱の伝わりを傾斜的に少なくできるため、同一シール刃2’内でシール温度をコントロールすることができる。このため、例えば発泡し易い箇所や領域に対して傾斜的あるいは段階的に発泡を抑制することができるため、液体や粘体物全体に加えて、固形物を含んだ被包装物にも使用することができる。
【0033】
その他、本発明のヒートシール用ヒートシール刃では、その瓶口凸部9表面に碁盤目状、網目状、横目あるいは縦目波状に凹凸粗面を形成してもよい。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
瓶口凸部の先行側端部を除く部分を微細な凹凸粗面とした、この発明に係る横シール刃を用いた実施例のヒートシールロールと、ヒートシール刃の瓶口凸部表面全体に凹凸粗面を形成した横シール刃を用いた比較例1のヒートシールロール、および瓶口凸部の弧状表面を平滑鏡面とした横シール刃を用いた比較例2のヒートシールロールを用いて、それぞれ15μm厚みの二軸延伸ナイロンベースフィルムと、50μm厚みのリニアローデンシティポリエチレンシーラント層との積層構造からなるタテ63mm×ヨコ75mmの包装用フィルムに、充填速度を変えて水充填を行い、その際の水充填が可能なシール温度(シール許容温度)を測定した。なお、水の温度は30℃、充填量は16gとした。その結果を、表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
なお、実施例および比較例1の横シール刃の凹凸粗面は、圧縮空気流、遠心力等を用いてブラスト材を素材表面に吹き付け、表面の酸化物または付着物を除去すると同時に粗面化する方法によって形成し、その粗度が、JIS B0601で規定する算術平均粗さRaを触針式粗さ測定方法を用いて測定した値で1.3μmとなるようにした。
【0037】
表1の結果より、実施例のヒートシールロールでは、横シール刃の瓶口凸部の先行側を平滑面としたことにより、端部における包装用フィルムへの熱供給量を、比較例1のヒートシールロールよりも多くすることができるため、シール許容温度の下限値を低くすることができ、充填性能であるシール許容温度幅を広げることができた。
また、実施例のヒートシールロールでは、被包装物や包装用フィルムが不必要に加熱されることなく、比較例2よりも高いシール許容温度まで発泡を発生することなくヒートシールをすることができ、シール許容温度幅を広げることができた。
したがって、実施例のヒートシールロールによれば、横シール刃の加熱温度、液温度等の操縦要因のほか、気温その他の環境要因の変動を有効に吸収して、所期した通りの横シール部分を形成することが可能となる。
【0038】
また、図4に示すように、195℃でヒートシールした実施例と比較例2の包装用フィルムのシール部分を観察したところ、実施例のシール部分に発泡や皺がなく、良好な状態であったのに対し、比較例2ではシール部に発泡や皺があり、外観不良な状態であった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃および、それを用いたヒートシールロールは、液体や粘体物などを包装用フィルムに自動充填するための包装装置に適用される。
【符号の説明】
【0040】
1 ロール
2 ヒートシール刃(横シール刃)
2’ 瓶口形ヒートシール刃
3 ヒートシールロール
4 凹凸粗面部
5 フランジ
6 包装用フィルム
7 ヒートシール刃端部
7a 先行側端部
9 瓶口凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に近接させて平行に対向配置され互いに逆方向に回転駆動される一対のロールのそれぞれに、その軸線方向に延在するように取付けられるものであって、表面が該ロールの周方向に沿って弧状をなすと共に、対向するこれらの相互間に包装用積層フィルムを挟持してその積層フィルムを融着接合させる、ヒートシールロール用ヒートシール刃であって、
該ヒートシール刃表面の回転方向に先行する側の少なくとも1部が、窪んだ瓶口形シール刃にあっては、対向する該シール刃の少なくとも一方の瓶口凸部のうちの、シールに当って回転方向に先行する側の端部を除く高圧部分だけを、微細凹凸粗面部としてなることを特徴とするヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃。
【請求項2】
前記凹凸粗面部の凹部深さが、1〜30μmであることを特徴とする請求項1に記載のヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃。
【請求項3】
前記凹凸粗面部の凹凸平均間隔Smが15〜300μmの範囲および/または凹凸算術平均粗さRaが0.5〜5.0μmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃。
【請求項4】
前記凹凸粗面部は、軸線方向に平行なストライプ状粗面であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃。
【請求項5】
前記凹凸粗面部は、その粗さRaが中心に向って次第に、または回転方向に先行する側、あるいは後行する側に向って、傾斜状に粗くしたグラデーション状粗面であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートシールロール用の瓶口形ヒートシール刃。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の瓶口形ヒートシール刃の1〜複数個を、ロール本体の同周面上に、それの軸線方向に延在させた状態で着脱可能に配設してなるヒートシールロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228818(P2010−228818A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166167(P2010−166167)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2005−368260(P2005−368260)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000206233)大成ラミック株式会社 (56)
【出願人】(307026374)
【Fターム(参考)】