説明

ヒートポンプおよびその四方切換弁切換え方法

【課題】四方切換弁を複数個並列に接続しているヒートポンプにおいて、四方切換弁を確実に切換えることができるヒートポンプおよびその四方切換弁切換え方法を提供することを目的とする。
【解決手段】冷凍サイクル4を冷房サイクルと暖房サイクルとに切換える四方切換弁6A,6Bが複数個並列に接続されているヒートポンプ1において、四方切換弁6A,6Bの切換え時、冷凍サイクル4内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の四方切換弁6Bの作動圧力になったことを確認した後、作動圧力が高い方の四方切換弁6Bから順次切換えられる構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四方切換弁により冷凍サイクルを切換えるヒートポンプおよびその四方切換弁切換え方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷房運転および暖房運転が可能なヒートポンプは、冷凍サイクルを冷房サイクルから暖房サイクルに切換えるための四方切換弁を備えている。この四方切換弁は、ヒートポンプの容量が大きくなって冷媒の循環流量が多くなると、それに合わせてサイズを大型化しなければならなくなる。しかし、大型の四方切換弁は、生産数量が限られることから、価格が著しく高額になってしまうという問題が派生する。そこで、コスト低減のため、小型の四方切換弁を複数個並列に接続して使う方法が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、例えば20馬力のヒートポンプに対して、その冷媒流量に見合った四方切換弁を1個設けて冷凍サイクルを切換えるようにすると、四方切換弁が大型化して価格が跳ね上がってしまうため、10馬力クラスの小型の四方切換弁を2個並列に接続して使うことにより、コストをセーブしようというものである。上記特許文献1には、四方切換弁を複数個並列に接続した場合において、高低圧の圧力差を利用して移動される弁体が移動時のバイパス流量の増大により、圧力差が確保できなくなることに起因する四方切換弁の作動不良を、一方の四方切換弁をバイパス流が発生しない構成とすることにより解決したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−21276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、弁体を高低圧の圧力差を利用して移動させ、流路を切換えるようにしている四方切換弁においては、弁体を移動させるための圧力差の確保が重要であることは云うまでもないが、特に四方切換弁を複数個並列に接続した場合には、同じ大きさの四方切換弁を用いても、各々の弁に製造上不可避な個体差があって、作動圧力にバラツキが生じることは避けられない。このため、冷凍サイクルを切換える際に、2個の四方切換弁が同時に切換らずに、一方の四方切換弁が切換らないという不適合が発生することがある。
【0006】
つまり、2個の四方切換弁の作動圧力にバラツキがあった場合、一方の四方切換弁が或る圧力で切換わり、それにより高圧側の圧力が一時的に低下すると、他方の四方切換弁においては、作動圧力が確保できなくなり作動不良を起こすことがある。この場合、一方の四方切換弁が切換ってサイクルが切換わることから、他方の四方切換弁内の圧力関係が逆になるため、該弁の切換えが困難となり、その結果、暖房運転(四方切換弁は、一般に無励磁のときに冷房サイクル、励磁状態として弁体を移動させることにより暖房サイクルに切換えられるようになっている。)を行うことができなくなるという課題があった。
【0007】
なお、四方切換弁の作動不良は、作動圧力を高めに設定することによって、減少させることは可能であるが、作動圧力を高くすると、四方切換弁特有の切換音が大きくなってしまうという問題があり、特に大型の四方切換弁ではその傾向が強く、好ましい解決策とはなり得なかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、四方切換弁を複数個並列に接続しているヒートポンプにおいて、四方切換弁を確実に切換えることができるヒートポンプおよびその四方切換弁切換え方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するために、本発明のヒートポンプおよびその四方切換弁切換え方法は、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかるヒートポンプは、冷凍サイクルを冷房サイクルと暖房サイクルとに切換える四方切換弁が複数個並列に接続されているヒートポンプにおいて、前記四方切換弁の切換え時、冷凍サイクル内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の前記四方切換弁の作動圧力になったことを確認した後、前記作動圧力が高い方の前記四方切換弁から順次切換えられる構成とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、四方切換弁の切換え時、冷凍サイクル内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の四方切換弁の作動圧力になったことを確認した後、作動圧力が高い方の四方切換弁から順次切換えられる構成とされているため、複数個の四方切換弁の作動圧力間に製造上避け難いバラツキがあったとしても、各四方切換弁の作動圧力以上の圧力を確保し、高低の圧力差を利用して弁体を移動させることにより、各四方切換弁の切換えを行うことができる。従って、冷凍サイクルの切換え時、すなわち四方切換弁を励磁して冷房サイクルから暖房サイクルに切換える時の各四方切換弁の作動圧力のバラツキに起因する作動不良を解消し、冷凍サイクルを確実に切換えることができる。また、各四方切換弁の作動圧力を徒に大きくすることなく、最小限の圧力に抑えて四方切換弁の切換えを行うことができるため、切換音を抑制することができる。
【0011】
さらに、本発明のヒートポンプは、上記のヒートポンプにおいて、前記各四方切換弁の切換えは、作動圧力が高い方の前記四方切換弁のパイロット弁を励磁し、当該四方切換弁が実際に切換った直後に、作動圧力が低い方の前記四方切換弁のパイロット弁を励磁し、当該四方切換弁を切換える構成とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、各四方切換弁の切換えは、作動圧力が高い方の四方切換弁のパイロット弁を励磁し、当該四方切換弁が実際に切換った直後に、作動圧力が低い方の四方切換弁のパイロット弁を励磁し、当該四方切換弁を切換える構成とされているため、作動圧力が高い方の四方切換弁は、サイクル内の吐出圧力が作動圧力以上であることを確認して切換えられることから、作動圧力以上の圧力を確保して切換えることができる。また、作動圧力が低い方の四方切換弁も、作動圧力が高い方の四方切換弁が切換えられた直後にそれを検知して切換えられることから、作動圧力以上の圧力を確保した状態下で確実に切換えることができる。従って、複数個並列に接続されている四方切換弁の切換え不良を確実に解消することができる。
【0013】
さらに、本発明のヒートポンプは、上述のいずれかのヒートポンプにおいて、前記各四方切換弁の作動圧力および作動順序は、前記ヒートポンプの最初の運転時、前記複数個の四方切換弁を個別に順次励磁し、吐出圧力センサを介して前記各四方切換弁の作動圧力を確認することにより、それを比較して設定される構成とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、各四方切換弁の作動圧力および作動順序は、ヒートポンプの最初の運転時、複数個の四方切換弁を個別に順次励磁し、吐出圧力センサで各四方切換弁の作動圧力を確認することにより、それを比較して設定される構成とされているため、ヒートポンプを据え付け後の最初の運転時に、各四方切換弁の作動圧力および作動順序を設定することができ、その以後の四方切換弁の切換え時には、その作動圧力および作動順序に基づいて作動圧力が高い方の四方切換弁から順次切換えを行うことができる。従って、各四方切換弁に対して必要な作動圧力を確保し、並列に接続されている複数個の四方切換弁を確実に切換えることができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるヒートポンプの四方切換弁切換え方法は、冷凍サイクルを冷房サイクルと暖房サイクルとに切換える四方切換弁が複数個並列に接続されているヒートポンプの四方切換弁切換え方法において、前記ヒートポンプの最初の運転時、複数個の前記四方切換弁を個別に順次励磁し、吐出圧力センサで前記各四方切換弁の作動圧力を確認することにより、それを比較して前記各四方切換弁の作動圧力および作動順序を設定し、その以後の通常運転時での前記四方切換弁の切換え時には、冷凍サイクル内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の前記四方切換弁の作動圧力になったことを確認した後、前記作動圧力が高い方の前記四方切換弁から順次切換えることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、ヒートポンプの最初の運転時、複数個の四方切換弁を個別に順次励磁し、吐出圧力センサで各四方切換弁の作動圧力を確認することにより、それを比較して各四方切換弁の作動圧力および作動順序を設定し、それ以後の通常運転時での四方切換弁の切換え時には、冷凍サイクル内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の四方切換弁の作動圧力になったことを確認した後、作動圧力が高い方の四方切換弁から順次切換えるようにしているため、ヒートポンプを据え付け後の最初の運転時に、各四方切換弁の作動圧力および作動順序を設定することができ、その後の通常運転時には、四方切換弁の切換え時、四方切換弁の作動圧力間に製造上避け難いバラツキがあったとしても、各四方切換弁の作動圧力以上の圧力を確保し、高低の圧力差を利用して弁体を移動させることにより、各四方切換弁を確実に切換えることができる。従って、冷凍サイクルの切換え時、すなわち四方切換弁を励磁して冷房サイクルから暖房サイクルに切換える時の各四方切換弁の作動圧力のバラツキに起因する作動不良を解消し、暖房不能に陥る事態をなくすることができる。また、各四方切換弁の作動圧力を徒に大きくすることなく、最小限の圧力に抑えて四方切換弁の切換えを行うことができるため、切換音を抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のヒートポンプによると、複数個の四方切換弁の作動圧力間に製造上避け難いバラツキがあったとしても、各四方切換弁の作動圧力以上の圧力を確保し、高低の圧力差を利用して弁体を移動させることにより、各四方切換弁の切換えを行うことができるため、冷凍サイクルの切換え時、すなわち四方切換弁を励磁して冷房サイクルから暖房サイクルに切換える時の各四方切換弁の作動圧力のバラツキに起因する作動不良を解消し、冷凍サイクルを確実に切換えることができる。また、各四方切換弁の作動圧力を徒に大きくすることなく、最小限の圧力に抑えて四方切換弁の切換えを行うことができるため、切換音を抑制することができる。
【0018】
本発明のヒートポンプの四方切換弁切換え方法によると、ヒートポンプを据え付け後の最初の運転時に、各四方切換弁の作動圧力および作動順序を設定することができ、その後の通常運転時には、四方切換弁の切換え時、四方切換弁の作動圧力間に製造上避け難いバラツキがあったとしても、各四方切換弁の作動圧力以上の圧力を確保し、高低の圧力差を利用して弁体を移動させることによって、各四方切換弁を確実に切換えることができるため、冷凍サイクルの切換え時、すなわち四方切換弁を励磁して冷房サイクルから暖房サイクルに切換える時の各四方切換弁の作動圧力のバラツキに起因する作動不良を解消し、暖房不能に陥る事態をなくすることができる。また、各四方切換弁の作動圧力を徒に大きくすることなく、最小限の圧力に抑えて四方切換弁の切換えを行うことができるため、切換音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒートポンプの冷媒回路図である。
【図2】図1に示すヒートポンプに適用される四方切換弁の構成図である。
【図3】図1に示すヒートポンプの四方切換弁の作動順設定運転時のフローチャート図である。
【図4】図1に示すヒートポンプの四方切換弁の通常運転での切換え時のフローチャート図である。
【図5】図1に示すヒートポンプに適用される2個の四方切換弁の切換え動作時の作動圧力が変化する状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
本実施形態では、ヒートポンプ1として、圧縮機をガスエンジンで駆動するガスヒートポンプ式空気調和機(以下、GHPという。)の例について説明する。本実施形態のGHP1は、図1に示されるように、並列に接続されている4台の圧縮機2Aないし2Dを備えている。これらの圧縮機2Aないし2Dは、図示省略のガスエンジンにより、電磁クラッチ等を介して駆動可能とされている。
【0021】
4台の圧縮機2Aないし2Dから吐出された高温高圧の冷媒ガスは、吐出配管(冷媒配管)4Aを介して油分離器5に導入され、冷媒中の油が分離された後、互いに並列に接続されている複数個(2個)の四方切換弁6A,6Bに至り、この四方切換弁6A,6Bで冷房サイクルと暖房サイクルとに切換え可能とされている。冷房サイクルの場合、高圧冷媒ガスは、四方切換弁6A,6Bから冷媒配管4Bを介して室外熱交換器7A,7Bに導かれ、ここで室外送風機8により通風される外気と熱交換されることによって凝縮液化されるようになっている。
【0022】
この液冷媒は、冷媒配管4Cにより逆止弁9、過冷却熱交換器10を経て室内ユニット11に導かれ、電子膨張弁12で断熱膨張された後、室内熱交換器13に導入される。室内熱交換器13に導入された冷媒は、室内送風機14を介して送風される室内空気と熱交換され、この室内空気を冷却することによって蒸発ガス化される。この冷却空気は、室内送風機14を介して室内に送風されることにより、その室内の冷房に供される。
【0023】
室内熱交換器13で蒸発ガス化された低圧の冷媒ガスは、冷媒配管4Dを介して複数個の四方切換弁6A,6Bに至り、該四方切換弁6A,6Bにより吸入配管(冷媒配管)4Eを経てアキュームレータ15に導かれ、ここで冷媒中の液分が分離されることによりガス冷媒のみが圧縮機2Aないし2Dに吸入されるようになっている。各圧縮機2Aないし2Dに吸入された低圧の冷媒ガスは、再圧縮され、以下、同様のサイクルを繰り返すことによって冷房運転が行われる。
【0024】
上記のように、4台の圧縮機2Aないし2D、油分離器5、四方切換弁6A,6B、室外熱交換器7A,7B、逆止弁9、過冷却熱交換器10、電子膨張弁12、室内熱交換器13、およびアキュームレータ15が、冷媒配管4A,4B,4C,4D,4Eを介して接続されることにより、密閉サイクルの冷媒回路(冷凍サイクル)4が構成されている。なお、油分離器5と圧縮機2Aないし2Dへの吸入配管(冷媒配管)4Eとの間には、油分離器5で分離された潤滑油を各圧縮機2Aないし2D側に戻すための油戻し回路16が設けられ、この油戻し回路16には、それぞれ電磁弁17が設けられている。
【0025】
また、上記の冷媒回路(冷凍サイクル)4は、冷媒循環方向を四方切換弁6A,6Bを介して冷房サイクルと逆方向に切替えることにより暖房サイクルとされ、暖房運転ができるように構成されている。このため、逆止弁9に対してメイン膨張弁18を備えたバイパス回路19が接続されている。更に、冷媒回路4には、低外気温下の冷房運転時、冷媒の凝縮温度および高圧を適正範囲にコントロールして運転を維持するための回路、すなわちサブ液弁20およびサブ熱交換器(冷媒/冷却水熱交換器)21を備えたバイパス回路22が設けられている。
【0026】
サブ熱交換器(冷媒/冷却水熱交換器)21は、低外気温下での冷房運転時に、外気温の低下により室外熱交換器7A,7Bでの凝縮温度および高圧が低下し、それに伴って蒸発温度が低下するのをコントロールする機能を担うものであり、室外熱交換器7A,7Bで凝縮された高圧液冷媒をガスエンジンの冷却水回路内を循環している冷却水(エンジンを冷却することにより加熱された温水)と熱交換させて加熱することにより、冷媒の凝縮温度および蒸発温度を適正な温度に維持するものである。
【0027】
上記四方切換弁6A,6Bは、同一仕様、同一サイズの四方切換弁とされており、冷媒回路(冷凍サイクル)4中に互いに並列に接続されている。この四方切換弁6A,6B自体は、公知のものでよく、図2に示されるように、弁本体30の一側壁面には、高圧ポート31が設けられているとともに、他側壁面には、弁座部に低圧ポート32と、この低圧ポート32を挟んでその両側に設けられた第1ポート33および第2ポート34とが設けられており、更に、弁本体30の内部流路35内には、他側壁面の弁座部上を摺接するスライド弁体36が内蔵された構成とされている。
【0028】
上記スライド弁体36には、摺接面側に低圧ポート32を第1ポート33または第2ポート34のいずれか一方に連通する切換流路37が設けられるとともに、その両端部には一対のピストン38,39が結合されており、これらピストン38,39によって、内部流路35から区画された第1パイロット室40および第2パイロット室41が形成されている。なお、弁本体30内の内部流路35と第1パイロット室40および第2パイロット室41との間は、弁本体30とピストン38および39との間の微小隙間により冷媒ガスが微小漏れされるようになっている。
【0029】
また、四方切換弁6A,6Bには、第1パイロット室40および第2パイロット室41と低圧ポート32との連通状態を切換えるためのパイロット弁42が具備されており、高低の圧力差を第1パイロット室40および第2パイロット室41に与え、その圧力差でスライド弁体36をピストン38および39と共に移動させ、高圧ポート31および低圧ポート32と第1ポート33および第2ポート34との間の連通状態を切換えできるようにしている。
【0030】
パイロット弁42は、弁本体43と、該弁本体43の一端側に設置されている電磁コイル44と、該電磁コイル44を励磁することにより吸引されるプランジャ45と、電磁コイル44が無励磁状態のとき、プランジャ45を押し出すバネ46と、プランジャ45の動作に応動して第1パイロット室40または第2パイロット室41の一方を低圧ポート32に切換え連通させる弁体47とを備えた構成とされている。
【0031】
次に、上記四方切換弁6A,6Bの切換え制御する構成について説明する。
四方切換弁6A,6Bは、GHP1の据え付け後の最初の運転時に、四方切換弁作動順設定運転を行うことにより四方切換弁6A,6Bの作動圧力が確認され、作動順序が設定されるようになっている。この四方切換弁作動順設定運転は、図3に示されるように、ステップS1において、電源をONとした後、ステップS2において、サブエンジンの駆動を開始して4台の圧縮機2Aないし2DをONとすることにより、GHP1の運転を開始するようにしている。この状態で、四方切換弁6A,6Bは、パイロット弁42が無励磁であり、高圧ポート31と第2ポート34、低圧ポート32と第1ポート33がそれぞれ連通された冷房サイクルの状態となっている。
【0032】
かかる状態から、ステップS3において、四方切換弁A(6A)をON(パイロット弁42を励磁)にすると、プランジャ45が電磁コイル44により吸引され、弁体47により第1パイロット室40が低圧ポート32に連通されていた状態から第2パイロット室41が低圧ポート32に連通された状態に切換えられる。これによって、第2パイロット室41が低圧ポート32に連通され、低圧側に吸引される一方で、内部流路35内の高圧ガスが弁本低30とピストン38との隙間から第1パイロット室40の漏れ、第1パイロット室40内の圧力が吐圧圧力の上昇と共に徐々に上昇し、第2パイロット室41内の圧力との差圧でスライド弁体36が、図2の右方向に移動される。その結果、ステップS4の如く、四方切換弁A(6A)が切換わり、高圧ポート31と第1ポート33および低圧ポート32と第1ポート34が各々連通された暖房サイクルに切換えられる。
【0033】
この瞬間に高圧ポート31側の吐出圧力(高圧)が一時的に低下する。つまり、図5に示されるように、運転開始と共に除々に上昇していた吐出圧力がA点に達した時点でパイロット弁42が励磁状態とされた四方切換弁A(6A)が実際に切換わり、吐出圧力が一時的にA’点まで低下した後、再び上昇する。このA点からの圧力低下を吐出圧力センサ23で確認することによって、ステップS5の如く、四方切換弁A(6A)の作動圧力がAであることを確認することができる。四方切換弁A(6A)の作動圧力Aが確認できた段階でステップS6に移行し、圧縮機2Aないし2DをOFFとする。そして、ステップS7で高低圧をバランスさせる圧力バランス時間をカウントし、該時間が経過後、ステップS8において、再び圧縮機2Aないし2DをONとする。
【0034】
その後、ステップS9において、もう一方の四方切換弁B(6B)をON(パイロット弁42を励磁)とし、更にステップS10、S11、S12を経ることによって、上記四方切換弁A(6A)の場合と同様に、四方切換弁B(6B)の作動圧力がBであることを確認することができる。続いて、ステップS13において、四方切換弁A(6A)と四方切換弁B(6B)の作動圧力A,Bを比較し、その結果、ステップS14で作動圧力が高い方の四方切換弁B(6B)を第1切換弁と設定し、ステップS15で作動圧力が低い方の四方切換弁A(6A)を第2切換弁A(6A)と設定することにより、切換え時の作動順序を第1切換弁B,第2切換弁Aの順に設定し、四方切換弁6A,6Bの作動順設定運転を終了する。
【0035】
一方、通常の運転時に四方切換弁6A,6Bが切換えられる際には、上記によって設定された作動圧力および作動順序に基づいて、図4および図5に示されるように、四方切換弁6A,6Bが切換えられることになる。
すなわち、ステップS21において、圧縮機2Aないし2DがONされ、GHP1が運転されている状態で四方切換弁6A,6Bの切換運転が指令(冷房サイクルから暖房サイクルへの切換え指令)が出される(ステップS22)と、吐出圧力センサ23で検出される吐出圧力が第1切換弁B(6B)の作動圧力Bに達していることをステップS23で確認し、ステップS24において、第1切換弁B(四方切換弁6B)のパイロット弁42がON(励磁)される。
【0036】
これによって、作動圧力Bが高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)がステップS25で切換えられる。このB点での四方切換弁6B(第1切換弁B)の切換えにより、図5に示されるように、高圧ポート31側の吐出圧力(高圧)が一時的に低下するので、吐出圧力センサ23で検出される吐出圧力が低下した瞬間を捉え、四方切換弁6B(第1切換弁B)が切換った直後のA’’点で作動圧力Aが低い方の第2切換弁A(四方切換弁6A)のパイロット弁42をON(励磁)する(ステップS26)。その結果、ステップS27において、第2切換弁A(四方切換弁6A)を作動圧力Aよりも高い作動圧力A’’で切換えることが可能となる。
【0037】
斯くして、本実施形態によれば、冷媒回路(冷凍サイクル)4中に互いに並列に接続されている2個の四方切換弁6A,6Bの切換え時、冷凍サイクル4内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)の作動圧力Bになっていることを確認した後、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)から順次切換えられるようになっているため、複数個の四方切換弁6A,6Bの作動圧力間に製造上避け難いバラツキがあったとしても、それぞれの四方切換弁6A,6Bの作動圧力A,B以上の作動圧力を確保し、高低の圧力差を利用してスライド弁体36を移動させることにより、各四方切換弁6A,6Bの切換えを行うことができる。
【0038】
このため、冷凍サイクル4の切換え時、すなわち並列に接続されている複数個の四方切換弁6A,6Bを励磁して冷房サイクルから暖房サイクルに切換える時に、作動圧力のバラツキに起因して一方の四方切換弁6A,6Bが作動不良を起こす不適合を解消し、冷凍サイクル4を確実に切換えることができる。また、各四方切換弁6A,6Bの作動圧力を徒に大きくすることなく、最小限の圧力に抑えて四方切換弁6A,6Bの切換えを行うことができるため、切換音を抑制することができる。
【0039】
また、各四方切換弁6A,6Bの切換えは、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)のパイロット弁42を励磁し、当該四方切換弁6B(第1切換弁B)が実際に切換った直後に、作動圧力が低い方の四方切換弁6A(第2切換弁A)のパイロット弁42を励磁し、当該四方切換弁6A(第2切換弁A)を切換えるようにしているため、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)は、サイクル4内の吐出圧力が作動圧力B以上であることを確認して切換えられることから、確実に作動圧力B以上の圧力を確保して切換えることができる。一方、作動圧力が低い方の四方切換弁6A(第2切換弁A)も、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)が切換えられた直後にそれを検知して切換えられることから、確実に作動圧力A以上の圧力を確保した状態下で切換えることができる。従って、複数個並列に接続されている四方切換弁6A,6Bの切換え不良を確実に解消することができる。
【0040】
さらに、各四方切換弁6A,6Bの作動圧力A,Bおよび作動順序は、GHP1(ヒートポンプ1)の最初の運転時、複数個の四方切換弁6A,6Bを個別に順次励磁し、吐出圧力センサ23で各四方切換弁6A,6Bの作動圧力A,Bを確認することにより、それを比較して設定される構成とされているため、ヒートポンプを据え付け後の最初の運転時に、各四方切換弁の作動圧力A,Bおよび作動順序(第1切換弁B,第2切換弁A)を設定することにより、その以後の四方切換弁6A,6Bの切換え時には、その作動圧力および作動順序に基づいて、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)から順次切換えを行うことができる。従って、各四方切換弁6A,6Bに対して、それぞれ必要な作動圧力A,Bを確保し、並列に接続されている複数個の四方切換弁6A,6Bを確実に切換えることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、GHP1(ヒートポンプ1)の最初の運転時、複数個の四方切換弁6A,6Bを個別に順次励磁し、吐出圧力センサ23で各四方切換弁6A,6Bの作動圧力A,Bを確認することにより、それを比較して各四方切換弁6A,6Bの作動圧力および作動順序を設定し、それ以後の通常運転時での四方切換弁6A,6Bの切換え時には、冷凍サイクル4内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)の作動圧力Bになったことを確認した後、作動圧力が高い方の四方切換弁6B(第1切換弁B)から順次切換えるようにしているため、各四方切換弁6A,6Bの作動圧力A,B間に製造上避け難いバラツキがあったとしても、各四方切換弁6A,6Bの作動圧力以上の圧力を確保し、高低の圧力差を利用してスライド弁体36を移動させることによって、各四方切換弁6A,6Bを確実に切換えることができる。従って、冷凍サイクル4の切換え時、四方切換弁6A,6Bの作動不良を解消し、暖房不能に陥る事態をなくすることができる。
【0042】
なお、本発明は、上記実施形態にかかる発明に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。例えば、上記実施形態では、ヒートポンプ1について、GHP1に適用した例について説明したが、これに限らず、複数個の四方切換弁6A,6Bにより冷凍サイクル4が切換えられるようにされている電気式ヒートポンプ(EHP)にも同様に適用できることはもちろんである。
【0043】
また、室内ユニット12が1台の例について説明したが、室内ユニット12が複数台並列に接続されているマルチ型ヒートポンプ(空気調和機)にも同様に適用できることは云うまでもない。さらに、四方切換弁6A,6Bについても、上記実施形態で例示された構成の弁に制約されるものではなく、様々な構成の四方切換弁を用いてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 ヒートポンプ(GHP)
4 冷媒回路(冷凍サイクル)
6A 四方切換弁(第2切換弁A)
6B 四方切換弁(第1切換弁B)
23 吐出圧力センサ
42 パイロット弁
A,B 作動圧力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルを冷房サイクルと暖房サイクルとに切換える四方切換弁が複数個並列に接続されているヒートポンプにおいて、
前記四方切換弁の切換え時、冷凍サイクル内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の前記四方切換弁の作動圧力になったことを確認した後、前記作動圧力が高い方の前記四方切換弁から順次切換えられる構成とされていることを特徴とするヒートポンプ。
【請求項2】
前記各四方切換弁の切換えは、作動圧力が高い方の前記四方切換弁のパイロット弁を励磁し、当該四方切換弁が実際に切換った直後に、作動圧力が低い方の前記四方切換弁のパイロット弁を励磁し、当該四方切換弁を切換える構成とされていることを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ。
【請求項3】
前記各四方切換弁の作動圧力および作動順序は、前記ヒートポンプの最初の運転時、前記複数個の四方切換弁を個別に順次励磁し、吐出圧力センサを介して前記各四方切換弁の作動圧力を確認することにより、それを比較して設定される構成とされていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプ。
【請求項4】
冷凍サイクルを冷房サイクルと暖房サイクルとに切換える四方切換弁が複数個並列に接続されているヒートポンプの前記四方切換弁切換え方法において、
前記ヒートポンプの最初の運転時、複数個の前記四方切換弁を個別に順次励磁し、吐出圧力センサで前記各四方切換弁の作動圧力を確認することにより、それを比較して前記各四方切換弁の作動圧力および作動順序を設定し、その以後の通常運転時での前記四方切換弁の切換え時には、冷凍サイクル内の吐出圧力が、作動圧力が高い方の前記四方切換弁の作動圧力になったことを確認した後、前記作動圧力が高い方の前記四方切換弁から順次切換えることを特徴とするヒートポンプの四方切換弁切換え方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77975(P2012−77975A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222506(P2010−222506)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】