説明

ヒートポンプサイクル

【課題】熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードと熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードとを切替可能に構成されたヒートポンプサイクルにおいて、冷却運転モードにおけるCOPの低下を抑制する。
【解決手段】第1、第2圧縮機構11b、11cを有する二段圧縮式の圧縮機11を採用し、暖房運転モード(加熱運転モード)では、水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒のうち気相冷媒を第2圧縮機構11cに吸入させるように冷媒流路を切り替えることで、車室内送風空気(熱交換対象流体)を充分に加熱し、冷房運転モード(冷却運転モード)では、水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒を圧縮機11に吸入させないように冷媒流路を切り替えることで、圧縮機11の駆動に必要な動力が増加してしまうことを回避して、COPの低下を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードと熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードとを切替可能に構成されたヒートポンプサイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に、電気自動車の車両用空調装置に適用されて、熱交換対象流体である車室内への送風空気を冷却する冷房運転モード(冷却運転モード)と送風空気を加熱する暖房運転モード(加熱運転モード)とを切替可能に構成されたヒートポンプサイクルが開示されている。
【0003】
この特許文献1のヒートポンプサイクルは、冷媒を吐出して圧縮する圧縮機、送風空気と冷媒とを熱交換させる2つの第1、第2利用側熱交換器、車室外空気(外気)と冷媒とを熱交換させる室外熱交換器、および、車載電気機器の廃熱を熱源として冷媒を加熱する加熱手段等を有している。
【0004】
より具体的には、このヒートポンプサイクルでは、圧縮機として、低圧冷媒を吸入する吸入ポートと中間圧冷媒を吸入するインジェクションポートとを有する、いわゆる二段圧縮式の圧縮機を採用している。そして、送風空気を加熱する暖房運転モード時には、圧縮機から吐出された冷媒を第1利用側熱交換器へ流入させて放熱させることによって、送風空気を加熱している。
【0005】
さらに、暖房運転モード時には、第1利用側熱交換器から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧膨張させ、中間圧冷媒のうち液相冷媒については、さらに低圧冷媒となるまで減圧膨張させた後に、室外熱交換器にて蒸発させて外気から吸熱させている。一方、中間圧冷媒のうち気相冷媒については、加熱手段にて再加熱した後に、インジェクションポートへ流入させている。
【0006】
これにより、低外気温時のように、室外熱交換器にて冷媒が外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、車載電気機器の廃熱を利用して送風空気を充分に加熱して、車室内の暖房を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−223406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1のヒートポンプサイクルでは、送風空気を冷却する冷房運転モード時あるいは除湿運転モード時(冷却運転モード時)にも、圧縮機から吐出された冷媒を放熱させる室外熱交換器から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧膨張させ、中間圧冷媒のうち気相冷媒を加熱手段にて再加熱した後に、インジェクションポートへ流入させている。
【0009】
そのため、冷却運転モード時にも車載電気機器の廃熱が回収されてしまい、インジェクションポートから流入する気相冷媒流量が増加してしまうので、圧縮機の駆動に必要な動力が増加してしまう。また、低圧冷媒を蒸発させる第2利用側熱交換器へ流入する液相冷媒流量が低下するため、低圧冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)が低下して、サイクル全体としてのCOP(成績係数)が低下してしまう。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードと熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードとを切替可能に構成されたヒートポンプサイクルにおいて、冷却運転モードにおけるCOPの低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒を圧縮して吐出する第1圧縮機構(11b)と、第1圧縮機構(11b)から吐出された冷媒を圧縮して吐出する第2圧縮機構(11c)と、第2圧縮機構(11c)から吐出された冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させる第1利用側熱交換器(12)と、冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させる第2利用側熱交換器(20)と、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(18)と、外部熱源の有する熱量によって冷媒を加熱する加熱手段(14)と、加熱手段(14)へ流入する冷媒を減圧させる第1減圧手段(15a)と、室外熱交換器(18)へ流入する冷媒を減圧させる第2減圧手段(15b)と、第2利用側熱交換器(20)へ流入する冷媒を減圧させる第3減圧手段(15c)と、加熱手段から流出した冷媒の気液を分離して、分離された気相冷媒を第2圧縮機構(11c)吸入側へ流出させ、分離された液相冷媒を第2減圧手段(15b)側へ流出させる気液分離器(16)と、熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードの冷媒流路、および、熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードの冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)とを備え、
冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)は、冷却運転モード時に、第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を室外熱交換器(18)へ流入させるとともに、室外熱交換器(18)から流出した冷媒を第3減圧手段(15c)を介して第2利用側熱交換器(20)へ流入させる冷媒流路に切り替え、加熱運転モード時に、第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を第1減圧手段(15a)を介して加熱手段(14)へ流入させるとともに、室外熱交換器(18)から流出した冷媒を前記第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させるヒートポンプサイクルを特徴とする。
【0012】
これによれば、加熱運転モードでは、第1利用側熱交換器(12)にて第2圧縮機構(11c)から吐出された冷媒の有する熱量を熱交換対象流体に放熱させて、熱交換対象流体を加熱することができる。
【0013】
この際、加熱手段(14)にて加熱された冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒については、室外熱交換器(18)にて蒸発させることで外気から吸熱させ、分離された気相冷媒については、第2圧縮機構(11c)に吸入させている。従って、低外気温時のように冷媒が室外熱交換器(18)にて外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、加熱手段(14)にて加熱された冷媒によって熱交換対象流体を充分に加熱することができる。
【0014】
一方、冷却運転モードでは、室外熱交換器(18)にて第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒の有する熱量を外気に放熱させ、さらに、第2利用側熱交換器(20)にて室外熱交換器(18)から流出した冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることで、熱交換対象流体を冷却することができる。
【0015】
この際、冷媒が加熱手段(14)にて加熱されないので、気液分離器(16)から加熱された気相冷媒が第2圧縮機構(11c)に吸入されてしまうこともない。第2圧縮機構(11c)に吸入される気相冷媒流量が増加してしまうことを抑制して、第2圧縮機構(11c)の駆動に必要な動力が増加してしまうことを回避できる。さらに、第2利用側熱交換器(20)にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)の低下を抑制できる。その結果、冷却運転モードにおけるサイクルのCOPの低下を抑制できる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明では、冷媒を圧縮して吐出する第1圧縮機構(11b)と、第1圧縮機構(11b)から吐出された冷媒を圧縮して吐出する第2圧縮機構(11c)と、第2圧縮機構(11c)から吐出された冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させる第1利用側熱交換器(12)と、冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させる第2利用側熱交換器(20)と、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(18)と、外部熱源の有する熱量によって冷媒を加熱して第2圧縮機構(11c)吸入側へ流出させる加熱手段(14)と、加熱手段(14)へ流入する冷媒を減圧させる第1減圧手段(15a)と、室外熱交換器(18)へ流入する冷媒を減圧させる第2減圧手段(15b)と、第2利用側熱交換器(20)へ流入する冷媒を減圧させる第3減圧手段(15c)と、第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒の流れを分岐して、分岐された一方の冷媒を第1減圧手段(15a)側へ流出させ、分岐された他方の冷媒を室外熱交換器(18)側へ流出させる分岐部(13a)と、熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードの冷媒流路、および、熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードの冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)とを備え、
冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)は、冷却運転モード時に、分岐部(13a)にて冷媒の流れを分岐することなく第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を室外熱交換器(18)へ流入させるとともに、室外熱交換器(18)から流出した冷媒を第3減圧手段(15c)を介して第2利用側熱交換器(20)へ流入させる冷媒流路に切り替え、加熱運転モード時に、分岐部(13a)にて分岐された一方の冷媒を第1減圧手段(15a)を介して加熱手段(14)へ流入させ、さらに、他方の冷媒を第2減圧手段(15b)を介して室外熱交換器(18)へ流入させるとともに、室外熱交換器(18)から流出した冷媒を第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させるヒートポンプサイクルを特徴とする。
【0017】
これによれば、加熱運転モードでは、第1利用側熱交換器(12)にて第2圧縮機構(11c)から吐出された冷媒の有する熱量を熱交換対象流体に放熱させて、熱交換対象流体を加熱することができる。
【0018】
この際、分岐部(13a)にて分岐された他方の冷媒については、室外熱交換器(18)にて蒸発させることで外気から吸熱させ、一方の冷媒については、加熱手段(14)にて加熱して第2圧縮機構(11c)に吸入させている。従って、低外気温時のように分岐部(13a)にて分岐された他方の冷媒が室外熱交換器(18)にて外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、加熱手段(14)にて加熱された冷媒によって熱交換対象流体を充分に加熱することができる。
【0019】
一方、冷却運転モードでは、室外熱交換器(18)にて第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒の有する熱量を外気に放熱させ、さらに、第2利用側熱交換器(20)にて室外熱交換器(18)から流出した冷媒に熱交換対象流体から吸熱させて、熱交換対象流体を冷却することができる。
【0020】
この際、分岐部(13a)にて冷媒の流れを分岐させないので、加熱手段(14)にて加熱された冷媒が第2圧縮機構(11c)に吸入されてしまうこともない。従って、第2圧縮機構(11c)から吐出される冷媒の温度が不必要に上昇してしまうことを回避して、第2利用側熱交換器(20)にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)の低下を抑制できる。その結果、冷却運転モードにおけるサイクルのCOPの低下を抑制できる。
【0021】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載のヒートポンプサイクルにおいて、熱交換対象流体は、空調対象空間に送風される空気であって、第2利用側熱交換器(20)は、第1利用側熱交換器(12)に対して空気の流れ方向上流側に配置されていることを特徴とする。
【0022】
これによれば、冷却運転モード時に第2利用側熱交換器(20)にて冷却された空気を第1利用側熱交換器(12)にて再加熱することが可能となる。このような再加熱が可能となることで、第2利用側熱交換器(20)にて除湿した空気を第1利用側熱交換器(12)にて所望の温度まで上昇させる除湿運転が実現できる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明のように、車両用空調装置に適用される請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関(EG)を冷却する冷却水としてもよい。これにより、内燃機関(EG)の廃熱を有効に利用できる。
【0024】
また、請求項5に記載のように、車両用空調装置に適用される請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関(EG)から排出される排気ガスとしてもよい。これにより、内燃機関(EG)の廃熱を有効に利用できる。
【0025】
また、請求項6に記載のように、車両用空調装置に適用される請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクルであって、熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、外部熱源は、車両に搭載された電気機器を冷却する冷却水としてもよい。これにより、車両に搭載された電気機器の廃熱を有効に利用できる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態のヒートポンプサイクルの冷房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図3】第1実施形態の冷媒流路切替手段の作動状態を示す図表である。
【図4】第1実施形態の暖房運転モード時におけるヒートポンプサイクルの冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図5】第1実施形態の冷房運転モード時におけるヒートポンプサイクルの冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図6】第1実施形態および従来技術のヒートポンプサイクルのCOPを比較したグラフである。
【図7】第2実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図8】第2実施形態のヒートポンプサイクルの冷房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【図9】第2実施形態の暖房運転モード時におけるヒートポンプサイクルの冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【図10】他の実施形態のヒートポンプサイクルの冷房運転モード時の冷媒流路を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
図1〜6により、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明のヒートポンプサイクル10を、内燃機関(エンジン)EGおよび走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。このヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。
【0029】
従って、本実施形態のヒートポンプサイクル10は、図1、2の全体構成図に示すように、車室内を暖房する暖房運転モード(加熱運転モード)、および、車室内を冷房する冷房運転モード(冷却運転モード)の冷媒回路を切替可能に構成されている。なお、図1、2では、それぞれ暖房運転モード時および冷房運転モード時における冷媒の流れを実線矢印で示している。また、本実施形態の熱交換対象流体は送風空気である。
【0030】
また、ヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、この冷凍機油は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0031】
まず、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。より具体的には、本実施形態では、圧縮機11として、同一のハウジング11a内に、2つの固定容量型の第1、第2圧縮機構11b、11cを収容し、双方の圧縮機構11b、11cを共通する電動モータにて駆動する二段昇圧式の電動圧縮機を採用している。
【0032】
第1、第2圧縮機構11b、11cとしては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。また、電動モータは、図示しない空調制御装置から出力される制御信号によって回転数が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれを採用してもよい。そして、この回転数制御によって圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータは圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
【0033】
圧縮機11のハウジング11aには、低圧冷媒を吸入する吸入ポート11d、中間圧冷媒を流入させる中間圧ポート11e、および、高圧冷媒を吐出する吐出ポート11fが設けられている。そして、これらの各ポート11d〜11fが、ハウジング11a内部で第1、第2圧縮機構11b、11cに接続されている。
【0034】
具体的には、吸入ポート11dは、第1圧縮機構11bの吸入口へ接続され、中間圧ポート11eは、第1圧縮機構11bの吐出口と第2圧縮機構11cの吸入口に連通するように接続され、吐出ポート11fは、第2圧縮機構11cの吐出口へ接続されている。
【0035】
従って、第1圧縮機構11bは、吸入ポート11dから吸入された低圧冷媒を吸入して圧縮し、さらに、第2圧縮機構11cは、第1圧縮機構11bから吐出された冷媒と中間圧ポート11eから吸入された冷媒とを混合した中間圧冷媒を吸入して圧縮し、吐出ポート11fから吐出する。
【0036】
圧縮機11の吐出側には、第1利用側熱交換器としての室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する冷媒と後述する室内蒸発器20にて冷却された送風空気(冷風)とを熱交換させることで冷風を再加熱する加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細については後述する。
【0037】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒の流れを分岐する第1三方継手13aが接続されている。第1三方継手13aは、3つの流入出口を有し、この3つの流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、2つを冷媒流出口としたものである。このような三方継手は、各種配管を接合して構成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて構成してもよい。
【0038】
第1三方継手13aの一方の冷媒流出口は、後述する水−冷媒熱交換器14の冷媒側流路14aの入口側に接続され、他方の冷媒流出口は、第2三方継手13bの一方の冷媒流入口に接続されている。この第2三方継手13bの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。第2三方継手13bでは、第1三方継手13aに対して、3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、1つを冷媒流出口としている。
【0039】
また、第1三方継手13aの一方の冷媒流出口から水−冷媒熱交換器14の冷媒側流路14aの入口側へ至る冷媒配管には、水−冷媒熱交換器14へ流入する冷媒を減圧させる第1減圧手段としての第1電気式膨張弁15aが配置されている。第1電気式膨張弁15aは、第1三方継手13aの一方の冷媒流出口から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧膨張させる可変絞り機構である。
【0040】
具体的には、第1電気式膨張弁15aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成されている。また、第1電気式膨張弁15aは、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0041】
さらに、第1電気式膨張弁15aは、その絞り開度を全閉として、第1三方継手13aの一方の冷媒流出口から水−冷媒熱交換器14の冷媒側流路14aの入口側へ至る冷媒配管における冷媒の流れを遮断することができる。
【0042】
これにより、第1電気式膨張弁15aは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の第1電気式膨張弁15aは、冷房運転モードの冷媒流路と暖房運転モードの冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段としての機能を兼ね備えている。
【0043】
水−冷媒熱交換器14は、冷媒側流路14aを流れる冷媒と冷却水側流路14bを流れるエンジンEGの冷却水とを熱交換させて、冷却水の有する熱量によって冷媒側流路14aを流れる冷媒を加熱する加熱手段である。従って、本実施形態の加熱手段の外部熱源は、エンジンEGの冷却水である。なお、冷却水側流路14bを流れる冷却水を循環させる冷却水回路40の詳細については後述する。
【0044】
また、水−冷媒熱交換器14の具体的構成としては、冷却水側流路14bを形成する外側管の内側に冷媒側流路14aを形成する内側管を配置する二重管方式の熱交換器構成を採用できる。もちろん、冷媒側流路14aを内側管として、冷却水側流路14bを外側管としてもよい。さらに、冷媒側流路14aと冷却水側流路14bとを構成する冷媒配管同士をろう付け接合して熱交換させる構成を採用してもよい。
【0045】
その他にも、水−冷媒熱交換器14の具体的構成として、冷媒側流路14aとして冷媒を流通させる蛇行状のチューブあるいは複数本のチューブを採用し、隣合うチューブ間に冷却水側流路14bを形成し、さらに、冷媒と冷却水との熱交換を促進する波状のコルゲートフィンあるいは板状のプレートフィンを設ける熱交換器構成を採用してもよい。
【0046】
水−冷媒熱交換器14の冷媒側流路14aの出口側には、気液分離器16の入口側が接続されている。この気液分離器16は、水−冷媒熱交換器14から流出した中間圧冷媒の気液を分離するもので、気液分離器16の気相冷媒出口は、圧縮機11の中間圧ポート11eに接続され、液相冷媒出口は第2三方継手13bの他方の冷媒流入口に接続されている。
【0047】
なお、気液分離器16の気相冷媒出口から圧縮機11の中間圧ポート11eに至る冷媒配管には、気液分離器16の気相冷媒出口から圧縮機11の中間圧ポート11eへ冷媒が流れることのみを許容する図示しない逆止弁が配置されている。これにより、圧縮機11側から気液分離器16へ冷媒が逆流することを防止している。もちろん、この逆止弁を気液分離器16あるいは圧縮機11と一体的に構成してもよい。
【0048】
さらに、気液分離器16の液相冷媒出口から第2三方継手13bの他方の冷媒流入口へ至る冷媒配管には、室外熱交換器18へ流入する冷媒を減圧させる第2減圧手段としての第2電気式膨張弁15bが配置されている。第2電気式膨張弁15bは、気液分離器16の液相冷媒出口から流出した中間圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧膨張させる可変絞り機構であり、その基本的構成は、第1電気式膨張弁15aと同様である。
【0049】
従って、第2電気式膨張弁15bは、その絞り開度を全閉として気液分離器16の液相冷媒出口から第2三方継手13bの他方の冷媒流入口へ至る冷媒配管における冷媒の流れを遮断して、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。つまり、第2電気式膨張弁15bは、冷媒流路切替手段としての機能を兼ね備えている。
【0050】
また、第1三方継手13aの他方の冷媒流出口から第2三方継手13bの一方の冷媒流入口へ至る冷媒配管には、この冷媒配管を開閉する開閉弁17が配置されている。この開閉弁17は、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される電磁弁であり、開閉弁17の開閉状態によって、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、開閉弁17も冷媒流路切替手段を構成している。
【0051】
さらに、第2三方継手13bの冷媒流出口には、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器18が接続されている。この室外熱交換器18は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転モード時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転モード時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
【0052】
室外熱交換器18の出口側には、電気式三方弁19が接続されている。この電気式三方弁19は、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、上述した第1、第2電気式膨張弁15a、15bおよび開閉弁17とともに、冷媒流路切替手段を構成している。
【0053】
より具体的には、電気式三方弁19は、暖房運転モード時には、室外熱交換器18の出口側と第3三方継手13cの一方の冷媒流入口とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転モード時には、室外熱交換器18の出口側と第3電気式膨張弁15cの入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0054】
なお、第3三方継手13cの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。第3三方継手13cでは、第1三方継手13aに対して、3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、1つを冷媒流出口としている。
【0055】
また、第3電気式膨張弁15cの基本的構成は、第1、第2電気式膨張弁15a、15bと同様である。さらに、本実施形態の第3電気式膨張弁15cは、冷媒流路切替手段としての機能を兼ね備えていないので、その絞り開度を全閉とする機能を有していなくてもよい。
【0056】
第3電気式膨張弁15cの出口側には、第2利用側熱交換器としての室内蒸発器20の冷媒入口側が接続されている。この室内蒸発器20は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
【0057】
室内蒸発器20の出口側には、第3三方継手13cの一方の冷媒流入口が接続され、第3三方継手13cの冷媒流出口には、アキュムレータ21の冷媒入口側が接続されている。アキュムレータ21は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して余剰冷媒を蓄える低圧側気液分離器である。さらに、アキュムレータ21の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入ポート11d、すなわち第1圧縮機構11bの吸入側が接続されている。
【0058】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内凝縮器12、室内蒸発器20等を収容したものである。
【0059】
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0060】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0061】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0062】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器20および室内凝縮器12が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器20は、室内凝縮器12に対して、送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
【0063】
さらに、室内蒸発器20の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の空気流れ上流側には、室内蒸発器20にて冷却された冷風のうち、室内凝縮器12にて再加熱される風量の割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。また、室内凝縮器12の空気流れ下流側には、室内凝縮器12を通過して加熱された温風と室内凝縮器12を迂回して加熱されていない冷風と混合させる混合空間35が設けられている。
【0064】
また、ケーシング31の空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的に、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0065】
従って、エアミックスドア34が室内凝縮器12を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。なお、エアミックスドア34は、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0066】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0067】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、図示しないリンク機構を介して、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0068】
次に、水−冷媒熱交換器14の冷却水側流路14bを流れる冷却水を循環させる冷却水回路40について説明する。この冷却水回路40は、エンジンEGを冷却する冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路で、冷却水ポンプ41およびラジエータ42等が配置されている。
【0069】
冷却水ポンプ41は、冷却水回路40において冷却水をエンジンEG内へ圧送するもので、電動式のポンプあるいはエンジンEGの駆動軸から回転駆動力を得る機械式のポンプ等を採用することができる。ラジエータ42は、冷却水と室外空気とを熱交換させて冷却水を冷却する放熱用の熱交換器である。つまり、ラジエータ42は、冷却水がエンジンEGの内部を貫流する際に吸熱したエンジンEGの廃熱を大気に放熱するものである。
【0070】
そして、本実施形態の冷却水回路40では、図1、2の破線矢印に示すように、冷却水ポンプ41を作動させることにより、冷却水ポンプ41→エンジンEG→水−冷媒熱交換器14の冷却水側流路14b→ラジエータ42→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させている。
【0071】
また、冷却水回路40には、ラジエータ42を迂回させて冷却水を循環させるバイパス回路43および冷却水の温度が所定値(本実施形態では、90℃)以下になるとバイパス回路43側へ冷却水を流すサーモスタット弁44が配置されている。これにより、エンジンEG自体の温度が低下して、エンジンオイルの粘度増加によるフリクションロスの発生や、排気ガスの温度低下による排気ガス浄化用触媒の作動不良を抑制している。
【0072】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。図示しない空調制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器(例えば、圧縮機11、送風機32等)の作動を制御する。
【0073】
また、空調制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、室内蒸発器20からの吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0074】
さらに、空調制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、冷房運転モードと暖房運転モードとの選択スイッチ等が設けられている。
【0075】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を、図3〜5を用いて説明する。なお、図3は、本実施形態の冷媒流路切替手段の作動状態を示す図表であり、図4は、暖房運転モード時におけるヒートポンプサイクル10の冷媒の状態を示すモリエル線図であり、図5は、冷房運転モード時におけるヒートポンプサイクル10の冷媒の状態を示すモリエル線図である。
【0076】
まず、暖房運転モードについて説明する。暖房運転モードは、車両用空調装置の作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始する。暖房運転モードが開始されると、空調制御装置が冷媒流路切替手段を構成する第1、第2電気式膨張弁15a、15b、開閉弁17および電気式三方弁19の作動状態を図3に示すように切り替える。
【0077】
具体的には、第1、第2電気式膨張弁15a、15bを絞り状態として、その絞り通路面積開度を予め定めた開度とし、開閉弁17を閉じ、電気式三方弁19を室外熱交換器18の出口側と第3三方継手13cの一方の冷媒流入口とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、図1の実線矢印に示すように冷媒が流れる。
【0078】
この冷媒流路構成で、空調制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0079】
例えば、送風機32の目標送風量、すなわち送風機32の電動モータに出力する制御電圧については、目標吹出温度TAOに基づいて予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して、目標吹出温度TAOが高温時および低温時に中間温度時よりも高くなるように決定される。
【0080】
また、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、目標吹出温度TAOに基づいて予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器20の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと室内蒸発器20からの吹出空気温度の検出値との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器20からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように決定される。
【0081】
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAO、室内蒸発器20からの吹出空気温度の検出値および圧縮機11から吐出される冷媒温度の検出値を用いて、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。なお、暖房運転モードでは、送風機32から送風された送風空気の全風量が室内凝縮器12を通過するように、エアミックスドア34の開度を制御してもよい。
【0082】
そして、上記の如く決定された制御電圧および制御信号を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンを繰り返す。
【0083】
この際、ヒートポンプサイクル10では、図4に示すように、圧縮機11の吐出ポート11fから吐出された高圧冷媒(図4のa4点)が室内凝縮器12へ流入して放熱する(図4のa4点→b4点)。これにより、送風機32から送風されて室内蒸発器20を通過した送風空気が加熱される。
【0084】
室内凝縮器12から流出した冷媒は、開閉弁17が閉じられているので、第1電気式膨張弁15aへ流入して、中間圧冷媒となるまで減圧膨張される(図4のb4点→c4点)。第1電気式膨張弁15aにて減圧膨張された中間圧冷媒は、水−冷媒熱交換器14の冷媒側流路14aへ流入して冷却水側流路14bを流れる冷却水と熱交換して加熱され、そのエンタルピを上昇させる(図4のc4点→d4点)。
【0085】
水−冷媒熱交換器14から流出した冷媒は、気液分離器16にて気液分離される(図4のd4点→e4点およびd4点→f4点)。そして、気液分離器16にて分離された気相冷媒は、圧縮機11の中間圧ポート11eから圧縮機11の内部へ流入し、圧縮機11の内部で第1圧縮機構11b吐出冷媒(図4のa14点)と合流して(図4のa24点)、第2圧縮機構11cへ吸入されていく。
【0086】
一方、液相冷媒は第2電気式膨張弁15bへ流入して、低圧冷媒となるまで減圧膨張される(図4のf4点→g4点)。この際、第1、2電気式膨張弁15a、15bの絞り開度は、サイクルの成績係数(COP)を極大値に近づけるために、中間圧冷媒の圧力が高圧冷媒と低圧冷媒の圧力の積の平方根程度になるように調整されていることが望ましい。
【0087】
第2電気式膨張弁15bにて減圧膨張された低圧冷媒は、第2三方継手13bを介して、室外熱交換器18へ流入する。室外熱交換器18へ流入した低圧冷媒は、外気から吸熱して蒸発する(図4のg4点→h4点)。
【0088】
室外熱交換器18から流出した冷媒は、電気式三方弁19が室外熱交換器18の出口側と第3三方継手13cの一方の冷媒流入口とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、第3三方継手13cを介して、アキュムレータ21へ流入して気液分離される。そして、冷房運転モードと同様に、分離された気相冷媒(図4のa04点)が圧縮機11の吸入ポート11dから吸入されて再び圧縮される。
【0089】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1では、暖房運転モード時に、室内凝縮器12にて圧縮機11の第2圧縮機構11cから吐出された冷媒の有する熱量を送風空気に放熱させて、加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
【0090】
この際、水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒の気液を分離して、分離された液相冷媒については、室外熱交換器18にて蒸発させることで外気から吸熱させ、分離された気相冷媒については、中間圧ポート11eから圧縮機11(具体的には、第2圧縮機構11c)へ吸入させている。
【0091】
従って、低外気温時のように冷媒が室外熱交換器18にて外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒によって送風空気を充分に加熱することができる。
【0092】
次に、冷房運転モードについて説明する。冷房運転モードは、車両用空調装置の作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始する。冷房運転モードが開始されると、空調制御装置が冷媒流路切替手段を構成する第1、第2電気式膨張弁15a、15b、開閉弁17および電気式三方弁19の作動状態を図3に示すように切り替える。
【0093】
具体的には、第1、第2電気式膨張弁15a、15bを全閉状態とし、開閉弁17を開き、電気式三方弁19を室外熱交換器18の出口側と第3電気式膨張弁15cの入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、さらに、第3電気式膨張弁15cを冷媒を減圧膨張させる絞り状態として、その絞り通路面積開度を予め定めた開度とする。これにより、図2の実線矢印に示すように冷媒が流れる。
【0094】
この状態で、空調制御装置が、暖房運転モードと同様に、所定の制御周期毎に、検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンを車両用空調装置の作動停止が要求されるまで繰り返す。
【0095】
この際、ヒートポンプサイクル10では、図5に示すように、圧縮機11の吐出ポート11fから吐出された高圧冷媒(図5のa5点)が室内凝縮器12へ流入して放熱する(図5のa5点→b15点)。これにより、送風機32から送風されて室内蒸発器20にて冷却された冷風のうち、室内凝縮器12を通過する冷風が加熱される。
【0096】
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、第1、2電気式膨張弁15a、15bが全閉状態になっているとともに開閉弁17が開いているので、第1三方継手13a→開閉弁17→第2三方継手13bの順に流れて、室外熱交換器18へ流入する。室外熱交換器18へ流入した冷媒は外気と熱交換してさらに冷却されて、そのエンタルピを低下させる(図5のb15点→b25点)。
【0097】
室外熱交換器18から流出した冷媒は、電気式三方弁19が、室外熱交換器18の出口側と第3電気式膨張弁15cの入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているとともに第3電気式膨張弁15cが絞り状態となっているので、第3電気式膨張弁15cにて低圧冷媒となるまで減圧膨張される(図5のb25点→g5点)。
【0098】
第3電気式膨張弁15cにて減圧膨張された低圧冷媒は、室内蒸発器20へ流入して送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風空気が冷却される。室内蒸発器20から流出した冷媒は、第3三方継手13cを介してアキュムレータ21へ流入して気液分離される。そして、分離された気相冷媒(図5のa05点)が圧縮機11の吸入ポート11dから吸入されて再び圧縮される。
【0099】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1では、冷房運転モード時に、室内蒸発器20にて送風空気を冷却するとともに、エアミックスドア34の開度を調整することによって、室内蒸発器20にて冷却された冷風を室内凝縮器12にて再加熱して、乗員の所望の温度となった空調風を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
【0100】
さらに、冷房運転モード時のヒートポンプサイクル10のサイクル構成によれば、室内蒸発器20における冷媒蒸発温度を低下させて送風空気を除湿し、除湿した送風空気を室内凝縮器12にて所望の温度まで上昇させることができる。すなわち、冷房運転モードと全く同様のサイクル構成で、車室内の除湿を実現することもできる。
【0101】
さらに、本実施形態では、冷房運転モード時に水−冷媒熱交換器14にて冷媒を加熱しないので、気液分離器16から加熱された気相冷媒が第2圧縮機構11cに吸入されてしまうことがない。従って、圧縮機11の吐出ポート11fから吐出される冷媒の温度が不必要に上昇してしまうことを回避して、室内蒸発器20にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)の低下を抑制できる。また、圧縮機での冷媒の圧縮を2段階で行うため、圧縮比を小さくできるので、圧縮機効率が良くなり、圧縮機11の駆動に必要な動力を低減することができる。
【0102】
その結果、図6に示すように、従来技術に対して、冷房運転モード時のヒートポンプサイクル10のCOP(成績係数)を向上させることができる。なお、図6は、本実施形態のヒートポンプサイクル10のCOPと従来技術のヒートポンプサイクルのCOPとを比較したグラフである。
【0103】
また、図6に示すCOP比とは、従来技術におけるヒートポンプサイクルのCOPに対する本実施形態のヒートポンプサイクルのCOPの比である。さらに、図6の運転条件は、暖房運転モードでは、外気温−20℃、暖房能力3.1kW、エンジンEGの廃熱量0.5kW、冷房運転モードでは、外気温40℃、冷房能力3.0kWである。
【0104】
(第2実施形態)
本実施形態では、図7、8の全体構成図に示すように、第1実施形態の第1三方継手13aを、室内凝縮器12から流出した冷媒の流れを分岐して、分岐された一方の冷媒を第1電気式膨張弁15a側へ流出させ、分岐された他方の冷媒を室外熱交換器18側へ流出させる分岐部として用いることで、ヒートポンプサイクル10のサイクル構成を簡素化した例を説明する。
【0105】
なお、図7、8では、それぞれ暖房運転モード時および冷房運転モードの冷媒の流れを実線矢印で示している。さらに、図7、8では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面においても同様である。
【0106】
より具体的には、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、水−冷媒熱交換器14の冷媒側流路14aの出口側を直接、圧縮機11の中間圧ポート11eへ接続している。従って、冷媒側流路14aから流出した冷媒の気液を分離する気液分離器16および気液分離器16の液相冷媒出口に接続される第2三方継手13bは廃止されている。
【0107】
さらに、第1三方継手13aの冷媒流出口から開閉弁17入口側へ至る冷媒流路と開閉弁17出口側から室外熱交換器18入口側へ至る冷媒流路とを接続して、開閉弁17を迂回させるように冷媒を流すバイパス通路22を設けている。そして、このバイパス通路22に第2電気式膨張弁15bを配置している。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0108】
従って、本実施形態の車両用空調装置1を作動させると、暖房運転モード時には、空調制御装置が、第1実施形態と同様に、ヒートポンプサイクル10の第1、第2電気式膨張弁15a、15b、開閉弁17および電気式三方弁19の作動状態を図3に示すように切り替える。これにより、図7の実線矢印に示すように冷媒が流れる。
【0109】
そして、図9のモリエル線図に示すように、圧縮機11の吐出ポート11fから吐出された高圧冷媒(図9のa9点)が室内凝縮器12にて放熱して(図9のa9点→b9点)、第1三方継手13aへ流入する。この際、開閉弁17が閉じられているとともに、第1、第2電気式膨張弁15a、15bが絞り状態となっているので、第1三方継手13aにて冷媒の流れが分岐される。
【0110】
第1三方継手13aにて分岐された一方の冷媒は、第1電気式膨張弁15aへ流入して、中間圧冷媒となるまで減圧膨張され(図9のb9→c9点)、水−冷媒熱交換器14にて加熱され、そのエンタルピを上昇させる(図9のc9点→d9点)。水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒は、圧縮機11の中間圧ポート11eへ流入する。
【0111】
圧縮機11の中間圧ポート11eへ流入した冷媒は、圧縮機11の内部で第1圧縮機構11b吐出冷媒(図9のa19点)と合流して(図9のa29点)、第2圧縮機構11cへ吸入されていく。
【0112】
また、第1三方継手13aにて分岐された他方の冷媒は、第2電気式膨張弁15bへ流入して、低圧冷媒となるまで減圧膨張され(図9のb9→g9点)、室外熱交換器18にて外気から吸熱して蒸発する(図9のg9点→a09点)。この際、第1電気式膨張弁15aの絞り開度は、中間圧ポート11eへ流入する冷媒が予め定めた所定過熱度となるように調整されることが望ましい。従って、ヒートポンプサイクル10に、中間圧ポート11eの過熱度を検出する過熱度検出手段を追加してもよい。
【0113】
室外熱交換器18から流出した冷媒は、第1実施形態と同様に、第3三方継手13cおよびアキュムレータ21を介して、圧縮機11の吸入ポート11dから吸入されて再び圧縮される。従って、本実施形態の冷房運転モードでは、室内凝縮器12にて圧縮機11の第2圧縮機構11cから吐出された冷媒の有する熱量を送風空気に放熱させて、第1実施形態と同様に、車室内の暖房を実現することができる。
【0114】
この際、室内凝縮器12から流出した冷媒の流れを第1三方継手13aにて分岐して、一方の冷媒については、水−冷媒熱交換器14にて加熱した後に中間圧ポート11eから圧縮機11(具体的には、第2圧縮機構11c)へ吸入させ、他方の冷媒については、室外熱交換器18にて蒸発させることで外気から吸熱させている。
【0115】
従って、低外気温時のように冷媒が室外熱交換器18にて外気から充分に吸熱できない運転条件であっても、水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒によって送風空気を充分に加熱することができる。
【0116】
一方、冷房運転モード時には、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路が、図8に示すように、圧縮機11の吐出ポート11f→室内凝縮器12→(第1三方継手13a→)開閉弁17→室外熱交換器18→(電気式三方弁19→)第3電気式膨張弁15c→室内蒸発器20→(第3三方継手13c)→アキュムレータ21→圧縮機11の吸入ポート11dの順に循環するサイクルに切り替えられる。
【0117】
従って、本実施形態の冷房運転モード時におけるヒートポンプサイクル10の冷媒の状態は、第1実施形態の図6のモリエル線図と同様となり、第1実施形態と全く同様に、車室内の冷房を実現することができる。
【0118】
さらに、本実施形態では、冷房運転モード時に第1三方継手13aにて冷媒の流れを分岐させないので、水−冷媒熱交換器14にて加熱された冷媒が第2圧縮機構11cに吸入されてしまうことがない。従って、圧縮機11の吐出ポート11fから吐出される冷媒の温度が不必要に上昇してしまうことを回避して、室内蒸発器20にて冷媒が送風空気から吸熱する吸熱量(冷凍能力)の低下を抑制できる。
【0119】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0120】
(1)上述の実施形態では、冷房運転モード時に高圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧膨張させる第3減圧手段として第3電気式膨張弁15cを採用した例を説明したが、第3減圧手段はこれに限定されない。例えば、第3減圧手段では、全閉機能を要求されないので、温度式膨張弁を採用してもよい。
【0121】
このような温度式膨張弁としては、室内蒸発器20出口側の冷媒通路に配置された感温部を有し、冷房運転モード時に室内蒸発器20出口側冷媒の温度と圧力とに基づいて室内蒸発器20出口側冷媒の過熱度を検知し、室内蒸発器20出口側冷媒の過熱度が予め設定された所定値となるように機械的機構により弁開度(冷媒流量)を調整するものを採用できる。
【0122】
また、第3減圧手段として、冷媒を減圧する冷媒減圧手段としての機能を果たすとともに、高速で噴出する冷媒流の吸引作用によって冷媒の循環を行う冷媒循環手段としての機能を果たすエジェクタを採用してもよい。
【0123】
具体的には、エジェクタは、冷媒を減圧させるノズル部、並びに、ノズル部から噴射される高速度の噴射冷媒の流れによって冷媒を吸引する冷媒吸引口および噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の冷媒通路面積を徐々に拡大して混合冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換するディフューザ部が形成されたボデー部を有して構成されるものである。
【0124】
このノズル部としては、絞り通路面積が固定された固定ノズル部を採用してもよいし、冷媒通路面積を変更可能に構成された可変ノズル部を採用してもよい。可変ノズル部は、ノズル部の内部に配置されてノズル部の冷媒通路面積を調整する調整するニードル弁、このニードル弁をノズル部の軸方向に変位させるステッピングモータからなる電動アクチュエータを有して構成されるものである。
【0125】
そして、第1実施形態のヒートポンプサイクル10の第3減圧手段としてエジェクタ151を適用する場合の一例として、図10の全体構成図に示すように、電気式三方弁19とエジェクタ151の冷媒流入口との間に冷媒の流れを分岐する分岐部152を配置し、分岐された一方の冷媒をエジェクタ151へ流入させる。さらに、エジェクタ151の冷媒流出口に室内蒸発器20を接続する。
【0126】
一方、分岐された他方の冷媒については、固定絞り等の減圧手段153を介して第2室内蒸発器20aへ流入させ、第2室内蒸発器20aの冷媒出口をエジェクタ151の冷媒吸引口に接続すればよい。また、室内空調ユニット30においては、室内蒸発器20を第2室内蒸発器20aの空気流れ上流側に配置すればよい。なお、図10では、冷房運転モード時の冷媒の流れを示している。
【0127】
これにより、冷房運転モード時に、エジェクタ151のディフューザ部における昇圧作用によって、室内蒸発器20の冷媒蒸発温度を第2室内蒸発器20aの冷媒蒸発温度よりも上昇させることができる。
【0128】
従って、室内蒸発器20および第2室内蒸発器20aの冷媒蒸発温度と室内送風空気との温度差を確保して、送風空気を効率的に冷却することができる。さらに、ディフューザ部における昇圧作用により圧縮機11の吸入圧を上昇させて、圧縮機11の駆動動力を低減できるので、冷房運転時のCOPを向上させることができる。もちろん、第2実施形態のヒートポンプサイクル10の第3減圧手段として、エジェクタを採用してもよい。
【0129】
(2)上述の実施形態では、圧縮機11として、第1、第2圧縮機構11b、11cを共通する電動モータにて駆動する二段昇圧式の電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機の形式はこれに限定されない。もちろん、2つの固定容量型の第1、第2圧縮機構11b、11cを、異なる電動モータにて駆動する二段昇圧式の電動圧縮機を採用してもよい。さらに、第1、第2圧縮機構11b、11cは同一のハウジング11aに収容されている必要はなく、2つの異なる圧縮機を直列的に配置してもよい。
【0130】
(3)上述の実施形態では、第1、第2電気式膨張弁15a、15b、開閉弁17および電気式三方弁19によって、冷媒流路切替手段を構成した例を説明したが、冷媒流路切替手段はこれに限定されない。
【0131】
例えば、第1実施形態において、第1三方継手13aを廃止して、暖房運転モード時には、室内凝縮器12の出口側と第1電気式膨張弁15aの入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転モード時には、室内凝縮器12と第2三方継手13bの一方の冷媒流入口とを接続する冷媒流路に切り替える電気式三方弁を採用してもよい。
【0132】
また、上述の実施形態では、第1、第2減圧手段として、全閉機能を有する第1、第2電気式膨張弁15a、15bを採用することで、第1、第2電気式膨張弁15a、15bが冷媒流路切替手段としての機能を兼ね備える例を説明したが、もちろん、第1、第2電気式膨張弁15a、15bとして全閉機能を有していない電気式膨張弁を採用し、第1、第2電気式膨張弁15a、15bの上流側あるいは下流側に開閉弁を配置してもよい。この場合は、開閉弁が冷媒流路切替手段を構成することになる。
【0133】
(4)上述の実施形態では、外部熱源としてエンジンEGの冷却水を採用した例を説明したが、外部熱源はこれに限定されない。例えば、ヒートポンプサイクル10を車両用空調装置に適用する場合には、外部熱源としてエンジンEGから排出される排気ガスを採用してもよいし、車両に搭載されたインバータ、電動モータ等電気機器を冷却する冷却水を採用してもよい。
【0134】
(5)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル10が、圧縮機11吐出冷媒が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【0135】
(6)上述の実施形態では、本発明のヒートポンプサイクル10を車両用空調装置に適用した例を説明したが、本発明の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0136】
11 圧縮機
11b 第1圧縮機構
11c 第2圧縮機構
12 室内凝縮器
13a〜13c 第1〜第3三方継手
14 水−冷媒熱交換器
15a〜15c 第1〜第3電気式膨張弁
16 気液分離器
17 開閉弁
18 室外熱交換器
19 電気式三方弁
20 室内蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する第1圧縮機構(11b)と、
前記第1圧縮機構(11b)から吐出された冷媒を圧縮して吐出する第2圧縮機構(11c)と、
前記第2圧縮機構(11c)から吐出された冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させる第1利用側熱交換器(12)と、
冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて前記第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させる第2利用側熱交換器(20)と、
冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(18)と、
外部熱源の有する熱量によって冷媒を加熱する加熱手段(14)と、
前記加熱手段(14)へ流入する冷媒を減圧させる第1減圧手段(15a)と、
前記室外熱交換器(18)へ流入する冷媒を減圧させる第2減圧手段(15b)と、
前記第2利用側熱交換器(20)へ流入する冷媒を減圧させる第3減圧手段(15c)と、
前記加熱手段から流出した冷媒の気液を分離して、分離された気相冷媒を前記第2圧縮機構(11c)吸入側へ流出させ、分離された液相冷媒を前記第2減圧手段(15b)側へ流出させる気液分離器(16)と、
前記熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードの冷媒流路、および、前記熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードの冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)とを備え、
前記冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)は、
前記冷却運転モード時に、前記第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を前記室外熱交換器(18)へ流入させるとともに、前記室外熱交換器(18)から流出した冷媒を前記第3減圧手段(15c)を介して前記第2利用側熱交換器(20)へ流入させる冷媒流路に切り替え、
前記加熱運転モード時に、前記第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を前記第1減圧手段(15a)を介して前記加熱手段(14)へ流入させるとともに、前記室外熱交換器(18)から流出した冷媒を前記第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させることを特徴とするヒートポンプサイクル。
【請求項2】
冷媒を圧縮して吐出する第1圧縮機構(11b)と、
前記第1圧縮機構(11b)から吐出された冷媒を圧縮して吐出する第2圧縮機構(11c)と、
前記第2圧縮機構(11c)から吐出された冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させる第1利用側熱交換器(12)と、
冷媒と熱交換対象流体とを熱交換させて前記第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させる第2利用側熱交換器(20)と、
冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(18)と、
外部熱源の有する熱量によって冷媒を加熱して前記第2圧縮機構(11c)吸入側へ流出させる加熱手段(14)と、
前記加熱手段(14)へ流入する冷媒を減圧させる第1減圧手段(15a)と、
前記室外熱交換器(18)へ流入する冷媒を減圧させる第2減圧手段(15b)と、
前記第2利用側熱交換器(20)へ流入する冷媒を減圧させる第3減圧手段(15c)と、
前記第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒の流れを分岐して、分岐された一方の冷媒を前記第1減圧手段(15a)側へ流出させ、分岐された他方の冷媒を前記室外熱交換器(18)側へ流出させる分岐部(13a)と、
前記熱交換対象流体を冷却する冷却運転モードの冷媒流路、および、前記熱交換対象流体を加熱する加熱運転モードの冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)とを備え、
前記冷媒流路切替手段(15a、15b、17、19)は、
前記冷却運転モード時に、前記分岐部(13a)にて冷媒の流れを分岐することなく前記第1利用側熱交換器(12)から流出した冷媒を前記室外熱交換器(18)へ流入させるとともに、前記室外熱交換器(18)から流出した冷媒を前記第3減圧手段(15c)を介して前記第2利用側熱交換器(20)へ流入させる冷媒流路に切り替え、
前記加熱運転モード時に、前記分岐部(13a)にて分岐された前記一方の冷媒を前記第1減圧手段(15a)を介して前記加熱手段(14)へ流入させ、さらに、前記他方の冷媒を前記第2減圧手段(15b)を介して前記室外熱交換器(18)へ流入させるとともに、前記室外熱交換器(18)から流出した冷媒を前記第1圧縮機構(11b)吸入側へ流出させることを特徴とするヒートポンプサイクル。
【請求項3】
前記熱交換対象流体は、空調対象空間に送風される空気であって、
前記第2利用側熱交換器(20)は、前記第1利用側熱交換器(12)に対して前記空気の流れ方向上流側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヒートポンプサイクル。
【請求項4】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関(EG)を冷却する冷却水であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項5】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関(EG)から排出される排気ガスであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。
【請求項6】
車両用空調装置に適用されるヒートポンプサイクルであって、
前記熱交換対象流体は、車室内に送風される送風空気であり、
前記外部熱源は、車両に搭載された電気機器を冷却する冷却水であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−208841(P2011−208841A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75101(P2010−75101)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】