説明

ヒートポンプ装置

【課題】目標出湯温度が高い場合においてもCOPの高い二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】高元側圧縮機1と加熱用熱交換器2と高元側膨張機構3と中間熱交換器4とが配管により順次環状に接続された高元側冷媒回路100と、低元側圧縮機11と、補助加熱用熱交換器12と、中間熱交換器4と、低元側膨張機構14と、空気熱交換器15とが配管により順次環状に接続された低元側冷媒回路200とを備える。特に、低元側冷媒回路200には、中間熱交換器4と低元側膨張機構14との間を流れる冷媒と、空気熱交換器15と低元側圧縮機11との間を流れる冷媒とを熱交換させる内部熱交換器13が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低元側冷媒回路と高元側冷媒回路とを備える二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ装置についての記載がある。特許文献1に記載されたヒートポンプ装置は、低元側冷媒回路には圧縮機、補助熱交換器、冷媒熱交換器、膨張機構、空気熱交換器が順次接続されており、高元側冷媒回路には圧縮機、水冷媒熱交換器、膨張機構、前記冷媒熱交換器が順次接続されている。そして、このヒートポンプ装置では、高元側冷媒回路の水冷媒熱交換器にて、高元側冷媒回路を循環する冷媒で水を加熱した後、低元側冷媒回路の補助熱交換器にて、低元側冷媒回路を循環する冷媒で水をさらに加熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−119725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すヒートポンプ装置では、目標出湯温度(補助熱交換器を通過した後の水の温度)が高くなると、それに伴い低元側冷媒回路の圧縮機から吐出する冷媒の温度も高くする必要があるため、低元側冷媒回路の凝縮圧力が上昇してしまう。その結果、ヒートポンプ装置のエネルギー消費効率(COP)が低下してしまう。
なお、ヒートポンプ装置のCOPを向上させるために、低元側冷媒回路の凝縮圧力を下げる運転をした場合、低元側冷媒回路の吐出温度が低下するため、目標出湯温度を確保できない。
【0005】
この発明は、目標出湯温度が高い場合においてもCOPの高い二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るヒートポンプ装置は、
低元側圧縮機と、第1負荷側熱交換器と、中間熱交換器と、低元側膨張機構と、熱源側熱交換器とが配管により順次接続され、低元側冷媒が循環する低元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器と前記低元側膨張機構との間を流れる前記低元側冷媒と、前記熱源側熱交換器と前記低元側圧縮機との間を流れる前記低元側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器が設けられた低元側冷媒回路と、
高元側圧縮機と、第2負荷側熱交換器と、高元側膨張機構と、前記中間熱交換器とが配管により順次接続され、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器で前記高元側冷媒が前記低元側冷媒と熱交換される高元側冷媒回路と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るヒートポンプ装置は、低元側冷媒回路に内部熱交換器を備えるため、目標出湯温度が高い場合における低元側冷媒回路の凝縮圧力の上昇を抑えることができる。そのため、目標出湯温度が高い場合においてもCOPが高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置のシステム回路図。
【図2】実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置の初期運転制御の流れを示すフローチャート。
【図3】実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置の圧力−エンタルピ線図
【図4】実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置のシステム回路図。
【図5】実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置の初期運転制御の流れを示すフローチャート。
【図6】実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置のシステム回路図であって、内部熱交換器13を省略したシステム回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1では、二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ装置の一例として、二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ式給湯装置(ヒートポンプシステム)について説明する。
図1は、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置のシステム回路図である。
【0010】
図1に示すように、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置は、高元側冷媒回路100、低元側冷媒回路200、負荷回路300を備える。
高元側冷媒回路100は、高元側圧縮機1と、加熱用熱交換器2(第2負荷側熱交換器)と、高元側膨張機構3と、中間熱交換器4とが配管により順次に接続され、冷媒が循環する回路である。
低元側冷媒回路200は、低元側圧縮機11と、補助加熱用熱交換器12(第1負荷側熱交換器)と、中間熱交換器4と、低元側膨張機構14と、空気熱交換器15(熱源側熱交換器)とが配管により順次に接続され、冷媒が循環する回路である。低元側冷媒回路200には、中間熱交換器4と低元側膨張機構14との間を流れる冷媒と、空気熱交換器15と低元側圧縮機11との間を流れる冷媒とを熱交換させる内部熱交換器13が設けられる。なお、空気熱交換器15には、外気を送風する送風ファン16が設けられている。
負荷回路300は、加熱用熱交換器2と、補助加熱用熱交換器12と、循環ポンプ22と、放熱器21とが配管により順次に接続され、水が循環する回路である。
なお、高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200とは、それぞれ別の筐体に収納された別ユニットであってもよい。この場合、高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200とに共通する中間熱交換器4は、どちらか一方の筐体に収納される。また、加熱用熱交換器2は、高元側冷媒回路100の筐体に収納されていてもよいし、外部に設けられていてもよい。同様に、補助加熱用熱交換器12は、低元側冷媒回路200の筐体に収納されてもよいし、外部に設けられてもよい。
【0011】
二元冷凍サイクルでは、高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200で異なる冷媒を使用する。高元側冷媒回路100の高元側冷媒には、飽和蒸気の比体積の大きい冷媒、例えばR134aなどの冷媒が、低元側冷媒回路200の低元側冷媒には、飽和蒸気の比体積の小さい冷媒、例えばR410Aなどの冷媒が用いられる。
【0012】
次に、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置の動作について説明する。ここでは、温水による暖房運転について説明する。暖房運転とは、高元側冷媒回路100、低元側冷媒回路200、負荷回路300を動作させ、負荷回路300を循環する温水により放熱器21の設置場所周囲の空間を暖める動作である。
【0013】
高元側冷媒回路100では、高元側圧縮機1から吐出された高圧高温のガス状態である高元側冷媒が、加熱用熱交換器2で負荷回路300側へ放熱しながら温度低下する。このとき、負荷回路300を循環する水は、加熱用熱交換器2にて高元側冷媒回路100を循環する高元側冷媒により加熱される。
加熱用熱交換器2で水を加熱した高圧低温の高元側冷媒は、高元側膨張機構3を通過する。高元側膨張機構3を通過する際、高元側冷媒は低圧気液二相の状態まで減圧され、中間熱交換器4へ流入する。
高元側冷媒は、中間熱交換器4にて低元側冷媒により加熱されて、蒸発ガス化する。中間熱交換器4から流出した低圧低温の高元側冷媒は、高元側圧縮機1に吸入され圧縮され、高温高圧のガス状態になる。
【0014】
低元側冷媒回路200では、低元側圧縮機11から吐出された高圧高温のガス状態である低元側冷媒は、補助加熱用熱交換器12へ流入する。低元側冷媒は、補助加熱用熱交換器12にて負荷回路300を循環する水に放熱しながら温度が低下する。
補助加熱用熱交換器12を通過し、温度が低下した低元側冷媒は、中間熱交換器4へ流入する。低元側冷媒は、中間熱交換器4にて、高元側冷媒を加熱して温度がさらに低下する。中間熱交換器4から流出した高圧中温の低元側冷媒は、内部熱交換器13の高圧側へ流入する。
内部熱交換器13の高圧側へ流入した低元側冷媒は、空気熱交換器15から流出した低圧低温の冷媒と熱交換され、さらに温度が低下して、低元側膨張機構14を通過する。低元側膨張機構14を通過する際、低元側冷媒は低圧気液二相の状態まで減圧される。
低圧気液二相状態の低元側冷媒は空気熱交換器15へ流入し、送風ファン16により空気熱交換器15に送風される空気から吸熱し、蒸発ガス化する。空気熱交換器15から流出した低圧低温の冷媒は、内部熱交換器13の低圧側へ流入する。
内部熱交換器13の低圧側へ流入した低圧低温の冷媒は、内部熱交換器13の高圧側を通過する高圧中温の冷媒と熱交換され、加熱される。加熱された低圧低温の低元側冷媒は低元側圧縮機11に吸入される。
【0015】
負荷回路300では、水が循環ポンプ22により回路内を循環する。負荷回路300を循環する水は、加熱用熱交換器2と補助加熱用熱交換器12とで順に加熱され、目標出湯温度まで到達し、放熱器21へ流入する。放熱器21へ流入した水は、放熱器21の設置場所周囲の空気へ放熱し、温度が低下する。温度低下した水は、再度加熱用熱交換器2へ流入する。なお、放熱器21にはパネルヒーターや床暖房パネルなどを用いる。
【0016】
なお、上記説明では、負荷回路300を循環する被加熱流体を水としたが、不凍液等としても、暖房運転の機能を満たすことができる。
【0017】
次に、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置の初期運転制御について説明する。
図2は、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置の初期運転制御の流れを示すフローチャートである。
【0018】
(S1)では、計測制御装置31(制御部)が、使用者からリモコンにて指示される運転指令情報に従い、加熱能力と、目標出湯温度Twotとを設定する。
加熱能力は、リモコン内もしくは計測制御装置31に設けられたマイコンにて過去の加熱能力とそのときの出湯温度とから、目標出湯温度Twotとするのに必要な能力を計算して設定してもよい。また、目標出湯温度Twotは、あらかじめ範囲が決められており、例えば40℃から70℃の範囲に設定されているものとする。
【0019】
(S2)では、計測制御装置31が、(S1)で設定された加熱能力及び目標出湯温度Twotと、外気温度センサ45によって検出される外気温度と、給水温度センサ46によって検出される給水温度とに基づき、高元側圧縮機1と低元側圧縮機11とを、それぞれ所定の回転数で動作するように制御する。なお、給水温度とは、加熱用熱交換器2へ流入する水の温度である。
例えば、予め試験運転やシミュレーションなどを行って外気温度、給水温度、目標出湯温度、加熱能力と、回転数との関係を表す情報マップをメモリに記憶しておき、メモリから外気温度、給水温度、目標出湯温度、加熱能力に基づき回転数を読み出して設定する。また、計測制御装置31で加熱能力、目標出湯温度、外気温度、給水温度から回転数を算出してもよい。
また、計測制御装置31は、循環ポンプ22の回転数を所定の回転数に設定する。
【0020】
(S3)では、計測制御装置31が、加熱能力、目標出湯温度Twot、外気温度、給水温度から、高元側圧縮機1から吐出される高元側冷媒の目標吐出温度Ttag1と、低元側圧縮機11から吐出される低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2とを設定する。
例えば、予め試験運転やシミュレーションなどを行って外気温度、給水温度、目標出湯温度、加熱能力と、高元側冷媒の目標吐出温度Ttag1及び低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2との関係を表す情報マップをメモリに記憶しておき、メモリから外気温度、給水温度、目標出湯温度、加熱能力に基づき高元側冷媒の目標吐出温度Ttag1及び低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2を読み出して設定する。また、計測制御装置31で加熱能力、目標出湯温度、外気温度、給水温度から高元側冷媒の目標吐出温度Ttag1及び低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2を算出してもよい。
【0021】
(S4)では、計測制御装置31が、低元側吐出温度センサ43により、低元側圧縮機11から吐出される低元側冷媒の吐出温度Td2を計測する。
そして、(S5)では、計測制御装置31は、低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2と低元側冷媒の吐出温度Td2との温度差(|Ttag2−Td2|)が、所定の温度DT2(例えば、1℃)より大きいか否かを判定する。温度差が温度DT2より大きい場合(S5でYES)、(S6)へ処理を進める。一方、温度差が温度DT2以下の場合(S5でNO)、(S7)へ処理を進める。
(S6)では、低元側冷媒の吐出温度Td2が低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2と離れているため、計測制御装置31は、低元側膨張機構14の開度を調整する。そして、処理を(S4)へ戻す。
【0022】
(S7)では、計測制御装置31は、高元側吐出温度センサ41により、高元側圧縮機1から吐出される高元側冷媒の吐出温度Td1を計測する。
そして、(S8)では、計測制御装置31は、高元側冷媒の目標吐出温度Ttag2と高元側冷媒の吐出温度Td1との温度差(|Ttag1−Td1|)が、所定の温度DT1(例えば、1℃)より大きいか否かを判定する。温度差が温度DT1より大きい場合(S8でYES)、(S9)へ処理を進める。
(S9)では、高元側冷媒の吐出温度Td1が高元側冷媒の目標吐出温度Ttag1と離れているため、計測制御装置31は、高元側膨張機構3の開度を調整する。そして、処理を(S7)へ戻す。
【0023】
一方、(S10)では、計測制御装置31が、補助加熱用熱交換器出口水温センサ48により、補助加熱用熱交換器12からの出湯温度Twoを検出する。
そして、(S11)では、計測制御装置31が、目標出湯温度Twotと(S10)で検出した出湯温度Twoとの温度差(|Twot−Two|)が、所定の温度DT3(例えば、1℃)より大きいか否かを判定する。温度差が温度DT3より大きい場合(S11でYES)、(S12)へ処理を進める。
(S12)では、出湯温度Twoが目標出湯温度Twotと離れているため、計測制御装置31が、循環ポンプ22の回転数を調整して、出湯温度Twoが目標出湯温度Twotとなるようにする。そして、処理を(S10)へ戻す。
【0024】
計測制御装置31は、温度差(|Ttag1−Td1|)が温度DT1以下であり、温度差(|Twot−Two|)が温度DT3以下の場合(S8及びS11でNO)、初期運転を終了する。
【0025】
なお、ここでは、低元側冷媒の吐出温度Td2に応じて低元側膨張機構14の開度を制御し、高元側冷媒の吐出温度Td1に応じて高元側膨張機構3の開度を制御した。しかし、低元側吸入温度センサ44で検出される低元側冷媒の吸入温度に応じて、低元側冷媒の過熱度が所定の過熱度になるように低元側膨張機構14の開度を制御してもよい。同様に、高元側吸入温度センサ42で検出される高元側冷媒の吸入温度に応じて、高元側冷媒の過熱度が所定の過熱度になるように高元側膨張機構3の開度を制御してもよい。
【0026】
目標出湯温度範囲の最も高い温度で必要な加熱能力を確保できれば、目標出湯温度範囲内のどの温度でも、必要となる加熱能力を確保できる。ここでは、加熱用熱交換器2と補助加熱用熱交換器12との合計の加熱能力が、目標出湯温度範囲の最も高い温度で必要な加熱能力を確保できているものとする。
したがって、加熱用熱交換器2と補助加熱用熱交換器12との合計の加熱能力を決定する高元側圧縮機1と低元側圧縮機11の回転数を、上述したように例えば外気温度や給水温度等に基づき調整することで、どのような目標出湯温度に対しても必要な加熱能力を確保することができる。つまり、どのような外部条件に対してもヒートポンプ給湯装置として要求される温水の温度を確保でき、常に所望の温度の温水を得ることができる。
なお、高元側圧縮機1と低元側圧縮機11の回転数は、圧縮機耐久性の観点から上限回転数および下限回転数が設けられているものとする。
【0027】
上述したように、高元側膨張機構3の開度により、高元側圧縮機1の吐出温度が制御される。高元側の目標吐出温度は、加熱用熱交換器2の目標出口水温を確保できる温度とするため、加熱用熱交換器2の目標出口水温+α[℃]に設定されている。値αは、例えば外気温度や目標出湯温度の関数とする。このように加熱用熱交換器2の目標出口水温に応じた目標吐出温度とすることで、目標出湯温度を確保することができる。また、圧縮機耐久性や冷凍機油劣化などの観点から、通常、吐出温度には上限温度が設けられている。
【0028】
同様に、低元側膨張機構14の開度により、低元側圧縮機11の目標吐出温度が制御される。低元側圧縮機11の目標吐出温度は、補助加熱用熱交換器12の目標出口水温、つまり目標出湯温度を確保できる温度とするため、目標出湯温度+β[℃]に設定されている。値βは、例えば外気温度や目標出湯温度の関数とする。このように目標出湯温度に応じた目標吐出温度とすることで、目標出湯温度を確保することができる。
【0029】
循環ポンプ22は、加熱能力で定まる所定の回転数となるように制御される。加熱用熱交換器2と補助加熱用熱交換器12との加熱能力が制御され、一定に維持されるため、循環ポンプ22の回転数を制御することで確実に目標出湯温度を確保することができる。
【0030】
次に、上述した運転制御動作による高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200との冷媒の状態を説明する。
図3は、高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200との冷媒の動作状態を示す圧力−エンタルピ線図(p−h線図)である。ここでは、高元側冷媒回路100を循環する冷媒をR134a、低元側冷媒回路200を循環する冷媒をR410Aとして示す。ここで、R410Aの凝縮圧力をR134aの凝縮温度に換算して示した。図3の実線は補助加熱用熱交換器2と内部熱交換器13とがない場合の二元冷凍サイクルを用いたヒートポンプ装置の冷媒の動作状態を表し、破線は補助加熱用熱交換器2と内部熱交換器13とがある場合の冷媒の動作状態を表す。
【0031】
補助加熱用熱交換器12を加えた場合、水を高元側冷媒と低元側冷媒とにより、二段階で加熱する。補助加熱用熱交換器12の出口で水温が目標出湯温度に到達すればよいため、高元側冷媒回路100の加熱用熱交換器2の出口水温は、目標出湯温度より低くてもよい。例えば、目標出湯温度が70℃である場合、補助加熱用熱交換器12出口水温が70℃であればよいため、加熱用熱交換器2の出口水温は65℃程度まで加熱すればよい。
加熱用熱交換器2の目標出口水温が低くなれば、高元側圧縮機1の目標吐出温度を低下させることができるため、高元側冷媒回路100の凝縮圧力を低下させることが可能となる(図3の(1)の矢印参照)。冷凍サイクルでは、圧縮機の吸入圧力と吐出圧力との比(圧縮比)が小さくなるほど必要圧縮機入力が小さくなる。よって、補助加熱用熱交換器12を加えることで、補助加熱用熱交換器12がない場合に比べて、高元側冷媒回路100のCOPを向上させることが可能となる。
【0032】
補助加熱用熱交換器12を加えた場合、補助加熱用熱交換器12の出口水温が目標出湯温度となるように、低元側冷媒回路200の低元側圧縮機11の吐出温度を調節することになる。そのため、補助加熱用熱交換器12がない場合に比べて、低元側圧縮機11の目標吐出温度が高くする必要がある。吐出温度を上昇させるためには、低元側膨張機構14の開度を小さくし、低元側冷媒回路200の吐出圧力を上昇させる必要がある。そのため、低元側圧縮機11の圧縮比が増加し、低元側冷媒回路200のCOPが低下することになる。
しかし、補助加熱用熱交換器12とともに、内部熱交換器13を設置することで、低元側冷媒回路200の吐出圧力を上昇させずに吐出温度を上昇させることが可能となる。
内部熱交換器13では、低元側冷媒回路200を循環する中間熱交換器4の出口冷媒と、空気熱交換器15の出口冷媒とが熱交換される。そのため、中間熱交換器4の出口冷媒の温度は低下し、空気熱交換器15の出口冷媒の温度は上昇する(図3の(2)の矢印参照)。よって、低元側圧縮機11に吸入される冷媒の温度が上昇するため、低元側冷媒回路200の吐出圧力を上昇させることなく、低元側圧縮機11から流出する冷媒の温度が上昇することになる(図3の(3)の矢印参照)。
これにより、補助加熱用熱交換器12の出口水温を目標出湯温度まで加熱することが可能となる。このとき、低元側冷媒回路200の圧縮比は変化しないため、低元側冷媒回路200のCOPを低下させることなく、目標出湯温度を確保することができる。
【0033】
圧縮機、加熱用熱交換器、膨張機構、空気熱交換器を環状に接続する単サイクルで被加熱流体を70℃程度の高温まで加熱する場合、冷媒の凝縮圧力が高くなり、冷媒回路を構成する装置の強度を高める必要がある。しかし、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置では、二元冷凍サイクルを用い、高元側冷媒回路100の冷媒で、低元側冷媒回路200の冷媒を低い凝縮圧力で凝縮させるため、装置の強度を特別に高める必要がなくなる。飽和蒸気の比体積が大きいほど、同一凝縮温度での圧力は低くなるため、高元側冷媒回路100の装置の強度を特別に高めることなく、被加熱流体を高温まで加熱することができる。
【0034】
また、低元側冷媒回路200の冷媒のみで加熱する場合に比べ、高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200それぞれの蒸発圧力と凝縮圧力の差を小さくすることができ、高いエネルギー消費効率(COP)で高元側冷媒回路100と低元側冷媒回路200とを運転することができる。
【0035】
特に、補助加熱用熱交換器12と内部熱交換器13を追加することで、二元冷凍サイクルを用いた温水供給装置の低元側冷媒回路200のCOPを変化させることなく、高元側冷媒回路100のCOPを高くすることができる。したがって、ヒートポンプ給湯装置全体としてのCOPを高めることができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態2では、目標出湯温度が低温の場合に、高元側冷媒回路100を用いず、低元側冷媒回路200のみを用いた運転を行うことが可能なヒートポンプ給湯装置について説明する。
【0037】
図4は、実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置のシステム回路図である。
ここでは、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置と異なる部分のみ説明する。実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置では、負荷回路300に、加熱用熱交換器2をバイパスするバイパス流路50と流路切替弁51とを備える。
流路切替弁51は、放熱器21から流出した水を、加熱用熱交換器2側へ流すか、バイパス流路50側へ流すかを切り替えるための弁である。
【0038】
次に、実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置の初期運転制御について説明する。
図5は、実施の形態2に係るヒートポンプ給湯装置の初期運転制御の流れを示すフローチャートである。
【0039】
(S1)は、図2に示す(S1)と同じであり、計測制御装置31(制御部)が、使用者からリモコンにて指示される運転指令情報に従い、加熱能力と、目標出湯温度Twotとを設定する。
【0040】
(S21)では、計測制御装置31が、(S1)で設定された目標出湯温度Twotが所定の温度Twob(例えば40℃程度)以下であるか否かを判定する。目標出湯温度Twotが所定の温度Twoより高い場合(S21でNO)、水が加熱用熱交換器2側へ流れるように流路切替弁51を制御した上で、処理を図2の(S2)へ進め、以降実施の形態1で説明した通りの処理を実行する。一方、目標出湯温度Twotが所定の温度Twob以下である場合(S21でYES)、処理を(S22)へ進める。
【0041】
(S22)では、計測制御装置31が、水が加熱用熱交換器2側へは流れず、バイパス流路50側へのみ流れるように流路切替弁51を制御する。
【0042】
(S23)では、計測制御装置31が、(S1)で設定された加熱能力及び目標出湯温度Twotと、外気温度センサ45によって検出される外気温度と、給水温度センサ46によって検出される給水温度とに基づき、低元側圧縮機11を所定の回転数で動作するように制御する。
また、計測制御装置31は、循環ポンプ22の回転数を所定の回転数に設定する。
なお、ここでは、計測制御装置31は、高元側圧縮機1を停止させる。
【0043】
(S24)では、計測制御装置31が、加熱能力、目標出湯温度Twot、外気温度、給水温度から、低元側圧縮機11から吐出される低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2とを設定する。
【0044】
(S25)では、計測制御装置31が、低元側吐出温度センサ43により、低元側圧縮機11から吐出される低元側冷媒の吐出温度Td2を計測する。
そして、(S26)では、計測制御装置31は、低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2と低元側冷媒の吐出温度Td2との温度差(|Ttag2−Td2|)が、所定の温度DT2より大きいか否かを判定する。温度差が温度DT2より大きい場合(S26でYES)、(S27)へ処理を進める。
(S27)では、低元側冷媒の吐出温度Td2が低元側冷媒の目標吐出温度Ttag2と離れているため、計測制御装置31は、低元側膨張機構14の開度を調整する。そして、処理を(S25)へ戻す。
【0045】
一方、(S28)では、計測制御装置31が、補助加熱用熱交換器出口水温センサ48により、補助加熱用熱交換器12からの出湯温度Twoを検出する。
そして、(S29)では、計測制御装置31が、目標出湯温度Twotと(S28)で検出した出湯温度Twoとの温度差(|Twot−Two|)が、所定の温度DT3より大きいか否かを判定する。温度差が温度DT3より大きい場合(S29でYES)、(S30)へ処理を進める。
(S30)では、出湯温度Twoが目標出湯温度Twotと離れているため、計測制御装置31が、循環ポンプ22の回転数を調整して、出湯温度Twoが目標出湯温度Twotとなるようにする。そして、処理を(S28)へ戻す。
【0046】
計測制御装置31は、温度差(|Ttag2−Td2|)が温度DT2以下であり、温度差(|Twot−Two|)が温度DT3以下の場合(S26及びS29でNO)、初期運転を終了する。
【0047】
つまり、設定された目標出湯温度が低温(所定の温度以下)、例えば40℃程度であり、低元側冷媒回路200を循環する冷媒のみで、目標出湯温度を確保することが可能な場合に、計測制御装置31が流路切替弁51を制御してバイパス流路50側に流路を切り替える。流路切替後は、水は、加熱用熱交換器2へは流れず、バイパス流路50側へのみ流れる。したがって、流路切替後は、負荷回路300を循環する水は、補助加熱用熱交換器12のみで加熱される。
つまり、高元側冷媒回路100を動作させる必要がなく、低元側冷媒回路200のみを動作させればよいため、ヒートポンプ装置全体のCOPを高めることが可能となる。
【0048】
なお、図4では、実施の形態1に係るヒートポンプ給湯装置に、バイパス流路50と流路切替弁51とを加えた構成とした。しかし、図6に示すように、内部熱交換器13を備えない構成としてもよい。
この場合、内部熱交換器13を設けたことによる効果を得ることができない。しかし、、低元側冷媒回路200を循環する冷媒のみで、目標出湯温度を確保することが可能な場合に、ヒートポンプ給湯装置全体のCOPを高めることできるという効果は得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 高元側圧縮機、2 加熱用熱交換器、3 高元側膨張機構、4 中間熱交換器、11 低元側圧縮機、12 補助加熱用熱交換器、13 内部熱交換器、14 低元側膨張機構、15 空気熱交換器、16 送風ファン、21 放熱器、22 循環ポンプ、31 計測制御装置、41 高元側吐出温度センサ、42 高元側吸入温度センサ、43 低元側吐出温度センサ、44 低元側吸入温度センサ、45 外気温度センサ、46 給水温度センサ、48 補助加熱用熱交換器出口水温センサ、50 バイパス流路、51 流路切替弁、100 高元側冷媒回路、101 高元側冷媒回路、200 低元側冷媒回路、201 低元側冷媒回路、300 負荷回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低元側圧縮機と、第1負荷側熱交換器と、中間熱交換器と、低元側膨張機構と、熱源側熱交換器とが配管により順次接続され、低元側冷媒が循環する低元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器と前記低元側膨張機構との間を流れる前記低元側冷媒と、前記熱源側熱交換器と前記低元側圧縮機との間を流れる前記低元側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器が設けられた低元側冷媒回路と、
高元側圧縮機と、第2負荷側熱交換器と、高元側膨張機構と、前記中間熱交換器とが配管により順次接続され、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器で前記高元側冷媒が前記低元側冷媒と熱交換される高元側冷媒回路と
を備えることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
前記高元側冷媒回路に接続された前記第2負荷側熱交換器で、前記高元側冷媒と、負荷側流体とを熱交換させて、前記負荷側流体を加熱し、
前記低元側冷媒回路に接続された前記第1負荷側熱交換器で、前記低元側冷媒と、前記第2負荷側熱交換器で加熱された前記負荷側流体とを熱交換させ、前記負荷側流体をさらに加熱する
ことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ装置。
【請求項3】
低元側圧縮機と、第1負荷側熱交換器と、中間熱交換器と、低元側膨張機構と、熱源側熱交換器とが配管により順次接続され、低元側冷媒が循環する低元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器と前記低元側膨張機構との間を流れる前記低元側冷媒と、前記熱源側熱交換器と前記低元側圧縮機との間を流れる前記低元側冷媒とを熱交換させる内部熱交換器が設けられた低元側冷媒回路と、
高元側圧縮機と、第2負荷側熱交換器と、高元側膨張機構と、前記中間熱交換器とが配管により順次接続され、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器で前記高元側冷媒が前記低元側冷媒と熱交換される高元側冷媒回路と、
前記第2負荷側熱交換器と、前記第1負荷側熱交換器と、放熱器とが順次配管により接続され、負荷側流体が循環する負荷回路であって、前記第2負荷側熱交換器で前記負荷側流体が前記高元側冷媒と熱交換され、さらに前記第1負荷側熱交換器で前記負荷側流体が前記低元側冷媒と熱交換される負荷回路と
を備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項4】
前記負荷回路には、前記放熱器と前記第2負荷側熱交換器との間から、前記第1負荷側熱交換器と前記第2負荷側熱交換器との間までを配管によって繋ぐバイパス流路が設けられ、
前記ヒートポンプシステムは、さらに、
所定の場合に、前記負荷側流体を前記第1負荷側熱交換器へは流さず、バイパス流路から前記第2負荷側熱交換器へ流すように制御する制御部
を備えることを特徴とする請求項3に記載のヒートポンプシステム。
【請求項5】
前記制御部は、前記放熱器へ供給する前記負荷側流体の目標温度が所定の温度以下の場合に、前記負荷回路を流れる流体を前記第1負荷側熱交換器へは流さず、バイパス流路から前記第2負荷側熱交換器へ流すように制御する
ことを特徴とする請求項4に記載のヒートポンプシステム。
【請求項6】
低元側圧縮機と、第1負荷側熱交換器と、中間熱交換器と、低元側膨張機構と、熱源側熱交換器とが配管により順次接続され、低元側冷媒が循環する低元側冷媒回路と、
高元側圧縮機と、第2負荷側熱交換器と、高元側膨張機構と、前記中間熱交換器とが配管により順次接続され、高元側冷媒が循環する高元側冷媒回路であって、前記中間熱交換器で前記高元側冷媒が前記低元側冷媒と熱交換される高元側冷媒回路と、
前記第2負荷側熱交換器と、前記第1負荷側熱交換器と、放熱器とが順次配管により接続され、負荷側流体が循環する負荷回路であって、前記放熱器と前記第2負荷側熱交換器との間から、前記第1負荷側熱交換器と前記第2負荷側熱交換器との間までを配管によって繋ぐバイパス流路が設けられた負荷回路と、
通常時には、前記負荷側流体を前記第2負荷側熱交換器、前記第1負荷側熱交換器、放熱器の順に循環させ、前記第2負荷側熱交換器で前記負荷側流体が前記高元側冷媒と熱交換され、さらに前記第1負荷側熱交換器で前記負荷側流体が前記低元側冷媒と熱交換されるように制御するとともに、所定の場合には、前記負荷側流体を前記第1負荷側熱交換器へは流さず、バイパス流路から前記第2負荷側熱交換器へ流すように制御する制御部と
を備えることを特徴とするヒートポンプシステム。
【請求項7】
前記制御部は、前記放熱器へ供給する前記負荷側流体の目標温度が所定の温度以下の場合に、前記負荷回路を流れる流体を前記第1負荷側熱交換器へは流さず、バイパス流路から前記第2負荷側熱交換器へ流すように制御する
ことを特徴とする請求項6に記載のヒートポンプシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52767(P2012−52767A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197610(P2010−197610)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】