説明

ヒートローラ

【課題】ウォームアップ時間が短縮されると共に生産性に優れたヒートローラを提供する。
【解決手段】セラミック材料の円筒状のパイプ(2)を基材として用い、円筒状パイプ(2)の外周面に発熱体パターン(3)をメッキ処理により形成する。セラミックのパイプ(2)の外周面上に発熱体パターンを覆うようにフッ素樹脂チューブ(4)を装着する。フッ素樹脂チューブは、熱拡散層として機能すると共に離型材層としても機能する。セラミック材料は熱伝導率が低いため、発生した熱はフッ素樹脂チューブ側に伝達されるので、ウォームアップ時間が短縮されたヒートローラが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートロール定着装置に用いられるヒートローラ、特にウエイトタイムが大幅に短縮されたヒートローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種プリンタ装置においては、記録紙上に形成されたトナー像を定着させるためヒートロール定着装置が広く用いられている。ヒートロール定着装置は、ヒートローラと加圧ローラとを有し、ヒートローラを加圧ローラに対して圧接してニップを形成し、記録紙がニップを通過する間にヒートローラから発生する熱により記録紙上のトナーが融着されている。ヒートロール定着装置は、記録紙上のトナーを安定して定着できる利点があるものの、ヒートローラの熱容量が大きいため、電源をオンしてコピー可能な状態になるまでのウォームアップ時間がかかる欠点がある。
【0003】
ウォームアップ時間を短縮した定着装置として、ベルト定着装置が既知である(例えば、特許文献1参照)。このベルト定着装置は、ポリイミドのベルト基材上に面状発熱体を接着により接合した定着ベルトを用い、加圧ローラと給電ローラとの間に定着ベルトを装着し、定着ベルトから発生する熱により記録紙上のトナーが定着されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−66539号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルト定着装置は、熱容量が小さいためウォームアップ時間が短縮される利点がある。しかし、定着ベルトは走行時に蛇行が発生し易く、安定して走行させるのが困難であり、定着ベルトの走行安定性及び通紙性能に欠ける欠点があった。これに対して、ヒートロール定着装置は、2本のローラ間に記録紙を通過させるだけでトナーが定着されるため、安定して記録紙を搬送できる利点がある。よって、発熱体を有する定着ベルトをローラの外周面上に装着すれば、ウォームアップ時間が短縮され、且つ記録紙を安定して定着できる利点が達成される。しかしながら、ローラに定着ベルトを装着するには、ベルト基材上に面状発熱体を接着し、さらにローラに装着しなければならず、このため、作業性が悪く量産性に問題があった。
【0006】
また、面状発熱体は、ポリイミドのフィルムに転写処理により抵抗発熱体が形成されている。しかし、転写処理により発熱体パターンを形成したのでは、抵抗発熱体の厚さのコントロールに限界があり、所望のパターンの抵抗発熱体を形成しにくく、設計の自由度が制限される欠点があった。さらに、ポリイミドのフィルム表面と抵抗発熱体との間の接合強度にも限界があり、発熱体パターンの剥がれ等の問題も指摘されている。
【0007】
本発明の目的は、ウォームアップ時間が短縮されると共に生産性に優れたヒートローラを提供することにある。
本発明の別の目的は、所望の厚さの発熱体パターンを形成することができ、発熱体パターンの設計の自由度が一層改善されたヒートローラを提供することにある。
本発明の別の目的は、発熱体パターンと基材との間の接合強度が改善され、優れた耐久性を有するヒートローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるヒートローラは、セラミック材料により構成され、電気的に絶縁性の円筒状パイプと、
円筒状パイプの外周面にメッキ処理により形成した発熱体パターンと、
前記円筒状パイプの外周面上に発熱体パターンを被覆するように装着され、電気的に絶縁性のフッ素樹脂チューブと、
前記円筒状パイプの両端にそれぞれ設けられ、前記発熱体パターンに電力を供給する給電端子とを具えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、セラミック製の円筒状基材の外周面上にメッキ処理により発熱体パターンを直接形成する。セラミック材料は熱伝導率が低いため、発熱体パターンから発生した熱は外側のフッ素樹脂チューブに伝達される。フッ素樹脂チューブは、熱拡散作用を果たすと共に離型材層としても機能するため、フッ素樹脂チューブの外周面はほぼ均一な温度に設定される。この結果、ウォームアップ時間の短いヒートローラが実現される。
【0010】
さらに、メッキ処理は、メッキ槽への浸漬時間によりメッキ層の厚さがコントロールされるため、発熱体パターンの厚さ及び抵抗値を高精度に制御することができる。また、メッキ処理によりセラミック材料表面にニッケル/クロム等の導電性材料層を形成すると、セラミックの表面と導電性膜との間に高い接合強度が得られる利点がある。
【0011】
本発明においては、発熱体パターンとフッ素樹脂層(フッ素樹脂チューブ)との間に電気的に絶縁性の弾性ゴム層を熱拡散層として介在させることも可能である。例えば、シリコンゴム等の耐熱性の弾性ゴム層により発熱体パターンを被覆し、その外周面上に離型材層を形成すれば、昇温時にシリコンゴム層が弾性変形するため、熱膨張係数の差異による不具合が解消される。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、セラミックの基材上にメッキ処理により発熱体パターンを形成しているので、ウォームアップ時間が大幅に短縮されたヒートローラを実現することができる。特に、メッキ処理においては、メッキ槽への浸漬時間を制御することにより発熱体パターンの膜厚を自在に制御できるため、設計の自由度が改善される。しかも、セラミック材料と抵抗発熱体との間の密着強度も高いため、発熱体パターンの剥がれ等の不具合の発生が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明によるヒートローラの一例を示す線図的断面図である。ヒートローラ1は、基材となる円筒状パイプ2を具える。この円筒状パイプ2は、電気的に絶縁性のセラミック材料により構成する。セラミック材料として各種のセラミック材料を用いることができ、アルミナセラミックやセメント等の電気的に絶縁性のセラミック材料が用いられる。
【0014】
基材である円筒状パイプ2の外周面上に抵抗発熱体のパターン3を形成する。発熱体パターン3は、ニッケル、クロム、ニッケル/クロム合金、導電性セラミック、カーボン含有導電性材料等の各種抵抗発熱体材料が用いられる。本発明では、発熱体パターン3は、転写や印刷により形成するのではなく、メッキ処理により円筒状パイプの外周面上に形成する。すなわち、セラミック材料の円筒状パイプにマスキングを行なってメッキ槽に浸漬し、メッキ処理時間を制御することにより、所定の膜厚の発熱体パターンを形成する。この際、形成される抵抗発熱体の厚さは、メッキ槽内への浸漬時間により高精度にコントロールすることができるので、メッキ槽への浸漬時間を制御することにより発熱体パターンの抵抗値を所望の抵抗値に設定することができる。さらに、メッキ処理により発熱体パターンを形成すれば、基材であるセラミックパイプ2と抵抗発熱体との接合強度が良好であり、発熱体が基材表面から剥がれにくく、ヒートローラの耐久性も改善される。
【0015】
発熱体パターン3のパターン形状は、マスキングすることにより所望の形状に形成することが可能である。例えば、ローラ軸線のまわりで螺旋状に形成し導体パターンやローラ軸線に平行に所定の間隔で延在する直線状の導体パターンとすることができる。
【0016】
円筒状パイプ2の外周面上に、発熱体パターン3を覆うようにフッ素樹脂チューブ4を装着する。本例では、フッ素樹脂チューブ4は、厚さが200μm又はそれ以上の厚さの比較的厚いチューブを用い、発熱体3から発生した熱をフッ素樹脂チューブにより熱拡散させる。発熱体3により発生した熱は比較的厚いフッ素樹脂チューブにより熱拡散されるので、フッ素樹脂チューブの外周面上において、ほぼ均一な温度分布が形成される。また、フッ素樹脂は、高い離型性を有するため、トナー付着を防止する離型材層としての機能も発揮する。さらに、フッ素樹脂チューブは、電気的絶縁性であるから、漏電等の発生が防止される。尚、発熱体パターンの表面上に電気的に絶縁性の耐熱性塗料の絶縁層を形成し、その上にフッ素樹脂チューブを装着することも可能である。
【0017】
円筒状パイプ2の両端に、発熱体パターン3に電力を供給する給電端子5a及び5bを装着する。これら給電端子は導電性の金属で構成され、給電端子として機能すると共にボス部材としても機能する。すなわち、ボス部材としても機能する給電端子5a及び5bを絶縁性のベアリングを介してフレーム等の支持部材に連結すると共に絶縁材料を介して駆動系に連結することにより、回転駆動力をヒートローラ1に伝達することができる。同時に、給電端子にブラシを接続することにより外部電源から発熱体パターンに電力を供給することが可能である。尚、発熱体パターン3の両端を円筒状パイプ2の端面上にまで形成し、その延長部6a及び6bを介して給電端子5a,5bに電気的に接続することが可能である。
【0018】
図2は、本発明によるヒートローラの変形例を示す線図的断面図である。本例では、円筒状パイプ2上に発熱体パターン3を覆うように熱拡散層10を形成する。熱拡散層として、シリコンゴムやフッ素ゴム等の電気的に絶縁性であって耐熱性を有する弾性変形可能なゴム材料層を用いる。熱拡散層10上にフッ素樹脂層(例えば、PFA、PTFA)やフッ素樹脂チューブのような離型材層11を形成する。弾性ゴム材料の熱拡散層を設けることにより、フッ素樹脂チューブの外周面の温度を一層均一にすることができる。ヒートローラは、使用時には160〜180°Cまで昇温する。この場合、熱膨張係数に差があっても、耐熱性を有する弾性変形可能なゴム層を介在させることにより、熱膨張係数の差に起因する不具合を解消することができる。尚、発熱体パターン3上に電気的に絶縁性の耐熱塗料層を形成し、その上に弾性ゴム層の拡散層を形成することも可能である。
【0019】
図3は、本発明によるヒートローラの発熱体パターンの変形例を示す平面図である。本例では、発熱体パターン3は、ローラ軸線に平行に直線状に延在する複数の発熱体細状3aと、発熱体細状3aの両端に形成され円環状に延在する円環部3b及び3cを有する。円環部3b及び3cは円筒状パイプの側面まで延在し、発熱体細条と給電端子5a及び5bとを電気的に接続する。発熱体パターン3を覆うように熱拡散層として機能する弾性ゴム層を形成し、その上に薄いフッ素チューブを被せることにより、ヒートローラの外周面を一層均一な温度に昇温させることができる。
【0020】
図1及び図2に示すヒートローラは、圧着機構を介して加圧ローラに対して圧接するように装着することによりヒートロール定着装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるヒートローラの一例を示す線図的断面図である。
【図2】本発明によるヒートローラの変形例を示す線図的断面図である。
【図3】発熱体パターンの変形例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ヒートローラ
2 円筒状パイプ
3 発熱体パターン
4 フッ素樹脂チューブ
10 熱拡散層
11 離型材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック材料により構成され、電気的に絶縁性の円筒状パイプと、
円筒状パイプの外周面にメッキ処理により形成した発熱体パターンと、
前記円筒状パイプの外周面上に発熱体パターンを被覆するように装着され、電気的に絶縁性のフッ素樹脂チューブと、
前記円筒状パイプの両端にそれぞれ設けられ、前記発熱体パターンに電力を供給する給電端子とを具えることを特徴とするヒートローラ。
【請求項2】
セラミック材料により構成され、電気的に絶縁性の円筒状パイプと、
円筒状パイプの外周面にメッキ処理により形成した発熱体パターンと、
前記円筒状パイプの外周面上に発熱体パターンを被覆するように形成され、発熱体パターンから発生する熱を拡散させる電気的絶縁性のゴム層と、
前記ゴム層上に形成した離型材層又はフッ素樹脂チューブと、
前記円筒状パイプの両端にそれぞれ設けられ、前記発熱体パターンに電力を供給する給電端子とを具えることを特徴とするヒートローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のヒートローラにおいて、前記発熱体パターンは、セラミック材料の円筒パイプの外周面上に無電解メッキ処理により形成したことを特徴とするヒートローラ。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のヒートローラにおいて、前記発熱体パターンは、ローラ軸線と平行に直線状に延在する複数の発熱体細条と、前記発熱体細条の両端にそれぞれ形成され、円環状に延在して発熱体細条と前記給電端子とを電気的に接続する円環部とを有することを特徴とするヒートローラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−298855(P2007−298855A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128196(P2006−128196)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(591221167)ミツマ技研株式会社 (17)
【Fターム(参考)】