ビスフェノールの製造方法
ビスフェノールの製造方法は、供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し;反応器システムから反応器流出液を取り出し;反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し;結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり;母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し;脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルして混合供給原料流に戻す工程を含み、これにより反応器選択性を高め、促進剤量を少なくするとともに、p,p−ビスフェノールの効率よい生成を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールの製造方法に関し、特にビスフェノールの製造効率を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、エポキシ樹脂やポリカーボネートなどの化学製品の製造に原料として用いられる。ビスフェノールは普通、酸触媒もしくは活性イオン交換触媒の存在下フェノール化合物とケトン化合物との縮合によって製造される。この反応にしばしば促進剤(助触媒とも言う)を使用する。
【0003】
代表的には、ビスフェノールの製造に用いられる触媒は急速な不活性化を受ける。不活性化には、過剰なアセトン、ビスフェノール状タール、その他の反応副生物の存在など多くの理由が考えられる。触媒の交換は、費用がかさみ、厳しい条件下での煩雑な作業を必要とし、また適切に処分する必要のある化学的廃棄物を生じる。促進剤の使用は、反応には有利であるが、極めて高価であり、反応器生産量を維持するか増加しながら、促進剤の量を減らすことが強く望まれている。
【0004】
ビスフェノール製造を改良し、触媒寿命を長くする特別な方法に、反応器からの流出液のリサイクルがある。例えば、米国特許第4308404号に、一連の反応器の一部をなすいずれか一つの反応器からの流出液をリサイクルして反応区域に戻すことで触媒寿命が長くなることが教示されている。しかし、この特許では、触媒寿命を長くするためには、反応区域を少なくとも2つの反応器から構成する必要がある。さらに、最後の反応器からの流出液を反応区域にリサイクルすることは禁止されている。
【0005】
米国特許第5786522号も、ビスフェノールを製造するために、反応器からの脱水流出液を部分的にリサイクルして入力流に戻すことを教示しており、得られるビスフェノールをポリカーボネートに利用してその色を改良している。
【0006】
ビスフェノールの製造には数多くの方法が提案されているが、当業界では大規模な工業的生産プロセスとして適当な効果的、効率的方法が依然として必要とされている。
【特許文献1】米国特許第4308404号明細書
【特許文献2】米国特許第5786522号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ビスフェノールの製造方法は、供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し;反応器システムから反応器流出液を取り出し;反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し;結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり;母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し;脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルして混合供給原料流に戻す工程を含み、これにより反応器選択性を高め、促進剤量を少なくするとともに、p,p−ビスフェノールの効率よい生成を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは、p,p−ビスフェノール(以下BPA)を製造するプロセスにおいて、混合供給原料流14中のカルボニル化合物の濃度を下げることで、反応器選択性を改良できることを見いだした。混合供給原料流14中のカルボニル化合物の濃度の低下は、フェノール/BPA濃度の上昇が起こるように反応器流出液18の一部を脱水することによって実現され、その結果触媒性能が向上し、反応器選択性が増加する。反応器流出液18の脱水中に、水含量と共にカルボニル化合物含量も低下する結果として、脱水装置から出てくるリサイクル流12中のフェノール/BPA濃度が対応して増加し、このことが結果として混合供給原料流14中のフェノール/BPA含量の増加をもたらす。
【0009】
或いは、もしも新しいカルボニル化合物を混合供給原料流14に追加することによりカルボニル化合物をその元の値に戻すと、p,p−ビスフェノールを製造するプラント容量が大幅に増加するか、促進剤の使用量を減少させることができる。
【0010】
有利な操作モードでは、反応器流出液18の約6重量%以上、好ましくは約8重量%以上、さらに好ましくは約10重量%以上の量を混合供給原料流14にリサイクルするのが望ましい。また、反応器流出液18の約22重量%以下、好ましくは約20重量%以下、さらに好ましくは約18重量%以下の量をリサイクルするのが望ましい。反応器流出液18を上記範囲の量リサイクルすると、混合供給原料流14中のカルボニル化合物の濃度を、反応器流出液18をリサイクルしないプロセスと比較して、約15重量%以上、好ましくは約20重量%以上、さらに好ましくは約25重量%以上の量低下することができる。同様に、供給原料流中のカルボニル化合物の濃度を、混合供給原料流14の約35重量%以下、好ましくは約30重量%以下、さらに好ましくは約28重量%以下の量低下することができる。さらに、促進剤の濃度を、反応器流出液18をリサイクルしないプロセスと比較して、約10重量%以上、好ましくは約15重量%以上、さらに好ましくは約20重量%以上の量低下する。一般に、一定な生産量を維持しながら、促進剤の濃度を、反応器流出液18をリサイクルしないプロセスと比較して、約30重量%以下、好ましくは約28重量%以下、さらに好ましくは約25重量%以下の量低下することができる。さらに、カルボニル化合物及び促進剤濃度を何ら減少させることなく、製造効率を上げる特殊な実施形態では、反応器流出液18の一部をリサイクルすることで、BPAの1日の製造量の、約5重量%以上、好ましくは約6重量%以上、さらに好ましくは約7重量%以上の増加を達成できる。同様に、反応器流出液18の一部をリサイクルすることで、BPAの1日の製造量を、約11重量%以下、好ましくは約10重量%以下、さらに好ましくは約8.5重量%以下の量増加することができる。
【0011】
一般に、ビスフェノールの製造に使用するのに適当なフェノール化合物は、好ましくはフェノール性ヒドロキシル基に対してパラ位に、反応性水素を有する。このようなフェノール化合物は、1つ以上のアルキル基、例えば低級アルキル基、例えばメチル、エチル又はtert−ブチル基、ハロゲン原子、例えば塩素原子、カルボニル縮合反応を妨害しない他の置換基、又は上述したフェノール類の少なくとも1つを含む組合せで置換されていてもよい。フェノール化合物の具体例には、o−クレゾール、m−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、1,3,5−キシレノール、テトラメチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、2,6−ジクロロフェノールなどがある。フェノール(ヒドロキシベンゼン)が最も好ましい。
【0012】
本プロセスに用いるカルボニル化合物はアルデヒドでもケトンでもよい。カルボニル化合物がケトンであるのが好ましい。ケトンの具体例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルビニルアセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン及び上述したケトン類の少なくとも1つを含む組合せがある。アセトンが特に好ましい。
【0013】
所望に応じて、本プロセスには種々の触媒系を使用することができる。実施形態によっては、塩酸、硫酸又はルイス酸のような均質触媒が適当である。しかし、不均質触媒系が好適である。特に、イオン交換樹脂の使用はしばしば最も効率よい触媒作用手段である。イオン交換樹脂は副反応にほとんど関与しない。さらに、イオン交換樹脂は不溶性であるので、反応器システム内に留まり、下流の腐食問題を起こさない。
【0014】
イオン交換樹脂は当業界でよく知られており、種々の文献、例えばKirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd Edition, Vol.9, pp.256 and 296−297(1980);及び Vol.13, pp.678以降(1981)に記載されている。イオン交換樹脂の触媒としての使用も、Kirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology, 4th Edition, Vol.14, pp.777−778(1995)に記載されている。特に、強酸型の樹脂を用いるのが適当である。好ましい触媒は、複数のスルホン酸側基を有する炭化水素ポリマーからなるスルホン化芳香族樹脂である。スルホン酸側基は代表的には2もしくは4%ジビニルベンゼンで架橋されている。この点で、スルホン化ポリスチレン、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)共重合体、及びスルホン化フェノールホルムアルデヒド樹脂が有用である。適当なイオン交換樹脂の市販品の例として、Rhom&Haas社から入手できるAMBERLYST(登録商標)材料(例えばAMBERLYST15)及びAMBERLITE(登録商標)材料(例えばAMBERLITE131及びAMBERLITE118)、DowChemical社から入手できるDOWEX(登録商標)製品、BayerChemical社から入手できるK1131及びK1221がある。
【0015】
酸性樹脂の交換容量は、乾燥樹脂1g当たり水素イオン(H+)約2.0ミリ当量(meq)以上であるのが好ましい。乾燥樹脂1g当たりH+約3.0〜約5.5meqの範囲が最も好ましい。
【0016】
種々のビスフェノールを製造する従来の方法では、イオン交換樹脂触媒はしばしば硫黄含有促進剤での前処理を必要とした。促進剤の例に、チオール、即ちメルカプタン系化合物、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸(以下、3−mpa)及びこれらの促進剤の少なくとも1つを含む組合せがあり、これらは触媒に共有結合又はイオン結合で結合又は連結される。好ましい促進剤は3−mpaである。促進剤の量の減少は、大きな節約となり、特に大規模な製造操作ではそうである。
【0017】
一般に、促進剤が、混合供給原料流の全重量に基づいて、約500ppm以上、好ましくは約750ppm以上、さらに好ましくは約1000ppm以上の量存在するのが望ましい。また一般に、促進剤が、混合供給原料流の全重量に基づいて、約10000ppm以下、好ましくは約5000ppm以下、さらに好ましくは約4500ppm以下の量存在するのが望ましい。
【0018】
ここで図面を参照すると、プロセスフロー図によりビスフェノールを製造する実施形態が示されている。上述したようなカルボニル化合物及びフェノールを含有する供給原料流10を、リサイクル流12と合流して、混合供給原料流14を形成し、これを反応器16に導入する。一実施形態では、反応器16は通常タンク内に、ジビニルベンゼン架橋スルホン化ポリスチレン・イオン交換樹脂を大きな床の形態で収容した触媒反応器であり、所望に応じて上述した促進剤1種以上を含有する。
【0019】
反応器から出てくる反応器流出液18をスプリッタ20により流出液リサイクル流24と結晶化供給原料流22とに分割する。結晶化工程28、例えば多段結晶化及び/又は蒸留により、結晶化供給原料流22からビスフェノールアダクト26(フェノールなどの他の成分を含有してもよい)を取り出す。実施形態によっては、結晶化装置で通常流出液を蒸留して過剰なフェノールを除去し、次に蒸留液を結晶化して結晶性BPAアダクトを得る。ビスフェノールアダクトの除去後に得られる母液流30を流出液リサイクル流24とともに、脱水装置32で脱水する。過剰な水及び/又はアセトンを過剰流34として除去し、リサイクル流12を得る。さらにパージ流36を除去する。
【0020】
一実施形態では、供給原料流10とリサイクル流12とを含む混合供給原料流14は、約1重量%以上、好ましくは約2重量%以上、特に好ましくは約3重量%以上の量のカルボニル化合物を含有する。一般に、混合供給原料流14は、約8重量%以下、好ましくは約6重量%以下、特に好ましくは約5重量%以下の量のカルボニル化合物を含有するのが望ましい。
【0021】
また、混合供給原料流14は、混合供給原料流14の全重量に基づいて、約60重量%以上、好ましくは約65重量%以上、特に好ましくは約70重量%以上の量のフェノールを含有する。また一般に、混合供給原料流14は、混合供給原料流14の全重量に基づいて、約85重量%以下、好ましくは約80重量%以下、特に好ましくは約78重量%以下の量のフェノールを含有するのが望ましい。さらに、混合供給原料流14は、約0.01〜3重量%の水、約5〜20重量%のp,p−ビスフェノール及び約1〜7重量%のo,p−ビスフェノールを含有する。上述した重量%はすべて混合供給原料流14の全重量に基づく。
【0022】
反応器16から出てくる反応器流出液18は一般に、以下の成分を含有する(重量%は反応器流出液18中の成分の合計重量に対しての測定値である)。反応器流出液18は、約0.1重量%以上、好ましくは約0.2重量%以上、最も好ましくは約0.3重量%以上のカルボニル化合物を含有する。一般に、反応器16から出てくる反応器流出液18は、約1.8重量%以下、好ましくは約1.2重量%以下、最も好ましくは約0.75重量%以下のカルボニル化合物を含有する。また反応器流出液18は、約50重量%以上、好ましくは約55重量%以上、最も好ましくは約60重量%以上のフェノールを含有する。また、反応器流出液18は、約75重量%以下、好ましくは約70重量%以下、最も好ましくは約65重量%以下のフェノールを含有しなければならない。プロセスの主たる目的物であるp,p−ビスフェノールは、反応器流出液18中に、反応器流出液18の約20重量%以上、好ましくは約21重量%以上、最も好ましくは約22重量%以上の量存在する。一般に、p,p−ビスフェノールは、反応器流出液18中に、反応器流出液の約30重量%以下、好ましくは約28重量%以下、最も好ましくは約26重量%以下の量存在する。さらに、カルボニル化合物とフェノールとの縮合反応の副生物である水は約0.5〜3重量%の量存在し、これとともに約1〜7重量%のo,p−ビスフェノール及び混合供給原料流10の一部として反応器16に導入される少量の他の反応物質も存在する。
【0023】
次に反応器流出液18をスプリッタに導き、ここで全流出液の約3重量%以上、好ましくは約5重量%以上、さらに好ましくは約8重量%以上の量を流出液リサイクル流24に分流し、脱水装置32に送る。また一般に、反応器流出液18から全流出液の約30重量%以下、好ましくは約28重量%以下、さらに好ましくは約25重量%以下の量を流出液リサイクル流24に分流するのが望ましい。反応器流出液18の一部をリサイクルする場合、所望に応じて、結晶化装置への流出液の供給量を減らさないために、反応器への流れを増加しなければならない。ビスフェノール/フェノールアダクトを結晶化させた後の残りを母液30と呼び、母液30を脱水装置に送り、そこで流出液リサイクル流24と合流し、水と所望に応じてアセトンをストリッピング除去する。
【0024】
一実施形態では、脱水装置から出てくる脱水したリサイクル流12は、約70〜80重量%のフェノール、約0.1〜0.3重量%の水、約0.1〜1重量%のカルボニル化合物、約8〜15重量%のp,p−ビスフェノール、約3〜4重量%のo,p−ビスフェノール、約0.5〜1.5重量%のクロマン、約1〜1.5重量%の二量体及び約0.7〜1.5重量%のBPX−1を含有する。
【0025】
好適な実施形態では、一つの反応進行法として、まず、カルボニル化合物とフェノールとの混合物を供給原料流10の形態で反応器に供給することにより、反応器を始動する。カルボニル化合物とフェノールは反応器16内で反応し、反応器流出液18を生じ、これは、上述したようなビスフェノールアダクトの除去及び水及びアセトンの脱水後に、最終的に混合供給原料流14となる。
【0026】
反応器の始動後に、ビスフェノールを生成する継続的プロセス又はサイクルにおいて、供給原料流10を脱水リサイクル流12と合流して混合供給原料流14を形成する。通常混合供給原料流14の温度を所望の値に調節する。混合供給原料流14を反応器16内のカチオン交換樹脂に液圧をかけて流した後、ビスフェノール生成物を含有する流出液を反応器から取り出し、スプリッタ20に送り、そこで流出液の一部をさらに結晶化装置26に導き、そこでビスフェノールを結晶化する。母液30を流出液リサイクル流24とともに、同時にもしくは順次脱水装置に送る。脱水により水とアセトンを除去しパージを行った後、脱水リサイクル流12を新鮮なフェノール及びアセトンと合わせ、混合供給原料流14を再構築する。一般に流出液をリサイクルする結果としてビスフェノールの製造効率が上昇する。
【0027】
一実施形態では、流出液をリサイクルすることにより得られるビスフェノールをポリカーボネートの製造に用いることができる。本明細書で用いる用語「ポリカーボネート」、「ポリカーボネート組成物」及び「芳香族カーボネート鎖単位を含有する組成物」は、式Iの構造単位を有する組成物を包含する。
【0028】
【化1】
【0029】
式I中、R1基の総数の約60%以上が芳香族有機基であり、その残りが脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。R1は芳香族有機基が好ましく、式IIで表される基がさらに好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
式II中、A1及びA2は各々単環の二価アリール基であり、Y1はA1とA2との間に0個、1個又は2個の原子が介在する橋かけ基である。一実施形態では、A1とA2との間に1個の原子が介在する。Y1基の具体的な例として、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2,2,1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなどが挙げられる。別の実施形態では、A1とA2との間に原子は介在せず、具体的な例はビスフェノールである。橋かけ基Y1は、炭化水素基又はメチレン、シクロヘキシリデン、イソプロピリデンなどの飽和炭化水素基でもよい。
【0032】
ポリカーボネートは、カーボネート前駆体とジヒドロキシ化合物のSchotten−Bauman界面反応により製造できる。代表的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの塩基の水溶液を、ジヒドロキシ化合物を含有する、ベンゼン、トルエン、二硫化炭素、ジクロロメタンなどの水不混和性有機溶剤と混合する。通常、相間移動触媒を使用して反応を促進する。分子量調節剤を単独又は混合状態で反応物質混合物へ添加できる。後述する枝分れ剤も、単独又は混合状態で添加できる。
【0033】
ポリカーボネートは、A1とA2との間に原子が1個だけ介在するジヒドロキシ化合物の界面反応により製造することができる。本明細書で用いる用語「ジヒドロキシ化合物」は、例えば流出液のリサイクルにより得られる、次の一般式IIIで表されるビスフェノール化合物などを含む。
【0034】
【化3】
【0035】
式III中、Ra及びRbは各々独立に水素、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xaは式IVで表される基である。
【0036】
【化4】
【0037】
式IV中、Rc及びRdは各々独立に水素原子、又は一価の直鎖状又は環状炭化水素基であり、Reは二価の炭化水素基である。
【0038】
式IIIで表される種類のビスフェノール化合物の例として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、p,p−ビスフェノール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、又はこれらのビスフェノール化合物を1種以上含む組み合わせが挙げられる。
【0039】
式IIIで表される他のビスフェノール化合物には、Xが−O−、−S−、−SO−又は−SO2−であるものがある。このようなビスフェノール化合物の例として、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン類、又はこれらのビスフェノール化合物を1種以上含む組み合わせが挙げられる。
【0040】
代表的なカーボネート前駆体として、塩化カルボニル(ホスゲン)、臭化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、ビスフェノールAやヒドロキノンなどの二価フェノールのビスハロホルメート、エチレングリコールやネオペンチルグリコールなどのグリコールのビスハロホルメート、及びジフェニルカーボネート、ジ(トリル)カーボネート、ジ(ナフチル)カーボネートなどのジアリールカーボネートが挙げられる。界面反応のカーボネート前駆体としては、塩化カルボニルが好ましい。
【0041】
一実施形態では、ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応により製造することができる。ポリカーボネートの製造に使用できる炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなど、又はこれらの炭酸ジエステルを1種以上含む組み合わせが挙げられる。好ましい炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネートである。
【0042】
ポリカーボネートの数平均分子量は約3000〜1000000g/モルであるのが好ましい。この範囲内で、数平均分子量が約10000g/モル以上、好ましくは約20000g/モル以上、さらに好ましくは約25000g/モル以上であるのが望ましい。また、数平均分子量が約100000g/モル以下、好ましくは約75000g/モル以下、さらに好ましくは約50000g/モル以下、特に好ましくは約35000g/モル以下であるのが望ましい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【0044】
実施例1
下記表1に示すこの模擬的基本実施例では、反応器流出液18を分割せず、流出液の全量を結晶化装置に送り、そこから母液を脱水装置に送った。各々35トンの4%架橋触媒(活性度1.0を有する酸性形態の、ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン化ポリスチレンである)を充填した、合計液圧流150m3/hrを処理できる4つの反応器を用いて、ビスフェノール製造プロセスを実施した。促進剤として3−mpaを2568ppm使用した。結晶化装置に向けて流れる反応器流出液18は117トン/時であった。反応入口温度を約56℃に維持した。合計ビスフェノール生産量(/日)は表1に示すように398.95トンであった。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例2
各々35トンの4%架橋触媒(活性度1.0を有する)を充填した、合計液圧流150m3/hrを処理できる4つの反応器を用いて、ビスフェノール製造プロセスを実施した。反応入口温度を56℃とした。促進剤として3−mpaを2568ppm使用した。本例では、流出液の10%(及び16%)を脱水装置にリサイクルし、また結晶化装置への供給材料を117トン/時に維持するために反応器への流れを増加すると仮定する。今と同じアセトン濃度を維持するために、プロセスへの新鮮なアセトン/フェノールを増加する。入口温度を56℃に維持する。反応器流出液18の10%(又は16%)を脱水装置にリサイクルすることで、表2に示す平衡状態に達する。また、アセトン濃度をすべての入力の合計重量に対して一定なレベルに維持すれば、リサイクルを行わなかった実施例1の生産量(398.95トン/日)と比べて、ビスフェノール生産量が劇的に増加する(10%リサイクルで426.3トン/日)ことも分かる。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例3
各々35トンの4%架橋触媒(活性度1.0を有する)を充填した、合計液圧流150m3/hrを処理できる4つの反応器を用いて、ビスフェノール製造プロセスを実施した。反応入口温度を56℃とした。本例では、反応器流出液18の10%を脱水を経てプロセス反応器供給材料にリサイクルし、また結晶化装置への供給材料を117トン/時に維持するために反応器への流れを増加すると仮定する。今と同じ生産量を維持するために、プロセスへの新鮮なアセトン及びフェノール供給を僅かに増加し、3−メルカプトプロピオン酸濃度を下げる。反応器流出液18の10%を脱水/反応器供給材料にリサイクルし、また反応供給物質への3−mpaを1928.2ppmとすることで、以下に示す平衡状態に達する。
【0049】
【表3】
【0050】
したがって、実施例3のビスフェノール生産量を実施例1と比較すると、反応器流出液18の一部をリサイクルすることにより、ほぼ同じ生産量のビスフェノールを製造しながら、促進剤3−mpaの使用量を大幅に下げる(2568対1928ppm)ことが可能になることが分かる。
【0051】
以上、好適な実施形態を図示し説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の改変や置き換えが可能である。したがって、実施形態は本発明を具体的に説明するためであって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】触媒寿命の延長、反応器選択性の向上、促進剤量の減少などの利点を有するビスフェノールの効率よい生成方法の一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【符号の説明】
【0053】
10 供給原料流
12 リサイクル流
14 混合供給原料流
16 反応器
18 流出液
20 スプリッタ
22 結晶化供給原料流
24 流出液リサイクル流
28 結晶化装置
26 ビスフェノールアダクト
30 母液流
32 脱水装置
34 過剰流
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスフェノールの製造方法に関し、特にビスフェノールの製造効率を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールは、エポキシ樹脂やポリカーボネートなどの化学製品の製造に原料として用いられる。ビスフェノールは普通、酸触媒もしくは活性イオン交換触媒の存在下フェノール化合物とケトン化合物との縮合によって製造される。この反応にしばしば促進剤(助触媒とも言う)を使用する。
【0003】
代表的には、ビスフェノールの製造に用いられる触媒は急速な不活性化を受ける。不活性化には、過剰なアセトン、ビスフェノール状タール、その他の反応副生物の存在など多くの理由が考えられる。触媒の交換は、費用がかさみ、厳しい条件下での煩雑な作業を必要とし、また適切に処分する必要のある化学的廃棄物を生じる。促進剤の使用は、反応には有利であるが、極めて高価であり、反応器生産量を維持するか増加しながら、促進剤の量を減らすことが強く望まれている。
【0004】
ビスフェノール製造を改良し、触媒寿命を長くする特別な方法に、反応器からの流出液のリサイクルがある。例えば、米国特許第4308404号に、一連の反応器の一部をなすいずれか一つの反応器からの流出液をリサイクルして反応区域に戻すことで触媒寿命が長くなることが教示されている。しかし、この特許では、触媒寿命を長くするためには、反応区域を少なくとも2つの反応器から構成する必要がある。さらに、最後の反応器からの流出液を反応区域にリサイクルすることは禁止されている。
【0005】
米国特許第5786522号も、ビスフェノールを製造するために、反応器からの脱水流出液を部分的にリサイクルして入力流に戻すことを教示しており、得られるビスフェノールをポリカーボネートに利用してその色を改良している。
【0006】
ビスフェノールの製造には数多くの方法が提案されているが、当業界では大規模な工業的生産プロセスとして適当な効果的、効率的方法が依然として必要とされている。
【特許文献1】米国特許第4308404号明細書
【特許文献2】米国特許第5786522号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
ビスフェノールの製造方法は、供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し;反応器システムから反応器流出液を取り出し;反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し;結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり;母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し;脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルして混合供給原料流に戻す工程を含み、これにより反応器選択性を高め、促進剤量を少なくするとともに、p,p−ビスフェノールの効率よい生成を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明者らは、p,p−ビスフェノール(以下BPA)を製造するプロセスにおいて、混合供給原料流14中のカルボニル化合物の濃度を下げることで、反応器選択性を改良できることを見いだした。混合供給原料流14中のカルボニル化合物の濃度の低下は、フェノール/BPA濃度の上昇が起こるように反応器流出液18の一部を脱水することによって実現され、その結果触媒性能が向上し、反応器選択性が増加する。反応器流出液18の脱水中に、水含量と共にカルボニル化合物含量も低下する結果として、脱水装置から出てくるリサイクル流12中のフェノール/BPA濃度が対応して増加し、このことが結果として混合供給原料流14中のフェノール/BPA含量の増加をもたらす。
【0009】
或いは、もしも新しいカルボニル化合物を混合供給原料流14に追加することによりカルボニル化合物をその元の値に戻すと、p,p−ビスフェノールを製造するプラント容量が大幅に増加するか、促進剤の使用量を減少させることができる。
【0010】
有利な操作モードでは、反応器流出液18の約6重量%以上、好ましくは約8重量%以上、さらに好ましくは約10重量%以上の量を混合供給原料流14にリサイクルするのが望ましい。また、反応器流出液18の約22重量%以下、好ましくは約20重量%以下、さらに好ましくは約18重量%以下の量をリサイクルするのが望ましい。反応器流出液18を上記範囲の量リサイクルすると、混合供給原料流14中のカルボニル化合物の濃度を、反応器流出液18をリサイクルしないプロセスと比較して、約15重量%以上、好ましくは約20重量%以上、さらに好ましくは約25重量%以上の量低下することができる。同様に、供給原料流中のカルボニル化合物の濃度を、混合供給原料流14の約35重量%以下、好ましくは約30重量%以下、さらに好ましくは約28重量%以下の量低下することができる。さらに、促進剤の濃度を、反応器流出液18をリサイクルしないプロセスと比較して、約10重量%以上、好ましくは約15重量%以上、さらに好ましくは約20重量%以上の量低下する。一般に、一定な生産量を維持しながら、促進剤の濃度を、反応器流出液18をリサイクルしないプロセスと比較して、約30重量%以下、好ましくは約28重量%以下、さらに好ましくは約25重量%以下の量低下することができる。さらに、カルボニル化合物及び促進剤濃度を何ら減少させることなく、製造効率を上げる特殊な実施形態では、反応器流出液18の一部をリサイクルすることで、BPAの1日の製造量の、約5重量%以上、好ましくは約6重量%以上、さらに好ましくは約7重量%以上の増加を達成できる。同様に、反応器流出液18の一部をリサイクルすることで、BPAの1日の製造量を、約11重量%以下、好ましくは約10重量%以下、さらに好ましくは約8.5重量%以下の量増加することができる。
【0011】
一般に、ビスフェノールの製造に使用するのに適当なフェノール化合物は、好ましくはフェノール性ヒドロキシル基に対してパラ位に、反応性水素を有する。このようなフェノール化合物は、1つ以上のアルキル基、例えば低級アルキル基、例えばメチル、エチル又はtert−ブチル基、ハロゲン原子、例えば塩素原子、カルボニル縮合反応を妨害しない他の置換基、又は上述したフェノール類の少なくとも1つを含む組合せで置換されていてもよい。フェノール化合物の具体例には、o−クレゾール、m−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、1,3,5−キシレノール、テトラメチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、2,6−ジクロロフェノールなどがある。フェノール(ヒドロキシベンゼン)が最も好ましい。
【0012】
本プロセスに用いるカルボニル化合物はアルデヒドでもケトンでもよい。カルボニル化合物がケトンであるのが好ましい。ケトンの具体例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルビニルアセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン及び上述したケトン類の少なくとも1つを含む組合せがある。アセトンが特に好ましい。
【0013】
所望に応じて、本プロセスには種々の触媒系を使用することができる。実施形態によっては、塩酸、硫酸又はルイス酸のような均質触媒が適当である。しかし、不均質触媒系が好適である。特に、イオン交換樹脂の使用はしばしば最も効率よい触媒作用手段である。イオン交換樹脂は副反応にほとんど関与しない。さらに、イオン交換樹脂は不溶性であるので、反応器システム内に留まり、下流の腐食問題を起こさない。
【0014】
イオン交換樹脂は当業界でよく知られており、種々の文献、例えばKirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology, 3rd Edition, Vol.9, pp.256 and 296−297(1980);及び Vol.13, pp.678以降(1981)に記載されている。イオン交換樹脂の触媒としての使用も、Kirk−Othmer’s Encyclopedia of Chemical Technology, 4th Edition, Vol.14, pp.777−778(1995)に記載されている。特に、強酸型の樹脂を用いるのが適当である。好ましい触媒は、複数のスルホン酸側基を有する炭化水素ポリマーからなるスルホン化芳香族樹脂である。スルホン酸側基は代表的には2もしくは4%ジビニルベンゼンで架橋されている。この点で、スルホン化ポリスチレン、ポリ(スチレンジビニルベンゼン)共重合体、及びスルホン化フェノールホルムアルデヒド樹脂が有用である。適当なイオン交換樹脂の市販品の例として、Rhom&Haas社から入手できるAMBERLYST(登録商標)材料(例えばAMBERLYST15)及びAMBERLITE(登録商標)材料(例えばAMBERLITE131及びAMBERLITE118)、DowChemical社から入手できるDOWEX(登録商標)製品、BayerChemical社から入手できるK1131及びK1221がある。
【0015】
酸性樹脂の交換容量は、乾燥樹脂1g当たり水素イオン(H+)約2.0ミリ当量(meq)以上であるのが好ましい。乾燥樹脂1g当たりH+約3.0〜約5.5meqの範囲が最も好ましい。
【0016】
種々のビスフェノールを製造する従来の方法では、イオン交換樹脂触媒はしばしば硫黄含有促進剤での前処理を必要とした。促進剤の例に、チオール、即ちメルカプタン系化合物、例えばメチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、3−メルカプトプロピオン酸(以下、3−mpa)及びこれらの促進剤の少なくとも1つを含む組合せがあり、これらは触媒に共有結合又はイオン結合で結合又は連結される。好ましい促進剤は3−mpaである。促進剤の量の減少は、大きな節約となり、特に大規模な製造操作ではそうである。
【0017】
一般に、促進剤が、混合供給原料流の全重量に基づいて、約500ppm以上、好ましくは約750ppm以上、さらに好ましくは約1000ppm以上の量存在するのが望ましい。また一般に、促進剤が、混合供給原料流の全重量に基づいて、約10000ppm以下、好ましくは約5000ppm以下、さらに好ましくは約4500ppm以下の量存在するのが望ましい。
【0018】
ここで図面を参照すると、プロセスフロー図によりビスフェノールを製造する実施形態が示されている。上述したようなカルボニル化合物及びフェノールを含有する供給原料流10を、リサイクル流12と合流して、混合供給原料流14を形成し、これを反応器16に導入する。一実施形態では、反応器16は通常タンク内に、ジビニルベンゼン架橋スルホン化ポリスチレン・イオン交換樹脂を大きな床の形態で収容した触媒反応器であり、所望に応じて上述した促進剤1種以上を含有する。
【0019】
反応器から出てくる反応器流出液18をスプリッタ20により流出液リサイクル流24と結晶化供給原料流22とに分割する。結晶化工程28、例えば多段結晶化及び/又は蒸留により、結晶化供給原料流22からビスフェノールアダクト26(フェノールなどの他の成分を含有してもよい)を取り出す。実施形態によっては、結晶化装置で通常流出液を蒸留して過剰なフェノールを除去し、次に蒸留液を結晶化して結晶性BPAアダクトを得る。ビスフェノールアダクトの除去後に得られる母液流30を流出液リサイクル流24とともに、脱水装置32で脱水する。過剰な水及び/又はアセトンを過剰流34として除去し、リサイクル流12を得る。さらにパージ流36を除去する。
【0020】
一実施形態では、供給原料流10とリサイクル流12とを含む混合供給原料流14は、約1重量%以上、好ましくは約2重量%以上、特に好ましくは約3重量%以上の量のカルボニル化合物を含有する。一般に、混合供給原料流14は、約8重量%以下、好ましくは約6重量%以下、特に好ましくは約5重量%以下の量のカルボニル化合物を含有するのが望ましい。
【0021】
また、混合供給原料流14は、混合供給原料流14の全重量に基づいて、約60重量%以上、好ましくは約65重量%以上、特に好ましくは約70重量%以上の量のフェノールを含有する。また一般に、混合供給原料流14は、混合供給原料流14の全重量に基づいて、約85重量%以下、好ましくは約80重量%以下、特に好ましくは約78重量%以下の量のフェノールを含有するのが望ましい。さらに、混合供給原料流14は、約0.01〜3重量%の水、約5〜20重量%のp,p−ビスフェノール及び約1〜7重量%のo,p−ビスフェノールを含有する。上述した重量%はすべて混合供給原料流14の全重量に基づく。
【0022】
反応器16から出てくる反応器流出液18は一般に、以下の成分を含有する(重量%は反応器流出液18中の成分の合計重量に対しての測定値である)。反応器流出液18は、約0.1重量%以上、好ましくは約0.2重量%以上、最も好ましくは約0.3重量%以上のカルボニル化合物を含有する。一般に、反応器16から出てくる反応器流出液18は、約1.8重量%以下、好ましくは約1.2重量%以下、最も好ましくは約0.75重量%以下のカルボニル化合物を含有する。また反応器流出液18は、約50重量%以上、好ましくは約55重量%以上、最も好ましくは約60重量%以上のフェノールを含有する。また、反応器流出液18は、約75重量%以下、好ましくは約70重量%以下、最も好ましくは約65重量%以下のフェノールを含有しなければならない。プロセスの主たる目的物であるp,p−ビスフェノールは、反応器流出液18中に、反応器流出液18の約20重量%以上、好ましくは約21重量%以上、最も好ましくは約22重量%以上の量存在する。一般に、p,p−ビスフェノールは、反応器流出液18中に、反応器流出液の約30重量%以下、好ましくは約28重量%以下、最も好ましくは約26重量%以下の量存在する。さらに、カルボニル化合物とフェノールとの縮合反応の副生物である水は約0.5〜3重量%の量存在し、これとともに約1〜7重量%のo,p−ビスフェノール及び混合供給原料流10の一部として反応器16に導入される少量の他の反応物質も存在する。
【0023】
次に反応器流出液18をスプリッタに導き、ここで全流出液の約3重量%以上、好ましくは約5重量%以上、さらに好ましくは約8重量%以上の量を流出液リサイクル流24に分流し、脱水装置32に送る。また一般に、反応器流出液18から全流出液の約30重量%以下、好ましくは約28重量%以下、さらに好ましくは約25重量%以下の量を流出液リサイクル流24に分流するのが望ましい。反応器流出液18の一部をリサイクルする場合、所望に応じて、結晶化装置への流出液の供給量を減らさないために、反応器への流れを増加しなければならない。ビスフェノール/フェノールアダクトを結晶化させた後の残りを母液30と呼び、母液30を脱水装置に送り、そこで流出液リサイクル流24と合流し、水と所望に応じてアセトンをストリッピング除去する。
【0024】
一実施形態では、脱水装置から出てくる脱水したリサイクル流12は、約70〜80重量%のフェノール、約0.1〜0.3重量%の水、約0.1〜1重量%のカルボニル化合物、約8〜15重量%のp,p−ビスフェノール、約3〜4重量%のo,p−ビスフェノール、約0.5〜1.5重量%のクロマン、約1〜1.5重量%の二量体及び約0.7〜1.5重量%のBPX−1を含有する。
【0025】
好適な実施形態では、一つの反応進行法として、まず、カルボニル化合物とフェノールとの混合物を供給原料流10の形態で反応器に供給することにより、反応器を始動する。カルボニル化合物とフェノールは反応器16内で反応し、反応器流出液18を生じ、これは、上述したようなビスフェノールアダクトの除去及び水及びアセトンの脱水後に、最終的に混合供給原料流14となる。
【0026】
反応器の始動後に、ビスフェノールを生成する継続的プロセス又はサイクルにおいて、供給原料流10を脱水リサイクル流12と合流して混合供給原料流14を形成する。通常混合供給原料流14の温度を所望の値に調節する。混合供給原料流14を反応器16内のカチオン交換樹脂に液圧をかけて流した後、ビスフェノール生成物を含有する流出液を反応器から取り出し、スプリッタ20に送り、そこで流出液の一部をさらに結晶化装置26に導き、そこでビスフェノールを結晶化する。母液30を流出液リサイクル流24とともに、同時にもしくは順次脱水装置に送る。脱水により水とアセトンを除去しパージを行った後、脱水リサイクル流12を新鮮なフェノール及びアセトンと合わせ、混合供給原料流14を再構築する。一般に流出液をリサイクルする結果としてビスフェノールの製造効率が上昇する。
【0027】
一実施形態では、流出液をリサイクルすることにより得られるビスフェノールをポリカーボネートの製造に用いることができる。本明細書で用いる用語「ポリカーボネート」、「ポリカーボネート組成物」及び「芳香族カーボネート鎖単位を含有する組成物」は、式Iの構造単位を有する組成物を包含する。
【0028】
【化1】
【0029】
式I中、R1基の総数の約60%以上が芳香族有機基であり、その残りが脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。R1は芳香族有機基が好ましく、式IIで表される基がさらに好ましい。
【0030】
【化2】
【0031】
式II中、A1及びA2は各々単環の二価アリール基であり、Y1はA1とA2との間に0個、1個又は2個の原子が介在する橋かけ基である。一実施形態では、A1とA2との間に1個の原子が介在する。Y1基の具体的な例として、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O2)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2-[2,2,1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなどが挙げられる。別の実施形態では、A1とA2との間に原子は介在せず、具体的な例はビスフェノールである。橋かけ基Y1は、炭化水素基又はメチレン、シクロヘキシリデン、イソプロピリデンなどの飽和炭化水素基でもよい。
【0032】
ポリカーボネートは、カーボネート前駆体とジヒドロキシ化合物のSchotten−Bauman界面反応により製造できる。代表的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムなどの塩基の水溶液を、ジヒドロキシ化合物を含有する、ベンゼン、トルエン、二硫化炭素、ジクロロメタンなどの水不混和性有機溶剤と混合する。通常、相間移動触媒を使用して反応を促進する。分子量調節剤を単独又は混合状態で反応物質混合物へ添加できる。後述する枝分れ剤も、単独又は混合状態で添加できる。
【0033】
ポリカーボネートは、A1とA2との間に原子が1個だけ介在するジヒドロキシ化合物の界面反応により製造することができる。本明細書で用いる用語「ジヒドロキシ化合物」は、例えば流出液のリサイクルにより得られる、次の一般式IIIで表されるビスフェノール化合物などを含む。
【0034】
【化3】
【0035】
式III中、Ra及びRbは各々独立に水素、ハロゲン原子又は一価の炭化水素基であり、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xaは式IVで表される基である。
【0036】
【化4】
【0037】
式IV中、Rc及びRdは各々独立に水素原子、又は一価の直鎖状又は環状炭化水素基であり、Reは二価の炭化水素基である。
【0038】
式IIIで表される種類のビスフェノール化合物の例として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、p,p−ビスフェノール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ブタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、又はこれらのビスフェノール化合物を1種以上含む組み合わせが挙げられる。
【0039】
式IIIで表される他のビスフェノール化合物には、Xが−O−、−S−、−SO−又は−SO2−であるものがある。このようなビスフェノール化合物の例として、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルフェニルエーテルなどのビス(ヒドロキシアリール)エーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシドなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホンなどのビス(ヒドロキシジアリール)スルホン類、又はこれらのビスフェノール化合物を1種以上含む組み合わせが挙げられる。
【0040】
代表的なカーボネート前駆体として、塩化カルボニル(ホスゲン)、臭化カルボニルなどのハロゲン化カルボニル、ビスフェノールAやヒドロキノンなどの二価フェノールのビスハロホルメート、エチレングリコールやネオペンチルグリコールなどのグリコールのビスハロホルメート、及びジフェニルカーボネート、ジ(トリル)カーボネート、ジ(ナフチル)カーボネートなどのジアリールカーボネートが挙げられる。界面反応のカーボネート前駆体としては、塩化カルボニルが好ましい。
【0041】
一実施形態では、ポリカーボネートはジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとの溶融重縮合反応により製造することができる。ポリカーボネートの製造に使用できる炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなど、又はこれらの炭酸ジエステルを1種以上含む組み合わせが挙げられる。好ましい炭酸ジエステルは、ジフェニルカーボネートである。
【0042】
ポリカーボネートの数平均分子量は約3000〜1000000g/モルであるのが好ましい。この範囲内で、数平均分子量が約10000g/モル以上、好ましくは約20000g/モル以上、さらに好ましくは約25000g/モル以上であるのが望ましい。また、数平均分子量が約100000g/モル以下、好ましくは約75000g/モル以下、さらに好ましくは約50000g/モル以下、特に好ましくは約35000g/モル以下であるのが望ましい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【0044】
実施例1
下記表1に示すこの模擬的基本実施例では、反応器流出液18を分割せず、流出液の全量を結晶化装置に送り、そこから母液を脱水装置に送った。各々35トンの4%架橋触媒(活性度1.0を有する酸性形態の、ジビニルベンゼンで架橋されたスルホン化ポリスチレンである)を充填した、合計液圧流150m3/hrを処理できる4つの反応器を用いて、ビスフェノール製造プロセスを実施した。促進剤として3−mpaを2568ppm使用した。結晶化装置に向けて流れる反応器流出液18は117トン/時であった。反応入口温度を約56℃に維持した。合計ビスフェノール生産量(/日)は表1に示すように398.95トンであった。
【0045】
【表1】
【0046】
実施例2
各々35トンの4%架橋触媒(活性度1.0を有する)を充填した、合計液圧流150m3/hrを処理できる4つの反応器を用いて、ビスフェノール製造プロセスを実施した。反応入口温度を56℃とした。促進剤として3−mpaを2568ppm使用した。本例では、流出液の10%(及び16%)を脱水装置にリサイクルし、また結晶化装置への供給材料を117トン/時に維持するために反応器への流れを増加すると仮定する。今と同じアセトン濃度を維持するために、プロセスへの新鮮なアセトン/フェノールを増加する。入口温度を56℃に維持する。反応器流出液18の10%(又は16%)を脱水装置にリサイクルすることで、表2に示す平衡状態に達する。また、アセトン濃度をすべての入力の合計重量に対して一定なレベルに維持すれば、リサイクルを行わなかった実施例1の生産量(398.95トン/日)と比べて、ビスフェノール生産量が劇的に増加する(10%リサイクルで426.3トン/日)ことも分かる。
【0047】
【表2】
【0048】
実施例3
各々35トンの4%架橋触媒(活性度1.0を有する)を充填した、合計液圧流150m3/hrを処理できる4つの反応器を用いて、ビスフェノール製造プロセスを実施した。反応入口温度を56℃とした。本例では、反応器流出液18の10%を脱水を経てプロセス反応器供給材料にリサイクルし、また結晶化装置への供給材料を117トン/時に維持するために反応器への流れを増加すると仮定する。今と同じ生産量を維持するために、プロセスへの新鮮なアセトン及びフェノール供給を僅かに増加し、3−メルカプトプロピオン酸濃度を下げる。反応器流出液18の10%を脱水/反応器供給材料にリサイクルし、また反応供給物質への3−mpaを1928.2ppmとすることで、以下に示す平衡状態に達する。
【0049】
【表3】
【0050】
したがって、実施例3のビスフェノール生産量を実施例1と比較すると、反応器流出液18の一部をリサイクルすることにより、ほぼ同じ生産量のビスフェノールを製造しながら、促進剤3−mpaの使用量を大幅に下げる(2568対1928ppm)ことが可能になることが分かる。
【0051】
以上、好適な実施形態を図示し説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の改変や置き換えが可能である。したがって、実施形態は本発明を具体的に説明するためであって、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】触媒寿命の延長、反応器選択性の向上、促進剤量の減少などの利点を有するビスフェノールの効率よい生成方法の一実施形態を示すプロセスフロー図である。
【符号の説明】
【0053】
10 供給原料流
12 リサイクル流
14 混合供給原料流
16 反応器
18 流出液
20 スプリッタ
22 結晶化供給原料流
24 流出液リサイクル流
28 結晶化装置
26 ビスフェノールアダクト
30 母液流
32 脱水装置
34 過剰流
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールの製造方法であって、
供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し、
反応器システムから反応器流出液を取り出し、
反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し、
結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり、
母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し、
脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルして混合供給原料流に戻し、p,p−ビスフェノールの生成を行う
工程を含む方法。
【請求項2】
前記フェノールが、o−クレゾール、m−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、1,3,5−キシレノール、テトラメチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、2,6−ジクロロフェノール、又は上記フェノール類の少なくとも1種を含む組合せであり、カルボニル化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルビニルアセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、又は上記ケトン類の少なくとも1種を含む組合せである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流出液リサイクル流が反応器流出液の約6〜22重量%をなす、請求項1記載の方法。
【請求項4】
混合供給原料流中のカルボニル化合物の濃度が混合供給原料流の全重量の約1〜8重量%であり、混合供給原料流中のフェノールの濃度が混合供給原料流の全重量の約60〜85重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
混合供給原料流中のp,p−ビスフェノールの濃度が混合供給原料流の全重量の約5〜20重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
p,p−ビスフェノールをカーボネート前駆体と反応させる工程を含むポリカーボネートの製造方法であって、上記p,p−ビスフェノールが、
供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し、
反応器システムから反応器流出液を取り出し、
反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し、
結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり、
母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し、
脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルしてp,p−ビスフェノールの生成を行う混合供給原料流に戻す
工程を含む方法によって製造される、方法。
【請求項7】
p,p−ビスフェノールをカーボネート前駆体と界面法で反応させ、カーボネート前駆体がハロゲン化カルボニルである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
p,p−ビスフェノールを炭酸ジエステルと反応させる工程を含むポリカーボネートの製造方法であって、上記p,p−ビスフェノールが、
供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し、
反応器システムから反応器流出液を取り出し、
反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し、
結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり、
母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し、
脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルしてp,p−ビスフェノールの生成を行う混合供給原料流に戻す
工程を含む方法によって製造される、方法。
【請求項9】
炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリカーボネートの数平均分子量が約3000〜約1000000g/モルである、請求項6又は8記載の方法。
【請求項1】
ビスフェノールの製造方法であって、
供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し、
反応器システムから反応器流出液を取り出し、
反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し、
結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり、
母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し、
脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルして混合供給原料流に戻し、p,p−ビスフェノールの生成を行う
工程を含む方法。
【請求項2】
前記フェノールが、o−クレゾール、m−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、o−sec−ブチルフェノール、1,3,5−キシレノール、テトラメチルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、o−フェニルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、2,6−ジクロロフェノール、又は上記フェノール類の少なくとも1種を含む組合せであり、カルボニル化合物が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルビニルアセトン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、又は上記ケトン類の少なくとも1種を含む組合せである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記流出液リサイクル流が反応器流出液の約6〜22重量%をなす、請求項1記載の方法。
【請求項4】
混合供給原料流中のカルボニル化合物の濃度が混合供給原料流の全重量の約1〜8重量%であり、混合供給原料流中のフェノールの濃度が混合供給原料流の全重量の約60〜85重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
混合供給原料流中のp,p−ビスフェノールの濃度が混合供給原料流の全重量の約5〜20重量%である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
p,p−ビスフェノールをカーボネート前駆体と反応させる工程を含むポリカーボネートの製造方法であって、上記p,p−ビスフェノールが、
供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し、
反応器システムから反応器流出液を取り出し、
反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し、
結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり、
母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し、
脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルしてp,p−ビスフェノールの生成を行う混合供給原料流に戻す
工程を含む方法によって製造される、方法。
【請求項7】
p,p−ビスフェノールをカーボネート前駆体と界面法で反応させ、カーボネート前駆体がハロゲン化カルボニルである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
p,p−ビスフェノールを炭酸ジエステルと反応させる工程を含むポリカーボネートの製造方法であって、上記p,p−ビスフェノールが、
供給原料流とリサイクル流とを含む混合供給原料流を、触媒割合の酸触媒を含有する少なくとも1つの反応器を含む反応器システムに導入し、但し混合供給原料流はカルボニル化合物及び化学量論的に過剰なフェノールを含有し、
反応器システムから反応器流出液を取り出し、
反応器流出液を結晶化供給原料流と流出液リサイクル流とに分割し、
結晶化供給原料流からビスフェノールアダクトを抽出し、残りが母液流となり、
母液流及び流出液リサイクル流を脱水装置で脱水し、過剰な水及びカルボニル化合物を除去し、
脱水した母液流及び脱水した流出液リサイクル流をリサイクルしてp,p−ビスフェノールの生成を行う混合供給原料流に戻す
工程を含む方法によって製造される、方法。
【請求項9】
炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリカーボネートの数平均分子量が約3000〜約1000000g/モルである、請求項6又は8記載の方法。
【図1】
【公表番号】特表2006−511623(P2006−511623A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510013(P2005−510013)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040436
【国際公開番号】WO2004/058673
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040436
【国際公開番号】WO2004/058673
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】
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