説明

ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体

【課題】有機EL用素子成分、特に正孔輸送材料として優れた新規なビス三環性アミン置換アリーレン誘導体の提供。
【解決手段】一般式(1)で示されるアリーレン誘導体に特定構造の三環性アミン基を2個有する新規なビス三環性アミン置換アリーレン誘導体である。


〔Rは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基、C〜Cの低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。Arはそれぞれが置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。Zは、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に、5〜8員環の飽和の炭化水素環あるいは5員環の飽和の複素環を形成するのに必要な原子を示す。Aは2価の連結基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビス三環性アミン置換アリーレン誘導体に関する。さらに詳しくは有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子成分として用いることができる新規なビス三環性アミン置換アリーレン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子については、その原理的な可能性は従来から知られていたものの、実用的な素子の作製が初めて報告されたのは、1987年にコダック社のTangらによるものが最初である。彼らは発光層と正孔輸送層を分離し、薄膜で積層化させることにより有機EL素子の発光効率を向上させ、かつ低電圧での発光を可能にし、発光素子としての可能性を世に示した(例えば、特許文献1参照)。これ以降、多くの研究者によって発光効率や素子寿命の改良のための研究が行われ、素子用材料として数多くの化合物が提案されてきた。その結果、発光特性についても十分な実用性を有する材料が開発されるに至った(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、素子寿命については未だに十分な特性が得られているとは言い難く、素子の駆動時に、時間とともに発光輝度が低下したり、ダークスポットと呼ばれる発光しない部分が現れたりする等の劣化が観測されている。これらの素子寿命に影響を及ぼす劣化の原因の一つとして、正孔輸送材料の特性が大きくかかわっていることが、最近の研究で明らかになってきた。具体的には、通電により正孔輸送材料が結晶化して薄膜の均一性をゆがめ、素子の短絡をまねいたり、また、通電により正孔輸送材料が分解を起こして機能しなくなり、発光を阻害する等である。
【0003】
このような問題を解決すべく、改良された特性を有する化合物(通称:α−NPD)のような正孔輸送材料が用いられている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
【化1】

【0005】
また、さらに最近になって、正孔輸送材料としてより高い融点や高い熱分解点を有するものが、発光や保存の安定性に優れ、また、発光寿命が長いことも見出されている(例えば、特許文献4参照)。一方、正孔輸送材料を含む正孔輸送層と陽極との間に、適切なイオン化ポテンシャル値を有する正孔注入材料を含む、正孔注入層を設けることによって、よりスムースにホール移動が起こり、結果として単独の正孔輸送層を有する構成のものと比較して、より駆動電圧の低い、結果として安定性に優れ、駆動による特性の劣化が改善された素子が得られることも見出されている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、これまでに開発されている優れた発光材料の特性を生かすに足る、十分な安定性を持った正孔輸送材料や正孔注入材料については、未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−295695号公報
【特許文献2】特開平4−220995号公報
【特許文献3】特開平5−234681号公報
【特許文献4】特開2004−182740号公報
【特許文献5】特開2007−42973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、正孔注入及び輸送能力に優れ、駆動による特性の劣化が改善された、有機EL用正孔注入材料や有機EL用正孔輸送材料として優れた特性を有する新規なビス三環性アミン置換アリーレン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、文献に未記載の新規化合物である特定の構造を有するビス三環性アミン置換アリーレン誘導体を見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換アリーレン誘導体を提供するものである。
【0010】
【化2】

【0011】
〔一般式(1)において、Rは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基、C〜Cの低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。Arはそれぞれが置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。Zは、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に、5〜8員環の飽和の炭化水素環あるいは5員環の飽和の複素環を形成するのに必要な原子を示す。Aは一般式(2)〜(6)で示される2価の連結基を示す。〕
【0012】
【化3】

【0013】
〔一般式(2)〜(4)において、R〜Rは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基、C〜Cの低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。一般式(5)において、R及びRは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基またはフェニル基を示す。〕
【発明の効果】
【0014】
本発明のビス三環性アミン置換アリーレン誘導体を、正孔注入材料や正孔輸送材料として用いることにより、駆動電圧が十分低く、素子寿命の長い、優れた有機EL素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般式(1)におけるRの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等のC〜Cの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等のC〜Cの低級アルコキシ基、または、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を挙げることができる。
【0016】
Arの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;フェニル基;2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−オクチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2−メチル−4−エチルフェニル基、2−エチル−5−ブチル基等のアルキル基で置換されたフェニル基;2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、3−プロポキシフェニル基、3−イソプロポキシフェニル基、4−プロポキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、4−t−ブトキシフェニル基、4−ヘキシルオキシ基、2,4−ジメトキシフェニル基、2−メトキシ−5−エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたフェニル基;2−メトキシ−4−メチルフェニル基、2,6−ジメチル−4−メトキシフェニル基、2−イソプロポキシ−5−t−ブチルフェニル基、3−t−ブトキシ−4−イソプロピルフェニル基等のアルキル基及びアルコキシ基の双方で置換されたフェニル基;4−スチリルフェニル基、4−(1−メチル−2−フェニルエテニル)フェニル基、4−(1,2−ジフェニルエテニル)フェニル基、4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル基等のアルケニル基で置換されたフェニル基;1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、5−メチル−1−ナフチル基、1−メチル−2−ナフチル基、4−エチル−2−ナフチル基、4−プロピル−1−ナフチル基、4−イソプロピル−1−ナフチル基等のアルキル基で置換されたナフチル基;2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、4′−メチル−4−ビフェニリル基、2′,4′−ジメチル−4−ビフェニリル基、3′,5′−ジエチル−3−ビフェニリル基、3′−メチル−4′−t−ブチル−3−ビフェニリル基等のアルキル基で置換されたビフェニリル基;4−p−ターフェニリル基、4−m−ターフェニリル基、4−o−ターフェニリル基、4′′−メチル−p−ターフェニリル基、3′′−5′′−ジメチル−p−ターフェニリル基、4′′−t−ブチル−p−ターフェニリル基、4′′−オクチル−p−ターフェニリル基等のアルキル基で置換されたターフェニリル基;9−フェナントリル基、1−アントリル基、9−アントリル基、1−ピレニル基等のアリール基;2−ピリジル基、4−ピリジル基等のヘテロ環基を挙げることができる。
【0017】
また、Zの具体例としては、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に飽和鎖を形成する−(CH−、−(CH−、−(CH−等の炭素鎖や、−CH−NH−CH−、−CH−N(CH)−CH−等の含チッ素炭素鎖が挙げられる。
【0018】
Aの具体例としては、一般式(2)〜(6)で示される2価の連結基が示される。一般式(2)〜(4)におけるR〜Rの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のC〜Cの低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のC〜Cの低級アルコキシ基、または、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子を挙げることができる。一般式(5)におけるR及びRの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のC〜Cの低級アルキル基またはフェニル基を挙げることができる。
【0019】
次に、上記一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換アリーレン誘導体の製造方法について説明する。一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換アリーレン誘導体は、一般式(7)で示されるハロゲン置換三環性アミンと、一般式(8)で示されるビスボロン酸置換アリーレン誘導体または一般式(9)で示されるビスボロン酸エステル置換アリーレン誘導体とをカップリング反応させることにより合成できる。あるいは、一般式(10)で示されるボロン酸置換三環性アミンまたは一般式(11)で示されるボロン酸エステル置換三環性アミンと、一般式(12)で示されるビスハロゲン置換アリーレン誘導体とをカップリング反応させることにより合成できる。
【0020】
【化4】

【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
【化7】

【0024】
【化8】

【0025】
【化9】

【0026】
〔一般式(7)〜(12)において、R、Ar、Z及びAは前記一般式(1)の場合と同じである。また、Xは臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を示す。〕
【0027】
また、一般式(7)のハロゲン置換三環性アミン誘導体は、臭素やヨウ素等の単体ハロゲンまたはN−ハロゲノコハク酸イミド等を用いて、一般式(13)の三環性アミン誘導体をハロゲン化することにより得られる。
【0028】
【化10】

【0029】
〔一般式(13)において、R、Ar及びZは前記一般式(1)の場合と同じである。〕
【0030】
一般式(13)の三環性アミン誘導体は、特開2000−169446号公報に記載されているように、公知の前駆体であるNが無置換の三環性インドール誘導体を、アリールハライドによりN−アリール化した後、接触水素化反応等でインドール環の二重結合を還元するか、あるいは、1,1−ジフェニルヒドラジンとシクロペンタノンを縮合させるFisherのインドール合成の方法により得られた三環性インドール誘導体の二重結合を、同様に接触水素化反応等で還元することにより製造することができる。
【0031】
また、一般式(8)のビスボロン酸置換アリーレン誘導体は、市販のビスボロン酸誘導体を用いるか、あるいは、一般式(12)のビスハロゲン置換アリーレン誘導体をノルマルブチルリチウムと反応させてビスリチウム塩とした後、トリメトキシホウ素と反応させ、次いで希塩酸で加水分解することにより合成することができる。
【0032】
また、一般式(9)のビスボロン酸エステル置換アリーレン誘導体は、一般式(12)のビスハロゲン置換アリーレン誘導体をノルマルブチルリチウムと反応させてビスリチウム塩とした後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン(DOB)と反応させることにより合成することができる。
【0033】
また、一般式(10)のボロン酸置換三環性アミンまたは一般式(11)で示されるボロン酸エステル置換三環性アミンは、一般式(7)のハロゲン置換三環性アミン誘導体を原料として、それぞれ先の一般式(8)のビスボロン酸誘導体及び一般式(9)のビスボロン酸エステル誘導体の合成方法と同様の方法で合成できる。
【0034】
また、一般式(12)のビスハロゲン置換アリーレン誘導体は、市販の薬品を用いるか、あるいは、対応する一般式(14)のアリーレン誘導体を臭素やヨウ素等の単体ハロゲンまたはN−ハロゲノコハク酸イミド等を用いてハロゲン化することにより得られる。
【0035】
【化11】

【0036】
〔一般式(14)において、Aは前記一般式(1)の場合と同じである。〕
【0037】
上記一般式(7)で示されるハロゲン置換三環性アミンの具体例としては、下記式(7−01)〜(7−22)などが挙げられる。
【0038】
【化12】

【0039】
【化13】

【0040】
【化14】

【0041】
【化15】

【0042】
また、一般式(8)で示されるビスボロン酸置換アリーレン誘導体の具体例としては、下記式(8−01)〜(8−39)などが挙げられる。
【0043】
【化16】

【0044】
【化17】

【0045】
【化18】

【0046】
【化19】

【0047】
【化20】

【0048】
【化21】

【0049】
また、一般式(9)で示されるビスボロン酸エステル置換アリーレン誘導体の具体例としては、下記式(9−01)〜(9−15)などが挙げられる。
【0050】
【化22】

【0051】
【化23】

【0052】
【化24】

【0053】
また、一般式(10)で示されるボロン酸置換三環性アミンの具体例としては、下記式(10−01)〜(10−22)などが挙げられる。
【0054】
【化25】

【0055】
【化26】

【0056】
【化27】

【0057】
【化28】

【0058】
また、一般式(11)で示されるボロン酸エステル置換三環性アミンの具体例としては、下記式(11−01)〜(11−21)などが挙げられる。
【0059】
【化29】

【0060】
【化30】

【0061】
【化31】

【0062】
【化32】

【0063】
また、一般式(12)で示されるビスハロゲン置換アリーレン誘導体の具体例としては、下記式(12−01)〜(12−39)などが挙げられる。
【0064】
【化33】

【0065】
【化34】

【0066】
【化35】

【0067】
【化36】

【0068】
【化37】

【0069】
【化38】

【0070】
また、一般式(13)で示される三環性アミンの具体例としては、下記式(13−01)〜(13−22)などが挙げられる。
【0071】
【化39】

【0072】
【化40】

【0073】
【化41】

【0074】
【化42】

【0075】
上記一般式(7)のハロゲン置換三環性アミンと、一般式(8)のビスボロン酸置換アリーレン誘導体または一般式(9)で示されるビスボロン酸エステル置換アリーレン誘導体とのカップリング反応、あるいは、一般式(10)のボロン酸置換三環性アミンまたは一般式(11)で示されるボロン酸エステル置換三環性アミンと、一般式(12)で示されるビスハロゲン置換アリーレン誘導体とのカップリング反応においては、一般的に、縮合剤として塩基が用いられる。塩基の例としては、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、水素化物;アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、水素化物;低級アルコールのアルカリ金属塩;3級アミン類が用いられるが、好ましくはアルカリ金属の炭酸塩が水溶液の状態で用いられる。
【0076】
また、このカップリング反応においては、反応を円滑に進行せしめるために金属触媒を用いることができる。金属触媒としては、パラジウムやその化合物の酢酸パラジウム等が用いられる。好ましくは、触媒助剤として、三価のアルキルリン化合物、例えば、トリターシャルブチルフォスフィンやトリ−o−トリルフォスフィン等を併用するか、あるいは直接テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウムのような三価のアルキルリンを配位子に有するパラジウム化合物を用いてもよい。
【0077】
また、反応溶剤としては、ある程度の溶解性を有する不活性の有機溶剤であればいずれをも用いることができる。好ましくは、トルエン、キシレン等の原料化合物の溶解度は高いが水と混合しない溶剤を用い、撹拌効率の高い状態でアルカリ金属塩の水溶液と不均一系で反応させる方法、この系にエタノール、プロパノール等の水とも混合する溶剤を併用する方法、原料化合物の溶解度も比較的高く、かつ、水とも混合する1,2−ジメトキシエタンや2−メトキシエタノール等の溶剤を用いる方法等が挙げられる。
【0078】
反応温度は、原料化合物の反応溶剤に対する溶解度、使用する反応溶剤の沸点、反応のし易さ等によっても異なるので、一概には言えないが、通常20〜150℃、好ましくは70〜120℃の範囲で行われる。
【0079】
次に、本発明の一般式(1)の化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
【化43】

【0081】
【化44】

【0082】
【化45】

【0083】
【化46】

【0084】
【化47】

【0085】
【化48】

【0086】
【化49】

【0087】
【化50】

【0088】
【化51】

【0089】
【化52】

【0090】
【化53】

【0091】
【化54】

【0092】
【化55】

【0093】
【化56】

【0094】
【化57】

【0095】
【化58】

【実施例】
【0096】
本発明のビス三環性アミン置換アリーレン誘導体について、代表的な合成の実施例を以下に示す。
【0097】
(実施例1)
(1)4−フェニル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(13−02)〕23.54g(100ミリモル)のクロロホルム500ml溶液に、室温で撹拌しながら臭素17.59g(110.1ミリモル)を2時間かけて滴下する。滴下後、さらに室温で8.5時間撹拌した後、減圧で溶剤を留去し、得られた粗生成物44g(溶剤含む)をクロマト精製して7−ブロモ−4−フェニル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(7−02)〕27.04g(収率86.1%)を得た。
【0098】
(2)上記(1)で得られた例示化合物(7−02)3.14g(9.99ミリモル)、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕0.83g(5.01ミリモル)、酢酸パラジウム90mg(0.40ミリモル)、トリ−o−トリルフォスフィン0.84g(2.76ミリモル)、炭酸カリウム2モル水溶液15.2ml及び1,2−ジメトキシエタン24mlの混合物を窒素気流下撹拌しながら、90℃で6.5時間、加熱して反応を完結させる。反応液をデカントして生成結晶を単離し、クロロホルム40mlに溶かし、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過して無水硫酸マグネシウムを除去し、濾液に10mlヘキサンを加え一晩放置する。析出した結晶を濾取し、乾燥して、目的とするビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−01)〕0.26g(収率9.56%)を得た。融点は218〜222℃であった。
【0099】
ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−01)〕は、H−NMR(δ,ppm,CDCl)において、7.55〜7.80(m,10H)、7.28〜7.46(m,10H)、4.83(t,2H)、3.90(t,2H)、1.81〜2.16(m,8H)、1.62〜1.70(m,2H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0100】
ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−01)〕について、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0101】
(実施例2)
(1)実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)6.33g(20.15ミリモル)をテトラヒドロフラン60mlに溶かし、窒素気流下、−78℃で冷却、撹拌している中へ、n−ブチルリチウムの15%ヘキサン溶液(約1.6モル/l)13.87ml(22.19ミリモル)を加える。そのまま−78℃で2時間撹拌した後、トリメチルボレイト5.26ml(46.32ミリモル)を加え、−78℃で1時間撹拌した後、冷却器を止めて、一晩撹拌しながら自然に室温まで戻す。反応物を撹拌しながら、1モル塩酸60mlを加え、2時間撹拌した後、有機層を分離する。水層を酢酸エチル150mlで抽出した後に有機層と合わせ、飽和食塩水で洗浄する。無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧で溶剤を留去し、4.67gの粗結晶を得る。これをヘキサン/クロロホルムで再結晶した後、カラムクロマトで精製して4−フェニル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール−7−ボロン酸〔例示化合物(10−02)〕1.93g(収率34.3%)を得た。
【0102】
(2)上記(1)で得られた4−フェニル−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール−7−ボロン酸1.93g(6.91ミリモル)、4,4′−ジブロモビフェニル〔例示化合物(12−08)・市販品〕1.07g(3.43ミリモル)、酢酸パラジウム51mg(0.227ミリモル)、トリ−o−トリルフォスフィン0.49g(1.61ミリモル)、炭酸カリウム2モル水溶液8.7ml及び1,2−ジメトキシエタン14mlの混合物を窒素気流下、90℃で8時間、加熱撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、析出結晶を濾取して粗結晶1.10gを得る。これをヘキサン/クロロホルムで再結晶して目的とするビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−15)〕0.27g(収率12.7%)を得た。融点は187〜190℃であった。
【0103】
ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−15)〕は、H−NMR(δ,ppm,CDCl)において、7.54〜7.78(m,12H)、7.28〜7.52(m,8H)、7.06〜7.22(m,4H)、4.83(m,2H)、3.91(m,2H)、1.83〜2.16(m,8H)、1.65〜1.74(m,2H)、1.50〜1.63(m,2H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0104】
ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−15)〕について、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0105】
(実施例3)
(1)2,7−ジブロモフルオレン〔例示化合物(12−28)・市販品〕10.0g(30.86ミリモル)、ブロモエタン33.6g(308.34ミリモル)、テトラブチルアンモニウム クロリド0.46g(1.66ミリモル)、50%水酸化ナトリウム水溶液90ml(1721ミリモル)及びトルエン90mlを混合し、窒素気流下50℃で10時間加熱、撹拌する。放冷後、有機層を分離し、飽和食塩水で2回洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶剤を留去して粗結晶11.29gを得る。これをヘキサン/クロロホルム(3/1)で再結晶し、得られた結晶をさらにエタノールで再結晶して、2,7−ジブロモ−9,9−ジエチルフルオレン〔例示化合物(12−31)〕の精製結晶6.74g(収率57.5%)を得た。融点は158.9〜159.2℃であった。
【0106】
(2)上記(1)で得られた例示化合物(12−31)6.08g(15.99ミリモル)をテトラヒドロフラン160mlに溶かし、窒素気流下、−78℃で冷却、撹拌している中へ、n−ブチルリチウムの15%ヘキサン溶液(約1.6モル/l)25.0ml(40.0ミリモル)を加える。そのまま−78℃で2時間撹拌した後、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン7.74g(41.60ミリモル)を加え、−78℃で2時間撹拌した後、冷却器を止めて、窒素気流下、撹拌しながら自然に室温まで戻す。反応液を水350mlに注入し、酢酸エチル400mlで抽出、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧で溶剤を留去し6.92gの粗結晶を得る。これをトルエンを溶剤に用い、カラムクロマトで精製して9,9−ジエチルフルオレン−2,7−ビスボロン酸エステル〔例示化合物(9−12)〕4.72g(収率62.2%)を得た。融点は257〜260℃であった。
【0107】
(3)上記(2)で得られた例示化合物(9−12)1.491g(3.14ミリモル)、実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)1.98g(6.30ミリモル)、テトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム72.8mg(0.063ミリモル)、炭酸カリウム2モル水溶液18ml、及びトルエン30mlの混合物を窒素気流下、90℃で22時間、加熱撹拌して反応を完結させる。室温に戻した後、反応液を水150mlに注入し、次いでトルエン250mlで抽出、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧で溶剤を留去し2.42gの粗結晶を得る。これをトルエンを溶剤に用い、カラムクロマトで精製して精製結晶2.10gを得る。この精製結晶をさらにヘキサン/トルエンで再結晶して、目的とするビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−38)〕0.55g(収率25.4%)を得た。融点は195〜205℃であった。
【0108】
ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−38)〕は、H−NMR(δ,ppm,CDCl)において、7.60〜7.80(m,6H)、7.52〜7.58(m,6H)、7.30〜7.50(m,10H)、4.86(m,2H)、3.95(m,2H)、2.10〜2.20(m,4H)、1.52〜2.08(m,12H)、0.43(t,6H)のピークを示していることから、その構造が確認された。
【0109】
ビス三環性アミン置換アリーレン誘導体〔例示化合物(1−38)〕について、熱分析による分解点の測定を行ったところ、熱分解温度は350℃以上という結果が得られた。
【0110】
(実施例4)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、実施例2の(1)と同様の方法で例示化合物(12−02)より得られた例示化合物(8−02)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−02)を収率11.5%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0111】
(実施例5)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、実施例2の(1)と同様の方法で例示化合物(12−03)より得られた例示化合物(8−03)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−07)を収率6.52%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0112】
(実施例6)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、実施例2の(1)と同様の方法で例示化合物(12−04)より得られた例示化合物(8−04)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−06)を収率10.1%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0113】
(実施例7)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、実施例2の(1)と同様の方法で例示化合物(12−09)より得られた例示化合物(8−09)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−16)を収率20.2%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0114】
(実施例8)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、実施例2の(1)と同様の方法で例示化合物(12−10)より得られた例示化合物(8−10)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−17)を収率8.59%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0115】
(実施例9)
(1)4−(p−ビフェニル)−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(13−06)〕6.23g(20.0ミリモル)のクロロホルム160ml溶液に、室温で撹拌しながら臭素3.15g(21.94ミリモル)を1時間かけて滴下する。滴下後、さらに室温で5時間撹拌した後、減圧で溶剤を留去し、得られた粗生成物8.66gをクロマト精製して7−ブロモ−4−(p−ビフェニル)−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(7−06)〕7.65g(収率98.0%)を得た。
【0116】
(2)実施例9の(1)で得られた例示化合物(7−06)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−04)を収率13.2%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0117】
(実施例10)
実施例9の(1)と同様の方法で例示化合物(13−04)を臭素化して得られた例示化合物(7−04)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕を、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−03)を収率10.4%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0118】
(実施例11)
(1)4−[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル)]−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(13−01)〕4.13g(9.99ミリモル)のクロロホルム80ml溶液に、室温で撹拌しながら臭素1.92g(12.04ミリモル)を40分かけて滴下する。滴下後、さらに室温で2.5時間撹拌した後、減圧で溶剤を留去し、得られた粗生成物6.17g(溶剤含む)をクロマト精製して7−ブロモ−4−[4−(2,2−ジフェニルエテニル)フェニル)]−1,2,3,3a,4,8b−ヘキサヒドロシクロペント[b]インドール〔例示化合物(7−01)〕4.44g(収率90.2%)を得た。
【0119】
(2)実施例11の(1)で得られた例示化合物(7−01)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−05)を収率14.1%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0120】
(実施例12)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−21)を臭素化し、例示化合物(7−21)を収率89.7%で得た。
【0121】
(2)実施例12の(1)で得られた例示化合物(7−21)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−09)を収率19.8%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0122】
(実施例13)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−05)を臭素化し、例示化合物(7−05)を収率87.1%で得た。
【0123】
(2)実施例13の(1)で得られた例示化合物(7−05)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−08)を収率22.6%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0124】
(実施例14)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−05)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−11)を収率12.8%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0125】
(実施例15)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−06)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−12)を収率14.0%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0126】
(実施例16)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−07)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−13)を収率8.15%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0127】
(実施例17)
(1)実施例2の(1)と同様の方法で例示化合物(7−03)をボロン酸に変換し、例示化合物(10−03)を収率35.1%で得た。
【0128】
(2)実施例17の(1)で得られた例示化合物(10−03)と、1,4−ジブロモベンゼン〔例示化合物(12−01)・市販品〕とを、実施例2の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−10)を収率22.2%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0129】
(実施例18)
(1)実施例2の(1)と同様の方法で、実施例11の(1)で得られた例示化合物(7−01)をボロン酸に変換し、例示化合物(10−01)を収率41.9%で得た。
【0130】
(2)実施例18の(1)で得られた例示化合物(10−01)と、1,2−ジブロモベンゼン〔例示化合物(12−07)・市販品〕とを、実施例2の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−14)を収率20.8%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0131】
(実施例19)
実施例9の(1)で得られた例示化合物(7−06)と、例示化合物(8−08)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−18)を収率19.9%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0132】
(実施例20)
実施例18の(1)で得られた例示化合物(10−01)と、4,4′−ジブロモビフェニル〔例示化合物(12−08)・市販品〕とを、実施例2の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−19)を収率13.8%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0133】
(実施例21)
実施例9の(1)で得られた例示化合物(7−06)と、例示化合物(8−11)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−20)を収率9.82%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0134】
(実施例22)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−12)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−21)を収率5.31%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0135】
(実施例23)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−13)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−22)を収率10.5%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0136】
(実施例24)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−15)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−24)を収率18.8%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0137】
(実施例25)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−17)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−26)を収率25.5%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0138】
(実施例26)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−19)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−28)を収率11.1%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0139】
(実施例27)
実施例11の(1)で得られた例示化合物(7−01)と、例示化合物(8−21)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−30)を収率14.2%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0140】
(実施例28)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−23)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−32)を収率12.7%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0141】
(実施例29)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−26)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−34)を収率23.4%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0142】
(実施例30)
(1)実施例2の(1)と同様の方法で、2,7−ジブロモフルオレノン〔例示化合物(12−28)・市販品〕をビスボロン酸に変換し、例示化合物(8−28)を収率21.9%で得た。
【0143】
(2)実施例30の(1)で得られた例示化合物(8−28)と、実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−36)を収率12.7%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0144】
(実施例31)
(1)実施例3の(1)と同様の方法で、ブロモエタンの代わりに沃化メチルを用いて、2,7−ジブロモフルオレノン〔例示化合物(12−28)・市販品〕をビスメチル化して、2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレノン〔例示化合物(12−29)〕を、収率41.8%で得た。
【0145】
(2)実施例31の(1)で得られた例示化合物(12−29)を、実施例2の(1)と同様の方法でビスボロン酸に変換し、例示化合物(8−29)を収率21.9%で得た。
【0146】
(3)実施例31の(2)で得られた例示化合物(8−29)と、実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−37)を収率14.3%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0147】
(実施例32)
実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)と、例示化合物(8−32)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−40)を収率8.34%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0148】
(実施例33)
(1)実施例3の(2)と同様の方法で、2,7−ジブロモナフタレン〔例示化合物(12−33)・市販品〕をビスボロン酸エステルに変換して、例示化合物(9−13)を収率58.8%で得た。
【0149】
(2)実施例33の(1)で得られた例示化合物(9−13)と、実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)とを、実施例3の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−41)を収率19.6%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0150】
(実施例34)
(1)実施例3の(2)と同様の方法で、1,4−ジブロモナフタレン〔例示化合物(12−37)・市販品〕をビスボロン酸エステルに変換して、例示化合物(9−14)を、収率60.6%で得た。
【0151】
(2)実施例34の(1)で得られた例示化合物(9−14)と、実施例1の(1)で得られた例示化合物(7−02)とを、実施例3の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−44)を収率29.1%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0152】
(実施例35)
1,4−ジブロモベンゼン〔例示化合物(12−01)・市販品〕と、例示化合物(11−07)とを、実施例3の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−46)を収率4.96%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0153】
(実施例36)
1,4−ジブロモベンゼン〔例示化合物(12−01)・市販品〕と、例示化合物(11−08)とを、実施例3の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−47)を収率10.5%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0154】
(実施例37)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−12)を臭素化し、例示化合物(7−12)を収率79.1%で得た。
【0155】
(2)実施例37の(1)で得られた例示化合物(7−12)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−49)を収率12.0%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0156】
(実施例38)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−20)を臭素化し、例示化合物(7−20)を収率95.7%で得た。
【0157】
(2)実施例38の(1)で得られた例示化合物(7−20)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−50)を収率18.4%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0158】
(実施例39)
(1)実施例3の(2)と同様の方法で、例示化合物(7−19)をビスボロン酸エステルに変換して、例示化合物(11−19)を、収率33.6%で得た。
【0159】
(2)実施例39の(1)で得られた例示化合物(11−19)と1,4−ジブロモベンゼン〔例示化合物(12−01)・市販品〕とを、実施例3の(3)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−52)を収率11.3%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0160】
(実施例40)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−22)を臭素化し、例示化合物(7−22)を収率50.9%で得た。
【0161】
(2)実施例40の(1)で得られた例示化合物(7−22)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−53)を収率11.5%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0162】
(実施例41)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−18)を臭素化し、例示化合物(7−18)を収率84.9%で得た。
【0163】
(2)実施例41の(1)で得られた例示化合物(7−18)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−55)を収率6.53%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0164】
(実施例42)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−17)を臭素化し、例示化合物(7−17)を収率83.5%で得た。
【0165】
(2)実施例42の(1)で得られた例示化合物(7−17)と、例示化合物(8−07)とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−57)を収率10.0%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0166】
(実施例43)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−13)を臭素化し、例示化合物(7−13)を収率23.1%で得た。
【0167】
(2)実施例43の(1)で得られた例示化合物(7−13)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−65)を収率11.7%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0168】
(実施例44)
(1)実施例11の(1)と同様の方法で例示化合物(13−15)を臭素化し、例示化合物(7−15)を収率93.5%で得た。
【0169】
(2)実施例44の(1)で得られた例示化合物(7−15)と、ベンゼン−1,4−ジボロン酸〔例示化合物(8−01)・市販品〕とを、実施例1の(2)と同様の方法で反応させて、例示化合物(1−66)を収率13.4%で得た。構造の確認はH−NMRで行った。
【0170】
実施例1〜44以外の目的とするビス三環性アミン置換アリーレン誘導体の例示化合物についても、上記の方法に準じて合成を行った。
【0171】
例示化合物の内で代表的なもの及び比較化合物のα−NPDについて、精製テトラヒドロフランを溶媒として用い、電気化学的測定法の一種である、サイクリックボルタンメトリー(CV)の測定を行って、それらの酸化半波電位を求めた。支持電解質には過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)を用い、濃度は0.1モル/lで使用した。作用電極は白金円板電極を用い、対極には白金ワイヤーを使用し、参照電極には飽和カロメル電極(SCE)を用いて測定を行った。測定条件は、サンプル濃度:約0.1〜1.0ミリモル/l、X−Yレコーダーの掃引速度(印加電圧)は200mV/secで記録を行った。結果は以下の表1の通りであった。
【0172】
【表1】

【0173】
以上のCV測定の結果から、本発明の新規なビス三環性アミン置換アリーレン誘導体は、比較物質のα−NPDよりも250mV前後低い酸化半波電位を有していることがわかる。従来の知見からは、電気化学測定法による酸化半波電位は、エネルギー準位的には、最高被占軌道(Highest Occupied Molecular Orbital:HOMO)に対応するイオン化ポテンシャルとの相関が見られることが知られており、この観点から、これらの化合物は正孔輸送層に用いる正孔輸送材料としての利用の他に、陽極と正孔輸送層の間において、ホールの移動をより容易にする正孔注入層としても有用であることが示唆される。
【0174】
(応用例1)
以上の実施例1〜44で得られた例示化合物(1−01)、(1−15)、(1−38)、(1−02)、(1−07)、(1−06)、(1−16)、(1−17)、(1−04)、(1−03)、(1−05)、(1−09)、(1−08)、(1−11)、(1−12)、(1−13)、(1−10)、(1−14)、(1−18)、(1−19)、(1−20)、(1−21)、(1−22)、(1−24)、(1−26)、(1−28)、(1−30)、(1−32)、(1−34)、(1−36)、(1−37)、(1−40)、(1−41)、(1−44)、(1−46)、(1−47)、(1−49)、(1−50)、(1−52)、(1−53)、(1−55)、(1−57)、(1−65)、(1−66)を用いて、有機EL素子を作製し、その正孔輸送材料としての機能を確認した。有機EL素子は、ガラス基板上にITO電極を予め形成してある透明電極の上に、正孔輸送材料として本発明化合物の薄膜を形成し、その上に発光層及び電子輸送層としてアルミキノリン3量体の薄膜を形成、その上にMg/Al電極薄膜をさらに形成することにより作製した。
【0175】
以上のようにして作製した有機EL素子について、定電流装置を用いて100mA/cmの電流を印加したところ、十分な発光輝度で連続して発光することが確認された。いずれの例示化合物を用いた場合も、初期感度が半減するまでの発光寿命は100時間以上であった。
【0176】
(比較応用例1)
これに対し、比較化合物としてα−NPDを用いて、同様の有機EL素子を作製し、同様の定電流装置を用いて100mA/cmの電流を印加したところ、最初は十分な発光輝度で発光したが、発光寿命が例示化合物と比較して短く、約50時間であった。
【0177】
(応用例2)
次に、正孔輸送層の代わりに正孔注入層として、応用例1で用いた本発明の例示化合物を用い、応用例1で作製した正孔輸送層の代わりに、応用例1で作製した正孔輸送層の約半分の膜厚の正孔注入層を形成させ、その上に、比較物質のα−NPDを用いて、応用例1で作製した正孔輸送層の約半分の膜厚の正孔輸送層を形成させて、通常の構成の正孔輸送層の代わりに、ほぼ同じ膜厚で、正孔注入層/正孔輸送層の2層構成とした素子を作製した。比較応用例1の正孔輸送材料としてα−NPDを用いた通常の構成の素子と比較した結果、2層構成とした素子では、同一の電流密度を与えるのに必要な駆動電圧が、10〜20%低減することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明の活用例として、特に駆動電圧が低く、また発光寿命に優れた有機EL用素子を実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるビス三環性アミン置換アリーレン誘導体。
【化1】

〔一般式(1)において、Rは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基、C〜Cの低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。Arはそれぞれが置換基を有してもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基またはヘテロ環基を示す。Zは、チッ素を含む5員環の2つの炭素と共に、5〜8員環の飽和の炭化水素環あるいは5員環の飽和の複素環を形成するのに必要な原子を示す。Aは一般式(2)〜(6)で示される2価の連結基を示す。〕
【化2】

〔一般式(2)〜(4)において、R〜Rは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基、C〜Cの低級アルコキシ基またはハロゲン原子を示す。一般式(5)において、R及びRは、水素原子、C〜Cの低級アルキル基またはフェニル基を示す。〕

【公開番号】特開2010−229053(P2010−229053A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76665(P2009−76665)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】