説明

ビス(メタ)アクリルアミド糖を基材としたポリマー担体材料の製造方法

本発明は、固相合成のための、特にペプチド合成のためのポリマー担体材料の製造方法に関する。糖質を基材とした(メタ)アクリルアミド誘導体(他の保護基を含むことができる)は、任意的に孔形成添加物を添加しながら、水相中における懸濁重合によって重合され、次いで保護基が完全にまたは部分的に切断される。従って、水性溶媒および有機性溶媒におけるその形態(粒子サイズ、多孔率)、架橋度および湿潤能が目的の方法に調整可能であり、かつその反応基がアンカー基および保護基の固定化に対して複数の機会を与えるポリマー担体を得ることができる。当該ポリマー担体のヒドロキシル基は、固相合成の一般的な方法によって活性化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリルアミド−置換糖を基材とした新規ポリマー担体の製造方法に関し、同様に、アフィニティークロマトグラフィーまたは固相合成におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
固相合成がR.B.Merryfield(R.B. Merrifield, J. Chem. Soc. 85, 2149 (1963))によって紹介されて以来、次々に、ペプチド類、オリゴヌクレオチド類およびオリゴ糖類の自動固相合成が広範囲に適用されるようになっている。同時に多数のペプチドを合成するための合成ロボットの導入によって、この進歩における次の段階が構築された。さらにポリマー担体は、アフィニティークロマトグラフィー(P. Cua-tre-casas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 61, 636 (1968))および酵素または細胞の固定化の分野で極めて重要であると考えられてきた。
【0003】
近年、コンビナトリアルケミストリーの概念を導入することで、ポリマー担体材料の応用分野が他の領域に広がっている。今日、固相上で物質のライブラリーをコンビナトリアル合成することは、医薬工業において新規の活性剤を開発し、最適化するために主要な技術となっている。この合成原理も、多くの分野の有機物質の製造に広がっている(Combinatorial Chemistry, G. Jung (ed.), Wiley VCH, Weinheim (1999))。実際、有機化学の全ての標準的な反応は、適切な担体材料、アンカー基および保護基と共に、固相上で行われうる。結果的に、コンビナトリアル合成は、材料研究および触媒開発といった他の研究領域においても急速に適用されるようになっている。
【0004】
固相合成の主要な有利点は、反応および簡易な生成物ワークアップの実施にあるので、オートメーション化できる合成のための基本条件が要求される。
【0005】
固相合成化学のこの著しい広がりは、新規の多目的担体材料の必要性も著しく増大させている。
【0006】
ポリマー担体の構造、形態、粒子サイズ、加水分解抵抗性および熱抵抗性は、すべての固相合成において特に重要である。なぜならば、これらがポリマー担体の反応基への接近可能性だけでなくポリマー担体の有機性もしくは水性反応溶媒との親和性を決定づけるためである。結果的に、正しい担体材料を選択することが、固相合成の成功のために決定的に重要である。さらに、アフィニティークロマトグラフィーまたは生理活性成分の固相化の領域においては、水性反応溶媒との生体適合性および湿潤性が重要である。
【0007】
多くの場合、スチレン/ジビニルベンゼンを基材とした担体が用いられているが、これは水性溶媒中で用いた場合の膨潤特性が悪いためむしろ不都合である(W. Tegge. R. Frank, J. Peptide Res. 49, 355 (1997))。従って、セルロース(D.R. Englebretsen, Int. J. Peptide Protein Res. 40, 487 (1992))やアガロース(G.P. Vlasov et al., Zh. Obsh. Khim. (Engl. Trans.) 56, 1450 (1987), C.R. Nakaie, WO 01/46216 A2, 28. June 2001)を基材としたビーズ形担体だけでなく、ポリエチレングリコール(PEG)修飾されたポリスチレン/ジビニルベンゼン(E. Bayer, Angew. Chem. 103, 117 (1991), G. Barany et al., US 5,235,028, WO 92/04384 (1992))、ポリ(エチレングリコール−ビスメタクリル酸)(G. Barany US 5 656 707, M.P. Meldal US 5,352,756)といった極性担体が開発されている。さらに、メタクリル酸スクロース(H. Gruber, Monatsh. Chem. 112, 273-85 (1981))およびモノメタクリル酸グルコース(T. Rohr et al., Acta Polym. 50, 286-292 (1999))の混合物を基材とした極性担体が記載されている。
【0008】
これらの担体材料は、様々な不都合な点を有している。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖の長さは、ポリスチレン修飾、追加の架橋部位の形成の間に制御することが困難であり、PEG−PS樹脂上の反応は、PEGの分子量の増大と共に非常にゆっくりと進行する。
【0009】
アガロースまたはセルロースといった天然の糖類を基材とする担体では、形態(孔径、内部表面積、粒子サイズ)が予め定められており非常に限られた範囲しか制御できず、かつその機械的な安定性は継続的なカラム操作に対して普通十分ではない。メタクリル酸スクロース担体は沈降重合によって得られ、少しだけ架橋するので、もっぱら種々の型のゲルを生じるのみである。低置換のモノマー混合物は水溶性であるため逆懸濁重合が可能であるが、形態を制御するために用いられる多くの水親和性の孔形成剤はモノマー混合物の溶解性に強く影響し、また架橋度を制御することを不可能にするため、この方法では反応を制御する可能性は極めて制限されている。
【0010】
これらの担体のさらに深刻な不都合な点は、エステル結合を介するそれらの構造にある。このことによって、それ自体が加水分解の影響を受けやすくなり、酸性もしくは塩基性溶媒中で用いられた場合に当該担体が破壊されやすくなり得、これにより特に固相合成の領域でそれらの適用性が著しく制限される。
【0011】
本発明は、ポリマー担体、形態(粒子サイズ、多孔率)、架橋度、ならびにポリマー担体製造の間に特に適切であり得る水性溶媒および有機性溶媒中における膨潤率、アンカー基および保護基の固定化に多様な可能性を与える反応基(これらは、熱的に安定でかつ加水分解に安定である)を提供することを目的とする。
【0012】
この目的は、(メタ)アクリルアミド−置換糖誘導体で達成され得ることが分かった。
【0013】
本発明の目的は、単糖類のポリアクリル酸アミドまたはポリメタクリル酸アミドを基材としたポリマー担体の製造方法であって、一般式I
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、
Rは、水素またはCH基を表し、
そして少なくとも一つのXは、基−CO−CH、−CH−C、−Si(CHを表し、あるいは少なくとも二つの基Xは、一緒に基
【0016】
【化2】

【0017】
を表し(式中、RおよびRは、独立して水素、1〜10個のC原子を有するアルキル基または芳香族基を表し、Rは、4〜10個のC原子を有するシクロアルキル基またはフェニル基を表す)、かつ残ったXは水素を表し、
Yは、基−NH−、−CH−NH−または−CO−NR−Z−NR−を表し、
Zは、n=2〜20の基−(CH−、x=1〜10の基−(CH−CH−O)−CH−CH−、4〜10個のC原子を有するシクロアルキリデン基、または6〜30個のC原子を有する芳香族基を表し、そしてRおよびRは、独立して水素、1〜10個のC原子を有するアルキル基または芳香族基を表す)
の、保護されたHO基を有する糖のアクリルアミドまたはメタクリルアミド誘導体が、孔形成添加物の任意的な存在下で重合され、次いで架橋された担体から保護基が部分的もしくは完全に切断されて得られることを特徴とする、方法である。
【0018】
式Iのビス(メタ)アクリルアミド類の製造のための出発材料は、例えば、1,6−ジアミノ−1,6−ジデオキシ−2,4:3,5−ジ−O−メチレングルシトール、マンニトールまたはガラクチトールのような糖を基材とした公知のジアミンである(US 3,463,790 (1969), Haworth et al., J. Chem. Soc. 155 (1944))。
【0019】
本発明の好ましいものは、1,6−ジアミノ−1,6−ジデオキシ−2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデンガラクチトールまたは1,6−ジアミノ−1,6−ジデオキシ−2,3:4,5−ジ−O−ベンジリデン ガラクチトールのような、穏和な条件下で脱離され得る保護基を有する保護された糖ジアミンである。これらのジアミンは米国特許3,463,790号(1969)に記載の、対応する1,6−ジクロロ−誘導体から製造され得るが、比較的低い全収率にとどまる。新規の合成方法を用いることで、これらのジアミンはまた、新規のガラクタル酸ジメチルエステルからも全収率64%で得られうる。
【0020】
本発明の好ましいものは、グリカル酸ジアルキルエステルを過剰のジアミンと反応させることによって製造される新規の糖ジアミンである。例えば、ガラクタル酸ジメチルエステルは最初に2,2−ジメトキシプロパンで保護され得、従って得られた2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸ジメチルエステルはすぐに2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸ビス(2−アミノエチル)アミドに変換される。本合成において使用するジアミンを変えることによって、多数の新規の糖ジアミンを容易かつ高収率で入手することができる。好ましいものは、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ビス(アミノエトキシ)エタンのような2〜20個のC原子を有する脂肪族ジアミンまたはピペラジンである。適切にジアミンを選択することによっても、結果として得られる糖ジアミンの性質やポリマー担体の性質を制御できる。例えば1,12−ドデカンジアミンを糖ジアミンの合成に用いたとすると、担体中においてメタクリロイル化および重合をすることで、低い立体障害によって、HO基のさらなる反応がより容易に可能となる。一方、芳香族基はポリマー担体の熱的安定性を高める。
【0021】
ガラクタル酸の代わりに、他の公知の糖を基材としたエステル類、例えばグルカル酸エステル類も用いることができる。本発明によれば、グルカル酸アルキルエステルもまた、糖化学でよく知られた他の保護基、例えば酢酸塩、トリメチルシリル、ベンジリデンまたはシクロヘキシリデン基と共に提供することができる。しかしながら、ジアミンとの反応もまた、無保護のグルカル酸アルキルエステルと行うことができる。
【0022】
次に、メタクリルアミド類を形成するために、保護された糖ジアミンを(メタ)アクリル酸誘導体と反応させる。この目的のために、(メタ)アクリル酸、そのエステル類、(メタ)アクリル酸クロライドまたはメタクリル酸無水物を使用することができる。ビス(メタ)アクリルアミド類の製造のために、糖ジアミンを、(メタ)アクリル酸誘導体と共に、少なくとも1:2のモル率で用いることができる;低モル率にすることで、モノ−およびビス(メタ)アクリルアミド類の混合物が生じ、これを本発明の重合においても使用することができる。
【0023】
これらのモノマーまたはモノマー混合物から、例えば水性溶媒中における懸濁重合によって、架橋したポリマー担体を製造することができる。さらに、適切な孔形成剤(多孔化剤)を加えることによって、特に形態を制御することができる。このように、架橋度および/または孔形成剤を変えることによって、ゲル型、ミクロもしくはマクロ多孔性担体を製造することができる。
【0024】
モノマー混合物は、水不混和性溶媒中で溶解し、トルエンまたはn−オクタノールのような孔形成剤が加えられ得(モノマー混合物に対して、孔形成剤は同時に溶媒として機能する)、そしてラジカル開始剤および懸濁安定剤の添加の後、水性懸濁液中で攪拌しながら重合する。重合温度は用いる開始剤の半減期によって決定する。得られるポリマー粒子(そのサイズは攪拌速度によって調節できる)は、ろ過で分離し、適切な溶媒で数回洗浄し、そして乾燥する。このようにして得られたポリマーは、未だ含まれる保護基のために疎水性であり、水中で膨潤できない。保護基を切断するために、ポリマー粒子を適切な試薬、例えばイソプロピリデンで保護されたモノマーの場合はトリフルオロ酢酸または酢酸で、アセチル化モノマーの場合は選択的にアセチル基を切断するための穏和なアルカリ処理(例えば、メタノール中の0.02N メチル酸ナトリウム溶液)によって処理する。これによりヒドロキシル基を有するポリマー担体が生じ、ヒドロキシル基は水性溶媒との親和性を保障し、さらに固相合成におけるアンカー基としての役割を果たしうる。
【0025】
本発明のモノマーの重合は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドンおよび他の公知のモノマーといった他のモノマーの存在下においても行われうる。
【0026】
好ましいものは、N−メチル−N−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)アクリルアミド、N−メチル−N−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)メタクリルアミド、アクリル酸 2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸 2−ヒドロキシエチル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジアクリル酸エチレングリコール、モノアクリル酸ジエチレングリコール、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸 N,N−ジメチルアミノエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロイルアクリルアミド、イタコン酸、トリアクリル酸ペンタエリスリトールおよびテトラアクリル酸である。
【0027】
従って、本発明の目的は、他のモノマー単位から離れて、式II
【0028】
【化3】

【0029】
(式中、R、XおよびYは式Iに示した意味を有する)の構造要素を含むポリマー担体をも包含する。
【0030】
固相合成で用いるために、本発明の担体は、公知の方法によりHO基を介して活性化されうる。例えばペプチド類の固相合成において、担体のHO基にアミノ酸を直接縮合させることで高い結合容量を達成することができる。もし固相合成においてトリフルオロ酢酸のような強酸が用いられたとすれば、幾つかの場合において、望外にもポリマー担体からペプチドが分離しうる。この場合、第一のアミノ酸が結合する前にアミノ基を担体中に導入し、残存するHO基を保護することが有効である。1,1−カルボニルジイミダゾール、シアン化フッ素またはエピクロロヒドリンで活性化し、続けて1,6−ジアミノヘキサンでカップリングすることによって、例えば550または750μmol/g以上の結合容量を達成することができる。同様の方法、光延反応を介した活性化とそれに続くグリシンおよびε−アミノカプロン酸とのカップリングによって、550μmol/g以上のアミノ基含有量を達成する。
【0031】
本発明のポリマー担体と共に、例えば、fmocダブルカップリング手順に従って、ジメチルホルムアミド中、N−a−fmoc保護されたアミノ酸を用いて、ペプチド類の合成も行われ得、これには、縮合剤としてベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート(BOP)およびN−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)が用いられ得、塩基としてジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)が用いられ得る。
【実施例】
【0032】
実施例1
a)ガラクタル酸 ジメチルエステルの製造
3800mlのメタノール中、65gのガラクタル酸(0.31mol)の懸濁液に、激しく攪拌しながら50mlの濃硫酸を滴下する。反応混合物を30分間煮沸して加熱し、次いでさらに14時間還流しながら攪拌する。得られた透明な黄色溶液を約2000mlに減らし、ついで5Cに冷却して、無色固体としてジエチルエステル結晶を得る。メタノールを吸引した後、ジエチルエーテルで洗浄し、50Cで5時間乾燥し、71.60g(理論収率93%)の純粋なガラクタル酸ジメチルエステルが得られる。
【0033】
MW:238.20;Mp.197−199 C;R 0.82(MeOH/CHCl):1);δ(200MHz;DMSO−d):5.02−4.69(bs,4H,OH),4.29(s,2H,CH−CH−CO),3.77(s,2H,CH−CH−CO),3.63(s,6H,CH);δ(200MHz;DMSO−d):174.38(2C,CO),71.48(2C,CH−CH−CO),70.55(2C,CH−CH−CO),51.77(2C,CH).
【0034】
b)2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ジメチルエステルの調製
新たに蒸留した450mlの2,2−ジメトキシプロパン中に、70g(0.29mol)のガラクタル酸ジメチルエステルを2.76g(14mmol)の無水p−トルエンスルホン酸と一緒に加え、穏やかに攪拌しながら12時間還流する。この間、最初無色の反応混合物が次第にエンジ色に変わる。次いで反応溶液に2gの無水炭酸ナトリウムを加える。形成されたメタノールを蒸留にて除去し、次いで2,2−ジメトキシプロパンを蒸留にて回収する。残渣を250mlのジエチルエーテルに取り込み、それぞれ150mlの飽和NaCl溶液で2回、水で1回洗浄する。水溶液を100mlのジエチルエーテルで洗浄し、有機抽出物を併せてNaSOで乾燥し、該エーテルを留去する。500mlのn−ヘキサンから再結晶して50Cで乾燥した後、78.46g(理論収率85%)の純粋な2,3:4,5−ジ−O−イソプロピレンガラクタル酸ジメチルエステルが得られる。
【0035】
MW:318.33;Mp.90.2−90.7 C;R0.82(n−ヘキサン/酢酸エチル);δ(200MHz;CDCl):4.60−4.53(m,2H,CH−CH−CO),4.49−4.40(m,2H,CH−CH−CO),3.76(s,6H,COO−CH),1.45(s,6H,CH),1.39(s,6H,CH);δ(200MHz;CDCl):171.37(2C,CO),112.25(2C,C),78.94(2C,CH−CH−CO),75.72(2C,CH−CH−CO),52.52(2C,COO−CH),26.91,25.87(4C,CH).
【0036】
c)2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ビス(2−アミノエチル)アミドの製造
92.7g(0.29mol)の2,3:4,5−ジ−O−イソプロピレンガラクタル酸 ジメチルエステルをメタノールに溶解し、新たに蒸留した195ml(2.9mol,d=0.895)のエチレンジアミンを攪拌しながら5分かけて滴下する。反応混合液を2時間煮沸して加熱し、次いで室温に冷却し、さらに4時間攪拌する。ロータリーエバポレーターを用いて、得られた生成混合物を無反応のエチレンジアミンおよびメタノールから分離する。粘性があって黄色で油状の残渣を1500mlの冷ジエチルエーテルに激しく攪拌しながら移し、2時間攪拌する。不溶のパウダー状の2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ビス(2−アミノエチル)アミドをろ過し、100mlのエーテルで3回洗浄する。50Cで4時間乾燥し、純粋な生成物を収率92%(100.3g)で得る。
【0037】
MW:374.44;R 0.42(CHCl/MeOH/NEt 1:3:0.2);δ(200MHz;CDCl):7.10−6.91(bs,2H,CONH),4.72(d,2H,J=7.05,CH−CH−CO),4.46(d,2H,J=6.85 CH−CH−CO),3.35−3.22(dt,4H,J=6.07,5.87 CONH−CH),2.84−2.74(t,4H,J=5.87 CH−NH),1.46(s,6H,CH),1.39(s,6H,CH),1.25−1,15(bs,4H,NH);δ(200MHz;CDCl):171.06(2C,CO),110.75(2C,C),78.65(2C,CH−CH−CO),74.97(2C,CH−CH−CO),41.65(2C,CONH−CH),41.35(2C,(2C,CH−NH),26.69,25.94(2C,CH).
【0038】
d)2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 N,N’−ビス−[2−(2−メチル-アクリルアミノ)エチル]アミドの調製
800mlの無水ピリジン中、100gのジアミン3(0.27mol)、242mg(1.1mmol)の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを攪拌しながら65Cで加熱し、次いでメタクリル酸無水物(92g,0.59mol)をゆっくり滴下する。反応混合物を65Cで4時間さらに攪拌し、次いで300mlの水をすばやく加え、さらに10時間攪拌する。反応混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機相を飽和NaHCO溶液で2回、水で2回洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過して濃縮する。500mlのn−ヘキサン中で沈殿させ、ろ過し、n−ヘキサンで洗浄し、4時間減圧乾燥して、113.1g(82%)の純粋なジメタクリル酸アミドを得る。
【0039】
MW:510.59;δ (200MHz;CDCl):7.27−7.07(bs,2H,C(CH)=CH−CONH),6.81−6.61(bs,2H,CH−CONH),5.69,5.29(2s,4H,C(CH)=CH),4.66(d,2H,J=7.04Hz,CH−CH−CO),4.37(d,2H,J=7.05Hz,CH−CH−CO),3.53−3.34(m,8H,CH),1.90(s,6H,C(CH)=CH),1.44,1.38(2s,12H,CH);δ(200MHz;CDCl):172.15(2C,CO−C(CH)=CH),168.98(2C,CO−CH),139.41(2C,(CH)=CH),120.08(2C,C(CH)=CH),111.00(2C,C),78.45(2C,CH−CH−CO),74.82(2C,CH−CH−CO),40.09(2C,CH−CONH−CH),39.01(2C,CH−NHCO−C(CH)=CH),26.63,25.92(4C,CH),18.50(2C,C(CH)=CH).
【0040】
e)1dの懸濁重合
分量: 水層: 水 144g
塩化ナトリウム 14.4g
ヒドロキシエチルセルロース(Tylose) 0.23g
有機層: モノマー(1d参照) 9.00g
多孔化剤(型および量は表1参照)
アゾジイソブチロニトリル(AIBN) 0.1g
【0041】
反応溶液から酸素を置換するために、始めに10分間、両層を窒素で浄化してから両層を合わせる。続く重合は、80C、350rpmの攪拌速度で6時間以上、かつ窒素雰囲気下で実施した。得られたポリマー粒子をろ過で分離し、1Lの水および300mlのメタノールで洗浄し、ソックスレー抽出器で12時間、150mlのメタノールで抽出し、最後に固定ウェイトまで高真空で乾燥する。
ポリマー粒子の収率および特性を表1に示す。
【0042】
f)イソプロピリデン保護基の加水分解
1e)からのポリマー粒子5gを65mlの60%酢酸中で懸濁し、60Cで4時間機械的に攪拌し、次いで300mlの水および300mlのメタノールで洗浄し、ソックスレー抽出器で12時間、150mlのメタノールで抽出し、最後に固定ウェイトまで高真空で乾燥する。
収量:5g
【0043】
【表1】

【0044】
得られた粒子の30%以上が凝集する
得られた粒子の80%以上が凝集する−BET分析を実施しない
分析不能
【0045】
実施例2
a)2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ビス(6−アミノヘキシル)アミド
メタノール100mlに溶解した9.55gの2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ジメチルエステル(1b参照)に、室温で攪拌しながら、メタノール150ml中の34.86g(0.3mol)の1,6−ジアミノヘキサン溶液を加え、還流しながら6時間攪拌する。次いで反応混合物を周囲温度に冷却し、乾燥のために留去する。過剰の1,6−ジアミノヘキサンを62C(10−3mbar)で蒸留して除く。純粋な2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ビス(6−アミノヘキシル)アミドが、理論収率98%(14.3g)で、透明、淡黄色で粘性のある蒸留残渣として得られる。
【0046】
MW:486.66;Mp.107−108 C;R 0.35(CHCl/MeOH/NEt 1:3:0.2);δ(200MHz;CDCl):6.71−6.55(bs,2H,CONH),4.68(d,2H,J=7.04,CH−CH−CO),4.43(d,2H,J=6.84 CH−CH−CO),3.27−3.14(m,4H,CONH−CH),2.61(t,4H,J=6.85 CH−NH),1.44(s,6H,CH),1.36(s,6H,CH),1.51−1.18(m,16H,CH/4H,NH);δ(200MHz;CDCl):170.60(2C,CO),110.61(2C,C),78.60(2C,CH−CH−CO),74.84(2C,CH−CH−CO),41.98(2C,CH−NH),38.74(2C,(2C,CONH−CH),33.50(2C,CH−CH−NH),29.42(2C,CONH−CHCH),26.65,25.88(4C,CH),26.60,26.67(4C,CH).
【0047】
b)2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 ビス−[(6−(2−メチル-アクリルアミノ)ヘキシル]アミドの製造
100mlの無水ヒドラジン中、10gのジアミン3(0.021mol)、22mg(0.1mmol)の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを、攪拌しながら65Cで加熱し、無水メタクリル酸(8.3g,0.053mol)をゆっくり滴下する。反応混合物をさらに4時間65Cで攪拌し、次いで40mlの水を素早く加え、反応混合液をさらに14時間攪拌する。反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出し、合わせた有機層を水で2回洗浄し、NaSOで乾燥し、ろ過して濃縮する。200mlのn−ヘキサン中で沈殿させ、ろ過し、n−ヘキサンで洗浄し、室温で乾燥して、11.3g(86%)の純粋なジメタクリルアミド11を得る。
【0048】
MW:622.79;δ(200MHz;CDCl):7.29−7.08(bs,2H,C(CH)=CH−CONH),6.88−6.67(bs,2H,CH−CONH),5.72,5.32(2s,4H,C(CH)=CH),4.62(d,2H,J=7.09Hz,CH−CH−CO),4,37(d,2H,J=7.09Hz,CH−CH−CO),3.35−3.05(m,8H,NH−CH),1.89(s,6H,C(CH)=CH),1.64−1.51(m,8H,NH−CHCH),1.43,1.38(2s,12H,CH),1.34−1.26(m,8H,CH);δ(200MHz;CDCl):172.12(2C,CO−C(CH)=CH),168.95(2C,CO−CH),140.31(2C,(CH)=CH),121.58(2C,C(CH)=CH),110.83(2C,C),78,52(2C,CH−CH−CO),74.80(2C,CH−CH−CO),40.65(2C,CH−CONH−CH),38.98(2C,CH−NHCO−C(CH)=CH),30.23,26.46(4C,CH),18.50(2C,C(CH)=CH).
【0049】
c)2b)の懸濁重合
モノマー2bを用いる以外は、実施例1e)の手順を繰り返す。多孔化剤の使用により、BET表面積が0.5%から70.6%になると共に、ポリマーが60%から85%の収率で得られるようになる。
【0050】
d)イソプロピリデン保護基の加水分解
2c)からの8gのポリマー粒子を65mlの60%酢酸中に懸濁し、機械的に60Cで4時間攪拌し、次いで300mlの水および300mlのメタノールで洗浄し、ソックスレー抽出器で12時間、150mlのメタノールで抽出し、最後に固定ウェイトまで高真空で乾燥する。
収量:8g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖類のポリアクリル酸アミドまたはポリメタクリル酸アミドを基材としたポリマー担体の製造方法であって、一般式I
【化1】

(式中、
Rは、水素またはCH基を表し、
そして少なくとも一つのXは、基−CO−CH、−CH−C、−Si(CHを表し、あるいは少なくとも二つの基Xは、一緒に基
【化2】

を表し(式中、RおよびRは、独立して水素、1〜10個のC原子を有するアルキル基または芳香族基を表し、Rは、4〜10個のC原子を有するシクロアルキル基またはフェニル基を表す)、かつ残ったXは水素を表し、
Yは、基−NH−または−CO−NR−Z−NR−を表し、
Zは、n=2〜20の基−(CH−、x=1〜10の基−(CH−CH−O)−CH−CH−、4〜10個のC原子を有するシクロアルキリデン基、または6〜30個のC原子を有する芳香族基を表し、そしてRおよびRは、独立して水素、1〜10個のC原子を有するアルキル基または芳香族基を表す)
の糖のアクリル酸アミドまたは(メタ)アクリル酸アミド誘導体が、好ましくは孔形成添加物の任意的な存在下で重合され、次いで架橋した担体から保護基が部分的もしくは完全に切断されて得られることを特徴とする、方法。
【請求項2】
メタクリル酸アミド誘導体として、2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 N,N’−ビス−[2−(2−メチルアクリルアミノ)エチル]アミドが用いられることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メタクリル酸アミド誘導体として、2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 N,N’−ビス−[6−(2−メチルアクリルアミノ)ヘキシル]アミドが用いられることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
メタクリル酸アミド誘導体として、2,3:4,5−ジ−O−イソプロピリデン ガラクタル酸 N,N’−ビス−[12−(2−メチルアクリルアミノ)ドデシル]アミドが用いられることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
糖の、モノおよびジ置換(メタ)アクリル酸アミド誘導体の混合物を用いることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
さらにコモノマーを用いることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
コモノマーとして、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロイルアクリルアミド、N−メチル−N−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)-アクリルアミドまたはN−メチル−N−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチル)メタクリルアミドが用いられる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
コモノマーとして、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ジアクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸エチレングリコール、モノメタクリル酸ジエチレングリコール、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルまたはN,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸が用いられる、請求項6記載の方法。
【請求項9】
式II
【化3】

(式中、R、XおよびYは請求項1に記載した意味を有する)の構造要素を包含する、ポリマー担体。
【請求項10】
固相合成における、請求項9記載のポリマー担体の使用。
【請求項11】
ペプチド合成における、請求項9記載のポリマー担体の使用。

【公表番号】特表2008−504410(P2008−504410A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518406(P2007−518406)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000230
【国際公開番号】WO2006/000008
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507000729)テヒニーシェ ウニヴェルジテート ウィーン (6)
【Fターム(参考)】