説明

ビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の製造方法

【課題】 有機−無機複合材料などとして有用なビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の工業的に有利な製造方法を提供する。
【解決手段】一般式(1);


(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。ただし、R、Rの少なくとも1つは炭素数1〜2のアルコキシ基である。Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボニル基含有シラン化合物を、還元剤と反応させることを特徴とする一般式(2);


(式中、R、Rは前記と同様である。)で表される化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メルカプト基含有シラン化合物を製造する方法としては、ハロゲン化オルガニルシラン化合物とアルカリ金属硫化水素化物とを反応させる方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この方法は、(1)反応温度が高く、(2)反応時間が長く、(3)副生成物であるジスルフィドが生成する、(4)強塩基性条件下で塩を取り除くために蒸留が必要である、というように工業的には不利な方法である。
【特許文献1】特開平4−261188号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、有機−無機複合材料などとして有用なビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記に示すとおりのビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の製造方法に提供するものである。
項1.一般式(1);
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。ただし、R、Rの少なくとも1つは炭素数1〜2のアルコキシ基である。Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボニル基含有シラン化合物を、還元剤と反応させることを特徴とする一般式(2);
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、R、Rは前記と同様である。)で表されるビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の製造方法。
項2.一般式(1);
【0010】
【化3】

【0011】
(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。ただし、R、Rの少なくとも1つは炭素数1〜2のアルコキシ基である。Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボニル基含有シラン化合物が、一般式(3);
【0012】
【化4】

【0013】
(式中、R、Rは前記と同様である)で表されるジビニルシラン化合物と、一般式(4);
【化5】

【0014】
(Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボン酸とを反応させることにより得られることを特徴とする項1に記載の方法。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で使用する還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、リチウムアルミニウムハイドライド、ヒドラジン等が挙げられるが、水素化ホウ素ナトリウムまたはヒドラジンが好ましい。還元剤の使用量は、上記一般式(1)で表されるチオカルボニル基含有シラン化合物1モルに対して、0.5〜8モルが好ましく、1〜4モルがより好ましい。
【0017】
本発明の還元反応で使用する溶媒としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、水、またはこれらの混合溶媒が挙げられるが、メタノール、エタノールが好ましい。反応溶媒の使用量は、上記一般式(1)のチオカルボニル基含有シラン化合物1gに対して、1〜30mlが好ましく、2〜20mlがより好ましい。
【0018】
本発明で使用する上記一般式(4)で表されるチオカルボン酸としては、チオ酢酸、チオプロピオン酸などが挙げられるが、特にチオ酢酸を使用するのが好ましい。チオカルボン酸の使用量は、上記一般式(3)で表されるジビニルシラン化合物1モルに対して、2〜10モルが好ましく、2〜5モルがより好ましい。
【0019】
本発明のチオカルボニル化反応に使用する溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられるが、塩化メチレン、クロロホルムが特に好ましい。反応溶媒の使用量は、上記一般式(3)で表されるジビニルシラン化合物1gに対して、1〜30mlが好ましく、1〜15mlが特に好ましい。
【0020】
本発明で使用する上記一般式(3)で表されるジビニルシラン化合物としては、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルメチルメトキシシラン、ジビニルメチルエトキシシランなどが挙げられるが、ジビニルジエトキシシランが特に好ましい。
【0021】
本発明の還元反応においては、反応温度が−20〜100℃であることが好ましく、0〜30℃がより好ましい。反応時間は5分〜3時間であるのが好ましく、30分〜1時間がより好ましい。
【0022】
本発明のチオカルボニル化反応においては、反応温度が0℃〜各溶媒の沸点までであることが好ましく、0〜70℃がより好ましい。反応時間は1分〜48時間であるのが好ましく、1分〜24時間がより好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、有機−無機複合材料などとして有用なビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物を、効率よく製造することができ、工業的に有利である。
【0024】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
【0025】
実施例1 ビス(2−メルカプトエチル)ジエトキシシランの製造
一般式(3)で表される、ジビニルジエトキシシラン(11.2g、65.3mmol)にクロロホルム(65ml)を加え、50℃まで昇温し、96分かけてチオ酢酸(10.8g、137mmol)を滴下した。滴下終了後、50〜55℃で3時間反応させた。反応終了後、有機溶媒を留去した。その結果、一般式(1)で表されるビス(2−チオアセチル)ジエトキシシラン(18.1g、収率85.6%=ジビニルジエトキシシラン基準)を得た。
ビス(2−チオアセチル)ジエトキシシラン(18.1g、55.8mmol)にエタノール(150ml)を加えて攪拌し、水素化ホウ素ナトリウム(5.3g、117.2mmol)を167分かけて滴下した。滴下後15〜30℃で2時間攪拌した。反応終了後、ヘキサン(50ml)を加え、水(200ml)で洗浄を行ったあと、有機溶媒を留去した。その結果、上記一般式(2)で表される、ビス(2−メルカプトエチル)ジエトキシシラン(11.9g、収率88.9%=ビス(2−チオアセチル)ジエトキシシラン、通算収率76.1=ジビニルジエトキシシラン基準)を得た。
H−NMR(CDCl、400MHz、δ;ppm)=3.81(4H、q、J=6.8Hz)、2.69−2.59(4H、m)、1.59(2H、t、J=7.2)、1.23(6H、t、J=6.8)、1.07−1.02(4H、m)
【0026】
実施例2 ビス(2−メルカプトエチル)ジメトキシシランの製造
一般式(3)で表されるジビニルジメトキシシラン(1.12g、10.0mmol)にクロロホルム(20mL)を加え、50℃まで昇温し、18分かけてチオ酢酸(1.7g、21.0mmol)を滴下した。滴下終了後、50〜55℃で3時間反応させた。反応終了後、有機溶媒を留去した。その結果、一般式(1)で表されるビス(2−チオアセチル)ジメトキシシラン(2.4g、収率91.3%=ジビニルメトキシシラン基準)を得た。
ビス(2−チオアセチル)ジメトキシシラン(2.4g、9.1mmol)にエタノール(27mL)を加えて攪拌し、水素化ホウ素ナトリウム(0.7g、19.2mmol)を4分かけて滴下した。滴下後15〜30℃で2時間攪拌した。反応終了後、ヘキサン(10ml)を加え、水(40ml)で洗浄を行ったあと、有機溶媒を留去した。その結果、上記一般式(2)で表される、ビス(2−メルカプトエチル)ジメトキシシラン(1.31g、収率80.7%=ビス(2−チオアセチル)ジメトキシシラン、通算収率73.7%=ジビニルジメトキシシラン基準)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1);
【化1】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。ただし、R、Rの少なくとも1つは炭素数1〜2のアルコキシ基である。Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボニル基含有シラン化合物を、還元剤と反応させることを特徴とする一般式(2);
【化2】

(式中、R、Rは前記と同様である。)で表されるビス(2−メルカプトエチル)シラン化合物の製造方法。
【請求項2】
一般式(1);
【化3】

(式中、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜2のアルキル基または炭素数1〜2のアルコキシ基を示す。ただし、R、Rの少なくとも1つは炭素数1〜2のアルコキシ基である。Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボニル基含有シラン化合物が、一般式(3);
【化4】

(式中、R、Rは前記と同様である)で表されるジビニルシラン化合物と、一般式(4);
【化5】

(Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)で表されるチオカルボン酸とを反応させることにより得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元剤が、水素化ホウ素ナトリウムまたはヒドラジンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2008−174534(P2008−174534A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37070(P2007−37070)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000222554)東洋化成工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】