説明

ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の結晶形

ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の二つの多形相、それらを製造するための方法、及びHMG Co−A還元酵素阻害剤としてのそれらの使用、について記述する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、新規な結晶性化合物、より具体的には、ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の新規な結晶形に関する。本明細書において、以後、本化合物を“本薬剤”と呼び、そして式(I)で表す。本化合物は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A還元酵素(HMG CoA還元酵素)の阻害剤であり、そして、例えば、高脂質血症、高コレステロール血症及びアテローム性動脈硬化症、並びにHMG CoA還元酵素が関係する他の疾患及び状態の処置における医薬として有用である。本発明はまた、そのような結晶形を製造するための方法、当該結晶形を含む医薬組成物、及び医療処置における当該結晶形の使用、に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
欧州特許出願公開No.521471(以後、EPA521471とし、参考文献として本明細書に援用する)は、対応するナトリウム塩を水に溶解すること、塩化カルシウムを加えること、そして生じた沈殿をろ過によって集めることによって製造される、本薬剤のアモルファス(粉末)形を開示している。
【0004】
国際特許出願WO2004/014872は、本薬剤のアモルファス形の沈殿のための改良法を開示している。
国際特許出願WO00/42024は、水と一つ以上の有機溶媒の混合物、例えばアセトニトリルと水の1:1の混合物、から製造される、本薬剤のある結晶形(本明細書において形態Aと呼ぶ)を開示している。しかしながら、有機共溶媒を含まない水から形態Aを製造するための適した条件は開示されていない。環境的理由(例えば、大量の廃棄物の処理)及び安全性の理由(例えば、生成物が医薬の場合、最終生成物から有機溶媒が除かれていることを確実にすることが必要である)から、大量製造における有機溶媒の使用は、一般的には好ましくない。そのため、水のみから製造することができる本薬剤の結晶形を見つけることに対する要求が存在している。
【0005】
驚くべきことに、そして予想外なことに、本発明者らは、有機共溶媒を必要とすることなく、水から第二の結晶形で本薬剤を製造できるということを発見した。
本発明によれば、2−シータ(2θ)=8.8、13.1、及び21.5°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する本薬剤の結晶水和物形(crystalline hydrated form)(以後、形態Bと呼ぶ)を提供する。
【0006】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=4.3、8.8、13.1、13.7、21.5、22.8及び28.9°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する本薬剤の結晶水和形を提供する。
【0007】
本発明によれば、2−シータ(2θ)=4.3、8.8、13.1、13.7、15.2、15.8、17.5、21.5、21.9、22.8、24.5及び28.9°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する本薬剤の結晶水和物形を提供する。
【0008】
本発明によれば、実質的に図1に示されたX線粉末回折パターンを有する本薬剤の結晶水和物形を提供する。
本発明によって得られる形態Bは、本薬剤の他の結晶形及び非結晶形を実質的に含まない。“他の結晶形及び非結晶形を実質的に含まない”との用語は、望みの結晶形が、本薬剤のその他の形を50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満で含むということを意味すると理解されるべきである。
【0009】
X線粉末回折(以後、XRPDまたはXRDと呼ぶ)スペクトルは、シーメンス(Siemans)単結晶シリコン(SSC)ウエハーマウント上に結晶形の試料を載せ、顕微鏡用スライドによって試料を薄膜に広げることによって測定した。Siemens D5000回折計を使用し、試料を毎分30回転で回転させ(計数統計を改善するため)、そして40kV及び40mAで操作された銅ロングファインフォーカス管(long−fine focus tube)によって発生させた波長1.5406オングストロームのX線を照射した。コリメート(collimated)したX線源をV20(20mm経路長)でセットされた自動可変発散スリットを通し、反射した放射を2mmの発散制限(antiscatter)スリット及び0.2mmの検出スリットを通して導いた。シータ−シータモードで、2−シータで2度乃至40度の範囲にわたって、0.02度2シータ増加当たり(連続スキャンモード)4秒間、試料をさらした。測定時間は2時間6分40秒であった。装置には検出器としてシンチレーションカウンターを装備した。制御及びデータ捕捉は、Diffrac AT(Socabim)ソフトウエアで作動するDECpc LPv 433sxパーソナルコンピュータで行なった。
【0010】
形態Bの典型的な試料のX線粉末回折スペクトルを、以下の図1に示す。
X線粉末回折パターンの2シータの値は装置ごとにまたは形態Bの試料ごとに若干変動し、そのため提示した値は絶対的なものとして解釈されるべきではない、ということが理解されるであろう。また、ピークの相対強度は試験条件での試料の配置によって変動することがあり、そのため、本明細書に含まれているXRDトレース(trace)に示されている強度は例証であり、絶対的な比較のために使用することを意図していない、ということが理解されるであろう。
【0011】
形態Bは、また、例えばDRIFT(拡散反射フーリエ変換赤外分光法)技術によって実施される、赤外(IR)スペクトルによって特徴付けることができる。形態BのDRIFTスペクトルは以下の実施例1に示している。そのスペクトルは、2%w/w(KBr粉末中)を用い、4000乃至400cm−1のスペクトル範囲にわたって、Nicolet Magna 860 ESP FT−IR分光計によって測定された。スペクトル取得条件は、2cm−1デジタル解像度、64のバックグランドスキャン(KBrのみ)及び64の試料(KBrとの2%試料混合物)スキャンであった。
【0012】
DRIFTスペクトルの解像度は測定した試料の粒度に影響され得るということが理解されるであろう。以下に示した形態Bのスペクトルは、微粉末に粉砕された試料を用いて測定された。繰り返しの試料または別製造の試料は、ピーク位置周波数は変化していないが、解像度が異なるDRIFTスペクトルを与えることがある。
【0013】
形態Bはまた、当該分野で既知の他の分析手法によって特徴付けることができる。
典型的には、形態Bは水和物形、例えば約9乃至10%w/wの水分含量、また例えば約9%w/wの水分含量、で得られる。
【0014】
形態Bは、水性[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]ナトリウム塩(以後、“ナトリウム塩”と呼ぶ)中の本薬剤の飽和溶液から結晶化させることができる。好適には、本薬剤のアモルファス形を出発原料として使用することができる。そしてアモルファス形は、例えばEPA521471に記載のようにして得ることができる。ナトリウム塩は、WO00/49014の記載によってまたは以下の実施例1のようにして得ることができる。
【0015】
従って、本発明のさらなる態様として、水性ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]ナトリウム塩中の式(I)の化合物の飽和溶液から結晶を形成することを含む、式(I)の化合物の結晶水和物形を製造するための方法を提供する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、水性ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]ナトリウム塩中の式(I)の化合物のアモルファス形の飽和溶液から結晶を形成することを含む、式(I)の化合物の結晶水和物形を製造するための方法を提供する。
【0017】
ナトリウム塩溶液の本薬剤での飽和は、例えば、ナトリウム塩溶液がアモルファス形について飽和するまでの、ナトリウム塩溶液へのアモルファス形の添加を意味する。形態Bの結晶化が始まったら、飽和状態を維持するためにさらにアモルファス形が添加される。
【0018】
本発明の方法は、好都合には20℃乃至45℃、より好都合には30℃乃至45℃、さらに好都合には37℃乃至43℃、好ましくは約40℃で実施される。
形態Bは、また、本薬剤のアモルファス形の水溶液またはスラリーに種晶添加によって形成することができ、またはアモルファス形の溶液の長時間の撹拌によっても形成することができる。
【0019】
本発明の本化合物の有用性は、EPA521471に記載されたものを含め、標準的な試験及び臨床的研究によって実証することができる。
本発明のさらなる特徴は、HMG CoA還元酵素の阻害が効果的である疾患状態を処置する方法であって、本薬剤の形態Bの有効量を温血哺乳動物に投与することを含む方法である。本発明は、また、疾患状態において使用するための医薬の製造における形態Bの使用に関する。
【0020】
HMG CoA還元酵素が関与している疾患の処置のために、そのような投与を必要としている温血動物(特にヒト)に対して、本発明の本化合物を慣用的な医薬組成物の形態で投与することができる。従って、本発明の別の態様において、形態Bを医薬的に許容可能な担体との混合物として含む医薬組成物が提供される。
【0021】
そのような組成物は、処置が望まれている疾患状態のために標準的な方法、例えば、経口投与、局所投与、非経口投与、口腔投与、鼻腔投与、膣内投与若しくは直腸投与、または吸入、によって投与することができる。このような目的のために、本薬剤は、当該分野で既知の方法によって製剤することができ、例えば、錠剤、カプセル剤、水性または油状液剤、懸濁剤、エマルジョン剤、クリーム剤、軟膏、ゲル剤、鼻腔用スプレー、坐剤、吸入のための微粉散剤またはエアロゾル剤、及び非経口投与(静脈内、筋肉内または注入を含む)のための滅菌水性若しくは油状液剤若しくは懸濁剤または滅菌エマルジョン剤、の形態に製剤することができる。投与の好ましい経路は経口である。本薬剤は、ヒトに対して、例えばEPA521471に述べられた範囲内の一日用量(dailydose)で投与されるであろう。必要であれば、一日用量は分割量で与えることができる。そして、当該分野の既知の原理に従って、受け入れられる本薬剤の正確な量及び投与の経路は処置される患者の体重、年齢及び性別、並びに処置される具体的な疾患状態に依存する。
【0022】
本発明のさらなる特徴によれば、活性成分として形態Bを含有する医薬組成物を製造するための方法であって、医薬的に許容可能な担体と形態Bを混合することを含む方法が提供される。
【0023】
WO2004/014872に記載されている、異なった塩形の(実質的な)水溶液から本薬剤のアモルファス形の沈殿のための方法は、一般に、沈殿した本薬剤をろ過した後に残っている母液等の廃溶液中のある割合の残余の本薬剤をもたらすということが認識されるであろう。その方法が商業的製造スケールで繰り返された場合、そのような残余の割合が非常に小さくとも大きな経済的損失をもたらすであろう。そのような残余の削減は、また、場合によっては、環境的利点、廃液が廃棄可能になるまでにそれが必要とする処理の量の減少、を提供する。
【0024】
本発明者らは、残余の本薬剤を形態Bとして単離し、そして望ましいアモルファス形を形成するために再処理するという廃溶液(母液等)の処理によって、このような損失を避けることができるということを見つけた。すなわち、形態Bは、本薬剤のアモルファス形の単離のための加工助剤(processing aid)としての重要性を有する。本発明のこの態様は実施例3に示している。
【0025】
従って、本発明のさらなる態様において、アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を形成するための方法であって、溶液から前に定義した形態Bの単離及び引き続いてのアモルファス形への変換、を含む方法を提供する。
【0026】
さらなる態様において、アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を形成するための方法であって、[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を含む溶液を水中の形態Bのスラリーと混合すること、形態Bの単離、及び単離した形態Bの引き続いてのアモルファス形への変換、を含む方法(ここにおいて、形態Bは前に定義した通りである)を提供する。
【0027】
形態Bを単離するための方法は、好都合には20℃乃至45℃、より好都合には30℃乃至45℃、さらに好都合には37℃乃至43℃、そして好ましくは約40℃で実施される。
【0028】
[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を含む溶液は、好都合なことに、アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を対応するナトリウム塩及び塩化カルシウムから形成及び単離するための方法から得られる母液等の廃溶液である。この廃溶液は通例、残余の塩化ナトリウムと合成経路の前段階に起因する潜在的な不純物を含むというこうが認識されるであろう。この方法で単離された形態Bは、高い純度、例えば乾燥重量に基づいて>90%、好ましくは>95%、より好ましくは>99%を有する。
【0029】
形態Bのスラリー中の本薬剤の量は、好都合には、廃溶液に含まれるものの約15モル%である。スラリー及び廃溶液は、好都合には約7mg/mlの濃度である。
本発明のさらなる態様において、アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の単離のための加工助剤としての形態B(前に定義の通り)の使用を提供する。
【0030】
本発明のさらなる態様において、廃溶液からのアモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の回収のための加工助剤としての形態B(前に定義の通り)の使用を提供する。
【0031】
本発明のさらなる態様において、アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の製造の中間体としての形態B(前に定義の通り)の使用を提供する。
【0032】
ある条件において、本薬剤は、形態Bに関連した結晶形として存在することができる。そしてこの結晶形は、通例、ロングレンジオーダー(long−range order)及び限られたショートレンジオーダー(short−range order)を有し、そして通例、形態Bより低い水分含量を持つ。形態Bに関連したこの形態を、以後、形態B−1と呼ぶ。形態B−1のXRDトレースを実施例2に示す。
【0033】
形態B−1は形態Bの結晶格子からの水の除去によって生成する。脱水後、形態Bのロングレンジ構造は形態B−1において保持されているが、形態B−1は限られたショートレンジオーダーのみを有する。形態B−1は形態Bの試料を60℃に加熱することによって、または形態Bの試料をDVS装置(動的水蒸気吸着:Dynamic Vapour Sorption)等の装置(例えば、実施例2に記載したSurface Measurement Systems DVS1)を用いて相対湿度(RH)0%で保存することによって、形成することができる。形態B−1は水に適切にさらすことによって、例えば水中でのスラリー化によって、形態Bに戻すことができる。実施例2に示すように、形態B−1は形態Bと比較して異なったXRDパターンを示す。形態B−1のXRDパターンは形態Bについて前に述べた方法によって測定することができる。
【0034】
従って、本発明の別の態様において、RH0%で2−シータ(2θ)=4.4、7.7、9.0及び20.7にピークをもつX線粉末回折パターンを有する本薬剤の“脱水和”形を提供する。さらなる態様において、RH0%で2−シータ(2θ)=4.4、9.0及び20.7にピークをもつX線粉末回折パターンを有する本薬剤の“脱水和”形を提供する。さらなる態様において、実質的に図2に示されたX線粉末回折パターンを有する本薬剤の“脱水和”形を提供する。
【0035】
RH0%より上の湿度に形態B−1をさらすことは、そのRH環境で導かれるレベルまで水が結晶格子に再侵入することを許容する。しかしながら、水蒸気は、形態Bを再形成するように構造を容易に再配列することはなく、そのため、その材料はショートレンジオーダーを欠いたままであり、そして相対湿度を下げることによって、水は容易に失われる。水の吸収と脱着はXRDピークの小さな変化を引き起こすことができる。
【0036】
形態B−1のDRIFTスペクトルは以下の実施例2に与えられている。実験条件は、試料を穏やかに粉砕したことを除いて、形態Bについて記述した通りである。
本発明は以下の実施例によって説明される。
【0037】
実施例1
精製水(234ml)中の[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]メチルアミン塩(30g)の撹拌混合物に、20℃で水酸化ナトリウム水溶液(8%w/w、27.2ml)を加え、そしてその混合物を15分間撹拌した。必要であれば、不溶物を除くために、その混合物をろ過することができる。142mlの蒸留物が回収されるまで、混合物を減圧下、<40℃で濃縮した。水(90ml)を加え、そして90mlの蒸留物が回収されるまで、その混合物を減圧下、<40℃で再度濃縮した。得られた[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]ナトリウム塩の溶液を40℃で水(125ml)によって295mlの体積とし、そしてビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩(8g)(アモルファス)を加えた。約20時間撹拌後、ゲルが観察された。40℃でさらに7時間撹拌後、結晶化が観察された(光学顕微鏡で確認した)。さらに、ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩(アモルファス、17g)及び水(1000ml)を加えた。その濃厚なスラリーを40℃でさらに16時間撹拌した。その時間の経過後、光学顕微鏡では材料はすべて結晶のようであった。その結晶材料を20℃に冷却し、単離し、水で洗浄し(3x90ml)、そして減圧下、約35℃で乾燥して23gを得た(96%強度のアモルファスカルシウム塩の投入量に基づいて95%収率)。水分含量9.1%w/w。
1H NMR (400 MHz, DMSO-D6) δ ppm*: 1.2 (d, 3H) 1.2 (d, 3H) 1.3 (m, 1H) 1.5 (m, 1H) 2.0 (dd, 1H) 2.1 (dd, 1H) 3.4 (s, 3H) 3.5 (s, 3H) 3.8 (m, 1H) 4.2 (q, 1H) 5.5 (dd, 5.4 Hz, 1H) 6.5 (dd, 1H) 7.3 (m, 2H) 7.7 (m, 2H)
化学シフトはテトラメチルシランに対して百万分率で測定した。ピークの多重度は以下の通りである:s、一重線;d、二重線;t、三重線;m、多重線。
X線粉末回折(XRD):
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
形態Bの試料は、KBrと均一に混合する前に粉砕して微粉末とした。他の実験条件は前に記載した通りである。
実施例2
形態Bの試料(約6mg)をガラス製試料板に分配し、そしてSMS Dynamic Vapour Sorption(DVS)装置のバランス(balance)からぶら下げた。DVS装置を使用してRH0%、30℃に一晩保持した(この時間の経過後、試料質量の変化は少なくとも一時間にわたって<0.002%/分であった)。その後速やかに、試料をXRDで分析した。連続スキャンのシータ−シータモードで、2θで3°乃至30°の範囲にわたって、0.0357°2θ当たり0.40秒間、試料をさらした。
【0041】
以下のトレース(図2)はRH0%で保存されていた形態B−1の試料のXRDトレースの例である。形態B−1の試料の水分含量の変動が以下に示した正確な2θ値の変動をもたらすであろうということが認識されるであろう。そして、そのような水分含量の変動は、例えば形態B−1の保存条件に起因する。
【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
以下の図(図3)は形態BとB−1のXRDトレースの比較である。
【0045】
【表5】

【0046】
実施例3:母液回収方法の例
ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の母液(6000ml、約7/mg/ml)と形態Bのスラリー(900ml、水中0.7%w/v)を40℃で80分間で混合した。そして、そのスラリーをさらに40℃で6時間撹拌した。混合物を5℃に冷却し、そして、撹拌しながらその温度に2時間保持した。ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の形態Bを単離し、そして窒素雰囲気下、22℃で、減圧下乾燥した。母液及び洗浄液中の使用可能なビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の約75%を、単離された結晶性の形態Bとして回収した。
【0047】
形態Bは以下のようにしてアモルファスの本薬剤に変換することができる:
アセトニトリル(148ml)中の結晶性の形態B(17.32g)の懸濁液を20℃で水(70ml)で処理して溶液とした。その溶液に塩化ナトリウム(18.8g)を加え、そして塩酸水溶液及びブライン溶液を用いて、0℃でpHを2.8−3.4に調節した。生成物の(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸をアセトニトリル相に抽出(または分配)し、そして水(72ml)で希釈した。水酸化ナトリウムを用いてpHを10.5に調節した。水及び添加された水酸化ナトリウムの合計体積が100mlとなるように、水を添加した。その混合物をトルエン(125ml)で洗浄した。真空蒸留によって水相からアセトニトリルを除去した後、その残留物に40℃で20分間で、塩化カルシウム溶液(水約30ml中の3.05g)を加えた。20℃で、ろ過によってアモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を単離し、水で洗浄し、減圧下で乾燥してアモルファスの薬剤(14.2g、82%)を得た。
【0048】
参考実施例1
参考のために、WO00/42024に記載されている形態AのXRDパターンを以下の図4に示す。
【0049】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−シータ(2θ)=8.8、13.1、及び21.5°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する、式Iの化合物:
【化1】

ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩の結晶水和物形。
【請求項2】
2−シータ(2θ)=4.3、8.8、13.1、13.7、21.5、22.8及び28.9°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶水和物形。
【請求項3】
2−シータ(2θ)=4.3、8.8、13.1、13.7、15.2、15.8、17.5、21.5、21.9、22.8、24.5及び28.9°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶水和物形。
【請求項4】
約9−10%の水を含む、請求項1、請求項2または請求項3に記載の結晶水和物形。
【請求項5】
実質的に図1に示されたX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載の結晶水和物形。
【請求項6】
2−シータ(2θ)=4.4、7.7、9.0及び20.7°にピークをもつX線粉末回折パターンを有する、(請求項1で示した通りの)式Iの化合物の結晶形。
【請求項7】
実質的に図2に示されたX線粉末回折パターンを有する、(請求項1で示した通りの)式Iの化合物の結晶形。
【請求項8】
医薬的に許容可能な担体と共に請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の結晶形を含む医薬組成物。
【請求項9】
アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を形成するための方法であって、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形を溶液から単離すること、及び引き続いてアモルファス形に変換すること、を含む前記方法。
【請求項10】
[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を含む溶液を請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形の水中のスラリーと混合すること、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形の結晶を単離すること、及び単離した結晶を引き続いてアモルファス形に変換すること、を含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記の[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を含む溶液が、アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を対応するナトリウム塩及び塩化カルシウムから形成及び単離するための方法で得られる母液溶液等の廃溶液である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記の混合が37℃乃至43℃で実施される、請求項10または請求項11に記載の方法。
【請求項13】
アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を単離するための加工助剤としての請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形の使用。
【請求項14】
廃溶液からアモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を回収するための加工助剤としての請求項13に記載の使用。
【請求項15】
アモルファスのビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]カルシウム塩を製造するための中間体としての、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形の使用。
【請求項16】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形を製造するための方法であって、水性ビス[(E)−7−[4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メチル(メチルスルホニル)アミノ]ピリミジン−5−イル](3R,5S)−3,5−ジヒドロキシ−6−ヘプテン酸]ナトリウム塩中の、請求項1で定義した式(I)の化合物の飽和溶液から結晶を形成することを含む前記方法。
【請求項17】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形を製造するための方法であって、(請求項1で示した通りの)式Iの化合物の水溶液またはスラリーに種晶添加することを含む前記方法。
【請求項18】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形を製造するための方法であって、(請求項1で示した通りの)式Iの化合物のアモルファス形の溶液を長時間撹拌することを含む前記方法。
【請求項19】
請求項8に記載の医薬組成物を製造するための方法であって、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形を医薬的に許容可能な担体と混合することを含む前記方法。
【請求項20】
医薬の製造のための請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形の使用。
【請求項21】
HMG CoA還元酵素の阻害が効果的である疾患状態を処置する方法であって、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の結晶形の有効量を温血哺乳動物に投与することを含む前記方法。

【公表番号】特表2007−505090(P2007−505090A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525882(P2006−525882)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003829
【国際公開番号】WO2005/023779
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(300022113)アストラゼネカ・ユーケイ・リミテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】AstraZeneca UK Limited
【住所又は居所原語表記】15 Stanhope Gate, London W1K 1LN, United Kingdom
【Fターム(参考)】