ビタミンを標的とした造影剤
【課題】ビタミンに対するレセプターを有する細胞に向けて、放射性核種に基づく造影剤を標的化するための化合物及び方法の提供。
【解決手段】造影剤の標的用リガンドとして。下式
の化合物であり、Vは、in vivoにおいて、レセプターを媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、又は、ビタミンレセプターに結合するその誘導体若しくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは1又は0であり、Kは1又は0であり、かつ、この化合物は、薬学的に受容可能なキャリア。このビタミンに基づく化合物は、標的細胞の画像診断での使用のために使用される。
【解決手段】造影剤の標的用リガンドとして。下式
の化合物であり、Vは、in vivoにおいて、レセプターを媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、又は、ビタミンレセプターに結合するその誘導体若しくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは1又は0であり、Kは1又は0であり、かつ、この化合物は、薬学的に受容可能なキャリア。このビタミンに基づく化合物は、標的細胞の画像診断での使用のために使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<発明の範囲>
本発明は、造影剤を動物の細胞に標的化するための化合物および方法に関する。特に、放射性核種に基づく造影剤は、ビタミンに対するレセプターを有する細胞に対して、このようなビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログを、造影剤の標的リガンドとして用いることによって標的化される。
【背景技術】
【0002】
<本発明の背景および要旨>
膜貫通輸送は、重要な細胞機能である。従来から、実地の業務者は、薬物療法や遺伝子導入を含めた医科学および生物科学の多くの領域において、膜貫通輸送の重要性を認識していたので、この過程の理解と応用には多大な研究努力が向けられている。従って、例えば、核酸の膜貫通輸送が、タンパク質キャリア、抗体キャリア、リポソーム輸送システム、電気穿孔、直接注入、細胞融合、ウイルスキャリア、浸透圧衝撃、および、リン酸カルシウムを媒介した形質転換を用いて試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの技術の多くのものが、膜貫通輸送が起こる細胞の種類、および、外来性分子の膜貫通輸送の達成のために要求される条件の両方の点で限定される。さらに、これらの技術の多くが、生物活性を失うことなく細胞膜を横切って輸送し得る外来分子の種類およびサイズの点でも限定される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
広い適応性を有する外来分子の膜貫通輸送のための一つのメカニズムとして、レセプターが媒介するエンドサイトーシスがある。好都合なことに、レセプターが媒介するエンドサイトーシスは、in vivoでも、in vitroでも起こる。レセプターが媒介するエンドサイトーシスは、膜のレセプターに結合したリガンドが、膜の陥入によって、膜で境界した領域内へ移動することを含む。この過程は、レセプターに特異的なリガンドがレセプターに結合することによって開始されるかまたは活性化される。これまでにも、多くのレセプターが媒介するエンドサイトーシスシステムの特徴が明らかにされている。例えば、ガラクトース、マンノース、マンノース6-リン酸、トランスフェリン、アシアログリコプロテイン、葉酸塩、トランスコバラミン(ビタミンB12)、α-2マクログロブリン、インスリン、および、上皮細胞増殖因子(EGF)などのほかのペプチド増殖因子の細胞内取り込みを生じさせるものが挙げられる。
【0005】
レセプターが媒介するエンドサイトーシスは、タンパク質や核酸のような外来分子を細胞に送達するために利用されてきた。一般に、特異的なリガンドは、目的の外来分子に対して共有結合、イオン結合または水素結合によって化学的に結合して結合体分子を形成するが、その結合体分子においてもなお標的レセプターによって認識される部分(リガンド部分)を有する結合体分子を形成する。この技術を用いて、光毒性タンパク質プソラレンがインスリンと結合し、インスリンレセプターエンドサイトーシス経路を通じて細胞内に取り込まれ(ガスパロ(Gasparro), Biochem. Biophys. Res. Comm. 141(2), pp. 502-509、1986年12月15日)、ガラクトース末端アシアログリコプロテインに対する肝細胞の特異的レセプターが、プラスミドに対して非共有的に複合化したアシアロオロソムコイド-ポリ-L-リシンの肝細胞に特異的な膜貫通輸送のために利用され(ウー・ジーワイ(Wu, G.Y.), J. Biol. Chem., 262(10), pp. 4429-4432, 1987年)、EGFに対する細胞レセプターが、EGFに共有結合したポリヌクレオチドを細胞内部に輸送するのに利用され(マイヤース(Myers)、欧州特許出願第86810614.7号、1988年6月6日発行)、有機金属性ビタミンB12-内部因子複合体に対する小腸内細胞レセプターが、薬剤、ホルモン、生物活性ペプチドおよびビタミンB12と複合体形成された免疫原物質を、経口投与後に循環系への輸送を仲介するのに使用され(ラッセルジョーンズ等(Russel-Jones et al.), 欧州特許出願第86307849.9、1987年4月29日発行)、マンノース-6-リン酸レセプターが、低密度リポ蛋白を細胞に送達するのに用いられ(マレー・ジージェイおよびネビル・ディーエム(Murray, G.J. and Neville, D.M., Jr.), J. Biol. Chem. Vol. 255(24), pp. 1194-11948, 1980年)、コレラ毒素結合性サブユニットレセプターが、インスリンレセプターを欠損する細胞中に、インスリンを送達するのに用いられ(ロスおよびマドックス(Roth and Maddox), J. Cell. Phys., Vol. 115, p.151, 1983年)、ならびに、ヒト絨毛膜ゴナドトロピンレセプター(HCG)が、適当なHCGレセプターを持つ細胞中に、HCGに結合するリシンa-鎖を送達するのに用いられた(エルトマンおよびヒース(Oeltmann and Heath), J. Biol. Chem. Vol. 254, p.1028(1979))。
【0006】
一つの実施形態において、本発明は、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログに対するレセプターを持つ膜を横断する、放射性核種に基づく造影剤の膜貫通輸送を含む。ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体もしくはアナログに対するレセプターを担う細胞膜は、ビタミンおよび造影剤結合体と、その結合体の膜貫通性輸送を開始し、実行可能にさせるほど十分な時間接触させられ、かつ、動物におけるこのビタミン-造影剤結合体の生体分布はモニターされる。別の実施形態において、ビタミン/ビタミン誘導体またはアナログ標的部分は、単に、細胞表面上のビタミンレセプターに結合して、細胞表面上にキレートした放射性核種を濃縮する。
【0007】
本発明は、(1)ビタミンレセプターの局在、および、(2)関連レセプターが媒介するエンドサイトーシス過程を利用する。例えば、本発明は、腫瘍細胞または他のビタミンレセプターを過剰に発現する細胞タイプにおける、ビタミンレセプター、輸送体、または、ビタミンまたはその誘導体もしくはそのアナログに特異的に結合する他の表在性蛋白の、単一の発現、過剰な発現、または、選択的な発現を利用する。従って、本発明は、ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体またはアナログに対するレセプターを過剰に発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)または他の細胞タイプを、これらの細胞をビタミン-造影剤結合体と接触させた場合に起こるレセプターが媒介するエンドサイトーシス過程を利用することによって、そのような細胞の検出に用いられ得る。
【0008】
ビタミンレセプター(例えば、高親和性の葉酸レセプター(FR))は、例えば、腫瘍細胞において高レベルで発現する。卵巣、乳腺、結腸、肺、鼻、喉頭、および、脳の上皮癌は、皆高レベルのFRを発現することが報告されている。実際、ヒト卵巣腫瘍全体の90%以上が、このレセプターを大量に発現することが知られている。従って、本発明は、種々の腫瘍タイプ、および、病的状態に関係する他の細胞タイプの画像診断に対して使用され得る。
【0009】
リガンドと複合した放射性核種は、従来から、画像診断の目的のために非侵襲的なプローブとして用いられている。例えば、血管作動性腸管ペプチド、ソマトスタチンアナログ、および、モノクロナール抗体が、細胞(例えば、腫瘍細胞)に放射性核種を局在化するリガンドとして使用されている。モノクロナール抗体、および、その様々な断片は、初めは大きな関心を集めた。なぜなら、モノクロナール抗体を標的リガンドとして利用するならば、正確な腫瘍特異的標的が実現されると考えられたからである。残念ながら、この方法には問題が多い。なぜなら、i)抗体は、サイズが大きいために循環時間が長く、これは、画像目的には不都合であり、ii)抗体の生産は高価であり、iii)抗体は免疫原性の可能性があり、従って、複数回の投与を用いる場合には、ヒト化しなければならなく、そして、iv)抗体結合放射性核種の腫瘍組織対非標的組織比(T/NT)は至適以下であるなどである。従って、最近では、このような限界を持たない、より小さな腫瘍特異的リガンドの使用に焦点が向けられている。
【0010】
従来から、葉酸のようなビタミンは、造影剤を腫瘍細胞に標的化するのに使用されており、その小さいサイズのために有利である。in vivoにおいて腫瘍画像化用として最初に記述された葉酸系標的複合体は、125Iを含むヒスタミン誘導体であった。この複合体は、125I放射性核種成分が長命であるために、臨床的な関連候補とは見なされなかった。次いで、腫瘍画像化のためにデフェロキサミン-葉酸結合体が開発された(デフェロキサミンは、67Ga、すなわち、78時間の半減期を持つガンマ線放射核種をキレート化する)。この結合体を用いて肝胆汁系クリアランスを記録したところ、下腹部の局在を正確に画像化する点で問題が予想されたために、前臨床試験が中止された。しかし、この障害は、デフェロキサミンキレート剤を、111In(68時間の半減期)の効率的なキレート剤であるジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)に置き換えることによって克服された。111In-DTPA-葉酸塩の除去の一次ルートは、腎臓を介するものであることが確かめられた。
【0011】
比較的最近は、画像診断の好ましい放射性核種として、99mTcが採用されている。その理由は、i)この放射性核種は、市販の99Mo−99mTcジェネレータから簡単に入手され、ii)大量の99mTcを生産するコストは、111Inを生産するコストに比べて低く、そして、iii)99mTcは遥かに短い半減期(6時間)しか持たないので、放射性核種のより高い用量の投与が可能となり、従って、重要な臓器を有害なほどに放射線暴露する危険を冒すことなく、より高解像度の画像を生成するからである。
【0012】
これまで葉酸系99mTc結合体がいくつか開発されている。例えば、99mTc-6-ヒドラジノニコチンアミドヒドラジドの葉酸結合体(HYNIC、グオ等(Guo et al.), J. Nucl. Med. 40(9):1563-1569(1999))、99mTc-12-アミノ-3,3,9,9-テトラメチル-5-オキサ-4,8ジアザ-2,10-ドデカンジオンジオキシム(OXA)(リンダー等(Linder et al.), Soc. Nucl. Med. Proc. 47th Annual Meeting, 2000, 41(5):119P)、99mTc-エチレンジシステイン(イルガン等(Ilgan et al.), Cancer Biother. & Radiopharm., 13(6):427-435(1988))、および、99mTc-DTPA-葉酸塩(マシアス等(Mathias, et al.), Bioconjug. Chem., 11(2):253-257(2000))は、in vivoにおける腫瘍吸収特性において有望であることを示した。しかし、腎臓を通じて排除され、最適の腫瘍対非標的組織比(T/NT)を示す、代替的なビタミン系99mTc結合体、または、他の放射性核種を用いたビタミン系結合体の必要性がある。このようなビタミン系結合体が得られれば、腫瘍造影剤としての臨床開発や、他の病的状態の診断のための臨床開発に適するであろう。
【0013】
一つの実施形態において、
下式
の化合物であって、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であり、かつ、kは、1または0であることを特徴とする化合物を提供する。このビタミンは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質である。
【0014】
別の実施形態において、
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であることを特徴とする画像診断用組成物を提供する。このビタミンは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質である。
【0015】
さらに別の実施形態において、動物における細胞集団を画像化する方法であって、この細胞がこの細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられる方法を提供する。この方法は、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を、この動物に投与する工程と、この動物における該化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、Vは、この細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、レセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0である。
【0016】
別の実施形態において、
下式
の化合物であって、Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であり、かつ、kは、1または0である、ことを特徴とする化合物を提供する。
【0017】
さらに別の実施形態において、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0である組成物を提供する。
【0018】
さらに別の実施形態において、この細胞がこの細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられる、動物における細胞集団を画像化する方法を提供する。この方法は、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を、この動物に投与する工程と、動物におけるこの化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、Vは、この細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、レセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であることを特徴とする方法を提供する。
【0019】
任意のこれらの実施形態において、化合物の中のVは、例えば、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12およびビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、その誘導体もしくはそのアナログであり得る。任意のこれらの実施形態において、化合物中の放射性核種は、例えば、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明において造影剤として使用される例示の化合物EC20の構造である。
【図2】図2は、99mTc-EC20のHPLCラジオクロマトグラムである。99mTc-EC20のサンプルを、20%メタノールと0.2%トリフルオロ酢酸を含む水性移動相を流速1 mL/分で用い、イソクラティック条件下においてWaters Nova-Pak C18(3.9x150 mm)カラム上で溶出した。このHPLC分析は、UV検出器(280 nm)とBioscan FC-3200放射線検出器の両方を用いてモニターした。ピークAは遊離99mTc、ピークBは未知の構造を持つ葉酸塩含有キレート剤、ピークCおよびDは、EC20のDap-Asp-Cysキレート環のテクネチウム酸素結合のsyn異性体またはanti異性体のいずれかを有する異性体である。
【図3】Re-EC20および99mTc-EC20異性体(金属オキソ結合のsyn異性体またはanti異性体)の構造。
【図4】種々の葉酸塩含有競合物質を用いた、3H-葉酸のKB細胞に対する結合の阻止。濃度を漸増させた下記の競合物質の存在下に、あるいは、非存在下において、100 nM 3H-葉酸と共に、KB細胞を氷上で15分インキュベートした。競合物質は、(●)葉酸、(■)EC20、(▲)EC20:Re異性体A、(▼)EC20:Re異性体B、(□)DTPA-葉酸。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3)。
【図5】99mTc-EC20の時間依存性結合。37℃において時間を延長しながら、10 nMの99mTc-EC20と共にKB細胞をインキュベートした。複数回洗浄後、細胞を回収し、結合した放射線についてカウントした。誤差バーは1標準偏差(n=3)を示す。
【図6】99mTc-EC20の濃度依存性結合。37℃で2時間、濃度を漸増させた99mTc-EC20の存在下において、KB細胞をインキュベートした。複数回洗浄後、細胞を回収し、結合した放射線についてカウントした。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3)。
【図7】99mTc-EC20の「ピークB」の濃度依存性結合。37℃で2時間、濃度を漸増させた「ピークB」の存在下において、KB細胞をインキュベートした。ピークBは、99mTc-EC20配合物からクロマトグラフを用いて分離した。複数回洗浄後、細胞を回収し、結合した放射線についてカウントした。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3)。(●)ピークB、(○)ピークBプラス1 mM葉酸。
【図8】Balb/cマウスにおける99mTc-EC20の血液クリアランス。約0.1 mL容量に溶解させた50 μg/kgのEC20(67 nmol/kg)の用量を、短時間のジエチルエーテル麻酔下において各動物に静注した。注入後指定の時間に、CO2窒息により各動物を安楽死させ、血液を採取して、結合した放射線をカウントした。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3匹)。
【図9】全身ガンマ線像(腹側の図)。皮下に葉酸レセプター陽性M109腫瘍を有するBalb/cマウスに対して、99mTc-EC20を静注し、4時間後の画像を入手した。腎臓(K)と腫瘍(T)のみが、この放射線トレーサーの著明な蓄積を示した。
【図10】EC11, EC13, EC14, EC15, EC19, EC20, EC31および EC53の構造。
【図11】FR-陽性M109腫瘍、および、FR-陰性4T1腫瘍を有するBalb/cマウスにおける99mTc-EC20の組織分布。
【図12】EC11のHPLC分析。
【図13】EC11の質量分析。
【図14】EC11のNMR分析。
【図15】EC13のHPLC分析。
【図16】EC14のNMR分析。
【図17】EC15の質量分析。
【図18】EC19のHPLC分析。
【図19】EC19の質量分析。
【図20】EC31のHPLC分析。
【図21】EC53のHPLC分析。
【図22】EC53の質量分析。
【図23】EC53の質量分析。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に従って、ビタミンレセプターを単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択的に発現する細胞集団に、放射性核種系造影剤を標的化するための化合物および方法を提供する。従って、ビタミン、または、レセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログを、造影剤の標的リガンドとして使用する。このビタミン-造影剤結合体は、放射性核種を細胞に向けて標的し、細胞集団(例えば、腫瘍細胞集団)においてその放射性核種を濃縮させて、画像診断に使用することが可能である。
【0022】
本発明は、そのような方法において使用される、
下式
の化合物を含有する画像診断用組成物を提供する。この化合物において、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、かつ、nは1または0である。このビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質である。
【0023】
本発明はまた、
下式
の化合物であって、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは1または0であり、かつ、kは1または0である、化合物も提供する。
【0024】
この化合物の例は、図1に描かれるEC20という化合物である。本発明に従って使用される他の化合物の例は、EC11、EC13、EC14、EC15、EC19、EC31およびEC53と表示される化合物である(図10を参照のこと)。このビタミン部分(例えば、EC20の葉酸部分)は、細胞FRに対して高い親和性を有する結合を提供する。これらの化合物はまた、両機能性ペプチド系キレート剤を含む。このキレート剤は、放射性核種(例えば、99mTc)のキレート化のための部位を与える(図1を参照のこと)。この化合物は、ビタミン部分が、それを通じてキレート部分に共有結合するリンカーを、必要に応じて含み得る。
【0025】
本発明に従って、この化合物のビタミン部分は、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質となるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログである。このビタミンは、必要に応じて、化合物のキレート部分にリンカー(L)を介して結合される。このキレート部分は、第3のアミノ酸残基を介してシステイン基に結合されるα,β-ジアミノプロピオン酸部分を含有する。化合物のキレート部分は、放射性核種陽イオン(M)を結合するように適応される(k=1の場合)。
【0026】
本発明に従って、放射性核種を結合させた化合物は、「ビタミン-造影剤結合体」という。
【0027】
リンカーの構造は、存在する場合、本発明にとって決定的に重要というわけではない。従って、例えば、リンカーは、任意の生体適合性を有する2価のリンカーであり得る。代表的に、このリンカーは、約1〜約30個の炭素原子を含み、さらに代表的には約2〜20個の炭素原子を含む。これより低い分子量のリンカー(すなわち、約30〜約300の分子量を有するもの)であっても通常に使用される。さらに、ビタミン部分は、ビタミンであっても、その誘導体もしくはそのアナログであってもよい。例えば、葉酸は、プテロイン酸に結合する、一つのL型のグルタミン酸を含む。図1に示すように、EC20は、キレート部分に結合する葉酸アナログを含む。なぜなら、EC20は、D型のグルタミン酸を含むからである。EC11およびEC14は二つのグルタミン酸残基を含み、従って、これらの化合物も例えば葉酸の誘導体と考えられ得る(図10)。
【0028】
レセプターが媒介するエンドサイトーシスを誘発すると考えられて、本明細書に開示される方法に従って使用が可能なビタミン類には、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12ならびに脂溶性ビタミンA、脂溶性ビタミンD、脂溶性ビタミンEおよび脂溶性ビタミンKがある。これらのビタミン、ならびに、そのアナログおよびその誘導体は、造影剤と結合し、本発明に従って使用されるビタミン-キレート剤結合体を形成し得る。好ましいビタミン部分としては、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、ならびに、これらビタミン分子のアナログおよび誘導体、ならびに、他のビタミンレセプターに結合する関連分子が挙げられる。
【0029】
葉酸、フォリン酸、プテロイン酸、プテロポリグルタミン酸、および、葉酸レセプターに結合するプテリジン類(例えば、テトラヒドロプテリン)、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、ならびに、そのデアザアナログおよびジデアザアナログを、本発明に従って使用し得る。用語「デアザ」アナログおよび「ジデアザ」アナログとは、天然に見られる葉酸構造において、1個の炭素原子を、1個または2個の窒素原子に置換された、従来技術で既知の葉酸アナログをいう。例えば、デアザアナログとしては、1-デアザアナログ、3-デアザアナログ、5-デアザアナログ、8-デアザアナログ、および、10-デアザアナログが挙げられる。ジデアザアナログとしては、例えば、1,5ジデアザアナログ、5,10-ジデアザアナログ、8,10-ジデアザアナログ、および、5,8-ジデアザアナログが挙げられる。前述のものは、葉酸アナログまたは誘導体であり、葉酸レセプターに結合し得る。本発明において有用な、他の葉酸アナログまたは誘導体としては、葉酸レセプター結合性アナログのアミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチル葉酸、2-デアミノ-ヒドロキシ葉酸、デアザアナログ(例えば、1-デアザメトプテリンまたは3-デアザメトプテリン)、および、3’5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)が挙げられる。
【0030】
ビタミン、または、その誘導体もしくはそのアナログは、細胞集団に選択的に結合し、そのため、そのビタミン、または、誘導体またはアナログに対するレセプターの標的細胞上に選択的に発現することにより視覚化され得る。ビタミンに対する結合部位は、レセプターに特異的に結合し得る任意のビタミン分子に対するレセプターを含み得、そのレセプターまたは他のタンパク質は、視覚化される細胞集団によって単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択的に発現するものであれば、どのようなビタミンに対するレセプターであってもよい。視覚化される細胞によって単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択的に発現する表在性タンパク質は、他の細胞上に存在しないか、または、少量しか存在しないレセプターである。このようなレセプターは、本発明のビタミン-造影剤結合体を用いた画像診断において標的とされる細胞における選択的な視覚化、高速な視覚化、および、高感度の視覚化に対する手段を与える。
【0031】
本発明に従って、ビタミン-造影剤結合体は、視覚化される癌細胞または他の細胞上のレセプターに対して高い親和性で結合し得る。高親和性結合は、ビタミン部分に内在する場合もあるし、あるいは、結合親和性が、化学的に改変されたビタミン(すなわち、アナログまたは誘導体)を用いることによってか、または、結合体の中に存在するビタミンとキレート部分との間の特定の化学結合によって増強され得る。
【0032】
本発明に従って、キレート剤は、多数のビタミン、異なるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログと結合し、それぞれの細胞膜レセプターへの結合機会を増すようにすることも可能である。あるいは、ビタミン-造影剤結合体の独立部分が、別々のビタミン-造影剤結合体を構成し、それによって、それぞれの細胞膜レセプターに対する結合機会を増すようにすることも可能である。
【0033】
一般に、キレート剤とビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログとの間に複合体を形成する任意の方法が、本発明に従って利用し得る。キレート剤は、2価のリンカーでキレート剤とそのビタミンとを直接結合することにより、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログを用いた複合体を形成し得る。あるいは、ビタミンおよびキレート剤は、リンカーを用いずに結合させてもよい。リンカーを用いる場合は、リンカーは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログと直接結合し、キレート剤の方は水素、イオン、または、共有結合を介して結合する。さらに、本発明に従って、2価のリンカーは、キレート剤をビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体またはアナログに結びつけるのに、間接的な手段(例えば、中間リンカー、スペーサーアーム、または、架橋分子による接続)を包含し得る。関連する直接手段および間接手段のいずれも、本発明の方法の実行のためには、細胞膜上のビタミンレセプターに対して、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログの結合を妨げるものであってはならない。
【0034】
ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体またはアナログと、キレート剤との共有結合は、リンカーの使用の有無に関わらず、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、または、ヒドラゾ基の間に、アミド結合、エステル結合またはイミノ結合を形成することによって生じ得る。例えば、ビタミン分子またはキレート剤のカルボン酸を、カルボニルイミダゾール、または、標準的なカルボジイミド結合試薬(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC))を用いて活性化し、その後、少なくとも1個の求核基を有する、結合体のもう一方の成分、または、リンカーと、ヒドロキシ、アミノ、ヒドラゾまたはチオールを介して反応させて、エステル、アミド、または、チオエステル結合によって結合される、リンカー含有または非含有の、ビタミン-キレート剤結合体を形成することが可能である。
【0035】
画像診断用に適した放射性核種としては、同位元素111In, 99mTc, 64Cu, 67Ga, または68Gaを含む、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの放射性同位元素が挙げられる。これらの放射性核種は陽イオン性であり、結合体のキレート基を介してキレート剤と複合し、ビタミン-造影剤結合体を形成する。
【0036】
本発明によるビタミン-造影剤結合体は、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログに対するレセプターを、単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択して発現する動物の細胞集団において、シンチグラフィー画像法を用いて選択的に視覚化するのに利用される。このビタミン-造影剤結合体は、病原細胞の集団において、その細胞が、ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体もしくはアナログに結合するレセプターを、単一に発現するか、選択して発現するか、または、過剰に発現する限り、その病原細胞集団の視覚化のために使用が可能である。
【0037】
本発明は、癌を含む各種病因の原因となる病原細胞の集団、および、ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体もしくはアナログに結合し得るレセプターを過剰に発現する任意の他の病原細胞タイプによって媒介される疾患に適用し得る。従って、病原細胞集団は、良性腫瘍および悪性腫瘍を含む腫瘍原因となるものであってもよいし、あるいは、腫瘍原因となるものでなくてもよい。細胞集団が癌細胞集団である場合は、その癌細胞は、自発的に生じたものであってもよいし、または、宿主動物の系統中に存在する突然変異、または、体細胞変異のような過程によって生じたものであってもよく、あるいは、その癌が、化学的に誘発されたか、ウイルスによって誘発されたか、または、放射線によって誘発されたものでもよい。本発明は、癌(例えば、上皮癌、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、メラノーマ、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、および、ミエローマ)の画像診断のために使用し得る。癌細胞集団としては、口内、鼻咽頭、甲状腺、内分泌、皮膚、胃、食道、喉頭、喉部、膵臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓、肺、および、脳の、各癌が挙げられるが、これらに限定されない。細胞集団が癌細胞集団である実施形態において、原発性腫瘍細胞や、転移した細胞や、原発性腫瘍から解離しつつある細胞を含めた腫瘍細胞を、このビタミン-造影剤結合体によって視覚化することが可能である。
【0038】
本発明のビタミン-造影剤結合体は、病状を診断するのに使用するか、または、病気の進行をモニターするのに使用し得る。例えば、本発明による画像診断は、腫瘍の外科的な切除、放射線療法、化学療法、または、生物学的療法を含む任意の治療アプローチによる腫瘍除去後に、腫瘍の再発を防止するための予防処置と組み合わせて、癌の進行をモニターするのに使用し得る。
【0039】
本発明の組成物および方法は、ヒトの臨床医学にも、獣医学的応用にも使用が可能である。従って、視覚化される細胞集団を有する動物は、ヒトであってもよいし、獣医学的応用の場合には、実験動物、農業動物、飼養動物または野生動物であってもよい。本発明は、ヒト、実験動物(例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター等)、ウサギ、サル、チンパンジー等)、飼養動物(例えば、イヌ、ネコおよびウサギ等)、農業動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、および、拘束下の野生動物(例えば、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカおよびクジラ等)に適用し得るが、これらに限定されない。
【0040】
画像診断用組成物は、動物において1回以上の用量で投与した場合、画像診断の標的とされる細胞を視覚化するのに有効な量のビタミン-造影剤結合体を含有する。このビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物は、好ましくは、動物に対して、非経口的(例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、または、硬膜下腔内)に投与される。あるいは、このビタミン-造影剤結合体を含む組成は、動物に対して、その他の医学的に有用な過程を通じて投与が可能であり、効果的な用量でありかつ適切な剤形であれば、経口剤形や、吸入剤形を含めて、どのような用量・剤形でも使用可能である。
【0041】
非経口剤形の例としては、ビタミン-造影剤結合体を、等張生食液、5%グルコースに溶解させた水性溶液、または、他の周知の薬学的に受容可能な液性キャリア(例えば、液体アルコール、グリコール、エステル、および、アミド)に溶解させた溶液が挙げられる。本発明によるこの非経口剤形は、ビタミン-造影剤結合体の用量を含む、再構成可能な凍結乾燥体の形態を取ってもよい。
【0042】
この画像診断組成物におけるビタミン-造影剤結合体の用量は、動物のサイズ、画像診断の標的とされる細胞集団、使用される特定のビタミン-造影剤結合体、および、結合体の投与経路に従って大きく変動することがある。動物に対して投与される有効量は、体表面積、体重、および、動物の状態に関する医師の評価に基づいて決められる。有効用量は、約1 ng/kg〜約1 mg/kg、より好ましくは約100 ng/kg〜約500 μg/kg、最も好ましくは約100 ng/kg〜約25 μg/kgの範囲であり得る。
【0043】
ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物の投与に関しては、有効であれば、どのような処方でも使用が可能である。例えば、画像診断組成物は、単一用量として投与してもよいし、要すれば、複数回用量として投与して、標的細胞集団の視覚化を達成してもよい。ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物の追加注入は、初回注入(単数または複数)後数日または数ヶ月の間隔で投与が可能であり、かつ、追加投与は、病状の進行をモニターするのに有用であり得る。ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物は、標識していないビタミンと組み合わせて投与することも可能である。「組み合わせて」とは、その標識していないビタミンを、造影剤と一緒に投与するか、または、画質を向上させるために、造影剤の投与前に先行投与するか、そのいずれかを意味する。例えば、造影剤は、約0.5 ng/kg〜約100 mg/kg、約1 μg/kg〜約100 mg/kg、約100 μg/kg〜約100 mg/kgの標識していないビタミンと組み合わせて投与され得る。
【0044】
画像診断組成物は、代表的に、非経口投与のために処方され、標的細胞集団の画像化を可能とするのに有効な量が動物に投与される。代表的に、ビタミン-標的造影剤を含む画像診断組成物は動物に投与され、標的細胞集団において、ビタミン-造影剤結合体が送達され、濃縮されるのに十分な時間の経過後に、動物に画像化処置を課するが、画像化は、ビタミン-造影剤結合体によって可能とされる。病気の進行をモニターするか、または、診断するのに使用する場合には、画像化処置は、代表的に、ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物の投与約1時間から約6時間後に実施する。
【0045】
本発明はまた、動物における細胞集団を画像化する方法であって、その細胞がこの細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられる細胞集団を画像化する方法を提供する。この方法は、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を、この動物に投与する工程と、動物においてこの化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、Vは、この細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0である。
【0046】
本方法は、in vitroにおける細胞(例えば、細胞培養)、または、in vivoにおける細胞(この細胞は、動物組織の一部を形成するか、または、別に存在する)集団を画像化するために使用し得る。従って、標的細胞としては、例えば、消化管内壁細胞(例えば、口腔粘膜および咽頭粘膜)、小腸の絨毛を形成する細胞、または、大腸内壁細胞が挙げられる。このような消化管細胞は、ビタミン-造影剤結合体を含有する画像診断組成物の経口投与によって、本発明に従って標的化し得る。同様に、動物の呼吸器系(鼻腔/肺)の内壁細胞は、本発明の複合体を吸入させることによって標的とすることが可能であるし、また、卵巣や脳の細胞を含む内臓の細胞を、特に、画像診断組成物を非経口投与することによって標的とすることも可能である。
【実施例】
【0047】
<実施例1>
===材料===
N10-トリフルオロアセチルプテロイン酸を、Eprova AG, Schaffhausen、スイスから購入した。ペプチド合成試薬は、NovaBiochemおよびBachemから購入した。99mTc過テクネチウム酸ナトリウムはSyncorから供給した。[ReO2(en)2]Clは、Rouschiasに従って調製した(ルーシアス・ジー(Rouschias, G.), Chem. Rev., 74:531(1974))。セルロースプレートおよびDEAEイオン交換プレートは、J.T. Bakerより購入した。
【0048】
<実施例2>
===EC20の合成、精製および分析特性===
Fmoc法を用いたポリマー支持連続法によって、EC20を調製した(以下のスキーム1を参照のこと;Fmoc=9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;Boc=tertブチルオキシカルボニル;Dap=ジアミノプロピオン酸;DMF=ジメチルフォルムアミド、DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン)。Fmoc-L-Cys(Trt)-OHを負荷させた酸感受性Wang樹脂上で、EC20を合成した。ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェート(PyBOP)を活性化試薬として与え、低当量のアミノ酸を用いて効率的な結合を確保した。各結合工程後、標準条件下(20%ピペリジン含有DMF液)においてFmoc保護基を除去した。最後の結合工程の後、このペプチドを、2.5%エタンジチオール、2.5%トリイソプロピルシラン、および、2.5%脱イオン水を含む、92.5%トリフルオロ酢酸で処理することによって、ポリマー支持体から分離した。この反応によって、t-Bu、Boc、および、トリチル保護基は同時に除去された。最後に、トリフルオロアセチル機能基を、水酸化アンモニウム水溶液で除去してEC20を得た。
【0049】
この粗精製EC20を、Xterra RP18 30x300 mm, 7 μmカラム(Waters)によるHPLCにて精製した(展開相32 mM HCl(A), MeOH(B)で、勾配条件は、99%Aと1%Bでスタートし、20 mL/分の流速下37分で89%Aと11%Bに達した)。この条件下では、EC20モノマーは、代表的に、14.38分で溶出し、一方、EC20のジスルフィドダイマー(微量の混入物質)は16.83分で溶出した。図10に示す他の化合物も、EC15を除いて全て同様の合成スキームによって調製が可能である。EC15は、以下のスキーム2に示すように合成する。
【0050】
2ミリグラムのHPLC精製EC20を、0.62 mLのD2Oに溶解し、500 MHz 1H-NMRスペクトルを採取した。表1(下記参照)に、EC20分子の全ての交換不能プロトンに関する化学シフト、信号形態、および、J値を挙げる。
【0051】
エレクロスプレー質量分析において、EC20も分析した。主な陽イオンピークは(m/z,相対強度)、746.1, 100; 747.1, 44; 556.8, 32; 570.8, 16である。
【0052】
【0053】
表1. EC20の1H-NMRデータ。EC20をD2Oに溶解し、500 MHzスペクトルを採取した。化学シフト(δ)はppmで表す。δ=4.80 ppmにおけるHODに対する信号を基準に用いた。pD=4.78、s=1重線、d=2重線、m=多重線。
【表1】
【0054】
【0055】
<実施例3>
===非放射性試薬バイアルおよび99mTc-EC20の調製===
99mTc-EC20放射性薬剤物質の調製にはEC20キットを用いた。各キットは、0.1 mgのEC20、80 mgのα-D-グルコヘプトン酸ナトリウム、80 mgの塩化スズ(II)二水塩、および、凍結乾燥前にpHを6.8±0.2に調整するのに十分な量の水酸化ナトリウムもしくは塩酸からなる、非発熱性の凍結乾燥混合物(無菌)を含んでいた。この凍結乾燥粉末を、アルゴン雰囲気下において5 mLのバイアルに封入した。次いで、使用時または使用期限(現在の有効期間は>2年である)まで、このキットを-20℃にて凍結保存した。注意すべきことは、塩化スズ(II)成分は、添加した99mTc-過テクネチウム酸塩を還元するのに必要であり、一方、α-D-グルコヘプトン酸ナトリウムは、最終的に99mTcがEC20化合物にキレート化されるまで、新たに還元された99mTcを安定化させるのに必要とされる。
【0056】
99mTc-EC20は以下のように調製した(すなわち、99mTcのEC20に対するキレート化)。まず、部分的に浸水させた鉛のバイアル遮蔽を含む煮沸水浴を準備した。70%エタノールを含む綿棒でEC20バイアルの上面を拭ってその表面を消毒し、そのバイアルを適当な遮蔽容器に収めた。27ゲージ針を持つ遮蔽注射器を用いて、0.9%塩化ナトリウムに溶解した1 mLの無菌過テクネチウム酸ナトリウム99mTc注射液(15〜20 mCi)を遮蔽バイアルに注入した。注射器をバイアルから抜去する前に、添加した過テクネチウム塩の体積と等しいガス体積をバイアルから抜き取った。これは、バイアル内部の圧を正規化するためである。この凍結乾燥粉末の完全な溶解を確保するために、バイアルを30秒間穏やかに回転攪拌した。次いで、煮沸水浴中に立ててある鉛遮蔽の中にバイアルを置いた。溶液を最長18分加熱し、次いで、最短15分かけて室温まで冷却した。この溶液は、光遮蔽をした室温(15〜25℃)で保存が可能であるが、調製後6時間以内に使用しなければならない。
【0057】
この放射性薬剤物質の放射化学的安定性を、最大24時間、光遮蔽をした室温での保存後に、HPLCにて定量した。HPLCシステムを用いて99mTc-EC20(20 μL)のサンプルを分析した。同システムは、Waters 600E複数溶媒移動システムと490 UV検出器、Bioscan EC-3200放射線検出器、Laura v1.5ラジオクロマトグラムソフトウェア、および、Waters Nova-Pak C18(3.9x150 mm)カラムからなる。20%メタノールおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含む水性展開相を用いて、1 mL/分の流速にて注入したサンプルを定組成で溶出した。このHPLC分析は、UV検出器(280 nm)およびガンマ放射線検出器の両方を用いてモニターした。注意すべきは、99mTc-EC20の放射化学的純度は、全ての場合において、少なくとも24時間の間は90%以上であった。
【0058】
<実施例4>
===TLCによる99mTc-EC20の放射化学的純度の定量===
99mTc-EC20調製の際に生ずる主な放射化学的不純物は、1)99mTc過テクネチウム酸塩、2)99mTc-グルコヘプトン酸塩(リガンド交換の前駆物質)、3)非特異的結合99mTc(EC20分子の、期待されるDap-Asp-Cysキレート機能基以外の部位に結合する99mTc)、および、4)加水分解された99mTcである。臨床的な用途の可能性を99mTc-EC20について試験するのであるから、99mTc-EC20の各不純物量、および、99mTc-EC20の放射化学的総合純度を定量するために、3つのTLCに基づく方法を開発した。
【0059】
第1のシステムでは、セルロースプレートを用い、脱イオン水で展開した。99mTc-EC20、99mTc-グルコヘプトン酸塩、非特異的結合性99mTc、および、99mTc過テクネチウム酸塩は、溶媒前面に移動する(Rf=1.0)が、一方、加水分解した99mTcは原点に留まる(Rf=0.0)。このセルロースプレートを、Rf=0.3(原点から1.5 cm)で切断して2片とし、各片について線量キャリブレータを用いてカウントした。加水分解した99mTcのパーセントは以下のように計算した:A=%加水分解;99mTc=(基底片のμCi/両片のμCi)x100。
【0060】
第2のシステムでは、セルロースプレートを用い、アセトンおよび0.9% NaCl(7:3, v/v)で展開した。99mTc-過テクネチウム酸塩はRf=0.9で移動するが、一方、99mTc-EC20、99mTc-グルコヘプトン酸塩、非特異的結合性99mTc、および、加水分解した99mTcは原点に留まる(Rf=0.0)。このセルロース/アセトンプレートをRf=0.6(原点から3.0 cm)で切断して2片とし、各片について線量キャリブレータを用いてカウントした。99mTc-過テクネチウム酸塩のパーセントは以下のように計算した:B=% 99mTc-過テクネチウム酸塩=(上片のμCi/両片のμCi)x100。
【0061】
最後に、第3システムでは、DEAEイオン交換プレートを0.3M Na2SO4にて展開した。99mTc-グルコヘプトン酸塩は溶媒前面に移動する(Rf=1.0)が、一方、非特異的結合99mTcはRf=0.6に移動し、かつ、99mTc-EC20、加水分解した99mTc、および、99mTc-過テクネチウム酸塩は原点近くに留まる(99mTc-EC20はRf=0.1、加水分解した99mTcはRf=0.0、99mTc-過テクネチウム酸塩はRf=0.3)。このセルロース/Na2SO4プレートを、原点から2.5 cmで切断して2片とし、各片について線量キャリブレータを用いてカウントした。99mTc-グルコヘプトン酸塩および非特異的結合99mTcのパーセントは以下のように計算した。C=%(99mTc-グルコヘプトン酸塩+非特異的結合99mTc)=(上片のμCi/両片のμCi)x100。99mTc-EC20の放射化学的総合純度は以下のように計算した:放射化学的純度=100-(A+B+C)。
【0062】
図2に示されるように、99mTc-EC20配合物のHPLC分析は、ピークAからDと表示される4種の放射化学的成分を示す。ピークAは遊離99mTcであると判定し、この副産物は、<2%で再現可能的に存在した。99mTc-グルコヘプトン酸塩とは異なるピークB(データは示さない)は、2.8分の保持時間で溶出した。この成分は、混合物の約3%を占めていたが、EC20分子において、期待されたDap-Asp-Cys機能基以外のどこか他の部位にキレートした99mTc由来のものと考えられた。ピークCおよびD(保持時間はそれぞれ4.8分と13.2分)は、この定式化された放射化学活性の大部分を占める。
【0063】
<実施例5>
===Re-EC20の合成===
52 mg(0.010 mmol)のEC20と[ReO2(en)2]Cl(52 mg, 0.14 mmol)を、それぞれ、6 mLと1 mLのアルゴン噴射リン酸緩衝液(0.05M, pH5.8)に溶解した。この2種の溶液を合わせ、アルゴン雰囲気下において煮沸水浴で2時間加熱した。この反応混合液を凍らせ、一晩凍結乾燥した。この粗精製産物をHPLC(Xterra RP18カラム、19x150mm、10 mM NH4OAc/CH3CN、流速10 mL/分、1%〜8%の勾配)にて精製した。分画を収集し、凍結乾燥し、使用するまで-20℃で保存した。
【0064】
放射性材料の分析には質量分析器が利用できなかったので、非放射活性のレニウムアナログ(Re-EC20)について分析した。レニウム、テクネチウムのいずれも、物理化学的性質が極めて類似するVIIA群の金属である。これらはまた、有機物リガンドと類似した複合体を形成する。このアナログの化学的な作用は、これまでにもしばしば非放射活性レニウムアナログに基づいて新規クラスのテクネチウム放射性薬物の構造解明を行う際に利用されている。興味あることに、Re-EC20のHPLC分析においても、99mTc-EC20のピークCおよびDによく似た、5分と14.2分それぞれで溶出する2種の大きなピークが認められた(クロマトグラムは示さず)。質量分析したところ、この二つの成分は、Re-EC20複合体に相当する異性体であることが確認された(m/z=945)。実際、これらの分子種は、図3に表すように、Dap-Asp-Cysキレート環におけるテクネチウム-酸素結合のシン立体配置、または、アンチ立体配置のいずれかを持つ2個の幾何異性体であるらしい。i)Re-EC20クロマトグラムの二つのピークは異性体複合体を表し、かつ、ii)テクネチウム複合体にも同様の異性体存在が報告されていることから、99mTc-EC20の放射クロマトグラムに見られるC成分およびD成分もまた異性体であると考えられる。
【0065】
<実施例6>
===細胞培養===
10%熱不活性化牛胎児血清(HIFCS)を含む葉酸無添加RPMI培養液(FFRPMI)を用い、5% C02/95%空気の加湿雰囲気下37℃において、抗生物質無添加で、細胞を単層として連続的に成長させた。HIFCSは、内因性葉酸の正常分を含んでおり、これにより、この細胞は、比較的に生理的関連性の高い培養液において成長を持続することができた。別に指示しない限り、細胞実験は全て、成長培養液として10%HIFCSを含むFFRPMI(FFRPMI/HIFCS)を用いて実施した。
【0066】
<実施例7>
===相対的な親和性の定量===
ウェスターホフ等(Westerhoff et al.)(Mol. Pharm., 48:459-471(1995))によって記載される方法に若干の修正を加えて、各種葉酸誘導体の相対的な親和性を定量した。簡単に言うと、FR-陽性KB細胞を、室温で3分間、0.25%トリプシン/PBSにて穏やかにトリプシン処理し、次いで、FFRPMI/HIFCSにて希釈した。5分間800xgで遠心し、PBSで1回洗浄した後、最終細胞ペレットをFFRPMI 1640(無血清)に懸濁した。葉酸含有試験産品の非存在下、および、漸増濃度の同産品の存在下において、100 nMの3H-葉酸と共に細胞を氷上で15分間インキュベートした。サンプルを5分間10,000xgで遠心し、細胞ペレットを緩衝液に懸濁し、5 mLのシンチレーション用混合液を含む個々のバイアルへ移し、次いで、その放射線をカウントした。陰性コントロール管は、FFRPMI(競合剤無添加)に溶解した3H-葉酸のみを含んでいた。陽性コントロール管は、最終濃度1 mMの葉酸を含んでおり、このサンプルで測定されたCPM(標識の非特異的結合を表す)を、全てのサンプルから差し引いた。注意すべきことは、相対的な親和性は、KB FRに結合する3H-葉酸の50%を置換するのに必要な化合物のモル比の逆数と定義し、FRに対する葉酸の相対的な親和性を1に設定した。
【0067】
細胞表面FRに対する結合に関して、EC20が、葉酸と直接に競合する能力をこの定量法によって測定した。重要なことは、1.0という親和性相対値は、試験産品リガンドは、FRに対して、葉酸と等しい親和性を持つことを意味するということである。同様に、単位(1)よりも低い数値はより弱い親和性を反映するものであるし、単位よりも高い数値はより強い親和性を反映する。
【0068】
非放射性葉酸、EC20、レニウム-EC20(異性体A、ピークC)、レニウム-EC20(異性体B、ピーク0)、または、関連する葉酸系放射性薬物(DTPA-葉酸塩)の濃度を漸増させながら、100 nM 3H-葉酸と共に培養KB細胞をインキュベートした。4℃で15分間インキュベートした後、細胞をリンスして未結合の物質を除去し、残存する細胞関連性放射線をカウントした。結合放射線の量を、未標識リガンドの濃度に対してプロットし、IC50値(3H-葉酸結合の50%を阻止するのに必要なリガンドの濃度)を推定した。図4および表2(以下)に示すように、EC20は、ヒトFRに対して、葉酸のものと比較して0.92の親和性を有すると判定された。レニウム-EC20の異性体は両方とも、親のEC20分子よりも優れているとは言わないまでも、ほぼ等しい相対親和性値を示した(Re-EC20異性体AおよびBで、それぞれ、1.42と1.37)。DTPA-葉酸塩は、111In-キレート化葉酸放射性薬物であるが、これは、葉酸レセプターに対して0.87の相対親和性を示した。上記から、各種金属キレート目的による葉酸塩の化学的な改変は、FRに対するそのビタミンの本来の親和性を妨げない。
【0069】
表2.相対的な親和性の推定−相対的な親和性(RA)を、FR-陽性KB細胞に対して結合する3H-葉酸の50%を置換するのに必要な、化合物のモル比の逆数と定義した。葉酸の相対的な親和性を1に設定した。各試験産品は3重に評価した。
【表2】
【0070】
<実施例8>
===時間に依存する細胞の取り込み===
KB細胞を、12ウェルのFalconプレートに播種し、サブ集密な単層を一晩で形成させた。1 mLの新鮮なFFRPMI/HIFCSで1回リンスした後に、各ウェルに10 nM 99mTc-EC20を含む1 mLのFFRPMI/HIFCSを与えた。37℃で一定時間の間、細胞をインキュベートし、次いで、1 mLの氷冷PBS(pH7.4)にて4回リンスした。室温で15分間、1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む0.5 mLのPBS(pH7.4)にこの細胞の単層を溶解し、次いで、パッカードのガンマカウンターにて放射線をカウントした。BioRad DCタンパク質アッセイキットを用いて、各サンプルのタンパク質を定量し、細胞タンパク質の値は、細胞当たり2.23x10-7 mgのタンパク質の変換係数を用いて細胞数に換算した。最終的に表にした値は、細胞当たりのEC20分子で表した。
【0071】
FR-陽性KB細胞への99mTc-EC20取り込みの動態を、このプロトコールを用いて定量した。図5に示すように、安定した状態の取り込みは、37℃で2時間以内に達成され、この時、約320万個のEC20分子が細胞結合性となっていた。一方、2分の1最大値細胞結合は、10 nMのこの放射性薬剤を細胞と混合して後9分後に見られた。興味あることに、1/2最大飽和点は、細胞を10倍高濃度の99mTc-EC20(100 nM、データは図示せず)とインキュベートした場合、わずか37秒以内に達せられた。
【0072】
<実施例9>
===濃度に依存する細胞の取り込み===
12ウェルのFalconプレートにKB細胞を播種し、サブ集密的単層を一晩で形成させた。1 mLの新鮮なFFRPMI/HIFCSで1回リンスした後に、各ウェルに濃度漸増の99mTc-EC20を含む1 mLのFFRPMI/HIFCSを与えた。37℃で2時間細胞をインキュベートし、次いで、1 mLの氷冷PBS(pH7.4)にて4回リンスした。室温で15分間1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む0.5 mLのPBS(pH7.4)にこの細胞単層を溶解させ、次いで、パッカードのガンマカウンターにて放射線をカウントした。タンパク質含有量は上記のように定量し、最終的に表記した値は、細胞当たりのEC20分子換算で表した。
【0073】
図6に示すように、細胞による99mTc-EC20の摂取は、細胞外濃度に依存することが判明した。使用した特定のKB細胞では、細胞当たり、最大400万分子の葉酸放射性薬剤を結合させることが求められた。このデータをスキャッチャード分析したところ、結合KDは3.2 nMであり、これは、同じ細胞に対するビタミン葉酸塩の結合について観察されたKDとほぼ等しい値であった。
【0074】
ピークBの完全な特定は達成されなかったけれども、UV吸収度分析から、これは、葉酸機能基(すなわち、吸収スペクトルは、363 nmに葉酸の指示二次吸収ピークを含んでいた)を含むことが示された。このHPLC-精製放射標識物質(ピークB物質)を収集し、培養KB細胞に加えた。図7に示すように、細胞による、99mTc-標識ピークB成分の取り込みも細胞外濃度に依存することが判明した。このデータをスキャッチャード分析したところ、結合KDは1.1 nMであった。興味あることに、ピークBの細胞結合は、過剰な葉酸の存在下において完全に阻止された。これは、この少量の処方薬副産物もまた、放射性診断目的のためにFR陽性細胞の標的化し得ることを示す。
【0075】
<実施例10>
===血液クリアランス===
用量投与前の約3週間、本研究に使用した動物を葉酸無添加食品(Harlan #TD-90261)にて維持した。この特別食品への馴化は必須である。なぜなら、通常のげっ歯類食品は大量の葉酸(kg食品当たり6 mg)を含み、マウスにおいて、高い血清葉酸値を促すからである。さらに、従来の研究によって、マウスを葉酸無添加食品で3週間維持しても、血清葉酸は、25±7 nMの安全レベルを維持することが示されており、このレベルは、ヒト血清において測定される9〜14 nMよりもやや高い。
【0076】
使用する日に99mTc-EC20溶液を調製し、最初は、ミリリットル当たり100 μgのEC20を含んでいた。この溶液をさらに無菌の生食液で希釈し、作業用ストック溶液を調製した。この産品の放射化学的純度は、TLCにより最大94%と推定した。短時間のジエチルエーテル麻酔下において、尾静脈を通じて、約0.1 mL容量に溶解させた50 μg/kgのEC20 (67 nmol/kg)の用量を各動物に静注した。注入後指定の時間(図8参照)において、各動物を、CO2窒息により安楽死させ、直ちに血液を心臓穿刺によって採取した。
【0077】
図8に示すように、Balb/cマウスにおける循環血中から、99mTc-EC20が急速に除去された。この放射性薬物の血漿半減期は最大4分と推定され、4時間後には、注入した99mTc-EC20用量の0.2%未満の残留が認められた(血液は全生体質量の5.5%を表すものと仮定する)。このデータは、葉酸結合体が、静脈内投与後速やかに循環血中から取り除かれること、かつ、注入からわずか数時間後に、貴重な組織分布データが、血液浮遊性放射線による組織の非特異的摂取に対して関連しないで、獲得し得ることを示す。
【0078】
<実施例11>
===組織分布の研究===
99mTc-EC20の、in vivoにおける腫瘍標的能力を、FR-陽性M109モデルを用いて評価した。これらの腫瘍細胞は、Balb/cマウスに対して同系であり、接種後2週間以内に皮下に固い腫瘍を再現可能で形成する。一つの追加のD-Glu残基(すなわち、Pte-D-Glu-D-Glu-βDpr-Asp-Cys)を含むことを除いては、構造的には99mTc-EC20と類似する99mTc-EC14、99mTc-EC28(ベンゾイル-D-Glu-n-Glu-βDpr-Asp-Cysからなるプテロイン酸非含有コントロール)、および、以前に報告された111In-DTPA-葉酸塩放射薬剤もこのバイオアッセイにおいて評価した。注意すべきことは、99mTc-EC28のコントロール薬剤は、細胞表面FRには結合しないことである。なぜなら、この薬剤は、必須のプテリジン環状機能基を欠失しているからである。
【0079】
4〜5週齢マウス(Balb/c系統)を、Harlan Sprague Dawley社(インディアナポリス、インディアナ州)から購入し、実験前の合計3週間、葉酸無添加食品にて維持した。同系の、FR-陽性M109腫瘍細胞(動物当たり1x106個)を、実験の2週間前に、右腋窩の皮下に接種した。マウスは全て雌であり、腫瘍重量は、実験当日54.2±29.8 mgであった。ミリリットル当たり100 μgの薬剤を含む99mTc-EC20のストック液を使用当日に調製した。その放射化学的純度は>96%であった。追加の2種の99mTc-キレート剤、99mTc-EC14および99mTc-EC28、並びに、111In-DTPA-葉酸塩も放射化学純度が>90%となるように調製した。溶液は全て、生食液のみ、または、100当量の葉酸を含む生食液(競合のため)にて、最終放射薬剤濃度が10 μmol/mLとなるように希釈した。
【0080】
約100 μL容量に溶解させた40 μmol/kgの試験産品の用量を、短時間のジエチルエーテル麻酔下において、側方の尾静脈を通じて動物に静注した。注入4時間後に、CO2窒息により動物を屠殺し、解剖した。選択した組織を取り出し、重さを量り、カウントして99mTcの分布を調べた。CPM値を減衰補正し、組織の湿重量グラム当たりの注入用量%として結果を表にまとめた。
【0081】
表3(以下)に示すように、3つの「葉酸」含有放射薬剤、99mTc-EC14、99mTc-EC20、および、111In-DTPA-葉酸は、主に、FR-陽性腫瘍および腎臓に蓄積したが、腎臓の方が、腫瘍よりも、組織グラム当たりの注入用量%(%ID/g)において、高いの蓄積を示した。興味あることに、111In-DTPA-葉酸塩および99mTc-EC20の正味の腫瘍蓄積はほぼ同じであるが(それぞれ、19 %ID/gと17 %ID/g)、一方、99mTc-EC14の腫瘍による摂取量は、10 %ID/gをやや下回った。それにもかかわらず、三つの薬剤は全てが、高い腫瘍対血液比(>30対1)を示した。
【0082】
表3. 皮下にM109腫瘍を有するBalb/cマウスにおける葉酸放射薬剤の体内分布
【表3】
*示した値は、3匹の動物から得たデータの平均値±s.d.を表す。
【0083】
二つの別々の方法によって、葉酸塩特異的な標的化をさらに証明した。まず、FR-陽性腫瘍および腎臓における99mTc-EC14、99mTc-EC20、および、111In-DTPA-葉酸塩の蓄積は、これらの薬剤を、葉酸の100倍過剰下に共同投与した場合に効果的に阻止された(>94%)。第二に、99mTc-EC28コントロール薬剤は、腎臓および腫瘍において目立つほど蓄積しなかった。この二つの所見は、元の「葉酸様」(またはプテロイン酸)機能基が、FR-陽性組織へ、これら放射性薬剤が標的摂取され、保持されるために必要であることを示す。
【0084】
<実施例12>
===ガンマシンチグラフィー===
M109腫瘍細胞(動物当たり1x106個)を、実験の2週間前に、Balb/cマウスの右腋窩の皮下に接種した。短時間のジエチルエーテル麻酔下において、100 μL容量に溶解させた約50 μmol/kgの試験産品の用量を、尾静脈を通じて動物に静注した。注射後4時間、CO2窒息により動物を屠殺し、次いで、画像獲得面の上に置いた。Technicare Omega 500 Sigma 410放射性同位元素ガンマカメラを用いて、全身画像入手を、1分当たり50-75,000のカウント率で1分間行った。Medasys Pinnacleソフトウェア搭載のMedasys MS-DOS-準拠コンピューターを用いて、全てのデータを分析した。
【0085】
FR-陽性M109腫瘍および腎臓による99mTc-EC20の摂取を、このガンマシンチグラフィープロトコールによって証明した。図9に示すように、前述のように99mTc-EC20を注入したマウスの腹部画像は、ガンマ放射が、2個の腎臓(K)とM109腫瘍塊(T;肩の領域)に対して局在することを示す。その他の体組織には、目だった放射線トレーサーは観察されなかった。111In-DTPA-葉酸放射性薬剤についても同様の画像プロフィールが報告されている。
【0086】
<実施例13>
===尿排泄および代謝===
99mTc-EC20のHPLCによる尿の特性プロフィールを、Balb/cマウスを用いて得た。側方の尾静脈を介して1 mCi(6.7 nmol)の99mTc-EC20をマウス(それぞれ最大20g)に注入した。1、4または6時間後、CO2窒息により2匹のマウスの群を安楽死させ、尿を採取した。GV13 Millexフィルターによって濾過した後、Nova-Pak C18 3.9x150 mmカラムと放射化学検出器を備えたHPLCを用いて、放射化学的な特性を評価した。0.1%TFAを含む20%メタノールにより1 mL/分の流速にて、この系を定組成で溶出した。
【0087】
111In-DTPA-葉酸の一次排出ルートは尿によることが従来から確定されていた。図2に示したHPLCプロフィールと同様に、99mTc−EC20標準および尿サンプルは両方とも4つの放射線ピークを示した。表4(以下)に示すように、標準の放射化学的純度(シンとアンチ99mTc-EC20に恐らく対応すると思われるピークCとDの合計)は、本実験の6時間の持続時間の間最大93%で不変であった。標準における遊離99mTc(ピークA)の量は最大2%であった。注意すべきことは、この放射化学的プロフィールにおけるピークBは、通常のものでない、比較的不安定な位置において99mTcとキレートするEC20と考えられているが、しかしながら、この分画において測定された放射線は、99mTc-EC20に対する総合放射化学純度には含まれていなかったことである。このデータをまとめると、本配合物は、この6時間の試験の間、生食液において安定性を保つことを示す。
【0088】
Balb/cマウスに注入してから1時間後および4時間後では、マウス尿中の99mTc-EC20の放射化学的特性は変わらなかった。しかし、注入6時間後の尿に見られる放射線は、HPLCで正確に定量するには低すぎてできなかった。尿から回収された放射線分子種における親薬剤の割合は、定量できた4時間を通じて約90%と比較的定常であった。この値は、標準の93%純度に極めて近似する。これは、99mTc-EC20は、改変されない形態で主に尿中に排泄されることを示す。
【0089】
表4. Balb/cマウスにおける99mTc-EC20の排泄および代謝。1 mCi(6.7 nmol)の99mTc-EC20を側方の尾静脈を介して、マウスに注入した。表示の時間に、2匹のマウスの群を安楽死させ、尿を採取した。放射化学的特性をHPLCで定量した。ピークCおよびD(syn異性体とanti異性体)の面積パーセント合計を、元の99mTc-EC20の総合純度を計算するのに用いた。
【表4】
【0090】
<実施例14>
===血清タンパク質の結合===
新鮮なラット血清、および、市販のヒト男性血清(AB型のドナー、Sigma Chemical社)を用いて、in vitroにおける99mTc-EC20の血清タンパク質に対する結合を評価した。室温にて、1 mLの血清と99mTc-EC20とを混合してから1分後に、清潔なAmicon Centrifree(登録商標)限外濾過装置(30,000 NMWL)に0.3 mLの血清液を3連で移した。血清溶液を負荷した遠心から1分以内に、この装置を20℃で20分間1000xgにて遠心した。元の溶液、および、各装置からのろ液の50 μLのサンプルを清潔なチューブに移し、自動ガンマカウンターにてカウントした。1 mLの正常生食液と混合した99mTc-EC20からなるコントロール溶液を同様にして限外濾過した。3つのサンプルのそれぞれについて遊離99mTcのパーセントを計算した。
【0091】
99mTc-EC20は、限外濾過装置に対して少量の非特異的結合を示した(〜5%)が、その約70%は、ラットまたはヒト血清の>30 kDaの血清タンパク質分画と主に結合していることが判明した(それぞれ69%と72%)。重要なことは、99mTc-EC20は、FR-陽性組織の内部に効果的に、かつ、選択的に蓄積する(表2および図8を参照のこと)ので、血清タンパク質に対するその見かけの親和性は、in vivoにおいて、この放射性トレーサーのFRに対する標的性に影響を及ぼさない。
【0092】
<実施例15>
===組織分布の研究===
本実施例で用いたプロトコールは、実施例11で記載したものと同様である。99mTc-EC20のin vivoにおける腫瘍に対する標的能力をさらに、FR-陽性M109、および、FR-陰性4T1腫瘍モデルを用いて評価した。6週齢の雌Balb/cマウス(n=3/投与群)を、Harlan Sprague Dawley社(インディアナポリス、インディアナ州)から購入し、腫瘍細胞接種前の合計7日間、葉酸無添加食品(Harlan TEKLAD)にて維持した。
【0093】
同系の、FR-陽性M109腫瘍細胞(動物当たり2x106 P0)、または、FR-陰性4T1細胞(動物当たり5x105 P0)を、1%同系マウス血清を含む100 μlの葉酸無添加RPMI-1640に溶解させて皮下に接種した。前述のように、ミリリットル当たり100 μgの薬剤を含む99mTc-EC20のストック液を使用当日に調製した。
【0094】
腫瘍細胞接種16日後に、M109腫瘍を有する動物に対しては500または1800 nmol/kgのEC20を、4T1腫瘍を有する動物に対しては500 nmol/kgのEC20を静注で投与した(投与群当たり3匹)。注入は全て100 μl容量で行った。注入4時間後、CO2窒息により動物を屠殺し、血液を心臓穿刺にて採取し、動物を解剖した。選択した組織(心臓、両肺、肝臓、脾臓、腎臓、小腸、胃、筋肉、および、腫瘍)を取り出し、重さを量り、自動ガンマカウンターでカウントして99mTcの分布を調べた。注入用量%で表した(%ID/g)湿重量組織の放射性薬剤摂取量を、注入製剤の希釈液から調製した標準を参照して計算した。
【0095】
図11に示すように、葉酸レセプターに特異的な標的性を証明した。なぜなら、99mTc-EC20は、主に、FR-陽性のM109腫瘍と腎臓に蓄積したが、FR-陰性4T1腫瘍には蓄積しなかったからである。FR-陰性4T1腫瘍における摂取は、FR-陽性M109腫瘍よりも7.6倍低かった。正常組織における99mTc-EC20の摂取は、予期した通り腎臓を除いては、低かった。これらの結果は、99mTc-EC20の標的がFR-特異的であることを示す。
【0096】
<実施例16>
===組織分布の研究===
この実施例で用いたプロトコールは、実施例11に記載したものと同様である。99mTc-EC11(ペプチド-A1)、99mTc-EC13(ペプチド-A3)、および、99mTc-EC14(ペプチド-A2)のin vivoにおける腫瘍に対する標的能力を、FR-陽性KB腫瘍モデルを用いて評価した。4週齢の雄ヌードマウス(n=4/群)を、腫瘍細胞接種前の合計10日間、葉酸無添加食品にて維持した。
【0097】
FR-陽性KB腫瘍細胞(動物当たり0.25x106個)を、皮下の関節包内に接種した。腫瘍細胞接種14日後、99mTc-EC11、99mTc-EC13、または、99mTc-EC14を、以下の表5に示す結合体の用量で(約12 μg/kg)動物(n=4/群)に静注で投与した。99mTc-EC11、99mTc-EC13、および、99mTc-EC14のストック液は、前述のように、使用の当日に調製した。約20倍過剰量の遊離葉酸(約200 μg/kg)をコントロールマウスに同時投与した(n=4/群)。注入4時間後、CO2窒息により動物を屠殺し、血液を心臓穿刺にて採取し、動物を解剖した。選択した組織を取り出し、重さを量り、自動ガンマカウンターでカウントして99mTcの分布を調べた。注入用量%で表した(%ID/g)湿重量組織の放射性薬剤摂取量を、注入製剤の希釈液から調製した標準を参照して計算した。
【0098】
表5に示すように、葉酸レセプターに特異的な標的性を証明した。なぜなら、99mTc-EC11、99mTc-EC13、および、99mTc-EC14は、主に、FR-陽性のKB腫瘍と腎臓に蓄積したからである。この蓄積は、遊離葉酸の同時投与によって阻止された。これらの結果は、99mTc-EC11、99mTc-EC13、および、99mTc-EC14は、in vivoにおいて、FR特異的に腫瘍に対して標的化し得ることを示す。
【0099】
同様の結果(以下のの表6を参照のこと)が、99mTc-EC53(EC20の、全てがDのエナンチオマー)が、以下の点を除いて同様のプロトコールを用いて得られた。すなわち、99mTc-EC53の用量は約50 μg/kgとし、約100倍過剰な遊離葉酸と、冷却EC53を用いた点である。表6に示すように、葉酸レセプターに特異的な標的性を証明した。なぜなら、99mTc-EC53は、主に、FR-陽性のKB腫瘍と腎臓に蓄積したからである。この蓄積は、遊離葉酸の同時投与によって阻止された。これらの結果は、99mTc-EC53は、in vivoにおいて、FR特異的に腫瘍に対して標的化し得ることを示す。
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、造影剤として臨床開発が期待されるビタミンと放射性各種キレート剤の結合体を提供する。この造影剤の例としては、新規に設計され、合成され、かつ、放射化学的にその性質が明らかにされた葉酸系放射性キレート剤99mTc-EC20である。
【0103】
99mTc-EC20は、D-γ-Gluペプチド結合を含む、葉酸塩の低分子量ペプチド誘導体であるが(図1を参照のこと)、効率的な固相合成過程を用いて合成した。その天然型においては、葉酸塩(またはプテロイル-グルタミン酸塩)は、L型の中に単一のグルタミル残基を持つ。しかし、D-Gluエナンチオマー残基はEC20分子に組み込まれた。注意すべきことは、EC20と同様、葉酸において、L-Glu残基をD-Glu残基で置換しても、それは、葉酸の、FRに対する高親和性結合能力を変えないということである。
【0104】
EC20は、α-D-グルコヘプトン酸塩および塩化スズ(II)の存在下では、効率的に99mTcをキレートすることが判明した。放射化学的なHPLCで分析する場合、得られた99mTc-EC20配合物の>95%は、syn異性体とanti異性体の混合物からなっていたが、それぞれの異性体は、等しく高い親和性でFRに対して結合することが可能であった(図3を参照のこと)。配合物中の99mTcの約3%が、予期されたDap-Asp-Cys機能基ではなく、どこか他の部位においてEC20分子に対してキレート化していた。この成分は、その特徴を明らかにできるほど十分な量単離されなかったが、FRに対して高い親和性を持って結合することが示された(図6を参照のこと)。最後に、99mTc-EC20配合物の放射活性の残りの2%は、遊離99mTcによるものとされた。
【0105】
99mTc-EC20は、FR-陽性細胞に対して、時間および濃度依存性の結合を示した。99mTc-EC20は、血液から急速に除去された(t1/2は最大4分)。これは、診断的な造影剤にとっては重要である。また、99mTc-EC20は、FR-陽性の腫瘍内に大量にかつ選択的に蓄積した。
【0106】
二つの別々の方法を用いて、同様のFR標的造影剤(111In-DTPA-葉酸)と99mTc-EC20の性能とを直接比較した。まず、この葉酸系放射性薬剤は両方とも、KBのFRへの結合において等しく葉酸と競合することを判明した(図3および表1を参照のこと)。第二に、腫瘍を有するマウスにおいて、それぞれの薬剤の体内分布はほとんど同じであった(表2を参照のこと)。99mTc-EC20については、腫瘍による高い摂取、および、腫瘍対血液比を測定した。以上を総合すると、これらの結果は、臨床において患者に投与された場合、111In-DTPA-葉酸塩様、99mTc-EC20も、FR-陽性腫瘍に効果的に局在することを示唆する。
【0107】
これまでにもいくつかの葉酸系99mTc結合体が記載されている。99mTc-12-アミノ-3,3,9,9-テトラメチル-5-オキサ-4,8ジアザ-2,10-ドデカンジオンジオキシム(OXA)葉酸結合体については、限られたものではあるが、体内分布に関するデータが利用可能であり、KB腫瘍におけるトレーサーの摂取は中等度(最大7%ID/g)であると報告された。乳腺腫瘍を有するラットにおける99mTc-エチレンジシステイン-葉酸結合体の体内分布を扱う研究も報告されている。この研究のラットには、葉酸が豊富な食品を与えた。従って、低い腫瘍摂取および低い腫瘍対血液比が得られた。最後に、99mTc-6-ヒドラジノニコチンアミドヒドラジド(HYNIC)葉酸誘導体(HYNIC-葉酸塩)は、24JK-FBP腫瘍の中に大量に蓄積することが示された。興味あることに、99mTc-EC20は、M109腫瘍の中に、HYNIC-葉酸塩が241K-FBP腫瘍中に蓄積したのとほぼ同じレベルで蓄積した(最大17%ID/g)(表2)。この二つの薬剤はさらに、静注4時間後に、ほぼ50:1の腫瘍対血液比を示した。
【0108】
要約すると、効率的に99mTcをキレートするために、葉酸塩の新規ペプチド誘導体を作製した。この新規化合物99mTc-EC20は、in vitroでもin vivoでも、FR-陽性の腫瘍細胞に活発に結合する。EC20は、葉酸レセプター(FR)-陽性の培養腫瘍細胞にも、時間及び濃度依存的に、極めて高い親和性で結合するのが認められた(KD最大3 nM)。in vitroにおける相対的な親和性アッセイを用いると、EC20はまた、単独でも、あるいは、配合された金属キレート剤としても、細胞結合に関して、3H-葉酸と効果的に競合することが判明した。Balb/cマウスに静注で投与後、99mTc-EC20は循環血中から急速に除去され(血漿t1/2は最大4分)、非代謝形態にて尿中に排泄された。M109腫瘍を有するBalb/cマウスで実施したガンマシンチグラフィーおよび体内分布定量研究のデータから、99mTc-EC20は主にFR-陽性腫瘍および腎臓組織に蓄積することが確かめられた。これらの結果は、99mTc-EC20は、FR-陽性腫瘍の検出のために、効果的で、非侵襲的な放射性診断用造影剤となることを示す。EC11、EC13、EC14、および、EC53を含む、その他のEC20-関連の造影剤も効果的であることが示された。
【0109】
毎年、米国では最大26000人の女性が卵巣癌と診断されるが、5年以上生存する女性は、それらの50%未満である。この低い生存率の一つの理由は、この癌の形態の診断が困難であるためである。未特定の腹部の塊を破壊する可能性、および、腹腔全体に癌を拡散させる可能性を恐れるために、細い針によるバイオプシーを実施しないことが多い。むしろ、疑わしい卵巣固塊の診断および段階判定は、代表的に、腹腔鏡術によって実施されるが、これは、侵襲的で、かつ、高価な手段である。99mTc-EC20は、(数ある中でも)卵巣癌に大量に存在するFRに堅く結合するので、この放射性薬剤は、悪性の卵巣癌の早期診断にとって、安価で非侵襲的であるが、信頼できる方法を提供する。重要なことは、99mTc-EC20はまた、再発する疾患または残留する疾患において、より確定的で、より早期の診断を可能にすることにより、臨床上の確定診断の過程を導くことにも役立ち得る。
【技術分野】
【0001】
<発明の範囲>
本発明は、造影剤を動物の細胞に標的化するための化合物および方法に関する。特に、放射性核種に基づく造影剤は、ビタミンに対するレセプターを有する細胞に対して、このようなビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログを、造影剤の標的リガンドとして用いることによって標的化される。
【背景技術】
【0002】
<本発明の背景および要旨>
膜貫通輸送は、重要な細胞機能である。従来から、実地の業務者は、薬物療法や遺伝子導入を含めた医科学および生物科学の多くの領域において、膜貫通輸送の重要性を認識していたので、この過程の理解と応用には多大な研究努力が向けられている。従って、例えば、核酸の膜貫通輸送が、タンパク質キャリア、抗体キャリア、リポソーム輸送システム、電気穿孔、直接注入、細胞融合、ウイルスキャリア、浸透圧衝撃、および、リン酸カルシウムを媒介した形質転換を用いて試みられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの技術の多くのものが、膜貫通輸送が起こる細胞の種類、および、外来性分子の膜貫通輸送の達成のために要求される条件の両方の点で限定される。さらに、これらの技術の多くが、生物活性を失うことなく細胞膜を横切って輸送し得る外来分子の種類およびサイズの点でも限定される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
広い適応性を有する外来分子の膜貫通輸送のための一つのメカニズムとして、レセプターが媒介するエンドサイトーシスがある。好都合なことに、レセプターが媒介するエンドサイトーシスは、in vivoでも、in vitroでも起こる。レセプターが媒介するエンドサイトーシスは、膜のレセプターに結合したリガンドが、膜の陥入によって、膜で境界した領域内へ移動することを含む。この過程は、レセプターに特異的なリガンドがレセプターに結合することによって開始されるかまたは活性化される。これまでにも、多くのレセプターが媒介するエンドサイトーシスシステムの特徴が明らかにされている。例えば、ガラクトース、マンノース、マンノース6-リン酸、トランスフェリン、アシアログリコプロテイン、葉酸塩、トランスコバラミン(ビタミンB12)、α-2マクログロブリン、インスリン、および、上皮細胞増殖因子(EGF)などのほかのペプチド増殖因子の細胞内取り込みを生じさせるものが挙げられる。
【0005】
レセプターが媒介するエンドサイトーシスは、タンパク質や核酸のような外来分子を細胞に送達するために利用されてきた。一般に、特異的なリガンドは、目的の外来分子に対して共有結合、イオン結合または水素結合によって化学的に結合して結合体分子を形成するが、その結合体分子においてもなお標的レセプターによって認識される部分(リガンド部分)を有する結合体分子を形成する。この技術を用いて、光毒性タンパク質プソラレンがインスリンと結合し、インスリンレセプターエンドサイトーシス経路を通じて細胞内に取り込まれ(ガスパロ(Gasparro), Biochem. Biophys. Res. Comm. 141(2), pp. 502-509、1986年12月15日)、ガラクトース末端アシアログリコプロテインに対する肝細胞の特異的レセプターが、プラスミドに対して非共有的に複合化したアシアロオロソムコイド-ポリ-L-リシンの肝細胞に特異的な膜貫通輸送のために利用され(ウー・ジーワイ(Wu, G.Y.), J. Biol. Chem., 262(10), pp. 4429-4432, 1987年)、EGFに対する細胞レセプターが、EGFに共有結合したポリヌクレオチドを細胞内部に輸送するのに利用され(マイヤース(Myers)、欧州特許出願第86810614.7号、1988年6月6日発行)、有機金属性ビタミンB12-内部因子複合体に対する小腸内細胞レセプターが、薬剤、ホルモン、生物活性ペプチドおよびビタミンB12と複合体形成された免疫原物質を、経口投与後に循環系への輸送を仲介するのに使用され(ラッセルジョーンズ等(Russel-Jones et al.), 欧州特許出願第86307849.9、1987年4月29日発行)、マンノース-6-リン酸レセプターが、低密度リポ蛋白を細胞に送達するのに用いられ(マレー・ジージェイおよびネビル・ディーエム(Murray, G.J. and Neville, D.M., Jr.), J. Biol. Chem. Vol. 255(24), pp. 1194-11948, 1980年)、コレラ毒素結合性サブユニットレセプターが、インスリンレセプターを欠損する細胞中に、インスリンを送達するのに用いられ(ロスおよびマドックス(Roth and Maddox), J. Cell. Phys., Vol. 115, p.151, 1983年)、ならびに、ヒト絨毛膜ゴナドトロピンレセプター(HCG)が、適当なHCGレセプターを持つ細胞中に、HCGに結合するリシンa-鎖を送達するのに用いられた(エルトマンおよびヒース(Oeltmann and Heath), J. Biol. Chem. Vol. 254, p.1028(1979))。
【0006】
一つの実施形態において、本発明は、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログに対するレセプターを持つ膜を横断する、放射性核種に基づく造影剤の膜貫通輸送を含む。ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体もしくはアナログに対するレセプターを担う細胞膜は、ビタミンおよび造影剤結合体と、その結合体の膜貫通性輸送を開始し、実行可能にさせるほど十分な時間接触させられ、かつ、動物におけるこのビタミン-造影剤結合体の生体分布はモニターされる。別の実施形態において、ビタミン/ビタミン誘導体またはアナログ標的部分は、単に、細胞表面上のビタミンレセプターに結合して、細胞表面上にキレートした放射性核種を濃縮する。
【0007】
本発明は、(1)ビタミンレセプターの局在、および、(2)関連レセプターが媒介するエンドサイトーシス過程を利用する。例えば、本発明は、腫瘍細胞または他のビタミンレセプターを過剰に発現する細胞タイプにおける、ビタミンレセプター、輸送体、または、ビタミンまたはその誘導体もしくはそのアナログに特異的に結合する他の表在性蛋白の、単一の発現、過剰な発現、または、選択的な発現を利用する。従って、本発明は、ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体またはアナログに対するレセプターを過剰に発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)または他の細胞タイプを、これらの細胞をビタミン-造影剤結合体と接触させた場合に起こるレセプターが媒介するエンドサイトーシス過程を利用することによって、そのような細胞の検出に用いられ得る。
【0008】
ビタミンレセプター(例えば、高親和性の葉酸レセプター(FR))は、例えば、腫瘍細胞において高レベルで発現する。卵巣、乳腺、結腸、肺、鼻、喉頭、および、脳の上皮癌は、皆高レベルのFRを発現することが報告されている。実際、ヒト卵巣腫瘍全体の90%以上が、このレセプターを大量に発現することが知られている。従って、本発明は、種々の腫瘍タイプ、および、病的状態に関係する他の細胞タイプの画像診断に対して使用され得る。
【0009】
リガンドと複合した放射性核種は、従来から、画像診断の目的のために非侵襲的なプローブとして用いられている。例えば、血管作動性腸管ペプチド、ソマトスタチンアナログ、および、モノクロナール抗体が、細胞(例えば、腫瘍細胞)に放射性核種を局在化するリガンドとして使用されている。モノクロナール抗体、および、その様々な断片は、初めは大きな関心を集めた。なぜなら、モノクロナール抗体を標的リガンドとして利用するならば、正確な腫瘍特異的標的が実現されると考えられたからである。残念ながら、この方法には問題が多い。なぜなら、i)抗体は、サイズが大きいために循環時間が長く、これは、画像目的には不都合であり、ii)抗体の生産は高価であり、iii)抗体は免疫原性の可能性があり、従って、複数回の投与を用いる場合には、ヒト化しなければならなく、そして、iv)抗体結合放射性核種の腫瘍組織対非標的組織比(T/NT)は至適以下であるなどである。従って、最近では、このような限界を持たない、より小さな腫瘍特異的リガンドの使用に焦点が向けられている。
【0010】
従来から、葉酸のようなビタミンは、造影剤を腫瘍細胞に標的化するのに使用されており、その小さいサイズのために有利である。in vivoにおいて腫瘍画像化用として最初に記述された葉酸系標的複合体は、125Iを含むヒスタミン誘導体であった。この複合体は、125I放射性核種成分が長命であるために、臨床的な関連候補とは見なされなかった。次いで、腫瘍画像化のためにデフェロキサミン-葉酸結合体が開発された(デフェロキサミンは、67Ga、すなわち、78時間の半減期を持つガンマ線放射核種をキレート化する)。この結合体を用いて肝胆汁系クリアランスを記録したところ、下腹部の局在を正確に画像化する点で問題が予想されたために、前臨床試験が中止された。しかし、この障害は、デフェロキサミンキレート剤を、111In(68時間の半減期)の効率的なキレート剤であるジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)に置き換えることによって克服された。111In-DTPA-葉酸塩の除去の一次ルートは、腎臓を介するものであることが確かめられた。
【0011】
比較的最近は、画像診断の好ましい放射性核種として、99mTcが採用されている。その理由は、i)この放射性核種は、市販の99Mo−99mTcジェネレータから簡単に入手され、ii)大量の99mTcを生産するコストは、111Inを生産するコストに比べて低く、そして、iii)99mTcは遥かに短い半減期(6時間)しか持たないので、放射性核種のより高い用量の投与が可能となり、従って、重要な臓器を有害なほどに放射線暴露する危険を冒すことなく、より高解像度の画像を生成するからである。
【0012】
これまで葉酸系99mTc結合体がいくつか開発されている。例えば、99mTc-6-ヒドラジノニコチンアミドヒドラジドの葉酸結合体(HYNIC、グオ等(Guo et al.), J. Nucl. Med. 40(9):1563-1569(1999))、99mTc-12-アミノ-3,3,9,9-テトラメチル-5-オキサ-4,8ジアザ-2,10-ドデカンジオンジオキシム(OXA)(リンダー等(Linder et al.), Soc. Nucl. Med. Proc. 47th Annual Meeting, 2000, 41(5):119P)、99mTc-エチレンジシステイン(イルガン等(Ilgan et al.), Cancer Biother. & Radiopharm., 13(6):427-435(1988))、および、99mTc-DTPA-葉酸塩(マシアス等(Mathias, et al.), Bioconjug. Chem., 11(2):253-257(2000))は、in vivoにおける腫瘍吸収特性において有望であることを示した。しかし、腎臓を通じて排除され、最適の腫瘍対非標的組織比(T/NT)を示す、代替的なビタミン系99mTc結合体、または、他の放射性核種を用いたビタミン系結合体の必要性がある。このようなビタミン系結合体が得られれば、腫瘍造影剤としての臨床開発や、他の病的状態の診断のための臨床開発に適するであろう。
【0013】
一つの実施形態において、
下式
の化合物であって、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であり、かつ、kは、1または0であることを特徴とする化合物を提供する。このビタミンは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質である。
【0014】
別の実施形態において、
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であることを特徴とする画像診断用組成物を提供する。このビタミンは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質である。
【0015】
さらに別の実施形態において、動物における細胞集団を画像化する方法であって、この細胞がこの細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられる方法を提供する。この方法は、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を、この動物に投与する工程と、この動物における該化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、Vは、この細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、レセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0である。
【0016】
別の実施形態において、
下式
の化合物であって、Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であり、かつ、kは、1または0である、ことを特徴とする化合物を提供する。
【0017】
さらに別の実施形態において、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0である組成物を提供する。
【0018】
さらに別の実施形態において、この細胞がこの細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられる、動物における細胞集団を画像化する方法を提供する。この方法は、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を、この動物に投与する工程と、動物におけるこの化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、Vは、この細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、レセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0であることを特徴とする方法を提供する。
【0019】
任意のこれらの実施形態において、化合物の中のVは、例えば、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12およびビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、その誘導体もしくはそのアナログであり得る。任意のこれらの実施形態において、化合物中の放射性核種は、例えば、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明において造影剤として使用される例示の化合物EC20の構造である。
【図2】図2は、99mTc-EC20のHPLCラジオクロマトグラムである。99mTc-EC20のサンプルを、20%メタノールと0.2%トリフルオロ酢酸を含む水性移動相を流速1 mL/分で用い、イソクラティック条件下においてWaters Nova-Pak C18(3.9x150 mm)カラム上で溶出した。このHPLC分析は、UV検出器(280 nm)とBioscan FC-3200放射線検出器の両方を用いてモニターした。ピークAは遊離99mTc、ピークBは未知の構造を持つ葉酸塩含有キレート剤、ピークCおよびDは、EC20のDap-Asp-Cysキレート環のテクネチウム酸素結合のsyn異性体またはanti異性体のいずれかを有する異性体である。
【図3】Re-EC20および99mTc-EC20異性体(金属オキソ結合のsyn異性体またはanti異性体)の構造。
【図4】種々の葉酸塩含有競合物質を用いた、3H-葉酸のKB細胞に対する結合の阻止。濃度を漸増させた下記の競合物質の存在下に、あるいは、非存在下において、100 nM 3H-葉酸と共に、KB細胞を氷上で15分インキュベートした。競合物質は、(●)葉酸、(■)EC20、(▲)EC20:Re異性体A、(▼)EC20:Re異性体B、(□)DTPA-葉酸。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3)。
【図5】99mTc-EC20の時間依存性結合。37℃において時間を延長しながら、10 nMの99mTc-EC20と共にKB細胞をインキュベートした。複数回洗浄後、細胞を回収し、結合した放射線についてカウントした。誤差バーは1標準偏差(n=3)を示す。
【図6】99mTc-EC20の濃度依存性結合。37℃で2時間、濃度を漸増させた99mTc-EC20の存在下において、KB細胞をインキュベートした。複数回洗浄後、細胞を回収し、結合した放射線についてカウントした。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3)。
【図7】99mTc-EC20の「ピークB」の濃度依存性結合。37℃で2時間、濃度を漸増させた「ピークB」の存在下において、KB細胞をインキュベートした。ピークBは、99mTc-EC20配合物からクロマトグラフを用いて分離した。複数回洗浄後、細胞を回収し、結合した放射線についてカウントした。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3)。(●)ピークB、(○)ピークBプラス1 mM葉酸。
【図8】Balb/cマウスにおける99mTc-EC20の血液クリアランス。約0.1 mL容量に溶解させた50 μg/kgのEC20(67 nmol/kg)の用量を、短時間のジエチルエーテル麻酔下において各動物に静注した。注入後指定の時間に、CO2窒息により各動物を安楽死させ、血液を採取して、結合した放射線をカウントした。誤差バーは1標準偏差を示す(n=3匹)。
【図9】全身ガンマ線像(腹側の図)。皮下に葉酸レセプター陽性M109腫瘍を有するBalb/cマウスに対して、99mTc-EC20を静注し、4時間後の画像を入手した。腎臓(K)と腫瘍(T)のみが、この放射線トレーサーの著明な蓄積を示した。
【図10】EC11, EC13, EC14, EC15, EC19, EC20, EC31および EC53の構造。
【図11】FR-陽性M109腫瘍、および、FR-陰性4T1腫瘍を有するBalb/cマウスにおける99mTc-EC20の組織分布。
【図12】EC11のHPLC分析。
【図13】EC11の質量分析。
【図14】EC11のNMR分析。
【図15】EC13のHPLC分析。
【図16】EC14のNMR分析。
【図17】EC15の質量分析。
【図18】EC19のHPLC分析。
【図19】EC19の質量分析。
【図20】EC31のHPLC分析。
【図21】EC53のHPLC分析。
【図22】EC53の質量分析。
【図23】EC53の質量分析。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に従って、ビタミンレセプターを単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択的に発現する細胞集団に、放射性核種系造影剤を標的化するための化合物および方法を提供する。従って、ビタミン、または、レセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログを、造影剤の標的リガンドとして使用する。このビタミン-造影剤結合体は、放射性核種を細胞に向けて標的し、細胞集団(例えば、腫瘍細胞集団)においてその放射性核種を濃縮させて、画像診断に使用することが可能である。
【0022】
本発明は、そのような方法において使用される、
下式
の化合物を含有する画像診断用組成物を提供する。この化合物において、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、かつ、nは1または0である。このビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質である。
【0023】
本発明はまた、
下式
の化合物であって、Vは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは1または0であり、かつ、kは1または0である、化合物も提供する。
【0024】
この化合物の例は、図1に描かれるEC20という化合物である。本発明に従って使用される他の化合物の例は、EC11、EC13、EC14、EC15、EC19、EC31およびEC53と表示される化合物である(図10を参照のこと)。このビタミン部分(例えば、EC20の葉酸部分)は、細胞FRに対して高い親和性を有する結合を提供する。これらの化合物はまた、両機能性ペプチド系キレート剤を含む。このキレート剤は、放射性核種(例えば、99mTc)のキレート化のための部位を与える(図1を参照のこと)。この化合物は、ビタミン部分が、それを通じてキレート部分に共有結合するリンカーを、必要に応じて含み得る。
【0025】
本発明に従って、この化合物のビタミン部分は、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質となるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログである。このビタミンは、必要に応じて、化合物のキレート部分にリンカー(L)を介して結合される。このキレート部分は、第3のアミノ酸残基を介してシステイン基に結合されるα,β-ジアミノプロピオン酸部分を含有する。化合物のキレート部分は、放射性核種陽イオン(M)を結合するように適応される(k=1の場合)。
【0026】
本発明に従って、放射性核種を結合させた化合物は、「ビタミン-造影剤結合体」という。
【0027】
リンカーの構造は、存在する場合、本発明にとって決定的に重要というわけではない。従って、例えば、リンカーは、任意の生体適合性を有する2価のリンカーであり得る。代表的に、このリンカーは、約1〜約30個の炭素原子を含み、さらに代表的には約2〜20個の炭素原子を含む。これより低い分子量のリンカー(すなわち、約30〜約300の分子量を有するもの)であっても通常に使用される。さらに、ビタミン部分は、ビタミンであっても、その誘導体もしくはそのアナログであってもよい。例えば、葉酸は、プテロイン酸に結合する、一つのL型のグルタミン酸を含む。図1に示すように、EC20は、キレート部分に結合する葉酸アナログを含む。なぜなら、EC20は、D型のグルタミン酸を含むからである。EC11およびEC14は二つのグルタミン酸残基を含み、従って、これらの化合物も例えば葉酸の誘導体と考えられ得る(図10)。
【0028】
レセプターが媒介するエンドサイトーシスを誘発すると考えられて、本明細書に開示される方法に従って使用が可能なビタミン類には、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、リボフラビン、チアミン、ビオチン、ビタミンB12ならびに脂溶性ビタミンA、脂溶性ビタミンD、脂溶性ビタミンEおよび脂溶性ビタミンKがある。これらのビタミン、ならびに、そのアナログおよびその誘導体は、造影剤と結合し、本発明に従って使用されるビタミン-キレート剤結合体を形成し得る。好ましいビタミン部分としては、葉酸、ビオチン、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、ならびに、これらビタミン分子のアナログおよび誘導体、ならびに、他のビタミンレセプターに結合する関連分子が挙げられる。
【0029】
葉酸、フォリン酸、プテロイン酸、プテロポリグルタミン酸、および、葉酸レセプターに結合するプテリジン類(例えば、テトラヒドロプテリン)、ジヒドロ葉酸、テトラヒドロ葉酸、ならびに、そのデアザアナログおよびジデアザアナログを、本発明に従って使用し得る。用語「デアザ」アナログおよび「ジデアザ」アナログとは、天然に見られる葉酸構造において、1個の炭素原子を、1個または2個の窒素原子に置換された、従来技術で既知の葉酸アナログをいう。例えば、デアザアナログとしては、1-デアザアナログ、3-デアザアナログ、5-デアザアナログ、8-デアザアナログ、および、10-デアザアナログが挙げられる。ジデアザアナログとしては、例えば、1,5ジデアザアナログ、5,10-ジデアザアナログ、8,10-ジデアザアナログ、および、5,8-ジデアザアナログが挙げられる。前述のものは、葉酸アナログまたは誘導体であり、葉酸レセプターに結合し得る。本発明において有用な、他の葉酸アナログまたは誘導体としては、葉酸レセプター結合性アナログのアミノプテリン、アメトプテリン(メトトレキセート)、N10-メチル葉酸、2-デアミノ-ヒドロキシ葉酸、デアザアナログ(例えば、1-デアザメトプテリンまたは3-デアザメトプテリン)、および、3’5’-ジクロロ-4-アミノ-4-デオキシ-N10-メチルプテロイルグルタミン酸(ジクロロメトトレキセート)が挙げられる。
【0030】
ビタミン、または、その誘導体もしくはそのアナログは、細胞集団に選択的に結合し、そのため、そのビタミン、または、誘導体またはアナログに対するレセプターの標的細胞上に選択的に発現することにより視覚化され得る。ビタミンに対する結合部位は、レセプターに特異的に結合し得る任意のビタミン分子に対するレセプターを含み得、そのレセプターまたは他のタンパク質は、視覚化される細胞集団によって単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択的に発現するものであれば、どのようなビタミンに対するレセプターであってもよい。視覚化される細胞によって単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択的に発現する表在性タンパク質は、他の細胞上に存在しないか、または、少量しか存在しないレセプターである。このようなレセプターは、本発明のビタミン-造影剤結合体を用いた画像診断において標的とされる細胞における選択的な視覚化、高速な視覚化、および、高感度の視覚化に対する手段を与える。
【0031】
本発明に従って、ビタミン-造影剤結合体は、視覚化される癌細胞または他の細胞上のレセプターに対して高い親和性で結合し得る。高親和性結合は、ビタミン部分に内在する場合もあるし、あるいは、結合親和性が、化学的に改変されたビタミン(すなわち、アナログまたは誘導体)を用いることによってか、または、結合体の中に存在するビタミンとキレート部分との間の特定の化学結合によって増強され得る。
【0032】
本発明に従って、キレート剤は、多数のビタミン、異なるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログと結合し、それぞれの細胞膜レセプターへの結合機会を増すようにすることも可能である。あるいは、ビタミン-造影剤結合体の独立部分が、別々のビタミン-造影剤結合体を構成し、それによって、それぞれの細胞膜レセプターに対する結合機会を増すようにすることも可能である。
【0033】
一般に、キレート剤とビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログとの間に複合体を形成する任意の方法が、本発明に従って利用し得る。キレート剤は、2価のリンカーでキレート剤とそのビタミンとを直接結合することにより、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログを用いた複合体を形成し得る。あるいは、ビタミンおよびキレート剤は、リンカーを用いずに結合させてもよい。リンカーを用いる場合は、リンカーは、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログと直接結合し、キレート剤の方は水素、イオン、または、共有結合を介して結合する。さらに、本発明に従って、2価のリンカーは、キレート剤をビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体またはアナログに結びつけるのに、間接的な手段(例えば、中間リンカー、スペーサーアーム、または、架橋分子による接続)を包含し得る。関連する直接手段および間接手段のいずれも、本発明の方法の実行のためには、細胞膜上のビタミンレセプターに対して、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログの結合を妨げるものであってはならない。
【0034】
ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体またはアナログと、キレート剤との共有結合は、リンカーの使用の有無に関わらず、酸、アルデヒド、ヒドロキシ、アミノ、または、ヒドラゾ基の間に、アミド結合、エステル結合またはイミノ結合を形成することによって生じ得る。例えば、ビタミン分子またはキレート剤のカルボン酸を、カルボニルイミダゾール、または、標準的なカルボジイミド結合試薬(例えば、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC))を用いて活性化し、その後、少なくとも1個の求核基を有する、結合体のもう一方の成分、または、リンカーと、ヒドロキシ、アミノ、ヒドラゾまたはチオールを介して反応させて、エステル、アミド、または、チオエステル結合によって結合される、リンカー含有または非含有の、ビタミン-キレート剤結合体を形成することが可能である。
【0035】
画像診断用に適した放射性核種としては、同位元素111In, 99mTc, 64Cu, 67Ga, または68Gaを含む、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの放射性同位元素が挙げられる。これらの放射性核種は陽イオン性であり、結合体のキレート基を介してキレート剤と複合し、ビタミン-造影剤結合体を形成する。
【0036】
本発明によるビタミン-造影剤結合体は、ビタミン、または、ビタミンレセプターに結合する誘導体もしくはアナログに対するレセプターを、単一に発現するか、過剰に発現するか、または、選択して発現する動物の細胞集団において、シンチグラフィー画像法を用いて選択的に視覚化するのに利用される。このビタミン-造影剤結合体は、病原細胞の集団において、その細胞が、ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体もしくはアナログに結合するレセプターを、単一に発現するか、選択して発現するか、または、過剰に発現する限り、その病原細胞集団の視覚化のために使用が可能である。
【0037】
本発明は、癌を含む各種病因の原因となる病原細胞の集団、および、ビタミンレセプター、または、ビタミン誘導体もしくはアナログに結合し得るレセプターを過剰に発現する任意の他の病原細胞タイプによって媒介される疾患に適用し得る。従って、病原細胞集団は、良性腫瘍および悪性腫瘍を含む腫瘍原因となるものであってもよいし、あるいは、腫瘍原因となるものでなくてもよい。細胞集団が癌細胞集団である場合は、その癌細胞は、自発的に生じたものであってもよいし、または、宿主動物の系統中に存在する突然変異、または、体細胞変異のような過程によって生じたものであってもよく、あるいは、その癌が、化学的に誘発されたか、ウイルスによって誘発されたか、または、放射線によって誘発されたものでもよい。本発明は、癌(例えば、上皮癌、肉腫、リンパ腫、ホジキン病、メラノーマ、中皮腫、バーキットリンパ腫、鼻咽頭癌、および、ミエローマ)の画像診断のために使用し得る。癌細胞集団としては、口内、鼻咽頭、甲状腺、内分泌、皮膚、胃、食道、喉頭、喉部、膵臓、結腸、膀胱、骨、卵巣、子宮頸部、子宮、乳房、睾丸、前立腺、直腸、腎臓、肝臓、肺、および、脳の、各癌が挙げられるが、これらに限定されない。細胞集団が癌細胞集団である実施形態において、原発性腫瘍細胞や、転移した細胞や、原発性腫瘍から解離しつつある細胞を含めた腫瘍細胞を、このビタミン-造影剤結合体によって視覚化することが可能である。
【0038】
本発明のビタミン-造影剤結合体は、病状を診断するのに使用するか、または、病気の進行をモニターするのに使用し得る。例えば、本発明による画像診断は、腫瘍の外科的な切除、放射線療法、化学療法、または、生物学的療法を含む任意の治療アプローチによる腫瘍除去後に、腫瘍の再発を防止するための予防処置と組み合わせて、癌の進行をモニターするのに使用し得る。
【0039】
本発明の組成物および方法は、ヒトの臨床医学にも、獣医学的応用にも使用が可能である。従って、視覚化される細胞集団を有する動物は、ヒトであってもよいし、獣医学的応用の場合には、実験動物、農業動物、飼養動物または野生動物であってもよい。本発明は、ヒト、実験動物(例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター等)、ウサギ、サル、チンパンジー等)、飼養動物(例えば、イヌ、ネコおよびウサギ等)、農業動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、および、拘束下の野生動物(例えば、クマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカおよびクジラ等)に適用し得るが、これらに限定されない。
【0040】
画像診断用組成物は、動物において1回以上の用量で投与した場合、画像診断の標的とされる細胞を視覚化するのに有効な量のビタミン-造影剤結合体を含有する。このビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物は、好ましくは、動物に対して、非経口的(例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、または、硬膜下腔内)に投与される。あるいは、このビタミン-造影剤結合体を含む組成は、動物に対して、その他の医学的に有用な過程を通じて投与が可能であり、効果的な用量でありかつ適切な剤形であれば、経口剤形や、吸入剤形を含めて、どのような用量・剤形でも使用可能である。
【0041】
非経口剤形の例としては、ビタミン-造影剤結合体を、等張生食液、5%グルコースに溶解させた水性溶液、または、他の周知の薬学的に受容可能な液性キャリア(例えば、液体アルコール、グリコール、エステル、および、アミド)に溶解させた溶液が挙げられる。本発明によるこの非経口剤形は、ビタミン-造影剤結合体の用量を含む、再構成可能な凍結乾燥体の形態を取ってもよい。
【0042】
この画像診断組成物におけるビタミン-造影剤結合体の用量は、動物のサイズ、画像診断の標的とされる細胞集団、使用される特定のビタミン-造影剤結合体、および、結合体の投与経路に従って大きく変動することがある。動物に対して投与される有効量は、体表面積、体重、および、動物の状態に関する医師の評価に基づいて決められる。有効用量は、約1 ng/kg〜約1 mg/kg、より好ましくは約100 ng/kg〜約500 μg/kg、最も好ましくは約100 ng/kg〜約25 μg/kgの範囲であり得る。
【0043】
ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物の投与に関しては、有効であれば、どのような処方でも使用が可能である。例えば、画像診断組成物は、単一用量として投与してもよいし、要すれば、複数回用量として投与して、標的細胞集団の視覚化を達成してもよい。ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物の追加注入は、初回注入(単数または複数)後数日または数ヶ月の間隔で投与が可能であり、かつ、追加投与は、病状の進行をモニターするのに有用であり得る。ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物は、標識していないビタミンと組み合わせて投与することも可能である。「組み合わせて」とは、その標識していないビタミンを、造影剤と一緒に投与するか、または、画質を向上させるために、造影剤の投与前に先行投与するか、そのいずれかを意味する。例えば、造影剤は、約0.5 ng/kg〜約100 mg/kg、約1 μg/kg〜約100 mg/kg、約100 μg/kg〜約100 mg/kgの標識していないビタミンと組み合わせて投与され得る。
【0044】
画像診断組成物は、代表的に、非経口投与のために処方され、標的細胞集団の画像化を可能とするのに有効な量が動物に投与される。代表的に、ビタミン-標的造影剤を含む画像診断組成物は動物に投与され、標的細胞集団において、ビタミン-造影剤結合体が送達され、濃縮されるのに十分な時間の経過後に、動物に画像化処置を課するが、画像化は、ビタミン-造影剤結合体によって可能とされる。病気の進行をモニターするか、または、診断するのに使用する場合には、画像化処置は、代表的に、ビタミン-造影剤結合体を含む画像診断組成物の投与約1時間から約6時間後に実施する。
【0045】
本発明はまた、動物における細胞集団を画像化する方法であって、その細胞がこの細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられる細胞集団を画像化する方法を提供する。この方法は、
下式
の化合物、および、その化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を、この動物に投与する工程と、動物においてこの化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、Vは、この細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、Lは、2価のリンカーであり、Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、Mは、放射性核種の陽イオンであり、nは、1または0である。
【0046】
本方法は、in vitroにおける細胞(例えば、細胞培養)、または、in vivoにおける細胞(この細胞は、動物組織の一部を形成するか、または、別に存在する)集団を画像化するために使用し得る。従って、標的細胞としては、例えば、消化管内壁細胞(例えば、口腔粘膜および咽頭粘膜)、小腸の絨毛を形成する細胞、または、大腸内壁細胞が挙げられる。このような消化管細胞は、ビタミン-造影剤結合体を含有する画像診断組成物の経口投与によって、本発明に従って標的化し得る。同様に、動物の呼吸器系(鼻腔/肺)の内壁細胞は、本発明の複合体を吸入させることによって標的とすることが可能であるし、また、卵巣や脳の細胞を含む内臓の細胞を、特に、画像診断組成物を非経口投与することによって標的とすることも可能である。
【実施例】
【0047】
<実施例1>
===材料===
N10-トリフルオロアセチルプテロイン酸を、Eprova AG, Schaffhausen、スイスから購入した。ペプチド合成試薬は、NovaBiochemおよびBachemから購入した。99mTc過テクネチウム酸ナトリウムはSyncorから供給した。[ReO2(en)2]Clは、Rouschiasに従って調製した(ルーシアス・ジー(Rouschias, G.), Chem. Rev., 74:531(1974))。セルロースプレートおよびDEAEイオン交換プレートは、J.T. Bakerより購入した。
【0048】
<実施例2>
===EC20の合成、精製および分析特性===
Fmoc法を用いたポリマー支持連続法によって、EC20を調製した(以下のスキーム1を参照のこと;Fmoc=9-フルオレニルメチルオキシカルボニル;Boc=tertブチルオキシカルボニル;Dap=ジアミノプロピオン酸;DMF=ジメチルフォルムアミド、DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン)。Fmoc-L-Cys(Trt)-OHを負荷させた酸感受性Wang樹脂上で、EC20を合成した。ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス-ピロリジノ-フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェート(PyBOP)を活性化試薬として与え、低当量のアミノ酸を用いて効率的な結合を確保した。各結合工程後、標準条件下(20%ピペリジン含有DMF液)においてFmoc保護基を除去した。最後の結合工程の後、このペプチドを、2.5%エタンジチオール、2.5%トリイソプロピルシラン、および、2.5%脱イオン水を含む、92.5%トリフルオロ酢酸で処理することによって、ポリマー支持体から分離した。この反応によって、t-Bu、Boc、および、トリチル保護基は同時に除去された。最後に、トリフルオロアセチル機能基を、水酸化アンモニウム水溶液で除去してEC20を得た。
【0049】
この粗精製EC20を、Xterra RP18 30x300 mm, 7 μmカラム(Waters)によるHPLCにて精製した(展開相32 mM HCl(A), MeOH(B)で、勾配条件は、99%Aと1%Bでスタートし、20 mL/分の流速下37分で89%Aと11%Bに達した)。この条件下では、EC20モノマーは、代表的に、14.38分で溶出し、一方、EC20のジスルフィドダイマー(微量の混入物質)は16.83分で溶出した。図10に示す他の化合物も、EC15を除いて全て同様の合成スキームによって調製が可能である。EC15は、以下のスキーム2に示すように合成する。
【0050】
2ミリグラムのHPLC精製EC20を、0.62 mLのD2Oに溶解し、500 MHz 1H-NMRスペクトルを採取した。表1(下記参照)に、EC20分子の全ての交換不能プロトンに関する化学シフト、信号形態、および、J値を挙げる。
【0051】
エレクロスプレー質量分析において、EC20も分析した。主な陽イオンピークは(m/z,相対強度)、746.1, 100; 747.1, 44; 556.8, 32; 570.8, 16である。
【0052】
【0053】
表1. EC20の1H-NMRデータ。EC20をD2Oに溶解し、500 MHzスペクトルを採取した。化学シフト(δ)はppmで表す。δ=4.80 ppmにおけるHODに対する信号を基準に用いた。pD=4.78、s=1重線、d=2重線、m=多重線。
【表1】
【0054】
【0055】
<実施例3>
===非放射性試薬バイアルおよび99mTc-EC20の調製===
99mTc-EC20放射性薬剤物質の調製にはEC20キットを用いた。各キットは、0.1 mgのEC20、80 mgのα-D-グルコヘプトン酸ナトリウム、80 mgの塩化スズ(II)二水塩、および、凍結乾燥前にpHを6.8±0.2に調整するのに十分な量の水酸化ナトリウムもしくは塩酸からなる、非発熱性の凍結乾燥混合物(無菌)を含んでいた。この凍結乾燥粉末を、アルゴン雰囲気下において5 mLのバイアルに封入した。次いで、使用時または使用期限(現在の有効期間は>2年である)まで、このキットを-20℃にて凍結保存した。注意すべきことは、塩化スズ(II)成分は、添加した99mTc-過テクネチウム酸塩を還元するのに必要であり、一方、α-D-グルコヘプトン酸ナトリウムは、最終的に99mTcがEC20化合物にキレート化されるまで、新たに還元された99mTcを安定化させるのに必要とされる。
【0056】
99mTc-EC20は以下のように調製した(すなわち、99mTcのEC20に対するキレート化)。まず、部分的に浸水させた鉛のバイアル遮蔽を含む煮沸水浴を準備した。70%エタノールを含む綿棒でEC20バイアルの上面を拭ってその表面を消毒し、そのバイアルを適当な遮蔽容器に収めた。27ゲージ針を持つ遮蔽注射器を用いて、0.9%塩化ナトリウムに溶解した1 mLの無菌過テクネチウム酸ナトリウム99mTc注射液(15〜20 mCi)を遮蔽バイアルに注入した。注射器をバイアルから抜去する前に、添加した過テクネチウム塩の体積と等しいガス体積をバイアルから抜き取った。これは、バイアル内部の圧を正規化するためである。この凍結乾燥粉末の完全な溶解を確保するために、バイアルを30秒間穏やかに回転攪拌した。次いで、煮沸水浴中に立ててある鉛遮蔽の中にバイアルを置いた。溶液を最長18分加熱し、次いで、最短15分かけて室温まで冷却した。この溶液は、光遮蔽をした室温(15〜25℃)で保存が可能であるが、調製後6時間以内に使用しなければならない。
【0057】
この放射性薬剤物質の放射化学的安定性を、最大24時間、光遮蔽をした室温での保存後に、HPLCにて定量した。HPLCシステムを用いて99mTc-EC20(20 μL)のサンプルを分析した。同システムは、Waters 600E複数溶媒移動システムと490 UV検出器、Bioscan EC-3200放射線検出器、Laura v1.5ラジオクロマトグラムソフトウェア、および、Waters Nova-Pak C18(3.9x150 mm)カラムからなる。20%メタノールおよび0.1%トリフルオロ酢酸を含む水性展開相を用いて、1 mL/分の流速にて注入したサンプルを定組成で溶出した。このHPLC分析は、UV検出器(280 nm)およびガンマ放射線検出器の両方を用いてモニターした。注意すべきは、99mTc-EC20の放射化学的純度は、全ての場合において、少なくとも24時間の間は90%以上であった。
【0058】
<実施例4>
===TLCによる99mTc-EC20の放射化学的純度の定量===
99mTc-EC20調製の際に生ずる主な放射化学的不純物は、1)99mTc過テクネチウム酸塩、2)99mTc-グルコヘプトン酸塩(リガンド交換の前駆物質)、3)非特異的結合99mTc(EC20分子の、期待されるDap-Asp-Cysキレート機能基以外の部位に結合する99mTc)、および、4)加水分解された99mTcである。臨床的な用途の可能性を99mTc-EC20について試験するのであるから、99mTc-EC20の各不純物量、および、99mTc-EC20の放射化学的総合純度を定量するために、3つのTLCに基づく方法を開発した。
【0059】
第1のシステムでは、セルロースプレートを用い、脱イオン水で展開した。99mTc-EC20、99mTc-グルコヘプトン酸塩、非特異的結合性99mTc、および、99mTc過テクネチウム酸塩は、溶媒前面に移動する(Rf=1.0)が、一方、加水分解した99mTcは原点に留まる(Rf=0.0)。このセルロースプレートを、Rf=0.3(原点から1.5 cm)で切断して2片とし、各片について線量キャリブレータを用いてカウントした。加水分解した99mTcのパーセントは以下のように計算した:A=%加水分解;99mTc=(基底片のμCi/両片のμCi)x100。
【0060】
第2のシステムでは、セルロースプレートを用い、アセトンおよび0.9% NaCl(7:3, v/v)で展開した。99mTc-過テクネチウム酸塩はRf=0.9で移動するが、一方、99mTc-EC20、99mTc-グルコヘプトン酸塩、非特異的結合性99mTc、および、加水分解した99mTcは原点に留まる(Rf=0.0)。このセルロース/アセトンプレートをRf=0.6(原点から3.0 cm)で切断して2片とし、各片について線量キャリブレータを用いてカウントした。99mTc-過テクネチウム酸塩のパーセントは以下のように計算した:B=% 99mTc-過テクネチウム酸塩=(上片のμCi/両片のμCi)x100。
【0061】
最後に、第3システムでは、DEAEイオン交換プレートを0.3M Na2SO4にて展開した。99mTc-グルコヘプトン酸塩は溶媒前面に移動する(Rf=1.0)が、一方、非特異的結合99mTcはRf=0.6に移動し、かつ、99mTc-EC20、加水分解した99mTc、および、99mTc-過テクネチウム酸塩は原点近くに留まる(99mTc-EC20はRf=0.1、加水分解した99mTcはRf=0.0、99mTc-過テクネチウム酸塩はRf=0.3)。このセルロース/Na2SO4プレートを、原点から2.5 cmで切断して2片とし、各片について線量キャリブレータを用いてカウントした。99mTc-グルコヘプトン酸塩および非特異的結合99mTcのパーセントは以下のように計算した。C=%(99mTc-グルコヘプトン酸塩+非特異的結合99mTc)=(上片のμCi/両片のμCi)x100。99mTc-EC20の放射化学的総合純度は以下のように計算した:放射化学的純度=100-(A+B+C)。
【0062】
図2に示されるように、99mTc-EC20配合物のHPLC分析は、ピークAからDと表示される4種の放射化学的成分を示す。ピークAは遊離99mTcであると判定し、この副産物は、<2%で再現可能的に存在した。99mTc-グルコヘプトン酸塩とは異なるピークB(データは示さない)は、2.8分の保持時間で溶出した。この成分は、混合物の約3%を占めていたが、EC20分子において、期待されたDap-Asp-Cys機能基以外のどこか他の部位にキレートした99mTc由来のものと考えられた。ピークCおよびD(保持時間はそれぞれ4.8分と13.2分)は、この定式化された放射化学活性の大部分を占める。
【0063】
<実施例5>
===Re-EC20の合成===
52 mg(0.010 mmol)のEC20と[ReO2(en)2]Cl(52 mg, 0.14 mmol)を、それぞれ、6 mLと1 mLのアルゴン噴射リン酸緩衝液(0.05M, pH5.8)に溶解した。この2種の溶液を合わせ、アルゴン雰囲気下において煮沸水浴で2時間加熱した。この反応混合液を凍らせ、一晩凍結乾燥した。この粗精製産物をHPLC(Xterra RP18カラム、19x150mm、10 mM NH4OAc/CH3CN、流速10 mL/分、1%〜8%の勾配)にて精製した。分画を収集し、凍結乾燥し、使用するまで-20℃で保存した。
【0064】
放射性材料の分析には質量分析器が利用できなかったので、非放射活性のレニウムアナログ(Re-EC20)について分析した。レニウム、テクネチウムのいずれも、物理化学的性質が極めて類似するVIIA群の金属である。これらはまた、有機物リガンドと類似した複合体を形成する。このアナログの化学的な作用は、これまでにもしばしば非放射活性レニウムアナログに基づいて新規クラスのテクネチウム放射性薬物の構造解明を行う際に利用されている。興味あることに、Re-EC20のHPLC分析においても、99mTc-EC20のピークCおよびDによく似た、5分と14.2分それぞれで溶出する2種の大きなピークが認められた(クロマトグラムは示さず)。質量分析したところ、この二つの成分は、Re-EC20複合体に相当する異性体であることが確認された(m/z=945)。実際、これらの分子種は、図3に表すように、Dap-Asp-Cysキレート環におけるテクネチウム-酸素結合のシン立体配置、または、アンチ立体配置のいずれかを持つ2個の幾何異性体であるらしい。i)Re-EC20クロマトグラムの二つのピークは異性体複合体を表し、かつ、ii)テクネチウム複合体にも同様の異性体存在が報告されていることから、99mTc-EC20の放射クロマトグラムに見られるC成分およびD成分もまた異性体であると考えられる。
【0065】
<実施例6>
===細胞培養===
10%熱不活性化牛胎児血清(HIFCS)を含む葉酸無添加RPMI培養液(FFRPMI)を用い、5% C02/95%空気の加湿雰囲気下37℃において、抗生物質無添加で、細胞を単層として連続的に成長させた。HIFCSは、内因性葉酸の正常分を含んでおり、これにより、この細胞は、比較的に生理的関連性の高い培養液において成長を持続することができた。別に指示しない限り、細胞実験は全て、成長培養液として10%HIFCSを含むFFRPMI(FFRPMI/HIFCS)を用いて実施した。
【0066】
<実施例7>
===相対的な親和性の定量===
ウェスターホフ等(Westerhoff et al.)(Mol. Pharm., 48:459-471(1995))によって記載される方法に若干の修正を加えて、各種葉酸誘導体の相対的な親和性を定量した。簡単に言うと、FR-陽性KB細胞を、室温で3分間、0.25%トリプシン/PBSにて穏やかにトリプシン処理し、次いで、FFRPMI/HIFCSにて希釈した。5分間800xgで遠心し、PBSで1回洗浄した後、最終細胞ペレットをFFRPMI 1640(無血清)に懸濁した。葉酸含有試験産品の非存在下、および、漸増濃度の同産品の存在下において、100 nMの3H-葉酸と共に細胞を氷上で15分間インキュベートした。サンプルを5分間10,000xgで遠心し、細胞ペレットを緩衝液に懸濁し、5 mLのシンチレーション用混合液を含む個々のバイアルへ移し、次いで、その放射線をカウントした。陰性コントロール管は、FFRPMI(競合剤無添加)に溶解した3H-葉酸のみを含んでいた。陽性コントロール管は、最終濃度1 mMの葉酸を含んでおり、このサンプルで測定されたCPM(標識の非特異的結合を表す)を、全てのサンプルから差し引いた。注意すべきことは、相対的な親和性は、KB FRに結合する3H-葉酸の50%を置換するのに必要な化合物のモル比の逆数と定義し、FRに対する葉酸の相対的な親和性を1に設定した。
【0067】
細胞表面FRに対する結合に関して、EC20が、葉酸と直接に競合する能力をこの定量法によって測定した。重要なことは、1.0という親和性相対値は、試験産品リガンドは、FRに対して、葉酸と等しい親和性を持つことを意味するということである。同様に、単位(1)よりも低い数値はより弱い親和性を反映するものであるし、単位よりも高い数値はより強い親和性を反映する。
【0068】
非放射性葉酸、EC20、レニウム-EC20(異性体A、ピークC)、レニウム-EC20(異性体B、ピーク0)、または、関連する葉酸系放射性薬物(DTPA-葉酸塩)の濃度を漸増させながら、100 nM 3H-葉酸と共に培養KB細胞をインキュベートした。4℃で15分間インキュベートした後、細胞をリンスして未結合の物質を除去し、残存する細胞関連性放射線をカウントした。結合放射線の量を、未標識リガンドの濃度に対してプロットし、IC50値(3H-葉酸結合の50%を阻止するのに必要なリガンドの濃度)を推定した。図4および表2(以下)に示すように、EC20は、ヒトFRに対して、葉酸のものと比較して0.92の親和性を有すると判定された。レニウム-EC20の異性体は両方とも、親のEC20分子よりも優れているとは言わないまでも、ほぼ等しい相対親和性値を示した(Re-EC20異性体AおよびBで、それぞれ、1.42と1.37)。DTPA-葉酸塩は、111In-キレート化葉酸放射性薬物であるが、これは、葉酸レセプターに対して0.87の相対親和性を示した。上記から、各種金属キレート目的による葉酸塩の化学的な改変は、FRに対するそのビタミンの本来の親和性を妨げない。
【0069】
表2.相対的な親和性の推定−相対的な親和性(RA)を、FR-陽性KB細胞に対して結合する3H-葉酸の50%を置換するのに必要な、化合物のモル比の逆数と定義した。葉酸の相対的な親和性を1に設定した。各試験産品は3重に評価した。
【表2】
【0070】
<実施例8>
===時間に依存する細胞の取り込み===
KB細胞を、12ウェルのFalconプレートに播種し、サブ集密な単層を一晩で形成させた。1 mLの新鮮なFFRPMI/HIFCSで1回リンスした後に、各ウェルに10 nM 99mTc-EC20を含む1 mLのFFRPMI/HIFCSを与えた。37℃で一定時間の間、細胞をインキュベートし、次いで、1 mLの氷冷PBS(pH7.4)にて4回リンスした。室温で15分間、1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む0.5 mLのPBS(pH7.4)にこの細胞の単層を溶解し、次いで、パッカードのガンマカウンターにて放射線をカウントした。BioRad DCタンパク質アッセイキットを用いて、各サンプルのタンパク質を定量し、細胞タンパク質の値は、細胞当たり2.23x10-7 mgのタンパク質の変換係数を用いて細胞数に換算した。最終的に表にした値は、細胞当たりのEC20分子で表した。
【0071】
FR-陽性KB細胞への99mTc-EC20取り込みの動態を、このプロトコールを用いて定量した。図5に示すように、安定した状態の取り込みは、37℃で2時間以内に達成され、この時、約320万個のEC20分子が細胞結合性となっていた。一方、2分の1最大値細胞結合は、10 nMのこの放射性薬剤を細胞と混合して後9分後に見られた。興味あることに、1/2最大飽和点は、細胞を10倍高濃度の99mTc-EC20(100 nM、データは図示せず)とインキュベートした場合、わずか37秒以内に達せられた。
【0072】
<実施例9>
===濃度に依存する細胞の取り込み===
12ウェルのFalconプレートにKB細胞を播種し、サブ集密的単層を一晩で形成させた。1 mLの新鮮なFFRPMI/HIFCSで1回リンスした後に、各ウェルに濃度漸増の99mTc-EC20を含む1 mLのFFRPMI/HIFCSを与えた。37℃で2時間細胞をインキュベートし、次いで、1 mLの氷冷PBS(pH7.4)にて4回リンスした。室温で15分間1%ドデシル硫酸ナトリウムを含む0.5 mLのPBS(pH7.4)にこの細胞単層を溶解させ、次いで、パッカードのガンマカウンターにて放射線をカウントした。タンパク質含有量は上記のように定量し、最終的に表記した値は、細胞当たりのEC20分子換算で表した。
【0073】
図6に示すように、細胞による99mTc-EC20の摂取は、細胞外濃度に依存することが判明した。使用した特定のKB細胞では、細胞当たり、最大400万分子の葉酸放射性薬剤を結合させることが求められた。このデータをスキャッチャード分析したところ、結合KDは3.2 nMであり、これは、同じ細胞に対するビタミン葉酸塩の結合について観察されたKDとほぼ等しい値であった。
【0074】
ピークBの完全な特定は達成されなかったけれども、UV吸収度分析から、これは、葉酸機能基(すなわち、吸収スペクトルは、363 nmに葉酸の指示二次吸収ピークを含んでいた)を含むことが示された。このHPLC-精製放射標識物質(ピークB物質)を収集し、培養KB細胞に加えた。図7に示すように、細胞による、99mTc-標識ピークB成分の取り込みも細胞外濃度に依存することが判明した。このデータをスキャッチャード分析したところ、結合KDは1.1 nMであった。興味あることに、ピークBの細胞結合は、過剰な葉酸の存在下において完全に阻止された。これは、この少量の処方薬副産物もまた、放射性診断目的のためにFR陽性細胞の標的化し得ることを示す。
【0075】
<実施例10>
===血液クリアランス===
用量投与前の約3週間、本研究に使用した動物を葉酸無添加食品(Harlan #TD-90261)にて維持した。この特別食品への馴化は必須である。なぜなら、通常のげっ歯類食品は大量の葉酸(kg食品当たり6 mg)を含み、マウスにおいて、高い血清葉酸値を促すからである。さらに、従来の研究によって、マウスを葉酸無添加食品で3週間維持しても、血清葉酸は、25±7 nMの安全レベルを維持することが示されており、このレベルは、ヒト血清において測定される9〜14 nMよりもやや高い。
【0076】
使用する日に99mTc-EC20溶液を調製し、最初は、ミリリットル当たり100 μgのEC20を含んでいた。この溶液をさらに無菌の生食液で希釈し、作業用ストック溶液を調製した。この産品の放射化学的純度は、TLCにより最大94%と推定した。短時間のジエチルエーテル麻酔下において、尾静脈を通じて、約0.1 mL容量に溶解させた50 μg/kgのEC20 (67 nmol/kg)の用量を各動物に静注した。注入後指定の時間(図8参照)において、各動物を、CO2窒息により安楽死させ、直ちに血液を心臓穿刺によって採取した。
【0077】
図8に示すように、Balb/cマウスにおける循環血中から、99mTc-EC20が急速に除去された。この放射性薬物の血漿半減期は最大4分と推定され、4時間後には、注入した99mTc-EC20用量の0.2%未満の残留が認められた(血液は全生体質量の5.5%を表すものと仮定する)。このデータは、葉酸結合体が、静脈内投与後速やかに循環血中から取り除かれること、かつ、注入からわずか数時間後に、貴重な組織分布データが、血液浮遊性放射線による組織の非特異的摂取に対して関連しないで、獲得し得ることを示す。
【0078】
<実施例11>
===組織分布の研究===
99mTc-EC20の、in vivoにおける腫瘍標的能力を、FR-陽性M109モデルを用いて評価した。これらの腫瘍細胞は、Balb/cマウスに対して同系であり、接種後2週間以内に皮下に固い腫瘍を再現可能で形成する。一つの追加のD-Glu残基(すなわち、Pte-D-Glu-D-Glu-βDpr-Asp-Cys)を含むことを除いては、構造的には99mTc-EC20と類似する99mTc-EC14、99mTc-EC28(ベンゾイル-D-Glu-n-Glu-βDpr-Asp-Cysからなるプテロイン酸非含有コントロール)、および、以前に報告された111In-DTPA-葉酸塩放射薬剤もこのバイオアッセイにおいて評価した。注意すべきことは、99mTc-EC28のコントロール薬剤は、細胞表面FRには結合しないことである。なぜなら、この薬剤は、必須のプテリジン環状機能基を欠失しているからである。
【0079】
4〜5週齢マウス(Balb/c系統)を、Harlan Sprague Dawley社(インディアナポリス、インディアナ州)から購入し、実験前の合計3週間、葉酸無添加食品にて維持した。同系の、FR-陽性M109腫瘍細胞(動物当たり1x106個)を、実験の2週間前に、右腋窩の皮下に接種した。マウスは全て雌であり、腫瘍重量は、実験当日54.2±29.8 mgであった。ミリリットル当たり100 μgの薬剤を含む99mTc-EC20のストック液を使用当日に調製した。その放射化学的純度は>96%であった。追加の2種の99mTc-キレート剤、99mTc-EC14および99mTc-EC28、並びに、111In-DTPA-葉酸塩も放射化学純度が>90%となるように調製した。溶液は全て、生食液のみ、または、100当量の葉酸を含む生食液(競合のため)にて、最終放射薬剤濃度が10 μmol/mLとなるように希釈した。
【0080】
約100 μL容量に溶解させた40 μmol/kgの試験産品の用量を、短時間のジエチルエーテル麻酔下において、側方の尾静脈を通じて動物に静注した。注入4時間後に、CO2窒息により動物を屠殺し、解剖した。選択した組織を取り出し、重さを量り、カウントして99mTcの分布を調べた。CPM値を減衰補正し、組織の湿重量グラム当たりの注入用量%として結果を表にまとめた。
【0081】
表3(以下)に示すように、3つの「葉酸」含有放射薬剤、99mTc-EC14、99mTc-EC20、および、111In-DTPA-葉酸は、主に、FR-陽性腫瘍および腎臓に蓄積したが、腎臓の方が、腫瘍よりも、組織グラム当たりの注入用量%(%ID/g)において、高いの蓄積を示した。興味あることに、111In-DTPA-葉酸塩および99mTc-EC20の正味の腫瘍蓄積はほぼ同じであるが(それぞれ、19 %ID/gと17 %ID/g)、一方、99mTc-EC14の腫瘍による摂取量は、10 %ID/gをやや下回った。それにもかかわらず、三つの薬剤は全てが、高い腫瘍対血液比(>30対1)を示した。
【0082】
表3. 皮下にM109腫瘍を有するBalb/cマウスにおける葉酸放射薬剤の体内分布
【表3】
*示した値は、3匹の動物から得たデータの平均値±s.d.を表す。
【0083】
二つの別々の方法によって、葉酸塩特異的な標的化をさらに証明した。まず、FR-陽性腫瘍および腎臓における99mTc-EC14、99mTc-EC20、および、111In-DTPA-葉酸塩の蓄積は、これらの薬剤を、葉酸の100倍過剰下に共同投与した場合に効果的に阻止された(>94%)。第二に、99mTc-EC28コントロール薬剤は、腎臓および腫瘍において目立つほど蓄積しなかった。この二つの所見は、元の「葉酸様」(またはプテロイン酸)機能基が、FR-陽性組織へ、これら放射性薬剤が標的摂取され、保持されるために必要であることを示す。
【0084】
<実施例12>
===ガンマシンチグラフィー===
M109腫瘍細胞(動物当たり1x106個)を、実験の2週間前に、Balb/cマウスの右腋窩の皮下に接種した。短時間のジエチルエーテル麻酔下において、100 μL容量に溶解させた約50 μmol/kgの試験産品の用量を、尾静脈を通じて動物に静注した。注射後4時間、CO2窒息により動物を屠殺し、次いで、画像獲得面の上に置いた。Technicare Omega 500 Sigma 410放射性同位元素ガンマカメラを用いて、全身画像入手を、1分当たり50-75,000のカウント率で1分間行った。Medasys Pinnacleソフトウェア搭載のMedasys MS-DOS-準拠コンピューターを用いて、全てのデータを分析した。
【0085】
FR-陽性M109腫瘍および腎臓による99mTc-EC20の摂取を、このガンマシンチグラフィープロトコールによって証明した。図9に示すように、前述のように99mTc-EC20を注入したマウスの腹部画像は、ガンマ放射が、2個の腎臓(K)とM109腫瘍塊(T;肩の領域)に対して局在することを示す。その他の体組織には、目だった放射線トレーサーは観察されなかった。111In-DTPA-葉酸放射性薬剤についても同様の画像プロフィールが報告されている。
【0086】
<実施例13>
===尿排泄および代謝===
99mTc-EC20のHPLCによる尿の特性プロフィールを、Balb/cマウスを用いて得た。側方の尾静脈を介して1 mCi(6.7 nmol)の99mTc-EC20をマウス(それぞれ最大20g)に注入した。1、4または6時間後、CO2窒息により2匹のマウスの群を安楽死させ、尿を採取した。GV13 Millexフィルターによって濾過した後、Nova-Pak C18 3.9x150 mmカラムと放射化学検出器を備えたHPLCを用いて、放射化学的な特性を評価した。0.1%TFAを含む20%メタノールにより1 mL/分の流速にて、この系を定組成で溶出した。
【0087】
111In-DTPA-葉酸の一次排出ルートは尿によることが従来から確定されていた。図2に示したHPLCプロフィールと同様に、99mTc−EC20標準および尿サンプルは両方とも4つの放射線ピークを示した。表4(以下)に示すように、標準の放射化学的純度(シンとアンチ99mTc-EC20に恐らく対応すると思われるピークCとDの合計)は、本実験の6時間の持続時間の間最大93%で不変であった。標準における遊離99mTc(ピークA)の量は最大2%であった。注意すべきことは、この放射化学的プロフィールにおけるピークBは、通常のものでない、比較的不安定な位置において99mTcとキレートするEC20と考えられているが、しかしながら、この分画において測定された放射線は、99mTc-EC20に対する総合放射化学純度には含まれていなかったことである。このデータをまとめると、本配合物は、この6時間の試験の間、生食液において安定性を保つことを示す。
【0088】
Balb/cマウスに注入してから1時間後および4時間後では、マウス尿中の99mTc-EC20の放射化学的特性は変わらなかった。しかし、注入6時間後の尿に見られる放射線は、HPLCで正確に定量するには低すぎてできなかった。尿から回収された放射線分子種における親薬剤の割合は、定量できた4時間を通じて約90%と比較的定常であった。この値は、標準の93%純度に極めて近似する。これは、99mTc-EC20は、改変されない形態で主に尿中に排泄されることを示す。
【0089】
表4. Balb/cマウスにおける99mTc-EC20の排泄および代謝。1 mCi(6.7 nmol)の99mTc-EC20を側方の尾静脈を介して、マウスに注入した。表示の時間に、2匹のマウスの群を安楽死させ、尿を採取した。放射化学的特性をHPLCで定量した。ピークCおよびD(syn異性体とanti異性体)の面積パーセント合計を、元の99mTc-EC20の総合純度を計算するのに用いた。
【表4】
【0090】
<実施例14>
===血清タンパク質の結合===
新鮮なラット血清、および、市販のヒト男性血清(AB型のドナー、Sigma Chemical社)を用いて、in vitroにおける99mTc-EC20の血清タンパク質に対する結合を評価した。室温にて、1 mLの血清と99mTc-EC20とを混合してから1分後に、清潔なAmicon Centrifree(登録商標)限外濾過装置(30,000 NMWL)に0.3 mLの血清液を3連で移した。血清溶液を負荷した遠心から1分以内に、この装置を20℃で20分間1000xgにて遠心した。元の溶液、および、各装置からのろ液の50 μLのサンプルを清潔なチューブに移し、自動ガンマカウンターにてカウントした。1 mLの正常生食液と混合した99mTc-EC20からなるコントロール溶液を同様にして限外濾過した。3つのサンプルのそれぞれについて遊離99mTcのパーセントを計算した。
【0091】
99mTc-EC20は、限外濾過装置に対して少量の非特異的結合を示した(〜5%)が、その約70%は、ラットまたはヒト血清の>30 kDaの血清タンパク質分画と主に結合していることが判明した(それぞれ69%と72%)。重要なことは、99mTc-EC20は、FR-陽性組織の内部に効果的に、かつ、選択的に蓄積する(表2および図8を参照のこと)ので、血清タンパク質に対するその見かけの親和性は、in vivoにおいて、この放射性トレーサーのFRに対する標的性に影響を及ぼさない。
【0092】
<実施例15>
===組織分布の研究===
本実施例で用いたプロトコールは、実施例11で記載したものと同様である。99mTc-EC20のin vivoにおける腫瘍に対する標的能力をさらに、FR-陽性M109、および、FR-陰性4T1腫瘍モデルを用いて評価した。6週齢の雌Balb/cマウス(n=3/投与群)を、Harlan Sprague Dawley社(インディアナポリス、インディアナ州)から購入し、腫瘍細胞接種前の合計7日間、葉酸無添加食品(Harlan TEKLAD)にて維持した。
【0093】
同系の、FR-陽性M109腫瘍細胞(動物当たり2x106 P0)、または、FR-陰性4T1細胞(動物当たり5x105 P0)を、1%同系マウス血清を含む100 μlの葉酸無添加RPMI-1640に溶解させて皮下に接種した。前述のように、ミリリットル当たり100 μgの薬剤を含む99mTc-EC20のストック液を使用当日に調製した。
【0094】
腫瘍細胞接種16日後に、M109腫瘍を有する動物に対しては500または1800 nmol/kgのEC20を、4T1腫瘍を有する動物に対しては500 nmol/kgのEC20を静注で投与した(投与群当たり3匹)。注入は全て100 μl容量で行った。注入4時間後、CO2窒息により動物を屠殺し、血液を心臓穿刺にて採取し、動物を解剖した。選択した組織(心臓、両肺、肝臓、脾臓、腎臓、小腸、胃、筋肉、および、腫瘍)を取り出し、重さを量り、自動ガンマカウンターでカウントして99mTcの分布を調べた。注入用量%で表した(%ID/g)湿重量組織の放射性薬剤摂取量を、注入製剤の希釈液から調製した標準を参照して計算した。
【0095】
図11に示すように、葉酸レセプターに特異的な標的性を証明した。なぜなら、99mTc-EC20は、主に、FR-陽性のM109腫瘍と腎臓に蓄積したが、FR-陰性4T1腫瘍には蓄積しなかったからである。FR-陰性4T1腫瘍における摂取は、FR-陽性M109腫瘍よりも7.6倍低かった。正常組織における99mTc-EC20の摂取は、予期した通り腎臓を除いては、低かった。これらの結果は、99mTc-EC20の標的がFR-特異的であることを示す。
【0096】
<実施例16>
===組織分布の研究===
この実施例で用いたプロトコールは、実施例11に記載したものと同様である。99mTc-EC11(ペプチド-A1)、99mTc-EC13(ペプチド-A3)、および、99mTc-EC14(ペプチド-A2)のin vivoにおける腫瘍に対する標的能力を、FR-陽性KB腫瘍モデルを用いて評価した。4週齢の雄ヌードマウス(n=4/群)を、腫瘍細胞接種前の合計10日間、葉酸無添加食品にて維持した。
【0097】
FR-陽性KB腫瘍細胞(動物当たり0.25x106個)を、皮下の関節包内に接種した。腫瘍細胞接種14日後、99mTc-EC11、99mTc-EC13、または、99mTc-EC14を、以下の表5に示す結合体の用量で(約12 μg/kg)動物(n=4/群)に静注で投与した。99mTc-EC11、99mTc-EC13、および、99mTc-EC14のストック液は、前述のように、使用の当日に調製した。約20倍過剰量の遊離葉酸(約200 μg/kg)をコントロールマウスに同時投与した(n=4/群)。注入4時間後、CO2窒息により動物を屠殺し、血液を心臓穿刺にて採取し、動物を解剖した。選択した組織を取り出し、重さを量り、自動ガンマカウンターでカウントして99mTcの分布を調べた。注入用量%で表した(%ID/g)湿重量組織の放射性薬剤摂取量を、注入製剤の希釈液から調製した標準を参照して計算した。
【0098】
表5に示すように、葉酸レセプターに特異的な標的性を証明した。なぜなら、99mTc-EC11、99mTc-EC13、および、99mTc-EC14は、主に、FR-陽性のKB腫瘍と腎臓に蓄積したからである。この蓄積は、遊離葉酸の同時投与によって阻止された。これらの結果は、99mTc-EC11、99mTc-EC13、および、99mTc-EC14は、in vivoにおいて、FR特異的に腫瘍に対して標的化し得ることを示す。
【0099】
同様の結果(以下のの表6を参照のこと)が、99mTc-EC53(EC20の、全てがDのエナンチオマー)が、以下の点を除いて同様のプロトコールを用いて得られた。すなわち、99mTc-EC53の用量は約50 μg/kgとし、約100倍過剰な遊離葉酸と、冷却EC53を用いた点である。表6に示すように、葉酸レセプターに特異的な標的性を証明した。なぜなら、99mTc-EC53は、主に、FR-陽性のKB腫瘍と腎臓に蓄積したからである。この蓄積は、遊離葉酸の同時投与によって阻止された。これらの結果は、99mTc-EC53は、in vivoにおいて、FR特異的に腫瘍に対して標的化し得ることを示す。
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、造影剤として臨床開発が期待されるビタミンと放射性各種キレート剤の結合体を提供する。この造影剤の例としては、新規に設計され、合成され、かつ、放射化学的にその性質が明らかにされた葉酸系放射性キレート剤99mTc-EC20である。
【0103】
99mTc-EC20は、D-γ-Gluペプチド結合を含む、葉酸塩の低分子量ペプチド誘導体であるが(図1を参照のこと)、効率的な固相合成過程を用いて合成した。その天然型においては、葉酸塩(またはプテロイル-グルタミン酸塩)は、L型の中に単一のグルタミル残基を持つ。しかし、D-Gluエナンチオマー残基はEC20分子に組み込まれた。注意すべきことは、EC20と同様、葉酸において、L-Glu残基をD-Glu残基で置換しても、それは、葉酸の、FRに対する高親和性結合能力を変えないということである。
【0104】
EC20は、α-D-グルコヘプトン酸塩および塩化スズ(II)の存在下では、効率的に99mTcをキレートすることが判明した。放射化学的なHPLCで分析する場合、得られた99mTc-EC20配合物の>95%は、syn異性体とanti異性体の混合物からなっていたが、それぞれの異性体は、等しく高い親和性でFRに対して結合することが可能であった(図3を参照のこと)。配合物中の99mTcの約3%が、予期されたDap-Asp-Cys機能基ではなく、どこか他の部位においてEC20分子に対してキレート化していた。この成分は、その特徴を明らかにできるほど十分な量単離されなかったが、FRに対して高い親和性を持って結合することが示された(図6を参照のこと)。最後に、99mTc-EC20配合物の放射活性の残りの2%は、遊離99mTcによるものとされた。
【0105】
99mTc-EC20は、FR-陽性細胞に対して、時間および濃度依存性の結合を示した。99mTc-EC20は、血液から急速に除去された(t1/2は最大4分)。これは、診断的な造影剤にとっては重要である。また、99mTc-EC20は、FR-陽性の腫瘍内に大量にかつ選択的に蓄積した。
【0106】
二つの別々の方法を用いて、同様のFR標的造影剤(111In-DTPA-葉酸)と99mTc-EC20の性能とを直接比較した。まず、この葉酸系放射性薬剤は両方とも、KBのFRへの結合において等しく葉酸と競合することを判明した(図3および表1を参照のこと)。第二に、腫瘍を有するマウスにおいて、それぞれの薬剤の体内分布はほとんど同じであった(表2を参照のこと)。99mTc-EC20については、腫瘍による高い摂取、および、腫瘍対血液比を測定した。以上を総合すると、これらの結果は、臨床において患者に投与された場合、111In-DTPA-葉酸塩様、99mTc-EC20も、FR-陽性腫瘍に効果的に局在することを示唆する。
【0107】
これまでにもいくつかの葉酸系99mTc結合体が記載されている。99mTc-12-アミノ-3,3,9,9-テトラメチル-5-オキサ-4,8ジアザ-2,10-ドデカンジオンジオキシム(OXA)葉酸結合体については、限られたものではあるが、体内分布に関するデータが利用可能であり、KB腫瘍におけるトレーサーの摂取は中等度(最大7%ID/g)であると報告された。乳腺腫瘍を有するラットにおける99mTc-エチレンジシステイン-葉酸結合体の体内分布を扱う研究も報告されている。この研究のラットには、葉酸が豊富な食品を与えた。従って、低い腫瘍摂取および低い腫瘍対血液比が得られた。最後に、99mTc-6-ヒドラジノニコチンアミドヒドラジド(HYNIC)葉酸誘導体(HYNIC-葉酸塩)は、24JK-FBP腫瘍の中に大量に蓄積することが示された。興味あることに、99mTc-EC20は、M109腫瘍の中に、HYNIC-葉酸塩が241K-FBP腫瘍中に蓄積したのとほぼ同じレベルで蓄積した(最大17%ID/g)(表2)。この二つの薬剤はさらに、静注4時間後に、ほぼ50:1の腫瘍対血液比を示した。
【0108】
要約すると、効率的に99mTcをキレートするために、葉酸塩の新規ペプチド誘導体を作製した。この新規化合物99mTc-EC20は、in vitroでもin vivoでも、FR-陽性の腫瘍細胞に活発に結合する。EC20は、葉酸レセプター(FR)-陽性の培養腫瘍細胞にも、時間及び濃度依存的に、極めて高い親和性で結合するのが認められた(KD最大3 nM)。in vitroにおける相対的な親和性アッセイを用いると、EC20はまた、単独でも、あるいは、配合された金属キレート剤としても、細胞結合に関して、3H-葉酸と効果的に競合することが判明した。Balb/cマウスに静注で投与後、99mTc-EC20は循環血中から急速に除去され(血漿t1/2は最大4分)、非代謝形態にて尿中に排泄された。M109腫瘍を有するBalb/cマウスで実施したガンマシンチグラフィーおよび体内分布定量研究のデータから、99mTc-EC20は主にFR-陽性腫瘍および腎臓組織に蓄積することが確かめられた。これらの結果は、99mTc-EC20は、FR-陽性腫瘍の検出のために、効果的で、非侵襲的な放射性診断用造影剤となることを示す。EC11、EC13、EC14、および、EC53を含む、その他のEC20-関連の造影剤も効果的であることが示された。
【0109】
毎年、米国では最大26000人の女性が卵巣癌と診断されるが、5年以上生存する女性は、それらの50%未満である。この低い生存率の一つの理由は、この癌の形態の診断が困難であるためである。未特定の腹部の塊を破壊する可能性、および、腹腔全体に癌を拡散させる可能性を恐れるために、細い針によるバイオプシーを実施しないことが多い。むしろ、疑わしい卵巣固塊の診断および段階判定は、代表的に、腹腔鏡術によって実施されるが、これは、侵襲的で、かつ、高価な手段である。99mTc-EC20は、(数ある中でも)卵巣癌に大量に存在するFRに堅く結合するので、この放射性薬剤は、悪性の卵巣癌の早期診断にとって、安価で非侵襲的であるが、信頼できる方法を提供する。重要なことは、99mTc-EC20はまた、再発する疾患または残留する疾患において、より確定的で、より早期の診断を可能にすることにより、臨床上の確定診断の過程を導くことにも役立ち得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式
の化合物であって、
Vは、in vivoにおいてレセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0であり、かつ、
kは、1または0である、
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
Vが、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、および、ビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、その、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記放射性核種が、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記放射性核種が、テクネチウムの同位元素であることを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Vが、葉酸塩、または、葉酸レセプターに結合するそのアナログもしくはその誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、
Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする画像診断用組成物。
【請求項7】
前記化合物中のVが、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12およびビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物中の前記放射性核種が、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物中の前記放射性核種が、テクネチウムの同位元素であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
非経口投与に適応した請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
Vが、葉酸塩、または、葉酸レセプターに結合するそのアナログもしくはその誘導体であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
動物における細胞集団を画像化する方法であって、
該細胞は、該細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられ、
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を該動物に投与する工程と、
動物における該化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、
Vは、該細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記化合物中のVが、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12およびビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物中の前記放射性核種が、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物中の前記放射性核種が、テクネチウムの同位元素であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、患者に対して非経口的に投与されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
Vが、葉酸塩、または、葉酸レセプターに結合するそのアナログまたはその誘導体であることを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項18】
下式
の化合物であって、
Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0であり、かつ、
kは、1または0である、
ことを特徴とする化合物。
【請求項19】
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、
Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする画像診断用組成物。
【請求項20】
動物における細胞集団を画像化する方法であって、
該細胞は、該細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられ、
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を該動物に投与する工程と、
動物における該化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、
Vは、該細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする方法。
【請求項1】
下式
の化合物であって、
Vは、in vivoにおいてレセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0であり、かつ、
kは、1または0である、
ことを特徴とする化合物。
【請求項2】
Vが、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12、および、ビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、その、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記放射性核種が、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記放射性核種が、テクネチウムの同位元素であることを特徴とする、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Vが、葉酸塩、または、葉酸レセプターに結合するそのアナログもしくはその誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、
Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする画像診断用組成物。
【請求項7】
前記化合物中のVが、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12およびビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物中の前記放射性核種が、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物中の前記放射性核種が、テクネチウムの同位元素であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
非経口投与に適応した請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
Vが、葉酸塩、または、葉酸レセプターに結合するそのアナログもしくはその誘導体であることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。
【請求項12】
動物における細胞集団を画像化する方法であって、
該細胞は、該細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられ、
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を該動物に投与する工程と、
動物における該化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、
Vは、該細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記化合物中のVが、葉酸塩、リボフラビン、チアミン、ビタミンB12およびビオチンからなる群から選択されるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物中の前記放射性核種が、ガリウム、インジウム、銅、テクネチウムおよびレニウムの同位元素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物中の前記放射性核種が、テクネチウムの同位元素であることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、患者に対して非経口的に投与されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
Vが、葉酸塩、または、葉酸レセプターに結合するそのアナログまたはその誘導体であることを特徴とする、請求項12に記載の化合物。
【請求項18】
下式
の化合物であって、
Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0であり、かつ、
kは、1または0である、
ことを特徴とする化合物。
【請求項19】
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する画像診断用組成物であって、
Vは、in vivoにおいて、レセプターが媒介する膜貫通輸送の基質であるビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする画像診断用組成物。
【請求項20】
動物における細胞集団を画像化する方法であって、
該細胞は、該細胞表面上のビタミンレセプターによって特徴付けられ、
下式
の化合物、およびその化合物に対して薬学的に受容可能なキャリアを含有する組成物の有効量を該動物に投与する工程と、
動物における該化合物の生体分布をモニターする工程を包含し、
Vは、該細胞表面ビタミンレセプターに対して特異的なビタミン、または、ビタミンレセプターに結合するその誘導体もしくはそのアナログであり、
Lは、2価のリンカーであり、
Rは、式H2NCHRCOOHで表されるアミノ酸側鎖であり、
Mは、放射性核種の陽イオンであり、
nは、1または0である、
ことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23A】
【図23B】
【公開番号】特開2011−12066(P2011−12066A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−161087(P2010−161087)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【分割の表示】特願2004−500925(P2004−500925)の分割
【原出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161087(P2010−161087)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【分割の表示】特願2004−500925(P2004−500925)の分割
【原出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】
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