説明

ビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチドVKORC1、クマリンおよびその誘導体の治療標的

本発明は、クマリンおよびその誘導体の標的としての、新規ポリペプチド、ビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)に関する。本発明はさらに、クマリン誘導体を同定する方法を提供し、VKORC1関連欠乏症、例えば、ワルファリン耐性と関連する配列異常を含むVKORC1ポリペプチドおよびVKORC1核酸であって、これらの欠乏症の診断に用いられ得るVKORC1ポリペプチドおよびVKORC1核酸もまた特許請求する。さらに、本発明は、げっ歯動物の駆除に使用可能なクマリン誘導体を同定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、クマリンおよびその誘導体の標的となる、新規ポリペプチド、ビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)に関する。本発明はさらに、クマリン誘導体を同定する方法を提供し、VKORC1関連欠乏症、例えば、ワルファリン耐性と関連する配列異常を含むVKORC1ポリペプチドおよびVKORC1核酸であって、これらの欠乏症の診断に用いることが可能なVKORC1ポリペプチドおよびVKORC1核酸の特許も主張する。さらに、本発明は、げっ歯類の駆除に使用が可能なクマリン誘導体を同定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
血栓発生に対し緊急な処置および、長期的な防止をするためには、血液凝固の抑制が治療選択肢となる。いくつかの抗凝固剤のある中で、クマリンは、例えば、術後で動けない患者、慢性心不全患者、アテローム性血管病を抱える患者、悪性腫瘍患者、および妊娠患者における血栓症の予防に広く使用されている。さらに、クマリンは、血栓症の治療および予防においてもっとも広く使用される経口性抗凝固剤である[非特許文献1]。クマリンは、典型的には、6−ヒドロキシクマリンの誘導体、例えば、3−(アセトニルベンジル)−4−ヒドロキシクマリン(COUMADIN(登録商標))である。
【0003】
クマリンは、ビタミンKサイクルを抑制することによって間接的にではあるが血液凝固カスケード反応を標的にする。
【0004】
ビタミンKは、調節タンパクの一種であるGlaタンパクのγ−カルボキシル化による翻訳後活性化において必須の補因子である。いくつかの代謝経路において、重要なタンパクのいくつかが、適正な働きのためにカルボキシル化を必要とする。血液凝固カスケード反応は、その中でももっともよく研究された例である。この反応では、凝固促進因子II、VII、IX、X、および抗凝固因子であるタンパクC、タンパクS、タンパクZは、γ−カルボキシル化に依存する。この翻訳後修飾によって、血液凝固活性化の必須課程である、修飾タンパクの−カルシウムの存在下における−リン脂質二重層膜に対する付着が可能になる[非特許文献2][非特許文献3]。γ−カルボキシル化を必要とする他のタンパクとしては、いずれも骨代謝の調節因子である基質glaタンパクおよびオステオカルシン[非特許文献4]、細胞サイクルのシグナル伝達タンパクである「成長停止特異的遺伝子」[非特許文献5][非特許文献6]がある。
【0005】
γ−カルボキシル化の最中、肝臓のミクロソームにおいて、カルボキシル基は、酵素γ−グルタミルカルボキシラーゼによって、標的タンパクのグルタミン酸残基に導入される[非特許文献7][非特許文献1]。この反応は、補因子として、定量の還元型ビタミンK1ヒドロキノン(ビタミンK1H2)を必要とする。このビタミンK1H2は、酸化されるとビタミンK−2,3エポキシドになる[非特許文献8]。この活性型補因子の再生は、K−2,3−エポキシド還元酵素(VKOR)と呼ばれる多数タンパク質の複合体によって仲介される[非特許文献9]。この同じ複合体は、げっ歯類駆除に使用されるクマリン型毒素の標的となる。この「ビタミンKサイクル」の特性は生化学的にその詳細が明らかにされているが、その分子成分はまだ、均質性に至るまで精製されていない[非特許文献10]。さらに、クマリン活性の分子的性質、およびクマリンと相互作用を有する分子も依然として判明していない。
【0006】
クマリンの服用は、全体として効果的ではあるけれども、いくつか限界のあることが従来技術において認められている。先ず、クマリン治療が効かないヒトがいることが挙げられる。クマリンによる経口的抗凝固治療を受けているにも拘わらず凝固因子の活性を正常に保つ人々に対して、ワルファリン耐性(WR)という用語が用いられる(OMIMアクセス番号122700)。いくつかの家系において常染色体優勢遺伝が観察されている[非特許文献11][非特許文献12]。ビタミンK依存性凝固因子(VKCFD)全てが組み合わさった欠乏症は、ヒトにおける極めて稀な常染色体劣勢遺伝の出血障害であり、これまで14例しか報告されていない[非特許文献13][非特許文献14][非特許文献15][非特許文献16][非特許文献17][非特許文献18][非特許文献19][非特許文献20][非特許文献21][非特許文献22][非特許文献23][非特許文献24][非特許文献25]。この病気の臨床症状としては、時に致命的な結果をもたらす周産期における脳内出血発作が挙げられる。この出血傾向は、通常は、ビタミンKの経口投与によって完全に覆される。新生児では、ワルファリン胎児障害に似た鼻および末端指節の発育不全、および骨端線の早すぎる石灰化の新たな症状が加わることがある[非特許文献19]。この疾患は、不十分なビタミンKの吸収/肝臓輸送[非特許文献26]か、または、γ−カルボキシル化に関与する複数の遺伝子の内の一つにおける突然変異、のいずれかによって起こる可能性がある。サブタイプ1では(VKCDF1、OMIM#277450)、染色体2p12のGGCX遺伝子の突然変異が、凝固因子の不十分なカルボキシル化を招く[非特許文献23][非特許文献24]。家族性複数凝固因子欠乏症(FMFD、現在では名前を改めてVKCFD2、OMIM#607473)を有する二つの家系を連鎖解析したところ、染色体16p21−q21の中心辺領域に連鎖が見られることが報告されている[非特許文献27]。VKCFD2を有する患者では、ビタミンKエポキシドの血清レベルが有意に増加することが示された。これは、VKOR複合体のサブユニットの内の一つに欠損のあることを示唆する。以上まとめると、ワルファリン耐性を示す患者が存在することが証明される。そのため、これらの患者を治療するのに有効な抗凝固剤となる、新規のクマリン誘導体を同定する必要があり、従って、それらクマリン誘導体を同定する方法を実現する必要がある。
【0007】
クマリンの服用は、かなりの死亡率を示す自発性出血の危険性がつきものである。さらに、クマリンの維持用量を正確に予測することは難しい。クマリンの作用を受ける標的分子が存在しない場合、治療処方は患者毎に決めなければならない。最適処方がまだ決まらない内は、血栓形成の危険性が増すか、または出血の危険性が増し、そのため患者は苦しむことになる。従って、より速やかで、より安全な最適治療処方を確定する方法が求められている。さらに、最適治療処方の確立は、クマリンの投与から抗凝固活性の開始まで相当の時間がかかるため複雑になっている。クマリンの作用には遅延のあること、クマリンは時間と共に蓄積する傾向のあることから、従来技術で既知のクマリンよりも速やかに血液凝固をもたらすクマリン誘導体が求められている。さらに、クマリンの蓄積を防止または緩和することが可能であり、ひいては過剰投与の危険を低下または阻止することが可能なように、より速やかに代謝されるクマリンが求められている。
【0008】
血栓がある状態においてクマリン投与を始めた場合、タンパクCおよびSの濃度が低下し、従って一時的に血栓発生の可能性が高まることがある。これは、通常、数日間、ヘパリンとクマリンの投与を重複させることによって補償される。このような制限のない、または、少なくとも制限の程度がより低くなった、新規のクマリン誘導体をスクリーニングすることを可能とするために、上記と同じくクマリン活性の分子標的を同定することが求められている。
【0009】
クマリン治療は、場合によって、患者に皮膚壊死を招き、妊娠時に適用されると胎児障害をもたらすことがある。従って、このような作用を招くことのない新規クマリン誘導体が求められている。
【0010】
薬剤とクマリンの間にはいくつかの相互作用がある。このような薬剤のいくつか、例えば、フェノバルビタールは、クマリンの代謝を促進することによってクマリンの血漿レベルを下げるが、これは、シトクロームP450混合機能オキシダーゼのような混合機能オキシダーゼによって誘導されると考えられている。このような相互作用は臨床的関連を有する。例えば、フェノバルビタールとクマリンの適切な処方が決められ、後になってフェノバルビタールの投与のみが中断された場合、クマリンの血漿レベルの上昇を招くことになり、これは過度の抗凝固作用の原因となる。その他の薬剤、例えばアミオダロンもクマリンの代謝を遅らせるので、この場合も、クマリンと同時投与した場合、過度の抗凝固作用をもたらす。クマリンの作用を受ける分子は従来技術で知られていないので、上記諸問題を解決するために、新規のクマリンの開発、および新規クマリンを同定するためのツールが求められている。
【0011】
最後に、クマリン、特にワルファリンは、ヒトにおいて使用されるのみならず、1950年以来、殺鼠組成物における活性成分として用いられている。殺鼠剤としてのワルファリンの有効性の根拠は、それが、少量、複数回の用量で効果的な抗凝固作用を呈するという事実にある。この化合物を1回または2回投与しただけでは、推奨濃度で摂取した場合でも致命的になることは滅多にない。従って、ヒト、家畜、および野生動物に対する急性毒性の危険性は大きく緩和される。通常、げっ歯類は、この物質を4から5日間毎日摂った後に死に始めるので、集団は、ほぼ3週間内で激減するか、根絶される。死は、血液の凝固作用を下げるワルファリンの活性によって引き起こされる出血によってもたらされる。これらの出血は、外部的な場合も内部的な場合もあるが、ごく僅かな傷または毛細管傷害によって誘発されることがある。クマリンの、他の利点の内のもう一つを挙げると、げっ歯類を殺すのに複数回の摂取が必要とされるので、ネズミ達は、撒き餌忌避に至らないという点である。1969年を最初に、げっ歯類、特にネズミは、それよりやや程度は劣るが二十日ネズミも、ワルファリン撒き餌に対して耐性を示し始めている。このような耐性は遺伝的根拠に基づくものとするのが一般的仮説である。げっ歯類駆除において使用されるワルファリン誘導体が標的とするのが、前述のVKORC1複合体である[Jackson et al.,1988]。げっ歯類のいくつかの野性集団においてクマリン誘導体に対する耐性が自然発生的に生じ、このため、げっ歯類駆除用にこれらの薬剤を使用することが局所的に無効になっている。ワルファリン耐性に対する常染色体優勢座位が、マウス(War)の染色体7に位置づけられ[非特許文献28]、ラット(Rw)では、染色体1の長腕に位置づけられる[非特許文献29][非特許文献30]。VKOR複合体が、クマリン薬剤の標的であるのだから、耐性は、VKOR複合体のタンパク成分の一つの変化を介して起こるものと考えられる[非特許文献31]。げっ歯類における耐性の進行から、クマリン作用の標的を同定することが求められている。なぜなら、そのような標的が見つかれば、それは、害獣駆除に使用される新規クマリン誘導体の開発を促進すると考えられるからである。
【0012】
以上を総合し、哺乳類においてクマリンおよびその誘導体における標的分子を提供するのが本発明の一つの目的である。前述の問題点の内少なくとも一つを解決する新規クマリンを同定するための方法を提供するのが本発明のもう一つの目的である。ヒト、および非ヒト哺乳類、特にげっ歯類においてワルファリン耐性を引き起こすポリペプチド、およびそれらポリペプチドをコードする核酸を同定するのが、本発明のさらにもう一つの目的である。本発明のさらにもう一つの目的は、ワルファリン耐性による疾患、家族性複数因子欠乏症、血液凝固上昇と関連する障害または疾患、例えば、血栓症を抱える患者および/または血栓発生の危険度の高い患者、例えば、遺伝的に血栓形成の危険度が高い患者、特に手術または妊娠のために血栓形成の危険度が上昇している患者、および、血管石灰化が進んでいる患者、の内から選択される障害および疾患を診断、予防、および/または治療することである。さらに、本発明の目的は、血液凝固の低下と関連する疾患または障害、例えば、血友病、障害関連性の血管石灰化低下、および、出血危険度が上昇する障害および疾患を診断、予防、および/または治療することである。最後に、非ヒト哺乳類の害獣駆除に効果的なクマリンおよびその誘導体、および、げっ歯類を殺す組成物を同定するための方法を提供するのが本発明の目的である。
【非特許文献1】Suttie, J. W.「The biochemical basis of warfarin therapy」Adv Exp Med Biol (1987年)214:p.3−16.
【非特許文献2】Sperling, R., Furie, B. C., Blumenstein, M., Keyt, B.,およびFurie, B.「Metal binding properties of gamma−carboxyglutamic acid. Implications for the vitamin K−dependent blood coagulation proteins」J Biol Chem (1978年)253:p.3898−3906.
【非特許文献3】Esmon, C. T., Suttie, J. W.,およびJackson, C. M.「The functional significance of vitamin K action. Difference in phospholipid binding between normal and abnormal prothrombin」J Biol Chem (1975年)250:p.4095−4099.
【非特許文献4】Price, P. A.「Role of vitamin−K−dependent proteins in bone metabolism」Annu Rev Nutr (1988年)8:p.565−583.
【非特許文献5】Manfioletti, G., Brancolini, C., Avanzi, G.,およびSchneider, C.「The protein encoded by a growth arrest−specific gene(gas6) is a new member of the vitamin K−dependent proteins related to protein S, a negative coregulator in the blood coagulation cascade」Mol Cell Biol (1993年)13:p.4976−4985.
【非特許文献6】Stitt, T. N., Conn, G., Gore, M., Lai, C., Bruno, J., Radziejewski, C., Mattsson, K., Fisher, J., Gies, D. R., Jones, P. F.,ら「The anticoagulation factor protein S and its relative, Gas6, are ligands for the Tyro 3/Axl family of receptor tyrosine kinases」Cell (1995年)80:p.661−670.
【非特許文献7】Furie, B.,およびFurie, B. C.「The molecular basis of blood coagulation」Cell (1988年)53:p.505−518.
【非特許文献8】Cain, D., Hutson, S. M.,およびWallin, R.「Assembly of the warfarin−sensitive vitamin K 2,3−epoxide reductase enzyme complex in the endoplasmic reticulum membrane」J Biol Chem (1997年)272:p.29068−29075.
【非特許文献9】Wallin, R.,およびMartin, L. F.「Vitamin K−dependent carboxylation and vitamin K metabolism in liver. Effects of warfarin」J Clin Invest (1985年)76:p.1879−1884.
【非特許文献10】Guenthner, T. M., Cai, D.,およびWallin, R.「Co−purification of microsomal epoxide hydrolase with the warfarin−sensitive vitamin K1 oxide reductase of the vitamin K cycle」Biochem Pharmacol (1998年)55:p.169−175.
【非特許文献11】O’Reilly, R. A., Aggeler, P. M., Silvija Hoag, M., Leong, L. S.,およびKropatkin, M. L.「Hereditary transmission of exceptional resistance to coumarin anticoagulant drugs: the first reported kindred」N Engl J Med (1964年)271:p.809−815.
【非特許文献12】O’Reilly, R. A.「The second reported kindred with hereditary resistance to oral anticoagulant drugs」N Engl J Med (1970年)282:p.1448−1451.
【非特許文献13】McMillan, C. W.,およびRoberts, H. R.「Congenital combined deficiency of coagulation factors II, VII, IX and X. Report of a case」N Engl J Med (1966年)274:p.1313−1315.
【非特許文献14】Fischer, M.,およびE., Z.「Kongenitaler Mangel der Faktoren II, VIII und X」Zeitschrift fur Kinderheilkunde (1966年)95:p.309−323.
【非特許文献15】Johnson, C. A., Chung, K. S., McGrath, K. M., Bean, P. E.,およびRoberts, H. R.「Characterization of a variant prothrombin in a patient congenitally deficient in factors II,VII, IX and X」Br J Haematol (1980年)44:p.461−469.
【非特許文献16】Goldsmith, G. H., Jr., Pence, R. E., Ratnoff, O. D., Adelstein, D. J.,およびFurie, B.「Studies on a family with combined functional deficiencies of vitamin K−dependent coagulation factors」J Clin Invest (1982年)69:p.1253−1260.
【非特許文献17】Vicente, V., Maia, R., Alberca, I., Tamagnini, G. P.,およびLopez Borrasca, A.「Congenital deficiency of vitamin K−dependent coagulation factors and protein C」Thromb Haemost (1984年)51:p.343−346.
【非特許文献18】Ekelund, H., Lindeberg, L.,およびWranne, L.「Combined deficiency of coagulation factors II, VII, IX, and X: a case of probable congenital origin」Pediatr Hematol Oncol (1986年)3:p.187−193.
【非特許文献19】Pauli, R. M., Lian, J. B., Mosher, D. F.,およびSuttie, J. W.「Association of congenital deficiency of multiple vitamin K−dependent coagulation factors and the phenotype of the warfarin embryopathy: clues to the mechanism of teratogenicity of coumarin derivatives」Am J Hum Genet (1987年)41:p.566−583.
【非特許文献20】Leonard, C.O.「Vitamin K responsive bleeding disorder: a genocopy of the warfarin embryopathy」Proceedings of the Greenwood Genetic Center (1988年)7:p.165−166.
【非特許文献21】Pechlaner, C., Vogel, W., Erhart, R., Pumpel, E.,およびKunz, F.「A new case of combined deficiency of vitamin K dependent coagulation factors」Thromb Haemost (1992年)68:p.617.
【非特許文献22】Boneh, A.,およびBar−Ziv, J.「Hereditary deficiency of vitamin K−dependent coagulation factors with skeletal abnormalities」Am J Med Genet (1996年)65:p.241−243.
【非特許文献23】Brenner, B., Sanchez−Vega, B., Wu, S. M., Lanir, N., Stafford, D. W.,およびSolera, J.「A missense mutation in gamma−glutamyl carboxylase gene causes combined deficiency of all vitamin K−dependent blood coagulation factors」Blood (1998年)92:p.4554−4559.
【非特許文献24】Spronk, H. M., Farah, R. A., Buchanan, G. R., Vermeer, C.,およびSoute, B. A.「Novel mutation in the gamma−glutamyl carboxylase gene resulting in congenital combined deficiency of all vitamin K−dependent blood coagulation factors」Blood (2000年)96:p.3650−3652.
【非特許文献25】Oldenburg, J., von Brederlow, B., Fregin, A., Rost, S., Wolz, W., Eberl, W., Eber, S., Lenz, E., Schwaab, R., Brackmann, H. H.,ら「Congenital deficiency of vitamin K dependent coagulation factors in two families presents as a genetic defect of the vitamin K−epoxide− reductase−complex」Thromb Haemost (2000年)84:p.937−941.
【非特許文献26】Petersen, C. E., Ha, C. E., Curry, S.,およびBhagavan, N. V.「Probing the structure of the warfarin−binding site on human serum albumin using site−directed mutagenesis」Proteins (2002年)47:p.116−125.
【非特許文献27】Fregin, A., Rost, S., Wolz, W., Krebsova, A., Muller, C. R.,およびOldenburg, J.「Homozygosity mapping of a second gene locus for hereditary combined deficiency of vitamin K−dependent clotting factors to the centromeric region of chromosome 16」Blood (2002年)100:p.3229−3232.
【非特許文献28】Wallace, M. E.,およびMacSwiney, F. J.「A major gene controlling warfarin−resistance in the house mouse」J Hyg(Lond) (1976年)76:p.173−181.
【非特許文献29】Greavses, J. H.,およびAyres, P.「Heritable resistance to warfarin in rats」Nature (1967年)215:p.877−878.
【非特許文献30】Kohn, M. H.,およびPelz, H. J.「Genomic assignment of the warfarin resistance locus, Rw, in the rat」Mamm Genome (1999年)10:p.696−698.
【非特許文献31】Jackson, W. B., Ashton, A. D.,およびDelventhal, K.(1988年)「Overview of anticoagulant rodenticide usage and resistance」Current advances in vitamin K research, J. W. Suttie(編)(New York, Elsivier),p.381−397.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
前述の目的を解決する試みにおいて、下記の群から選択されるポリペプチド配列を含む、または該配列から成るビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)が提供される。
(a)配列番号1、12、17、21、25、および27による配列からなる群から選択されるポリペプチド配列;
(b)(a)に規定されるポリペプチド配列の、対立遺伝子のポリペプチド配列;
(c)(a)または(b)に規定されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%の相同性を有し、VKORC1活性を有するポリペプチド配列;
(d)(a)、(b)、または(c)に定義され、VKORC1活性を有するポリペプチド配列のフラグメントのポリペプチド配列。
【0014】
さらに、本発明の別の局面によれば、本発明によるVKORC1ポリペプチドをコードする核酸が提供される。
【0015】
さらに、本発明の別の局面によれば、本発明によるVKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼすクマリン誘導体を同定する方法であって、下記の工程を含む方法が提供される。すなわち、
(I)VKORC1核酸、または、VKORC1核酸を含むベクターを導入された宿主細胞を提供する工程;
(II)該宿主細胞においてVKORC1ポリペプチドを発現する工程;
(III)候補のクマリン誘導体を投与する工程;
(IV)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(候補活性値);
(V)候補活性値をコントロール活性値と比較する工程;および、
(VI)候補活性値がコントロール活性値と有意に異なる場合、その候補クマリン誘導体を、VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼすクマリン誘導体であると同定する工程。
【0016】
さらに、VKORC1活性に対して発揮されるクマリン作用を伝達するVKORC1ポリペプチド配列を決定する方法であって、下記の工程を含み、
(I)少なくとも一つの配列異常を有する、本発明によるVKORC1ポリペプチドを発現する細胞を提供する工程;
(II)クマリンまたはその誘導体を該細胞に投与する工程;
(III)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(配列異常活性値);および、
(IV)配列異常活性値を、コントロール配列活性値と比較する工程、
コントロール配列活性値に対する、配列異常活性値の有意な偏差は、そのVKORC1ポリペプチドの配列異常は、VKORC1ポリペプチドに対して発揮されるクマリン作用を伝えるものであることを示すものとする方法が提供される。
【0017】
本発明の別の局面では、本発明によるVKORC1ポリペプチドであって、VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼす、少なくとも一つの配列異常を含むVKORC1ポリペプチドが提供される。
【0018】
さらに、本発明の別の局面によれば、患者においてVKORC1関連欠乏症を診断する方法であって、
(I)患者から得られたDNAサンプルを増幅する工程、または、患者から得られたRNAサンプルを逆転写してDNAとし、そのDNAを増幅する工程;
(II)工程(I)の増幅DNAを分析し、請求項1のVKORC1ポリペプチドをコードする核酸配列において、または、VKORC1ポリペプチドのアミノ酸配列において少なくとも一つの配列異常を決定する工程、
を含み、求められた配列異常は、患者が、VKORC1関連欠乏症に罹患すること、好ましくは該配列異常は、VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼすことを示すものとする方法が提供される。
【0019】
さらに、本発明の別の局面によれば、ワルファリン耐性げっ歯類に対して毒物学的に有効なクマリン誘導体を同定する方法であって、
(I)ワルファリン耐性げっ歯動物を提供する工程;
(II)該げっ歯動物に候補クマリン誘導体を投与する工程;
(III)げっ歯動物に対する候補クマリン誘導体の毒性を定量する工程(候補クマリン誘導体毒性値);
(IV)候補クマリン誘導体毒性値をコントロールクマリン毒性値と比較する工程;
(V)候補クマリン誘導体毒性値が、コントロールクマリン毒性値よりも有意に大きい場合、その候補クマリン誘導体を、げっ歯類殺作用において効果的なクマリン誘導体であると同定する工程、
を含む方法が提供される。
【0020】
本発明の別の局面によれば、特定されたクマリン誘導体は、げっ歯類を殺すための組成物に含めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
新規クマリン誘導体の開発の必要性、クマリンおよびその誘導体の標的の特定の必要性に応えるために、ビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)をクローンした。この遺伝子は、今まで知られていない5126bpのゲノム領域に及び、163個のアミノ酸から成るタンパクをコードする3個のエキソンを含んでいた。トポロジー分析から、少なくとも2個の膜貫通ドメインを有する、疎水性の高いタンパクであることが示唆された。これは、VKORC1複合体の活性がER膜に局在するという既知の事実、および、VKORC1構築物によってトランスフェクトされたCOS−7細胞の免疫蛍光染色データ(図5)とも一致する。
【0022】
実は、VKORC1遺伝子は、ワルファリン耐性患者の突然変異スクリーニングにおいて特定されたのである(詳細については、実施例1および2参照)。本発明によれば、意外なことに、全てのビタミンK依存性凝固因子(VKCFD2)の複合欠損を有する患者、ワルファリン耐性(WR)を有する患者それぞれにおいて突然変異を示す遺伝子VKORC1が特定された。これは、VKORC1ポリペプチドが、ワルファリンに対する結合部位を含むこと、従ってクマリンとその誘導体の標的であることを示す。これらの突然変異が二つの表現型の原因であるという証拠は下記の通りである。
(i)R98W突然変異は、VKCFD2を有する、互いに無関係の二つ家族において病気と共に分離する;
(ii)98位置におけるこのアルギニンは、それぞれ、ヒト遺伝子、およびマウスとラットの相同遺伝子において保存されている;
(iii)三人のワルファリン耐性の兄弟が、R58G置換を共通に持っている;
(iv)このアミノ酸、および、さらに二人の、互いに無関係なWR患者(V29LおよびL128R)において突然変異を示すことが判明した他のアミノ酸残基が、3種の細菌遺伝子を除き、分析した全ての動物種において保存されている(図3参照);および、
(v)5種の予想突然変異のどれも、192個のコントロールDNAサンプルの中に見られなかった。
【0023】
さらに、ゲノムおよびタンパクデータベースについてホモロジー探索をしたが、VKORC1は、指定の機能のいずれのタンパクまたはペプチドドメインに対しても全く類似性を示さなかった。しかしながら、相同遺伝子が、脊椎動物(ラット、マウス、アフリカツメガエル、フグ)、昆虫(Anopheles)、および細菌に認められた(図3)。驚くべきことに、3種の哺乳動物およびフグは、それぞれ、同族遺伝子と中等度の近似性を有する、第2のVKORC1様遺伝子を持っている。これらの遺伝子の中のいくつかのアミノ酸位置は、進化を通じて保存されている。これは、γ−カルボキシル化が、従って、その過程において補因子としてビタミンKが使用されることが、進化的に古い、翻訳後タンパク修飾であるという確実とされる事実に一致する[Bandyopadhyay et al.,2002]。
【0024】
バリン29、アルギニン58、ロイシン128、これらは全VKORC1ポリペプチドにおいて広く分散しているけれども、これらの置換は、ワルファリンによるVKORC1活性の抑制を明らかに無効にする。これらのアミノ酸は、VKORC1タンパク1の三次元構造と機能的に協働することが予想される。以上まとめると、二つの異なる表現型を有する患者における突然変異データから、VKORC1が、ビタミンKおよびワルファリンの結合の両方に対して標的タンパクであることが確かめられた。
【0025】
本発明の一つの局面では、下記からなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、または、好ましくは該配列から成るビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)が提供される。
(a)配列番号1、12、17、21、25、および27による配列からなる群から選択されるポリペプチド配列;
(b)(a)に規定されるポリペプチド配列の、対立遺伝子のポリペプチド配列;
(c)(a)または(b)に規定されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%の相同性を有し、VKORC1活性を有するポリペプチド配列;
(d)(a)、(b)、または(c)に定義され、VKORC1活性を有するポリペプチド配列のフラグメントのポリペプチド配列。
【0026】
VKORC1ポリペプチドは、哺乳類において、クマリンおよびその誘導体に対する標的であることが好ましい。
【0027】
本発明における意味として、「VKORC1ポリペプチド」という用語は、先行パラグラフで定義したVKORC1ポリペプチドの配列全長を指す。「VKORC1ポリペプチド」という用語はまた、単離されたVKORC1ポリペプチド、および、組み換え法、例えば、VKORC1ポリペプチドを発現するサンプルや、宿主細胞から、ライブラリーをスクリーニングし、タンパク合成することによって単離・精製することによって調製されるVKORC1ポリペプチドを含む。上記方法は全て一般に当業者には既知である。VKORC1全体ポリペプチド、またはその一部は、例えば、従来の合成法、例えば、メリーフィールド法を用いて合成可能であることが好ましい。「VKORC1ポリペプチド」という用語はまた、そのVKORC1ポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、配列番号1、12、17、21、25、および27の内の一つによるVKORC1ポリペプチドと、約80%、好ましくは約90%、特に約95%、特別に約98%の配列相同性を有するポリペプチドを含む。さらに、「VKORC1ポリペプチド」という用語はまた、そのVKORC1ポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、ヒト以外の生物、好ましくは、非ヒト哺乳類、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、ラット、あるいは、サルおよびブタ、およびその他の脊椎動物および無脊椎動物に由来する相同ポリペプチド、例えば、配列番号12、17、21、25、27によるアミノ酸配列を含むことが好ましい。「VKORC1ポリペプチド」という用語は、そのVKORC1ポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、異なる個体、1個の生物の異なる器官、または、異なる発達相における、その遺伝子の別の対立遺伝子によってコードされるVKORC1ポリペプチドを含むことがさらに好ましい。さらに、「VKORC1ポリペプチド」という用語は、VKORC1ポリペプチドの活性に対して全く作用を及ぼさない、またはごく僅かな作用を及ぼす天然の突然変異、または合成突然変異をも含むものとする。「VKORC1ポリペプチド」という用語に含まれるその他の好ましいポリペプチドとしては、そのVKORC1ポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、VKORC1転写物の選択的スプライシングによって生じさせることができるVKOCR1ポリペプチドが挙げられる。
【0028】
「ポリペプチド配列のフラグメント」という用語は、VKORC1ポリペプチドの配列全長の少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%を含む、または、上記パーセントから成る、VKORC1ポリペプチドの部分配列を含むものとする。特に、フラグメントは、VKORC1ポリペプチドの単一連続配列から成ることが好ましいが、フラグメントは、本発明によるVKORC1ポリペプチドの少なくとも2個、少なくとも3個、または少なくとも5個の異なる配列部分を含んでもよく、その配列部分は、その間に、異種配列が分散していてもいなくともよく、あるいは、余分なポリペプチド配列を全く含まなくともよい。
【0029】
「配列相同性」という用語は、当然のことながら、二つの配列の同一性の程度(同一性%)を指し、ポリペプチドの場合であれば、例えば、BlastP2.0.1を用いて、核酸の場合であれば、例えば、BLASTIN2.014を用いて定量が可能である。ただし、フィルターはオフに設定しBLOSUMは62とする(Altshul et al.,1997)。
【0030】
本発明の意味における「VKORC1活性」とは、配列番号1のVKORC1ポリペプチドの生物学的活性を意味するものとする。さらに好ましくは、「VKORC1活性」は、ビタミンK2,3−エポキシドを、ビタミンK−キノンに酵素的に変換する(または酵素的変換を支持する)、および/または、ビタミンKキノンをビタミンKハイドロキノンに変換するVKORC1ポリペプチドの活性と規定される。VKORC1活性は、実施例7および図10に詳細に記述される実験に基づくアッセイを用いて定量してもよい。このアッセイを用いて、任意のVKORC1ポリペプチド、またはそのようなVKORC1ポリペプチドをコードする核酸分子を発現する細胞において、ビタミンKキノン(産物/基質+産物)に変換されたビタミンKエポキシドのパーセント測定値を求めた場合、HEK293細胞のVKOR基礎活性を、約1%(HEK293細胞で、トランスフェクトされていなものは1.49%、擬似トランスフェクトされたものは0.96%)から約15%以上、好ましくは約18%以上、好ましくは約20%以上、もっとも好ましくは25%以上に上昇する値が、本発明の意味におけるVKORC1活性と考えられる。
【0031】
本発明によるVKORC1ポリペプチドは、下記にさらに精しく述べる方法を用いて生産してもよい。取り分け、VKORC1ポリペプチドは、前述の問題点を回避するクマリン誘導体を同定するのに有用である。特に、このVKORC1ポリペプチドは、VKORC1活性を効果的に抑制するクマリン誘導体を同定するのに有用であり、独立アッセイにおいて、(1)従来技術で既知のクマリンよりも速やかに代謝されるクマリン誘導体を同定するために、その代謝半減期について試験する際に有用であり、(2)皮膚壊死を全く起こさない、または従来技術で既知のクマリンよりも起こす程度が低いクマリン誘導体を同定するために、皮膚壊死誘発能力を試験する際にも、(3)従来技術で既知のクマリンに比べて副作用の少ないクマリン誘導体を同定するために、クマリン誘導体−薬剤相互作用を試験する際にも有用である。さらに、本発明によるVKORC1ポリペプチドは、クマリンおよびその誘導体と相互作用を有するVKORC1配列を特定したり、コントロールレベルに比べてVKORC1活性が低い、または高い患者を治療するのに有用である。
【0032】
別の局面において、本発明は、下記からなる群から選択される核酸配列を含む、または該配列から成るVKORC1核酸に関する。
(a)本発明によるVKORC1ポリペプチドをコードする核酸配列;
(b)配列番号2、13、18、22、26、および28による配列からなる群から選択される核酸配列;
(c)(a)または(b)に規定される核酸配列に対して厳密条件の下にハイブリダイズし、かつ、VKORC1活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列;
(d)(a)、(b)または(c)に規定される核酸配列に対して、遺伝子コードの縮重がなければ、好ましくは厳密条件下にハイブリダイズし、かつ、VKORC1活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列;および、
(e)(a)、(b)、(c)、または(d)に規定される核酸配列のフラグメントであって、VKORC1活性を有するポリペプチドをコードするフラグメント。
【0033】
「VKORC1核酸」という用語は、1本鎖であってもよいが、好ましくは2本鎖分子であるRNAまたはDNAに関する。VKORC1核酸の配列はさらに、少なくとも1個のイントロンおよび/またはポリA配列を含んでもよい。「VKORC1核酸」という用語はまた、前段階、例えば、そのプロポリペプチド、またはプレプロポリペプチドを含んでもよい。さらに、コードされたポリペプチドの活性が大きく変更されない限り、核酸の5′末端および/または3′末端に、未翻訳配列が存在することが可能である。しかしながら、VKORC1ポリペプチドをコードするDNA領域が特に好ましい。真核細胞では、この領域は、コザック配列(Kozak,1987)に配される最初の開始コドン(ATG)で始まり、そのATGと同じ読み枠に配される次の終止コドンまで延びる。前核細胞では、この領域は、シャインダルガルノ配列の後の最初のAUG(またはGUG)で始まり、そのATGと同じ読み枠に配される次の終止コドン(TAG、TGA、またはTAA)で終わる。さらに、「VKORC1核酸」という用語はまた、その核酸によってコードされるVKORC1ポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、配列番号2、13、18、22、26、および28による配列に対し、好ましくは配列番号2による配列に対し、少なくとも約70%、特に少なくとも約80%、特別に少なくとも約90%の配列相同性を示す配列を含んでもよい。本発明の好ましい実施態様では、核酸は、先行パラグラフに規定されるVKORC1核酸に対して相補的な配列、および/または、そのアンチセンス配列を有する核酸を含む。VKORC1核酸はまた、その核酸によってコードされるVKORC1ポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、上に定義したVKORC1核酸の非機能的突然変異種、例えば、一塩基多型(SNP)、例えば、配列番号8および9による核酸配列を含んでもよい。
【0034】
「厳密ハイブリダイゼーション条件」という用語は、例えば、ハイブリダイゼーションが起こるのが、60℃の2.5xSSCバッファー、その後比較的低いバッファー濃度において37℃で数回の洗浄で安定化される条件を意味するものと理解しなければならない。
【0035】
「VKORC1活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列のフラグメント」という用語は、そのフラグメントによってコードされるポリペプチドがVKORC1活性を有する限りにおいて、本発明によるVKORC1ポリペプチドをコードする配列全長、好ましくは配列番号1によるポリペプチドをコードする配列全長に対し、少なくとも約60%、好ましくは少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、さらに好ましくは少なくとも約95%を含む、より好ましくは上記パーセントから成る核酸配列フラグメントを含むと理解される。特に、フラグメントは、VKORC1ポリペプチドの単一連続配列から成ることが好ましいが、フラグメントは、全ての配列部分が同じ読み枠に配置されている限りにおいて、本発明によるVKORC1ポリペプチドの少なくとも2個、少なくとも3個、または少なくとも5個の異なる配列部分を含んでもよく、その配列部分は、その間に、異種配列が分散していてもいなくともよく、あるいは、余分な核酸配列を全く含まなくともよい。これらのフラグメントの定義において、フラグメントがVKORC1活性を示すことは必須である。
【0036】
VKORC1核酸は、熟練した当業者に一般的に既知の方法によって生産することが可能である。核酸は合成的に調製してもよい。すなわち、VKORC1核酸は、例えば、化学的に、例えば、上に定義した核酸配列の助けを借りて、および/または、同様に配列番号1として上に定義したポリペプチド配列の助けを借り、遺伝子コードを参照することによって(例えば、Uhlmann & Peyman,1990を参照)フォスフォトリエステル法に従って化学的に合成することが可能である。VKORC1核酸は、当業者には一般的に既知の組み換え遺伝子技法によって生産されるのが好ましい。
【0037】
取り分け、VKORC1核酸は、(1)前述の問題点を回避するクマリン誘導体を同定するのに有用であり、(2)PCRプライマー、DNAおよびRNAプローブ、siRNAまたはshRNA、VKORC1ポリペプチドの生産に有用であり、(3)コントロール値に比べてVKORC1活性が低下、または上昇している患者を治療するのに有用であり、かつ、(4)げっ歯類の駆除に使用が可能なクマリン誘導体を同定するのに有用である。なお、これらのクマリン誘導体は全て下記に詳述される。
【0038】
本発明はさらに、別の局面において、VKORC1ポリペプチド、好ましくは配列番号1、12、17、21、25、および27によるポリペプチドを生産する法であって、下記の工程、すなわち、
(I)VKORC1核酸、好ましくは配列番号2、13、18、22、26、および28による核酸、または、VKORC1核酸を含むベクターを導入された宿主細胞を提供する工程;
(II)該宿主細胞においてVKORC1ポリペプチドを発現する工程;
(III)宿主細胞からVKORC1ポリペプチドを単離する工程、
を含む方法を提供する。
【0039】
宿主細胞は、下記に規定されるものの内のいずれの宿主細胞であってもよい。その宿主細胞を選択し培養する方法、および、宿主細胞にポリペプチドを発現させる方法は当業者には既知である。同じことは、宿主細胞から発現ポリペプチドを単離する方法についても当てはまる。このために、本発明による抗体が、免疫アフィニティー沈殿のために使用されてもよい。別法として、前記ベクターは、熟練した研究者には既知の標準的プロトコールによる標識特異的抗体によって免疫アフィニティー沈殿される(ポリ)ペプチド標識を含んでもよい(下記も参照)。
【0040】
別の局面において、本発明は、下記を含む、好ましくは事実上下記から成る融合タンパクに関連する。すなわち、
(a)上に規定されるVKORC1ポリペプチド、好ましくは配列番号1、12、17、21、25、27によるポリペプチド、または、VKORC1核酸によって、好ましくは、配列番号2、13、18、22、26、28による核酸によってコードされるポリペプチド、および、
(b)異種部分、である。
【0041】
これは、前述のVKORC1ポリペプチドを含む融合タンパクであって、該融合タンパク自体が既に活性を有するか、前記異種部分が除去されて始めて活性を有するようになる融合タンパクを含む。このために、異種部分はさらに、プロテアーゼによって分断することが可能なペプチドを含んでもよい。異種部分は、タンパク様化合物、ペプチド、または異なる化合物であってもよい。これらの融合タンパクは、特に、異種部分を構成する、約1−300、好ましくは約1−200、特に好ましくは約1−150、特に好ましくは約1−100、特別に好ましくは1−50個の外来アミノ酸から成る内容を有する融合タンパクを含む。異種部分は、VKORC1に対して、N−末端に、C−末端に、および/または、内部的に配置されてもよい。このようなペプチド配列の例としては、例えば、E.coliガラクトシダーゼ由来の前核細胞性ペプチド配列がある。
【0042】
融合タンパク作製において好ましいその他のペプチド配列の例としては、該融合タンパクの検出を促進するペプチドがある。そのようなペプチドの例としては、緑色蛍光タンパク、またはその機能的変種がある。さらに、例えば、前述のVKORC1ポリペプチドを精製するために、少なくともさらにもう一つの「ポリペプチド標識」を付加することも可能である。例えば、好適なタンパク標識によって、精製される融合タンパクを、高い親和性の下に基質に吸収することが可能になる。この次には、例えば、融合タンパクを目立って溶出せずに適当なバッファーによる厳密洗浄を行い、次いで融合タンパクの特異的溶出を行う。当業者には既知のタンパク標識の例としては、(His)6タグ、Mycタグ、FLAGタグ、ヘムアグルチニンタグ、グルタチオントランスフェラーゼ(GST)タグ、アフィニティーキチン結合タグおよびマルトース結合タンパク(MBP)タグを有するインテインがある。これらのタンパク標識は、VKORC1ポリペプチドに対して、N−末端に、C−末端に、および/または、内部的に配置されてもよい。融合タンパクは、例えば、VKORC1ポリペプチドの生産、およびその後の単離のために有用である。さらに、融合タンパクは、細胞または生物体における発現産物の局在を検出するのに用いてもよい。
【0043】
別の局面において、本発明は、上に定義したVKORC1核酸、好ましくは配列番号2によるVKORC1核酸を含むベクターに関連する。ベクターは発現ベクターであることが好ましい。VKORC1核酸を本発明に従って使用可能とするために、それら核酸を、トランスフェクション、形質転換、または感染を通じて真核細胞または前核細胞に導入し、それによってそのポリペプチドを発現可能としてもよい。このVKORC1核酸は、プラスミドとして存在してもよいし、または、ウィルス、または非ウィルスベクターの一部として存在してもよい。これに関連して特に好適なウィルスベクターは、バキュロウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、アデノ関連ウィルス、およびヘルペスウィルスである。特に好適な非ウィルス性ベクターとしては、例えば、ウィロソーム、リポソーム、陽イオン脂質、およびポリリシン接合DNAがある。ベクターは、前核細胞または真核細胞発現ベクターであってもよい。前核細胞発現ベクターの例としては、いずれもE.coliにおける発現のために用いられるpGEMベクター、またはpUC誘導体がある。真核細胞発現ベクターの例としては、Saccharomyces cerevisiaeでの発現に用いられるp426Met25またはp426GAL1(Mumberg et al.,1994)というベクターがあり、欧州特許B10127839号または欧州特許B10549721号に開示される、昆虫細胞での発現に用いられるバキュロウィルスベクターがあり、哺乳類細胞での発現に用いられるRc/CMVとRc/RSVベクター、またはSV40ベクターがあるが、これらのベクターは全て一般に入手が可能である。一般に、発現ベクターは、それぞれの細胞に相応しいプロモーター、例えば、E.coliにおける発現用のtrpプロモーター(例えば、欧州特許B1−0154133号参照)、酵母における発現用のMet25、GAS1、またはADH2プロモーター(Russel et al.,1983;Mumberg,上記参照)、および、昆虫細胞における発現用のバキュロウィルスポリヘドリンプロモーター(例えば、欧州特許B10127839号参照)も含む。
【0044】
真核細胞における構成特異的、調整的、組織特異的、細胞タイプ特異的、細胞周期特異的、または代謝特異的発現を可能とするプロモーターが、例えば、哺乳類細胞における発現のためには好適である。本発明による調整可能な要素としては、プロモーター、アクチベーター配列、エンハンサー、サイレンサー、および/または、リプレッサー配列がある。真核細胞における構成的発現を可能とする、好ましい調整的要素の例としては、RNAポリメラーゼIIIによって認識されるプロモーターまたはウィルスプロモーター、CMVエンハンサー、CMVプロモーター、SV40プロモーターまたはLTRプロモーター、例えば、MMTV(マウス乳腺腫瘍ウィルス;Lee et al.,1981参照)由来のプロモーターやその他のウィルスプロモーター、および、例えば、HBV、HCV、HSV、HPV、EBV、HTLV、またはHIV由来のアクチベーター配列がある。真核細胞における誘発的発現を可能とする調整的要素の例としては、適当なリプレッサーと組み合わせたテトラサイクリンオペレーターがある(Gossen et al.,1994)。VKORC1核酸の発現は、組織特異的プロモーターの調節下に行われることが好ましい。発現ベクターは、本発明に従って使用される、VKORC1ポリペプチド、DNAまたはRNAプローブ、またはsiRNAまたはshRNAを調製するために用いてもよい。
【0045】
本発明の別の好ましい実施態様では、ベクターは、ノックアウト遺伝子構築物である。このような構築物の構築法、およびノックアウト動物の構築法は、当業者において、例えば、米国特許第5,625,122号、5,698,765号、5,583,278号、および5,750,825号の記載から既知である。このようなベクターは、例えば、ノックアウト細胞および動物を生成するのに有用であり、次に、このノックアウト細胞および動物を用いて、VKORC1活性障害に関連する障害および疾患を同定することが可能である。
【0046】
本発明の意味における「VKORC1活性障害」とは、VKORC1タンパクの活性および/または発現が、健康な被験者において定量された活性(上に定義)および/または発現のコントロールレベルよりも低レベルであることに関わる。それぞれの活性レベルは、実施例7に記載されるアッセイに基づいて定量されてもよい。
【0047】
別の局面では、本発明は、前述のベクターの内の一つ、好ましくは、発現ベクターまたはノックアウト遺伝子構築物を含む宿主細胞、好ましくは非ヒト胚性幹細胞に関する。この宿主細胞は、VKORC1ポリペプチドおよび/またはVKORC1核酸の発現に好適であればいずれの細胞であってもよいが、好ましくはHEK293−EBNA細胞である。細胞は、前核細胞でも真核細胞でも、異種細胞でも同種細胞でもよい。前核細胞の例としてはE.coliがあり、真核細胞の例としては一次肝細胞、酵母細胞、例えば、Saccharomyces cerevisiae、または昆虫細胞が挙げられる。より好ましくは、宿主細胞は細胞系統であり、例えば、COS細胞、例えば、COS−7細胞、または、HepG2細胞のような肝細胞系統である。さらに、宿主細胞は、非ヒト胚性幹細胞であるのが好ましい。宿主細胞を選択し培養する方法、および、宿主細胞にポリペプチドを発現させる方法は、当業者には広く知られる。細胞および/または幹細胞を形質転換する過程も当業者にはよく知られており、例えば、電気穿孔またはマイクロインジェクションが挙げられる。本発明の宿主細胞を、例えば、クマリン誘導体を同定する方法、本発明によるVKORC1ポリペプチドおよびVKORC1核酸、siRNAおよびshRNAを生産する方法、および、新規薬剤、例えば、VKORC1活性および/または発現に作用するクマリン誘導体を同定する方法に採用することも可能である。
【0048】
別の局面では、本発明は、上に定義した通りの、本発明による宿主細胞、好ましくは非ヒト胚性幹細胞を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物の調製に関する。一般にトランスジェニック動物は、VKORC1ポリペプチドおよび/またはVKORC1核酸の組織特異的発現増加を示し、凝固障害およびワルファリン耐性の分析および、そのような障害に対する治療戦略の開発および評価のために使用することが可能である。この動物によって生産されるポリペプチドは、例えば、該動物の体液において濃縮される。
【0049】
本発明の別の局面では、下記に精しく規定される、VKORC1ポリペプチドの活性に作用する、少なくとも一つの配列異常を含むVKORC1ポリペプチドについて遺伝子導入された、トランスジェニック非ヒト哺乳動物が提供される。この動物は、配列番号1、12、17、21、25、および27によるVKORC1ポリペプチドについてトランスジェニックであることが好ましく、かつ、配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R、およびY139Cからなる群から選択されることが好ましい。これらのトランスジェニック動物は、例えば、(1)クマリン誘導体をワルファリン耐性について試験するために、(2)従来技術で既知のクマリンによる抗凝固治療に対して耐性を有する、またはより感度の低い生物、例えば、ワルファリン耐性患者において効果的な抗凝固剤となる新規クマリン誘導体を同定するために、かつ、(3)VKORC1ポリペプチドおよび/またはVKORC1核酸を発現する細胞源として、有用である。さらに、これらの動物は、新規クマリン誘導体を同定するために使用することも可能である。
【0050】
トランスジェニック動物、特に、トランスジェニックマウスの調製法も同様に、独国特許第19625049号、および米国特許第4,736,866号、5,625,122号、5,698,765号、5,583,278号、および5,750,825号の記述から当業者には既知であるが、本発明による発現ベクターの、胚または精母細胞への直接注入、または、発現ベクターの、有精卵の前核への注入、または、発現ベクターによる胚性幹細胞のトランスフェクション、または、適当な受容細胞への核輸送によって(Polites & Pinkert,1994;Doetschman,in Pinkert,1994,上記;Wood in Pinkert,1994、上記;Monastersky in Pinkert,1994、上記)生産することが可能なトランスジェニック動物を含む。
【0051】
本発明の意味において、「VKORC1関連欠乏症」という用語は、ワルファリン耐性に関連する障害または疾患を含む。すなわち、患者は、クマリンまたはその誘導体による治療に対し感受性が低下しているか、感受性を全く持たず、かつ、そのワルファリン耐性は、VKORC1ポリペプチドの配列異常に由来することが好ましい。さらに、用語はまた、健康な患者の状態と有意に異なる、VKORC1の活性および/または発現レベルと関連する障害または疾患を含むことが好ましい。例えば、プロトロンビン時間を、例えば、国際標準比(INR)プロトコールに従って測定することによって定量される、VKORC1ポリペプチドの発現および/またはその活性は、有意に低下している、または全く見られないことが好ましい。このようなVKORC1関連欠乏症は、下記に詳述するVKORC1ポリペプチドまたはVKORC1核酸の配列異常が原因になってもよい。さらに、VKORC1ポリペプチドまたはVKORC1核酸の発現および/または活性レベルが低下する、または全く見られない場合、ビタミンK依存性タンパクのγ−カルボキシル化も同様に損なわれていてもよい。上記から、この文脈における「VKORC1関連欠乏症」という用語はさらに、家族性の複数因子欠乏症、血友病のような血液凝固低下と関連する障害または疾患、血管石灰化低下と関連する疾患、ビタミンK依存性タンパクのγ−カルボキシル化障害、の内から選択される疾患および/または障害を含む。
【0052】
VKORC1ポリペプチドの発現および/または活性レベルが、健康な患者の状態に対して相対的に増加していることも考えられる。この、「VKORC1関連欠乏症」という用語にさらに含まれる欠乏症も、VKORC1ポリペプチドおよび/または対応する遺伝子における配列異常によって招かれたものであってもよい。さらに、VKORC1ポリペプチドまたはVKORC1核酸の発現および/または活性レベルが増加した場合、ビタミンK依存性タンパクのγ−カルボキシル化も同様に促進されてもよい。従って、この文脈における「VKORC1関連欠乏症」という用語はさらに、血栓症を患う患者、および/または、好ましくは、VKORC1ポリペプチドまたはその遺伝子における配列異常のために血栓を発生する危険度の高い患者を含む、血液凝固上昇と関連する疾患または障害、ビタミンK依存性タンパクのγ−カルボキシル化改善と関連する疾患および/または障害、の内から選択される欠乏症を含んでもよい。
【0053】
VKORC1ポリペプチドおよび/または対応遺伝における配列異常が、そのような異常を抱える患者においてクマリンおよびその誘導体による治療に対する感受性を高めることも考えられる。その結果、クマリン治療を受けた患者が、極めて低い血液凝固値を示してもよい。クマリンによる治療に対する高い感受性と関連する障害も、「VKORC1関連欠乏症」という用語によってカバーされることが意図される。終止突然変異を有するVKORC1遺伝子を抱える患者は、クマリン感受性増大と関連する欠乏症を患うことになる。
【0054】
別の局面では、本発明は、本発明によるVKORC1核酸、好ましくは、配列番号2、13、18、22、26、および28によるVKORC1核酸の内から選択される核酸に対して向けられたDNAまたはRNAプローブに関する。プローブとは、それの向けられたVKORC1核酸の検出を可能とする核酸分子である。プローブは、標的配列、すなわち、VKORC1核酸にハイブリダイズする配列を有する。プローブは、VKORC1核酸の特異的検出を可能とするものであることが好ましい。すなわち、少なくとも厳密なハイブリダイゼーション条件下では、プローブは、その特定のVKORC1核酸以外の分子には結合しないことが好ましい。好適なプローブとしては、例えば、約10から約492のヌクレオチド長、好ましくは約10から約400のヌクレオチド長、好ましくは約10から約250のヌクレオチド長、特に、約10から約150ヌクレオチド長、特に、コード配列全長であって、その配列が、VKORC1ポリペプチドから導かれるもの、好ましくは、配列番号1、12、17、21、25、および27によるVKORC1ポリペプチドから選ばれたポリペプチドから導かれるもの、または、直接VKORC1核酸から選択されるもの、好ましくは、配列番号2、13、18、22、26、および28から選択される核酸から得られるコード配列全長を有するDNAまたはRNAフラグメントである。プローブはさらに、直接的または間接的検出のために好適な標識、例えば、ビオチン、蛍光標識、例えば、フルオレセン、または、放射性標識、例えば、[H]、または、熟練した研究者には既知のその他の標識を含んでもよい。検出は、熟練した研究者には一般的に既知の方法、例えば、ノーザンブロッティングおよびcDNAライブラリーブロッティング法を含む方法を用いて実行してよい。本発明によるプローブの構築も、熟練した研究者には既知である(前述の核酸の構築を参照)。このようなプローブは、例えば、診断目的のために使用が可能であり、配列異常の検出に好適なプローブ、例えば、配列番号3、4、5、6、7、8、9、14、および94による配列の内から選択される配列を含む、またはそのような配列から成ることが好ましい。
【0055】
別の局面では、本発明は、PCRプライマー、好ましくはVKORC1核酸に対する、好ましくは配列番号2、13、18、22、26、および28によるVKORC1核酸に対する、少なくとも2本から成る1組のPCRプライマーに関する。好適なプライマーは、例えば、約10から約100ヌクレオチド長、好ましくは約15から約50ヌクレオチド長、特に、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、好ましくは約30ヌクレオチド長を有するDNAフラグメントである。このようなプライマーの設計および合成は、一般に当業者には既知である。プライマーはさらに制限部位、例えば、増幅配列をベクターに組み込むのに好適な制限部位、または、例えば、前節で記述したような標識を有する、他のアダプターまたはオーバーハング配列を含んでもよい。例えば、本発明によれば、好ましくは実施例9に記載するアッセイに基づいてVKORC1配列異常を検出するのに好適な、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく診断薬を調製することが可能である(ARMSPCR)。
【0056】
VKORC1の発現量を定量しなければならない場合、診断または治療目的のためには、VKORC1核酸に対して特異的なPCRプライマーが用いられる。このために、RT−PCR法、好ましくは定量的RT−PCR法を実行してもよい。この方法では、サンプルから全体またはmRNAを分離して、このRNAを逆転写してcDNAとし、その後、本発明による特異的プライマーを用いたPCR反応を経過させる。この技術は、熟練した研究者にはよく知られている。これによって、さらに、前述のVKORC1核酸を、例えば、適当な遺伝子またはcDNAライブラリーから、例えば、肝臓障害特異的または肝臓特異的遺伝子バンクから、適当なプライマーの助けを借りて単離することによって入手することが可能になる。VKORC1核酸を単離するために好ましいPCRプライマーの組および条件は、実施例5に記載される。配列番号2に対して対する、本発明による好ましいPCRプライマーの例としては、配列番号53−70によるプライマーがあり、これらのPCRプライマーを用いるための好ましい条件は、図8に示される。
【0057】
「サンプル」という用語は、胎児または成人の一つの組織または細胞、好ましくは複数の組織または細胞であって、好ましくは、心臓、腎臓と肺、膵臓、脳、胎盤および骨格筋および血液から、好ましくは肝臓から分離された組織または細胞を含む生体材料を指すことが意図される。サンプルは、一人の患者、または別の被験者から、侵襲的または非侵襲的方法を含む方法によって分離することが可能である。侵襲的方法は一般に熟練した技術者には既知であり、例えば、穿刺、切開した生体からサンプルを外科的に切除すること、または、内視鏡装置による切除によるサンプルの単離を含む。侵襲極小の方法および非侵襲的方法も当業者には既知であり、例えば、体液、例えば、血液を、好ましくは静脈穿刺によって、または尿または大便を採取することを含む。「サンプル」という用語はまた、ゲノムライブラリーまたは発現ライブラリーであって、好ましくは、患者から単離したサンプルに基づいて構築されたライブラーを含んでもよい。その場合、cDNAの分離のために、一般に熟練研究者には既知の方法を用いてもよい。
【0058】
別の局面で、本発明は、VKORC1核酸に対して対する、好ましくは、配列番号1、12、17、21、25、および27から導かれる配列に、または、配列番号2、13、18、22、26、および28による核酸に対する低分子干渉的RNA分子(siRNA)および/または低分子ヘアピンRNA(shRNA)を含む。これによって、VKORC1核酸の安定度を下げる、および/または、細胞培養における、またはインビボにおけるVKORC1核酸の翻訳を抑制することが可能となる。二本鎖siRNAは、二本鎖RNAを通じて遺伝子発現の、配列特異的、修飾後抑制を仲介する。siRNAは、極めて特異的な構造を有する。すなわち、3′末端に2ヌクレオチド突出部(オーバーハング)を有する、17から25の、好ましくは、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長の2本鎖RNAである。siRNAは、通常、比較的長い二本鎖RNA分枝を酵素的に分断することによって得られるが、siRNAはまた、細胞の外部において化学的に、または酵素的に合成し、次に細胞に輸送する(例えば、トランスフェクションによって)ことも可能である。従って、siRNAまたはshRNAを用いると、細胞中の対応遺伝子の発現を、インビボであれ、インビトロであれ、抑制、または完全阻止することが可能である(McManus et al.,2002)。shRNAは、(I)VKORC1核酸のmRNA配列に対して相補的な、好ましくは、配列番号2、13、18、22、26、および28に対して相補的な、少なくとも18、好ましくは少なくとも19、より好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドから成る配列を含む第1ステム部分、(II)第1ステム部分に対して十分に相補的で、第1ステム部分にハイブリダイズして二重ステムを形成することが可能な、少なくとも18、好ましくは少なくとも19、より好ましくは少なくとも20個のヌクレオチドから成る配列を含む第2ステム部分、および、(III)二つのステム部分を接続するループ部分、から成る。ループ部分は、少なくとも4、好ましくは少なくとも7、より好ましくは少なくとも11個のヌクレオチドを含んでもよい。siRNAまたはshRNAはまたベクターに含められて、宿主細胞が形質転換される際、宿主細胞においてそのsiRNAまたはshRNAが構成的に発現されるようになっていてもよい(国際公開第03/006477号参照)。siRNAまたはshRNA設計のための方策、および、これらの分子の構築および生産法は、一般に当業者には既知である(McManus et al.,上記参照)。本発明によるsiRNAおよびshRNA分子は、例えば、VKORC1遺伝子発現の治療的調節のために、および、クマリン誘導体を同定するための方法において、クマリン活性の陽性コントロールとして含めるのに有用である。本発明によるsiRNA配列の好ましい例が図6および7に掲げられるが、これらは、配列番号29、20、33、34、37、38、41、42、45、46、47、50から選択される。図6はまた、siRNA発現の標的とされる細胞においてsiRNAが発現されるようにsiRNA分子をベクターに組み込むのに使用される、これらsiRNAそれぞれの下流プライマーも示す。
【0059】
VKORC1活性および/または発現を完全停止させる別法として、本発明は、上に定義したVKORC1核酸、好ましくは、配列番号2、13、18、22、26、および28による核酸に対して向けられる、好ましくは、配列番号1、12、17、21、25、および27から導かれる配列に対して向けられるアンチセンスオリゴヌクレオチドを提供する(Zheng & Kemeny,1995;Nellen & Lichtenstein,1993)。
【0060】
本発明の別の局面によれば、VKORC1ポリペプチドに、好ましくは、配列番号1による配列に対するRNA−アプタマーであって、VKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼすRNA−アプタマーが提供される。RNA−アプタマーは、凝固因子IXa(Rusconi et al.,2002)において示されたように、アプタマーの標的とするタンパクの効果的な作用剤または拮抗剤となる。本発明によるアプタマーは、クマリンよりも微調整的にVKORC1活性を下げることによる抗凝固剤として使用することが可能である。アプタマーを試験するには、実施例7に記載するように、それらをVKORC1反応系に加え、HPLCによって分析することが可能である。
【0061】
本発明の別の局面では、上に定義したVKORC1ポリペプチド、好ましくは、配列番号1、12、17、21、25、および27によるVKORC1ポリペプチドを特異的に認識し結合する抗体、または、その抗体のフラグメントが提供される。この抗体または抗体フラグメントは、VKORC1ポリペプチドに対して特異的なポリクロナールまたはモノクロナール抗体であることが好ましい。この抗体または抗体フラグメントは、一般的に当業者には既知の方法に従って生産される。すなわち、哺乳動物、例えば、ウサギを、本発明によるVKORC1核酸、またはVKORC1ポリペプチド、または、少なくとも約6アミノ酸長、好ましくは少なくとも8アミノ酸長、特に少なくとも12アミノ酸長を有するそのフラグメントを、もし適切ならば、例えば、フロインドのアジュバント、および/または、水酸化アルミニウムゲルの存在下に投与して免疫化することによって生産される(例えば、Harlow & Lane,1998参照)。次に、免疫反応の結果その動物において形成されるポリクロナール抗体は、一般的に既知の方法に従って血液から簡単に単離することが可能であり、例えば、カラムクロマトグラフィーによって精製することが可能である。モノクロナール抗体は、例えば、既知のWinter & Milstein(1991)の方法に従って生産することが可能である。本発明による抗体は、例えば、VKORC1関連欠乏症の診断に使用することが可能である。さらに、この抗体は、クマリン−VKORC1相互作用を明らかにするのに有用である可能性がある。最後に、抗体を用いて、患者から分離された組織または細胞サンプルから、VKORC1ポリペプチドを単離し、および/または精製してもよい。
【0062】
本発明によれば、「抗体」または「抗体フラグメント」という用語は、遺伝子工学的に調製され、要すれば随意に修飾される抗体または、その、抗原結合性部分、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、複数機能抗体、二重または複数特異的抗体、1本鎖抗体、F(ab)またはF(ab)フラグメントを意味するものとしても理解される(例えば、欧州特許B1−0368684号、米国特許第4,816,567号、4,816,397号、国際特許第88/01649号、93/06213号、98/24884号を参照)。
【0063】
別の局面で、本発明は、上に定義したVKORC1ポリペプチド、好ましくは配列番号1、12、17、21、25、および27から選択される配列を有するVKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼすクマリン誘導体を同定する方法であって、下記の工程を含む方法を提供する。すなわち、
(I)VKORC1核酸、または、VKORC1核酸を含むベクターを導入された宿主細胞を提供する工程;
(II)該宿主細胞においてVKORC1ポリペプチドを発現する工程;
(III)候補のクマリン誘導体を投与する工程;
(IV)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(候補活性値);
(V)候補活性値をコントロール活性値と比較する工程;および、
(VI)候補活性値がコントロール活性値と有意に異なる場合、その候補クマリン誘導体を、VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼすクマリン誘導体であると同定する工程。
【0064】
ここで定量されたVKORC1ポリペプチドの活性は、ビタミンK2,3−エポキシドの、ビタミンKキノンへの、ジチオスレイトール依存性変換であり、ここにおいて、有意に異なる活性値とは、上に、および実施例7と図10にさらに詳細に記述するように、コントロール活性値よりも有意に高い候補活性値である。もしも事実上同じ濃度の候補クマリン誘導体が、その濃度のワルファリンが実現するよりも低いパーセントのビタミンKエポキシドしかビタミンKキノン(産物/基質+産物)に変換しないのであれば、これは、その候補のクマリン誘導体が、ワルファリンよりも強い抑制作用を有すること、逆ならばまたその逆の結論となることを示す。
【0065】
本発明によるクマリン誘導体を同定する方法において、好ましくは、コントロール活性値は、下記の工程を含む方法によって定量される。すなわち、
(A)工程(I)に従って宿主細胞を提供する工程;
(B)宿主細胞においてVKORC1ポリペプチドを発現する工程;および、
(C)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(コントロール活性値)。
【0066】
本発明に従ってクマリン誘導体を同定する方法において、少なくとも一つの別の化合物が宿主細胞に導入されるとさらに好ましい。この化合物は、ビタミンK、シトクロームB5、および、γ−グルタミル−カルボキシラーゼ、ミクロソームのエポキシデヒドロラーゼ、カルメニン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする核酸からなる群から選択される。核酸を宿主細胞に導入する方法は上に詳細に記述した。核酸は、構成的に活性なプロモーター、または、選ばれた宿主において特異的に活性化されるプロモーターの調節下に発現するのが好ましい。
【0067】
クマリン誘導体を同定するための方法は、従来技術で既知のクマリンおよびその誘導体の限界点の少なくとも一つを回避する、新規のクマリン誘導体を開発するのに有用である。もしも血液凝固速度論の分析が、VKORC1ポリペプチド活性の定量の中に別アッセイとして組み込まれたならば、本発明によるこの方法は、従来技術で既知のクマリンおよびその誘導体よりも速やかに血液凝固を仲介し、および/または、より急速に代謝されるクマリン誘導体を同定するのに有用と考えられ、従って、クマリンおよびその誘導体の蓄積が阻止されるか、または緩和され、その結果、過剰投与の危険性が実質的に低下、または根絶すら可能になると考えられる。さらに、この特定法を他のアッセイと組み合わせて、VKORC1活性に対して、さらに進んで血液凝固に対してより強い(弱い)作用を有するクマリン誘導体を特定可能とするようにしてもよい。いくつかの独立アッセイにおいてこのクマリン誘導体は、(1)より速やかに代謝されるので、クマリンの蓄積は回避または緩和され、その結果過剰投与の危険は実質的に低下または除去され、(2)患者に対して皮膚壊死を起こすことがなく、起こしてもその程度は低く、妊娠時投与されても胎児障害を起こすことがなく、起こしてもその程度は低く、および/または、(3)より速やかに代謝され、より安定であり、および/または、ペントバルビタールまたはアミダノロンのような他の薬剤による影響が少ないことが判明する。クマリン誘導体のこのような特質についてスクリーニングするのに好適で、本発明によるクマリン誘導体特定法と組み合わせて用いるのに適当なアッセイは、一般に当業者には既知である。
【0068】
「クマリン」という用語は、3−(アセトニルベンジル)−4−ヒドロキシクマリン、すなわち、COUMADIN(登録商標)またはナトリウムワルファリンを意味するものと理解される。
【0069】
「クマリンの誘導体」という用語は、有機または無機の化合物、ペプチド、ポリペプチド、またはその複合体であって、それらが、VKORC1ポリペプチドの活性および/または発現に対して作用を及ぼす限り、好ましくは、VKORC1ポリペプチドの活性を抑制する作用を有する限り、さらに好ましくは、VKORC1ポリペプチド特異的作用を有する限り、前記化合物、ペプチド、ポリペプチド、または複合体を含むと理解される。すなわち、クマリン誘導体は、凝固経路に与る他の分子とは直接相互作用を持たない。このような化合物の例としては、化合物のライブラリー、好ましくは、その薬理学的活性について分析済みの化合物から成るライブラリーから得られた有機分子がある。その相互作用のために、クマリン誘導体は、インビボおよび/またはインビトロにおいてVKORC1活性に影響を及ぼし、互いに共有的に、または非共有的な相互作用を有するに至ることがある。クマリン誘導体がキラル化合物である場合には、その「クマリン誘導体」も、国際特許第00/43003号に開示されるものと同様、R−およびL−エナンチオマー形それぞれを包含することが理解される。特に、「クマリン誘導体」は、4−ヒドロキシクマリンから得られた化合物、特に、COUMADINから得られた化合物を指す。さらに好ましくは、「クマリン誘導体」はまた、活性型ビタミンKの再生を抑制する全ての凝固因子を含む。
【0070】
「候補クマリン誘導体」という用語は、有機または無機の化合物、ペプチド、ポリペプチド、または複合体を含むと理解される。このような化合物の例としては、化合物のライブラリー、好ましくは、その薬理学的活性について分析済みの化合物から成るライブラリーから得られた有機分子がある。用語は、4−ヒドロキシクマリンから得られた化合物、特に、COUMADINから得られた化合物を指すことが好ましい。候補クマリン誘導体がキラル化合物である場合には、国際特許第00/43003号に開示されるものと同様、その化合物のR−およびL−エナンチオマー形それぞれも、「候補クマリン誘導体」という用語に含められる。
【0071】
別の局面では、本発明は、VKORC1活性に対して発揮されるクマリン作用を伝達するVKORC1ポリペプチド配列を決定する方法であって、下記の工程を含み、
(I)本発明によるVKORC1ポリペプチド、好ましくは、配列番号1、12、17、21、25、および27によるポリペプチドであって、少なくとも一つの配列異常、好ましくは、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R,およびY139Cからなる群から選択される配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを発現する細胞を提供する工程;
(II)クマリンまたはその誘導体を該細胞に投与する工程;
(III)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(配列異常活性値);および、
(IV)配列異常活性値を、コントロール配列活性値と比較する工程、
コントロール配列活性値に対する、配列異常活性値の有意な偏差は、そのVKORC1ポリペプチドの配列異常は、VKORC1ポリペプチドに対して発揮されるクマリン作用を伝えるものであることを示すものとする方法を提供する。VKORC1ポリペプチドの活性は上に詳述したやり方で定量してもよい。
【0072】
さらに好ましくは、VKORC1ポリペプチド配列を決定する方法において、コントロール配列活性値は、下記の工程を含む方法によって定量される。すなわち、
(I)VKORC1ポリペプチド、好ましくは、配列番号1、12、17、21、25、および27によるポリペプチドを発現する宿主細胞を提供する工程;
(II)クマリンまたはその誘導体を該細胞に投与する工程;および、
(III)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(コントロール配列活性値)。
【0073】
定量されたVKORC1活性は、ビタミンK2,3−エポキシドの、ビタミンKキノンへの、ジチオスレイトール依存性変換であり、有意に異なる値は、コントロール配列活性値よりも有意に高い配列異常活性値である。詳細は、上に、および実施例7と図10に記載される。この方法は、クマリンに対して感受性の低いVKORC1ポリペプチドを同定するのに有用であると考えられる。様々の配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを導入することによって、この方法により、試験クマリンとVKORC1との間の相互作用にとって決定的に重要なポリペプチドの部位を同定することが可能になる。この情報は、例えば、新規クマリンを設計するために有用である。
【0074】
VKORC1ポリペプチド配列を同定する方法において、少なくとも一つの別の化合物が宿主細胞に導入されることは特に好ましい。この化合物は、ビタミンK、シトクロームB5、および、γ−グルタミル−カルボキシラーゼ、ミクロソームのエポキシデヒドロラーゼ、カルメニン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする核酸からなる群から選択される。
【0075】
本発明のさらに別の局面は、上に定義したVKORC1ポリペプチド、好ましくは配列番号1によるVKORC1ポリペプチドであって、VKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼす、少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1ポリペプチドに関する。さらに好ましくは、VKORC1ポリペプチドは、配列番号1によるポリペプチドであって、配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R,およびY139Cからなる群から選択される。別の実施態様では、本発明は、一つの配列異常を有する配列番号12による、Rattus norvegicusのVKORC1ポリペプチドに関する。配列異常は、Y139(416A>G)であることが好ましい。別の実施態様では、本発明は、一つの配列異常を有する配列番号12による、Rattus norvegicusのVKORC1ポリペプチドをコードするRattus norvegicus核酸に、好ましくは、配列異常、好ましくは416A>G配列異常を有する配列番号12によるVKORC1核酸に関する。前記416A>G異常を含むVKORC1核酸配列は、配列番号14による核酸配列である。
【0076】
このような、少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1ポリペプチドは、熟練した研究者には一般的に知られる方法、例えば、組み換え法、および例えば、部位指定突然変異誘発法、または、患者、好ましくはVKORC1関連欠乏症の患者のサンプルから、少なくとも一つの配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを単離する方法を含む方法によって生産することが可能である。サンプルからタンパクを単離する方法は上に詳述した。
【0077】
VKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼす、少なくとも一つの配列異常を含むVKORC1ポリペプチドは、例えば、これらのVKORC1ポリペプチドに対して特異的に結合する抗体を生産するのに用いることが可能である。次に、この抗体を用いて、VKORC1関連欠乏症を診断することが可能である。
【0078】
「配列異常」という用語は、VKORC1ポリペプチド配列、好ましくは、配列番号1によるVKORC1ポリペプチド配列の変更をもたらす、少なくとも1個のアミノ酸の付加、挿入、欠失、置換を含むことが意図される。さらに、VKORC1核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の変更をもたらす、少なくとも1個のヌクレオチドの付加、挿入、欠失、置換が含まれる。さらに、前記核酸配列の読み枠に変化をもたらす、VKORC1核酸配列の変化も含まれる。
【0079】
配列異常は、一文字アミノ酸コードによって示されるが、この場合、元のアミノ酸は、配列番号1によるポリペプチド配列のアミノ酸番号を示す数字の左側に配される。アミノ酸番号の右側の数字は、元のアミノ酸を置換するアミノ酸を示す。例えば、配列異常V29Lは、配列番号1のVKORC1ポリペプチドの位置29において、アミノ酸バリン(V)がロイシン(L)によって置換されたことを示す。配列番号1のVKORC1ポリペプチド以外のVKORC1ポリペプチドにおいて配列異常が見られる場合には、コードにおける数字は、その特定の他のポリペプチドにおけるアミノ酸番号による配列位置を指す。
【0080】
別の局面において、本発明は、
(a)VKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼす、少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1ポリペプチドをコードする核酸であって、VKORC1ポリペプチドは、好ましくは、配列番号1によるポリペプチドであり、配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R、およびY139Cからなる群から選択されることを特徴とする核酸;
(b)配列番号3、4、5、6および7、14、および94による配列からなる群から選択される核酸配列;および、
(c)(a)または(b)に規定される核酸に対して、遺伝子コードの縮重がなければ、ハイブリダイズする核酸配列であって、上に定義した少なくとも1個の配列異常を含むポリペプチドをコードする核酸配列
からなる群から選択されるVKORC1核酸を提供する。
【0081】
これらの核酸は、例えば、そのような配列異常を有するVKORC1ポリペプチドおよび核酸を単離するため、DNAおよび/またはRNAプローブを生産するため、抗体を生産するため、トランスジェニック動物およびノックアウト動物を構築するため、およびクマリン誘導体を同定するためのスクリーニングに組み込むために有用である。
【0082】
さらに別の局面では、本発明は、上に定義した少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1核酸を含むベクターを提供する。このようなベクターは、上に詳述したベクターから選択されてもよい。このようなベクターを構築する方法も既に上に詳述した。このようなベクターは、例えば、次のパラグラフ、特に診断目的に記述されるプローブの調製に有用である。
【0083】
本発明の別の局面では、上に定義した少なくとも一つの配列異常を含むVKORC1核酸、好ましくは、配列番号3、4、5、6、および7、14、および94による核酸配列に向けられたDNAまたはRNAプローブが提供される。このようなDNAおよびRNAプローブを設計、生産する方法は、上に長々と記述されている。このようなプローブは、例えば、遺伝子ライブラリー、発現ライブラリー、または患者から、例えば、VKORC1関連欠乏症診断の意図のもとに、および、配列異常を含むVKORC1核酸を生産するための部位指定突然変異誘発法のために単離されたサンプルにおいてVKORC1遺伝子の配列異常を検出するのに有用である。ライブラリーをスクリーニングする技術は、一般に熟練した研究者には既知である。
【0084】
本発明の別の局面では、上に定義した少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1核酸に向けたPCRプライマーが提供される。Y139C(416A>G)配列を検出するのに好ましいPCRプライマーは、配列番号88から91によるプライマーである(実施例9参照)。PCRプライマーを、本発明の目的のために、前述のもののような、その他の配列異常(V29L、V45A、R58G、R98W、L128R)を検出するのに使用が可能となるように設計することは当業者には一般的に既知である。このようなPCRプライマーの設計および作製法、PCR増幅を実行する技術は、長々と上に説明した。大きな違いは、配列異常を含むVKORC1核酸配列のみが特異的に増幅され、一方、配列異常を含まない、生得のVKORC1核酸およびVKORC1核酸配列、例えば、配列番号2のVKORC1核酸は検出されないままであることである。このようなプライマーは、例えば、遺伝子ライブラリー、発現ライブラリー、または患者から、例えば、VKORC1関連欠乏症診断の意図のもとに、単離されたサンプルにおいてVKORC1遺伝子の配列異常を検出するのに有用である。ライブラリーをスクリーニングする技術は、一般に熟練した研究者には既知である。
【0085】
さらに別の局面では、本発明は、上に定義した少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1ポリペプチドを特異的に認識し、結合する抗体に関する。前記VKORC1ポリペプチドは、配列番号1によるポリペプチドであり、配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R、およびY139Cからなる群から選択されるのが好ましい。含まれる抗体のタイプ、そのような抗体およびそのフラグメントを構築し、生産する方法は、上に細かく記述した。このような抗体は、例えば、VKORC1関連欠乏症の診断、および、ヒト、およびラットのようなげっ歯類においてワルファリン耐性を検出する意図の下に、上に定義した少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1ポリペプチドを検出し、単離するのに有用である。
【0086】
別の局面によれば、本発明は、少なくとも1個の配列異常、好ましくは、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R,およびY139Cから選択される少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1核酸からなる群から選択される化合物;前記少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1核酸に対するDNAまたはRNAプローブ;前記少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1核酸に対するPCRプライマー;および、前記少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1核酸に対する抗体を含む診断薬に関する。なお、これらは全て上に定義されている。VKORC1関連欠乏症が、配列異常のせいである、または配列異常と相関する場合、診断法の原理を用いて、患者から得られたプローブの中にその配列異常を検出する。本発明の診断に使用が好適な方法は後述する。要すれば随意に、該診断法はさらに、製薬学的に受容可能な添加剤および/または補助剤を含む。このような診断法は、VKORC1関連欠乏症、特にワルファリン耐性を診断するのに有用である。
【0087】
一方、VKORC1関連欠乏症は、サンプル中のVKORC1 mRNA、VKORC1 cDNA、またはVKORC1ポリペプチドの発現レベルを検出することによって診断される。この発現レベルは、当業者には一般的に既知の方法によって定量が可能である。VKORC1 mRNAの存在を検出する方法の例としては、RNA(ノーザン)ブロット分析、ヌクレアーゼ保護、インサイチュハイブリダイゼーション、逆転写酵素PCR(RT−PCR、定量的動的RT−PCRを含む)が挙げられる。cDNAおよびオリゴヌクレオチド・マイクロアレイもこの方法に含められる。患者から得られた発現ライブラリーも、熟練研究者には一般的に既知の技術を用いて診断目的のためにスクリーニングされてよい。VKORC1ポリペプチドも、熟練研究者には一般的に既知の方法によって定量が可能である。それらの方法の内いくつかは後述する。要すれば随意に、診断法はさらに、製薬学的に受容可能な添加剤および/または補助剤を含む。
【0088】
本発明の意味においては、「添加剤」および「補助剤」は、特に限定されるものではなく、当業者には一般的に既知であり、例えば、生食液、脱ミネラル水、ゼラチンまたはグリセロール系タンパク安定化試薬を含む。別態様として、本発明によるVKORC1核酸、プローブ、プライマー、またはポリペプチドは、安定化のために凍結乾燥してもよい。
【0089】
別の局面では、本発明は、患者においてVKORC1関連欠乏症を診断する方法であって、
(I)患者から得られたDNAサンプルを増幅する工程、または、患者から得られたRNAサンプルを逆転写してDNAとし、そのDNAを増幅する工程;および、
(II)工程(I)の増幅DNAを分析し、VKORC1ポリペプチドをコードする核酸配列において、または、VKORC1ポリペプチドのアミノ酸配列において少なくとも一つの配列異常を決定する工程、
を含み、求められた配列異常は、患者が、VKORC1関連欠乏症に罹患すること、好ましくはワルファリン耐性に罹患することを示し、好ましくはその配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R、およびY139Cからなる群から選択されることを特徴とする方法を提供する。
【0090】
患者からサンプルを入手し、全体またはmRNAを単離する方法は、一般に熟練研究者には既知であり、そのいくつかは既に記載した。DNAを増幅する技術は特に限定はされず、これも前述したPCR技術を含む。同じ根拠に基づいて、逆転写技術は前述しており、特に限定されることはなく、通常、逆転写酵素とオリゴdTプライマーを使用する従来のプロトコールと市販のキットを用いた逆転写を含む。分析もまた、患者から得たサンプルから分離されたゲノムDNAに基づいたものであってもよい。
【0091】
増幅されると、DNAは、VKORC1ポリペプチドをコードする核酸配列において少なくとも1個の配列異常を確定するために分析される。増幅DNAを分析する方法は特に限定はされない。好ましくは、増幅DNAは、好ましくは配列異常に対して特異的なPCRプライマーによるPCR分析、制限消化分析、およびDNA配列決定分析からなる群から選択される技術によって分析される。好ましい実施態様では、配列異常を担う核酸は、V29L(85G>T)、V45A(134T>C)、R58G(172A>G)、R98W(292C>T)、およびL128R(383T>G)、Y139C(416A>G)からなる群から選択される。診断法の好ましい実施態様では、増幅DNAは、配列番号1によるVKORC1ポリペプチドの少なくとも部分的配列をコードする。VKORC1関連欠乏症と関連する配列異常を決定する一つの方法が、実施例8に示される。
【0092】
突然変異85G>T、134T>C、172A>G、292C>T、および383T>Gを含む、本発明によるVKORC1配列が、配列番号3から7に示されるが、これらは、患者から得られた核酸サンプル分析に基づくハイブリダイゼーション技術を用いてVKORC1関連欠乏症を診断するためのプローブとして用いてもよい。
【0093】
別法として、VKORC1ポリペプチドのレベルを知るためにVKORC1発現を検出してもよい。従って、別の局面では、本発明は、患者においてVKORC1関連欠乏症を診断する方法であって、
(I)患者からのサンプルを提供する工程;および、
(II)上に定義した配列異常を有するVKORC1ポリペプチドに向けた抗体を用いて、該サンプルにおいて配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを検出する工程、
を含み、求められた配列異常は、患者が、VKORC1関連欠乏症に罹患することを示すものとする方法を提供する。好ましくはその配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R、およびY139Cからなる群から選択される。
【0094】
サンプルを獲得する方法は既に詳述した。配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを検出する方法は、配列異常(単数または複数)を担うタンパクを特異的に検出するものである限り、特に限定はされない。そのような方法の例としては、例えば、免疫組織化学的検出、イムノブロッティング、好ましくはウェスタンブロッティング、および、ポリペプチドのELISA、特に、上に定義した配列異常を有するVKORC1ポリペプチドに対して特異的な抗体によるELISAが挙げられる。アミノ酸配列のレベルにおける配列異常の分析は特に限定されないが、例えば、1個以上の配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを特異的に認識し、結合するVKROP1抗体を用いて実施してもよい。
【0095】
好ましくは、診断法は、ワルファリン耐性、家族性の複数因子欠乏症、血友病のような血液凝固低下・停止と関連する障害または疾患、血管石灰化低下と関連する疾患、ビタミンK依存性タンパクのγ−カルボキシル化障害、の内から選択される疾患および/または障害を診断するために用いられる。
【0096】
さらに、診断法はまた、VKORC1ポリペプチドまたはその遺伝子における配列異常のために血栓を発生する危険度の高い患者を含む、血液凝固上昇と関連する疾患または障害、ビタミンK依存性タンパクのγ−カルボキシル化改善と関連する疾患および/または障害を診断するのに用いられてもよい。
【0097】
別の局面では、本発明は、少なくとも一つの配列異常を有するVKORC1ポリペプチドの活性に対して抑制作用を及ぼすクマリン誘導体を同定する方法であって、
(I)VKORC1ポリペプチド、好ましくは、3、4、5、6、7、14、および94からなる群から選択される配列によってコードされるポリペプチドを発現する細胞を提供する工程;
(II)候補クマリン誘導体を該細胞に投与する工程;
(III)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(配列異常活性値);および、
(IV)配列異常活性値を、コントロール配列活性値と比較する工程、
(V)候補クマリン誘導体の投与が、コントロール配列活性値よりも有意に低い配列異常活性値をもたらす場合、その候補クマリン誘導体を、VKORC1ポリペプチドの活性に対して抑制作用を及ぼすクマリン誘導体と同定する工程、
を含む方法を提供する。
【0098】
さらに好ましくは、コントロール配列活性値は、下記の工程を含む方法によって定量される。すなわち、
(I)請求項1のVKORC1ポリペプチド、好ましくは、配列番号1または12によるVKORC1ポリペプチドを発現する細胞を提供する工程;
(II)クマリンを該細胞に投与する工程;および、
(III)VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(コントロール活性値)。
【0099】
VKORC1ポリペプチドの活性は、上に詳述した通りに定量してよい。実施例7に記載した方法を用いてもよい。この、クマリン誘導体を同定する方法は、ワルファリン耐性患者において抗凝固剤として使用することが可能なクマリン誘導体を同定するのに有用である。
【0100】
別の局面では、本発明は、ワルファリン耐性げっ歯類に対して毒物学的に有効なクマリン誘導体を同定する方法であって、
(I)ワルファリン耐性げっ歯動物を提供する工程;
(II)該げっ歯動物に候補クマリン誘導体を投与する工程;
(III)げっ歯動物に対する候補クマリン誘導体の毒性を定量する工程(候補クマリン誘導体毒性値);
(IV)候補クマリン誘導体毒性値をコントロールクマリン毒性値と比較する工程;
(V)候補クマリン誘導体毒性値が、コントロールクマリン毒性値よりも有意に大きい場合、その候補クマリン誘導体を、毒物学的に有効なクマリン誘導体であると同定する工程、
を含む方法を提供する。
【0101】
ワルファリン耐性げっ歯動物は、上に定義したVKORC1ポリペプチドについてトランスジェニックなげっ歯動物であって、前記VKORC1ポリペプチドは、ワルファリン耐性を引き起こす少なくとも1個の配列異常、好ましくは、配列番号14による配列によってコードされるポリペプチドを含むげっ歯動物、または、市販のワルファリン耐性ラット、または、ワルファリン耐性を有する野生の捕獲ラットである。より好ましくは、VKORC1ポリペプチドは、配列番号12によるポリペプチドであり、配列異常は、V29L(85G>T)、V45A(134T>C)、R58G(172A>G)、R98W(292C>T)、およびL128R(383T>G)、Y139C(416A>G)からなる群から選択される。
【0102】
サンプルは、それが、試験されるラットのゲノムDNA、またはmRNAを含む限り、任意の器官、組織、体液、またはプローブであってもよい。好ましくは、サンプルは、血液、尾または耳の組織、尿または大便である。方法の詳細は実施例9に示される。
【0103】
ワルファリン耐性げっ歯類については既に記述されており(Kohon & Pelz,1999)、市場の供給業者から入手が可能である(例えば、The Federal Biological Research Center for Agriculture and Forestry,Institute for Nematology and Vertebrate Research,Toppheideweg 88,48161 Muenster、ドイツ)。好ましい実施態様では、ワルファリン耐性げっ歯動物は、ワルファリン耐性を引き起こす少なくとも一つの配列異常を含む、VKORC1ポリペプチドに関してトランスジェニックなげっ歯動物である。より好ましくは、前記少なくとも1個の配列異常を含むVKORC1ポリペプチドは、配列番号3から7、および15による核酸配列によってコードされるポリペプチドであり、配列異常は、V29L(85G>T)、V45A(134T>C)、R58G(172A>G)、R98W(292C>T)、およびL128R(383T>G)、Y139C(416A>G)からなる群から選択される。前記VKORC1ポリペプチドについてトランスジェニックなげっ歯動物、特にマウスを生産する方法は既に上述した。
【0104】
別の局面によれば、本発明は、ラットが、ラットから得られたサンプルにおいてワルファリン耐性遺伝型を有するかどうかを確定するために、配列番号88から91によるPCRプライマーを使用するその使用に関する。
【0105】
クマリンおよびその誘導体の投与は特に限定はされない。典型的には、クマリン(ワルファリン)を含む、毒物学的に有効な組成物は、クマリンおよびその誘導体を約50−300ppm、好ましくは約250ppm含む、顆粒状の食餌組成物として処方される。食餌は、典型的には、コーン油のような結合剤における0.5%から2.5%のワルファリン濃縮体として処方される。コーン油を結合剤として用いた場合、コーン油は、全体組成物の約0.5%から約2%の量として存在することが可能である。次に、結合剤とワルファリンは、例えば、穀物製品、例えば、コーンミール、押しオート麦、動物混合飼料、および、従来技術で既知の類似の製品に基づく製品と共に混合される。投与、すなわち、量、処方、および投与頻度および期間は、げっ歯類におけるワルファリンの毒性を評価するための標準的プロトコールに従ってもよいが、より好ましくは、試験される任意の毒物における致死量の50値(LD50)を評価するための標準的プロトコールに従う。これらは全て、当業者には一般的に既知であり、実施例9にも記載される。
【0106】
クマリン誘導体が毒物学的に有効であるためには、げっ歯動物を殺すのに複数回の摂取が要求されることが望ましい。なぜなら、そうすることによって、げっ歯動物は、食餌忌避を養成することがなくなるからである。以上から、候補クマリン誘導体の投与を数回繰り返すことが好ましい。通常、げっ歯動物は、組成物の、4から5回の連日投与後に死亡し始める。さらに、実験中の苦痛を緩和するために、熟練研究者には一般的に既知である鎮痛剤の投与によってラットの苦痛を抑制することが好ましいと考えられる。クマリンおよびクマリン誘導体組成物に鎮痛剤を含めることは、げっ歯動物が食物忌避を養成する機会をさらに少なくするという点でさらに有利となる可能性がある。
【0107】
投与後、候補クマリン誘導体の、げっ歯動物に対する毒性が定量され、それは、候補クマリン誘導体の毒性値を与える。候補クマリン誘導体の毒性を定量する方法は、熟練研究者には一般的に既知であり、LD50分析、例えば、国際標準比(INR)プロコールによる、プロトロンビン時間計測による血液凝固作用の分析を含む。次に、候補クマリン誘導体毒性の定量値は、ワルファリン耐性げっ歯動物の別標本を同様に処理して、ただし、クマリン誘導体を、標準的なげっ歯類用クマリン組成物と、すなわち、通常害獣駆除に用いられるがそれに対してげっ歯類は耐性を獲得している組成物と交換して得られた、適当なコントロールクマリン毒性値と比較される。コントロールにも、候補クマリン誘導体投与に関して前述したものと同じ実験条件が用いられる。もしも候補クマリン誘導体の毒性値が、コントロールクマリンの毒性値よりも等しいか、または好ましくは統計的に有意に高いのであれば、その候補クマリン誘導体は、毒物学的に有効なクマリン誘導体を表すことになる。
【0108】
本発明の別の局面では、本発明は、前述の方法によって特定されたクマリン誘導体の毒物学的に有効な量を含む、げっ歯類駆除組成物を提供する。クマリンおよびその誘導体を含む食餌組成物の処方は前述した。典型的な組成物は下記の構成成分を有する。成分%:顆粒状担体94%、コーン油1.0%、クマリンまたはクマリン誘導体の濃縮物(0.5%)5.0、合計100.0%。
【0109】
本発明はさらに、下記の実施態様に関する。すなわち、要すれば随意に、製薬学的に受容可能な担体と組み合わされる、VKORC1ポリペプチド、VKORC1核酸、本発明による融合タンパク、本発明によるベクター、本発明による宿主細胞からなる群から選ばれた化合物を含む、凝固性製薬組成物である。
【0110】
このような治療を必要とする患者を治療する方法であって、凝固性製薬組成物の治療的有効量を該患者に投与する工程を含む。この方法は、VKORC1関連欠乏症に悩む患者の治療に使用することも可能である。
【0111】
要すれば随意に、製薬学的に受容可能な担体と組み合わされる、本発明によるsiRNAおよび/またはshRNA、本発明によるアンチセンスRNAまたはDNA、本発明によるRNA−アプタマー、本発明による抗体からなる群から選ばれた化合物を含む、抗凝固性製薬組成物。
【0112】
このような治療を必要とする患者を治療する方法であって、抗凝固性製薬組成物の治療的有効量を該患者に投与する工程を含む。
【0113】
ビタミンK依存性ポリペプチドをγ−カルボキシル化するためにVKORC1ポリペプチドまたはVKORC1核酸を用いる使用。好ましくは、γ−カルボキシル化ビタミンK依存性ポリペプチドは、血液凝固因子II、VII、IX、X,タンパクC、タンパクS、タンパクZ、基質ゲルタンパク、およびオステオカルシンからなる群から選択されるポリペプチドである。好ましい実施態様では、VKORC1は、好ましくは、細胞背景において少なくとも一つの付加化合物と組み合わせて用いられる。その付加化合物は、ビタミンK、シトクロームB5、および、γ−グルタミル−カルボキシラーゼ、ミクロソームのエポキシデヒドロラーゼ、カルメニン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする核酸からなる群から選択される。
【0114】
これから下記に、本発明の好ましい実施態様と特質を表す、しかし、本発明はそれらに限定されるものではないが、図と実施例を援用しながら本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0115】
(実施例1:ゲノム候補領域の特性解明)
ビタミンK依存性凝固因子2型(VKCFD2)の複合欠損症の座位は、染色体16のセントロメア周辺領域のマーカーD16S3131とD16S419の間にマップされた[Fregin et al.,2002]。この領域は約20Mbを含む。ラット(Rw)およびマウス(War)におけるワルファリン耐性に関与する遺伝子は、ミオシンのL鎖2遺伝子(Myl2)と近接して染色体1[Kohn et al.,1999]および染色体7[Wallace,1976][Geaveses & Ayres,1967]にマップされた。Myl2のヒトのオーソログ、HUMMLC2Bは、VKCFD2候補領域内の、染色体16p11に位置し、保存連鎖の遺伝子群の一部となる。このシンテニーおよび生化学的考察に基づくと、VKCFD2とワルファリン耐性は、同じ遺伝子における対立遺伝子突然変異によるものと仮定される。もしそうなら、これによって、ヒトにおける最重要間隔が、染色体16の短腕における、インターロイキン4受容体遺伝子(IL4R)とインテグリンアルファM鎖遺伝子(ITGAM)との間の約4.5Mbの領域に狭められる(図1)。
【0116】
ゲノムアセンブリによれば、この領域は、約1000エキソンを含む141のEnsemble遺伝子を含む。これらの遺伝子の内、117は既知として注記されている。これらの遺伝子の多くは以下の分析から除外することが可能である。なぜならこれらの機能は十分に確立され、明らかにビタミンKの代謝過程とは無関係だからである。一方、この領域の上流および下流の遺伝子は機能的候補と見なされ、突然変異スクリーニングに含められた。
【0117】
(実施例2:突然変異スクリーニング)
2人のVKCFD2および3人のWR被験者からのゲノムDNAを用いて、残余の候補遺伝子の比較配列決定による系統的な突然変異スクリーニングを行った。このVKCFD2家系の臨床データは以前に記述されている[Oldenburg et al.,2000]。ワルファリン耐性患者は、血栓症治療または予防の際のワルファリン経口投与に対するその異常な反応に基づいて確認された。患者CとEは散発的な症例である。患者Dは、ワルファリン耐性を病む二人の兄弟を持っている。患者CおよびDは、経口的に抗凝固作用の治療範囲を実現するのに週当たり約150−250mgのワルファリンを必要とし、一方、患者Eは全く反応を示さなかった。患者は全て参加する前にインフォームドコンセントを提出した。
【0118】
驚くべきことに、調査した全てのVKCFD2およびWR被験者において、機能不明の遺伝子にミスセンス突然変異が認められた(図2)。この遺伝子(IMAGE3455200)は、5126bpのゲノム領域に広がっており、163個のアミノ酸から成るタンパクをコードする3個のエキソンを含む。これを、ビタミンKエポキシドリサイクリングタンパク1(VKORC1)と名づけた。無関係のVKCFD2患者、および同様の病気を有する兄弟達のいずれも第3エキソン(292C>T)に同じホモの点突然変異を抱えているが、一方、両親はヘテロであることが判明した。この突然変異は、アミノ酸残基98において、アルギニンがトリプトファンによって置換されたことによって生じたものである(R98W)。この家系はドイツおよびレバノン起源を有する。突然変異遺伝子周辺のホモ接合体領域におけるハプロタイプは、両家系で異なっており、独立した突然変異事象であることを示している。WR患者では、3種の異なるヘテロ突然変異が、バリンのロイシンによる置換(患者C:V29L)、アルギニンのグリシンによる置換(患者D:R58G)、および、ロイシンのアルギニンとの交換(患者E:L128R)をもたらすことが判明した。このR58G突然変異は、指標患者Dの二人の同病兄弟も共有している。このミスセンス突然変異は、384本のコントロール染色体には存在しなかった。コントロール染色体の配列決定を行うことによって、二つの、非同義的一塩基多型(C43C;L120L)が明らかにされた。
【0119】
ゲノム配列および注記は、NCBI、UCSC、およびEnsembleから得た。突然変異スクリーニング用のプライマーは、プライマーの自動的設計を可能とするために、スクリプトExonPrimerに組み込んだPrimer3ソフトウェアを用いて設計した。突然変異スクリーニングのために、イントロンプライマーを含むエキソンを増幅し、その増幅フラグメントを、BigDye Terminator Cycle配列決定キット(ABI)による直接的配列決定によって分析した。プライマー配列は請求により配布の用意がある。トポロジー予想は、TMPREDとTMHMを用いて行った。
【0120】
(実施例3:相同性およびタンパク構造)
VKORC1遺伝子のオーソログは、マウスに存在しており(NM_178600)、ラットおよびFugu rubripesにおけるオーソログは、相同性探索とRT−PCRによって確かめられた(図3)。対応するタンパクは、ヒトのタンパクと79%から84%の同一性を共有している。データベース探索では、既知の遺伝子に対しても、特性が明らかにされたタンパクドメインに対しても相同性は認められなかった。トポロジー予想プログラムでは、3個の膜貫通ドメイン(TM)が予想された。試験した全てのプログラムにおいて、第1TMは10から29残基の間に配置された。予想は、第2および第3TMに関しては一致しなかった。これらは、アミノ酸100と150の間に配置された。PSORTIIサーバーは、67%の確率で、ヒトVKORC1の159−163位置にER膜保持シグナル(KKXXまたはKXKXX)を予想した[Jackson et al.,1990]。他のVKORC1タンパクには共通配列も存在した。これは、VKORC1複合体は恐らくER膜システムの中に配されるものとする予想と一致する[Cain et al.,1997]。
【0121】
VKORC1によってTblastn探索を行ったところ、それぞれ50%のタンパク同一性を示す、ヒト(BC027734)とマウス(AK009497)の相同遺伝子が検出された。いずれのmRNAも、VKORC1とは相同性を示さないタンパクをコードすると誤って予想されていた。マウスのmRNA配列は、別の読み枠で予想されたタンパクとは不一致であった。マウス、およびFugu rubripesにおいて完全なcDNAが確かめられ、ラットでも部分的に確かめられた。これらのタンパクは、VKORC1様タンパク1(VKORC1L1)と表示された。ヒト、マウス、およびラットのVKORC1L1タンパクは、互いに、約84%の同一性を共有し、対応するVKORC1タンパクと約50%の同一性を共有する。さらに、Xenopus laevis(AAH43742)でも、Anopheles gambiae(EAA06271)でも−相同性はより低いが(1e−14)−相同性タンパクが検出された。ツリー分析により、これら二つのタンパクは、VKORC1遺伝子にたいするオーソログであることが示唆された。
【0122】
(実施例4:発現分析)
VKORC1は広く発現されるように見える。対応するUnigen記入は、様々な組織において100を超えるESTを含む。ヒトの胎児および成人組織におけるVKORC1の発現をノーザンブロット分析によって調べた。このために、ヒトの複数組織のノーザンブロット(胎児ブロット1、Stratagene;ヒト12−レーン、BD Clontech)は、2μgのポリ(A)+−RNAを含んでいた。ヒトのVKORC1cDNA全長を、ランダムプライマーDNA標識システム(Invitrogen life technologies)を用いて放射能標識し、miracleHyb高性能ハイブリダイゼーション液(Stratagene)を用いてハイブリダイズした。複数組織のノーザンブロットを備えるβアクチンプローブを、コントロールハイブリダイゼーションとして用いた。
【0123】
VKORPの最高発現レベルは、胎児および成人の肝臓に観察される(図4)。胎児の心臓、腎臓および肺において、また、成人の心臓および膵臓においても高い発現レベルが観察された。胎児の脳、成人の胎盤と骨格筋は、中等度の発現レベルを示した。僅かな発現レベルが成人の脳、肺、および腎臓に検出された。
【0124】
(実施例5:VKORC1のクローニングおよび発現ベクターの構築)
VKORC1の完全コード配列の増幅を、ヒトの肝臓および腎臓cDNA(Marathon−Ready cDNA、BD Biosciences Clontech)において、HindIIIおよびEcoRIに対する切断部位を含む下記のプライマーを用いて実行した。すなわち、
VKORC1−HindIII−F: ATTAAGCTTCACCATGGGCAGCACCTGGGGGAGCCCT(配列番号53)
VKORC1−EcoRI−R: ATTGAATTCCGTGCCTCTTAGCCTTGCCCTG(配列番号54)
この産物を、pBluescript IIベクター(Stratagene)に挿入クローンし、対応する制限酵素で切断し、直接配列決定で確認した。免疫細胞組織化学的実験のために、挿入体を再度哺乳類発現ベクターpEGFP−N1(BD Biosciences Clontech)、およびpcDNA3.1/myc−His(Invitrogen)に挿入再クローンした。
【0125】
発現実験のために、VKORC1 cDNAを、プライマーVKORC1−pcdna3−F: GGGCGGAAGCTTGAGATAATGGGCA(配列番号92)、およびVKORC1−pcdna3−R: GCTTGAATTCAGGGCTCAGTGC(配列番号93)によって増幅後pcDNA3ベクター(Invitrogen)に挿入クローンした。突然変異発生は、QuickChange突然変異発生キット(Stratagene)を用いて行った。発現のために、野生型、および突然変異cDNAを、HindIIIおよびXhoI部位を用いてpCEP4(Invitrogen)において再クローンした。構築物は全て配列決定によって確認した。
【0126】
(実施例6:細胞培養、一過性トランスフェクションと免疫細胞化学、および細胞内局在)
生化学的分画実験から、VKORC1活性は、ミクロソーム膜と共に精製されることが分かっている[Cain et al.,1997]。さらに、免疫細胞化学によってγ−グルタミル−カルボキシラーゼは、小胞体の膜に局在することが示されている[Presnell,2002#31]。ヒトのVKORC1の細胞内局在を調べるために、GFP−およびmyc−エピトープ標識VKORC1融合タンパク構築物を、COS−7細胞の一過性トランスフェクション実験のために作製した。エピトープタグに対する一次抗体、および、フルオロクローム標識二次抗体を用いて融合タンパクを可視化した。ER−特異的タンパクカルネキシンに対する抗体をコントロールとして用いた。このために、COS−7細胞(DSMZ、Braunschweig)を、10%ウシ胎児血清を添加した、ダルベッコの改定イーグル培養液にて維持した。細胞を、6ウェルプレートのガラスカバースリップに静置し、18−24時間培養後、Effectene(QIAGEN)をメーカーの指示に従って用いて発現ベクター構築物によってトランスフェクトした。さらに48−60時間培養した後、細胞をPBSで洗浄し、70%アセトン/30%メタノールにて−20℃で15分固定した。固定後、細胞をPBS、0.1%Nonidet P−40(SIGMA N−6507)において透過させ、次に、37℃で、PBS、2%BSA、および0.1%NP−40でブロックした。Living Colors A.v.(JI−8)(BD Biosciences Clontech)、抗myc抗体(Invitrogen)、および抗カルネキシン(SIGMA)を、ブロッキング液にて希釈し(1:100)、37℃で45分インキュベートした。カバースリップを、PBS、0.1%NP−40にて30分洗浄した。二次抗体、すなわち、抗マウスIgG−FITC(SIGMA)および抗ウサギIgGF(ab′)フラグメント−Cys(SIGMA)にも同じインキュベーションおよび洗浄工程を用いた。カバースリップを、DAPI(1:500)にて1分間カウンターステインし、脱イオン水にて洗浄し、Vectashield(Vector)を用いてスライドにマウントし、Leicaの蛍光顕微鏡にて視像化した。
【0127】
VKORC1融合タンパクの緑色の免疫蛍光が、細胞原形質内のERの網状構造を彩りっており、ER−マーカーカルネキシン(赤)のラベルと完全に同一配置された(図5)。
【0128】
(実施例7:VKORC1酵素活性定量のためのアッセイ)
HEK293−EBNA細胞(Invitrogen)を、10FCS添加MEMにて育成した。各実験のために、6x10個の細胞を、94mmペトリ皿に静置した。37℃、5%COに30時間暴露後、リン酸カルシウム法によりトランスフェクション(1個の皿当たり20μgのDNA)を行った。35℃、3%COに40時間暴露後、トランスフェクト細胞(ほぼ集密に近く増殖)をPBSにて洗浄し、収穫し、450μlの0.25mMイミダゾール(pH=7.6)、0.5%CHPSにて細胞溶解した。トランスフェクション効率は、細胞分液のRT−PCR産物の配列決定によってチェックした。
【0129】
VKOR酵素活性は、30μlの全細胞抽出物を、500μlバッファーA(0.25mMイミダゾール(pH=7.6)、0.5%CHAPS)に再懸濁させたものについて測定した。次に、20μlの125mM DTTを加えて1分インキュベートした。次に、5μlの400mMCaCl、および、10μlのDMSOに溶解したワルファリン(最終濃度0−80μM)を加えた。反応は、2μlのビタミンK2,3−エポキシドを加える(最終濃度5μM)ことによって開始し、30℃で1時間インキュベートした。反応は、基質(ビタミンK2,3−エポキシド)および反応産物(ビタミンK−キノンおよびハイドロキノン)を1mlの2−プロパノール/ヘキサン(3:2、v/v)を用いて抽出することよって停止させ、上清の有機相を収集し、乾燥し、50μlのメタノールに溶解し、254nmにおいてHPLCにて分析した。ビタミンKキノンは、逆相C−18カラムにおいてHPLCによってエポキシドから分離した。抽出工程中、ビタミンKハイロドロキノンを、定量的に酸化してキノン形とした。HPLCの出力は、各ピークの境界線下の面積を測定することによって分析した。基質変換のパーセントは、残余基質ピーク(エポキシド)プラス産物ピーク(キノン)の面積を100パーセントに設定することによって推定した。測定は二重に行い、活性は、キノンに変換された基質のパーセントで表した。ビタミンK2,3−エポキシドは、ビタミンKキノン(Sigma−Aldrich)をHで酸化することによって調製した。ワルファリン(Sigma−Aldrich)は、DMSOに溶解して(<1容量%)加えた。
【0130】
5から80μMの最終濃度においてワルファリン抑制に対する用量−反応を測定した。トランスフェクトされない細胞、および擬似トランスフェクト細胞は、ワルファリン感受性であるが、低い基礎活性を示した。野生型VKORC1の過剰発現は、VKOR活性の著明な刺激をもたらした。ビタミンKキノンの生産は、トランスフェクトされない細胞および擬似トランスフェクト細胞に比べて14から21倍増加した。この活性は、ワルファリンによって用量依存的に抑制された(図10)。
【0131】
我々はまた、突然変異VKORC1構築物によるトランスフェクション後のVKOR活性を定量した(図10)。二つのVKCFD2家系に観察されたR98W突然変異の組み換え発現は、HEK293細胞においてごく僅かにVKOR活性を増した。これらの患者では自発性の出血発作の見られること、ビタミンKエポキシドの血清濃度が高いことは、ビタミンKリサイクリングの効率が、インビボでも大きく低下していることを示している(Oldenburg et al.,2000)。5個のWR突然変異では、L128R変種の5%からV29L変異の96%に渡るVKORC活性の低下が示された。突然変異V45A、R58G、およびY139Cは、それぞれ、約23%、21%、および48%の活性を示した。ヘテロおよびホモのRwラットにおいて、高いビタミンK要求および自発的出血による死亡と関連するVKOR活性の低下が観察されている(Martin et al.,1979,Thijssen & Pelz,2001,Fasco et al.,1983b)。同様に、ホモ状態を模倣する我々の発現システムでも、WR突然変異は、VKOR複合体の機能的効率の低下をもたらした。表現型レベルでは、全てのWR変種が、ワルファリンの抗凝固作用に対して少なくとも部分的な耐性を示したが、野生型および変異タンパクのいずれも、インビトロではワルファリンに対して感受性を示した。20μMを超える濃度では、V29LとY139Cは、野生型よりも高いVKOR活性を維持したが、突然変異種V45A,R58G,L128Rでは、VKOR活性は、検出限界を下回った(図10)
(実施例8:VKORC1配列異常を診断する方法)
標本(ヒト患者または哺乳動物)のゲノムDNAを、熟練研究者には一般的に既知の標準法に従って単離された。VKORC1の所望のエキソン(1−3)のゲノムDNAを、これも熟練した専門家によって設計が可能な特異的プライマーを用いてPCRによって増幅した。次に、このPCR産物を、例えば、SAP/Exo(小エビ・アルカリフォスファターゼおよびエキソヌクレアーゼ)を用いて標準条件下に精製する。
【0132】
次に、この精製DNAに、下記のように標準的配列決定工程を施す。すなわち、1μlの精製PCR産物に、10pmol/μlプライマー(順行または逆行プライマー)の0.3μlを加え、次に、8μlのDTCS−Mix(Beckman−Coulter)および10.7μlの水を加え、下記の条件下でサイクル配列決定する。
【0133】
【表1】

サイクル配列決定後、沈殿による精製が続く。
*2μlの100mM EDTA、2μlの5M NaOAc(pH4.8)、1μlのグリコーゲンを加えて、渦流攪拌、
*60μlの95%エタノールを加えて、渦流攪拌、
*13000gにて遠心(10分)、
*上清を除去、
*ペレットを180μlの70%エタノールで洗浄、
*ペレットを乾燥、
*ペレットを、35μlのサンプル負荷液(SLS)に溶解。
【0134】
次に、プローブを、1滴のパラフィンオイルで被ったマクロタイタープレートにピペットする。次に、シークエンサーにおいて4.2Vで60−120分分離する。生データを分析し、配列を、CEQ2000XLソフトウェア(4.3.9バージョン、Beckman Coulter)を用いてコントロール配列と揃える。コントロール配列(ゲノムVKORC1核酸配列、または配列番号2によるそのコード配列が好ましい)と、配列決定されたDNAとの相違は、そのプローブ配列が、配列異常を含むVKORC1核酸を表すものであることを示す。
【0135】
(実施例9:ラットにおけるワルファリン耐性を定量するためのPCRアッセイ)
あるラット(Rattus norvegicus)がワルファリン耐性を有するかどうか、すなわち、配列番号13によるVKORC1コード配列がY139C(416A>G)突然変異を有するかどうかを決めるために、ARMS−PCRに基づく下記のアッセイを、ラットゲノムDNAの供給源としてラット糞を用いて行った。
【0136】
本アッセイの原理として、PCR反応には、(1)ワルファリン耐性突然変異対立遺伝子416Gを含むDNA配列に特異的にハイブリダイズする1本のPCRプライマー(rVKORC1−内部F)、および、(2)野生型対立遺伝子416Aを含む野生型DNA配列に特異的にハイブリダイズするもう1本のPCRプライマー(rVKORC1−内部R)が含まれる。さらに、この2本のプライマーは、本反応に含まれるさらに2本のPCRプライマーの内の一方とペアを造るように、互いに反対方向に配される。後のプライマーは、416部位に対して、異なる距離で、かつ、反対方向に配される。その結果、416部位が突然変異しているか否かに従って、rVKORC1−内部Rプライマーか、rVKORC1−内部Fプライマーのどちらかがアニールするので、PCR反応は、異なるサイズの増幅DNAをもたらし、これは、そのDNAが分析されるラットの遺伝子型を示すことになる。野生型ラットでは、PCR反応は123bpのバンドをもたらすが、一方、416G変異に対してホモのラットでは、PCR反応は101bpの所にバンドを生ずる。最後に、ヘテロ遺伝型を有するラットでは、PCR反応は、一つは101bp、もう一つは123bpの二つのバンドを生ずる。
【0137】
ゲノムDNAが、熟練した専門家には一般的に既知の、標準的DNA単離過程を用いて糞から単離された。下記の成分がPCR反応のために組み合わされた。すなわち、1μlのDNA(ラット)、1μlの5MのBetain(Sigma)、2pmolの外部プライマーF(1:50希釈液1μl)、2pmolの外部プライマーR(1:10希釈液1μl)、10pmolの内部プライマーF(1:10希釈液1μl)、10pmolの内部プライマーR(1:50希釈液1μl)、0.25μlのTaq/Pfu−ポリメラーゼ(1.25UのTaq(Invitrogen)および0.25UのPfu(Stratagen))、25μlのPCR−バッファー添加(1mlのPCR−バッファーは、100μlの10xPCR−バッファー(Invitrogen)、160μlのヌクレオチドステム液(1.25mMのdNTP)、30μlのMgCl、610μlの蒸留水を含む)。PCR条件は、95℃で3分、その後、95℃で20秒、62℃で20秒、および70℃で10秒を32サイクル。最後に、反応系を70℃で3分インキュベートする。PCR産物は、臭化エチジウム(100ml毎に1%ステム液を10μl)を含む3.5%TAE−アガロースゲルにおけるゲル電気泳動によって分離した。ゲル電気泳動は130Vで30分動作させた。
【0138】
下記のプライマーを用いた。
−rVKORC1−外部F: ATCCTGAGTTCCCTGGTGTCTGTCGCTG(配列番号88)
−rVKORC1−外部R: TCAGGGCTTTTTGACCTTGTGTTGTGGC(配列番号89)
−416G−突然変異対立遺伝子特異的PCRプライマー「rVKORC1−内部F」: TGATTTCTGCATTGTTTGCATCACCACATG(配列番号90)
−416A−野生型対立遺伝子特異的PCRプライマー「rVKORC1−内部R」: CAACATCAGGCCCGCATTGATGGAAT(配列特定番号91)
ラット(Rattus norvegicus)において、ワルファリン耐性を有するもの、および持たないものをアッセイに用いた。PCRの結果を図13に示す。野生型ラットは、123bpにバンドを示し、突然変異に対してホモのラットは、101bpにバンドを示し、最後に、ヘテロの変異を有するラットは、2本のバンド、1本は101bp、もう1本は123bpを示した。
【0139】
その結果、このデータは、このアッセイは、任意のラットがワルファリン耐性を有するかどうかを決定するために使用することが可能であることを証明する。このアッセイは、ある任意の区域における害獣駆除を管理するに当たってきわめて強力である。なぜなら、ワルファリン耐性ラットの頻度に関する知識は、どの殺鼠剤が効果的に使用可能であるかを決めるに当たって決定的に重要だからである。今ある領域においてワルファリン耐性ラットの高い出現頻度が見られる場合、ワルファリンおよびその類縁体は、それらのラットを殺すのに不適切な手段である。一方、ワルファリン耐性ラットに関して求められた頻度が低い場合には、ワルファリンは、げっ歯類の駆除に効果的に使用される可能性がある。
【0140】
(参考文献のリスト)
【0141】
【表2】

【0142】
【表3】

【0143】
【表4】

【0144】
【表5】

【0145】
【表6】

【0146】
【表7】

【0147】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】図1は、ヒト、ラット、およびマウスにおけるVKORC1遺伝子座位を含む遺伝子マップにおける3cMの候補間隔の比較を示す。ヒト染色体16のイディオグラムが示される。ファミリー1および2のホモ接合体領域は、ほぼ25Mbに相当する16p11.2から16q13まで延びる。図の右側に、マウスとラット染色体の相同部位がある。16p11.2および16q12.1の合成遺伝子が、Mus musculus(MMU)およびRattus norvegicus(RNO)の対応する相同遺伝子と共に描かれている。マウス(War)およびラット(Rw)におけるワルファリン耐性表現型の座位は、16p11.2に相同な領域にマップされる。MMU:Mus musculus;RNO:Rattus norvegicus;PRKCB1;Prkcb;IL4R:インターロイキン4受容体(ヒトにおける);Il4a:インターロイキン4受容体(マウスにおける);Il4r:インターロイキン4受容体(ラットにおける);SPS2:セレノフォスフェート合成酵素(ヒト);Sps2:セレノフォスフェート合成酵素(マウス/ラット);HUMMLC2B:ミオシンL鎖2(ヒト);Mylpf:ミオシンL鎖2(マウス);Myl2:ミオシンL鎖2(ラット);SPN:シアロフォリン(ヒト);Spn:シアロフォリン(マウス/ラット)
【図2】図2は、ヒトのビタミンK依存性凝固因子2(VKCFD2)およびワルファリン耐性(WR)患者におけるVKORC1突然変異を示す。図の上方部分は、二つのVKCFD2家系におけるR98W突然変異の分離を示し、コントロール(右)と比べた場合のホモ突然変異(左)のエレクトロフェログラムを示す。図の下方部分は、4人のWR患者(85G>T、134T>C、172A>G、383T>G)およびRwラット(416A>G)のヘテロの突然変異を示す。
【図3】図3は、VKORC1および、VKORC1様タンパク1(VKORC1L1)ポリペプチド同士の配列アラインメントを示す。このアラインメントは、CLUSTALWおよびPRETTYBOXによって作成した。ヒト(hVKORC1)、マウス(mVKORC1)、およびラット(rVKORC1)、および、VKORC1L1ポリペプチド、すなわち、ヒト(hVKORC1L1)、マウス(mVKORC1L1)、およびFugu rubripes(fVKORC1L1)は、両タンパク群内部において約84%の配列同一性を分かち有し、両タンパク群間において約50%の同一性を分かち持っている。xVKORC1は、Xenopus laevis(アフリカツメガエル)のVKORC1ポリペプチド配列を示し、fVKORC1は、Fugu rubripes(トラフグ)のVKORC1ポリペプチド配列を示し、aVKORC1は、Anopheles gambiae(ハマダラカ)のVKORC1ポリペプチド配列を示す。ツリー分析によって、Fugu rubripes、Xenopus laevis、およびAnopheles gambiaeのタンパクは、適当な群にまとめられた。WR患者において突然変異を示した残基29、45、58、および128は、全ての動物種において保存されていた。VKCFD2患者において突然変異を示した98位置におけるアルギニンは、ヒト、ラット、およびマウスにおいて保存されている(プラス符号)。
【図4】図4は、ヒトの胎児および成人組織におけるVKORC1のノーザンブロット分析を示す。上のブロットは、成人組織のノーザンブロットを示し、一方、下のブロットは、胎児組織のノーザンブロットを示す。さらに詳細については実施例4を参照されたい。サイズ2.4、4.4、7.5、および9.5KBのフラグメントによる線は、分子量マーカーを示し、全ての可視的バンドのサイズの推定を可能とする。
【図5】図5は、VKORC1の細胞内局在を示す。さらに詳細については、実施例6を参照されたい。このために、COS−7細胞を一過性にVKORC1構築物でトランスフェクトし、それぞれ、抗カルネキシン(赤:左側コラム)、および、抗GFPまたは抗myc(緑:中央コラム)で染色した。二重染色細胞の融合図を右側コラムに示す。両VKORC1構築物とも(GFPまたはmyc標識)、ER特異的カルネキシン染色と共通局在を示す。コントロール構築物(pEGFP−N1)は、原形質全体に渡って拡散的な染色パターンを示す。
【図6−1】図6は、homo sapiensのVKORC1に対するsiRNAおよび、例えば、siLentGene(登録商標)U6カセットRNA干渉システムを用いてsiRNAを発現させる際に使用が可能な、これらsiRNAをコードするプライマーのリストを示す。
【図6−2】図6は、homo sapiensのVKORC1に対するsiRNAおよび、例えば、siLentGene(登録商標)U6カセットRNA干渉システムを用いてsiRNAを発現させる際に使用が可能な、これらsiRNAをコードするプライマーのリストを示す。
【図7】図7は、homo sapiensのビタミンKエポキシド還元酵素複合体サブユニット1(Hs_VKORC1)のコード配列におけるsiRNA標的の位置を示す。該位置は明るい灰色で示す。二つの可能なsiRNA配列の一部となる領域は、より暗い灰色で示す。2個以上の可能なsiRNA配列における領域は、さらに暗い灰色で示す。
【図8】図8は、Homo sapiensのVKORC1およびHomo sapiensのVKORC1L1増幅のための、PCRプライマー配列およびPCR条件のリストを示す。
【図9−1】図9は、配列、およびそれぞれの配列番号のリストを示す。
【図9−2】図9は、配列、およびそれぞれの配列番号のリストを示す。
【図9−3】図9は、配列、およびそれぞれの配列番号のリストを示す。
【図9−4】図9は、配列、およびそれぞれの配列番号のリストを示す。
【図9−5】図9は、配列、およびそれぞれの配列番号のリストを示す。
【図9−6】図9は、配列、およびそれぞれの配列番号のリストを示す。
【図10】図10は、VKORC1 cDNAによってトランスフェクトされたHEK293細胞のVKOR活性を示す。数値は、ビタミンKキノンに変換されたビタミンKエポキシドのパーセント(産物/残留基質+産物)として表された。野生型VKORC1活性も、ワルファリンに対する感受性によって規定される(抑制されないものと比べると、80μMワルファリンにおいて4.3%の残留活性)。ワルファリン耐性をもたらす突然変異Y139CおよびV29Lは、それぞれ、80μMワルファリンにおいて69および11%残留活性を示す)。試験は全て二重に行った。トランスフェクトされない細胞および擬似トランスフェクト細胞は、1.49%および0.96%の活性を示し、10μMワルファリンによって>90%抑制された。詳細については実施例7を参照されたい。
【図11】図11は、Homo sapiensのビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチドのアミノ酸配列(HS_VKORC1:配列番号1)を示す。
【図12】図12は、Homo sapiensのビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチドの核酸のコード配列(HS_VKORC1:配列番号2)を示す。
【図13】図13は、試験ラットがワルファリン耐性を有するかどうかを決めるために行ったARMS−PCR実験の結果を示す。野生型ラットは、123bpにおいてバンドを示した(プローブ番号3351、3133、3137、3142、4724、4684、3138、3162)。突然変異(プローブ番号4701)に対してホモのラットは、101bpにおいてバンドを示した。最後に、ヘテロの突然変異を有するラット(プローブ番号3066、3350、3352、3354、3139、3140、4754、3146、3148、3149)は、2本のバンド、一本は101において、もう一本は123bpにおいて示した。詳細は実施例9を参照されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における、クマリンおよびその誘導体の標的としれのビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)であって、
(a)配列番号1、12および17に記載の配列からなる群から選択されるポリペプチド配列;
(b)(a)に規定されるポリペプチド配列の、対立遺伝子のポリペプチド配列;
(c)(a)または(b)に規定されるポリペプチド配列に対して少なくとも80%の相同性を有し、ここで、該ポリペプチド配列がVKORC1活性を有する、ポリペプチド配列;
(d)VKORC1活性を有し、(a)、(b)または(c)に規定されるポリペプチド配列のフラグメントのポリペプチド配列、
からなる群から選択されるポリペプチド配列を含む、ビタミンKエポキシドリサイクリングポリペプチド(VKORC1)。
【請求項2】
VKORC1核酸であって、
(a)請求項1のVKORC1ポリペプチドをコードする核酸配列;
(b)配列番号2、13および18に記載の配列からなる群から選択される核酸配列;
(c)(a)または(b)に規定される核酸配列に対してストリンジェントな条件の下にハイブリダイズする核酸であって、ここで、VKORC1活性を有するポリペプチドをコードする。核酸配列;
(d)(a)、(b)または(c)に規定される核酸配列に対して、遺伝子コードの縮重がなければ、ハイブリダイズし得る核酸配列であって、ここで、該核酸配列がVKORC1活性を有するポリペプチドをコードする、核酸配列;および、
(e)(a)、(b)、(c)または(d)に規定される核酸配列のフラグメントであって、ここで、該フラグメントがVKORC1活性を有するポリペプチドをコードするフラグメント、
からなる群から選択される核酸配列を含む、VKORC1核酸。
【請求項3】
融合タンパクであって、
(a)請求項1のVKORC1ポリペプチド、または、請求項2のVKORC1核酸によってコードされるポリペプチド、および
(b)異種部分
を含む、融合タンパク。
【請求項4】
請求項2のVKORC1核酸を含むベクター。
【請求項5】
前記ベクターが発現ベクターである、請求項4のベクター。
【請求項6】
前記ベクターがノックアウト遺伝子構築物である、請求項4または5のベクター。
【請求項7】
請求項2のVKORC1核酸、または請求項4〜6のいずれか1項のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項8】
非ヒト胚性幹細胞である、請求項7の宿主細胞。
【請求項9】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、請求項8の宿主細胞を含む、トランスジェニック哺乳動物。
【請求項10】
請求項2のVKORC1核酸に対する、DNAプローブまたはRNAプローブ。
【請求項11】
請求項2のVKORC1核酸に対するPCRプライマーであって、好ましくは、配列番号53〜69および70に記載のPCRプライマーからなる群から選択される、PCRプライマー。
【請求項12】
請求項2のVKORC1核酸に対する低分子干渉性RNA分子(siRNA)または短鎖ヘアピンRNA(shRNA)であって、好ましくは、配列番号29、30、33、34、37、38、41、42、45、46、49および50からなる群から選択される、siRNA。
【請求項13】
請求項2のVKORC1核酸に対する、アンチセンスRNAまたはアンチセンスDNA。
【請求項14】
請求項1のVKORC1ポリペプチドに対するRNAアプタマーであって、該VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼす、RNAアプタマー。
【請求項15】
請求項1のVKORC1ポリペプチドを特異的に認識し、結合する、抗体またはそのフラグメント。
【請求項16】
VKORC1ポリペプチドを生産する方法であって、
(I)請求項2のVKORC1核酸、または、請求項4〜6のいずれか1項のVKORC1核酸を含むベクターを導入された宿主細胞を提供する工程;
(II)該宿主細胞において該VKORC1ポリペプチドを発現する工程;
(III)該宿主細胞から該VKORC1ポリペプチドを単離する工程、
を包含する、方法。
【請求項17】
請求項1のVKORC1ポリペプチドの活性に作用を及ぼすクマリン誘導体を同定する方法であって、
(I)前記VKORC1核酸、または、該VKORC1核酸を含むベクターを導入された宿主細胞を提供する工程;
(II)該宿主細胞において該VKORC1ポリペプチドを発現する工程;
(III)候補のクマリン誘導体を投与する工程;
(IV)該VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(候補活性値);
(V)該候補活性値をコントロール活性値と比較する工程;および、
(VI)提供される該候補活性値が該コントロール活性値と有意に異なる場合、該候補クマリン誘導体を、該VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼすクマリン誘導体であると同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項18】
請求項17の方法であって、前記コントロール活性値は、
(A)工程(I)に従って宿主細胞を提供する工程;
(B)該宿主細胞において前記VKORC1ポリペプチドを発現する工程;および、
(C)該VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(コントロール活性値)
を包含する方法によって決定される、方法。
【請求項19】
請求項17の方法であって、前記定量されたVKORC1ポリペプチドの活性は、ビタミンK2,3−エポキシドのビタミンKキノンへのジチオスレイトール依存性変換であり、ここで、前記有意に異なる活性値は、前記コントロール活性値よりも有意に高い候補活性値である、方法。
【請求項20】
請求項17の方法であって、少なくとも1つのさらなる化合物が前記宿主細胞に導入され、該化合物は、ビタミンK、シトクロームB5、ならびにγ−グルタミル−カルボキシラーゼ、ミクロソームのエポキシデヒドロラーゼ、カルメニン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする核酸とからなる群から選択される、方法。
【請求項21】
VKORC1活性に対して発揮されるクマリン作用を伝えるVKORC1ポリペプチド配列を決定する方法であって、
(I)少なくとも1つの配列異常を有する、請求項1のVKORC1ポリペプチドを発現する細胞を提供する工程;
(II)クマリンまたはその誘導体を該細胞に投与する工程;
(III)該VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(配列異常活性値);および、
(IV)該配列異常活性値を、コントロール配列活性値と比較する工程を包含し、
ここで、該コントロール配列活性値に対する、該配列異常活性値の有意な偏差は、該VKORC1ポリペプチドの配列異常が、VKORC1ポリペプチドに対して発揮される該クマリン作用を伝えることの指標である、方法。
【請求項22】
請求項21の方法であって、前記コントロール配列活性値は、
(I)請求項1のVKORC1ポリペプチドを発現する宿主細胞を提供する工程;
(II)クマリンまたはその誘導体を該細胞に投与する工程;および、
(III)該VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(コントロール配列活性値)
を包含する方法によって決定される、方法。
【請求項23】
請求項21の決定方法であって、前記定量された活性は、ビタミンK2,3−エポキシドのビタミンKキノンへのジチオスレイトール依存性変換であり、ここで、前記有意に異なる値とは、前記コントロール配列活性値よりも有意に高い配列異常活性値である、方法。
【請求項24】
請求項21の方法であって、少なくとも1つのさらなる化合物が前記細胞に導入され、該化合物は、ビタミンK、シトクロームB5、ならびにγ−グルタミル−カルボキシラーゼ、ミクロソームのエポキシデヒドロラーゼ、カルメニン、またはグルタチオン−S−トランスフェラーゼをコードする核酸とからなる群から選択される、方法。
【請求項25】
請求項1のVKORC1ポリペプチドであって、該VKORC1ポリペプチドの活性に対して作用を及ぼす、少なくとも1つの配列異常を含む、VKORC1ポリペプチド。
【請求項26】
請求項25のVKORC1ポリペプチドであって、該VKORC1ポリペプチドは、配列番号1または12に記載のポリペプチドであり、かつ、前記配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128R,およびY139Cからなる群から選択される、ポリペプチド。
【請求項27】
VKORC1核酸であって、
(a)請求項25または26のVKORC1ポリペプチドをコードする核酸;
(b)配列番号3、4、5、6、7、14および94に記載の配列からなる群から選択される核酸配列;および、
(c)(a)または(b)に規定される核酸に対して、遺伝子コードの縮重がなければ、ハイブリダイズし得る核酸配列であって、ここで、該核酸配列が、請求項25または26のポリペプチドをコードする、核酸配列、
からなる群から選択される、核酸。
【請求項28】
請求項27のVKORC1核酸を含むベクター。
【請求項29】
請求項27のVKORC1核酸に対するDNAプローブまたはRNAプローブ。
【請求項30】
請求項27のVKORC1核酸に対するPCRプライマー。
【請求項31】
請求項25または26のVKORC1ポリペプチドを特異的に認識し、結合する、抗体またはそのフラグメント。
【請求項32】
トランスジェニック非ヒト哺乳動物であって、請求項27のVKORC1核酸、または請求項28に記載のベクターを含む幹細胞を含む、トランスジェニック非ヒト哺乳動物。
【請求項33】
請求項27のVKORC1核酸、請求項29のDNAプローブまたはRNAプローブ、請求項30のPCRプライマー、および請求項31の抗体からなる群から選択される化合物を含む、診断薬。
【請求項34】
患者においてVKORC1関連欠乏症を診断する方法であって、
(I)該患者から得られたDNAサンプルを増幅するか、または該患者から得られたRNAサンプルを逆転写してDNAとし、該DNAを増幅する工程;および、
(II)工程(I)の増幅されたDNAを分析し、請求項1のVKORC1ポリペプチドをコードする核酸配列において、または、該VKORC1ポリペプチドのアミノ酸配列において少なくとも1つの配列異常を決定する工程を包含し、
ここで、該決定される配列異常は、該患者が、VKORC1関連欠乏症に罹患すること、好ましくはワルファリン耐性を患っていることの指標である、方法。
【請求項35】
請求項34の方法であって、前記増幅されたDNAは、配列番号1に記載のVKORC1ポリペプチドの少なくとも部分配列をコードし、ここで、前記配列異常は、V29L、V45A、R58G、R98W、L128RおよびY139Cからなる群から選択される、方法。
【請求項36】
請求項34の方法であって、前記増幅されたDNAは、PCRベースの分析、制限消化分析、およびDNA配列決定分析からなる群から選択される技術によって分析される、方法。
【請求項37】
患者においてVKORC1関連欠乏症を診断する方法であって、
(I)該患者からのサンプルを提供する工程;および、
(II)請求項31の抗体を用いて、該サンプルにおいて配列異常を有するVKORC1ポリペプチドを検出する工程を包含し、
ここで、決定される配列異常は、該患者が、VKORC1関連欠乏症に罹患することの指標である、方法。
【請求項38】
請求項37の方法であって、前記サンプルは、免疫組織化学的検出、イムノブロッティング、好ましくはウェスタンブロッティング、およびELISAからなる群から選択される技術によって分析される、方法。
【請求項39】
少なくとも1つの配列異常を有するVKORC1ポリペプチドの活性に対して抑制作用を及ぼすクマリン誘導体を同定する方法であって、
(I)請求項25または26に記載のVKORC1ポリペプチド、好ましくは、配列番号3、4、5、6、7、14および94からなる群から選択される配列によってコードされるポリペプチドを発現する細胞を提供する工程;
(II)候補クマリン誘導体を該細胞に投与する工程;
(III)該VKORC1ポリペプチドの活性を定量する工程(配列異常活性値);および、
(IV)該配列異常活性値を、コントロール配列活性値と比較する工程、
(V)該候補クマリン誘導体の投与が、該コントロール配列活性値よりも有意に低い配列異常活性値をもたらす場合、該候補クマリン誘導体を、VKORC1ポリペプチドの活性に対して抑制作用を及ぼすクマリン誘導体として同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項40】
ワルファリン耐性げっ歯動物において毒物学的に有効なクマリン誘導体を同定する方法であって、
(I)ワルファリン耐性げっ歯動物を提供する工程;
(II)該げっ歯動物に候補クマリン誘導体を投与する工程;
(III)該げっ歯動物に対する該候補クマリン誘導体の毒性を定量する工程(候補クマリン誘導体毒性値);
(IV)該候補クマリン誘導体毒性値をコントロールクマリン毒性値と比較する工程;
(V)該候補クマリン誘導体毒性値が、該コントロールクマリン毒性値よりも有意に大きい場合、該候補クマリン誘導体を、毒物学的に有効なクマリン誘導体であると同定する工程、
を包含する、方法。
【請求項41】
請求項40の方法であって、ワルファリン耐性げっ歯動物は、請求項1のVKORC1ポリペプチドについてトランスジェニックなげっ歯動物であり、該VKORC1ポリペプチドは、ワルファリン耐性を引き起こす少なくとも1つの配列異常、好ましくは、配列番号14に記載の配列によってコードされるポリペプチドを含む、方法。
【請求項42】
請求項40の方法であって、VKORC1ポリペプチドは、配列番号12に記載のポリペプチドであり、かつ、該配列異常は、V29L(85G>T)、V45A(134T>C)、R58G(172A>G)、R98W(292C>T)、およびL128R(383T>G)、およびY139C(416A>G)からなる群から選択される、方法。
【請求項43】
げっ歯類を殺す組成物であって、請求項39〜41のいずれか1項に記載の方法によって同定されたクマリン誘導体の毒物学的に有効な量を含む、組成物。
【請求項44】
配列番号88〜91に記載のPCRプライマーの使用であって、ラットから得たサンプルにおいて、該ラットがワルファリン耐性遺伝子型を有するか否かを決定するための、使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図9−3】
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【図9−4】
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【図9−5】
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【図9−6】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2007−512002(P2007−512002A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534667(P2006−534667)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011432
【国際公開番号】WO2005/040367
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(504375581)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (26)
【Fターム(参考)】