説明

ビデオデータ信号補正

ビデオ信号分配システムは、暗号化されたビデオ信号を有するデータストリーム、ビデオ信号を復号化する制御ワード情報、およびビデオ信号の対応する部分を見るための料金を示す料金情報を生成するビデオストリーム源(10)を含む。複数のビデオ再生装置(12)は媒体(14)に結合されデータストリームを受け取る。ビデオ再生装置(12)の各々は、制御ワード情報から得られた制御ワードをビデオ信号復号装置(121)に供給する制御ワード導出ユニット(125)を有する。クレジットメモリ(128)を有するクレジット管理ユニットが備えられ、これは、クレジットメモリ(128)がクレジットのしきい値よりも大きい利用可能性を示す場合、制御ワードを供給できるように又は供給できないようにし、供給される制御ワードを復号するビデオ信号の一部の料金情報によってクレジットメモリ(128)のクレジットを減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクティブマトリックス表示装置、特に、個々の表示素子を流れる電流を制御するトランジスタを有するアクティブマトリックス表示装置、をアドレスするビデオデータ信号を補正する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセント発光表示素子を使用したマトリックス表示装置が周知である。表示素子は、例えばポリマー材料を使用した有機薄膜エレクトロルミネセント素子、又は伝統的なIII−V半導体化合物を使用した発光ダイオード(LED)を有する。有機エレクトロルミネセント材料、特にポリマー材料の最近の開発によって、これらの材料をビデオ表示装置用に実際に使用できることが実証されている。これらの材料は、典型的には、一対の電極に挟まれる半導電性共役ポリマーの1つ以上の層を有する。この一対の電極のうちの一方の電極は透明であり、他方の電極は、正孔又は電子をポリマー層に注入するのに適した材料の電極である。
【0003】
ポリマー材料は、CVD工程を用いることによって、又は、単に、可溶性共役ポリマーの溶液を用いたスピンコーティング技術によって、形成できる。インクジェット式印刷も使用できる。有機エレクトロルミネセント材料は、ダイオードのようなI−V特性を示し、このため、この材料は表示機能とスイッチング機能との両方の機能を提供でき、したがって、パッシブ型ディスプレイに使用することができる。あるいは、この材料は、各画素が、表示素子と、この表示素子を流れる電流を制御するスイッチングデバイスと、を有するアクティブマトリックス表示装置にも使用できる。
【0004】
このタイプの表示装置は電流駆動型表示素子を有し、このため、通常のアナログ駆動方式で、制御可能な電流を表示装置に供給している。画素構造の一部として電流源トランジスタを備えることが知られており、その電流源トランジスタに供給されるゲート電圧が表示素子に流れる電流を決定する。記憶コンデンサは、アドレスフェーズの後、ゲート電圧を保持する。
【0005】
図1は、アクティブマトリックス・エレクトロルミネセント表示装置の既知の構成の一部を示す。表示装置はパネルを有している。このパネルは、規則的に間隔を置いて配された画素の行および列のマトリックスアレイを有している。画素は、交差する行(選択)アドレス導体2の組と列(データ)アドレス導体4の組との間の交差部に位置するブロック1によって示されている。簡潔のため、図には、数個の画素のみが示されている。実際は、数百行、数百列の画素が存在し得る。画素1は、行アドレス導体の組と列アドレス導体の組とを介して、周辺駆動回路によってアドレスされる。この周辺駆動回路は、対応する導体の組の端部に接続された、行ドライバ回路即ち走査ドライバ回路6と、列ドライバ回路即ちデータドライバ回路7と、を有している。電源ライン10は、対応する画素のグループに電流を供給する。この例では、各電源ライン10は、関連する行の画素に電流を供給する。
【0006】
図2は、既知の画素と、電圧設定動作をする駆動回路構造を、簡略化された模式的な形で示す。各画素1は、EL表示素子11と、関連するドライバ回路と、を有する。エレクトロルミネセント表示素子11は、有機発光ダイオード(ここでは、ダイオード素子(LED)として表されている)を有しており、この有機発光ダイオードは、1つ以上の有機エレクトロルミネセント材料のアクティブ層を挟む一対の電極を有している。アレイの表示素子は、関連するアクティブ・マトリックス回路とともに、絶縁支持体の一方の側に担持されている。表示素子のカソード又はアノードは、透明導電材料から形成されている。この支持体の他方の側から観測者が見ることができるように、エレクトロルミネセント層によって生成される光がこれらの電極および支持体を透過すべく、支持体はガラスなどの透明材料であり、基板に最も近い表示素子11の電極は、ITOなどの透明導電材料から構成できる。
【0007】
ドライバ回路は、行導体2上の行アドレス・パルスによってオンになるアドレス・トランジスタ16を有する。アドレス・トランジスタ16がオンになると、列導体4上のビデオデータ電圧を画素の残りの部分に送ることができる。特に、アドレス・トランジスタ16は、駆動トランジスタ20のゲートにデータ電圧を供給する。このゲートは、行アドレスパルスが終了した後でも、記憶コンデンサ22によって当該電圧に保持される。駆動トランジスタ20は、電源ライン10から電流を取り出す。
【0008】
上記の基本画素回路は電圧設定型画素であり、駆動電流をサンプルする電流設定型画素もある。しかし、全ての画素構造は、各画素に電流が供給されることを必要とする。
【0009】
アドレス回路は、一般に、アクティブマトリックス表示装置をアドレスするのによく知られた薄膜トランジスタ(TFT)を使用している。アレイのTFTの電気的特性の変化が表示出力を不均一にすることが知られている。例えば、しきい電圧が異なる隣接する2つの画素の駆動トランジスタであって、同じデータ電圧でアドレスされる駆動トランジスタは、おそらく異なる出力強度を生成する。他の変化する特性には、TFTの移動度、および他の電流−電圧の関係が含まれる。これらの変化にはいくつかの原因がある。
【0010】
これらのデバイスの製造は、しばしば、基板上に、種々の導電材料、絶縁材料、および半導体材料を堆積してパターニングするフォトリソグラフィによって、行われる。TFTの大きさの僅かなばらつきによって、TFTの電気的特性に差が生じ得る。
【0011】
エージングの影響によっても、TFTの動作寿命の間のTFTの特性が変化する。このことは、連続的に流れる電流を制御するのに使用されるときにしきい電圧ドリフトを被ることで知られているアモルファスシリコンTFTで特に明らかである。しかし、ポリシリコン技術から作られるTFTでは、製造段階から発生する構造上の差異によって生じる電気的特性のばらつきを更に被るだろう。
【0012】
AMLCDアレイを作るために以前より使用されている既存の製造プラントを使用できるように、アクティブマトリックス・エレクトロルミネセントディスプレイの製造にもっと確立されたアモルファスシリコン技術を採用することが望まれている。しかし、アモルファスシリコンTFTの安定性に関する問題が、アモルファスシリコンTFTを駆動トランジスタとして使用する妨げになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
これらの問題を解決しようとして、各駆動トランジスタの電気的特性を画素レベルで測定する画素回路の修正例が提案されている。これにより、次のデータ信号が補正される。この修正例では、基本画素回路に、もっと多くのTFTなど、数個の部品を追加する必要があり、製造プロセスが高価且つ複雑になり、画素アレイの開口が小さくなる。
【0014】
WO01/95301号には、各画素が既知のデータ信号で同時に一回アドレスされる較正モードの間に、個々の画素を流れる電流を測定する均一補正回路を有するディスプレイが開示されている。通常の動作の間に画素の印加されるべきデータ信号を決定するために、各画素の情報を記憶して使用する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、アクティブマトリックス表示装置をアドレスするビデオデータ信号を補正する方法が提供される。この方法において、上記アクティブマトリックス表示装置は、n個のエレクトロルミネセント表示素子に電流を供給する電源ラインを有し、上記電流は、対応する駆動トランジスタによって制御可能な上記各エレクトロルミネセント表示素子に供給され、上記各駆動トランジスタは、ビデオデータ信号によってアドレス可能であるとともに電気的特性パラメータXを有し、上記方法は、
(i)上記各駆動トランジスタのX値を記憶するステップ、
(ii)一組のビデオデータ信号であって、上記ビデオデータ信号の各々が値vを有する一組のビデオデータ信号を受け取るステップ、
(iii)上記電源ラインの電流と上記v値および上記駆動トランジスタの上記X値とを関係づけるモデルを用いて、上記記憶されたX値と上記受け取ったv値とから、上記電源ラインを流れる予測電流Iを決定するステップ、
(iv)上記受け取った一組のビデオデータ信号で上記駆動トランジスタの各々がアドレスされるときに上記上記電源ラインを流れる電流電流Iを測定するステップ、
(v)上記予測電流Iと上記測定電流Iとの差gを計算するステップ、
(vi)少なくともn−1個の他の組のビデオデータ信号に対して、上記ステップ(ii)〜(v)を繰り返すステップ、
(vii)計算されたg値を用いて、上記各駆動トランジスタのX値を計算するステップ、
(viii)上記記憶されたX値を、上記計算されたX値に取り替えるステップ、および
(ix)上記記憶されたX値に従って次のビデオデータ信号を補正するステップ、
を有する。本明細書では、用語「電気的特性パラメータ」は、関連するトランジスタの電気的特性の値を意味する。斯かる特性には、しきい電圧および移動度などのトランジスタの電圧−電流特性に影響する特性が含まれる。
【0016】
有利なのは、本発明による方法では、各トランジスタの個々の測定をする必要なく、各トランジスタの電気的特性パラメータを決定することが可能なことである。したがって、この方法は、表示装置の通常の動作中に、実行できる。
【0017】
n個の表示素子に電流を供給する電源ラインにおいて、この電源ラインに供給される全電流は、n個の関連する駆動トランジスタの電気的特性と、それら駆動トランジスタのデータ信号と、の関数である。駆動トランジスタに印加されるデータ信号値は既知である。電源ラインの電流を予測するために、データ信号値を所与の電気的特性に関連付けるモデルが使用される。電源ラインの電流とデータ信号値とに関連するn組の一次独立データを収集することによって、種々の計算処理を使用して所与の未知の電気的特性の値を計算できる。次いで、これらの計算された値が使用され、この値に応じてビデオデータ信号が補正される。したがって、次のアドレスデータ信号には、これらの値の如何なる変化も考慮される。
【0018】
ディスプレイを正確にアドレスできるようにする目的で、記憶された駆動トランジスタの電気的特性が規則的に更新されるように、上記の方法は、装置が動作している間を通じて周期的に適用できる。これに加えて、又はこれに代えて、この方法を表示装置のスイッチオンに応答して実行させることができる。あるいは、チャンネルが変わるたびにブライトバーが表示スクリーンを掃引することもできる。有利な点は、この画像の変化により、印加されたデータ電圧と未知の電気的特性パラメータを電源ラインの電流に関係づけるn組の一次独立データが提供されることである。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、アクティブマトリックス表示装置をアドレスするビデオデータ信号を補正する装置が提供される。上記アクティブマトリックス表示装置は、n個のエレクトロルミネセント表示素子に電流を供給する電源ラインを有し、上記電流は、対応する駆動トランジスタによって制御可能な上記各エレクトロルミネセント表示素子に供給され、上記各駆動トランジスタは、値vを有するビデオデータ信号によってアドレス可能であるとともに電気的特性パラメータXを有し、上記補正する装置は、上記各駆動トランジスタのX値を記憶する手段、上記記憶されたX値とビデオデータ信号値vとを用いて、上記電源ラインを流れる予測電流を決定するためにモデルを適用する手段、上記電源ラインを流れる電流を測定する手段、上記各駆動トランジスタのX値を求めるために、複数の組のビデオデータ信号に対する上記予測電流および上記測定電流に、アルゴリズムを適用する手段、上記記憶されたX値に従って、受け取ったビデオデータ信号を修正する補正回路、を有する。
【0020】
有利な点は、個々の表示素子に対して追加のアドレス部品を必要としないことである。部品を追加する代わりに、この補正する装置は、ビデオデータ信号を正確に補正できるように、関連する駆動トランジスタの所与の電気的特性の最新の値を定める煩わしくない方法を提供する。画素のアレイへの適切な接続により、この補正する装置は単一チップに集積できる。これによって、通常のアドレス回路を有するアクティブマトリックス表示装置に、この補正方式を簡単に組み込むことが可能となる。斯かる場合、このチップは、入力ビデオ表示信号が行ドライバおよび列ドライバに供給される前に、この入力ビデオ表示信号を補正することができる。
【0021】
アクティブマトリックス表示装置の各電源ラインは、各電源ラインに関連する本発明の補正する装置を有することが好ましい。有利な点は、データの補正によって、アクティブマトリックスディスプレイの全ての駆動トランジスタの電気的特性のばらつきを打ち消すことができることである。
【0022】
好ましい実施例では、各駆動トランジスタのX値を計算するのに、収集されたデータの行列に反復ニュートン線形化処理が使用される。この場合、i番目のデータの組に対する差の値gを表すデータは、1とnとの間のiの値に対する列ベクトル、例えばG、に記憶される。反復ニュートン線形化処理は、ベクトルGを用いて実行され、各駆動トランジスタのX値に対する差の値δXが得られる。この処理は以下のステップを含むことができる。
− n×nの行列G’を得るためにベクトルGを微分するステップ、および
− 以下の式をδXについて解くステップを有する。
【数3】

【0023】
各トランジスタのX値は、この計算された差の値を使用して更新され、この差の値gは、更新されたX値と元のビデオデータ信号値vとを用いて再計算される。この処理は、g値が十分にゼロに近づく(即ち、(新たなX値を用いた)理論から予測される電流が測定電流にほぼ一致するとき)までX値の更新を繰り返すことにより、反復実行できる。
【0024】
この処理によって、未知の値および既知の値に関係するn組の一次独立データを用いて、n個の未知の値を決定することが可能となる。このようにして、既知の一次独立VベクトルとX値を関係づけるn組の一次独立データを収集してn個の電気的特性パラメータ値Xを簡単に計算できる。これにより、ユーザが見るときの妨害にならないように任意の較正をする必要なく、ディスプレイの通常動作の間に、上記の処理をすることが可能となる。n組の一次独立ビデオデータ信号で順に駆動トランジスタをアドレスし、各Vベクトルに対する電源ライン電流を測定することによって、計算されたデータを、n行のベクトルの対応する行に記憶することができる。このベクトルが満杯になると、ニュートン線形化処理を実行して、各駆動トランジスタの電気的特性パラメータ値を決定することができる。
【0025】
上記の式を解くには、n×n行列G’の逆行列を求める、又はこの式にLU分解を実行することが必要とする。行列が解けるには、行列が正則であることが必要である。G’が確実に正則であるようにするため、駆動トランジスタを、所定のv値を有するビデオデータ信号の組で駆動することが好ましい。これは、所定の画像を表示することによって行うことができる。電気的特性パラメータの計算がうまくいくように一次独立v値がいつ入力されているのかを決定するために入力ビデオデータ信号を分析する検出処理を実行することもできる。
【0026】
各駆動トランジスタのしきい電圧vは、電圧−電流特性にかなりの影響を与えるものであり、したがって、しきい電圧のドリフトがディスプレイの出力画像の均一性に悪影響を与え得る。電気的特性パラメータXはしきい電圧vとすることができる。この場合、各駆動トランジスタのvの値は記憶され、本発明に従って、計算されたvの値に置き換えられる。次いで、記憶されたv値を使用して入力ビデオデータ信号を補正し、トランジスタ間のv値のばらつきを補償する。
【0027】
電源ライン電流とビデオデータ信号値vおよび各駆動トランジスタの未知の電気的特性パラメータXとを関係づけるモデルを使用して、vの値およびXの値により、電源ラインを流れる予測電流が決定される。このモデルは、既知の駆動トランジスタの電圧−電流特性、およびそれらのエレクトロルミネセント表示素子との関係を使用して,確立することが好ましい。
【0028】
電気的特性パラメータXがしきい電圧vの場合、このモデルは、以下の式で与えられる関係に基づいている。
【数4】

ここで、iLEDは1つの駆動トランジスタによって制御される電流であり、Kは定数である。
【0029】
本発明の例は、添付図面を基準にして詳述されている。
【0030】
図は概略的であり、一律の縮尺に従っていないことに注意すべきである。図面の明確性および便宜のため、これらの図の部品の相対的な寸法および大きさは、拡大して又は縮小して示されている。図面全体に渡って、同じ符号は、同じ部品又は同様の部品を示すのに使用されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の方法は、図1および図2に示されており既知の装置に関して上述された、典型的な構造の画素とアドレス回路とを有するアクティブマトリックス・エレクトロルミネセント表示装置で実現することができる。端的にいうと、電源ライン10は、n個のエレクトロルミネセント表示素子11に電流を供給する。図示されている例では、各行の画素1は、共通の電源ライン10を共有する。各画素1は、エレクトロルミネセント表示素子11と、駆動トランジスタ20と、を有する。各表示素子11に供給される電流は、駆動トランジスタ20によって制御可能である。図2は、関連する電源ライン10とLED表示素子11のアノードとの間に接続されている駆動トランジスタの電流を伝える端子を示す。しかし、駆動トランジスタを実質的に同じ機能を実行できるようにする他の構成も可能である。
【0032】
各駆動トランジスタは、ビデオデータ信号によってアドレスできる。この信号は、値vdを有する電圧の形態であり、列ドライバ7によって列アドレスライン4に供給される。アドレストランジスタ16は行選択パルスによってオンに切り替えられ、データ電圧が駆動トランジスタ20をアドレスできるようにする。駆動トランジスタ20のゲートに印加されるvdの大きさは、トランジスタを流れることができる電流、したがって、表示素子11に供給される量を決定する。行アドレスパルスが終了しても、このゲートは記憶コンデンサ22によって当該電圧に保持される。
【0033】
駆動トランジスタ20には薄膜トランジスタ(TFT)が使用されている。薄膜トランジスタは、フォトリソグラフィなどの周知の技術を使用して、他のアドレス回路と一緒に基板上に形成される。アレイのTFTの電気的特性は、TFTどうしで互いに異なる傾向がある。これらの違いは、例えば、表示装置の寿命の間に、表示された画像を不均一にするしきい電圧および移動度の変化を生じさせる構造上の影響およびエージングの影響によって生じる。所与の電気的特性の大きさは、パラメータXによって表わすことができる。
【0034】
本発明を適用して、この電圧−電流特性変化の影響を抑制することができる。以下に記載された実施例は、しきい電圧のドリフトを考慮することによってビデオデータ信号を補正する方法を提供する。つまり、X≡vtである。アモルファスシリコン・チャネルを有するTFTは、かなりのしきい電圧のドリフトを被ることが知られている。
【0035】
図3は、図1に示されている既知の構造の構成要素の全てを有するアクティブマトリックス・エレクトロルミネセント表示装置の一部を示す。本発明を実現するのに必要な装置は、ブロック25で表されるICチップに含めることができる。ICチップ25は、電源ライン10のグループに切替自在に接続され、1つの電源ラインに同時に接続される複数の画素をアドレスするためのビデオデータ信号を補正する役割をする。図3には、簡単のため、電源ライン10は1つのみが示されている。
【0036】
この装置は、電源ライン10に関連する各駆動トランジスタのしきい電圧値vを記憶する役割をするV記憶部31を有する。電源ライン10と表示装置への電流供給部との間に、電流計32が接続されている。これは、動作中に、電源ライン10を流れる全電流を測定する役割をする。
【0037】
値vを有するビデオデータ電圧は、信号プロセッサ34に入力される。信号プロセッサは、受け取ったビデオデータ電圧を、記憶されたv値に従って修正する補正回路を有する。補正されたデータ電圧は、画素1をアドレスする列ドライバ7に供給される。このようにして、画素をアドレスするのに使用されるデータ電圧が補正され、関連する駆動トランジスタ20のしきい電圧の変動の影響を打ち消す。対応するタイミング信号は、信号プロセッサ34によって行ドライバ6に供給され、ディスプレイの行アドレス導体2への行選択パルスの印加を制御する。
【0038】
信号プロセッサ34は、記憶されたv値と入力ビデオデータ電圧vとを用いて、電源ライン10を流れる予測電流を決定するためにモデルを適用する手段を更に有する。プロセッサ34は、各駆動トランジスタ20のしきい電圧値vを決定するために、複数の組のビデオデータ電圧に対する(このモデルを用いて計算された)予測電流と(電流計32によって測定された)測定電流にアルゴリズムを適用する手段も含んでいる。
【0039】
上記のように、ICチップ25はアレイの他の電源ラインに切替自在に接続される。したがって、他の電源ラインに切り替えることによって、接続された電源ラインに関連する駆動トランジスタ20に供給されるビデオデータ電圧は、上記と同じやり方で補正できる。幾つかのICチップ25の各々を、電源ライン10のグループに関連させることが考えられる。このようにして、幾つかのチップが、数行の補正データ信号を同時に並列に補正することができる。しかし、単純のために、装置の動作は、1本の電源ライン、したがって、一つの行の画素のみに関して記載されている。
【0040】
図3の装置で本発明を実現する方法の例が、図4に示す流れ図を基準にして記載されている。電源ライン10から電流が供給される各画素1に関連する各駆動トランジスタ20に対して、しきい電圧値vがV記憶部31により記憶される。これらの値は、ディスプレイの前の動作により記憶された値から選択される。しかし、全ての値を、最初から、推定値又はモデル値に設定してもよい。この値は、例えば2ボルトとすることができる。このステップは、図4のステップ410で参照される。
【0041】
ステップ412で参照されるように、信号プロセッサ34は値vを有する一組のビデオデータ電圧を受け取る。これらのビデオデータ電圧は表示装置への入力であり、各ビデオデータ電圧は、出力画像を提供するように所与の画素が出力すべき強度レベルに対応している。各v値は、データ電圧に対応する画素の駆動トランジスタ20のしきい電圧値vを考慮して、データプロセッサ34で補正される。
【0042】
受け取った一組のビデオデータ信号によって関連する駆動トランジスタがアドレスされる場合に電源ライン10を流れると予測される電流を決定するために、あるモデルが使用される。このプロセスはステップ420で参照され、信号プロセッサ34で実行される。このモデルは、表示素子11を流れる電流と、駆動トランジスタ20のゲートに印加されるビデオデータ電圧vと、駆動トランジスタのしきい電圧vと、の間の関係に基づいたものである。このモデルは、次のように定めることができる。
飽和しているTFTに対して、ドレイン電流iは、以下の式で表すことができる。
【数5】

ここで、kはデバイス相互コンダクタンスパラメータ(device transconductance parameter)であり、vgsはTFTのゲート−ソース電圧である。LED表示素子11に対して、LEDを流れる順電流iLEDは、以下の式で表すことができる。
【数6】

ここで、Aおよびmは定数であり、vはLED表示素子11に印加される電圧である。m=2の場合に良好な近似が得られる。したがって、以下の式になる。
【数7】

駆動トランジスタ20のゲートに印加されるビデオデータ電圧vは以下のような2つの部分に分割できることが知られている。
【数8】

式(1)、(3)および(4)を整理して代入すると、以下の式が得られる。
【数9】

ここで、Kは定数である。電力をn個の画素に供給する電源ラインでは、電源ライン10を流れる予測電流iは、各LEDを流れる個々の画素電流の全ての合計であり、しきい電圧の関数として以下のように表すことができる。
【数10】

ここで、Vは記憶されたしきい電圧のベクトル(長さn)であり、iは、関連する駆動トランジスタ20が特定の組のビデオデータ電圧Vでアドレスされるときに電源ライン10を流れる全電流である。
電源ライン10に関連する駆動トランジスタ20は、受け取った第1の組のビデオデータ電圧Vd1でアドレスされる。これらのデータ電圧は、別のv記憶部(図示せず)に記憶してもよい。また、電流計32を使用して電源ライン10を流れる電流Iが測定される。このステップはステップ430で参照される。この測定は、ビデオデータ電圧が駆動トランジスタ20のゲートに印加されたら、所定の期間に行われることが好ましい。
【0043】
ステップ440を参照すると、第1の組のデータに対して、予測電流iと測定電流iとの差が以下の式により計算される。
【数11】

ここで、g(V)は第1の組のデータ電圧での差を表す。これは、記憶されたv値の精度の指標を示す。例えば、記憶されたv値がほぼ正確である場合、結果として得られた差の値g(V)は、最小、おそらくゼロである。この場合、記憶されたv値は少なくとも所定のしきい値に対して正確であるので、装置はこの時点で補正処理を中止する。補正処理は、所定の期間の後、例えば、表示装置が次回オンになったとき、再開されるだろう。
【0044】
しかし、予測電流iと測定電流iとの間にゼロではない差がある場合、g(V)はベクトルG(V)の第1行、即ちi=1、に記憶される。ここで、G(V)は、以下の式で表される。
【数12】

ここで、G(V)およびF(V)はn個の行を有している。
【0045】
電源ライン10に関連するn個の画素に対応するn個の未知のvの値が存在する。したがって、n個のしきい電圧値を決定するために、n組の一次独立データが必要である。これらn組のデータを提供するために、値vを有する少なくともn−1個の他の組のビデオデータ電圧で、上記の処理が繰り返される。i番目の組のビデオデータ電圧に対して、式(7)を用いて計算された差を、ベクトルG(V)の行iに入力する。ステップ450において、ベクトルを満たすまでこの処理が繰り返される。この処理は、表示装置の通常動作の間に、アレイの画素が、表示されるべき画像に対応する組のビデオデータ電圧でアドレスされているときに実行できる。一次独立ビデオデータ電圧の組Vは、得られる行列Gが正則であるように、破棄することができる。しかし、収集されたデータに関連するビデオデータ電圧の組は、反復計算で使用できるように記憶されることに注意すべきである。
【0046】
図4の流れ図のステップ460において、計算された差の値g(V)を使用して、各駆動トランジスタ20のしきい電圧vを計算する。このステップの方法の一例が図5に詳細に示されており、図5では、Gに反復ニュートン線形化処理を実行して、各トランジスタのしきい電圧値vについての差の値δvを得ている。
【0047】
ステップ510において、信号プロセッサ34によってベクトルG(V)が記憶される。ベクトルG(V)にニュートン線形化を実行するために、以下の式をδV(長さnのベクトル)について解かなければならない。
【数13】

先ず、これには、以下の式のようなn×nの行列G’(V)を得るために、記憶されたビデオ・データ電圧の組Vを使用してG(V)をVtで微分する必要がある。
【数14】

次に、このn×nの行列の逆行列を求め、以下の式のように、δVについて式(9)を解く。
【数15】

行列G’(V)は、逆行列が可能であるように正則でなければならない。G’(V)が特異行列の場合、他の組のビデオデータ電圧に対して少なくとも一部のデータ収集処理を繰り返す必要があるだろう。これは、反復ニュートン線形化処理が解への収束に失敗することで知ることができる。
【0048】
結果として得られるベクトルδVは、記憶されたしきい電圧値と計算されたしきい電圧値との差を含んでいる。したがって、ステップ540において、記憶されたvt値を、ベクトルδVtに含まれる計算された差の値を用いて修正することによって、各駆動トランジスタの更新されたしきい電圧値を計算することができる。
【0049】
次いで、ベクトルGは、新しいv値と記憶されたv値とを使用してg値を再計算することによって更新される。この処理は、g値がゼロのあたりの所定の範囲内に入るまで、即ち、(新しいv値を用いて)理論から予測される電流が測定された電流にほぼ一致するまで、繰り返される。
【0050】
次いで、ステップ470において、記憶されたしきい電圧値が、新たに計算されたしきい電圧に取り替えられる。ステップ480において、次のビデオデータ信号は、関連する駆動トランジスタ20をアドレスする前に、記憶されたv値に従って、信号プロセッサ34によって補正される。
【0051】
上記の実施例は、n個のエレクトロルミネセント表示素子11に対するビデオデータ電圧の補正に関係している。もっと大きいnの値に対しては、データ処理には、もっと多くの電流測定値と、もっと複雑な計算が含まれる。n個の表示素子を複数の行に設けることができることが理解されるべきである。例えば、アレイの中の隣接する2つの行の表示素子に供給される全電流は、それらの表示素子に関連する電源ラインを1本の電源ラインと見なすことによって測定できるだろう。この場合、各電流測定値が結合されて、本発明による計算に必要なn個の表示素子に供給される全電流が与えられる。
【0052】
上記の方法は、TFT移動度およびLED効率などの駆動トランジスタ又はLEDの他の電気的特性のばらつきを克服するためのデータ信号の補正にも適用できることも理解されるだろう。もちろん、これには、電源ライン電流iを予測するために斯かるパラメータが明確に現れる別のモデルを必要とするだろう。
【0053】
電気的特性パラメータXを計算するのに、上記の実施例で使用された反復ニュートン線形化の代わりに、他の数値法を採用できることが考えられる。例えば、式(9)は、L.U分解又はガウスの消去法を用いることによって解くことができるだろう。
【0054】
要約すると、アクティブマトリックス・エレクトロルミネセント表示装置をアドレスするビデオデータ信号を補正する方法および装置が提供され、入力データ信号は、対応する表示素子11を流れる電流を制御するために使用される各駆動トランジスタ20の記憶された電気的特性パラメータ値に従って修正される。記憶された値は、例えばしきい電圧ドリフトなどの各駆動トランジスタの電気的特性のばらつきの影響を打ち消す正確なデータ信号補正を確実に行うために、頻繁に更新される。電源ライン10はn個の表示素子に電流を供給する。電源ラインを流れる電流に関するn組のデータは、例えば、ディスプレイの通常の動作の間に収集される。データは、各駆動トランジスタ20の更新された特性パラメータ値を計算するのに使用される。
【0055】
本開示を読むことにより、当業者にとって他の変形例および修正例が明らかである。斯かる変形例および修正例は、当業界で既知の等価な特徴および他の特徴であって、本明細書に記載された特徴の代わりに又はこの特徴に加えて使用できる等価な特徴および他の特徴を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来のアクティブ・マトリックスLEDディスプレイを示す。
【図2】図1のディスプレイの従来の画素回路を示す。
【図3】アクティブ・マトリックス表示装置の、ビデオデータ信号を補正する部分を示す。
【図4】本発明によるビデオデータ信号を補正する方法の例を示す流れ図である。
【図5】本発明による各トランジスタのしきい電圧値を計算する方法の例を示す流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブマトリックス表示装置をアドレスするビデオデータ信号を補正する方法であって、前記アクティブマトリックス表示装置は、n個のエレクトロルミネセント表示素子に電流を供給する電源ラインを有し、前記電流は、対応する駆動トランジスタによって制御可能な前記各エレクトロルミネセント表示素子に供給され、前記各駆動トランジスタは、ビデオデータ信号によってアドレス可能であるとともに電気的特性パラメータXを有し、
前記方法は、
(i)前記各駆動トランジスタのX値を記憶するステップ、
(ii)一組のビデオデータ信号であって、前記ビデオデータ信号の各々が値vを有する一組のビデオデータ信号を受け取るステップ、
(iii)前記電源ラインの電流と前記v値および前記駆動トランジスタの前記X値とを関係づけるモデルを用いて、前記記憶されたX値と前記受け取ったv値とから、前記電源ラインを流れる予測電流iを決定するステップ、
(iv)前記受け取った一組のビデオデータ信号で前記駆動トランジスタの各々がアドレスされるときに前記前記電源ラインを流れる電流電流iを測定するステップ、
(v)前記予測電流iと前記測定電流iとの差gを計算するステップ、
(vi)少なくともn−1個の他の組のビデオデータ信号に対して、前記ステップ(ii)〜(v)を繰り返すステップ、
(vii)計算されたg値を用いて、前記各駆動トランジスタのX値を計算するステップ、
(viii)前記記憶されたX値を、前記計算されたX値に取り替えるステップ、および
(ix)前記記憶されたX値に従って次のビデオデータ信号を補正するステップ、
を有する、方法。
【請求項2】
前記方法は、
(x)前記g値を、長さnの列ベクトルGに記憶するステップ、および
(xi)前記各駆動トランジスタのX値を得るために、ベクトルGを用いた反復ニュートン線形化処理を実行するステップ、
を更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニュートン線形化処理は、
(xii)n×nの行列G’を得るためにベクトルGを微分するステップ、
(xiii)以下の式をδXについて解くステップ、
【数1】

(xiv)δXに従って前記各駆動トランジスタの更新されたXの値を計算するステップ、
(xv)前記更新されたX値を用いて、更新されたgi値を計算するステップ、および
(xvi)前記g値がゼロのあたりの所定の範囲内に入るまで前記ステップ(xii)〜(xv)を繰り返すステップ、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記一組のビデオデータ信号および前記少なくともn−1個の他の組のビデオデータ信号は、前記ステップ(vii)の前記X値の計算が成功するように所定の値Vを有する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(ii)〜(vii)が周期的に繰り返される、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、前記アクティブマトリックス表示装置のスイッチオンに応答して実行される、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気的特性パラメータXは前記駆動トランジスタのしきい電圧vである、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モデルは以下の式で与えられる関係に基づいており、
【数2】

ここで、iLEDは1つの駆動トランジスタによって制御される電流であり、Kは定数である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アクティブマトリックス表示装置をアドレスするビデオデータ信号を補正する装置であって、前記アクティブマトリックス表示装置は、n個のエレクトロルミネセント表示素子に電流を供給する電源ラインを有し、前記電流は、対応する駆動トランジスタによって制御可能な前記各エレクトロルミネセント表示素子に供給され、前記各駆動トランジスタは、値vを有するビデオデータ信号によってアドレス可能であるとともに電気的特性パラメータXを有し、
前記補正する装置は、
− 前記各駆動トランジスタのX値を記憶する手段、
− 前記記憶されたX値とビデオデータ信号値vとを用いて、前記電源ラインを流れる予測電流を決定するためにモデルを適用する手段、
− 前記電源ラインを流れる電流を測定する手段、
− 前記各駆動トランジスタのX値を求めるために、複数の組のビデオデータ信号に対する前記予測電流および前記測定電流に、アルゴリズムを適用する手段、
− 前記記憶されたX値に従って、受け取ったビデオデータ信号を修正する補正回路、
を有する、装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置を有する集積回路チップ。
【請求項11】
対応する電気泳動表示素子に電流を供給する複数の電源ラインを有するアクティブマトリックス表示装置であって、
前記各電気泳動表示素子に供給される電流は、対応する駆動トランジスタによって制御可能であり、
前記各駆動トランジスタは、対応するビデオデータ信号によってアドレス可能であり、
前記アクティブマトリックス表示装置は、前記各電源ラインに関連する前記駆動トランジスタに供給されるビデオデータ信号を補正する請求項9に記載の装置を更に有する、アクティブマトリックス表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−517245(P2007−517245A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543693(P2006−543693)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052704
【国際公開番号】WO2005/057544
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】