説明

ビニルエーテルおよびアルコールを含有する混合物の蒸留分離法

一般式(I);R−O−CH=CHのビニルエーテルおよび一般式(II);
−OHのアルコールを含有し、その際アルコール(II)はビニルエーテル(II)より、0.1MPa(絶対)で、測定または外挿して、少なくとも1℃高い沸点を有する混合物の蒸留による分離法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)
−O−CH=CH (I)
のビニルエーテルおよび一般式(II)
−OH (II)
のアルコール[前記式中、RおよびRは相互に独立して、炭素原子2〜10個を有する、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基を表す]を含有し、その際アルコール(II)はビニルエーテル(II)より、0.1MPa(絶対)で測定して、または0.1MPa(絶対)に外挿して、少なくとも1℃高い沸点を有する混合物の蒸留による分離法に関する。
【0002】
ビニルエーテルは広い使用分野を有する重要な化合物群である。こうして、ビニルエーテルは特にポリマーおよびコポリマー中のモノマー構成成分として、被覆材料、接着剤、印刷インキ並びに放射線硬化性塗料中に使用される。その他の適用範囲は、中間生成物、フレグランスおよびフレーバー、並びに医薬製品の製造である。
【0003】
ビニルエーテルの工業的製造は、一般に相応するアルコールとエチンとの塩基触媒の存在下での反応により行われる(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第6改訂版、2000 Electronic Release,Chapter“VINYLETHERS−Production”およびW.Reppe等、Justus Liebigs Ann.Chem.,601(1956)、135−138頁)。この際、形成された反応混合物は、触媒および可能な副生成物の他に主に形成されたビニルエーテルと未反応のアルコールとを含有する。最後の2つの成分は、C−誘導体であるメチルビニルエーテル/メタノールまで共沸混合物形成のために、簡単な蒸留により所望の純度のフラクションに分離することはできない。従来、この問題は抽出法および抽出蒸留法により解決し、この方法では助剤として1種以上の外来物質を供給し、この外来物質をビニルエーテル含有フラクションとアルコール含有フラクションに分離した後に再び分離する。
【0004】
こうして、EP−A−0415334は、ビニルエーテルおよびアルコールを含有する混合物を塩基の水溶液で1工程以上抽出し、この際ビニルエーテル相および水性アルコール相を得て、引き続き水性アルコール相からアルコールを蒸留により獲得することを記載している。
【0005】
US2779720は脂肪族ビニルエーテルおよび脂肪族アルコールを含有する混合物を分離するための方法を記載しており、この方法においてはこの混合物を水およびグリコールまたはグリコールエーテルと一緒に蒸留する。この際、塔頂生成物としてビニルエーテルと水との共沸混合物が得られ、この共沸混合物から更なる蒸留によりビニルエーテルを得ることができる。塔底生成物としてアルコールおよびグリコールまたはグリコールエーテルを含有する混合物が残り、これから後に接続する蒸留によりアルコールを得ることができる。
【0006】
DE−A1000804は、多価アルコールのモノビニルエーテルと多価アルコールとを含有する混合物を後処理する方法を開示しており、この際この混合物をアルカリ性媒体中で水と一緒に蒸留するか、または水蒸気蒸留を実施する。その際、ビニルエーテルと水との共沸混合物が塔頂生成物として得られ、この際塔底中に残分としてアルコールが残る。蒸留の際に生じる塔頂部フラクションは、場合により非水溶性溶剤で抽出することができ、その際ビニルエーテルは有機相中に移行し、これから蒸留により得ることができる。
【0007】
SU1616888はブタノールおよびブチル−ビニルエーテルを含有する混合物を水で抽出蒸留することにより分離することを記載している。塔頂生成物として形成された、ブチル−ビニルエーテルおよび水を含有する共沸混合物から、引き続く蒸留によりブチル−ビニルエーテルが得られる。ブタノールを含有する最初の蒸留の塔底生成物を更なる蒸留により後処理し、ブタノールを獲得する。
【0008】
US3878058はアルキルビニルエーテルと脂肪族アルコールを含有する混合物からアルキルビニルエーテルを獲得するための方法を記載しており、ここではこの混合物をグリコールモノエーテルと一緒に蒸留する。この際、アルキルビニルエーテルが塔頂生成物として分離され、塔底生成物として、アルコールおよびグリコールモノエーテルを含有する混合物が得られる。これを引き続く蒸留によりアルコールとグリコールモノエーテルとに分離し、グリコールモノエーテルを最初の蒸留工程に返流する。
【0009】
全て前記の方法の欠点は、助剤として1種以上の外来の物質を添加することである。これにより、引き続き再び分離しなければならない新たな化合物が、この系に供給される。こうして、一方では相応して装置および方法技術において費用がかかり、他方ではビニルエーテルおよび/またはアルコールがこの外来物質の残留量により汚染されるという危険と結びついている。更に、外来物質はそれ自体の体積により蒸留装置の容量を低下させるか、もしくはより大きな蒸留装置の使用を必要とする。
【0010】
こうして、ビニルエーテルとアルコールを含有する混合物の分離法であって、前記欠点を有さず、特に装置および方法技術における低い費用で、高い装置容量で、および助剤としての外来物質の添加によるビニルエーテルおよび/またはアルコールの汚染の危険性なしに、精製したビニルエーテルおよびアルコールに導く分離法を見いだすという課題が生じた。
【0011】
こうして、一般式(I)
−O−CH=CH (I)
のビニルエーテルおよび一般式(II)
−OH (II)
のアルコール[前記式中、RおよびRは相互に独立して、炭素原子2〜10個を有する、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基を表す]を含有し、その際アルコール(II)はビニルエーテル(II)より、0.1MPa(絶対)で測定し、または0.1MPa(絶対)に外挿して、少なくとも1℃高い沸点を有する混合物の蒸留による分離法において、
a)この混合物を第1の蒸留塔に導入し、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を塔頂生成物としておよびアルコール(II)が富化した流れを塔底生成物として取り出し;
b)第1の蒸留塔からのビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を、第1の蒸留塔に対して0.01〜3MPaだけ高い圧力で運転する第2の蒸留塔中に導入し、塔底生成物としてまたは回収部でのガス状側留としてビニルエーテル(I)を、および塔頂生成物としてビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を取り出し;かつ
c)第2の蒸留塔からの、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を第1の蒸留塔中に戻すことを特徴とする、ビニルエーテルおよびアルコールを含有する混合物の蒸留分離法が見いだされた。
【0012】
こうして、本発明による方法は2つの蒸留塔を包含する。第1の蒸留塔においては、使用すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を、塔頂生成物としてのビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物と塔底生成物としてのアルコール(II)が富化した流れとに分離する。
【0013】
一般に、第1の蒸留塔を、塔の塔底部で測定して75〜225℃の温度で、および有利に100〜175℃の温度で運転し、その際選択すべき温度は主に分離すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)および蒸留塔中の選択した圧力に依存する。一般に、蒸留塔の塔頂部で測定して、第1の蒸留塔を0.01〜1MPa(絶対)、有利に0.05〜0.5MPa(絶対)の圧力で運転し、その際選択すべき圧力は主に分離すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)および蒸留塔中の選択した温度に依存する。それぞれの具体的な系に関して選択すべき温度および選択すべき圧力は当業者により簡単な計算または簡単な慣用実験により調べることができる。その際、それぞれの具体的系に関して、温度と圧力の間に関連が存在する、こうして適用すべきパラメータ範囲は一般に技術的(例えば蒸留塔の設計)、経済的(例えば、資本経費および/またはエネルギー費用)および化学的(例えば生成物の分解が全くないかまたは非常に僅かである)境界条件により決定される。
【0014】
一般に、第1の蒸留塔は理論段数5〜75を有し、この際具体的な系に使用すべき理論段数は主に分離すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)並びに所望の分離性能に依存する。具体的な系のために選択すべき理論段数は、当業者により簡単な計算または簡単な慣用実験により調べることができる。
【0015】
第1の蒸留塔としては、技術的な境界条件、特に所望の分離性能、必要な温度安定性、必要な圧力安定性および要求される材料安定性を満たす、原則的に全ての蒸留塔を使用することができる。一般に、金属ジャケットを有し、分離機能内部構造物および非分離機能内部構造物を備える塔である。分離機能内部構造物としては例えばトレーまたは充填体を考慮することができる。
【0016】
本発明方法においては、第1の蒸留塔を、混合物で供給したアルコール(II)の量の≧50%、有利に≧75%および特に有利に≧90%が塔底生成物として取り出されるように、設計および運転するのが一般に有利である。
【0017】
塔底生成物として取り出されるべき流れ中のアルコール(II)の濃度は、一般に≧90質量%および有利に≧95質量%である。
【0018】
第2の蒸留塔においては、第1の蒸留塔からのビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を、塔頂生成物としてのビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物と塔底生成物としてのまたは回収部でのガス状側留としてのビニルエーテル(I)とに分離する。
【0019】
一般に、第2の蒸留塔を塔の塔底部で測定して75〜225℃の温度で、および有利に100〜175℃の温度で運転し、その際選択すべき温度は主に分離すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)および蒸留塔中の選択した圧力に依存する。ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物およびビニルエーテル(I)流への相応する分離を達成するためには、第2の蒸留塔を第1の蒸留塔に対して0.01〜3MPa高い圧力で運転する。有利には、第2の蒸留塔を第1の蒸留塔に対して0.1〜2MPa高い圧力で運転する。適用すべき圧力を決定する際に重要なパラメータはこの際所望の分離性能である。この際、第2の蒸留塔における分離性能は、第1の蒸留塔に対する圧力差が大きいほど、一般に高い。第1の蒸留塔に対する圧力差が上昇するほど、塔底生成物としてまたは回収部でのガス状側留として取り出すことのできるビニルエーテル(I)の割合も上昇する。こうして残りの共沸混合物は高い圧力において、低いビニルエーテル(I)の量となり、このことは最終的に第1の蒸留塔の質量流量および負荷を低下させる。これに対して、圧力差の上昇に伴いより多量の圧縮エネルギーを必要とし、第2の蒸留塔は相応する圧力のために相応する設計がされなければならず、具体的な分離すべき混合物のために蒸留温度を上昇させなければならず、このことは分離すべき生成物への高い熱的負荷に導く。具体的な系のために選択すべき温度および選択すべき圧力は当業者により、簡単な計算または簡単な慣用実験により調べることができる。その際、それぞれの具体的な系に関して温度および圧力の間に関連が存在し、こうして適用すべきパラメータ範囲は一般に技術的(例えば蒸留塔の設計、分離性能、質量流量)、経済的(例えば、資本経費および/またはエネルギー費用)および化学的(例えば生成物の分解が全くないかまたは非常に僅かである)境界条件により決定される。
【0020】
一般に、第2の蒸留塔は理論段数5〜75を有し、この際具体的な系に使用すべき理論段数は主に分離すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)並びに所望の分離性能に依存する。具体的な系のために選択すべき理論段数は、当業者により簡単な計算または簡単な慣用実験により調べることができる。
【0021】
第2の蒸留塔としては、技術的な境界条件、特に所望の分離性能、必要な温度安定性、必要な圧力安定性および要求される材料安定性を満たす、原則的に全ての蒸留塔を使用することができる。一般に、金属ジャケットを有し、分離機能内部構造物および非分離機能内部構造物を備える塔である。分離機能内部構造物としては例えばトレーまたは充填体を考慮することができる。
【0022】
第2の蒸留塔においては、ビニルエーテル(I)を液状で塔底生成物としてまたは回収部での側留としてガス状で取り出す。後者の場合には、ビニルエーテル(I)の取出しを有利に理論段数の全数の下方25%の範囲、および特に有利に下方10%の範囲で実施する。理論段数全部で75を有する蒸留塔においては、理論段数の全数の下方25%の範囲という表現形式は、ガス状側留を第1〜19番目の理論段数の範囲で取り出すことを意味する。ガス状側留の利点は、純粋な形で得られるべきビニルエーテル(I)の色数を改善することにある、それというのも不所望な高沸点物質を生成物から離して維持することができるためである。
【0023】
本発明方法によれば、一般的に第2の蒸留塔を、混合物で供給したビニルエーテル(I)の量の≧20%、有利に≧50%、特に有利に≧75%および殊に有利には≧90%が塔底生成物として取り出されるように、設計および運転するのが一般に有利である。<20%の値では一般に多量の返流、こうして不経済な返流に導く。塔底生成物として取り出されるべき流れ中のビニルエーテル(I)の濃度は、一般に≧97.5質量%および有利に≧99.5質量%である。
【0024】
実施例
図1には本発明方法の簡略化した構成図を示す。分離すべきビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する流れ(a)を、導管(1)を介して第1の蒸留塔Aに供給する。塔底生成物として導管(2)を介してアルコール(II)の富化した流れ(b)を取り出す。塔頂生成物として取り出される、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を導管(3)を介して第2の蒸留塔Bに供給する。これから塔底生成物としてまたは回収部でのガス状側留としてビニルエーテル(I)(c)を導管(4)を介して取り出す。塔頂生成物として取り出される、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を導管(5)を介して第1の蒸留塔Aに返流する。
【0025】
第2の蒸留塔の塔底生成物としてまたは回収部でのガス状側留として取り出されるビニルエーテル(I)は、一般になお僅かな副成分、例えばアセタールで汚染されているので、これを有利に精留塔に導入し、精製したビニルエーテル(I)を塔頂生成物として獲得する。精留塔の設計および蒸留パラメータの調査は当業者により簡単な計算または簡単な慣用実験により調査することができる。
【0026】
図2は、有利な本発明方法の簡略化した構成図を示す。第2の蒸留塔の塔底生成物としてまたは回収部におけるガス状側留として取り出されるビニルエーテル(I)を含有する流れを導管(4)を介して精留塔Cに供給する。塔底生成物としては導管(7)を介して、高沸点副成分(e)を有する流れを取り出す。精製したビニルエーテル(I)(d)を導管(6)を介して塔頂生成物として取り出す。
【0027】
本発明方法において使用すべき混合物は、一般式(I)
−O−CH=CH (I)
のビニルエーテル(I)および一般式(II)
−OH (II)
のアルコール[前記式中、RおよびRは相互に独立して、炭素原子2〜10個を有する、飽和または不飽和の脂肪族または脂環式基を表す]を含有し、その際アルコール(II)はビニルエーテル(II)より、0.1MPa(絶対)で測定して、または0.1MPa(絶対)に外挿して、少なくとも1℃高い沸点を有する混合物である。
【0028】
アルコール(II)はビニルエーテル(II)より、0.1MPa(絶対)で測定または外挿して、少なくとも2℃、特に有利には少なくとも5℃高い沸点を有するのが有利である。
【0029】
炭素原子2〜10個を有する、有利な飽和または不飽和、脂肪族または脂環式基RおよびRとしては、
・ C−〜C10−アルキル基、例えばエチル、1−プロピル、2−プロピル(sec−プロピル)、1−ブチル、2−ブチル(sec−ブチル)、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)、2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)、1−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチル、3−メチル−2−ブチル、2−メチル−2−ブチル、1−ヘキシル、1−ヘプチル、1−オクチル、2−エチル−1−ヘキシル、1−ノニル、1−デシル;
・ C−〜C10−アルケニル基、例えばエテニル(ビニル)、1−プロプ−1−エニル、2−プロプ−1−エニル、3−プロプ−1−エニル、1−ブテ−1−エニル、2−ブテ−1−エニル、3−ブテ−1−エニル、4−ブテ−1−エニル、1−ブテ−2−エニル、2−ブテ−2−エニル、3−ブテ−2−エニル、4−ブテ−2−エニル;
・C−〜C10−シクロアルキル基、例えばシクロペンチル、2−メチル−シクロペンチル、3−メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、2−メチルシクロヘキシル、3−メチル−シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル;
・C−〜C10−シクロアルケニル基、例えば1−シクロペンテ−1−エニル、3−シクロペンテ−1−エニル、4−シクロペンテ−1−エニル、1−シクロヘキセ−1−エニル、3−シクロヘキセ−1−エニル、4−シクロヘキセ−1−エニル;
を挙げることができる。
【0030】
本発明方法において、式中、基RおよびRが相互に独立してC〜C−アルキル基、特にエチル、1−プロピル、2−プロピル(sec−プロピル)、1−ブチル、2−ブチル(sec−ブチル)、2−メチル−1−プロピル(イソブチル)および2−メチル−2−プロピル(t−ブチル)を表す、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を使用するのが、特に有利である。
【0031】
本発明方法において、基RおよびRが同一であるビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を使用するのが殊に有利である。こうして、以下のビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を使用するのが、特別に有利である:
・エチルビニルエーテルとエタノール;
・1−プロピルビニルエーテルと1−プロパノール;
・2−プロピルビニルエーテルと2−プロパノール;
・1−ブチルビニルエーテルと1−ブタノール;
・2−ブチルビニルエーテルと2−ブタノール;
・イソブチルビニルエーテルとイソブタノール;
・t−ブチルビニルエーテルとt−ブタノール。
【0032】
本発明方法の有利な実施態様においては、使用したビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物は、塩基性のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下にアルコール(II)とエチンとを反応させることによるビニルエーテル合成から由来し、第1の蒸留塔からのアルコール(II)の富化した塔底生成物から低沸点物質および高沸点物質を蒸留により分離し、精製したアルコール(II)を再びビニルエーテル合成に戻す。塩基性のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下にアルコール(II)とエチンとを反応させることによるビニルエーテルを製造するための合成法は一般に公知であり、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第6改訂版、2000Electronic Release、Chapter “VINYLETHERS−Production”またはW.Rappe等著、Justus Liebigs Ann.Chem.,601(1956)、第135〜138頁およびその中に引用された文献を記載する。
【0033】
第1の蒸留塔からのアルコール(II)で富化した塔底生成物からの低沸点物質および高沸点物質の蒸留による分離は、前記の有利な本発明による方法において隔壁塔中で、または従来のまたは熱的におよび/または物質的に連結した蒸留塔の装置中で実施することができる。前記の蒸留分離を隔壁塔中でまたは熱的におよび/または物質的に連結した蒸留塔の装置中で実施するのが特に有利である。
【0034】
図3はこの有利な本発明による方法の簡略化した構成図を示す。第1の蒸留塔の塔底生成物として取り出されるアルコール(II)を含有する流れは導管(2)を介して隔壁塔Dもしくは従来のまたは熱的におよび/または物質的に連結した蒸留塔の装置中に導入される。そこで、導管(9)を介して塔頂生成物として取り出される低沸点物質(f)と、導管(8)を介して塔底生成物として取り出される高沸点物質(g)に分離される。精製したアルコール(II)は隔壁塔Dもしくは従来のまたは熱的におよび/または物質的に連結した蒸留塔の装置から側留として取り出され、導管(10)を介して合成工程Sに戻される。
【0035】
本発明方法の有利な実施態様においては、塩基性のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下にアルコール(II)とエチンとを反応させることによるビニルエーテル合成から由来し、かつその基RおよびRが同一であり、C−〜C−アルキル基を表す、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を使用する。この混合物を図1の簡略化した構成図に関して記載したと同様にして、アルコール(II)を含有する流れとビニルエーテル(I)を含有する流れに分離する。アルコール(II)を含有する流れの目標のおよび所望の純度の故に更に精製すべき場合には、これを有利に図3の簡略化した構成図に関して記載したと同様にして、隔壁塔または熱的におよび/または物質的に連結した蒸留塔の装置中で引き続き蒸留することにより精製する。得られたアルコール(II)を含有する流れを、引き続き合成工程に戻す。ビニルエーテル(I)を含有する流れは図2の簡略化した構成図に関して記載したと同様にして、引き続き蒸留により精製し、精製したビニルエーテル(I)を塔頂生成物として獲得する。
【0036】
前記の有利な実施態様において、第1の蒸留塔は一般に5〜75の理論段数であり、これを塔の塔頂部で測定して0.01〜1MPa(絶対)の圧力で、かつ塔の塔底部で測定して温度75〜225℃で運転する。第2の蒸留塔は一般に5〜75の理論段数であり、これを第1の蒸留塔より0.1〜2MPa高い圧力で、かつ塔の塔底部で測定して温度75〜225℃で運転する。第2の蒸留塔から、ビニルエーテル(I)をガス状側留として回収部で取り出す場合、この側留は一般に第1〜10理論段数の範囲に、有利に第1〜第2理論段数の範囲に存在する。
【0037】
本発明方法はビニルエーテルとアルコールとを含有する混合物の分離を可能とし、特に装置および方法技術的に低い費用で、高い装置容量で、かつ助剤としての外来物質の添加によるビニルエーテルおよび/またはアルコールの汚染の危険なしに、精製したビニルエーテルおよびアルコールに導く。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明方法の簡略化した構成図
【図2】有利な本発明方法の簡略化した構成図
【図3】図2とは別な有利な本発明方法の簡略化した構成図
【符号の説明】
【0039】
A 第1の蒸留塔、 B 第2の蒸留塔、 C 精留塔、 D 隔壁塔、 S 合成塔、 a 分離すべきビニルエーテルおよびアルコールを含有する流れ、 b アルコールの富化した流れ、 c ビニルエーテル、 d 精製したビニルエーテル、 e 高沸点副成分、 f 低沸点物質、 g 高沸点物質、 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
−O−CH=CH (I)
のビニルエーテルおよび一般式(II)
−OH (II)
のアルコール[前記式中、RおよびRは相互に独立して、C〜C−アルキル基を表す]を含有し、その際アルコール(II)はビニルエーテル(II)より、0.1MPa(絶対)で測定して、または0.1MPa(絶対)に外挿して、少なくとも1℃高い沸点を有する混合物の蒸留による分離法において、
a)この混合物を第1の蒸留塔に導入し、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を塔頂生成物としておよびアルコール(II)が富化した流れを塔底生成物として取り出し;
b)第1の蒸留塔からのビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を、第1の蒸留塔に対して0.01〜3MPaだけ高い圧力で運転する第2の蒸留塔中に導入し、塔底生成物としてまたは回収部でのガス状側留としてビニルエーテル(I)を、および塔頂生成物としてビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を取り出し;かつ
c)第2の蒸留塔からの、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する共沸混合物を第1の蒸留塔中に戻すことを特徴とする、ビニルエーテルおよびアルコールを含有する混合物の蒸留分離法。
【請求項2】
蒸留塔の塔頂部で測定して、第2の蒸留塔を第1の蒸留塔より0.1〜2MPa高い圧力で運転する、請求項1記載の蒸留分離法。
【請求項3】
蒸留塔の塔底部で測定して、第1の蒸留塔を75〜225℃の温度で、および蒸留塔の塔頂部で測定して、0.01〜1MPa(絶対)の圧力で運転する、請求項1または2記載の蒸留分離法。
【請求項4】
蒸留塔の塔底部で測定して、第2の蒸留塔を75〜225℃の温度で運転する、請求項1から3までのいずれか1項記載の蒸留分離法。
【請求項5】
第2の蒸留塔中で、ビニルエーテル(I)を回収部でのガス状側留として理論段数の総数の下方25%の範囲で取り出す、請求項1から4までのいずれか1項記載の蒸留分離法。
【請求項6】
第2の蒸留塔から、塔底生成物としてまたは回収部でのガス状側留として取り出されたビニルエーテル(I)を精留塔中に導入し、そこから精製したビニルエーテル(I)を塔頂生成物として獲得する、請求項1から5までのいずれか1項記載の蒸留分離法。
【請求項7】
基RおよびRが同一である、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の蒸留分離法。
【請求項8】
塩基性アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在下にアルコール(II)とエチンとを反応させるビニルエーテル合成に由来する、ビニルエーテル(I)およびアルコール(II)を含有する混合物を使用し、第1の蒸留塔からのアルコール(II)が富化した塔底生成物から低沸点物質および高沸点物質を蒸留により分離し、精製したアルコール(II)を再びビニルエーテル合成に戻す、請求項7記載の蒸留分離法。
【請求項9】
第1の蒸留塔からのアルコール(II)が富化した塔底生成物からの低沸点物質および高沸点物質の蒸留分離を隔壁塔中でまたは熱的および/または物質的に連結した蒸留塔の装置中で実施する、請求項8記載の蒸留分離法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−527225(P2006−527225A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515845(P2006−515845)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006160
【国際公開番号】WO2004/110970
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】