説明

ビニルベンジルエーテル系共重合体、その製造方法及び硬化物

【課題】 Bステージ状態や硬化物において、高周波誘電特性、耐熱性及び可撓性に優れるのみならず、充分なレベルの曲げ強度を発揮する、ビニルベンジルエーテル系化合物を提供すること。
【解決手段】 ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体由来の第1の骨格と、
ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物由来の第2の骨格と、を備えるビニルベンジルエーテル系共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニルベンジルエーテル系共重合体、その製造方法及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルベンジルエーテル化合物は、その硬化物が、広い周波数領域において誘電特性が良好で耐熱性に優れるため、電気電子部品用の材料として重要であり、スチレン系エラストマーを添加して、誘電特性や耐熱性等の諸特性を維持しながら、Bステージ状態及び硬化物の可撓性を向上させる試みがなされている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−128977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に従えば、確かに、高周波数領域において誘電特性が良好で耐熱性にも優れる組成物が得られ、スチレン系エラストマーを添加しない場合に比べて、Bステージ状態及び硬化物の曲げ弾性率が低下して可撓性も改良される。しかしながら、本発明者は、曲げ強度も同時に低下してしまうため、用途によっては機械強度が不足する場合があることを見出した。
【0004】
そこで、本発明の目的は、Bステージ状態や硬化物において、高周波誘電特性、耐熱性及び可撓性に優れるのみならず、充分なレベルの曲げ強度を発揮する、ビニルベンジルエーテル系化合物及びその製造方法、並びに硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体由来の第1の骨格と、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物由来の第2の骨格と、を備えるビニルベンジルエーテル系共重合体を提供する。また、このビニルベンジルエーテル系共重合体のビニル重合により得られる硬化物を提供する。
【0006】
本発明のビニルベンジルエーテル系共重合体は、Bステージ状態及び硬化物の曲げ弾性率が低いため可撓性に優れており、スチレン系エラストマーを添加する場合に比べて、曲げ強度が充分に高く、優れた機械強度を発揮する。このような特性が得られる理由は必ずしも明らかではないが、スチレン系エラストマーを添加する外部可塑化と異なって、ビニルベンジルエーテル系共重合体分子中にジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物の骨格が取り込まれているため(内部可塑化)、相溶性の悪化が防止されるとともに相分離も生じにくくなっているためであると推測される。
【0007】
本発明のビニルベンジルエーテル系共重合体は、これらの特性に加え、Bステージ状態での作業性に優れており、Bステージ状態又は硬化後の各種被着体に対する密着強度にも優れる。また、硬化物においてクラック発生が防止され高信頼性が得られる。更に100MHzから10GHzの周波数領域において誘電率が上昇せず、Q−VALUEが向上し高周波誘電特性が向上しており、可撓性及び機械強度を必要とする電子部品用基板材料として好適である。
【発明の効果】
【0008】
Bステージ状態や硬化物において、高周波誘電特性、耐熱性及び可撓性に優れるのみならず、充分なレベルの曲げ強度を発揮する、ビニルベンジルエーテル系共重合体及びその製造方法、並びに硬化物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
(ビニルベンジルエーテル系共重合体)
本発明のビニルベンジルエーテル系共重合体は、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体由来の第1の骨格と、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物由来の第2の骨格とを同一分子内に有しており、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体としては、下記一般式(1)で表される重合体が好ましい。
【0011】
【化1】

【0012】
なお、上記式において、Rはメチル基又はエチル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;ベンジル基等のアラルキル基;フェニル基等のアリール基等が挙げられ、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0013】
n1及びn2はn1+n2=3〜20を満たす正の数であり、n1:n2は100:0〜40:60が好ましく、100:0〜60:40がより好ましい。n1及びn2をこのような範囲とすることにより、ビニルベンジルエーテル系共重合体の硬化反応が良好に進行し、充分な誘電特性を得ることができるようになる。
【0014】
、R、n1:n2及びn1+n2の典型例を示すと以下のとおりである。
【表1】

【0015】
ビニルベンジルエーテル系共重合体において、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体が、下記一般式(2)で表され、エポキシ基、カルボン酸エステル基及び水酸基からなる群より選ばれるリンカー基を含有するリンカー基含有重合体であり、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物が、上記リンカー基と反応性の官能基を有するリンカー基反応性重合体であり、リンカー基含有重合体のリンカー基と、リンカー基反応性重合体の官能基とが結合してグラフト共重合体が形成されていることが特に好ましい。さらに、上記リンカー基がエポキシ基であること好ましく、リンカー基と反応性の官能基が、エポキシ基と反応性のカルボキシル基であることがより好ましい。
【0016】
【化2】

上記式中、R及びRの意義及び好適例は上述のとおりであり、n1a、n1b及びn2は、n1a+n1b+n2=3〜20を満たす正の数であり、(n1a+n1b):n2は100:0〜40:60である。(n1a+n1b):n2は100:0〜60:40がより好ましく、n1a:n1bは95:5〜70:30が好ましい。n1a、n1b及びn2をこのような範囲することにより、ビニルベンジルエーテル系共重合体の硬化反応が良好に進行し、充分な誘電特性を得ることができるようになる。
【0017】
ビニルベンジルエーテル系共重合体は、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体由来の第1の骨格と、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物由来の第2の骨格によりブロック共重合体又はグラフト共重合体が形成されているとよい。
【0018】
ここで、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物として、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、水素化ポリブタジエン(完全水素化ポリブタジエン及び部分水素化ポリブタジエンが含まれる。)、水素化ポリイソプレン(完全水素化ポリイソプレン及び部分水素化ポリイソプレンが含まれる。)及び水素化ポリクロロプレン(完全水素化ポリクロロプレン及び部分水素化ポリクロロプレンが含まれる。)からなる群より選ばれる少なくとも1つを採用できる。
【0019】
ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物としてはまた、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン及びクロロプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合してなる重合体又は当該重合体の水素化物(完全水素化物及び部分水素化物が含まれる。)を採用できる。
【0020】
上記のジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物の中でも誘電特性(低ε、高Q)が良好なものとしては、下記の化合物が挙げられる。
(1)ポリブタジエン、水素化ポリブタジエン及び部分水素化ポリブタジエン
(2)ポリイソプレン、水素化ポリイソプレン及び部分水素化ポリイソプレン
(3)ブタジエン-イソプレンブロック重合体、水素化ブタジエン-イソプレンブロック重合体、
及び部分水素化ブタジエン-イソプレンブロック重合体
(4)ポリクロロプレン、水素化ポリクロロプレン及び部分水素化ポリクロロプレン
【0021】
グラフト共重合体であるビニルベンジルエーテル系共重合体の一例を、下記一般式(I)及び(II)に示す。なお、一般式(I)及び(II)には、ジオレフィン系モノマー重合体としてポリブタジエンを用いた場合を示しており、式中のR、R、n1a、n1bの意義は上述のとおりであり、m1及びm2はm1+m2=10〜85を満たす正の数であり、m1:m2は90:10〜10:90である。
【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

下記一般式(III)に、ブロック共重合体であるビニルベンジルエーテル系共重合体の一例を示す。なお、一般式(III)には、ジオレフィン系モノマー重合体としてポリブタジエンを用いた場合を示しており、式中のR、n1、m1、m2の意義は上述のとおりである。
【0024】
【化5】

【0025】
ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物の数平均分子量は700〜4500が好ましく、700〜3000がより好ましい。このような分子量のジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物を用いることで、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体との相溶性が向上し、可撓性付与に効果的で塗料化の際の分離が効果的に防止される。
【0026】
ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体:ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物は、質量比で95:5〜70:30であることが好ましく、90:10〜75:25であることがより好ましい。ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物の質量比が30を超すと溶液状態で相溶性が悪化し、溶液粘度が高まって取り扱いが困難となりやすく、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体本来の特性を発揮させることも難しくなる。また、硬化後の吸水率が高くなり、機械強度も低下しやすくなる。
【0027】
(ビニルベンジルエーテル系共重合体の製造方法)
ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体由来の第1の骨格と、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物由来の第2の骨格と、を備えるビニルベンジルエーテル系共重合体は以下のような製造方法で得ることができる。
【0028】
先ず、ブロック共重合体であるビニルベンジルエーテル系共重合体は、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体の前駆体であるポリフェノール段階において、予め、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物をブロック体として重合されたポリフェノール類を用いて、特開平9−31006号公報における手法で製造できる。
【0029】
特に、上記一般式(1)で表される重合体の前駆体であるポリフェノールは、ポリブタジエンを出発原料としているため、特開平5−320314号公報記載のフェノール化合物のようにポリブタジエン残基を有するものがある。このフェノール化合物を用いて、特開平9−31006号公報における手法でポリブタジエンがブロック体として付加されたポリビニルベンジル共重合樹脂組成物を得ることもできる。
【0030】
グラフト共重合体であるビニルベンジルエーテル系共重合体については、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体の反応性側鎖(例えば、ビニル基、ビニル基から誘導されるエポキシ基、カルボン酸エステル基、水酸基等)を基点として、ジオレフィン系モノマーを重合する製造方法や、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物の片末端又は両末端に反応性基(例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基)を導入し、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体の反応性側鎖(例えば、ビニル基、ビニル基から誘導されるエポキシ基、カルボン酸エステル基、水酸基等)と反応させる製造方法が採用できる。
【0031】
本発明では特に、下記一般式(1)で表される重合体を、下記一般式(2)で表されるリンカー基含有重合体に誘導するステップと、当該リンカー基含有重合体に、リンカー基と反応性の官能基を有する、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物をグラフトさせるステップとを備える製造方法により、ビニルベンジルエーテル系共重合体を得ることが好ましい。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
上記式中、Lはエポキシ基、カルボン酸エステル基及び水酸基からなる群より選ばれるリンカー基を有する基、Rはメチル基又はエチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、をそれぞれ示し、n1a、n1b、n1及びn2は、n1a+n1b+n2=3〜20且つn1=n1a+n1bを満たす正の数であり、n1:n2は100:0〜40:60である。なお、R及びRの好適例、n1a+n1b+n2及びn1:n2の好適範囲は上述のとおりである。
【0035】
上記リンカー基含有重合体が、リンカー基としてエポキシ基を含有する下記一般式(21)で表されるものである場合、上記一般式(1)で表される重合体のビニル基の一部をエポキシ基化して、リンカー基含有重合体に誘導することが好ましい。
【0036】
【化8】

【0037】
また、リンカー基がエポキシ基である場合、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物における、エポキシ基と反応性の官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、メルカプト基が挙げられる。これら官能基とエポキシ基とを反応させて、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物をグラフトすることができる。
【0038】
上記リンカー基含有重合体が、リンカー基としてカルボン酸エステル基を含有するものである場合、上記一般式(1)で表される重合体のビニル基に、ビニル基に付加する官能基(アミノ基、メルカプト基等)及びカルボン酸エステル基をともに有する化合物を付加して、リンカー基含有重合体に誘導することが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記一般式(32)又は(33)で表される化合物が挙げられ、これら化合物を上記一般式(1)で表される重合体に付加することで、下記一般式(22)又は(23)で表されるリンカー基含有重合体がそれぞれ得られる。
【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
【化11】

【0042】
【化12】

【0043】
上記式(32)及び(22)中、Xは2価の有機基を示し、Xは水素原子又は1価の有機基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示す。但し、X及びXは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。また、上記式(33)及び(23)中、Xは2価の有機基を示し、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜7の1価の炭化水素基を示す。R、R、n1a、n1b、n1及びn2の意義は、一般式(2)おけるものと同様のものである。
【0044】
上記一般式(32)で表される化合物の好適な具体例としては、メチルイソニコペート等が上げられ、上記一般式(33)で表される化合物の好適な具体例としては、メチル−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0045】
また、リンカー基がカルボン酸エステル基である場合、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物における、カルボン酸エステル基と反応性の官能基としては、水酸基が好ましい。この水酸基とカルボン酸エステル基とのエステル交換反応等によって、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物をグラフトすることができる。
【0046】
上記リンカー基含有重合体が、リンカー基として水酸基を含有するものである場合、上記一般式(1)で表される重合体のビニル基に、ビニル基に付加する官能基(アミノ基、メルカプト基等)及び水酸基をともに有する化合物を付加して、リンカー基含有重合体に誘導することが好ましい。このような化合物としては、例えば、下記化学式(34)又は(35)で表される化合物が挙げられ、これら化合物を上記一般式(1)で表される重合体に付加することで、下記一般式(24)又は(25)で表されるリンカー基含有重合体がそれぞれ得られる。
【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
上記式(34)及び(24)中、Xは2価の有機基を示し、Xは水素原子又は1価の有機基を示す。但し、X及びXは互いに結合して環状構造を形成していてもよい。また、上記式(35)及び(25)中、Xは2価の有機基を示す。R、R、n1a、n1b、n1及びn2の意義は、一般式(2)おけるものと同様である。
【0052】
上記一般式(34)で表される化合物の好適な具体例としては、3−ピペリジンメタノール等が上げられ、上記一般式(35)で表される化合物の好適な具体例としては、2−メルカプトエタノール等が挙げられる。
【0053】
また、リンカー基が水酸基である場合、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物における、水酸基と反応性の官能基としては、イソシアネート基が好ましい。このイソシアネート基への水酸基の付加反応等によって、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物をグラフトすることができる。
【0054】
(ビニルベンジルエーテル系共重合体の硬化物及び複合材料)
上述したビニルベンジルエーテル系共重合体はビニル基を側鎖に残存させることができ、そのビニル基を使ってビニル重合により硬化物が得られる。硬化は、硬化剤の存在下または不存在下のいずれでも可能である。
【0055】
硬化温度は、硬化剤の使用の有無及び硬化剤の種類によっても異なるが、充分に硬化させるためには、20〜250℃、好ましくは50〜250℃である。また、硬化の調整のために、ハイドロキノン、ベンゾキノン、銅塩等を配合してもよい。
【0056】
ビニルベンジルエーテル系共重合体には過酸化物を添加してもよい。過酸化物としては、水素引抜きタイプのものが好ましい。水素引き抜きタイプの過酸化物の場合、過酸化物から生じた遊離ラジカルが重合体から水素を奪って分子間にC−C結合を生成することにより、分子鎖同士が連結される。このような分子鎖同士の連結により、硬化物の耐溶剤性(例えばトルエン)が著しく向上する。過酸化物の添加量は必要とされる硬化条件等により適宜調整すればよいが、好ましくはビニルベンジルエーテル系共重合体に対し0.5〜5質量%、特に0.5〜3質量%である。
【0057】
具体的な過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、ハイドロパーオキサイド、パーオキシカーボネート、ジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
【0058】
本発明のビニルベンジルエーテル系共重合体の硬化物は、高周波領域において低誘電率(2GHzでの比誘電率ε=2.6程度)、且つ低誘電正接(2GHzでのtanδ=0.004程度)をであり、しかも絶縁性、及び耐熱性に優れ、ガラス転移温度(Tg)が高く、かつ分解開始温度が高く、低吸水率の高分子材料である。
【0059】
ビニルベンジルエーテル系共重合体は溶剤を含有していてもよい。この場合において、溶剤含有物は液状でもペースト状であってもよい。含有される溶剤としては、ビニルベンジルエーテル系共重合体の製造原料のSP値に近いものが好ましく、具体的にはトルエン、キシレン、1,3−ジオキソラン等が挙げられる。なお、この溶剤はビニルベンジルエーテル系共重合体の製造時の溶媒としても用いることができる。
【0060】
本発明のビニルベンジルエーテル系共重合体は、電子機器、電子部品、回路基板用として、ペレツト(粉末)や粉体塗料ペーストの形態で、成形用材料、接着材料、注型材料、レジスト剤、絶縁塗料、ワニス等として用いることができる。
【0061】
本発明のビニルベンジルエーテル系共重合体はまた、電気的特性の向上や機械的、物理物性の改良、材料形態の必要性に応じ、各種充填剤を混練し、複合材料とすることができる。
【0062】
充填剤としては、酸化チタン等の誘電材料、フェライト、軟磁性金属等の磁性材料、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタン酸カリウムウイスカ、チタン酸バリウムウイスカ、酸化亜鉛ウイスカ、ガラス繊維、ガラスビーズ、カーボン繊維、酸化マグネシウム(タルク)等が挙げられ、必要とされる特性に応じて使い分けることができる。
【0063】
ビニルベンジルエーテル系共重合体は、ペースト状にして、ガラスクロス等のクロス材料に含浸させることにより、プリプレグとすることができる。また、プリプレグは積層して硬化させることで積層板とすることができ、銅等の金属を貼りつけることで金属箔付積層板とすることもできる。この場合に用いられるクロス材料としては、ガラス、アラミド、石英、ポリエチレン等からなるクロスが挙げられる。
【0064】
このような複合材料は、金型中にて加熱硬化することにより任意の形の成形品に加工が可能であり、電子機器、電子部品、回路基板用材料として広範囲に使用することができる。
【0065】
なお、上述した充填剤及びクロス材料は、配合に際し、絶縁コーティング処理やシラン化合物(クロロシラン、アルコキシシラン、有機官能性シラン、シラザン等)、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等にて表面処理を行ってもよい。
【0066】
難燃性が要求される場合、ビニルベンジルエーテル系共重合体に難燃剤を添加してもよい。難燃剤としては、塩素系難燃剤、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、金属塩系難燃剤、水和金属系難燃剤、繊維状難燃剤、低融点ガラス系難燃剤、シリコーン系難燃剤が挙げられる。このような難燃剤の1種類以上を、必要とされる難燃性グレードに応じて、ビニルベンジルエーテル系共重合体:難燃剤=95:5〜50:50となるように添加することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
ポリビニルベンジルエーテル化合物ポリブタジエングラフト体の合成
(1)部分エポキシ変性ポリビニルベンジルエーテル化合物の合成
下記式Xに示す構造を有するポリビニルベンジルエーテル化合物(数平均分子量=約6000、ビニル基当量=2.7×10−3当量/g)100gにクロロホルムを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1a」という。)。これとは別に、3−クロロ過安息香酸(純度65%)3.58gにクロロホルムを加え、5wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2a」という。)。溶液1aをマグネットスターラにて攪拌しながら、それに溶液2aをゆっくりと滴下し、滴下終了後、室温にて1時間攪拌を継続した。次に、エバポレーターを用い、クロロホルムを除去しながら固形分量が30wt%になるまで濃縮した。そして、30wt%溶液状態で加熱・攪拌し、3時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式1aに示す構造を有しており(以下「化合物1a」という。)、収量は97g(収率96.7%)であった。なお、式中Rはメチル基、Rはベンジル基、nは16〜17、n1a:n1bはモル比で95:5である。
【0069】
【化17】

【0070】
【化18】

【0071】
(2)化合物1aへのジオレフィン系モノマー重合体のグラフト
化合物1a、50gと重合禁止剤である4-メトキシフェノール(以下、「MEHQ」という。)、3.9gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液3a」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性ポリブタジエン(数平均分子量:Mn=1500、酸価度(AV):56.8KOHmg/g)20g(反応基3倍当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液4a」という。)。溶液3aをマグネットスターラにて攪拌しながら、それに溶液4aを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式1bに示す構造を有しており(以下「化合物1b」という。)、収量は62g(収率98.1%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で95:5であり、m1:m2はモル比で89:11である。
【0072】
【化19】

【0073】
(実施例2)
ポリビニルベンジルエーテル化合物ポリブタジエングラフト体の合成
化合物1a、50gとMEHQ、2.83gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1b」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性ポリブタジエン(数平均分子量:Mn=1500、酸価度(AV):56.8KOHmg/g)6.7g(反応基当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2b」という。)。溶液1bをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液2bを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式2aに示す構造を有しており(以下「化合物2a」という。)、収量は54g(収率95.2%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で95:5であり、m1:m2はモル比で89:11である。
【0074】
【化20】

【0075】
(実施例3)
ポリビニルベンジルエーテル化合物ポリブタジエングラフト体の合成
(1)部分エポキシ変性ポリビニルベンジルエーテル化合物の合成
上記式Xの構造を有するポリビニルベンジルエーテル化合物(数平均分子量=約6000、ビニル基当量=2.7×10−3当量/g)100gにクロロホルムを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1c」という。)。これとは別に、3−クロロ過安息香酸(純度65%)5.02gにクロロホルムを加え、5wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2c」という。)。溶液1cをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液2cゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌を継続した。次に、エバポレーターを用い、クロロホルムを除去しながら固形分量が30wt%になるまで濃縮した。30wt%溶液状態で加熱・攪拌し、3時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式3aに示す構造を有しており(以下「化合物3a」という。)、収量は98g(収率97.7%)であった。なお、式中Rはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で93:7である。
【0076】
【化21】

【0077】
(2)化合物3aへのジオレフィン系モノマー重合体のグラフト
化合物3a、50gとMEHQ、3.90gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液3c」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性ポリブタジエン(数平均分子量:Mn=1500、酸価度(AV):56.8KOHmg/g)を28g(反応基3倍当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液4c」という。)。溶液3cをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液4cを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式3bに示す構造を有しており(以下「化合物3b」という。)、収量は67g(収率97.6%)であった。
【0078】
次いで、化合物3b、67gとMEHQ、5.85gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液5c」という。)。これとは別に、化合物3a、50gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液6c」という。)。溶液5cをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液6cを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌を行ない、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式3cに示す構造を有しており(以下「化合物3c」という。)、収量は114g(収率97.4%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で95:5であり、m1:m2はモル比で89:11である。
【0079】
【化22】

【0080】
【化23】

【0081】
(実施例4)
ポリビニルベンジルエーテル化合物ポリブタジエングラフト体の合成
化合物3a、50gとMEHQ、5.20gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1d」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性ポリブタジエン(数平均分子量:Mn=3000、酸価度(AV):29.4KOHmg/g)を54g(反応基3倍当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2d」という。)。溶液1dをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液2dを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式4aに示す構造を有しており(以下「化合物4a」という。)、収量は85g(収率98.8%)であった。なお、式中Rはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で93:7である。
【0082】
次いで、化合物4a、85gとMEHQ、6.75gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液3d」という。)。これとは別に、化合物3a、50gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液4d」という。)。溶液3dをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液4dを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式4bで示す構造を有しており(以下「化合物4b」という。)、収量は134g(収率99.2%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で93:7であり、m1:m2はモル比で88:12である。
【0083】
【化24】

【0084】
【化25】

【0085】
(実施例5)
ポリビニルベンジルエーテル化合物水素化ポリブタジエングラフト体の合成
化合物3a、50gとMEHQ、4.00gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1e」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性水素化ポリブタジエン(数平均分子量:Mn=1500、酸価度(AV):52.4KOHmg/g)30g(反応基3倍当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2e」という。)。溶液1eをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液2eを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式5aで示す構造を有しており(以下「化合物5a」という。)、収量は69g(収率98.2%)であった。
【0086】
次いで、化合物5a、69gとMEHQ、5.95gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液3e」という。)。これとは別に、化合物3a、50gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液4e」という。)。溶液3eをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液4eを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式5bで示す構造を有しており(以下「化合物5b」という。)、収量は118g(収率99.2%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で95:5であり、m1:m2はモル比で89:11である。
【0087】
【化26】

【0088】
【化27】

【0089】
(実施例6)
ポリビニルベンジルエーテル化合物ポリブタジエングラフト体の合成
(1)部分エポキシ変性ポリビニルベンジルエーテル化合物の合成
式Xの構造を有するポリビニルベンジルエーテル化合物(数平均分子量=約6000、ビニル基当量=2.7×10−3当量/g)100gにクロロホルムを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1f」という。)。これとは別に、3−クロロ過安息香酸(純度65%)7.17gにクロロホルムを加え、5wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2f」という。)。溶液1fをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液2fをゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温にて1時間攪拌を継続した。次にエバポレーターを用い、クロロホルムを除去しながら固形分量が30wt%になるまで濃縮した。30wt%溶液状態で加熱・攪拌し、3時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式6aで示す構造を有しており(以下「化合物6a」という。)、収量は99g(収率98.5%)であった。なお、式中Rはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で90:10である。
【0090】
【化28】

【0091】
(2)化合物6aへのジオレフィン系モノマー重合体のグラフト
化合物6a、50gとMEHQ、4.50gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液3f」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性ポリブタジエン(数平均分子量:Mn=1500、酸価度(AV):56.8KOHmg/g)40g(反応基3倍当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液4f」という。)。溶液3fをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液4fを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式6bで示す構造を有しており(以下「化合物6b」という。)、収量は75g(収率97.8%)であった。
【0092】
次いで、化合物6b、75gとMEHQ,8.50gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液5f」という。)。これとは別に、化合物3a、100gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液6f」という。)。溶液5fをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液6fを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式6cで示す構造を有しており(以下「化合物6c」という。)、収量は172g(収率98.3%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で93:7であり、m1:m2はモル比で89:11である。
【0093】
【化29】

【0094】
【化30】

【0095】
(実施例7)
ポリビニルベンジルエーテル化合物ポリイソプレングラフト体の合成
化合物3a、50gとMEHQ、4.60gとを、トルエンに加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液1h」という。)。これとは別に、両末端カルボキシル基変性ポリイソプレン(数平均分子量:Mn=2500、酸価度(AV):37.4KOHmg/g)42g(反応基3倍当量)にトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液2g」という。)。溶液1hをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液2hを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式7aで示す構造を有しており(以下「化合物7a」という。)、収量は、76g(収率97.0%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で93:7であり、m3は35である。
【0096】
【化31】

【0097】
次いで、化合物7a、76gとMEHQ、6.30gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液3h」という。)。これとは別に、化合物3a、50gにトルエンを加え、40wt%溶液を調製した(調製した溶液を「溶液4h」という。)溶液3hをマグネットスターラにて攪拌しながら、溶液4hを滴下した。滴下終了後、加熱・攪拌し、17時間リフラックスを行なった。終了後、室温に戻し、反応溶液を多量のメタノール中に滴下して、再沈殿法により生成物を採取した。採取した生成物は下記式7bで示す構造を有しており(以下「化合物7b」という。)、収量は124g(収率98.4%)であった。なお、式中のRはメチル基、Rはベンジル基、n1a:n1bはモル比で93:7であり、m3は35である。
【0098】
【化32】

【0099】
(実施例8〜14)
以下の表2に示す組成及び配合量で、ビニルベンジルエーテル系共重合体に溶剤及び過酸化物を添加して混合し、実施例8〜14の配合物(ペースト)を作製した。なお、表2には、ビニルベンジルエーテル系共重合体の比率を可撓性付与成分含有比率(%)として表示した。
【0100】
(比較例1〜7)
以下の表2に示す組成及び配合量で、上記化学式Xで示すビニルベンジルエーテル系重合体に、可撓性付与剤、溶剤及び過酸化物を添加して、シェイカーミルにて2時間撹拌処理を行い、比較例1〜7の配合物(ペースト)を作製した。なお、表2には、可撓性付与剤の比率を可撓性付与成分含有比率(%)として表示した。
【0101】
【表2】

【0102】
(ガラスクロス無しBステージ)
表2に示す組成及び配合量で作製した配合物(ペースト)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に流し、110℃/2時間の溶剤乾燥処理を行った。得られた乾燥物を乳鉢にて粉砕処理した。これを100℃に予熱した金型(内寸80×80mm)に10g入れ、1.96MPaの圧力で2分加熱、加圧プレスした後取り出した。寸法は80×80×1.2mmであった。
【0103】
(ガラスクロス無し硬化物)
表2に示す組成及び配合量で作製した配合物(ペースト)を、PETフィルム上に流し、110℃/2時間の溶剤乾燥処理を行った。得られた乾燥物を乳鉢にて粉砕処理した。これを100℃に予熱した金型(内寸80×80mm)に10g入れ、1.96MPaの圧力で10分加熱、加圧プレスし、加圧を解除した後、180℃/8時間硬化し、その後取り出した。寸法は80×80×1.2mmであった。
【0104】
(ガラスクロス入りBステージ)
表2に示す組成及び配合量で作製した配合物(ペースト)を、ガラスクロス(スタイル1080:旭シェーベル社製)に含浸塗工し、110℃/1時間の乾燥処理を行い、ガラスクロス入りプリプレグを作製した。塗工厚みは100μmであった。
【0105】
(ガラスクロス入り硬化物)
上記のガラスクロス入りプリプレグを、200mm角にカットし、上下に日鉱マテリアル社製の電解銅箔(18μm)を重ねて150℃/60分+195℃/180分、2.94MPa、真空度30Torr以下にてプレス成形を行い、ガラスクロス入り硬化物を得た。出来上がり寸法は200×200×0.13mmであった。
【0106】
(評価方法)
(1)配合物相溶性
上記配合物をガラス容器に入れ、48時間室温下に放置した後、分離しているか否か目視にて確認し、分離が確認されたものを×、確認できないものを○とした。
(2)脆さ
ショアメータにて上記ガラスクロス入り硬化物に測定針を押し当てて加重し、割れが確認されたときのショアメータのメモリの値を読みとった。
【0107】
(3)粉末化度
乾燥させたビニルベンジルエーテル系共重合体を、粉砕して粉末(粒状)にする際の難易度を下記の1〜4に分けて表した。
1:乳鉢の棒でたたくと簡単に割れる、簡単に微粉末化する。
2:乳鉢の棒でたたくと簡単に割れる、微粉末化もやや時間がかかるが可能。
3:乳鉢の棒でたたくと割れにくいが、おおぶりに割れる、微粉末化するのにやや時間がかかる。
4:乳鉢の棒でたたいても割れない、固まりを小さくできない。
(4)誘電率及びQ
上記ガラスクロス無し硬化物からなる試験片を所定の共振容器中に納めたときの、共振点のズレから誘電率及びQを測定する摂動法により評価した。条件は、周波数:2GHz、試験片:1.2×1.5×80mmとした。
【0108】
(5)曲げ強度・曲げ弾性率
上記ガラスクロス無し硬化物からなる試験片の寸法を25×40×1.2mmとし、JIS C6481に準拠した方法により評価した。
このとき、支点間の距離:16mm、加重速度:1mm/分とした。
(6)耐薬品性
上記ガラスクロス無し硬化物からなる試験片の寸法を25×40×1.2mmとし、下記の薬品に浸漬した後の外観上の変化を目視により観察し、変化が確認されたものを×、確認されなかったものを○とした。
1)トルエン:超音波15分
2)クリンスルー:60℃/8分浸漬
3)水酸化ナトリウム:10%溶液30分浸漬
4)過マンガン酸カリウム:45g/L、80℃/15分浸漬
【0109】
(7)電食試験
上記ガラスクロス無し硬化物からなる試験片の寸法を10×30×1.2mmとし、これに直径0.6mmの裸銅線を巻き、40℃、98%RHの雰囲気中で、前記銅線に240VDCを印加して、1000時間後に断線、腐食の有無を目視により観察し、断線、腐食の有るものを×、無いものを○とした。
(8)銅箔密着性
幅10mm、長さ200mmの上記ガラスクロス入り硬化物からなる試験片を、万能荷重試験器(AGSl000D、SHIMADZU社製)を用い、銅箔のピール強度をJIS C6481に準拠して評価した。
(9)層間密着性
上記ガラスクロス無しBステージを4枚重ねて150℃/60分+195℃/180分、2.94MPa、真空度30Torr以下にてプレス成形を行い、幅10mm、長さ200mmの試験片を作製した。万能荷重試験器(AGSl000D、SHIMADZU社製)を用い、第1層めを剥離するときの力をJIS C6481に準拠して評価した。
【0110】
以上の評価結果を表3に示す。
【0111】
【表3】

【0112】
表3に示されるように、ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体をジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物により内部可塑化することにより、ブリプレグの脆さが改良されている。また、粉落ちも少なくなっている。また、硬化物の曲げ弾性率が下がり、可撓性が付与されている。一方、曲げ強度が外部可塑化の系に比べ低下することなく、ポリビニルベンジルエーテル化合物単体と同等の強度を維持することができる。耐薬品性は溶解溶剤であるトル工ンにも溶出することなく高い耐性を有し、また、材料の耐食性を落とすことなく可撓性付与ができている。そして、可撓性付与により、銅箔やガラスクロスへの密着力が向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体由来の第1の骨格と、
ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物由来の第2の骨格と、を備えるビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項2】
前記ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体が、下記一般式(1)で表される重合体である、請求項1記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【化1】

[式中、Rはメチル基又はエチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、をそれぞれ示し、n1及びn2はn1+n2=3〜20を満たす正の数であり、n1:n2は100:0〜40:60である。]
【請求項3】
前記第1の骨格と前記第2の骨格によりブロック共重合体又はグラフト共重合体が形成されている、請求項1又は2記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項4】
前記ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体が、下記一般式(2)で表されるリンカー基含有重合体であり、
前記ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物が、前記リンカー基と反応性の官能基を有するリンカー基反応性重合体であり、
前記リンカー基含有重合体の前記リンカー基と、前記リンカー基反応性重合体の前記官能基とが結合してグラフト共重合体が形成されている、請求項1記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【化2】

[式中、Lはエポキシ基、カルボン酸エステル基及び水酸基からなる群より選ばれるリンカー基を有する基、Rはメチル基又はエチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、をそれぞれ示し、n1a、n1b及びn2は、n1a+n1b+n2=3〜20を満たす正の数であり、(n1a+n1b):n2は100:0〜40:60である。]
【請求項5】
前記ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物が、
ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、水素化ポリブタジエン、水素化ポリイソプレン及び水素化ポリクロロプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項6】
前記ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物が、
1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン及びクロロプレンからなる群より選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合してなる重合体又は当該重合体の水素化物である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項7】
前記ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物の数平均分子量が700〜4500である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項8】
ビニルベンジルエーテル構造を有する重合体:ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物が、質量比で95:5〜70:30である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項9】
下記一般式(1)で表される重合体のビニル基を、エポキシ基、カルボン酸エステル基及び水酸基からなる群より選ばれるリンカー基を有する基に変換して、下記一般式(2)で表されるリンカー基含有重合体を得るステップと、
当該リンカー基含有重合体に、前記リンカー基と反応性の官能基を有する、ジオレフィン系モノマー重合体及び/又はその水素化物をグラフトさせるステップと、
を備える、ビニルベンジルエーテル系共重合体の製造方法。
【化3】

【化4】

[式中、Rはメチル基又はエチル基、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、をそれぞれ示し、n1a、n1b、n1及びn2は、n1a+n1b+n2=3〜20且つn1=n1a+n1bを満たす正の数であり、n1:n2は100:0〜40:60である。]
【請求項10】
請求項9記載の製造方法により得ることのできる、ビニルベンジルエーテル系共重合体。
【請求項11】
請求項1〜8、10のいずれか一項に記載のビニルベンジルエーテル系共重合体のビニル重合により得られる硬化物。

【公開番号】特開2006−104225(P2006−104225A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288403(P2004−288403)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】