説明

ビフェニルイミダゾール化合物の調製方法

本発明は、式(IV)の化合物又はその塩の調製に有用である中間体を調製するためのプロセスを提供する。ここで、式中、R1〜3は、本明細書に定義されているとおりである。一実施形態においては、このプロセスは、さらに、結晶形態の式IIの化合物を調製する工程を含む。本発明の一態様は、結晶性4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステルに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンジオテンシンII 1型受容体拮抗体活性及びネプリライシン阻害活性を有する化合物の調製に有用であるビフェニルイミダゾール化合物を調製するためのプロセス及び中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
2008年4月23日に出願されたどちらもAllegretti他の本願と同一人に譲渡された特許文献1及び特許文献2は、AT受容体拮抗体活性及びネプリライシン(NEP)酵素阻害活性を有する新規化合物を開示する。その開示を参照により本明細書に援用する。一実施形態においては、これらの出願は、4’−{2−エトキシ−4−エチル−5−[((S)−2−メルカプト−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]イミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸などの新規化合物を開示する。
【0003】
長期貯蔵用化合物を調製するとき、並びに薬学的組成物及び処方物を調製するときには、吸湿性でも潮解性でもない結晶形態の治療薬を有することが望ましいことが多い。材料をさほど分解させずに加工することができる比較的高い融点を有する結晶形態を有することも有利である。結晶遊離塩基形態の4’−{2−エトキシ−4−エチル−5−[((S)−2−メルカプト−4−メチルペンタノイルアミノ)−メチル]イミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸が、2009年9月29日に出願されたChao他の本願と同一人に譲渡された特許文献3に開示されている。その開示を参照により本明細書に援用する。
【0004】
これらの刊行物及び出願に開示された化合物は、典型的には1種類以上のビフェニルイミダゾール中間体がクロマトグラフィーによって精製される必要がある技術によって調製される。かかる精製工程が不要であるプロセスを開発することは幾つかの利点がある。本発明は、その必要性に対処するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0269305号
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0023228号
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0081697号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式IVの化合物又はその塩の調製に有用である中間体を調製するための新規中間体及び改善されたプロセスに関する。
【0007】
【化1】

上記式中、Rは−C1〜6アルキルであり、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Rは−C1〜6アルキル、−C0〜3アルキレンアリール、−C0〜3アルキレンヘテロアリール又は−C0〜3アルキレン−C3〜7シクロアルキルである。特定の一実施形態においては、本発明は、4’−{2−エトキシ−4−エチル−5−[((S)−2−メルカプト−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]イミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸の調製に有用である中間体を調製するプロセスに関する。
【0008】
本発明の一態様は、式Iの化合物を調製するプロセスに関する。
【0009】
【化2】

上記式中、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Pはカルボン酸保護基である。このプロセスは、式1の化合物
【0010】
【化3】

を式2の化合物
【0011】
【化4】

と、有機希釈剤および塩基性水性希釈剤中で相間移動触媒の存在下で反応させて、式Iの化合物を形成する工程を含み、上記両希釈剤が実質的に非混和性であるプロセスである。
【0012】
一実施形態においては、このプロセスは、さらに、結晶形態の式Iの化合物を調製する工程を含む。本発明の一態様は、結晶性4’−(4−ブロモ−2−エトキシ−5−ホルミルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸tert−ブチルエステルに関する。
【0013】
本発明の別の一態様は、式IIの化合物又はその塩を調製するプロセスに関する。
【0014】
【化5】

上記式中、Rは−C1〜6アルキルであり、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Pはカルボン酸保護基である。このプロセスは、
(a)式Iの化合物
【0015】
【化6】

をC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬と、パラジウム−ホスフィン触媒の存在下で反応させて、式3の化合物を形成する工程、
【0016】
【化7】

(b)式3の化合物をヒドロキシルアミン又はその塩と反応させて式4の化合物を形成する工程、及び
【0017】
【化8】

(c)式4の化合物を還元剤と反応させて、式IIの化合物又はその塩を形成する工程を含む。
【0018】
一実施形態においては、このプロセスは、さらに、結晶形態の式IIの化合物を調製する工程を含む。本発明の一態様は、結晶性4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステルに関する。
【0019】
本発明の更に別の一態様は、式IIIの化合物又はその塩を調製するプロセスに関する。
【0020】
【化9】

上記式中、Rは−C1〜6アルキルであり、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Rは−C1〜6アルキル、−C0〜3アルキレンアリール、−C0〜3アルキレンヘテロアリール又は−C0〜3アルキレン−C3〜7シクロアルキルであり、Rは−C1〜6アルキル、−C0〜6アルキレン−C3〜7シクロアルキル、−C0〜6アルキレンアリール又は−C0〜6アルキレンモルホリンである。このプロセスは、
(a)式Iの化合物
【0021】
【化10】

をC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬と、パラジウム−ホスフィン触媒の存在下で反応させて、式3の化合物
【0022】
【化11】

(式中、Pはカルボン酸保護基である)を形成する工程、
(b)式3の化合物をヒドロキシルアミン又はその塩と反応させて式4の化合物を形成する工程、
【0023】
【化12】

(c)式4の化合物を還元剤と反応させて、式IIの化合物又はその塩を形成する工程、
(d)式IIの化合物又はその塩を式5の化合物
【0024】
【化13】

又はその塩と、アミン−カルボン酸カップリング試薬の存在下で反応させて、式6の化合物
【0025】
【化14】

又はその塩を形成する工程、及び
(e)カルボン酸保護基Pを式5の化合物又はその塩から除去して、式IIIの化合物又はその塩を形成する工程を含む。
【0026】
一実施形態においては、このプロセスは、さらに、結晶形態の式IIIの化合物を調製する工程を含む。本発明の一態様は、結晶性4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸に関する。
【0027】
本発明の別の一態様は、本発明のプロセスに使用される新規中間体に関する。本発明のかかる一態様においては、新規中間体は式3又は4を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の種々の態様を添付図面を参照して説明する。
【図1】図1は、結晶形態の4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル(式IIa)の粉末x線回折(PXRD)パターンを示す。
【図2】図2は、この結晶性化合物の示差走査熱量測定(DSC)サーモグラフ及び熱重量測定(TGA)を示す。
【図3】図3は、結晶形態の4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸(式IIIa)の粉末x線回折(PXRD)パターンを示す。
【図4】図4は、この結晶性化合物のDSCサーモグラフ及びTGAを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、式Iの化合物、
【0030】
【化15】

及び式IIの化合物、
【0031】
【化16】

及び式IIIの化合物、
【0032】
【化17】

又はその塩を調製する新規プロセスに関する。
【0033】
上記R部分は−C1〜6アルキルであり、その例としては、−CH及び−CHCHが挙げられる。特定の一実施形態においては、Rは−CHCHである。
【0034】
上記R部分は−O−C1〜5アルキルであり、その例としては、−OCH、−OCHCH、−OCH(CH、−O(CHCH、−O(CHCH及び−OCHCH(CHが挙げられる。特定の一実施形態においては、Rは−O−CHCHである。
【0035】
上記R部分は、−C1〜6アルキル、−C0〜3アルキレンアリール、−C0〜3アルキレンヘテロアリール及び−C0〜3アルキレン−C3〜7シクロアルキルから選択される。−C1〜6アルキルの例としては、−CH、−CHCH、−CH(CH、−(CHCH、−(CHCH、−CH(CH)CHCH、−CHCH(CH、−CHC(CH、−(CHCH(CH及び−(CHCHが挙げられる。特定の一実施形態においては、Rは−CHCH(CHである。−C0〜3アルキレンアリールの例としては、フェニル、ベンジル、−CHビフェニル、−(CH−フェニル及び−CH−ナフタレン−1−イルが挙げられる。−C0〜3アルキレンヘテロアリールの例としては、−CH−ピリジル、−CH−フラニル、−CH−チエニル及び−CH−チオフェニルが挙げられる。−C0〜3アルキレン−C3〜7シクロアルキルの例としては、−CH−シクロプロピル、シクロペンチル、−CH−シクロペンチル、−シクロヘキシル及び−CH−シクロヘキシルが挙げられる。
【0036】
上記R部分は、−C1〜6アルキル、−C0〜6アルキレン−C3〜7シクロアルキル、−C0〜6アルキレンアリール及び−C0〜6アルキレンモルホリンから選択される。−C1〜6アルキルの例としては、−CH、−CHCH、−CH(CH、−C(CH及び−CHCH(CHが挙げられる。特定の一実施形態においては、Rは−CHである。−C0〜6アルキレン−C3〜7シクロアルキルの例としては、−シクロペンチル、−シクロヘキシル及び−CH−シクロペンチルが挙げられる。−C0〜6アルキレンアリールの例としては、フェニルが挙げられる。−C0〜6アルキレンモルホリンの例としては、−CH−モルホリン及び−(CH−モルホリンが挙げられる。
【0037】
上記P部分は「カルボン酸保護基」であり、本明細書で使用されるこの用語は、官能基が望ましくない反応を起こすのを阻止するが、保護基を適切な試薬で処理した場合にその官能基を再生(すなわち、脱保護又は脱ブロック)することができる、カルボキシル官能基に共有結合した基を意味する。代表的なカルボン酸保護基としては、メチル、エチル、t−ブチル、ベンジル(Bn)、p−メトキシベンジル(PMB)、9−フルオレニルメチル(Fm)、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM)などが挙げられるが、それだけに限定されない。特定の一実施形態においては、Pはt−ブチルである。別の代表的なカルボン酸保護基は、例えば、T.W.Greene and G.M.Wuts,Protecting Groups in Organic Synthesis,Third Edition,Wiley,New York,1999に記載されている。
【0038】
定義
本発明の化合物及びプロセスを記述するときに、以下の用語は、別段の記載がない限り、以下の意味を有する。さらに、本明細書では、単数形「a」、「an」及び「the」は、使用文脈が別のことを明示しない限り、対応する複数形を含む。「含む」、「含めて」及び「有する」という用語は、包括的であることを意図し、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものとする。本明細書で使用される成分量、分子量などの諸性質、反応条件などを表すすべての数値は、別段の記載がない限り、すべての場合において「約」という語によって修飾されることを理解されたい。したがって、本明細書に記載する数値は、近似であり、本発明によって得ようとする所望の諸性質に応じて変わり得る。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値は、少なくとも、報告する有効数字に照らして、さらに、通常の丸め法を適用することによって、解釈すべきである。
【0039】
本明細書に記載の化合物は、典型的には、商業的に利用可能なMDL(登録商標)ISIS/Drawソフトウェア(Symyx、Santa Clara、California)のAutoNom機能を使用して命名された。
【0040】
本明細書で使用する、「式を有する」又は「構造を有する」という句は、限定的であることを意図するものではなく、「含む」という用語が一般に使用されるのと同様に使用される。
【0041】
「アルキル」という用語は、線状でもよい分枝でもよい一価の飽和炭化水素基を意味する。別段の明記がない限り、かかるアルキル基は、典型的には1から10個の炭素原子を含み、例えば−C1〜5アルキル及び−C1〜6アルキルを含む。代表的なアルキル基としては、例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルなどが挙げられる。
【0042】
特定の数の炭素原子が、本明細書で使用される特定の用語に対して意図されるときには、炭素原子の数は、用語の前に添え字として示される。例えば、「−C1〜6アルキル」という用語は、1から6個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、「C3〜7シクロアルキル」という用語は、3から7個の炭素原子を有するシクロアルキル基を意味し、上記炭素原子は、任意の許容される立体配置をとる。
【0043】
「アルキレン」という用語は、線状でもよい分枝でもよい二価の飽和炭化水素基を意味する。別段の明記がない限り、かかるアルキレン基は、典型的には0から10個の炭素原子を含み、例えば、−C0〜3アルキレン−及び−C0〜6アルキレン−を含む。代表的なアルキレン基としては、例として、メチレン、エタン−1,2−ジイル(「エチレン」)、プロパン−1,2−ジイル、プロパン−1,3−ジイル、ブタン−1,4−ジイル、ペンタン−1,5−ジイルなどが挙げられる。アルキレンという用語が、−C0〜3アルキレン−などのゼロ個の炭素を含むときには、かかる用語は単結合を含むものとする。
【0044】
「アリール」という用語は、単一の環(例えば、フェニル)又は縮合環を有する一価の芳香族炭化水素を意味する。縮合環系としては、完全不飽和であるもの(例えば、ナフタレン)及び部分不飽和であるもの(例えば、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン)が挙げられる。別段の明記がない限り、かかるアリール基は、典型的には6から10個の炭素環原子を含み、例えば−C6〜10アリールを含む。代表的なアリール基としては、例として、フェニル及びナフタレン−1−イル、ナフタレン−2−イルなどが挙げられる。
【0045】
「シクロアルキル」という用語は、一価の飽和炭素環式炭化水素基を意味する。別段の明記がない限り、かかるシクロアルキル基は、典型的には3から10個の炭素原子を含み、例えば、−C3〜6シクロアルキル及び−C3〜7シクロアルキルを含む。代表的なシクロアルキル基としては、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0046】
「ヘテロアリール」という用語は、単一の環又は2個の縮合環を有し、窒素、酸素及び硫黄から選択される少なくとも1個のヘテロ原子(典型的には1から3個)を環(単数又は複数)に含む、一価の芳香族基を意味する。別段の明記がない限り、かかるヘテロアリール基は、典型的には合計5から10個の環原子を含み、例えば−C2〜9ヘテロアリールを含む。代表的なヘテロアリール基としては、例として、ピロール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、フラン、チオフェン、トリアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、トリアジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、キノキサリンなどの一価の種が挙げられ、結合点は、任意の利用可能な炭素環原子又は窒素環原子である。
【0047】
本明細書で使用する「融点」という用語は、固相液相変化(solid−to−liquid phase change)に対応する熱転移のために、示差走査熱量測定によって最大吸熱流が観察された温度を意味する。
【0048】
化合物に関連して使用されるときの「塩」という用語は、無機若しくは有機塩基又は無機若しくは有機酸から誘導される化合物の塩を意味する。無機塩基から誘導される塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などを含む。特に好ましいのは、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩である。有機塩基から誘導される塩としては、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペラジン(piperadine)、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなど、置換アミン、環式アミン、天然アミンなどを含めて、第一級、第二級及び第三級アミンの塩が挙げられる。酸から誘導される塩は、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、ナフタレンスルホン酸、ニコチン酸、硝酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などを含む。特に好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸である。さらに、化合物がアミン、またはイミダゾールなどの塩基性部分とカルボン酸などの酸性部分の両方を含むときには、両性イオンが形成され得、両性イオンは本明細書で使用する「塩」という用語に包含される。「薬学的に許容される塩」という用語は、ほ乳動物などの患者への投与が許容される塩基又は酸から調製される塩(例えば、所与の投与計画に対して許容されるほ乳動物の安全性を有する塩)を意味する。しかし、本発明に包含される塩は、患者への投与が意図されない中間化合物の塩など、薬学的に許容される塩である必要はないと理解される。
【0049】
プロセス条件
本発明のプロセスに使用される適切な不活性希釈剤としては、例として、酢酸、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル(MeCN)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トルエン、ジクロロメタン(DCM)、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルt−ブチルエーテル、クロロホルム(CHCl)、四塩化炭素(CCl)、1,4−ジオキサン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールなどの有機希釈剤が挙げられるが、それだけに限定されない。水性希釈剤を使用することもでき、水性希釈剤としては水並びに塩基性及び酸性水性希釈剤が挙げられる。上記希釈剤のいずれかの組合わせ物も企図される。
【0050】
本発明のプロセスに使用される適切な極性プロトン性溶媒としては、例として、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、水、酢酸などが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0051】
本発明のプロセスにおける使用に適した多数の塩基が存在する。例示的な有機塩基としては、例として、第一級アルキルアミン(例えば、メチルアミン、エタノールアミン、緩衝剤のトリスなど)、第二級アルキルアミン(例えば、ジメチルアミン、メチルエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)など)、第三級アミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなど)を含めたアミン;水酸化アンモニウムおよびヒドラジンなどのアンモニア化合物;水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、水酸化カリウム、カリウムt−ブトキシドなどのようなアルカリ金属水酸化物;金属水素化物;及び酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属カルボン酸塩などが挙げられるが、それだけに限定されない)。例示的な無機塩基としては、例として、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのようなアルカリ金属炭酸塩;炭酸カルシウムなどのような他の炭酸塩;及びリン酸カリウムなどのアルカリ金属リン酸塩などが挙げられるが、それだけに限定されない)。
【0052】
本発明のプロセスにおける使用に適した多数の酸が存在し、例として、ホウ酸、炭酸、硝酸(HNO)、リン酸(HPO)、スルファミン酸及び硫酸(HSO)、並びに臭化水素酸(HBr)、塩酸(HCl)、フッ化水素酸(HF)、ヨウ化水素酸(HI)などのハロゲン化水素酸が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0053】
いずれかのプロセス工程の完了後、所望の生成物を得るために、得られた混合物又は反応生成物を更に処理することができる。例えば、得られた混合物又は反応生成物を以下の手順の1つ以上に供することができる:(例えば、EtOAcと水の間又はEtOAc中の5%THFと1Mリン酸の間の)濃縮又は分配、(例えば、EtOAc、CHCl、DCM、HClによる)抽出、(例えば、エタノール、ヘプタン、NaCl飽和水溶液、飽和NaHCO、NaCO(5%)、CHCl又は1M NaOHによる)洗浄、蒸留、(例えば、MgSOによる、NaSOによる、窒素下の、又は減圧下の)乾燥、沈殿、ろ過、(例えば、エタノール、ヘプタン又は酢酸イソプロピルからの)結晶化、及び/又は(例えば、真空中での)濃縮。
【0054】
いずれかの結晶化工程の終了後、沈殿、濃縮、遠心分離、(例えば、室温での)乾燥などのような任意の従来手段によって結晶性化合物を反応混合物から単離することができる。
【0055】
式Iの化合物を調製するプロセスは、一段階アルキル化反応である。これは、式1のイミダゾール化合物を式2のビフェニル化合物と組合わせて、式Iの化合物を形成するものである。式1及び2の化合物は、商業的に利用可能な出発材料及び従来の試薬を使用して従来手順によって調製することができる。例えば、本明細書に記載の調製物並びにどちらもAllegretti他に対する米国特許出願公開第2008/0269305号及び同2009/0023228号の両者を参照されたい。
【0056】
一実施形態においては、式2のビフェニル化合物の量に基づいてわずかに過剰の式1のイミダゾール化合物が使用される。一実施形態においては約1から約2当量の上記イミダゾールが使用され、別の実施形態においては約1から1.5当量が使用される。
【0057】
典型的には、式1と2の化合物は有機希釈剤と塩基性水性希釈剤の中で相間移動触媒の存在下で組合わされる。一実施形態においては、式1のイミダゾール化合物の量に基づいてわずかに過剰の塩基性水性希釈剤が使用される。一実施形態においては約1から約2当量の塩基性水性希釈剤が使用され、別の実施形態においては約1から1.5当量が使用される。
【0058】
例示的な相間移動触媒としては、臭化テトラブチルアンモニウム(BuNBr)、臭化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAB)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム、塩化メチルトリデシルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩などが挙げられ、一実施形態においては、相間移動触媒は臭化テトラブチルアンモニウムである。一実施形態においては、式2のビフェニル化合物の量に基づいて約0.01から約1.0当量の相間移動触媒が使用され、別の実施形態においては、約0.03から約0.07当量が使用される。
【0059】
上記有機希釈剤と上記塩基性水性希釈剤は実質的に非混和性である。これは、その2つの希釈剤が混合せず、溶液を形成しない、すなわち、互いに実質的に不溶であり、混合したときに通常は別々の相で存在することを意味する。ただし、その界面では上記2つの希釈剤間に少量の混合が潜在的に存在し得ることに注意されたい。一実施形態においては、上記有機希釈剤はトルエンであり、上記塩基性水性希釈剤はNaOHである。
【0060】
式Iの化合物の形成は、典型的には約20℃から約40℃の範囲の温度で、一実施形態においては約25℃から約35℃の範囲の温度で約24から約72時間、および一実施形態においては約48から60時間、又は式Iの化合物の形成が実質的に完了するまで、実施される。
【0061】
式Iの化合物の形成が実質的に完了すると、得られた生成物は次いで従来の手順によって単離及び精製される。式Iの化合物を、必要に応じて、エタノールで処理して完全に溶解させて結晶化させ、冷却して結晶化を達成し、得られた固体を単離して結晶性材料を得る。典型的には、溶解は、約40℃から約70℃の範囲の温度で実施され、一実施形態においては約50℃から60℃の範囲の温度で実施される。冷却工程は、約0℃から約10℃の範囲の温度で実施され、一実施形態においては約2℃から6℃の範囲の温度で約2から6時間又は結晶が形成するまで実施される。結晶化工程の終了後、式Iの結晶性化合物を反応混合物から任意の従来手段によって単離することができる。
【0062】
式Iの化合物を調製する以前の方法は、しばしば15%もの、高い割合の式1の副生物が得られることが多い。本発明の方法におけるような、相間移動触媒と組み合わせた有機希釈剤と塩基性水性希釈剤の使用は、副生物量を2%未満に低減し、以前の方法よりも選択性に優れた反応を与える。
【0063】
式IIの化合物又はその塩を調製するプロセスは3工程で実施される。そのプロセスの第一工程は、Suzukiカップリング反応である。これは、1当量の式Iのアルデヒドを1当量以上のC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬と、パラジウム−ホスフィン触媒の存在下で組合わせて、式3の化合物を形成するものである。
【0064】
本発明のプロセスに使用される式Iのアルデヒドは、本明細書に記載の方法によって作製することができ、又は商業的に利用可能な出発材料及び従来の試薬を使用して従来の手順によって調製することができる。例えば、本明細書に記載の調製物、並びにかかる化合物の様々な調製法を記載したどちらもAllegretti他に対する米国特許出願公開第2008/0269305号及び同2009/0023228号を参照されたい。
【0065】
典型的には、式IのアルデヒドとC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬は、不活性希釈剤中で過剰量の適切な塩基の存在下で、パラジウム−ホスフィン触媒と組合わせて、反応混合物を形成する。一実施形態においては、アルデヒドの量に基づいて約1から約2当量のC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬が使用され、別の実施形態においては、約1.4から約1.5当量が使用される。
【0066】
1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬は所望のR基に基づいて選択される。例えば、Rがエチルである式3の化合物を調製するためには、適切なC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬はエチルトリフルオロホウ酸カリウムである。
【0067】
パラジウム−ホスフィン触媒は、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)(Pd(PPh)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−フェロセン]ジクロロパラジウム(II)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]パラジウム(0)などのパラジウムとホスフィンを含む単一触媒とすることができる。あるいは、パラジウム−ホスフィン触媒をパラジウム触媒とホスフィン源の組合わせ物とすることができる。例示的なパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム(II)(Pd(OAc))、塩化パラジウム(II)(PdCl)などが挙げられる。適切なホスフィン源としては、ジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、2−ピリジルジフェニルホスフィン、ビス(6−メチル−2ピリジル)フェニルホスフィン、トリ−p−クロロフェニルホスフィン、トリ−pメトキシフェニルホスフィンなどが挙げられる。一実施形態においては、上記パラジウム触媒は酢酸パラジウム(II)であり、ホスフィン源はジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィンである。
【0068】
一実施形態においては、アルデヒドの量に基づいて約0.01から約0.04当量のパラジウム触媒及び約0.02から約0.06当量のホスフィン源が使用され、別の実施形態においては、約0.02から約0.03当量のパラジウム触媒及び約0.03から約0.05当量のホスフィン源が使用される。別の実施形態においては、アルデヒドの量に基づいて約0.03から約0.1当量のパラジウム−ホスフィン触媒が使用され、別の実施形態においては、約0.05から約0.08当量が使用される。
【0069】
典型的にはアルデヒドの量に基づいて約3.0から約6.0当量、一実施形態においては約3.0から約4.0当量の過剰量の塩基が使用される。一実施形態においては、不活性希釈剤はトルエンと水の混合物である。別の実施形態においては、塩基は炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩である。
【0070】
式3の化合物の形成は、典型的には約80℃から約100℃の範囲の温度で、一実施形態においては約85℃から約95℃の範囲の温度で約12から約20時間、一実施形態においては約14から18時間、又は式3の化合物の形成が実質的に完了するまで、実施される。式3の化合物の形成が実質的に完了すると、得られた生成物は次いで従来の手順によって単離及び精製される。一実施形態においては、式3の化合物は溶液状態で得られる。
【0071】
プロセスの第2の工程は、1当量の式3のアルデヒドを1当量以上のヒドロキシルアミン又はその塩と組合わせて式4のオキシムを形成することを含むオキシム形成工程である。
【0072】
典型的には、式3の化合物とヒドロキシルアミン又はその塩は、過剰量の適切な塩基の存在下で組合わされて反応混合物を形成する。一実施形態においては、式3の化合物の量に基づいて約1から約2当量のヒドロキシルアミン又はその塩が使用され、別の実施形態においては、約1.4から約1.5当量が使用される。
【0073】
典型的には式3の化合物の量に基づいて約3.0から約6.0当量、一実施形態においては約3.0から約4.0当量の過剰量の塩基が使用される。一実施形態においては、塩基は炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩である。
【0074】
式4のオキシムの形成は、典型的には約20℃から約60℃の範囲の温度で、一実施形態においては約30℃から約50℃の範囲の温度で約20から約28時間、一実施形態においては約22から26時間、又はオキシムの形成が実質的に完了するまで、実施される。オキシムの形成が実質的に完了すると、得られた生成物は次いで従来の手順によって単離及び精製される。
【0075】
プロセスの第3の工程は、上記オキシムから第一級アミンへの還元であり、この工程は、式4のオキシムを還元剤と反応させて、式IIのアミン又はその塩を形成することを含む。
【0076】
例示的な還元剤は、オキシムをアミンに還元するのに適した還元剤であり、水素/ラネーニッケル、炭素担持パラジウム(Pd/C)及びZn−HClが挙げられる。典型的には、式4のオキシムと上記還元剤は、極性プロトン性溶媒とアミン塩基の中で組合わされて反応混合物を形成する。アミンの形成は、典型的には周囲温度で約1から約5時間、一実施形態においては約2から4時間、又はアミンの形成が実質的に完了するまで、実施される。一実施形態においては、アミン塩基は水酸化アンモニウムであり、溶媒はエタノールである。
【0077】
アミンの形成が実質的に完了すると、得られた生成物は次いで従来の手順によって単離及び精製される。アミンを、必要に応じて、ヘプタンで処理して完全に溶解させて結晶化させ、冷却して結晶化を達成し、得られた固体を単離して結晶性材料を得る。典型的には、冷却工程は、約0℃から約10℃の範囲の温度で実施され、一実施形態においては約2℃から6℃の範囲の温度で約22から26時間又は結晶が形成するまで実施される。結晶化工程の終了後、式IIの結晶性化合物又はその塩を反応混合物から任意の従来手段によって単離することができる。
【0078】
式IIIの化合物又はその塩を調製するプロセスは5つの工程で実施される。第1、第2及び第3の工程は、式IIの化合物を調製するプロセスに関連して上述されている。
【0079】
上記プロセスの第4の工程はカップリング工程である。これは、1当量の式IIのアミン又はその塩を1当量以上の式5のカルボン酸又はその塩と、1当量以上のアミン−カルボン酸カップリング試薬の存在下で反応させて、式6の化合物又はその塩を形成することを含む。
【0080】
本発明のプロセスに使用される式5のカルボン酸は、当分野で公知であり、商業的に利用可能であり、又は商業的に利用可能な出発材料及び従来の試薬を使用して従来の手順によって調製することができる。例えば、本明細書に記載の調製物、並びにかかる化合物の様々な調製法を記載しているどちらもAllegretti他に対する米国特許出願公開第2008/0269305号及び同2009/0023228号を参照されたい。
【0081】
典型的には、上記アミン又はその塩と上記カルボン酸又はその塩は、不活性希釈剤中でカップリング試薬の存在下で組合わされて、反応混合物を形成する。一実施形態においては、アミンの量に基づいて約1から約2当量の上記カルボン酸が使用され、別の実施形態においては、約1.1から約1.3当量が使用される。一実施形態においては、アミンの量に基づいて約1から約2当量の上記カップリング試薬が使用され、別の実施形態においては、約1.1から約1.3当量が使用される。例示的な不活性希釈剤としては、ジクロロメタン及び酢酸イソプロピルが挙げられる。
【0082】
適切なアミン−カルボン酸カップリング試薬としては、(2−(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスファート)(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、カルボニルジイミダゾール(CDI)などが挙げられ、特定の一実施形態においては、上記カップリング試薬はHCTUである。
【0083】
カップリング反応は、典型的には約−5℃から約5℃の範囲の温度で、一実施形態においては約−1℃から約3℃の範囲の温度で約5から約15時間、又は式6の化合物の形成が実質的に完了するまで、実施される。反応混合物のpHは、1N塩酸などの適切な酸を添加することによって約5から約5に調節される。式6の化合物の形成が実質的に完了すると、得られた生成物は次いで従来の手順によって単離及び精製される。
【0084】
上記プロセスの第5の工程は脱保護工程である。これは、カルボン酸保護基Pを式6の化合物又はその塩から除去して、式IIIの化合物又はその塩を形成することを含む。
【0085】
標準の脱保護技術及び試薬を使用して、P基を除去する。標準の脱保護技術及び試薬は、使用される基に応じて変わり得る。例えば、PがメチルであるときにはNaOHが一般に使用され、Pがt−ブチルであるときにはTFA、またはHClなどの酸が一般に使用され、PがベンジルであるときにはH(1atm)とアルコール溶媒中の10%Pd/C(「H/Pd/C」)などの接触水素化条件を使用することができる。特定の一実施形態においては、TFAが使用される。
【0086】
典型的には、式6の化合物又はその塩と脱保護試薬は不活性希釈剤中で組合わされる。過剰量の試薬が使用され、一実施形態においては、式6の化合物の量に基づいて約10から約30当量の試薬が使用される。一実施形態においては、上記不活性希釈剤はテトラヒドロフラン、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、および1,4−ジオキサンなどの無水の希釈剤である。
【0087】
この脱保護工程は、典型的には約10℃から約30℃の範囲の温度で、一実施形態においては約15℃から約25℃の範囲の温度で約12から約20時間、一実施形態においては約14から18時間、又は反応が実質的に完了するまで、実施される。次いで、反応混合物のpHは、炭酸カリウム水溶液などの適切な塩基を添加することによって約6から約7に調節される。
【0088】
式IIIの化合物の形成が実質的に完了すると、得られた生成物は次いで従来の手順によって単離及び精製される。式IIIの化合物を、必要に応じて、酢酸イソプロピルで処理して完全に溶解させて結晶化させ、冷却して結晶化を達成し、得られた固体を単離して結晶性材料を得る。典型的には、上記冷却工程は、約0℃から約10℃の範囲の温度で実施され、一実施形態においては約2℃から6℃の範囲の温度で約14から18時間又は結晶が形成するまで実施される。結晶化工程の終了後、式IIIの結晶性化合物を反応混合物から任意の従来手段によって単離することができる。
【0089】
次いで、式IIIの化合物を使用し、チオエステル基−SC(O)−Rをチオール−SHに変化させることによって、式IVの化合物を調製することができる。これは、水酸化ナトリウム、ナトリウムメトキシド、第一級アルキルアミン、ヒドラジンなどの塩基で処理するなどの従来の方法によって実施することができる。
【0090】
結晶特性
式Iの例示的な一つの化合物は、4’−(4−ブロモ−2−エトキシ−5−ホルミルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸tert−ブチルエステルであり、これは式Iaで表される。
【0091】
【化18】

一実施形態においては、式Iaの化合物は結晶形態で存在する。
【0092】
式IIの例示的な一つの化合物は、4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステルであり、これは式IIaで表される。
【0093】
【化19】

一実施形態においては、式IIaの化合物は結晶形態で存在する。別の実施形態においては、その結晶形態は、対イオンと結合しておらず、遊離塩基の結晶形態と称される。
【0094】
式IIIの例示的な一つの化合物は、4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸であり、これは、式IIIaで表される。
【0095】
【化20】

一実施形態においては、式IIIaの化合物は結晶形態である。別の実施形態においては、その結晶形態は両性イオンの形態である。
【0096】
粉末x線回折の分野では周知であるように、PXRDスペクトルの相対ピーク高は、試料調製及び機器形状寸法に関連した幾つかの因子に依存し、一方、ピーク位置は実験の詳細には比較的影響されない。PXRDパターンは、実施例4に記載したように得られた。したがって、一実施形態においては、本発明の結晶性化合物は、特定のピーク位置を有するPXRDパターンによって特徴づけられる。
【0097】
結晶形態の4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル(式IIa)は、ピーク位置が図1に示したものと実質的に一致するPXRDパターンによって特徴づけられる。これらのピークは、相対強度の高い方から順に以下のように列挙される。
【0098】
【化21】

したがって、一実施形態においては、式IIaの結晶形態は、5.24±0.2、10.43±0.2、15.65±0.2、20.63±0.2、及び31.91±0.2の2θ値に回折ピークを含む粉末x線回折(PXRD)パターンによって特徴づけられ、12.74±0.2、14.90±0.2、18.20±0.2、21.71±0.2、23.03±0.2、23.96±0.2及び24.86±0.2から選択される2θ値に1個以上の追加の回折ピークを含むことによって更に特徴づけられる。
【0099】
結晶形態の4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)−メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸(式IIIa)は、ピーク位置が図3に示したものと実質的に一致するPXRDパターンによって特徴づけられる。これらのピークは、相対強度の高い方から順に以下のように列挙される。
【0100】
【化22】

したがって、一実施形態においては、式IIIaの結晶形態は、5.24±0.2、7.16±0.2、13.68±0.2及び15.98±0.2の2θ値に回折ピークを含む粉末x線回折(PXRD)パターンによって特徴づけられ、8.10±0.2、11.26±0.2、12.06±0.2、16.62±0.2、20.12±0.2、20.78±0.2、23.24±0.2及び26.28±0.2から選択される2θ値に1個以上の追加の回折ピークを含むことによって更に特徴づけられる。
【0101】
示差走査熱量測定(DSC)線は、実施例5に記載したように得られた。したがって、一実施形態においては、本発明の結晶性化合物は、そのDSCサーモグラフによって特徴づけられる。一実施形態においては、式IIaの結晶形態は、図2に示すように、約76.0℃の融点を示し、約150.0℃以下で大きな熱分解のない、DSCサーモグラフによって特徴づけられる。一実施形態においては、式IIIaの結晶形態は、図4に示すように、約130.9℃の融点を示し、約150.0℃以下で大きな熱分解のない、DSCサーモグラフによって特徴づけられる。
【0102】
熱重量分析(TGA)は、本発明の結晶性化合物に対して実施例5に記載のように実施された。したがって、一実施形態においては、本発明の結晶性化合物は、そのTGA線によって特徴づけられる。一実施形態においては、式IIaの結晶形態は、図2に示すように、(融点よりかなり高い)約150℃以下の温度で溶媒及び/又は水の損失(<0.5%)を示すTGA線によって特徴づけられる。一実施形態においては、式IIIaの結晶形態は、図4に示すように、(融点よりかなり高い)約150℃以下の温度で溶媒及び/又は水の損失(<0.5%)を示すTGA線によって特徴づけられる。
【0103】
本発明の結晶性化合物のこれらの諸性質を以下の実施例で更に説明する。
【実施例】
【0104】
以下の調製物及び実施例は、本発明の特定の実施形態を説明するために提供する。しかし、これらの特定の実施形態は、別段の記載がない限り、本発明の範囲を決して限定するものではない。
【0105】
以下の略語は、別段の記載がない限り以下の意味を有する。本明細書で使用する未定義の任意の他の略語は、その標準的な一般に認められた意味を有する。
【0106】
AcOH 酢酸
BuNBr 臭化テトラブチルアンモニウム
DCC 1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン又は塩化メチレン
DIPEA N,N−ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
DTT 1,4−ジチオトレイトール
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
HCTU (2−(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスファート)
IPAc 酢酸イソプロピル
MeCN アセトニトリル
MeOH メタノール
MTBE メチルt−ブチルエーテル
NaOMe ナトリウムメトキシド
NBS N−ブロモスクシンイミド
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
別段の記載がない限り、試薬、出発材料、溶媒などのすべての材料を(例えば、Sigma−Aldrich、Fluka Riedel−de Haen、Strem Chemicals,Inc.などの)供給業者から購入し、更に精製せずに使用した。
【0107】
別段の記載がない限り、反応を窒素雰囲気下で実施した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィー(TLC)、分析高速液体クロマトグラフィー(分析HPLC)及び質量分析法によってモニターされた。その詳細は特定の実施例に記載されている。分析HPLCに使用した溶媒は以下のとおりである:溶媒Aは98%水/2%MeCN/1.0mL/L TFAであり、溶媒Bは90%MeCN/10%水/1.0mL/L TFAであった。
【0108】
各調製物又は実施例において具体的に記述したように反応物を調製した。一般には、反応混合物を抽出、並びに温度及び溶媒に依存した結晶化及び沈殿などの他の精製方法によって精製した。さらに、反応混合物を分取HPLCによって、典型的にはMicrosorb C18及びMicrosorb BDSカラム充填剤並びに従来の溶離剤を使用して、常法に従って精製した。反応生成物の特性分析を質量分析及びH−NMR分光測定によって常法に従って実施した。NMR測定では、試料を重水素化溶媒(CDOD、CDCl又はDMSO−d)に溶解させ、H−NMRスペクトルをVarian Gemini 2000装置(400MHz)を用いて標準観察条件下で測定した。化合物の質量分析同定を典型的にはApplied Biosystems(Foster City、CA)モデルAPI 150 EX装置又はAgilent(Palo Alto、CA)モデル1200 LC/MSD装置を用いたエレクトロスプレーイオン化法(ESMS)によって実施した。
【0109】
調製物1
5−ブロモ−2−エトキシ−3H−イミダゾール−4−カルボアルデヒド
【0110】
【化23】

2,4,5−トリブロモ−1H−イミダゾール(1a)(98.7g、324mmol、1.0当量)をDCM1.20Lに溶解させ0℃に冷却した。これにDIPEA(62mL、360mmol、1.1当量)を添加し、続いて塩化[β−(トリメチルシリル)エトキシ]メチル(60.2mL、340mmol、1.05当量)を徐々に添加した。溶液を室温に徐々に加温した。2時間後、混合物を1M HPO/NaCl飽和水溶液(1:10、2×600mL)で洗浄した。有機層をMgSOで乾燥させ、蒸発乾固させ、中間体(1b)を淡黄色液体として得た。それを静置して固化させた(137g)。
【0111】
中間体(1b)(130g、290mmol、1.0当量)を無水EtOH(650mL)に溶解させた。これにカリウムt−ブトキシド(98.6g、879mmol、3.0当量)を徐々に添加し、混合物を16時間加熱還流させた。次いで混合物を室温に冷却し、ろ過し、濃縮した。得られたオイルをEtOAc(800mL)に溶解させ、飽和NaHCO(400mL)で洗浄した。層を分離させ、有機相をNaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、濃縮して、中間体(1c)を褐色オイルとして得た(115.3g)。MS m/z:[M+H]C1120BrSiの計算値401.9 実測値401.2。
【0112】
中間体(1c)(69.5g、174mmol、1.0当量)を無水THF(600mL)に溶解させ、窒素下で−78℃に冷却した。ヘキサン中2.5M n−ブチルリチウムの溶液(72.9mL、180mmol、1.05当量)を滴下して加え、混合物を−78℃で10分間撹拌した。次いで、DMF(40mL、520mmol、3.0当量)を添加し、混合物を−78℃で15分間撹拌し、次いで室温に加温した。反応物を水(10mL)でクエンチし、EtOAc(600mL)で希釈し、水(100mL)、NaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した。回収した材料をシリカゲルクロマトグラフィー(15〜30%EtOAc:ヘキサン)によって精製して、中間体(1d)を淡黄色オイルとして得た(45g)。
【0113】
中間体(1d)(105.8g、303mmol、1.0当量)を氷中0℃で冷却した。TFA(300mL)を添加し、混合物を0℃で15分間撹拌し、次いで室温に加温した。90分後、混合物を減圧下で濃縮し、EtOAc(700mL)に再溶解させた。有機相を飽和炭酸水素塩(2×600mL)、NaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して、黄色固体を得た。材料をヘキサン(300mL)に懸濁させ、0℃で30分間撹拌した。材料をろ過し、固体を冷ヘキサン(150mL)で洗浄して、標記化合物(1)を淡白色固体として得た(61.2g)。H−NMR (CDCl) δ (ppm): 1.4 (m, 3H), 4.5 (m, 2H), 5.2 (s, 1H), 9.2 (d, 1H)。
【0114】
調製物2
4’−ブロモメチル−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル
【0115】
【化24】

0℃に冷却したDCM中1.0M DCCの溶液(800mL、800mol)に2−ブロモ安息香酸(2a)(161g、800mmol)、続いてDMAP(9.0g、740mmol)及びt−ブチルアルコール(82.4mL、880mmol)を添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、次いで室温に加温し、撹拌した。16時間後、混合物を次いでろ過した。有機相を飽和NaHCO(400mL)、NaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗製中間体(2b)をオイルとして得た(228.8g)。
【0116】
粗製中間体(2b)(109.6g、426mmol)及び3−フルオロ−4−メチルフェニル−ボロン酸(72.2g、449mmol)をイソプロピルアルコール(360mL、4.7mmol)に懸濁させた。2.0M炭酸ナトリウム水溶液(360mL、720mmol)を添加し、混合物を窒素下で脱気した。次いで、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(4.9g、4.3mmol)を添加し、混合物を90℃で46時間撹拌した。混合物を室温に冷却し、EtOAc(800mL)で希釈し、層分離させた。有機相をNaCl飽和水溶液で洗浄し、減圧下で濃縮した。回収したオイルをシリカゲルクロマトグラフィー(3×4〜6%EtOAc:ヘキサン)によって精製して、中間体(2c)を透明オイルとして得た(93.3g)。
【0117】
中間体(2c)(89.8g、314mmol、1.0当量)をCCl(620mL、6.4mol)に溶解させ、窒素下で脱気した。NBS(55.8g、314mmol)、続いて過酸化ベンゾイル(1.5g、6.3mmol)を添加し、混合物を90℃で窒素下で7時間加熱した。反応物を氷浴中で冷却し、ろ過し、減圧下で濃縮した。回収したオイルを3%EtOAc:ヘキサン150mLを用いてすりつぶした。溶液を−20℃で2時間冷却し、次いでろ過し、冷3%EtOAc:ヘキサン溶液(200mL)で洗浄して、標記化合物(2)をオフホワイト固体として得た(88.9g)。H−NMR (CDCl) δ (ppm): 1.3 (m, 9H), 4.6 (s, 2H), 7.0−7.1 (m, 2H), 7.3 (dd, 1H), 7.4 (m, 1H), 7.5 (m, 1H), 7.8 (dd, 1H)。
【0118】
(実施例1)
結晶性4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル
【0119】
【化25】

5−ブロモ−2−エトキシ−3H−イミダゾール−4−カルボアルデヒド(22.0g、100mmol、1.1当量)、4’−ブロモメチル−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル(33.0g、90mmol、1当量)及びBuNBr(1.6g、5mmol、0.05当量)をトルエン(400mL)及び1N NaOH(120mL、120mmol、1.2当量)に溶解させた。得られた混合物を27℃で48〜60時間撹拌した。トルエン層を分離させ、水(2×200mL)で洗浄し、次いで蒸留によって除去した。EtOH(350mL)を残留物に添加し、固体が溶解するまで混合物を50〜60℃に加熱した。混合物を室温に4時間にわたって冷却し、次いで4℃に冷却し、4℃で4時間撹拌した。固体をろ別し、冷EtOH(60mL)で洗浄し、室温で真空下で24時間乾燥させて、中間体(1a)を得た(約39g)。
【0120】
中間体(1a)(20.0g、40mmol、1当量)、エチルトリフルオロホウ酸カリウム(7.1g、52mmol、1.3当量)、酢酸パラジウム(II)(224mg、1mmol、0.025当量)、cataCXium(登録商標)A(ブチルジ−1−アダマンチルホスフィン;CAS#321921−71−5;538mg、1.45mmol、0.04当量)及びCsCO(45g、138mmol、3.45当量)をトルエン(240mL)と水(80mL)に溶解させた。混合物に窒素(3×)を真空下で流し、次いで90℃に16時間加熱した。次いで、混合物を室温に冷却し、層分離させた。有機層を水(2×200mL)で洗浄し、次いで減圧下で蒸留して、オイルを得た。オイルをEtOH(240mL)に溶解させた。水(80mL)を添加し、混合物を30分間撹拌した。混合物をろ過して固体を除去し、固体を75%EtOH(130mL)で洗浄し、ろ液を回収して、中間体(1b)のEtOH溶液を得た。これを次の工程に直接使用した。
【0121】
中間体(1b)のEtOH溶液(10mmol、1当量)をヒドロキシルアミン塩酸塩(27.2g、52mmol、1.3当量)及びNaHCO(35.2g、3.45当量)と混合した。混合物を40℃で24時間撹拌し、次いで室温に冷却した。沈殿物をろ別し、75%EtOH(100mL)及び50%EtOH(200mL)で洗浄し、次いで減圧下で30℃で24時間乾燥させて、中間体(1c)を得た(15g)。
【0122】
中間体(1c)(5g)をEtOH(100mL)、NHOH(28%、6mL)及びラネーニッケル(ウェット10g)と混合して、スラリーを形成した。混合物を窒素下で脱気し(3×)、水素下で脱気し(3×)、次いで水素(1atm)下で3時間撹拌した。混合物をろ過して触媒を除去し、固体をEtOH(20mL)で洗浄した。次いで、ろ液をチャーコール(charcoal)(0.5g)で処理し、再度ろ過した。次いで、ろ液を真空下で蒸留して、オイルを得た。ヘプタンを添加し(50mL)、混合物を蒸留してオイルにした(2×)。混合物を加熱し、4℃で24時間撹拌することによって、残留するオイルをヘプタン(60mL)に溶解させた。次いで、固体をろ過し、冷ヘプタン(10mL)で洗浄し、室温で24時間乾燥させて、標記化合物を結晶性材料として得た(3.8g)。
【0123】
調製物3
(S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタン酸
【0124】
【化26】

D−ロイシン(8.2g、62.7mmol)を3.0M HBr水溶液(99mL、0.3mol)に溶解させ、0℃に冷却した。水中NaNO(6.9g、100mmol)の溶液(11.3mL、627mmol)を20分間にわたり徐々に添加した。混合物を0℃で3時間撹拌し、次いでエチルエーテルで2回抽出し、水、次いでNaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、濃縮して、(R)−2−ブロモ−4−メチルペンタン酸(11.5g)をくすんだ黄色のオイルとして得た。これを次の工程に更に精製せずに使用した。
【0125】
チオ酢酸(4.2g、54.4mmol)とDMF(100mL、1.0mol)を混合し、混合物を氷浴中で冷却した。炭酸ナトリウム(5.8g、54.4mmol)を添加した。30分後、(R)−2−ブロモ−4−メチルペンタン酸(10.1g、51.8mmol)のDMF(20mL)溶液を滴下して加え、混合物を0℃から室温まで6時間にわたって撹拌した。混合物をEtOAc100mLで希釈し、100mLの1:1 1N HCl:NaCl飽和水溶液で抽出した。層分離させ、水相を追加のEtOAc(100mL)で抽出した。有機相を混合し、NaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。回収したオイルをジイソプロピルエーテル(45mL、320mmol)に溶解させ、0℃で冷却した。ジシクロヘキシルアミン(10.1mL、50.7mmol)を滴下して加え、固体を溶液から析出させた。更に30分間撹拌後、その材料をろ過し、冷ジイソプロピルエーテル75mLで洗浄した。回収した固体(14g)をEtOAc100mLに懸濁させた。5%KHSO 150mLを添加し、層分離させた。有機相をNaCl飽和水溶液で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮した。次いで、回収したオイルを共沸させて(3×25mLトルエン)、標記化合物(6.1g)をジシクロヘキシルアミン塩として得た。
【0126】
(実施例2)
結晶性4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸
【0127】
【化27】

結晶性4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル(ジシクロヘキシルアミン塩;18g、40mmol、1当量)、(S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタン酸(18g、48mmol、1.2当量)及びHCTU(19g、48mmol、1.2当量)をあらかじめ冷却した容器中で混合し(0℃10分間)、冷DCM(240mL)を添加した。混合物を1±2℃で5〜15時間撹拌した。4%NaHCO(200mL)を添加し、混合物を15分間撹拌した。DCM層を分離させ、蒸留して約100mLにした。IPAc(150mL)を添加し、蒸留して150mLにした。追加のIPAc(200mL)を添加し、混合物を4%NaHCO(2×200mL)及び水(200mL)で洗浄した。溶液を15%NHCl(300mL)と一緒に15分間撹拌し、pHを1N HClで5.5に調節し、次いで1時間撹拌した。固体をろ別した。ろ液をIPAc(50mL)で洗浄し、IPAc層を分離させた。IPAc層を15%NHCl(200mL)と一緒に3時間撹拌し、すべての固体をろ別した。ろ液をNaCl飽和水溶液(150mL)で洗浄し、真空下で蒸留して約60mLにした。DCM(50mL)を添加し、蒸留除去した。DCM(200mL)を添加し、混合物を0〜5℃に冷却した。TFA(70mL)を15℃以下で徐々に添加し(わずかに発熱)、混合物を20℃で16時間撹拌した。混合物を約150mlに濃縮し、IPAc(150mL)を添加した。混合物を蒸留して約150mLにした。追加のIPAc(150mL)を添加し、再度蒸留して約150mLにした。IPAc(200mL)を添加し、得られた溶液を予冷された水(250mL)中のKCO(52g)に10℃以下で15分間にわたり徐々に添加した(少し発熱、クエンチ中pH>7必ず(must)>6)。相関移動(transfer)中にpHをモニターし、pHが6以下に低下したときに追加の塩基(8g)を添加した。IPAc層を分離させ、NaCl飽和水溶液(150mL)で洗浄した。IPAc溶液を蒸留して約50mLにした。MTBE(100mL)を添加し、混合物を蒸留して約50mLにした。追加のMTBE(100mL)を添加し、混合物を室温で3時間撹拌し、スラリーを形成させ、次いでそれを4℃で16時間撹拌した。固体をろ別し、MTBE/ジイソプロピルエーテル(1:1、100mL)で洗浄した。次いで、固体を室温で60時間窒素下で乾燥させて、標記化合物を結晶性材料として得た(18.2g)。
【0128】
(実施例3)
結晶性4’−{2−エトキシ−4−エチル−5−[((S)−2−メルカプト−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]イミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸
【0129】
【化28】

結晶性4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸(2.3g、4mmol、1当量)及びDTT(62mg、0.4mmol、0.1当量)をMeOH(30mL)に溶解させた。得られた溶液を窒素で脱気し(3回)、0℃で冷却した。NaOMe(MeOH中25%、1.7mL)を添加し、混合物を0℃で30分間撹拌した。AcOH(3g、50mmol、4当量)を0℃で添加して、反応をクエンチした。混合物を20℃に加温した。脱イオン水(10mL)を徐々に添加した。混合物を20℃で3時間撹拌し、次いで沈殿物が形成されるまで4℃で1時間撹拌した。固体をろ過し、MeOH/HO(2:1、30mL)で洗浄し、次いで窒素下で20℃で48時間乾燥させて、標記結晶性化合物を得た(1.2g)。
【0130】
(実施例4)
粉末X線回折
粉末X線回折パターンをRigaku Miniflex PXRD回折計を使用してCu Kα(30.0kV、15.0mA)照射により得た。角度計を使用して2°(2θ)/分の連続走査モードでステップサイズ0.03°で2θ角2°から40°の範囲で運転して分析を実施した。試料を石英試料ホルダー上で粉末材料の薄層として調製した。ケイ素金属標準を用い、±0.02°以内の2θ角に機器を較正した。
【0131】
実施例1の結晶性化合物の試料の代表的PXRDパターンを図1に示す。実施例2の結晶性化合物の試料の代表的PXRDパターンを図3に示す。図1及び3に示された多数の強い粉末回折ピーク及び比較的平坦なベースラインは、式IIa及びIIIaの結晶性化合物が良好な結晶性を有することを明確に示していた。
【0132】
(実施例5)
熱分析
Thermal Analyst制御装置を備えたTA Instruments Model Q−100モジュールを使用して示差走査熱量測定(DSC)を実施した。データを収集し、TA Instruments Thermal Solutionsソフトウェアを使用して分析した。実施例1の結晶性化合物の試料2.05mgをふた付きアルミニウムパン内に正確に秤量した。22℃で5分間の等温平衡期間後、試料を10℃/分の線形加熱勾配で22℃から250℃に加熱した。代表的なDSCサーモグラフを図2に示す。
【0133】
DSCサーモグラフは、この結晶性化合物が、融点約76.0℃であり、150.0℃以下で熱分解しない、優れた熱安定性を有することを実証している。この複雑でない熱プロファイルは、76.0℃の融解吸熱前に望ましくない吸熱ピークや発熱ピークを示さず、このことは、この結晶性固体が無水結晶形態である可能性が最も高いことを示唆している。
【0134】
代表的なTGA線を図2に示す。これは、実施例1の結晶性化合物の試料が室温から150.0℃までに少し(<0.5%)減量し、残留する水分又は溶媒の損失と一致することを示している。
【0135】
実施例2の結晶性化合物の試料1.12mgも同様に評価した。代表的なDSCサーモグラフを図4に示す。DSCサーモグラフは、この結晶性化合物が、融点約130.9℃であり、150.0℃以下で熱分解しない、優れた熱安定性を有することを実証している。この複雑でない熱プロファイルは、130.9℃での融解吸熱前に望ましくない吸熱ピークや発熱ピークを示さず、この結晶性固体が無水結晶形態である可能性が最も高いことを示唆している。
【0136】
代表的なTGA線を図4に示す。図4は、実施例1の結晶性化合物の試料が室温から150.0℃までに少し(<0.5%)減量し、それが、残留する水分又は溶媒の損失と一致することを示している。
【0137】
本発明をその特定の態様又は実施形態に関連して記述したが、当業者は、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、種々の変更が可能であり、等価物で置換できることが理解されるであろう。さらに、適用可能な特許法及び規則によって許容される程度に、本明細書で引用するすべての刊行物、特許及び特許出願は、各文書があたかも個々に参照により本明細書に援用されるのと同じ程度に参照によりその全体が援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物を調製する方法であって、
【化29】

式中、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Pはカルボン酸保護基であり、該方法が、式1の化合物
【化30】

を式2の化合物
【化31】

と、有機希釈剤および塩基性水性希釈剤中で相間移動触媒の存在下で反応させて、式Iの化合物を形成する工程を含み、該両希釈剤が実質的に非混和性である、方法。
【請求項2】
前記有機希釈剤がトルエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性水性希釈剤がNaOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記相間移動触媒が臭化テトラブチルアンモニウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
結晶形態の前記式Iの化合物を調製する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式IIの化合物又はその塩を調製する方法であって、
【化32】

式中、Rは−C1〜6アルキルであり、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Pはカルボン酸保護基であり、該方法が、
(a)式Iの化合物
【化33】

をC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬と、パラジウム−ホスフィン触媒の存在下で反応させて、式3の化合物を形成する工程、
【化34】

(b)該式3の化合物をヒドロキシルアミン又はその塩と反応させて式4の化合物を形成する工程、
【化35】

及び
(c)該式4の化合物を還元剤と反応させて、式IIの化合物又はその塩を形成する工程
を含む、方法。
【請求項7】
前記パラジウム−ホスフィン触媒がパラジウム触媒とホスフィン源の組合わせ物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記パラジウム触媒が酢酸パラジウム(II)であり、前記ホスフィン源がジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記還元剤が水素/ラネーニッケル又はPd/Cである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
結晶形態の前記式IIの化合物を調製する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
式IIIの化合物又はその塩を調製する方法であって、
【化36】

式中、Rは−C1〜6アルキルであり、Rは−O−C1〜5アルキルであり、Rは−C1〜6アルキル、−C0〜3アルキレンアリール、−C0〜3アルキレンヘテロアリール又は−C0〜3アルキレン−C3〜7シクロアルキルであり、Rは−C1〜6アルキル、−C0〜6アルキレン−C3〜7シクロアルキル、−C0〜6アルキレンアリール又は−C0〜6アルキレンモルホリンであり、該方法が、
(a)式Iの化合物
【化37】

をC1〜6アルキル−トリフルオロホウ酸カリウム試薬と、パラジウム−ホスフィン触媒の存在下で反応させて式3の化合物
【化38】

(式中、Pはカルボン酸保護基である)を形成する工程、
(b)該式3の化合物をヒドロキシルアミン又はその塩と反応させて式4の化合物を形成する工程、
【化39】

(c)該式4の化合物を還元剤と反応させて、式IIの化合物又はその塩を形成する工程、
【化40】

(d)該式IIの化合物又はその塩を式5の化合物
【化41】

又はその塩と、アミン−カルボン酸カップリング試薬の存在下で反応させて式6の化合物
【化42】

又はその塩を形成する工程、及び
(e)該カルボン酸保護基Pを該式6の化合物又はその塩から除去して、式IIIの化合物又はその塩を形成する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記工程(a)のパラジウム−ホスフィン触媒がパラジウム触媒とホスフィン源の組合わせ物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パラジウム触媒が酢酸パラジウム(II)であり、前記ホスフィン源がジ(1−アダマンチル)−n−ブチルホスフィンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(c)の還元剤が水素/ラネーニッケルである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
結晶形態の前記式IIIの化合物を調製する工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
が−C1〜6アルキルであり、Rが−O−C1〜5アルキルであり、Pがカルボン酸保護基である、式3の化合物。
【化43】

【請求項17】
が−C1〜6アルキルであり、Rが−O−C1〜5アルキルであり、Pがカルボン酸保護基である、式4の化合物。
【化44】

【請求項18】
5.24±0.2、10.43±0.2、15.65±0.2、20.63±0.2及び31.91±0.2の2θ値における回折ピークを含む粉末x線回折パターンによって特徴づけられる、結晶性4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステル。
【請求項19】
前記化合物が、さらに、12.74±0.2、14.90±0.2、18.20±0.2、21.71±0.2、23.03±0.2、23.96±0.2及び24.86±0.2から選択される2θ値において1個以上の追加の回折ピークを含むことによって特徴づけられる、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
前記化合物が、該化合物の粉末x線回折パターンのピーク位置が図1に示す粉末x線回折パターンのピーク位置と実質的に一致する粉末x線回折パターンによって特徴づけられる、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
前記化合物が、約76.0℃の融点を有する示差走査熱量測定線によって特徴づけられる、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
前記化合物が、図2に示す示差走査熱量測定線と実質的に一致する示差走査熱量測定線によって特徴づけられる、請求項18に記載の化合物。
【請求項23】
請求項18に記載の結晶性化合物を調製する方法であって、
a)4’−(5−アミノメチル−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル)−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸t−ブチルエステルをヘプタンで処理して、完全に溶解させる工程、
b)冷却して結晶化を達成する工程、及び
c)得られた固体を単離して、請求項18に記載の結晶性化合物を得る工程
を含む、方法。
【請求項24】
5.24±0.2、7.16±0.2、13.68±0.2及び15.98±0.2の2θ値に回折ピークを含む粉末x線回折パターンによって特徴づけられる、結晶性4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸。
【請求項25】
前記化合物が、さらに、8.10±0.2、11.26±0.2、12.06±0.2、16.62±0.2、20.12±0.2、20.78±0.2、23.24±0.2及び26.28±0.2から選択される2θ値に1個以上の追加の回折ピークを含むことによって特徴づけられる、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
前記化合物が、該化合物の粉末x線回折パターンのピーク位置が図3に示す粉末x線回折パターンのピーク位置と実質的に一致する粉末x線回折パターンによって特徴づけられる、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
前記化合物が、約130.9℃の融点を有する示差走査熱量測定線によって特徴づけられる、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
前記化合物が、図4に示す示差走査熱量測定線と実質的に一致する示差走査熱量測定線によって特徴づけられる、請求項24に記載の化合物。
【請求項29】
請求項24に記載の結晶性化合物を調製する方法であって、
a)4’−{5−[((S)−2−アセチルスルファニル−4−メチルペンタノイルアミノ)メチル]−2−エトキシ−4−エチルイミダゾール−1−イルメチル}−3’−フルオロビフェニル−2−カルボン酸を酢酸イソプロピルで処理して、完全に溶解させる工程、
b)冷却して結晶化を達成する工程、及び
c)得られた固体を単離して、請求項24に記載の結晶性化合物を得る工程
を含む、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−505961(P2013−505961A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531107(P2012−531107)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/050481
【国際公開番号】WO2011/041284
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(500154711)セラヴァンス, インコーポレーテッド (129)
【Fターム(参考)】