ビームホモジェナイザ
【課題】ビームの不均一性を補正してビームの強度エネルギを最大限に活用して均一な光強度分布を実現する。
【解決手段】この光学システムは、入力ビーム14を変換して得られた出力ビームを、一定の標的面積を有するマスクを介して、ウェーハ上に照射するホモジェナイザ10を備え、ホモジェナイザは、複数のファセット領域からなるホログラムを有し、各ファセット領域12は、不規則なパターン形状を有する複数の回折フリンジから構成され、各回折フリンジで形成されるファセット領域の全体的なパターン形状が各ファセット領域において互いに異なり、各ファセット領域のそれぞれの回折フリンジのパターン形状は、出力ビームがマスクの一定の標的面積上に連続的な強度分布で照射され、マスクにより遮られない出力ビームがウェーハに均一な強度分布で照射されるように構成されている。
【解決手段】この光学システムは、入力ビーム14を変換して得られた出力ビームを、一定の標的面積を有するマスクを介して、ウェーハ上に照射するホモジェナイザ10を備え、ホモジェナイザは、複数のファセット領域からなるホログラムを有し、各ファセット領域12は、不規則なパターン形状を有する複数の回折フリンジから構成され、各回折フリンジで形成されるファセット領域の全体的なパターン形状が各ファセット領域において互いに異なり、各ファセット領域のそれぞれの回折フリンジのパターン形状は、出力ビームがマスクの一定の標的面積上に連続的な強度分布で照射され、マスクにより遮られない出力ビームがウェーハに均一な強度分布で照射されるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光学装置に関し、とりわけ、ファセット間における境界が明確な不連続部(特異的な不連続部:sharp breaks)に起因する出力平面における好ましくない強度変動を最小限に抑えつつ、予定されたパワー分布および/またはエネルギ分布(光強度分布:a preselected distribution of power and/or energy)を有する出力ビームを形成するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
仏国公開特許公報第2,716,726号に示されているように、レーザ装置により、一般には、断面領域の比較的小さい波面を有する可干渉なビームが形成される。ビームは、小さい断面領域および可干渉性を有するものの、レーザの波面は通常、その強度が周縁部より中心部の方が強い、不均一なパワー分布(光強度分布:power distribution)を有する。その光強度は5〜10%の間で変動することがある。さらにビームを利用するために、ビームの断面領域を大きくする必要がしばしばあり、このとき光強度の不均一性(変動)がより大きい波面において拡散することになる。
【0003】
従来式のレンズを用いてビームを拡大すると、波面の不均一な光強度分布は、そのまま拡大されたビームに反映される。加えて、波面がより大きい断面領域に拡大されるので、ビームの不均一性はさらに顕著となる。ビームを利用したシステムが動作する場合、この不均一性は、しばしば有害となる。なぜなら、ある程度の平均レベルにあるビームの強度に見合うようにこのシステムを設計しなければならないからで、さもなければ別の手法として、おそらく窓を介して強度の弱い周縁部のビームを除去することになる。上記のいずれの場合であっても、ビームの強度エネルギを最大限に活用することはできず、しかも従来式のレンズシステムを用いて、しばしば好適とされるプラス・マイナス1%の変動範囲にある均一な光強度分布を実現することは困難である。
【0004】
従来式のバルク光学部品として機能するように、ホログラム部品は開発されてきた。こうした場合、ホログラム部品は、その方向および空間的周期に関して、入力波面を所望する出力の位置パターン、形状または画像に回折する目的のためには当を得たものである。しかしながら、基本的なレンズとして機能するように設計された以上、これらのホログラム部品もまた、出力パターン、形状、または画像に不均一な光強度分布をもたらすことになり、光源のパワーを効率的に利用しているとはいえない。
【0005】
不均一な光強度分布を有する波面をいかに補償するかの問題について、米国特許第4,547,037号が取り上げている。この特許では、入力ビームの光エネルギを2次平面上に再分配する多数のファセットを有するホログラム部品が開示されている。これは、各ファセットを独立したホログラムまたは回折格子として構成することにより実現している。実質的に同一強度のビームが各ファセットを通過すると仮定して、各ファセットは、各々に入射するビームの部分的な強度に反比例するような大きさを有している。各ファセットを通過する光は、回折されて、ホログラム部品における各々の位置に対応する別の2次平面上に到達する。サブホログラムまたは回折格子は、通過する入力ビームの各部分を拡大したり縮小したりして、均一に、しかし2次平面の異なる領域を照射して、2次平面において強度がほぼ一定の波面を有する出力ビームを形成することができる。
【0006】
’037特許の技術を採用した装置が有する問題点は、ホログラム表面上に入射するビームの光強度分布が設計パラメータで変動する場合、2次平面における出力ビームも同様に影響を受け、もはや均一なものでなくなる。光学システムにおいて、入力ビームの光強度分布がこのように変動する原因は数多くある。例えば、部品の寿命または単に間違って光源を交換したことにより、光強度が変動する。さらに、衝撃や寿命により系の光軸ずれが生じた場合にも、不均一な光強度分布を有する出力波面が形成される。
【0007】
空間による光強度分布(ビームの空間的位置に応じて変動する光強度分布:spatial energy distribution)が不均一な波面を有する光入力ビームを、空間による光強度分布が実質的に均一な出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、しかも入力ビームの位置および入力ビーム内における空間による光強度分布の変動にあまり影響されないものでなければならない。
【0008】
さらに、空間による光強度分布が不均一な波面を有する光入力ビームを、予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、このときファセット間の一般の特異的な不連続部に起因する出力平面上の強度の変動を最小限に抑えるために、ファセット間に一般の特異的な不連続部のないホログラムを用いる。
さらに、任意の波面を有する入力光ビームを、予定された振幅、分散角度を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、このとき出力ビームはフォトリソグラフィ工程で有用となる。フォトリソグラフ露光システムは、ウェーハ上にレジストまたはフォトレジストを予定されたパターンで露光する目的で、マスクのパターン形成するために用いられる。後に続くウェーハ処理により、例えば集積回路のような所望されるデバイスを最終的に形成される。
【0009】
このマスクが、例えば5対1または10対1の縮小率を有するレーザステッパなどのような投射リソグラフィシステムで用いられる場合、マスクはしばしばレティクルと呼ばれる。レティクルまたはマスクは一般に、透明基板上のクロム領域により形成される。マスクのクロム領域は、入射光を遮るので、光の強度変化としてマスクパターンを焼き付ける。5対1のレーザステッパでは、レティクルのパターンは、ウェーハ上に画像形成する際、1/5の倍率で縮小される。通常、この応用例では、回折部から照射されるビームは、比較的に均一で、かなり狭小な分散円錐角度を有し、その空間による光強度分布および角度による光強度分布(ビームの角度により変動する光強度分布:angular energy distribution)が限定されたものとなる。
【0010】
マスクおよびレティクルによりウェーハ上の光の強度を制御するとき、ウェーハ上の光の角度分布を制御する部品が必要である。ウェーハを照射する光の特定の角度分布を調節することにより、フォトリソグラフ露光システムの被写界深度および解像度を拡大することができる。この部品は理想的には、高価でなく、しかも入力ビームの位置の変動、および入力ビームの空間エネルギの変動に対してあまり影響を受けないものである。
【0011】
さらに、空間による光強度分布(空間光強度分布)が非均一な波面を含む入力光ビームを、予定された空間光強度分布を有する出力ビーム、すなわち予定されたビーム形状を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、しかも入力ビームの位置および入力ビーム内における空間光強度分布の変動に対してあまり影響されないものでなければならない。加えて、非均一な空間光強度分布を有する波面を含む入力光ビームを、例えば、空間光強度分布、予定されたビーム形状、または予定された角度による光強度分布(角度光強度分布)などの予定された特徴を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、しかも入力ビームの位置および入力ビーム内における空間による光強度分布の変動にあまり影響されないものでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国公開特許公報第2,716,726号明細書
【特許文献2】米国特許第4,547,037号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明は、空間による光強度分布が均一でない入力ビームを、空間光強度分布が予定された出力ビームに変換するビームホモジェナイザである。入力ビームが、ファセットのアレイとして形成されるビームホモジェナイザに入射し、各ファセットは、各ファセットに入射する入力ビームのすべての部分をビームホモジェナイザから離れた出力平面に伝播させるように構成されており、その結果、各ファセットを介して伝播する光は重なり合って、空間による光強度分布が実質的に均一な出力ビームを形成する。
【0014】
加えて本発明は、ファセット間の不連続部の境界が際立っていることに起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。不規則的にパターン形成された回折フリンジからなるホログラムの少なくとも一部に、入力ビームが照射される。その部分がビームの一部分を出力平面上に伝播させ、その結果、入力ビームのエネルギが出力平面において再分割されて、出力平面の照射された部分は予定された形状および予定された振幅を有するように、出力平面において予定された空間光強度分布を有するホモジェナイズされた出力ビームを形成する。
【0015】
さらにこの発明は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームを、出力平面において予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部が際立っていることに起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。ファセット領域は、不規則的にパターン形成された回折フリンジを有する。このファセット領域は、出力平面の標的において次のようなビームを伝播させる。照射されたファセット領域の各々を介して伝播する一部の入力ビームの大部分が、少なくとも他のもうひとつの照射されたファセット領域を介した入力ビームの部分と重なり合い、この結果、入力ビームのエネルギが、出力平面において空間的に再分布されて、出力平面において予定された空間光強度分布を有するホモジェナイズした出力ビームとなるようにする。ファセット領域のアレイがコンピュータで形成されたホログラムであって、このホログラムは、入射する入力ビームの位置の変動、および入力ビーム内の空間光強度分布に関して比較的に影響を受けにくいものである。このホモジェナイザは、照射された一部の入力ビームを予定された分散角度で伝播させ、出力平面において所望される予定された空間光強度分布に相当する標的領域を照射する。
【0016】
さらに本発明は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームを出力平面においては均一な空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、サブホログラム間の不連続部に起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。入力ビームは、コンピュータで形成されたサブホログラムのアレイの少なくともいくつかを照射し、そのサブホログラムの大きさは、サブホログラムに入射する一部の入力ビームの強度とは無関係に決定され、入射する入力ビームの位置の変動に関して影響を受けにくい。各サブホログラムが、各々に入射する一部の入力ビームの大部分を回折し、2次平面に配置される標的において、サブホログラムの各々で回折された一部の入力が、少なくとも他のもうひとつの照射されたコンピュータで形成されたサブホログラムによって回折された部分と重なり合って出力ビームを形成する。出力ビームの強度が、標的全体において実質的に均等となる。出力ビームが予定された分散角度、および出力平面において所望される予定された空間光強度分布に相当する標的を有する。
【0017】
さらに本発明は、1次平面において任意の空間光強度分布を有する入力ビームを、2次平面において予定された空間光強度分布を有する出力ビームにホモジェナイズして、サブホログラム間の不連続部に起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化する方法である。その方法とは、不規則にパターン形成された回折フリンジを有する、コピュータで形成されたサブホログラムのアレイからなるホログラム光学部品を提供するステップと、入力ビームが、サブホログラムの少なくともいくつかを照射するように、第1平面に部品を固定するステップと、この照射されたサブホログラムの各々が、各々に入射する一部の入力ビームを、2次平面における標的全体に亙って拡大的に回折し、照射されたサブホログラムのすべての回折部分を重ね合わせ、2次平面における出力ビームを形成するステップと、を備える。このとき、ホログラム光学部品を提供するステップが、入射する一部の入力ビームの位置、および入力ビーム内の空間光強度分布の変動に関して比較的影響を受けにくいサブホログラムのアレイを形成するステップを含んでいる。本発明では、照射されたサブホログラムの各々が、各々に入射する一部の入力ビームを予定された分散角度で拡大的に回折し、出力平面において所望される予定された空間光強度分布を形成する。
さらに本発明は、任意の空間光強度分布を有する入力ビームを、ホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、サブホログラム間の不連続部に起因する強度変動を最小化するビームホモジェナイザシステムである。サブホログラムのアレイは、各サブホログラムが不規則的に形成された回折フリンジを有し、いくつかのサブホログラムにより回折された入力ビームの部分が出力平面において重なり合うように、反復エンコード法を用いて設計される。この結果、出力ビームは、入射する入力ビームの位置の変動、および入力ビーム内の空間光強度分布に関して比較的に影響を受けにくい、予定された空間光強度分布を有する。各サブホログラムは、予定された分散角度を有するビームを伝播させる。出力ビームは、出力平面において予定された空間光強度分布を有する。
【0018】
さらに本発明は、任意の空間光強度分布および特定の角度光強度分布を有する入力ビームを、予定された角度光強度分布を有する出力ビームに変換し、サブホログラム間の不連続部に起因する強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。このホモジェナイザはサブホログラムのアレイを有し、その各サブホログラムは、不規則的に形成された回折フリンジを有し、位相転位させる画素を含み、少なくとも2つのサブホログラムにより回折された光は、出力平面において重なり合って出力ビームを形成する。このとき、出力ビームは、ホモジェナイザに入射する入力ビームの位置の変動、および入力ビーム内の空間光強度分布に関して比較的に影響を受けにくい、予定された角度空間光強度分布を有する。出力ビームは、予定された空間光強度分布および/または角度光強度分布を有する。
【0019】
さらに本発明は、非均一な空間分布を有する入力ビームをより均一な分布を有する出力ビームに変換するビームホモジェナイザである。本発明のコンピュータ形成されたホログラムは、位相伝播パターンを有する。この位相伝播パターンのフーリエ変換が、予定された角度領域に亙って均一となる。このパターンが1つ以上の2次元位相部品から構成される。
【0020】
さらに本発明は、光の非可干渉、または一部可干渉ビームの分散角度を変更するための光学システムである。回折分散部品が、円錐角度内で伝播する入力ビームを予定された角度の範囲で回折する。この度は、入力ビームの円錐角度および分散部品のフーリエ変換により決定される。
【0021】
さらに本発明は、フォトリソグラフ光学システムである。入力ビームは、回折分散部品を照射する。回折分散部品は、予定された角度分布を有する出力ビームの部品が伝播させることによりマスクを照射する。
【0022】
本発明の目的は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームを、出力平面においては均一な空間光強度分布を有する出力ビームに変換することにある。
【0023】
別の本発明の目的は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部に起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化することにある。
【0024】
さらに別の本発明の目的は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換することにある。
【0025】
本発明の特徴は、ファセットのアレイを有するホモジェナイザに入射する、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームの、各ファセットを介して伝播する一部の入射ビームが、出力平面において重なり合うようにして標的全体に画像形成することにより、入力光学ビームをホモジェナイズし、出力平面では実質的に均一な光強度分布を有する出力ビームを形成することにある。別の本発明の特徴は、このホモジェナイザがホログラムであって、各ファセットがサブホログラムであることである。さらに別の本発明の特徴は、出力平面におけるファセットを伝播する光の間で生じる干渉効果を最小化することにある。
【0026】
本発明の特徴は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部に起因する、不要な強度変動を最小化することにある。本発明の別の特徴は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された形状を有し、予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換することにある。
【0027】
本発明の利点は、このホモジェナイザがコンピュータ形成技術により開発できること、比較的に安価に製造できることにある。本発明の別の利点は、このホモジェナイザが入射ビームの光強度密度の変動に対して相対的に影響されにくいことにある。さらに別の本発明の利点は、出力ビームの強度が、ホモジェナイザに入射する入力ビームの位置に影響を受けにくいことにある。
【0028】
さらに本発明の利点は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部に起因する、不要な強度変動を最小化できることにある。さらに本発明の別の利点は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては任意の予定された形状、および予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換することができることにある。
【0029】
さらに本発明の別の利点は、任意の空間光強度分布および特定の角度光強度分布を有する入力ビームを、ホモジェナイザから離れた出力平面においては任意の予定された角度光強度分布を有する出力ビームに変換することができることにある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、関連技術である仏国公開特許公報第2,716,726号のホモジェナイザに入射するビームの空間光強度分布を示し、ホモジェナイザを介して伝播する一部分の入力ビームが、どのように出力平面において構成されて、実質的に均一な光強度分布を有する出力ビームを形成するかを示す。
【図2】図2は、ホモジェナイザに入射する一般的なエキシマレーザである入力ビームの空間光強度分布と、結果として生じる出力ビームを示す。
【図3】図3は、ホモジェナイザに入射する一般的なネオジウムYAGレーザである入力ビームの空間光強度分布と、結果として生じる出力ビームを示す。
【図4】図4は、本発明のホモジェナイザに入射するビームの空間光強度分布を示し、ホモジェナイザのプラトー(plateau)およびバレイがどのように不規則にパターン形成されているか、およびホモジェナイザを介して伝播する入力ビームの一部分がどのように構成されて、出力平面において実質的に安定した光強度分布を有し、予定された円形の光強度分布形状を有する出力ビームが形成されるかを示す。
【図5A】図5Aは、多数ファセットを有するホログラム、およびファセット間における特異的な不連続部を示す。
【図5B】図5Bは、図5Aで示すホログラムの拡大図であって、例えば特異的な不連続部がかなり詳細に示されている。
【図6】図6は、ビームが予定された分散角度20°でファセット領域から出力平面に伝播される様子を示す。
【図7】図7は、図4で示すホログラムの拡大図であって、不規則にパターン形成されたプラトーおよびバレイを示し、任意の大きさを有する4×4行列のファセット領域を示し、ファセットに形成されたパターンは反復的なものではなく、またファセット境界においては不連続的ではないことを示す。
【図8】図8は、円形の標的パターン、つまり空間光強度が出力平面において円内に分布し、円の周囲には相対的に分布が存在しないような予定された光強度分布パターンを示す。
【図9】図9は、ドーナッツ形状の標的パターン、つまり空間光強度が出力平面において、円形の相対的な非照射領域がリング状の照射領域の周囲にあり、続いて円形の相対的な非照射領域がこれに隣接するような予定された光強度分布パターンを示す。
【図10】図10は、フォトリソグラフシステムで利用される場合の本発明の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
仏国公開特許公報第2,716,726号の構成を図1で示す。光ビームが、ファセット12のアレイ11を有するホモジェナイザ10に入射する。これらファセット12の各々に入射する入力光ビーム14のすべての部分が、出力平面18における標的16の全体に均一に照射するように、各ファセット12は構成されている。各ファセット12を介して伝播する入力ビームの一部分は(20aおよび20bで図示する)、標的16において重なり合うので、入力光ビームが混合し、その結果、各ファセット12を通過した入力ビーム14の一部の出力をホモジェナイズする(出力光ビームの強度を均一にする)。このホモジェナイゼーション(光強度の均一化)により、標的16において入力ビーム14を均一に混合することが担保され、出力ビーム22が、出力平面18において均一な光強度分布24を有することになる。光強度の均一化処理により、非効率性による多少の損失が生じるが、入力ビーム14の光強度が平均化される。
【0032】
入力光ビーム14は、レーザのような光源(図示せず)から出射されるが、好適にはコリメートされ、入力ビームの空間光強度分布は、図1ないし3で示すように、さまざまな形態を取り得る。入力光ビーム14は、光源からホモジェナイザ10に伝播し、レンズおよび鏡のような従来式のバルク光学部品、あるいは従来式の光学部品と同じ結果をもたらすホログラム部品を用いて、入力光ビーム14はコリメートされる。入力ビーム14は一般に、断面領域において強度が相当に変動し得る光強度分布26を有している。いくつかの光源では、強度分布26が5〜10%の範囲で変動し得る。加えて、光源が古くなったり、光源を駆動する電源がふらつくと、やはり入力ビーム14の光強度分布26が変動する。ビームホモジェナイザ10は、入力光ビーム14を混合するように構成されているので、入力ビーム14の光強度分布26の変動に関係なく、しかも入力ビーム14がアレイ11の入射する部分の位置の多少の変動によらず、出力ビーム22は、出力平面18での標的16において本質的に均一な光強度分布24を有する。標的16における光強度分布24は、入射信号14の光強度26を平均化したものというより、各ファセット12に対する光強度を平均的に分布させたものである。
【0033】
この実施の形態におけるビームホモジェナイザ10は、ホログラム部品であり、ファセット12はサブホログラムであって、同じ大きさのサブホログラムからなるM×N直線行列として図示されている。サブホログラムが異なる大きさを有していてもよいことが予想される。これらサブホログラム12は、各サブホログラムに入射する入力光ビーム14の各部分を、出力平面18における標的16の全体の上に回折するように構成されている。これらサブホログラム12の各々は、入力ビーム14の一部分を標的16全体の上に照射するための個別の回折格子である。フリンジまたは画素の数によるが、特に以下に説明する実施例は、サブホログラム12のために1mmあたり80本近くのライン(80行/mm)を有する。明確にするためにこのラインを図示することを割愛した。さらに、ホモジェナイザ10は、4×4行列アレイ11として図示されているが、現実には下記するように、ホモジェナイザを形成するために、より数多くのサブホログラム12またはファセットを有していてもよい。
【0034】
ホログラムを作製する1つの方法は、可干渉な光ビームの中で写真プレート上に干渉パターンを形成し、このプレートを現像する方法がある。ホログラムによる干渉は、干渉フリンジを構成する内的構造物を含むので、大量生産が困難となる。
【0035】
ホログラムによる干渉に関連する生産上の問題を克服するために、コンピュータ形成ホログラム(以下CGHという)が開発されてきた。CGHを用いて、所望するホログラムパターンを計算し、所与の構成条件に基づいて、パターンまたは再構成された波面から逆に数学的に処理して、特定の所望するホログラムを得る。高機能コンピュータの利点を用いて、繰り返し反復してCGHエンコードする方法が開発され、これにより他の数学的技法を用いて開発されたホログラムよりも相当に高機能なCGHを開発することができる。
【0036】
CGHは、本質的に表面凸版印刷であって、フォトリソグラフ工程、エッチング工程、電子線照射工程、またはその他の工程により形成される。電子線技術によれば、光フィルムに近い解像度が得られるが、振幅および位相の量子化レベルは相当に粗い。フォトリソグラフ処理すると、数多くのレベルにあるホログラムを提供することができる。しかし、層間のアライメント誤差は、層数に伴って増加する。
【0037】
本発明と、米国特許第4,547,037号の発明とが大きく異なるところは、後者においては、各ファセットを照射する光が出力平面において異なる位置を照射する点である。一方、本発明においては、多くのファセットからの光が出力平面上で重なり合うのである。このような特徴の利点については先に述べたが、この特徴の問題点は、その問題点を特に回避するように設計しなければ、出力平面において、いくつかのファセットからの光が重なり合うところで、レーザ強度の形態において大きな変動の原因ともなり得る可干渉効果による干渉パターンが形成され得る点にある。例えば、サブホログラムが別々に設計され、各サブホログラムの大きさがレーザ光源の空間的可干渉幅よりも小さい場合、可干渉効果により、いくつかのファセットからの光が重なり合うところで、かなりの明暗パターンが生じる可能性がある。
【0038】
反復個別軸上(IDO)エンコード法といった反復的なエンコード方法を用いてサブホログラムを設計することにより、この問題を抑制することができる。この問題は、同一発明者であるフェルドマンらによる「スポットアレイを形成するための高効率ホログラムの反復エンコード法」(Optics Letters, Vol.14, pp. 479-81)と題した刊行物により詳細に説明されており、その開示内容は、一体のものとしてここに統合される。その開示内容を要約すると、ホログラムを長方形セルの2次元アレイに分割し、許容できる画像が得られるまで、各セルの透過係数を選択し最適化する。最適化過程において、異なるファセット間の干渉効果を含めて、画像をモニタする。各セルの透過係数は、各ファセットから照射される光を出力平面の大部分(あるいは全体部分)に照射するように分散するためだけでなく、ファセット中における干渉効果を最小化するように選択する。軸上エンコード法によれば、ホログラムが機能するのにキャリア波面を必要としないので、これらのホログラムは、キャリア波面を必要とする軸外方法よりもはるかに高い回折効果を有するCGHを形成することができる。その理由は、利用可能なスペース・バンド幅・製品(SBP)、またはCGHに含まれる情報に対して実際上の上限を有するためで、これらは所望する画像をエンコードするのに利用できる。搬送波面のために情報が必要でない場合、所望する画像に関するより多くの情報が必要となるかもしれない。同様に、「半径方向に対称なホログラムおよびその製造方法」と題する米国特許第5,202,775号に開示されたエンコード方法を用いることが望ましく、この開示内容はここに一体のものとして統合される。IDOまたはRSIDOといった反復エンコード法の通常の特徴は、「位相転位」することにある。位相転位は、同様に米国特許第5,202,775号で開示されているが、2つの隣接するCGH画素の位相が1位相より大きくN−1位相レベルよりも小さく異なる場合に、位相転位が生じる。米国特許第4,547,037号で開示されるように、2またはそれ以上の多数レベル格子が用いられる場合、位相転位は起こらないことを留意されたい。
【0039】
各サブホログラム12を設計するのにIDO法が用いられた場合、回折角度を小さくすることにより、入力光ビーム14の短い波長に基づいて、物理的に確認できる程度の大きさを有する高効率CGHを形成することができる。この特別な例では、入力光ビーム14は、2.5cm×1cm(センチメートル)の楕円形状で、308nm±1nm(ナノメートル)の波長を有するものとした。標的16、または出力ビーム22は、円形または正方形を含む数多くの形状とすることができ、とりわけこの開示例では、出力平面18での直径を1.5cmに選択することができる。これらの条件の下で、ホモジェナイザ10と出力平面18上の標的16との間隔を20cmとすると、ビームホモジェナイザ10の最大偏向角度は2.9°である。
【0040】
最大CGH偏向角度が2.9°である場合、160lp/mm(行−対/ミリメートル)の最大の空間的振動数を必要とする。この場合レーザである光源の光パワーを経済的に利用するためには、ホモジェナイザ10を形成するCGHは、高回折率を有する必要がある。CGH空間的振動数が800lp/mmである場合、およそ80%ないし90%の回折率が得られるが、さもなければ4倍の最大空間的振動数が必要である。800lp/mmのCGH空間周期的構成は、0.6μm(マイクロメートル)のCGH最小形状サイズに対応する。
【0041】
入力ビームのパワーを経済的に利用するために必要とされる高効率をCGHにもたせるための更なる要件は、各サブホログラムのSBP(スペース・バンド幅・製品)が128×128以上でなければならないことである。それは自由度の尺度でもある。高効率を有する任意の光学的機能を実行するためには、一般に、大きい自由度が必要である。すると、77μm×77μmの各サブホログラムの寸法においてより低い境界を与える。寸法が100μm×100μmに設定された各サブホログラムを用いて、100×100ファセットアレイが、この例のビームとして用いるためには十分である。これら特定のパラメータにより、80ないし90%の回折率のために必要な128×128の目標最低SBPを十分超える167×167のSBPが形成される。このデバイスのための計算された最終的な回折率は、85ないし95%の間になるよう意図される。
【0042】
各サブホログラム12の透過光20aおよび20bは、出力平面18において標的16全体をカバーして、均一化された光強度を有する出力ビーム22を形成する。出力ビーム22の直径は、1.5cm×1.5cmと予定される。この場合、出力ビーム22は、入力ビーム14よりも小さい直径を有する。同様に出力ビーム22をホモジェナイザ10により拡大することもでき、すると標的16が入力ビーム14または任意の所望する形状より広い断面領域を有することになる。
【0043】
出力平面18は、特定の部品というより空間内の領域を意味する。バルク光学部品、光ファイバ、別のホログラム、能動的デバイス、または、ブロックマスクや照射対象物のような出力ビームを利用するようなその他の装置を配置することができる。そのような一応用例では、レーザ切断機で出力ビームを用いることができるような光学部品を出力平面18において採用する。ホモジェナイザ10がない場合、レーザ切断機の応用例で用いられるビームは、入力ビーム24の強度分布を有するか、あるいは入力ビームの相当量のパワーが、開口部を貫通して失われてしまう。図1で示すように、入力ビームの波面は中心領域において高いパワーまたは「ホットスポット」を有し、これが低いパワーを有する外端フリンジ領域よりも素早く材料を切断することになる。これにより、端部の形状が波面の入力ビームの光強度分布とは逆の形状を取るので、あまり精確でない切断点部を形成することになる。標的における出力波面の光強度分布が、均一化されたビームの照射強度と非照射強度との間では、そのパワーに明確な差をもって、照射される。光強度が均一化されたビームの光強度分布を用いると、出力ビーム全体に亙ってより均一に切断され、より精確な端部が形成される。
【0044】
本発明の別の実施例が図4で示される。この実施例も、仏国公開特許公報第2,716,726号の実施例と同様、出力平面における空間光強度分布をホモジェナイズする。しかし本発明によると、ファセット間における境界の形状が際立った端部または不連続部が形成されることなく、すなわち特異的な端部または不連続部に起因する出力ビームの出力平面における強度を一定にしようとするものである。ヨーロッパ特許公開744,664号によると、アレイ上の任意の方向に指向するセルが開示しているが、セル内のフリンジの構成またはセルをまたぐフリンジの連続性については開示していない。図4で示す実施例はまた、出力平面における予め定めた形状の標的領域を照射する。予定された形状の標的領域を説明または表現する別の言い方は、出力平面における予定された空間光強度分布である。さらに別の表現の方法として、出力平面における形成されたパターンビームである。仏国公開特許公報第2,716,726号で用いられた設計、製造方法、および特徴すべてについて、図4で示す実施例4において等しく適用できる。
【0045】
図1〜図3で示すように、ファセット12間の境界が明確な(特異的な)端部または不連続部がホモジェナイザ上に形成されている。図5Aはホログラム16を示し、ファセット12間の特異的な端部または不連続部48がはっきりと見て取れる。図5Bは、図5Aで示すホログラム16のファセット12間の特異的な端部または不連続部48の拡大図である。好適な実施例においては、プラトー50(白色領域で図示)およびバレイ52(valley)(黒色領域で図示)で形成されたファセット端部の回折フリンジ間の交差部は、出力平面において不要な構造物を形成することに留意されたい。
【0046】
ホモジェナイザ上のこのような構造物48が、ホモジェナイザ上に入射する入力ビームの不要な回折の原因となる。規則的にパターン形成された、または規則的に反復されたそのような構造物が入力ビーム14を回折する結果、空間光強度分布において不要な際立った反復する強度変動が、出力平面における出力ビームとして現れる。
【0047】
図4で示す実施例においては、こうした特異的な端部または不連続部を排除した結果、こうした特異的な端部または不連続部に起因する出力ビームの強度変動が最小限に抑えられる。図4で示す実施例では、上述の実施例における規則的にパターン形成されたファセットアレイの代わりに、例えばホログラムのような不規則的にパターン形成された回折フリンジ70または回折格子を有する光学装置54が用いられる。好適な実施例による回折フリンジ70は、プラトー50(白色領域で図示)およびバレイ52(黒色領域で図示)で形成され、この回折フリンジのことをここではプラトーおよびバレイという。このプラトーおよびバレイを有するホログラムの構成が、レンズと似通ったものであることを、当業者ならば理解するだろう。米国特許第4,895,790号は、プラトーおよびバレイを有する光学部品の構成について開示し、その開示内容は一体のものとしてここに統合される。同様に、米国特許第5,202,775号がホログラムの製造方法を開示しており、その開示内容も一体のものとしてここに統合される。
【0048】
不規則にパターン形成されたプラトー50およびバレイ52を有するホログラムからなるホモジェナイザは、もはや、定常的で特異的な端部または不連続部を有さず、出力平面上における出力ビームの不要で定常的かつ反復的な強度変動をもたらすことがない。図4はこの態様を示す。
【0049】
図4で示す本発明に関するファセット領域とは、ホログラム54上の任意に設計された大きさを有する領域を指す。それは、ホログラム上の不規則に形成された、またはパターンされた回折フリンジ(好適な実施例では不規則に形成された、またはパターンされたプラトーおよびバレイ)を指すときに便利に用いられる。ホログラムは少なくとも2つのファセット領域を有する。好適な実施例では、類似するプラトー50およびバレイ52を含むファセット領域56は2つとしてない。ホログラム上に不規則に形成されたプラトーおよびバレイの領域を指す別の便利な方法として、ファセットとしての領域と呼ぶ。あるファセット内のパターンは、自らのパターンに対し名目上の関連性を有し、他のファセット内のパターンとは名目上の関連性を有さない。したがって、ホログラム内の各ファセットは、出力平面における標的領域全体に光を照射する。
【0050】
図7は、図4で示すホログラムの拡大正面図である。図7のホログラム54(および図4のホログラム54)は、図7の破線で示すような4×4のファセット領域またはファセット56のアレイを有するものとして任意に呼んできた。これらの破線はホログラム上の構造物ではないが、この実施例に関するファセット領域または1つのファセットを特定するのに用いられ、この実施例のホログラム54に関する1つの領域を特定するのに便利である。各ファセット領域56は、不規則的にパターン形成されたプラトー50およびバレイ52を有する。ファセット領域56間には特異的な端部または不連続部は一切ない。図4で示す16個のファセット領域56の1個だけについて説明するように、破線が図示されている。というのも、図4で、他の15個のファセット領域についても破線で説明すると、見づらくなるし、混乱させる。
【0051】
図4を参照すると、入力光ビーム、好適にはコリメートされたビームがホログラム54のファセット領域またはファセット56を照射するとき、不規則的にパターン形成されたプラトー50およびバレイ52は、もはや、出力平面18における規則的で不適当な強度変動(図示せず)を伝播させる不適当な構造物を与えるものではない。本実施例の更なる利点は、独立した各ファセット56を設計してファセット領域またはホログラム全体を設計すると、より大きい設計自由度が得られる。そして設計者は、プラトー50およびバレイ52を調整することにより、出力平面における不要な強度変動を抑えるように設計することができる。一方、別々のファセットを用いた実施例における特異的な端部または不連続部によると、これらの特異的な端部または不連続部に関連して設計自由度ははるかに小さいものとなる。この実施例の別の利点は、独立した各ファセット56を設計してファセット領域またはホログラム全体を設計すると、より大きい設計自由度が得られる。より大きい設計自由度とは、例えばリング状および十字型などの任意の形状を有する出力ビームを形成できることにある。
【0052】
図4で示す実施例では、コリメートされた入力ビーム14がファセット領域56を照射し、ファセット領域56が予定された分散角度32で伝播ビーム20cおよび20dを伝播する。本発明の当業者は、分散角度についてよく知っている。分散角度または発散角度とは、有限の伝播距離に対するビームサイズの僅かな増加分のことであり、ラジアンまたは度数で表現される。所与のファセット領域56において、プラトー50およびバレイ52は、入射ビーム14の伝播部分20cおよび20dが予定された分散角度を有するように、入力ビーム14を回折する。ファセット領域56により与えられた分散角度は、所望する出力ビームが出力平面に伝播するように、ホログラム54の設計者が選択するものである。好適に設計者は、プラス・マイナス・ゼロからプラス・マイナス・90°の範囲の分散角度を事前に選択できる。図6では、入力ビーム14の一部が照射するファセット領域56(側面図で示す)を示し、ここでは出力平面18に伝播するビーム20eおよび20fに対してプラス・マイナス20°の分散角度を与えている。
【0053】
ビームホモジェナイザ10を利用する場合、そして所望する出力ビームの用途に応じて拡散角度が選択される。分散角度は、実際の応用例での必要に応じて設計者が選択することである。例えば、機械視野の照射システムでは、10度×15度の長方形領域に亙って均一な照射が必要とされることがある。設計者は、このように所望するように照射させるためにビームホモジェナイザの分散角度を選択することになる。
【0054】
予定した分散角度を有するビームを伝播させるファセット領域56に関して、設計者は、伝播光20c、20d、20e、および20fの分散角度を制御する。ホログラム54のファセット領域56により、出力平面18上に照射される標的領域16が照射されたファセット領域56よりも大きくなるような分散角度を与えるのが望ましい。
【0055】
図4で示す実施例では、出力平面18における予定された標的領域16が照射されるように、ホログラムが設計される。図4で示す実施例により、予定された標的領域に亙って空間的光強度がホモジェナイズされる。つまりこの実施例によれば、ホログラム表面上の入力ビームの光強度分布が、設計パラメータから逸脱した場合であっても、出力平面において一定の予定された光強度分布が得られる。
【0056】
設計者は、標的領域16に関して任意の特定の形状を選択することができる。所望する形状を有する標的パターン16をホログラム54から出力平面18上に投射できるように、設計者はプラトー50およびバレイ52を設計する。ホログラムを構成するこれらの空間的振動数構成物(spatial frequency content of the hologram:プラトー50およびバレイ52)は、所望するパターンを形成するように設計される。つまり、プラトー50およびバレイ52の大きさおよび配向は、所望するパターンを形成するように設計される。設計に際してはコンピュータを用いることが好適である。
【0057】
この実施例において、ファセット領域56は、予定の設計された分散角度で、入力ビーム14の一部分20cおよび20dを伝播させる。さまざまな、予定された分散角度で光を伝播させることにより、ホログラム54のファセット領域56から出力平面18上の標的パターン16に予定された空間光強度で光照射される。標的パターンとは本質的に、出力平面18における非照射領域36に隣接する出力平面18の照射領域34から構成される。予定された空間光強度のビームが出力平面18における標的領域34に照射されるように、そして出力平面18上の標的領域34以外では相対的にほとんどゼロの空間光強度のビームが照射されるように、つまり出力平面18上の標的領域34を照射するように、ホログラム54は設計される。図4で示す標的パターン34は、円形パターンである。このパターンを図8の正面図で示す。円形標的パターン16とは、つまり、予定された空間光強度分布パターンであって、このとき空間的な光強度は出力平面18において円内に分布され、円の外では相対的に全く分布されていないことを図8で示す。つまり図8は、出力平面18において照射円形領域34が相対的非照射領域36を取り囲むように、空間的光強度が出力平面18上に分布されるようにした、予定された光強度分布パターンを示す。図8で示すパターンは、図7で示すホログラムによって形成されたものである。
【0058】
例えば図9で示すようなその他のパターンを、投射するために、ホモジェナイザ10の設計者は選択することができる。図9は、出力平面18上のドーナッツ形状の標的パターン16を示す。つまり、相対的非照射の円形領域37がリング状の照射領域16で取り囲まれ、この照射領域16が次いで相対的非照射領域36に隣接するような、予定された光強度分布パターンを示す。例えば花や矩形の形状を有する非円形パターンもまた選択することができる。
【0059】
ホモジェナイザ10は、出力平面18の照射領域34上に均一な空間光強度分布を有するパターンを投射する。図8および9で示すパターン16は、照射領域34において比較的に均一な空間光強度分布を有する。
【0060】
図4で示す実施例は、フォトリソグラフィ工程で極めて有効なものである。フォトリソグラフィ工程は、本質的に光化学媒体中にあるパターンを露光する方法である。この方法は、集積回路を製造するために用いられる。これら洗練されたデバイスを形成するためのパターンは、フォトリソグラフ工程において全く忠実に最高の解像度をもって画像形成される必要がある。
【0061】
フォトリソグラフによる露光システムは、予定されたパターンでウェーハ上のレジストを露光するために、ウェーハ上のマスクパターンを画像形成するのに用いられる。後続のウェーハ処理工程により、例えば集積回路のような所望するデバイスを最終的に形成する層を完成させる。
【0062】
このマスクが、例えば5対1または10対1の縮小率を有するレーザステッパなどのような、投射式リソグラフィシステムで用いられる場合、マスクはしばしばレティクルと呼ばれる。レティクルまたはマスクは一般に、透明基板上にクロム領域を設けて形成される。マスクのクロム領域は、入射光を遮るので、光の強度変動としてマスクパターンを焼き付ける。5対1のレーザステッパでは、レティクルのパターンは、ウェーハに画像形成する際、1/5の倍率で縮小される。通常、この応用例では、回折部から照射されるビームは、相対的に均一で、かなり狭小な分散円錐角度、つまり限定された空間光強度分布および角度光強度分布を有する。
【0063】
本発明によれば、ウェーハ上の光の角度分布を制御することができる。ウェーハを照射する光の特定の角度分布を変更することにより、フォトリソグラフ露光システムの被写界深度および解像度を大きくすることができる。本発明は、入力ビームの位置の変動、および入力ビームの空間光強度分布の変動に比較的に影響を受けにくいので、フォトリソグラフィ工程において更なる利点を有する。
【0064】
本発明によると、フォトリソグラフィ工程で用いられる露光の強度、角度を有する周期的構成、および瞳孔パターン形状を制御することができる。このように制御することで、集積回路ウェーハ上のマスタパターンに関する画像の解像度を改善することができる。いくつかのマスタパターンに関しては、光がある角度で、または一定の角度範囲で照射する方がよいということが分かってきた。ホモジェナイザは、空間的エネルギをホモジェナイズする一方、その角度で光を与えるとともに、露光のその他の特性を制御する。このように制御することにより、半導体チップの製造過程において、あるいはフォトリソグラフィ工程を用いるその他の領域において、生産性が向上する。例えば図10を参照すると、光源(図示せず)は、コリメートされた入力ビーム14で、図4の実施例のホモジェナイザ10(側面図で示す)を照射する。このホモジェナイザ10は、入力光の大部分を所望する分散角度、予定された強度、および空間光強度分布で伝播させる。このとき予定された空間光強度分布は均一となる。この伝播された部分20fおよび20gは感光させる光として機能する。マスタまたはマスク60は、ホモジェナイザ10に接近して配置されるので、ホモジェナイザ10とマスク60との間で光強度分布に相当の差異が生じることはなく、つまりビームは、ホモジェナイザ10およびマスク60において同じである。マスク60を出力平面18(図示せず)には配置しないことが好ましい。マスタ60は、所望する露光20fおよび20gにより照射される。マスタ60に遮られない露光20fおよび20gの一部光20hは、マスタ60を通過してレンズ62を照射する。この一部光20hは、所望する予定された分散角度を有している。続いてレンズ62は、入力光20hを通過させ、例えばフォトレジスト(図示せず)を用いてマスタ60の対象となるウェーハ64の上に画像を焼き付ける。レンズ62は、所望する縮小倍率を有する。この実施例によれば、所望する方法で、とりわけ所望する分散角度で対象となるウェーハ64上に画像を焼き付ける。つまりウェーハは、所望する最適の特性を有する照射光で、予定された所望する方法で露光され、複製品が生産される。このようにして、所望され、必要とされる照射光を最適化することにより、例えば半導体チップ製造過程においてより高い生産性を得ることができる。このホモジェナイザは、例えば、分散角度0から2度までを遮蔽し、2から4度を通過させ、4度以上を遮蔽するように用いることができる。あるいは、例えば、プラス3度からマイナス3度に至る領域をホモジェナイザにより形成することができる。ホモジェナイザ10のプラトー50およびバレイ52を、好適にはコンピュータを用いて設計することにより、伝播光の分散角度および周期的構成が制御できる。
【0065】
好適には、ホログラム54はコンピュータ形成されたホログラムである。さらに好適には、分散角度を含むコンピュータ形成されたホログラムの特性は、コンピュータを用いて設計され、選択される。所望の予定された照射標的領域、出力平面における所望の予定された空間光強度分布、およびその他の必要とされる特性が得られるように、その特性が選択される。
【0066】
本発明を設計する際、設計者は所望の角度分布を決定する。設計者は、所望の角度範囲に相当するフーリエ平面における強度分布を用いて、フーリエ変換ホログラムを設計する。例えば、設計者は4度から7度の、つまり3度幅で通過させるリングを選択してもよい。するとこの標的は、出力平面18上にリング状の回折ファー・フィールド・パターンを有するホログラムを形成することになる。択一的に、図10で示すフォトリソグラフシステムで用いられる場合、平面60でのホログラムの出力強度は均一であるが、その分布角度は4度から7度である。フーリエ変換ホログラムは、回折性のフリンジパターンまたは位相透過パターンを有するので、そのようなパターンのフーリエ変換は、所望する角度領域上に所望する伝播に対応する。フーリエ変換ホログラムをどのように設計するかについては、本発明の当業者には広く知られたところである。フーリエ変換は、コンピュータでなされることが望ましい。
【0067】
一般に、ファースト・フーリエ変換を行うと、離散的なポイントでしかパターンが計算されない。一般に、フーリエ変換ホログラムは、斑点を排除または抑制するために反復される。斑点は極めて明るく、そして暗い光のスポットで、可干渉システムにおける干渉によって生じる。本発明のパターンは反復しない。本発明によるフーリエ変換ホログラムを設計するための好適な方法は、コンピュータによる反復的な最適化技術を用いることで、それは、例えば上述したような、そして同一発明者であるフェルドマンらによる「スポットアレイを形成するための高効率ホログラムの反復的エンコード方法」(Optics Letters, Vol.14, pp.479-81)に開示されたような(その開示内容は、一体のものとしてここに統合される)IDO法である。出力はフーリエ変換平面で、入力はCGH平面でなされる。好適な実施例では、非可干渉な、または一部が非可干渉な光により、また加えて非常に数多くの画素を有するホログラムを設計することにより、斑点の発生が回避される。非常に数多くの画素を有するホログラムによると、出力平面においてほとんど連続的な画像を形成する。フーリエ変換ホログラムは、出力平面における各点がホログラムの各ファセット領域からの寄与を受けるような特性を有する。
【0068】
上述したように、一旦設計され製造されると、このホログラムは照射システムの中に設置される。任意の強度分布を有するコリメートされたビームで照射される場合、この例のホログラムは、CGHから比較的に遠く離れた平面において所望する角度に相当するリングを伝播させる。ビームがコリメートされない場合、リングは比較的に幅広くなり、その幅は入力ビームの拡散する精確な円錐角度に依存する。CGHに極めて接近した平面においては、CGHを照射するビームと同じ強度を有するビームが確認されることとなるが、ビームは、入力ビームの拡散角度とCGHの分散角度が組み合わされたものに相当する拡散角度を有することになる。
【0069】
図4で示す実施例において、出力平面の指定された標的領域のみが照射されるようにホログラム54は設計される。つまり、予定された空間光強度分布が出力平面に対して入射するように、ホログラムは設計される。
【0070】
図4を参照すると、コリメートされた入力ビーム14がホログラム54を有するホモジェナイザ10に入射し、そのホログラムは、破線で示す16個のファセット領域56からなるアレイ11を有する(図4で、16個のファセット領域またはファセットのうち1個だけについて破線で示し、図7で16個すべてについて示す)。これらファセット領域56の各々は、プラトー50およびバレイ52の不規則なパターンを有する。これらファセット領域56のうち、2つとして類似するものはない。これらファセット領域56は、入射するコリメートされた光ビーム14のどの一部分も出力平面18における標的16に照射するように構成されている。コリメートされたビーム14の一部分は、ファセット領域56の各々を介して伝播する。この部分20cおよび20dは、ファセット領域56により与えられる予定された角度分散を有する。上述の明細書で開示されたように、20cおよび20dで示されるこの部分が標的16に重なり合う。こうして重ね合わせることにより、入力ビーム14にはあった空間エネルギの変動が、出力平面18においては存在しなくなる。つまり、出力平面18においては照射部分全体16および34に亙って、均一な空間光強度分布が得られる。この分布またはパターンによりビーム22が形成される。標的領域、または照射部分は予定された形状を有する。この平面の照射部分16および34が予定される。図4では予定されたのは円形である。この平面の照射部分16および34は、ファセット間の特異的な端部または不連続部に起因する好ましくない強度変動をもたない。なぜなら、不規則にパターン形成されたプラトーおよびバレイを有する、不規則にパターン形成されたファセットを用いることにより、上記の特異的な端部または不連続部を取り除いたからである。
【0071】
本発明によれば設計者は出力平面の照射領域のため空間光強度について均一な振幅を選択することができる。同様に本発明によれば、設計者は出力平面の異なる照射領域において異なる振幅の空間光強度を選択することができる。例えば図8において設計者は、照射された円16の上半分に対して振幅1(任意の単位)の空間光強度レベルを選択し、照射された円16の下半分に対して振幅1.5(任意の単位)の空間光強度レベルを選択することができる。つまり空間光強度分布とは、出力平面における照射パターンの形状と、照射部分内での空間光強度分布との両方を含んでいる。しかし、選択された空間光強度分布はホモジェナイズされ、その結果、入力ビーム分布に変化があっても光強度分布は変化しない。設計者が選択する光強度分布は、当座の応用例に即して選択される。
【0072】
位相伝播パターンとは回折フリンジパターンの数学的表現である。つまり物理的な回折フリンジパターンは、例えば図7で示すように、数学的に表現することができ、位相伝播パターンとして数学的に表現する。当業者ならば、位相伝播パターンおよび回折フリンジパターンとフリンジの数学的関係を理解するだろう。
【0073】
本発明の当業者ならば、位相伝播パターンのフーリエ変換をどのように行うか知っているだろう。フーリエ変換ホログラムは、そのパターンが所望する角度領域に対する所望の伝播に相当するようにした、回折フリンジパターンまたは位相伝播パターンを有している。フーリエ変換はコンピュータを用いて計算されるのが望ましい。
【0074】
二次元位相部品は、ホログラムのような光学部品の構成または製造に用いられる。本発明の当業者ならば2次元位相部品についてよく知っているだろう。米国特許第4,895,790号は、このような2次元位相部品の構成について開示しており、その開示内容はここに統合される。
【0075】
当業者なら構成を変更するだろうし、本発明から逸脱することなく、さまざまな明らかな修正および実施例を実施することができる。上述の明細書または添付図面で述べた材料は例示的なものに過ぎない。また上述の明細書は限定的なものではなく、例示的なものであって、本発明はクレームの範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0076】
10 ホモジェナイザ、11 ファセット領域のアレイ、12 ファセット領域、14 入力光ビーム、16 標的、18 出力平面、24,26 光強度分布、48 不連続部、50 プラトー、52 バレイ、54 光学装置(ホログラム)、56 ファセット領域、60 マスク、62 レンズ、64 ウェーハ、70 回折フリンジ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に光学装置に関し、とりわけ、ファセット間における境界が明確な不連続部(特異的な不連続部:sharp breaks)に起因する出力平面における好ましくない強度変動を最小限に抑えつつ、予定されたパワー分布および/またはエネルギ分布(光強度分布:a preselected distribution of power and/or energy)を有する出力ビームを形成するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
仏国公開特許公報第2,716,726号に示されているように、レーザ装置により、一般には、断面領域の比較的小さい波面を有する可干渉なビームが形成される。ビームは、小さい断面領域および可干渉性を有するものの、レーザの波面は通常、その強度が周縁部より中心部の方が強い、不均一なパワー分布(光強度分布:power distribution)を有する。その光強度は5〜10%の間で変動することがある。さらにビームを利用するために、ビームの断面領域を大きくする必要がしばしばあり、このとき光強度の不均一性(変動)がより大きい波面において拡散することになる。
【0003】
従来式のレンズを用いてビームを拡大すると、波面の不均一な光強度分布は、そのまま拡大されたビームに反映される。加えて、波面がより大きい断面領域に拡大されるので、ビームの不均一性はさらに顕著となる。ビームを利用したシステムが動作する場合、この不均一性は、しばしば有害となる。なぜなら、ある程度の平均レベルにあるビームの強度に見合うようにこのシステムを設計しなければならないからで、さもなければ別の手法として、おそらく窓を介して強度の弱い周縁部のビームを除去することになる。上記のいずれの場合であっても、ビームの強度エネルギを最大限に活用することはできず、しかも従来式のレンズシステムを用いて、しばしば好適とされるプラス・マイナス1%の変動範囲にある均一な光強度分布を実現することは困難である。
【0004】
従来式のバルク光学部品として機能するように、ホログラム部品は開発されてきた。こうした場合、ホログラム部品は、その方向および空間的周期に関して、入力波面を所望する出力の位置パターン、形状または画像に回折する目的のためには当を得たものである。しかしながら、基本的なレンズとして機能するように設計された以上、これらのホログラム部品もまた、出力パターン、形状、または画像に不均一な光強度分布をもたらすことになり、光源のパワーを効率的に利用しているとはいえない。
【0005】
不均一な光強度分布を有する波面をいかに補償するかの問題について、米国特許第4,547,037号が取り上げている。この特許では、入力ビームの光エネルギを2次平面上に再分配する多数のファセットを有するホログラム部品が開示されている。これは、各ファセットを独立したホログラムまたは回折格子として構成することにより実現している。実質的に同一強度のビームが各ファセットを通過すると仮定して、各ファセットは、各々に入射するビームの部分的な強度に反比例するような大きさを有している。各ファセットを通過する光は、回折されて、ホログラム部品における各々の位置に対応する別の2次平面上に到達する。サブホログラムまたは回折格子は、通過する入力ビームの各部分を拡大したり縮小したりして、均一に、しかし2次平面の異なる領域を照射して、2次平面において強度がほぼ一定の波面を有する出力ビームを形成することができる。
【0006】
’037特許の技術を採用した装置が有する問題点は、ホログラム表面上に入射するビームの光強度分布が設計パラメータで変動する場合、2次平面における出力ビームも同様に影響を受け、もはや均一なものでなくなる。光学システムにおいて、入力ビームの光強度分布がこのように変動する原因は数多くある。例えば、部品の寿命または単に間違って光源を交換したことにより、光強度が変動する。さらに、衝撃や寿命により系の光軸ずれが生じた場合にも、不均一な光強度分布を有する出力波面が形成される。
【0007】
空間による光強度分布(ビームの空間的位置に応じて変動する光強度分布:spatial energy distribution)が不均一な波面を有する光入力ビームを、空間による光強度分布が実質的に均一な出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、しかも入力ビームの位置および入力ビーム内における空間による光強度分布の変動にあまり影響されないものでなければならない。
【0008】
さらに、空間による光強度分布が不均一な波面を有する光入力ビームを、予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、このときファセット間の一般の特異的な不連続部に起因する出力平面上の強度の変動を最小限に抑えるために、ファセット間に一般の特異的な不連続部のないホログラムを用いる。
さらに、任意の波面を有する入力光ビームを、予定された振幅、分散角度を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、このとき出力ビームはフォトリソグラフィ工程で有用となる。フォトリソグラフ露光システムは、ウェーハ上にレジストまたはフォトレジストを予定されたパターンで露光する目的で、マスクのパターン形成するために用いられる。後に続くウェーハ処理により、例えば集積回路のような所望されるデバイスを最終的に形成される。
【0009】
このマスクが、例えば5対1または10対1の縮小率を有するレーザステッパなどのような投射リソグラフィシステムで用いられる場合、マスクはしばしばレティクルと呼ばれる。レティクルまたはマスクは一般に、透明基板上のクロム領域により形成される。マスクのクロム領域は、入射光を遮るので、光の強度変化としてマスクパターンを焼き付ける。5対1のレーザステッパでは、レティクルのパターンは、ウェーハ上に画像形成する際、1/5の倍率で縮小される。通常、この応用例では、回折部から照射されるビームは、比較的に均一で、かなり狭小な分散円錐角度を有し、その空間による光強度分布および角度による光強度分布(ビームの角度により変動する光強度分布:angular energy distribution)が限定されたものとなる。
【0010】
マスクおよびレティクルによりウェーハ上の光の強度を制御するとき、ウェーハ上の光の角度分布を制御する部品が必要である。ウェーハを照射する光の特定の角度分布を調節することにより、フォトリソグラフ露光システムの被写界深度および解像度を拡大することができる。この部品は理想的には、高価でなく、しかも入力ビームの位置の変動、および入力ビームの空間エネルギの変動に対してあまり影響を受けないものである。
【0011】
さらに、空間による光強度分布(空間光強度分布)が非均一な波面を含む入力光ビームを、予定された空間光強度分布を有する出力ビーム、すなわち予定されたビーム形状を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、しかも入力ビームの位置および入力ビーム内における空間光強度分布の変動に対してあまり影響されないものでなければならない。加えて、非均一な空間光強度分布を有する波面を含む入力光ビームを、例えば、空間光強度分布、予定されたビーム形状、または予定された角度による光強度分布(角度光強度分布)などの予定された特徴を有する出力ビームに変換するための比較的安価な方法が必要とされ、しかも入力ビームの位置および入力ビーム内における空間による光強度分布の変動にあまり影響されないものでなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】仏国公開特許公報第2,716,726号明細書
【特許文献2】米国特許第4,547,037号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明は、空間による光強度分布が均一でない入力ビームを、空間光強度分布が予定された出力ビームに変換するビームホモジェナイザである。入力ビームが、ファセットのアレイとして形成されるビームホモジェナイザに入射し、各ファセットは、各ファセットに入射する入力ビームのすべての部分をビームホモジェナイザから離れた出力平面に伝播させるように構成されており、その結果、各ファセットを介して伝播する光は重なり合って、空間による光強度分布が実質的に均一な出力ビームを形成する。
【0014】
加えて本発明は、ファセット間の不連続部の境界が際立っていることに起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。不規則的にパターン形成された回折フリンジからなるホログラムの少なくとも一部に、入力ビームが照射される。その部分がビームの一部分を出力平面上に伝播させ、その結果、入力ビームのエネルギが出力平面において再分割されて、出力平面の照射された部分は予定された形状および予定された振幅を有するように、出力平面において予定された空間光強度分布を有するホモジェナイズされた出力ビームを形成する。
【0015】
さらにこの発明は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームを、出力平面において予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部が際立っていることに起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。ファセット領域は、不規則的にパターン形成された回折フリンジを有する。このファセット領域は、出力平面の標的において次のようなビームを伝播させる。照射されたファセット領域の各々を介して伝播する一部の入力ビームの大部分が、少なくとも他のもうひとつの照射されたファセット領域を介した入力ビームの部分と重なり合い、この結果、入力ビームのエネルギが、出力平面において空間的に再分布されて、出力平面において予定された空間光強度分布を有するホモジェナイズした出力ビームとなるようにする。ファセット領域のアレイがコンピュータで形成されたホログラムであって、このホログラムは、入射する入力ビームの位置の変動、および入力ビーム内の空間光強度分布に関して比較的に影響を受けにくいものである。このホモジェナイザは、照射された一部の入力ビームを予定された分散角度で伝播させ、出力平面において所望される予定された空間光強度分布に相当する標的領域を照射する。
【0016】
さらに本発明は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームを出力平面においては均一な空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、サブホログラム間の不連続部に起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。入力ビームは、コンピュータで形成されたサブホログラムのアレイの少なくともいくつかを照射し、そのサブホログラムの大きさは、サブホログラムに入射する一部の入力ビームの強度とは無関係に決定され、入射する入力ビームの位置の変動に関して影響を受けにくい。各サブホログラムが、各々に入射する一部の入力ビームの大部分を回折し、2次平面に配置される標的において、サブホログラムの各々で回折された一部の入力が、少なくとも他のもうひとつの照射されたコンピュータで形成されたサブホログラムによって回折された部分と重なり合って出力ビームを形成する。出力ビームの強度が、標的全体において実質的に均等となる。出力ビームが予定された分散角度、および出力平面において所望される予定された空間光強度分布に相当する標的を有する。
【0017】
さらに本発明は、1次平面において任意の空間光強度分布を有する入力ビームを、2次平面において予定された空間光強度分布を有する出力ビームにホモジェナイズして、サブホログラム間の不連続部に起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化する方法である。その方法とは、不規則にパターン形成された回折フリンジを有する、コピュータで形成されたサブホログラムのアレイからなるホログラム光学部品を提供するステップと、入力ビームが、サブホログラムの少なくともいくつかを照射するように、第1平面に部品を固定するステップと、この照射されたサブホログラムの各々が、各々に入射する一部の入力ビームを、2次平面における標的全体に亙って拡大的に回折し、照射されたサブホログラムのすべての回折部分を重ね合わせ、2次平面における出力ビームを形成するステップと、を備える。このとき、ホログラム光学部品を提供するステップが、入射する一部の入力ビームの位置、および入力ビーム内の空間光強度分布の変動に関して比較的影響を受けにくいサブホログラムのアレイを形成するステップを含んでいる。本発明では、照射されたサブホログラムの各々が、各々に入射する一部の入力ビームを予定された分散角度で拡大的に回折し、出力平面において所望される予定された空間光強度分布を形成する。
さらに本発明は、任意の空間光強度分布を有する入力ビームを、ホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、サブホログラム間の不連続部に起因する強度変動を最小化するビームホモジェナイザシステムである。サブホログラムのアレイは、各サブホログラムが不規則的に形成された回折フリンジを有し、いくつかのサブホログラムにより回折された入力ビームの部分が出力平面において重なり合うように、反復エンコード法を用いて設計される。この結果、出力ビームは、入射する入力ビームの位置の変動、および入力ビーム内の空間光強度分布に関して比較的に影響を受けにくい、予定された空間光強度分布を有する。各サブホログラムは、予定された分散角度を有するビームを伝播させる。出力ビームは、出力平面において予定された空間光強度分布を有する。
【0018】
さらに本発明は、任意の空間光強度分布および特定の角度光強度分布を有する入力ビームを、予定された角度光強度分布を有する出力ビームに変換し、サブホログラム間の不連続部に起因する強度変動を最小化するビームホモジェナイザである。このホモジェナイザはサブホログラムのアレイを有し、その各サブホログラムは、不規則的に形成された回折フリンジを有し、位相転位させる画素を含み、少なくとも2つのサブホログラムにより回折された光は、出力平面において重なり合って出力ビームを形成する。このとき、出力ビームは、ホモジェナイザに入射する入力ビームの位置の変動、および入力ビーム内の空間光強度分布に関して比較的に影響を受けにくい、予定された角度空間光強度分布を有する。出力ビームは、予定された空間光強度分布および/または角度光強度分布を有する。
【0019】
さらに本発明は、非均一な空間分布を有する入力ビームをより均一な分布を有する出力ビームに変換するビームホモジェナイザである。本発明のコンピュータ形成されたホログラムは、位相伝播パターンを有する。この位相伝播パターンのフーリエ変換が、予定された角度領域に亙って均一となる。このパターンが1つ以上の2次元位相部品から構成される。
【0020】
さらに本発明は、光の非可干渉、または一部可干渉ビームの分散角度を変更するための光学システムである。回折分散部品が、円錐角度内で伝播する入力ビームを予定された角度の範囲で回折する。この度は、入力ビームの円錐角度および分散部品のフーリエ変換により決定される。
【0021】
さらに本発明は、フォトリソグラフ光学システムである。入力ビームは、回折分散部品を照射する。回折分散部品は、予定された角度分布を有する出力ビームの部品が伝播させることによりマスクを照射する。
【0022】
本発明の目的は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームを、出力平面においては均一な空間光強度分布を有する出力ビームに変換することにある。
【0023】
別の本発明の目的は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部に起因する、出力平面における不要な強度変動を最小化することにある。
【0024】
さらに別の本発明の目的は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換することにある。
【0025】
本発明の特徴は、ファセットのアレイを有するホモジェナイザに入射する、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームの、各ファセットを介して伝播する一部の入射ビームが、出力平面において重なり合うようにして標的全体に画像形成することにより、入力光学ビームをホモジェナイズし、出力平面では実質的に均一な光強度分布を有する出力ビームを形成することにある。別の本発明の特徴は、このホモジェナイザがホログラムであって、各ファセットがサブホログラムであることである。さらに別の本発明の特徴は、出力平面におけるファセットを伝播する光の間で生じる干渉効果を最小化することにある。
【0026】
本発明の特徴は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部に起因する、不要な強度変動を最小化することにある。本発明の別の特徴は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された形状を有し、予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換することにある。
【0027】
本発明の利点は、このホモジェナイザがコンピュータ形成技術により開発できること、比較的に安価に製造できることにある。本発明の別の利点は、このホモジェナイザが入射ビームの光強度密度の変動に対して相対的に影響されにくいことにある。さらに別の本発明の利点は、出力ビームの強度が、ホモジェナイザに入射する入力ビームの位置に影響を受けにくいことにある。
【0028】
さらに本発明の利点は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換し、ファセット間の不連続部に起因する、不要な強度変動を最小化できることにある。さらに本発明の別の利点は、非均一な空間光強度分布を有する入力ビームをホモジェナイザから離れた出力平面においては任意の予定された形状、および予定された空間光強度分布を有する出力ビームに変換することができることにある。
【0029】
さらに本発明の別の利点は、任意の空間光強度分布および特定の角度光強度分布を有する入力ビームを、ホモジェナイザから離れた出力平面においては任意の予定された角度光強度分布を有する出力ビームに変換することができることにある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、関連技術である仏国公開特許公報第2,716,726号のホモジェナイザに入射するビームの空間光強度分布を示し、ホモジェナイザを介して伝播する一部分の入力ビームが、どのように出力平面において構成されて、実質的に均一な光強度分布を有する出力ビームを形成するかを示す。
【図2】図2は、ホモジェナイザに入射する一般的なエキシマレーザである入力ビームの空間光強度分布と、結果として生じる出力ビームを示す。
【図3】図3は、ホモジェナイザに入射する一般的なネオジウムYAGレーザである入力ビームの空間光強度分布と、結果として生じる出力ビームを示す。
【図4】図4は、本発明のホモジェナイザに入射するビームの空間光強度分布を示し、ホモジェナイザのプラトー(plateau)およびバレイがどのように不規則にパターン形成されているか、およびホモジェナイザを介して伝播する入力ビームの一部分がどのように構成されて、出力平面において実質的に安定した光強度分布を有し、予定された円形の光強度分布形状を有する出力ビームが形成されるかを示す。
【図5A】図5Aは、多数ファセットを有するホログラム、およびファセット間における特異的な不連続部を示す。
【図5B】図5Bは、図5Aで示すホログラムの拡大図であって、例えば特異的な不連続部がかなり詳細に示されている。
【図6】図6は、ビームが予定された分散角度20°でファセット領域から出力平面に伝播される様子を示す。
【図7】図7は、図4で示すホログラムの拡大図であって、不規則にパターン形成されたプラトーおよびバレイを示し、任意の大きさを有する4×4行列のファセット領域を示し、ファセットに形成されたパターンは反復的なものではなく、またファセット境界においては不連続的ではないことを示す。
【図8】図8は、円形の標的パターン、つまり空間光強度が出力平面において円内に分布し、円の周囲には相対的に分布が存在しないような予定された光強度分布パターンを示す。
【図9】図9は、ドーナッツ形状の標的パターン、つまり空間光強度が出力平面において、円形の相対的な非照射領域がリング状の照射領域の周囲にあり、続いて円形の相対的な非照射領域がこれに隣接するような予定された光強度分布パターンを示す。
【図10】図10は、フォトリソグラフシステムで利用される場合の本発明の側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
仏国公開特許公報第2,716,726号の構成を図1で示す。光ビームが、ファセット12のアレイ11を有するホモジェナイザ10に入射する。これらファセット12の各々に入射する入力光ビーム14のすべての部分が、出力平面18における標的16の全体に均一に照射するように、各ファセット12は構成されている。各ファセット12を介して伝播する入力ビームの一部分は(20aおよび20bで図示する)、標的16において重なり合うので、入力光ビームが混合し、その結果、各ファセット12を通過した入力ビーム14の一部の出力をホモジェナイズする(出力光ビームの強度を均一にする)。このホモジェナイゼーション(光強度の均一化)により、標的16において入力ビーム14を均一に混合することが担保され、出力ビーム22が、出力平面18において均一な光強度分布24を有することになる。光強度の均一化処理により、非効率性による多少の損失が生じるが、入力ビーム14の光強度が平均化される。
【0032】
入力光ビーム14は、レーザのような光源(図示せず)から出射されるが、好適にはコリメートされ、入力ビームの空間光強度分布は、図1ないし3で示すように、さまざまな形態を取り得る。入力光ビーム14は、光源からホモジェナイザ10に伝播し、レンズおよび鏡のような従来式のバルク光学部品、あるいは従来式の光学部品と同じ結果をもたらすホログラム部品を用いて、入力光ビーム14はコリメートされる。入力ビーム14は一般に、断面領域において強度が相当に変動し得る光強度分布26を有している。いくつかの光源では、強度分布26が5〜10%の範囲で変動し得る。加えて、光源が古くなったり、光源を駆動する電源がふらつくと、やはり入力ビーム14の光強度分布26が変動する。ビームホモジェナイザ10は、入力光ビーム14を混合するように構成されているので、入力ビーム14の光強度分布26の変動に関係なく、しかも入力ビーム14がアレイ11の入射する部分の位置の多少の変動によらず、出力ビーム22は、出力平面18での標的16において本質的に均一な光強度分布24を有する。標的16における光強度分布24は、入射信号14の光強度26を平均化したものというより、各ファセット12に対する光強度を平均的に分布させたものである。
【0033】
この実施の形態におけるビームホモジェナイザ10は、ホログラム部品であり、ファセット12はサブホログラムであって、同じ大きさのサブホログラムからなるM×N直線行列として図示されている。サブホログラムが異なる大きさを有していてもよいことが予想される。これらサブホログラム12は、各サブホログラムに入射する入力光ビーム14の各部分を、出力平面18における標的16の全体の上に回折するように構成されている。これらサブホログラム12の各々は、入力ビーム14の一部分を標的16全体の上に照射するための個別の回折格子である。フリンジまたは画素の数によるが、特に以下に説明する実施例は、サブホログラム12のために1mmあたり80本近くのライン(80行/mm)を有する。明確にするためにこのラインを図示することを割愛した。さらに、ホモジェナイザ10は、4×4行列アレイ11として図示されているが、現実には下記するように、ホモジェナイザを形成するために、より数多くのサブホログラム12またはファセットを有していてもよい。
【0034】
ホログラムを作製する1つの方法は、可干渉な光ビームの中で写真プレート上に干渉パターンを形成し、このプレートを現像する方法がある。ホログラムによる干渉は、干渉フリンジを構成する内的構造物を含むので、大量生産が困難となる。
【0035】
ホログラムによる干渉に関連する生産上の問題を克服するために、コンピュータ形成ホログラム(以下CGHという)が開発されてきた。CGHを用いて、所望するホログラムパターンを計算し、所与の構成条件に基づいて、パターンまたは再構成された波面から逆に数学的に処理して、特定の所望するホログラムを得る。高機能コンピュータの利点を用いて、繰り返し反復してCGHエンコードする方法が開発され、これにより他の数学的技法を用いて開発されたホログラムよりも相当に高機能なCGHを開発することができる。
【0036】
CGHは、本質的に表面凸版印刷であって、フォトリソグラフ工程、エッチング工程、電子線照射工程、またはその他の工程により形成される。電子線技術によれば、光フィルムに近い解像度が得られるが、振幅および位相の量子化レベルは相当に粗い。フォトリソグラフ処理すると、数多くのレベルにあるホログラムを提供することができる。しかし、層間のアライメント誤差は、層数に伴って増加する。
【0037】
本発明と、米国特許第4,547,037号の発明とが大きく異なるところは、後者においては、各ファセットを照射する光が出力平面において異なる位置を照射する点である。一方、本発明においては、多くのファセットからの光が出力平面上で重なり合うのである。このような特徴の利点については先に述べたが、この特徴の問題点は、その問題点を特に回避するように設計しなければ、出力平面において、いくつかのファセットからの光が重なり合うところで、レーザ強度の形態において大きな変動の原因ともなり得る可干渉効果による干渉パターンが形成され得る点にある。例えば、サブホログラムが別々に設計され、各サブホログラムの大きさがレーザ光源の空間的可干渉幅よりも小さい場合、可干渉効果により、いくつかのファセットからの光が重なり合うところで、かなりの明暗パターンが生じる可能性がある。
【0038】
反復個別軸上(IDO)エンコード法といった反復的なエンコード方法を用いてサブホログラムを設計することにより、この問題を抑制することができる。この問題は、同一発明者であるフェルドマンらによる「スポットアレイを形成するための高効率ホログラムの反復エンコード法」(Optics Letters, Vol.14, pp. 479-81)と題した刊行物により詳細に説明されており、その開示内容は、一体のものとしてここに統合される。その開示内容を要約すると、ホログラムを長方形セルの2次元アレイに分割し、許容できる画像が得られるまで、各セルの透過係数を選択し最適化する。最適化過程において、異なるファセット間の干渉効果を含めて、画像をモニタする。各セルの透過係数は、各ファセットから照射される光を出力平面の大部分(あるいは全体部分)に照射するように分散するためだけでなく、ファセット中における干渉効果を最小化するように選択する。軸上エンコード法によれば、ホログラムが機能するのにキャリア波面を必要としないので、これらのホログラムは、キャリア波面を必要とする軸外方法よりもはるかに高い回折効果を有するCGHを形成することができる。その理由は、利用可能なスペース・バンド幅・製品(SBP)、またはCGHに含まれる情報に対して実際上の上限を有するためで、これらは所望する画像をエンコードするのに利用できる。搬送波面のために情報が必要でない場合、所望する画像に関するより多くの情報が必要となるかもしれない。同様に、「半径方向に対称なホログラムおよびその製造方法」と題する米国特許第5,202,775号に開示されたエンコード方法を用いることが望ましく、この開示内容はここに一体のものとして統合される。IDOまたはRSIDOといった反復エンコード法の通常の特徴は、「位相転位」することにある。位相転位は、同様に米国特許第5,202,775号で開示されているが、2つの隣接するCGH画素の位相が1位相より大きくN−1位相レベルよりも小さく異なる場合に、位相転位が生じる。米国特許第4,547,037号で開示されるように、2またはそれ以上の多数レベル格子が用いられる場合、位相転位は起こらないことを留意されたい。
【0039】
各サブホログラム12を設計するのにIDO法が用いられた場合、回折角度を小さくすることにより、入力光ビーム14の短い波長に基づいて、物理的に確認できる程度の大きさを有する高効率CGHを形成することができる。この特別な例では、入力光ビーム14は、2.5cm×1cm(センチメートル)の楕円形状で、308nm±1nm(ナノメートル)の波長を有するものとした。標的16、または出力ビーム22は、円形または正方形を含む数多くの形状とすることができ、とりわけこの開示例では、出力平面18での直径を1.5cmに選択することができる。これらの条件の下で、ホモジェナイザ10と出力平面18上の標的16との間隔を20cmとすると、ビームホモジェナイザ10の最大偏向角度は2.9°である。
【0040】
最大CGH偏向角度が2.9°である場合、160lp/mm(行−対/ミリメートル)の最大の空間的振動数を必要とする。この場合レーザである光源の光パワーを経済的に利用するためには、ホモジェナイザ10を形成するCGHは、高回折率を有する必要がある。CGH空間的振動数が800lp/mmである場合、およそ80%ないし90%の回折率が得られるが、さもなければ4倍の最大空間的振動数が必要である。800lp/mmのCGH空間周期的構成は、0.6μm(マイクロメートル)のCGH最小形状サイズに対応する。
【0041】
入力ビームのパワーを経済的に利用するために必要とされる高効率をCGHにもたせるための更なる要件は、各サブホログラムのSBP(スペース・バンド幅・製品)が128×128以上でなければならないことである。それは自由度の尺度でもある。高効率を有する任意の光学的機能を実行するためには、一般に、大きい自由度が必要である。すると、77μm×77μmの各サブホログラムの寸法においてより低い境界を与える。寸法が100μm×100μmに設定された各サブホログラムを用いて、100×100ファセットアレイが、この例のビームとして用いるためには十分である。これら特定のパラメータにより、80ないし90%の回折率のために必要な128×128の目標最低SBPを十分超える167×167のSBPが形成される。このデバイスのための計算された最終的な回折率は、85ないし95%の間になるよう意図される。
【0042】
各サブホログラム12の透過光20aおよび20bは、出力平面18において標的16全体をカバーして、均一化された光強度を有する出力ビーム22を形成する。出力ビーム22の直径は、1.5cm×1.5cmと予定される。この場合、出力ビーム22は、入力ビーム14よりも小さい直径を有する。同様に出力ビーム22をホモジェナイザ10により拡大することもでき、すると標的16が入力ビーム14または任意の所望する形状より広い断面領域を有することになる。
【0043】
出力平面18は、特定の部品というより空間内の領域を意味する。バルク光学部品、光ファイバ、別のホログラム、能動的デバイス、または、ブロックマスクや照射対象物のような出力ビームを利用するようなその他の装置を配置することができる。そのような一応用例では、レーザ切断機で出力ビームを用いることができるような光学部品を出力平面18において採用する。ホモジェナイザ10がない場合、レーザ切断機の応用例で用いられるビームは、入力ビーム24の強度分布を有するか、あるいは入力ビームの相当量のパワーが、開口部を貫通して失われてしまう。図1で示すように、入力ビームの波面は中心領域において高いパワーまたは「ホットスポット」を有し、これが低いパワーを有する外端フリンジ領域よりも素早く材料を切断することになる。これにより、端部の形状が波面の入力ビームの光強度分布とは逆の形状を取るので、あまり精確でない切断点部を形成することになる。標的における出力波面の光強度分布が、均一化されたビームの照射強度と非照射強度との間では、そのパワーに明確な差をもって、照射される。光強度が均一化されたビームの光強度分布を用いると、出力ビーム全体に亙ってより均一に切断され、より精確な端部が形成される。
【0044】
本発明の別の実施例が図4で示される。この実施例も、仏国公開特許公報第2,716,726号の実施例と同様、出力平面における空間光強度分布をホモジェナイズする。しかし本発明によると、ファセット間における境界の形状が際立った端部または不連続部が形成されることなく、すなわち特異的な端部または不連続部に起因する出力ビームの出力平面における強度を一定にしようとするものである。ヨーロッパ特許公開744,664号によると、アレイ上の任意の方向に指向するセルが開示しているが、セル内のフリンジの構成またはセルをまたぐフリンジの連続性については開示していない。図4で示す実施例はまた、出力平面における予め定めた形状の標的領域を照射する。予定された形状の標的領域を説明または表現する別の言い方は、出力平面における予定された空間光強度分布である。さらに別の表現の方法として、出力平面における形成されたパターンビームである。仏国公開特許公報第2,716,726号で用いられた設計、製造方法、および特徴すべてについて、図4で示す実施例4において等しく適用できる。
【0045】
図1〜図3で示すように、ファセット12間の境界が明確な(特異的な)端部または不連続部がホモジェナイザ上に形成されている。図5Aはホログラム16を示し、ファセット12間の特異的な端部または不連続部48がはっきりと見て取れる。図5Bは、図5Aで示すホログラム16のファセット12間の特異的な端部または不連続部48の拡大図である。好適な実施例においては、プラトー50(白色領域で図示)およびバレイ52(valley)(黒色領域で図示)で形成されたファセット端部の回折フリンジ間の交差部は、出力平面において不要な構造物を形成することに留意されたい。
【0046】
ホモジェナイザ上のこのような構造物48が、ホモジェナイザ上に入射する入力ビームの不要な回折の原因となる。規則的にパターン形成された、または規則的に反復されたそのような構造物が入力ビーム14を回折する結果、空間光強度分布において不要な際立った反復する強度変動が、出力平面における出力ビームとして現れる。
【0047】
図4で示す実施例においては、こうした特異的な端部または不連続部を排除した結果、こうした特異的な端部または不連続部に起因する出力ビームの強度変動が最小限に抑えられる。図4で示す実施例では、上述の実施例における規則的にパターン形成されたファセットアレイの代わりに、例えばホログラムのような不規則的にパターン形成された回折フリンジ70または回折格子を有する光学装置54が用いられる。好適な実施例による回折フリンジ70は、プラトー50(白色領域で図示)およびバレイ52(黒色領域で図示)で形成され、この回折フリンジのことをここではプラトーおよびバレイという。このプラトーおよびバレイを有するホログラムの構成が、レンズと似通ったものであることを、当業者ならば理解するだろう。米国特許第4,895,790号は、プラトーおよびバレイを有する光学部品の構成について開示し、その開示内容は一体のものとしてここに統合される。同様に、米国特許第5,202,775号がホログラムの製造方法を開示しており、その開示内容も一体のものとしてここに統合される。
【0048】
不規則にパターン形成されたプラトー50およびバレイ52を有するホログラムからなるホモジェナイザは、もはや、定常的で特異的な端部または不連続部を有さず、出力平面上における出力ビームの不要で定常的かつ反復的な強度変動をもたらすことがない。図4はこの態様を示す。
【0049】
図4で示す本発明に関するファセット領域とは、ホログラム54上の任意に設計された大きさを有する領域を指す。それは、ホログラム上の不規則に形成された、またはパターンされた回折フリンジ(好適な実施例では不規則に形成された、またはパターンされたプラトーおよびバレイ)を指すときに便利に用いられる。ホログラムは少なくとも2つのファセット領域を有する。好適な実施例では、類似するプラトー50およびバレイ52を含むファセット領域56は2つとしてない。ホログラム上に不規則に形成されたプラトーおよびバレイの領域を指す別の便利な方法として、ファセットとしての領域と呼ぶ。あるファセット内のパターンは、自らのパターンに対し名目上の関連性を有し、他のファセット内のパターンとは名目上の関連性を有さない。したがって、ホログラム内の各ファセットは、出力平面における標的領域全体に光を照射する。
【0050】
図7は、図4で示すホログラムの拡大正面図である。図7のホログラム54(および図4のホログラム54)は、図7の破線で示すような4×4のファセット領域またはファセット56のアレイを有するものとして任意に呼んできた。これらの破線はホログラム上の構造物ではないが、この実施例に関するファセット領域または1つのファセットを特定するのに用いられ、この実施例のホログラム54に関する1つの領域を特定するのに便利である。各ファセット領域56は、不規則的にパターン形成されたプラトー50およびバレイ52を有する。ファセット領域56間には特異的な端部または不連続部は一切ない。図4で示す16個のファセット領域56の1個だけについて説明するように、破線が図示されている。というのも、図4で、他の15個のファセット領域についても破線で説明すると、見づらくなるし、混乱させる。
【0051】
図4を参照すると、入力光ビーム、好適にはコリメートされたビームがホログラム54のファセット領域またはファセット56を照射するとき、不規則的にパターン形成されたプラトー50およびバレイ52は、もはや、出力平面18における規則的で不適当な強度変動(図示せず)を伝播させる不適当な構造物を与えるものではない。本実施例の更なる利点は、独立した各ファセット56を設計してファセット領域またはホログラム全体を設計すると、より大きい設計自由度が得られる。そして設計者は、プラトー50およびバレイ52を調整することにより、出力平面における不要な強度変動を抑えるように設計することができる。一方、別々のファセットを用いた実施例における特異的な端部または不連続部によると、これらの特異的な端部または不連続部に関連して設計自由度ははるかに小さいものとなる。この実施例の別の利点は、独立した各ファセット56を設計してファセット領域またはホログラム全体を設計すると、より大きい設計自由度が得られる。より大きい設計自由度とは、例えばリング状および十字型などの任意の形状を有する出力ビームを形成できることにある。
【0052】
図4で示す実施例では、コリメートされた入力ビーム14がファセット領域56を照射し、ファセット領域56が予定された分散角度32で伝播ビーム20cおよび20dを伝播する。本発明の当業者は、分散角度についてよく知っている。分散角度または発散角度とは、有限の伝播距離に対するビームサイズの僅かな増加分のことであり、ラジアンまたは度数で表現される。所与のファセット領域56において、プラトー50およびバレイ52は、入射ビーム14の伝播部分20cおよび20dが予定された分散角度を有するように、入力ビーム14を回折する。ファセット領域56により与えられた分散角度は、所望する出力ビームが出力平面に伝播するように、ホログラム54の設計者が選択するものである。好適に設計者は、プラス・マイナス・ゼロからプラス・マイナス・90°の範囲の分散角度を事前に選択できる。図6では、入力ビーム14の一部が照射するファセット領域56(側面図で示す)を示し、ここでは出力平面18に伝播するビーム20eおよび20fに対してプラス・マイナス20°の分散角度を与えている。
【0053】
ビームホモジェナイザ10を利用する場合、そして所望する出力ビームの用途に応じて拡散角度が選択される。分散角度は、実際の応用例での必要に応じて設計者が選択することである。例えば、機械視野の照射システムでは、10度×15度の長方形領域に亙って均一な照射が必要とされることがある。設計者は、このように所望するように照射させるためにビームホモジェナイザの分散角度を選択することになる。
【0054】
予定した分散角度を有するビームを伝播させるファセット領域56に関して、設計者は、伝播光20c、20d、20e、および20fの分散角度を制御する。ホログラム54のファセット領域56により、出力平面18上に照射される標的領域16が照射されたファセット領域56よりも大きくなるような分散角度を与えるのが望ましい。
【0055】
図4で示す実施例では、出力平面18における予定された標的領域16が照射されるように、ホログラムが設計される。図4で示す実施例により、予定された標的領域に亙って空間的光強度がホモジェナイズされる。つまりこの実施例によれば、ホログラム表面上の入力ビームの光強度分布が、設計パラメータから逸脱した場合であっても、出力平面において一定の予定された光強度分布が得られる。
【0056】
設計者は、標的領域16に関して任意の特定の形状を選択することができる。所望する形状を有する標的パターン16をホログラム54から出力平面18上に投射できるように、設計者はプラトー50およびバレイ52を設計する。ホログラムを構成するこれらの空間的振動数構成物(spatial frequency content of the hologram:プラトー50およびバレイ52)は、所望するパターンを形成するように設計される。つまり、プラトー50およびバレイ52の大きさおよび配向は、所望するパターンを形成するように設計される。設計に際してはコンピュータを用いることが好適である。
【0057】
この実施例において、ファセット領域56は、予定の設計された分散角度で、入力ビーム14の一部分20cおよび20dを伝播させる。さまざまな、予定された分散角度で光を伝播させることにより、ホログラム54のファセット領域56から出力平面18上の標的パターン16に予定された空間光強度で光照射される。標的パターンとは本質的に、出力平面18における非照射領域36に隣接する出力平面18の照射領域34から構成される。予定された空間光強度のビームが出力平面18における標的領域34に照射されるように、そして出力平面18上の標的領域34以外では相対的にほとんどゼロの空間光強度のビームが照射されるように、つまり出力平面18上の標的領域34を照射するように、ホログラム54は設計される。図4で示す標的パターン34は、円形パターンである。このパターンを図8の正面図で示す。円形標的パターン16とは、つまり、予定された空間光強度分布パターンであって、このとき空間的な光強度は出力平面18において円内に分布され、円の外では相対的に全く分布されていないことを図8で示す。つまり図8は、出力平面18において照射円形領域34が相対的非照射領域36を取り囲むように、空間的光強度が出力平面18上に分布されるようにした、予定された光強度分布パターンを示す。図8で示すパターンは、図7で示すホログラムによって形成されたものである。
【0058】
例えば図9で示すようなその他のパターンを、投射するために、ホモジェナイザ10の設計者は選択することができる。図9は、出力平面18上のドーナッツ形状の標的パターン16を示す。つまり、相対的非照射の円形領域37がリング状の照射領域16で取り囲まれ、この照射領域16が次いで相対的非照射領域36に隣接するような、予定された光強度分布パターンを示す。例えば花や矩形の形状を有する非円形パターンもまた選択することができる。
【0059】
ホモジェナイザ10は、出力平面18の照射領域34上に均一な空間光強度分布を有するパターンを投射する。図8および9で示すパターン16は、照射領域34において比較的に均一な空間光強度分布を有する。
【0060】
図4で示す実施例は、フォトリソグラフィ工程で極めて有効なものである。フォトリソグラフィ工程は、本質的に光化学媒体中にあるパターンを露光する方法である。この方法は、集積回路を製造するために用いられる。これら洗練されたデバイスを形成するためのパターンは、フォトリソグラフ工程において全く忠実に最高の解像度をもって画像形成される必要がある。
【0061】
フォトリソグラフによる露光システムは、予定されたパターンでウェーハ上のレジストを露光するために、ウェーハ上のマスクパターンを画像形成するのに用いられる。後続のウェーハ処理工程により、例えば集積回路のような所望するデバイスを最終的に形成する層を完成させる。
【0062】
このマスクが、例えば5対1または10対1の縮小率を有するレーザステッパなどのような、投射式リソグラフィシステムで用いられる場合、マスクはしばしばレティクルと呼ばれる。レティクルまたはマスクは一般に、透明基板上にクロム領域を設けて形成される。マスクのクロム領域は、入射光を遮るので、光の強度変動としてマスクパターンを焼き付ける。5対1のレーザステッパでは、レティクルのパターンは、ウェーハに画像形成する際、1/5の倍率で縮小される。通常、この応用例では、回折部から照射されるビームは、相対的に均一で、かなり狭小な分散円錐角度、つまり限定された空間光強度分布および角度光強度分布を有する。
【0063】
本発明によれば、ウェーハ上の光の角度分布を制御することができる。ウェーハを照射する光の特定の角度分布を変更することにより、フォトリソグラフ露光システムの被写界深度および解像度を大きくすることができる。本発明は、入力ビームの位置の変動、および入力ビームの空間光強度分布の変動に比較的に影響を受けにくいので、フォトリソグラフィ工程において更なる利点を有する。
【0064】
本発明によると、フォトリソグラフィ工程で用いられる露光の強度、角度を有する周期的構成、および瞳孔パターン形状を制御することができる。このように制御することで、集積回路ウェーハ上のマスタパターンに関する画像の解像度を改善することができる。いくつかのマスタパターンに関しては、光がある角度で、または一定の角度範囲で照射する方がよいということが分かってきた。ホモジェナイザは、空間的エネルギをホモジェナイズする一方、その角度で光を与えるとともに、露光のその他の特性を制御する。このように制御することにより、半導体チップの製造過程において、あるいはフォトリソグラフィ工程を用いるその他の領域において、生産性が向上する。例えば図10を参照すると、光源(図示せず)は、コリメートされた入力ビーム14で、図4の実施例のホモジェナイザ10(側面図で示す)を照射する。このホモジェナイザ10は、入力光の大部分を所望する分散角度、予定された強度、および空間光強度分布で伝播させる。このとき予定された空間光強度分布は均一となる。この伝播された部分20fおよび20gは感光させる光として機能する。マスタまたはマスク60は、ホモジェナイザ10に接近して配置されるので、ホモジェナイザ10とマスク60との間で光強度分布に相当の差異が生じることはなく、つまりビームは、ホモジェナイザ10およびマスク60において同じである。マスク60を出力平面18(図示せず)には配置しないことが好ましい。マスタ60は、所望する露光20fおよび20gにより照射される。マスタ60に遮られない露光20fおよび20gの一部光20hは、マスタ60を通過してレンズ62を照射する。この一部光20hは、所望する予定された分散角度を有している。続いてレンズ62は、入力光20hを通過させ、例えばフォトレジスト(図示せず)を用いてマスタ60の対象となるウェーハ64の上に画像を焼き付ける。レンズ62は、所望する縮小倍率を有する。この実施例によれば、所望する方法で、とりわけ所望する分散角度で対象となるウェーハ64上に画像を焼き付ける。つまりウェーハは、所望する最適の特性を有する照射光で、予定された所望する方法で露光され、複製品が生産される。このようにして、所望され、必要とされる照射光を最適化することにより、例えば半導体チップ製造過程においてより高い生産性を得ることができる。このホモジェナイザは、例えば、分散角度0から2度までを遮蔽し、2から4度を通過させ、4度以上を遮蔽するように用いることができる。あるいは、例えば、プラス3度からマイナス3度に至る領域をホモジェナイザにより形成することができる。ホモジェナイザ10のプラトー50およびバレイ52を、好適にはコンピュータを用いて設計することにより、伝播光の分散角度および周期的構成が制御できる。
【0065】
好適には、ホログラム54はコンピュータ形成されたホログラムである。さらに好適には、分散角度を含むコンピュータ形成されたホログラムの特性は、コンピュータを用いて設計され、選択される。所望の予定された照射標的領域、出力平面における所望の予定された空間光強度分布、およびその他の必要とされる特性が得られるように、その特性が選択される。
【0066】
本発明を設計する際、設計者は所望の角度分布を決定する。設計者は、所望の角度範囲に相当するフーリエ平面における強度分布を用いて、フーリエ変換ホログラムを設計する。例えば、設計者は4度から7度の、つまり3度幅で通過させるリングを選択してもよい。するとこの標的は、出力平面18上にリング状の回折ファー・フィールド・パターンを有するホログラムを形成することになる。択一的に、図10で示すフォトリソグラフシステムで用いられる場合、平面60でのホログラムの出力強度は均一であるが、その分布角度は4度から7度である。フーリエ変換ホログラムは、回折性のフリンジパターンまたは位相透過パターンを有するので、そのようなパターンのフーリエ変換は、所望する角度領域上に所望する伝播に対応する。フーリエ変換ホログラムをどのように設計するかについては、本発明の当業者には広く知られたところである。フーリエ変換は、コンピュータでなされることが望ましい。
【0067】
一般に、ファースト・フーリエ変換を行うと、離散的なポイントでしかパターンが計算されない。一般に、フーリエ変換ホログラムは、斑点を排除または抑制するために反復される。斑点は極めて明るく、そして暗い光のスポットで、可干渉システムにおける干渉によって生じる。本発明のパターンは反復しない。本発明によるフーリエ変換ホログラムを設計するための好適な方法は、コンピュータによる反復的な最適化技術を用いることで、それは、例えば上述したような、そして同一発明者であるフェルドマンらによる「スポットアレイを形成するための高効率ホログラムの反復的エンコード方法」(Optics Letters, Vol.14, pp.479-81)に開示されたような(その開示内容は、一体のものとしてここに統合される)IDO法である。出力はフーリエ変換平面で、入力はCGH平面でなされる。好適な実施例では、非可干渉な、または一部が非可干渉な光により、また加えて非常に数多くの画素を有するホログラムを設計することにより、斑点の発生が回避される。非常に数多くの画素を有するホログラムによると、出力平面においてほとんど連続的な画像を形成する。フーリエ変換ホログラムは、出力平面における各点がホログラムの各ファセット領域からの寄与を受けるような特性を有する。
【0068】
上述したように、一旦設計され製造されると、このホログラムは照射システムの中に設置される。任意の強度分布を有するコリメートされたビームで照射される場合、この例のホログラムは、CGHから比較的に遠く離れた平面において所望する角度に相当するリングを伝播させる。ビームがコリメートされない場合、リングは比較的に幅広くなり、その幅は入力ビームの拡散する精確な円錐角度に依存する。CGHに極めて接近した平面においては、CGHを照射するビームと同じ強度を有するビームが確認されることとなるが、ビームは、入力ビームの拡散角度とCGHの分散角度が組み合わされたものに相当する拡散角度を有することになる。
【0069】
図4で示す実施例において、出力平面の指定された標的領域のみが照射されるようにホログラム54は設計される。つまり、予定された空間光強度分布が出力平面に対して入射するように、ホログラムは設計される。
【0070】
図4を参照すると、コリメートされた入力ビーム14がホログラム54を有するホモジェナイザ10に入射し、そのホログラムは、破線で示す16個のファセット領域56からなるアレイ11を有する(図4で、16個のファセット領域またはファセットのうち1個だけについて破線で示し、図7で16個すべてについて示す)。これらファセット領域56の各々は、プラトー50およびバレイ52の不規則なパターンを有する。これらファセット領域56のうち、2つとして類似するものはない。これらファセット領域56は、入射するコリメートされた光ビーム14のどの一部分も出力平面18における標的16に照射するように構成されている。コリメートされたビーム14の一部分は、ファセット領域56の各々を介して伝播する。この部分20cおよび20dは、ファセット領域56により与えられる予定された角度分散を有する。上述の明細書で開示されたように、20cおよび20dで示されるこの部分が標的16に重なり合う。こうして重ね合わせることにより、入力ビーム14にはあった空間エネルギの変動が、出力平面18においては存在しなくなる。つまり、出力平面18においては照射部分全体16および34に亙って、均一な空間光強度分布が得られる。この分布またはパターンによりビーム22が形成される。標的領域、または照射部分は予定された形状を有する。この平面の照射部分16および34が予定される。図4では予定されたのは円形である。この平面の照射部分16および34は、ファセット間の特異的な端部または不連続部に起因する好ましくない強度変動をもたない。なぜなら、不規則にパターン形成されたプラトーおよびバレイを有する、不規則にパターン形成されたファセットを用いることにより、上記の特異的な端部または不連続部を取り除いたからである。
【0071】
本発明によれば設計者は出力平面の照射領域のため空間光強度について均一な振幅を選択することができる。同様に本発明によれば、設計者は出力平面の異なる照射領域において異なる振幅の空間光強度を選択することができる。例えば図8において設計者は、照射された円16の上半分に対して振幅1(任意の単位)の空間光強度レベルを選択し、照射された円16の下半分に対して振幅1.5(任意の単位)の空間光強度レベルを選択することができる。つまり空間光強度分布とは、出力平面における照射パターンの形状と、照射部分内での空間光強度分布との両方を含んでいる。しかし、選択された空間光強度分布はホモジェナイズされ、その結果、入力ビーム分布に変化があっても光強度分布は変化しない。設計者が選択する光強度分布は、当座の応用例に即して選択される。
【0072】
位相伝播パターンとは回折フリンジパターンの数学的表現である。つまり物理的な回折フリンジパターンは、例えば図7で示すように、数学的に表現することができ、位相伝播パターンとして数学的に表現する。当業者ならば、位相伝播パターンおよび回折フリンジパターンとフリンジの数学的関係を理解するだろう。
【0073】
本発明の当業者ならば、位相伝播パターンのフーリエ変換をどのように行うか知っているだろう。フーリエ変換ホログラムは、そのパターンが所望する角度領域に対する所望の伝播に相当するようにした、回折フリンジパターンまたは位相伝播パターンを有している。フーリエ変換はコンピュータを用いて計算されるのが望ましい。
【0074】
二次元位相部品は、ホログラムのような光学部品の構成または製造に用いられる。本発明の当業者ならば2次元位相部品についてよく知っているだろう。米国特許第4,895,790号は、このような2次元位相部品の構成について開示しており、その開示内容はここに統合される。
【0075】
当業者なら構成を変更するだろうし、本発明から逸脱することなく、さまざまな明らかな修正および実施例を実施することができる。上述の明細書または添付図面で述べた材料は例示的なものに過ぎない。また上述の明細書は限定的なものではなく、例示的なものであって、本発明はクレームの範囲によって限定される。
【符号の説明】
【0076】
10 ホモジェナイザ、11 ファセット領域のアレイ、12 ファセット領域、14 入力光ビーム、16 標的、18 出力平面、24,26 光強度分布、48 不連続部、50 プラトー、52 バレイ、54 光学装置(ホログラム)、56 ファセット領域、60 マスク、62 レンズ、64 ウェーハ、70 回折フリンジ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィシステムで用いられる光学システムであって、
入力ビームを変換して得られた出力ビームを、一定の標的面積を有するマスク(60)を介して、ウェーハ(64)上に照射するホモジェナイザ(10)を備え、
ホモジェナイザ(10)は、複数のファセット領域(56)からなるホログラム(54)を有し、
各ファセット領域(56)は、不規則なパターン形状を有する複数の回折フリンジ(70)から構成され、各回折フリンジ(70)で形成されるファセット領域(56)の全体的なパターン形状が各ファセット領域(56)において互いに異なり、
各ファセット領域(56)のそれぞれの回折フリンジ(70)のパターン形状は、出力ビームがマスク(60)の一定の標的面積上に連続的な強度分布で照射され、マスク(60)により遮られない出力ビームがウェーハ(64)に均一な強度分布で照射されるように構成されていることを特徴とする光学システム。
【請求項1】
リソグラフィシステムで用いられる光学システムであって、
入力ビームを変換して得られた出力ビームを、一定の標的面積を有するマスク(60)を介して、ウェーハ(64)上に照射するホモジェナイザ(10)を備え、
ホモジェナイザ(10)は、複数のファセット領域(56)からなるホログラム(54)を有し、
各ファセット領域(56)は、不規則なパターン形状を有する複数の回折フリンジ(70)から構成され、各回折フリンジ(70)で形成されるファセット領域(56)の全体的なパターン形状が各ファセット領域(56)において互いに異なり、
各ファセット領域(56)のそれぞれの回折フリンジ(70)のパターン形状は、出力ビームがマスク(60)の一定の標的面積上に連続的な強度分布で照射され、マスク(60)により遮られない出力ビームがウェーハ(64)に均一な強度分布で照射されるように構成されていることを特徴とする光学システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−153871(P2010−153871A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−292936(P2009−292936)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【分割の表示】特願平10−529036の分割
【原出願日】平成9年12月19日(1997.12.19)
【出願人】(399036475)ディジタル・オプティックス・コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】DIGITAL OPTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292936(P2009−292936)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【分割の表示】特願平10−529036の分割
【原出願日】平成9年12月19日(1997.12.19)
【出願人】(399036475)ディジタル・オプティックス・コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】DIGITAL OPTICS CORPORATION
【Fターム(参考)】
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