説明

ピアノの押鍵情報検出装置

【課題】ハンマーシャンクへのシャッタの取付を容易にかつ精度良く行えるとともに、ピアノの押鍵情報を精度良く検出できるピアノの押鍵情報検出装置を提供する。
【解決手段】本発明の押鍵情報検出装置1では、ハンマー6のハンマーシャンク6aにシャッタ40が取り付けられており、鍵5の押鍵に伴ってハンマー6が回動する際に、シャッタ40の移動が光センサ51〜53で検出され、それらの検出信号SI1〜SI3に基づいて、押鍵情報が検出される。シャッタ40は、一体の成形品で構成され、一対の嵌合部40b,40bを有しており、嵌合部40b,40bを、ハンマーシャンク6aの軸部6fに弦S側から嵌合させ、幅がより大きな基端部6dに当接させることによって、ハンマーシャンク6aに取り付けられる。それにより、シャッタ40は、ハンマーシャンク6aの所定位置に容易にかつ精度良く位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵に伴って回動するハンマーによって弦を打弦するピアノの鍵の押鍵情報を検出するピアノの押鍵情報検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のピアノの押鍵情報検出装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この押鍵情報検出装置では、ハンマーのハンマーシャンクに、板状のシャッタが取り付けられている。具体的には、ハンマーシャンクには上下方向に貫通する取付孔が形成されており、その取付孔の内部にハンマーシャンクの幅方向に延びるピンが取り付けられている。また、シャッタは長方形状のものであり、その下端から上方に延びる取付用の逆U字状の切欠きが形成されている。シャッタは、その切欠きがハンマーシャンクのピンに係合した状態で、ハンマーシャンクに固定されている。
【0003】
また、シャッタの上部には検出用の切欠きが設けられており、シャッタの移動経路上には光センサが設けられている。鍵の押鍵に伴ってハンマーシャンクが回動すると、光センサがシャッタの移動を検出するとともに、検出信号を出力する。光センサは、切欠きの通過に応じて検出信号を出力し、その検出信号に基づいて、鍵の押鍵の有無やハンマーの回動速度を含む押鍵情報が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,307,648号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このピアノの押鍵情報検出装置では、ハンマーシャンクにシャッタを取り付けるために、ハンマーシャンクごとに取付孔を形成し、取付孔にピンを取り付けなければならず、そのための多くの工数が必要であり、コストアップの原因になる。また、上記のような工程を経ることから、シャッタの取付誤差が生じやすく、押鍵情報を精度良く検出できないおそれがある。さらに、幅の小さいハンマーシャンクに上下方向に貫通する取付孔が形成されるため、ハンマーシャンクの剛性および強度が低下し、それに起因するハンマーシャンクの変形が発生することによって、押鍵情報を精度良く検出できないなどの不具合が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ハンマーシャンクへのシャッタの取付を容易にかつ精度良く行えるとともに、ピアノの押鍵情報を精度良く検出することができるピアノの押鍵情報検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、鍵の押鍵に伴い、支点を中心として回動する、ハンマーシャンクを有するハンマーによって弦を打弦するピアノにおいて、鍵の押鍵情報を検出するピアノの押鍵情報検出装置であって、一体の成形品で構成され、本体部、本体部の左右方向の両端から弦と反対方向に延びる一対の嵌合部、および本体部から弦側に延びる被検出部を有し、一対の嵌合部がハンマーシャンクに嵌合し、本体部がハンマーシャンクに載せられた状態で、ハンマーシャンクに取り付けられたシャッタと、ハンマーシャンクと弦の間に設けられるとともに、シャッタの被検出部の移動経路を間にした一方の側に配置され、光を出射する発光部と、シャッタの移動経路の他方の側に配置され、発光部からの光を受光する受光部とを有し、ハンマーの回動に伴う被検出部の移動に応じて、受光部の受光状態を表す検出信号を出力する光センサと、光センサからの検出信号に基づいて、押鍵情報を検出する押鍵情報検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
このピアノでは、鍵が押鍵されると、それに伴ってハンマーが回動し、弦を打弦する。また、この押鍵情報検出装置では、シャッタの移動経路上に、発光部と、発光部から出射された光を受光する受光部を有する光センサが配置されている。この光センサは、ハンマーが回動すると、それに伴うシャッタの被検出部の移動に応じた受光部の受光状態を表す検出信号を出力し、この検出信号に基づいて押鍵情報が検出される。
【0009】
このシャッタは、一体の成形品で構成されるので、寸法誤差が小さい。また、シャッタは、本体部の左右の両端から延びる一対の嵌合部がハンマーシャンクに嵌合するとともに、本体部がハンマーシャンクに載せられた状態で、取り付けられるので、一対の嵌合部をハンマーシャンクに嵌合させるだけで、シャッタをハンマーシャンクの幅方向および厚さ方向の所定位置に容易にかつ精度良く位置決めすることができる。以上により、押鍵情報の検出精度を向上させることができる。
【0010】
また、シャッタは、嵌合部をハンマーシャンクに弦側から嵌合させることによって取り付けられる。一般に、ハンマーシャンクの弦側は、その反対側と比べてスペースに余裕があるので、シャッタの取付作業を容易に行うことができる。
【0011】
さらに、従来と異なり、ハンマーシャンクにシャッタを取り付けるための取付孔を形成する必要がないので、シャッタの取付工数を削減でき、コストダウンを図れるとともに、ハンマーシャンクの剛性および強度を維持することによって、その低下に起因する、ハンマーシャンクの変形などの不具合を回避することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノの押鍵情報検出装置において、ハンマーシャンクは、支点に回動自在に取り付けられた基端部、および基端部に連続し、基端部よりも幅の小さな軸部を有し、シャッタは、一対の嵌合部が、ハンマーシャンクの軸部に嵌合し、基端部に接した状態で、ハンマーシャンクに取り付けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ハンマーシャンクの軸部に嵌合するシャッタの嵌合部が、軸部よりも幅の大きな基端部に接した状態で、シャッタがハンマーシャンクに取り付けられている。このため、嵌合部をハンマーシャンクの軸部に嵌合させた後、基端部に当接させるだけで、シャッタをハンマーシャンクの長さ方向の所定位置に容易にかつ精度良く位置決めでき、それにより、シャッタの取付作業をさらに容易化することができるとともに、押鍵情報の検出精度をさらに向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載のピアノの押鍵情報検出装置において、ハンマーシャンクは、基端部と軸部の間に、軸部側に向かって次第に幅が小さくなる移行部を有し、シャッタの嵌合部は、移行部と相補的に形成され、移行部に嵌合するテーパ部を有することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ハンマーシャンクが移行部を有する場合でも、この移行部と相補的に形成されたシャッタのテーパ部が移行部に嵌合するので、請求項2による前述した精度の良い位置決めおよび取付作業の容易化という作用を同様に得ることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3に記載のピアノの押鍵情報検出装置において、シャッタの被検出部は、支点をそれぞれ中心とし、支点からの距離が互いに異なる2つの円弧に沿ってそれぞれ延びる2つの外縁を有することを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、シャッタの被検出部は支点を中心とする2つの円弧に沿ってそれぞれ延びる2つの外縁を有するので、ハンマーの回動角度にかかわらず、被検出部が光センサの発光部と受光部の間を一定の通過幅で通過するので、被検出部と他の部材との干渉を生じることなく、被検出部を可能な限り大きくすることができ、それにより、押鍵情報の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による押鍵情報検出装置、およびこれを適用した消音ピアノの概略構成を示す図である。
【図2】ハンマーおよびシャッタの斜視図である。
【図3】シャッタの斜視図である。
【図4】シャッタの側面図である。
【図5】図1の部分斜視図である。
【図6】楽音制御装置の一部を示す図である。
【図7】第1〜第3光センサの回路図である。
【図8】ハンマーの回動時における第1〜第3検出信号の出力状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態によるグランド型の消音ピアノ2の概略構成を示している。なお、以下の説明では、消音ピアノ2を演奏者から見た場合の手前側(図1の右側)を「前」、奥側(図1の左側)を「後」とし、さらに左側および右側をそれぞれ「左」および「右」として、説明を行うものとする。
【0020】
同図に示すように、この消音ピアノ2は、棚板3に筬4を介して載置された複数(例えば88個)の鍵5(1つのみ図示)と、鍵5ごとに設けられたハンマー6と、鍵5の後部上方に設けられたアクション11と、消音機構20と、押鍵情報検出装置1を含む楽音制御装置50(図6参照)を備えている。この消音ピアノ2では、演奏モードが、ハンマー6による弦Sの打弦によってアコースティックな演奏音を発生させる通常演奏モードと、ハンマー6による打弦を阻止した状態で、電子的な演奏音を発生させる消音演奏モードに、切り替えられる。
【0021】
鍵5は、その中央に形成されたバランスピン孔(図示せず)を介して、筬4に立設されたバランスピン(図示せず)に回動自在に支持されている。
【0022】
アクション11は、ウィッペンレール7に取り付けられており、鍵5の後部上方に配置されている。ウィッペンレール7は、複数の鍵5の全体にわたって左右方向に延びており、筬4の左右の端部とその中間の所定の位置に設けられた複数のブラケット9(1つのみ図示)に渡されている。また、アクション11は、鍵5ごとに設けられたウィッペン12、レペティションレバー13およびジャック14を有している。各ウィッペン12は、その後端部において、ウィッペンレール7に回動自在に取り付けられており、鍵5の後部に載置されている。また、レペティションレバー13およびジャック14は、ウィッペン12に回動自在に取り付けられている。
【0023】
ハンマー6は、前後方向に延びるハンマーシャンク6aと、ハンマーシャンク6aの後端部に取り付けられたハンマーヘッド6bを有している。また、ハンマー6は、ハンマーシャンク6aの前端部において、ハンマーシャンクレール8にねじ止めされたハンマーシャンクフレンジ6cに、センターピン10を介して回動自在に支持されており、図1に示す離鍵状態では、上述したレペティションレバー13に載置されている。ハンマーシャンクレール8は、複数の鍵5の全体にわたって左右方向に延びており、上述した複数のブラケット9に渡されている。
【0024】
ハンマーシャンク6aは、センターピン10に回動自在に取り付けられた基端部6dと、基端部6dから後方に連なり、後側に向かって次第に幅が小さくなる移行部6eと、移行部6eから後方に長く延び、基端部6dよりも幅の小さな軸部6fなどから構成されている(図2参照)。
【0025】
消音機構20は、消音演奏モード時に、ハンマー6による弦Sの打弦を阻止するためのものであり、図1に示すように、ストッパレール21と、ストッパレール21を支持する複数のレール支持部材22(1つのみ図示)と、ストッパレール21を駆動するための駆動ロッド25と、駆動ロッド25を支持する複数のロッド支持部材27(1つのみ図示)と、駆動ロッド25を駆動するための操作レバー(図示せず)を有している。
【0026】
ストッパレール21は、金属製の板材で構成され、複数のハンマー5の全体にわたって、左右方向に延びており、弦Sとハンマー6の間に、ハンマーシャンク6aの後部付近に対向するように配置されている。また、ストッパレール21は、高中音域レールおよび低音域レールに区分されており、これらの高中音域レールおよび低音域レールはそれぞれ、高中音域および低音域の全体にわたって延び、レール支持部材22にねじ止めされている。ストッパレール21の下面には、レール支持部材22に対応する部分を除いて、ゴムまたは発泡ウレタンなどの弾性材料で構成されたクッション材21aが取り付けられている。
【0027】
複数のレール支持部材22は、ブラケット9に対応する位置に配置されている。図1に示すように、各レール支持部材22は、その前端部において、ピン状の支点22aを介して上記のロッド支持部材27に回動自在に取り付けられている。以上の構成により、レール支持部材22は、ストッパレール21とともに、この支点22aを中心として回動自在になっている。
【0028】
駆動ロッド25は、1本の丸棒で構成されており、複数のハンマー6の全体にわたって、左右方向に延びている。駆動ロッド25には、レール支持部材22に対応する位置に、L字状の複数の押圧部26(1つのみ図示)が設けられており、押圧部26は、レール支持部材22のU字状の係合部22bに係合している。
【0029】
複数のロッド支持部材27は、レール支持部材22と同様、ブラケット9に対応する位置に配置されている。各ロッド支持部材27は、その前端部においてハンマーシャンクレール8にねじ止めされるとともに、後端部においてウィッペンレール7にねじ止めされている。ロッド支持部材27には、左右方向に貫通する取付孔(図示せず)が形成されており、この取付孔にレール支持部材22の支点22aを通すことによって、レール支持部材22は、ロッド支持部材27に回動自在に取り付けられている。
【0030】
さらに、ロッド支持部材27の後端部には、金具28が取り付けられ、駆動ロッド25はこの金具28を介し、その軸線を中心として、ロッド支持部材27に回動自在に支持されている。
【0031】
以上の構成の消音機構20では、通常演奏モードで演奏を行う場合、操作レバーは非操作状態に保持される。この状態では、ストッパレール21は、ハンマー6の回動範囲から退避した打弦許容位置に保持される(図1の実線位置)。
【0032】
一方、通常演奏モードから、演奏モードを消音演奏モードに設定するために、操作レバーが操作されると、それに連動して駆動ロッド25が図1の反時計回りに回動する。これにより、駆動ロッド25の押圧部26が、レール支持部材22を介してストッパレール21を下方に押圧することによって、ストッパレール21は、打弦阻止位置に移動し、保持される(図1の2点鎖線位置)。
【0033】
図6に示すように、楽音制御装置50は、押鍵情報検出装置1、スキャン回路54、CPU55、ROM56、RAM57、音源回路58、波形メモリ59、DSP60、D/A変換器61、パワーアンプ62およびスピーカ63で構成されている。
【0034】
押鍵情報検出装置1は、シャッタ40および第1〜第3光センサ51〜53を備えている。図2に示すように、シャッタ40は、ハンマー6のハンマーシャンク6aに取り付けられており、遮光性を有する合成樹脂などの成形品で一体に構成されており、図3〜図4に示すように、板状の本体部40a、本体部40aの左右方向の両端から下方に延びる一対の嵌合部40b,40b、および本体部40aから上方に延びる第1〜第3シャッタ部41〜43を有している。
【0035】
一対の嵌合部40b,40bは、互いに向き合っており、両者の間隔はハンマーシャンク6aの幅とほぼ同じである。嵌合部40b,40bの前部には、ハンマーシャンク6aの移行部6eと相補的に形成されたテーパ部40c,40cが設けられている。
【0036】
第1シャッタ部41は、本体部40aの前部に配置されており、円弧状の2つの前縁41aおよび後縁41bを有する。これらの前縁41aおよび後縁41bは、センターピン10をそれぞれ中心とする、センターピン10からの距離が互いに異なる2つの円弧に沿って、同心状に延びている。
【0037】
第2および第3シャッタ部42,43は、本体部40aの後部に配置され、互いに一体になっており、第2シャッタ部42は、第3シャッタ部43の前側に位置している。第2および第3シャッタ部42,43は、それぞれ矩形状に形成されており、本体部40aからの高さは第3シャッタ部43の方が高い。また、第3シャッタ部43の中央には、矩形状の窓43aが形成されており、窓43aの上縁は第2シャッタ42の上端よりも低い。
【0038】
以上の構成のシャッタ40は、嵌合部40b,40bがハンマーシャンク6aの軸部6fに嵌合し、テーパ部40c,40cが移行部6eに嵌合するとともに基端部6dに当接し、本体部40aがハンマーシャンク6aに載せられた状態で、ハンマーシャンク6aに接着されている。
【0039】
第1〜第3光センサ51〜53は、基板70に設けられている。図5に示すように、この基板70は、左右方向に延びており、取付プレート71の開口(図示せず)に嵌められ、これにねじ止めされている。取付プレート71は、その前端部においてハンマーシャンクレール8に回動自在に支持されるとともに、後端部においてロッド支持部材27にねじ止めされており、それにより、基板70は、複数のハンマー6のハンマーシャンク6aの前部を覆った状態で、水平に取り付けられている。
【0040】
基板70には、ハンマー6ごとに、シャッタ40の第1シャッタ部41に対応する位置に、多数の前後方向に延びる長孔状の第1シャッタ通過孔70aが形成され、第2および第3シャッタ部42,43に対応する位置に、前後方向に延びる多数の長孔状の第2シャッタ通過孔70bが形成されている。ハンマー6の回動に伴い、シャッタ40の第1シャッタ部41は第1シャッタ通過孔70aを通過し、第2および第3シャッタ部42,43は第2シャッタ通過孔70bを通過する。
【0041】
第1〜第3光センサ51〜53は、水平な基板70の下面に取り付けられており(図1参照)、互いに同じ高さに配置されている。図7に示すように、第1〜第3光センサ51〜53は、互いに同じ構成のフォトインタラプタで構成されている。第1光センサ51は、各第1シャッタ通過孔70aの左右両側に配置された一対の発光ダイオード51aおよびフォトトランジスタ51bで構成されている。同様に、第2光センサ52は、各第2シャッタ通過孔70bの前部の左右両側に配置された一対の発光ダイオード52aおよびフォトトランジスタ52bで構成され、第3光センサ53は、各第2シャッタ通過孔70bの後部の左右両側に配置された一対の発光ダイオード53aおよびフォトトランジスタ53bで構成されている。
【0042】
発光ダイオード51a〜53aは、pn接合されたダイオードで構成されており、それらのアノードおよびカソードはそれぞれ、基板70に電気的に接続されている。これらの発光ダイオード51a〜53aは、それらのアノードに、CPU55から駆動信号が出力されることによって作動し、その発光面(図示せず)から光を、水平な光路に沿い、フォトトランジスタ51b〜53bに向かって出射する。
【0043】
フォトトランジスタ51b〜53bは、npn接合されたバイポーラトランジスタで構成されており、それらのコレクタおよびエミッタはそれぞれ、基板70に電気的に接続されている。これらのフォトトランジスタ51b〜53bは、それらのベースに相当する受光面(図示せず)で光を受光し、その光量(以下「受光量」という)が所定レベル以上のときに、コレクタ−エミッタ間が導通状態になり、エミッタからHレベル(以下、単に「H」という)の信号が出力される。一方、受光量が所定レベル未満のときに、コレクタ−エミッタ間が非導通状態になり、エミッタからLレベル(以下、単に「L」という)の信号が出力される。第1〜第3光センサ51〜53は、これらのH信号またはL信号を、第1〜第3検出信号SI1〜SI3としてそれぞれ出力する。
【0044】
以上の構成により、鍵5が押鍵されると、鍵5がバランスピンを中心として、図1の時計回りに回動するのに伴い、アクション11の前述したウィッペン12が、鍵5によって突き上げられる。これにより、ウィッペン12は、レペティションレバー13およびジャック14と一緒に上方に回動し、この回動に伴い、ジャック14がハンマー6を突き上げることによって、ハンマー6がセンターピン10を中心として時計回りに回動する。通常演奏モード時には、ストッパレール21が打弦許容位置に位置することによって、ハンマー6のハンマーヘッド6bが弦Sを打弦し、アコースティック音による演奏が行われる。
【0045】
一方、消音演奏モード時には、ストッパレール21が打弦阻止位置に位置することによって、ハンマーヘッド6bが弦Sを打弦する直前で、ハンマーシャンク6aがストッパレール21に当接し、打弦が阻止され、後述するようにして生成された電子音による演奏が行われる。この消音演奏モード時には、ハンマー6の回動に伴い、シャッタ40が第1〜第3光センサ51〜53の光路を開閉し、それに応じた第1〜第3検出信号SI1〜SI3が、スキャン回路54に出力される。
【0046】
図8は、鍵5の押鍵に伴うハンマー6の回動による第1〜第3検出信号SI1〜SI3の出力状態を示している。まず、離鍵状態では、シャッタ40の第1〜第3シャッタ部41〜43が第1〜第3光センサ51〜53の光路を開放することによって、第1〜第3検出信号SI1〜SI3は、ともにHである(タイミングt1以前)。この離鍵状態から、鍵5が押鍵され、ハンマー6が図1の時計回りに回動すると、その直後に、シャッタ40の第1シャッタ部41の上端が第1光センサ51に達することによって、その光路が遮断され、第1検出信号SI1がHからLに立ち下がる(t1)。ハンマー6の回動が進むと、シャッタ40の第3シャッタ部43の上端が第3光センサ53の光路に達することによって、第3検出信号SI3がHからLに立ち下がる(t2)。さらにハンマー6の回動が進むと、シャッタ40の第2シャッタ部42の上端が第2光センサ52の光路に達することによって、第2検出信号SI2がHからLに立ち下がる(t3)。ハンマー6の回動がさらに進み、ハンマーシャンク6aがストッパレール21に当接する付近で、シャッタ40の第3シャッタ部43の窓43aの上縁が第3光センサ53に達することによって、その光路が開放され、第3検出信号SI3がLからHに立ち上がる(t4)。
【0047】
その後、ハンマー6がさらに回動したときに、ハンマーシャンク6aがストッパレール21に当接することによって、ハンマー6が図1の反時計回りに復帰回動し始め、その途中で、シャッタ40の第3シャッタ部43の窓43aの上縁が第3光センサ53に達することによって、その光路が遮断され、第3検出信号SI3がHからLに立ち下がる(t5)。復帰回動がさらに進むと、シャッタ40の第2シャッタ部42が第2光センサ52を通過することによって、第2検出信号SI2がLからHに立ち上がり(t6)、復帰回動がさらに進むと、シャッタ40の第3シャッタ部43が第3光センサ53を通過することによって、第3検出信号SI3がLからHに立ち上がる(t7)。その後、ハンマー5が離鍵位置に復帰する直前で、シャッタ40の第1シャッタ部41が第1光センサ51を通過することによって、第1検出信号SI1がLからHに立ち上がる(t8)。その後、鍵5およびハンマー6は離鍵位置に復帰する。
【0048】
スキャン回路54は、第1〜第3光センサ51〜53から出力された第1〜第3検出信号SI1〜SI3に基づいて、鍵5のオン/オフ情報、およびオンまたはオフされた鍵5を特定するキーナンバ情報を検出するとともに、これらのオン/オフ情報およびキーナンバ情報を、第1〜第3検出信号SI1〜SI3とともに、鍵5の押鍵情報データとしてCPU55に出力する。
【0049】
CPU55は、これらの押鍵情報データに応じ、ROM56に記憶された制御プログラムなどに従って、楽音の発音タイミングおよび止音タイミングを設定するとともに、楽音の音量を設定するなどの発音制御処理を実行する。なお、本実施形態では、CPU55が、押鍵情報検出手段に相当する。
【0050】
音源回路58は、CPU55からの制御信号に従って、音源波形データおよびエンベロープデータを波形メモリ59から読み出し、この読み出した音源波形データにエンベロープデータを付加することによって、原音となる楽音信号を生成する。DSP60は、音源回路58によって生成された楽音信号に所定の音響効果を付加する。D/A変換器61は、DSP60によって音響効果が付加された楽音信号を、デジタル信号からアナログ信号に変換する。パワーアンプ62は、変換されたアナログ信号を所定の利得で増幅し、スピーカ63は、増幅されたアナログ信号を再生し、電子的な楽音として放音する。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、シャッタ40は、嵌合部40b,40bをハンマーシャンク6aに、スペースに余裕がある弦S側から嵌合させることによって取り付けられるので、シャッタ40の取付作業を容易に行うことができる。
【0052】
また、シャッタ40は、一体の成形品で構成されるので、その寸法誤差が小さい。さらに、一対の嵌合部40b,40bをハンマーシャンク6aの軸部6fに嵌合させるだけで、シャッタ40をハンマーシャンク6aの幅方向および厚さ方向の所定位置に容易にかつ精度良く位置決めすることができる。
【0053】
また、嵌合部40b,40bを軸部6fに嵌合させた後、基端部6dに当接させるだけで、シャッタ40をハンマーシャンク6aの長さ方向の所定位置に容易にかつ精度良く位置決めできる。以上により、シャッタ40の取付作業をさらに容易化することができるとともに、押鍵情報の検出精度を向上させることができる。
【0054】
また、ハンマーシャンク6aが移行部6eを有する場合であっても、この移行部6eと相補的に形成されたシャッタ40のテーパ部40c,40cが移行部6eに嵌合するので、前述した精度の良い位置決めおよび取付作業の容易化という効果を、同様に得ることができる。
【0055】
また、従来と異なり、ハンマーシャンク6aにシャッタ40を取り付けるための取付孔を形成する必要がないので、シャッタ40の取付工数を削減でき、コストダウンを図れるとともに、ハンマーシャンク6aの剛性および強度を維持することによって、その低下に起因する、ハンマーシャンク6aの変形などの不具合を回避することができる。
【0056】
さらに、シャッタ40の第1シャッタ部41が、センターピン10を中心とする2つの円弧に沿って延びる前縁41aおよび後縁41bを有するので、ハンマー6の回動角度にかかわらず、第1シャッタ部41が第1光センサ51の発光部51aと受光部51bの間を一定の通過幅で通過するので、第1シャッタ部41と他の部材との干渉を生じることなく、第1シャッタ部41を可能な限り大きくすることができ、それにより、押鍵情報の検出精度を向上させることができる。
【0057】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態は、グランド型のピアノの例であるが、本発明は、他のタイプのピアノ、例えばアップライト型のピアノなどに適用してもよい。また、消音ピアノ以外のピアノ、例えば、演奏者による演奏中の押鍵情報を検出するとともに記録し、記録された押鍵情報に基づいて、自動演奏を行う自動ピアノに適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 押鍵情報検出装置
2 消音ピアノ(ピアノ)
5 鍵
6 ハンマー
6a ハンマーシャンク
6d 基端部
6e 移行部
6f 軸部
10 センターピン(支点)
40 シャッタ
40a 本体部
40b 嵌合部
41 第1シャッタ部(被検出部)
42 第2シャッタ部(被検出部)
43 第3シャッタ部(被検出部)
55 CPU(押鍵情報検出手段)
51 第1光センサ
51a 発光部
51b 受光部
52 第2光センサ
52a 発光部
52b 受光部
53 第3光センサ
53a 発光部
53b 受光部
S 弦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵の押鍵に伴い、支点を中心として回動する、ハンマーシャンクを有するハンマーによって弦を打弦するピアノにおいて、前記鍵の押鍵情報を検出するピアノの押鍵情報検出装置であって、
一体の成形品で構成され、本体部、当該本体部の左右方向の両端から前記弦と反対方向に延びる一対の嵌合部、および前記本体部から前記弦側に延びる被検出部を有し、前記一対の嵌合部が前記ハンマーシャンクに嵌合し、前記本体部が前記ハンマーシャンクに載せられた状態で、当該ハンマーシャンクに取り付けられたシャッタと、
前記ハンマーシャンクと前記弦の間に設けられるとともに、前記シャッタの前記被検出部の移動経路を間にした一方の側に配置され、光を出射する発光部と、前記シャッタの移動経路の他方の側に配置され、発光部からの光を受光する受光部とを有し、前記ハンマーの回動に伴う前記被検出部の移動に応じて、前記受光部の受光状態を表す検出信号を出力する光センサと、
当該光センサからの検出信号に基づいて、前記押鍵情報を検出する押鍵情報検出手段と、
を備えることを特徴とするピアノの押鍵情報検出装置。
【請求項2】
前記ハンマーシャンクは、前記支点に回動自在に取り付けられた基端部、および当該基端部に連続し、当該基端部よりも幅の小さな軸部を有し、
前記シャッタは、前記一対の嵌合部が、前記ハンマーシャンクの前記軸部に嵌合し、前記基端部に接した状態で、前記ハンマーシャンクに取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のピアノの押鍵情報検出装置。
【請求項3】
前記ハンマーシャンクは、前記基端部と前記軸部の間に、前記軸部側に向かって次第に幅が小さくなる移行部を有し、
前記シャッタの前記嵌合部は、前記移行部と相補的に形成され、当該移行部に嵌合するテーパ部を有することを特徴とする、請求項2に記載のピアノの押鍵情報検出装置。
【請求項4】
前記シャッタの前記被検出部は、前記支点をそれぞれ中心とし、当該支点からの距離が互いに異なる2つの円弧に沿ってそれぞれ延びる2つの外縁を有することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のピアノの押鍵情報検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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