ピエゾアクチュエータの駆動方法及びピエゾアクチュエータ駆動装置
【課題】充放電によりピエゾアクチュエータを駆動するにあたり、充電開始から放電開始までの駆動時間の長短によらず、放電速度を適正に制御することを目的とする。
【解決手段】駆動時間TQが十分長いメイン噴射毎に、実際にピエゾスタックに充電された電荷量を実規定電荷量Qcoとして保存すると共に、そのときの目標エネルギーを実目標エネルギーEtrgoとして保存しておく。一方、メイン噴射を含む各噴射が行われる際は、まず駆動時間TQが取得時間Tc以下かどうか判断し(S610)、取得時間Tc以下ならば、現在保存されている実規定電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoを読み出す(S635)。そして、その読み出した各値Qco,Etrgo、及び現在の目標エネルギーEtrgを用いて、今回の噴射時における規定電荷量を推定し(S640)、その推定結果を用いて、放電時に用いるピーク側閾値Ith1を算出する(S630)。
【解決手段】駆動時間TQが十分長いメイン噴射毎に、実際にピエゾスタックに充電された電荷量を実規定電荷量Qcoとして保存すると共に、そのときの目標エネルギーを実目標エネルギーEtrgoとして保存しておく。一方、メイン噴射を含む各噴射が行われる際は、まず駆動時間TQが取得時間Tc以下かどうか判断し(S610)、取得時間Tc以下ならば、現在保存されている実規定電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoを読み出す(S635)。そして、その読み出した各値Qco,Etrgo、及び現在の目標エネルギーEtrgを用いて、今回の噴射時における規定電荷量を推定し(S640)、その推定結果を用いて、放電時に用いるピーク側閾値Ith1を算出する(S630)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータを駆動する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、充放電により伸長または縮小してピストン等を直線動するピエゾアクチュエータが知られており、そのようなピエゾアクチュエータの伸縮によって開閉弁する燃料噴射用のインジェクタ(以下「ピエゾインジェクタ」という)も知られている。
【0003】
ピエゾインジェクタを構成するピエゾアクチュエータは、多数の圧電素子(ピエゾ素子)が積層されてなる積層体(ピエゾスタック)を逆圧電効果により伸縮させるよう構成されたものである。なお、ピエゾスタックの詳細な構成については例えば特許文献1に記載されている。ピエゾ素子は容量性の負荷であり、ピエゾアクチュエータの伸縮は、ピエゾスタックの充電及び放電(詳しくはピエゾスタックを構成する各ピエゾ素子の充電及び放電)により切り替えられる。
【0004】
即ち、ピエゾアクチュエータを駆動する駆動装置は、ピエゾスタックを充電、及び放電することでピエゾアクチュエータを伸長、及び縮小させるよう構成されており、このような駆動装置として、例えば特許文献1〜3に記載されているように、ピエゾスタックの充電及び放電をいずれもチョッパ制御により行うことでピエゾスタックの変位量を制御するものが知られている。
【0005】
この駆動装置は、ピエゾアクチュエータを伸長させる際には、チョッパ制御にかかる充電用のスイッチング素子のオン・オフを繰り返す充電スイッチング制御を行うことにより、ピエゾスタックに流れる電流を漸増・漸減させながらピエゾスタックの充電(伸長)を行う。
【0006】
また、ピエゾアクチュエータを縮小させる際には、チョッパ制御にかかる放電用のスイッチング素子のオン・オフを繰り返す放電スイッチング制御を行うことにより、ピエゾスタックに流れる電流を漸増・漸減させながらピエゾスタックの放電(縮小)を行う。
【0007】
ところで、ピエゾ素子の変位量は、基本的にはピエゾ素子に印加される電圧により定まるが、その電圧と変位量との関係は、温度に応じて変化する。つまり、温度に応じてピエゾ素子の静電容量が変化するため、同じ電圧であっても温度によってその変位量は異なるのである。
【0008】
一方、ピエゾインジェクタの開弁時間を高精度に制御するためには、温度にかかわらず変位量を所望の量に制御(即ち開弁時間を所望の時間に制御)する必要がある。このため、単にピエゾスタックの電圧に基づいてピエゾアクチュエータの変位量を間接的に制御するだけでは、ピエゾスタックの温度に応じてその変位量が変化するため、開弁時間を高精度に制御することができない。
【0009】
そこで、温度にかかわらずピエゾアクチュエータの変位量を所望の量に制御する技術として、特許文献1には、ピエゾスタックを充電するに際し、ピエゾスタックに供給されるエネルギーを一定とする制御(以下「定エネルギー制御」ともいう)を行うことで変位量の温度依存性を抑制することが開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、充電スイッチング制御を行う時間を一定時間に固定すると共に、充電時において単位時間あたりにピエゾスタックに充電される電荷量を制御することでピエゾスタックに供給されるエネルギーを一定に制御することが開示されている。
【0011】
この特許文献2に記載の技術によれば、温度にかかわらず、充電の過程が均一となり、充電開始から上記一定時間後のピエゾスタックのエネルギーも一定となる。そのため、温度によるピエゾアクチュエータの挙動(伸長)のばらつきを抑えることができる。
【0012】
しかし、特許文献1,2に記載の技術はいずれも、ピエゾスタックへの充電を定エネルギー制御により行うことで、充電時、即ちピエゾアクチュエータを伸長させる際については有効であるものの、縮小させる際のピエゾスタックの放電を高精度に制御することは困難である。
【0013】
即ち、定エネルギー制御による充電を行うことによりピエゾスタックのエネルギーを一定に保っても、ピエゾスタックに充電される電荷量は、温度によって異なる。そのため、放電時において例えば所定の放電速度にて放電を行うようにした場合、充電時の電荷量が多いほど放電開始から放電完了までの時間が長くなる。つまり、放電時におけるピエゾアクチュエータの挙動が温度によってばらつくこととなり、ゆえにピエゾアクチュエータを高精度に制御できなくなる。
【0014】
そこで、特許文献3には、放電時においても、温度にかかわらず所望の放電時間にて放電が行われるようにすることで放電時のピエゾアクチュエータの挙動を高精度に制御すべく、ピエゾスタックに充電される電荷量を検出し、その検出結果に基づいて放電スイッチング制御を行う技術が開示されている。
【0015】
一般によく知られている放電スイッチング制御では、例えば特許文献3に記載されているように、放電の際、放電用のスイッチング素子をオンすることによりピエゾスタックからの放電(放電電流の漸増)を開始させ、その放電電流が所定のピーク側閾値に達したらスイッチング素子をオフして放電電流を漸減させる。そして、放電電流が所定のボトム側閾値まで低下したら再びスイッチング素子をオンして放電電流を漸増させる。このようにして放電スイッチング制御を行うことにより、ピエゾスタックに充電されている電荷量は徐々に減少していき、これに伴って伸長状態であったピエゾアクチュエータも縮小していくこととなる。
【0016】
そして、特許文献3では、放電スイッチング制御を行うにあたり、充電スイッチング制御時にピエゾスタックに充電された電荷量に基づいて、放電スイッチング制御時における上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方を可変設定する。例えば、充電電荷量が多いほどピーク側閾値を大きく設定する。これにより、温度変化等によってピエゾスタックに充電される電荷量が変化しても、所望の放電時間(以下「規定放電時間」ともいう)で放電を完了させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−130561号公報
【特許文献2】特開2005−016431号公報
【特許文献3】特開2007−205173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献3に記載されている技術では、規定の充電スイッチング制御が完了した後、即ち定エネルギー制御における規定のエネルギー(目標エネルギー)まで充電が完了した後に放電が開始される場合には、その充電された電荷を規定放電時間をかけて放電させるように放電速度の適正な制御がなされる。
【0019】
しかし、目標エネルギーに達する前の、まだ充電スイッチング制御が行われている最中に(目標エネルギーに対応した電荷量である規定電荷量まで充電されていないときに)放電が開始される場合や、例えば充電スイッチング制御中に所定インターバル毎にピエゾスタックの電荷量を検出する構成において、ある検出タイミングにて電荷量が検出されてから次の検出タイミングまでの、充電電荷量が増加している間に、放電が開始されてしまう場合(つまりこの場合、実際の充電電荷量よりも少ない電荷量が検出された状態となっている)には、適正な放電速度にて放電が行われないという問題がある。
【0020】
即ち、このように充電電荷量がまだ規定電荷量に達していないときに放電が開始されると、駆動装置は、そのときの充電電荷量に基づき、その電荷量を規定放電時間かけて放電させようとする。しかし、充電電荷量が規定電荷量よりも少ないにもかかわらず、その少ない電荷量を規定放電時間かけて放電させようとすると、本来の望ましい放電速度(規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるための放電速度)よりも遅い速度で放電が行われてしまのである。
【0021】
このような問題は、例えばピエゾインジェクタを用いた内燃機関の燃料噴射装置における、1燃焼サイクル中における燃焼室内への燃料噴射を、メイン噴射と、このメイン噴射よりも少ない微量の燃料を噴射する少なくとも一回の微量噴射とに分割して行う、いわゆる多段噴射を行う場合において、微量噴射を行う場合に生じる可能性がある。
【0022】
図12〜図14を用いて、上述した問題について具体的に説明する。図12(a)は、目標エネルギーに対応した規定電荷量Q1(Q2)まで充電が行われる場合のピエゾスタックの充電電荷量の変化を説明するための説明図であり、図12(b)は、規定電荷量Q1に到達する前に放電が開始される場合のピエゾスタックの充電電荷量の変化を説明するための説明図である。
【0023】
ピエゾインジェクタの駆動、即ちピエゾインジェクタが有するピエゾスタックへの充放電は、燃料噴射量に応じて生成される駆動信号に従って行われ、図12(a)に示すように、駆動信号がHレベルに立ち上がるタイミング(時刻t1)でピエゾスタックの充電スイッチング制御が開始され、駆動信号がLレベルに立ち下がるタイミング(時刻t3(又は時刻t5))でピエゾスタックの放電スイッチング制御が開始される。なお、駆動信号がHレベルの間の時間を、以下、駆動時間と称す。
【0024】
また、定エネルギー制御による充電においては、充電時間(充電スイッチング制御が行われる時間)が、目標エネルギーに応じて規定充電時間として予め設定され、充電開始後、その規定充電時間が経過すると(時刻t2)、ピエゾスタックへの充電は停止される。このとき、ピエゾスタックには目標エネルギーに応じた規定電荷量が充電されていることになる。また、放電時間についても、規定放電時間が予め設定され、放電開始後、その規定放電時間が経過したときに放電が完了するように放電スイッチング制御が行われる。そして、図12〜図14の例では、規定充電時間と規定放電時間が同じになるように設定されている。
【0025】
また、充電エネルギーは一定であっても温度が変化すると充電速度も変化し、規定充電時間内に充電される電荷量(規定電荷量)も温度によって異なる。図12(a)のa1(実線)の波形とa3(点線)の波形はその一例であり、a3の波形はa1の波形に比べて、充電エネルギーは同じであるものの温度が異なることにより充電速度が遅く、規定電荷量はa1の場合のQ1に対してa3の場合はQ2と小さくなる。
【0026】
但しこのように規定電荷量が異なっても、放電時間は同じ規定放電時間となる。つまり、規定充電時間中の充電速度が大きくて規定電荷量が大きいほど、放電速度も大きくして規定放電時間をかけて放電が完了するよう、上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方が可変設定され、逆に規定充電時間中の充電速度が小さくて規定電荷量が小さいほど、放電速度も小さくして同じ規定放電時間にて放電が完了するよう、上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方が可変設定される。
【0027】
そして、図12(a)に示すように、駆動時間TQが長くてピエゾスタックへの充電が規定電荷量までなされる場合、つまり駆動時間TQが規定充電時間よりも長い場合は、ピエゾスタックの充電電荷量の波形は台形状になる。この場合、駆動時間TQが異なっても放電時間は同一である。即ち、充電電荷量が図中a1(実線)のように変化する場合の放電時間(時刻t3〜t4)と、それより駆動時間が長くて充電電荷量が図中a2(破線)のように変化する場合の放電時間(時刻t5〜t6)とは、いずれも同じ規定放電時間となる。
【0028】
これに対し、図12(b)に示すように、駆動時間TQが規定充電時間よりも短く、充電開始から規定充電時間が経過する前に(即ち、充電量が規定電荷量に到達する前に)放電が開始されるような場合は、充電電荷量の波形は三角形状になる。この場合、駆動時間TQが短ければ短いほど、それに応じて充電時間も短くなり、充電電荷量も少なくなる。しかし、放電時間については、既述の通りあくまでも規定放電期間をかけて放電が完了するように制御されることから、充電電荷量が少なければ少ないほど、ゆっくりとした速度で放電が行われてしまうことになる。
【0029】
図12(b)において、図中a4(実線)のように時刻t1で充電が開始された後、そのときの目標エネルギーに応じた規定電荷量Q1に到達する前の時刻t12で放電が開始されると、その放電開始時の充電電荷量は規定電荷量Q1よりも小さいQ3となっている。
【0030】
この場合、駆動時間TQが短かったことにより充電電荷量は結果として規定電荷量Q1よりも少なくなっているものの、その充電はあくまでも規定電荷量Q1を充電することを目標に、それに応じた充電速度で行われたものである。そのため、放電についても、本来ならば図中a5(破線)のように、規定電荷量Q1が規定放電時間で放電されるような放電速度にて行うのが適正な放電といえる。つまり、時刻t12で放電が開始された場合も、図中a6(一点鎖線)のように、図中a5(破線)の放電速度と同じ放電速度で放電が行われるのが適正な放電である。
【0031】
しかし、特許文献3に記載されている放電スイッチング制御では、充電電荷量に関係なく放電時間が一定(規定放電時間)となるように制御されることにより、時刻t12で放電が開始される場合の実際の放電速度は、そのときの充電電荷量Q3(<Q1)を規定放電時間で放電完了させるべく、図中a7(実線)のように、図中a5(破線)よりも遅い放電速度となってしまう。この図中a7(実線)が示す実際の放電速度は、図中a8(点線)に示すような、規定電荷量がQ3であってその規定電荷量Q3まで充電が行われた場合における放電速度と同じである。
【0032】
つまり、規定電荷量Q1まで充電させるべく、それに応じた充電速度にて充電を開始した場合には(図中a4)、本来ならば放電についてもその充電速度に対応した放電速度(図中a5)で行われるべきであるところ、規定電荷量Q1に到達する前のまだ電荷量Q3のときに放電が開始されると、駆動装置は、その電荷量Q3を規定放電時間かけて放電させるべく、本来の適正な放電速度(図中a6。a5と同じ放電速度)よりも遅い放電速度(図中a7)にて放電させてしまうのである。
【0033】
そのため、図14に示すように、駆動時間TQが規定充電時間よりも短くなるような低噴射領域において、駆動時間TQに対する燃料噴射量のリニアリティが悪化してしまう。即ち、本来は低噴射領域においても図中破線に示すように駆動時間TQの長短に拘わらず全体として燃料噴射量のリニアリティが維持されるべきであるが、低噴射領域では、上記のように放電速度が遅くなってしまうため、図中実線に示すように本来の適正な燃料噴射量よりも多くの燃料が噴射されてしまうことになる。
【0034】
また、実際の放電制御では、図13に示すように、充電中に所定インターバル(Ta)毎にそのときの充電電荷量を検出し、その検出結果に基づいて放電速度を設定する(例えば放電スイッチング制御時における上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方を設定する)のが一般的である。即ち、図13の例では、充電開始から所定インターバルTa経過後に電荷量Qaを検出し、そこから更に所定インターバルTa経過後(充電開始からTb経過後)に電荷量Qbを検出し、そこから更に所定インターバルTa経過後(充電開始からTc経過後)に、規定電荷量である電荷量Qcを検出する。
【0035】
そのため、図13の例のように、駆動時間TQが、Tb<TQ<Tcの場合は、放電開始時に検出されている電荷量はQbであり、このQbは放電開始時に実際に充電されている電荷量よりも小さい。そのため、このQbに基づいて設定された放電速度に基づく放電がなされると、放電速度の適正な制御がより困難になってしまう。
【0036】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、充放電によりピエゾアクチュエータを駆動するにあたり、充電開始から放電開始までの駆動時間の長短によらず、放電速度を適正に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータの駆動方法であって、ピエゾ素子体を伸長させる際は、該ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行う。また、ピエゾ素子体の放電が開始される前までに、予め、該ピエゾ素子体への充電が目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定し、その推定した規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定する。そして、充電開始タイミングから駆動時間経過後、その設定した放電パターンに従って放電を行う。
【0038】
上記の駆動方法では、ピエゾ素子体を伸長させための充電は、目標エネルギーを設定して、ピエゾ素子体の充電エネルギーをその目標エネルギーに到達させることを目標にして行われることになるが、駆動時間の長さによっては、実際の充電エネルギーが必ず目標エネルギーに到達するとは限らず、目標エネルギーに到達する前のまだ充電が行われている最中に駆動時間が経過して、放電が開始される場合も起こりうる。
【0039】
そこで、目標エネルギーまで充電が到達したならば充電されるはずの電荷量である規定電荷量を、放電が開始される前に予め推定しておく。そして、その推定した規定電荷量に基づき、その規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるのに必要な放電パターンを設定する。
【0040】
なお、放電パターンの具体的態様は種々考えられ、例えば放電速度(一定時間あたりの放電電荷量)であってもよいし、また例えば、既述の特許文献3のようにチョッパ制御により放電を行う構成の場合には、後述する請求項10に記載のように放電電流のピーク側閾及びボトム側閾値のうち少なくとも何れか一方であってもよい。
【0041】
そして、放電手段は、その設定された放電パターンに従って放電を行う。つまり、放電開始時(充電開始タイミングから駆動時間経過時)のピエゾ素子体の実際の充電電荷量に関係なく、上記放電パターン、即ち規定電荷量まで充電された場合を想定して設定された放電パターンにて放電が行われる。換言すれば、放電開始時に実際に充電されている電荷量に関係なく、規定電荷量を規定放電時間かけて放電完了させるのに必要な放電速度にて放電が行われるということであり、これは即ち、放電開始時の充電電荷量に関係なく放電速度は同じということである。そのため、放電開始時の電荷量が少ないほど、放電開始から放電完了までに要する時間は短くなる。
【0042】
従って、請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動方法によれば、放電開始時の実際の充電電荷量にかかわらず、そのときの目標エネルギーに応じた規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるための放電パターンにて放電が行われる。そのため、充電開始から放電開始までの駆動時間の長短によらず、放電速度を適正に制御することが可能となる。
【0043】
次に、請求項2に記載の発明は、一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータを駆動するピエゾアクチュエータ駆動装置であって、充電手段と、規定電荷量推定手段と、放電パターン設定手段と、放電手段と、を備えたものである。
【0044】
充電手段は、ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行うことにより該ピエゾ素子体を伸長させる。規定電荷量推定手段は、ピエゾ素子体の放電が開始される前に、予め、充電手段によるピエゾ素子体への充電が目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定する。放電パターン設定手段は、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定する。そして、放電手段は、充電手段による充電開始タイミングから駆動時間経過後、放電パターン設定手段により設定された放電パターンに従って放電を行うことによりピエゾ素子体を縮小させる。
【0045】
このように構成された請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、放電開始時の実際の充電電荷量にかかわらず、放電パターン設定手段が、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量(目標エネルギーに応じた電荷量)に基づいてその規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるのに必要な放電パターンを設定するため、請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動方法が実現され、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、ピエゾ素子体に充電される電荷量を検出する電荷量検出手段と、充電手段による充電が、ピエゾ素子体の充電エネルギーが目標エネルギーに到達するまで行われた場合に、該到達後に電荷量検出手段により検出された電荷量を実規定電荷量として記憶する記憶手段と、を備えている。そして、充電手段による充電の開始から、駆動時間経過後に放電手段による放電を開始してその放電が完了するまでを、ピエゾアクチュエータの一回の駆動として、規定電荷量推定手段は、前回のピエゾアクチュエータの駆動時までに記憶手段に記憶された実規定電荷量を用いて、今回の駆動時における規定電荷量を推定する。
【0047】
このように構成された請求項3に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、規定電荷量推定手段が、前回の駆動時までに実際に目標エネルギーまで充電完了されたときに検出された実規定電荷量を用いて、今回の駆動における規定電荷量を推定するため、信頼性の高い規定電荷量が推定されることとなる。そのため、放電速度の適正な制御を高い精度で実現することができる。
【0048】
なお、記憶手段による記憶は、必ずしも、充電エネルギーが目標エネルギーに到達する度に毎回行う必要はなく、例えば所定の駆動回数毎に記憶するようにしてもよいし、例えば後述する請求項6のように主駆動時(詳細は後述)のみ記憶するようにしてもよい。
【0049】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、規定電荷量推定手段は、前回のピエゾアクチュエータの駆動時までに記憶手段に記憶された実規定電荷量のうち、最も新しい実規定電荷量を、今回の駆動時における規定電荷量として推定する。
【0050】
即ち、直近の駆動時に実際に充電された実規定電荷量は、今回充電されるであろう規定電荷量との差が非常に小さい(或いはほとんど差がない)という想定のものに、その直近の(最も新しい)実規定電荷量を今回の規定電荷量として推定するのである。またこの場合、記憶手段は、常に最新の実規定電荷量のみを記憶しておけば十分である。
【0051】
従って、請求項4に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、前回駆動時までの最新の実規定電荷量という、最も信頼性の高い値を用いて、今回の規定電荷が推定されるため、放電速度の適正な制御をより高い精度で実現することができる。
【0052】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、目標エネルギーの設定に必要な情報であるエネルギー設定関連情報を取得するエネルギー設定関連情報取得手段と、ピエゾアクチュエータの駆動毎に、エネルギー設定関連情報取得手段により取得されたエネルギー設定関連情報に基づいて目標エネルギーを設定する目標エネルギー設定手段と、を備え、記憶手段は、充電手段による充電が、ピエゾ素子体の充電エネルギーが目標エネルギーに到達するまで行われた場合に該充電時に目標エネルギー設定手段により設定された目標エネルギーを実目標エネルギーとして、実規定電荷量と対応付けて記憶する。そして、規定電荷量推定手段は、上記最も新しい実規定電荷量を、その実規定電荷量に対応付けて記憶手段に記憶されている実目標エネルギーと目標エネルギー設定手段により設定された目標エネルギーとの比率に応じて補正し、その補正後の実規定電荷量を、今回の駆動時における規定電荷量として推定する。
【0053】
前回駆動時までの目標エネルギーと今回駆動時の目標エネルギーが異なっているような場合に、前回までの実規定電荷量をそのまま今回の規定電荷量として推定すると、目標エネルギーが異なっている分、推定精度が低くなるおそれがある。つまり、例えば今回の目標エネルギーが前回よりも高く設定されている場合は、前回実際に充電された規定電荷量よりも多い電荷量が今回充電されることとなるため、その差分による推定精度の低下が生じるのである。
【0054】
そこで請求項5に記載の発明では、規定電荷量を推定するにあたり、単に記憶手段により記憶されている最新の実規定電荷量をそのまま推定値とするのではなく、その実規定電荷量が記憶されたときの実際の目標エネルギー(実目標エネルギー)と今回駆動時の目標エネルギーとの比率に応じて、実規定電荷量を補正する。具体的な補正方法は種々考えられ、例えば、今回駆動時の目標エネルギーが前回駆動時よりも所定の割合だけ増加しているならば実規定電荷量についてもそれと同じ割合だけ増加させる、という補正を行って、その補正後(増加させた後)の実規定電荷量を推定値とすることができる。
【0055】
従って、請求項5に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、駆動毎に目標エネルギーが異なってもその目標エネルギーに応じた精度の高い規定電荷量が推定されるため、目標エネルギーの相違による放電速度の制御精度の低下を抑制することができる。
【0056】
次に、請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、ピエゾアクチュエータを、予め設定された複数回の駆動を一つの駆動サイクルとして、複数の駆動サイクルに渡って駆動すると共に、一つの駆動サイクル内で行われる複数回の駆動として、少なくとも、駆動時間が、ピエゾ素子体の充電エネルギーが目標エネルギーに到達するのに要する時間よりも長いことにより該ピエゾ素子体に規定電荷量が充電される主駆動と、この主駆動よりも前及び後の少なくとも一方においてこの主駆動における駆動時間よりも短い駆動時間で駆動する副駆動と、を行うように構成されている。そして、記憶手段は、各駆動サイクルにおける主駆動時に実規定電荷量の記憶を行う。
【0057】
ピエゾアクチュエータの駆動を、主駆動と副駆動を含む駆動サイクルで行う場合、副駆動時には、その駆動時間の長さによっては、充電中に駆動時間が経過してしまって規定電荷量まで充電されることなく放電が開始される可能性がある。これに対し、主駆動時には、確実に規定電荷量まで充電される。
【0058】
そのため、上記駆動サイクルで駆動するような場合は、主駆動時にのみ、そのときの規定電荷量を実規定電荷量として記憶するようにすれば、効率的且つ確実に実規定電荷量を記憶することができる。
【0059】
次に、請求項7に記載の発明は、請求項3〜請求項6の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、駆動時間が、ピエゾ素子体を目標エネルギーまで充電完了させるのに必要な規定充電時間よりも長いか否かを判断する駆動時間判断手段を備えている。そして、放電パターン設定手段は、駆動時間判断手段により駆動時間が規定充電時間よりも長いと判断された場合は、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量に基づく放電パターンの設定は行わず、充電手段による充電開始タイミングから規定充電時間が経過した後に電荷量検出手段により検出された電荷量に基づいて、放電パターンを設定する。
【0060】
即ち、駆動の際に、今回の駆動時間が規定充電時間より長いかどうか、即ち今回の駆動は規定電荷量まで(目標エネルギーまで)充電完了するような駆動であるのかどうかを予め判断する。そして、今回の駆動時間が、規定電荷量まで充電完了する程度に長いならば、あえて前回までの実規定電荷量を用いて今回の規定電荷量を推定する必要性はなく、駆動時間経過後に実際に検出される充電電荷量を用いて放電パターンを設定すれば十分であり、且つ、そのように実際の充電電荷量を用いる方がより高い精度でより適正な放電パターンを設定することができる。
【0061】
次に、請求項8に記載の発明は、請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、充電手段による充電開始後、所定の検出タイミング毎にピエゾ素子体に充電されている電荷量を検出する電荷量検出手段を備え、規定電荷量推定手段は、充電手段による充電開始後、上記検出タイミング毎に、該検出タイミングにおける電荷量検出手段による検出結果と、充電開始から該検出タイミングまでの経過時間とに基づいて、規定電荷量を推定する。
【0062】
即ち、既述の請求項3〜7に記載の駆動装置のように前回駆動時までの実規定電荷量(過去に検出された実値)を用いて今回の規定電荷量を推定するのとは異なり、今回駆動時の規定電荷量については、その今回の駆動時における実際の充電過程に基づいて推定するのである。
【0063】
従って、請求項8に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、今回の駆動における規定電荷量の推定を、今回の駆動時における充電開始後の充電過程に基づいて行うため、精度の高い推定を行うことができ、放電速度の適正な制御を高い精度で実現することができる。
【0064】
次に、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、放電パターン設定手段は、充電開始後、駆動時間が経過する前に充電エネルギーが目標エネルギーに到達して該到達後の電荷量が電荷量検出手段により検出された場合は、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量に基づく放電パターンの設定は行わず、該検出された該到達後の電荷量に基づいて放電パターンを設定する。
【0065】
即ち、充電開始後、上記検出タイミング毎に規定電荷量の推定は行うものの、実際の充電電荷量が規定電荷量に到達してその電荷量が検出されたならば、あえてその到達前に推定された規定電荷量を用いる必要性はなく、その到達後に実際に検出された電荷量(規定電荷量)を用いて放電パターンを設定すれば十分である。しかも、そのように実際の充電電荷量を用いる方がより高い精度でより適正な放電パターンを設定することができる。
【0066】
次に、請求項10に記載の発明は、請求項2〜請求項9の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、ピエゾ素子体に直列に接続される充放電用コイルと、この充放電用コイルとピエゾ素子体との直列回路に対して、直流電源から充電スイッチを介して電源供給を行う充電経路と、上記直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介してピエゾ素子体の充電電荷を放電させるための放電経路と、充電スイッチに対して、カソードが直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、放電スイッチに対して、アノードが直流電源の負極側となるよう並列に接続された第2ダイオードと、を備えている。
【0067】
充電手段は、充電スイッチのオン・オフを繰り返すことによりピエゾ素子体を充電させて伸長させる。放電手段は、ピエゾ素子体からの放電電流を検出する放電電流検出手段を有すると共に、充電開始タイミングから駆動時間経過後、放電スイッチをオンし、その後、放電電流がピーク側閾値より大きくなったら放電スイッチをオフし、その後、放電電流がボトム側閾値より低くなったら放電スイッチをオンする、という動作を繰り返すことにより、ピエゾ素子体を放電させて収縮させるよう構成されている。
【0068】
そして、放電パターン設定手段は、放電パターンの設定を、ピーク側閾値及びボトム側閾値のうち少なくとも何れか一方を設定することにより行う。
このように構成された請求項10に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、規定電荷量に基づく放電パターンの設定が、上記の通りピーク側閾値及びボトム側閾値の少なくとも一方を設定するという、ごく簡易的な方法にて実現されるため、放電パターンの設定にかかる処理負荷を低く抑えつつ、上述した各請求項2〜9の効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態のコモンレール式燃料噴射システムの構成を表す構成図である。
【図2】制御ユニットの概略構成を表す説明図である。
【図3】制御ユニットの概略構成を表し、特に駆動回路の詳細構成を表す説明図である。
【図4】第1積分器及び第2積分器の概略構成を表す回路図である。
【図5】駆動回路の動作状態を表すタイムチャートである。
【図6】制御ICにおける、電荷量閾値Qth及びトリガ信号TRGGの生成にかかる機能を説明するための機能ブロック図である。
【図7】充電処理を表すフローチャートである。
【図8】第1積分器動作処理を表すフローチャートである。
【図9】電荷量計測処理を表すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の放電処理を表すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の放電処理を表すフローチャートである。
【図12】駆動時間と充電量との関係を説明するための説明図である。
【図13】駆動時間と充電量との関係、及び充電中における充電電荷量の検出タイミングを説明するための説明図である。
【図14】駆動時間と燃料噴射量との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)コモンレール式燃料噴射システムの構成
図1は、本発明が適用されたディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムの構成を表す構成図である。図1に示す如く、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、車両に搭載され、主として、燃料タンク1、燃料ポンプ3、コモンレール5、ピエゾインジェクタPI、及び制御ユニット20を備えている。
【0071】
燃料タンク1内の燃料は、燃料フィルタ2を介して、燃料ポンプ3によって汲み上げられる。燃料ポンプ3は、燃料調量弁4を備えており、制御ユニット20からの制御指令に基づいてこの燃料調量弁4が操作されることで、外部に吐出される燃料量が決定される。
【0072】
燃料ポンプ3からの燃料は、コモンレール5に加圧供給される。コモンレール5は、燃料ポンプ3から加圧供給された燃料を高圧状態で蓄えるものであり、このコモンレール5に蓄圧された高圧燃料は、高圧燃料通路6を介して、ディーゼルエンジンの各気筒(本例では4気筒)に設けられたピエゾインジェクタPI(燃料噴射弁)に供給される。各気筒のピエゾインジェクタPIは、いずれも低圧燃料通路7と接続されており、この低圧燃料通路7を介して燃料タンク1に燃料を戻すことが可能となっている。
【0073】
ピエゾインジェクタPIの詳細構成については、既述の特許文献1,3などに詳しく記載されているため、ここではその詳細説明を省略するが、その概要は次の通りである。
即ち、ピエゾインジェクタPIは、複数の圧電素子(ピエゾ素子)が積層されてなるピエゾスタックを備えており、このピエゾスタックが、逆圧電効果によって伸縮することによりアクチュエータとして機能する。つまり、ピエゾインジェクタPIは、ピエゾスタックからなるピエゾアクチュエータを備えたものである。ピエゾスタックは容量性の負荷であり、充電されることで伸長し、放電されることで縮小する。なお、本実施形態のピエゾインジェクタPIが有するピエゾスタックは、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電材料の圧電素子を利用したものである。
【0074】
ピエゾスタックへ電流が供給されず(即ちピエゾスタックが充電されておらず)ピエゾスタックが収縮状態にあるときには、ノズルニードルが燃料噴射口を閉じた閉弁状態となり、燃料は噴射されない。一方、ピエゾスタックに電流が供給される(即ちピエゾスタックが充電される)ことでピエゾスタックが伸長状態となると、ノズルニードルが燃料噴射口を開いた開弁状態となり、高圧燃料通路6から供給された燃料が燃料噴射口から噴射されることとなる。
【0075】
本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、コモンレール5内の燃圧(以下「レール圧」ともいう)PCを検出する燃圧センサ5aや、ディーゼルエンジンの出力軸(クランク軸)の回転角度を検出するクランク角センサ(図示略)等、ディーゼルエンジンの動作状態にかかわる各種の物理量を検出する各種センサや、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ(図示略)等も備えている。そして、これら各種センサの検出結果は、制御ユニット20に入力される。
【0076】
制御ユニット20は、各種センサから入力される各種検出値に基づき、ピエゾインジェクタPIや燃料調量弁4等の、コモンレール式燃料噴射システムを構成する各種アクチュエータの動作を制御する。
【0077】
なお、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムでは、ピエゾインジェクタPIからの燃料噴射がいわゆる多段噴射にて行われる。即ち、ディーゼルエンジンの1燃焼サイクル中に、メイン噴射(本発明の主駆動に相当)と、その前後においてそのメイン噴射よりも少ない微量の燃料を噴射する微量噴射(例えばパイロット噴射、ポスト噴射等。本発明の副駆動に相当。)とが行われる。
【0078】
(2)制御ユニットの構成
次に、図2及び図3を用いて、制御ユニット20の構成を説明する。まず、図2を用いて制御ユニット20の概略構成を説明する。図2に示すように、制御ユニット20は、主としてマイクロコンピュータ21と、制御IC22と、駆動回路23と、A/Dコンバータ24と、EEPROM25とを備えている。
【0079】
マイクロコンピュータ21は、アクセルセンサによって検出されるアクセルペダルの操作量と、クランク角センサの検出値から定まる出力軸の回転速度とに基づき、ディーゼルエンジンの出力トルクの要求を満たす要求噴射量を算出する。そして、その算出した要求噴射量と、燃圧センサ5aの検出値とに基づき、ピエゾインジェクタPIに対する噴射指令値(指令噴射期間)をマップ演算し、その噴射指令値に応じた駆動信号IJT(図5(a)参照)を制御IC22へ出力する。
【0080】
駆動信号IJTは、ピエゾインジェクタPIが有するピエゾスタックの充電開始タイミング及び放電開始タイミングを規定するものであり、図5(a)に示すように、Hレベルに立ち上がるタイミング(時刻t1)で充電が開始され、Lレベルに立ち下がるタイミング(時刻t4)で放電が開始される。そして、この駆動信号IJTの長さ(Hレベル状態の長さ)である駆動時間TQは、要求噴射量とレール圧PCとに応じて決定される。
【0081】
制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力された駆動信号IJTに基づいて駆動回路23を制御することで、ピエゾインジェクタPIへの電力供給状態(つまり、ピエゾインジェクタPIを構成するピエゾスタックの充放電)を制御して、要求噴射量の燃料が所望のタイミングで噴射されるようにピエゾインジェクタPIを伸縮させる。これにより、ピエゾインジェクタPIから噴射される燃料の噴射量、噴射時期及び噴射段等の各種噴射形態が制御されることとなる。
【0082】
駆動回路23は、制御IC22からの各種指令・信号等に従って各気筒のピエゾインジェクタPIを充放電させる。この駆動回路23の詳細構成については後述する。
また、駆動回路23からA/Dコンバータ24には、駆動回路23内の動作状態を示す各種検出信号が入力される。この検出信号は、A/Dコンバータ24にて、A/D変換を含む各種入力処理等がなされた上で、マイクロコンピュータ21及び制御IC22に送信される。
【0083】
ピエゾインジェクタPIには、噴射特性やピエゾスタックの静電容量などの各種特性等について個体差があり、このような固有の特性は、ピエゾインジェクタPIが搭載される車両が市場に出荷される前の製造工程時において予め計測される。そして、それぞれのピエゾインジェクタPIを同じように作動させるための調整データを含む個体情報が、QRコード10として記憶される。このQRコード10は、ピエゾインジェクタPIに印字されている。なお、個体情報を記憶する手段としてQRコード10を用いるのはあくまでも一例であり、他にも、例えばICメモリを用いたり、補正抵抗器を設けたりするなど、種々の方法を採用できる。
【0084】
そして、QRコード10に記憶された個体情報は、ディーゼルエンジンの製造工程やサービス店等において必要に応じてQRコードリーダ30により読み取られ、外部機器31によって制御ユニット20内のEEPROM25に書き込まれる。マイクロコンピュータ21は、上述のように噴射指令値を算出するにあたり、EEPROM25に書き込まれた個体情報等を用いて、マップ演算により得られた噴射指令値を補正する。
【0085】
次に、図3を用いて、制御ユニット20の構成とその動作をより詳しく説明する。まず、ピエゾスタックを駆動する駆動回路23について説明する。
図3に示す如く、駆動回路23では、バッテリBaから供給される電力が、まずDC/DCコンバータ41に供給される。DC/DCコンバータ41は、バッテリBaの電圧(例えば12V)を、ピエゾスタックを充電するために必要な高電圧(例えば150〜300V)に昇圧して、その昇圧された高電圧をコンデンサC0へ出力する。
【0086】
コンデンサC0は、DC/DCコンバータ41からの上記高電圧を保持しつつ、ピエゾスタックを充電するための電荷を蓄積する。このコンデンサC0は、一方の端子がDC/DCコンバータ41側に接続され、他方の端子が抵抗R1を介して接地されている。なお、コンデンサC0の静電容量は、ピエゾスタックへの一回の充電処理によってはその電圧がほとんど変化しない程度の、比較的大きな値(例えば、数十〜数百μF程度)に設定されている。また、抵抗R1は、コンデンサC0に流れる電流を検出するためのものであり、この抵抗R1とコンデンサC0の他端との間のノードN3の電圧が、コンデンサC0の電流を示す情報として制御IC22に入力される。
【0087】
コンデンサC0における一方の端子側、即ちDC/DCコンバータ41側は、充電スイッチSWaと充放電用コイルL1との直列接続体、及びバンク選択スイッチ43を介して、各ピエゾインジェクタPIが有する各ピエゾスタックPa,Pb,Pc,Pdの一端(高電位となる端子側)に接続されている。そして、各ピエゾスタックPa〜Pdの他端(低電位となる端子側)は、気筒選択スイッチ42などを介して接地されている。
【0088】
各ピエゾスタックPa〜Pdのうち、ピエゾスタックPaは1番気筒のピエゾインジェクタPIに対応し、ピエゾスタックPbは2番気筒のピエゾインジェクタPIに対応し、ピエゾスタックPcは3番気筒のピエゾインジェクタPIに対応し、ピエゾスタックPdは4番気筒のピエゾインジェクタPIに対応している。そして、各ピエゾスタックPa〜Pdの他端と接地部位との間に、気筒選択スイッチ42が接続されており、これにより、各ピエゾスタックPa〜Pdのいずれに対して充電処理又は放電処理を行うかが選択されるようになっている。
【0089】
気筒選択スイッチ42は、より詳しくは、1番気筒のピエゾスタックPaに接続された第1気筒選択スイッチSW1と、2番気筒のピエゾスタックPbに接続された第2気筒選択スイッチSW2と、3番気筒のピエゾスタックPcに接続された第3気筒選択スイッチSW3と、4番気筒のピエゾスタックPdに接続された第4気筒選択スイッチSW4と、を備えてなるものである。
【0090】
また、ピエゾスタックPaとピエゾスタックPbとの並列回路、及び、ピエゾスタックPcとピエゾスタックPdとの並列回路には、それぞれ、これら並列回路と充放電用コイルL1とを接続するバンク選択スイッチ43が接続されている。より詳しくは、ピエゾスタックPaとピエゾスタックPbとの並列回路には第1バンク選択スイッチSW5が接続され、ピエゾスタックPcとピエゾスタックPdとの並列回路には第2バンク選択スイッチSW6が接続されている。このバンク選択スイッチ43は、複数気筒の同時噴射や、退避走行時に2気筒のみを用いることを可能とするスイッチである。
【0091】
また、第1バンク選択スイッチSW5に接続された各ピエゾスタックPa,Pbは、気筒選択スイッチ42を介して第1シャント抵抗SR1の一端に接続され、この第1シャント抵抗SR1の他端は接地されている。この第1シャント抵抗SR1は、各ピエゾスタックPa,Pbに流れる電流、電荷量を検出するためのものであり、第1シャント抵抗SR1の一端のノードN6の電圧が、その電流、電荷量を示す情報として、第1積分器44、第2積分器45、及び制御IC22に入力される。
【0092】
第2バンク選択スイッチSW6に接続された各ピエゾスタックPc,Pdについても同様であり、気筒選択スイッチ42を介して第2シャント抵抗SR2の一端に接続され、この第2シャント抵抗SR2の他端は接地されている。この第2シャント抵抗SR2は、各ピエゾスタックPc,Pdに流れる電流、電荷量を検出するためのものであり、第2シャント抵抗SR2の一端のノードN5の電圧が、その電流、電荷量を示す情報として、第1積分器44、第2積分器45、及び制御IC22に入力される。
【0093】
また、充電スイッチSWaと充放電用コイルL1との間には、放電スイッチSWbの一方の端子が接続されており、放電スイッチSWbの他方の端子は、抵抗R4を介して接地されている。
【0094】
放電スイッチSWbには、ダイオードDbが並列接続されている。このダイオードDbは、カソードがコンデンサC0と充放電用コイルL1との間の通電経路に接続され、アノードが抵抗R4を介して接地されている。このダイオードDbは、コンデンサC0、充電スイッチSWa、充放電用コイルL1と共に、ピエゾスタックPa〜Pdを充電するチョッパ回路を構成するものであり、フリーホイーリングダイオードとして機能する。
【0095】
一方、充電スイッチSWaには、ダイオードDaが並列接続されている。このダイオードDaは、カソードがコンデンサC0の一端(DC/DCコンバータ41側)に接続され、アノードが放電スイッチSWb側に接続されている。このダイオードDaは、コンデンサC0、充放電用コイルL1、放電スイッチSWbと共に、ピエゾスタックPa〜Pdの電荷を放電するチョッパ回路を構成するものであり、フリーホイーリングダイオードとして機能する。
【0096】
充放電用コイルL1とバンク選択スイッチ43との間には、ダイオードD1と、抵抗R5及び抵抗R6の直列接続体とが、それぞれ、ピエゾスタックPa〜Pdに並列に接続されている。ダイオードD1は、ピエゾスタックPa〜Pdの電圧がマイナスになることを防止している。また、抵抗R5と抵抗R6の間のノードN4の電圧は、ピエゾスタックPa〜Pdの充電電圧を示す情報として制御IC22に入力される。
【0097】
また、コンデンサC0には、これと並列に、抵抗R2及び抵抗R3の直列接続体が接続されている。そして、この抵抗R2と抵抗R3の間のノードN1の電圧は、コンデンサC0の充電電圧を示す情報として、制御IC22及びA/Dコンバータ24に入力される。
【0098】
第1積分器44及び第2積分器45は、いずれも、ノードN5又はノードN6の電圧を積分することにより、ピエゾスタックに充電される電荷量を計測するものである。
なお、以下の説明において、各ピエゾスタックPa〜Pdのうち、気筒選択スイッチ42により選択されて実際に充電が行われるピエゾスタックを、ピエゾスタックPEとも称することとする。
【0099】
第1積分器44は、充電スイッチSWaのオン・オフによる充電処理(充電スイッチング制御)時におけるスイッチング1回分でピエゾスタックPEに充電される電荷量である、単位電荷量Qactを計測する。第2積分器45は、充電処理実行中にピエゾスタックPEに充電される総電荷量であるピエゾ充電電荷量を計測する。
【0100】
各積分器44,45の具体的回路構成は同じであり、その概略構成を図4に示す。なお、図4は、基本的には第1積分器44についてその符号を付しているが、上述の通り第2積分器45も同じ構成であるため、第2積分器45に対応した符号についても括弧書きで付している。
【0101】
第1シャント抵抗SR1又は第2シャント抵抗SR2のいずれか(気筒選択スイッチ42により選択されたピエゾスタックPEに対応した方。以下単に「シャント抵抗SR」ともいう。)で検出されたノードN5又はノードN6の電圧、即ちピエゾスタックPEを流れる電流(ピエゾ電流)は、制御IC22に入力されると共に、各積分器44,45に対し、それぞれ図示しない差動増幅器を介して増幅された上で入力される。上記の通り、第1積分器44はスイッチング1回分の電荷量を計測するのに対して第2積分器45はピエゾスタックPEに充電される電荷量の総量を計測するものであるため、上記差動増幅器の増幅率は、第2積分器45に対応した差動増幅器の増幅率よりも第1積分器44に対応した差動増幅器の増幅率の方が大きい値に設定されている。
【0102】
図4に示す如く、第1積分器44(及び第2積分器45)は、上記差動増幅器による増幅後の電圧(ピエゾ電流の検出電圧)が入力電圧Vinとして入力される。第1積分器44(及び第2積分器45)は、オペアンプ90(95)を備えたアナログ積分器として構成されたものであり、オペアンプ90(95)の出力端子と反転入力端子との間に、コンデンサ92(97)と抵抗91(96)の直列回路が接続されている。コンデンサ92(979)の両端には、この両端を短絡させて積分値をリセットするためのリセットスイッチ93(98)が接続されている。
【0103】
また、オペアンプ90(95)の反転入力端子には、当該積分器44(45)への入力電圧Vinの入力を停止して積分を停止するためのホールドスイッチ94(99)が接続されている。なお、オペアンプ90(95)の非反転入力端子は設置されている。そして、オペアンプ90(95)の出力端子からの出力電圧Voutが、当該積分器44(45)の積分結果として出力される。このうち、第1積分器44からの出力電圧Vout(単位電荷量Qact)は制御IC22に入力され、第2積分器45からの出力電圧Vout(ピエゾ充電電荷量)は制御IC22及びA/Dコンバータ24に入力される。
【0104】
制御ユニット20は、上記駆動回路23に加えて、既述の通り、マイクロコンピュータ21、制御IC22、及びA/Dコンバータ24を備えている。マイクロコンピュータ21は、ディーゼルエンジンの運転状態等を検出する各種センサの検出値に基づき、ピエゾスタックPEの変位量の制御条件(駆動時間TQなど)を算出して、制御IC22に出力する。
【0105】
制御IC22は、マイクロコンピュータ21から出力された制御条件に基づき、駆動回路23を駆動する。A/Dコンバータ24は、駆動回路23のノードN1の電圧や第2積分器45の出力電圧(ピエゾ充電電荷量)などの各種アナログ信号に対し、A/D変換を含む各種入力処理を行った上で、その処理後のデジタルデータ(以下「A/D値」ともいう)をマイクロコンピュータ21及び制御IC22に出力する。
【0106】
なお、制御IC22やマイクロコンピュータ21は、駆動回路23における上述した各ノードN1,N3〜N7の電圧、及び放電スイッチSWbと抵抗R4の接続点であるノードN2の電圧を、直接又はA/Dコンバータ24を介して取り込むことにより、駆動回路やピエゾスタックPEの動作状態を取得して、その動作状態に基づいて各種制御を行う。
【0107】
(3)駆動回路の動作説明
次に、駆動回路23の動作の概要、即ちピエゾスタックPEの変位量制御の概要について、図5を用いながら説明する。図5は、駆動回路23の動作状態を表すタイムチャートである。図5のタイムチャートにおいて、(a)はマイクロコンピュータ21から制御IC22へ入力される駆動信号IJTの変化(Hレベル又はLレベル)を示し、(b)は制御IC22から充電スイッチSWaへ出力される動作信号の変化(即ち充電スイッチSWaのオン・オフ変化)を示し、(c)はトリガ信号TRGGを示し、(d)は第1積分器44の出力電圧が表す単位電荷量Qactを示し、(e)は制御IC22からバンク選択スイッチ43へ出力される動作信号の変化(即ちバンク選択スイッチ43のオン・オフ変化)を示し、(f)は制御IC22から気筒選択スイッチへ出力される動作信号の変化(即ち気筒選択スイッチ42のオン・オフ変化)を示し、(g)は制御IC22から放電スイッチSWbへ出力される動作信号の変化(即ち放電スイッチSWbのオン・オフ変化)を示し、(h)はノードN1の電圧が表すコンデンサC0の充電電圧の変化を示し、(i)はノードN4の電圧が表すピエゾ電圧(ピエゾスタックPEの電圧)の変化を示し、(j)はノードN5(N6)が表すピエゾ電流の変化を示し、(k)は第2積分器45の出力電圧が表すピエゾ充電電荷量の変化を示す。
【0108】
なお、図5に示すタイムチャートは、各ピエゾスタックPa〜Pdのうち、バンク選択スイッチ43及び気筒選択スイッチ42により選択された、実際に駆動されるいずれか一つのピエゾスタックPEについてその動作例を表したものである。そのため、同図(e)に示すバンク選択スイッチ43の動作信号、及び同図(f)に示す気筒選択スイッチ42の動作信号は、いずれも、当該一つのピエゾスタックPEに対応した何れか一つのバンク選択スイッチ(SW5又はSW6)及び気筒選択スイッチ(SW1〜SW4)を表している。
【0109】
(3−1)充電処理時の動作
マイクロコンピュータ21から制御IC22への駆動信号IJTがHレベルに転じると(図5(a)の時刻t1)、制御IC22は、バンク選択スイッチ43及び気筒選択スイッチ42における、駆動対象のピエゾスタックPEに対応した何れか一つのスイッチをオンさせると共に(図5(e),(f))、充電スイッチSWaのオン・オフ操作によるチョッパ制御を開始する(図5(b))。
【0110】
具体的には、後述するトリガ信号TRGG(図5(c))の立ち下がりエッジをトリガとして充電スイッチSWaがオン操作されると、コンデンサC0、充電スイッチSWa、充放電用コイルL1、ピエゾスタックPEからなる閉ループ回路が形成される。これにより、コンデンサC0の電荷がピエゾスタックPEに充電される。このとき、ピエゾスタックPEを流れる電流(ピエゾ電流)は、図5(j)に示すように漸増し、ピエゾスタックPEに充電される単位電荷量Qactも、図5(d)に示すように増加していく。
【0111】
そして、図5(d)に示すように、単位電荷量Qactが予め設定された電荷量閾値Qthを超えると、充電スイッチSWaがオフ操作される。なお、本実施形態では、ピエゾ電流や単位電荷量Qactの検出を、ピエゾスタックPEと直列に接続されている各シャント抵抗SR1,SR2を用いて行うようにしているが、これはあくまでも一例であり、例えばコンデンサC0と直列に接続されている抵抗R1を用いて(即ちノードN3の電圧に基づいて)ピエゾ電流や単位電荷量Qactを検出するようにしてもよい。
【0112】
充電スイッチSWaのオン操作の後、単位電荷量Qactが電荷量閾値Qthを超えたことによって充電スイッチSWaがオフ操作されると、充放電用コイルL1、ピエゾスタックPE、ダイオードDbからなる閉ループ回路が形成される。これにより、充放電用コイルL1のフライホイールエネルギーがピエゾスタックPEに充電される。このとき、ピエゾスタックPEに流れるピエゾ電流は、図5(j)に示すように漸減し、ピエゾスタックPEに充電される単位電荷量Qactは、図5(d)に示すように引き続き増加していく。そして、次のトリガ信号TRGGの立ち下がりエッジをトリガとして、再び充電スイッチSWaをオン操作する。
【0113】
このような充電スイッチSWaのオン・オフ操作による充電スイッチング制御がなされることにより、ピエゾ電流の上昇と下降が複数回繰り返し行われ、ピエゾ電圧(図5(i))が段階的に上昇すると共に、ピエゾ充電電荷量(図5(k))も増加していく。
【0114】
また、本実施形態では、ピエゾスタックPEの充電が、定エネルギー制御によりなされる。即ち、ピエゾスタックPEへの充電を行うにあたり、後述するようにピエゾスタックPEに供給すべきエネルギーの目標値である目標エネルギーEtrgが設定され、所定の充電時間(本例では時刻t1〜t3の規定充電時間T1)でこの目標エネルギーEtrgに到達するように充電が行われる。具体的には、規定充電時間T1で目標エネルギーEtrgに到達するように上記電荷量閾値Qthの値が設定される。
【0115】
そのため、充電開始から規定充電時間T1が経過するまで充電が行われると、ピエゾスタックPEの充電エネルギーは目標エネルギーEtrgに達することになる。またそのときの、ピエゾスタックPEに充電されている電荷量は、目標エネルギーEtrgに対応した規定電荷量となる。図5(k)の例でいえば、最終的に到達しているピエゾ充電電荷量Qcが、本例において設定された目標エネルギーEtrgに対応した規定電荷量である。
【0116】
なお、既述の通り、コンデンサC0は静電容量の比較的大きいものを用いているため、ピエゾスタックPEへの1回の充電が完了しても、コンデンサC0の電圧はほとんど変化しない(図5(h))。
【0117】
また、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムでは、既述の通り多段噴射が行われるが、少なくともメイン噴射においては、駆動時間TQは規定充電時間よりも長くなるように設定される。一方、微量噴射においては、その要求噴射量によっては、駆動時間TQが規定充電時間よりも長くなる場合もあれば短くなる場合も生じうる。
【0118】
そのため、駆動時間TQの長短にかかわらず目標エネルギーEtrgを目標にして電荷量閾値Qthが設定され、充電が開始されるものの、要求噴射量が少なくて駆動時間TQが規定充電時間よりも短い場合は、目標エネルギーEtrgに到達する前に(即ちピエゾ充電電荷量が規定電荷量に到達する前に)放電が開始されることとなる。
【0119】
また、本実施形態では、充電開始後、所定のインターバルTa毎に、第2積分器45からの出力電圧がA/Dコンバータ24にてA/D変換され、そのA/D変換後の値(A/D値)がマイクロコンピュータ21及び制御IC22に入力される。そのため、ピエゾ充電電荷量は、充電開始から徐々に上昇していくものの、マイクロコンピュータ21及び制御IC22に入力されるのは上記インターバルTa毎の値であり、本例では図5(k)に示すように、Qa,Qb,及びQcが順次入力されることとなる。
【0120】
なお、トリガ信号TRGGの生成、及び電荷量閾値Qthの設定は、いずれも制御IC22が行うのであるが、これらについては後述する。
(3−2)放電処理時の動作
充電開始から駆動時間TQが経過して、後、マイクロコンピュータ21から制御IC22への駆動信号IJTがLレベルに転じると(図5(a)の時刻t4)、制御IC22は、放電スイッチSWbのオン・オフ操作によるチョッパ制御を開始する(図5(g))。
【0121】
具体的には、まず最初に駆動信号IJTの立ち下がりエッジをトリガとして放電スイッチSWbがオン操作されると、ピエゾスタックPE、充放電用コイルL1、放電スイッチSWbによって閉ループ回路が形成される。これにより、ピエゾスタックPEが放電される。このとき、ピエゾスタックPEを流れるピエゾ電流は、図5(j)に示すように漸増する。
【0122】
なお、充電時にピエゾスタックPEに流れる電流の方向を基準にした場合、放電時にピエゾスタックPEに流れる電流は逆方向となり、充電時の電流値に対して放電時の電流値は厳密には負の値となるが、以下の説明では、特に断りのない限り、充電時及び放電時のいずれについても、ピエゾ電流については電流の絶対値を示すものとする。
【0123】
放電スイッチSWbのオン操作によってピエゾ電流(放電電流)が漸増していき、やがてピーク側閾値Ith1を超えると、放電スイッチSWbがオフ操作される。すると、ピエゾスタックPE、充放電用コイルL1、ダイオードDa、コンデンサC0によって閉ループ回路が形成される。これにより、充放電用コイルL1のフライホイールエネルギーがコンデンサC0に回収される。このとき、ピエゾスタックPEを流れるピエゾ電流は、図5(j)に示すように漸減する。そして、ピエゾ電流(放電電流)がボトム側閾値Ith2より低くなると、放電スイッチSWbが再度オン操作される。
【0124】
このような放電スイッチSWbのオン・オフ操作による放電スイッチング制御がなされることにより、ピエゾ電流の上昇と下降が複数回繰り返し行われ、ピエゾ電圧(図5(i))が段階的に下降すると共に、ピエゾ充電電荷量も減少していく。ある程度までピエゾ電圧が下降すると、充放電用コイルL1の両端の電位差が少なくなるため、ピエゾ電流がピーク側閾値Ith1を越えるほどには増加しなくなる。そこで、放電スイッチSWbのオン時間が所定時間(後述のTdon)を超えた場合には、放電スイッチSWbを強制的にオフさせることで、スイッチングを可能にしている。
【0125】
尚、図5(k)に示すピエゾ充電電荷量は、放電開始後(時刻t4〜)も規定電荷量Qcに保持されたままであるが、これは第2積分器45の出力電圧が時刻t6まで保持されるためであり、実際のピエゾ充電電荷量は放電開始から徐々に減少してくことになる。
【0126】
そして、ピエゾスタックPEの電荷量がゼロとなって充放電用コイルL1の両端電圧がゼロとなると、電流の流れが終了する(図5の時刻t5)。放電スイッチング制御の終了時点(時刻t5)でピエゾスタックPEに残ってしまう残電荷は、放電処理の終了時点(図5の時刻t6)で放電スイッチSWbをオンに保持することで、完全に放電させる。そのため、次回の駆動時、即ち駆動信号IJTが再びHレベルに立ち上がった時には、図7の放電処理において、S110に示したようにまず放電スイッチSWbをオフさせる必要がある。
【0127】
なお、ピーク側閾値Ith1及びボトム側閾値Ith2の設定はいずれも制御IC22が行うのであるが、その詳細は後述する。
(3−3)トリガ信号TRGG及び電荷量閾値Qthの説明
次に、上述したトリガ信号TRGG(図5(c))及び電荷量閾値Qth(図5(d)参照)の生成について、図6を用いて説明する。図6は、制御IC22における、電荷量閾値Qth及びトリガ信号TRGGの生成にかかる機能を説明するための機能ブロック図である。
【0128】
図6に示すように、制御IC22において、トリガ信号TRGGの生成は、トリガ信号生成ブロックB9が行う。トリガ信号生成ブロックB9のデータは、イニシャライズ時にマイクロコンピュータ21から制御IC22へ転送されたものであり、このトリガ信号生成ブロックB9のデータを基に、マイクロコンピュータ21から入力されるクロック信号timeに基づいてトリガ信号TRGGが生成される。
【0129】
このトリガ信号TRGGは、充電スイッチSWaのオンタイミングを決定するための信号であり、既述の通りトリガ信号TRGGの立ち下がりエッジで充電スイッチSWaがオンする。つまり、トリガ信号生成ブロックB9に記憶されているデータは、1回の充電期間(図5に示すt1〜t3の規定充電時間T1)における充電スイッチSWaのオンタイミングをスケジューリングしているデータと言える。本実施形態のトリガ信号生成ブロックB9のデータは、等間隔の周期で充電スイッチSWaをオンさせるようにスケジューリングされているが、これはあくまでも一例であって、不等間隔の周期でオンさせるようなスケジューリングであっても構わない。なお、1回の充電では少なくとも3回以上充電スイッチSWaをオンさせるようにしている。
【0130】
次に、電荷量閾値Qthの生成について説明する。コンデンサC0から放出されるエネルギーは、エネルギー保存則に従ってピエゾスタックPEに充電される。従って、ピエゾスタックPEに充電される充電エネルギーEは、コンデンサC0の放出エネルギーと同じであると言えるため、次の式1で算出することができる。なお、コンデンサC0からピエゾスタックPEに流れるコンデンサ電流をIc1、コンデンサ電圧をVc1とする。
【0131】
E=∫(Vc1×Ic1)dt ・・・ (式1)
そして、既述のように、コンデンサC0の静電容量は、ピエゾスタックPEへの1回の充電処理によってはその電圧がほとんど変化しない値に設定されているため、コンデンサ電圧Vc1は略一定であると言える。よって、上記式1は次の式2に変形できる。
【0132】
E=Vc1×∫Ic1×dt ・・・ (式2)
上記式2中の「∫Ic1×dt」の項は、コンデンサC0からピエゾスタックPEに流れる電荷量Qであると言える。つまり、上記式2は次の式3に変形できる。
【0133】
E=Vc1×Q ・・・ (式3)
上記式3中のコンデンサ電圧Vc1は略一定であるため、充電エネルギーEは電荷量Qにより一義的に決定される値であると言える。したがって、コンデンサC0からピエゾスタックPEへ放出される電荷量Qを電荷量閾値Qthにより制御するということは、ピエゾスタックPEへの充電エネルギーを制御することと同義である。そのため、シャント抵抗SRにて電流、電荷量を検出すれば、エネルギーは実際に計測しなくとも充電エネルギーEを精度良く制御することができる。
【0134】
本実施形態では、充電処理で用いる電荷量閾値Qthを、次のように算出している。即ち、本実施形態では、規定充電時間T1(図5の時刻t1〜t3)でピエゾスタックPEに投入される充電エネルギーEが目標エネルギーEtrgとなるよう、充電スイッチSWaのオン・オフ操作をオープン制御している。目標エネルギーEtrgは、主にレール圧PCに基づいて算出されるとともに、さらにはピエゾインジェクタPIの個体情報及び温度特性等に基づいて補正される。そして、ピエゾスタックPEの充電電荷量が目標エネルギーEtrgとなるよう、電荷量閾値Qthを算出している。
【0135】
電荷量閾値Qthの生成手法を図6を用いてより具体的に説明すると、まず、目標エネルギーベース値生成ブロックB1において、レール圧PC及びピエゾインジェクタPIの個体情報に基づき、マップを用いて、目標エネルギーEtrgに対するベース値Ebasが算出される。
【0136】
レール圧PCが高いほど、ピエゾスタックPEを伸長させるのに必要な力は大きくなる。そのため、図6に示すように、レール圧PCの所定領域においては、レール圧PCが高いほどベース値Ebasが高く設定されている。また、ピエゾインジェクタPIの個体情報に応じて、レール圧PCに対するベース値Ebasの値を変更させている。
【0137】
なお、目標エネルギーベース値生成ブロックB1や後述する第1乗算ブロックB5等で用いられる個体情報は、ディーゼルエンジンが搭載された車両を市場に出荷する前の製造工程時にて予め上記のQRコード10を読み込んで記憶させておくことが望ましいが、車両運転中に各種検出値に基づいて推定するようにしてもよい。
【0138】
ピエゾインジェクタPIの伸長量は、ピエゾスタックPEの充電エネルギーEが同じであっても、その時のピエゾ素子温度TP’によって異なる。そこで、補正量算出ブロックB6において、ピエゾ素子温度TP’に基づき、マップを用いて補正量ΔEを算出する。そして、加算ブロックB2において、目標エネルギーベース値生成ブロックB1からのベース値Ebasに補正量算出ブロックB6からの補正量ΔEを加算することで、最終的な目標エネルギーEtrgを算出する。
【0139】
補正量算出ブロックB6で用いられるピエゾ素子温度TP’は、温度推定ブロックB4及び第1乗算ブロックB5において、別途算出された、ピエゾ素子(ピエゾスタックPEを構成するもの)の静電容量Cp及びピエゾインジェクタPIの個体情報に基づき、マップを用いて推定される。具体的には、ピエゾ素子の静電容量Cpは温度に依存して変化する特性があるため、この静電容量Cpに基づいて、温度推定ブロックB4がピエゾ素子温度TPを推定する。温度推定ブロックB4にて推定されたピエゾ素子温度TPは、第1乗算ブロックB5にて、ピエゾインジェクタPIの個体情報が乗算(詳しくは個体情報を示す所定の値が乗算)されることにより補正される。
【0140】
電荷量閾値Qthを制御することで充電エネルギーEを制御できることは既述の通りである。そこで、ゲイン算出ブロックB3,閾値ベース値算出ブロックB7,及び第2乗算ブロックB8では、加算ブロックにて算出された目標エネルギーEtrgを、充電スイッチング制御における充電スイッチSWaのオフ判断基準として用いられる電荷量閾値Qthに変換する。
【0141】
具体的には、電荷量閾値Qthに対するベース値Qbasを閾値ベース値算出ブロックB7にて算出すると共に、ゲイン算出ブロックB3にて、目標エネルギーEtrgに基づきマップを用いてゲインKgainを算出する。なお、閾値ベース値算出ブロックB7には、関数f2(time)が設定されており、この関数f2とクロック信号timeに基づいてベース値Qbasが算出される。そして、第2乗算ブロックB8において、ベース値QbasにゲインKgainを乗算することで、電荷量閾値Qthを算出する。
【0142】
(4)充電処理の説明
次に、制御IC22にて行われる充電処理について、図7を用いて説明する。図7は、制御IC22が実行する充電処理を表すフローチャートである。制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがHレベルに転じる立ち上がりエッジタイミング(図5の時刻t1)にてこの充電処理を開始する。
【0143】
なお、本実施形態では、図7の充電処理を制御IC22が実行するものとして説明するが、充電処理の実行主体が制御IC22である必要は必ずしもなく、例えばマイクロコンピュータ21が実行するように構成してもよいし、また例えば、マイクロコンピュータ21と制御IC22が一体となって一つの制御ブロックとして構成されている場合にはその制御ブロックが実行するように構成してもよい。このことは、後述する図8〜図12の各処理についても同様である。
【0144】
マイクロコンピュータ21から制御IC22へ入力されている駆動信号IJTがHレベルに転じることにより(図5の時刻t1)図6の充電処理が開始されると、まずS110にて、放電スイッチSWbをオフにし、続くS120にて、トリガ信号生成処理を行う。このS120のトリガ信号生成処理は、図6に示したトリガ信号生成ブロックB9が、マイクロコンピュータ21から送られてきたデータ(関数f1(time))とマイクロコンピュータ21からのクロック信号timeに基づいてトリガ信号TRGGを生成するものである。
【0145】
そして、S130にて、S120で生成したトリガ信号TRGGが立ち下がりエッジであるか否かを判定する。トリガ信号TRGGの立ち下がりエッジが検出されない場合はS180に進むが、トリガ信号TRGGの立ち下がりエッジが検出された場合は(S130:YES)、S140にて充電スイッチSWaをオン操作し、続くS150にて、電荷量電荷量閾値Qthを算出する。この電荷量閾値Qthの算出方法は、図6を用いて詳述した通りであり、閾値ベース値算出ブロックB7からの閾値ベース値Qbas(=f2(time))にゲイン算出ブロックB3からのゲインKgainを乗じることにより算出される。
【0146】
そして、S160にて、単位電荷量Qactが上記S150にて算出され電荷量閾値Qthを超えたか否かを判定する。単位電荷量Qactが電荷量閾値Qth以下の間は、S150〜S160の処理が繰り返されることになるが、単位電荷量Qactが電荷量閾値Qthを超えたと判定された場合は(S160:YES)、続くS170にて、充電スイッチSWaをオフさせる。
【0147】
そして、S180にて、駆動信号IJTがHレベルに転じたタイミング(図5の時刻t1)から規定充電時間T1が経過したか否か(時刻t3に達したか否か)を判定する。規定充電時間T1が経過するまでは(S180:NO)、S120〜S170による充電スイッチSWaのオン・オフ操作(充電スイッチング制御)が行われ、規定充電時間T1が経過すると(S180:YES)、図7に示す一連の充電処理を終了する。
【0148】
なお、充電開始から規定充電時間T1が経過していなかったとしても、トリガ信号生成ブロックB9によるトリガ信号TRGGの生成が終了していれば、規定充電時間T1の経過(時刻t3)よりも前の時点(時刻t2)で実際の充電は終了していることになる。よってその場合は、充電開始から時刻t2までの時間T2を規定充電時間として扱うようにしてもよい。また、単位電荷量Qactの値、即ち第1積分器44の出力電圧は、トリガ信号TRGGの立ち上がりエッジタイミング、又は充電終了タイミング(図5の時刻t3)に、第1積分器44のリセットスイッチ93がオンされることによってゼロにリセットされる。
【0149】
ところで、制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがHレベルに転じる立ち上がりエッジタイミング(図5の時刻t1)において、上述した図7の充電処理を実行するのと共に、第1積分器44を動作させるための第1積分器動作処理(図8)、第2積分器45を動作させると共にピエゾスタックPEの充電電荷量を計測する電荷量計測処理(図9)、及び放電処理(図10)についても、並行して実行する。そこで、上記各処理のうち、図8の第1積分器動作処理、及び図9の電荷量計測処理について説明する。
【0150】
まず、図8の第1積分器動作処理について説明する。駆動信号IJTの立ち上がりエッジタイミングにてこの第1積分器動作処理が開始されると、まずS210にて、リセットスイッチ93をオフすると共にホールドスイッチ94をオンすることで、積分を開始させる。そして、S220で放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、S230で充電終了タイミング(図5の時刻t3。即ち充電開始から駆動時間TQが経過。)であるか否かを判断する。
【0151】
放電開始タイミング又は充電終了タイミングである場合は、S280に進み、リセットスイッチ93をオンすると共にホールドスイッチ94をオフすることで、積分を終了させる。
【0152】
S220及びS230で否定判定された場合は、S240にて、トリガ信号TRGGの立ち上がりエッジがあったか否かを判断し、立ち上がりエッジがあったならば(S240:YES)、S270にてリセットスイッチ93をオンした上で、再びS220に戻る。S240にて、トリガ信号TRGGの立ち上がりエッジがなかった場合は(S240:NO)、続くS250にて、トリガ信号TRGGの立ち下がりエッジがあったか否かを判断し、立ち下がりエッジがなかったならば(S250:NO)、そのまま再びS220に戻るが、立ち下がりエッジがあったならば(S250:YES)、S260にてリセットスイッチ93をオフした上で、再びS220に戻る。
【0153】
次に、図9の電荷量計測処理(第2積分器45を動作させる処理も含む)について説明する。駆動信号IJTの立ち上がりエッジタイミングにてこの電荷量計測処理が開始されると、まずS410にて、今回の駆動(噴射)がメイン噴射であるか否かを判断する。そして、メイン噴射でない場合は(S410:NO)、そのままこの電荷量計測処理を終了する。つまり、メイン噴射でない場合はピエゾスタックPEの充電電荷量の計測は行わない。一方、メイン噴射である場合は(S410:YES)、S420にて第2積分器45のリセットスイッチ98をオフする(なおこのとき、ホールドスイッチ99は既にオンされている)ことで、積分が開始される。
【0154】
そして、S430にて、第1取得タイミング(図5(k)に示す時刻ta)であるか否かを判断し、第1取得タイミングならば、S440にて、そのときの充電電荷量QaのA/D値(第2積分器45の出力がA/Dコンバータ24にてA/D変換された値)を取得して、S490に進む。
【0155】
S430にて第1取得タイミングでない場合は、S450にて、第2取得タイミング(図5(k)に示す時刻tb)であるか否かを判断する。そして、第2取得タイミングならば、S460にて、そのときの充電電荷量QbのA/D値を取得して、S490に進む。
【0156】
S450にて第2取得タイミングでない場合は、更に、S470にて、充電終了タイミング(図5の時刻t3)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、充電終了タイミングならば、S480にて、第2積分器45による積分を停止させるために、ホールドスイッチ99をオフして、S490に進む。
【0157】
S490では、第3取得タイミング(図5(k)に示す時刻tc)であるか否かを判断する。そして、第3取得タイミングならば、S500にて、そのときの充電電荷量QcのA/D値を取得する。
【0158】
この第3取得タイミングで取得した充電電荷量Qcは、第1取得タイミングで取得した充電電荷量Qaや第2取得タイミングで取得した充電電荷量Qbとは異なり、充電が規定充電時間T1完全に行われて充電エネルギーが目標エネルギーEtrgに達したときの電荷量、即ち既述の規定電荷量である。そこで、続くS510にて、その取得した規定電荷量としての充電電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして制御IC22内の図示しないメモリに保存すると共に、現在設定されている目標エネルギーEtrgについても、実目標エネルギーEtrgoとして、実電荷量Qcoと対応付けて保存しておく。そして、続くS530にて、第2積分器45のリセットスイッチ98をオンすると共にホールドスイッチ99をオフすることで、第2積分器45の積分値をクリアして、本処理を終了する。
【0159】
S490にて、第3取得タイミングではないと判断された場合は、S520にて、放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、まだ放電開始タイミングでない場合はS430に戻るが、放電開始タイミングならば、S530の処理を行った上で、本電荷量計測処理を終了する。
【0160】
つまり、本実施形態では、駆動時間TQが規定充電時間T1よりも長くて規定電荷量Qcが取得できた場合は、現在保存されている実電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoの値(前回までの駆動時において保存された値)を、その取得した今回駆動時における規定電荷量Qc及び目標エネルギーEtrgに更新して保存する。
【0161】
一方、駆動時間TQが規定充電時間T1よりも短い等によって第3取得タイミングが到達する前に放電が開始された場合は、実電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoの更新は行わず、現在保存されている実電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoをそのまま保持しておく。
【0162】
このようにすることで、規定電荷量Qcが取得される毎に、常にその取得された最新の規定電荷量Qc及びそのときの目標エネルギーEtrgが、それぞれ実規定電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoとして更新・保存されることとなる。
【0163】
(5)放電処理の説明
次に、制御IC22にて行われる放電処理について、図10を用いて説明する。図10は、制御IC22が実行する放電処理を表すフローチャートである。制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがLレベルに転じる立ち下がりエッジタイミング(図5の時刻t4)にてこの放電処理を開始する。
【0164】
図10の放電処理が開始されると、まずS610にて、駆動時間TQが、規定電荷量Qcを取得するのに必要な取得時間Tc(図5(k)参照。時刻t1〜時刻tcまでの時間。)より長いか否かを判断する。つまり、今回の駆動において規定電荷量Qcを計測できるかどうかを予め判断する。そして、駆動時間TQが取得時間Tcより長くて規定電荷量Qcを計測できる場合は(S610:YES)、S615にて、第3取得タイミング(図5(k)に示す時刻tc)であるか否かを判断する。そして、第3取得タイミングならば、S620にて、そのときの充電電荷量QcのA/D値を取得し、続くS625にて、その取得した充電電荷量Qcを、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0165】
そして、続くS630にて、ピーク側閾値Ith1を算出する。具体的には、全充電電荷量Qtotalに対してピーク側閾値Ith1が比例するような所定の関数f3(Qtotal)が予め設定されており、この関数f3を用いて、ピーク側閾値Ith1を算出する。このピーク側閾値Ith1は、既述の通り、規定放電時間T3(図5参照)をかけて全充電電荷量Qtotalを放電完了させるために必要な値である。
【0166】
この関数f3は、全充電電荷量Qtotalを、図5の時刻t4〜t5の間の時間である規定放電時間T3をかけて放電させるために必要なピーク側閾値Ith1を算出するためのものである。そのため、例えば全充電電荷量Qtotalが大きいほど、これを規定放電時間T3かけて放電させるためにピーク側閾値Ith1も大きい値に設定され、逆に全充電電荷量Qtotalが小さいほど、これを規定放電時間T3かけて放電させるためにピーク側閾値Ith1も小さい値に設定されることとなる。
【0167】
一方、駆動時間TQが取得時間Tc以下ならば(S610:NO)、規定電荷量Qcが取得されないまま放電が開始されるということであるため、S635にて、現在保存されている実目標エネルギーEtrgo及び実規定電荷量Qco(前回駆動時までの最新の値)を読み出し、続くS640にて、その読み出した実目標エネルギーEtrgo及び実規定電荷量Qcoと、今回駆動時に設定されている目標エネルギーEtrgとを用いて、次式4により、規定電荷量Qcを推定する。なお、Qc’は、規定電荷量Qcの推定値を意味する。
【0168】
Qc’=Qco*(Etrg/Etrgo)1/2 ・・・ (式4)
そして、上記式4の演算により得られた規定電荷量Qcの推定値Qc’を、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0169】
つまり、S635〜S640の演算は、ピエゾスタックPEへの充電が目標エネルギーEtrgに達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量Qcを推定する演算であり、換言すれば、駆動時間TQが取得時間Tcよりも長かったならば充電されるであろう規定電荷量Qcを推定するものである。
【0170】
この推定は、例えば、単に現在保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回駆動時の規定電荷量の推定値Qc’とすることもできる。しかし、その実規定電荷量Qcoに対応付けられて保存されている実目標エネルギーEtrgoと今回駆動時の目標エネルギーEtrgが異なっているような場合に、現在保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回の規定電荷量として推定すると、目標エネルギーが異なっている分、規定電荷量の推定精度が低くなるおそれがある。
【0171】
そこで本実施形態では、規定電荷量を推定するにあたり、上記式4のように、現在保存されている実規定電荷量Qcoに対応した実目標エネルギーEtrgoと今回設定されている目標エネルギーとの比率に応じて、その保存されている実規定電荷量Qcoを補正して、その補正後の値を、今回駆動時における規定電荷量の推定値Qc’としている。
【0172】
S640にて、規定電荷量の推定値Qc’を全充電電荷量Qtotalとして保存すると、S630にて、その保存した全充電電荷量Qtotalに基づき、既述の関数f3を用いて、ピーク側閾値Ith1を算出する。このピーク側閾値Ith1は、既述の通り、規定放電時間T3(図5参照)をかけて全充電電荷量Qtotalを放電完了させるために必要な値である。
【0173】
このようにしてピーク側閾値Ith1を算出した後は、S645にて、放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、放電開始タイミングになったら、S650に進み、充電スイッチSWaをオフすると共に時間カウンタKを0にリセットして、続くS655にて、放電スイッチSWbをオンする。これにより、ピエゾスタックPEからの放電(放電スイッチング制御)が開始されることとなる。
【0174】
そして、S660にて時間カウンタKをインクリメントし、S665にて、時間カウンタKが所定の判定時間Tdonを超えたか否かを判断する。時間カウンタKが判定時間Tdonを超えていない場合は、S670に進み、ノードN5又はノードN6の電圧にて表される現在の放電時のピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えているか否かを判断する。そして、ピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えていない場合は、S660に戻る。
【0175】
一方、S665にて時間カウンタKが判定時間Tdonを超えたと判断された場合、又はS670にてピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えたと判断された場合は、S675に進み、放電スイッチSWbをオフすると共に、時間カウンタKをリセットする。そして、S680にて、放電終了タイミング(図5の時刻t6)に到達したか否かを判断し、到達したならばS695にて放電スイッチSWbをオンした上でこの放電処理を終了するが、まだ到達していないならば、S685にて、放電スイッチSWbのオフ時(S675)のピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上であったか否かを判断する。そして、ボトム側閾値Ith2以上でなかった場合はS680に戻り、ボトム側閾値Ith2以上であった場合はS690に進む。
【0176】
S690では、ピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2より小さくなったか否かを判断する。そして、ピエゾ電流Ipがまだボトム側閾値以上ならばS680に戻り、ピエゾ電流Ipがボトム側閾値より小さくなったらS655に戻る。
【0177】
なお、ボトム側閾値Ith2は、本実施形態では、予め設定された固定値である。また、時間カウンタKは、放電スイッチSWbのオン時間を計測するものである。放電開始後、ピエゾ電圧の低下に伴って放電スイッチSWbのオン時間は長くなり、やがてピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えられなくなる。そのため、ピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えていなくても、時間カウンタKが判定時間Tdonを超えた場合には、放電スイッチSWbをオフさせるようにしている。
【0178】
このようにして、放電終了タイミング(時刻t6)になるまではピエゾ電流Ipの値に応じて放電スイッチSWbがオン・オフされるが、実際には、放電終了タイミング(時刻t6)よりも前に、ピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上にならない程度に十分に放電がなされ、そうなると、その後はS685の判断で否定判定され続けて放電スイッチSWbはオフのままとなる。よって、上記のようにピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上にならない程度に放電が進んだ時点(図5の時刻t5)、即ち放電開始タイミング(図5の時刻t4)から規定放電時間T3経過後の時点(時刻t5)で、実質的に放電が完了したものとみなせる。
【0179】
なお、規定放電時間T3経過後も、完全に放電しきれなかった残電荷や、ピエゾスタックPEの温度変化や負荷変化によって発生する電荷などが残っている可能性がある。そのため、放電終了タイミング(時刻t6)になったら(S680:YES)、放電スイッチSWbをオンする(S695)ことで、それら残電荷を放電させるようにしている。
【0180】
なお、本実施形態では、図5(k)に示したように、ピエゾスタックの充電電荷量が所定のインターバルta毎にA/D変換されるものであるため、S610では、駆動時間TQと取得時間Tcを比較するようにしたが、充電開始から規定充電時間T1が経過した時(図5の時刻t3)にそのときの充電電荷量のA/D値を取得できるならば、S610を、駆動時間TQと規定充電時間T1との比較とするようにしてもよい。つまり、駆動時間TQが規定充電時間T1よりも長ければS615に進み、短ければS635に進むのである。
【0181】
(6)第1実施形態の効果等
このように、本実施形態では、放電処理(図10)において、駆動時間TQが取得時間Tcより長い場合は、実際に取得された充電電荷量Qcをそのまま全充電電荷量Qtotalとして、この全充電電荷量Qtotalを規定放電時間T3かけて放電させるためのピーク側閾値th1を設定する。一方、駆動時間TQが取得時間Tcより短くて今回駆動時における規定電荷量Qcが取得できない場合は、現在保存されている実充電電荷量Qcoと実目標エネルギーEtrgo、及び今回駆動時に設定されている目標エネルギーEtrgを用いて、今回駆動時に規定充電時間T1かけて充電が行われたならば(より詳しくは、取得時間Tcが経過するまで充電が行われたならば)取得できたであろう規定電荷量Qcを推定する。そして、その推定値Qc’を今回の全充電電荷量Qtotalとして、その全充電電荷量Qtotal(=推定値Qc’)を規定放電時間T3かけて放電完了させるために必要なピーク側閾値Ith1を算出する。
【0182】
そのため、駆動時間TQが長いか短いかにかかわらず、駆動時間TQが短くて規定電荷量Qcが取得される前に放電が開始された場合でも、放電速度を適正に制御することができる。即ち、駆動時間TQの長短によらず同じ放電速度にて放電を行うことができる。
【0183】
このことを既述の図12(b)を用いて説明すれば、駆動時間TQが短くて規定電荷量Q1まで充電される前の時刻t12で放電が開始されてしまっても、規定電荷量Q1まで充電された場合の放電速度(破線a5)と同じ放電速度(一点鎖線a6)にて放電が行われるということである。
【0184】
また、駆動時間TQが長くて実際に規定電荷量Qcを取得できた場合に(但し本例ではメイン噴射のときのみ)、その実際の規定電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして保存・更新しておき、駆動時間TQが短くて実際の規定電荷量Qcを取得できない場合には、保存されている最新の実規定電荷量Qcoを今回の規定電荷量の推定値Qc’としている。しかも、ただ単に保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回の規定電荷量の推定値としているのではなく、上記式4に示したように、保存されている実規定電荷量Qcoに対応した実目標エネルギーEtrgoと今回の目標エネルギーEtrgとの比率に応じて実規定電荷量Qcoを補正し、その補正後の値を今回の規定電荷量の推定値Qc’としている。
【0185】
そのため、駆動(噴射)毎に目標エネルギーEtrgが異なっても、その目標エネルギーEtrgに応じた精度の高い規定電荷量の推定を行うことができるため、目標エネルギーEtrgの相違による放電速度の制御精度の低下を抑制し、より高い精度で放電速度を適正に制御することができる。
【0186】
また、本実施形態では、1燃料サイクルにおいて、メイン噴射の時にのみ、そのときに取得された規定電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして保存するようにしている。そのため、実規定電荷量Qcoの保存を、効率的且つ確実に行うことができる。
【0187】
また、本実施形態では、駆動(噴射)の際に、今回の駆動時間TQが、規定電荷量Qcを取得しうる程度に長いかどうか(具体的には、本例では取得時間Tcよりも長いかどうか)を予め判断し、長いならば(即ち規定電荷量Qcを取得できるならば)、あえて保存されている実規定電荷量Qcoを用いた規定電荷量の推定は行わず、取得時間Tc経過後に実際に取得される規定電荷量Qcを用いてピーク側閾値Ith1を算出するようにしている。そのため、より高い精度でより適正なピーク側閾値Ith1の算出を行うことができる。
【0188】
なお、本実施形態において、ピエゾスタックPE(Pa〜Pd)は本発明のピエゾ素子体に相当し、レール圧PCは本発明のエネルギー設定関連情報に相当し、目標エネルギーベース値生成ブロックB1(図6参照)は本発明のエネルギー設定関連情報取得手段及び目標エネルギー設定手段に相当し、第2積分器45は本発明の電荷量検出手段に相当する。
【0189】
また、図7の充電処理は、本発明の充電手段が実行する処理に相当する。また、図9の電荷量計測処理において、S500〜S510の処理は本発明の記憶手段が実行する処理に相当する。また、図10の放電処理において、S610の処理は本発明の駆動時間判断手段が実行する処理に相当し、S635〜S640の処理は本発明の規定電荷量推定手段が実行する処理に相当し、S630の処理は本発明の放電パターン設定手段が実行する処理に相当し、S645以降の処理は本発明の放電手段が実行する処理に相当する。
【0190】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のコモンレール式燃料噴射システムについて説明する。本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、第1実施形態のコモンレール式燃料噴射装置と比較して、主として放電処理が異なっており、その他の各種処理やハード構成(回路構成等)は、基本的には第1実施形態と同じである。そのため、以下の説明では、第1実施形態と異なる放電処理についてのみ詳しく説明する。
【0191】
第1実施形態においては、図10に示した放電処理が行われるが、本実施形態では、図11に示す放電処理が行われる。以下、図11の放電処理について説明する。この図11の放電処理も、図10に示した第1実施形態の放電処理と同様、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがLレベルに転じる立ち下がりエッジタイミング(図5の時刻t4)にて開始される。
【0192】
図11の放電処理が開始されると、まずS710にて、第1取得タイミング(図5(k)に示す時刻ta)であるか否かを判断し、第1取得タイミングになるまではこのS710の判断を繰り返し、第1取得タイミングになったら、S715にて、そのときの充電電荷量QaのA/D値を取得する。
【0193】
そして、S720にて、その取得した充電電荷量Qaと、充電開始から第1取得タイミングまでの経過時間である第1経過時間Taと、規定充電時間としての時間T2(図5参照)とを用いて、次式5により、規定電荷量Qcの推定値Qc’を算出する。
【0194】
Qc’=(Qa/Ta)*T2 ・・・ (式5)
そして、上記式5の演算により得られた規定電荷量Qcの推定値Qc’を、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0195】
つまり、S715〜S720の演算は、ピエゾスタックPEへの充電が目標エネルギーEtrgに達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量Qc、換言すれば充電時間TQが規定充電時間T2より長い(より詳しくは規定電荷量Qcを取得可能な第3取得タイミング以上である)ならば充電されるであろう規定電荷量Qcを推定する演算である。
【0196】
そして、上記式5は、第1取得タイミングにおいて取得された充電電荷量Qaと、充電開始から第1取得タイミングまでの経過時間Taに基づき、この第1取得タイミングまでの電荷量の増加傾向(増加割合)と同じ傾向で引き続き充電が行われるとの想定のもとで、その傾向にて規定充電時間T2が経過したならば充電されているであろう電荷量を、規定電荷量Qcの推定値Qc’として推定するものである。
【0197】
なお、本実施形態では、規定充電時間をT2としているが、これは、第1実施形態において図5を用いて説明したように、基本的には規定充電時間がT3として設定されているが、実際には規定充電時間T3が経過する少し前(図5の時刻t2)で充電が終了するため、本実施形態では、実際に充電が終了するまでの時間T2を、規定電荷量の推定を行う際の規定充電時間として用いるようにしている。
【0198】
S720にて全充電電荷量Qtotal(ここでは上記式5を用いて得られた推定値)が保存されると、続くS725にて、第2取得タイミング(図5(k)に示す時刻tb)であるか否かを判断する。そして、第2取得タイミングならば、S730にて、そのときの充電電荷量QbのA/D値を取得する。
【0199】
そして、S735にて、その取得した充電電荷量Qbと、充電開始から第2取得タイミングまでの経過時間である第2経過時間Tbと、規定充電時間としての時間T2とを用いて、次式6により、規定電荷量Qcの推定値Qc’を算出する。
【0200】
Qc’=(Qb/Tb)*T2 ・・・ (式6)
そして、上記式6の演算により得られた規定電荷量Qcの推定値Qc’を、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0201】
このS730〜S735の演算も、上記式5と式6を比較して明らかなように、上記のS715〜S720の演算と基本的に同じ主旨の演算である。つまり、第2取得タイミングにおいて取得された充電電荷量Qbと、充電開始から第2取得タイミングまでの経過時間Tbに基づき、この第2取得タイミングまでの電荷量の増加傾向(増加割合)と同じ傾向で引き続き充電が行われるとの想定のもとで、その傾向にて規定充電時間T2が経過したならば充電されているであろう電荷量を、規定電荷量Qcの推定値Qc’として推定するものである。
【0202】
S735にて全充電電荷量Qtotalの保存がなされた後、又はS725にて第2取得タイミングではないと判断された場合は、S740にて、第3取得タイミング(図5(k)に示す時刻tc)であるか否かを判断する。そして、第3取得タイミングならば、S745にて、そのときの充電電荷量QcのA/D値を取得し、続くS750にて、その取得した充電電荷量Qcを、そのまま全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0203】
S750にて全充電電荷量Qtotalの保存がなされた後、又はS740にて第3取得タイミングではないと判断された場合は、S760にて、ピーク側閾値Ith1を算出する。このピーク側閾値Ith1の算出方法は、第1実施形態におけるピーク側閾値Ith1の算出方法(図10のS630参照)と全く同じであり、関数f3を用いて算出する。
【0204】
ピーク側閾値Ith1を算出した後は、S765にて、放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、まだ放電開始タイミングでなければS725に戻るが、放電開始タイミングになったら、S770に進み、充電スイッチSWaをオフすると共に時間カウンタKを0にリセットする。
【0205】
このS770以降の処理(S770〜S815)は、第1実施形態の放電処理(図10)におけるS650以降の処理(S650〜S695)と全く同じであるため、S770以降の処理についてはその説明を省略する。
【0206】
以上説明した本実施形態によれば、ピエゾスタックPEの充電電荷量のA/D値が取得される毎に、その取得された値と、充電開始からその取得タイミングまでの経過時間とに基づいて、それまでの増加傾向と同じ傾向(割合)で引き続き充電が行われたなら充電されるであろう規定電荷量を推定する。
【0207】
つまり、今回の駆動における規定電荷量の推定を、その今回の駆動時における充電開始後の充電過程に基づいて行うのである。そのため、規定電荷量を高い精度で推定することができ、第1実施形態と同様、駆動時間TQの長短によらず同じ放電速度で放電させることができる。
【0208】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0209】
例えば、上記第1実施形態の放電処理(図10)では、まずS610にて、駆動時間TQが取得時間Tcより長いか否か、即ち今回の駆動において規定電荷量Qcを実際に計測できるかどうかを予め判断し、駆動時間TQが取得時間Tcより長い場合には、規定電荷量Qcの推定は行わずに、実際に計測・取得された規定電荷量(第3取得タイミングで取得された充電電荷量)Qcをそのまま全充電電荷量Qtotalとして保存するようにしたが(S625)、駆動時間TQの長短にかかわらず、S635〜S640の処理、即ち保存されている前回までの最新の実規定電荷量Qcoと実目標エネルギーEtrgo、及び今回の目標エネルギーEtrgを用いた規定電荷量の推定演算と、得られた推定値Qc’の全充電電荷量Qtotalとしての保存を行うようにしてもよい。
【0210】
より具体的には、図10の放電処理において、S610,S615,S620,S625の処理は削除し、まず最初にS635,S640の処理を行って、S630以降の処理に進むのである。
【0211】
また、上記第1実施形態の放電処理(図10)では、S685において、放電スイッチSWbのオフ時(S675)のピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上であったか否かを判断し、ボトム側閾値Ith2以上でなかった場合(つまり放電が十分になされている場合)はS690以降に進むことなく放電終了タイミング(時刻t6)まで放電スイッチSWbをオフさせたままとするようにしたが、このS685の処理を、「規定放電時間T3が経過したか否か(即ち時刻t5となったか否か)」を判断する処理に替えてもよい。その場合、規定放電時間T3が経過していない場合はS690に進み、規定放電時間T3が経過したらS680に戻るようにするとよい。このようにしても、図10と実質的に同じ処理がなされることとなる。第2実施形態の放電処理(図11)におけるS805の処理についても同様である。
【0212】
また、上記実施形態では、ピエゾスタックPEの充電電荷量によらずに放電速度を一定にするための具体的手段として、全充電電荷量Qtotalの値に応じてピーク側閾値Ith1を可変設定するようにしたが、このようにピーク側閾値Ith1を可変設定するのはあくまでも一例であり、例えばボトム側閾値Ith1を可変設定するようにしてもよいし、ピーク側閾値Ith1及びボトム側閾値Ith2の双方を可変設定するようにしてもよい。
【0213】
また、上記第1実施形態では、メイン噴射のときにのみ、第3取得タイミングで取得された充電電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして保存すると共にそのときの目標エネルギーEtrgも実目標エネルギーEtrgoとして保存するようにしたが、このようにメイン噴射のときに限定したのはあくまでも一例であり、メイン噴射以外の他の噴射時においても、駆動時間TQが充電時間T1よりも長くて実際の規定電荷量Qcを取得できるのであれば、その取得した規定電荷量Qcとそのときの目標エネルギーEtrgをそれぞれ実規定電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoとして保存するようにしてもよい。
【0214】
また、上記第1実施形態では、図10のS640に示すように、規定電荷量の推定値を算出するにあたり、現在保存されている実規定電荷量Qcoに対応付けられている実目標エネルギーEtrgoと今回の目標エネルギーEtrgの差異を加味するようにしたが、必ずしも目標エネルギーの差異を考慮する必要はなく、現在保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回の規定電荷量の推定値とするようにしてもよい。
【0215】
また、本発明の適用は、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムに限定されるものではなく、ピエゾスタックを充放電させることによりアクチュエータとして機能するよう構成されたあらゆるピエゾアクチュエータに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0216】
1…燃料タンク、2…燃料フィルタ、3…燃料ポンプ、4…燃料調量弁、5…コモンレール、5a…燃圧センサ、6…高圧燃料通路、7…低圧燃料通路、10…QRコード、20…制御ユニット、21…マイクロコンピュータ、22…制御IC、23…駆動回路、24…A/Dコンバータ、25…EEPROM、30…QRコードリーダ、31…外部機器、41…DC/DCコンバータ、42(SW1〜SW4)…気筒選択スイッチ、43(SW5,SW6)…バンク選択スイッチ、44…第1積分器、45…第2積分器、90,95…オペアンプ、91,96…抵抗、92,97…コンデンサ、93,98…リセットスイッチ、94,99…ホールドスイッチ、B1…目標エネルギーベース値生成ブロック、B2…加算ブロック、B3…ゲイン算出ブロック、B4…温度推定ブロック、B5…第1乗算ブロック、B6…補正量算出ブロック、B7…閾値ベース値算出ブロック、B8…第2乗算ブロック、B9…トリガ信号生成ブロック、Ba…バッテリ、C0…コンデンサ、D1,Da,Db…ダイオード、L1…充放電用コイル、N1〜N6…ノード、PI…ピエゾインジェクタ、Pa〜Pd…ピエゾスタック、R1〜R6…抵抗、SR1…第1シャント抵抗、SR2…第2シャント抵抗、SWa…充電スイッチ、SWb…放電スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピエゾアクチュエータを駆動する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、充放電により伸長または縮小してピストン等を直線動するピエゾアクチュエータが知られており、そのようなピエゾアクチュエータの伸縮によって開閉弁する燃料噴射用のインジェクタ(以下「ピエゾインジェクタ」という)も知られている。
【0003】
ピエゾインジェクタを構成するピエゾアクチュエータは、多数の圧電素子(ピエゾ素子)が積層されてなる積層体(ピエゾスタック)を逆圧電効果により伸縮させるよう構成されたものである。なお、ピエゾスタックの詳細な構成については例えば特許文献1に記載されている。ピエゾ素子は容量性の負荷であり、ピエゾアクチュエータの伸縮は、ピエゾスタックの充電及び放電(詳しくはピエゾスタックを構成する各ピエゾ素子の充電及び放電)により切り替えられる。
【0004】
即ち、ピエゾアクチュエータを駆動する駆動装置は、ピエゾスタックを充電、及び放電することでピエゾアクチュエータを伸長、及び縮小させるよう構成されており、このような駆動装置として、例えば特許文献1〜3に記載されているように、ピエゾスタックの充電及び放電をいずれもチョッパ制御により行うことでピエゾスタックの変位量を制御するものが知られている。
【0005】
この駆動装置は、ピエゾアクチュエータを伸長させる際には、チョッパ制御にかかる充電用のスイッチング素子のオン・オフを繰り返す充電スイッチング制御を行うことにより、ピエゾスタックに流れる電流を漸増・漸減させながらピエゾスタックの充電(伸長)を行う。
【0006】
また、ピエゾアクチュエータを縮小させる際には、チョッパ制御にかかる放電用のスイッチング素子のオン・オフを繰り返す放電スイッチング制御を行うことにより、ピエゾスタックに流れる電流を漸増・漸減させながらピエゾスタックの放電(縮小)を行う。
【0007】
ところで、ピエゾ素子の変位量は、基本的にはピエゾ素子に印加される電圧により定まるが、その電圧と変位量との関係は、温度に応じて変化する。つまり、温度に応じてピエゾ素子の静電容量が変化するため、同じ電圧であっても温度によってその変位量は異なるのである。
【0008】
一方、ピエゾインジェクタの開弁時間を高精度に制御するためには、温度にかかわらず変位量を所望の量に制御(即ち開弁時間を所望の時間に制御)する必要がある。このため、単にピエゾスタックの電圧に基づいてピエゾアクチュエータの変位量を間接的に制御するだけでは、ピエゾスタックの温度に応じてその変位量が変化するため、開弁時間を高精度に制御することができない。
【0009】
そこで、温度にかかわらずピエゾアクチュエータの変位量を所望の量に制御する技術として、特許文献1には、ピエゾスタックを充電するに際し、ピエゾスタックに供給されるエネルギーを一定とする制御(以下「定エネルギー制御」ともいう)を行うことで変位量の温度依存性を抑制することが開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、充電スイッチング制御を行う時間を一定時間に固定すると共に、充電時において単位時間あたりにピエゾスタックに充電される電荷量を制御することでピエゾスタックに供給されるエネルギーを一定に制御することが開示されている。
【0011】
この特許文献2に記載の技術によれば、温度にかかわらず、充電の過程が均一となり、充電開始から上記一定時間後のピエゾスタックのエネルギーも一定となる。そのため、温度によるピエゾアクチュエータの挙動(伸長)のばらつきを抑えることができる。
【0012】
しかし、特許文献1,2に記載の技術はいずれも、ピエゾスタックへの充電を定エネルギー制御により行うことで、充電時、即ちピエゾアクチュエータを伸長させる際については有効であるものの、縮小させる際のピエゾスタックの放電を高精度に制御することは困難である。
【0013】
即ち、定エネルギー制御による充電を行うことによりピエゾスタックのエネルギーを一定に保っても、ピエゾスタックに充電される電荷量は、温度によって異なる。そのため、放電時において例えば所定の放電速度にて放電を行うようにした場合、充電時の電荷量が多いほど放電開始から放電完了までの時間が長くなる。つまり、放電時におけるピエゾアクチュエータの挙動が温度によってばらつくこととなり、ゆえにピエゾアクチュエータを高精度に制御できなくなる。
【0014】
そこで、特許文献3には、放電時においても、温度にかかわらず所望の放電時間にて放電が行われるようにすることで放電時のピエゾアクチュエータの挙動を高精度に制御すべく、ピエゾスタックに充電される電荷量を検出し、その検出結果に基づいて放電スイッチング制御を行う技術が開示されている。
【0015】
一般によく知られている放電スイッチング制御では、例えば特許文献3に記載されているように、放電の際、放電用のスイッチング素子をオンすることによりピエゾスタックからの放電(放電電流の漸増)を開始させ、その放電電流が所定のピーク側閾値に達したらスイッチング素子をオフして放電電流を漸減させる。そして、放電電流が所定のボトム側閾値まで低下したら再びスイッチング素子をオンして放電電流を漸増させる。このようにして放電スイッチング制御を行うことにより、ピエゾスタックに充電されている電荷量は徐々に減少していき、これに伴って伸長状態であったピエゾアクチュエータも縮小していくこととなる。
【0016】
そして、特許文献3では、放電スイッチング制御を行うにあたり、充電スイッチング制御時にピエゾスタックに充電された電荷量に基づいて、放電スイッチング制御時における上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方を可変設定する。例えば、充電電荷量が多いほどピーク側閾値を大きく設定する。これにより、温度変化等によってピエゾスタックに充電される電荷量が変化しても、所望の放電時間(以下「規定放電時間」ともいう)で放電を完了させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−130561号公報
【特許文献2】特開2005−016431号公報
【特許文献3】特開2007−205173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献3に記載されている技術では、規定の充電スイッチング制御が完了した後、即ち定エネルギー制御における規定のエネルギー(目標エネルギー)まで充電が完了した後に放電が開始される場合には、その充電された電荷を規定放電時間をかけて放電させるように放電速度の適正な制御がなされる。
【0019】
しかし、目標エネルギーに達する前の、まだ充電スイッチング制御が行われている最中に(目標エネルギーに対応した電荷量である規定電荷量まで充電されていないときに)放電が開始される場合や、例えば充電スイッチング制御中に所定インターバル毎にピエゾスタックの電荷量を検出する構成において、ある検出タイミングにて電荷量が検出されてから次の検出タイミングまでの、充電電荷量が増加している間に、放電が開始されてしまう場合(つまりこの場合、実際の充電電荷量よりも少ない電荷量が検出された状態となっている)には、適正な放電速度にて放電が行われないという問題がある。
【0020】
即ち、このように充電電荷量がまだ規定電荷量に達していないときに放電が開始されると、駆動装置は、そのときの充電電荷量に基づき、その電荷量を規定放電時間かけて放電させようとする。しかし、充電電荷量が規定電荷量よりも少ないにもかかわらず、その少ない電荷量を規定放電時間かけて放電させようとすると、本来の望ましい放電速度(規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるための放電速度)よりも遅い速度で放電が行われてしまのである。
【0021】
このような問題は、例えばピエゾインジェクタを用いた内燃機関の燃料噴射装置における、1燃焼サイクル中における燃焼室内への燃料噴射を、メイン噴射と、このメイン噴射よりも少ない微量の燃料を噴射する少なくとも一回の微量噴射とに分割して行う、いわゆる多段噴射を行う場合において、微量噴射を行う場合に生じる可能性がある。
【0022】
図12〜図14を用いて、上述した問題について具体的に説明する。図12(a)は、目標エネルギーに対応した規定電荷量Q1(Q2)まで充電が行われる場合のピエゾスタックの充電電荷量の変化を説明するための説明図であり、図12(b)は、規定電荷量Q1に到達する前に放電が開始される場合のピエゾスタックの充電電荷量の変化を説明するための説明図である。
【0023】
ピエゾインジェクタの駆動、即ちピエゾインジェクタが有するピエゾスタックへの充放電は、燃料噴射量に応じて生成される駆動信号に従って行われ、図12(a)に示すように、駆動信号がHレベルに立ち上がるタイミング(時刻t1)でピエゾスタックの充電スイッチング制御が開始され、駆動信号がLレベルに立ち下がるタイミング(時刻t3(又は時刻t5))でピエゾスタックの放電スイッチング制御が開始される。なお、駆動信号がHレベルの間の時間を、以下、駆動時間と称す。
【0024】
また、定エネルギー制御による充電においては、充電時間(充電スイッチング制御が行われる時間)が、目標エネルギーに応じて規定充電時間として予め設定され、充電開始後、その規定充電時間が経過すると(時刻t2)、ピエゾスタックへの充電は停止される。このとき、ピエゾスタックには目標エネルギーに応じた規定電荷量が充電されていることになる。また、放電時間についても、規定放電時間が予め設定され、放電開始後、その規定放電時間が経過したときに放電が完了するように放電スイッチング制御が行われる。そして、図12〜図14の例では、規定充電時間と規定放電時間が同じになるように設定されている。
【0025】
また、充電エネルギーは一定であっても温度が変化すると充電速度も変化し、規定充電時間内に充電される電荷量(規定電荷量)も温度によって異なる。図12(a)のa1(実線)の波形とa3(点線)の波形はその一例であり、a3の波形はa1の波形に比べて、充電エネルギーは同じであるものの温度が異なることにより充電速度が遅く、規定電荷量はa1の場合のQ1に対してa3の場合はQ2と小さくなる。
【0026】
但しこのように規定電荷量が異なっても、放電時間は同じ規定放電時間となる。つまり、規定充電時間中の充電速度が大きくて規定電荷量が大きいほど、放電速度も大きくして規定放電時間をかけて放電が完了するよう、上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方が可変設定され、逆に規定充電時間中の充電速度が小さくて規定電荷量が小さいほど、放電速度も小さくして同じ規定放電時間にて放電が完了するよう、上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方が可変設定される。
【0027】
そして、図12(a)に示すように、駆動時間TQが長くてピエゾスタックへの充電が規定電荷量までなされる場合、つまり駆動時間TQが規定充電時間よりも長い場合は、ピエゾスタックの充電電荷量の波形は台形状になる。この場合、駆動時間TQが異なっても放電時間は同一である。即ち、充電電荷量が図中a1(実線)のように変化する場合の放電時間(時刻t3〜t4)と、それより駆動時間が長くて充電電荷量が図中a2(破線)のように変化する場合の放電時間(時刻t5〜t6)とは、いずれも同じ規定放電時間となる。
【0028】
これに対し、図12(b)に示すように、駆動時間TQが規定充電時間よりも短く、充電開始から規定充電時間が経過する前に(即ち、充電量が規定電荷量に到達する前に)放電が開始されるような場合は、充電電荷量の波形は三角形状になる。この場合、駆動時間TQが短ければ短いほど、それに応じて充電時間も短くなり、充電電荷量も少なくなる。しかし、放電時間については、既述の通りあくまでも規定放電期間をかけて放電が完了するように制御されることから、充電電荷量が少なければ少ないほど、ゆっくりとした速度で放電が行われてしまうことになる。
【0029】
図12(b)において、図中a4(実線)のように時刻t1で充電が開始された後、そのときの目標エネルギーに応じた規定電荷量Q1に到達する前の時刻t12で放電が開始されると、その放電開始時の充電電荷量は規定電荷量Q1よりも小さいQ3となっている。
【0030】
この場合、駆動時間TQが短かったことにより充電電荷量は結果として規定電荷量Q1よりも少なくなっているものの、その充電はあくまでも規定電荷量Q1を充電することを目標に、それに応じた充電速度で行われたものである。そのため、放電についても、本来ならば図中a5(破線)のように、規定電荷量Q1が規定放電時間で放電されるような放電速度にて行うのが適正な放電といえる。つまり、時刻t12で放電が開始された場合も、図中a6(一点鎖線)のように、図中a5(破線)の放電速度と同じ放電速度で放電が行われるのが適正な放電である。
【0031】
しかし、特許文献3に記載されている放電スイッチング制御では、充電電荷量に関係なく放電時間が一定(規定放電時間)となるように制御されることにより、時刻t12で放電が開始される場合の実際の放電速度は、そのときの充電電荷量Q3(<Q1)を規定放電時間で放電完了させるべく、図中a7(実線)のように、図中a5(破線)よりも遅い放電速度となってしまう。この図中a7(実線)が示す実際の放電速度は、図中a8(点線)に示すような、規定電荷量がQ3であってその規定電荷量Q3まで充電が行われた場合における放電速度と同じである。
【0032】
つまり、規定電荷量Q1まで充電させるべく、それに応じた充電速度にて充電を開始した場合には(図中a4)、本来ならば放電についてもその充電速度に対応した放電速度(図中a5)で行われるべきであるところ、規定電荷量Q1に到達する前のまだ電荷量Q3のときに放電が開始されると、駆動装置は、その電荷量Q3を規定放電時間かけて放電させるべく、本来の適正な放電速度(図中a6。a5と同じ放電速度)よりも遅い放電速度(図中a7)にて放電させてしまうのである。
【0033】
そのため、図14に示すように、駆動時間TQが規定充電時間よりも短くなるような低噴射領域において、駆動時間TQに対する燃料噴射量のリニアリティが悪化してしまう。即ち、本来は低噴射領域においても図中破線に示すように駆動時間TQの長短に拘わらず全体として燃料噴射量のリニアリティが維持されるべきであるが、低噴射領域では、上記のように放電速度が遅くなってしまうため、図中実線に示すように本来の適正な燃料噴射量よりも多くの燃料が噴射されてしまうことになる。
【0034】
また、実際の放電制御では、図13に示すように、充電中に所定インターバル(Ta)毎にそのときの充電電荷量を検出し、その検出結果に基づいて放電速度を設定する(例えば放電スイッチング制御時における上記ピーク側閾値又はボトム側閾値の少なくとも一方を設定する)のが一般的である。即ち、図13の例では、充電開始から所定インターバルTa経過後に電荷量Qaを検出し、そこから更に所定インターバルTa経過後(充電開始からTb経過後)に電荷量Qbを検出し、そこから更に所定インターバルTa経過後(充電開始からTc経過後)に、規定電荷量である電荷量Qcを検出する。
【0035】
そのため、図13の例のように、駆動時間TQが、Tb<TQ<Tcの場合は、放電開始時に検出されている電荷量はQbであり、このQbは放電開始時に実際に充電されている電荷量よりも小さい。そのため、このQbに基づいて設定された放電速度に基づく放電がなされると、放電速度の適正な制御がより困難になってしまう。
【0036】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、充放電によりピエゾアクチュエータを駆動するにあたり、充電開始から放電開始までの駆動時間の長短によらず、放電速度を適正に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータの駆動方法であって、ピエゾ素子体を伸長させる際は、該ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行う。また、ピエゾ素子体の放電が開始される前までに、予め、該ピエゾ素子体への充電が目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定し、その推定した規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定する。そして、充電開始タイミングから駆動時間経過後、その設定した放電パターンに従って放電を行う。
【0038】
上記の駆動方法では、ピエゾ素子体を伸長させための充電は、目標エネルギーを設定して、ピエゾ素子体の充電エネルギーをその目標エネルギーに到達させることを目標にして行われることになるが、駆動時間の長さによっては、実際の充電エネルギーが必ず目標エネルギーに到達するとは限らず、目標エネルギーに到達する前のまだ充電が行われている最中に駆動時間が経過して、放電が開始される場合も起こりうる。
【0039】
そこで、目標エネルギーまで充電が到達したならば充電されるはずの電荷量である規定電荷量を、放電が開始される前に予め推定しておく。そして、その推定した規定電荷量に基づき、その規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるのに必要な放電パターンを設定する。
【0040】
なお、放電パターンの具体的態様は種々考えられ、例えば放電速度(一定時間あたりの放電電荷量)であってもよいし、また例えば、既述の特許文献3のようにチョッパ制御により放電を行う構成の場合には、後述する請求項10に記載のように放電電流のピーク側閾及びボトム側閾値のうち少なくとも何れか一方であってもよい。
【0041】
そして、放電手段は、その設定された放電パターンに従って放電を行う。つまり、放電開始時(充電開始タイミングから駆動時間経過時)のピエゾ素子体の実際の充電電荷量に関係なく、上記放電パターン、即ち規定電荷量まで充電された場合を想定して設定された放電パターンにて放電が行われる。換言すれば、放電開始時に実際に充電されている電荷量に関係なく、規定電荷量を規定放電時間かけて放電完了させるのに必要な放電速度にて放電が行われるということであり、これは即ち、放電開始時の充電電荷量に関係なく放電速度は同じということである。そのため、放電開始時の電荷量が少ないほど、放電開始から放電完了までに要する時間は短くなる。
【0042】
従って、請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動方法によれば、放電開始時の実際の充電電荷量にかかわらず、そのときの目標エネルギーに応じた規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるための放電パターンにて放電が行われる。そのため、充電開始から放電開始までの駆動時間の長短によらず、放電速度を適正に制御することが可能となる。
【0043】
次に、請求項2に記載の発明は、一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータを駆動するピエゾアクチュエータ駆動装置であって、充電手段と、規定電荷量推定手段と、放電パターン設定手段と、放電手段と、を備えたものである。
【0044】
充電手段は、ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行うことにより該ピエゾ素子体を伸長させる。規定電荷量推定手段は、ピエゾ素子体の放電が開始される前に、予め、充電手段によるピエゾ素子体への充電が目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定する。放電パターン設定手段は、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定する。そして、放電手段は、充電手段による充電開始タイミングから駆動時間経過後、放電パターン設定手段により設定された放電パターンに従って放電を行うことによりピエゾ素子体を縮小させる。
【0045】
このように構成された請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、放電開始時の実際の充電電荷量にかかわらず、放電パターン設定手段が、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量(目標エネルギーに応じた電荷量)に基づいてその規定電荷量を規定放電時間かけて放電させるのに必要な放電パターンを設定するため、請求項1に記載のピエゾアクチュエータの駆動方法が実現され、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
次に、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、ピエゾ素子体に充電される電荷量を検出する電荷量検出手段と、充電手段による充電が、ピエゾ素子体の充電エネルギーが目標エネルギーに到達するまで行われた場合に、該到達後に電荷量検出手段により検出された電荷量を実規定電荷量として記憶する記憶手段と、を備えている。そして、充電手段による充電の開始から、駆動時間経過後に放電手段による放電を開始してその放電が完了するまでを、ピエゾアクチュエータの一回の駆動として、規定電荷量推定手段は、前回のピエゾアクチュエータの駆動時までに記憶手段に記憶された実規定電荷量を用いて、今回の駆動時における規定電荷量を推定する。
【0047】
このように構成された請求項3に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、規定電荷量推定手段が、前回の駆動時までに実際に目標エネルギーまで充電完了されたときに検出された実規定電荷量を用いて、今回の駆動における規定電荷量を推定するため、信頼性の高い規定電荷量が推定されることとなる。そのため、放電速度の適正な制御を高い精度で実現することができる。
【0048】
なお、記憶手段による記憶は、必ずしも、充電エネルギーが目標エネルギーに到達する度に毎回行う必要はなく、例えば所定の駆動回数毎に記憶するようにしてもよいし、例えば後述する請求項6のように主駆動時(詳細は後述)のみ記憶するようにしてもよい。
【0049】
次に、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、規定電荷量推定手段は、前回のピエゾアクチュエータの駆動時までに記憶手段に記憶された実規定電荷量のうち、最も新しい実規定電荷量を、今回の駆動時における規定電荷量として推定する。
【0050】
即ち、直近の駆動時に実際に充電された実規定電荷量は、今回充電されるであろう規定電荷量との差が非常に小さい(或いはほとんど差がない)という想定のものに、その直近の(最も新しい)実規定電荷量を今回の規定電荷量として推定するのである。またこの場合、記憶手段は、常に最新の実規定電荷量のみを記憶しておけば十分である。
【0051】
従って、請求項4に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、前回駆動時までの最新の実規定電荷量という、最も信頼性の高い値を用いて、今回の規定電荷が推定されるため、放電速度の適正な制御をより高い精度で実現することができる。
【0052】
次に、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、目標エネルギーの設定に必要な情報であるエネルギー設定関連情報を取得するエネルギー設定関連情報取得手段と、ピエゾアクチュエータの駆動毎に、エネルギー設定関連情報取得手段により取得されたエネルギー設定関連情報に基づいて目標エネルギーを設定する目標エネルギー設定手段と、を備え、記憶手段は、充電手段による充電が、ピエゾ素子体の充電エネルギーが目標エネルギーに到達するまで行われた場合に該充電時に目標エネルギー設定手段により設定された目標エネルギーを実目標エネルギーとして、実規定電荷量と対応付けて記憶する。そして、規定電荷量推定手段は、上記最も新しい実規定電荷量を、その実規定電荷量に対応付けて記憶手段に記憶されている実目標エネルギーと目標エネルギー設定手段により設定された目標エネルギーとの比率に応じて補正し、その補正後の実規定電荷量を、今回の駆動時における規定電荷量として推定する。
【0053】
前回駆動時までの目標エネルギーと今回駆動時の目標エネルギーが異なっているような場合に、前回までの実規定電荷量をそのまま今回の規定電荷量として推定すると、目標エネルギーが異なっている分、推定精度が低くなるおそれがある。つまり、例えば今回の目標エネルギーが前回よりも高く設定されている場合は、前回実際に充電された規定電荷量よりも多い電荷量が今回充電されることとなるため、その差分による推定精度の低下が生じるのである。
【0054】
そこで請求項5に記載の発明では、規定電荷量を推定するにあたり、単に記憶手段により記憶されている最新の実規定電荷量をそのまま推定値とするのではなく、その実規定電荷量が記憶されたときの実際の目標エネルギー(実目標エネルギー)と今回駆動時の目標エネルギーとの比率に応じて、実規定電荷量を補正する。具体的な補正方法は種々考えられ、例えば、今回駆動時の目標エネルギーが前回駆動時よりも所定の割合だけ増加しているならば実規定電荷量についてもそれと同じ割合だけ増加させる、という補正を行って、その補正後(増加させた後)の実規定電荷量を推定値とすることができる。
【0055】
従って、請求項5に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、駆動毎に目標エネルギーが異なってもその目標エネルギーに応じた精度の高い規定電荷量が推定されるため、目標エネルギーの相違による放電速度の制御精度の低下を抑制することができる。
【0056】
次に、請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、ピエゾアクチュエータを、予め設定された複数回の駆動を一つの駆動サイクルとして、複数の駆動サイクルに渡って駆動すると共に、一つの駆動サイクル内で行われる複数回の駆動として、少なくとも、駆動時間が、ピエゾ素子体の充電エネルギーが目標エネルギーに到達するのに要する時間よりも長いことにより該ピエゾ素子体に規定電荷量が充電される主駆動と、この主駆動よりも前及び後の少なくとも一方においてこの主駆動における駆動時間よりも短い駆動時間で駆動する副駆動と、を行うように構成されている。そして、記憶手段は、各駆動サイクルにおける主駆動時に実規定電荷量の記憶を行う。
【0057】
ピエゾアクチュエータの駆動を、主駆動と副駆動を含む駆動サイクルで行う場合、副駆動時には、その駆動時間の長さによっては、充電中に駆動時間が経過してしまって規定電荷量まで充電されることなく放電が開始される可能性がある。これに対し、主駆動時には、確実に規定電荷量まで充電される。
【0058】
そのため、上記駆動サイクルで駆動するような場合は、主駆動時にのみ、そのときの規定電荷量を実規定電荷量として記憶するようにすれば、効率的且つ確実に実規定電荷量を記憶することができる。
【0059】
次に、請求項7に記載の発明は、請求項3〜請求項6の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、駆動時間が、ピエゾ素子体を目標エネルギーまで充電完了させるのに必要な規定充電時間よりも長いか否かを判断する駆動時間判断手段を備えている。そして、放電パターン設定手段は、駆動時間判断手段により駆動時間が規定充電時間よりも長いと判断された場合は、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量に基づく放電パターンの設定は行わず、充電手段による充電開始タイミングから規定充電時間が経過した後に電荷量検出手段により検出された電荷量に基づいて、放電パターンを設定する。
【0060】
即ち、駆動の際に、今回の駆動時間が規定充電時間より長いかどうか、即ち今回の駆動は規定電荷量まで(目標エネルギーまで)充電完了するような駆動であるのかどうかを予め判断する。そして、今回の駆動時間が、規定電荷量まで充電完了する程度に長いならば、あえて前回までの実規定電荷量を用いて今回の規定電荷量を推定する必要性はなく、駆動時間経過後に実際に検出される充電電荷量を用いて放電パターンを設定すれば十分であり、且つ、そのように実際の充電電荷量を用いる方がより高い精度でより適正な放電パターンを設定することができる。
【0061】
次に、請求項8に記載の発明は、請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、充電手段による充電開始後、所定の検出タイミング毎にピエゾ素子体に充電されている電荷量を検出する電荷量検出手段を備え、規定電荷量推定手段は、充電手段による充電開始後、上記検出タイミング毎に、該検出タイミングにおける電荷量検出手段による検出結果と、充電開始から該検出タイミングまでの経過時間とに基づいて、規定電荷量を推定する。
【0062】
即ち、既述の請求項3〜7に記載の駆動装置のように前回駆動時までの実規定電荷量(過去に検出された実値)を用いて今回の規定電荷量を推定するのとは異なり、今回駆動時の規定電荷量については、その今回の駆動時における実際の充電過程に基づいて推定するのである。
【0063】
従って、請求項8に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、今回の駆動における規定電荷量の推定を、今回の駆動時における充電開始後の充電過程に基づいて行うため、精度の高い推定を行うことができ、放電速度の適正な制御を高い精度で実現することができる。
【0064】
次に、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、放電パターン設定手段は、充電開始後、駆動時間が経過する前に充電エネルギーが目標エネルギーに到達して該到達後の電荷量が電荷量検出手段により検出された場合は、規定電荷量推定手段により推定された規定電荷量に基づく放電パターンの設定は行わず、該検出された該到達後の電荷量に基づいて放電パターンを設定する。
【0065】
即ち、充電開始後、上記検出タイミング毎に規定電荷量の推定は行うものの、実際の充電電荷量が規定電荷量に到達してその電荷量が検出されたならば、あえてその到達前に推定された規定電荷量を用いる必要性はなく、その到達後に実際に検出された電荷量(規定電荷量)を用いて放電パターンを設定すれば十分である。しかも、そのように実際の充電電荷量を用いる方がより高い精度でより適正な放電パターンを設定することができる。
【0066】
次に、請求項10に記載の発明は、請求項2〜請求項9の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、ピエゾ素子体に直列に接続される充放電用コイルと、この充放電用コイルとピエゾ素子体との直列回路に対して、直流電源から充電スイッチを介して電源供給を行う充電経路と、上記直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介してピエゾ素子体の充電電荷を放電させるための放電経路と、充電スイッチに対して、カソードが直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、放電スイッチに対して、アノードが直流電源の負極側となるよう並列に接続された第2ダイオードと、を備えている。
【0067】
充電手段は、充電スイッチのオン・オフを繰り返すことによりピエゾ素子体を充電させて伸長させる。放電手段は、ピエゾ素子体からの放電電流を検出する放電電流検出手段を有すると共に、充電開始タイミングから駆動時間経過後、放電スイッチをオンし、その後、放電電流がピーク側閾値より大きくなったら放電スイッチをオフし、その後、放電電流がボトム側閾値より低くなったら放電スイッチをオンする、という動作を繰り返すことにより、ピエゾ素子体を放電させて収縮させるよう構成されている。
【0068】
そして、放電パターン設定手段は、放電パターンの設定を、ピーク側閾値及びボトム側閾値のうち少なくとも何れか一方を設定することにより行う。
このように構成された請求項10に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置によれば、規定電荷量に基づく放電パターンの設定が、上記の通りピーク側閾値及びボトム側閾値の少なくとも一方を設定するという、ごく簡易的な方法にて実現されるため、放電パターンの設定にかかる処理負荷を低く抑えつつ、上述した各請求項2〜9の効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態のコモンレール式燃料噴射システムの構成を表す構成図である。
【図2】制御ユニットの概略構成を表す説明図である。
【図3】制御ユニットの概略構成を表し、特に駆動回路の詳細構成を表す説明図である。
【図4】第1積分器及び第2積分器の概略構成を表す回路図である。
【図5】駆動回路の動作状態を表すタイムチャートである。
【図6】制御ICにおける、電荷量閾値Qth及びトリガ信号TRGGの生成にかかる機能を説明するための機能ブロック図である。
【図7】充電処理を表すフローチャートである。
【図8】第1積分器動作処理を表すフローチャートである。
【図9】電荷量計測処理を表すフローチャートである。
【図10】第1実施形態の放電処理を表すフローチャートである。
【図11】第2実施形態の放電処理を表すフローチャートである。
【図12】駆動時間と充電量との関係を説明するための説明図である。
【図13】駆動時間と充電量との関係、及び充電中における充電電荷量の検出タイミングを説明するための説明図である。
【図14】駆動時間と燃料噴射量との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
(1)コモンレール式燃料噴射システムの構成
図1は、本発明が適用されたディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムの構成を表す構成図である。図1に示す如く、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、車両に搭載され、主として、燃料タンク1、燃料ポンプ3、コモンレール5、ピエゾインジェクタPI、及び制御ユニット20を備えている。
【0071】
燃料タンク1内の燃料は、燃料フィルタ2を介して、燃料ポンプ3によって汲み上げられる。燃料ポンプ3は、燃料調量弁4を備えており、制御ユニット20からの制御指令に基づいてこの燃料調量弁4が操作されることで、外部に吐出される燃料量が決定される。
【0072】
燃料ポンプ3からの燃料は、コモンレール5に加圧供給される。コモンレール5は、燃料ポンプ3から加圧供給された燃料を高圧状態で蓄えるものであり、このコモンレール5に蓄圧された高圧燃料は、高圧燃料通路6を介して、ディーゼルエンジンの各気筒(本例では4気筒)に設けられたピエゾインジェクタPI(燃料噴射弁)に供給される。各気筒のピエゾインジェクタPIは、いずれも低圧燃料通路7と接続されており、この低圧燃料通路7を介して燃料タンク1に燃料を戻すことが可能となっている。
【0073】
ピエゾインジェクタPIの詳細構成については、既述の特許文献1,3などに詳しく記載されているため、ここではその詳細説明を省略するが、その概要は次の通りである。
即ち、ピエゾインジェクタPIは、複数の圧電素子(ピエゾ素子)が積層されてなるピエゾスタックを備えており、このピエゾスタックが、逆圧電効果によって伸縮することによりアクチュエータとして機能する。つまり、ピエゾインジェクタPIは、ピエゾスタックからなるピエゾアクチュエータを備えたものである。ピエゾスタックは容量性の負荷であり、充電されることで伸長し、放電されることで縮小する。なお、本実施形態のピエゾインジェクタPIが有するピエゾスタックは、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電材料の圧電素子を利用したものである。
【0074】
ピエゾスタックへ電流が供給されず(即ちピエゾスタックが充電されておらず)ピエゾスタックが収縮状態にあるときには、ノズルニードルが燃料噴射口を閉じた閉弁状態となり、燃料は噴射されない。一方、ピエゾスタックに電流が供給される(即ちピエゾスタックが充電される)ことでピエゾスタックが伸長状態となると、ノズルニードルが燃料噴射口を開いた開弁状態となり、高圧燃料通路6から供給された燃料が燃料噴射口から噴射されることとなる。
【0075】
本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、コモンレール5内の燃圧(以下「レール圧」ともいう)PCを検出する燃圧センサ5aや、ディーゼルエンジンの出力軸(クランク軸)の回転角度を検出するクランク角センサ(図示略)等、ディーゼルエンジンの動作状態にかかわる各種の物理量を検出する各種センサや、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルセンサ(図示略)等も備えている。そして、これら各種センサの検出結果は、制御ユニット20に入力される。
【0076】
制御ユニット20は、各種センサから入力される各種検出値に基づき、ピエゾインジェクタPIや燃料調量弁4等の、コモンレール式燃料噴射システムを構成する各種アクチュエータの動作を制御する。
【0077】
なお、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムでは、ピエゾインジェクタPIからの燃料噴射がいわゆる多段噴射にて行われる。即ち、ディーゼルエンジンの1燃焼サイクル中に、メイン噴射(本発明の主駆動に相当)と、その前後においてそのメイン噴射よりも少ない微量の燃料を噴射する微量噴射(例えばパイロット噴射、ポスト噴射等。本発明の副駆動に相当。)とが行われる。
【0078】
(2)制御ユニットの構成
次に、図2及び図3を用いて、制御ユニット20の構成を説明する。まず、図2を用いて制御ユニット20の概略構成を説明する。図2に示すように、制御ユニット20は、主としてマイクロコンピュータ21と、制御IC22と、駆動回路23と、A/Dコンバータ24と、EEPROM25とを備えている。
【0079】
マイクロコンピュータ21は、アクセルセンサによって検出されるアクセルペダルの操作量と、クランク角センサの検出値から定まる出力軸の回転速度とに基づき、ディーゼルエンジンの出力トルクの要求を満たす要求噴射量を算出する。そして、その算出した要求噴射量と、燃圧センサ5aの検出値とに基づき、ピエゾインジェクタPIに対する噴射指令値(指令噴射期間)をマップ演算し、その噴射指令値に応じた駆動信号IJT(図5(a)参照)を制御IC22へ出力する。
【0080】
駆動信号IJTは、ピエゾインジェクタPIが有するピエゾスタックの充電開始タイミング及び放電開始タイミングを規定するものであり、図5(a)に示すように、Hレベルに立ち上がるタイミング(時刻t1)で充電が開始され、Lレベルに立ち下がるタイミング(時刻t4)で放電が開始される。そして、この駆動信号IJTの長さ(Hレベル状態の長さ)である駆動時間TQは、要求噴射量とレール圧PCとに応じて決定される。
【0081】
制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力された駆動信号IJTに基づいて駆動回路23を制御することで、ピエゾインジェクタPIへの電力供給状態(つまり、ピエゾインジェクタPIを構成するピエゾスタックの充放電)を制御して、要求噴射量の燃料が所望のタイミングで噴射されるようにピエゾインジェクタPIを伸縮させる。これにより、ピエゾインジェクタPIから噴射される燃料の噴射量、噴射時期及び噴射段等の各種噴射形態が制御されることとなる。
【0082】
駆動回路23は、制御IC22からの各種指令・信号等に従って各気筒のピエゾインジェクタPIを充放電させる。この駆動回路23の詳細構成については後述する。
また、駆動回路23からA/Dコンバータ24には、駆動回路23内の動作状態を示す各種検出信号が入力される。この検出信号は、A/Dコンバータ24にて、A/D変換を含む各種入力処理等がなされた上で、マイクロコンピュータ21及び制御IC22に送信される。
【0083】
ピエゾインジェクタPIには、噴射特性やピエゾスタックの静電容量などの各種特性等について個体差があり、このような固有の特性は、ピエゾインジェクタPIが搭載される車両が市場に出荷される前の製造工程時において予め計測される。そして、それぞれのピエゾインジェクタPIを同じように作動させるための調整データを含む個体情報が、QRコード10として記憶される。このQRコード10は、ピエゾインジェクタPIに印字されている。なお、個体情報を記憶する手段としてQRコード10を用いるのはあくまでも一例であり、他にも、例えばICメモリを用いたり、補正抵抗器を設けたりするなど、種々の方法を採用できる。
【0084】
そして、QRコード10に記憶された個体情報は、ディーゼルエンジンの製造工程やサービス店等において必要に応じてQRコードリーダ30により読み取られ、外部機器31によって制御ユニット20内のEEPROM25に書き込まれる。マイクロコンピュータ21は、上述のように噴射指令値を算出するにあたり、EEPROM25に書き込まれた個体情報等を用いて、マップ演算により得られた噴射指令値を補正する。
【0085】
次に、図3を用いて、制御ユニット20の構成とその動作をより詳しく説明する。まず、ピエゾスタックを駆動する駆動回路23について説明する。
図3に示す如く、駆動回路23では、バッテリBaから供給される電力が、まずDC/DCコンバータ41に供給される。DC/DCコンバータ41は、バッテリBaの電圧(例えば12V)を、ピエゾスタックを充電するために必要な高電圧(例えば150〜300V)に昇圧して、その昇圧された高電圧をコンデンサC0へ出力する。
【0086】
コンデンサC0は、DC/DCコンバータ41からの上記高電圧を保持しつつ、ピエゾスタックを充電するための電荷を蓄積する。このコンデンサC0は、一方の端子がDC/DCコンバータ41側に接続され、他方の端子が抵抗R1を介して接地されている。なお、コンデンサC0の静電容量は、ピエゾスタックへの一回の充電処理によってはその電圧がほとんど変化しない程度の、比較的大きな値(例えば、数十〜数百μF程度)に設定されている。また、抵抗R1は、コンデンサC0に流れる電流を検出するためのものであり、この抵抗R1とコンデンサC0の他端との間のノードN3の電圧が、コンデンサC0の電流を示す情報として制御IC22に入力される。
【0087】
コンデンサC0における一方の端子側、即ちDC/DCコンバータ41側は、充電スイッチSWaと充放電用コイルL1との直列接続体、及びバンク選択スイッチ43を介して、各ピエゾインジェクタPIが有する各ピエゾスタックPa,Pb,Pc,Pdの一端(高電位となる端子側)に接続されている。そして、各ピエゾスタックPa〜Pdの他端(低電位となる端子側)は、気筒選択スイッチ42などを介して接地されている。
【0088】
各ピエゾスタックPa〜Pdのうち、ピエゾスタックPaは1番気筒のピエゾインジェクタPIに対応し、ピエゾスタックPbは2番気筒のピエゾインジェクタPIに対応し、ピエゾスタックPcは3番気筒のピエゾインジェクタPIに対応し、ピエゾスタックPdは4番気筒のピエゾインジェクタPIに対応している。そして、各ピエゾスタックPa〜Pdの他端と接地部位との間に、気筒選択スイッチ42が接続されており、これにより、各ピエゾスタックPa〜Pdのいずれに対して充電処理又は放電処理を行うかが選択されるようになっている。
【0089】
気筒選択スイッチ42は、より詳しくは、1番気筒のピエゾスタックPaに接続された第1気筒選択スイッチSW1と、2番気筒のピエゾスタックPbに接続された第2気筒選択スイッチSW2と、3番気筒のピエゾスタックPcに接続された第3気筒選択スイッチSW3と、4番気筒のピエゾスタックPdに接続された第4気筒選択スイッチSW4と、を備えてなるものである。
【0090】
また、ピエゾスタックPaとピエゾスタックPbとの並列回路、及び、ピエゾスタックPcとピエゾスタックPdとの並列回路には、それぞれ、これら並列回路と充放電用コイルL1とを接続するバンク選択スイッチ43が接続されている。より詳しくは、ピエゾスタックPaとピエゾスタックPbとの並列回路には第1バンク選択スイッチSW5が接続され、ピエゾスタックPcとピエゾスタックPdとの並列回路には第2バンク選択スイッチSW6が接続されている。このバンク選択スイッチ43は、複数気筒の同時噴射や、退避走行時に2気筒のみを用いることを可能とするスイッチである。
【0091】
また、第1バンク選択スイッチSW5に接続された各ピエゾスタックPa,Pbは、気筒選択スイッチ42を介して第1シャント抵抗SR1の一端に接続され、この第1シャント抵抗SR1の他端は接地されている。この第1シャント抵抗SR1は、各ピエゾスタックPa,Pbに流れる電流、電荷量を検出するためのものであり、第1シャント抵抗SR1の一端のノードN6の電圧が、その電流、電荷量を示す情報として、第1積分器44、第2積分器45、及び制御IC22に入力される。
【0092】
第2バンク選択スイッチSW6に接続された各ピエゾスタックPc,Pdについても同様であり、気筒選択スイッチ42を介して第2シャント抵抗SR2の一端に接続され、この第2シャント抵抗SR2の他端は接地されている。この第2シャント抵抗SR2は、各ピエゾスタックPc,Pdに流れる電流、電荷量を検出するためのものであり、第2シャント抵抗SR2の一端のノードN5の電圧が、その電流、電荷量を示す情報として、第1積分器44、第2積分器45、及び制御IC22に入力される。
【0093】
また、充電スイッチSWaと充放電用コイルL1との間には、放電スイッチSWbの一方の端子が接続されており、放電スイッチSWbの他方の端子は、抵抗R4を介して接地されている。
【0094】
放電スイッチSWbには、ダイオードDbが並列接続されている。このダイオードDbは、カソードがコンデンサC0と充放電用コイルL1との間の通電経路に接続され、アノードが抵抗R4を介して接地されている。このダイオードDbは、コンデンサC0、充電スイッチSWa、充放電用コイルL1と共に、ピエゾスタックPa〜Pdを充電するチョッパ回路を構成するものであり、フリーホイーリングダイオードとして機能する。
【0095】
一方、充電スイッチSWaには、ダイオードDaが並列接続されている。このダイオードDaは、カソードがコンデンサC0の一端(DC/DCコンバータ41側)に接続され、アノードが放電スイッチSWb側に接続されている。このダイオードDaは、コンデンサC0、充放電用コイルL1、放電スイッチSWbと共に、ピエゾスタックPa〜Pdの電荷を放電するチョッパ回路を構成するものであり、フリーホイーリングダイオードとして機能する。
【0096】
充放電用コイルL1とバンク選択スイッチ43との間には、ダイオードD1と、抵抗R5及び抵抗R6の直列接続体とが、それぞれ、ピエゾスタックPa〜Pdに並列に接続されている。ダイオードD1は、ピエゾスタックPa〜Pdの電圧がマイナスになることを防止している。また、抵抗R5と抵抗R6の間のノードN4の電圧は、ピエゾスタックPa〜Pdの充電電圧を示す情報として制御IC22に入力される。
【0097】
また、コンデンサC0には、これと並列に、抵抗R2及び抵抗R3の直列接続体が接続されている。そして、この抵抗R2と抵抗R3の間のノードN1の電圧は、コンデンサC0の充電電圧を示す情報として、制御IC22及びA/Dコンバータ24に入力される。
【0098】
第1積分器44及び第2積分器45は、いずれも、ノードN5又はノードN6の電圧を積分することにより、ピエゾスタックに充電される電荷量を計測するものである。
なお、以下の説明において、各ピエゾスタックPa〜Pdのうち、気筒選択スイッチ42により選択されて実際に充電が行われるピエゾスタックを、ピエゾスタックPEとも称することとする。
【0099】
第1積分器44は、充電スイッチSWaのオン・オフによる充電処理(充電スイッチング制御)時におけるスイッチング1回分でピエゾスタックPEに充電される電荷量である、単位電荷量Qactを計測する。第2積分器45は、充電処理実行中にピエゾスタックPEに充電される総電荷量であるピエゾ充電電荷量を計測する。
【0100】
各積分器44,45の具体的回路構成は同じであり、その概略構成を図4に示す。なお、図4は、基本的には第1積分器44についてその符号を付しているが、上述の通り第2積分器45も同じ構成であるため、第2積分器45に対応した符号についても括弧書きで付している。
【0101】
第1シャント抵抗SR1又は第2シャント抵抗SR2のいずれか(気筒選択スイッチ42により選択されたピエゾスタックPEに対応した方。以下単に「シャント抵抗SR」ともいう。)で検出されたノードN5又はノードN6の電圧、即ちピエゾスタックPEを流れる電流(ピエゾ電流)は、制御IC22に入力されると共に、各積分器44,45に対し、それぞれ図示しない差動増幅器を介して増幅された上で入力される。上記の通り、第1積分器44はスイッチング1回分の電荷量を計測するのに対して第2積分器45はピエゾスタックPEに充電される電荷量の総量を計測するものであるため、上記差動増幅器の増幅率は、第2積分器45に対応した差動増幅器の増幅率よりも第1積分器44に対応した差動増幅器の増幅率の方が大きい値に設定されている。
【0102】
図4に示す如く、第1積分器44(及び第2積分器45)は、上記差動増幅器による増幅後の電圧(ピエゾ電流の検出電圧)が入力電圧Vinとして入力される。第1積分器44(及び第2積分器45)は、オペアンプ90(95)を備えたアナログ積分器として構成されたものであり、オペアンプ90(95)の出力端子と反転入力端子との間に、コンデンサ92(97)と抵抗91(96)の直列回路が接続されている。コンデンサ92(979)の両端には、この両端を短絡させて積分値をリセットするためのリセットスイッチ93(98)が接続されている。
【0103】
また、オペアンプ90(95)の反転入力端子には、当該積分器44(45)への入力電圧Vinの入力を停止して積分を停止するためのホールドスイッチ94(99)が接続されている。なお、オペアンプ90(95)の非反転入力端子は設置されている。そして、オペアンプ90(95)の出力端子からの出力電圧Voutが、当該積分器44(45)の積分結果として出力される。このうち、第1積分器44からの出力電圧Vout(単位電荷量Qact)は制御IC22に入力され、第2積分器45からの出力電圧Vout(ピエゾ充電電荷量)は制御IC22及びA/Dコンバータ24に入力される。
【0104】
制御ユニット20は、上記駆動回路23に加えて、既述の通り、マイクロコンピュータ21、制御IC22、及びA/Dコンバータ24を備えている。マイクロコンピュータ21は、ディーゼルエンジンの運転状態等を検出する各種センサの検出値に基づき、ピエゾスタックPEの変位量の制御条件(駆動時間TQなど)を算出して、制御IC22に出力する。
【0105】
制御IC22は、マイクロコンピュータ21から出力された制御条件に基づき、駆動回路23を駆動する。A/Dコンバータ24は、駆動回路23のノードN1の電圧や第2積分器45の出力電圧(ピエゾ充電電荷量)などの各種アナログ信号に対し、A/D変換を含む各種入力処理を行った上で、その処理後のデジタルデータ(以下「A/D値」ともいう)をマイクロコンピュータ21及び制御IC22に出力する。
【0106】
なお、制御IC22やマイクロコンピュータ21は、駆動回路23における上述した各ノードN1,N3〜N7の電圧、及び放電スイッチSWbと抵抗R4の接続点であるノードN2の電圧を、直接又はA/Dコンバータ24を介して取り込むことにより、駆動回路やピエゾスタックPEの動作状態を取得して、その動作状態に基づいて各種制御を行う。
【0107】
(3)駆動回路の動作説明
次に、駆動回路23の動作の概要、即ちピエゾスタックPEの変位量制御の概要について、図5を用いながら説明する。図5は、駆動回路23の動作状態を表すタイムチャートである。図5のタイムチャートにおいて、(a)はマイクロコンピュータ21から制御IC22へ入力される駆動信号IJTの変化(Hレベル又はLレベル)を示し、(b)は制御IC22から充電スイッチSWaへ出力される動作信号の変化(即ち充電スイッチSWaのオン・オフ変化)を示し、(c)はトリガ信号TRGGを示し、(d)は第1積分器44の出力電圧が表す単位電荷量Qactを示し、(e)は制御IC22からバンク選択スイッチ43へ出力される動作信号の変化(即ちバンク選択スイッチ43のオン・オフ変化)を示し、(f)は制御IC22から気筒選択スイッチへ出力される動作信号の変化(即ち気筒選択スイッチ42のオン・オフ変化)を示し、(g)は制御IC22から放電スイッチSWbへ出力される動作信号の変化(即ち放電スイッチSWbのオン・オフ変化)を示し、(h)はノードN1の電圧が表すコンデンサC0の充電電圧の変化を示し、(i)はノードN4の電圧が表すピエゾ電圧(ピエゾスタックPEの電圧)の変化を示し、(j)はノードN5(N6)が表すピエゾ電流の変化を示し、(k)は第2積分器45の出力電圧が表すピエゾ充電電荷量の変化を示す。
【0108】
なお、図5に示すタイムチャートは、各ピエゾスタックPa〜Pdのうち、バンク選択スイッチ43及び気筒選択スイッチ42により選択された、実際に駆動されるいずれか一つのピエゾスタックPEについてその動作例を表したものである。そのため、同図(e)に示すバンク選択スイッチ43の動作信号、及び同図(f)に示す気筒選択スイッチ42の動作信号は、いずれも、当該一つのピエゾスタックPEに対応した何れか一つのバンク選択スイッチ(SW5又はSW6)及び気筒選択スイッチ(SW1〜SW4)を表している。
【0109】
(3−1)充電処理時の動作
マイクロコンピュータ21から制御IC22への駆動信号IJTがHレベルに転じると(図5(a)の時刻t1)、制御IC22は、バンク選択スイッチ43及び気筒選択スイッチ42における、駆動対象のピエゾスタックPEに対応した何れか一つのスイッチをオンさせると共に(図5(e),(f))、充電スイッチSWaのオン・オフ操作によるチョッパ制御を開始する(図5(b))。
【0110】
具体的には、後述するトリガ信号TRGG(図5(c))の立ち下がりエッジをトリガとして充電スイッチSWaがオン操作されると、コンデンサC0、充電スイッチSWa、充放電用コイルL1、ピエゾスタックPEからなる閉ループ回路が形成される。これにより、コンデンサC0の電荷がピエゾスタックPEに充電される。このとき、ピエゾスタックPEを流れる電流(ピエゾ電流)は、図5(j)に示すように漸増し、ピエゾスタックPEに充電される単位電荷量Qactも、図5(d)に示すように増加していく。
【0111】
そして、図5(d)に示すように、単位電荷量Qactが予め設定された電荷量閾値Qthを超えると、充電スイッチSWaがオフ操作される。なお、本実施形態では、ピエゾ電流や単位電荷量Qactの検出を、ピエゾスタックPEと直列に接続されている各シャント抵抗SR1,SR2を用いて行うようにしているが、これはあくまでも一例であり、例えばコンデンサC0と直列に接続されている抵抗R1を用いて(即ちノードN3の電圧に基づいて)ピエゾ電流や単位電荷量Qactを検出するようにしてもよい。
【0112】
充電スイッチSWaのオン操作の後、単位電荷量Qactが電荷量閾値Qthを超えたことによって充電スイッチSWaがオフ操作されると、充放電用コイルL1、ピエゾスタックPE、ダイオードDbからなる閉ループ回路が形成される。これにより、充放電用コイルL1のフライホイールエネルギーがピエゾスタックPEに充電される。このとき、ピエゾスタックPEに流れるピエゾ電流は、図5(j)に示すように漸減し、ピエゾスタックPEに充電される単位電荷量Qactは、図5(d)に示すように引き続き増加していく。そして、次のトリガ信号TRGGの立ち下がりエッジをトリガとして、再び充電スイッチSWaをオン操作する。
【0113】
このような充電スイッチSWaのオン・オフ操作による充電スイッチング制御がなされることにより、ピエゾ電流の上昇と下降が複数回繰り返し行われ、ピエゾ電圧(図5(i))が段階的に上昇すると共に、ピエゾ充電電荷量(図5(k))も増加していく。
【0114】
また、本実施形態では、ピエゾスタックPEの充電が、定エネルギー制御によりなされる。即ち、ピエゾスタックPEへの充電を行うにあたり、後述するようにピエゾスタックPEに供給すべきエネルギーの目標値である目標エネルギーEtrgが設定され、所定の充電時間(本例では時刻t1〜t3の規定充電時間T1)でこの目標エネルギーEtrgに到達するように充電が行われる。具体的には、規定充電時間T1で目標エネルギーEtrgに到達するように上記電荷量閾値Qthの値が設定される。
【0115】
そのため、充電開始から規定充電時間T1が経過するまで充電が行われると、ピエゾスタックPEの充電エネルギーは目標エネルギーEtrgに達することになる。またそのときの、ピエゾスタックPEに充電されている電荷量は、目標エネルギーEtrgに対応した規定電荷量となる。図5(k)の例でいえば、最終的に到達しているピエゾ充電電荷量Qcが、本例において設定された目標エネルギーEtrgに対応した規定電荷量である。
【0116】
なお、既述の通り、コンデンサC0は静電容量の比較的大きいものを用いているため、ピエゾスタックPEへの1回の充電が完了しても、コンデンサC0の電圧はほとんど変化しない(図5(h))。
【0117】
また、本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムでは、既述の通り多段噴射が行われるが、少なくともメイン噴射においては、駆動時間TQは規定充電時間よりも長くなるように設定される。一方、微量噴射においては、その要求噴射量によっては、駆動時間TQが規定充電時間よりも長くなる場合もあれば短くなる場合も生じうる。
【0118】
そのため、駆動時間TQの長短にかかわらず目標エネルギーEtrgを目標にして電荷量閾値Qthが設定され、充電が開始されるものの、要求噴射量が少なくて駆動時間TQが規定充電時間よりも短い場合は、目標エネルギーEtrgに到達する前に(即ちピエゾ充電電荷量が規定電荷量に到達する前に)放電が開始されることとなる。
【0119】
また、本実施形態では、充電開始後、所定のインターバルTa毎に、第2積分器45からの出力電圧がA/Dコンバータ24にてA/D変換され、そのA/D変換後の値(A/D値)がマイクロコンピュータ21及び制御IC22に入力される。そのため、ピエゾ充電電荷量は、充電開始から徐々に上昇していくものの、マイクロコンピュータ21及び制御IC22に入力されるのは上記インターバルTa毎の値であり、本例では図5(k)に示すように、Qa,Qb,及びQcが順次入力されることとなる。
【0120】
なお、トリガ信号TRGGの生成、及び電荷量閾値Qthの設定は、いずれも制御IC22が行うのであるが、これらについては後述する。
(3−2)放電処理時の動作
充電開始から駆動時間TQが経過して、後、マイクロコンピュータ21から制御IC22への駆動信号IJTがLレベルに転じると(図5(a)の時刻t4)、制御IC22は、放電スイッチSWbのオン・オフ操作によるチョッパ制御を開始する(図5(g))。
【0121】
具体的には、まず最初に駆動信号IJTの立ち下がりエッジをトリガとして放電スイッチSWbがオン操作されると、ピエゾスタックPE、充放電用コイルL1、放電スイッチSWbによって閉ループ回路が形成される。これにより、ピエゾスタックPEが放電される。このとき、ピエゾスタックPEを流れるピエゾ電流は、図5(j)に示すように漸増する。
【0122】
なお、充電時にピエゾスタックPEに流れる電流の方向を基準にした場合、放電時にピエゾスタックPEに流れる電流は逆方向となり、充電時の電流値に対して放電時の電流値は厳密には負の値となるが、以下の説明では、特に断りのない限り、充電時及び放電時のいずれについても、ピエゾ電流については電流の絶対値を示すものとする。
【0123】
放電スイッチSWbのオン操作によってピエゾ電流(放電電流)が漸増していき、やがてピーク側閾値Ith1を超えると、放電スイッチSWbがオフ操作される。すると、ピエゾスタックPE、充放電用コイルL1、ダイオードDa、コンデンサC0によって閉ループ回路が形成される。これにより、充放電用コイルL1のフライホイールエネルギーがコンデンサC0に回収される。このとき、ピエゾスタックPEを流れるピエゾ電流は、図5(j)に示すように漸減する。そして、ピエゾ電流(放電電流)がボトム側閾値Ith2より低くなると、放電スイッチSWbが再度オン操作される。
【0124】
このような放電スイッチSWbのオン・オフ操作による放電スイッチング制御がなされることにより、ピエゾ電流の上昇と下降が複数回繰り返し行われ、ピエゾ電圧(図5(i))が段階的に下降すると共に、ピエゾ充電電荷量も減少していく。ある程度までピエゾ電圧が下降すると、充放電用コイルL1の両端の電位差が少なくなるため、ピエゾ電流がピーク側閾値Ith1を越えるほどには増加しなくなる。そこで、放電スイッチSWbのオン時間が所定時間(後述のTdon)を超えた場合には、放電スイッチSWbを強制的にオフさせることで、スイッチングを可能にしている。
【0125】
尚、図5(k)に示すピエゾ充電電荷量は、放電開始後(時刻t4〜)も規定電荷量Qcに保持されたままであるが、これは第2積分器45の出力電圧が時刻t6まで保持されるためであり、実際のピエゾ充電電荷量は放電開始から徐々に減少してくことになる。
【0126】
そして、ピエゾスタックPEの電荷量がゼロとなって充放電用コイルL1の両端電圧がゼロとなると、電流の流れが終了する(図5の時刻t5)。放電スイッチング制御の終了時点(時刻t5)でピエゾスタックPEに残ってしまう残電荷は、放電処理の終了時点(図5の時刻t6)で放電スイッチSWbをオンに保持することで、完全に放電させる。そのため、次回の駆動時、即ち駆動信号IJTが再びHレベルに立ち上がった時には、図7の放電処理において、S110に示したようにまず放電スイッチSWbをオフさせる必要がある。
【0127】
なお、ピーク側閾値Ith1及びボトム側閾値Ith2の設定はいずれも制御IC22が行うのであるが、その詳細は後述する。
(3−3)トリガ信号TRGG及び電荷量閾値Qthの説明
次に、上述したトリガ信号TRGG(図5(c))及び電荷量閾値Qth(図5(d)参照)の生成について、図6を用いて説明する。図6は、制御IC22における、電荷量閾値Qth及びトリガ信号TRGGの生成にかかる機能を説明するための機能ブロック図である。
【0128】
図6に示すように、制御IC22において、トリガ信号TRGGの生成は、トリガ信号生成ブロックB9が行う。トリガ信号生成ブロックB9のデータは、イニシャライズ時にマイクロコンピュータ21から制御IC22へ転送されたものであり、このトリガ信号生成ブロックB9のデータを基に、マイクロコンピュータ21から入力されるクロック信号timeに基づいてトリガ信号TRGGが生成される。
【0129】
このトリガ信号TRGGは、充電スイッチSWaのオンタイミングを決定するための信号であり、既述の通りトリガ信号TRGGの立ち下がりエッジで充電スイッチSWaがオンする。つまり、トリガ信号生成ブロックB9に記憶されているデータは、1回の充電期間(図5に示すt1〜t3の規定充電時間T1)における充電スイッチSWaのオンタイミングをスケジューリングしているデータと言える。本実施形態のトリガ信号生成ブロックB9のデータは、等間隔の周期で充電スイッチSWaをオンさせるようにスケジューリングされているが、これはあくまでも一例であって、不等間隔の周期でオンさせるようなスケジューリングであっても構わない。なお、1回の充電では少なくとも3回以上充電スイッチSWaをオンさせるようにしている。
【0130】
次に、電荷量閾値Qthの生成について説明する。コンデンサC0から放出されるエネルギーは、エネルギー保存則に従ってピエゾスタックPEに充電される。従って、ピエゾスタックPEに充電される充電エネルギーEは、コンデンサC0の放出エネルギーと同じであると言えるため、次の式1で算出することができる。なお、コンデンサC0からピエゾスタックPEに流れるコンデンサ電流をIc1、コンデンサ電圧をVc1とする。
【0131】
E=∫(Vc1×Ic1)dt ・・・ (式1)
そして、既述のように、コンデンサC0の静電容量は、ピエゾスタックPEへの1回の充電処理によってはその電圧がほとんど変化しない値に設定されているため、コンデンサ電圧Vc1は略一定であると言える。よって、上記式1は次の式2に変形できる。
【0132】
E=Vc1×∫Ic1×dt ・・・ (式2)
上記式2中の「∫Ic1×dt」の項は、コンデンサC0からピエゾスタックPEに流れる電荷量Qであると言える。つまり、上記式2は次の式3に変形できる。
【0133】
E=Vc1×Q ・・・ (式3)
上記式3中のコンデンサ電圧Vc1は略一定であるため、充電エネルギーEは電荷量Qにより一義的に決定される値であると言える。したがって、コンデンサC0からピエゾスタックPEへ放出される電荷量Qを電荷量閾値Qthにより制御するということは、ピエゾスタックPEへの充電エネルギーを制御することと同義である。そのため、シャント抵抗SRにて電流、電荷量を検出すれば、エネルギーは実際に計測しなくとも充電エネルギーEを精度良く制御することができる。
【0134】
本実施形態では、充電処理で用いる電荷量閾値Qthを、次のように算出している。即ち、本実施形態では、規定充電時間T1(図5の時刻t1〜t3)でピエゾスタックPEに投入される充電エネルギーEが目標エネルギーEtrgとなるよう、充電スイッチSWaのオン・オフ操作をオープン制御している。目標エネルギーEtrgは、主にレール圧PCに基づいて算出されるとともに、さらにはピエゾインジェクタPIの個体情報及び温度特性等に基づいて補正される。そして、ピエゾスタックPEの充電電荷量が目標エネルギーEtrgとなるよう、電荷量閾値Qthを算出している。
【0135】
電荷量閾値Qthの生成手法を図6を用いてより具体的に説明すると、まず、目標エネルギーベース値生成ブロックB1において、レール圧PC及びピエゾインジェクタPIの個体情報に基づき、マップを用いて、目標エネルギーEtrgに対するベース値Ebasが算出される。
【0136】
レール圧PCが高いほど、ピエゾスタックPEを伸長させるのに必要な力は大きくなる。そのため、図6に示すように、レール圧PCの所定領域においては、レール圧PCが高いほどベース値Ebasが高く設定されている。また、ピエゾインジェクタPIの個体情報に応じて、レール圧PCに対するベース値Ebasの値を変更させている。
【0137】
なお、目標エネルギーベース値生成ブロックB1や後述する第1乗算ブロックB5等で用いられる個体情報は、ディーゼルエンジンが搭載された車両を市場に出荷する前の製造工程時にて予め上記のQRコード10を読み込んで記憶させておくことが望ましいが、車両運転中に各種検出値に基づいて推定するようにしてもよい。
【0138】
ピエゾインジェクタPIの伸長量は、ピエゾスタックPEの充電エネルギーEが同じであっても、その時のピエゾ素子温度TP’によって異なる。そこで、補正量算出ブロックB6において、ピエゾ素子温度TP’に基づき、マップを用いて補正量ΔEを算出する。そして、加算ブロックB2において、目標エネルギーベース値生成ブロックB1からのベース値Ebasに補正量算出ブロックB6からの補正量ΔEを加算することで、最終的な目標エネルギーEtrgを算出する。
【0139】
補正量算出ブロックB6で用いられるピエゾ素子温度TP’は、温度推定ブロックB4及び第1乗算ブロックB5において、別途算出された、ピエゾ素子(ピエゾスタックPEを構成するもの)の静電容量Cp及びピエゾインジェクタPIの個体情報に基づき、マップを用いて推定される。具体的には、ピエゾ素子の静電容量Cpは温度に依存して変化する特性があるため、この静電容量Cpに基づいて、温度推定ブロックB4がピエゾ素子温度TPを推定する。温度推定ブロックB4にて推定されたピエゾ素子温度TPは、第1乗算ブロックB5にて、ピエゾインジェクタPIの個体情報が乗算(詳しくは個体情報を示す所定の値が乗算)されることにより補正される。
【0140】
電荷量閾値Qthを制御することで充電エネルギーEを制御できることは既述の通りである。そこで、ゲイン算出ブロックB3,閾値ベース値算出ブロックB7,及び第2乗算ブロックB8では、加算ブロックにて算出された目標エネルギーEtrgを、充電スイッチング制御における充電スイッチSWaのオフ判断基準として用いられる電荷量閾値Qthに変換する。
【0141】
具体的には、電荷量閾値Qthに対するベース値Qbasを閾値ベース値算出ブロックB7にて算出すると共に、ゲイン算出ブロックB3にて、目標エネルギーEtrgに基づきマップを用いてゲインKgainを算出する。なお、閾値ベース値算出ブロックB7には、関数f2(time)が設定されており、この関数f2とクロック信号timeに基づいてベース値Qbasが算出される。そして、第2乗算ブロックB8において、ベース値QbasにゲインKgainを乗算することで、電荷量閾値Qthを算出する。
【0142】
(4)充電処理の説明
次に、制御IC22にて行われる充電処理について、図7を用いて説明する。図7は、制御IC22が実行する充電処理を表すフローチャートである。制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがHレベルに転じる立ち上がりエッジタイミング(図5の時刻t1)にてこの充電処理を開始する。
【0143】
なお、本実施形態では、図7の充電処理を制御IC22が実行するものとして説明するが、充電処理の実行主体が制御IC22である必要は必ずしもなく、例えばマイクロコンピュータ21が実行するように構成してもよいし、また例えば、マイクロコンピュータ21と制御IC22が一体となって一つの制御ブロックとして構成されている場合にはその制御ブロックが実行するように構成してもよい。このことは、後述する図8〜図12の各処理についても同様である。
【0144】
マイクロコンピュータ21から制御IC22へ入力されている駆動信号IJTがHレベルに転じることにより(図5の時刻t1)図6の充電処理が開始されると、まずS110にて、放電スイッチSWbをオフにし、続くS120にて、トリガ信号生成処理を行う。このS120のトリガ信号生成処理は、図6に示したトリガ信号生成ブロックB9が、マイクロコンピュータ21から送られてきたデータ(関数f1(time))とマイクロコンピュータ21からのクロック信号timeに基づいてトリガ信号TRGGを生成するものである。
【0145】
そして、S130にて、S120で生成したトリガ信号TRGGが立ち下がりエッジであるか否かを判定する。トリガ信号TRGGの立ち下がりエッジが検出されない場合はS180に進むが、トリガ信号TRGGの立ち下がりエッジが検出された場合は(S130:YES)、S140にて充電スイッチSWaをオン操作し、続くS150にて、電荷量電荷量閾値Qthを算出する。この電荷量閾値Qthの算出方法は、図6を用いて詳述した通りであり、閾値ベース値算出ブロックB7からの閾値ベース値Qbas(=f2(time))にゲイン算出ブロックB3からのゲインKgainを乗じることにより算出される。
【0146】
そして、S160にて、単位電荷量Qactが上記S150にて算出され電荷量閾値Qthを超えたか否かを判定する。単位電荷量Qactが電荷量閾値Qth以下の間は、S150〜S160の処理が繰り返されることになるが、単位電荷量Qactが電荷量閾値Qthを超えたと判定された場合は(S160:YES)、続くS170にて、充電スイッチSWaをオフさせる。
【0147】
そして、S180にて、駆動信号IJTがHレベルに転じたタイミング(図5の時刻t1)から規定充電時間T1が経過したか否か(時刻t3に達したか否か)を判定する。規定充電時間T1が経過するまでは(S180:NO)、S120〜S170による充電スイッチSWaのオン・オフ操作(充電スイッチング制御)が行われ、規定充電時間T1が経過すると(S180:YES)、図7に示す一連の充電処理を終了する。
【0148】
なお、充電開始から規定充電時間T1が経過していなかったとしても、トリガ信号生成ブロックB9によるトリガ信号TRGGの生成が終了していれば、規定充電時間T1の経過(時刻t3)よりも前の時点(時刻t2)で実際の充電は終了していることになる。よってその場合は、充電開始から時刻t2までの時間T2を規定充電時間として扱うようにしてもよい。また、単位電荷量Qactの値、即ち第1積分器44の出力電圧は、トリガ信号TRGGの立ち上がりエッジタイミング、又は充電終了タイミング(図5の時刻t3)に、第1積分器44のリセットスイッチ93がオンされることによってゼロにリセットされる。
【0149】
ところで、制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがHレベルに転じる立ち上がりエッジタイミング(図5の時刻t1)において、上述した図7の充電処理を実行するのと共に、第1積分器44を動作させるための第1積分器動作処理(図8)、第2積分器45を動作させると共にピエゾスタックPEの充電電荷量を計測する電荷量計測処理(図9)、及び放電処理(図10)についても、並行して実行する。そこで、上記各処理のうち、図8の第1積分器動作処理、及び図9の電荷量計測処理について説明する。
【0150】
まず、図8の第1積分器動作処理について説明する。駆動信号IJTの立ち上がりエッジタイミングにてこの第1積分器動作処理が開始されると、まずS210にて、リセットスイッチ93をオフすると共にホールドスイッチ94をオンすることで、積分を開始させる。そして、S220で放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、S230で充電終了タイミング(図5の時刻t3。即ち充電開始から駆動時間TQが経過。)であるか否かを判断する。
【0151】
放電開始タイミング又は充電終了タイミングである場合は、S280に進み、リセットスイッチ93をオンすると共にホールドスイッチ94をオフすることで、積分を終了させる。
【0152】
S220及びS230で否定判定された場合は、S240にて、トリガ信号TRGGの立ち上がりエッジがあったか否かを判断し、立ち上がりエッジがあったならば(S240:YES)、S270にてリセットスイッチ93をオンした上で、再びS220に戻る。S240にて、トリガ信号TRGGの立ち上がりエッジがなかった場合は(S240:NO)、続くS250にて、トリガ信号TRGGの立ち下がりエッジがあったか否かを判断し、立ち下がりエッジがなかったならば(S250:NO)、そのまま再びS220に戻るが、立ち下がりエッジがあったならば(S250:YES)、S260にてリセットスイッチ93をオフした上で、再びS220に戻る。
【0153】
次に、図9の電荷量計測処理(第2積分器45を動作させる処理も含む)について説明する。駆動信号IJTの立ち上がりエッジタイミングにてこの電荷量計測処理が開始されると、まずS410にて、今回の駆動(噴射)がメイン噴射であるか否かを判断する。そして、メイン噴射でない場合は(S410:NO)、そのままこの電荷量計測処理を終了する。つまり、メイン噴射でない場合はピエゾスタックPEの充電電荷量の計測は行わない。一方、メイン噴射である場合は(S410:YES)、S420にて第2積分器45のリセットスイッチ98をオフする(なおこのとき、ホールドスイッチ99は既にオンされている)ことで、積分が開始される。
【0154】
そして、S430にて、第1取得タイミング(図5(k)に示す時刻ta)であるか否かを判断し、第1取得タイミングならば、S440にて、そのときの充電電荷量QaのA/D値(第2積分器45の出力がA/Dコンバータ24にてA/D変換された値)を取得して、S490に進む。
【0155】
S430にて第1取得タイミングでない場合は、S450にて、第2取得タイミング(図5(k)に示す時刻tb)であるか否かを判断する。そして、第2取得タイミングならば、S460にて、そのときの充電電荷量QbのA/D値を取得して、S490に進む。
【0156】
S450にて第2取得タイミングでない場合は、更に、S470にて、充電終了タイミング(図5の時刻t3)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、充電終了タイミングならば、S480にて、第2積分器45による積分を停止させるために、ホールドスイッチ99をオフして、S490に進む。
【0157】
S490では、第3取得タイミング(図5(k)に示す時刻tc)であるか否かを判断する。そして、第3取得タイミングならば、S500にて、そのときの充電電荷量QcのA/D値を取得する。
【0158】
この第3取得タイミングで取得した充電電荷量Qcは、第1取得タイミングで取得した充電電荷量Qaや第2取得タイミングで取得した充電電荷量Qbとは異なり、充電が規定充電時間T1完全に行われて充電エネルギーが目標エネルギーEtrgに達したときの電荷量、即ち既述の規定電荷量である。そこで、続くS510にて、その取得した規定電荷量としての充電電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして制御IC22内の図示しないメモリに保存すると共に、現在設定されている目標エネルギーEtrgについても、実目標エネルギーEtrgoとして、実電荷量Qcoと対応付けて保存しておく。そして、続くS530にて、第2積分器45のリセットスイッチ98をオンすると共にホールドスイッチ99をオフすることで、第2積分器45の積分値をクリアして、本処理を終了する。
【0159】
S490にて、第3取得タイミングではないと判断された場合は、S520にて、放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、まだ放電開始タイミングでない場合はS430に戻るが、放電開始タイミングならば、S530の処理を行った上で、本電荷量計測処理を終了する。
【0160】
つまり、本実施形態では、駆動時間TQが規定充電時間T1よりも長くて規定電荷量Qcが取得できた場合は、現在保存されている実電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoの値(前回までの駆動時において保存された値)を、その取得した今回駆動時における規定電荷量Qc及び目標エネルギーEtrgに更新して保存する。
【0161】
一方、駆動時間TQが規定充電時間T1よりも短い等によって第3取得タイミングが到達する前に放電が開始された場合は、実電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoの更新は行わず、現在保存されている実電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoをそのまま保持しておく。
【0162】
このようにすることで、規定電荷量Qcが取得される毎に、常にその取得された最新の規定電荷量Qc及びそのときの目標エネルギーEtrgが、それぞれ実規定電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoとして更新・保存されることとなる。
【0163】
(5)放電処理の説明
次に、制御IC22にて行われる放電処理について、図10を用いて説明する。図10は、制御IC22が実行する放電処理を表すフローチャートである。制御IC22は、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがLレベルに転じる立ち下がりエッジタイミング(図5の時刻t4)にてこの放電処理を開始する。
【0164】
図10の放電処理が開始されると、まずS610にて、駆動時間TQが、規定電荷量Qcを取得するのに必要な取得時間Tc(図5(k)参照。時刻t1〜時刻tcまでの時間。)より長いか否かを判断する。つまり、今回の駆動において規定電荷量Qcを計測できるかどうかを予め判断する。そして、駆動時間TQが取得時間Tcより長くて規定電荷量Qcを計測できる場合は(S610:YES)、S615にて、第3取得タイミング(図5(k)に示す時刻tc)であるか否かを判断する。そして、第3取得タイミングならば、S620にて、そのときの充電電荷量QcのA/D値を取得し、続くS625にて、その取得した充電電荷量Qcを、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0165】
そして、続くS630にて、ピーク側閾値Ith1を算出する。具体的には、全充電電荷量Qtotalに対してピーク側閾値Ith1が比例するような所定の関数f3(Qtotal)が予め設定されており、この関数f3を用いて、ピーク側閾値Ith1を算出する。このピーク側閾値Ith1は、既述の通り、規定放電時間T3(図5参照)をかけて全充電電荷量Qtotalを放電完了させるために必要な値である。
【0166】
この関数f3は、全充電電荷量Qtotalを、図5の時刻t4〜t5の間の時間である規定放電時間T3をかけて放電させるために必要なピーク側閾値Ith1を算出するためのものである。そのため、例えば全充電電荷量Qtotalが大きいほど、これを規定放電時間T3かけて放電させるためにピーク側閾値Ith1も大きい値に設定され、逆に全充電電荷量Qtotalが小さいほど、これを規定放電時間T3かけて放電させるためにピーク側閾値Ith1も小さい値に設定されることとなる。
【0167】
一方、駆動時間TQが取得時間Tc以下ならば(S610:NO)、規定電荷量Qcが取得されないまま放電が開始されるということであるため、S635にて、現在保存されている実目標エネルギーEtrgo及び実規定電荷量Qco(前回駆動時までの最新の値)を読み出し、続くS640にて、その読み出した実目標エネルギーEtrgo及び実規定電荷量Qcoと、今回駆動時に設定されている目標エネルギーEtrgとを用いて、次式4により、規定電荷量Qcを推定する。なお、Qc’は、規定電荷量Qcの推定値を意味する。
【0168】
Qc’=Qco*(Etrg/Etrgo)1/2 ・・・ (式4)
そして、上記式4の演算により得られた規定電荷量Qcの推定値Qc’を、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0169】
つまり、S635〜S640の演算は、ピエゾスタックPEへの充電が目標エネルギーEtrgに達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量Qcを推定する演算であり、換言すれば、駆動時間TQが取得時間Tcよりも長かったならば充電されるであろう規定電荷量Qcを推定するものである。
【0170】
この推定は、例えば、単に現在保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回駆動時の規定電荷量の推定値Qc’とすることもできる。しかし、その実規定電荷量Qcoに対応付けられて保存されている実目標エネルギーEtrgoと今回駆動時の目標エネルギーEtrgが異なっているような場合に、現在保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回の規定電荷量として推定すると、目標エネルギーが異なっている分、規定電荷量の推定精度が低くなるおそれがある。
【0171】
そこで本実施形態では、規定電荷量を推定するにあたり、上記式4のように、現在保存されている実規定電荷量Qcoに対応した実目標エネルギーEtrgoと今回設定されている目標エネルギーとの比率に応じて、その保存されている実規定電荷量Qcoを補正して、その補正後の値を、今回駆動時における規定電荷量の推定値Qc’としている。
【0172】
S640にて、規定電荷量の推定値Qc’を全充電電荷量Qtotalとして保存すると、S630にて、その保存した全充電電荷量Qtotalに基づき、既述の関数f3を用いて、ピーク側閾値Ith1を算出する。このピーク側閾値Ith1は、既述の通り、規定放電時間T3(図5参照)をかけて全充電電荷量Qtotalを放電完了させるために必要な値である。
【0173】
このようにしてピーク側閾値Ith1を算出した後は、S645にて、放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、放電開始タイミングになったら、S650に進み、充電スイッチSWaをオフすると共に時間カウンタKを0にリセットして、続くS655にて、放電スイッチSWbをオンする。これにより、ピエゾスタックPEからの放電(放電スイッチング制御)が開始されることとなる。
【0174】
そして、S660にて時間カウンタKをインクリメントし、S665にて、時間カウンタKが所定の判定時間Tdonを超えたか否かを判断する。時間カウンタKが判定時間Tdonを超えていない場合は、S670に進み、ノードN5又はノードN6の電圧にて表される現在の放電時のピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えているか否かを判断する。そして、ピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えていない場合は、S660に戻る。
【0175】
一方、S665にて時間カウンタKが判定時間Tdonを超えたと判断された場合、又はS670にてピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えたと判断された場合は、S675に進み、放電スイッチSWbをオフすると共に、時間カウンタKをリセットする。そして、S680にて、放電終了タイミング(図5の時刻t6)に到達したか否かを判断し、到達したならばS695にて放電スイッチSWbをオンした上でこの放電処理を終了するが、まだ到達していないならば、S685にて、放電スイッチSWbのオフ時(S675)のピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上であったか否かを判断する。そして、ボトム側閾値Ith2以上でなかった場合はS680に戻り、ボトム側閾値Ith2以上であった場合はS690に進む。
【0176】
S690では、ピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2より小さくなったか否かを判断する。そして、ピエゾ電流Ipがまだボトム側閾値以上ならばS680に戻り、ピエゾ電流Ipがボトム側閾値より小さくなったらS655に戻る。
【0177】
なお、ボトム側閾値Ith2は、本実施形態では、予め設定された固定値である。また、時間カウンタKは、放電スイッチSWbのオン時間を計測するものである。放電開始後、ピエゾ電圧の低下に伴って放電スイッチSWbのオン時間は長くなり、やがてピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えられなくなる。そのため、ピエゾ電流Ipがピーク側閾値Ith1を超えていなくても、時間カウンタKが判定時間Tdonを超えた場合には、放電スイッチSWbをオフさせるようにしている。
【0178】
このようにして、放電終了タイミング(時刻t6)になるまではピエゾ電流Ipの値に応じて放電スイッチSWbがオン・オフされるが、実際には、放電終了タイミング(時刻t6)よりも前に、ピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上にならない程度に十分に放電がなされ、そうなると、その後はS685の判断で否定判定され続けて放電スイッチSWbはオフのままとなる。よって、上記のようにピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上にならない程度に放電が進んだ時点(図5の時刻t5)、即ち放電開始タイミング(図5の時刻t4)から規定放電時間T3経過後の時点(時刻t5)で、実質的に放電が完了したものとみなせる。
【0179】
なお、規定放電時間T3経過後も、完全に放電しきれなかった残電荷や、ピエゾスタックPEの温度変化や負荷変化によって発生する電荷などが残っている可能性がある。そのため、放電終了タイミング(時刻t6)になったら(S680:YES)、放電スイッチSWbをオンする(S695)ことで、それら残電荷を放電させるようにしている。
【0180】
なお、本実施形態では、図5(k)に示したように、ピエゾスタックの充電電荷量が所定のインターバルta毎にA/D変換されるものであるため、S610では、駆動時間TQと取得時間Tcを比較するようにしたが、充電開始から規定充電時間T1が経過した時(図5の時刻t3)にそのときの充電電荷量のA/D値を取得できるならば、S610を、駆動時間TQと規定充電時間T1との比較とするようにしてもよい。つまり、駆動時間TQが規定充電時間T1よりも長ければS615に進み、短ければS635に進むのである。
【0181】
(6)第1実施形態の効果等
このように、本実施形態では、放電処理(図10)において、駆動時間TQが取得時間Tcより長い場合は、実際に取得された充電電荷量Qcをそのまま全充電電荷量Qtotalとして、この全充電電荷量Qtotalを規定放電時間T3かけて放電させるためのピーク側閾値th1を設定する。一方、駆動時間TQが取得時間Tcより短くて今回駆動時における規定電荷量Qcが取得できない場合は、現在保存されている実充電電荷量Qcoと実目標エネルギーEtrgo、及び今回駆動時に設定されている目標エネルギーEtrgを用いて、今回駆動時に規定充電時間T1かけて充電が行われたならば(より詳しくは、取得時間Tcが経過するまで充電が行われたならば)取得できたであろう規定電荷量Qcを推定する。そして、その推定値Qc’を今回の全充電電荷量Qtotalとして、その全充電電荷量Qtotal(=推定値Qc’)を規定放電時間T3かけて放電完了させるために必要なピーク側閾値Ith1を算出する。
【0182】
そのため、駆動時間TQが長いか短いかにかかわらず、駆動時間TQが短くて規定電荷量Qcが取得される前に放電が開始された場合でも、放電速度を適正に制御することができる。即ち、駆動時間TQの長短によらず同じ放電速度にて放電を行うことができる。
【0183】
このことを既述の図12(b)を用いて説明すれば、駆動時間TQが短くて規定電荷量Q1まで充電される前の時刻t12で放電が開始されてしまっても、規定電荷量Q1まで充電された場合の放電速度(破線a5)と同じ放電速度(一点鎖線a6)にて放電が行われるということである。
【0184】
また、駆動時間TQが長くて実際に規定電荷量Qcを取得できた場合に(但し本例ではメイン噴射のときのみ)、その実際の規定電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして保存・更新しておき、駆動時間TQが短くて実際の規定電荷量Qcを取得できない場合には、保存されている最新の実規定電荷量Qcoを今回の規定電荷量の推定値Qc’としている。しかも、ただ単に保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回の規定電荷量の推定値としているのではなく、上記式4に示したように、保存されている実規定電荷量Qcoに対応した実目標エネルギーEtrgoと今回の目標エネルギーEtrgとの比率に応じて実規定電荷量Qcoを補正し、その補正後の値を今回の規定電荷量の推定値Qc’としている。
【0185】
そのため、駆動(噴射)毎に目標エネルギーEtrgが異なっても、その目標エネルギーEtrgに応じた精度の高い規定電荷量の推定を行うことができるため、目標エネルギーEtrgの相違による放電速度の制御精度の低下を抑制し、より高い精度で放電速度を適正に制御することができる。
【0186】
また、本実施形態では、1燃料サイクルにおいて、メイン噴射の時にのみ、そのときに取得された規定電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして保存するようにしている。そのため、実規定電荷量Qcoの保存を、効率的且つ確実に行うことができる。
【0187】
また、本実施形態では、駆動(噴射)の際に、今回の駆動時間TQが、規定電荷量Qcを取得しうる程度に長いかどうか(具体的には、本例では取得時間Tcよりも長いかどうか)を予め判断し、長いならば(即ち規定電荷量Qcを取得できるならば)、あえて保存されている実規定電荷量Qcoを用いた規定電荷量の推定は行わず、取得時間Tc経過後に実際に取得される規定電荷量Qcを用いてピーク側閾値Ith1を算出するようにしている。そのため、より高い精度でより適正なピーク側閾値Ith1の算出を行うことができる。
【0188】
なお、本実施形態において、ピエゾスタックPE(Pa〜Pd)は本発明のピエゾ素子体に相当し、レール圧PCは本発明のエネルギー設定関連情報に相当し、目標エネルギーベース値生成ブロックB1(図6参照)は本発明のエネルギー設定関連情報取得手段及び目標エネルギー設定手段に相当し、第2積分器45は本発明の電荷量検出手段に相当する。
【0189】
また、図7の充電処理は、本発明の充電手段が実行する処理に相当する。また、図9の電荷量計測処理において、S500〜S510の処理は本発明の記憶手段が実行する処理に相当する。また、図10の放電処理において、S610の処理は本発明の駆動時間判断手段が実行する処理に相当し、S635〜S640の処理は本発明の規定電荷量推定手段が実行する処理に相当し、S630の処理は本発明の放電パターン設定手段が実行する処理に相当し、S645以降の処理は本発明の放電手段が実行する処理に相当する。
【0190】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のコモンレール式燃料噴射システムについて説明する。本実施形態のコモンレール式燃料噴射システムは、第1実施形態のコモンレール式燃料噴射装置と比較して、主として放電処理が異なっており、その他の各種処理やハード構成(回路構成等)は、基本的には第1実施形態と同じである。そのため、以下の説明では、第1実施形態と異なる放電処理についてのみ詳しく説明する。
【0191】
第1実施形態においては、図10に示した放電処理が行われるが、本実施形態では、図11に示す放電処理が行われる。以下、図11の放電処理について説明する。この図11の放電処理も、図10に示した第1実施形態の放電処理と同様、マイクロコンピュータ21から入力される駆動信号IJTがLレベルに転じる立ち下がりエッジタイミング(図5の時刻t4)にて開始される。
【0192】
図11の放電処理が開始されると、まずS710にて、第1取得タイミング(図5(k)に示す時刻ta)であるか否かを判断し、第1取得タイミングになるまではこのS710の判断を繰り返し、第1取得タイミングになったら、S715にて、そのときの充電電荷量QaのA/D値を取得する。
【0193】
そして、S720にて、その取得した充電電荷量Qaと、充電開始から第1取得タイミングまでの経過時間である第1経過時間Taと、規定充電時間としての時間T2(図5参照)とを用いて、次式5により、規定電荷量Qcの推定値Qc’を算出する。
【0194】
Qc’=(Qa/Ta)*T2 ・・・ (式5)
そして、上記式5の演算により得られた規定電荷量Qcの推定値Qc’を、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0195】
つまり、S715〜S720の演算は、ピエゾスタックPEへの充電が目標エネルギーEtrgに達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量Qc、換言すれば充電時間TQが規定充電時間T2より長い(より詳しくは規定電荷量Qcを取得可能な第3取得タイミング以上である)ならば充電されるであろう規定電荷量Qcを推定する演算である。
【0196】
そして、上記式5は、第1取得タイミングにおいて取得された充電電荷量Qaと、充電開始から第1取得タイミングまでの経過時間Taに基づき、この第1取得タイミングまでの電荷量の増加傾向(増加割合)と同じ傾向で引き続き充電が行われるとの想定のもとで、その傾向にて規定充電時間T2が経過したならば充電されているであろう電荷量を、規定電荷量Qcの推定値Qc’として推定するものである。
【0197】
なお、本実施形態では、規定充電時間をT2としているが、これは、第1実施形態において図5を用いて説明したように、基本的には規定充電時間がT3として設定されているが、実際には規定充電時間T3が経過する少し前(図5の時刻t2)で充電が終了するため、本実施形態では、実際に充電が終了するまでの時間T2を、規定電荷量の推定を行う際の規定充電時間として用いるようにしている。
【0198】
S720にて全充電電荷量Qtotal(ここでは上記式5を用いて得られた推定値)が保存されると、続くS725にて、第2取得タイミング(図5(k)に示す時刻tb)であるか否かを判断する。そして、第2取得タイミングならば、S730にて、そのときの充電電荷量QbのA/D値を取得する。
【0199】
そして、S735にて、その取得した充電電荷量Qbと、充電開始から第2取得タイミングまでの経過時間である第2経過時間Tbと、規定充電時間としての時間T2とを用いて、次式6により、規定電荷量Qcの推定値Qc’を算出する。
【0200】
Qc’=(Qb/Tb)*T2 ・・・ (式6)
そして、上記式6の演算により得られた規定電荷量Qcの推定値Qc’を、全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0201】
このS730〜S735の演算も、上記式5と式6を比較して明らかなように、上記のS715〜S720の演算と基本的に同じ主旨の演算である。つまり、第2取得タイミングにおいて取得された充電電荷量Qbと、充電開始から第2取得タイミングまでの経過時間Tbに基づき、この第2取得タイミングまでの電荷量の増加傾向(増加割合)と同じ傾向で引き続き充電が行われるとの想定のもとで、その傾向にて規定充電時間T2が経過したならば充電されているであろう電荷量を、規定電荷量Qcの推定値Qc’として推定するものである。
【0202】
S735にて全充電電荷量Qtotalの保存がなされた後、又はS725にて第2取得タイミングではないと判断された場合は、S740にて、第3取得タイミング(図5(k)に示す時刻tc)であるか否かを判断する。そして、第3取得タイミングならば、S745にて、そのときの充電電荷量QcのA/D値を取得し、続くS750にて、その取得した充電電荷量Qcを、そのまま全充電電荷量Qtotalとして保存する。
【0203】
S750にて全充電電荷量Qtotalの保存がなされた後、又はS740にて第3取得タイミングではないと判断された場合は、S760にて、ピーク側閾値Ith1を算出する。このピーク側閾値Ith1の算出方法は、第1実施形態におけるピーク側閾値Ith1の算出方法(図10のS630参照)と全く同じであり、関数f3を用いて算出する。
【0204】
ピーク側閾値Ith1を算出した後は、S765にて、放電開始タイミング(図5の時刻t4)であるか否か、即ち充電開始から駆動時間TQが経過したか否かを判断する。そして、まだ放電開始タイミングでなければS725に戻るが、放電開始タイミングになったら、S770に進み、充電スイッチSWaをオフすると共に時間カウンタKを0にリセットする。
【0205】
このS770以降の処理(S770〜S815)は、第1実施形態の放電処理(図10)におけるS650以降の処理(S650〜S695)と全く同じであるため、S770以降の処理についてはその説明を省略する。
【0206】
以上説明した本実施形態によれば、ピエゾスタックPEの充電電荷量のA/D値が取得される毎に、その取得された値と、充電開始からその取得タイミングまでの経過時間とに基づいて、それまでの増加傾向と同じ傾向(割合)で引き続き充電が行われたなら充電されるであろう規定電荷量を推定する。
【0207】
つまり、今回の駆動における規定電荷量の推定を、その今回の駆動時における充電開始後の充電過程に基づいて行うのである。そのため、規定電荷量を高い精度で推定することができ、第1実施形態と同様、駆動時間TQの長短によらず同じ放電速度で放電させることができる。
【0208】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0209】
例えば、上記第1実施形態の放電処理(図10)では、まずS610にて、駆動時間TQが取得時間Tcより長いか否か、即ち今回の駆動において規定電荷量Qcを実際に計測できるかどうかを予め判断し、駆動時間TQが取得時間Tcより長い場合には、規定電荷量Qcの推定は行わずに、実際に計測・取得された規定電荷量(第3取得タイミングで取得された充電電荷量)Qcをそのまま全充電電荷量Qtotalとして保存するようにしたが(S625)、駆動時間TQの長短にかかわらず、S635〜S640の処理、即ち保存されている前回までの最新の実規定電荷量Qcoと実目標エネルギーEtrgo、及び今回の目標エネルギーEtrgを用いた規定電荷量の推定演算と、得られた推定値Qc’の全充電電荷量Qtotalとしての保存を行うようにしてもよい。
【0210】
より具体的には、図10の放電処理において、S610,S615,S620,S625の処理は削除し、まず最初にS635,S640の処理を行って、S630以降の処理に進むのである。
【0211】
また、上記第1実施形態の放電処理(図10)では、S685において、放電スイッチSWbのオフ時(S675)のピエゾ電流Ipがボトム側閾値Ith2以上であったか否かを判断し、ボトム側閾値Ith2以上でなかった場合(つまり放電が十分になされている場合)はS690以降に進むことなく放電終了タイミング(時刻t6)まで放電スイッチSWbをオフさせたままとするようにしたが、このS685の処理を、「規定放電時間T3が経過したか否か(即ち時刻t5となったか否か)」を判断する処理に替えてもよい。その場合、規定放電時間T3が経過していない場合はS690に進み、規定放電時間T3が経過したらS680に戻るようにするとよい。このようにしても、図10と実質的に同じ処理がなされることとなる。第2実施形態の放電処理(図11)におけるS805の処理についても同様である。
【0212】
また、上記実施形態では、ピエゾスタックPEの充電電荷量によらずに放電速度を一定にするための具体的手段として、全充電電荷量Qtotalの値に応じてピーク側閾値Ith1を可変設定するようにしたが、このようにピーク側閾値Ith1を可変設定するのはあくまでも一例であり、例えばボトム側閾値Ith1を可変設定するようにしてもよいし、ピーク側閾値Ith1及びボトム側閾値Ith2の双方を可変設定するようにしてもよい。
【0213】
また、上記第1実施形態では、メイン噴射のときにのみ、第3取得タイミングで取得された充電電荷量Qcを実規定電荷量Qcoとして保存すると共にそのときの目標エネルギーEtrgも実目標エネルギーEtrgoとして保存するようにしたが、このようにメイン噴射のときに限定したのはあくまでも一例であり、メイン噴射以外の他の噴射時においても、駆動時間TQが充電時間T1よりも長くて実際の規定電荷量Qcを取得できるのであれば、その取得した規定電荷量Qcとそのときの目標エネルギーEtrgをそれぞれ実規定電荷量Qco及び実目標エネルギーEtrgoとして保存するようにしてもよい。
【0214】
また、上記第1実施形態では、図10のS640に示すように、規定電荷量の推定値を算出するにあたり、現在保存されている実規定電荷量Qcoに対応付けられている実目標エネルギーEtrgoと今回の目標エネルギーEtrgの差異を加味するようにしたが、必ずしも目標エネルギーの差異を考慮する必要はなく、現在保存されている実規定電荷量Qcoをそのまま今回の規定電荷量の推定値とするようにしてもよい。
【0215】
また、本発明の適用は、ディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムに限定されるものではなく、ピエゾスタックを充放電させることによりアクチュエータとして機能するよう構成されたあらゆるピエゾアクチュエータに対して適用することができる。
【符号の説明】
【0216】
1…燃料タンク、2…燃料フィルタ、3…燃料ポンプ、4…燃料調量弁、5…コモンレール、5a…燃圧センサ、6…高圧燃料通路、7…低圧燃料通路、10…QRコード、20…制御ユニット、21…マイクロコンピュータ、22…制御IC、23…駆動回路、24…A/Dコンバータ、25…EEPROM、30…QRコードリーダ、31…外部機器、41…DC/DCコンバータ、42(SW1〜SW4)…気筒選択スイッチ、43(SW5,SW6)…バンク選択スイッチ、44…第1積分器、45…第2積分器、90,95…オペアンプ、91,96…抵抗、92,97…コンデンサ、93,98…リセットスイッチ、94,99…ホールドスイッチ、B1…目標エネルギーベース値生成ブロック、B2…加算ブロック、B3…ゲイン算出ブロック、B4…温度推定ブロック、B5…第1乗算ブロック、B6…補正量算出ブロック、B7…閾値ベース値算出ブロック、B8…第2乗算ブロック、B9…トリガ信号生成ブロック、Ba…バッテリ、C0…コンデンサ、D1,Da,Db…ダイオード、L1…充放電用コイル、N1〜N6…ノード、PI…ピエゾインジェクタ、Pa〜Pd…ピエゾスタック、R1〜R6…抵抗、SR1…第1シャント抵抗、SR2…第2シャント抵抗、SWa…充電スイッチ、SWb…放電スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータの駆動方法であって、
前記ピエゾ素子体を伸長させる際は、該ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行い、
前記ピエゾ素子体の放電が開始される前までに、予め、該ピエゾ素子体への充電が前記目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定し、
前記推定した規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定し、
前記充電開始タイミングから前記駆動時間経過後、その設定した放電パターンに従って放電を行う
ことを特徴とするピエゾアクチュエータの駆動方法。
【請求項2】
一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータを駆動するピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
該ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行うことにより該ピエゾ素子体を伸長させる充電手段と、
前記ピエゾ素子体の放電が開始される前に、予め、前記充電手段による前記ピエゾ素子体への充電が前記目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定する規定電荷量推定手段と、
前記規定電荷量推定手段により推定された前記規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定する放電パターン設定手段と、
前記充電手段による充電開始タイミングから前記駆動時間経過後、前記放電パターン設定手段により設定された放電パターンに従って放電を行うことにより前記ピエゾ素子体を縮小させる放電手段と、
を備えたことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記ピエゾ素子体に充電される電荷量を検出する電荷量検出手段と、
前記充電手段による充電が、前記ピエゾ素子体の充電エネルギーが前記目標エネルギーに到達するまで行われた場合に、該到達後に前記電荷量検出手段により検出された電荷量を実規定電荷量として記憶する記憶手段と、
を備え、
前記充電手段による充電の開始から、前記駆動時間経過後に前記放電手段による放電を開始してその放電が完了するまでを、前記ピエゾアクチュエータの一回の駆動として、
前記規定電荷量推定手段は、前回の前記ピエゾアクチュエータの駆動時までに前記記憶手段に記憶された前記実規定電荷量を用いて、今回の駆動時における前記規定電荷量を推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記規定電荷量推定手段は、前回の前記ピエゾアクチュエータの駆動時までに前記記憶手段に記憶された前記実規定電荷量のうち、最も新しい実規定電荷量を、今回の駆動時における前記規定電荷量として推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記目標エネルギーの設定に必要な情報であるエネルギー設定関連情報を取得するエネルギー設定関連情報取得手段と、
前記ピエゾアクチュエータの駆動毎に、前記エネルギー設定関連情報取得手段により取得された前記エネルギー設定関連情報に基づいて前記目標エネルギーを設定する目標エネルギー設定手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記充電手段による充電が、前記ピエゾ素子体の充電エネルギーが前記目標エネルギーに到達するまで行われた場合に、該充電時に前記目標エネルギー設定手段により設定された前記目標エネルギーを、実目標エネルギーとして、前記実規定電荷量と対応付けて記憶し、
前記規定電荷量推定手段は、前記最も新しい実規定電荷量を、該実規定電荷量に対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記実目標エネルギーと前記目標エネルギー設定手段により設定された前記目標エネルギーとの比率に応じて補正し、該補正後の実規定電荷量を今回の駆動時における前記規定電荷量として推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記ピエゾアクチュエータを、予め設定された複数回の駆動を一つの駆動サイクルとして、複数の駆動サイクルに渡って駆動すると共に、一つの前記駆動サイクル内で行われる前記複数回の駆動として、少なくとも、前記駆動時間が、前記ピエゾ素子体の充電エネルギーが前記目標エネルギーに到達するのに要する時間よりも長いことにより該ピエゾ素子体に前記規定電荷量が充電される主駆動と、この主駆動よりも前及び後の少なくとも一方においてこの主駆動における前記駆動時間よりも短い駆動時間で駆動する副駆動と、を行うように構成されており、
前記記憶手段は、前記各駆動サイクルにおける前記主駆動時に前記実規定電荷量の記憶を行う
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項6の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記駆動時間が、前記ピエゾ素子体を前記目標エネルギーまで充電完了させるのに必要な規定充電時間よりも長いか否かを判断する駆動時間判断手段を備え、
前記放電パターン設定手段は、前記駆動時間判断手段により前記駆動時間が前記規定充電時間よりも長いと判断された場合は、前記規定電荷量推定手段により推定された前記規定電荷量に基づく前記放電パターンの設定は行わず、前記充電手段による充電開始タイミングから前記規定充電時間が経過した後に前記電荷量検出手段により検出された電荷量に基づいて前記放電パターンを設定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項8】
請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記充電手段による充電開始後、所定の検出タイミング毎に前記ピエゾ素子体に充電されている電荷量を検出する電荷量検出手段を備え、
前記規定電荷量推定手段は、前記充電手段による充電開始後、前記検出タイミング毎に、該検出タイミングにおける前記電荷量検出手段による検出結果と、充電開始から該検出タイミングまでの経過時間とに基づいて、前記規定電荷量を推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記放電パターン設定手段は、充電開始後、前記駆動時間が経過する前に前記充電エネルギーが目標エネルギーに到達して該到達後の電荷量が前記電荷量検出手段により検出された場合は、前記規定電荷量推定手段により推定された前記規定電荷量に基づく前記放電パターンの設定は行わず、該検出された該到達後の電荷量に基づいて前記放電パターンを設定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項10】
請求項2〜請求項9の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記ピエゾ素子体に直列に接続される充放電用コイルと、
前記充放電用コイルと前記ピエゾ素子体との直列回路に対して、直流電源から充電スイッチを介して電源供給を行う充電経路と、
前記直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介して前記ピエゾ素子体の充電電荷を放電させるための放電経路と、
前記充電スイッチに対して、カソードが前記直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、
前記放電スイッチに対して、アノードが前記直流電源の負極側となるよう並列に接続された第2ダイオードと、
を備え、
前記充電手段は、前記充電スイッチのオン・オフを繰り返すことにより、前記ピエゾ素子体を充電させて伸長させ、
前記放電手段は、前記ピエゾ素子体からの放電電流を検出する放電電流検出手段を有すると共に、前記充電開始タイミングから前記駆動時間経過後、前記放電スイッチをオンし、その後、前記放電電流がピーク側閾値より大きくなったら前記放電スイッチをオフし、その後、前記放電電流がボトム側閾値より低くなったら前記放電スイッチをオンする、という動作を繰り返すことにより、前記ピエゾ素子体を放電させて収縮させるよう構成されており、
前記放電パターン設定手段は、前記放電パターンの設定を、前記ピーク側閾値及び前記ボトム側閾値のうち少なくとも何れか一方を設定することにより行う
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項1】
一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータの駆動方法であって、
前記ピエゾ素子体を伸長させる際は、該ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行い、
前記ピエゾ素子体の放電が開始される前までに、予め、該ピエゾ素子体への充電が前記目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定し、
前記推定した規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定し、
前記充電開始タイミングから前記駆動時間経過後、その設定した放電パターンに従って放電を行う
ことを特徴とするピエゾアクチュエータの駆動方法。
【請求項2】
一又は複数のピエゾ素子からなるピエゾ素子体を有し、該ピエゾ素子体を充電することにより該ピエゾ素子体を伸長させてその充電開始タイミングから所定の駆動時間経過後に放電を行って該ピエゾ素子体を縮小させることにより、該ピエゾ素子体がアクチュエータとして機能するよう構成されたピエゾアクチュエータを駆動するピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
該ピエゾ素子体の充電エネルギーが予め設定された目標エネルギーとなるように該ピエゾ素子体の充電を行うことにより該ピエゾ素子体を伸長させる充電手段と、
前記ピエゾ素子体の放電が開始される前に、予め、前記充電手段による前記ピエゾ素子体への充電が前記目標エネルギーに到達するまで行われたならば充電されるであろう規定電荷量を推定する規定電荷量推定手段と、
前記規定電荷量推定手段により推定された前記規定電荷量に基づき、予め設定された規定放電時間をかけて該規定電荷量を放電させるために必要な放電パターンを設定する放電パターン設定手段と、
前記充電手段による充電開始タイミングから前記駆動時間経過後、前記放電パターン設定手段により設定された放電パターンに従って放電を行うことにより前記ピエゾ素子体を縮小させる放電手段と、
を備えたことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項3】
請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記ピエゾ素子体に充電される電荷量を検出する電荷量検出手段と、
前記充電手段による充電が、前記ピエゾ素子体の充電エネルギーが前記目標エネルギーに到達するまで行われた場合に、該到達後に前記電荷量検出手段により検出された電荷量を実規定電荷量として記憶する記憶手段と、
を備え、
前記充電手段による充電の開始から、前記駆動時間経過後に前記放電手段による放電を開始してその放電が完了するまでを、前記ピエゾアクチュエータの一回の駆動として、
前記規定電荷量推定手段は、前回の前記ピエゾアクチュエータの駆動時までに前記記憶手段に記憶された前記実規定電荷量を用いて、今回の駆動時における前記規定電荷量を推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項4】
請求項3に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記規定電荷量推定手段は、前回の前記ピエゾアクチュエータの駆動時までに前記記憶手段に記憶された前記実規定電荷量のうち、最も新しい実規定電荷量を、今回の駆動時における前記規定電荷量として推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項5】
請求項4に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記目標エネルギーの設定に必要な情報であるエネルギー設定関連情報を取得するエネルギー設定関連情報取得手段と、
前記ピエゾアクチュエータの駆動毎に、前記エネルギー設定関連情報取得手段により取得された前記エネルギー設定関連情報に基づいて前記目標エネルギーを設定する目標エネルギー設定手段と、
を備え、
前記記憶手段は、前記充電手段による充電が、前記ピエゾ素子体の充電エネルギーが前記目標エネルギーに到達するまで行われた場合に、該充電時に前記目標エネルギー設定手段により設定された前記目標エネルギーを、実目標エネルギーとして、前記実規定電荷量と対応付けて記憶し、
前記規定電荷量推定手段は、前記最も新しい実規定電荷量を、該実規定電荷量に対応付けて前記記憶手段に記憶されている前記実目標エネルギーと前記目標エネルギー設定手段により設定された前記目標エネルギーとの比率に応じて補正し、該補正後の実規定電荷量を今回の駆動時における前記規定電荷量として推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記ピエゾアクチュエータを、予め設定された複数回の駆動を一つの駆動サイクルとして、複数の駆動サイクルに渡って駆動すると共に、一つの前記駆動サイクル内で行われる前記複数回の駆動として、少なくとも、前記駆動時間が、前記ピエゾ素子体の充電エネルギーが前記目標エネルギーに到達するのに要する時間よりも長いことにより該ピエゾ素子体に前記規定電荷量が充電される主駆動と、この主駆動よりも前及び後の少なくとも一方においてこの主駆動における前記駆動時間よりも短い駆動時間で駆動する副駆動と、を行うように構成されており、
前記記憶手段は、前記各駆動サイクルにおける前記主駆動時に前記実規定電荷量の記憶を行う
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項6の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記駆動時間が、前記ピエゾ素子体を前記目標エネルギーまで充電完了させるのに必要な規定充電時間よりも長いか否かを判断する駆動時間判断手段を備え、
前記放電パターン設定手段は、前記駆動時間判断手段により前記駆動時間が前記規定充電時間よりも長いと判断された場合は、前記規定電荷量推定手段により推定された前記規定電荷量に基づく前記放電パターンの設定は行わず、前記充電手段による充電開始タイミングから前記規定充電時間が経過した後に前記電荷量検出手段により検出された電荷量に基づいて前記放電パターンを設定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項8】
請求項2に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記充電手段による充電開始後、所定の検出タイミング毎に前記ピエゾ素子体に充電されている電荷量を検出する電荷量検出手段を備え、
前記規定電荷量推定手段は、前記充電手段による充電開始後、前記検出タイミング毎に、該検出タイミングにおける前記電荷量検出手段による検出結果と、充電開始から該検出タイミングまでの経過時間とに基づいて、前記規定電荷量を推定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項9】
請求項8に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記放電パターン設定手段は、充電開始後、前記駆動時間が経過する前に前記充電エネルギーが目標エネルギーに到達して該到達後の電荷量が前記電荷量検出手段により検出された場合は、前記規定電荷量推定手段により推定された前記規定電荷量に基づく前記放電パターンの設定は行わず、該検出された該到達後の電荷量に基づいて前記放電パターンを設定する
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【請求項10】
請求項2〜請求項9の何れか1項に記載のピエゾアクチュエータ駆動装置であって、
前記ピエゾ素子体に直列に接続される充放電用コイルと、
前記充放電用コイルと前記ピエゾ素子体との直列回路に対して、直流電源から充電スイッチを介して電源供給を行う充電経路と、
前記直列回路に並列に接続され、放電スイッチを介して前記ピエゾ素子体の充電電荷を放電させるための放電経路と、
前記充電スイッチに対して、カソードが前記直流電源の正極側となるよう並列に接続された第1ダイオードと、
前記放電スイッチに対して、アノードが前記直流電源の負極側となるよう並列に接続された第2ダイオードと、
を備え、
前記充電手段は、前記充電スイッチのオン・オフを繰り返すことにより、前記ピエゾ素子体を充電させて伸長させ、
前記放電手段は、前記ピエゾ素子体からの放電電流を検出する放電電流検出手段を有すると共に、前記充電開始タイミングから前記駆動時間経過後、前記放電スイッチをオンし、その後、前記放電電流がピーク側閾値より大きくなったら前記放電スイッチをオフし、その後、前記放電電流がボトム側閾値より低くなったら前記放電スイッチをオンする、という動作を繰り返すことにより、前記ピエゾ素子体を放電させて収縮させるよう構成されており、
前記放電パターン設定手段は、前記放電パターンの設定を、前記ピーク側閾値及び前記ボトム側閾値のうち少なくとも何れか一方を設定することにより行う
ことを特徴とするピエゾアクチュエータ駆動装置。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【公開番号】特開2011−67755(P2011−67755A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220852(P2009−220852)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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