説明

ピッチ変換装置およびピッチ変換方法

【課題】複数の進入部材11を隣り合う仕切部材90の間に対して確実に進入させることが可能な、小型のピッチ変換装置を提供する。
【解決手段】X方向に並列配置された複数の仕切部材90のピッチを変換する装置であって、X方向に並列配置され、隣り合う仕切部材90の間に進入する複数の進入部材11と、X方向に移動しながら複数の進入部材11を順番に押出して隣り合う仕切部材90の間に進入させる押出部材31と、を備えている。進入部材11は、隣り合う仕切部材90の間から退出する方向に付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピッチ変換装置およびピッチ変換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の平板状のワークを運搬する場合にラックが使用される。ラックは、複数の仕切部材を備え、隣り合う仕切部材の間にワークを搭載するようになっている。このラックに搭載されたワークを1枚ずつチャックで挟持して取り出す場合には、隣り合うワークの間にチャックを挿入するため、隣り合うワークのピッチを拡大する必要がある。ワークのピッチの拡大は、ラックの仕切部材のピッチを拡大することで実現される。そのため、ラックの仕切部材のピッチを変換するピッチ変換装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、隣接する基板保持部材(仕切部材に相当)間に進入可能な複数の進入部材と、複数の進入部材を基板保持部材間に進入させるとともに基板保持部材間から引き出すための進入部材駆動手段と、複数の基板保持部材を互いに近接する方向に移動させる移動手段と、を備えた基板配列ピッチ変換装置が提案されている。複数の進入部材は、それぞれが実質的に同時に隣接する基板保持部材間に進入するように配置されている(以下、第1従来技術という。)。
【0004】
また特許文献1には、複数の進入部材の高さを異ならせることにより、隣接する基板保持部材間に1つの進入部材が進入した後、基板保持部材間に進入済の進入部材に隣接する進入部材が隣接する基板保持部材間に進入するように配置された基板配列ピッチ変換装置が提案されている(以下、第2従来技術という。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−183357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1従来技術では、複数の進入部材を同時に、隣接する基板保持部材間に進入させる。しかしながら、一方端部の進入部材に対して一方端部の基板保持部材を位置決めしても、他方端部の基板保持部材の位置は全ての基板保持部材の寸法誤差の影響を受けるので、他方端部の進入部材に対する他方端部の基板保持部材の位置ズレが大きくなる。そのため、複数の進入部材を同時に複数の基板保持部材間に進入させることは、現実的には困難である。
【0007】
第2従来技術では、複数の進入部材を順番に、隣接する基板保持部材間に進入させる。この場合、一方端部の第1進入部材に対して一方端部の第1基板保持部材を位置決めすれば、隣接する第2基板保持部材の位置は第2基板保持部材の寸法誤差のみで決まるため、第2進入部材に対する第2基板保持部材の位置ズレは小さくなる。そのため、複数の進入部材を順番に、隣接する基板保持部材間に進入させることができる。
しかしながら第2従来技術では、複数の進入部材を順番に移動させるため、複数の進入部材の高さを異ならせているので、ピッチ変換装置が大型化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、複数の進入部材を隣り合う仕切部材の間に対して確実に進入させることが可能な、小型のピッチ変換装置を提供することを目的とする。また、複数の進入部材を隣り合う仕切部材の間に対して確実に進入させることができるピッチ変換方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明のピッチ変換装置は、第1方向に並列配置された複数の平板状部材のピッチを変換する装置であって、前記第1方向に並列配置され、隣り合う前記平板状部材の間に進入する複数の進入部材と、前記第1方向に移動しながら、前記複数の進入部材を順番に押出して、隣り合う前記平板状部材の間に進入させる押出部材と、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、第1方向における一方端部の第1進入部材に対して一方端部の第1平板状部材を位置決めすれば、他の平板状部材の位置は当該平板状部材の寸法誤差のみで決まるため、進入部材に対する平板状部材の位置ズレは小さくなる。そのため、複数の進入部材を隣接する平板状部材の間に対して確実に進入させることができる。
また、押出部材が第1方向に移動しながら複数の進入部材を順番に押出すので、進入部材の高さを異ならせる必要がない。したがって、ピッチ変換装置を小型化することができる。
【0010】
また前記進入部材は、隣り合う前記平板状部材の間から退出する方向に付勢されていることを特徴とする。
この発明によれば、ピッチ変換作業の完了後には、全ての進入部材が隣り合う平板状部材の間から退出した状態になる。したがって、仕切部材が搭載されたラック等を後工程に搬送する際に、仕切部材と進入部材との干渉を回避することができる。
【0011】
また、全ての前記進入部材が隣り合う前記平板状部材の間から退出したことを検出するセンサを備えていることを特徴とする。
この発明によれば、仕切部材と進入部材との干渉を確実に回避することができる。
【0012】
また前記押出部材は、前記進入部材を押出して隣り合う前記平板状部材の間に進入させる第1傾斜面と、隣り合う前記平板状部材の間に進入した状態で前記進入部材を保持する保持面と、を備えていることを特徴とする。
この発明によれば、押出部材が第1傾斜面を備えているので、進入部材を徐々に押出して平板状部材の間に進入させることが可能になり、平板状部材のピッチを精度よく変換することができる。また、押出部材が保持面を備えているので、先に進入した第1の進入部材と、第1の進入部材の進入によりピッチ拡大方向に移動した第2の平板状部材とが、当接した状態で保持される。この状態で、次の第2の進入部材を進入させることにより、第2の平板状部材がピッチ縮小方向に移動するのを阻止しつつ、第3の平板状部材をピッチ拡大方向に移動させることができる。したがって、平板状部材のピッチを精度よく変換することができる。
【0013】
本発明のピッチ変換方法は、第1方向に並列配置された複数の進入部材を、前記第1方向に並列配置された複数の平板状部材の間に進入させて、前記平板状部材のピッチを変換する方法であって、隣り合う第1の前記平板状部材と第2の前記平板状部材との間に、第1の前記進入部材を進入させる工程と、前記第1の平板状部材と前記第2の平板状部材との間に前記第1の前記進入部材を進入させた状態で、隣り合う前記第2の平板状部材と第3の前記平板状部材との間に、第2の前記進入部材を進入させる工程と、前記第1の平板状部材と前記第2の平板状部材との間から、前記第1の前記進入部材を退出させる工程と、を有することを特徴とする。
この発明によれば、先に進入した第1の進入部材と、第1の進入部材の進入によりピッチ拡大方向に移動した第2の平板状部材とが、当接した状態で保持されている。この状態で、次の第2の進入部材を進入させることにより、第2の平板状部材がピッチ縮小方向に移動するのを阻止しつつ、第3の平板状部材をピッチ拡大方向に移動させることができる。その後、第1の進入部材を退出させることにより、平板状部材のピッチを精度よく変換することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のピッチ変換装置によれば、第1方向における一方端部の第1進入部材に対して一方端部の第1平板状部材を位置決めすれば、他の平板状部材の位置は当該平板状部材の寸法誤差のみで決まるため、進入部材に対する平板状部材の位置ズレは小さくなる。そのため、複数の進入部材を隣接する平板状部材の間に対して確実に進入させることができる。
また、押出部材が第1方向に移動しながら複数の進入部材を順番に押出すので、進入部材の高さを異ならせる必要がない。したがって、ピッチ変換装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ピッチ変換装置の平面図である。
【図2】図1のQ部の拡大図である。
【図3】図2のR矢視図である。
【図4】仕切部材を備えたラックの説明図であり、(a)は平面図であり、(b)は側面図である。
【図5】仕切部材のピッチ拡大変換後のラックの側面図である。
【図6】ピッチ変換作用の第1説明図であり、図1のQ部に相当する部分の拡大図である。
【図7】ピッチ変換作用の第2説明図であり、図1のQ部に相当する部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、ラックの仕切部材の並列方向をX方向(ピッチの拡大方向が+X方向)、進入部材11の進退方向をY方向(進入方向が+Y方向、退出方向が−Y方向)、XY方向に直交する方向をZ方向とする。また平面視とは、+Z方向から−Z方向を視た場合をいう。
【0017】
(仕切部材90を備えたラック8)
図4は仕切部材を備えたラックの説明図であり、図4(a)は平面図であり、図4(b)は側面図である。ラック8は、X方向(第1方向)に並列配置された複数の仕切部材(平板状部材)90を備え、隣り合う仕切部材90の間に平板状のワークWを搭載するものである。ワークWとして、種々の基板や、蓄電セル等を搭載することができる。
【0018】
図4(b)に示すように、ラック8は、底板80と、底板80の両端部から立設された一対の側板81a,81bとを備えている。一対の側板81a,81bの四隅には、両側板81a,81b間を連結するガイド82が配置されている。一対の側板81a,81bの間には、中間板85が配置されている。中間板85の四隅には貫通孔が形成され、この貫通孔にガイド82が挿通されている。これにより中間板85は、ガイド82に沿ってX方向に移動しうるようになっている。
【0019】
仕切部材90は、矩形平板状に形成され、一方の側板81aと中間板85との間に配置されている。仕切部材90の四隅には貫通孔が形成され、この貫通孔にガイド82が挿通されている。これにより仕切部材90は、中間板85と同様に、ガイド82に沿ってX方向に移動しうるようになっている。
図4(a)に示すように、仕切部材90には、Y方向の端面と±X方向の端面との角部を面取りするように、傾斜面92が形成されている。これにより、仕切部材90のY方向の先端は、平面視において先細り形状とされている。
【0020】
図4(b)に示すように、仕切部材90の下端辺からラック8の底板80に沿ってワーク支持部材98が立設され、この支持部材98にワークWが搭載されている。図4(b)に示すピッチ拡大前の状態では、仕切部材90とワークWとが交互に密着して配置されている。この状態での仕切部材90のピッチはP1である。
【0021】
図5は、ピッチ拡大後のラックの側面図である。この状態では、第1仕切部材90aに密着して搭載されたワークWと、第1仕切部材90aに隣り合う第2仕切部材90bとの間に、隙間が開いている。この状態での仕切部材90のピッチはP2(>P1)になっている。なお、ピッチ拡大に伴って中間板85がX方向に移動しても、中間板85が側板81bと干渉しないように、ラックが設計されている。また、隣り合う仕切部材90が離間しても、各仕切部材90はガイド82に支持されているので傾倒しない。
【0022】
(ピッチ変換装置)
図1は、ピッチ変換装置の平面図である。本実施形態のピッチ変換装置1は、上述したラック8の仕切部材90のピッチを拡大変換する装置であって、ラック8をX方向に搬送する搬送手段6と、搬送手段6の両脇においてX方向に並列配置され、隣り合う仕切部材90の間に進入する複数の進入部材11と、進入部材11をY方向にスライドさせるスライド機構10と、各スライド機構10の外側に配置され、複数の進入部材11を順番に+Y方向に押出す押出部材31と、押出部材31をX方向およびY方向に移動させる移動機構30とを備えている。
搬送手段6は、例えばローラコンベアで構成されている
【0023】
(進入部材11のスライド機構10)
図2は、図1のQ部の拡大図である。
図2に示すように、スライド機構10は、隣り合う仕切部材90の間に進入する進入部材11と、進入部材11が固着されたベース部材20と、ベース部材20を基台4に対してスライドさせるリニアガイド22(図3参照)と、を備えている。
【0024】
図2に示すように、進入部材11は、略四角柱状に形成されている。進入部材11のX方向の幅は、隣り合う仕切部材90の間に進入部材11が進入した時に、隣り合う仕切部材90が所定ピッチとなるように設定されている。進入部材11には、+Y方向の端面と±X方向の端面との角部を面取りするように、傾斜面12が形成されている。これにより、進入部材の+Y方向の先端は、平面視において先細り形状とされている。進入部材11は、ボルト等によりベース部材20に固定されている。
【0025】
ベース部材20は、短冊状に形成されている。ベース部材20のX方向の幅は、進入部材11と同等に形成されている。ベース部材の+Z面には、カムフォロア26の中心軸が固定されている、カムフォロア26の外周面は、後述する押出部材31と摺接する。そのため、カムフォロア26に隣接して、カムフォロア26の外周面に潤滑剤を供給する潤滑剤供給部27が設けられている。ベース部材20の−Y方向にはコイルバネ24が配置されている。コイルバネ24の一端はベース部材20に固定され、コイルバネ24の他端はボルト25を介して基台4に固定されている。
【0026】
図3は、図2のR矢視図(正面図)である。
図3に示すように、リニアガイド22は、Y方向に伸びるレール22aと、レール22aに沿ってスライドするスライダ22bとを備えている。レール22aは基台4に固定され、スライダ22bは上述したベース部材20に固定されている。上述したコイルバネ24により、ベース部材20は−Y方向に付勢されている。
【0027】
図1に示すように、本実施形態のピッチ変換装置1は、全ての進入部材11が隣り合う仕切部材の間から退出したことを検出するセンサ15を備えている。具体的には、複数の進入部材11の±X方向に、フォトセンサの発光部15aおよび受光部15bが配置されている。また進入部材11には、図3に示すように、X方向に沿って貫通孔16が形成されている。そして、図1に示す発光部15aから出射した光が、全ての進入部材11の貫通孔16を通って受光部15bに入射した場合に、全ての進入部材11が仕切部材90から退出したことを検出しうるようになっている。
【0028】
(押出部材31の移動機構30)
図2に示すように、移動機構30は、進入部材11を+Y方向に押出す押出部材31と、押出部材31をY方向に移動させるY方向移動機構42と、押出部材31(およびY方向移動機構42)をX方向に移動させるX方向移動機構52とを備えている。
【0029】
押出部材31は、平板状に形成されている。押出部材31の+Y方向の側面は、隣り合う仕切部材90の間に進入した状態で進入部材11を保持する保持面36として機能する。また押出部材31には、保持面36と+Z方向の側面との角部を面取りするように、第1傾斜面34が形成されている。第1傾斜面34は、進入部材11を押出して隣り合う仕切部材90の間に進入させる機能を有する。なお、押出部材31の+X方向の端部には保持面36と平行な導入面32が形成され、この導入面32から保持面36にかけて第1傾斜面34が形成されている。また、導入面32と第1傾斜面34との間には、両者間を滑らかに結ぶ曲面33が形成されている。また押出部材31には、+Y方向の保持面36と−Z方向の側面との角部を面取りするように、第2傾斜面38が形成されている。第2傾斜面38は、隣り合う仕切部材90の間から進入部材11を退出させる機能を有する。なお、保持面36に対する第2傾斜面38の傾斜角度は、第1傾斜面34の傾斜角度より小さくなっている。
押出部材31は、ベース部材40に固定されている。
【0030】
図3に示すように、Y方向移動機構42は、例えばガイド付エアシリンダで構成され、シリンダ(不図示)を内包する固定部42bと、ロッド(不図示)に接続された移動部42aとを備えている。移動部42aは押出部材31を支持するベース部材40に接続され、固定部42bはX方向移動機構52の移動部52aに接続されている。またY方向移動機構42は、図2に示すように、ショックアブソーバ44を備えている。移動部42aが+Y方向に移動すると、移動部42aに接続されたストッパ46が、固定部42bに接続されたショックアブソーバ44のロッド45を押し込む。これにより、移動部42aを緩やかに停止させることができる。
【0031】
図3に示すように、X方向移動機構52は、例えば単軸ロボットで構成され、X方向に沿って延びる軌道部52bと、軌道部52bに沿って移動する移動部52aとを備えている。移動部52aはY方向移動機構42の固定部42bに接続され、軌道部52bは基台4に固定されている。
【0032】
(ピッチ変換方法)
次に、前記ピッチ変換装置を使用したピッチ変換方法について説明する。
図6および図7は、ピッチ変換作用の説明図であり、図1のQ部に相当する部分における拡大図である。最初に、図1に示す搬送手段6により、ピッチ変換装置1の中央部にラック8を搬送する。そして図6に示すように、複数の進入部材11のうち−X方向端部に配置された第1進入部材11aに対して、複数の仕切部材90のうち−X方向端部に配置された第1仕切部材90aを位置決めする。この状態で、ラック8をピッチ変換装置1に固定する。
【0033】
次に、押出部材31の移動機構30のうちY方向移動機構42を駆動して、押出部材31を+Y方向に押出す。次に、この状態のままX方向移動機構52を駆動して、押出部材31を+X方向に移動させる。すると、押出部材31の第1傾斜面34が、スライド機構10のカムフォロア26に当接し、カムフォロア26を+Y方向に押す。これにより、まず第1進入部材11aが+Y方向に押出される。第1進入部材11aは、ラック8の仕切部材90のうち−X方向端部に配置された第1仕切部材90aと、第1仕切部材90aの+X方向に隣り合う第2仕切部材90bとの間に進入する。
【0034】
ここで、ピッチ変換装置1にラック8が位置決め固定され、ラック8に第1仕切部材90aが密着しているので、第1進入部材11aが進入しても、第1仕切部材90aは−X方向に移動しない。これに対して、第2仕切部材90bはX方向に移動可能とされているので、第1進入部材11aが進入すると、第2仕切部材90bは+X方向に移動する。この第2仕切部材90bに押されて、第2仕切部材90bより+X方向に存在する全ての仕切部材90が+X方向に移動する。その結果、第1仕切部材90aに搭載された第1ワークWaから第2仕切部材90bが離間して、第1仕切部材90aと第2仕切部材90bとのピッチがP1からP2に拡大変換される。
【0035】
この状態では、第1進入部材11aに対して第2仕切部材90bの−X側面が密着している。そのため、第2仕切部材90bの+X側面の位置ズレは、第2仕切部材90bの厚さ寸法の誤差のみで決まる。仕切部材90全部の厚さ寸法の誤差に比べて、仕切部材1枚の厚さ寸法の誤差は小さいので、第2進入部材11bに対する第2仕切部材90bの+X側面の位置ズレは小さくなる。したがって、第2進入部材11bを、第2仕切部材90bと第3仕切部材90cとの間に確実に進入させることができる。
【0036】
続けて押出部材31を+X方向に移動させると、図7に示すように、複数の進入部材11が順番に、隣り合う仕切部材90の間に進入する。押出部材31には、第1傾斜面34に連続して、Y方向に直交する保持面36が形成されている。この保持面36にカムフォロア26が当接している間は、進入部材11が隣り合う仕切部材90の間に進入したままの状態に保持される。
【0037】
図7に示すように、例えば第7仕切部材90gと第8仕切部材90hとの間に第7進入部材11gが進入する場合について検討する。このとき、第6仕切部材90fと第7仕切部材90gとの間には、第6進入部材11fが進入した状態で保持されている。第6進入部材11fが、第7仕切部材90gの−X側面と当接しているので、第7仕切部材90gの−X方向への移動は、第6進入部材11fにより規制される。そのため、第7進入部材11gが進入しても、第7仕切部材90gが−X方向に移動することはない。これに対して、第8仕切部材90hはX方向に移動可能とされているので、第7進入部材11gが進入すると、第8仕切部材90hは+X方向に移動する。この第8仕切部材90hに押されて、第8仕切部材90hより+X方向に存在する全ての仕切部材90が+X方向に移動する。その結果、第7仕切部材90gと第8仕切部材90hとのピッチが、P1からP2に拡大変換される。
【0038】
押出部材31には、保持面36に続けて、第2傾斜面38が形成されている。なお進入部材11は、コイルバネ24により、隣り合う仕切部材90の間から退出する方向に付勢されている。そのため、カムフォロア26が第2傾斜面38に沿って引き戻され、進入部材11が−Y方向に移動して隣り合う仕切部材90の間から退出する。なお、保持面36に対する第2傾斜面38の傾斜角度が、第1傾斜面34の傾斜角度より緩やかに形成されているので、進入部材11は比較的ゆっくりと隣り合う仕切部材90の間から退出する。これにより、進入部材11の退出時に仕切部材90の位置がずれるのを防止することができる。
なお進入部材11が退出し、隣り合う仕切部材90が相互に離間しても、仕切部材90は4本のガイド82に支持されているので傾倒しない。
【0039】
このようにして、全ての進入部材11を仕切部材90の間に進入および退出させて、全ての仕切部材90のピッチを拡大変換する。これに伴って、ラック8に搭載されたワークWのピッチも拡大変換される。
押出部材31を+X方向の端部まで移動させたら、Y方向移動機構42を駆動して、押出部材31を−Y方向に引き戻す。この状態でX方向移動機構52を駆動して、押出部材31を−X方向の端部まで移動させる。これにより、進入部材11のスライド機構10と押出部材31との干渉を回避しつつ、押出部材31をX方向に移動させることができる。
【0040】
進入部材11が−Y方向に付勢されているので、ピッチ変換作業の完了後には、全ての進入部材11が隣り合う仕切部材90の間から退出した状態になる。ここで、図1に示すセンサ15の発光部15aから光を出射し、受光部15bに入射するか確認する。発光部15aから出射した光が、全ての進入部材11の貫通孔16を通って受光部15bに入射すれば、全ての進入部材11が仕切部材90から退出したことを検出することができる。この状態で、搬送手段6を駆動してラック8を後工程に移動させる。これにより、仕切部材90と進入部材11との干渉を確実に回避しつつ、ラック8を後工程に搬送することができる。
【0041】
以上に詳述したように、図1に示す本実施形態のピッチ変換装置は、X方向に並列配置された複数の平板状の仕切部材90のピッチを変換する装置であって、X方向に並列配置され、隣り合う仕切部材90の間に進入する複数の進入部材11と、X方向に移動しながら、複数の進入部材11を順番に押出して、隣り合う仕切部材90の間に順に進入させる押出部材31と、を備えている構成とした。
この構成によれば、図6に示す第1進入部材11aに対して第1仕切部材90aを位置決めすれば、他の仕切部材90の位置は当該仕切部材90の寸法誤差のみで決まるため、進入部材11に対する仕切部材90の位置ズレは小さくなる。そのため、仕切部材90の寸法誤差にかかわらず、複数の進入部材11を隣接する仕切部材90の間に対して確実に進入させることができる。
また、押出部材31がX方向に移動しながら複数の進入部材11を順番に押出すので、進入部材11の高さを異ならせる必要がない。したがって、ピッチ変換装置を小型化することができる。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や層構成などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、平板状部材として実施形態では仕切部材のピッチを拡大変換したが、ワークのピッチを直接的に拡大変換してもよい。
【符号の説明】
【0043】
X…第1方向 1…ピッチ変換装置 11…進入部材 15a…発光部(センサ) 15b…受光部(センサ) 31…押出部材 34…第1傾斜面 36…保持面 90…仕切部材(平板状部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に並列配置された複数の平板状部材のピッチを変換する装置であって、
前記第1方向に並列配置され、隣り合う前記平板状部材の間に進入する複数の進入部材と、
前記第1方向に移動しながら、前記複数の進入部材を順番に押出して、隣り合う前記平板状部材の間に進入させる押出部材と、
を備えていることを特徴とするピッチ変換装置。
【請求項2】
前記進入部材は、隣り合う前記平板状部材の間から退出する方向に付勢されていることを特徴とする請求項1に記載のピッチ変換装置。
【請求項3】
全ての前記進入部材が隣り合う前記平板状部材の間から退出したことを検出するセンサを備えていることを特徴とする請求項2に記載のピッチ変換装置。
【請求項4】
前記押出部材は、
前記進入部材を押出して隣り合う前記平板状部材の間に進入させる第1傾斜面と、
隣り合う前記平板状部材の間に進入させた状態で前記進入部材を保持する保持面と、
を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のピッチ変換装置。
【請求項5】
第1方向に並列配置された複数の進入部材を、前記第1方向に並列配置された複数の平板状部材の間に進入させて、前記平板状部材のピッチを変換する方法であって、
隣り合う第1の前記平板状部材と第2の前記平板状部材との間に、第1の前記進入部材を進入させる工程と、
前記第1の平板状部材と前記第2の平板状部材との間に前記第1の前記進入部材を進入させた状態で、隣り合う前記第2の平板状部材と第3の前記平板状部材との間に、第2の前記進入部材を進入させる工程と、
前記第1の平板状部材と前記第2の平板状部材との間から、前記第1の前記進入部材を退出させる工程と、
を有することを特徴とするピッチ変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−4367(P2012−4367A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138339(P2010−138339)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(507357232)オートモーティブエナジーサプライ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】