説明

ピペリジンGPCRアゴニスト

式(I):


(I)
の化合物、またはその医薬的に許容される塩はGPCRアゴニストであり、肥満および糖尿病の処置に関して有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はGタンパク質共役受容体(GPCR)アゴニストに関する。特に本発明は、肥満の処置に例えば飽満感の調節物質として有用であり、メタボリック症候群の処置に有用であり、糖尿病の処置に有用である、GPCRアゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は、身体サイズと比較して過剰な脂肪組織量を特徴とする。臨床的には、ボディマス指数(BMI;体重(kg)/身長(m)2)または胴囲によって、体脂肪量が見積られる。BMIが30より大きい場合、その個体は肥満とみなされ、過体重であることの医学的帰結は確立されている。体重の増加が、特に腹部体脂肪の結果として起こる体重の増加が、糖尿病、高血圧、心臓疾患、ならびに他の数多くの健康上の合併症、例えば関節炎、脳卒中、胆嚢疾患、筋および呼吸障害、背痛、さらにはある種のがんに関するリスクの増加と関連することは、かなり以前から、一般に受け入れられた医学的見解になっている。
【0003】
肥満の処置に対する薬学的アプローチは、主に、エネルギー摂取量とエネルギー消費量のバランスを変化させることによって脂肪量を減少させることに関するものだった。体脂肪蓄積と、エネルギーホメオスタシスの調節に関与する脳回路との関連は、多くの研究が明確に立証している。数多くの神経ペプチド経路(例えば神経ペプチドYおよびメラノコルチン類)に加えて、セロトニン経路、ドーパミン経路、アドレナリン経路、コリン経路、エンドカンナビノイド経路、オピオイド経路、およびヒスタミン経路が、エネルギー摂取量とエネルギー消費量の中枢制御に関係することは、直接的および間接的証拠が示唆している。視床下部中枢も体重および体脂肪蓄積度の維持に関与する末梢ホルモン、例えばインスリンおよびレプチン、ならびに脂肪組織由来ペプチドを感知することができる。
【0004】
インスリン依存性I型糖尿病およびインスリン非依存性II型糖尿病に関連する病態生理を標的とする薬物は数多くの潜在的副作用を持ち、多くの患者における異常脂質血症および高血糖に十分に対処していない。処置は、多くの場合、食餌、運動、血糖降下剤およびインスリンを使って、個々の患者のニーズに焦点が合わされるが、新規抗糖尿病剤、特に有害作用がより少なく、より良好な忍容性を持ちうるものは、絶えず必要とされている。
【0005】
同様にメタボリック症候群(症候群X)も人々を高い冠状動脈疾患リスクにさらし、中心性肥満(腹部領域における過剰な脂肪組織)、グルコース不耐性、高トリグリセリドおよび低HDLコレステロール、ならびに高血圧を含む一群のリスク因子を特徴とする。心筋虚血および微小血管疾患は、無処置のメタボリック症候群または管理が不十分なメタボリック症候群に関連する確立された病的状態である。
新規抗肥満剤および新規抗糖尿病剤、特に有害作用がより少なく、より良好な忍容性を持ちうるものは、絶えず必要とされている。
【0006】
GPR119(以前はGPR116と呼ばれていた)は、ヒト受容体とラット受容体の両方を開示しているWO00/50562においてSNORF25と同定されたGPCRであり、US6,468,756にはマウス受容体も開示されている(アクセッション番号:AAN95194(ヒト)、AAN95195(ラット)およびANN95196(マウス))。
【0007】
ヒトの場合、GPR119は膵臓、小腸、結腸および脂肪組織で発現される。ヒトGPR119受容体の発現プロファイルは、肥満および糖尿病を処置するためのターゲットとして、その潜在的有用性を示している。
【0008】
国際特許出願WO2005/061489、WO2006/070208、WO2006/067531およびWO2006/067532には、複素環誘導体がGPR119受容体アゴニストとして開示されている。国際特許出願PCT/GB2006/050176、PCT/GB2006/050177、PCT/GB2006/050178およびPCT/GB2006/050182(本願の優先日以降に公開)には、さらなるGPR119受容体アゴニストが開示されている。
【0009】
本発明は、肥満の処置に例えば飽満感の末梢調節物質として有用であり、メタボリック症候群の処置に有用であり、糖尿病の処置に有用である、GPR119のアゴニストに関する。
【0010】
(発明の概要)
式(I)の化合物:
【化1】

(I)
または医薬的に許容されるその塩はGPR119のアゴニストであり、肥満および糖尿病の予防的処置または治療的処置に有用である。
【0011】
(発明の詳細な説明)
本発明は式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩に関する:
【化2】

(I)
[式中、XおよびYの一方はOであり、他方はNである;
1は-CH2-SO25である;
2は水素、ハロまたはメチルである;
3は水素またはメチルである;
4はC2-5アルキルである;そして
5はC1-3アルキルである]。
【0012】
本発明のある実施形態ではXがOであり、別の一実施形態ではYがOである。
1は好ましくは-CH2-SO2CH3である。
2は好ましくは水素、フルオロまたはメチルであり、より好ましくはフルオロである。
本発明のある実施形態ではR3が水素であり、別の一実施形態ではR3がメチルである。R3がメチルである場合、生成する立体中心は好ましくは(R)-立体配置を持つ。
4は好ましくはC3-4アルキル、特にn-プロピル、イソプロピルまたはtert-ブチル、より好ましくはC3アルキル、特にイソプロピルである。
【0013】
各可変部に関して好ましい基は、上に、広く、可変部ごとに個別に列挙したが、本発明の好ましい化合物には、式(I)におけるいくつかの可変部または各可変部が、各可変部に関する好ましい基、より好ましい基、または特に列挙された基から選択されるものが含まれる。したがって本発明は、好ましい基、より好ましい基および特に列挙された基の全ての組合せを包含するものとする。
【0014】
言及しうる本発明の具体的化合物は、実施例に含まれるもの、および医薬的に許容されるその塩である。
本明細書にいう「アルキル」は、別段の明記がない限り、線状もしくは分枝状またはその組合せであることができる炭素鎖を意味する。アルキル基の例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-およびtert-ブチル、ならびにペンチルが含まれる。
用語「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素原子を包含し、特にフッ素または塩素、とりわけフッ素を包含する。
【0015】
本明細書に記載する化合物は、1つ以上の不斉中心を含有しうるので、ジアステレオマーおよび光学異性体を生じうる。本発明は、そのような考えうるジアステレオマーの全て、ならびにそれらのラセミ混合物、それらの実質的に純粋な分割されたエナンチオマー、全ての考えうる幾何異性体、および医薬的に許容されるその塩を包含する。上記の式(I)はいくつかの位置に立体化学を明示せずに画かれている。本発明は、式(I)の全ての立体異性体および医薬的に許容されるその塩を包含する。さらに立体異性体の混合物ならびに単離された具体的立体異性体も包含される。そのような化合物を製造するために用いられる合成手法の過程において、または当業者に知られるラセミ化もしくはエピマー化手法を使用する際に、そのような手法の生成物は立体異性体の混合物であることができる。
【0016】
式(I)の化合物および医薬的に許容されるその塩が溶媒和物または多形の形態で存在する場合、本発明は考えうる溶媒和物および多形をいずれも包含する。溶媒和物を形成する溶媒のタイプは、その溶媒が薬理学的に許容できる限り、特に限定されない。例えば水、エタノール、プロパノール、アセトンなどを使用することができる。
【0017】
「医薬的に許容される塩」という用語は、医薬的に許容される無毒性の酸(無機酸および有機酸を含む)から製造される塩を指す。そのような酸には、例えば塩酸、メタンスルホン酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸などが含まれる。
式(I)の化合物は薬学的使用が意図されるので、それらは好ましくは実質的に純粋な形態で、例えば少なくとも60%の純度で、より適切には少なくとも75%の純度で、とりわけ少なくとも98%の純度で提供される(%は重量/重量ベースである)。
式(I)の化合物は以下に述べるように製造することができる。PGは保護基を表し、Gは上に定義した置換オキサジアゾールであり、R1、R2、R3およびR4も上に定義したとおりである。
【0018】
PGが適切な保護基である式(II)の化合物は、既知化合物から容易に製造することができる(スキーム1)。例えば、PGがBocである化合物(II)のエチルエステルは以前に報告されている(米国特許第6,518,423号)。標準的条件下で水素添加すれば、式(III)のラセミ化合物が得られるだろう。例えば不斉触媒の存在下で行われる水素添加など、適切な条件下でアルケンの不斉還元を行うと、式(III)の化合物が高いエナンチオマー過剰率で得られる。適切な触媒の例は、[Rh(ノルボルナジエン)2]BF4および(S)-1-[(R)-2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセニル]-エチルビス(2-メチルフェニル)ホスフィンである。次に、式(III)のカルボン酸を標準的条件(例えばTHFなどの適切な溶媒中のボラン)で還元することにより、式(IV)の化合物を得ることができる。次に、保護基の除去が当業者に周知の条件で達成される。
スキーム1
【化3】

【0019】
3=Hの式(V)の化合物は既知化合物である(スキーム2、Siegel, M. G.らTetrahedron 1999, 55, 11619-11639)。式(VII)の化合物は式(V)の化合物から標準的条件で製造することができる。例えば、式(V)の化合物を臭化シアンで処理した後、得られたシアナミド(VI)を式(IX)の化合物と標準的条件下で縮合させることにより、XがOである式(VII)の化合物が得られる。式(IX)の化合物は市販されているか、または対応するカルボン酸から周知の技法を使って容易に製造される。あるいは、式(VI)の化合物をヒドロキシルアミンと共に加熱して、適切な条件下で式(X)のカルボン酸と縮合させうるN-ヒドロキシグアニジンを得ることにより、YがOである位置異性オキサジアゾールの合成を達成することもできる。式(X)の酸は市販されている。
スキーム2
【化4】

【0020】
式(VII)の化合物は、スキーム3に図解するように、アミン(V)と式(XI)の塩化オキサジアゾールとの縮合によって製造することもできる(Buscemi, S.ら, JCS Perkin I: Org. and Bioorg. Chem., 1988, 1313およびAdembri, G,ら, JCS Perkin I: Org. and Bioorg. Chem., 1981, 1703)。
スキーム3
【化5】

【0021】
式(XII)の化合物の合成は、以前に報告されている(ここで、R2=H, Kaiser, K. et al. J. Med. Chem., 1977, 20, 687;R2=F, Svensson, A. et al. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 7193;R2=Cl, Matysiak, S. et al. Helv. Chim. Acta, 1998, 81, 1545;R2=Me, WO 91/18858)。R2=Hである式(XII)の化合物は、市販品として入手可能である。式(XIII)の化合物の形成は、エステル製造のための標準条件下で起こる。例えば、式(XIII)のベンジルアルコールをN−ブロモスクシンイミドで処理することによって脱離基を形成し、続いて生成した臭化物を、同時エステル開裂(concomitant ester cleavage)をもたらす適当な求核剤、例えばナトリウムチオメトキシドで置換することによって、式(XIV)の化合物が得られる。化合物(XIV)の(XV)への酸化は、標準条件下、例えばmCPBAを用いて遂行されうる(スキーム4)。
スキーム4
【化6】

【0022】
スキーム5で説明されるように、光延条件を用いて式(XV)と式(VII)の化合物を混合することによって、式(I)の化合物が製造されうる。例えば、THFのような適当な溶媒中、0℃と室温の間で、式(XV)と(VII)の化合物を混合し、続いてトリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシレートを加えることによって、目的の式(I)の化合物が得られる。
スキーム5
【化7】

【0023】
他の式(I)の化合物は、上述した方法と類似する方法によって、または自体公知の方法によって製造することができる。
式(I)の化合物の製造に関するさらなる詳細は実施例に見出される。
【0024】
式(I)の化合物は、単独で製造するか、または少なくとも2個の、例えば5〜1,000個の、より好ましくは10〜100個の式(I)の化合物を含む化合物ライブラリーとして製造することができる。化合物ライブラリーは、コンビナトリアル「スプリット・ミックス(split and mix)」アプローチにより、または多重パラレル合成により、液相化学または固相化学を使って、当業者に知られる手法で作製することができる。
【0025】
式(I)の化合物の合成中は、中間体化合物内の不安定官能基、例えばヒドロキシ、カルボキシおよびアミノ基を保護することができる。保護基は式(I)の化合物の合成のどの段階で除去してもよいし、式(I)の最終化合物上に存在してもよい。さまざまな不安定官能基を保護する方法および得られた保護誘導体を切断するための方法に関する包括的議論は、例えばT.W. GreeneおよびP.G.M. Wuts「Protective Groups in Organic Chemistry」(1991)(Wiley-Interscience, ニューヨーク, 第2版)に記載されている。
【0026】
新規中間体、例えば上に定義したものは、いずれも、式(I)の化合物の合成に役立ちうるので、そのような新規中間体、例えば式(VII)および(XV)の化合物またはその塩もしくは保護誘導体も、本発明の範囲に包含される。
上に示したように、式(I)の化合物は、GPR119アゴニストとして、例えば肥満および糖尿病の処置および/または予防に有用である。そのような用途には、式(I)の化合物が、一般に医薬組成物の形態で投与されるだろう。
【0027】
本発明は、医薬として使用するための式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩も提供する。
本発明は医薬的に許容される担体と組み合わされた式(I)の化合物を含む医薬組成物も提供する。
好ましくは、本組成物は、医薬的に許容される担体と、無毒性治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩とから構成される。
【0028】
さらにまた、本発明は、肥満の予防的処置または治療的処置をもたらすGPR119の調整によって、例えば飽満感を調節することによって、疾患を処置するための医薬組成物、または糖尿病を処置するための医薬組成物であって、医薬的に許容される担体と、無毒性治療有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩とを含む医薬組成物も提供する。
【0029】
本医薬組成物は、場合によっては、他の治療成分または佐剤を含んでもよい。本組成物は、経口投与、直腸投与、局所外用、および非経口(皮下、筋肉内、および静脈内を含む)投与に適した組成物を包含するが、与えられたどの例においても、最も適切な経路は、その特定ホスト、ならびにその活性成分が投与される原因になっている症状の性質および重症度に依存するだろう。医薬組成物は単位剤形で便利に提示することができ、薬剤学分野で周知のどの方法によって製造されてもよい。
【0030】
実際面では、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、活性成分として、医薬担体と、通常の医薬配合技法に従って緊密に混合することができる。担体は、その投与、例えば経口投与または非経口(静脈内を含む)投与にとって望ましい形態に依存して、幅広くさまざまな形態をとりうる。
【0031】
したがって医薬組成物は、例えばそれぞれが所定量の活性成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤など、経口投与に適した不連続な単位として提示することができる。さらに、組成物は、粉末剤、顆粒剤、溶液剤、水性液体中の懸濁剤、非水性液剤、水中油型乳剤、または油中水型液体乳剤として提示することもできる。上述の一般的剤形の他にも、放出制御手段および/または送達装置によって、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与することもできる。組成物は任意の調剤方法で製造することができる。一般にそのような方法は、活性成分を1つ以上の必要成分を構成する担体と混和するステップを含む。一般に組成物は、活性成分を液状担体もしくは微細な固形担体またはその両方と均一かつ緊密に混合することによって製造される。次にその生成物を所望の提示物へと便利に付形することができる。
【0032】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を、1つ以上の他の治療活性化合物と組み合わせて医薬組成物中に含めることもできる。
使用される医薬担体は、例えば固体、液体または気体であることができる。固形担体の例には、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が含まれる。液状担体の例は液糖、ラッカセイ油、オリーブ油、および水である。気状担体の例には二酸化炭素および窒素が含まれる。
【0033】
経口剤形用組成物の製造では、通常の医薬媒体をどれでも使用することができる。例えば水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤などを使って、懸濁剤、エリキシル剤および溶液剤などの経口液状調製物を形成させることができ、一方、デンプン、糖類、微結晶セルロースなどの担体、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などを使って、粉末剤、カプセル剤および錠剤などの経口固形調製物を形成させることができる。錠剤およびカプセル剤は、投与が容易であるため、固形医薬担体を使用する好ましい経口投薬単位である。場合によっては、錠剤を標準的な水性または非水性技法でコーティングすることもできる。
【0034】
本発明の組成物を含有する錠剤は、場合によっては1つ以上の補助成分または佐剤を使って、圧縮または成形によって製造することができる。圧縮錠剤は、易流動性の形態をした活性成分、例えば粉末または顆粒を、場合によっては結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、表面活性剤または分散剤と混合して、適切な機械で圧縮することによって製造することができる。湿製錠剤は、不活性液状希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって製造することができる。各錠剤は好ましくは約0.05mg〜約5gの活性成分を含有し、各カシェ剤またはカプセル剤は好ましくは約0.05mg〜約5gの活性成分を含有する。
【0035】
例えば、ヒトへの経口投与を意図する製剤は、適当かつ便利な量の担体材料(これは組成物全体の約5パーセントから約95パーセントまで変化しうる)と配合された約0.5mg〜約5gの活性剤を含有しうる。単位剤形は一般に約1mg〜約2gの活性成分、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、または1000mgの活性成分を含有するだろう。
【0036】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、活性化合物の水溶液または水懸濁液として製造することができる。ヒドロキシプロピルセルロースなどの適切な界面活性剤を含めることができる。グリセロール、液体ポリエチレングリコール、および油中のその混合物中に、分散液を製造することもできる。さらに、微生物の有害な成長を防ぐために、保存剤を含めることができる。
【0037】
注射用途に適した本発明の医薬組成物には、滅菌水性溶液剤または分散剤が含まれる。さらにまた、組成物は、そのような滅菌注射用溶液剤または分散剤を即時調製するための滅菌粉末剤の形態をとることもできる。いずれの場合も、最終的な注射用剤形は滅菌されていなければならず、注射器で容易に扱える程度に流動性でなければならない。医薬組成物は製造条件下および貯蔵条件下で安定でなければならず、したがって好ましくは、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、植物油、およびその適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であることができる。
【0038】
本発明の医薬組成物は、例えばエアロゾル剤、クリーム剤、軟膏、ローション剤、散粉剤などの、局所外用に適した形態をとることができる。さらに組成物は、経皮装置での使用に適した形態をとることができる。これらの製剤は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を使って、通常の加工方法で製造することができる。一例として、クリーム剤または軟膏は、親水性材料および水を約5重量%〜約10重量%の化合物と混合して望ましい粘稠度を持つクリーム剤または軟膏を作ることによって製造される。
【0039】
本発明の医薬組成物は、担体が固体である直腸投与に適した形態をとることができる。その混合物は1回量坐剤を形成することが好ましい。適切な担体には、カカオ脂および当技術分野でよく使用される他の材料が含まれる。坐剤は、まず組成物を軟化または融解した担体と混合し、次に鋳型中で冷却し付形することによって、便利に形成させることができる。
【0040】
上記担体成分の他にも、上述の医薬製剤は、例えば希釈剤、緩衝剤、着香剤、結合剤、表面活性剤、増粘剤、潤滑剤、保存剤(酸化防止剤を含む)などといった1つ以上の追加担体成分を、適宜、含みうる。さらにまた、製剤が意図する受容者の血液と等張になるように、他の佐剤を含めることもできる。式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を含有する組成物は、粉末または液体濃縮物の形態で製造することもできる。
【0041】
一般に、上に示した症状の処置には、1日あたり0.01mg/kg〜約150mg/kg体重程度、あるいは1日あたり患者1人あたり約0.5mg〜約7g程度の投薬量レベルが有用である。例えば肥満は、1日あたり体重1キログラムあたり約0.01〜50mg、あるいは1日あたり患者1人あたり約0.5mg〜3.5gの化合物を投与することによって、効果的に処置することができる。
【0042】
しかしどの特定患者についても、具体的用量レベルは、年齢、体重、全身の健康、性別、食餌、投与時刻、投与経路、排泄速度、薬物の組合せ、および治療を受けているその特定疾患の重症度を含むさまざまな因子に依存するだろうと理解される。
式(I)の化合物はGPR119が関与している疾患または症状の処置に使用することができる。
【0043】
したがって本発明は、GPR119が関与している疾患または症状を処置するための方法であって、その必要がある対象に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与するステップを含む方法も提供する。GPR119が関与している疾患または症状には肥満および糖尿病が含まれる。本願に関して、肥満の処置には、例えば食欲および体重の減少、体重減少の維持、ならびにリバウンドおよび糖尿病(1型および2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、ならびに糖尿病合併症、例えばニューロパシー、ネフロパシー、網膜症、白内障、心血管合併症および異常脂質血症を含む)の防止などによる、肥満および過剰な食物摂取に関連する他の摂食障害などといった疾患または症状の処置が包含されるものとする。また、摂取した脂肪に対して機能性消化不良につながる異常な感受性を持つ患者の処置。本発明の化合物は、例えばメタボリック症候群(症候群X)、耐糖能異常、高脂質血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベルおよび高血圧などの代謝性疾患の処置にも使用することができる。
【0044】
本発明の化合物には、上述した障害の処置に関して、それらがβ細胞保護、cAMPおよびインスリン分泌量の増加をもたらしうると共に、胃内容排出を遅らせることもできるという点で、異なる機序で作用する化合物よりも有利でありうる。
本発明の化合物は、例えば骨減少症、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、歯周病、歯槽骨減少、骨切り術骨量減少、小児特発性骨量減少、パジェット病、転移癌による骨量減少、溶骨性病変、脊柱湾曲および身長低下などの低骨量を特徴とする症状の処置にも使用することができる。
【0045】
本発明は、飽満感を調節するための方法であって、その必要がある対象に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与するステップを含む方法も提供する。
本発明は、肥満を処置するための方法であって、その必要がある対象に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与するステップを含む方法も提供する。
【0046】
本発明は、糖尿病(1型および2型糖尿病を含む、特に2型糖尿病)を処置するための方法であって、その必要がある患者に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与するステップを含む方法も提供する。
本発明は、メタボリック症候群(症候群X)、耐糖能異常、高脂質血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベルまたは高血圧を処置するための方法であって、その必要がある患者に有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩を投与するステップを含む方法も提供する。
【0047】
本発明は、上に定義した症状の処置に使用するための式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩も提供する。
本発明は、上に定義した症状を処置するための医薬品の製造における式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用も提供する。
本発明の方法において「処置」という用語は、治療的処置と予防的処置の両方を包含する。
【0048】
式(I)の化合物は、既知のGPR119アゴニストと比較して有利な性質を示しうる。例えば本化合物は、改善された効力、半減期もしくは安定性を示すことができ、あるいは改善された溶解度を示して、吸収性およびバイオアベイラビリティーを改善することができ、あるいは医薬として使用される化合物にとって有利な他の性質を示しうる。
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩は、単独で、または1つ以上の他の治療活性化合物と組み合わせて投与することができる。他の治療活性化合物は、式(I)の化合物と同じ疾患もしくは症状または異なる疾患もしくは症状を処置するための化合物であることができる。治療活性化合物は、同時に、逐次的に、または別個に投与することができる。
【0049】
式(I)の化合物は、肥満および/または糖尿病を処置するための他の活性化合物、例えばインスリンおよびインスリン類似体、胃リパーゼ阻害剤、膵リパーゼ阻害剤、スルホニル尿素類および類似体、ビグアニド類、α2アゴニスト、グリタゾン類、PPAR-γアゴニスト、混合PPAR-α/γアゴニスト、RXRアゴニスト、脂肪酸酸化阻害剤、α-グルコシダーゼ阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、GLP−1アゴニスト、例えばGLP-1類似体およびミメティック、β-アゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、脂質低下剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、抗肥満剤、例えば膵リパーゼ阻害剤、MCH-1アンタゴニストおよびCB-1アンタゴニスト(またはインバースアゴニスト)、アミリンアンタゴニスト、リポキシゲナーゼ阻害剤、ソモスタチン(somostatin)類似体、グルコキナーゼ活性化剤、グルカゴンアンタゴニスト、インスリンシグナリングアゴニスト、PTP1B阻害剤、糖新生阻害剤、抗脂肪分解剤、GSK阻害剤、ガラニン受容体アゴニスト、食欲抑制剤、CCK受容体アゴニスト、レプチン、セロトニン性/ドーパミン性抗肥満薬、再取り込み阻害剤、例えばシブトラミン、CRFアンタゴニスト、CRF結合タンパク質、甲状腺ホルモン様化合物、アルドース還元酵素阻害剤、グルココルチコイド受容体アンタゴニスト、NHE-1阻害剤またはソルビトールデヒドロゲナーゼ阻害剤と共に投与することができる。
【0050】
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩と少なくとも一つの他の抗肥満剤との投与を含む併用療法は、本発明のさらにもう一つの態様を表す。
本発明は、ヒトなどの哺乳動物における肥満を処置するための方法であって、その必要がある哺乳動物に、有効量の式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩ともう一つの抗肥満剤とを投与することを含む方法も提供する。
【0051】
本発明は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩ともう一つの抗肥満剤との、肥満を処置するための使用も提供する。
本発明は、肥満を処置するためにもう一つの抗肥満剤と組み合わせて使用するための医薬品の製造における式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩の使用も提供する。
式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩および他の抗肥満剤は、同時投与すること、または逐次的もしくは個別に投与することができる。
【0052】
同時投与には、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩と他の抗肥満剤との両方を含む一製剤の投与、または各剤の異なる製剤の同時投与もしくは個別投与が包含される。式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩および他の抗肥満剤の薬理学的性質がそれを許す場合には、それら2つの薬剤の同時投与が好ましいだろう。
【0053】
本発明は、肥満を処置するための医薬品の製造における式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩およびもう一つの抗肥満剤の使用も提供する。
本発明は、式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩と、もう一つの抗肥満剤と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物も提供する。本発明は、上述した方法におけるそのような組成物の使用も包含する。
GPR119アゴニストは、中枢作用性抗肥満剤と組み合わせると、特に有用である。
【0054】
本発明のこの態様による併用療法で使用するための他の抗肥満剤は、好ましくは、CB-1モジュレーター、例えばCB-1アンタゴニストまたはインバースアゴニストである。CB-1モジュレーターの例には、SR141716(リモナバント)およびSLV-319((4S)-(−)-3-(4−クロロフェニル)-N-メチル-N-[(4-クロロフェニル)スルホニル]-4-フェニル-4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド);ならびにEP576357、EP656354、WO 03/018060、WO 03/020217、WO 03/020314、WO 03/026647、WO 03/026648、WO 03/027076、WO 03/040105、WO 03/051850、WO 03/051851、WO 03/053431、WO 03/063781、WO 03/075660、WO 03/077847、WO 03/078413、WO 03/082190、WO 03/082191、WO 03/082833、WO 03/084930、WO 03/084943、WO 03/086288、WO 03/087037、WO 03/088968、WO 04/012671、WO 04/013120、WO 04/026301、WO 04/029204、WO 04/034968、WO 04/035566、WO 04/037823、WO 04/052864、WO 04/058145、WO 04/058255、WO 04/060870、WO 04/060888、WO 04/069837、WO 04/069837、WO 04/072076、WO 04/072077、WO 04/078261およびWO 04/108728と、そこに開示されている参考文献に開示されている化合物が含まれる。
【0055】
GPR119の関与が示唆されている他の疾患または症状には、WO 00/50562およびUS 6,468,756に記載されているもの、例えば心血管障害、高血圧、呼吸障害、妊娠異常、胃腸障害、免疫障害、筋骨格障害、うつ病、恐怖症、不安、気分障害およびアルツハイマー病などが含まれる。
本明細書で言及した特許、特許出願、その他を含む全ての刊行物は、参照により完全に記載されたものとして本明細書に組み込まれることを個々の刊行物について個別に明記したかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、下記の実施例は例示を目的としており、本発明の範囲の限定であるとみなしてはならない。
【0056】
(実施例)
材料と方法
カラムクロマトグラフィは、別段の指定がない限り、SiO2(40-63メッシュ)で行った。LCMSデータは以下のようにして得た:Atlantis 3μ C18カラム(3.0×20.0mm、流速=0.85mL/分)を0.1%HCO2Hを含有するH2O-CH3CN溶液で6分間にわたって溶出し、220nmでUV検出。勾配情報:0.0−0.3分 100%H2O;0.3−4.25分:10%H2O-90%CH3CNまで漸増;4.25−4.4分:100%CH3CNまで漸増:4.4−4.9分:100%CH3CNで保持;4.9−6.0分:100%H2Oに戻る。質量スペクトルは、エレクトロスプレーイオン源を使って、陽イオン(ES+)モードまたは陰イオン(ES-)モードで取得した。
【0057】
略号および頭字語:Ac:アセチル;n-Bu:n-ブチル;t-Bu:tert-ブチル;DIAD:アゾジカルボン酸ジイソプロピル;DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン;DMF:ジメチルホルムアミド;EDCI:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩;Et:エチル;h:時間;HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール;IH:イソヘキサン;mCPBA:3-クロロペルオキシ安息香酸;Me:メチル;NBS:N−ブロモスクシンイミド;Ph:フェニル;RP-HPLC:逆相-高速液体クロマトグラフィー;RT:保持時間;THF:テトラヒドロフラン。
【0058】
以下の化合物の合成は他で記載されている:3-tert-ブチル-5-クロロ-[1,2,4]オキサジアゾール:WO 95/05368;tert-ブチル 4-((E)-2-エトキシカルボニル-1-メチルビニル)-ピペリジン-1-カルボキシレート:米国特許第6,518,423号;2-フルオロ-4-ヒドロキシベンジルアルコール:Tetrahedron Lett. 1998, 39, 7193-7196;N−ヒドロキシイソブチルアミジン:J. Org. Chem. 2003, 68, 7316-7321;3-ピペリジン-4-イル-プロパン-1-オールおよびtert-ブチル 4-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート:Tetrahedron 1999, 55, 11619-11639。他の化合物は全て商業的供給源から入手することができた。
【0059】
製造例1:3−フルオロ−4−ヒドロキシメチルフェニルプロピオン酸エステル
【化8】

NEt3(1.1mL、7.9mmol)を、2−フルオロ−4−ヒドロキシベンジルアルコール(1.10g、7.9mmol)のEtOAc撹拌溶液(13mL)に0℃で加えた。次いでEtCOCl(680μL、7.9mmol)のEtOAc溶液(6mL)を滴下して反応液を10分かけて処理した。70分後、Et2Oを加え、次いで溶液をH2O(4mL)および食塩水(4mL)で洗浄し、次いで乾燥した(Na2SO4)。濾過、溶媒の蒸発、およびカラムクロマトグラフィ(IH−EtOAc、1:1)によって、標題の化合物を得た:δH (CDCl3) 1.30 (t, 3H), 1.76 (t, 1H), 2.61 (q, 2H), 4.79 (d, 2H), 6.88-6.97 (m, 2H), 7.45 (t, 1H).
【0060】
製造例2:3−フルオロ−4−メチルスルファニルメチルフェノール
【化9】

固体のNBS(1.19g、6.7mmol)を、PPh3(1.75g、6.7mmol)および3−フルオロ−4−ヒドロキシメチルフェニルプロピオン酸エステル(製造例1、1.06g、5.35mmol)の無水THF撹拌溶液(42mL)に0℃で15分かけて何回かに分けて加えた。生成した黄色が持続するように、30分後、さらにPPh3(262mg、1.0mmol)およびNBS(178mg、1.0mmol)を何回かに分けて加えた。さらに10分後、固体のNaSMe(1.05g、15.0mmol)を反応液に1回で加え、続いてH2O(4.2mL)を加えた。反応液を勢いよく19時間撹拌し、次いでTHFを減圧留去した。残渣をEt2O(150mL)およびクエン酸(15mmol)と共に勢いよく撹拌し、次いで有機層を分離し、食塩水(10mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾過、溶媒の蒸発、およびカラムクロマトグラフィ(IH−EtOAc、9:1〜3:1)によって、標題の化合物を得た:δH (CDCl3) 2.06 (s, 3H), 3.68 (s, 2H), 4.86 (s, 1H), 6.58-6.63 (m, 2H), 7.19-7.22 (m, 1H).
【0061】
製造例3:3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチルフェノール
【化10】

mCPBA(純度77%、2.39g、10.7mmol)を、3−フルオロ−4−メチルスルファニルメチルフェノール(製造例2、0.92g、5.3mmol)のCH2Cl2撹拌溶液(60mL)に0℃で何回かに分けて加えた。反応液を20℃で3時間撹拌し、次いでCH2Cl2を減圧留去した。残渣をEt2O(150mL)に溶解し、生じた溶液を飽和NaHCO3水−H2O(1:3、3×30mL)混合物で洗浄した。水層を合わせて、Et2O(4×50mL)で逆抽出し、次いで有機層を合わせて、食塩水(20mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4)。濾過、溶媒の蒸発、再結晶(EtOAc)、およびトリチュレーション(IH)によって、標題の化合物を得た:δH (CDCl3) 2.79 (s, 3H), 4.22 (s, 2H), 6.59-6.70 (m, 2H), 7.22-7.29 (m, 1H).
【0062】
製造例4:4-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン-1-カルボニトリル
【化11】

2O(70mL)中のNaHCO3(35.2g、0.42mol)のスラリーを、撹拌した3-ピペリジン-4-イルプロパン-1-オール(20.0g、0.14mol)のCH2Cl2溶液に、0℃で加えた。BrCN(17.8g、0.17mol)のCH2Cl2(19mL)溶液を1分かけて反応に加えた後、撹拌を0℃で0.5時間続けた。次に反応を20℃で2時間撹拌してから、飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄した。そのCH2Cl2溶液を乾燥(MgSO4)し、濾過し、減圧下で濃縮することによって得た油状物を、少量のCH2Cl2に溶解し、次にSiO2パッドを通して濾過し、EtOAcで溶出させた。濾液を減圧下で濃縮して標題の化合物を得た:m/z (ES+)=169.1 [M+H]+
【0063】
製造例5:N-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン-1-カルボキサミジン
【化12】

EtOH(20mL)およびH2O(30mL)中の4-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン-1-カルボニトリル(製造例4、3.00g、17.8mmol)、K2CO3(2.46g、17.8mmol)、およびH2NOH・HCl(2.48g、35.7mmol)の混合物を、16時間加熱還流した。EtOHを減圧下で除去した後、水相をEtOAcで抽出した(5回)。次に水相をNaClで飽和させてから、再びEtOAcで抽出した(5回)。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、次に乾燥(MgSO4)し、濾過し、濃縮して、標題の化合物を得た:m/z (ES+)=202.1 [M+H]+
【0064】
製造例6:3-[1-(5-イソプロピル-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル)ピペリジン-4-イル]プロパン-1-オール
【化13】

DIPEA(3.25g、25.2mmol)、N-ヒドロキシ-4-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン-1-カルボキサミジン(製造例5、1.54g、7.6mmol)、およびHOBt(1.29g、8.4mmol)を、撹拌したイソ酪酸(0.67g、7.6mmol)の無水DMF(10mL)溶液に加えた。10分後にEDCI(1.76g、9.2mmol)を加え、次に撹拌を16時間続けた。反応をH2Oで希釈し、次にその混合物をEtOAcで抽出した(2回)。合わせた有機抽出物を飽和NaHCO3水溶液、H2O、およびブラインで洗浄してから、乾燥(MgSO4)した。濾過および溶媒留去によって得た黄色油状物をPhMeで処理した。そこで直ちにその混合物を0.5時間加熱還流した。冷却してから、反応をカラムクロマトグラフィ(IH-EtOAc、2:3)で精製することにより、標題の化合物を得た:m/z (ES+)=254.1 [M+H]+
【0065】
製造例7:3-[1-(3-イソプロピル-[1,2,4]オキサジアゾール-5-イル)ピペリジン-4-イル]プロパン-1-オール
【化14】

ZnCl2(1MのEt2O溶液、145mL、145mmol)を、撹拌した4-(3-ヒドロキシプロピル)ピペリジン-1-カルボニトリル(製造例4、20.3g、121mmol)およびN-ヒドロキシイソブチルアミジン(14.8g、145mmol)のEtOAc(290mL)およびTHF(270mL)溶液に、20分かけて加えた。2時間後に、形成した白色沈殿物を集め、THF-EtOAc(1:1、50mL)で洗浄した。この沈殿物をEtOH(550mL)および12M HCl(70mL)に溶解し、次にその溶液を70℃に加熱しながら16時間撹拌した。EtOHを減圧下で除去し、残留物をH2Oで希釈してから、固形NaHCO3でpHを7に調節した。その混合物をEtOAcで抽出し(3回)、次に合わせた抽出物をブラインで洗浄してから、乾燥(MgSO4)した。濾過および溶媒除去により標題の化合物を得た:m/z (ES+)=254.1 [M+H]+
【0066】
製造例8:tert-ブチル 4-((E)-2-カルボキシ-1-メチルビニル)ピペリジン-1-カルボキシレート
【化15】

tert-ブチル 4-((E)-2-エトキシカルボニル-1-メチルビニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(18.7g、62.9mmol)のMeOH(90mL)およびH2O(25mL)溶液を2M NaOH(94.5mL、189.0mmol)で処理した。反応を16時間撹拌し、MeOHを減圧下で除去した後、残留物をEtOAcとH2Oとに分配した。水層を分離し、12M HClでpH2に酸性化してから、EtOAcで抽出した(2回)。有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濾過し、濃縮し、次に残留物をEtOAc-IHから再結晶することにより、標題の化合物を得た:m/z (ES-)=268.3 [M−H]-
【0067】
製造例9:tert-ブチル 4-((R)-2-カルボキシ-1-メチルエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート
【化16】

tert-ブチル 4-((E)-2-カルボキシ-1-メチルビニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(製造例8、130.0g、0.483mol)をAr雰囲気下の水素化フラスコに入れ、次に脱気したMeOH(400mL)を加えた。[Rh(ノルボルナジエン)2]BF4(1.80g、4.81mmol)および(S)-1-[(R)-2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセニル]エチルビス(2-メチルフェニル)ホスフィン(2.90g、5.08mmol)を、別のシュレンクフラスコにAr下で入れ、次に、脱気したMeOH(200mL)で処理した。この触媒混合物を周囲温度で15分間撹拌した後、導管を通して、水素化フラスコに移した。シュレンクフラスコを、さらなる脱気MeOH(100mL)ですすいだ。これらの洗液を水素化フラスコに移した後、さらなる脱気MeOH(300mL)を加えた。水素化フラスコを密封し、ArをH2で置換し、圧力を1.05バールに設定した。反応混合物を35℃に加熱し、撹拌/振とうを開始した。48時間後に、反応を停止し、反応混合物の代表的試料をHPLCおよび1H NMRで分析した。転化率は100%であり、以下のHPLC法で確認したところ、粗(R)-酸のエナンチオマー純度は98.2%だった:カラム:CHIRALPAK AD-H(先にCF3CO2H含有溶媒を使って使用されたもの)4.6×250mm;溶媒:C614-iPrOH(97:3、定組成);温度:20℃;流量:1mL/分;UV検出(210、230nm);試料:1mL MeOHで溶解した100μL反応溶液。保持時間:(S)-酸:19.3分、(R)-酸:20.6分、出発エン酸:22.1分。単離手法:MeOHを蒸発させた後、粗水素化生成物をt-BuOMeに溶解し、NaOH水溶液で抽出した。水相を1M HClとEtOAcの混合物に加えた。水相をさらにEtOAcで抽出した後、合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)した。濾過および溶媒の完全な除去後に、標題の化合物が単離された。
【0068】
製造例10:tert-ブチル 4-((R)-3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート
【化17】

BH3・THF(1M、15.7mL、15.7mmol)を、撹拌したtert-ブチル 4-((R)-2-カルボキシ-1-メチルエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート(製造例9、1.70g、6.3mmol)の無水THF溶液に、0℃で、5分かけて滴下した。1時間後、反応をEt2Oで処理し、次に2M HClで処理した。有機層をブラインで洗浄してから、乾燥(Na2SO4)した。濾過、溶媒留去、およびカラムクロマトグラフィ(EtOAc-CH2Cl2、1:3)によって、標題の化合物を得た:RT=3.17分;m/z (ES+)=258.1 [M+H]+
【0069】
製造例11:4-((R)-3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)ピペリジン-1-カルボニトリル
【化18】

tert-ブチル 4-((R)-3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)ピペリジン-1-カルボキシレート(製造例10、6.2g、14.9mmol)および4M HCl/ジオキサン溶液(10mL)の混合物を周囲温度で撹拌した。3時間後、溶媒を減圧下で除去することによって、(R)-3-ピペリジン-4-イルブタン-1-オールの塩酸塩を得た:δH ({CD3}2SO) 0.83 (d, 3H), 1.19-1.28 (m, 1H), 1.38-1.59 (m, 5H), 1.64-1.76 (m, 2H), 2.75-2.87 (m, 2H), 3.20-3.30 (m, 2H), 3.35-3.60 (m, 4H)。0℃で撹拌したこの化合物(0.93g、4.8mmol)およびNaHCO3(1.61g、19.2mmol)のCH2Cl2-H2O(4:1、15mL)溶液を、BrCN(0.61g、5.8mmol)のCH2Cl2(2mL)溶液で処理した。反応を20℃で2時間撹拌した後、H2OとCH2Cl2とに分配した。有機相を分離し、乾燥(MgSO4)した。濾過、溶媒留去、およびフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc)によって、標題の化合物を得た:RT=2.45分;m/z (ES+)=183.1 [M+H]+
【0070】
製造例12:(R)-3-[1-(5-イソプロピル-[1,2,4]オキサジアゾール-3-イル)ピペリジン-4-イル]ブタン-1-オール
【化19】

EtOH(10mL)中の4-((R)-3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)ピペリジン-1-カルボニトリル(製造例11、1.00g、5.2mmol)およびNH2OH(50重量%のH2O溶液、0.63mL、10.4mmol)の混合物を、周囲温度で30分間撹拌した。反応を濃縮し、PhMeと共沸(3回)させることによって、粘稠な淡黄色油状物を得た。無水DMF(10mL)中のこの油状物、EDCI(1.20g、6.22mmol)、HOBt(0.77g、5.70mmol)、イソ酪酸(0.50mL、5.44mmol)、およびDIPEA(2.70mL、15.54mmol)の混合物を16時間撹拌した。反応をH2OとEtOAcとに分配した。有機層を飽和NaHCO3水溶液およびブラインで洗浄してから乾燥(MgSO4)し、濾過し、濃縮した。残留物をPhMe中で3時間加熱還流した後、溶媒を減圧下で除去し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc-CH2Cl2、2:3)で精製することにより、標題の化合物を得た:RT=3.20分;m/z (ES+)=268.1 [M+H]+
【0071】
実施例1:4−[3−(3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチルフェノキシ)プロピル]−1−(5−イソプロピル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)ピペリジン
【化20】

DIAD(0.17mL、869μmol)を、3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチルフェノール(製造例3、89mg、416μmol)、3−[1−(5−イソプロピル−[1,2,4]オキサジアゾール−3−イル)−ピペリジン−4−イル]プロパン−1−オール(製造例6、100mg、395μmol)、およびPPh3(155mg、593μmol)の無水THF撹拌溶液(5mL)に0℃で滴下して加えた。添加が終了した際、20℃で2時間撹拌し続け、次いでさらにPPh3(104mg、397μmol)を加えた。さらに1時間撹拌し続け、次いで追加量のPPh3(104mg、397μmol)を再び加えた。0.5時間後、溶媒を減圧留去し、次いで残渣をEtOAcに溶解した。溶液をNaOH(2M)および食塩水で洗浄し、次いで乾燥した(MgSO4)。濾過および溶媒の蒸発によって固形物を得て、それをEt2O−IHと共に勢いよく混合した。不溶性のPPh3Oを集め、次いで濾液を濃縮し、残渣をRP−HPLCで精製して、標題の化合物を得た:δH (CDCl3) 1.26-1.37 (m, 2H), 1.39 (d, 6H), 1.43-1.60 (m, 3H), 1.78-1.90 (m, 4H), 2.82 (s, 3H), 2.86-2.97 (m, 2H), 3.10 (sept, 1H), 3.98-4.06 (m, 4H), 4.26 (s, 2H), 6.72 (dd, 1H), 6.79 (dd, 1H), 7.41 (t, 1H); m/z (ES+) = 440.1 [M + H]+.
【0072】
実施例1で概説したものに類似する方法を用いて、光延反応を通して表1に記載したエーテルを合成した。
【表1】

【0073】
実施例4:1−(3−tert−ブチル−[1,2,4]オキサジアゾール−5−イル)−4−[3−(3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチル−フェノキシ)プロピル]ピペリジン
【化21】

3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチルフェノール(製造例3)を4−(3−ヒドロキシプロピル)ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルと光延縮合させて、4−[3−(3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチルフェノキシ)プロピル]ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルを得た:RT=3.77分;m/z (ES+) = 430.1 [M + H]+.
このカルバメート(100mg、233μmol)および4M HClのジオキサン混合溶液(2.5mL)を1時間撹拌した。溶媒を減圧留去して、白色固形物として、4−[3−(3−フルオロ−4−メタンスルホニルメチルフェノキシ)プロピル]ピペリジンの塩酸塩を得た:RT=2.17分;m/z (ES+) = 330.0 [M + H]+.
この物質を、固体のK2CO3(97mg、700μmol)、無水DMF(1.5mL)、および3−tert−ブチル−5−クロロ−[1,2,4]オキサジアゾール(77mg、477μmol)の無水DMF溶液(1.0mL)で処理した。混合物を周囲温度で5時間勢いよく撹拌し、次いでEt2O(50mL)で希釈した。溶液をH2O(2×5mL)および食塩水(5mL)で洗浄し、次いで乾燥し(Na2SO4)、ショートSiO2プラグを通して濾過した。溶媒の除去、EtOAcからの再結晶、およびIHでトリチュレーションすることによって、標題の化合物を得た:RT=3.84分;m/z (ES+) = 454.1 [M + H]+.
【0074】
本発明の化合物の生物学的活性は以下のアッセイ系で試験することができる。
酵母レポーターアッセイ
酵母細胞に基づくレポーターアッセイが以前に文献に記載されている(例えばMiret J.J.ら, 2002, J. Biol. Chem., 277:6881-6887;Campbell R.M.ら, 1999, Bioorg. Med. Chem. Lett., 9:2413-2418;King K.ら, 1990, Science, 250:121-123);WO 99/14344;WO 00/12704;およびUS 6,100,042)。簡単に述べると、内在性酵母Gアルファ(GPA1)を欠失させ、それが、複数の技法で構築されたGタンパク質キメラで置き換えられるように、酵母細胞が操作された。また、選択した哺乳動物GPCRの異種発現が可能になるように、内在性酵母GPCR、Ste3も欠失させた。酵母では、真核細胞において保存されているフェロモンシグナリング伝達経路(例えばマイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路)の要素が、Fus1の発現を駆動する。β-ガラクトシダーゼ(LacZ)をFus1プロモーター(Fus1p)の制御下に置くことにより、受容体活性化が酵素的読出しにつながる系が開発されている。
【0075】
Agatepらが記載した酢酸リチウム法の変法によって酵母細胞を形質転換した(Agatep, R.ら, 1998「Transformation of Saccharomyces cerevisiae by the lithium acetate/single-stranded carrier DNA/polyethylene glycol (LiAc/ss-DNA/PEG) protocol」Technical Tips Online, Trends Journals, Elsevier)。簡単に述べると、酵母細胞を酵母トリプトンプレート(YT)で一晩成長させた。キャリア一本鎖DNA(10μg)、2つのFus1p-LacZレポータープラスミド(一つはURA選択マーカーを持ち、一つはTRPを持つ)各2μg、酵母発現ベクター(2μg複製起点)中のGPR119(ヒトまたはマウス受容体)2μgおよび酢酸リチウム/ポリエチレングリコール/TEバッファーを、エッペンドルフチューブにピペッティングした。受容体を含有する酵母発現プラスミド/受容体なしの対照は、LEUマーカーを持つ。酵母細胞をこの混合物に接種し、反応を30℃で60分進行させる。次に、酵母細胞に42℃で15分間の熱ショックを与えた。次に細胞を洗浄し、選択プレート上に展開した。選択プレートは合成既知組成酵母培地LEU、URAおよびTRP(SD-LUT)である。30℃で2〜3日培養した後、選択プレート上で成長したコロニーをLacZアッセイで試験した。
【0076】
β-ガラクトシダーゼに関する蛍光測定的酵素アッセイを行うために、ヒトまたはマウスGPR119受容体を保持する酵母細胞を、液体SD-LUT培地中で非飽和濃度まで一晩成長させた(すなわち細胞はまだ分裂しており、定常期には達していなかった)。それらを新鮮な培地で至適アッセイ濃度まで希釈し、96ウェルブラックポリスチレンプレート(Costar)に90μlの酵母細胞を加えた。DMSOに溶解し、10%DMSO溶液に10倍濃度まで希釈した化合物をプレートに加え、そのプレートを30℃に4時間置いた。4時間後に、β-ガラクトシダーゼの基質を各ウェルに加えた。これらの実験では、フルオレセインジ(β-D-ガラクトピラノシド)を使用した(FDG)。これは、蛍光測定による読出しを可能にするフルオレセインを放出する酵素基質である。各ウェル20μlの500μM FDG/2.5%Triton X100を加えた(細胞を透過性にするために界面活性剤が必要だった)。細胞を基質と共に60分間インキュベートした後、反応を停止させ、蛍光シグナルを強化するために、各ウェル20μlの1M炭酸ナトリウムを加えた。次に蛍光計を使ってプレートを485/535nmで読み取った。
【0077】
本発明の化合物は、バックグラウンドシグナル(すなわち、化合物を含まない1%DMSOの存在下で得られるシグナル)の少なくとも約1.5倍という蛍光シグナルの増加をもたらす。少なくとも5倍の増加をもたらす本発明の化合物は好ましいだろう。
【0078】
cAMPアッセイ
組換えヒトGPR119を発現させる安定細胞株を樹立し、この細胞株を使って本発明の化合物がサイクリックAMP(cAMP)の細胞内レベルに及ぼす効果を調べた。細胞単層をリン酸緩衝食塩水で洗浄し、刺激バッファー+1%DMSO中、さまざまな濃度の化合物により、37℃で30分間刺激した。次に細胞を溶解し、Perkin Elmer AlphaScreen(商標)(Amplified Luminescent Proximity Homogeneos Assay)cAMPキットを使って、cAMP含量を決定した。バッファーおよびアッセイ条件は、製造者のプロトコールに記載されているとおりにした。
【0079】
本発明の化合物は細胞内cAMPレベルの濃度依存的増加をもたらし、一般に<10μMのEC50を持っていた。このcAMPアッセイで1μM未満のEC50を示す化合物は好ましいだろう。
【0080】
インビボ給餌試験
本発明の化合物が体重ならびに食物および水の摂取に及ぼす効果を、逆位相の照明で飼育した自由給餌雄スプレーグドーリーラットで調べた。試験化合物および参照化合物を適当な投与経路で(例えば腹腔内にまたは経口的に)投薬し、その後24時間にわたって測定を行った。ラットを、21±4℃の温度および55±20%の湿度で、金属グリッド床を持つポリプロピレンケージに個別に収容した。こぼれた食物を検出するために、ケージパッドが入ったポリプロピレントレーを各ケージの下に置いた。動物を逆位相の明-暗周期(消灯は09:30〜17:30の8時間)で飼育し、その間は室内を赤色光で照明した。2週間の馴化期間中、動物には標準的粉末ラット飼料と水道水を自由に摂取させた。飼料はアルミニウ製の蓋を持つガラス製給餌瓶に入れた。各蓋には、食物を入手できるように3〜4cmの穴が空いていた。暗期の開始時に、動物、給餌瓶および水筒を重量測定した(最も近い0.1gまで)。その後、動物に本発明の化合物を投薬した1、2、4、6および24時間後に、給餌瓶および水筒を計測し、賦形剤処置対照と比較して、ベースラインでの処置群間のいずれの有意差も測定した。
【0081】
選ばれた本発明の化合物は≦100mg/kgの用量で1つ以上の時点で統計的に有意な食欲減退効果を示した。
【0082】
膵β細胞のインビトロモデル(HIT-T15)における本発明化合物の抗糖尿病効果
細胞培養
HIT-T15細胞(継代第60代)をATCCから入手し、10%ウシ胎仔血清および30nM亜セレン酸ナトリウムを補足したRPMI1640培地で培養した。81代を上回る継代数でのこの細胞株の変化した性質が記載されている文献に従い、全ての実験を、継代数が70代未満の細胞で行った(Zhang HJ, Walseth TF, Robertson RP「Insulin secretion and cAMP metabolism in HIT cells. Reciprocal and serial passage-dependent relationships」Diabetes. 1989 Jan;38(1):44-8)。
【0083】
cAMPアッセイ
HIT-T15細胞を96ウェルプレート中の標準的培養培地に100,000細胞/0.1ml/ウェルの密度で播種し、24時間培養した後、培地を捨てた。細胞を100μlの刺激バッファー(ハンクス緩衝塩溶液、5mM HEPES、0.5mM IBMX、0.1%BSA、pH7.4)と共に室温で15分間インキュベートした。これを捨て、0.5%DMSOの存在下、刺激バッファー中、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μMの範囲にわたる化合物希釈液で置き換えた。細胞を室温で30分間インキュベートした。次に、1ウェルあたり75μlの溶解バッファー(5mM HEPES、0.3%Tween-20、0.1%BSA、pH7.4)を加え、プレートを900rpmで20分間振とうした。粒状物を3000rpmで5分間の遠心分離によって除去した後、試料を二つ一組にして384ウェルプレートに移し、Perkin Elmer AlphaScreen cAMPアッセイキットの説明書に従って処理した。簡単に述べると、最終反応液成分の濃度がキットの説明書で述べられている濃度と同じになるように、試料8μl、アクセプタービーズミックス5μlおよび検出ミックス12μlを含有する25μlの反応液を準備した。反応液を室温で150分間インキュベートし、Packard Fusion装置を使って、そのプレートを読み取った。cAMPの測定値を、既知cAMP量(0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000nM)の標準曲線と比較して、読み値を絶対cAMP量に変換した。XLfit3ソフトウェアを使ってデータを解析した。
【0084】
代表的な本発明の化合物は、10μM未満のEC50でcAMPを増加させることがわかった。このcAMPアッセイで1μM未満のEC50を示す化合物は好ましいだろう。
【0085】
インスリン分泌アッセイ
HIT-T15細胞を12ウェルプレート中の標準的培養培地に106細胞/1ml/ウェルの密度で播種し、3日間培養した後、培地を捨てた。細胞を、119mM NaCl、4.74mM KCl、2.54mM CaCl2、1.19mM MgSO4、1.19mM KH2PO4、25mM NaHCO3、10mM HEPES(pH7.4)および0.1%ウシ血清アルブミンを含有する補足クレブス・リンゲルバッファー(KRB)で2回洗浄した。細胞を1mlのKRBと共に37℃で30分間インキュベートしてから、KRBを捨てた。次に、2回目のインキュベーションをKRBと共に30分間行い、それを集めて、各ウェルについての基礎インスリン分泌レベルを測定するために使用した。次に、化合物希釈液(0、0.1、0.3、1、3、10μM)を、5.6mMグルコースを補足したKRB 1ml中、二つ一組のウェルに加えた。37℃で30分間のインキュベーション後に、インスリンレベルを決定するために試料を取り出した。インスリンの測定は、Mercodia RatインスリンELISAキットを製造者の説明書に従って使用し、既知インスリン濃度の標準曲線を使って行った。各ウェルについて、グルコース非存在下でのプレインキュベーションから得た基礎分泌レベルを差し引くことにより、インスリレベルを補正した。XLfit3ソフトウェアを使ってデータを解析した。
【0086】
代表的な本発明の化合物は、10μM未満のEC50でインスリン分泌量を増加させることがわかった。このインスリン分泌アッセイで1μM未満のEC50を示す化合物は好ましいだろう。
【0087】
経口グルコース負荷試験
本発明の化合物が経口グルコース(Glc)耐性に及ぼす効果を雄スプレーグドーリーラットで評価した。Glcを投与する16時間前に食物を断ち、試験中はずっと絶食を維持した。試験中、ラットには水を自由に摂取させた。動物の尾に切開を施し、Glc負荷を投与する60分前の基礎Glcレベルを測定するために、血液(1滴)を採取した。次に、ラットを体重測定して、試験化合物または賦形剤(20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン水溶液)を経口投与し、その45分後に、追加血液試料の採取と、Glc負荷(2g kg-1p.o.)による処置を行った。次に、Gcl投与の5、15、30、60、120、および180分後に、尾の切開端から血液試料を採取した。血中グルコースレベルは、市販のグルコース計(LifescanのOneTouch(登録商標)Ultra(商標))を使って、収集直後に測定した。代表的な本発明の化合物は、≦10mg kg-1の用量で、Glc偏位を統計的に減少させた。
【0088】
本発明の化合物が経口グルコース(Glc)耐性に及ぼす効果を、雄C57Bl/6または雄ob/obマウスでも評価した。Glc投与の5時間前に食物を断ち、試験中はずっと絶食を維持した。試験中、マウスには水を自由に摂取させた。動物の尾に切開を施し、Glc負荷を投与する45分前の基礎Glcレベルを測定するために、血液(20μL)を採取した。次に、マウスを体重測定して、試験化合物または賦形剤(20%ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン水溶液または25%Gelucire 44/14水溶液)を経口投与し、その30分後に、追加血液試料(20μL)の採取と、Glc負荷(2〜5g kg-1p.o.)による処置を行った。次に、Gcl投与の25、50、80、120、および180分後に、血液試料(20μL)を採取した。Glcレベルを測定するための20μLの血液試料は、尾の切開端から使い捨てマイクロピペット(Dade Diagnostics Inc.、プエルトリコ)中に採取し、その試料を480μLの溶血試薬に加えた。次に、希釈溶血血液各20μlを二つ一組にして、96ウェルアッセイプレート中のTrindersグルコース試薬(Sigma酵素(Trinder)比色法)180μLに加えた。混合後、試料を室温で30分間放置してから、Glc標準(Sigmaグルコース/尿素窒素混合標準セット)に対して読み取った。代表的な本発明の化合物は、≦100mg kg-1の用量で、Glc偏位を統計的に減少させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(I)
[式中、
XおよびYの一方はOであり、他方はNであり;
1は-CH2-SO25であり;
2は水素、ハロまたはメチルであり;
3は水素またはメチルであり;
4はC2-5アルキルであり;並びに
5はC1-3アルキルである]
の化合物、またはその医薬的に許容される塩。
【請求項2】
XがOである、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項3】
YがOである、請求項1に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項4】
1が-CH2-SO2CH3である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項5】
2が水素、フルオロまたはメチルである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項6】
2がフルオロである、請求項5に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項7】
3が水素である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項8】
3がメチルである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項9】
3がメチルであり、生成する立体中心が(R)-立体配置を持つ、請求項8に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項10】
4がC3-4アルキルである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項11】
4がn-プロピル、イソプロピル、またはtert-ブチルである、請求項10に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項12】
4がC3アルキルである、請求項11に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項13】
4がイソプロピルである、請求項12に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項14】
実施例1〜4のいずれか一つに定義した式(I)の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項16】
GPR119が関与している疾患または症状を処置するための方法であって、有効量の請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩をその必要がある対象に投与する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
飽満感を調節するための方法であって、有効量の請求項1〜14いずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩をその必要がある対象に投与する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
肥満を処置するための方法であって、有効量の請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩をその必要がある対象に投与する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
糖尿病を処置するための方法であって、有効量の請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩をその必要がある対象に投与する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
メタボリック症候群(症候群X)、耐糖能異常、高脂質血症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、低HDLレベルまたは高血圧を処置するための方法であって、有効量の請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩をその必要がある患者に投与する段階を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
医薬品として使用するための請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項22】
請求項16〜20のいずれか一項で定義した疾患または症状を処置または防止するための医薬品の製造において使用するための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項23】
請求項16〜20のいずれか一項で定義した疾患または症状の処置または防止に使用するための、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物またはその医薬的に許容される塩。

【公表番号】特表2010−514830(P2010−514830A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544449(P2009−544449)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050012
【国際公開番号】WO2008/081206
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(504326837)プロシディオン・リミテッド (53)
【氏名又は名称原語表記】Prosidion Limited
【Fターム(参考)】