説明

ピリドピリミジノンの経口用固体製剤

(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその塩、界面活性剤および酸からなる経口投与用固体医薬製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの経口用固体製剤、ならびにそれを用いる治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンは、式(I):
【0003】
【化1】

を有し、米国特許出願公開第2007/0123546号に記載されており、これは、癌および熱ショックタンパク質90(hsp90)に関連する他の障害を治療するなどの(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの重要な薬理学的特性を開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの経口用製剤を対象とする。本発明の好適な実施形態は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンのカプセル剤および錠剤の製剤を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】小粒子の形態の(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オン、および界面活性剤または酸を含まない製剤(四角のデータポイント)と比較した本発明の(pH2の溶解媒体における)溶解プロファイル(三角のデータポイント)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンは、非常に溶解性の低い化合物である。pH3超の水性媒体において、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンは、非常に溶解性が低い。1という低いpHであっても、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの溶解速度は遅すぎる。本発明者らは、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンが界面活性剤または酸の存在下にある場合、溶解性が低い問題および溶解速度が遅い問題が克服され、その結果(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンが水溶液に可溶になり、予想外に速く高い溶解速度がもたらされることを発見した。
【0007】
したがって、溶解性および溶解速度が向上することによって、本発明の剤形は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンのバイオアベイラビリティーを増加させ、溶解性が低い活性薬剤の投与の望ましくない特徴、例えば、食物の影響を低減するだけでなく、患者のコンプライアンスを向上させることができる。本発明の製剤はまた、室温保管の際に安定であることがわかった。
【0008】
小粒子の(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンは、約10nmから約40ミクロンの粒径中央値を有する微粉化形態またはナノ形態で存在するのが好ましい。微粉化形態で存在する場合、有効な粒径中央値の範囲には、約0.5から約40ミクロン、約0.5から約20ミクロン、約0.5から約20ミクロン、好ましくは約0.5から約5ミクロン、より好ましくは約1から約4ミクロンが含まれる。微粉化は、流体エネルギー粉砕機またはジェットミルなどの一般的な機器を用いて、すりつぶすことおよび粉砕することなどの既知の任意の方法によって達成できる。
【0009】
ナノ形態で存在する場合、有効な小粒子の範囲には、約5から約1000ナノメートル、約10から約100ナノメートル、約10から約50ナノメートルが含まれる。ナノサイズの小粒子の形態は、ビーズを備えたナノミルを含むナノミルなど、従来の機器を用いた従来の手段によって、またはナノサイズの活性成分を微結晶性セルロースなどの賦形剤に噴霧乾燥することによって形成することができる。ナノサイズの活性成分は、界面活性剤およびまたは酸性化剤であり得る可溶化賦形剤、あるいはポリマー、脂質の賦形剤、油であり得る溶解性促進賦形剤を含む活性を噴霧乾燥することによっても得られると考えられる。
【0010】
小粒子および小粒子でない形態の(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンは、結晶質もしくは非晶質の形態、またはそれらの混合物として存在してもよい。(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの塩の形態としては、HCl、トシン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、エタンスルホン酸、アスパラギン酸、マレイン酸およびHSOが挙げられる。
【0011】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、本発明の(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの、毒性のない酸またはアルカリ土類金属の塩を指す。こうした塩は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの最後の単離および精製の過程においてその場で、または塩基または酸官能基をそれぞれ適切な有機もしくは無機酸または塩基と別々に反応させることによって調製することができる。代表的な塩としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、胆汁酸塩(bile salt)、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナプタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、くし状の、過硫酸塩、3−フェニルプロイオネート、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩。また、メチル、エチル、プロピルおよびブチルの塩化物、臭化物ならびにヨウ化物などのアルキルハロゲン化物;ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルの硫酸塩のようなジアルキル硫酸塩、デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物ならびにヨウ化物などの長鎖のハロゲン化物、ベンジルおよびフェネチルの臭化物のようなアラルキルハロゲン化物ならびにその他のものなどの薬剤と塩基性窒素含有基が四級化されてもよい。これにより、水もしくは油溶性または分散性の生成物が得られる。
【0012】
薬学的に許容される酸付加塩を形成するために利用できる酸の例としては、塩酸、硫酸およびリン酸などの無機酸ならびにシュウ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、コハク酸およびクエン酸などの有機酸が挙げられる。塩基性付加塩は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの最後の単離および精製の過程においてその場で、あるいは別々にカルボン酸部分を薬学的に許容される金属カチオンの水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩などの適切な塩基と、またはアンモニアまたは一級、二級もしくは三級有機アミンと反応させることによって調製することができる。薬学的に許容される塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムの塩および同種のものなどのアルカリ金属およびアルカリ土類金属ベースのカチオンならびに;以下に限定されるものではないがアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミンおよび同種のものなど、毒性のないアンモニウム、四級アンモニウムおよびアミンのカチオンが挙げられるが、それらに限定されるものではない。塩基付加塩を形成するのに有用な他の代表的な有機アミンとしては、ジエチルアアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンおよび同種のものが挙げられる。
【0013】
本発明による製剤は、医薬製剤、特に経口投与用の医薬製剤に通常使用される薬学的に許容される賦形剤を含有してもよい。
【0014】
本発明による好適な実施形態において、製剤は、経口投与用固体製剤の形態であってもよく、これは、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその塩と、界面活性剤もしくは酸と;または界面活性剤および酸の両方とを、任意で1つまたは複数の追加の賦形剤とともに含む。追加の賦形剤の例としては、崩壊剤もしくはスーパー崩壊剤、フィラー、流動促進剤(glidant)または滑沢剤が挙げられる。(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンは、小粒子の形態であってもよい。
【0015】
本発明に適した界面活性剤としては、ビタミンE TPGS、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸型のアニオン性界面活性剤、例えば、n−ドデシル硫酸、n−テトラデシル硫酸、n−ヘキサデシル硫酸もしくはn−オクタデシル硫酸のナトリウム、カリウムもしくはマグネシウム、アルキルエーテル硫酸型のアニオン性界面活性剤、例えば、n−ドデシルオキシエチル硫酸、n−テトラデシルオキシエチル硫酸、n−ヘキサデシルオキシエチル硫酸もしくはn−オクタデシルオキシエチル硫酸のナトリウム、カリウムもしくはマグネシウム、またはアルカンスルホン酸型のアニオン性界面活性剤、例えば、n−ドデカンスルホン酸、n−テトラデカンスルホン酸、n−ヘキサデカンスルホン酸もしくはn−オクタデカンスルホン酸のナトリウム、カリウムもしくはマグネシウム、あるいはポリヒドロキシアルコール脂肪酸エステル型の非イオン性の界面活性剤、例えば、モノラウリン酸、モノオレイン酸、モノステアリン酸もしくはモノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸もしくはトリオレイン酸ソルビタン、ポリヒドロキシアルコール脂肪酸エステルのポリオキシエチレン付加物、例えば、モノラウリン酸、モノオレイン酸、モノステアリン酸、モノパルミチン酸、トリステアリン酸もしくはトリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチル、ステアリン酸ポリエチレングリコール400、ステアリン酸ポリエチレングリコール2000、特にPLURONICS(BWC)またはSYNPERONIC(ICI)型のエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックポリマーが挙げられる。
【0016】
ビタミンE TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸エステル)は普通は、室温においてろう状の物質であり、処理するのが難しいが、凍結し、その後、粉砕することによって微粒子の形態にすることができ、これによりビタミンE TPGSを直接混合することができる。直接混合する処理は、ビタミンE TPGSなどの賦形剤および活性成分、この場合は(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの乾式処理を含むものである。乾式処理とは、賦形剤が乾燥状態で処理され、融解しておらず、さらに、固溶体または固体分散体を形成しないことを意味する。ビタミンE TPGSは、凍結および粉砕することによって直接混合することができ、処理がより容易に行え、組成物中に最大で約20%、約25%、または約35%、または約40%、または50%未満(w/w)の量で存在することができる。乾式処理されたビタミンE TPGSは、本発明では動力付きまたは微粒子の形態で存在する。
【0017】
本発明のための界面活性剤は、製剤中に組成物の約0.5%から約95%、約1%から約85%、約5%から約75%(w/w)として存在することができる。さらに、界面活性剤を約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%および約45%含む組成物が想定される。
【0018】
本発明とともに用いる酸としては、コハク酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フタル酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナプタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、酪酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、ソルビン酸、グリコール酸、グルコロニック酸、フマル酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、シュウ酸、フェニル酢酸、サリシクリック酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、吉草酸またはアスコルビン酸などの有機酸、およびメタクリル酸コポリマー、EUDRAGIT E PO、EUDRAGIT L100−55、EUDRAGIT L−30 D−55、EUDRAGIT FS 30 D、EUDRAGIT NE 30 D、EUDRAGIT L100、EUDRAGIT S100などのポリマー酸、ポリアミノ酸(例えば、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸およびそれらの組合せ)、ポリ核酸、ポリアクリル酸、ポリガラクツロン酸、およびポリ硫酸ビニルまたはポリマーのポリグルタミン酸もしくはポリアスパラギン酸などのアニオン性アミノ酸を含めて、任意の薬学的に許容される酸が挙げられる。本発明を説明する目的のために、有機酸はポリマー酸を含むと理解される。酸は、塩酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ボロン酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、硝酸またはスルホン酸などの無機酸も含むことができる。酸は、バッファーとして存在してもよい。
【0019】
本発明のための酸は、製剤中に組成物の約2%から約80%、約2%から約60%、約5%から約40%(w/w)として存在することができる。さらに、酸を約10%、約20%、約25%、約35%、約40%および約45%含む組成物が想定される。
【0020】
本発明とともに用いる崩壊剤としては、デンプン、アルギン酸またはアンバーライト樹脂などの従来の崩壊剤を挙げることができ、クロスポビドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよび大豆多糖類などのスーパー崩壊剤も含まれる。「スーパー崩壊剤」という用語は、当該分野において周知の用語であり、デンプンと比較してより低濃度、一般に2から4%w/wで有効な崩壊剤を意味する。
【0021】
本発明とともに用いる流動促進剤としては、コロイド状の二酸化ケイ素(ヒュームドシリカ)およびタルクなどの二酸化ケイ素が挙げられる。
【0022】
本発明とともに用いることができる滑沢剤の例は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、硬化植物油、グリセリルベヘネト、フマル酸ステアリルナトリウム、PEG 4000/6000、ラウリル硫酸ナトリウム、イソロイシン、安息香酸ナトリウムまたはヒュームドシリカである。
【0023】
タルク、二酸化ケイ素、例えば、SYLOIDタイプ(Grace)の合成の非晶質無水ケイ酸、例えば、SYLOID 244 FP、例えば、AVICEL PH101、102、105、RC581もしくはRC591などのAVICELタイプ(FMC社)、EMCOCELタイプ(Mendell社)もしくはELCEMAタイプ(Degussa)の微結晶性セルロース(MCC);炭水化物、例えば、スクロース、ラクトース、デキストロース、サッカロース、グルコース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン、小麦デンプンまたはアミロペクチンなどの糖、糖アルコール、デンプンまたはデンプン誘導体、リン酸三カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウムあるいは三ケイ酸マグネシウムなどのフィラーが本発明とともに使用できる。
【0024】
本発明とともに用いることができる適切な結合剤としては、ゼラチン、トラガカント、寒天、アルギン酸、セルロースエーテル、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコールまたはエチレンオキシドホモポリマー、特におよそ2.0×10から1.0×10の重合度および約1.0×10から5.0×10の概算分子量を有し、例えば、名称POLYOX(Union Carbide)として知られている賦形剤、特におよそ1000の平均分子量およびおよそ500から2500の重合度を有するポリビニルピロリドンまたはポビドン、ならびにさらに寒天またはゼラチンが挙げられる。
【0025】
本発明の製剤は、直接混合、直接圧縮、造粒、溶媒造粒(solvent granulation)、湿式造粒、流動層造粒、(加熱)溶融造粒、乾式造粒、ローラー圧縮、スラッグ打錠(slugging)、凍結乾燥打錠(freeze dried tabletting)、湿式または乾式粒状化(wet or dry aggregation)、ならびに押出球形化(extrusion and spheronization)などの一般的な処理を用いて製造することができる。
【0026】
一実施形態において、本発明は、硬ゼラチンカプセル剤または弾性のある軟カプセル剤などのカプセル剤として製剤化される。あるいは、本発明は、錠剤または丸剤の形態である。こうした経口用固体製剤では、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの量は、1〜500mg、2.5〜250mgまたは2.5〜100mgの範囲で存在してもよく、これには、1mg、2.5mg、5mg、10mg、20mg、25mg、50mg、100mgおよび200mgなどの好適な例が含まれる。
【0027】
本発明の経口用固体製剤は、乳房、卵巣、前立腺、慢性骨髄性白血病(CML)、メラノーマ、消化管間質性腫瘍(GIST)、マスター細胞白血病、精巣腫瘍、急性骨髄性白血病、胃腫瘍、肺、頭部、頚部、膠芽腫、結腸、甲状腺、胃、肝臓、多発性骨髄腫、腎臓およびリンパ腫などの癌および癌腫瘍を含む、hsp90の抑制に関連する疾患を治療するために投与することができる。
【0028】
本発明の製剤において、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの正確な投与レジメンは、患者の状態および要件を考慮して当業者が決定することができる。例えば、本発明は、毎日、1日おき、または週1回の投与が考えられる。
【0029】
以下の実施例により本発明を例示する。
【実施例1】
【0030】
下の表1は、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンを2.5mgおよび20mg含むカプセル剤を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンを微粉化し、#25のふるいでふるいにかけ、約2ミクロンのD平均粒径にした。これは、レーザー光回折で以下の結果を得た:D(10)0.78μm、D(50)2.18μmおよびD(90)3.95μm。微粉化(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンを次いでふるいにかけ、コハク酸および微結晶性セルロースのA部(50%)とともに混合容器に添加した。混合容器の内容物を、150回転で混合し、#40のふるいにかけ、それを、AEROSIL 200、クロスポビドンおよび微結晶性セルロースの残った他のB部(50%)のふるい済み(#40のふるい)混合物と合わせた。この組合せを250回転で混合し、#40のふるいでふるいにかけ、次に、最初に凍結し次いで粉砕した、ビタミンE TPGS(Fitz millを使用したふるいNo.0063)と#30メッシュを通したステアリン酸マグネシウムとの混合物と合わせて最終組合せを形成した。次にこれをともに150回転で混合し、カプセル化装置を用いて硬ゼラチンカプセルに封入した。
【実施例2】
【0033】
上記表1に従って微粉化(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンの調製物50mgを調製し、次に逆相HPLCでアッセイして溶解した活性薬剤の割合を決定した。グラジエントクロマトグラフィ条件を用いた。移動相Aは、リン酸によって緩衝される0.01Mのリン酸アンモニウム水溶液90%、pH6.3およびアセトニトリル10%とした。移動相Bは、アセトニトリル100%とした。10マイクロリットルのアッセイ溶液を注入した。ランタイムを5分、カラム温度を40℃、検出波長を268nmとした。結果を三角のデータポイントとして図1に示している。10分以内に、50%超の(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンが溶解した。
【実施例3】
【0034】
実施例1に基づく製剤をイヌに投与した。絶食したイヌのAUC値(時間×ng/mL)は7420であり、Tmaxは1.8であった。これを0.5%のメチルセルロース懸濁液の投与と順調に比較した。これは、絶食したイヌについては、AUCが3760およびTmaxが2であり、餌を与えたイヌについてはAUCが10400およびTmaxが4であった。
【実施例4】
【0035】
実施例1に基づく製剤をヒト患者に2.5mgおよび5mgの濃度で投与した。製剤による有毒作用は観察されなかった。この投薬は、血漿中濃度と時間の間に望ましい直線的相関を示した。最大血漿中濃度は、3時間で生じた。体からの消失半減期(T1/2)は、14.8から45.3時間であった。
【0036】
[比較例1]
【0037】
【表2】

【0038】
上記表2の重量百分率に従って、(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オン、微結晶性セルロース、ポビドンおよびクロスポビドンをともに混合機で混合して、次いで乳棒と乳鉢ですりつぶして確実に均一にした。その後、混合物にステアリン酸マグネシウムおよびAEROSILを添加し、10分間混合した。次に、上記実施例2に従ってサンプルをアッセイした。50%の活性は、溶液に曝露してからおよそ30分までは溶解しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその薬学的に許容される塩と、
(b)界面活性剤、または
(c)酸の少なくとも1つと
を含む医薬製剤であって、
前記医薬製剤は、経口用固体剤形であり、前記(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその塩は、約10nmから約40ミクロンの粒径中央値を有する小粒子の形態であることが可能であり、
但し、前記界面活性剤は、ビタミンE TPGSである場合、直接混合によって処理される、
前記医薬製剤。
【請求項2】
前記界面活性剤が、ビタミンE TPGS、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アニオン性界面活性剤、ナトリウム、n−ドデシル硫酸カリウム、n−ドデシル硫酸マグネシウム、n−テトラデシル硫酸、n−ヘキサデシル硫酸、n−オクタデシル硫酸、アルキルエーテル硫酸、n−ドデシルオキシエチル硫酸ナトリウム、n−ドデシルオキシエチル硫酸カリウム、n−ドデシルオキシエチル硫酸マグネシウム、n−テトラデシルオキシエチル硫酸、n−ヘキサデシルオキシエチル硫酸、n−オクタデシルオキシエチル硫酸、アルカンスルホン酸、n−ドデカンスルホン酸ナトリウム、n−ドデカンスルホン酸カリウム、n−ドデカンスルホン酸マグネシウム、n−テトラデカンスルホン酸、n−ヘキサデカンスルホン酸、n−オクタデカンスルホン酸、非イオン性のポリヒドロキシアルコール脂肪酸エステル界面活性剤、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリヒドロキシアルコールエステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチル、ステアリン酸ポリエチレングリコール400、ステアリン酸ポリエチレングリコール2000、エチレンオキシドブロックポリマーまたはプロピレンオキシドブロックポリマーである、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記界面活性剤が、ビタミンE TPGS、ポリソルベート80またはラウリル硫酸ナトリウムである、請求項2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記界面活性剤が、ビタミンE TPGSである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸が有機酸である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項6】
前記有機酸が、コハク酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、フタル酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナプタレンスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、酪酸、ヒドロキシマレイン酸、マロン酸、ソルビン酸、グリコール酸、グルコロニック酸、フマル酸、粘液酸、グルコン酸、安息香酸、シュウ酸、フェニル酢酸、サリシクリック酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、吉草酸、アスコルビン酸、ポリマー酸、メタクリル酸コポリマー、ポリアミノ酸、ポリ核酸、ポリアクリル酸、ポリガラクツロン酸、ポリ硫酸ビニル、アニオン性アミノ酸、ポリマーのポリグルタミン酸またはポリアスパラギン酸である、請求項5に記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記有機酸がコハク酸である、請求項6に記載の医薬製剤。
【請求項8】
(a)(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその薬学的に許容される塩と、
(b)界面活性剤と、
(c)酸と
を含む医薬製剤であって、
前記医薬製剤は、経口用固体剤形であり、前記(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその塩は、約10nmから約40ミクロンの粒径中央値を有する小粒子の形態であることが可能であり、
但し、前記界面活性剤は、ビタミンE TPGSである場合、直接混合によって処理される、
前記医薬製剤。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ビタミンE TPGS、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アニオン性界面活性剤、ナトリウム、n−ドデシル硫酸カリウム、n−ドデシル硫酸マグネシウム、n−テトラデシル硫酸、n−ヘキサデシル硫酸、n−オクタデシル硫酸、アルキルエーテル硫酸、n−ドデシルオキシエチル硫酸ナトリウム、n−ドデシルオキシエチル硫酸カリウム、n−ドデシルオキシエチル硫酸マグネシウム、n−テトラデシルオキシエチル硫酸、n−ヘキサデシルオキシエチル硫酸、n−オクタデシルオキシエチル、アルカンスルホン酸、n−ドデカンスルホン酸ナトリウム、n−ドデカンスルホン酸カリウム、n−ドデカンスルホン酸マグネシウム、n−テトラデカンスルホン酸、n−ヘキサデカンスルホン酸、n−オクタデカンスルホン酸、非イオン性のポリヒドロキシアルコール脂肪酸エステル界面活性剤、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン脂肪酸、ポリヒドロキシアルコールエステル、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチル、ステアリン酸ポリエチレングリコール400、ステアリン酸ポリエチレングリコール2000、エチレンオキシドブロックポリマーまたはプロピレンオキシドブロックポリマーである、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記界面活性剤が、ビタミンE TPGSである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤が、ビタミンE TPGSであり、前記小粒子の形態の(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその塩の粒径中央値は、約10nmから約40ミクロンである、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
(R)−2−アミノ−7−[4−フルオロ−2−(6−メトキシ−ピリジン−2−イル)−フェニル]−4−メチル−7,8−ジヒドロ−6H−ピリド[4,3−d]ピリミジン−5−オンまたはその塩の粒径中央値が、約0.5から約40ミクロンであり、スーパー崩壊剤をさらに含む、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
崩壊剤またはスーパー崩壊剤をさらに含む、請求項1または8に記載の医薬製剤。
【請求項14】
(a)微粉化医薬薬剤と、
(b)ビタミンE TPGSと、
(c)有機酸と
を含む医薬製剤。
【請求項15】
前記有機酸がコハク酸である、請求項14に記載の医薬製剤。

【図1】
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【公表番号】特表2012−516346(P2012−516346A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548279(P2011−548279)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022335
【国際公開番号】WO2010/088336
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】