説明

ピロリジニウム塩の調製方法

塩または両性イオンの形態の式(I)の化合物[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10アリールであり、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]の2ステップ調製方法。この方法は、ジアステレオ異性体の相対的比率の変動を最小限度に抑える。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロリジニウム化合物、および医薬としてのそれらの使用、特に、臭化グリコピロニウム(glycopyrronium bromide)および類似体の工業的規模の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臭化グリコピロニウムは、3−[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミド、またはグリコピロレート(glycopyrrolate)としても知られており、現在、麻酔中の分泌を減らすために注射によって投与される、および/または胃潰瘍を治療するために経口服用される、抗ムスカリン剤である。
【0003】
それは次の化学構造を有する。
【0004】
【化1】

【0005】
米国特許第2956062号は、α−シクロペンチルマンデル酸1−メチル−3−ピロリジルが、α−シクロペンチルマンデル酸メチルから調製できること、および、臭化メチル第4級塩が、α−シクロペンチルマンデル酸1−メチル−3−ピロリジルの無水酢酸エチル溶液を臭化メチルで飽和させ、放置すると現れる固体結晶を濾過することによって調製できることを開示する。
【0006】
α−シクロペンチルマンデル酸1−メチル−3−ピロリジルを調製するための米国特許第2956062号の方法は、金属ナトリウムの作用下でグリコール酸メチルをアミノアルコールでエステル交換して、グリコール酸エステル中間体を得ることを含む。金属ナトリウムは非常に反応性が高いので、商業生産のために工業的規模でそれを使用することを望ましくなくする、健康上および安全上の危険を有する。
【0007】
米国特許第2956062号の方法は、前ステップにおいてメチルエステルを調製すること、および、後のステップにおいてアミノエステルをアルキル化して、所望の第4級アンモニウム塩を生成することを必要とする。
【0008】
米国特許第2956062号の方法は、ジアステレオ異性体の混合物を与える。ジアステレオ異性体の相対的比率は、バッチ間で大きく変わり得る。この変動は、臭化グリコピロニウムから乾燥粉末製剤を調製するときに、驚くべき相違を生じさせることがあり、これは、医薬として用いるために、このような乾燥粉末を製剤化する時に問題を生じさせ得る。
【0009】
米国特許出願第2007/0123557号は、1−(アルコキシカルボニルメチル)−1−メチルピロリジル抗コリン作用エステルを開示する。それは、ブロモ酢酸と反応して所望のエステルを与える純粋な(R)−立体異性体化合物を得るために、(R)−シクロペンチルマンデル酸と、(R,S)−1−メチル−ピロリジン−3−オールとのMitsunobu条件下のカップリングを記載する。しかし、Mitsunobu反応に用いられる化学物質(通常、アゾジカルボン酸ジアルキルおよびトリフェニルホスフィン)は、商業生産のために工業的規模でそれらを使用することを望ましくなくする健康、安全および環境上の危険をもたらすことに留意されたい。それらはまた、一般に、供給するにはあまりに高価であり、商業生産に用いるにはあまりに労力を要する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、知られている方法において認められる前述の問題に取り組む、または、それに対する有用な代替を少なくとも提供する、臭化グリコピロニウムの調製方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様において、塩または両性イオンの形態の式I
【0012】
【化2】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物の調製方法であって、
(a)式II
【0013】
【化3】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩を、式III
【0014】
【化4】

[式中、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物またはそのエステル形成性誘導体と反応させて、式IV
【0015】
【化5】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物を生成するステップ;および
(b)式IV[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]の化合物を、式V
X−R (V)
[式中、Rは、C〜C−アルキルであり、Xは、脱離基である]
の化合物と反応させて、塩または両性イオンの形態の式I[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]の化合物を生成するステップ
を含む方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ステップ(a)は、適切には、カップリング剤、例えば、カルボニルジイミダゾールの存在下で実施される。
【0017】
第2の態様において、本発明は、塩または両性イオンの形態の式I
【0018】
【化6】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物の吸入可能な乾燥粉末製剤の調製方法を提供し、
この方法は、
(i)式II
【0019】
【化7】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩を、式III
【0020】
【化8】

[式中、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物またはそのエステル形成性誘導体と反応させて、式IV
【0021】
【化9】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物を生成するステップ;
(ii)式IV[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]の化合物を、式V
X−R (V)
[式中、Rは、C〜C−アルキルであり、Xは、脱離基である]
の化合物と反応させて、塩または両性イオンの形態の式I[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]の化合物を含む薬剤物質を生成するステップ;
(iii)場合により、結晶化によって薬剤物質を精製して精製された薬剤物質を供給するステップ;
(iv)薬剤物質を微粉化するステップ;および
(v)担体粒子を混合して、吸入可能な乾燥粉末を得るステップ
を含む。
【0022】
好ましい実施形態において、担体粒子は、結晶糖、特に、ラクトース一水和物または無水ラクトースである。
【0023】
好ましい実施形態において、結晶のグリコピロレートは、力制御剤(force control agent)と共に微粉化される。力制御剤は、好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。
【0024】
用語
本明細書において用いられる用語は次の意味を有する。
本明細書において用いられる場合、「C〜C−アルキル」は、1から8個の炭素原子を有する直鎖または分岐C〜C−アルキルを表し、これは、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、直鎖もしくは分岐ペンチル、直鎖もしくは分岐ヘキシル、直鎖もしくは分岐ヘプチル、または直鎖もしくは分岐オクチルであり得る。「C〜C−アルキル」は、適切には、C〜C−アルキル、特にメチルである。
【0025】
本明細書において用いられる場合、「C〜C−シクロアルキル」は、3から8個の炭素原子を有するシクロアルキルを表し、これは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、シクロへプチル、ビシクロへプチル、シクロオクチルおよびビシクロオクチルであり得る。「C〜C−シクロアルキル」は、適切には、「C〜C−シクロアルキル」、特にシクロプロピルである。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「C〜C10−アリール」は、6から10個の環炭素原子を有する芳香族基を表す。C〜C10−アリール基の例には、これらに限らないが、フェニル、インダニル、インデニルおよびナフチルが含まれる。「C〜C10−アリール」は、適切には、フェニルである。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「脱離基」は、ヘテロリシス結合開裂において電子対をもって離れる化学基を表す。脱離基は多くの形態を取り得ることが、当技術分野においてよく知られており、したがって、この用語は、前述の機能を果たす任意の化学基を包含するものとする。脱離基は、陰イオンまたは中性分子であり得る。一般的な陰イオン脱離基は、Cl、Br、およびIのようなハロゲン化物、ならびに、パラ−トルエンスルホネート、または「トシレート」(TsO)のようなスルホネートエステルエステルであり得る。一般的な中性分子脱離基は、水、アンモニア、およびアルコールである。本発明の方法において、脱離基は、陰イオン脱離基、例えば、Cl、Br、またはI、特にBrである。
【0028】
本明細書で用いられる場合、「塩」は、本発明の化合物の酸付加塩または塩基付加塩を表す。「塩」は、特に、「薬学的に許容される塩」を含む。用語「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の生物学的効果および特性を保持する塩を表し、これらは、通常、生物学的に、または他の点でも、望ましくないものではない。多くの場合、本発明の化合物は、アミノ基および/またはカルボキシル基、あるいはこれらに似た基の存在のおかげで、酸塩および/または塩基塩を生成することが可能である。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸および有機酸により生成させることができ、例えば、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物塩/臭化水素酸塩、炭酸水素塩/炭酸塩、硫酸水素塩/硫酸塩、カンファースルホン酸塩、塩化物塩/塩酸塩、クロロテオフィリン塩、クエン酸塩、エタンジスルホン酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、馬尿酸塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフトエ酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オクタデカン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、トシレート、およびトリフルオロ酢酸塩であり得る。塩を誘導できる無機酸には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが含まれる。塩を誘導できる有機酸には、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸などが含まれる。薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基により生成させることができる。塩を誘導できる無機塩基には、例えば、アンモニウム塩、および、周期表のIからXII族からの金属が含まれる。特定の実施形態において、塩は、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銀、亜鉛、および銅から誘導され、特に適切な塩には、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、およびマグネシウム塩が含まれる。塩を誘導できる有機塩基には、例えば、第1級、第2級、および第3級アミン、天然に産する置換アミンを含めての置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂などが含まれる。特定の有機アミンには、イソプロピルアミン、ベンザチン、コリネート(cholinate)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、リシン、メグルミン、ピペラジン、およびトロメタミンが含まれる。本発明の薬学的に許容される塩は、親化合物、塩基または酸部分から、従来の化学的方法によって合成できる。通常、このような塩は、遊離酸の形態のこれらの化合物と、化学量論的な量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg、もしくはKの水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩など)とを反応させることによって、または、遊離塩基の形態のこれらの化合物と、化学量論的な量の適切な酸とを反応させることによって、調製できる。このような反応は、通常、水または有機溶媒中で、あるいはこれら2種の混合物中で実施される。通常、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルのような非水媒体の使用が、実施可能である場合、望ましい。式Iの化合物は、最も適切には、臭化物塩である。
【0029】
本明細書で用いられる場合、「両性イオン」は、同一分子内に塩基性基と酸性基の両方が存在する場合に生成される内部塩を表す。例えば、式Iの化合物は、第4級アンモニウム原子と共に両性イオンとして存在できる酸性カルボキシル基を含む。
【0030】
本明細書および後に続く特許請求の範囲の全体を通して、前後関係から別のことが要求されるのでなければ、用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含んでいる(comprising)」のような変異形は、記載されている整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループを包含することを意味するが、他のどのような整数もしくはステップ、または整数もしくはステップのグループを排除することを意味しないと理解されている。
【0031】
本発明は、塩または両性イオンの形態の式I
【0032】
【化10】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物の調製方法を提供する。
【0033】
式Iの最も好ましい化合物は、次の化学構造を有する臭化グリコピロニウムまたはグリコピロレートである。
【0034】
【化11】

【0035】
臭化グリコピロニウムは、2つの立体中心を有し、そのため、4つの異性体または立体異性体として、すなわち、(3R,2’R)−、(3S,2’R)−、(3R,2’S)−、および(3S,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドとして存在する。
【0036】
方法は、1つの反応容器で、すなわちワンポット法で実施され得る、式Iの化合物、特に臭化グリコピロニウムを調製するための2ステップ方法である。
【0037】
本発明の方法の第1ステップ(a)において、式II
【0038】
【化12】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩が、式III
【0039】
【化13】

[式中、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物またはそのエステル形成性誘導体と反応して、式IV
【0040】
【化14】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物を生成する。
【0041】
前記反応は、ヒドロキシ化合物またはその塩(例えば、ナトリウム塩)と、カルボン酸またはそれらのエステル形成性誘導体(例えば、酸ハロゲン化物)とを反応させるための、知られている手順を用いて、または実施例において後に記載されるものと同様にして、実施され得る。反応は、有機溶媒中で、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)またはトルエン中で、カップリング剤、例えば、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)の存在下で、好ましくは不活性雰囲気中で、例えばアルゴンの下で、都合よく実施される。適切な反応温度は、0℃から100℃、好ましくは30℃から80℃、特に約60℃である。
【0042】
カップリング剤が、1,1’−カルボニルジイミダゾールである場合、活性中間体は、式IIa
【0043】
【化15】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩である。好ましい実施形態において、RおよびRは、それぞれ、シクロペンチルおよびフェニルであり、それゆえ、式IIaの化合物は、2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−1−イミダゾール−1−イル−2−フェニル−エタノンである。
【0044】
式Iの化合物は、知られている如何なる適切な技術、例えば再結晶によって精製されてもよく、および/または、あらゆる粗い粒子は篩にかけることによって除去され得る。
【0045】
以下の適切で、好ましい、より好ましい、または最も好ましい本発明の態様は、独立に、総合して、または任意の組合せで組み入れられ得る。
【0046】
およびRは、適切には、それぞれ独立に、シクロプロピル、シクロヘキシルまたはフェニルである。代替として、Rは、適切には、シクロプロピルであり、Rは、適切には、フェニルである。
【0047】
は、適切には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチルまたはt−ブチルである。代替として、Rは、適切には、メチルである。
【0048】
は、適切には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチルまたはt−ブチルである。代替として、Rは、適切には、メチルである。
【0049】
Xは、適切には、クロロ、ブロモ、またはヨードである。代替として、Xは、適切には、ブロモである。
【0050】
好ましい実施形態において、式IIおよびIVの化合物のRおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはフェニルであり、式IIIおよびIVの化合物のRは、C〜C−アルキル、特にメチルである。
【0051】
別の好ましい実施形態において、式IIおよびIVの化合物のRは、C〜C−シクロアルキルであり、式IIおよびIVの化合物のRは、フェニルであり、式IIIおよびIVの化合物のRは、C〜C−アルキル、特にメチルである。
【0052】
さらに別の好ましい実施形態において、式IIおよびIVの化合物のRは、シクロペンチルであり、式IIおよびIVの化合物のRは、フェニルであり、式IIIおよびIVの化合物のRは、メチルである。
【0053】
本発明の方法の第2ステップ(b)では、式IV
【0054】
【化16】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物が、式V
X−R (V)
[式中、Rは、C〜C−アルキルであり、Xは、脱離基である]
の化合物と反応して、塩または両性イオンの形態の式I
[式中、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキル、またはC〜C10−アリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物を生成する。
【0055】
前述の反応は、キヌクリジノールエステルとハロゲン化アルキルとを反応させるための知られている手順を用いて、または、実施例において後に記載されるものと同様にして、実施され得る。反応は、水、または有機溶媒中で、例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、またはクロロホルム中で、都合よく実施される。反応は、約−10℃から約120℃、都合よくは約−5℃から約80℃、特に約0℃から約60℃の温度で、実施される。
【0056】
好ましい実施形態において、式Vの化合物は、臭化メチルである。この化合物は、揮発性(沸点は4℃)であり、そのため、反応は、最初は、約0℃から約20℃で実施され、次いで、反応混合物は、結晶化の前に、約60℃に加熱される。結晶化は、積極的に、または放置して、冷却することによって、すなわち、混合物の温度を下げることによって、引き起こされる。好ましい実施形態において、混合物の温度は、市販の自動装置を用い、ゆっくりと、すなわち数時間かけて、下げられる。望ましい場合、反応混合物には、結晶化を容易にするために、種結晶が入れられる。好ましい実施形態において、反応混合物は、約50℃に冷却され、次いで、種結晶が入れられ、次に、ゆっくりと約15℃に冷却される。
【0057】
アルキル化反応において用いられる溶媒の選択は、望まれる化合物の特定の立体異性体の収率に、かなり影響を及ぼし得る。実際、式Iの化合物の立体異性体が異なる溶解性を有する有機溶媒中でステップ(b)が実施されると利点があり得る。例えば、臭化グリコピロニウムを調製するために、シクロペンチル−ヒドロキシ−フェニル−酢酸1−メチル−ピロリジン−3−イルエステルと、臭化メチルとを、n−プロパノール中で反応させる場合、冷却により溶液から結晶化する生成物は、(3S,2’R)−、および(3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニル−アセチル)−オキシ]−1,1−ジメチル−ピロリジニウムブロミドに富んでおり、一方、(3R,2’R)−、および(3S,2’S)−3−[(シクロ−ペンチル−ヒドロキシフェニル−アセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミド)は、n−プロパノールにはるかによく溶け、濾液に留まる傾向がある。
【0058】
以下の適切で、好ましい、より好ましい、または最も好ましい本発明の態様は、独立に、総合して、または任意の組合せで組み込まれ得る。
【0059】
およびRは、適切には、それぞれ独立に、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはフェニルである。代替として、Rは、適切には、シクロプロピルであり、Rは、適切には、フェニルである。
【0060】
は、適切には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチルまたはt−ブチルである。代替として、Rは、適切には、メチルである。
【0061】
は、適切には、メチル、エチル、プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチルまたはt−ブチルである。代替として、Rは、適切には、メチルである。
モである。
【0062】
Xは、適切には、クロロ、ブロモ、またはヨードのようなハロゲンである。代替として、Xは、適切には、ブロモである。
【0063】
Xは、適切には、メシレート、トシレート、ベンゼンスルホネート、またはメチルメタンホスホネートのようなスルホン酸部分、またはホスホン酸部分である。
【0064】
好ましい実施形態において、式IVおよびIの化合物のRおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはフェニルであり、式IVおよびIの化合物のRは、C〜C−アルキルあり、式VおよびIの化合物のRは、C〜C−アルキル、特にメチルである。
【0065】
別の好ましい実施形態において、式IVおよびIの化合物のRは、C〜C−シクロアルキルであり、式IVおよびIの化合物のRは、フェニルであり、式IVおよびIの化合物のRは、C〜C−アルキル、特にメチルであり、式VおよびIの化合物のRは、C〜C−アルキル、特にメチルである。
【0066】
さらに別の好ましい実施形態において、式IVおよびIの化合物のRは、シクロペンチルであり、式IVおよびIの化合物のRは、フェニルであり、式IVおよびIの化合物のRは、メチルであり、式VおよびIの化合物のRは、メチルであり、その結果、式Iの化合物は、塩または両性イオンの形態のグリコピロニウムである。
【0067】
本発明の方法は、米国特許第2956062号に記載されている、グリコピロレートの調製方法に認められる様々な問題を克服する。追加のステップとして酸からメチルエステルを生成する必要を取り除くことによって、プロセスは短くなり、収率が改善され、また、労力を要するエステル交換法(これは、しばしば、制御が難しく、最適化が難しく、また、ナトリウムおよび水素化ナトリウムのような危険な試薬、ならびに水素ガスを生成するような危険な条件を用いることを伴う)を用いる必要がない。出発物質が市販の酸であること、および、方法が、1つの容器中で、すなわち、簡単なワンポット法で実施できることは、好都合であり、時間および費用効率が高い。これらの利点は、大規模な工業的生産にとって、本発明の方法を、米国特許第2956062号に記載の方法より、かなり適したものにする。本発明の方法の好ましい実施形態は、最終生成物がグリコピロレートである場合に限って、次のスキームに要約され、米国特許第2956062号に記載の方法と比較される。このスキームにおいて、グリコピロレートは、ステージ1、2および3により、知られている方法によって調製されるのに対して、本発明の方法によって、それは、ステージ1aおよび3により調製される。
【0068】
【化17】

【0069】
好ましい実施形態において、式IIの化合物のRおよびRは、それぞれ、シクロペンチルおよびフェニルであり、式IIIの化合物のRは、メチルであり、式Vの化合物のRは、メチルであり、式Iの化合物は、(3S,2’R)−、および(3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドのラセミ混合物である。
【0070】
【化18】

【0071】
本発明の方法は、グリコピロレートのこれらのエナンチオマーの相対的比率の変動を最小限度に抑える。
【0072】
本発明はまた、塩または両性イオンの形態の式I
【0073】
【化19】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物の吸入可能な乾燥粉末製剤の調製方法も提供する。この方法は、5つのステップ(i)〜(v)を含む。
【0074】
ステップ(i)および(ii)は、塩または両性イオンの形態の式Iの化合物を含む薬剤物質を調製するための前述の方法のステップ(a)および(b)と全く同じである。
【0075】
吸入可能な乾燥粉末製剤の調製方法の第3ステップ(iii)(このステップは任意に選択できる)において、塩または両性イオンの形態の式Iの化合物を含む薬剤物質が、結晶化によって精製される。このステップは、必要な場合、所望の純度に達するまで、繰り返され得る。薬剤物質は、あらゆる粗い粒子を除去するために篩にかけられ得る。
【0076】
吸入可能な乾燥粉末製剤の調製方法の第4ステップ(iv)において、場合によりステップ(iii)により精製された、塩または両性イオンの形態の式Iの化合物を含む薬剤物質が、微粉化される。これは、薬剤物質の粒径(particle size)を、それが吸入によって投与されるのに適切であるように、小さくする。これらの粒子の空気力学的質量中位径(mass median aerodynamic diameter、MMAD)は、好ましくは、10ミクロン(μm)未満である。約10μmを超える空気力学的径を有する粒子は、咽喉壁に衝突すると予想され、通常、肺に達しない。約2μmから約5μmの範囲の空気力学的径を有する粒子は、通常、呼吸細気管支に捕えられるであろうが、約0.05μmから約3μmの範囲の空気力学的径を有する一層小さい粒子は、肺胞に捕えられ、血流に吸収されると予想される。
【0077】
微粉化装置は、当技術分野においてよく知られており、これらには、様々な製粉(grinding)および粉砕(milling)機、例えば、メカノフュージョン(mechanofusion)ミルのような圧縮型ミル、ボールミル、ホモジナイザーおよびミクロフルイダイザー(micro fluidizer)のような衝撃ミル、ならびにジェットミルが含まれる。適切な微粉化装置には、Turbula(登録商標)粉末ブレンダーのような低剪断ミキサー、およびMiPro(登録商標)粉末ブレンダーのような高剪断ミキサーが含まれる。
【0078】
好ましい実施形態において、グリコピロレート結晶は、Hosokawa Alpine(登録商標)100 AFG流体床対向ジェットミル(fluid bed opposed jet mill)でジェットミルにかけられる、またはスパイラルジェットミル、例えば、Hosokawa Alpine(登録商標)AS100スパイラルミルが用いられる。他の適切なジェットミル装置には、Hosokawa Alpine(登録商標)AFG140、AFG200、AFG280、およびAFG400ジェットミルが含まれる。
【0079】
吸入可能な乾燥粉末製剤の調製方法の第5ステップ(v)では、担体粒子が、微粉化された薬剤物質結晶と混合されて、所望の吸入可能な乾燥粉末製剤が得られる。担体粒子は、微粉化された薬剤物質を、より凝集し難くし、その流動性を向上させる。これは、粉末を、下流工程で、例えば、乾燥粉末製剤をカプセルに充填する時に、より取り扱い易くする。微粉化された薬剤物質粒子は、乾燥粉末吸入器デバイスに入っている間は、担体粒子の表面に付着する傾向があるが、気道に吸入されると担体粒子の表面から散らばって、微細懸濁物生じさせる。より大きい担体粒子は、咽頭腔(oropharyngeal cavity)に、大部分捕えられる。
【0080】
担体粒子は、吸入が許容される薬理学的に不活性な何らかの材料、または材料の組合せからなり得る。それらは、適切には、アラビノース、グルコース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デンプン、デキストラン、マンニトール、またはソルビトールのような、単糖、二糖、多糖および糖アルコールを含めての結晶糖の1種または複数からなる。特に好ましい担体は、ラクトース、例えば、ラクトース一水和物、または無水ラクトースである。
【0081】
好ましくは、実質的に全ての(重量で)担体粒子が、20から1000μm、より好ましくは50から500μmの径(diameter)を有するが、特に20から250μmの径を有する。実質的に全ての(重量で)担体粒子の径は、適切には、355μm未満である。これは、良好な流れと同伴(entrainment)特性、および気道における活性粒子の放出の向上をもたらして、下肺における活性粒子の捕捉を増加させる。全体を通して、挙げられている粒子の径は、粒子の空気力学的径であることを理解されたい。
【0082】
望ましい場合、1種または複数の力制御剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)が、吸入のための乾燥粉末製剤に含められる。力制御剤は、乾燥粉末グリコピロレート製剤における吸入可能な微細粒子フラクションの全般的改善に導く。それは、望ましくない形態学的相転移を抑制する、または遅くすることによって、担体材料および薬剤物質を安定化させる。それはまた、粉末の流動性を改善することによって、吸入可能な乾燥粉末グリコピロレート製剤の投薬効率を向上させる。
【0083】
他の適切な力制御剤には、ロイシンのようなアミノ酸、レシチンのようなリン脂質、またはステアリン酸カルシウムのような脂肪酸誘導体が含まれる。しかし、ステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。それは、特に少ない量で、例えば、全製剤に対して、好ましくは0.1から5重量%、より好ましくは0.1から2重量%であるが、特に約0.25から1重量%のステアリン酸マグネシウムの量で添加される。
【0084】
力制御剤は、好ましくは、微粒子状であるが、それは、液状または固体状で添加されてもよく、ある材料では、特に、その材料の粒子を形成することが容易でないことがある場合、および/または、それらの粒子を特に小さくすべきである場合、その材料を、液体で、例えば、懸濁液または溶液として添加することが好ましいことであり得る。
【0085】
乾燥粉末は、乾燥粉末吸入デバイス(これは、単回投与または複数回投与デバイスであり得る)で用いられるために、1回服用量として、例えばゼラチンもしくはプラスチックのカプセルに、またはブリスター(例えば、アルミニウムまたはプラスチックの)に収納され得る。好ましくは、1個のカプセル当たりの粉末の全重量は、5mgから50mgである。代替として、乾燥粉末が、1回の作動当たり、例えば3〜25mgの乾燥粉末をデリバリーするようになっている複数回投与乾燥粉末吸入(multi−dose dry powder inhalation、MDDPI)デバイスの貯蔵容器に収納され得る。カプセル状の乾燥粉末のデリバリーのための適切なデバイスは、米国特許第3991761号、またはWO 05/113042に記載されており、一方、適切なMDDPIデバイスには、WO 97/20589、およびWO 97/30743に記載されているものが含まれる。
【0086】
本発明は、以下の実施例によって例示される。
〔実施例〕
【実施例1】
【0087】
(3S,2’R)−、および(3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドの調製
135gのジメチルホルムアミド(DMF)に溶かした30gのシクロペンチルマンデル酸を、18℃で、27gのカルボニルジイミダゾール(いくつかに分けて)で処理して、「活性アミド」を生成した。16.9gの1−メチル−ピロリジン−3−オールを添加した後、1時間以内に混合物を60℃に加熱し、この温度で18時間撹拌した。完全な変換を確認した後、混合物を冷却し、200gの水を加えた。混合物を、200gのトルエンで抽出し、抽出物を水で3回洗った。有機相を濃縮して、そのまま次のステップで用いられる約50%トルエン溶液として、シクロペンチル−ヒドロキシ−フェニル−酢酸1−メチル−ピロリジン−3−イルエステルを得た。
【0088】
この溶液を、120gのn−プロパノールで希釈し、0℃に冷却した。16.8gの臭化メチルを導入し、混合物を2時間撹拌し、次いで、60℃まで徐々に加熱して、余分な臭化メチルをスクラバーに蒸発させた。次に、混合物を、50℃に冷却し、結晶化を容易にするための種結晶を添加した。次いで、温度を18時間かけてゆっくりと15℃に下げた。次に、固体を濾過によって単離して、乾燥後、22.7gを得た。それは、主に、90%(HPLCによる)を超える純度を有する、1対のエナンチオマーである、(3S,2’R)−、および(3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドのラセミ混合物からなっていた。ジアステレオ異性体の別の対((3R,2’R)−、および(3S,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニル−アセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミド)は、これらの化合物が、n−プロパノールに、他の立体異性体より、かなり可溶性であるので、大部分は濾液に留まる。
【0089】
得られた固体を、さらに、n−プロパノール(重量で、1:10)で再結晶して、純粋な(すなわち、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって求めて、純度>99.9%)(3S,2’R)−、および(3R,2’S)−3−[(シクロペンチル−ヒドロキシフェニルアセチル)−オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドを得た。
【0090】
このプロセスは、次の反応スキームに要約される。
【0091】
【化20】

【実施例2】
【0092】
トルエン中でのシクロペンチル−ヒドロキシ−フェニル−酢酸1−メチル−ピロリジン−3−イル−エステルの調製
1gのシクロペンチルマンデル酸を、4.7gのトルエンに懸濁させ、1.5gのカルボニルジイミダゾールを固体として加えた。30分後に、0.69gの1−メチル−ピロリジン−3−オール、および20mgのナトリウムtert−ブチレートを加えた。混合物を、室温で18時間撹拌し、次いで、水を加えた。攪拌後、相分離させ、有機相を水で2回洗い、蒸発させて、シクロペンチル−ヒドロキシ−フェニル−酢酸1−メチル−ピロリジン−3−イル−エステルの約50%のトルエン溶液を得た。
【実施例3】
【0093】
2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−1−イミダゾール−1−イル−2−フェニル−エタノン(活性中間体)の調製
次の方法によって、シクロペンチルマンデル酸のイミダゾリジル誘導体を調製し、固体として単離した。
【0094】
10gのシクロペンチルマンデル酸を、30mlのアセトニトリルに懸濁させ、混合物を0℃に冷却した。10.3gのカルボニルジイミダゾールを固体として加え、混合物を2時間で室温まで温めた。析出物が生成されるにつれて、二酸化炭素が気体として発生した。次いで、混合物を5℃に冷却し、固体を濾過し、アセトニトリルで洗い、40℃で真空乾燥して、7.3gの純粋な2−シクロペンチル−2−ヒドロキシ−1−イミダゾール−1−イル−2−フェニル−エタノンを得た。
【0095】
このプロセスは次の反応スキームに要約される。
【0096】
【化21】

【0097】
高分解能MS−スペクトロスコピー(High resolution MS−spectroscopy)は、化合物の分子式(M+Hとして)がC1619で、正確な質量は271.14414(計算値からのずれは0.14575ppm)であることを明らかにした。

1H-NMR-スペクトロスコピー(600MHz, DMSO-d6): 1.03-1.07 (m, 1H), 1.25-1.30 (m, 1H), 1.35-1.40 (m, 1H), 1.40-1.50 (m, 1H), 1.53-1.56 (m, 2H), 1-60-1.67 (m, 1H), 1.75-1.84 (m, 1H), 1.03 - 1.85 (8H, シクロペンチル環内の二級CH2プロトンが8個, H-C11, H-C12, H-C13, H-C14); 2.7-2.9 (m, 1H, H-C10); 6.76 (1H, H-C5); 6.91 (1H, H-C4); 7.29 (1H, H-C18); 7.39 (2H, H-C17, H-C19); 7.49 (2H, H-C16, H-C20); 7.65 (1H, H-C2).

【0098】
化合物は、IR分光法(固体フィルムとして、BRUKER TENSOR 27 FT−IR分光計で、4000〜600cm−1の波数域に渡って、4cm−1の分解能で測定)によって特性評価した。
最も重要なバンドの帰属を下に記す。
【0099】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩または両性イオンの形態の式I
【化22】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物の調製方法であって、
(a)式II
【化23】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩を、式III
【化24】

[式中、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物またはそのエステル形成性誘導体と反応させて、式IV
【化25】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物を生成するステップ;および
(b)前記式IV[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]の化合物を、式V
X−R (V)
[式中、Rは、C〜C−アルキルであり、Xは、脱離基である]
の化合物と反応させて、塩または両性イオンの形態の前記式I[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]の化合物を生成するステップ
を含む方法。
【請求項2】
式IIおよびIVの化合物のRおよびRが、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはフェニルであり、
式IIIおよびIVの化合物のRが、C〜C−アルキルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式IVおよびIの化合物のRおよびRが、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはフェニルであり、
式IVおよびIの化合物のRが、C〜C−アルキルであり、
式VおよびIの化合物のRが、C〜C−アルキルである、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
式IIおよびIVの化合物のRが、シクロプロピルであり、
式IIおよびIVの化合物のRが、フェニルであり、
式IIIおよびIVの化合物のRが、メチルであり、
式IVの化合物のRが、メチルであり、その結果、式Iの化合物が、塩または両性イオンの形態のグリコピロニウムである、
請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップ(a)が、カップリング剤の存在下で実施される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
カップリング剤がカルボニルジイミダゾールである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式Iの化合物の立体異性体が異なる溶解性を有する有機溶媒中で、ステップ(b)が実施される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
塩または両性イオンの形態の式I
【化26】

[式中、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、
およびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]
の化合物の吸入可能な乾燥粉末製剤の調製方法であって、
(i)式II
【化27】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩を、式III
【化28】

[式中、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物またはそのエステル形成性誘導体と反応させて、式IV
【化29】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]
の化合物を生成するステップ;
(ii)式IV[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、Rは、C〜C−アルキルである]の化合物を、式V
X−R (V)
[式中、Rは、C〜C−アルキルであり、Xは、脱離基である]
の化合物と反応させて、塩または両性イオンの形態の式I[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールであり、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−アルキルである]の化合物を含む薬剤物質を生成するステップ;
(iii)場合により、結晶化によって薬剤物質を精製して精製された薬剤物質を供給するステップ;
(iv)薬剤物質を微粉化するステップ;および
(v)担体粒子を混合して、吸入可能な乾燥粉末を得るステップ
を含む方法。
【請求項9】
ステップ(iv)において、薬剤物質が力制御剤と共に微粉化される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
力制御剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
式IIa
【化30】

[式中、RおよびRは、それぞれ独立に、C〜C−シクロアルキルまたはC〜C10−アリールである]
の化合物またはその塩。

【公表番号】特表2012−523390(P2012−523390A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504011(P2012−504011)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/054610
【国際公開番号】WO2010/115937
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】