説明

ピロリジン−3−カルボン酸の製造方法

本発明は、式(I)(式中、X及びYは互いに独立に水素又はハロゲン原子であるが、ただし、X又はYの少なくとも一つはハロゲン原子である)で表される(3S,4S)−もしくは(3R,4R)−1−ベンジル−4−(ハロゲン−アリール)−ピロリジン−3−カルボン酸誘導体又はその塩の新規な製造方法に関する。式(I)の化合物は、薬学的に活性な化合物、特に中枢神経系障害の治療に使用し得る化合物の製造のための出発物質又は中間体として使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I):
【化1】


(ここで、X及びYは、互いに独立に水素又はハロゲン原子であるが、ただし、X又はYの少なくとも一つは、ハロゲン原子である)で表される(3S,4S)−もしくは(3R,4R)−1−ベンジル−4−(ハロゲン−アリール)−ピロリジン−3−カルボン酸誘導体又はその塩の新規な製造方法に関する。
【0002】
式(I)の化合物は、薬学的に活性な化合物、特に中枢神経系障害の処置に使用され得る化合物(Bioorg. Med. Chem. Lett. 1999, 9, 195; Bioorg. Med. Chem. Lett. 2004, 14, 941)の製造のための出発物質又は中間体として使用し得る。
【背景技術】
【0003】
エナンチオ選択的水素化による鏡像異性的に富化された環状β−ヘテロアリールカルボン酸の製造方法が、PCT公開WO2007/113155に記載されている。その方法は、必要とされる反応条件、達成される収率及び反応生成物のエナンチオ純度の点に関して不十分であることが見出された。
【0004】
それゆえ、本発明の目的は、式(I)の化合物の製造のための、より経済的でエナンチオ選択的な水素化法、すなわち、穏やかな条件で実施可能で、生成物が高収率及び高エナンチオ純度で得られる方法を見出すことであった。
【0005】
この目的は、以下に概説される本発明の方法によって達成できることが見出された。
【0006】
式(I):
【化2】


(ここで、X及びYは、互いに独立に水素又はハロゲン原子であるが、ただし、X又はYの少なくとも一つは、ハロゲン原子である)で表される(3S,4S)−1−ベンジル−4−ハロゲン−アリール−ピロリジン−3−カルボン酸誘導体又はその塩の製造方法は、
【0007】
式(II):
【化3】


(ここで、X及びYは、上記のとおりである)で表される化合物又はその塩の、以下の式(III):
【0008】
【化4】


(ここで、Tは基:A−COOを表し、
Aは場合によりハロゲンで置換されているC1−7−アルキルを表し、そして
Dはキラルなジホスフィン配位子を表す)で表されるRu−触媒の存在下における触媒的均一エナンチオ選択的水素化を含む。
【0009】
他に示されない限り、以下の定義は、本明細書において発明を説明するために使用される様々な用語の意味及び範囲を説明し、定義するために示される。
【0010】
X又はYについて使用される用語ハロゲンは、好ましくは塩素又はフッ素を表す。さらに好ましい態様では、Xは塩素又はフッ素であり、Yは水素、塩素又はフッ素である。さらにより好ましい態様では、Xは塩素であり、Yは水素である。
【0011】
したがって、式(II)の好ましい出発化合物は、
1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸一水和物;1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸;1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸;1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸
から選択される。
【0012】
及び/又はRについて使用される用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指し、フッ素、臭素及び塩素が好ましい。
【0013】
用語「C1−7−アルキル」は、単独で、又は他の基と組み合わさって、炭素原子1〜7、好ましくは炭素原子1〜4の分岐又は直鎖の一価アルキル基を指す。さらに、この用語の例は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、2−エチルブチルなどの基である。メチル及びエチル、特にメチルがとりわけ好ましい。
【0014】
用語「場合によりハロゲンで置換されているC1−7−アルキル」は、アルキル基の少なくとも一つの水素がハロゲン原子、好ましくはフルオロ又はクロロで置換されている、上記で定義したC1−7−アルキルを指す。好ましいハロゲン化低級アルキル基はトリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル及びクロロメチルである。
【0015】
用語「C1−7−アルコキシ」は、基:C1−7−アルキル−O−を指し、C1−7−アルキルの意味は上記のとおりである。C1−7−アルコキシ基の例は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ及びヘキシルオキシであり、メトキシが特に好ましい。
【0016】
用語「ジ−C1−7−アルキルアミノ」は、基:(C1−7−アルキル)−NHを指し、C1−7−アルキルの意味は上記のとおりである。ジ−C1−7−アルキルアミノ基の例は、例えば、ジメチルアミノ又はジエチルアミノであり、ジメチルアミノが好ましい。
【0017】
用語「トリ−C1−7−アルキルシリル」は、基:(C1−7−アルキル)−Siを指し、C1−7−アルキルの意味は上記のとおりである。トリ−C1−7−アルキルシリルの例は、例えば、トリメチルシリル又はトリエチルシリルであり、トリメチルシリルが好ましい。
【0018】
式IIの出発化合物は、下記スキームに示される方法により入手可能であり:
【0019】
【化5】


あるいはJ. Med Chem 1992, 233-241; THL 2004, 3265又はOrg. Biomol. Chem. 2004, 2763に記載されるように、同様にして調製できる。
【0020】
式IIの出発化合物、すなわち水素化基質は、好ましくは遊離酸又はその一水和物の形態である。
【0021】
あるいは、適切な塩基によって、式IIの化合物の遊離酸から、又は塩からさえも変換により形成可能なカルボキシラートが使用可能である。適切な塩基は、通常トリ−アルキルアミン類のような第3級アミン類である。好ましい塩基はトリエチルアミンである。
【0022】
上記で概略を述べたように、触媒的均一エナンチオ選択的水素化に使用されるRu−触媒は、式:
【0023】
【化6】


(ここで、Tは基:A−COO(ここで、Aは場合によりハロゲンで置換されているC1−7−アルキルを表わす)を表わし、そして
Dはキラルなジホスフィン配位子を表わす)を有する。
Tは好ましくはCHCOO又はCFCOOから選ばれ、より好ましくはCHCOOを表わす。
Aは好ましくはメチルを表わす。
【0024】
前記キラルなジホスフィン配位子Dは、
【化7】


(ここで、
Arは2−チエニル、3−チエニル、2−フリル、3−フリル、フェニル、又は、一つ以上のC1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、フェニル、ジ−C1−7−アルキルアミノ、N−モルホリノもしくはトリ−C1−7−アルキルシリルで置換されたフェニルであり;
ZはN又はC−Rであり;
はC1−7−アルキルであり;
はC1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ヒドロキシ又は−OC(O)−C1−7−アルキル又は−OC(O)−シクロヘキシルであり;
及びRは互いに独立に、水素、C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン又はジ−C1−7−アルキルアミノであり;あるいは
同一のフェニル基に結合しているRとRもしくはRとR、又は異なったフェニル基に結合した両方のRは、一緒になって、−X−(CH−Y−又は−X−(CF)−X−(ここで、XはO又はC(O)Oであり、YはO又はN(C1−7−アルキル)であり、nは1〜6の整数である)である)からなる群より選ばれる。
【0025】
適切な配位子は、下記から選択することができる。
【表1】

【0026】
より好ましくは式IVaの配位子であり、配位子(S)−又は(R)−2−フリル−MeOBIPHEPが最も好ましい。
【0027】
最も好ましい式IIIのRu−触媒は、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)]又は[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)]である(Acはアセチルを表わす)。
【0028】
上記で示されたジホスフィン配位子は当該分野において知られており、市販されており、又は、例えば欧州特許出願EP−A0,398,132(MeOBIPHEP、3,5−iPr−MeOBIPHEP)、PCT公開WO96/01831に記載のとおり、もしくはT. Benincori et al., J.Org. Chem. 2000, 65, 2063(TMBTP)によって、調製可能である。
【0029】
金属錯体[Ru(OAc)(ジホスフィン)]は当該分野において知られており、また、例えば、米国特許US−B6,552,204に記載の通り調製され、又はN. Feiken at al. Organometallics 1997, 16, 537に報告されている一般的手順と同様にして合成される。
【0030】
水素化は好適には、水素圧1bar〜100bar、好ましくは20bar〜60bar、より好ましくは35〜45barで起こる。
【0031】
反応温度は20℃及び100℃の間で、好ましくは20℃及び60℃の間で、より好ましくは20℃及び40℃の間で選ばれる。
【0032】
一般に水素化は、触媒と基質との比(mol/mol)が、250〜100,000、好ましくは1,000〜20,000、より好ましくは5,000〜15,000にて行われる。
【0033】
反応は通常溶媒としての低級脂肪族アルコール中で行われる。最も好ましい溶媒はメタノールである。
【0034】
得られる式Iの(3S,4S)−1−ベンジル−4−ハロゲン−アリール−ピロリジン−3−カルボン酸誘導体のエナンチオ純度は、一般的に、さらなる精製が必要ないほどに高い。触媒からの分離は、反応混合物をアルカリに入れて、次いで有機溶媒により抽出し、等電点にて水層から生成物を沈殿させることによって起こり得る。
【0035】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するものである。
【0036】
実施例
略語:
r.t.=室温、THF=テトラヒドロフラン、TBME=tert−ブチルメチルエーテル、LDA=リチウムジイソプロピルアミド
【0037】
式IIの出発化合物の調製:
【0038】
実施例A
1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IIa)
【化8】

【0039】
a) (4−クロロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(Va)
アルゴン雰囲気下、四つ口フラスコに、1−クロロ−4−ヨード−ベンゼン(130.0g、0.55mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(7.57g、10.8mmol、2mol%)、ヨウ化銅(I)(4.19g、22.0mmol、4mol%)及び乾燥THF(1.4l)を入れた。室温にて、炭酸セシウム(355.3g、1.09mol、2当量)を5分間かけて加えた。その後、プロピン酸エチルエステル(111.3ml、1.09mol、2当量)を加え、反応混合物を35℃で一晩撹拌した。追加分のプロピン酸エチルエステル(11.1ml、0.11mol、0.2当量)を加え、反応物を35℃でさらに3時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残留物をトルエン(0.5l)及びヘプタン(1l)に取った。得られた懸濁液を40℃で1時間撹拌し、セライトで濾過した。濾液を濃縮し、生成物をシリカゲル濾過(トルエン/ヘプタン1:2)により精製して、Va 72.6g(61%)を明黄色の固体として得た。
【0040】
b) 1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IIa)
室温にて、CHCl(260ml)中のN−(メトキシメチル)−N−(フェニルメチル)−N−(トリメチルシリル)メチルアミン(116.8g、0.49mol)の溶液を、90分かけて、CHCl(350ml)中の(4−クロロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(72.0g、0.34mol)及びトリフルオロ酢酸(2.5ml、0.03mol)の撹拌されている溶液に滴加した。反応混合物を25℃で一晩撹拌し、その後蒸発乾固した。残留物をジオキサン(0.8l)に溶解し、NaOH水溶液(91.0ml、1.02mol、3当量)を加え、得られたエマルションを室温で48時間撹拌した。低沸点の有機溶媒を真空下で除去し、水(0.9l)を加え、水層を分離し、TBME(1l)で洗浄した。次に、25%HClを加えて、水層をpH値2.5に酸性化した。得られた懸濁液を一晩撹拌し、白色の沈殿物を濾別し、水及びエタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させて、IIa 62.0g(60%)を白色の固体として得た。
ES−MS m/e:312.4(M−H)。
【0041】
実施例B
1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IIb)
【化9】

【0042】
a) (3,4−ジクロロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(Vb)
アルゴン雰囲気下、四つ口フラスコに、1,2−ジクロロ−4−ヨード−ベンゼン(222.8g、0.80mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(11.2g、16.0mmol、2mol%)、ヨウ化銅(I)(6.09g、32.0mmol、4mol%)及び乾燥THF(2.4l)を入れた。室温にて、炭酸セシウム(526.6g、1.60mol、2当量)を5分間かけて加えた。その後、プロピン酸エチルエステル(168.6ml、1.60mol、2当量)を加え、反応混合物を35℃で一晩撹拌した。追加分のプロピン酸エチルエステル(17.0ml、0.16mol、0.2当量)を加え、反応物をさらに35℃で4時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残留物をトルエン(0.8l)及びヘプタン(1.6l)に取った。得られた懸濁液を40℃で1時間撹拌し、セライトで濾過した。濾液を濃縮し、生成物をシリカゲル濾過(トルエン/ヘプタン1:2)により精製して、Vb 175.0g(89%)を白色の固体として得た。
【0043】
b) 1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IIb)
室温にて、CHCl(0.6l)中のN−(メトキシメチル)−N−(フェニルメチル)−N−(トリメチルシリル)メチルアミン(262.5g、1.06mol)の溶液を、60分かけて、CHCl(0.7l)中の(3,4−ジクロロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(172.0g、0.71mol)及びトリフルオロ酢酸(5.4ml、0.07mol)の溶液に滴加した。反応混合物を25℃で2時間撹拌した。次に、それを蒸発乾固し、残留物をジオキサン(1.6l)に溶解した。NaOH水溶液(1.0l、1.9mol、2.8当量)を加えた。得られたエマルションを室温で20時間撹拌し、低沸点の有機溶媒を真空下で除去した。水(2.0l)を加え、水層を分離し、TBME(2回 1.2l)で洗浄した。次に、25% HClを加えて、水層をpH値2.5に酸性化した。次に、得られた懸濁液を一晩撹拌し、白色の沈殿物を濾別し、水及びエタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させて、IIb 205.0g(83%)を白色の固体として得た。
ES−MS m/e:346.0(M−H)。
【0044】
実施例C
1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IIc)
【化10】


a) (3,4−ジフルオロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(Vc)
アルゴン雰囲気下、四つ口フラスコに、THF(135ml)及びTHF中の2M LDA(60.9ml、0.12mol、1.18当量)を入れ、−78℃に冷却した。THF(36ml)に溶解したプロピン酸エチルエステル(12.2g、0.12mol、1.18当量)を30分以内に滴加し、その後THF(45ml)に溶解したZnBr(28.5g、0.12mol、1.2当量)を30分以内に滴加した。1,2−ジフルオロ−4−ヨード−ベンゼン(25.0g、0.10mol)及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(6.02g、5.15mmol、5mol%)を加えた後、反応混合物を室温に温まるにまかせ、同じ温度でさらに3時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルで希釈し、飽和NHI水溶液、飽和NaHCO水溶液及びブラインで洗浄した。有機相をNaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮し、真空下で乾燥させた。残留物をシリカゲル濾過(ヘプタン/酢酸エチル 98:2)により精製して、Vc 16.6g(76%)を明黄色の油状物として得た。
ES−MS m/e:210(M)。
【0045】
b) 1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IIc)
室温にて、トリフルオロ酢酸(0.11ml、1.34mmol、0.1当量)、続いてN−(メトキシメチル)−N−(フェニルメチル)−N−(トリメチルシリル)メチルアミン(4.89g、20.2mmol、1.5当量)を、CHCl(80ml)中の(3,4−ジフルオロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(2.83g、13.5mmol)の撹拌されている溶液に滴加した。黄色の溶液を室温で18時間撹拌した。トリフルオロ酢酸(0.034ml、0.44mmol、0.033当量)及びN−(メトキシメチル)−N−(フェニルメチル)−N−(トリメチルシリル)メチルアミン(1.66g、6.73mmol、0.5当量)を加え、溶液を1時間撹拌した。それを蒸発乾固し、残留物をジオキサン(40ml)に溶解した。NaOH水溶液(18.7ml、37.4mmol、2.8当量)を加えた。得られたエマルションを室温で18時間撹拌し、低沸点の有機溶媒を減圧下で除去した。水(40ml)を加え、水層を分離し、TBME(50ml)で2回洗浄した。有機層を同量の水(15ml)で洗浄した。3M HCl水溶液(12.4ml)を加えて、合わせた水層を酸性化した。得られた懸濁液を室温で48時間撹拌した。白色の沈殿物を濾別し、水及びエタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させて、IIc 4.25g(58%)を白色の固体として得た。
ES−MS m/e:316.3(M+H)。
【0046】
実施例D
1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IId)
【化11】


a) (4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(Vd)
アルゴン雰囲気下、四つ口フラスコに、1−クロロ−2−フルオロ−4−ヨード−ベンゼン(50.5g、0.20mol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(2.76g、3.94mmol、2mol%)、ヨウ化銅(I)(1.50g、7.80mol、4mol%)及び乾燥THF(600ml)を入れた。室温にて、炭酸セシウム(128.3g、0.39mol、2当量)を5分間かけて加えた。最後に、プロピン酸エチルエステル(38.6g、0.39mol、2当量)を加え、反応物を35℃で48時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固し、残留物をトルエン(50ml)及びヘプタン(100ml)に取った。得られた懸濁液を40℃で1時間撹拌し、その後セライトで濾過した。濾液を濃縮し、生成物をシリカゲル濾過(トルエン/ヘプタン 1:2)により精製して、Vd 38.8g(87%)を明黄色の固体として得た。
ES−MS m/e:227.2(M−H)。
【0047】
b) 1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(IId)
室温にて、CHCl(120ml)中のN−(メトキシメチル)−N−(フェニルメチル)−N−(トリメチルシリル)メチルアミン(61.3g、0.26mol)の溶液を、90分かけて、CHCl(170ml)中の(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−プロピン酸エチルエステル(39.0g、0.17mol)及びトリフルオロ酢酸(1.30ml、0.02mol)の撹拌されている溶液に滴加した。反応混合物を25℃で72時間撹拌し、その後蒸発乾固した。残留物をジオキサン(390ml)に溶解した。NaOH水溶液(45.0ml、0.48mol、2.8当量)を加え、得られたエマルションを室温で18時間撹拌した。低沸点の有機溶媒を真空下で除去した。水(100ml)を加え、水層を分離し、TBME(2回 100ml)で洗浄した。次に、25%HClを加えて、水層をpH値2.5に酸性化した。得られた懸濁液を一晩撹拌し、白色の沈殿物を濾別し、水及びエタノールで洗浄し、高真空下で乾燥させて、IId 42.0g(75%)を白色の固体として得た。
ES−MS m/e:330.1(M−H)。
【0048】
触媒[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)]及び触媒[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)]の合成
実施例E
[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)]
500ml丸底フラスコに、アルゴン下、(R)−2−フリル−MeOBIPHEP(30.0g、51.5mmol)、[Ru(OAc)(p−シメン)](18.75g、53.04mmol)及びトルエン(525ml)を入れた。得られた褐色の懸濁液を80℃で24時間撹拌した。得られた黄色−褐色の懸濁液を真空下で総容量250mlに濃縮し、0〜5℃で1時間撹拌した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキをトルエン(100ml)及びペンタン(150ml)で洗浄し、真空下、室温で16時間乾燥させて、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)]36.5g(93%)を黄色の固体として得た。
31P−NMR(CDCl):31.8ppm(シングレット)。FT−MS m/e:762(M)。
【0049】
[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)]
50ml丸底フラスコに、アルゴン下、(S)−2−フリル−MeOBIPHEP(500mg、0.92mmol)、[Ru(OAc)(p−シメン)](330mg、0.93mmol)及びトルエン(10ml)を入れた。得られた褐色の懸濁液を80℃で5時間撹拌した。反応混合物を真空下で総容量2mlに濃縮し、ペンタン(20ml)を加え、混合物を0〜5℃で30分間撹拌した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキをペンタン(20ml)で洗浄し、真空下、室温で16時間乾燥させて、[Ru(OAc)((S−2−フリル−MeOBIPHEP)]569mg(81%)を黄色の固体として得た。
31P−NMR(CDCl):31.7ppm(シングレット)。FT−MS m/e:762(M)。
【0050】
水素化実施例:
実施例1
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ia
【化12】

【0051】
185mlのステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸一水和物(5.00g、15.1mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](3.83mg、5.02×10−6mol、S/C 3,000)及びメタノール(150ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.6%変換率、99.3%(S,S)−Iaかつee>99.9%)。圧力を開放した後、白色の懸濁液を0〜5℃で(氷浴)2時間撹拌し、濾過し、フィルターケーキを氷冷メタノール20mlで洗浄し、真空下、40℃で乾燥させて、(S,S)−Ia 4.75g(99%)を純度99.0%かつee>99.9%で得た。
ES−MS m/e:316.1(M+H)。
【0052】
純度及びee決定のためのHPLC法:Chirobiotic Vカラム(No.461,25cm * 4.6mm)、55%酢酸アンモニウムpH6緩衝液/45%アセトニトリル、流量1ml/分、25℃、220nm、試料調製:アセトニトリル1ml中1mg。保持時間:IIa(3.7分)、(R,S)−/(S,R)−Ia(4.3分)、(S,S)−Ia(4.9分)、(R,R)−Ia(5.4分)。
【0053】
実施例2
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ia
【化13】


12lステンレス鋼オートクレーブに、空気中で、1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸一水和物(180.0g、0.54mol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](413.2mg、0.54mmol、S/C 1,000)及びメタノール(7.1l)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.3%変換率)。圧力を開放した後、白色の懸濁液の試料を蒸発乾固して、粗(S,S)−Iaを純度99.0%かつee>99.9%で得た。反応懸濁液を1.8lの容量に濃縮し、0〜5℃で1時間撹拌した。濾過後、フィルターケーキを冷メタノールで洗浄し、真空下で乾燥させて、(S,S)−Ia 176.0g(>99%)を白色の固体として純度99.0%かつee>99.9%で得た。
【0054】
実施例3a−c
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ia
【化14】

【0055】
185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸一水和物(1.00g、3.01mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP](0.21mg、0.30×10−6mol、S/C 10,000)及びメタノール(30ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(87.0%変換率)。圧力を開放した後、白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ia 0.96g(86%)を純度88.5%かつee98.5%で得た。
【0056】
表1中の反応を、添加剤としてトリエチルアミンを使用し、上述の手順に従って実施した。
【表2】

【0057】
実施例4a−c
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ia
【化15】

【0058】
185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸一水和物(1.00g、3.01mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](0.77mg、1.00×10−6mol、S/C 3000)及びメタノール30mlを入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.8%変換率)。圧力を開放した後、白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ia 0.96g(99%)を純度99.1%かつee>99.9%で得た。
【0059】
表2中の反応を、メタノールの代替溶媒を使用し、上述の手順に従って実施した。
【0060】
【表3】

【0061】
実施例5
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ib
【化16】

【0062】
35mlオートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸の塩酸塩(0.50g、1.30mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](3.96mg、5.30×10−6mol、S/C 250)、トリエチルアミン(0.19ml、1.32mmol)及びメタノール(15ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.9%変換率)。圧力を開放した後、形成された白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ib 0.51g(99%)を純度99.6%かつee99.4%で得た。
【0063】
粗生成物を0.1M NaOH(23ml)に溶解した。TBME(20ml)を加え、水層を分離し、水(23ml)で希釈した。撹拌しながら、pH6.5になるまで、0.2M HClを加えた。形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノールに溶解し、無色の溶液を蒸発乾固して、(S,S)−Ia 0.31g(68%)を純度99.7%かつee99.8%で得た。
ES−MS m/e:350.3(M)。
【0064】
純度及びee決定のためのHPLC法:Chirobiotic Vカラム(No.461,25cm * 4.6mm)、55%酢酸アンモニウムpH6緩衝液/45%アセトニトリル、流量1ml/分、25℃、220nm、試料調製:アセトニトリル1ml中1mg。保持時間:IIb(3.7分)、(R,S)−/(S,R)−Ib(4.4分)、(S,S)−Ib(5.1分)、(R,R)−Ib(6.4分)、(S)−Vb(14.9分)。
【0065】
実施例6
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ib
【化17】


2lハステロイC4(Hastelloy C4)オートクレーブに、アルゴン下、1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(30.0g、86.15mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](262.5mg、0.34mmol、S/C 250)及びメタノール(0.9l)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で18時間、さらに60℃で2時間行った(99.8%変換率)。圧力を開放した後、形成された白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ib 32.6g(>99%)を純度97.0%かつee>99.9%で得た。粗生成物を1M NaOH(140ml)に溶解した。TBME(200ml)を加え、水層を分離し、水(360ml)で希釈した。撹拌しながら、2M HCl(81ml)を撹拌しながら加えた(pH6.5)。形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノールに溶解し、無色の溶液を蒸発乾固して、(S,S)−Ib 27.2g(90%)を純度99.5%かつee>99.9%で得た。
【0066】
実施例7a−g
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ib
【化18】

【0067】
185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(1.00g、2.87mmol)、[Ru(OAc)((R)−TMBTP)](1.16mg、1.44×10−6mol、S/C 2,000)及びメタノール(30ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(18.5%変換率)。圧力を開放した後、オフホワイトの懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ib 0.98g(12%)を純度12.1%かつee94.5%で得た。
【0068】
表3中の反応を、代替触媒を用い、上述の手順に従って実施した。
【0069】
【表4】

【0070】
実施例7h
(3R,4R)−1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(R,R)−Ib
【化19】

【0071】
2lハステロイC4オートクレーブに、アルゴン下、1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸の塩酸塩(67.0g、174.17mmol)、[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)](2.65g、3.48mmol、S/C 50)、トリエチルアミン(17.62g、174.17mmol)及びメタノール(1.3l)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(98.9%変換率)。圧力を開放した後、形成された灰色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(R,R)−Ib 88.8gを純度95.7%かつee99.3%で得た。
【0072】
粗生成物を1M NaOH(350ml)に溶解した。TBME(600ml)を加え、水層を分離し、水(900ml)で希釈した。撹拌しながら、2M HCl(180ml)を撹拌しながら加えた(pH6.0)。形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノール/水(1:2)に懸濁し、混合物を加熱還流した。室温に冷ました後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキをメタノールで洗浄し、乾燥させて、(R,R)−Ib 46.15g(74%)を純度97.3%かつee99.8%で得た。
【0073】
実施例8
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ib
【化20】


185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(1.00g、2.87mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](0.44mg、0.57×10−6mol、S/C 5,000)及びメタノール(30ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、80℃で20時間行った(99.7%変換率)。圧力を開放した後、形成された白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ib 1.02g(99%)を純度97.6%かつee99.2%で得た。
【0074】
実施例9
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ib
【化21】


185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(1.00g、2.87mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](0.22mg、0.29×10−6mol、S/C 10,000)及びメタノール(30ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、80℃で20時間行った(99.8%変換率)。圧力を開放した後、形成された白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ib 1.03g(>99%)を純度98.0%かつee97.6%で得た。
【0075】
実施例10
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ic
【化22】

【0076】
35mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(50.0mg、0.16mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](1.21mg、1.59×10−6mol、S/C 100)及びメタノール(1.5ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(98.6%変換率)。圧力を開放した後、白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ic 51.9mg(98%)を純度95.6%かつee>99.9%で得た。
MS m/e:318.1(M+H)。
【0077】
純度及びee決定のためのHPLC法:Chirobiotic Vカラム(No.461,25cm * 4.6mm)、55%酢酸アンモニウムpH6緩衝液/45%アセトニトリル、流量1ml/分、25℃、220nm、試料調製:アセトニトリル1ml中1mg。保持時間:IIc(3.6分)、(R,S)−/(S,R)−Ic(4.1分)、(S,S)−Ic(4.5分)、(R,R)−Ic(4.9分)。
【0078】
実施例11
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Ic
【化23】


185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(2.00g、6.34mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](9.66mg、12.7×10−6mol、S/C 500)、トリエチルアミン(342.0mg、6.34mmol)及びメタノール(60ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(>99%変換率)。圧力を開放した後、形成された白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Ic 2.00gをそのアンモニウム塩として純度>99.9%かつee>99.9%で得た。その塩を1M NaOH(10ml)に溶解した。TBME(16ml)を反応混合物に加え、水層を分離し、水(40ml)で希釈した。撹拌しながら、2M HCl(7.1ml)を加えた(pH6.5)。形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノールに溶解し、無色の溶液を蒸発乾固して、(S,S)−Ic 1.70g(88%)を純度98.3%かつee>99.9%で得た。
【0079】
実施例12
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Id
【化24】

【0080】
185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(1.00g、3.01mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](4.59mg、6.03×10−6mol、S/C 500)及びメタノール(30ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.5%変換率)。圧力を開放した後、白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Id 1.03g(>99%)を純度98.3%かつee99.1%で得た。
ES−MS m/e:332.1(M−H)。
【0081】
純度及びee決定のためのHPLC法:Chirobiotic Vカラム(No.461,25cm * 4.6mm)、55%酢酸アンモニウムpH6緩衝液/45%アセトニトリル、流量1ml/分、25℃、220nm、試料調製:アセトニトリル1ml中1mg。保持時間:IId(3.5分)、(R,S)−/(S,R)−Id(4.3分)、(S,S)−Ic(4.7分)、(R,R)−Id(5.4分)。
【0082】
実施例13
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Id
【化25】

【0083】
185mlステンレス鋼オートクレーブに、アルゴン下、グローブボックス(O含有量≦2ppm)中で、1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(1.00g、3.01mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](4.59mg、6.03×10−6mol、S/C 500)、トリエチルアミン(305.0mg、3.01mmol)及びメタノール(30ml)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.2%変換率)。圧力を開放した後、形成された白色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(S,S)−Id 1.08gをそのアンモニウム塩として純度97.3%かつee>99.9%で得た。
【0084】
その塩を1M NaOH(10ml)に溶解した。TBME(16ml)を反応混合物に加え、水層を分離し、水(40ml)で希釈した。撹拌しながら、2M HCl(8.2ml)を撹拌しながら加え(pH6.5)、形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノールに溶解し、無色の溶液を蒸発乾固して、(S,S)−Id 1.00g(97%)を純度97.5%かつee>99.9%で得た。
【0085】
実施例14
(3S,4S)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(S,S)−Id
【化26】


2lハステロイC4オートクレーブに、アルゴン下、1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸(30.0g、90.4mmol)、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)](275.5mg、0.36mmol、S/C 250)及びメタノール(1.2l)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.2%変換率)。圧力を開放した後、白色の懸濁液の試料を蒸発乾固した。粗(S,S)−Idを純度97.9%かつee>99.9%で得た。
【0086】
実施例15
(3R,4R)−1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(R,R)−Id
【化27】

【0087】
2lハステロイC4オートクレーブに、アルゴン下、1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸の塩酸塩(61.3g、166.47mmol)、[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)](2.54g、3.33mmol、S/C 50)、トリエチルアミン(16.84g、166.46mmol)及びメタノール(1.3l)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(99.6%変換率)。圧力を開放した後、形成された灰色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(R,R)−Id 98.0gを純度97.6%かつee99.6%で得た。
【0088】
粗生成物を1M NaOH(330ml)に溶解した。TBME(600ml)を加え、水層を分離し、水(800ml)で希釈した。撹拌しながら、2M HCl(165ml)を撹拌しながら加えた(pH6.3)。形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノール/水(1:2)に懸濁し、混合物を加熱還流した。室温に冷ました後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキをメタノールで洗浄し、乾燥させて、(R,R)−Id 49.0g(83%)を純度99.6%かつee99.6%で得た。
【0089】
実施例16
(3R,4R)−1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−ピロリジン−3−カルボン酸、(R,R)−Ic
【化28】

【0090】
2lハステロイC4オートクレーブに、アルゴン下、1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸の塩酸塩(45.0g、127.92mmol)、[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)](1.95g、2.56mmol、S/C 50)、トリエチルアミン(12.94g、127.92mmol)及びメタノール(1.3l)を入れた。不斉水素化を、水素40bar下、30℃で20時間行った(>99.9%変換率)。圧力を開放した後、形成された灰色の懸濁液を蒸発乾固して、粗(R,R)−Ic 58.9gを純度99.0%かつee>99.9%で得た。
【0091】
粗生成物を、1M NaOH(200ml)に溶解した。TBME(400ml)を加え、水層を分離し、水(800ml)で希釈した。撹拌しながら、2M HCl(105ml)を撹拌しながら加えた(pH5.5)。形成された沈殿物を濾別し、水で洗浄した。フィルターケーキをメタノール/水(1:2)に懸濁し、混合物を加熱還流した。室温に冷ました後、懸濁液を濾過した。フィルターケーキをメタノールで洗浄し、乾燥させて、(R,R)−Ic 29.10g(71%)を純度99.5%かつee>99.9%で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化29】


(ここで、X及びYは、互いに独立に水素又はハロゲン原子であるが、ただし、X又はYの少なくとも一つは、ハロゲン原子である)で表される(3S,4S)−もしくは(3R,4R)−1−ベンジル−4−アリール−ピロリジン−3−カルボン酸誘導体又はその塩の製造方法であって、式(II):
【化30】


(ここで、X及びYは、上記のとおりである)で表される化合物又はその塩の、式(III):
【化31】


(ここで、Tは基:A−COOを表し、
Aは場合によりハロゲンで置換されているC1−7−アルキルを表し、そして
Dはキラルなジホスフィン配位子を表す)で表されるRu−触媒の存在下における触媒的均一エナンチオ選択的水素化を含む、方法。
【請求項2】
ハロゲンを意味するX又はYが、塩素又はフッ素を表すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
TがCHCOO又はCFCOOであることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記キラルなジホスフィン配位子Dが、
【化32】


[ここで、
Arは2−チエニル、3−チエニル、2−フリル、3−フリル、フェニル、又は、一つ以上のC1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、フェニル、ジ−C1−7−アルキルアミノ、N−モルホリノもしくはトリ−C1−7−アルキルシリルで置換されたフェニルであり;
ZはN又はC−Rであり;
はC1−7−アルキルであり;
はC1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ヒドロキシ又は−OC(O)−C1−7−アルキル又は−OC(O)−シクロヘキシルであり;
及びRは互いに独立に、水素、C1−7−アルキル、C1−7−アルコキシ、ハロゲン又はジ−C1−7−アルキルアミノであり;あるいは
同一のフェニル基に結合しているRとRもしくはRとR、又は異なったフェニル基に結合した両方のRは、一緒になって、
−X−(CH−Y−又は−X−(CF)−X−(ここで、XはO又はC(O)Oであり、YはO又はN(C1−7−アルキル)であり、nは1〜6の整数である)である]
からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
式IVaのキラルな配位子が使用されることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
(R)又は(S)−2−フリル−MeOBIPHEPが使用されることを特徴とする請求項4又は5記載の方法。
【請求項7】
式IIIのRu−触媒が、[Ru(OAc)((R)−2−フリル−MeOBIPHEP)]又は[Ru(OAc)((S)−2−フリル−MeOBIPHEP)]であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
前記水素化が圧力1bar〜100barで行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
前記水素化が圧力20bar〜60barで行われることを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記水素化が温度20℃〜100℃で行われることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
前記水素化が温度20℃〜60℃で行われることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記水素化が、触媒の基質に対する比(mol/mol)250〜100,000にて行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の方法。
【請求項13】
前記水素化が、触媒の基質に対する比(mol/mol)1,000〜20,000にて行われることを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記水素化が、溶媒としての低級脂肪族アルコール中で行われることを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の方法。
【請求項15】
前記水素化が、メタノール中で行われることを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
式(II)の化合物が、1−ベンジル−4−(4−クロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸一水和物;1−ベンジル−4−(3,4−ジクロロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸;1−ベンジル−4−(3,4−ジフルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸;1−ベンジル−4−(4−クロロ−3−フルオロ−フェニル)−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−3−カルボン酸から選ばれることを特徴とする請求項1〜15のいずれか記載の方法。
【請求項17】
以上明細書中に記載された方法。

【公表番号】特表2012−512221(P2012−512221A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541308(P2011−541308)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066486
【国際公開番号】WO2010/069793
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】