説明

ピロロ窒素複素環誘導体の薬学的に許容される塩、その調製法、および医学的使用

ピロロ窒素複素環誘導体の薬学的に許容される塩、その調製法、および医学的使用が開示される。より具体的には、式(I)で表される(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-メチレン)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリニル-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩、その調製法、および、治療剤として、特にプロテインキナーゼ阻害剤としてのその使用が開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ピロロ窒素複素環誘導体の薬学的な塩、その調製法、および薬学的使用に関する。具体的には、本発明は、(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的な塩、調製法、および、治療剤として、特にプロテインキナーゼ阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
シグナル伝達は、細胞外刺激がそれによって細胞の内部に中継される基礎的な制御機構である。これらのシグナルは、増殖、分化およびアポトーシスを含む、細胞中の多種多様な物理的応答を制御する。プロテインキナーゼ(PK)はこれらのプロセスにおいて決定的な役割を果たす。チロシンキナーゼ(PTK)およびセリン/スレオニンキナーゼ(STK)というプロテインキナーゼ(PK)の2つのクラスが存在する。PTKは、タンパク質上のチロシン残基をリン酸化することができる。STKは、セリンおよびスレオニン残基をリン酸化することができる。チロシンキナーゼは受容体型(受容体チロシンキナーゼ、RTK)または非受容体型(非受容体チロシンキナーゼ)のいずれかに分類されうる。
【0003】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーは多くの亜族に分類されうるものであり、これらは主に(1) EGFR(Her-1)、Her-2、Her-3およびHer-4などのErbB(Her)ファミリー、(2) インスリン受容体(IR)、インスリン様成長因子I受容体(IGF-IR)などのインスリン受容体ファミリー、(3) 血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、幹細胞因子SCFR(c-Kit)などのクラスIIIファミリーを含む。その他、肝細胞成長因子受容体(HGFR)c-Metおよび血管内皮成長因子受容体(VEGFR)もRTKファミリーに属する。それらは細胞の増殖および分化の制御においてシグナルメッセンジャーとして決定的な役割を果たす(Schlessinger and Ullrich, Neuron 1992, 9, 383(非特許文献1))。
【0004】
EGFR亜族はRTKファミリーの重要なメンバーの1つである。これらのRTKは、受容体の間のリガンド媒介性ホモ二量体化またはヘテロ二量体化によって活性化されうる。二量体化によって、受容体の細胞内触媒ドメインにおけるチロシン残基のリン酸化が生じ、引き続くシグナル分子の将来の結合部位が生成される。これに続いて、微小管関連プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)およびホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI-3キナーゼ)を包含する経路などの細胞内シグナル伝達経路が活性化されて、最終的に細胞シグナル応答が生じる。EGFRおよび/またはHer-2のようなチロシンキナーゼの変異および過剰発現形態が乳癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、胃腸癌、卵巣癌および膵癌などの一般的なヒト癌の大部分に存在することが同定された。したがって、チロシンキナーゼの広がりおよび関連性が腫瘍形成および癌増殖において確認される。
【0005】
受容体チロシンキナーゼのクラスIIIファミリーとして、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)およびc-Kitは二量体化を通じた活性化後にシグナルを伝達し、これはErbBファミリーと同様である。このファミリーのメンバーは、腫瘍細胞の分化、増殖および遊走、ならびに血管新生プロセスに密接に関連している。例えば、c-Kitの高度な発現または変異を小細胞気管支癌、黒色腫、乳癌および神経芽細胞腫に見出すことができた(Schutte et al., innovartis 3/2001(非特許文献2)を参照)。変異によって、特に消化管間質腫瘍(GIST)におけるc-Kit受容体の持続的な活性化が生じることがあり、高い細胞分裂速度および場合によってはゲノム不安定性が生じることがある。こうして癌が誘導される[Weber et al., J. Clin. Oncol. 22(14S), 9642 (2004)(非特許文献3)を参照]。
【0006】
RTKの別の重要なメンバーは血管内皮成長因子受容体(VEGFR)である。VEGFRは、血管新生に直接関与しており、内皮細胞の増殖および遊走を誘導しうるものであり、これに続いて毛細管が形成され、毛細管は、癌増殖を助長する高透過性で未成熟な血管網の形成を促進する。その血管新生活性に加えて、VEGFRおよびVEGFは、腫瘍細胞中で生存促進効果によって腫瘍増殖を直接促進しうる。VEGFRが肺癌、乳癌、卵巣癌、膵癌および黒色腫などの種々の固形悪性腫瘍において高度に発現することが観察された。したがって、腫瘍の発生は、VEGFR活性を阻害することによって阻害することができる。それは腫瘍の処置において有益である。
【0007】
さらに、RTKの1つのメンバーとして、肝細胞成長因子受容体c-Met(HGFR)が腫瘍の形成、浸潤および転移、ならびに細胞運動性の強化に密接に関連していることが証明された(Ma, P.C. et al. (2003b). Cancer Metastasis Rev, 22, 309-25(非特許文献4); Maulik, G. et al. (2002b). Cytokine Growth Factor Rev, 13, 41-59(非特許文献5)を参照)。
【0008】
癌の主要な特徴は、ゲノム損傷および制御されないシグナル経路である。ゲノム損傷は、重要な制御タンパク質の生物学的機能を変化または喪失させ、次にシグナル伝達経路を損傷させる。異常なシグナル経路は、癌細胞を生存させ、遺伝子損傷状態で連続的に増殖する。これらの制御の進行を実現する基礎として、PTKは、腫瘍形成および腫瘍増殖に密接に関連しており、腫瘍を処置するための重要な標的となった。RTKが媒介する不正常な細胞増殖によって生じる生理的障害を、1つまたは複数のRTKを阻害することを通じて有効に寛解させるかまたは処置することが期待されている。
【0009】
国際公開公報第2008/138232号(特許文献1)は、実施例53に開示される化合物が式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンである、新規種類のピロロ窒素複素環誘導体、およびプロテインキナーゼ阻害剤としてのその使用を開示した。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開公報第2008/138232号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Schlessinger and Ullrich, Neuron 1992, 9, 383
【非特許文献2】Schutte et al., innovartis 3/2001
【非特許文献3】Weber et al., J. Clin. Oncol. 22(14S), 9642 (2004)
【非特許文献4】Ma, P.C. et al. (2003b). Cancer Metastasis Rev, 22, 309-25
【非特許文献5】Maulik, G. et al. (2002b). Cytokine Growth Factor Rev, 13, 41-59
【発明の概要】
【0012】
本発明者は、式(I)の化合物が従来の溶媒に難溶性であり、したがって医薬剤形として調製される上で不利であり、それらのインビボバイオアベイラビリティが限定されることを発見する。剤形の従来の調製に使用可能な、式(I)の溶解度および薬物動態学的吸収を改善するためのその新規形態を開発することが必要である。
【0013】
本発明は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩を提供することによって、それらの物理的/化学的性質および薬物動態特性を改善することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の説明
本発明は、式(I)の化合物の薬学的に許容される塩、およびその調製法に関する。好ましくは、式(I)の化合物のマレイン酸塩が、式(I)の化合物それ自体および他のその塩に比べて、溶解度、バイオアベイラビリティおよび薬物動態における利点を示す。

【0015】
第1の局面では、本発明は、当技術分野における従来の無機塩または有機塩である、式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩に関する。さらに、前記無機塩は塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩からなる群より選択され、好ましくは塩酸塩であり、前記有機塩はメシル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、乳酸塩およびリンゴ酸塩からなる群より選択され、好ましくはリンゴ酸塩、乳酸塩、メシル酸塩またはマレイン酸塩である。特に、式(I)の化合物のマレイン酸塩は、式(I)の化合物それ自体および他のその塩に比べて、溶解度、バイオアベイラビリティおよび薬物動態における利点を示す。
【0016】
第2の局面では、本発明は、式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩の調製法に関し、塩は、当技術分野における従来の塩形成方法に従って調製することができる。具体的には、前記方法は、(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンと、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ナフタレンスルホン酸、乳酸およびリンゴ酸からなる群より選択される無機酸/有機酸である対応する酸とを反応させて塩を調製する工程を含む。
【0017】
第3の局面では、本発明は、治療有効量の式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩と薬学的に許容されるその担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0018】
第4の局面では、本発明は、VEGFR-2、EGFR、HER-2、PDGFR、c-Kit、c-MetおよびFGFRに関連する疾患からなる群より選択されるプロテインキナーゼ関連疾患の処置用の医薬の調製における、式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩または薬学的組成物の使用に関する。ここで前記疾患は、肺癌、乳癌、扁平上皮癌、および胃癌からなる群より選択される癌である。
【0019】
第5の局面では、本発明は、必要としている対象に治療有効量の式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩およびその薬学的組成物を投与する段階を含む、プロテインキナーゼ関連疾患の処置のための方法に関する。
【0020】
第6の局面では、本発明は、プロテインキナーゼがVEGFR-2、EGFR、HER-2、PDGFR、c-Kit、c-MetおよびFGFRからなる群より選択されるプロテインキナーゼ阻害薬の調製における、式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩またはその薬学的組成物の使用に関する。
【0021】
第7の局面では、本発明は、肺癌、乳癌、扁平上皮癌、および胃癌からなる群より選択される癌であるプロテインキナーゼ関連疾患の処置用の医薬として使用される、式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩または薬学的組成物の使用に関する。
【0022】
式(I)の化合物のマレイン酸塩が、式(I)の化合物それ自体および他のその塩よりも良好な溶解度、バイオアベイラビリティおよび薬物動態を示すことが、実験結果を通じて同定された。
【0023】
本発明における式(I)の化合物(重要出発原料)の合成方法
式(I)の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの調製法は、国際公開公報第2008/138232号に開示された実施例53の通りであり、したがってこの開示された内容は参照により組み入れられる。
【0024】
具体的な実施方法
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらは本発明の範囲を限定するようには意図されていない。
【実施例】
【0025】
すべての化合物の構造は核磁気共鳴(NMR)および/または質量分析(MS)によって同定した。NMR化学シフト(δ)はppm(10-6)として記録した。NMRはBruker AVANCE-400分光計上で行った。検出溶媒は重水素化ジメチルスルホキシド(d-DMSO)とし、テトラメチルシラン(TMS)を内部標準とし、化学シフトはppm(10-6)として記録した。
【0026】
MSはFINNIGAN LCQAd (ESI)質量分析計(Thermo、モデル: Finnigan LCQ advantage MAX)上で決定した。
【0027】
HPLCはAgilent 1200DAD高圧液体クロマトグラフィー分光計(Sunfire C18 150×4.6mmクロマトグラフィーカラム)およびWaters 2695-2996高圧液体クロマトグラフィー分光計(Gimini C18 150×4.6mmクロマトグラフィーカラム)上で決定した。
【0028】
カラムクロマトグラフィーは担体としてYantai Huanghai 200〜300メッシュシリカゲルを一般に使用した。
【0029】
本発明の出発原料は公知であり、ABCR GmbH & Co. KG、Acros Organics、Aldrich Chemical Companyなどから購入することができる。あるいは、当技術分野における従来の合成方法によって調製することもできる。
【0030】
別途記述がない限り、以下の反応はアルゴン雰囲気または窒素雰囲気下で行った。
【0031】
「アルゴン雰囲気」または「窒素雰囲気」という用語は、反応フラスコが約1Lの窒素で満たされたバルーンを備えていたことを意味する。
【0032】
「水素雰囲気」という用語は、反応フラスコが約1Lの水素で満たされたバルーンを備えていたことを意味する。
【0033】
別途記述がない限り、実施例において使用した溶液は水溶液を意味する。
【0034】
別途記述がない限り、反応温度は室温とした。
【0035】
20℃〜30℃の室温が最も適切な反応温度であった。
【0036】
実施例の反応プロセスは薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニタリングした。展開溶媒系はジクロロメタンおよびメタノール系、n-ヘキサンおよび酢酸エチル系、石油エーテルおよび酢酸エチル系、ならびにアセトンを含むものとした。溶媒の体積比は化合物の極性に従って調整した。
【0037】
カラムクロマトグラフィーの溶出系はA: ジクロロメタン、メタノールおよびアセトン系; B: ヘキサンおよび酢酸エチル系を含むものとした。溶媒の体積比は化合物の極性に従って調整した。場合によっては少量のアンモニアおよび酢酸を加えてもよい。
【0038】
実施例1
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン マレイン酸塩

工程1
5-ホルミル-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
3,5-ジメチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1a(30g、0.11mol)を攪拌下でテトラヒドロフラン300mLに溶解させた後、酢酸360mLおよびH2O 300mLを加えた。混合物を均一に攪拌し、硝酸セリウムアンモニウム(246g、0.45mol)を一度に加えた。0.5時間攪拌後、反応混合物を氷水800mLに注ぎ、さらに0.5時間攪拌し、濾過した。フィルターケーキを減圧乾燥させて標記化合物5-ホルミル-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1b(31.13g、収率98%)を淡黄色固体として得た。
MS m/z (ESI): 282.0[M+1]
【0039】
工程2
5-(2-エトキシカルボニル-ビニル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
5-ホルミル-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1b(23g、81.7mmol)および(カルボエトキシメチレン)トリフェニルホスホラン(34.66g、99.4mmol)を攪拌下でテトラヒドロフラン450mLに溶解させた。12時間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出系Bでのシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して標記化合物5-(2-エトキシカルボニル-ビニル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1c(24g、収率84%)を淡黄色固体として得た。
MS m/z (ESI): 352.1[M+1]
【0040】
工程3
5-(2-エトキシカルボニル-エチル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
水素雰囲気下、5-(2-エトキシカルボニル-ビニル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1c(24g、68.3mmol)を攪拌下で無水エタノール180mLに溶解させた後、10% Pd/C 2.44gを加えた。12時間攪拌後、反応混合物を濾過した。フィルターケーキを少量のエタノールで洗浄した後、濾液を収集し、減圧濃縮して標記化合物5-(2-エトキシカルボニル-エチル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1d(23g、収率95%)を白色固体として得た。
MS m/z (ESI): 354.4[M+1]
【0041】
工程4
5-(2-カルボキシ-エチル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
5-(2-エトキシカルボニル-エチル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1d(23.6g、66.8mmol)を攪拌下でテトラヒドロフラン190mLおよびメタノール90mLに溶解させた後、水酸化リチウム溶液(10M、80mL)を滴下した。1時間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮した。得られた残渣を塩酸(2M)でpH 2に調整し、濾過し、フィルターケーキを減圧乾燥させて標記化合物5-(2-カルボキシ-エチル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1e(24g、収率98%)を白色固体として得た。
MS m/z (ESI): 326.1[M+1]
【0042】
工程5
5-(3-ヒドロキシ-プロピル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
5-(2-カルボキシ-エチル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1e(9.75g、30mmol)を攪拌下で無水テトラヒドロフラン90mLに溶解させた。BH3(1M)のTHF(90mL)溶液を反応混合物に-10〜-5℃でゆっくりと加えた。室温で2〜3時間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム溶液100mLおよび酢酸エチル100mLを加え、酢酸エチル(100mL×3)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濃縮して標記化合物5-(3-ヒドロキシ-プロピル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1f(9.2g、収率98%)を淡黄色油状物として得た。
MS m/z (ESI): 312.3[M+1]
【0043】
工程6
5-(3-メタンスルホニルオキシ-プロピル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
5-(3-ヒドロキシ-プロピル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1f(9.20g、30mmol)を攪拌下でジクロロメタン150mLに溶解させた後、トリエチルアミン(7mL、50mmol)および塩化メチルスルホニル(3.5mL、45mmol)を順次-10℃で加えた。4時間攪拌後、反応混合物に少量の氷水を加え、0.5M塩酸(80mL×2)、飽和炭酸ナトリウム溶液(80mL×2)および飽和食塩水(80mL)で順次洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して標記化合物5-(3-メタンスルホニルオキシ-プロピル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1g(11.4g、収率99%)を褐色油状物として得た。
MS m/z (ESI): 390.5[M+1]
【0044】
工程7
(R)-4-オキシラニルメチル-モルホリン
モルホリン1h (8.7mL、0.1mol)を攪拌下でtert-ブタノール4.5mLに溶解させた後、氷浴中で(R)-(-)-エピクロロヒドリン(8.1mL、0.1mol)を加えた。次に反応混合物を室温に昇温し、24時間攪拌した。tert-ブタノールカリウム(1.67M)のテトラヒドロフラン(60mL)溶液を10℃で反応混合物に滴下した。30分間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮した。残渣にH2O 50mLを加え、ジクロロメタン(100mL×2)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮して標記化合物(R)-4-オキシラニルメチル-モルホリン1i(12.7g、収率88.8%)を黄色油状物として得た。
MS m/z (ESI): 144.4[M+1]
【0045】
工程8
(S)-1-アミノ-3-モルホリン-4-イル-プロパン-2-オール
氷浴中で(R)-4-オキシラニルメチル-モルホリン1i(6.3g、44mmol)を25%アンモニア水450mLにゆっくりと滴下した。18時間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮して標記化合物(S)-1-アミノ-3-モルホリン-4-イル-プロパン-2-オール1j(7g、収率99%)を白色固体として得た。
MS m/z (ESI): 161.1[M+1]
【0046】
工程9
(S)-5-[3-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピルアミノ)-プロピル]-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル
5-(3-メタンスルホニルオキシ-プロピル)-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1g(1.13g、2.9mmol)を攪拌下でジクロロメタン5.6mLに溶解させた後、(S)-1-アミノ-3-モルホリン-4-イル-プロパン-2-オール1j(0.93g、5.8mmol)を加えた。12時間攪拌後、反応混合物を45℃に14時間加熱した。反応混合物に飽和食塩水15mLを加え、ジクロロメタン(20mL×3)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでのシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して標記化合物(S)-5-[3-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピルアミノ)-プロピル]-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1k(600mg、収率72.5%)を無色油状物として得た。
MS m/z (ESI): 454.2[M+1]
【0047】
工程10
(R)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン
(S)-5-[3-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピルアミノ)-プロピル]-3-メチル-1H-ピロール-2,4-ジカルボン酸 2-tert-ブチルエステル 4-エチルエステル1k(580mg、1.28mmol)を攪拌下でトルエン6mLに溶解させた後、氷浴中でトリメチルアルミニウム(2M)のトルエン(1.9mL)溶液を滴下した。反応混合物を24時間加熱還流させた。反応混合物を減圧濃縮し、塩酸(6M)20mLを加え、20分間攪拌した。得られた反応混合物を水酸化ナトリウム溶液(12M)でpH 12に調整し、ジクロロメタン(50mL×2)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでのシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して標記化合物(R)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1m(300mg、収率57.6%)を白色固体として得た。
MS m/z (ESI): 308.2[M+1]
【0048】
工程11
(R)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-4-オキソ-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-ピロロ[3,2-c]アゼピン-2-カルボアルデヒド
塩素メチレンジメチルアンモニウムクロリド(130mg、0.98mmol)を攪拌下でジクロロメタン3mLに溶解させた後、(R)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1m(300mg、0.98mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液を0℃で加えた。室温で20分間攪拌後、反応混合物に水酸化ナトリウム溶液(12M)10mLおよび飽和食塩水10mLを順次加え、ジクロロメタンおよびメタノールの混合溶媒(100mL×3、V/V=10/1)で抽出した。有機抽出物を一緒にし、飽和食塩水100mLで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでのシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して標記化合物(R)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-4-オキソ-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-ピロロ[3,2-c]アゼピン-2-カルボアルデヒド1n(200mg、収率61%)を白色固体として得た。
MS m/z (ESI): 336.2[M+1]
【0049】
工程12
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン
(R)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-4-オキソ-1,4,5,6,7,8-ヘキサヒドロ-ピロロ[3,2-c]アゼピン-2-カルボアルデヒド1n(50mg、0.15mmol)を攪拌下でエタノール261μLに溶解させた後、5-フルオロ-1,3-ジヒドロ-インドール-2-オン(20mg、0.13mmol)およびピペリジン(7.3μL、0.074mmol)を加えた。暗中80℃で2時間攪拌後、反応混合物を室温に冷却し、濾過し、減圧乾燥させて標記化合物(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1p(40mg、収率57%)を黄色固体として得た。

【0050】
工程13
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン マレイン酸塩
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1p(731mg、1.56mmol)およびマレイン酸(217mg、1.87mmol)を攪拌下でメタノール150mLに溶解させた。40℃で20分間攪拌後、反応混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮した。反応混合物にアセトニトリル50mLを加え、20分間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、濾過して(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン マレイン酸塩1(831mg、収率91.1%)を黄色固体として得た。

【0051】
実施例2
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン リンゴ酸塩

(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1p(469mg、1mmol)を攪拌下でメタノール15mLに溶解させた後、L-リンゴ酸(147mg、1.1mmol)を加えた。30分間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮し、アセトニトリル120mLを加え、1.5時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。フィルターケーキをアセトニトリル(1mL×3)およびエタノール(1mL×3)(いずれも氷冷)で順次洗浄して(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン リンゴ酸塩2(535mg、収率88.8%)を黄色固体として得た。

【0052】
実施例3
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン 乳酸塩

(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1p(471mg、1mmol)を攪拌下でメタノール17mLおよびジクロロメタン34mLに溶解させた後、乳酸(90mg、1mmol)を加えた。30分間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮し、アセトニトリル20mLを加え、45分間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。フィルターケーキをアセトニトリル(1mL×3)およびエタノール(1mL×3)(いずれも氷冷)で順次洗浄して(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン 乳酸塩3(502mg、収率90%)を黄色固体として得た。

【0053】
実施例4
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン メシル酸塩

(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1p(470mg、1mmol)を攪拌下でメタノール8mLおよびジクロロメタン16mLに溶解させた後、メタンスルホン酸(96mg、1mmol)を加えた。30分間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮し、アセトニトリル10mLを加え、30分間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、濾過した。フィルターケーキをアセトニトリル(1mL×3)およびエタノール(1mL×3)(いずれも氷冷)で順次洗浄して(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン メシル酸塩4(519mg、収率92%)を黄色固体として得た。

【0054】
実施例5
(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン 塩酸塩

(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン1p(486mg、1mmol)を攪拌下でメタノール5mLおよびジクロロメタン8mLに溶解させた後、塩化水素(5M)の1,4-ジオキサン(2mL)溶液を加えた。1時間攪拌後、反応混合物を減圧濃縮し、アセトニトリル50mLを加え、1時間加熱還流させた。反応混合物を室温に冷却し、濾過して(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オン 塩酸塩5(459mg、収率91%)を黄色固体として得た。

【0055】
試験実施例
溶解度アッセイ
従来の溶解度測定に従って、式(I)の化合物およびその塩の溶解度を生理食塩水中で決定した。結果を表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
結論: 式(I)の化合物の遊離塩基および他の塩に比べて、式(I)の化合物のマレイン酸塩の溶解度は著しく改善された。
【0058】
薬物動態アッセイ
試験実施例1:本発明の化合物の薬物動態アッセイ
1. 実験の目的
ラットを実験動物として使用した。式(I)の化合物および他のその塩を胃内投与し、式(I)の化合物のマレイン酸塩を尾静脈に注射して、LC/MS/MS法によって異なる時点での血漿中薬物濃度を決定した。本発明の化合物の薬物動態挙動、薬物動態特性および絶対的経口バイオアベイラビリティをラットにおいて試験および評価した。
【0059】
2. プロトコール
2.1 実験試料
式(I)の化合物、実施例1〜5の化合物。
【0060】
2.2 実験動物
雄および雌が半数ずつの28匹の健康な成体SDラットを7つの群に分け(各群においてラット4匹)、SINO-BRITISH SIPPR/BK LAB. ANIMAL LTD., COよりライセンス番号: SCXK(上海)2008-0016で購入した。
【0061】
2.3 機器
TSQ Quantum Ultra AM三連四重極質量分析計、Thermo Finnigan(米国);
Agilent 1200高速液体クロマトグラフィーシステム、Agilent(米国)。
【0062】
2.4 試験化合物の調製
静脈注射投与群: 好適な量の化合物を秤量し、生理食塩水に加え、最終容量に希釈した。試料濃度は1.0mg/mLとした。
【0063】
胃内投与群: 好適な量の化合物を秤量し、0.5% CMC-Naに加え、超音波装置を使用して1.0mg/mL懸濁液を調製した。試料は使用時に光から遠ざけて新たに調製すべきである。
【0064】
2.5 投与
雄および雌が半数ずつの28匹の健康な成体SDラットを7つの群に分けた(各群においてラット4匹)。終夜絶食後、実施例1の化合物を用量10mg/kg(基剤部分により計算)、容量10mL/kgで胃内投与または尾静脈に注射した。
【0065】
2.6 試料収集
静脈注射投与群について、血液試料(0.2mL)を眼窩洞から投与前ならびに投与2分後、15分後、30分後、1.0時間後、2.0時間後、4.0時間後、6.0時間後、8.0時間後、12.0時間後、24.0時間後および36.0時間後に採取し、ヘパリン含有管に保管し、3,500rpmで10分間遠心分離した。血漿試料は-20℃で保管した。
【0066】
胃内投与群について、血液試料を投与前ならびに投与0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、6.0、8.0、12.0、24.0および36.0時間後に採取した。試料を処理する方法は静脈注射投与群と同一とした。投与2時間後にラットに給餌した。
【0067】
2.7 分析方法
投与後の様々な時点で採取したラット血漿25μLと内部標準溶液20μLおよびメタノール125μLとをボルテックスミキサーを使用して2分間混合し、混合物を16,000rpmで10分間遠心分離した。上澄み液10μLをLC-MS/MSによって分析した。
【0068】
2.8 検量線の調製
ラットブランク血漿25μLと一連の標準溶液とをそれぞれ混合して血漿濃度1.00、2.00、5.00、25.0、100、500、2000および5000ng/mLを得た。内部標準溶液20μLおよびメタノール150μLを加えた後、混合物を「血漿試料前処理」法に従って操作した。血漿濃度を横軸として使用し、試料と内部標準との間のクロマトグラフィーピーク面積の比を縦軸として使用し、加重最小自乗法(w=1/x2)によって直線回帰を行って典型的な検量線式を得た。
【0069】
2.9 薬物動態パラメータの計算
試験化合物の薬物動態挙動についてコンパートメントモデルフィッティングを行って主要な薬物動態パラメータを計算し、測定値をCmaxおよびtmaxについて取得した。胃内投与および尾静脈での静脈注射後にAUC0-tに従って絶対的経口バイオアベイラビリティを計算した。
【0070】
3. 薬物動態パラメータの結果
本発明の化合物の薬物動態パラメータを表2として示した。
【0071】
結論:
式(I)の化合物の遊離塩基および他の塩に比べて、式(I)の化合物のマレイン酸塩は薬物動態特性およびバイオアベイラビリティの著しい改善を示し、明白な薬物動態学的利点を示した。
【0072】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

の(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンの薬学的に許容される塩。
【請求項2】
無機塩である、請求項1記載の塩。
【請求項3】
前記無機塩が、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩および臭化水素酸塩からなる群より選択され、好ましくは塩酸塩である、請求項2記載の塩。
【請求項4】
有機塩である、請求項1記載の塩。
【請求項5】
前記有機塩が、メシル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、乳酸塩およびリンゴ酸塩からなる群より選択され;好ましくはリンゴ酸塩、乳酸塩、メシル酸塩またはマレイン酸塩であり、最も好ましくはマレイン酸塩である、請求項4記載の塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の塩を調製する方法であって、(R,Z)-2-(5-フルオロ-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-インドール-3-イリデンメチル)-5-(2-ヒドロキシ-3-モルホリン-4-イル-プロピル)-3-メチル-5,6,7,8-テトラヒドロ-1H-ピロロ[3,2-c]アゼピン-4-オンと対応する酸とを反応させて該塩を調製する工程を含む、方法。
【請求項7】
前記酸が、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フマル酸、クエン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ナフタレンスルホン酸、乳酸およびリンゴ酸からなる群より選択される無機酸/有機酸である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項記載の塩の治療有効量と薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項9】
プロテインキナーゼ関連疾患の処置用の医薬の調製における、請求項1〜5のいずれか一項記載の塩または請求項8記載の薬学的組成物の使用。
【請求項10】
前記プロテインキナーゼ関連疾患が、VEGFR-2、EGFR、HER-2、PDGFR、c-Kit、c-MetおよびFGFRに関連する疾患からなる群より選択される、請求項9記載の使用。
【請求項11】
前記疾患が癌である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
前記癌が肺癌、乳癌、扁平上皮癌、および胃癌からなる群より選択される、請求項11記載の使用。
【請求項13】
プロテインキナーゼ阻害薬の調製における、請求項1〜5のいずれか一項記載の塩または請求項8記載の薬学的組成物の使用であって、プロテインキナーゼが、VEGFR-2、EGFR、HER-2、PDGFR、c-Kit、c-MetおよびFGFRからなる群より選択される、使用。

【公表番号】特表2013−518828(P2013−518828A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551483(P2012−551483)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/CN2011/070076
【国際公開番号】WO2011/095068
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512196563)チャンスー ヘンルイ メディシン カンパニー リミテッド (1)
【出願人】(508226621)シャンハイ ヘンルイ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO.LTD.
【住所又は居所原語表記】No.279 Wenjing Road,Minhang District,Shanghai 200245,China
【Fターム(参考)】