説明

ピロール誘導体又はその塩、及びその中間生成物

【課題】新規なピロール誘導体、及びその中間生成物であるピロール誘導体又はその塩などの提供。
【解決手段】本発明は、下記一般式(I)で表されるピロール誘導体、その中間生成物である下記一般式(II)又は(III)で表される化合物又はその塩である。一般式(I)で表されるピロール誘導体は、一般式(II)又は(III)で表される化合物又はその塩から得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロール誘導体、及びその中間生成物であるピロール誘導体又はその塩などに関する。
【背景技術】
【0002】
ジピロメテン化合物のホウ素錯体及び金属錯体は、光記録材料(例えば、特許文献1参照。)、発光材料(例えば、特許文特許2参照。)、光学フィルタ(例えば、特許文献3参照。)、光重合増感剤(例えば、特許文献4参照。)などに有用な化合物である。
ジピロメテン化合物の一般的な製造方法としては、活性位が水素原子のピロール化合物と、活性がホルミル基で置換されたピロール誘導体とを反応させる方法が知られている(例えば、特許文献5参照。)。この活性位がホルミル基で置換されたピロール誘導体の一般的な製造方法は、活性位が水素原子であるピロール化合物をVilsmeier反応させて合成することができる。
しかしながら、分子内にアミノ基又はアミド基等が置換されたホルミル置換ピロール化合物に関しては知られていない。
【特許文献1】特許第3,742,507号明細書
【特許文献2】特開2001−223081号公報
【特許文献3】特開2006−65121号公報
【特許文献4】特許第3,324,279号明細書
【特許文献5】米国特許第4,774,339号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、分子内にアミノ基又はアミド基が導入された新規なピロール誘導体、その中間生成物であるピロール誘導体又はその塩などの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、ジピロメテン化合物に有用な原料であるピロール誘導体の製造方法を種々検討した結果、分子内にアミノ基やアミド基を有するホルミル置換ピロール誘導体や、その前駆体のアミノメチン体の提供を可能とした。本発明は以下の通りである。
【0005】
<1> 下記一般式(I)で表されるピロール誘導体。
【0006】
【化1】

【0007】
一般式(I)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。RとRとが互いに結合して5員又は6員の環を形成していてもよい。
【0008】
<2> 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(I−1)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>に記載のピロール誘導体。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(I−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。
【0011】
<3> 前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(I−2)で表される化合物であることを特徴とする前記<1>に記載のピロール誘導体。
【0012】
【化3】

【0013】
一般式(I−2)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。
【0014】
<4> 下記一般式(II)で表されるピロール誘導体又はその塩。
【0015】
【化4】

【0016】
一般式(II)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、RとRとが互いに結合して5員、又は6員の環を形成していてもよい。R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。NRで表されるアミノ基は、塩を形成していてもよい。
【0017】
<5> 下記一般式(III)で表される化合物又はその塩。
【0018】
【化5】

【0019】
一般式(III)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。NRで表されるアミノ基は、塩を形成していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、新規なピロール誘導体、その中間生成物であるピロール誘導体又はその塩などを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0022】
以下に、本発明のピロール誘導体、その中間生成物である化合物及びその塩について詳述する。
【0023】
本発明のピロール誘導体は、一般式(I)で表される化合物であり、光記録材料、発光材料、光学フィルタ、光重合増感剤等に有用なジピロメテン化合物の合成原料や、医薬中間体として用いることができる。
また、一般式(II)及び(III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物の合成原料として有用である。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式(I)〜(III)中、Rは、水素原子又は置換基を表す。
で表される置換基は、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、アルキル基(炭素数1〜36、好ましくは1〜12の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、ドデシル、イソプロピル、sec−ブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、1−ノルボルニル、1−アダマンチル)、アルケニル基(炭素数2〜36、好ましくは2〜12のアルケニル基で、例えば、ビニル、アリル、3−ブテン−1−イル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリール基で、例えば、フェニル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜24、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル、4−ピリジル、2−フリル、2−ピリミジニル、1−ピリジル、2−ベンゾチアゾリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリル、ベンゾトリアゾール−1−イル)、シリル基(好ましくは炭素数3〜24、より好ましくは炭素数3〜12のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、t−ヘキシルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、1−ブトキシ、2−ブトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ドデシルオキシ、シクロアルキルオキシ基で、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ、ジフェニルメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ、ピバロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、ドデカノイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基で、例えば、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜12のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜36、よりこの好ましくは炭素数1〜12のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N−ブチルカルバモイルオキシ、N−フェニルカルバモイルオキシ、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ、N−プロピルスルファモイルオキシ)、
【0026】
アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ、シクロヘキシルスルホニルオキシ)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ)、アシル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアシル基で、例えば、ホルミル、アセチル、ピバロイル、ベンゾイル、テトラデカノイル、シクロヘキサノイル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、オクタデシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル、N,N−ジエチルカルバモイル、Nーエチル−N−オクチルカルバモイル、N,N−ジブチルカルバモイル、N−プロピルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル、N−メチルN−フェニルカルバモイル、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数12以下のアミノ基で、例えば、アミノ、メチルアミノ、N,N−ジブチルアミノ、テトラデシルアミノ、2−エチルへキシルアミノ、シクロヘキシルアミノ)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜12のアニリノ基で、例えば、アニリノ、N−メチルアニリノ)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜12のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは2〜12のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド、ベンズアミド、テトラデカンアミド、ピバロイルアミド、シクロヘキサンアミド)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のウレイド基で、例えば、ウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N−フェニルウレイド)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数12以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜12のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、オクタデシルオキシカルボニルアミノ、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜18のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、ヘキサデカンスルホンアミド、シクロヘキサンスルホンアミド)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のスルファモイルアミノ基で、例えば、N、N−ジプロピルスルファモイルアミノ、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ、3−ピラゾリルアゾ)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ、エチルチオ、オクチルチオ、シクロヘキシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ)、
【0027】
ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、2−ピリジルチオ、1−フェニルテトラゾリルチオ)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜12のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソプロピルスルホニル、2−エチルヘキシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、オクチルスルホニル、シクロヘキシルスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜12のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル、1−ナフチルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数12以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル、N,N−ジプロピルスルファモイル、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル、N−エチル−N−フェニルスルファモイル、N−シクロヘキシルスルファモイル)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル、オクチルオキシホスホニル、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜12のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ)を表す。
【0028】
で表される置換基が、更に置換可能な基である場合には、前記置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有している場合にはそれらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
一般式(I)〜(III)中、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。RとRとが互いに結合して5員、又は6員の環を形成していてもよい。
【0030】
及びRのアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基は、前記Rの置換基で説明したそれらの基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
及びRのアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基が置換可能な場合には、前記置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
及びRは互いに結合して5員、又は6員の環を形成していてもよく、形成される5員の環としては、ピロリン環、ピロリジン環、ピラゾリジン環、琥珀酸イミド環、γ−ブチロラクタム環、6員の環としては、ピペリジン環、モルホリン環、ピペラジン環、ピペリジン−2,6−ジオン環、モルホリン−3,5−ジオン環等が挙げられる。
【0032】
及びRは互いに結合して形成される環は、前記置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
また、形成される5員又は6員の環は、更に、ベンゼン環、ピリジン環等の環が縮合していてもよい。
【0033】
一般式(I)〜(III)におけるYは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、Yで表されるシアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びヘテロ環の好ましい範囲は、前記Rで説明したそれらの基と同義である。
【0034】
Yのシアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、及びヘテロ環基が置換可能な基である場合には、前記Rの置換基で説明した基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
一般式(II)及び(III)中、R、Rは、各々独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。R及びRのアルキル基及びアリール基の好ましい範囲は、前記Rの置換基で説明したアルキル基及びアリール基と同義である。
及びRのアルキル基及びアリール基は、前記Rで説明した置換基で置換されていてもよく、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
及びRは、アルキル基又はアリール基が好ましく、更に好ましくは、アルキル基であり、無置換のアルキル基が更に好ましく、メチル基が最も好ましい。RとRとは、同一でも異なっていてもよいが、合成のしやすさという観点からは、同一であることが好ましい。
【0037】
一般式(II)及び(III)におけるNRで表されるアミノ基は、塩を形成していてもよく、炭酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、塩酸塩、臭酸塩、硫酸塩などを形成していてもよい。
【0038】
次に、好ましい範囲について説明する。
一般式(I)におけるRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基であることが好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基であることがより好ましく、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基であることが更に好ましく、アルキル基又はアリール基が更に好ましい。
【0039】
一般式(I)におけるRのアルキル基としては、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよいが、直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好適である。また、Rのアルキル基は、無置換であっても上記置換基を有していてもよいが、原料の入手のしやすさ、合成のしやすさの観点から無置換のアルキル基がより好適である。
一般式(I)におけるRのアルキル基として、特に好適には、炭素数1〜8で無置換で、直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、更に好適には、炭素数1〜4で無置換で、直鎖のアルキル基である。
【0040】
一般式(I)におけるRのアリール基は、無置換であっても上記置換基を有していてもよく、Rのアリールの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、アルキルチオ基、アリールチオ基が好ましく、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基がより好ましい。
一般式(I)におけるRのアリール基として、特に好適には、無置換のフェニル基、又はアルキル基若しくはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子)で置換されたフェニル基であり、更に好適には、無置換のフェニル基、又はメチル基若しくは塩素原子で置換されたフェニル基である。
【0041】
一般式(I)におけるR及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基であることが好ましく、水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基であることがより好ましく、アシル基、アルコキシカルボニル基、又はカルバモイル基であることが更に好ましい。
及びRは、同一であっても異なっていてもよいが、一方が水素原子であることが合成のしやすさの観点から好ましく、更には、Rが、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基であって、Rが水素原子であることが好ましい。
【0042】
一般式(I)におけるRのアシル基は、炭素数1〜16のアルキルカルボニル基、又は置換若しくは無置換のベンゾイル基であることが好ましい。
のアルキルカルボニル基におけるアルキル部分は、直鎖、分岐鎖、又は環状のいずれであってもよく、また該アルキル部分は更に置換基を有していてもよい。アルキル部分の置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルコキシカルボニル基、カルボンアミド基、ウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、イミド基、カルボキシル基、スルホンアミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基が好ましく、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、カルボンアミド基、アルコキシカルボニルアミノ基、イミド基、カルボキシル基、スルホンアミド基がより好ましく、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、イミド基、カルボキシル基、スルホンアミド基が更に好ましい。
【0043】
が置換基を有するベンゾイル基の場合において、該置換基としては、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニルカルバモイル基、アリールスルホニルカルバモイル基、カルボキシル基、イミド基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基が好ましく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、カルボキシル基、イミド基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基がより好ましく、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、ニトロ基、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、カルボンアミド基、スルホンアミド基更に好ましい。
【0044】
一般式(I)におけるRのアシル基は、無置換のアシル基又は下記構造式(1)〜(8)で表されるアシル基であることが好ましい。
【0045】
【化7】

【0046】
上記構造式(2)のA及び構造式(3)のBとしては、各々独立に、前記一般式(1)のRの置換基として説明したものを挙げることができ、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環、アシル基又はカルバモイル基であり、特に好ましくは、アルキル基又はアリール基である。
【0047】
前記構造式(2)のA及び構造式(3)のBは、更に置換基を有していてもよく、このような置換基としては、一般式(I)におけるRで説明した置換基を挙げることができる。
前記構造式(2)のA及び構造式(3)のBが置換基を有するフェニル基の場合、該置換基の置換位置は特に制限されず、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよく、該置換基数は1〜5とすることができる。
【0048】
上記構造式(4)におけるC及びCとしては、各々独立に、前記一般式(1)のR、及びRとして説明したものを挙げることができ、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、CとCとが結合性して窒素原子と共に5員若しくは6員のヘテロ環、イミド環、ラクタム環を形成するために必要な原子群(例えば形成されるヘテロ環、イミド環、ラクタム環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、コハク酸イミド環、ジグリコール酸イミド環、又はブチロラクタム環)であり、更に好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、CとCとが結合性して窒素原子と共に5員若しくは6員のヘテロ環、イミド環、ラクタム環を形成するために必要な原子群(例えば形成されるヘテロ環、イミド環、ラクタム環としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、コハク酸イミド環、ジグリコール酸イミド環、又はブチロラクタム環であり、特に好ましくは、アルキル基、アリール基、アシル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基である。
とCとは互いに結合して、環を形成していてもよい。
【0049】
上記構造式(5)〜(8)におけるR10としては、各々独立に、前記一般式(1)のRの置換基として説明したものを挙げることができ、より好ましくは、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、更に好ましくは、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素)、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド、カルボンアミド基、スルホンアミド基、スルファモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基であり、特に好ましくは、ハロゲン原子(フッ素、塩素)、アルキル基、アルコキシ基、イミド、カルボンアミド基、スルホンアミド基、アルキルチオ基である。
上記構造式(5)〜(8)におけるnは、0〜5の整数を表し、0〜3好ましく、0〜2がより好ましく、0〜1がさらに好ましい。
【0050】
上記構造式(5)〜(8)におけるR10の置換位置は特に制限されないが、オルト位又はメタ位であることが、溶解性の観点から好ましい。
【0051】
一般式(I)におけるYは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基であることが好ましく、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基であることがより好ましく、シアノ基又はアルコキシカルボニル基であることが更に好ましい。
【0052】
一般式(I)におけるYのアルコキシカルボニル基としては、シクロヘキシルオキシカルボニル基が、合成のしやすさ、化合物の安定性の観点から好適である。シクロヘキシルオキシカルボニル基は、シクロヘキシル部分に置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基である。前記シクロヘキシル部分の置換基の置換位置は、オルト位又はパラ位であることが、合成のし易さ、化合物の安定性の観点から好ましい。また前記オルト位の置換基は、分岐状のアルキル基であることが、化合物の安定性の観点から好ましい。
一般式(I)におけるYのアルコキシカルボニル基は、下記構造であることが特に好ましい。
【0053】
【化8】

【0054】
一般式(I)におけるR、R、R、Yの好適な組み合わせについて説明する。
一般式(I)において好ましくは、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であって、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基であって、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基であることが好ましい。
【0055】
更に好ましくは、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であって、R及びRは、各々独立に水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基であって、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基である。
【0056】
更に好ましくは、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基であって、R及びRは、各々独立に水素原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であって、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基である。
【0057】
更に好ましくは、Rはアルキル基又はアリール基であって、Rは、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であって、Rは水素原子であって、Yは、シアノ基、又はアルコキシカルボニル基である。
【0058】
最も好ましくは、Rはアルキル基又はアリール基であって、Rは、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基であって、Rは水素原子であって、Yは、シアノ基、又は2,6−ジ−tertブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基である。
すなわち、一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(I−1)〜(I−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0059】
【化9】

【0060】
一般式(I−1)〜(I−2)中、R及びRは、一般式(I)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好ましくは、Rはアルキル基又はアリール基であり、Rは、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である。
【0061】
次に、一般式(II)及び(III)におけるR、R、R、Y、R及びRの好適な組み合わせについて説明する。
一般式(II)及び(III)においてR〜R及びYの好ましい組み合わせは、一般式(I)におけるR〜R及びYの好適な組み合わせと同様であり、R及びRは、各々独立にアルキル基、アリール基が好ましく、最も好ましいR及びRは、共にメチル基である。
【0062】
一般式(II)は、下記一般式(II−1)又は(II−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
【化10】

【0064】
一般式(II−1)又は(II−2)中、R及びRは、一般式(II)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好ましくは、Rはアルキル基又はアリール基であり、Rは、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である。R及びRは、一般式(II)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好ましくはメチル基である。
【0065】
一般式(III)は、下記一般式(III−1)又は(III−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0066】
【化11】

【0067】
一般式(III−1)又は(III−2)中、R及びRは、一般式(III)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好ましくは、Rはアルキル基又はアリール基であり、Rは、アシル基、アルコキシカルボニル基又はカルバモイル基である。R及びRは、一般式(III)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好ましくはメチル基である。
【0068】
以下に、一般式(I)〜(III)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されない。
【0069】
【化12】

【0070】
【化13】

【0071】
【化14】

【0072】
【化15】

【0073】
【化16】

【0074】
【化17】

【0075】
【化18】

【0076】
【化19】

【0077】
【化20】

【0078】
【化21】

【0079】
【化22】

【0080】
【化23】



【0081】
【化24】

【0082】
【化25】

【0083】
【化26】

【0084】
【化27】

【0085】
【化28】

【0086】
【化29】

【0087】
【化30】

【0088】
【化31】

【0089】
【化32】

【0090】
次に、一般式(I)〜(III)で表される化合物の合成について説明する。
一般式(I)〜(III)で表される化合物の合成に用いられるアミノピロール誘導体は、特開平10−316654号公報に記載の方法に準じて合成できる。
【0091】
一般式(II)及び(III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物の合成中間体である。一般的には、一般式(II)及び(III)は、下記一般式(II-3)及び(III-3)で表される化合物として得られ、NRで表されるアミノ基又はアミド基は、アンモニウム塩(イミニウム塩)となっている。
【0092】
【化33】

【0093】
一般式(II-3)及び(III-3)中、R〜R及びYは、前記一般式(II)及び(III)におけるR〜R及びYと同義であり、好適な範囲も同様である。
一般式(II-3)及び(III-3)におけるZは、アンモニウムイオン(イミニウムイオン)の対イオンであり、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、次亜塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、酢酸イオン、炭酸水素イオン、燐酸二水素イオン、硫酸水素イオン、硫化水素イオン、チオシアン酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、炭酸イオン、クロム酸イオン、二クロム酸イオン、燐酸一水素イオン等である。好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、硫酸イオンが挙げられる。
【0094】
一般式(I)で表される化合物は、一般式(II-3)及び(III-3)で表される化合物を加水分解することにより得られる。
【0095】
【化34】

【0096】
参考として、本発明の一般式(I)で表されるピロール誘導体から得られる、ジピロメテン化合物、ジピロメテン金属錯体、ジピロメテンホウ素錯体について説明する。
【0097】
本発明のピロール誘導体から導かれるピロメテン化合物は、下記一般式(IV)で表される化合物である。
【0098】
【化35】

【0099】
一般式(IV)中、R〜R及びYは、一般式(I)におけるR1〜R及びYとそれぞれ同義であり、好適な範囲も同様である。R’はRと同義であり、R1’とRは同じであっても異なっていてもよく、R2’とRは同義であり、R2’とRは同義であり、R2’とRは同じであっても異なっていてもよく、R3’とRは同義であり、R3’とRは同じであっても異なっていてもよく、Y’はYと同義であり、Y’とYは同じであっても異なっていてもよい。
【0100】
前記一般式(IV)で表されるピロメテン化合物の製造方法について説明する。
一般式(I)で表される本発明の化合物と、下記一般式(I−3)で表される化合物とを、酸触媒(例えば、臭化水素酸や塩化水素、酢酸、トリフロロ酢酸、ジフロロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等)の存在下に適当な溶媒中で反応させて、一般式(IV)で示されるジピロメテン化合物を得る。この反応においては、脱水剤として酸無水物(例えば、無水酢酸、無水トリフロロ酢酸、酢酸とメタンスルホン酸の混合酸無水物)、酸ハロゲン化物(例えば、アセチルクロライド、塩化チオニル、オキシ塩化リン)を用いて行ってもよい。
【0101】
【化36】

【0102】
本発明のジピロメテン化合物金属錯体は、下記一般式(V−1)、下記一般式(V−2)、及び下記一般式(V−3)で表される化合物である。
特に、一般式(V−3)で表されるジピロメテン金属錯体が、吸収特性(色純度が高く、モル吸光係数が大きい)、安定性の観点から好ましい。
【0103】
【化37】

【0104】
一般式(V−1)、一般式(V−2)、一般式(V−3)中、R〜R、R1’〜R3’、Y及びY’は、一般式(IV)におけるR〜R、R1’〜R3’、Y、及びY’とそれぞれ同義であり、好適な範囲も同様である。R及びRは、各々独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、又はヘテロ環アミノ基を表す。RとRは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよく、RとR2’が互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。
Maは、錯体を形成可能な金属又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、又は2価の金属塩化物が含まれる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe等の他に、AlCl、InCl、FeCl、TiCl、SnCl、SiCl、GeClなどの金属塩化物、Tio、VO等の金属酸化物、Si(OH)等の金属水酸化物も含まれる。
これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、又はVOが好ましく、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、又はVOが更に好ましく、Znが最も好ましい。
一般式(V−1)中、Xは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表し、Xは、Maに(配位)結合可能な基を表す。XとXは、互いに結合して5員、6員、又は7員の環を形成していてもよい。
一般式(V−1)におけるXは、金属原子Maに(配位)結合可能な基であればいずれであってもよく、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)等、更に「金属キレート」[1]坂口武一・上野景平著(1995年 南江堂)、同[2](1996年)、同[3](1997年)等、に記載の化合物が挙げられる。
【0105】
一般式(V−1)に置けるXは、Maの電荷を中和する為に必要な基を表し、例えば、ハロゲン、水酸基、カルボン酸基、燐酸基、スルホン酸基等が挙げられる。
【0106】
一般式(V−1)におけるXとXとが互いに結合して、Maとともに5員、6員、又は7員の環を形成してもよい。形成される5員、6員、及び7員の環は、飽和環であっても不飽和環であってもよい。また、5員、6員、及び7員の環は、炭素原子のみで構成されていてもよく、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子を少なくとも1個有するヘテロ環を形成していてもよい。
【0107】
一般式(V−3)中の、Xは、Maと(配位)結合可能な基を表し、aは0、1、又は2を表し、Xは、前記一般式(V−1)におけるXと同義であり、好ましくは、Xは酸素原子を介して結合する基であり、aは0又は1で表される。
【0108】
一般式(V−1)、一般式(V−2)、及び一般式(V−3)で表されるジピロメテン化合物金属錯体の製造方法について説明する。
一般式(IV)で示されるジピロメテン化合物と、ニッケル、コバルト、鉄、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銅、オスミウム、イリジウム、白金、亜鉛等金属の酢酸塩やハロゲン化物とを反応させて、金属配位した一般式(V−1)、一般式(V−2)、一般式(V−3)で示されるジピロメテン化合物金属錯体を得ることができる。
【0109】
本発明のホルミル置換ピロール誘導体から導かれるジピロメテン化合物ホウ素錯体は、下記一般式(VI)で表される化合物である。
【0110】
【化38】

【0111】
一般式(VI)中、R〜R、R1’〜R3’、Y、及びY’は、一般式(IV)におけるR〜R、R1’〜R3’、Y、及びY’とそれぞれ同義であり、好適な範囲も同様である。Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、又はヘテロ環チオ基を表す。
Xのハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びヘテロ環チオ基は、前記Rの置換基で説明した、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、アルキルチオ基、アリールチオ基、及びヘテロア環基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0112】
一般式(VI)で表されるジピロメテン化合物ホウ素錯体の製造方法について説明する。
一般式(IV)で示されるジピロメテン化合物と三フッ化ホウ素、ホウ酸エステルなどのホウ素化合物とを反応させて、ホウ素配位した一般式(VI)で示されるジピロメテン化合物ホウ素錯体を得る。
【0113】
一般式(IV)〜(VI)で表されるジピロメテン化合物、その金属錯体及びホウ素錯体は、光記録材料、発光材料、光学フィルタ、光重合増感剤等に有用な化合物である。また、一般式(IV)〜(VI)で表されるジピロメテン化合物、その金属錯体及びホウ素錯体には、アミノ基又はアミド基が導入されているため、合成がしやすく、錯体の安定性、吸収特性の観点で特に有用である。
【実施例】
【0114】
以下実施例において、本発明の化合物の合成方法を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の主旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って本発明の範囲は以下の実施例に制限されるものではない。
【0115】
[合成例1]
(例示化合物PA−1の合成)
以下の反応スキームAに従って合成した。
【0116】
【化39】

【0117】
(化合物Bの合成)
特開平10−316654号公報に記載の方法に準じて合成した化合物A17.4g(0.05モル)にアセトニトリル50mlを加えて加熱還流攪拌した。この溶液に無水酢酸6mlを滴下した。滴下終了後、2時間加熱還流攪拌し反応を完結させた。反応終了後、この反応液を冷却して析出した結晶をろ過し、次いでアセトニトリルで洗浄して乾燥した。化合物Bを12.0g(収率:61.5%)得た。
【0118】
(例示化合物PA−1の合成)
DMF20mlを5℃に冷却し、撹拌してオキシ塩化リン4.6mlを滴下した。滴下終了後、5℃〜10℃で30分間撹拌した。この溶液に前記の方法で得た化合物B10gをDMF20mlに溶解した溶液を滴下した。反応温度は、10℃以下に保った。この反応液を5℃〜10℃で2時間撹拌して反応を完結させ、一般式(III)に相当する化合物Cの塩酸塩を合成した。
反応終了後、この反応液を水300ml中に撹拌しながら注ぎ、次に、水酸化ナトリウム10gを水50mlに溶解した水溶液を滴下した。滴下終了後、室温で30分間撹拌して、析出した結晶をろ過し、水洗した。この結晶をアセトニトリル50mlで再結晶して精製した。例示化合物PA−1を8.2g(収率:76.5%)得た。例示化合物PA−1のHNMRを示す。
【0119】
HNMR(CDCl
11.1(s,1H)、10.47(s,1H)、9.64(s,1H)、6.03(s,1H)、2.58(s,3H)、2.29(s,3H)、1.80〜1.70(br,2H)、1.40〜1.15(br,5H)、1.05(d,3H)、0.90(s,18H)
【0120】
[合成例2〜合成例16]
上記合成例1の方法に準じて、以下に示す例示化合物を合成した。HNMRを示す。
【0121】
【表1】

【0122】
[合成例17]
(例示化合物PE−1の合成)
以下の反応スキームBに従って合成した。
【0123】
【化40】

【0124】
(PE−1の合成)
化合物Fを特開平10−316654号公報に記載の方法に準じて合成した。
ジメチルホルムアミド(DMF)20mlを5℃に冷却、撹拌して、オキシ塩化リン6.1gを滴下した。滴下終了後、5〜10℃で1時間撹拌した。この溶液にアミノピロール体である化合物F 9gをDMF10mlに溶解した溶液を滴下した。反応温度は10℃以下に保った。滴下終了後、5℃〜10℃で二時間撹拌して反応を完結させた。反応終了後、この反応液を水100ml中に撹拌しながら注いだ。析出した結晶をろ過した。この結晶を炭酸水素ナトリウム5gを水200mlに溶解した水溶液中に添加して、室温で1時間撹拌した。結晶をろ過して、メタノールで洗浄し、乾燥した。例示化合物PE−1を6.2g(収率:60.8%)得た。得られた例示化合物PE−1のHNMR(DMSOd6)データを以下に示す。
【0125】
1HNMR(DMSOd6):
10.75(s,1H)、7.70(s,1H)、7.33〜7.06(m,5H)、6.25(s,1H)、5.70(s,1H)、2.98(s,6H)、1.35〜1.20(m,3H)、1.08〜0.97(m,2H)、0.95〜0.70(m,23H)
【0126】
[合成例18]
合成例17の方法に準じて、例示化合物PE−2を合成した。得られた例示化合物PE−2のHNMR(CDCl)データを以下に示す。
【0127】
1HNMR(CDCl3):
8.98(s,1H)、7.48〜7.25(m,5H)、5.86(s,1H)、4.07(t,2H)、2.96(s,3H)、2.88(s,3H)、2.65(t,2H)、2.32〜2.15(m、2H)、1.32~1.14(m,3H)、1.05〜0.93(m,2H)、0.90〜0.65(m,23H)
【0128】
[参考例1]
(ピロメテン化合物の合成)
以下の反応スキームCに従って合成した。
【0129】
【化41】

【0130】
(化合物Hの合成)
合成例1で得た化合物PA−1の20.9gに、無水酢酸60mlと、トリフロロ酢酸20mlとを加えて5℃〜10℃に冷却して攪拌した。この溶液に、合成例1の中間生成物である化合物Bの19.5gを、60mlの無水酢酸に溶解した溶液を滴下した。反応液の温度は10℃以下に保った。この反応液を2時間攪拌して反応を完結させた。反応終了後、この反応液を、水2000ml中に攪拌しながらゆっくり注ぎ、結晶を析出させた。この結晶をろ過して水洗し、乾燥した。この結晶をアセト二トリルから再結晶して精製し、一般式(IV)に相当する化合物Hを30.9g(収率:78.2%)得た。最大吸収波長、モル吸光係数は、それぞれ、λmax=498.9nmであり、ε=58900であった。
【0131】
[参考例2]
(ジピロメテン化合物金属錯体の合成)
以下の反応スキームDに従って合成した。
【0132】
【化42】

【0133】
(化合物Iの合成)
酢酸亜鉛2水和物5.49g(0.025mol)にメタノール250mlを加えて室温で攪拌した。この溶液に、前記の方法で得た化合物Hの15.8g(0.02mol)を添加した。添加終了後、室温で5時間撹拌した。析出した結晶をろ過して、メタノールで洗浄した後、乾燥し、一般式(V−3)に相当する化合物Iを16.3g(収率:89.1%)得た。酢酸エチル溶液中の最大吸収波長は533.1nmで、モル吸光係数は130000であった。
なお、1HNMR(CDCl)の詳細は、10.87(s,1H)、7.25(s,1H)、6.00(s,1H)、2.52(s,6H)、2.42(s,6H)、1.94(s,3H)、1.79〜1.43(br,8H)、1.38〜1.17(m,8H)、1.05(d,6H)、0.96〜0.74(br,36H)であった。
【0134】
[参考例3]
(ジピロメテン化合物ホウ素錯体の合成)
以下の反応スキームEに従って合成した。
【0135】
【化43】

【0136】
(化合物Jの合成)
参考例1と同様の方法に従って合成した化合物PF−1の7.07g(0.01mlo)に、脱水テトラヒドロフラン100mlを加えて室温で撹拌した。この溶液に1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)の1.8gを加えて室温で撹拌した後、46〜49質量%の濃度のトリフロロボランジエチルエーテル溶液32mlを滴下した。この反応液を室温で、1時間撹拌した後、加熱還流撹拌を5時間行った。反応終了後、室温に冷却してから、3質量%重曹水1500ml中に撹拌しながらゆっくり注いだ。次いで酢酸エチル500mlを添加して抽出した。この酢酸エチル溶液を飽和食塩水で洗浄してから、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。この酢酸エチル溶液を減圧下で濃縮した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:n−ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で分離精製し、アセトニトリルから結晶を析出させて、ろ過して乾燥し、、一般式(VI)に相当する化合物Jの4.2g(収率:55.6%)を得た。酢酸エチル中の可視部の最大吸収波長は561.4nmであり、吸光係数は163300であった。
【0137】
1HNMR(CDCl
6.94(s,1H)、6.80〜6.45(br,4H)、6.00(s,2H)、2.48(s,6H)、1.75〜1.63(br,4H)、1.60〜1.45(br,4H)、1.35〜1.15(m,6H)、1.02(d,6H)、0.88(s,36H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるピロール誘導体。
【化1】


〔一般式(I)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。RとRとが互いに結合して5員又は6員の環を形成していてもよい。〕
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(I−1)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のピロール誘導体。
【化2】


〔一般式(I−1)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。〕
【請求項3】
前記一般式(I)で表される化合物が、下記一般式(I−2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載のピロール誘導体。
【化3】


〔一般式(I−2)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。〕
【請求項4】
下記一般式(II)で表されるピロール誘導体又はその塩。
【化4】


〔一般式(II)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表し、RとRとが互いに結合して5員、又は6員の環を形成していてもよい。R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。NRで表されるアミノ基は、塩を形成していてもよい。〕
【請求項5】
下記一般式(III)で表される化合物又はその塩。
【化5】


〔一般式(III)中、Rは水素原子又は置換基を表し、Yは、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はヘテロ環基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、又はアリールスルホニル基を表す。R及びRは、各々独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。NRで表されるアミノ基は、塩を形成していてもよい。〕

【公開番号】特開2009−234969(P2009−234969A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82086(P2008−82086)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】