説明

ピン構造体およびピン駆動機構

【課題】係合ピンを個別に回動支持することで製作・保守が容易で耐摩耗性に優れたピン構造体を提供すること。
【解決手段】対向して配置された一対の側面プレート110と側面プレート110の間に所定間隔で跨設される係合ピン120とを備えて係合ピン120と噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体の回転により駆動されるピン構造体100であって、係合ピン120が側面プレート110のそれぞれに対向して設けたピン支承部材130の間に挟持されてピン支承部材130が係合ピン120の端部を回動自在に支持する転がり支持部140を備えているピン構造体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプロケットまたはピニオン、ギヤ等により直線駆動または回転駆動されるピンラックまたはピンホイールのようなピン構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、部品搬送用回転テーブルの回転駆動機構に使用されてモータ等の駆動装置に連結したスプロケットにより駆動されるピンホイールや、車両の生産ラインにおいて搬送台車の直線駆動機構に使用されて同じくモータ等の駆動装置に連結されたピニオンにより駆動されるピンラックのように、一対の側板の間に所定間隔で係合ピンを跨設した環状または直線状のピン構造体を、ピン構造体の係合ピンと係合する、例えばスプロケットまたはピニオン、のような外周面に歯状突起を備えた歯付回転体により、回転駆動または直線駆動する駆動機構が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
従来技術の駆動機構において使用されているピン構造体は、一対の側板のそれぞれに所定間隔でピン装着孔を穿孔し、穿孔された多数のピン装着孔に各々係合ピンを圧入等の方法で固定して形成されていて、それぞれの係合ピンには耐摩耗性の中空ローラを回動自在に遊嵌したものであった。
この耐摩耗性の中空ローラを遊嵌したことにより、スプロケットのような駆動側回転体の歯状突起がピン構造体の係合ピン側に係合しても、回動自在に遊嵌された耐摩耗性の中空ローラが介在することにより、係合ピン側に部分的な摩耗が生ずることなく、駆動機構を全体として長期にわたり使用可能なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登3005224号公報
【特許文献2】特開平11−079410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の駆動機構に使用されているピン構造体にあっては、各々の係合ピンに中空ローラを回動自在に遊嵌して、この中空ローラの存在によりスプロケット等の噛合歯と係合ピンと円滑に噛合うようにするものであり、中空ローラと係合ピンとは、通常、相互に滑り接触状態で回動自在とされていた。
そこで、中空ローラと係合ピンとの間の摩擦特性を改善するため、両者の間にモリブデン等の固体潤滑剤が介挿されてはいるが、両者の間において滑り摩擦が生ずることはやむを得ず、双方または何れかの部材が逐次摩耗してゆくため、その寿命を長寿命とすることが難しいという問題があった。
【0006】
また、係合ピンが側板に対し圧入等の方法で固定されているため、1か所でも係合ピンまたは中空ローラが損壊すると、ピン構造体の全体、あるいは、側板が複数のセグメントで構成されている場合であれば損壊した係合ピンまたは中空ローラを具備する部分のセグメント全体を交換する必要があり、保守作業において無駄が多く生ずるという問題があった。
【0007】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、本発明の技術的課題、すなわち、本発明の目的は、係合ピンを個別に回動支持することで製作・保守を簡易に行えて耐摩耗性に優れたピン構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、対向して配置された一対の側面プレートと該側面プレートの間に所定間隔で跨設される係合ピンとを備えて該係合ピンと噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体の回転により駆動されるピン構造体であって、前記係合ピンが前記側面プレートのそれぞれに対向して設けたピン支承部材の間に挟持されて、該ピン支承部材が前記係合ピンの端部を回動自在に支持する転がり支持部を備えていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項2に係る発明のピン構造体は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記ピン支承部材が、前記係合ピンの軸方向端部と当接するスラスト支持部を備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
請求項3に係る発明のピン構造体は、請求項1または請求項2に係る発明の構成に加えて、前記ピン支承部材が、前記側面プレートに着脱自在に固着されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
請求項4に係る発明のピン構造体は、請求項1ないし請求項3のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記側面プレートが、それぞれ複数のセグメントを結合して一つの側面プレートを構成していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
請求項5に係る発明のピン構造体は、請求項1ないし請求項4のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記側面プレートが一対の環状プレートで構成されて、前記歯付回転体により回転駆動することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0013】
請求項6に係る発明のピン構造体は、請求項1ないし請求項4のいずれかに係る発明の構成に加えて、前記側面プレートが一対の直線状プレートで構成されて、前記歯付回転体により直線駆動することにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のピン構造体と、該ピン構造体の備える係合ピンと噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体とより構成されて、該歯付回転体の回転運動によりピン構造体を駆動するピン駆動機構としたことにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0015】
なお、本明細書において「ピン構造体」なる語は、所謂ピンホイール、ピンラックのような、平行に位置する環状または直線状の一対若しくはそれ以上の数の側面プレートの間に係合ピンのようなピン状係合部材を所定間隔で配列したもので、ピニオン、スプロケットのような歯状突起を備えた回転体により駆動されるような構造体を、また「ピン駆動機構」なる語は、前述した「ピン構造体」とこれを駆動する歯付回転体とより構成されて、回転する歯付回転体の歯状突起とピン状係合部材とが噛合して相互に回転駆動または直線駆動する駆動機構を、それぞれ意味するものである。
【発明の効果】
【0016】
そこで、請求項1に係る発明のピン構造体によれば、対向して配置された一対の側面プレートとこれらの側面プレートの間に所定間隔で跨設される係合ピンとを備えて係合ピンと噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体により駆動されることにより、従来のホイール、ラック構造のように、インボリュート、サイクロイドのような製作に手間のかかるギヤ構造をホイール、ラック全体にわたって形成する必要がなく、単に係合ピンを一対の側面プレートの間に跨設するのみでピン構造体を形成するため、ピン構造体の製作作業を大幅に簡易化できるものである。
【0017】
また、係合ピンが側面プレートのそれぞれに対向して設けたピン支承部材の間に挟持されてピン支承部材が係合ピンの端部を回動自在に支持する転がり支持部を備えていることにより、係合ピンをピン支承部材の間に挟持するのみで係合ピンの組み付けおよび位置決めがなされるため、従前のような固定位置について細心の注意を要する圧入作業を不要として係合ピンの装着作業を大幅に簡易化することができるとともに、いずれかの係合ピンまたはピン支承部材が破損した場合には、破損した箇所の係合ピンまたはピン支承部材のみを交換すればよいため、従来技術のようにピン構造体の全体あるいはその特定のセグメント部分全体を交換する必要がなくなり保守作業における無駄を大幅に軽減することができる。
さらに、係合ピンを側面プレートに対し転がり支持して回動自在として従前使用されていた中空ローラを不要として負荷のかかる箇所から滑り摩擦部分を除去したため、従来長寿命化において懸案となっていた中空ローラと係合ピンとの間での摺動摩耗の問題が解消され、係合ピンおよび側面プレート、ひいてはピン構造体全体を従来よりもはるかに長寿命とすることができる。
【0018】
請求項2に係る発明のピン構造体によれば、請求項1に係る発明の奏する効果に加えて、ピン支承部材が係合ピンの軸方向端部と当接するスラスト支持部を備えていることにより、スラスト支持部が係合ピンの端面に対して耐摩耗性部材として機能するため、係合ピンとピン支承部材との間におけるスラスト方向の摩耗を軽減することができてピン構造体をさらに長寿命とすることができる。
【0019】
請求項3に係る発明のピン構造体によれば、請求項1または請求項2に係る発明の奏する効果に加えて、ピン支承部材が側面プレートに着脱自在に固着されていることにより、係合ピンに損傷が生じた場合のピン交換作業におけるピン支承部材の取り外し、取り付け作業を簡単に行えるため、ピン構造体における保守作業の作業性を大幅に改善することができる。
【0020】
請求項4に係る発明のピン構造体によれば、請求項1ないし請求項3のいずれかに係る発明の奏する効果に加えて、側面プレートがそれぞれ複数のセグメントを結合して一つの側面プレートを構成していることにより、各々の側面プレート全体を一体として形成する場合に比べ製造歩留りが向上するとともに、側面プレートが部分的に損傷した場合には損傷した箇所のセグメントのみを交換すればよいため、製作、保守作業における無駄を一層軽減することができる。
【0021】
請求項5に係る発明のピン構造体によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに係る発明の奏する効果に加えて、側面プレートが一対の環状プレートで構成されて歯付回転体により回転駆動するようにしたことにより、本発明のピン構造体を回転駆動機構の一方の要素として構成するため、従前公知の回転テーブルや回転ドラムなどの回転駆動機構に使用することができる。
【0022】
請求項6に係る発明のピン構造体によれば、請求項1ないし請求項4のいずれかに係る発明の奏する効果に加えて、側面プレートが一対の直線状プレートで構成されて歯付回転体により直線駆動するようにしたことにより、本発明のピン構造体を直線運動機構の一方の要素として構成するため、従前公知の搬送台車などの直線駆動機構に使用することができる。
【0023】
請求項7に係る発明のピン駆動機構によれば、請求項1ないし請求項6のいずれかに係るピン構造体と同様に製作・保守の簡便で摩耗特性に優れたピン駆動機構とすることができるとともに、ピン構造体の係合ピンを側面プレートに対し転がり支持して回動自在として従前使用されていた中空ローラを不要としたことにより、中空ローラと係合ピンとの間での摺動摩耗の問題が解消するため、ピン駆動機構全体を長寿命とすることができて、さらに、従前スプロケットの歯状突起が遊嵌状態の中空ローラを介して係合ピンと相互作用する際に不可避的に発生していた動力伝達ロスを解消するため、ピン駆動機構全体の伝動効率を向上させることができる。
また、構造的に従前使用されていたピンホイール、ピンラック等の駆動機構と互換性を有するものであるため、従前よりこの種のピンホイール、ピンラックが使用されていた種々の回転駆動機構、直線駆動機構についても汎用性高く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例であるピン構造体の斜視図。
【図2】図1に示されるピン構造体に使用されるピン支承部材の部分断面斜視図。
【図3】図1に示されるピン構造体の断面図。
【図4】本発明の第2実施例である環状プレートピン駆動機構の斜視図。
【図5】本発明の第3実施例である直線プレートピン駆動機構の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、対向して配置された一対の側面プレートとこれら側面プレートの間に所定間隔で跨設される係合ピンとを備えて係合ピンと噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体により駆動されるピン構造体であって、係合ピンが前記側面プレートのそれぞれに対向して設けたピン支承部材の間に挟持されてピン支承部材が前記係合ピンの端部を回動自在に支持する転がり支持部を備えていて、係合ピンを個別に回転支持することで製作・保守を簡便に行えて耐摩耗性に優れたものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0026】
すなわち、本発明で使用されるピン構造体は、従来技術において記載したような部品搬送用回転テーブルの回転駆動機構や、搬送台車の直線駆動機構に使用されるものであってもよいし、円筒ドラムを駆動する回転駆動機構や、風力発電機の風車により発電機を駆動する駆動機構に使用するものであってもよい。
また、ピン構造体がスプロケット等の歯付回転体によって駆動されるものとして記載しているが、逆にピン構造体の運動により歯付回転体を駆動するように構成しても構わない。
【0027】
また、ピン構造体の側面プレートは、複数のセグメント部分を合体して一つのプレートを構成するようにしてもよいし、一対の側面プレートのそれぞれを一つの部材で構成してもよく、セグメントの数については、ピン構造体を適用する装置の寸法、作用する駆動力等の条件に応じて設計上適宜に決定すればよい。
【0028】
係合ピンは、その側面に対しスプロケット等の噛合歯が噛合するものであるから、少なくともスプロケット等の歯付回転体の歯状突起が噛合する側面部は耐摩耗性の高い素材で形成されていることが望ましい。
【0029】
転がり支持部は、ローラベアリング、ニードルベアリングなどの径方向に支持するころ軸受を使用できるが、特に強度を必要としない場合にはボールベアリングのような玉軸受を使用してもよい。
また、ピン支承部材に設けられて係合ピンの軸方向端部と当接するスラスト支持部に関しては、径方向に設けられた転がり支持部ほど大きな荷重が作用することがないので、スラストプレートのような滑り摩擦材で構わないが、スラスト玉軸受、スラストころ軸受などのようなスラスト方向に支持する転がり軸受を使用しても何ら構わない。 なお、ピン構造体を駆動する歯付回転体は、スプロケット、ピニオン等、従前知られた歯車型の駆動機構であればいかなるものであっても構わない。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明の一実施例であるピン構造体について図面に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施例であるピン構造体(以下、「第1実施例」と称する)の一部断面斜視図であり、図2は、図1に示されるピン構造体に使用されるピン支承部材の一部断面斜視図であり、図3は、図1に示されるピン構造体の断面図であり、図4は、図1に示されるピン構造体を適用した環状プレートピン駆動機構の斜視図であり、図5は、図1に示されるピン構造体を適用した直線プレートピン駆動機構の斜視図である。
【0031】
図1ないし図3に示されるように、第1実施例であるピン構造体100は、両側に一対の側面プレート110を配置し、これらの側面プレート110がその間を跨いで一定間隔で配置した多数の係合ピン120によって結合されて一体構造を呈するものである。
係合ピン120は、両側に小径部分を備えた円筒形状を呈するものであり、両側のそれぞれの側面プレート110に対してピン支承部材130を介して装着されている。
【0032】
各ピン支承部材130は、図2に示されるように、側面プレート110に装着される平板部分131と、係合ピン120の端部を支持する円筒部分132とを有している。
平板部分131の円筒部分132を囲む四隅にはボルト孔が穿孔されていて、ピン支承部材130は側板プレート110に対し、それぞれ、外側から4本のボルトにより着脱自在に固着されている。
【0033】
ピン支承部材130が備える円筒部分132の内周側には転がり支持部であるローラベアリング140が2組配置されていて、このローラベアリング140によって係合ピン120の端部が回動自在に支持されている。
また、ピン支承部材130の円筒部分132の内側で係合ピンの端面と対向する箇所には、スラスト支持部であるスラストプレート150が配置されていて、係合ピン120の端面に対してスラスト軸受として機能している。
【0034】
このように、係合ピン120の端部がローラベアリング140により確実に支持されていて、係合ピン120が側面プレート110に対して自由に回転することができるので、係合ピン120の外周に従来のような中空ローラを外嵌しなくとも、ピン構造体100を駆動するスプロケットSP等の噛合歯との間で偏った摩耗を引き起こすことがない。
また、係合ピン120の端面がスラストプレート150と対向して支持されているので、係合ピン120の端面が摩耗したり、ピン支承部材130の内側端面が摩耗したりすることが阻止されている。
【0035】
また、ピン支承部材130がローラベアリング140およびスラストプレート150を組み込んで構成されているので、第1実施例のピン構造体100を製作する際には、まずローラベアリング140およびスラストプレート150のようなユニット化された部品を組み込み、次に一対の側面プレート110の間に一対のピン支承部材130によって係合ピン120を挟み込むようにした後、ピン支承部材130をそれぞれボルト等で固着する、というように、各作業を簡易化して明確な手順の下に製作することができる。
さらに、ピン構造体100の使用中に係合ピン120に破損等が生じた場合には、破損箇所のピン支承部材130のボルトを緩めて取り外し、ここで係合ピン120の交換を行なうことができる。
【0036】
以上のようにして得られた本発明の実施例であるピン構造体100は、対向して配置された一対の側面プレート110と側面プレート110の間に所定間隔で跨設される係合ピン120とを備えて係合ピン120と噛合する歯状突起を周面に備えるスプロケットSPにより駆動されるものであって、係合ピン120が側面プレート110のそれぞれに対向して設けたピン支承部材130の間に挟持されてこのピン支承部材130が係合ピン120の端部を回動自在に支持するローラベアリング140を備えていることにより、従来技術のような中空ローラを不要として負荷のかかる箇所から滑り摩擦部分を除去したので、係合ピン120等の摩耗することが少なく長寿命のピン構造体100を提供することができる。
【0037】
また、ローラベアリング140、スラストプレート150などの部品を組み込んだ着脱自在のピン支承部材130を活用したことにより、ローラベアリング140、スラストプレート150のようにユニット化した部品を使用して各組立作業を簡易化するとともに組立順序も分かりやすく整理して組み立てるようにしたので、組立作業が簡易化して作業能率を大幅に向上することができる。
特に、スラストプレート150をスラストころ軸受のような転がり軸受とした場合には、前述したユニット化による組立作業を簡易化する効果、および、係合ピン120端部における摩耗防止効果を一層顕著なものとできる。
さらに、係合ピン120が損壊した場合にもピン支承部材130を自在に着脱することで交換作業を簡便化することができるとともに、損壊した部分のみを交換すればよいので保守作業における材料ロスを大幅に改善することができるなど、その効果は甚大である。
【0038】
次に、前述した第1実施例のピン構造体100を適用した環状プレートピン駆動機構200A(以下、「第2実施例」と称する)、および直線プレートピン駆動機構300A(以下、「第3実施例」と称する)について、それぞれ図4および図5に基づいて以下に説明する。
なお、それぞれの実施例の記載において、第1実施例であるピン構造体100と共通の部分については下2けたとして共通の数字を使用して記載し、詳しい説明は省略する。
【実施例2】
【0039】
図4には、本発明の第2実施例である、側面プレートを環状プレートとした環状プレートピン構造体200とこの環状プレートピン構造体200を駆動するスプロケットSPとにより構成される環状プレートピン駆動機構200Aが示されている。
図4に示される環状プレートピン構造体200は、各々の側面プレート210を4つのセグメントから構成される環状プレート210としたもので、各セグメントの両端部をジョイントプレート等の結合部材により結合して全体として環状の形状としたものである。
環状プレート210を各セグメントに分割したことにより、大型の環状プレートを製作する場合に比べ製造歩留まりが向上するとともに、一部が損壊した場合には損壊した部分のセグメントを交換すればよいので、メンテナンスロスを大幅に減少させることができる。
【0040】
環状プレート210の間に配置されている係合ピン220は、前述した第1実施例のピン構造体100と同様に、それぞれローラベアリング240、スラストプレート250を組み込んだピン支承部材230により両側の側面プレート210に装着されている。
これにより、本実施例の環状プレートピン構造体200も第1実施例のピン構造体100と同様に、摩耗特性に優れて、長寿命で、組立の簡便な、しかも保守作業性に優れたものとなる。
【0041】
前述した環状プレートピン構造体200に対し、図4において下方からスプロケットSPを噛合させているのが環状プレートピン駆動機構200Aであり、スプロケットSPを回転駆動することにより環状プレートピン構造体200を回転させるものである。
環状プレートピン構造体200を使用した環状プレートピン駆動機構200Aでも、スプロケットの係合歯と係合ピン220とが中空ローラを介在させることなく噛合するので、この部分における摺動摩耗や運動伝達ロスが解消されて、環状プレートピン駆動機構200Aを全体として長寿命で損失の少ない高効率のものとすることができる。
【実施例3】
【0042】
図5には、本発明の第3実施例である、側面プレートを直線状プレートとした直線プレートピン構造体300とこの直線プレートピン構造体300とこれを駆動するスプロケットSPとにより構成される直線プレートピン駆動機構300Aが示されている。
図5には、直線状の一対の側面プレート310を使用した直線ピン構造体300と、これを駆動するスプロケットSPとが噛合する部分が拡大して示されている。
第3実施例において使用される直線プレートピン構造体300においても、係合ピン320は、前述した第1実施例であるピン構造体100の場合と同様に、ローラベアリング340、スラストプレート350を組み込んだピン支承部材330により両側のプレート310に装着されている。
これにより、直線プレートピン構造体300も、前述した実施例のピン構造体100と同様に、摩耗特性に優れて、長寿命で、組立の簡便な、しかも保守作業性に優れたものとなる。
【0043】
前述した直線プレートピン構造体300に対し、図5において上方からスプロケットSPを噛合させたものが直線プレートピン駆動機構300Aであり、スプロケットSPを回動駆動することにより、直線プレートピン構造体300が図5において左右いずれかの方向に直線駆動するものである。
直線プレートピン構造体300を使用した直線プレートピン駆動機構300Aの場合も、スプロケットの係合歯と係合ピン220とが中空ローラを介在させることなく噛合するので、この部分における摺動摩耗や運動伝達ロスが解消されて、前述したピン駆動機構200Aと同様に、全体として長寿命で損失の少ない高効率のものとすることができる。
なお、直線プレートピン構造体300の場合にも、環状プレートピン構造体200の場合と同様に、複数の直線プレート310を長手方向につなぎ合わせ、長い直線プレート310を形成するようにしてもよい。
【0044】
以上のようにして得られた本発明の第2実施例である環状プレートピン駆動機構200Aまたは第3実施例である直線プレートピン駆動機構300Aは、それぞれの備える環状プレートピン構造体200または直線プレートピン構造体300が、いずれも第1実施例のピン構造体100と同様の効果を奏するものであることに加え、従前使用されていたような中空ローラをなくしたことにより、係合ピン220、320部における摩耗性能が向上して環状プレートピン駆動機構200Aまたは直線プレートピン駆動機構300Aの寿命が長寿命化するとともに、スプロケットSPの歯との係合部分での滑り摩擦や運動伝達ロスが解消されるので、環状プレートピン駆動機構200Aまたは直線プレートピン駆動機構300Aを全体として損失の少ない高効率のものとすることができる。
【0045】
また、これらの環状プレートピン駆動機構200Aまたは直線状ピン駆動機構300Aが構造的に従前のピンホイール駆動機構またはピンラック駆動機構と互換性を有するものであるから、第2実施例または第3実施例のようなピン駆動機構について従前よりピンホイールやピンラックが使用されていた様々な分野の回転駆動機構や直線駆動機構に対して適用することを可能とする極めて汎用性の高いものであり、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0046】
100 ・・・ ピン構造体
110 ・・・ 側面プレート
120 ・・・ 係合ピン
121 ・・・ 小径部
130 ・・・ ピン支承部材
131 ・・・ 取付平板部
132 ・・・ 支持円筒部
140 ・・・ ローラベアリング
150 ・・・ スラストプレート
200 ・・・ 環状プレートピン構造体
200A ・・・ 環状プレートピン駆動機構
300 ・・・ 直線プレートピン構造体
300A ・・・ 直線プレートピン駆動機構
SP ・・・ スプロケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された一対の側面プレートと該側面プレートの間に所定間隔で跨設される係合ピンとを備えて該係合ピンと噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体により駆動されるピン構造体であって、
前記係合ピンが前記側面プレートのそれぞれに対向して設けたピン支承部材の間に挟持されて、
該ピン支承部材が前記係合ピンの端部を回動自在に支持する転がり支持部を備えていることを特徴とするピン構造体。
【請求項2】
前記ピン支承部材が、前記係合ピンの軸方向端部と当接するスラスト支持部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のピン構造体。
【請求項3】
前記ピン支承部材が、前記側面プレートに着脱自在に固着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のピン構造体。
【請求項4】
前記側面プレートが、それぞれ複数のセグメントを結合して一つの側面プレートを構成していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のピン構造体。
【請求項5】
前記側面プレートが一対の環状プレートで構成されて、前記歯付回転体により回転駆動することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のピン構造体。
【請求項6】
前記側面プレートが一対の直線状プレートで構成されて、前記歯付回転体により直線駆動することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のピン構造体。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のピン構造体と、該ピン構造体の備える係合ピンと噛合する歯状突起を周面に備える歯付回転体とより構成されて、該歯付回転体の回転運動によりピン構造体を駆動することを特徴とするピン駆動機構。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−67902(P2012−67902A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215679(P2010−215679)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(500310993)株式会社椿本スプロケット (7)
【Fターム(参考)】