説明

ファイバブラッググレーティング装置

【課題】少ない部品点数で、実装プレートの熱膨張・熱収縮に起因するFBG特性変化を抑制でき、FBG温度のみによって反射波長を制御することができるFBG装置を提供する。
【解決手段】FBG装置としてのOCDM符号器モジュールは、光ファイバデバイス3と、これが固定される実装プレート4と、これらを収容する筐体5と、筐体5の内面と実装プレート4との間に挟まれ、光ファイバデバイス3の加熱又は冷却を行うサーモモジュール7と、筐体5内における光ファイバデバイス3の温度を検出する第1の温度センサ10と、設定温度Tsetが設定されており、第1の温度センサ10によって検出される温度を設定温度に近づけるように、サーモモジュール7による加熱又は冷却を制御する温度コントローラ2とを有し、実装プレート4は、熱膨張係数が1.7×10−6/K以下であり、且つ、熱伝導率が190W/(m・K)以上である素材で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバブラッググレーティング(FBG)構造を持つ光ファイバデバイスを温度コントローラによって制御されるサーモモジュールによって加熱又は冷却するファイバブラッググレーティング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
位相符号方式OCDM(光符号分割多重)における符号器又は復号器として、多点位相シフト構造を有するスーパーストラクチャFBG(SSFBG)を用いることができる。SSFBGは、光ファイバに、長さ及び屈折率変化領域の周期が同一な(すなわち、反射波長が等しい)複数個の単位FBG構造を、構成する符号に応じた間隔(間隔0をも含む。)及び構成する符号に応じた個数設けることによって、形成された光ファイバデバイスである。対を成すOCDM符号器とOCDM復号器においては、両者の波長差が僅か数pmであっても、OCDM復号器における復号化を行うことができなくなる。したがって、対を成すOCDM符号器とOCDM復号器の波長は、高い精度で一致させる必要がある。
【0003】
しかし、FBGは、光ファイバのコア内に、格子状に屈折率変化領域(グレーティング)を形成したデバイスであり、FBGの屈折率は温度依存性を有し、また、光ファイバは温度変化に伴って伸縮するので、FBGの反射波長は、環境温度の変化によって大きく変動する。
【0004】
特表2000−503415号公報(特許文献1)には、負の熱膨張係数を有する板状ガラスセラミック基板上にFBGを固定することによって、環境温度の変化に起因するFBGの反射波長の変動を抑制する技術が提案されている。しかし、この技術では、OCDM符号器やOCDM復号器に要求される波長変動量の精密な制御は難しい。
【0005】
また、特開2005−173246号公報(特許文献2)には、SSFBGを加熱又は冷却することによって、環境温度の変化に起因する反射波長の変動を抑制する技術の提案がある。
【0006】
【特許文献1】特表2000−503415号公報
【特許文献2】特開2005−173246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
位相符号方式OCDMにおいてより高い通信セキュリティを提供するために符号長を長くすると、SSFBGを構成する単位FBGの数が増えるためSSFBGの全長が長くなる。SSFBGは、長さ及び屈折率変化領域の周期が同一な単位FBGによって構成されるので、個々の単位FBGが同じ反射特性を示さないと所定の符号化あるいは復号化動作を行うことはできない。すなわち、SSFBGを構成する単位FBGが同じ反射特性を示すためには、SSFBG形成領域全域で温度が均一である必要がある。
【0008】
SSFBG形成領域全域の温度を均一にするには、SSFBGが実装固定される部材の温度が均一となる必要があり、このためには当該部材の熱伝導率が高ければよい。しかしながら、例えば、銅やアルミニウムのように熱伝導率が高い材料は熱膨張係数も高いため、このような材料にSSFBGを実装固定すると温度制御による波長変動に当該部材の熱伸縮に伴う波長変動が加わるため、波長調整分解能が悪くなってしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に提案されている符号器又は復号器では、低熱膨張係数の材料で形成した実装プレートにSSFBGを実装固定し、実装プレートを高熱伝導材料で形成したベースプレート上に設置することで、SSFBGに加熱又は冷却に伴う熱伸縮を伝達することなく均一に熱を伝導させている。しかしながら、この場合、符号器又は復号器を構成する部品点数が多くなりその加工及び組立に要する時間及びコストが大きくなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、少ない部品点数で、ファイバブラッググレーティングが固定される支持部材の熱膨張又は熱収縮に起因するファイバブラッググレーティングの特性変化を抑制することができ、ファイバブラッググレーティングの温度のみによって反射波長を制御することができるファイバブラッググレーティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のファイバブラッググレーティング装置は、ファイバブラッググレーティングを含む光ファイバデバイスと、前記光ファイバデバイスが固定される支持部材と、前記光ファイバデバイス及び前記支持部材を収容する筐体と、前記筐体の内面と前記支持部材との間に挟まれ、前記筐体内において前記光ファイバデバイスの加熱及び冷却の少なくとも一方を行うサーモモジュールと、前記筐体内における前記光ファイバデバイスの温度を検出する第1の温度センサと、設定温度が保持されており、前記第1の温度センサによって検出される温度を設定温度に近づけるように、前記サーモモジュールによる加熱又は冷却を制御する温度コントローラとを有し、前記支持部材は、熱膨張係数が1.7×10−6/K以下であり、且つ、熱伝導率が190W/(m・K)以上である素材で構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明のファイバブラッググレーティング装置によれば、少ない部品点数で、ファイバブラッググレーティングが固定される支持部材の熱膨張又は熱収縮に起因するファイバブラッググレーティングの特性変化を抑制することができ、ファイバブラッググレーティングの温度のみによって反射波長を制御することができるので、装置の構成の簡略化及び反射波長の調整分解能の向上を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
〈1.構成の説明〉
図1は、本発明の実施の形態に係るファイバブラッググレーティング(FBG)装置の概略的な構成図であり、FBGパッケージ1の断面構造を示している。また、図2は、図1に示されるFBGパッケージ1のS−S線断面図である。本発明の実施の形態のFBG装置は、例えば、OCDM符号器モジュール又はOCDM復号器モジュールである。
【0014】
図1に示されるように、本発明の実施の形態のFBG装置は、FBGパッケージ(すなわち、OCDM符号器モジュールパッケージ又はOCDM復号器モジュールパッケージ)1と、FBGパッケージ1に電気的に接続された温度コントローラ2とを有している。
【0015】
FBGパッケージ1は、FBGを含む光ファイバデバイス3と、光ファイバデバイス3が固定される支持部材である実装プレート4と、光ファイバデバイス3及び実装プレート4を収容する筐体5と、筐体5の内面と実装プレート4との間に挟まれ、光ファイバデバイス3の加熱及び冷却の少なくとも一方を行うサーモモジュール7とを有している。実装プレート4は、サーモモジュール7を介して筐体5の内面に固定されている。実装プレート4とサーモモジュール7との固定、及び、サーモモジュール7と筐体5の内面との固定には、例えば、接着剤を用いることができる。また、FBGパッケージ1は、光ファイバデバイス3の温度を検出する第1の温度センサ10と、FBG装置が設置された場所の環境温度を検出する第2の温度センサ11とを有している。温度コントローラ2は、第2の温度センサ11によって検出された温度(環境温度)Tと予め保持している参照データ2aに基づいて設定温度Tsetを決定し、第1の温度センサ10によって検出される温度Tを設定温度Tsetに近づけるように、サーモモジュール7による加熱又は冷却を制御する。
【0016】
光ファイバデバイス3は、そのファイバコアに、SSFBGを形成したデバイスである。SSFBGは、ファイバコアに、例えば、ゲルマニウムなどを添加して紫外感光性を高めたシングルモード光ファイバに、周期的に変動する紫外光を照射して、多点位相シフト構造を形成することによって製造することができる。
【0017】
実装プレート4は、熱膨張係数が1.7×10−6/K以下であり、且つ、熱伝導率が190W/(m・K)以上である素材で構成される。実装プレート4は、光ファイバデバイス3を固定するための溝4aを形成した角柱状(又は、丸棒状)である。実装プレート4は、高熱伝導かつ低熱膨張を特徴とするSiC(シリコンカーバイト:炭化珪素)セラミックとSi(シリコン:珪素)の複合材料であるSSC−802−CI(エム・キューブド・テクノロジーズ・INC製)から構成されるが、これに限定されるものではない。この材料の熱伝導率は、190w/(m・K)であり、アルミニウムとほぼ同等である。また、この材料の熱膨張係数は、1.7×10−6/Kであり、インバーと同等である。
【0018】
サーモモジュール7は、ペルチェ素子を用いた加熱及び/又は冷却モジュールである。サーモモジュール7は、実装プレート4と筐体5の内面に挟まれるように筐体5内部の底面上に設置される。サーモモジュール7が実装プレート4を加熱する場合には、サーモモジュール7の実装プレート4側の面7aが、サーモモジュール7の温度制御面(放熱面)になり、その反対側の面(すなわち、筐体5の内面に対向する面)7bが、サーモモジュール7の吸熱面となる。また、サーモモジュール7が実装プレート4を冷却する場合には、サーモモジュール7の実装プレート4側の面7aが、サーモモジュール7の温度制御面(吸熱面)になり、その反対側の面(すなわち、筐体5の内面に対向する面)7bが、サーモモジュール7の放熱面になる。サーモモジュール7は、光ファイバデバイス3のSSFBGの形成領域に対向する大きさを持ち、SSFBGの形成領域よりも小さくないことが望ましい。以後の説明において、サーモモジュール7が実装プレート4と接触する面7aをサーモモジュール7の温度制御面、その反対側の面(すなわち、FBGパッケージの筐体5と接触する面)7bをサーモモジュール7の放熱面とする。
【0019】
また、図1に示される第1の温度センサ10及び第2の温度センサ11は、例えば、サーミスタより構成される。ただし、第1の温度センサ10及び第2の温度センサ11は、サーミスタに限定されるものではなく、例えば、熱電対や白金熱抵抗体などの他の温度センサを用いてもよい。
【0020】
第1の温度センサ10は、例えば、実装プレート4上に設置するが、実装プレート4に埋設して設置するなど、他の位置に設置してもよい。また、第1の温度センサ10は、光ファイバデバイス3の両端など、複数個設けてもよい。
【0021】
第2の温度センサ11は、例えば、筐体5の外表面に設置するのが望ましい。ただし、第2の温度センサ11は、筐体5が設置されている基板(図示せず)上などの他の位置に設置してもよい。なお、第2の温度センサ11を複数個備えてもよい。また、第2の温度センサ11の設置位置は、図示の例に限定されない。
【0022】
温度コントローラ2には、FBG装置の特性(例えば、位相符号器/復号器としての特性)に基づいた参照データ2aが記録されている。温度コントローラ2は、第1の温度センサ10、第2の温度センサ11、及びサーモモジュール7と接続されており、第1の温度センサ10及び第2の温度センサ11の検出温度に応じて、サーモモジュール7の動作を制御する。
【0023】
温度コントローラ2は、第2の温度センサ11の検出温度Tに応じて、参照データ2aを参照して、光ファイバデバイス3の温度(すなわち、第1の温度センサ10によって検出される温度)も目標値である設定温度Tsetを決定する。また、温度コントローラ2は、第1の温度センサ10によって検出される温度Tを、設定温度Tsetに近づけるように、サーモモジュール7による加熱又は冷却を制御する。
【0024】
図3は、図1に示される光ファイバデバイス3に形成されるSSFBG構造の一例を示す説明図であり、符号列として15ビットのM系列を用いた場合のSSFBGを示している。図3において、記号‘A’〜記号‘O’で示される単位FBGのそれぞれは、等しい長さを持ち、かつ、同一の屈折率変調領域周期を有する。ここで、単位FBG‘C’と‘D’の間、単位FBG‘G’と‘H’の間、単位FBG‘H’と‘I’の間、単位FBG‘I’と‘J’の間、単位FBG‘J’と‘K’の間、単位FBG‘L’と‘M’の間、単位FBG‘N’と‘O’の間には、光搬送波の波長をλとしたときにλ/4に相当する間隔が設けられており、他の単位FBGの間には間隔0(ゼロ)を空けて単位FBGを配置すること、すなわち、隣接する単位FBG同士を密着させて配置することを意味する。λ/4に相当する間隔は、光搬送波の位相π/2に相当する間隔であるため、例えば、図3の左側(単位FBG‘A’側)から光パルスが入射した場合、単位FBG‘A’、‘B’、及び‘C’での反射パルスに対して、単位FBG‘D’、‘E’、‘F’、及び‘G’での反射パルスは位相がπシフトしていることになる。
【0025】
光ファイバデバイス3は、引張張力や圧縮力などの応力が発生していない状態で、例えば、実装プレート4の両端において接着固定され、実装プレート4と密着している。実装プレート4ヘの接着固定点間に、SSFBGを含む。本実施の形態における光ファイバデバイスの実装プレート4ヘの接着固定には、紫外線硬化型のアクリル系接着剤(Summers Optical社製、製品番号:VTC−2)を用いているが、これに限定されるものではなく、エポキシ系などの接着剤も利用できる。
【0026】
筐体5は、熱膨張係数が1.7×10−6/K以下であり、且つ、熱伝導率が190W/(m・K)以上である素材で構成されている。筐体5は、実装プレート4と同じ炭化珪素セラミックと珪素の複合材料で構成されることが望ましい。実装プレート4及び筐体5は、同じ熱膨張係数及び同じ熱伝導率を持つことが望ましい。実装プレート4及び筐体5は、同じ熱膨張係数及び同じ熱伝導率を持つようにすることによって、環境温度が変化して実装プレート4及び筐体5の膨張又は収縮が生じたとしても、膨張又は収縮の量はほぼ同程度になり、環境温度が変化してもサーモモジュール7の内部に応力を発生させることがない。なお、箇体5は、例えば、表面に金メッキを施したアルミニウムから構成することもできる。筐体5は、箱状をなし、その側面にSSFBG実装部に含まれるサーモモジュール7ヘの電力供給端子及び第1の温度センサ10からの出力端子を有する。これらの端子は、温度コントローラ2に接続され、サーモモジュール7の加熱又は冷却が制御される。また、光ファイバデバイス3を構成する光ファイバは筐体5の壁面を貫通しており、貫通箇所は、例えば、ゲル状の柔軟封止部材によって封止されている。
【0027】
〈2.動作の説明〉
温度コントローラ2の設定温度Tsetと第1の温度センサ10による計測温度Tとの差に応じて、温度コントローラ2は、第1の温度センサ10の計測温度Tが設定温度Tsetに等しくなるように、サーモモジュール7の加熱又は冷却を制御する。温度コントローラ2によるサーモモジュール7の制御により、実装プレート4は一定温度に保たれる。ここで、サーモモジュール7の加熱又は冷却により実装プレート4は加熱又は冷却されるが、実装プレート4の熱伝導率が高いため、実装プレート4の長手方向(図1における横方向)の温度分布は、温度差の低い(温度勾配の小さい)値に抑えられる。
【0028】
また、実装プレート4の熱膨張係数が小さいので、実装プレート4自体の伸縮もほとんど発生しない。光ファイバデバイス3に含まれるSSFBGは、実装プレート4に固定されているが、実装プレート4自体の伸縮がほとんど発生しないので、温度変化に伴うSSFBGの伸縮はほとんど発生せず、実装プレート4自体の伸縮に起因するSSFBGの内部応力の変化は生じず、よって実装プレート4自体の伸縮に起因する反射波長の変化は生じない。このため、本発明の実施の形態においては、実装プレート4の温度変化に伴ってSSFBGの温度のみが変化し(SSFBGの内部応力は変化せず)、SSFBGの反射波長を温度のみによって制御することができる。
【0029】
図4は、温度コントローラ2における設定温度と反射波長の変動量との関係を実測した結果と測定値に基づく直線を示す図である。図4においては、横軸に温度コントローラの設定温度(℃)をとり、縦軸にOCDM符号器モジュールの反射波長の変動量(pm)をとり、測定値を3点(四角形の点)示している。図4に示すように、温度コントローラの設定温度(℃)をx軸、反射波長の変動量(pm)をy軸として一次近似すると、温度コントローラ2の設定温度1℃あたりの波長変動量は10.3pmとなる。
【0030】
温度コントローラ2において所定の波長を設定すると、第2の温度センサ11で検出した筐体5の外側の温度を元に、温度コントローラ2に記録された参照データ2aからサーモモジュール7の設定温度Tsetを算出し、第1の温度センサ10で検出される実装プレート4の温度が設定温度Tsetと等しくなるように、温度コントローラ2によってサーモモジュール7の加熱又は冷却が制御される。
【0031】
ここで、第2の温度センサ11で検出される筐体5の温度(ほぼ環境温度に等しい。)が変化した場合、筐体5の温度変化量と参照データ2aから温度コントローラ2におけるサーモモジュール7制御用の設定温度Tsetを再度算出する。そして、温度の微妙な調整のため、所定の反射波長となるように実装プレート4の温度が再調整される。このように第2の温度センサ11で検出する筐体5外周の環境温度Tに変化に応じて、サーモモジュール7制御用の設定温度Tsetの再調整を適宜繰り返すことで、設定した波長を自動かつ安定に維持することができる。
【0032】
なお、本発明の実施の形態における参照データ2aは、制御対象となる符号器の一定環境温度(例えば、25℃)での波長調整特性(サーモモジュール設定温度と波長の関係、図4参照)と、サーモモジュール設定温度に対する相対環境温度による波長変動特性の関係から定義される。
【0033】
図5は、本発明の実施の形態に係るFBG装置の温度コントローラ2による制御内容を示すフローチャートである。図5に示されるように、先ず、使用者によって、使用波長が入力される(ステップST1)と、第2の温度センサ11が環境温度Tを検出し(ステップST2)、検出された温度T2と参照データ2a(ステップST3)に基づいて、サーモモジュール7制御用の設定温度Tsetを算出して設定する(ステップST4)。次に、サーモモジュール7の動作を制御し(ステップST5)、第1の温度センサ10がSSFBGの温度Tを検出し(ステップST6)、温度Tが設定温度Tsetに等しいか否かを判断する(ステップST7)。温度Tが設定温度Tsetに等しくない場合には、ステップST7における判断はNOになり、温度Tを設定温度Tsetに近づけるように、サーモモジュール7の動作を制御する(ステップST5)。その後、第1の温度センサ10によるSSFBGの温度Tの検出(ステップST6)及び温度Tが設定温度Tsetに等しいか否かの判断(ステップST7)を実行し、温度Tが設定温度Tsetに等しければ、ステップST7における判断はYESになり、処理はステップST2に進む。
【0034】
次に、FBG装置が、例えば、環境温度25℃におけるサーモモジュール25℃設定時の波長が1550.000nmで、波長調整特性が10pm/℃、相対環境温度による波長変動特性が0.5pm/℃であるOCDM符号器モジュールである場合を説明する。この場合には、先ず、使用者によって、波長1550.100nmが入力される(ステップST1)。
【0035】
第2の温度センサ11は温度(環境温度)Tを検出し(ステップST2)、環境温度25℃における波長を1550.100nmとするための、温度コントローラ2による制御を実行する。このために、温度コントローラ2は、参照データ2aを参照し(ステップST3)、次式(1)から、サーモモジュール7制御用の設定温度Tsetを算出して設定する(ステップST4)。次式(1)から、環境温度25℃の場合の、設定温度Tsetは35℃になる。
【数1】

【0036】
この場合、相対環境温度が−10℃(=環境温度−設定温度=25℃−35℃)となることでサーモモジュール設定温度による調整波長に対して−5pm(=−10℃×0.5pm/℃)波長が変動すると推測し、サーモモジュール設定温度Tsetを0.5℃高くして、35.5℃(=35℃+0.5℃)とする。このとき、相対環境温度もさらに0.5℃変化するが、この相対環境温度の変化による波長変動は微小であるため無視できる。
【0037】
また、図5におけるステップST4において、第2の温度センサ11の検出温度(環境温度)Tが27℃になると、相対環境温度は−8.5℃(=環境温度−設定温度=27℃−35.5℃)となることでサーモモジュール設定温度による調整波長に対して+1pm(=(27℃―25℃)×0.5pm/℃)波長が変動すると推測し、温度コントローラのサーモモジュール設定温度を0.1℃低くして、35.4℃にする。このとき、相対環境温度もさらに0.1℃変化するが、この相対環境温度の変化による波長変動も微小であるため無視できる。
【0038】
〈3.効果の説明〉
以上に説明したように、本発明の実施の形態の構成とすることで、実装プレート4とは異なる他の部材、例えば、熱膨張を抑える材料と均一に熱を伝導するための光ファイバデバイス3の固定用部材を備える必要がなく、部品点数を少なくすることができ、製造コスト及び製造時間を削減できる。
【0039】
また、本発明の実施の形態によれば、反射波長の調整を高波長調整分解能で行うことができるFBG装置を安価に、かつ簡略な構成で実現でき、符号器モジュールに含まれるSSFBGの製造誤差に影響されず、波長を高精度に調整することができる。
【0040】
さらに、温度コントローラ2によってサーモモジュール7の設定温度Tsetの再調整を自動的に繰り返すことで、環境温度Tが変化した場合でも、所定の反射波長を安定に維持することができる。
【0041】
〈4.変形例〉
なお、上記説明においては、FBG装置が、OCDM符号器モジュール又はOCDM復号器モジュールである場合を説明したが、本発明のFBG装置はこれらに限定されない。本発明のFBG装置は、例えば、波長ホップ方式OCDMにおける符号器又は復号器、WDMシステムにおけるフィルタデバイスなどに適用することもでき、FBG装置がOCDM符号器モジュールである場合と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、上記説明において用いた図は、本発明を適用した装置の一構成例を示し、発明が理解できる程度に各構成要素の断面形状や配置関係等を概略的に示しているに過ぎず、本発明は、図示された例に限定されない。
【0043】
さらに、上記説明においては、特定の材料や条件、寸法等を例示しているが、これらの材料や条件、寸法は好適例の一つを示したものであり、本発明は、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係るFBG装置の概略的な構成図である。
【図2】図1に示されるFBGパッケージのS−S線断面図である。
【図3】図1に示される光ファイバデバイスに形成されるSSFBG構造の一例を示す説明図である。
【図4】温度コントローラにおける設定温度と反射波長の変動量との関係を実測した結果と測定値に基づく直線を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るFBG装置の温度コントローラによる制御内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 FBGパッケージ、 2 温度コントローラ、 2a 参照データ、 2b 設定温度、 3 光ファイバデバイス、 4 実装プレート、 4a 溝、 5 筐体、 7 サーモモジュール、 7a サーモモジュールの実装プレート側の面、 7b サーモモジュールの筐体側の面、 10 第1の温度センサ、 11 第2の温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバブラッググレーティングを含む光ファイバデバイスと、
前記光ファイバデバイスが固定される支持部材と、
前記光ファイバデバイス及び前記支持部材を収容する筐体と、
前記筐体の内面と前記支持部材との間に挟まれ、前記筐体内において前記光ファイバデバイスの加熱及び冷却の少なくとも一方を行うサーモモジュールと、
前記筐体内における前記光ファイバデバイスの温度を検出する第1の温度センサと、
設定温度が保持されており、前記第1の温度センサによって検出される温度を前記設定温度に近づけるように、前記サーモモジュールによる加熱又は冷却を制御する温度コントローラとを有し、
前記支持部材は、熱膨張係数が1.7×10−6/K以下であり、且つ、熱伝導率が190W/(m・K)以上である素材で構成される
ことを特徴とするファイバブラッググレーティング装置。
【請求項2】
前記筐体は、熱膨張係数が1.7×10−6/K以下であり、且つ、熱伝導率が190W/(m・K)以上である素材で構成されていることを特徴とする請求項1に記載のファイバブラッググレーティング装置。
【請求項3】
前記支持部材及び前記筐体は、同じ熱膨張係数及び同じ熱伝導率を持つことを特徴とする請求項1又は2に記載のファイバブラッググレーティング装置。
【請求項4】
前記支持部材及び前記筐体は、炭化珪素セラミックと珪素の複合材料であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のファイバブラッググレーティング装置。
【請求項5】
前記ファイバブラッググレーティング装置が設置された場所の環境温度を検出する第2の温度センサをさらに有し、
前記温度コントローラは、参照データを保持し、
前記温度コントローラは、前記第2の温度センサによって検出される温度と前記参照データとに基づいて前記設定温度を変更する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のファイバブラッググレーティング装置。
【請求項6】
前記第2の温度センサは、前記筐体の外周面上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のファイバブラッググレーティング装置。
【請求項7】
前記ファイバブラッググレーティングは、単位ファイバブラッググレーティング構造を複数個有するスーパーストラクチャファイバブラッググレーティングであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のファイバブラッググレーティング装置。
【請求項8】
前記光ファイバデバイスは、OCDM符号器又はOCDM復号器であり、
ファイバブラッググレーティング装置全体で、OCDM符号器モジュール又はOCDM復号器モジュールを構成している
ことを特徴とする請求項7に記載のファイバブラッググレーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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