説明

ファイバーガラスファブリックフローリングシステム

ビニルフローリングおよび柔らかいクッション状カーペットのハイブリッドを提供する。ハイブリッドフローリングは、タイルの製造に適しており、可撓性裏地に結合されるPVC製織ファブリックを利用する。ファブリックは無地および/または複数色の織り糸を備え、視覚的に異なるスタイルを作る。これらの糸は、セラミックファイバーコア、好ましくはファイバーガラスを備え、その上にPVCを押し出してPVCジャケットを形成する。コアは、糸を織るのに十分な引張強さを提供する一方、PVCは、耐久性、耐摩耗性および色を提供する。ファブリックは、織られた後、ファブリックの縦糸と横糸を融合させる幅出しまたは硬化オーブンに送られ、それによってファブリックを安定させ、その一体性を保持し、ほころびを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第60/571,665号(2004年5月14日出願)の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、本質的に、硬質表面を有する長寿命ビニルフローリングと柔らかいクッション状カーペットとのハイブリッドである、新しいタイプの弾性タイルフローリングに関する。
【0003】
このようなフロアカバーは、住宅用建物および商業用建物の両方で使用される。耐久性を得るため、硬質表面を有するフロアカバー、例えば、ビニルフローリング、セラミックおよび大理石、が使用される。このようなフロアカバーは典型的には長寿命で、掃除またはモップ掛けが容易であるが、足には「固い」。一方、カーペット(タフテッドカーペットでも織りカーペットでもよい)は歩くには柔らかいが、耐久性が低く、掃除が困難かつコスト高となる場合がある。
【0004】
ここ数年間はビニルフローリングとカーペットとのハイブリッドが入手可能であり、それは裏地に結合されたPVC(ポリ塩化ビニル)製織ファブリックを備える。ファブリックは、ポリエステルコアとPVCカバー、つまりジャケットとで作られている。
【0005】
しかし、ポリエステルコアのファブリックタイルへの使用が完全に好都合というわけではない。フローリングがロール形態で販売される場合にはポリエステルが適しているが、タイル形態は、使用中にポリエステルが個々のタイルの縁に沿って露出するという欠点を有する。言い換えれば、ポリエステルは通常の毎日の磨耗および歩行によりPVCジャケットからほつれ始める。この現象は「毛羽立ち」として知られている。
【0006】
この問題を修正するため、超音波カッターを利用してポリエステルを溶融させたが、正確性が十分ではないことがわかっている。レーザーカッターも試みたが、レーザーカッターは典型的にはタイルの縁を燃やしてしまい、焦げた縁が残ってしまう。最も自明な解決法は、タイルをフローリングとして配置する際にその縁を接着することであるが、これは非常に困難で時間がかかる。その上、接着剤は時間が経つと損傷するようである。また接着は、メンテナンス時、その他の目的でタイルを容易に交換するという意図をも失わせる。
【0007】
それ故に、裏地に裏打ちでき、これらの欠点を克服するPVC製織フローリングを製造することが望まれる。
【発明の開示】
【0008】
一般的に言うと、本発明に従って、ビニルフローリングおよび柔らかいクッション状カーペットのハイブリッドを提供する。ハイブリッドフローリングは、可撓性裏地に結合されるPVC製織ファブリックを利用する。ファブリックは無地および/または複数色の織り糸を備え、視覚的に異なるスタイルを作る。これらの糸は、セラミックファイバーコア、好ましくはファイバーガラスを備え、その上にPVCを押し出してPVCジャケットを形成する。コアは、糸を織るのに十分な引張強さを提供する一方、PVCは、耐久性、耐摩耗性および色を提供する。ファブリックは、織られた後、ファブリックの縦糸と横糸を融合させる幅出しまたは硬化オーブンに送られ、それによってファブリックを安定させ、その一体性を保持し、ほころびを防ぐ。
【0009】
顕著なことに、ファイバーガラスコアは脆く(ポリエステルよりも大幅に弱い)、それ故に「毛羽立ち」せず −言い換えれば、通常使用中に露出するとタイルの縁から簡単に折れ、整然とした外観を維持する。
【0010】
本発明のフロアは耐摩耗性であり、家庭用化学薬品に曝された場合に表面がくすんだり、腐食したりせず、または色変化を受けない。
【0011】
これに応じて、改良型フローリングシステムを提供することが望ましい。
【0012】
本発明の別の目的は、足元はクッション状でありながらも、耐久性があり拭き取り可能なフローリングシステムを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、タイル形態で製造可能なフローリングシステムを提供することである。
【0014】
本発明のさらなる他の目的および利点は、以下の記載から明らかである。
【0015】
本発明をより十分に理解するために、添付の図面を参照して以下の記述について言及する。
【発明の詳細説明】
【0016】
本発明は、その好ましい形態において、PVCコーティングされたファイバーガラスコア、またはファブリックに織り込まれた別のセラミックコアを利用する。コアは、周知のように、ファイバーガラス糸または他のセラミック糸を押出ヘッドを通して引き抜くことによって製造され、これがPVCジャケットでコーティングされる。得られた糸は、図1の符号11で示すように、セラミックコア13とPVCジャケット15とを備える。従来、それらの糸は図3に示すように、ファブリック17に織り込まれ、これを裏地19と結合してフローリング21を製造する。
【0017】
ファブリックを裏地に固定した後、例えば、図4の符号23で示すように、従来の正方形および/または矩形のタイルに切断する。セラミック糸のコアは脆いので、タイルの縁から容易に切り離せ(図2参照)、整然とした外観を維持する。
【0018】
製造において、セラミックコア15の表面は非常に滑らかであるため、セラミックコアとコーティング、つまりジャケットとの界面には、典型的には樹脂バインダまたは同様の種類のバインダ製品が組み込まれている。適切なバインダとしては、ポリエステル樹脂、ビニルエステル、エポキシ、フェノール性樹脂等の樹脂のみならず、非デンプン油バインダが挙げられ、後者の例はペンシルバニア州ピッツバーグのPPG社によって製造され、「DDS」という商品名で販売されている。
【0019】
あるいは、テクスチャード加工ファイバーガラスまたは他のセラミック糸を使用してもよい。テクスチャード加工ファイバーガラスは、糸が熱いうちにファイバーガラスフィラメントをエアブラストに通し、それによってフィラメントに沿って様々なキンクを形成したり、フィラメント束を大きくしたりすることによって製造される。
【0020】
本発明に従い、ファイバーガラスまたは他のセラミック糸は、約0.05乃至1.0gf/デニール平均の糸切断テナシティ−結節構造(脆性を表す)を有する。対照的に、ポリエステル糸は、それよりもはるかに大きい、約3.0乃至5.0gf/デニール平均の範囲の糸切断テナシティ−結節構造を有する。従って、個々のフローリングタイルを製造する際、セラミック糸を使用すれば、ポリエステルよりも容易に切断でき、有利である。
【0021】
それに加えて、破断ひずみ割合(strain-to-fail percentage)が約5%乃至30%であるポリエステル糸を用いた場合と比較して、セラミック糸の破断ひずみ割合は約1.5%乃至2.5%である。従って、ファイバーガラスのようなセラミックは、通常使用において切断しやすいため、はるかに使用し易い。
【0022】
本発明タイルフローリングシステムの裏地は、任意の適切な可撓性材料(例えば、通常はファブリックに接着され、それによって、破れることが多いポリウレタンまたはラテックス裏地)で製造されてもよいが、好ましい裏地はPVC裏地である。これによりPVCコーティングされたファイバーガラスの織り糸をPVC裏地に熱結合することが可能である。このシステムはファブリックと裏地との一体関係を形成し、その結果、密着効果をもたらす。
【0023】
本発明ファブリックに使用されるファイバーガラスまたは他のセラミック糸は、好ましくは約5乃至15ミル(mill)の直径を有し、約250,000乃至700,000ポンド/平方インチの引張強さを有する(ポリエステル糸は、それよりもはるかに低い引張強さを有し、通常は約50,000乃至125,000ポンド/平方インチである)。その上、ガラス糸の周囲に押し出されたPVCコーティングは、約3乃至10ミルのコーティング厚さを有する。PVCコーティングされた糸の全体直径は約15乃至30ミルの範囲である。
【0024】
さらに、本発明ファブリックは、約25乃至60ミルの範囲の厚さを有し、裏地(好ましくはPVC裏地)は約62.5乃至250ミルの範囲の厚さを有する。
【0025】
本発明ファブリックにおいて使用されるファイバーガラスまたは他のセラミック糸は、約6乃至9g/デニールのテナシティを有する。この強さは、繊維を裂くのに必要とされる負荷であり、ポリエステルと比べかなり小さく、容易に折ることができる。これらはさらに、約0.8乃至1.2g/デニールのループ強度を有し、約1.5乃至2.5g/デニールの結節強度を有する。対照的に、ポリエステル糸のループ強度は1.5乃至4.0g/デニールの範囲であり、結節強度は3.0乃至7.0g/デニールである。従って、セラミック糸を使用すれば、ポリエステルよりも容易に折れるため、有用である。セラミック糸の密度または比重は、約2.5乃至3.0g/cmの範囲である(ポリエステル糸の密度は典型的にはその半分である)。伸長係数(糸において単位伸長に必要な荷重)は、本発明ファブリックのセラミック糸において8,000,000乃至12,000,000ポンド/平方インチである。ポリエステル糸の伸長係数はそれよりもはるかに小さい。
【0026】
曲げ剛性つまり屈曲剛性は、繊維の曲げに対する耐性を測定する。これは、糸を単位で湾曲させるか、またはある角度に曲げるのに必要な荷重である。ガラスまたは他のセラミック糸は、同等サイズのポリエステルと比べ、糸を曲げるのに約15乃至25倍の荷重を必要とする。その結果、セラミック糸は、曲げに対してはるかに耐性があり、タイルの縁から折り易いと考えられるため、本発明のフローリングシステムにより適している。
【0027】
上述のように、ガラスまたは他のセラミック糸はポリエステルのほぼ倍の密度を有するため、ガラス糸の束の体積または大きさは、同じデニールサイズのポリエステルよりもはるかに小さくなる。この点に関して、使用されるファイバーガラスの各糸は典型的には、ファイバーガラス糸のデニールおよび個々のフィラメントのデニールに依存して総数約10乃至1,000の範囲となる複数の構成ファイバーフィラメントを備える束状マルチフィラメント形態である。
【0028】
好ましくは、ファイバーガラス糸は、約40,000ヤード/ポンド(400ガラス)乃至2,000ヤード/ポンド(20)ガラスの範囲の繊度を有する。デニールは、4,464,492を糸のヤード/ポンドで除算して求められるため、本発明ファブリックのファイバーガラス糸は、約110乃至2,200の範囲のデニールを有する。その上、糸の個々のフィラメントは、約2デニール/フィラメント当り乃至10デニール/フィラメント当りの範囲のデニールを有する。当然デニールは糸の長さおよび重量と関係する。
【0029】
上述のように、本発明ファブリックにおいてファイバーガラスを使用することが好ましいが、石英、シリカおよび酸化アルミニウムのような他のセラミックファイバーを使用してもよい。好ましいファイバーガラスは「E」ガラス(電気絶縁ガラス)であるが、「C」ガラス(特殊ガラス)および「A」ガラス(同様に特殊ガラス)を使用してもよい。「E」ガラスは典型的に、多くのサイズ、フィラメント数および断面において容易に入手可能なため、好ましい。
【0030】
本発明に従えば、ドビー、ジャカード織り、および平織りを含むすべての製織方法が適しており、これらの標準的な製織技術で達成可能なデザインに限定されない。
【0031】
本発明の糸は、1インチメッシュ当り25×25縦糸/横糸に織られるのが好ましいが、これは、1インチメッシュあたり約10×42縦糸/横糸乃至30×30縦糸/横糸の範囲内でもよく、また、標準的製織装置が通常製造可能な他の如何なるメッシュ形状でもよい。
【0032】
本発明のフローリングシステムおよびファブリックについて本明細書中で詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。さらに、本発明の範囲を特許請求の範囲で定義する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のファブリックの製造と関連して使用される糸の断面図である。
【図2】図1と類似の部分断面図であり、切断された糸を示す。
【図3】本発明のフローリングの断面図である。
【図4】本発明のフローリングの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとしてのセラミック糸と押し出されたポリ塩化ビニル(PVC)ジャケットとをそれぞれが備える複数の織り糸で画成されるファブリックと、
前記ファブリックに結合した裏地と
を備える、フローリングシステム。
【請求項2】
前記セラミック糸が、ファイバーガラス、石英、シリカ、および酸化アルミニウムから選択される、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項3】
前記セラミック糸がファイバーガラスである、請求項2に記載のフローリングシステム。
【請求項4】
前記コアは、樹脂および非デンプン油バインダから選択されるバインダによって、前記ジャケットに結合される、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項5】
前記セラミック糸がテクスチャード加工されている、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項6】
前記セラミック糸が、約0.05乃至1.0gf/デニール平均の糸切断テナシティ−結節構造を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項7】
前記セラミック糸が、約1.5%乃至2.5%の破断ひずみ割合を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項8】
前記裏地が、PVC、ポリウレタンおよびラテックスから選択される、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項9】
前記裏地がPVCである、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項10】
前記セラミック糸が約5乃至15ミルの直径を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項11】
前記セラミック糸が、約250,000乃至700,000ポンド/インチの引張強さを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項12】
前記PVCジャケットが約3乃至10ミルの厚さを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項13】
前記織り糸が、それぞれ約15乃至30ミルの範囲の直径を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項14】
前記ファブリックが、約25乃至60ミルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項15】
前記裏地が約62.5乃至250ミルの範囲の厚さを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項16】
前記セラミック糸が約6乃至9g/デニールのテナシティを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項17】
前記セラミック糸が約0.8乃至1.2g/デニールのループ強度を有し、約1.5乃至2.5g/デニールの結節強度を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項18】
前記セラミック糸が約2.5乃至3.0g/立方伸長係数の範囲の密度を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項19】
前記セラミック糸が、8,000,000乃至12,000,000ポンド/平方インチの伸長係数を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項20】
前記セラミック糸が、総数約10乃至1,000の範囲の複数の構成ファイバーフィラメントで画成される束状マルチフィラメント形態を備える、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項21】
前記セラミック糸が、約40,000ヤード/ポンド(400ガラス)および2,000ヤード/ポンド(20)ガラスの範囲の繊度を有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項22】
前記セラミック糸が、約110乃至2,200の範囲のデニールを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項23】
前記フィラメントがそれぞれ、約2デニール/フィラメント当り乃至10デニール/フィラメント当りの範囲のデニールを有する、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項24】
前記ファブリックがメッシュ構造に編まれている、請求項1に記載のフローリングシステム。
【請求項25】
前記ファブリックの前記糸が、前記裏地に熱結合されている、請求項1に記載のフローリングシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−537379(P2007−537379A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513441(P2007−513441)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/016957
【国際公開番号】WO2005/113229
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506357435)チリウィッチ, エル.エル.シー. (1)
【Fターム(参考)】