説明

ファクシミリ装置及びその制御方法

【課題】 送信すべき画像データのアンダーフローの発生要因を低減させること。
【解決手段】 読取部2−5の状況(読取形態、読取状況等)を判定し、その判定結果に応じてMODEM2−9、NCU2−10を介したファクシミリ送信データの供給を遅延させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿上の画像を読み取って得た画像データを送信するファクシミリ装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ITU−TのT.30で勧告されたG3モードに従ったファクシミリ送信を行う際、送信するための画像データがアンダーフローしないようにフィルデータを挿入するものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−4336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、フィルデータの挿入だけでは上記勧告に従った制限時間までに画像データの送信を間に合わせることができないことがあり、送信エラーとして終了してしまうことがあった。即ち、例えば回線状態が悪い環境での通信を行う場合、ノイズによってフィルデータが正しく送れず、タイムアウトによるエラーが発生してしまうことがある。また、フィルデータの挿入は、画像データの送信を開始してから行うので、タイムアウトによるエラーが発生しやすいものであった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みなされたものであり、送信すべき画像データのアンダーフローの発生要因を低減させたファクシミリ装置及びその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明のファクシミリ装置は、原稿上の画像を読み取り画像データを生成する読取手段と、前記読取手段により生成された画像データを送信する送信手段と、前記読取手段の状況を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果に応じて前記送信手段への画像データの供給を遅延させる遅延手段とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、読取手段の状況に応じて送信手段への送信データの供給を遅延させるので、読取手段からの送信データが不足してしまう事態を低減させ、データ不足による通信エラーの発生を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態のファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】FAXJOBタスクの処理を示すフローチャートである。
【図3】読取タスクの処理を示すフローチャートである。
【図4】読取タスクの処理を示すフローチャートである。
【図5】通信タスクの処理を示すフローチャートである。
【図6】データ供給タスクの処理を示すフローチャートである。
【図7】データ供給タスクの処理を示すフローチャートである。
【図8】ECM通信における送信処理の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態におけるファクシミリ装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
CPU2−1は、ファクシミリ装置全体の動作を制御する。ROM2−2は、CPU2−1が実行する制御プログラムを格納する。制御プログラムは後述する複数のタスクに分かれており、タスク間通信を行いながら各種処理が実行される。RAM2−3は、CPU2−1がプログラムを実行する際のワークメモリとして使用されたり、各種設定データの保存を行ったりする。DRAM2−4は、ファクシミリ送信するための画像データを格納する。
【0012】
読取部2−5は、原稿上の画像を読み取って画像データを生成する。読取部2−5は、光学的に画像を読み取る読取センサ、複数枚の原稿を自動的に1枚ずつ搬送するためのADF(自動原稿給送装置)、原稿を搬送するための搬送モータ、原稿の両面を読み取るための反転機構などを含む。記録部2−6は、読取部2−5から転送される画像データや、ファクシミリ受信した画像データなどに基づく画像を記録紙上に印刷する。
【0013】
表示部2−7は、ユーザに提供すべき情報を表示する。操作部2−8は、ユーザからの各種指示を受け付ける。MODEM2−9は、ファクシミリ送受信データの変調及び復調を行う。NCU2−10は、通信回線網を介した通信のための網制御を行う。
【0014】
次に、図2を用いて本ファクシミリ装置による処理の流れについて説明する。FAXJOBタスクは、読取部2−5による画像の読み取り、MODEM2−9、NCU2−10による通信、DRAM2−4への画像データの格納の統括制御を行う。
【0015】
操作部2−8を介してファクシミリ送信のための相手先情報がセットされ(S1)、送信のための各種パラメータがセットされ(S2)、原稿の読み取りのためのパラメータがセットされ(S3)ると、これらはRAM2−3に保存される。
【0016】
そして、S1〜S3でセットされた情報とともに処理の開始指示のためのメッセージが読取タスク、通信タスクに送信される(S4、S5)。また、S6ではデータ供給タスクにJOBの実行を依頼する。
【0017】
S7では、読取タスクからの読取終了メッセージの受信状況を判断し、その状況に応じて通信タスクへの指示内容を変更する。また、S8では、通信タスクからの通信終了メッセージを待ち、通信終了と判断されればS9で終了処理を行う。
【0018】
次に、図3、4を用いて読取タスクの処理について説明する。
【0019】
FAXJOBタスクから読取指示メッセージを受け取ると(R1)、操作部2−8から指示された画質(読取解像度等)、読取形態(ADFを用いた読み取りか否か、両面原稿の読み取りか否か等)の情報を取得し、RAM2−3にセットする。そして、読取部2−5の前処理であるシェーディング補正等の処理を行う(R3)。
【0020】
R4で読取形態がADFを用いた読み取りであると判断された場合、R5に進み、ADFに置かれた原稿の給紙を開始する。そして、R6でRAM2−3に現在までのデータ量(論理的なページ情報)や後続のデータの有無、物理ページ(原稿)のページ総数、現在の原稿のページ数などを示すPage管理情報をセットする。ADFを用いた読み取りでは、読取センサは固定させたまま原稿を搬送させながら原稿上の画像を読み取る。R7で次の原稿があると判断された場合、R8に進み、Page管理情報に次物理ページあり(まだ原稿があることを示す)の情報をセットする。R9では給紙された原稿上の画像を読取センサにより読み取り、これによって得た画像データをR10でDRAM2−4の画像データ格納領域に格納する。R11で原稿の後端まで読み取られたと判断されるまで、R7以降の処理を繰り返す。原稿の後端は、ADFに設けられたフォトインタラプタ等によって判断する。原稿1枚分のおもて面の読み取りが終了すると、R12でPage管理情報に読み取った画像データの総ライン数、総データ量等の情報をセットする。
【0021】
次にR13で読取形態が両面原稿の読み取りであったか判断し、そうであればR14に進み、ADFに原稿を反転させるよう指示し、原稿の裏面の読み取りの準備を行う。そして、R15〜R18においておもて面の読み取りと同様の処理を行う。ただし、Page管理情報には裏面の画像であることを示す情報も書き込む。
【0022】
以上の処理をR19でADF上の原稿がなくなったと判断されるまで繰り返す。そして全ての原稿の読み取りが終了した場合、R20で読取タスクの終了処理を行い、R21でFAXJOBタスクへ読取終了メッセージを送信する。
【0023】
R4で読取形態がADFを用いた読み取りでないと判断された場合は、フラットベッド読み取りを行う場合であり、図4のフローチャートに移る。フラットベッド読み取りとは、ユーザが1枚ずつフラットベッドに置いた原稿上の画像を、読取センサを移動させながら読み取るものである。
【0024】
フラットベッド読み取りでは、原稿の後端の判断が難しいため、R33のように所定量(距離)の読み取りを行ったかによって1枚分の原稿を読み取ったか判断する。所定量は、読取指定された原稿のサイズ分とすればよい。
【0025】
また、次の原稿の有無は、操作部2−8を介しての指示で判断する。即ち、ユーザが操作部2−8から次の原稿がある旨を指示した場合、R36で否定判定され、R30以降の処理を繰り返す。
これら以外はADF読み取りの場合と同様の処理を行う。
【0026】
次に、図5を用いて通信タスクの処理について説明する。
FAXJOBタスクから通信(送信)開始指示メッセージを受け取ると(T1)、操作部2−8から指示された相手先情報(電話番号)に従って発呼する(T2)。そして相手先装置との回線接続が確立されると、T.30に従ったG3ファクシミリ送信のための前手順を開始する(T3)。そして、T4で画像データを通信回線網に送出するためにMODEM2−9のセットアップ等を行い、T5でデータ供給タスクに送信のための画像データを要求する。
【0027】
T6で送信可能な分の画像データが揃ったと判断されると、MODEM2−9、NCU2−10を含む画データ通信部に画像データを転送し、通信回線網への送出を行う。通信タスクは、送信対象の画像データの進捗状況を管理するPage管理情報をRAM2−3にセットし、T7における送信を行うごとにPage管理情報を更新する。T8では、T5〜7の処理をPage管理情報に書き込まれた1ページ分の画像データを送信したと判断されるまで繰り返す。そして、T9では全ての送信対象の原稿の画像データの送信を終了したか判断し、終了していなければQ信号の送出を行い、T4以降の処理を繰り返す。T9で終了と判断した場合、T10でT.30に基づく後手順を実行し、T11で終了処理を行い、T13でFAXJOBタスクへ送信処理終了のメッセージを送信する。
【0028】
次に、図6を用いてデータ供給タスクの処理について説明する。
FAXJOBタスクからジョブの実行を依頼されると(E1)、係数を初期化する(E2)。この係数とは、後続の処理を遅延させるためのwait時間を示すものである。
【0029】
次にE3で読取タスクが終了したと判断された場合、E12に進み、終了していない場合、E4に進む。E4では、読取タスクのPage管理情報と通信タスクのPage管理情報の進捗状況を比較し、これらが同じである場合、これ以降に読取タスク側の処理が遅れてしまう可能性があるため、E5の処理に進む。E5では、フラットベッド読み取りを行っているか否か判断し、肯定判定を行った場合、複数枚の原稿を読み取らせる際の原稿交換時間を考慮して、E6に進み係数にkcを加算する。E5で否定判定された場合、E7に進み、ADF読み取りで、これから裏面の原稿を読み取るか判断する。肯定判定された場合、原稿の反転に時間がかかってしまうためE8で係数にkbを加算し、これからおもて面を読み取る場合、原稿の分離等を考慮した係数kaを加算する。なお、E8では、これより前にkaが加算されているため、kaにkbを加算した値となる。E10では、読取部2−5が所定温度以上に昇温しているか判断する。昇温している場合は、温度を一定温度まで下げる必要があるので、その待ち時間を考慮した係数kdを加算する。この昇温は搬送モータや読取センサの駆動モータなどにより発生するが、温度を下げないと読取エラーが発生する恐れがあるため、動作を停止し、温度を下げるものである。
【0030】
E12では、上記のように加算されていればその加算された時間、データの供給を行わず待機する。係数がゼロであればこのステップはスキップされる。そして、係数分の時間の待機が終了したら、DRAM2−4に格納されている送信対象の画像データを通信タスクに転送する。以上の処理をE14で送信対象の全ての画像データの送信が終了したと判断されるまで繰り返す。
【0031】
以上のような係数に基づくウェイトは、転送すべきデータは存在するが、そのデータの転送を遅延させるものである。これにより、転送すべきデータが読取部2−5から得られずに通信タスク側でフィルデータの挿入などによる時間稼ぎをせざるを得ない状況を低減させることができる。
【0032】
なお、各係数は、画像データの形式(2値化方法、解像度、原稿サイズ)MODEM2−9の伝送スピード、ECMモードの有無、読取部2−5の機能等によって適宜決定すればよい。
【0033】
また、ファクシミリ送信に際し、送信対象の画像データをコーデックを用いてMH、MR、MMR等により圧縮して符号化する必要がある。データ供給タスクが送信対象の画像データを処理する前に符号化しておいてもよいし、データ供給タスクが送信対象の画像データを処理した後に符号化してもよい。
【0034】
図7は、データ供給タスクの処理の他の例を示すものである。
図7は、図6の処理と比べ、F20、F30の処理を加えた点が異なる(これら以外は図6と同様の処理を行う)。F20では、通信タスクが管理しているPage管理情報を参照し、未送信の画像データのデータ量が所定量(Zkb)より多いか判断する。そして、肯定判定が行われた場合は十分な量の送信画像データがあるため係数の加算を行わずにデータ転送に進み、否定判定が行われた場合、十分な量がないためある程度のデータ量がたまるまで待つため、係数keを加算する。
【0035】
なお、所定量Zは、伝送スピードや確保が望ましいECMフレームの数などを考慮して決めればよい。
図7の処理により、読取部2−5の読取スピードが通信に対して劣らないスピードである場合、もしくは通信スピードが回線事情で著しく落ちた場合に総通信時間が長くなる傾向になるのを抑制できる。
【0036】
図8は、本実施形態の処理を行った場合と行わない場合の差異を示す図である。ここではECMモードによる送信を行った場合の例を示す。A〜Gは、ECMフレームを示している。図8(a)は本実施形態の処理を行わない場合でかつ通信回線上でエラーが発生していない場合、図8(b)は本実施形態の処理を行わない場合でかつ通信回線上でエラーが発生した場合を示す。そして、図8(c)が本実施形態の処理を行った場合でかつ通信回線上でエラーが発生した場合を示す。
【0037】
図からも明らかなように、本実施形態のように係数分の遅延を行わない場合、読取部2−5からの読取画像データが発生すると送信を開始してしまう。そしてDフレームを送出したところで画像の読み取りが遅延したとする。このとき、例えば、図8(b)のEフレームにエラーが発生すると、Dフレームのところで開始された受信側のECMフレームタイマーがタイムアウトする。一方、本実施形態のように読取部2−5の状況等により少しずつ遅延させると、各フレームが等間隔となる(必ずしも等間隔ではなく、まばらとなる)ため、Dフレームがエラーとなった場合であってもEフレームのところでタイマーが更新され、タイムアウトが発生する可能性を低減できる。
【0038】
以上の実施形態によれば、読取部2−5の状態または読取部2−5の状態、DRAM2−4への送信画像データの蓄積状況、MODEM2−9、NCU2−10を介した送信状況に応じて通信前の処理を遅延させることによって通信エラーの発生を低減できる。即ち、上述したような係数を用いて送信用データを通信タスクに供給するタイミングを遅延させるため、ある程度の量がたまる毎に送信データを供給でき、送信データの送出の平均化を図り、タイムアウトエラーを低減できる。なお、タイムアウトエラーは、ECM送信における受信機側でのフレームタイマーのタイムアウトばかりでなく、非ECM送信における受信機側でのEOLタイマーのタイムアウトの発生の可能性をも低減できる。
【0039】
また、G4ファクシミリなど、G3ファクシミリ送信以外に適用してもよい。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。また、プログラムは、1つのコンピュータで実行させても、複数のコンピュータが連動して実行するようにしてもよい。また、上記した処理の全てをソフトウェアで実現する必要はなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿上の画像を読み取り画像データを生成する読取手段と、
前記読取手段により生成された画像データを送信する送信手段と、
前記読取手段の状況を判定する判定手段と、
前記判定手段による判定結果に応じて前記送信手段への画像データの供給を遅延させる遅延手段とを有することを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
前記遅延手段は、前記送信手段への画像データの供給が平均化されるように制御することを特徴とする請求項1に記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記読取手段が自動原稿給送装置を用いて原稿を給紙するか否かを判定し、前記遅延手段は自動原稿給送装置を用いて原稿を給紙するか否かに応じて遅延時間を異ならせることを特徴とする請求項1または2に記載のファクシミリ装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記読取手段が自動原稿給送装置を用いて原稿の両面を読み取るか否か判定し、前記遅延手段は、前記読取手段が自動原稿給送装置を用いて原稿の両面を読み取る場合に原稿のおもて面を読み取るか裏面を読み取るかに応じて遅延時間を異ならせることを特徴とする請求項3に記載のファクシミリ装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記読取手段が所定温度以上であるか否か判定し、前記遅延手段は前記読取手段が所定温度以上であると判定された場合に前記送信手段への画像データの供給を遅延させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のファクシミリ装置。
【請求項6】
さらに、前記読取手段により生成された画像データを蓄積する蓄積手段を有し、前記送信手段は前記蓄積手段から画像データを読み出して送信を実行し、前記判定手段は前記読取手段の状況と前記蓄積手段の状況とを判定し、前記遅延手段は前記読取手段と前記蓄積手段の前記判定手段による判定結果に応じて前記送信手段への画像データの供給を遅延させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のファクシミリ装置。
【請求項7】
原稿上の画像を読み取り画像データを生成する読取手段と、前記読取手段により生成された画像データを送信する送信手段とを有するファクシミリ装置の制御方法であって、
前記読取手段の状況を判定し、
前記判定の結果に応じて前記送信手段への画像データの供給を遅延させることを特徴とするファクシミリ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−130325(P2011−130325A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288820(P2009−288820)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】