説明

ファンモータ駆動制御装置、ファンモータ駆動制御方法、ファン装置及び電子機器

【課題】
本発明は、省エネルギーを実現できるファンモータ駆動制御装置であって、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険のない長期安定性に優れたファンモータ駆動制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
ファンを駆動するファンモータを制御するファンモータ駆動制御装置であって、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号を含む2以上の制御信号の中から選択された1つの制御信号に基づいてファンモータを制御することを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンを駆動するためのファンモータの回転数を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、自動車及びパソコン等の装置には冷却用のファンが用いられているが、近年、冷却用ファンに於いて、冷却用ファンを駆動するファンモータをできる限り厳密に制御して省エネルギーを実現することが望まれている。このようなファンモータの制御方法の一つにPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御がある。特許文献1には、PWM制御を用いたファンモータの制御装置として、図5に示すようなファンモータ駆動制御装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、図5に示すようにCPUの指示に基づいてPWM発生ユニットがPWM信号を生成し、生成されたPWM信号に応じてトランジスタ(Tr1)が電源(+24V)をスイッチングすることにより、ファンモータ(M)に所望の回転数を与えるファンモータ駆動制御装置が提案されている。CPUは温度センサ、ファンモータの回転数等の様々なデータを用いることで、最適な回転数を与えるようにPWM発生ユニットへ指示を出す。PWM発生ユニットがCPUの指示に基づいて最適なPWM信号を生成することで、ファンモータを厳密に制御することが可能となり、省エネルギーを実現することができる。
【0004】
更に、特許文献1にはファンモータの回転数をカウントすることでファンモータの停止を検知し、ファンモータが故障等により停止した場合にはオペレータに異常を表示すると共にファンモータ駆動制御装置を停止することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−333487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1にはファンモータが故障等により停止した場合にはファンモータ駆動制御装置を停止することが記載されているが、ファンモータ駆動制御装置を停止することでファンモータが停止した場合には、冷却機能が働かずに部分発火等が生じる危険がある。また、CPUは温度センサ、ファンモータの回転数等の様々なデータを用いて指令を出すものであり、CPUの起動時や負荷が集中した場合には正常に動作しなくなる場合がある。CPUが正常に動作しない場合には、PWM発生ユニットが適切なPWM信号を生成できずにファンモータの回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険がある。
【0007】
そこで、本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、省エネルギーを実現できるファンモータ駆動制御装置であって、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険のない長期安定性に優れたファンモータ駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、ファンを駆動するファンモータを制御するファンモータ駆動制御装置であって、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号を含む2以上の制御信号の中から選択された1つの制御信号に基づいてファンモータを制御することを特徴とするものである。
【0009】
上記のファンモータ駆動制御装置は、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号を含む2以上の制御信号を有しているため、いずれか1つの制御信号が使用できない場合でもその他の制御信号を使用することでファンモータを長期に安定して制御することが可能である。従って、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険のない長期安定性に優れたファンモータ駆動制御装置を提供することが可能である。更に、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号に基づいてファンモータを制御する場合には、ファンモータを的確に制御することが可能となり、従って省エネルギーを実現できる。
【0010】
更に上記課題を解決すべく本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、制御信号とはPWM信号であり、制御信号発生部とは信号制御部から出力されるデューティ比率により第1のPWM信号を生成するPWM信号発生部であることを特徴とするものである。制御信号としてPWM信号を用いた場合には、ファンモータを厳密に制御することが可能である。更に、信号制御部から出力されるデューティ比率によりPWM信号発生部が生成した第1のPWM信号を用いる場合には、デュ−ティ比率にてファンモータを容易に制御できる。
【0011】
更に上記課題を解決すべく本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、2以上のPWM信号から1つのPWM信号を選択する切替スイッチと、信号制御部の正常または異常を判定すると共に切替スイッチを制御する監視制御部とを有するものである。監視制御部は信号制御部が正常であると判定した時には第1のPWM信号を選択するように切替スイッチを制御し、信号制御部が異常であると判定した時には第1のPWM信号以外のPWM信号を選択するように切替スイッチを制御する。
【0012】
ファンモータ駆動制御装置に切替スイッチを設けることで、2以上のPWM信号の中からいずれか1つの所望のPWM制御信号を的確に且つ容易に適用させることが可能となる。また、監視制御部を設けて信号制御部を監視することで、信号制御部の異常を速やかに検知することが可能となる。更に、通常は第1のPWM信号を適用してファンモータを厳密に制御することで省エネルギーを実現すると共に、CPUの異常を検知した場合にはその他のPWM信号に切替えてファンモータを継続して制御することで、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険がない。
【0013】
上記課題を解決すべく本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、更に信号制御部は監視制御部へ認識信号を出力しており、監視制御部は所定時間が経過しても認識信号を受信できない場合には、信号制御部が異常であると判定することを特徴とするものである。このような構成にすることで、信号制御部の異常を確実に検知することが可能となると共に、信号制御部の異常を検知した場合には第1のPWM信号からその他のPWM信号に切替えるようにすることでファンモータを長期に安定して制御することができる。
【0014】
更に上記課題を解決すべく本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、ファンは被冷却体を冷却するものであり、被冷却体の周囲温度を測定する温度センサを有するものである。ここで、信号制御部は温度センサからの温度情報を基にデューティ比率を出力し、監視制御部は温度センサを監視して温度センサの異常を検知した時には第1のPWM信号以外のPWM信号を選択するように切替スイッチを制御する。
【0015】
被冷却体の周囲温度を測定する温度センサを設けた場合には、信号制御部が温度センサからの温度情報を基に被冷却体の状態をフィードバックしてPWM信号発生部に適切に指示することで、PWM信号発生部はファンモータに最適な回転数を与える第1のPWM信号を生成し、従って更なる省エネルギーを実現できる。更に、監視制御部で温度センサを監視し、温度センサに何らかの問題が生じたと判断した場合には第1のPWM信号からその他のPWM信号に切替えるようにすることで、ファンモータを長期に安定して制御することができる。
【0016】
更に上記課題を解決すべく本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、2以上の前記PWM信号には、比較部がのこぎり波と基準電圧とを比較して生成した第2のPWM信号が含まれていることを特徴とするものである。比較部がのこぎり波と基準電圧とを比較することで比較的容易にPWM信号を生成することが可能である。従って、第2のPWM信号として比較部がのこぎり波と基準電圧とを比較して生成したPWM信号を用いることにより、単純な構成から成るコストの低いファンモータ駆動制御装置とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
上記のように本発明に係るファンモータ駆動制御装置は、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号を含む2以上の制御信号を有しているため、いずれか1つの制御信号が使用できない場合でもその他の制御信号を使用することでファンモータを長期に安定して制御することが可能である。従って、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険のない長期安定性に優れたファンモータ駆動制御装置を提供することが可能である。更に、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号に基づいてファンモータを制御する場合には、ファンモータを的確に制御することが可能となり、従って省エネルギーを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置1の構成図である。本実施形態では、ファンモータ2を制御する制御信号としてPWM信号22を用いた。また、信号制御部としてマイコン(本実施形態ではCPU5と記す)を、制御信号発生部としてPWM信号発生部4を用いた。図1において、ファン3はファンモータ2により駆動され、ヒートパイプ等の被冷却システムを冷却するものである。ファンモータ2は汎用のモータであって、PWM信号22によりモータの回転数を制御されている。
【0019】
第1のPWM信号22a及び第2のPWM信号22bはファンモータ2へ供給される供給電圧をPWM制御するものである。本実施形態において第1のPWM信号22aは主にPWM信号発生部4、CPU5、温度センサ15、メモリ17から生成されている。温度センサ15は被冷却体の周囲の温度を測定して測定結果を温度情報24としてCPU5へ出力している。メモリ17はデューティ比率を格納するものであり、本実施形態においては12.5%、25%、50%、75%、87.5%の5種類のデューティ比率が格納されている。CPU5は温度センサ15から得た温度情報24を基にメモリ17に格納されたデューティ比率の中から最適なデューティ比率を選択してPWM信号発生部4に出力することでPWM信号発生部4に第1のPWM信号22aの生成を指示している。PWM信号発生部4はCPU5から指定されたデューティ比率に対応する第1のPWM信号22aを生成して出力している。
【0020】
一方、本実施形態において第2のPWM信号22bは比較部7、のこぎり波発生部8、基準電圧発生部9から生成されている。のこぎり波発生部8は一定周期でのこぎり波27を生成するものであり、基準電圧発生部9は任意の一定電圧(以下、基準電圧28と記す)を与えるものである。図2に本実施形態で用いた第2のPWM信号22bの生成例を示す。
【0021】
図2に示すように、のこぎり波発生部8によりのこぎり波27が一定周期で生成されている。一方、基準電圧発生部9からは一定電圧の基準電圧28を与えている。比較部7はのこぎり波発生部8から出力されたのこぎり波27と基準電圧発生部9から出力された基準電圧28とを比較して、のこぎり波8が基準電圧28より大きい場合に信号「1」を、のこぎり波8が基準電圧28より小さい場合に信号「0」を出力することで、所望のパルス幅を与える第2のPWM信号22bを生成している。尚、基準電圧28を上下させてパルス幅を変更することで、所望の第2のPWM信号22bを得る事が出来る。本実施形態において基準電圧28は、ファン3から発せられる音が異常音とならない範囲で上限の回転数をファンモータ2に与えるパルス幅を与える一定電圧に設定されている。
【0022】
尚、基準電圧28は上限の回転数をファンモータ2に与えるパルス幅となる電圧に限定する必要はなく、例えば、定常時に平均的に与えられる回転数や部分発火等を生じさせないための下限の回転数に対応する電圧等にしても良い。更に、一定電圧に限定する必要はなく、任意の条件によって基準電圧28が変化することでも良い。
【0023】
図1において、11は監視制御部、12は切替スイッチである。監視制御部11はCPU5を監視するものであり、CPU5が正常であると判定した場合には切替スイッチ12に第1のPWM信号22aを選択するように指示を出し、CPU5が異常であると判定した場合には切替スイッチ12に第2のPWM信号22bを選択するように指示を出す。本実施形態において、監視制御部11にはタイマを用いた。一方、切替スイッチ12は監視制御部11の指示により、第1のPWM信号22aまたは第2のPWM信号22bのいずれか一方を選択して出力するものである。本実施形態において、切替スイッチ12にはセレクタを用いた。
【0024】
ここで、CPU5は監視制御部11に対して所定の時間間隔で所定の認識信号26を送信するようにプログラミングされており、監視制御部11は所定の時間内において所定の認識信号26が得られるか否かを監視している。本実施形態において、監視制御部11は装置の立上げ後1秒以内に認識信号26が受信できた場合には、CPU5が正常に起動できたと判定して切替スイッチに第1のPWM信号22aを選択するように指示を出す。一方、立上げ後1秒が経過しても認識信号26が受信できない場合には、CPU5が正常に起動できなかったと判定して切替スイッチ12に第2のPWM信号22bを選択するように指示を出す。尚、本実施形態では、第2のPWM信号22bを選択するように指示を出すと同時にユーザーに異常を知らせる警報音を発するように設計されている。また、異常をユーザーに知らせる別の方法として警報を表示するようにしても良い。
【0025】
更に、監視制御部11は、任意の認識信号26を受信した後の3秒以内に次の認識信号26が受信できた場合には、CPU5が正常であると判定して切替スイッチに第1のPWM信号22aを選択するように指示を出す。一方、認識信号26を受信してから3秒が経過しても次の認識信号26を受信できない場合には、その時点でCPU5が異常であると判定して切替スイッチ12に第2のPWM信号22bを選択するように指示を出すと共にユーザーに異常を知らせる警報音を発する。尚、監視時間は1秒及び3秒に固定される必要はなく、CPU5の仕様やファン3の使用状況により適宜設定すれば良い。
【0026】
また、13は電源、14は制御トランジスタである。本実施形態において、電源13は+24Vの供給電圧を与えている。制御トランジスタ14は電源13とファンモータ2との間に配置されており、切替スイッチ12から出力されたPWM信号22に基づいて電源13からの供給電圧をスイッチングする。例えば、切替スイッチ12からデューティ比率が50%のPWM信号22が出力された場合には、制御トランジスタ14のスイッチング動作によりファンモータ2には供給電圧+24V時の50%が供給される。すなわち、+24V時の電力の50%の電力がファンモータ2に供給される。
【0027】
上記のように本実施形態に係るファンモータ駆動制御装置1は、第1のPWM信号22aと第2のPWM信号22bの2種類のPWM信号22を有しているため、CPU5の異常等により第1のPWM信号22aが使用できない場合でも第2のPWM信号22bを使用することでファンモータ2を長期に安定して制御することが可能である。従って、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険のない長期安定性に優れたファンモータ駆動制御装置1を提供するものである。
【0028】
第1のPWM信号22aはCPU5が被冷却体の周囲温度をフィードバックすることで指定した最適なデューティ比率に基づいてPWM信号発生部4が生成したものである。第1のPWM信号22aに基づいてファンモータ2を制御する場合には、ファンモータ2を的確に制御することが可能となり、従って省エネルギーを実現できる。尚、制御信号としてはPWM信号に限定される必要はない。矩形パルスではなく三角パルス、正弦波の一部を用いても良いし、信号の周期を適宜変化させた制御信号等でも良い。更に第1の制御信号としてCPU5の指示によりPWM信号発生部4が生成した第1のPWM信号22aに限定される必要はなく、例えば温度情報や時間情報等から所定のパルス幅を直接生成する等でも良い。
【0029】
一方、第2のPWM信号22bは比較部7、のこぎり波発生部8、基準電圧発生部9から生成されるものである。比較部7がのこぎり波27と基準電圧28とを比較することで比較的容易にPWM信号22を生成することが可能である。従って、第2のPWM信号22bとして比較部7がのこぎり波27と基準電圧28とを比較して生成したPWM信号22を用いることにより、単純な構成から成るコストの低いファンモータ駆動制御装置1とすることができる。尚、第1の制御信号以外の制御信号としては、比較部7、のこぎり波発生部8、基準電圧発生部9から生成された第2のPWM信号22bに限定される必要はなく、上述の制御信号の他に例えば正弦波信号とのこぎり波とを比較して生成したもの等でも良い。
【0030】
更に、第1のPWM信号22aは1つのCPU5の指示から生成されるものであり、第2のPWM信号22bは比較部7、のこぎり波発生部8及び基準電圧発生部9と言った単価の低い回路を単純に組み合わせて生成されるものである。すなわち、本実施形態に係るファンモータ駆動制御装置1は、複数の電源13や複数のCPU5を備えること無しに単純な構成から成るコストの低い装置である。
【0031】
また、本実施形態に係るファンモータ駆動制御装置1は、監視制御部11がCPU5からの認識信号26の受信の有無によりCPU5の正常か異常かを確実に判定するものである。監視制御部11は、CPU5が正常であると判定した場合には切替スイッチ12に第1のPWM信号22aを選択するように制御し、CPU5が異常であると判定した場合には切替スイッチ12に第2のPWM信号22bを選択するように制御する。
【0032】
このような構成にすることで、CPU5の異常を速やかに検知することが可能となる。また、通常は第1のPWM信号22aを適用してファンモータ2を厳密に制御することで省エネルギーを実現すると共に、CPU5の異常を検知した場合には第2のPWM信号22bに切替えてファンモータ2を継続して制御することで、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険がない。更に、切替スイッチ12を設けたので、第1のPWM信号22aまたは第2のPWM信号22bのどちらか所望のPWM信号22を的確に且つ容易に適用することが可能である。
【0033】
尚、本実施形態では2種類のPWM信号22を用いたが、3種類以上のPWM信号22を用いて切り替えを行っても良い。また、同じ種類のPWM信号22を2以上用いることでも良いが、望ましくは、第1の制御信号としてはよりファンモータ2を的確に制御できる制御信号を、第1の制御信号と切替られる制御信号は単純な構成で生成される制御信号を用いるのが望ましい。
【0034】
次に、本発明に係る第2の実施の形態について説明する。図3は本実施形態に係るファンモータ駆動制御装置1の構成図である。第1の実施の形態(図1)と本実施形態(図3)との違いは、本実施形態では監視制御部11が更に温度センサ15を監視している点である。図3において、監視制御部11は温度センサ15に接続されており、温度センサ15と監視制御部11との間には更にコンパレータ16が配置されている。
【0035】
本実施形態において、温度センサ15はCPU5へ出力する温度情報24を並行してコンパレータ16へも出力している。コンパレータ16は温度センサ15から出力された温度情報24が0℃未満または70℃以上である場合に、監視制御部11に異常信号29を出力するように設定されている。監視制御部11は異常信号29を受信した場合には、温度センサ15に何らかの問題が生じたと判断して切替スイッチ12に第2のPWM信号22bを選択するように指示を出す。図4に温度情報24と回転数との関係を示す。
【0036】
図4において、温度情報24が0℃以上70℃未満の場合には、第1のPWM信号22aで回転数を制御している。本実施形態において、第1の実施の形態と同様に回転数は12.5%、25%、50%、75%、87.5%の5種類のデューティ比率に対応する第1のPWM信号22aにて制御されている。一方、温度情報24が0℃未満及び70℃以上の場合には第2のPWM信号22bで回転数を制御する。本実施形態において、第2のPWM信号22bは第1の実施の形態と同様にファン3から発せられる音が異常音とならない範囲で上限の回転数を与えるように設定されている。
【0037】
また本実施形態では、監視制御部11はコンパレータ16から異常信号29を受信した場合には、更に1分間温度センサ15の監視を継続する。異常信号29を受信してから1分が経過する前に温度センサ15から出力される温度情報24が0℃以上70℃未満となり、コンパレータ16から異常信号29が出力されなくなった場合には、監視制御部11は再度切替スイッチ12に第1のPWM信号22aを選択するように指示を出す。尚、1分が経過しても異常信号29が受信される場合には、監視制御部11は温度センサ15の異常についてユーザーに警告音を発する。尚、切替スイッチ12以降の動作は第1の実施の形態と同様である。監視の継続時間は1分間に固定される必要はなく、ファンの使用環境により適宜設定すれば良い。
【0038】
上記のように本実施形態に係るファンモータ駆動制御装置1は、監視制御部11が温度センサ15を監視するものである。このようにすることで、通常はCPU5が温度センサ15からの温度情報24を基にファン3の状態をフィードバックしてファンモータ2に最適な回転数を与える第1のPWM信号22aを生成し、省エネルギーを実現すると共に、監視制御部11が温度センサ15に何らかの問題が生じたと判断した場合には切替スイッチ12に第2のPWM信号22bを選択するように指示することで、ファンモータ2を長期に安定して制御することが可能となる。
【0039】
尚、本実施形態において温度センサ15と監視制御部11との間にコンパレータ16を設けることで、温度センサ15の異常を検知することとしたが、必ずしも本構成とする必要はない。例えば、第1の実施の形態において、CPU5が温度センサ15からの温度情報24として0℃未満または70℃以上の温度情報24を受信した場合に、CPU5から監視制御部11へ異常信号29を送信するようにしても良い。この場合は、構成は第1の実施の形態の構成のままにしてCPU5のプログラミングを変更すれば良い。
【0040】
更に、温度情報24と回転数との関係は図4に限定されるものではない。第1のPWM信号22aで制御する温度範囲を0℃以上70℃未満に限定する必要はなく、ファン3の使用条件等により適宜設定すれば良い。また、例えば30〜50℃の場合には第2のPWM信号22bを選択してデューティ比率が50%の第2のPWM信号22bで制御することとして、CPU5への負荷を低減することでも良い。更に、5種類のデューティ比率を適用させる必要はなく、適宜最適なデューティ比率を適用して回転数が滑らかに増減するようにしても良い。
【0041】
また、本実施形態においても、主にPWM信号発生部4、CPU5、温度センサ15、メモリ17から生成された第1のPWM信号22aと比較部7、のこぎり波発生部8、基準電圧発生部9から生成された第2のPWM信号22bの2種類のPWM信号22を用いたが、必ずしもこれに限定される必要がないことについては言うまでもない。
【0042】
上記のように本発明に係るファンモータ駆動制御装置1は、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号を含む2以上の制御信号を有しているため、いずれか1つの制御信号が使用できない場合でもその他の制御信号を使用することでファンモータ2を長期に安定して制御することが可能である。従って、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険のない長期安定性に優れたファンモータ駆動制御装置1を提供することが可能である。更に、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号に基づいてファンモータを制御する場合には、ファンモータ2を的確に制御することが可能となり、従って省エネルギーを実現できる。
【0043】
尚、信号制御部から出力されるデューティ比率によりPWM信号発生部4が生成した第1のPWM信号22aを用いる場合には、デュ−ティ比率にてファンモータ2を容易に制御できる。更に第1のPWM信号22aを1つのCPU5の指示から生成する場合には、本発明に係るファンモータ駆動制御装置1を複数の電源13や複数のCPU5を備えること無しに単純な構成から成るコストの低いファンモータ駆動制御装置1とすることができる。
【0044】
また、その他の制御信号として比較部7、のこぎり波発生部8、基準電圧発生部9から生成された第2のPWM信号22bを用いる場合には、比較部7がのこぎり波27と基準電圧28とを比較することで比較的容易にPWM信号22を生成することが可能であり、従って単純な構成から成るコストの低いファンモータ駆動制御装置1とすることができる。
【0045】
更に、監視制御部11を設けてCPU5を監視しているので、CPU5の異常を速やかに検知することが可能となると共に、CPU5の異常を検知した場合には第2のPWM信号22bに切替えてファンモータ2を継続して制御することで、回転数が上がり過ぎて異常音が発生したり、反対に回転数が下がり過ぎて部分発火等が生じる危険がない。更に、切替スイッチ12を設けたので、第1のPWM信号22aと第2のPWM信号22bの選択を的確に且つ容易に適用することが可能である。
【0046】
また、温度センサ15を設けた場合には、CPU5が温度センサ15からの温度情報24を基に被冷却体の状態をフィードバックしてPWM信号発生部4に適切に指示することで、PWM信号発生部4はファンモータ2に最適な回転数を与える第1のPWM信号22aを生成し、従って更なる省エネルギーを実現できる。尚、監視制御部11で温度センサ15を監視し、温度センサ15に何らかの問題が生じたと判断した場合には第1のPWM信号22aからその他のPWM信号22に切替えるようにすることで、ファンモータ2を長期に安定して制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る第2のPWM信号22bのタイミングチャート。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係るファンモータ駆動制御装置の構成図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る温度情報と回転数との関連図。
【図5】従来のファンモータ駆動制御装置の構成図。
【符号の説明】
【0048】
1 ファンモータ駆動制御装置
2 ファンモータ
3 ファン
4 PWM信号発生部
5 CPU
7 比較部
8 のこぎり波発生部
9 基準電圧発生部
11 監視制御部
12 切替スイッチ
13 電源
14 制御トランジスタ
15 温度センサ
16 コンパレータ
17 メモリ
22 PWM信号
22a 第1のPWM信号
22b 第2のPWM信号
24 温度情報
26 認識信号
27 のこぎり波
28 基準電圧
29 異常信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンを駆動するファンモータを制御するファンモータ駆動制御装置であって、信号制御部の指示により制御信号発生部が生成した第1の制御信号を含む2以上の制御信号の中から選択された1つの制御信号に基づいて前記ファンモータを制御することを特徴とするファンモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御信号とはPWM信号であり、前記制御信号発生部とは前記信号制御部から出力されるデューティ比率により前記第1のPWM信号を生成するPWM信号発生部であることを特徴とする請求項1に記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記ファンモータ駆動制御装置は、2以上の前記PWM信号から1つの前記PWM信号を選択する切替スイッチと、前記信号制御部の正常または異常を判定すると共に前記切替スイッチを制御する監視制御部とを有しており、前記監視制御部は前記信号制御部が正常であると判定した時には前記第1のPWM信号を選択するように前記切替スイッチを制御し、前記信号制御部が異常であると判定した時には前記第1のPWM信号以外の前記PWM信号を選択するように前記切替スイッチを制御することを特徴とする請求項2に記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項4】
前記信号制御部は前記監視制御部へ認識信号を出力しており、前記監視制御部は所定時間が経過しても前記認識信号を受信できない場合には、前記信号制御部が異常であると判定することを特徴とする請求項3に記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項5】
前記ファンは被冷却体を冷却すると共に前記ファンモータ駆動制御装置は前記被冷却体の周囲温度を測定する温度センサを有しており、前記信号制御部は前記温度センサからの温度情報を基に前記デューティ比率を出力し、前記監視制御部は前記温度センサを監視して前記温度センサの異常を検知した時には前記第1のPWM信号以外の前記PWM信号を選択するように前記切替スイッチを制御することを特徴とする請求項3または4に記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項6】
2以上の前記PWM信号には、比較部がのこぎり波と基準電圧とを比較して生成した第2のPWM信号が含まれていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載のファンモータ駆動制御装置。
【請求項7】
ファンを駆動するファンモータを制御するファンモータ駆動制御方法であって、信号制御部の指示により制御信号発生部が第1の制御信号を生成する工程と、前記第1の制御信号以外の制御信号を生成する工程と、前記第1の制御信号及び前記第1の制御信号以外の前記制御信号の中から1つの前記制御信号を選択する工程と、選択した前記制御信号に基づいて前記ファンモータを制御する工程とから成ることを特徴とするファンモータ駆動制御方法。
【請求項8】
ファンと、前記ファンを駆動するファンモータと、前記ファンモータを制御するファンモータ駆動制御装置とを備えたファン装置であって、
前記ファンモータ駆動制御装置は、請求項1乃至6のいずれかの請求項に記載されたファンモータ駆動制御装置を備えていることを特徴とするファン装置。
【請求項9】
請求項8記載のファン装置と、前記ファン装置により冷却される部品とを備えていることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−60835(P2007−60835A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−244124(P2005−244124)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】