説明

フィッシャートロプシュ触媒

本発明は、150μmより小さい容積平均粒度を有する、コバルト及び亜鉛の共沈殿粒子を含む触媒に関する。本発明のもう1つの面は、そのような触媒をフィッシャートロプシュ方法において使用することである。本発明は、さらに、コバルトイオン及び亜鉛イオンを含む酸性溶液並びにアルカリ性溶液が接触され、沈殿物が分離されてなる、コバルト及び酸化亜鉛を含む触媒の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコバルト及び亜鉛を含むフィッシャートロプシュ触媒に関し、それのみならず、そのような触媒を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
C1〜C3脂肪族炭化水素の合成に使用される、酸化コバルト及び酸化亜鉛を含有する触媒は米国特許公報第4,039,302号により知られている。
【0003】
米国特許公報第4,826,800号は合成ガスを炭化水素に転換する触媒として、還元活性化後に使用されるコバルト及び酸化亜鉛を含む触媒を調製する方法を記載している。該触媒は可溶性亜鉛塩及び可溶性コバルト塩の溶液を水酸化アンモニウム又は炭酸アンモニウムなどの沈殿剤と混合し、沈殿物を回収することにより調製される。この記載された方法における炭酸塩の金属に対する比は高く、それは触媒の強度に有害であることが見出されている。
【0004】
米国特許公報第5,345,005号は、ケトン等の水素化によるアルコール調製用のアルミナに担持した銅―亜鉛触媒に関する。比較例に、アルミナ担持の銅―亜鉛―コバルト触媒の調製が記載され、そこではソーダ灰が使用されている。しかしながら、ソーダ灰の使用は触媒の強度に潜在的に有害であることが見出される。米国特許公報第5,345,005号に記載された、銅―亜鉛―コバルト触媒の90容積%が入る粒度分布範囲は明示されていない。しかし該触媒の調製にソーダ灰を使用することは粒度分布の広化につながることは予想される。
【0005】
米国特許公報第5,945,458号及び米国特許公報第5,811,365号は、酸化亜鉛担体上のコバルト等の第VIII族金属の触媒組成物存在化でのフィッシャートロプシュ法を記載している。当該触媒は、まず亜鉛塩及び他の成分の溶液を炭酸水素アルカリ金属塩溶液に加えて担体を調製することによりつくられる。次に、沈殿物はろ過により炭酸水素塩溶液から分離されてフィルターケーキとなり、これはその後乾燥、か焼され、第VIII族金属を与えることができる。該触媒物質は次いで錠剤形に成形され、この錠剤は粉砕されて250〜500μmの大きさの粒子となり、これはフィッシャートロプシュ法に使用することができる。粉砕のような付加的な後処理が,良好な強度特性を持つ触媒粉体を得るために必要とされている。しかし得られる平均粒度は、上に示したように依然として比較的大きい。そのうえ、粉砕は広い粒度分布をもたらし、そのような大きい粒度及び広い粒度分布を持つ触媒は気泡塔、スラリー相反応器又は管状反応器を用いる方法には、低度に適する傾向がある。
【0006】
国際特許出願公開公報第01/38269号は、高せん断混合域で液体媒体中の触媒懸濁物が気体反応物質と混合され、その後に混合物が,後混合域に排出される、フィッシャートロプシュ法を実施するための3相系を記載している。このようにすれば物質移動は高められるとされている。好適な触媒として、とりわけ酸化亜鉛などの無機担体に担持されたコバルト触媒が挙げられている。これらの既に知られた触媒の調製に用いられる担体の表面積は100g/m2より小さい。これらの従来技術であるコバルト系触媒は、酸化亜鉛担体等の適当な担体上にコバルトを含浸法により析出させて調製することができる。その他の慣用の調製方法には沈殿法があり、その方法では触媒調製工程から得られる触媒物質の固いフィルターケーキを小粒子へ粉砕することが、典型的には必要となる。
【0007】
しかしながら、これらの従来触媒は、触媒プロセスで使用されたときに物質移動及び/又は熱移動に関する要件を必ずしも満たさないことが見出された。
【0008】
さらに、これらの慣用触媒の分散挙動は(スラリー相方法で使用されたときに)触媒粒子が凝集しやすいために、特によいというほどでもないことが見出された。
【0009】
コバルトを付与して触媒を形成するのに好適な、商業的に入手できる酸化亜鉛担体のその他の問題として、不適当な粒度分布(特に沈殿によって得られた担体では)、典型的には含浸させるのがより難しくなって、そのため担体に合理的な量のコバルトを付与するためには数回の含浸処理が必要になるような低い表面積、及び、コバルトが添加された後のコバルト分布の均質性の低さが挙げられる。
【特許文献1】米国特許公報第4,039,302号
【特許文献2】米国特許公報第4,826,800号
【特許文献3】米国特許公報第5,345,005号
【特許文献4】米国特許公報第5,945,458号
【特許文献5】米国特許公報第5,811,365号
【特許文献6】国際特許公開公報第01/38269号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、フィッシャートロプシュ合成に使用するのに適し、既に知られている触媒の代替として使うことができる新規な触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
コバルトと酸化亜鉛を含み、特定の粒度及び粒度分布を持つ、ある種の触媒はフィッシャートロプシュ触媒として非常に好ましい特性を有することが見出された。
【0012】
従って、本発明は、150μmより小さい容積平均粒度及び触媒粒子の少なくとも90容積%が該平均粒度の0.4倍から2.5倍の粒度を持つような粒度分布を有する、コバルト及び亜鉛の共沈殿物粒子を含む触媒に関する。
【0013】
本明細書で使用される容積平均粒度及び粒度分布は、Malvern Master粒度測定機 MS20装置(測定手順は、粒度分布測定前に3分間、(最大出力の)25%の超音波処理をすることを含む。計算手法はモデルインデペンデント(Model Independent)。標示は1907。実施例も参照のこと。)を用いて、レーザー回折装置により決定される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従う触媒は、触媒プロセスで使用するのに非常に好ましい特性を有することが見出された。本発明に従う触媒は、触媒プロセスで使用すると特に良好な物質及び/又は熱移動特性を有することが見出された。
【0015】
本発明に従う触媒は、攪拌スラリー相反応器、気泡塔反応器、管状反応器又は流動床反応器で使用するのが特に好ましいことが見出された。
【0016】
本発明に従う触媒は、乾燥した形で、及び/又は攪拌スラリー反応器中で使用したときに非常に良好な流動性を、また、反応混合物中において反応物との良好な分散特性を示す。本発明の触媒は、例えば当触媒を貯蔵フラスコに保存したときに観察されるような、乾燥触媒の自由流動特性により示されるように、非常に好適な粒度分布を有する。
【0017】
本発明に従う触媒は、非常に好ましい分離特性を示し、例えば、ろ過により反応混合物から非常に適切に分離することができる。
【0018】
本発明に従う触媒は、極端に良好な活性と分離特性のバランスを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に従う触媒は、とりわけ、コバルト前駆体及び亜鉛前駆体を含有する溶液の共沈殿によりつくることができる。得られた共沈殿物(固体)は後処理され、最終的に還元されて酸化亜鉛担持コバルト触媒を生成することができる。非常に適した共沈殿物の例には、コバルト/酸化亜鉛及びコバルト/炭酸亜鉛の共沈殿物、コバルト/水酸化亜鉛及びコバルト/ヒドロキシ炭酸亜鉛の共沈殿物、並びにこれらの組み合わせが含まれる。
【0020】
好ましくは、触媒の容積平均粒度は100μmより小さく、より好ましくは50μmより小さい。下限は特には臨界的ではない。実用上の目的からその大きさは、少なくとも粒子が依然として液体反応混合物から分離できる程度であることが好ましい。例えば平均粒度が2μm以上の触媒が特に適している。非常に良好な結果が容積平均粒度が5〜50μmの範囲にある触媒を用いて達成されている。
【0021】
粒度分布に関しては、平均粒度の0.4倍より小さい粒度を持つ粒子の量が平均粒度の2.5倍より大きい粒度を持つ粒子の量よりはるかに低い(例えば少なくとも5倍以上低い)ことが好ましい。より好ましいのは、平均粒度の0.4倍より小さい粒度を持つ触媒粒子が本質的に存在しないことである。
【0022】
触媒粒子の少なくとも90容積%が平均粒度の0.5倍から2.5倍の粒度を、より好ましくは平均粒度の0.6倍から2倍の粒度を持つような粒度分布を有する触媒によって、非常に良い結果が得られている。
【0023】
好ましくは、触媒の孔容積(試料を180℃で3.3Pa(25mTorr)の圧力まで脱気した後に、Ankersmit Quantachrome Autosorb−6装置を用いて測定する窒素吸着法(N2−BET)により定められる)は、5〜100nmの範囲の直径を持つ孔により、少なくとも主として形成されている。ここで、5nmより小さい直径の孔が本質的に存在しないこと(殊に孔容積の5%より小さい部分が、5nmより小さい直径の孔により占められていること)が非常に好ましい。そのような触媒は反応物及び生成物に対する特に良好な拡散特性を有することが見出されている。そのような触媒はフィッシャートロプシュ反応における高選択性を有することも見出されている。
【0024】
0.5ml/gよりも小さい孔容積を有する触媒によって、非常に良好な結果が達成されている。孔容積は、好ましくは少なくとも0.05ml/gである。0.45ml/gよりも小さい孔容積の触媒が特に適している。
【0025】
そのような触媒は特に良好な物理的強度特性をを有することが見出されており、これはスラリー相反応器、管状反応器、気泡塔反応器及び流動床反応器を含む各種の反応器への用途において有利である。
【0026】
また、試料を180℃で3.3Pa(25mTorr)の圧力まで下げて脱気した後に、Ankersmit Quantachrome Autosorb−6装置により定められる表面積は、意図する目的に応じて広い範囲内で選ぶことができる。フィッシャートロプシュ方法には、この変数はたとえば1〜120m2/gの範囲に選ぶことができる。好ましくは、触媒は、5〜100m2/gの範囲の表面積を有する。非常に良好な結果は、5〜80m2/gの範囲の表面積を有する触媒によって達成されている。
【0027】
本発明に従う好ましい触媒は、粒子が多かれ少なかれ球状の外形を有する粒状物質である。そのような触媒は、非常に良好な強度と分離特性、及び比較的高い使用時磨耗耐性を有することが見出されている。
【0028】
粒子の少なくとも大部分が多葉で球状の外形を有する、多かれ少なかれ球状の形をした触媒が非常に好適である。多葉で球状の外形を有する粒子の例は図1に示されている。粒子の少なくとも大部分が、その表面積がいわゆる等価円の表面積の少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、より好ましくは少なくとも1.2倍の面積を有する多葉粒子である触媒によって、例えば熱移動及び/又は物質移動特性についての、特に良好な結果が達成されている。「等価円」という用語は、ここでは任意の視野で見られうる可能な最大外表面積を与える配位の平面に粒子を(例えば顕微鏡により)投影したときに、その粒子の輪郭内にちょうど合う最大周囲円を表現するために使われている(図1に示された粒子の等価円の印象を得るには、図2を参照のこと)。
【0029】
触媒の組成は広く変えることができ、当業者は意図した目的に応じてその組成を決定することを知るだろう。
【0030】
好ましくは、亜鉛のコバルトに対する原子比は40から0.1の範囲にあり、より好ましくは20から0.3の範囲にある。
【0031】
触媒はコバルトと酸化亜鉛から本質的になっていてもよい。しかしながら、フィッシャートロプシュ触媒に普通に用いられる成分のような、1種以上の他の成分を触媒は含有することも可能である。例えば、触媒は、ルテニウム、ハフニウム、白金、ジルコニウム、パラジウム、レニウム、セリウム、ランタン又はこれらの組み合わせのような、1種以上の促進剤を含有してもよい。そのような促進剤が存在するときは、促進剤は典型的には10:1までのコバルトの促進剤に対する原子比で使用される。
【0032】
少なくとも1種の第IIIA族元素を好ましくは全触媒重量に基づき、0.1〜10重量%の濃度で含む本発明に従う触媒は、非常に好ましい構造安定性を有することが見出されている。好ましい第IIIA族元素はアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)及びホウ素(B)を含み、このうちアルミニウムが特に好ましい。
【0033】
本質的にナトリウムを含まない本発明に従う触媒を用いて、非常に良好な結果が得られている。比較的高い量のナトリウムを含有する触媒は強度が低下することが見出されている。さらに、ナトリウムの存在は触媒を被毒させて、そのフィッシャートロプシュ活性を減少させることが見出されている。それゆえ、ナトリウム含有量が触媒重量に基づいて、0.5重量%より小さい、もっととりわけ0から0.15重量%の、さらにもっととりわけ0から0.1重量%である触媒が好ましい。
【0034】
低含有量の銅を含む、又は本質的に銅を含まない、本発明に従う触媒を用いて、非常に良好な結果が達成されている。銅は、ケトン、アルデヒド又はカルボン酸の水素化によるアルコールの生成のような副反応を励起することがあり、そのような副反応は、特にフィッシャートロプシュ方法においては、通常好ましくは避けられ又は抑制される。銅含有量は好ましくは触媒重量に基づいて、2重量%より少なく、より好ましくは0から0.5重量%、さらにより好ましくは0から0.2重量%である。
【0035】
本発明はさらに、コバルト及び亜鉛イオンの共沈殿による、コバルト及び酸化亜鉛を含む触媒を調製する方法に関し、本方法においては、亜鉛イオン及びコバルトイオンを含む酸性溶液並びにアルカリ性溶液が、好ましくは水又は水溶液である水溶性媒体を含む反応器に供給され、そこで酸性溶液とアルカリ性溶液が水溶性媒体中で接触し、コバルト及び亜鉛を含む沈殿物が生成する。その後に(沈殿物とともにスラリーを形成してもよい)水溶性媒体から沈殿物が分離される。沈殿物を構成する分離されたコバルト及び亜鉛は次いで乾燥され、例えば、か焼等の後処理をされてもよく、当該触媒となる。
【0036】
酸性溶液及びアルカリ性溶液の組み合わせは、酸性溶液の成分及びアルカリ性溶液の成分が水溶性媒体に可溶であるが、コバルト及び亜鉛がアルカリ性溶液と接触したときにコバルト及び亜鉛が沈殿し、一方、コバルト及び亜鉛の対イオンは実質的に溶液中に留まるように選ばれるのが好ましい。当業者は、対イオンの種類及び各成分の濃度などの適当な条件をどのように選ぶかがわかるだろう。
【0037】
本方法は、上に説明した触媒を調製するのに特に適することが見出されている。
【0038】
本発明に従う方法は、乾燥直後に、自由流動性の触媒前駆体として機能する粒状の沈殿物を直接調製することを可能とすること、即ち、粒状物質を形成するために粉砕したりあるいは他の機械的処理をする必要がない沈殿物の調製を可能とすることが見出されている。
【0039】
また、本発明に従う方法は、多かれ少なかれ球状で、任意的に多葉の外形を持つ粒子の調製を可能とする。
【0040】
好ましくは、粒子の調製は実質的に一定のpHで、特に最大でも設定値の上下±0.2pH単位で変動するpH値で実施される。かくして非常に好ましい自由流動特性を有する触媒前駆体をつくることが可能であることが見出された。
【0041】
好ましくは、アルカリ性溶液及び酸性溶液は(別々の導管から)同時に反応器に供給される。
【0042】
分離乾燥された沈殿物中の、又はか焼された生成物中のコバルトは、任意的に金属コバルトに還元される。
【0043】
イオン性亜鉛及びイオン性コバルトの夫々の適当な原料としては、十分な濃度で夫々酸性溶液及び水に可溶であるそれぞれの塩が含まれる。そのような塩の好ましい例には、硝酸亜鉛及び硝酸コバルト、酢酸亜鉛及び酢酸コバルト、並びに酸性溶液中の同じような溶解度を持つ、コバルト及び亜鉛のその他の無機又は有機塩が含まれる。
【0044】
存在するコバルトイオン及び亜鉛イオンと共沈殿するのに適当な成分は、水酸化物、炭酸塩、尿素、イソシアン酸塩、及び塩基源として使用できて水又はアルカリ性溶液に溶解できるその他の任意の塩のような、水溶性アルカリ性溶液に十分な濃度で可溶な無機塩及び有機塩である。そのような塩の好ましい例には、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、及びアルカリ性溶液に少なくとも同様な溶解度を有するその他の無機又は有機炭酸塩が含まれる。
【0045】
好ましくは、水溶性媒体中の亜鉛及びコバルトイオンの合計濃度は、0.1から5モル/リットルの範囲に選ばれる。該濃度は、好ましくは沈殿工程を通してこの範囲内に保たれる。
【0046】
酸性溶液のpHは、好ましくは1〜5の範囲である。アルカリ性溶液のpHは、好ましくは6〜14の範囲である。(共沈殿が生じる)水溶性媒体中のpHは、好ましくは、コバルト、亜鉛及び1種以上のアルカリ成分の源として使用される前駆体塩の種類に応じて、4〜9の範囲である。
【0047】
攪拌頻度は、1〜300kW/水溶性媒体リットルの範囲の動力投入量を得るのに非常に適するように選ばれる。非常に良好な結果が、10〜100kW/水溶性媒体リットルの範囲の動力投入量によって達成されている。
【0048】
共沈殿工程中の温度は、好ましくは5〜98℃の範囲に、より好ましくは15〜75℃の範囲に選ばれる。
【0049】
本発明は、さらに本発明に従う触媒をスラリー反応器、管状反応器、気泡塔反応器又は流動床反応器に使用する方法に関する。本発明は、さらに本発明に従う触媒をフィッシャートロプシュ方法、又はニトリルのアミンへの水素化のような官能基水素化方法に使用する方法に関する。
【0050】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例1】
【0051】
触媒調製
【0052】
329gのZn(NO32・9H2O及び49.4gのCo(NO32・6H2Oを1000mlの脱イオン水に溶解して、10.0g/lのコバルト及び72.3g/lの亜鉛を含む金属溶液(1000ml)を調製した。154gの(NH42CO3を1000mlの脱イオン水に溶解して、塩基溶液を調製した。金属溶液及び塩基溶液を同時に等流量(1000ml/時)で、1750mlの脱イオン水を含む、よく攪拌された邪魔板付き沈殿槽に注入した。沈降の間、温度は60℃に保った。投入動力量(N)は以下の式を用いて計算し、0.5ワット/lであった。
【0053】
【化1】

ここで、N=タービン型攪拌翼の投入動力量(ワット)
k=タービン型攪拌翼の係数6
ρ=攪拌される液体の密度(kg/m3
n=攪拌回転速度(s-1
d=攪拌翼の直径(m)
V=沈殿槽の容積(3.5リットル)
【0054】
pHは酸溶液及びアルカリ性溶液を等添加速度で供給することによりpH5.8の一定に保った。
【0055】
得られた沈殿物は脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥した。乾燥した触媒は150℃/時で室温から500℃まで加熱し、500℃で5時間か焼した。か焼した触媒の特性は表1にまとめた。
【実施例2】
【0056】
(比較例)(例えば米国特許第4,826,800号に記載されている)
【0057】
292gのZn(NO32・9H2O及び98.7gのCo(NO32・6H2Oを2.6lの脱イオン水に溶解して、20.0g/lのコバルト及び64.3g/lの亜鉛を含む金属溶液を調製した。沈殿槽で675gの(NH42CO3を5.2lの脱イオン水に溶解して、塩基溶液を調製した。酸溶液を12ml/分で、塩基溶液を含む沈殿槽に注入し、その間沈殿槽は室温で攪拌(300RPM)した。添加の間に、pHは9.2(最初)から8.4(最後)へ下がった。
得られた沈殿物は脱イオン水で洗浄し、110℃で一晩乾燥した。乾燥したろ過ケーキから粉体を得るためには、何らかの機械的処理が必要であった。この粉体は自由流動挙動を示さなかった。乾燥した触媒粉体は、500℃で5時間か焼された(昇温速度150℃/時)
【実施例3】
【0058】
触媒特性データ及び慣用触媒との比較
【0059】
表1に本発明に従う触媒の物性及び対応する慣用触媒との比較が記載されている。
【0060】
【表1】

注1:分布幅は、Malvern粒度分布の測定結果から計算され、以下に定義されるように粒度分布の広さの指標を与える。
【0061】
【化2】

ここで、
D[v,0.9]=(Malvern容積粒度分布において)粒子の90%がそれより小さい粒度として存在する粒度(μm)
D[v,0.5]=(Malvern容積粒度分布において)粒子の50%がそれより小さい粒度として存在する粒度(μm)
D[v,0.1]=(Malvern容積粒度分布において)粒子の10%がそれより小さい粒度として存在する粒度(μm)

注2:表1に報告したCo34の微結晶の大きさは、XRDスペクトルから、特に(CuKα放射の)XRDスペクトル図のd=2.03の線から計算される。

表中のコバルト含有量は蛍光X線により測定した。
【実施例4】
【0062】
粒度分布の測定
【0063】
本発明に従う触媒の粒度分布はMalvern Mastersizer粒度測定機 MS20により測定した。
【0064】
(バックグラウンド補正のために)同装置の試料容器を脱イオン水で満たし、水で満たした測定セルの回折を測定した。次に適当量の触媒粉体を試料容器に加え、測定前に超音波浴で(最大超音波出力の25%で)3分間、(最大振とう速度の50%で)振とうしながら処理した。この処理の後、試料を測定し、測定した回折信号はバックグラウンド測定について補正された。
【0065】
粒度分布の計算は、以下のパラメーターを用いて行った。計算手法:モデルインデペンデント(Model Independent)、標示:1907、粒度分布:容積分布
【実施例5】
【0066】
フィッシャートロプシュ反応器における触媒の触媒性能
【0067】
コバルト含有量20重量%の触媒を調製した。コバルト含有量が異なる他は、調製条件は実施例1と同じであった。
【0068】
触媒試料(20g)を外径3.5cmの管型反応器中で還元した。反応器は1000h-1の空塔速度(GHSV)で、大気圧下、窒素でパージした。温度は2℃/分で60℃まで上げた。該気体供給物は次に1000GHSVの空気に切り替えられた。温度は次いで1℃/分で250℃まで上げ、そこに3時間保持した。気体流は次に1000GHSVの窒素に6分間切り替え、次いで供給気体は1000GHSVの一酸化炭素に切り替え、3.5時間保持した。
【0069】
供給気体は次に窒素に戻し、温度を4℃/分で280℃まで上げた。280℃に達したら、供給気体は次いで2500GHSVの水素に切り替え、10時間保った。反応器は次に室温まで冷却し、反応器へ移す前に窒素でパージした。
【0070】
触媒は窒素パージ下、前もってスクワレン(300ml、Aldrich社製)で満たしておいた600mlの連続攪拌槽型反応器(CSTR)に移した。反応器は250ml/分の窒素流で封じて、125℃まで加熱した。反応器への供給気体は次いで8000GHSVの合成ガスへ切り替え、攪拌機速度を700rpmへ増加し、温度は2℃/分で130℃まで上げた。反応器は次に30バール/時で20バールゲージ圧まで加圧した。温度は次いで60℃/時で160℃まで、5℃/時で175℃まで、1℃/時で185℃まで、0.5℃/時で205℃まで、そして0.3℃/時で212℃まで上げた。次に自動温度制御を用いてCO転化率%を60%に維持した。
【0071】
連続運転40時間後に、温度226℃で608g/触媒リットル/時のC5+生産性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】触媒粒子の投影図
【図2】等価円を説明する投影図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト及び亜鉛の共沈殿物の粒子を含む触媒において、当該粒子が150μmより小さい容積平均粒度、並びに触媒粒子の少なくとも90容積%が該平均粒度の0.4倍ないし2.5倍の間の粒度を持つような粒度分布を有している触媒。
【請求項2】
容積平均粒度が100μmより小さく、好ましくは2から50μmである、請求項1に従う触媒。
【請求項3】
孔容積が5〜100nmの範囲の直径を有する孔によって主として形成されている、請求項1又は2記載の触媒。
【請求項4】
孔容積が0.5ml/gより小さい、好ましくは0.45ml/gより小さい、請求項1〜3のいずれか1項記載の触媒。
【請求項5】
表面積が120m2/gより小さい、好ましくは5−100m2/gの範囲にある、請求項1〜4のいずれか1項記載の触媒。
【請求項6】
亜鉛のコバルトに対する原子比が40から0.1の範囲にある、請求項1〜5のいずれか1項記載の触媒。
【請求項7】
多葉球状外形を有する粒子が支配的である、請求項1〜6のいずれか1項記載の触媒。
【請求項8】
多葉形の粒子が、任意の視野で見られうる可能な最大外表面積を与える配位の平面に粒子を投影したときに、その粒子の輪郭内にちょうど合う最大周囲円として定義される等価円の面積の少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍の表面積を有する、請求項7記載の触媒。
【請求項9】
銅含有量が全触媒重量に基づき、2重量%より小さく、好ましくは全触媒重量に基づき、0.5重量%より小さい、請求項1〜8のいずれか1項記載の触媒。
【請求項10】
亜鉛イオン及びコバルトイオンを含む酸性溶液、並びにアルカリ性溶液が、水溶性媒体を含む反応器に供給され、そこで該酸性溶液及び該アルカリ性溶液が水溶性媒体中で接触し、コバルト及び亜鉛を含む沈殿物が生成し、その後に沈殿物が水溶性媒体から分離され、乾燥され、後処理をされて、触媒となる、請求項1〜9のいずれか1項記載の触媒の調製方法。
【請求項11】
酸性溶液が硝酸根及び酢酸根からなる群から選ばれた1種以上のアニオンを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
アルカリ性溶液がアンモニウムを含む、請求項10又は11記載の方法。
【請求項13】
フィッシャートロプシュ方法又は官能基の水素化において、請求項1〜9のいずれか1項記載の触媒を使用する方法。
【請求項14】
スラリー反応器、管状反応器、気泡塔、又は流動床反応器で、請求項1〜9のいずれか1項記載の触媒を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−500194(P2006−500194A)
【公表日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−587543(P2003−587543)
【出願日】平成15年4月22日(2003.4.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/012378
【国際公開番号】WO2003/090925
【国際公開日】平成15年11月6日(2003.11.6)
【出願人】(500586141)エンゲルハード コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】