説明

フィブリル化ナノ繊維の使用並びに液体からの可溶性、コロイド状、および不溶性粒子の除去

液体から鉛を含む可溶性、コロイド状、および不溶性粒子を除去するためのフィルタであり、液体から可溶性物質をろ過するための第1ろ過メディアと、液体から可溶性物質をろ過するために、ろ過メディアに隣接して流体連結状態にある第2ろ過メディアとを使用し、第1および第2ろ過メディアは非溶解粒子を捕捉するためにそれらの中間部に物理的非溶解粒子障壁を作り、非溶解粒子が溶液に可溶性となるまでその中間部に保持され、そして第2ろ過メディアによって除去される。少なくとも1つのろ過メディアは、粉状イオン交換樹脂の細かく再分されたメディアを詰め込まれたフィブリル化ナノ繊維であることができる。第3ろ過メディアは物理的非溶解粒子の捕捉および溶解を強めるように第1および第2ろ過メディア間に配置できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の可溶性およびコロイド状、非溶解粒子を除去するためのフィルタに関する。特に、本発明は、可溶性および不溶性鉛の液体からの除去に関し、より明確には、ろ過メディアの1つとしてフィブリル化ナノ繊維を用いた可溶性および不溶性鉛の高pHの液体からの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
或る水処理法では、溶解および懸濁またはコロイド状物質を共に取り除く必要性により特徴づけられている。多くの消費者製品で用いられているが、鉛は吸入されたり摂取されたりすると人間の健康に有害な毒性金属であることは知られている。鉛汚染の重大な源は、周囲を取り巻く空気、汚れや塵埃(家の内外での)、食物(空気中や食品容器の鉛により汚染される)、および水(配管の腐蝕から)を含む。イオン交換樹脂のような物質や逆浸透膜は、溶解したイオン性化学種を効果的に減少するかまたは完全に取り除く。高pHの微粒子状鉛は主にコロイド状炭酸鉛として存在する。これらのコロイド状微粒子の固体は、ろ過メディアが圧力差にも適応できる十分に細かいメッシュを設ける場合、物理的に取り除くことができる。
【0003】
飲料水に許容される汚染物質の量を規定する規格が仕上げられて公布されている。例えば、そのような規格の1つは、NSF/ANSI53「飲料水処理ユニット−健康効果」である。これは、公共または私用の水供給において一定の健康関連汚染物質を減少するように意図された、飲料水処理システムの使用時および導入時の物質、設計、構造、および性能に関する最小限の要求を制定するNSF国際規格および米国標準規格である。この規格は、その他の関連する規格およびプロトコルと同様に、飲料水中の鉛を含む汚染物質の量を管理し、このような汚染物質を除去または減少するように意図された水フィルタの効果に関する基準を提供する、これらの汚染物質の除去のための試験プロトコルを管理する。
【0004】
例えば、NSF必要条件に従うと、総鉛についての流入課題は0.15mg/Lまたは150ppbであり、その30%または50ppbが総微粒子状鉛であり、そして総微粒子状鉛の20%または10ppbは0.1ミクロンと1.2ミクロンの間の寸法の純粋な鉛である。最大流出鉛濃度は0.010mg/Lである。総鉛必要条件は鉛pH6.5および鉛pH8.5減少試験に適用できる。鉛微粒子および純粋鉛値は鉛pH8.5試験のみに関する最大値である。本発明の明細書に述べられるフィルタは、飲料水中の鉛の減少のためのNSFまたはその他の同様な基準課題必要条件に合致することができる。
【0005】
多年にわたって、流れを改善してベッドまたはプレコートの表面における圧力差を減少するフィルタとしてセルロースのような繊維が用いられてきた。繊維は、特にイオン交換樹脂のような荷電物質と一緒に用いられると、コロイド状物質の除去を劇的に改善する。1980年2月26日にハーブフォスター(Halbfoster)に発行された米国特許第4,190,532号「荷電ろ過助力物質およびイオン交換ベッド」は、最初に、荷電イオン交換樹脂と処理済セルロース繊維のような荷電フィルタ助力物との組合せによる相乗作用効果を記載している。この特許に実施される発明は今では、発電装置に高品質凝縮水を処理するような適用形態で商業的に広範に用いられている。
【0006】
より最近の、2005年3月29日にコスロー(Koslow)に発行された米国特許第6,872,311号「ナノ繊維ろ過メディア」は、強化ろ過メディアとしてナノ繊維を用いることが記載されている。この特許は、フィブリル化と称される物理的処理がセルロース繊維のような標準的なろ過メディアの性能を強めることを教示している。さらにこの特許はまた、ナノ繊維と結合された改良された空気ろ過メディアを作成する方法を教示している。この方法はまた活性炭と組み合わされてろ過目的のために商業化されている。
【0007】
飲料水から鉛を除去するろ過装置の性能を評価して認証する、例えば、NSFインターナショナル、UL、およびWQAのような多くの独立機関がある。総体的に、それらの認可シールが装置や製品梱包に呈示されている。これらの機関からの新しい試験基準は高pH液体中の鉛の除去を要求している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,190,532号明細書
【特許文献2】米国特許第6,872,311号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来技術の問題および欠点を勘案してなされたものであり、それ故、本発明の目的は、可溶性、コロイド状、および不溶性粒子を液体から取り除くためのフィルタを提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、高pH液体環境中の可溶性、コロイド状、および不溶性物質を取り除くためのフィルタを提供することである。
【0011】
本発明のまた別の目的は、ろ過メディアの1つとしてフィブリル化ナノ繊維を用いて高pH液体環境中の可溶性、コロイド状、および不溶性物質を取り除くためのフィルタを提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、液体から可溶性、コロイド状、および不溶性鉛を取り除いて飲料水仕様に処理するためのフィルタを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、高pH液体から可溶性、コロイド状、および不溶性鉛を取り除くのに用いるための、プリーツ状シートに形成されたフィブリル化ナノ繊維のろ過メディアを有するフィルタを提供することである。
【0014】
本発明のさらに別の目的および利点は、本明細書から明らかとなり、明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
当業者にとって明らかである上述およびその他の目的は本発明において達成され、第1の観点では、液体から可溶性、コロイド状、および不溶性物質を取り除くためのフィルタを指向しており、流入する液体を受容し、そしてろ過メディアを固定して液体に導くための容器と、液体から可溶性物質をろ過するための第1ろ過メディアと、第1ろ過メディアに隣接しそして流体連結状態にある、液体から可溶性物質をろ過するための第2ろ過メディアとから構成され、コロイド状粒子を捕捉するために第1および第2ろ過メディアがそれらの中間部にコロイド状物質のための物理的障壁を作り出し、コロイド状粒子が液体に可溶性となるまで前記中間部に保持され、該中間部を通過し、そして第2ろ過メディアにより取り除かれる。
【0016】
可溶性およびコロイド状物質は鉛、有機汚染物質、または無機汚染物質を含み得る。ろ過メディアは、ろ過メディアの1つとしてフィブリル化ナノ繊維からなり得る。ろ過メディアはイオン交換ビーズ、粉状体、樹脂、吸収性物質、ゼオライト、または炭素を含み得る。
【0017】
コロイド状および不溶性粒子を捕捉するために前記中間部に配置された第3ろ過メディアが用いられ得る。
【0018】
第2の観点では、本発明は、高pH液体から可溶性、、不溶性、およびコロイド状鉛粒子を取り除くためのフィルタを指向しており、流入する液体を受容し、そしてろ過メディアを固定して液体に導くための容器と、液体から可溶性鉛をろ過するための、イオン交換ビーズ、樹脂または粉状体を含む第1ろ過メディアと、フィブリル化ナノ繊維を含む第1ろ過メディアに隣接しそして流体連結状態にある、液体から可溶性鉛をろ過するための第2ろ過メディアとから構成され、コロイド状鉛粒子を捕捉するために第1および第2ろ過メディアがそれらの中間部に物理的コロイド状鉛障壁を作り出し、コロイド状鉛粒子が可溶性となって液体により吸収されるまで前記中間部に保持され、かくして該中間部を通過し、そして第2ろ過メディアにより液体から取り除かれる。
【0019】
第3の観点では、本発明は、高pH液体から可溶性および微粒子状鉛を除去する方法を指向しており、可溶性および微粒子状鉛を含む液体の流動路に第1ろ過メディアを導入し、第1ろ過メディアにより液体から可溶性鉛を除去し、液体の流動路に第2ろ過メディアが導入されている中間部領域で微粒子状鉛粒子を捕捉しそして捕捉した微粒子状鉛粒子を液体に可溶性となるまで保持し、そして第2ろ過メディアにより可溶性鉛を液体から除去することから構成される。
【0020】
第4の観点では、本発明は、粒子除去のためのろ過メディアとしてフィブリル化ナノ繊維を用いる方法を指向しており、複数のフィブル化ナノ繊維を用意し、再分されたメディアをフィブリル化ナノ繊維に詰め込み、フィブリル化ナノ繊維をプリーツ状シートに形成し、そして少なくとも1枚のプリーツ状シートをフィルタカートリッジに組み込むことから構成される。
【0021】
第5の観点では、本発明は、粒子除去のためのろ過メディアとしてフィブリル化ナノ繊維を用いる方法を指向しており、複数のフィブリル化ナノ繊維を用意し、再分されたメディアをフィブリル化ナノ繊維に詰め込み、詰め込まれたナノ繊維をろ過メディアのためのプレコートろ過層として用いることから構成される。
【0022】
第6の観点では、本発明は、原子力発電プラントプロセスにより生じる廃棄物の粒子除去のためのろ過メディアとしてフィブリル化ナノ繊維を用いる方法を指向しており、複数のフィブリル化ナノ繊維を用意し、再分されたメディアをフィブリル化ナノ繊維に詰め込み、フィブリル化ナノ繊維をプリーツ状シートに形成し、原子力発電プラントの廃棄物またはその他の流れからコロイド状遷移金属化学種を取り除くように少なくとも1枚のプリーツ状シートをフィルタカートリッジに組み込み、フィルタカートリッジを原子力発電プラントからの処理廃棄物のラインに配置することから構成される。
【0023】
本発明の特色は新規であると信ずるものであり、本発明が特徴とする構成は特に特許請求の範囲に述べられている。添付の図面は例示目的のみであり、縮尺を無視して描かれている。本発明は、しかしながら、構成と作動の方法共、添付の図面を参照して述べる詳細な説明を参照することにより最もよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1の(A)は、可溶性および不溶性コロイド状物質を液体から取り除くための二重プリーツ状メディアフィルタの断面図であり、図1の(B)は、コロイド状鉛粒子がろ過メディアを通る流れから直接捕捉されるフィルタ領域を中間部で描いた図1のろ過メディアの拡大図である。
【図2】図2は、可溶性および不溶性コロイド状物質を液体から取り除くための3つのフィルタ領域を描いた図1のろ過メディアの断面図である。
【図3】図3は、可溶性およびコロイド状物質を液体から除去するための三重ろ過メディア断面図である。
【図4】図4は、10個のろ過システムと2つの制御ユニットに関する2リットル流動後の鉛微粒子測定値を示す表である。
【図5】図5は、10個のろ過システムと2つの制御ユニットに関する4リットル流動後の鉛微粒子測定値を示す表である。
【図6】図6は、平均総微粒子鉛減少効果、対、平均流動細孔直径のグラフである。
【図7】図7は、流出総微粒子濃度、対、平均流動細孔直径のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好適な実施形態の説明において、添付図面の図1〜7に付されている参照符号は、本発明の同様な特色箇所に同様な符号が用いられている。
【0026】
本出願で用いられるような、「ナノ繊維」は40ミクロン以下、そして好ましくは10ミクロン以下の直径を有するコア繊維を意味する。フィブリル化は、好ましくは1ミクロン以下の直径を有する主またはコア繊維に付着されたナノ繊維の純粋テンドリル(tendrils)を生成するように企図される物理的処理を意味する。
【0027】
フィブリル化ナノ繊維は、所定の水処理適用形態において前もって予期されない利益を提供する。ナノ繊維フィブリル化工程の出発材料としてセルロースやアクリルのような標準的な繊維タイプが使用され得る。ナノ繊維フィブリル化工程において、使用されるコア繊維は長さ3.5mm程度であるのが好ましいが、いくつかの適用形態にあってはより小さな長さであるのが好ましく、そしてコア繊維から延びる多くの純粋テンドリルを設けるようにフィブリル化される。
【0028】
フィブリル化ナノ繊維は、シートまたはプリーツ状薄膜のようなその他の有用な形体に作成されるかまたはさらに処理されるように用いられる。このシートは、次いで、流体通過形体に積層、巻付け、または組立てされる。プリーツ状薄膜は、単体でまたはその他の物質と組み合わされてカートリッジ・フィルタを作成またはさらに組み立てられるように利用される。
【0029】
フィブリル化ナノ繊維は、現在、水処理適用形態に用いられているその他の物質と組み合わせて用いられるとき、重要な性能上の利点を提供する。フィブリル化繊維の特有な構造は、現在の技術で達成できるよりも相当に高いこれらの水処理物質の負荷を可能にする。負荷する物質は荷電または中性化学種であり得る。限定するものではないが、これらの物質の例は、合成有機および無機イオン交換体、ゼオライト、炭素、吸収性物質、および酸化チタンのような酸化金属、水酸化金属、およびその他のろ過助力物を含む。
【0030】
フィブリル化ナノ繊維のプリーツ状シートは、水差し、ポスト・オブ・ユース(POU)容器、またはポイント・オブ・エントリ(POE)容器に用いられるような小さなカートリッジに組み込むことができる。これらの実施例は飲料水および加工水適用形態に採用することができる。フィブリル化ナノ繊維形態は、特に、コロイド状粒子に対して、水力学的特性または有効寿命を犠牲にすることなしに、より良好にろ過できる。このタイプの使用の主な例は、コロイド状鉛を除去するように飲料に適した水に処理することであり、その手順は従来の商用技術では困難であるかまたは達し得ないのと同等である。鉛汚染物の除去がここに述べられるが、本発明はいかなる特定の汚染物にも限定されるものではなく、そして非コロイド状粒子と同様に、可溶性およびコロイド状の状態で存在するその他の汚染物にも採用し得ることに注目すべきである。鉛汚染物除去は例証的な例として述べられている。
【0031】
コロイド状鉛の除去に対する要求は、最近のNSF鉛プロトコルにより一部命令されており、それは高pH被処理供試水と同様に低pH被処理供試水における鉛の除去を要求している。NSF/ANSIプロトコルは産業における飲料水の汚染物除去に関する政府管理手順であるが、手順に留まるものではなく、本発明はNSF/ANSI規格と異なった或いは多かれ少なかれ厳重なその他の汚染物除去プロトコルに適合するように合わせることができる。
【0032】
政府管理のNSF試験において、被処理供試水に約10億分の100(ppb)の可溶性鉛が入れられる。鉛粒子サイズは01から1.2ミクロン程度である。通常、約1ミクロンまたはそれ以下の粒子は懸濁状態で残っている。好適な実施形態では、図1に示すように、2つのろ過メディア12、14から構成されるフィルタ10が導入される。例示の目的のためにプリーツ状フィルタが示されているが、本発明はその他のろ過メディア形状または構成を制限するものではない。本発明はこれに限定されるものではないが、NSF要求条件に適合させる被処理供試水は、例示のもののような重力流動モデルを使用して、被処理供試水から可溶性鉛を優位に除去できる適当な物質である第1ろ過メディア14に流れる。NSF被処理供試水が第1メディア14と第2メディア12の間の中間部18を通過すると、2つのろ過メディア間の区画は微粒子状鉛20の移動を阻止し、そして微粒子鉛20が第2メディア12を通過してしまうのを妨げる。微粒子状またはコロイド状鉛20は中間部18に捕捉される。微粒子状またはコロイド状鉛20の性質は最終的に可溶性溶液中に吸収されることによって変化する。その結果、中間部18に捕捉された微粒子状鉛のすべてが被処理供試水に吸収されるまでコロイド状鉛を可溶性化することにより被処理供試水は鉛を溶解されることになる。好ましくは、ろ過メディア14は、主として物理的(コロイド状)鉛粒子を阻止するようには企図されないので、非物理的ろ過メディアである。このようなろ過メディアは含浸紙から形成され得るが、ろ過メディアが優位に可溶性ろ過メディアを提供するようなその他の形体のろ過メディアも使用し得る。
【0033】
図1の(A)の拡大図に示すように、中間部18には、ろ過メディア12を通る流れから不溶性およびコロイド状粒子が直接捕捉されるろ過区域22が形成されている。このろ過区域22に、可溶性およびコロイド状鉛の組合せが存在する。コロイド状鉛は流過する供試水に吸収されるので、ろ過メディア12が可溶性鉛を取り除く中間部18を通過する。
【0034】
この方法において、図2に示すように、2層ろ過メディア30の3次元断面図は3領域フィルタを形成する。第1フィルタ領域32において、被処理供試水が導かれ、炭素、イオン交換ビーズ、フィブリル化ナノ繊維、およびその他の適切に実行するろ過メディアのような固定されたろ過助力物を含む含浸紙の可溶性鉛ろ過メディアが、被処理供試水から可溶性鉛を可能な限り除去する。フィルタ領域34において、鉛粒子は第1ろ過メディア31と第2ろ過メディア36の間の中間部で捕捉される。2つのろ過メディア間の中間部は鉛の物理的成分を阻止する必要がある。捕捉されると、物理的鉛粒子はフィルタ領域34内で流動する被処理供試水に分解または溶解するまで中間部に残る。捉えられていた鉛粒子が流動する被処理供試水に完全に吸収されると、第3フィルタ領域を効果的に形成する第2ろ過メディア36は残された可溶性鉛を譲許するように作用する。
【0035】
別の実施形態において、図3に示すように、3次元断面図はフィルタ領域34が存在するところに挿入されたろ過メディア38を示している。フィルタ38の表面は第2ろ過メディア36の表面を取り替える。フィルタ38はそのとき新しい中間部となり、そしてフィルタ38上に延びるフィルタ領域となる。フィルタ38は、物理的鉛粒子の捕捉をより効果的に促進しそして流動する被処理供試水への鉛粒子の吸収を強めるようにポリマー処理ろ過メディア、またはそれに類似するもので形成される。
【0036】
一般的に、可溶性鉛を含む低pH被処理供試水は、イオン交換ビーズのような一定のろ過メディアによって十分に除去される可溶性鉛を有する。それに対し、イオン交換ビーズ、樹脂、または粉状体は高pH被処理供試水からの可溶性鉛の除去には有効ではない。しかしながら、新しいNSF試験プロトコルは、高pH(6.5pHおよび8.5pH)被処理供試水における許容鉛微粒子レベルを定義している。本発明の高pH鉛フィルタは、他の従来技術のろ過メディアでは厳格なNSF規格を達成できなかった高pH被処理供試水から可溶性鉛を確実に除去する。イオン交換ビーズ、樹脂、または粉状体の第1ろ過メディアは、ろ過メディア中間部で鉛の物理的コンポーネントを阻止し、最終的に流体に吸収して第2ろ過メディアにより除去するための中間フィルタ領域を作るように形成された、含浸紙、フィブリル化ナノ繊維、またはその類似物の第2ろ過メディアと組み合わされて、NSFプロトコルに従って高pH溶液から可溶性および不溶性鉛を確実に取り除く。
【0037】
フィブリル化ナノ繊維のプリーツ状シートは、上述したような少なくとも1つの3領域のメディアの構成を含む、液体および気体のろ過の適用例に適している。
【0038】
〔微粒子状鉛減少試験〕
10個のシステムが鉛減少についてテストされた。フィルタは、平均流動細孔直径0.26ミクロンから2.6ミクロンまで変化するナノ繊維で作成されたろ紙を有する。鉛溶液はNSFpH8.5鉛規格に従った。4リットルの溶液が重力流動で引き入れられ、流出物が集められ、そしてNSFプロトコルに従って鉛濃度が測定された。
【0039】
10個のシステムの全てにおいて、溶液の全可溶性鉛部分は影響されなかった。微粒子状部分は影響され、そして平均流動細孔直径が減少するとき粒子減少効率は増加した。本発明のフィルタの平均流動細孔直径は約1.2ミクロンまたはそれ以下であるのが好ましい。NSFプロトコルは、最大10億分の10(ppb)の鉛流出濃度を許容している。1.2ミクロンの平均流動細孔寸法を有するフィルタは全体で6ppbと10ppbの間の微粒子状鉛の流出を示した。
【0040】
その結果は、1.2ミクロン以下の平均流動細孔直径を有するフィルタを使用するとき、本発明のフィルタを用いて総鉛微粒子が10ppb以下に減少したことを示した。この減少は細孔寸法が減少するとき増大された。
【0041】
図4は、10個のフィルタシステムと2つの制御ユニットについて2リットル流動させたのちの鉛微粒子の測定値の表を示している。図5は、4リットル流動させた後の同様な値の表を示している。図示のように、鉛微粒子減少は平均流動細孔直径が減少するとき増大した。さらに、減少効率はより多くの水フィルタをが通過するとき増大し、そのことはまた、鉛微粒子がろ過メディアの表面に阻止されるので、総有効細孔寸法の減少の結果である。
【0042】
図6は、平均流動細孔直径に対する平均総微粒子状鉛減少効率のグラフを示す。予想されるように、減少効果は細孔寸法の増加に伴って減少する。図7は平均流動細孔直径に対する流出総微粒子濃度のグラフを示す。廃水中における総微粒子濃度は細孔直径が増大すると増加する。試験データによって支持されるように、総流出鉛濃度は、平均流動細孔直径が約1.2ミクロンまたはそれ以下になると、10ppb以下に低下する。約0.5から0.7ミクロンの細孔寸法が効果的であり、そしてNSF規格に十分に合致しかつ凌駕することが示された。このことは、鉛吸収メディア、イオン交換メディア、またはそれらの類似物で廃水の可溶性部分のほぼ100%を除去できることを保証している。加えて、鉛吸収物質またはイオン交換メディアは含浸紙自体に直接導き入れられ、その後のろ過メディアによって除去するように廃水中の微粒子状部分の相当量を可溶性鉛にさらに変換することにより総微粒子状鉛の減少を増加する。
【0043】
フィブリル化ナノ繊維メディアを含むろ過メディアは、粉状のイオン交換樹脂、吸収物質、炭素、またはそれらの類似物からなる細かく再分されたメディアをさらに「詰め込み」得る。これに関連して、「詰め込み」は、ナノ繊維の表面への電気的相互作用、物理的吸着、またはそれらの類似作用を備えた綿状沈殿を意味することができる。いずれかケースにおいて、フィブリル化ナノ繊維は重要な、より大きな表面領域とより狭い細孔寸法を提供する。後者の組合せは、特にコロイドのような小さな粒子に対して、差圧における典型的な有害な影響なしに、より良好なろ過を提供する。
【0044】
繊維、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、および/または炭素、ゼオライト、およびそれらの類似物のようなその他の吸収物質を含む従来の綿状沈殿製品の性能は、水理特性と運用能力の両者によって制限される。典型的な短繊維のためにフィブリル化ナノ繊維を代用することは、繊維へのイオン交換樹脂のより良好な詰め込みについてより低い差圧およびより高い運用能力により利用性を高める。
【0045】
フィブリル化ナノ繊維への吸収詰め込みの場合、イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、吸収物質、または追加のろ過助力剤の量は、典型的な綿状沈殿または吸収に許容されるもの以上に増加する。より大きな詰め込みは、同様に、より高い能力およびより良好な汚染物質除去を提供する。さらに、詰め込み能力の増大は、従来の慣用の3工程よりも1または2工程で綿状沈殿タイプの製品を製造するのを容易にする。
【0046】
フィブリル化ナノ繊維の優れたろ過特性は水成溶液からのコロイド状粒子の大きく改善された除去を提供する。本発明のフィルタのろ過メディアの1つとしてフィブリル化ナノ繊維を用いることは、コロイド状鉛粒子を中間部で捕捉し、そしてろ過メディアを通過するときに可溶性鉛を除去することを助ける。このろ過メディアの別の実施形態において、フィブリル化ナノ繊維はシート状またはプリーツ状の薄膜に組み込み得る。
【0047】
別の実施形態において、フィブリル化ナノ繊維は原子力発電プラントの廃棄物またはその他の流れからコロイド遷移金属化学種を除去するように用いられ得る。放射性があり、そして通常、「放射性廃棄物」と称されるものの処理において非常に厄介である、コバルト、鉄、セシウム、アンチモン、ニッケル、銅、およびそれらの類似物のコロイド状物は、実施されるろ過メディアにフィブリル化ナノ繊維を組み合わせることで、廃棄する前に取り除き得る。このろ過処理に用いられるフィブリル化繊維はまた、イオン交換特性を付加されたり、前述したその他の吸収物質を詰め込んだりして設けられ得る。
【0048】
本発明は、特定の好適な実施形態と逸書に詳細に述べられたが、当業者にとって、上述の説明に照らして多くの互換、変形および変更が行われ得ることは明らかである。それ故、いかなるこのような互換、変形および変更も添付の請求の範囲は本発明の範囲および主旨の内にあることは考慮されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
10 フィルタ
12 第2ろ過メディア
14 第1ろ過メディア
18 中間部
20 微粒子状鉛
22 ろ過区域
30 2層ろ過メディア
32 第1フィルタ領域
34 第2フィルタ領域
36 第2ろ過メディア
38 ろ過メディア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入する液体を受容し、そしてろ過メディアを固定して前記液体に導くための容器と、
前記液体から可溶性物質をろ過するための第1ろ過メディアと、
前記第1ろ過メディアに隣接しそして流体連結状態にある、液体から可溶性物質をろ過するための第2ろ過メディアと
から構成され、
コロイド状粒子を捕捉するために前記第1および第2ろ過メディアがそれらの中間部にコロイド状物質のための物理的障壁を作り出し、
前記コロイド状粒子が液体に可溶性となるまで前記中間部に保持され、該中間部を通過し、そして前記第2ろ過メディアにより取り除かれる、
液体から可溶性、コロイド状、および不溶性物質を除去するためのフィルタ。
【請求項2】
前記可溶性およびコロイド状物質は鉛、有機汚染物質、または無機汚染物質を含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記ろ過メディアの1つとしてフィブリル化ナノ繊維を有することを含む、請求項1に記載リフィルタ。
【請求項4】
前記フィブリル化ナノ繊維はセルロースまたはアクリル組成物を含む、請求項3に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記フィブリル化ナノ繊維は少なくとも1つのろ過物質のプリーツ状シートを構成する、請求項3に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記ろ過メディアの1つとしてイオン交換ビーズ、粉状体、樹脂、吸収性物質、ゼオライト、または炭素を有することを含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記コロイド状粒子を捕捉するために前記中間部に配置された第3ろ過メディアを含む、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記第3ろ過メディアはポリマー処理基礎のろ過物質を含む、請求項7に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記第3ろ過メディアはフィブリル化ナノ繊維を含む、請求項7に記載のフィルタ。
【請求項10】
前記フィブリル化ナノ繊維は粉状のイオン交換樹脂、酸化金属、または水酸化金属の細かく再分されたメディアを詰め込まれる、請求項9に記載のフィルタ。
【請求項11】
詰め込みされたナノ繊維は綿状沈殿を含む、請求項10に記載のフィルタ。
【請求項12】
前記綿状沈殿は電気的相互作用または物理的吸着を含む、請求項11に記載のフィルタ。
【請求項13】
流入する液体を受容し、そしてろ過メディアを固定して前記液体に導くための容器と、
前記液体から可溶性鉛をろ過するための、イオン交換ビーズ、樹脂、または粉状体を含む第1ろ過メディアと、
フィブリル化ナノ繊維を含む前記第1ろ過メディアに隣接しそして流体連結状態にある、液体から可溶性鉛をろ過するための第2ろ過メディアと
から構成され、
コロイド状鉛粒子を捕捉するように前記第1および第2ろ過メディアがそれらの中間部に物理的コロイド状鉛障壁を作り出し、
前記コロイド状鉛粒子が可溶性となって液体により吸収されるまで前記中間部に保持され、かくして該中間部を通過し、そして第2ろ過メディアにより前記液体から取り除かれる、
高pH液体から可溶性、不溶性、およびコロイド状鉛粒子を取り除くためのフィルタ。
【請求項14】
前記コロイド状鉛粒子を捕捉するように前記中間部に配置された第3ろ過メディアを含む、請求項13に記載のフィルタ。
【請求項15】
前記第3ろ過メディアはポリマー処理基礎のろ過物質を含む、請求項14に記載のフィルタ。
【請求項16】
前記第3ろ過メディアはフィブリル化ナノ繊維を含む、請求項14に記載のフィルタ。
【請求項17】
可溶性および微粒子状鉛を含む液体の流動路に第1ろ過メディアを導入し、
第1ろ過メディアにより前記液体から可溶性鉛を除去し、
前記液体の流動路に第2ろ過メディアが導入されている中間部領域で微粒子状鉛粒子を捕捉し、そして該捕捉した微粒子状鉛粒子を液体に可溶性となるまで保持し、そして
前記第2ろ過メディアにより可溶性鉛を前記液体から除去する
ことから構成される、高pH液体から可溶性および微粒子状鉛を除去する方法。
【請求項18】
前記第1および第2ろ過メディア間に隣接して配置された第3ろ過メディアで微粒子状鉛粒子を捕捉することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項19】
複数のフィブル化ナノ繊維を用意し、
再分されたメディアを前記フィブリル化ナノ繊維に詰め込み、
前記フィブリル化ナノ繊維をプリーツ状シートに形成し、そして
少なくとも1枚の前記プリーツ状シートをフィルタカートリッジに組み込む
ことから構成される、
粒子除去のためのろ過メディアとしてフィブリル化ナノ繊維を用いる方法。
【請求項20】
前記フィブリル化ナノ繊維にイオン交換樹脂を設けることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記フィブリル化繊維はセルロースまたはアクリルナノ繊維を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記詰め込み工程は前記フィブリル化ナノ繊維の綿状沈殿から構成される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
複数のフィブリル化ナノ繊維を用意し、
再分されたメディアをフィブリル化ナノ繊維に詰め込み、
詰め込まれたナノ繊維をろ過メディアのためのプレコートろ過層として用いる
ことから構成される、
粒子除去のためのろ過メディアとしてフィブリル化ナノ繊維を用いる方法。
【請求項24】
複数のフィブリル化ナノ繊維を用意し、
再分されたメディアを前記フィブリル化ナノ繊維に詰め込み、
前記フィブリル化ナノ繊維をプリーツ状シートに形成し、
原子力発電プラントの廃棄物またはその他の流れからコロイド状遷移金属化学種を取り除くように少なくとも1枚の前記プリーツ状シートをフィルタカートリッジに組み込み、
前記フィルタカートリッジを前記原子力発電プラントからの処理廃棄物のラインに配置する
ことから構成される、
原子力発電プラントプロセスにより生じる廃棄物の粒子除去のためのろ過メディアとしてフィブリル化ナノ繊維を用いる方法。
【請求項25】
前記ろ過メディアは炭素を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ろ過メディアはイオン交換樹脂を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記フィブリル化ナノ繊維にイオン交換樹脂を直接設けることを含む、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−534560(P2010−534560A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518216(P2010−518216)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/008965
【国際公開番号】WO2009/017645
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(507337876)ケイエクス テクノロジーズ エルエルシー (6)
【Fターム(参考)】