フィブロネクチンのエクストラドメインBに対する特異的結合親和性を有する修飾ユビキチンタンパク質
本発明は、修飾ユビキチンから得られ、高い親和性でフィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に結合可能な、新規ヘテロ多量体タンパク質に関する。さらに、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分を融合した前記組換えタンパク質を含む、融合タンパク質に関する。本発明は、さらに、医療用治療方法における前記タンパク質の使用を対象とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に結合可能な、新規ヘテロ多量体タンパク質に関する。さらに、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した前記ヘテロ多量体結合タンパク質を含む、融合タンパク質に関する。本発明は、さらに、このようなヘテロ多量体結合タンパク質または融合タンパク質の製造方法、および、前記ヘテロ多量体結合タンパク質を含む医薬組成物および/または診断用組成物を対象とする。さらに、本発明は、前記タンパク質をコードするDNAを含むライブラリーに関する。
【0002】
さらなる実施形態において、本発明は、前記ヘテロ多量体結合タンパク質または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および、前記タンパク質、前記融合タンパク質、前記ベクターおよび/または前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を対象とする。好ましい実施形態において、前記ヘテロ多量体結合タンパク質または前記融合タンパク質は、薬物または診断用薬剤に含まれる。さらに、前記組換えタンパク質または前記融合タンパク質の製造方法、ならびに、医学的治療方法における前記タンパク質についても記載されている。
【背景技術】
【0003】
免疫グロブリンではないアミノ酸からなる結合分子の需要が高まりつつある。現在に至るまで、抗体は、最もよく確立された結合分子に類別されるが、免疫グロブリン分子にはいくつかの主要な欠点があるため、高い親和性と特異性でリガンドをターゲットとするために、新しい結合分子が、なお求められている。免疫グロブリン分子は、非常に容易に製造でき、ほとんど全てのターゲットを対象とするが、極めて複雑な分子構造を有している。そのため、容易に取扱い可能な、より小さな分子によって、抗体を代用することが絶えず求められている。これら代替結合剤は、例えば、疾病の診断、予防、および治療の医療分野において、有用である。
【0004】
相対的に規定された三次元構造を有するタンパク質は、通常、足場タンパク質と呼ばれ、前記代替結合剤の設計の開始物質として用いられる。これら足場タンパク質は、一般的に、特異的またはランダムな配列のバリエーションを許容する、1以上の領域を含んでおり、そのような配列のランダム化は、しばしば、特異的結合分子を選択できる、タンパク質ライブラリーの製造のため行われる。抗体よりもサイズが小さく、且つ、ターゲット抗原への親和性が、抗体に匹敵するか、あるいはより高い分子は、薬物動態的な性質および免疫原性の点から、抗体よりも優れていると予想される。
【0005】
従前の多くのアプローチは、結合タンパク質の開始物質として足場タンパク質を用いている。例えば、国際公開第99/16873号パンフレット(特許文献1)において、特定のリガンドに結合活性を示すリポカリンファミリー(いわゆるアンチカリン)の修飾タンパク質が開発された。リポカリンファミリーのペプチド構造は、遺伝子工学的方法を用いて、天然のリガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換によって修飾されている。免疫グロブリンのように、アンチカリンは、分子構造の同定または結合に使用できる。抗体と類似する方法で、可動性ループ構造が修飾され、これらの修飾により、天然のものとは異なるリガンドの認識が可能となる。
【0006】
国際公開第01/04144号パンフレット(特許文献2)には、それ自体には結合部分がないβシート構造タンパク質のタンパク質表面における、結合ドメインの人工的な生成が記載されている。この手法によれば、高い親和性と特異性でリガンドと相互作用する、新規に生成された人工結合ドメイン(例えば、眼水晶体構造タンパク質であるγクリスタンのバリエーション)が得られる。アンチカリンに関して先に述べたような可動性ループ構造から形成される、すでに存在する結合部位の修飾とは対照的に、これらの結合ドメインは、βシートの表面に新規に生成される。しかし、国際公開第01/04144号パンフレットには、新規結合特性を生じるための、相対的に大きなタンパク質の改変について記載されているのみである。国際公開第01/04144号パンフレットのタンパク質は、その大きさのため、ある程度の労力を必要とする方法でしか、遺伝子工学レベルで修飾できない。さらに、これまで公開されたタンパク質においては、タンパク質の全体構造を維持するために、全アミノ酸のうち、比較的小さいパーセンテージのみが修飾されていた。そのため、従前は存在しない結合特性の発生に利用できるのは、タンパク質表面の比較的に小さい領域のみである。さらに、国際公開第01/04144号パンフレットには、γ−クリスタンへの結合特性の生成のみが記載されている。
【0007】
国際公開第04/106368号パンフレット(特許文献3)には、ユビキチンタンパク質に基づく人工結合タンパク質の製造が記載されている。ユビキチンは、小さい単量体の細胞質タンパク質であり、配列が高度に保存され、原虫から脊椎動物にいたるまでの全ての公知の真核細胞に存在する。生物において、ユビキチンは、細胞タンパク質のコントロールされた分解の制御において重要な役割を担う。この目的のために、分解予定のタンパク質は、酵素カスケードを通過する間に、ユビキチンまたはポリユビキチン鎖と共有結合し、この標識により選択的に分解される。最近の研究結果によると、ユビキチンまたはユビキチンによるタンパク質の標識は、それぞれ、数種のタンパク質の移入または遺伝子制御等の他の細胞プロセスにおいても、重要な役割を担っている。
【0008】
その生理的機能の明確化に加え、ユビキチンは、そもそもその構造およびタンパク質の化学特性のために、研究対象となっている。ユビキチンのポリペプチド鎖は、非常にコンパクトなα/β構造に折りたたまれた76アミノ酸からなる(Vijay−Kumar, 1987(非特許文献1))。前記ポリペプチド鎖のほぼ87%は、水素結合によって、二次構造エレメントの形成に関与する。二次構造は、3.5αヘリックスターン、ならびに4つの鎖からなる逆平行βシートである。これらの要素の特徴的な配置(逆平行βシートがタンパク質表面に露出し、その裏側にαヘリックスがパックされ、これが前記逆平行βシート上に垂直に延びている)は、一般的に、いわゆるユビキチン様フォールディングモチーフと考えられている。さらなる構造的な特徴は、αヘリックスとβシートの間のタンパク質内側における、標識疎水性領域である。
【0009】
ユビキチンの人工的な調製は、そのサイズが小さいため、化学合成によっても、生物学的手法によっても行うことができる。有利なフォールディング特性のため、ユビキチンは、大腸菌等の微生物を使用した遺伝子工学により、比較的大量に、そのサイトゾルまたは細胞膜周辺腔に製造できる。一般的に、後者のストラテジーは、周辺質において酸化状態が優勢であるため、分泌タンパク質の製造に使用される。簡易且つ効果的な細菌調製のために、ユビキチンは、その製造に問題がある他の外来タンパク質に対する融合パートナーとして使用できる。ユビキチンとの融合によって、溶解度の改善およびそれによる製造収率の改善が、達成できる。
【0010】
抗体または他の代替足場と比べ、ユビキチンタンパク質に基づく人工結合タンパク質(Affilin(登録商標)ともいう)は、多くの利点を有している。例えば、小さいサイズ、高い安定性、高い親和性、高い特異性、費用対効果の高い微生物による製造、血清半減期の調整等である。しかしながら、特定のターゲットに対する高い親和性の新しい治療方法の点から、それらのタンパク質をさらに開発する必要がある。国際公開第05/05730号パンフレット(特許文献4)には、人工結合タンパク質を得るためのユビキチン足場の使用が、概略的に記載されているが、フィブロネクチンのED−Bとの特異的且つ高親和性の結合を得るために、ユビキチンタンパク質を修飾する方法は、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第99/16873号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/04144号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/106368号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/05730号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008/022759号パンフレット
【特許文献6】国際公開第97/45544号パンフレット
【特許文献7】国際公開第07/054120号パンフレット
【特許文献8】国際公開第99/58570号パンフレット
【特許文献9】国際公開第01/62800号パンフレット
【特許文献10】国際公開第06/119897号パンフレット
【特許文献11】国際公開第07/128563号パンフレット
【特許文献12】国際公開第01/62298号パンフレット
【特許文献13】国際公開第07/115837号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Vijay−Kumar, 1987
【非特許文献2】Menrad u. Menssen, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
国際公開第2008/022759号パンフレット(特許文献5)には、組換え結合タンパク質が記載されており、FYNキナーゼのSrcホモロジー3ドメイン(SH3)が、新しい結合タンパク質を得るために使用されている。タンパク質治療および/またはタンパク質診断を開発するために、RTループおよび/またはSrcループの変異によりターゲット特異性を設計できることが見出された。足場として利用されるリポカリンにおいてと同様に、変異誘発されたアミノ酸残基は、抗体/抗原結合機能の基礎をなす原理を擬態する、可変性および可動性のループ領域内に存在している。相互作用部位の全体的な可動性は、これによって抗体がエピトープに結合するものであるが、主にエントロピーによって駆動されるプロセスである。しかしながら、このプロセスは、可動相補性決定領域の会合による移動度の欠失によって、不利なエントロピーの寄与を導く。それとは反対に、足場としてユビキチンを使用し、本願発明者は、そもそもアミノ酸残基を可動性ループ領域内では変更せず、βシートの領域の強固で不動のβ鎖またはβ鎖の近くに隣接した領域内で変更した。ED−Bとの結合領域である、ユビキチンの不動且つ強固なβ鎖またはβ鎖の近くに隣接した範囲において、アミノ酸残基を選択する利点は、特に以下のとおりである。結合パートナーは、強い結合に適した相補的形状をすでに示していると考えられている。したがって、これらの相互作用は、結合パートナーのより強固な構造の形状、電荷、および親水性/疎水性要素における相補性に関与する。これらの強固な本体の相補作用は、界面を最適化し、生物機能を適応させる。
【0014】
フィブロネクチン(FN)は、健康な組織および体液において大量に発現する、重要なクラスの高分子量細胞外マトリックス糖タンパク質である。これらの主な役割は、細胞と多くの異なる細胞外マトリックスとの接着の促進である。培養下の非形質転換細胞の表面におけるフィブロネクチンの存在、ならびに形質転換細胞の場合におけるそれらの不在により、フィブロネクチンは、重要な接着タンパク質として同定された。フィブロネクチンは、多数の様々な他の分子、例えば、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびフィブリンと相互作用し、細胞の形状および細胞骨格の形成を制御する。さらに、それらは、胚形成の間の細胞移入および細胞分化に関与する。それらは、創傷の治療においても、重要な役割を担い、マクロファージおよび他の免疫細胞の移入を促進し、また、血餅の形成においても、血管の損傷領域への血小板の接着を可能とすることにより、重要な役割を担う。
【0015】
フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)は、プライマリーRNA転写物の代替スプライシングによってフィブロネクチン分子に挿入された、小さいドメインである。前記分子は、細胞外マトリックスのフィブロネクチン分子において、存在するかまたは取去されているかのいずれかであり、新しい血管の周辺に大量に発現するが、全ての成常成人の組織(子宮と卵巣を除く)においては、実質的に検出不能であるため、血管新生や組織の再構築と関連する最も選択的なマーカーの一つとなっている。ED−Bは、主として癌に関与することが知られている。高レベルのED−B発現は、胸、非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、ヒトの肌、肝細胞、頭蓋内髄膜腫、グリオブラストーマを含む多くのヒトの固体癌のエンティティにおける一次病変、ならびに転移性部位において検出された(Menrad u. Menssen, 2005(非特許文献2))。さらに、ED−Bは、診断剤と結合でき、診断ツールとして有利に使用できる。一例として、例えば、動脈硬化プラークの分子の画像化や、例えば、癌患者の免疫シンチグラフィーによる、癌検出おける使用があげられる。さらに多くの診断用に使用できると考えられる。
【0016】
フィブロネクチンのヒトエクストラドメインB(ED−B)の91アミノ酸のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。前記タンパク質の発現のため、開始メチオニンを加えなければならない。ED−Bは、哺乳類、例えば、げっ歯類、ウシ、霊長類、肉食動物、ヒト等に大量に存在する。ヒトED−Bと100%の配列同一性を有する動物の例は、ラット(Rattus norvegicus)、ウシ(Bos taurus)、マウス(Mus musculus)、ウマ(Mus musculus)、アカゲザル(Macaca mulatta)、ハイイロオオカミ(Canis lupus familiaris)、チンパンジー(Pan troglodytes)である。
【0017】
ED−Bは、新生血管構造に特異的に蓄積し、癌における分子介入のターゲットとなる。フィブロネクチンのED−Bドメインに対する抗体または抗体断片の多くは、当該技術分野において、癌および他の兆候の潜在的な治療薬として公知である(例えば、国際公開第97/45544号パンフレット(特許文献6)、国際公開第07/054120号パンフレット(特許文献7)、国際公開第99/58570号パンフレット(特許文献8)、国際公開第01/62800号パンフレット(特許文献9)参照)。ヒト一本鎖Fv抗体断片ScFvL19(L19ともいう)は、フィブロネクチンのED−Bドメインに特異的であり、実験腫瘍モデルおよび癌患者の両方において、選択的に新生脈管構造の腫瘍(tumor neovasculature)を標的にすることが確認されている。さらに、IL−12、IL−2、IL−10、IL−15、IL−24またはGM−CSF等のサイトカインと、抗ED−B抗体または抗ED−B抗体断片を含むコンジュゲートは、特に、癌、血管新生または腫瘍の成長を阻害する医薬製造のための標的薬剤として記載されている(例えば、国際公開第06/119897号パンフレット(特許文献10)、国際公開第07/128563号パンフレット(特許文献11)、国際公開第01/62298号パンフレット(特許文献12)参照)。細胞傷害性または免疫刺激薬剤のような適切なエフェクター機能と抱合させた、抗ED−B抗体またはL19等抗ED−B抗体断片による固体腫瘍の新生脈管構造の選択的なターゲティングは、動物実験では成功することが判明している。膵臓癌の治療のため、インターロイキン−2(IL−2)部と抗ED−B抗体部とを含む融合タンパク質を、小分子ゲムシタビン(2’−デオキシ−2’、2’−デフルオロロシチジン)と併用した(例えば、国際公開第07/115837号パンフレット(特許文献13)参照)。
【0018】
前記先行技術文献には、新しいED−B結合タンパク質の製造のため、抗体を含む様々な足場タンパク質を使用することが記載されている。現在入手可能な化合物よるED−Bのターゲティングには、ある種の不都合が伴う。ED−B抗原に対して、同等またはより高い親和性を有する、より小さい分子(本発明の、ヘテロ多量体ユビキチンに基づくED−B結合タンパク質等)は、抗体や他の結合タンパク質に対して、顕著な利点を有すると期待される。
【0019】
癌は、世界的に主要な死亡原因であるため、癌治療のための改善された薬剤の必要性が高まっている。現在の化学療法剤および放射線治療は、選択性が低いという欠点があり、多くの化学療法剤は、腫瘍部位に蓄積せず、そのため腫瘍内において十分なレベルに到達できない。癌を効果的に治療する、強力な医薬品に対する需要が存在する。
【0020】
本発明の課題は、フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED−B)に非常に高い親和性で特異的に結合できる、ユビキチンベースのヘテロ多量体結合タンパク質の提供である。本発明のさらなる課題は、例えば、癌の治療に使用する、ED−Bに非常に高い結合特異性を有する新規の結合タンパク質の同定および提供である。さらに、前記ヘテロ多量体結合分子を製造するための方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題は、提出した独立請求項の主題によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、ならびに下記の記載、実施例および図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、種々の腫瘍におけるED−Bの発生を列記した表を示す。
【図2】図2は、ED−Bへの驚くほど強力な結合親和性を有することが見出された、さらなる16種類の配列のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。
【図3】図3は、修飾ユビキチン単量体からなる四量体と比較した、修飾ユビキチン単量体のKd値を、表に示す。
【図4A】図4Aは、単量体41B10についての、Kd=9.45μMの結合親和性を示す。
【図4B】図4Bは、41B10が異なる第2単量体と結合して得られた46H9についての、Kd=131nMの結合親和性を示す。
【図5A】図5Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合エフェクター融合タンパク質の模式図である。
【図5B】図5Bは、前記修飾ユビキチンエフェクター接合5E1−TNFコンジュゲートが、アポトースシス促進活性(L929アポトーシスアッセイで測定)を有すること示す。
【図5C】図5Cは、1H4−TNFα融合物のED−Bへの結合親和性(Kd=15.1nM)が高いことを示す。
【図6A】図6は、サイトカイン、例えば、TNFαに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
【図6B】図6Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd 50.7nM)。
【図6C】図6Bは、遺伝学的にサイトカインTNFαに融合し、前記ヘテロ二量体24H12が多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd=5.6nM)。
【図6D】図6Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体クローン9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。
【図6E】図6Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図6F】図6Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図7】図7は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。
【図8】図8は、配列アライメントを示す。
【図9】図9は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。
【図10】図10は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。
【図11】図11は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。
【図12】図12は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。
【図13】図13は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。
【図14】図14は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【図15A】図15Aは、固定化されたヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。
【図15B】図15Bは、バイタル(vital)ヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への結合を示す。
【図15C】図15Cは、固定化されたマウスBalb 3T3細胞への結合を示す。
【図15D】図15Dは、固定化されたマウスST−2細胞への結合を示す。
【図16A】図16Aは、哺乳類組織切片における、ターゲットへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の特異性を示す。
【図16B】図16Bは、野生型ユビキチンとの比較における、腫瘍組織での1041−D11の蓄積を示す。
【図17A】図17Aは、1041−D11TNFα融合タンパク質におけるTNFαのアポトーシス誘導活性についての、細胞ベースアッセイ(cell based assay)(L929細胞)によるテストを示す。
【図17B】図17Bは、1041−D11TNFα融合タンパク質におけるTNFαのアポトーシス誘導活性についての、細胞ベースアッセイ(L929細胞)によるテストを示す。
【図17C】図17Cは、ターゲットであるED−Bへの、ヘテロ二量体ユビキチン1041−D11TNFα融合タンパク質の高い選択性を証明している。
【図17D】図17Dは、修飾ユビキチンED−B結合1041−D11TNFα融合タンパク質についての、Biacoreアッセイによる結合分析を示す。
【図17E】図17Eは、修飾ユビキチンED−B結合1041−D11TNFα融合タンパク質についての、Biacoreアッセイによる結合分析を示す。
【図17F】図17Fは、培養細胞における変異体1041−D11で観察された高い結合特異性が、1041−D11がTNFαに融合されても維持されることを示す。
【図18】図18は、TNFαに融合した変異体1041−D11とメルファランとの併用による、7日間のマウスの処置期間中のin vivoでの相対的腫瘍成長を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
より具体的には、本願発明者は、ヒトフィブロネクチンのED−Bに結合可能なタンパク質を提供する。前記タンパク質は、2つの単量体(ユビキチンユニット)が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含み、さらなる修飾、好ましくは、他のアミノ酸の置換を任意で含み、
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
前記修飾単量体ユビキチンユニットが、配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも85%および少なくとも90%の群から選択される少なくとも一つのアミノ酸同一性を有し、
前記フィブロネクチンのED−Bドメインに対する前記タンパク質の特異的結合親和性がKd=10−7〜10−12Mであり、前記タンパク質が、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示す。
【0024】
好ましい実施形態において、前記タンパク質は、組換えタンパク質である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、各単量体ユビキチンユニットにおいて、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、7、8、9個または全てのアミノ酸が、修飾される。本発明においては、各単量体ユニット、すなわち、第1ユニットおよび第2ユニットにおいて、これらの変異は、それぞれ組み合わせることができると理解される。例えば、前記第1ユニットが、6つの修飾を含むことができ、一方、前記第2ユニットが、7つまたは8つの修飾を含み、前記第1単量体ユニットが8つの修飾を、前記第2単量体ユニットが7つの修飾を含んでもよい、等である。前述に列挙する各アミノ酸は、前記第1ユニット、前記第2ユニットから選択でき、その後、前記両ユニットは、組み合わせられる。好ましい置換は、以下に記載する。
【0026】
「フィブロネクチンのエクストラドメインB」または省略した「ED−B」は、配列番号2との配列同一性が、少なくとも70%、任意に75%以上、さらに任意に80%、85%、90%、95%、96%、または97%以上、または100%を示し、上記のED−Bの機能性を有する、全てのタンパク質を含む。
【0027】
「結合可能なタンパク質」または「結合タンパク質」は、さらに後述するED−Bに対する結合ドメインを含むユビキチンタンパク質を指す。このようなユビキチンベースの結合タンパク質は、いずれも、例えば、多量体化部位(multimerization moieties)、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー等の結合ドメインでない付加的なタンパク質ドメイン、および/または、非タンパク性のポリマー分子を含んでもよい。非タンパク性のポリマー分子は、例えば、ヒドロキシエチルでんぷん、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン等である。
【0028】
抗体およびそのフラグメントは、当業者に周知である。前記本発明の結合タンパク質は、抗体またはそのフラグメント、例えば、FabもしくはscFvフラグメント等ではない。また、前記本発明の結合ドメインは、抗体に存在する免疫グロブリンフォールドを含まない。
【0029】
本明細書において、「リガンド」、「ターゲット」および「結合パートナー」は、同意語として使用され、置き換え可能である。リガンドは、前述のヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質に、ここで定義される親和性をもって結合可能な任意の分子である。
【0030】
「ユビキチンタンパク質」は、配列番号1のユビキチン、および、下記の定義によるその修飾物を包含する。ユビキチンは、真核生物において、高度に保存されている。例えば、今日まで研究されてきた全ての哺乳類において、ユビキチンは、同一のアミノ酸配列を有する。ヒト、げっ歯類、ブタおよび霊長類由来のユビキチン分子が、特に好ましい。また、任意の他の真核生物起源のユビキチンを使用することもできる。例えば、酵母由来のユビキチンは、配列番号1と3つのアミノ酸が異なるのみである。前記「ユビキチンタンパク質」に包含される前記ユビキチンタンパク質は、通常、配列番号1に対し、70%を超える、好ましくは75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、または97%までのアミノ酸同一性を示す。
【0031】
「修飾ユビキチンタンパク質」は、前記ユビキチンタンパク質の修飾、アミノ酸の置換、挿入または欠失のいずれか一つ、または、それらの組み合わせを指す。ただし、上記修飾のいずれか一つによりなされる修飾で、最も好ましいのは置換である。前記修飾数は、配列番号1に対して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つであるアミノ酸同一性を有する、前記修飾単量体ユビキチンユニットのように、厳密に限定されている。それゆえ、単量体ユニットにおける全置換数は、80%のアミノ酸同一性に対応して、最大で15個のアミノ酸に限定される。前記ヘテロ二量体ユビキチン分子における修飾アミノ酸の全数は、前記ヘテロ二量体タンパク質に基づく、20%のアミノ酸の修飾に対応して、30個である。前記二量体修飾ユビキチンタンパク質の前記アミノ酸同一性は、配列番号1の基本単量体配列を有する二量体非修飾ユビキチンタンパク質と比較して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つから選択される。
【0032】
配列番号1のアミノ酸配列に対する前記ユビキチン誘導体の配列同一性の程度の決定には、例えば、SIM Local similarity program(Xiaoquin Huang and Webb Miller, Advances in Applied Mathematics, vol. 12: 337− 357, 1991)またはClustal,W.を使用できる(Thompson et al., Nucleic Acids Res., 22(22): 4673−4680, 1994.)。好ましくは、配列番号1に対する前記修飾タンパク質の配列同一性の程度は、配列番号1の完全配列に対して相対的に決定される。
【0033】
前記本発明の「ヘテロ二量体融合タンパク質」または「ヘテロ二量体タンパク質」は、2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質と考えられる。前記2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質は、前記特異的結合パートナーであるED−Bに対する一価の結合特性(結合ドメイン)を共同でもたらす、2つの相互作用結合ドメイン領域を有する。ヘテロ二量体は、2つの単量体ユビキチン分子の融合により得られ、これらの両分子は、前述のように異なる修飾がなされる。
【0034】
一価の結合活性を有するヘテロ多量体結合タンパク質(ここでは、ヘテロ二量体タンパク質)を生成するための、異なる修飾ユビキチン単量体の多量体化の利点は、ED−Bに対する新規な高親和性の結合特性を発生するために修飾され得るアミノ酸残基の総数の増加にある。主要な利点は、多くのアミノ酸が修飾されても、ED−Bに対する前記新規に生成された結合タンパク質の足場全体の安定性の低下させることなく、タンパク質の化学的完全性(protein−chemical integrity)が維持されることである。ED−Bに対する新規結合部位を発生させるために修飾され得る残基の総数は、前記修飾残基が2つの単量体ユビキチンタンパク質に割り当てられることで増加する。修飾数は、修飾単量体ユビキチン分子数に応じて、2倍にできる。ユビキチンベースのED−B結合タンパク質のモジュール構造は、2つの単量体ユビキチン分子に前記修飾アミノ酸が含まれると、前記修飾アミノ酸の総数を増加できる。本発明の方法は、ED−Bに対する一価の特異性(一つのシングルエピトープ)を有するヘテロ二量体ユビキチン分子の同定を提供する。
【0035】
したがって、これらの修飾残基の全量が、前記二量体を形成する前記2つの単量体ユニットに割り振られるため、結合パートナーに対して共通の結合部位を有するヘテロ二量体の使用は、最終的な結合分子の前記タンパク質の化学的完全性に過度に影響を与えない修飾残基数を増加させる可能性を切り開く。ED−Bに結合する前記ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質は、タンパク質ライブラリーに存在する。
【0036】
「一価」は、前記修飾二量体ユビキチンの前記第1および前記第2単量体ユニットにおいて生成された両結合領域が共に、ED−Bに相乗的に組み合わせられるように結合する機能、すなわち、両結合領域が、共同で一価の結合活性を形成する役割を果たす機能と理解されるべきである。前記二量体分子における前記第1および前記第2修飾ユビキチン両方の各結合領域を、別々に取り除いた場合、ED−Bへの結合は、前記二量体分子より明らかに効率および親和性が低下するだろう。前記修飾ユビキチンが、各単量体タンパク質を単独で使用するよりも、より効率的にED−Bに結合可能となるように、両結合領域は、アミノ酸の連続領域として前記ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質表面に形成されるユビキチン結合部位を形成する。本発明によれば、最も有力な結合ユビキチン分子をスクリーニングした後に、前記2つの単量体タンパク質が互いに連結されるのではなく、既に前記ヘテロ二量体ユビキチンが存在する状態でスクリーニング工程を行うことが、特に重要である。最も有力な結合ユビキチン分子の配列情報を取得した後に、任意の他の方法、例えば、化学合成または遺伝子工学手法により、例えば、前記2つの同定した単量体ユビキチンユニット同士を連結することにより、これらの分子を得てもよい。
【0037】
本発明によれば、1つのリガンドに結合する前記2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、例えば、遺伝学的手法を使用して、互いにヘッドトゥテイル融合で結合される。前記異なる修飾融合ユビキチン単量体は、一価で結合し、両方の「結合ドメイン領域」(「BDR」)が共に作用する場合にのみ効果的である。「結合ドメイン領域」は、前記ターゲットへの結合に関与する、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸が修飾されたユビキチン単量体における領域として定義される。
【0038】
前記ヘテロ二量体タンパク質を形成する前記修飾および結合ユビキチン単量体は、一つの連続的な結合領域を介して同じエピトープに結合する。前記ヘテロマーのこの連続的な領域は、2つの異なる修飾ユビキチン単量体により形成される前記2つのモジュールの両結合決定領域により形成される。
【0039】
「ヘッドトゥテイル融合」は、2つのタンパク質が、前記二量体に含まれるユニット数に応じて、N−C−N−C方向においてそれらを連結することにより、互いに融合することと理解される。このヘッドトゥテイル融合において、前記ユビキチン単量体は、リンカーを介すことなく、直接連結されてもよい。または、前記ユビキチン単量体の融合は、リンカーを介して行うことができる。前記リンカーは、例えば、少なくともGIGのアミノ酸配列もしくは少なくともSGGGGのアミノ酸配列を有するリンカー、または、任意の他のリンカー、例えば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIGもしくはSGGGGSGGGGがあげられる。2つのユビキチン単量体の遺伝学的融合用の他のリンカーも、当該技術分野では公知であり、使用できる。
【0040】
本発明の前記修飾ユビキチンタンパク質は、ターゲットまたはリガンド(両用語は、同じ意味として使用される)としてのED−Bに対する新規な結合親和性を有する人工タンパク質である。「置換」は、例えば、元のアミノ酸への化学基もしくは残基の置換または付加によるアミノ酸の化学的修飾も含む。βシート領域の少なくとも一つのβシート鎖に位置するアミノ酸、または、前記βシート鎖に隣接した3個までのアミノ酸に位置するアミノ酸を含む前記タンパク質の少なくとも一つの表面露出領域におけるアミノ酸の置換が、重要である。
【0041】
本発明によれば、ED−Bに特異的な新規の結合ドメイン発生のための前記アミノ酸の置換を、任意の所望のアミノ酸に行うことができる。すなわち、ED−Bに対する新規の結合特性を発生させる修飾のために、任意の所望のアミノ酸をこの目的に使用できるように、アミノ酸が、置換されたアミノ酸のそれと同様の特定の化学的特性または側鎖を有する必要はない。
【0042】
本発明によれば、前記選択されたアミノ酸の修飾工程は、好ましくは、ランダム変異導入法による遺伝学的レベルでの突然変異、すわなち、前記選択されたアミノ酸のランダム置換により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、前記各タンパク質に属するDNAを改変する遺伝子工学的手法により行われる。好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現は、その後、原核生物または真核生物において行われる。
【0043】
置換は、特に、ユビキチンタンパク質のβシートの4つのβ鎖の表面露出アミノ酸、または、前記βシート鎖に隣接する3つ以内の表面露出アミノ酸において行われる。各β鎖は、通常、5〜7個のアミノ酸からなる。配列番号1に関して、例えば、前記β鎖は、通常、アミノ酸残基2〜7、12〜16、41〜45および65〜71を包含する。付加的に且つ好ましく修飾され得る領域は、前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸(すなわち、1番目、2番目または3番目)の部位を含む。付加的に且つ好ましく修飾され得る前記好ましい領域は、特に、アミノ酸残基8〜11、62〜64および72〜75を含む。前記好ましい領域は、2つのβ鎖が互いに結合したβターンを含む。好ましいβターンは、アミノ酸残基62〜64があげられる。前記βシート鎖に密接する最も好ましいアミノ酸は、8位のアミノ酸である。また、アミノ酸置換のさらなる好ましい例は、36、44、70および/または71位である。例えば、付加的に且つ好ましく修飾され得る領域は、62、63および64位のアミノ酸(3個のアミノ酸)、72、73位のアミノ酸(2個のアミノ酸)または8位のアミノ酸(1個のアミノ酸)を含む。
【0044】
好ましい実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸置換により改変される。欠失および挿入も可能である。付加または欠失され得るアミノ酸数は、単量体ユビキチンサブユニットにおいて、1、2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸に限定され、それに応じて、前記二量体ユビキチンタンパク質については、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個のアミノ酸に限定される。一実施形態において、アミノ酸挿入はなされない。さらなる実施形態において、欠失は行われない。
【0045】
本発明の修飾ユビキチンタンパク質が、請求項で特定され明細書で説明された前記置換に加えて、1以上のアミノ酸の欠失および/または付加を含む場合には、野生型ヒトユビキチン(配列番号1)に与えられる前記アミノ酸部位を、対応するタンパク質同士で分配するために、前記修飾ユビキチンについてアライメントさせなければならない。融合タンパク質の場合(後述を参照)、各単量体ユビキチンサブユニットのナンバリング(およびアライメント)は、同様の方法、すなわち、例えば、各サブユニットの1位のアミノ酸から開始される二量体のアライメントによりなされる。
【0046】
単量体ユビキチン、好ましくは、例えば、ヒト等の哺乳類由来の単量体ユビキチンにおいて、β鎖または前記βシート鎖に隣接する3個以内のアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも25%が修飾されることができ、好ましくは置換され、本発明によれば、従来は存在しなかった結合特性が発生する。最大で、β鎖または前記βシート鎖に隣接する3個以内のアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の約50%、さらに好ましくは最大で約40%、約35%、約30%以下、または約25%以下が修飾され、好ましくは置換される。通常、一つのβ鎖において、1〜4個のアミノ酸が修飾される。一実施形態では、好ましくは、第1β鎖および第4β鎖、例えば、2〜7位もしくは65〜71位のアミノ酸残基の領域において、6個のアミノ酸のうちの3個が修飾される。
【0047】
ヘテロ二量体の構成ユニットとして使用される本発明の修飾単量体ユビキチンは、合計でアミノ酸の20%以下を占める。これを考慮すると、配列番号1に対する前記修飾ユビキチンタンパク質の配列同一性は、少なくとも80%である。本発明のさらなる実施形態において、アミノ酸レベルでの配列同一性は、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも87%、さらに、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%である。本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、97%以上のアミノ酸配列同一性の前記修飾ユビキチンタンパク質をも包含する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態において、ユビキチンは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位における、3、4、5、6、または7個のアミノ酸において修飾される。他の実施形態において、これらの部位において修飾されるユビキチンは、既に前修飾(pre−modified)されていた。例えば、さらなる修飾は、74および75位のアミノ酸または45位のアミノ酸における修飾を含むことができ、この修飾により、より良好な安定性またはタンパク質化学特性を発生する。修飾ユビキチン単量体は、配列番号1のユビキチンにおける、合計9、10、11、12、13、14および、最大で15個のアミノ酸が修飾され、好ましくは置換されることで得られる。一例によれば、修飾単量体ユビキチンは、14個の置換および1個の欠失を有するものが得られた。ユビキチンの総アミノ酸数に基づいて、これは、約20%の割合に相当する。このことは、非常に驚くべきことであり、通常、もっと低い割合で、十分にタンパク質のフォールディングを阻害してしまうため、予測できなかったことである。
【0049】
本発明の一実施形態において、これらのアミノ酸は、タンパク質表面上に連続的な領域を形成する、新規なED−B結合特性を有する領域の発生のために修飾される。このようにして、ED−Bへの結合特性を有する連続的な領域を発生させることができる。本発明において、「連続的な領域」は、以下の通りである。側鎖の電荷、空間的構造および疎水性/親水性により、それに対応して、アミノ酸は、その環境と相互作用する。前記環境は、溶媒、通常は、水または、例えば、空間的に近いアミノ酸等の他の分子であり得る。タンパク質に関する構造情報および各種ソフトウェアの手段により、前記タンパク質表面の特徴を決定できる。例えば、タンパク質の原子と溶媒との接触領域を、この接触領域がどのような構造であるか、溶媒に接触しやすい表面領域はどれか、または、前記改変が表面においてどのように分布しているか、についての情報を含むこの方法により可視化できる。連続的な領域は、例えば、適切なソフトウェアを使用したこの種の可視化により明らかにされ得る。このような方法は、当業者に公知である。本発明によれば、基本的に、表面露出領域全体が、新規な結合特性の発生のために修飾される表面上の前記連続的な領域として使用され得る。一実施形態において、この目的のための修飾は、αへリックス領域を含んでもよい。ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質において、結合決定領域は、1つの結合決定領域の2倍の長さを有する1つの連続的な領域を共同で形成する、2つの前記表面露出領域を含む。
【0050】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位の少なくとも一方を含む、前記タンパク質の少なくとも1つの表面露出領域におけるアミノ酸の修飾が、重要である。前記「βシート構造」は、本質的にシート状で、ほぼ完全に伸長されている(stretched)ことにより定義される。一方、ポリペプチド鎖の連続したセグメントから形成されるαへリックスに対して、βシートは、ポリペプチド鎖の異なる領域により形成され得る。このようにして、一次構造において離れて位置する領域同士が、近傍同士となることができる。β鎖は、概して、5〜10個のアミノ酸長を有し(通常は、ユビキチンにおける5〜6残基)、ほぼ完全なストレッチ構造を有する。前記β鎖は、互いに近接し、一方の鎖のCO基と他方の鎖のNH基との間で水素結合が形成される。逆もまた同様である。βシートは、複数の鎖から形成され、シート状構造を有し、Cα原子の部位が、シート状平面の上方または下方の間で交互に入れ替わる。アミノ酸側鎖は、このパターンに追随し、そして、上端もしくは下端に向く。前記β鎖の方向により、前記シートは、平行シートおよび逆平行シートに分類される。本発明によれば、両方とも、変異可能であり、請求されたタンパク質の調製に使用可能である。
【0051】
前記β鎖および前記βシート構造の突然変異のために、表面に近いβ鎖または前記β鎖(前記βシートの1つの鎖)に隣接する3つ以内のアミノ酸部位が、ユビキチンにおいて選択される。表面露出アミノ酸は、利用可能なX線結晶構造により同定できる。利用できる結晶構造がない場合、利用可能な一次構造または3次元タンパク質構造モデルに関して、表面露出βシート領域および個々のアミノ酸部位の接触性を予測するコンピュータ解析手法による試みをなし得る。このようにして、潜在的な表面露出アミノ酸についての情報を入手し得る。さらなる開示は、例えば、J. Mol. Biol., 1987 Apr 5; 194(3):531−44. Vijay−Kumar S, Bugg C.E., Cook W.Jから得ることができる。
【0052】
前記βシートまたは前記β鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位における修飾を行えるが、突然変異を生成させるアミノ酸部位の前選択は時間がかかるため、除外し得る。前記βシート構造または前記βシート鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸をコードするDNA領域を、DNA環境(DNA environment)から単離し、ランダム突然変異に供し、その後、それらを予め除去したタンパク質をコードするDNAに再度組み込む。続いて、所望の結合特性を有する変異体の選択工程を行う。
【0053】
本発明の他の実施形態において、表面に近い、前記β鎖または前記β鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位は、前述のように選択され、これらの選択された領域内部の突然変異誘発された前記アミノ酸部位は、同定される。ついで、このようにして選択されたアミノ酸部位は、部位特異的突然変異によりDNAレベルで、突然変異され得る。すなわち、特定のアミノ酸をコードするコドンが、予め選択された他の特定のアミノ酸をコードするコドンにより置換され、または、この置換がランダム突然変異との関連で行われる。前記置換されるアミノ酸部位は、新規な部分をコードするコドンのみではなく、未定のアミノ酸も定義される。
【0054】
「表面露出アミノ酸」は、周囲の溶媒に接触可能なアミノ酸である。タンパク質におけるアミノ酸の接触性が、モデルトリペプチドGly−X−Glyにおけるアミノ酸の接触性と比較して8%以上である場合、前記アミノ酸は、「表面露出」と呼ばれる。これらのタンパク質領域または個々のアミノ酸部位は、それぞれ、本発明により選択される、潜在的な結合パートナーに対する好ましい結合部位でもある。また、参考文献として、Caster et al., 1983 Science, 221, 709 − 713, and Shrake & Rupley, 1973 J. Mol. Biol. 79(2):351−371があげられ、開示の全てを、本願に取り込む。
【0055】
元のタンパク質および互いのタンパク質から新たに発生させた人工結合部位の領域における、アミノ酸置換によるユビキチンタンパク質足場の変異体を、対象とされた各配列セグメントのターゲット突然変異により、発生できる。この場合、極性、電荷、溶解性、疎水性/親水性等の所定の特性を有するアミノ酸を、それぞれ、各特性を有するアミノ酸で交換または置換できる。置換の他に、「突然変異」、「修飾」および「交換」は、挿入および欠失も含む。タンパク質レベルにおいて、前記修飾を、当業者に公知の方法によるアミノ酸側鎖の化学的改変により行ってもよい。
【0056】
ユビキチンの突然変異方法
各配列セグメントの突然変異の開始点として、例えば、当業者に公知の方法により、調製され、改変され、増幅されたユビキチンのcDNAを使用できる。一次配列の比較的狭い領域(例えば、1〜3個のアミノ酸)におけるユビキチンの部位特異的改変には、市販の試薬および方法が利用可能である(「Quick Change」、Stratagene;「Mutagene Phagemid in vitro Mutagenesis Kit」、Biorad)。大きい領域の部位特異的な突然変異には、具体的な態様として、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が、当業者に利用可能である。この目的のために、所望の部位が変性された塩基対組成を有する合成オリゴデオキシヌクレオチドの混合は、例えば、変異の誘導に使用できる。これは、イノシン等のゲノムDNAに自然には発生しない塩基対類似体の使用によってもなされ得る。
【0057】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位の1つ以上の突然変異の開始点は、例えば、ユビキチンのcDNAでもよいし、ゲノムDNAでもよい。また、ユビキチンタンパク質をコードする遺伝子は、合成的に調製されてもよい。
【0058】
突然変異に利用可能な公知の他の手法は、部位特異的突然変異の方法、ランダム突然変異の方法、PCRを使用する突然変異または類似の方法である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、突然変異が生成される前記アミノ酸部位は予め定められている。修飾されるアミノ酸の選択は、修飾されるべきアミノ酸に関して、請求項1の限定を満たすように行われる。いずれの場合にも、異なる変異のライブラリーは、通常、公知の方法によりスクリーニングされて確立される。修飾されたユビキチンタンパク質について、十分な構造情報が利用可能な場合には、通常、修飾されるアミノ酸の前選択が、特に簡易に行われ得る。
【0060】
本発明によれば、例えば、標的変異、および、従来技術であるPCR、化学的突然変異、細菌の突然変異誘発株を使用する、長い配列セグメントの突然変異を使用できる。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記突然変異は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドの集合により行われる。ただし、他のコドン(トリプレット)を使用できることも理解すべきである。前記βシート構造が維持されるように、前記変異が行われる。通常、前記突然変異は、タンパク質の表面上に露出される安定なβシート領域の外側で行われるのが好ましい。それには、部位特異的突然変異およびランダム突然変異の両方が含まれる。一次構造の比較的狭い領域(例えば、3〜5個のアミノ酸)を含む部位特異的突然変異は、市販のキットにより発生できる。前記市販のキットは、Stratagene(登録商標)(QuickChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標) phagemid in vitro mutagenesis kit)(US5,789,166;US4,873,192参照)があげられる。
【0062】
より広い領域を部位特異的突然変異に供する場合、DNAカセットを調製しなければならず、突然変異される領域は、変異された部位および変異されていない部位を含むオリゴヌクレオチドの集合により得られる(Nord et al., 1997 Nat. Biotechnol. 8, 772−777; McConell and Hoess, 1995 J. Mol. Biol. 250, 460−470.)。ランダム突然変異は、突然変異誘発株におけるDNAの伝播、または、PCR増幅(エラープローンPCR)により導入され得る(例えば、Pannekoek et al., 1993 Gene 128, 135 140)。このためには、エラー率の高いポリメラーゼが使用される。導入される突然変異の度合いを高め、異なる変異同士をそれぞれ組み合わせるために、PCR断片における変異を、DNAシャッフリングの手法により組み合わせることができる(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に関するこれらの突然変異戦略についての報告として、Kuchner and Arnold (1997) TIBTECH 15, 523−530の報告が提供される。選択されたDNA領域に、このランダム突然変異を行うためにも、突然変異に使用されるDNAカセットを、構築しなければならない。
【0063】
ランダム修飾は、当該技術分野において、十分に確立された公知の方法により行われる。「ランダムに修飾されたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列」は、いくつかの部位が、ヌクレオチドまたはアミノ酸により挿入、欠失または置換され、特性が予測できないヌクレオチド配列またはアミノ酸配列である。多くの場合、挿入された前記ランダムヌクレオチド(アミノ酸)配列、または、ヌクレオチド(アミノ酸)配列は、「完全にランダム」であろう(例えば、ランダム化合成またはPCRを介した突然変異の結果として)。ただし、前記ランダム配列は、共通の機能的特性(例えば、発現産物のリガンドへの反応性)を有する配列を含み得る。また、前記ランダム配列は、最終的な発現産物が、例えば、異なるアミノ酸の分布においても、完全にランダムな配列であるという意味で、ランダムでもよい。
【0064】
ランダム化された断片をベクター中に適切に導入するために、本発明では、前記ランダムヌクレオチドは、部位特異的PCRを介した突然変異の方式により、発現ベクター中に導入されるのが好ましい。ただし、他の選択肢は、当業者に公知であり、例えば、合成ランダム配列ライブラリーを同様にベクターに挿入可能である。
【0065】
融合PCRにより変異体またはライブラリーを発生させるために、例えば、3回のPCR反応を行ってもよい。2回のPRC反応は、部分的に重なった中間体フラグメントを発生するように行われる。3回目のPCR反応は、前記中間体フラグメントを融合するように行われる。
【0066】
ライブラリーまたは変異体株の構築方法は、所望の制限酵素認識部位周辺のプライマー(制限酵素認識部位プライマー)の第1セット、および、例えば、目的のコドンの上流および下流周辺のプライマー(変異原性プライマー)の第2セットを構築する工程を含んでもよい。制限酵素認識部位プライマーは、フォワード制限酵素認識部位プライマーおよびリバース制限酵素認識部位プライマーを含む。変異原性プライマーは、フォワード変異原性プライマーおよびリバース変異原性プライマーを含む。一実施形態において、前記プライマーは、目的のコドンの上流および下流について構築される。前記制限酵素認識部位プライマーおよび前記変異原性プライマーは、第1中間体フラグメントおよび第2中間体フラグメントの構築に使用される。2回のPCR反応により、これらの直線状の中間体フラグメントが生成される。これらの各直線状の中間体フラグメントは、少なくとも一つの目的の変異コドン、フランキングヌクレオチド配列および切断部位を含む。前記3回目のPCR反応では、前記2つの中間体フラグメントならびに前記フォワード制限酵素認識部位プライマーおよび前記リバース制限酵素認識部位プライマーが使用され、直線状の融合産物が生成される。一方、前記直線状の産物の結合していない末端は、制限酵素で切断され、前記直線状の産物に付着末端が作製される。前記直線状の産物の前記付着末端は、DNAリガーゼの使用により融合され、環状の産物、例えば、環状のポリヌクレオチド配列が生成される。
【0067】
前記中間体フラグメントの構築のために、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの2つのセットについての設計および合成が行われる。前記2つのセットは、制限酵素切断部位をおよびそのフランキングヌクレオチド配列を含む第1セット、ならびに、目的の変異コドンを少なくとも一つ含む第2セット(変異原性プライマー)を含む。当業者は、前記変異の数が所望の変異アミノ酸修飾の数に対応することを認識するであろう。本願発明者は、他の制限酵素が前記工程に使用可能かを熟考した。この切断部位の正確な位置、ならびに、前記フォワードプライマーおよび前記リバースプライマーの対応する配列は、適宜改変され得る。当該技術分野において利用可能な他の方法も、代替として使用され得る。
【0068】
本発明において、足場に導入される発現産物のランダム化フラグメントを有することを除けば、少なくとも一つの融合パートナーをコードするヌクレオチド配列に融合される、ランダム化ヌクレオチド配列を有することにより、融合パートナーに前記ランダム配列を連結する必要がある。融合パートナーは、例えば、前記発現産物の発現および/または精製/単離および/または、さらに安定化を促進できる。
【0069】
本発明の一例によれば、単量体ユビキチンの2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位における、少なくとも6個のアミノ酸のランダム置換を、非常に簡易にPCRの手段により行うことができる。前述の部位が、前記タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端の近くに位置しているためである。したがって、操作されるコドンは、対応するcDNA鎖の5’末端および3’末端である。そこで、突然変異PCR反応に使用される前記第1オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される2、4、6および/または8位のコドンから離れており、ユビキチンの配列におけるアミノ末端のコード鎖に対応する。したがって、前記第2オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される62、63、64、65、66および/または68位から離れており、少なくとも部分的に、カルボキシ末端のポリペプチド配列の非コード鎖に対応する。両方のオリゴデオキシヌクレオチドにより、ポリメラーゼ連鎖反応は、鋳型として単量体ユビキチンをコードするDNA配列を使用して行うことができる。
【0070】
また、得られた増幅産物を、例えば、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を導入するフランキングオリゴデオキシヌクレオチドを使用する、他のポリメラーゼ連鎖反応に添加できる。本発明によれば、所定のハプテンまたは抗原に対する結合特性を有するユビキチン変異体の単離のための次の選択工程での使用に適したベクター系中に得られた前記遺伝子カセットを導入するのが好ましい。
【0071】
ユビキチンの修飾領域
基本的に、結合パートナーであるED−Bに接触可能かどうか、および、タンパク質の全体構造が、推測上修飾に耐性を示すかどうかで、修飾領域は、選択され得る。
【0072】
表面露出β鎖における修飾の他に、前記タンパク質の他の表面露出領域も修飾でき、前記β鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位において行われるのが好ましい。これらの修飾領域は、新規に発生させるED−Bに対する高い結合親和性に関与する。
【0073】
本発明の他の任意の実施形態において、前記タンパク質における4つのβ鎖の1つもしくは2つにおけるアミノ酸、好ましくは2つにおけるアミノ酸、または、好ましくは前記4つのβ鎖の2つに隣接する3つ以内のアミノ酸部位が、修飾され、新規の結合特性が発生する。前記4つのβ鎖の3つもしくは4つにおける修飾、または前記β鎖の3つもしくは4つに隣接する3つ以内のアミノ酸部位の修飾も、ED−B結合発生のために、任意で行ってもよい。
【0074】
アミノ末端およびカルボキシ末端鎖におけるアミノ酸、または、アミノ末端およびカルボキシ末端鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、ED−Bへの新規の結合部位を発生させる。この点において、前記カルボキシ末端βシート鎖に隣接する4つ以内のアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、および、前記アミノ末端β鎖に隣接する1つ以内のアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換される。
【0075】
哺乳類のユビキチン、好ましくはヒトのユビキチンにおける下記の部位の表面露出アミノ酸の少なくとも3つが、修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換される:2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位。前記アミノ酸グループの少なくとも4つのアミノ酸は、結合パートナーであるED−Bに対して従来は存在しなかった結合親和性を有する修飾タンパク質の発生に特に適していることが見出された、ユビキチンの表面に連続的な表面露出領域を形成する。これらのアミノ酸残基の少なくとも3つは、修飾されなければならない。任意に、前記アミノ酸残基の3、4、5、6、7、8、9または10個が修飾され、任意にアミノ酸残基の付加を組み合わせることもできる。
【0076】
上記修飾後、本願発明者は、実施例で述べるアミノ酸修飾ユビキチン配列が、非常に高い親和性(Kd値10−9以下)でED−Bと結合することを見出した。
【0077】
融合タンパク質
他の好ましい実施形態において、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した、前記本発明の結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した、前記本発明のヘテロ二量体結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、非ポリペプチド成分、例えば、非ペプチドリンカー、非ペプチドリガンド、例えば、治療または診断に関連する放射線核種を含んでもよい。低分子の有機化合物または非アミノ酸化合物、例えば、糖、オリゴ糖、多糖、脂肪酸等を含んでもよい。本発明の好ましい一実施形態において、前記ユビキチンベースのED−B結合ヘテロマー分子は、治療または診断特性を有するタンパク質またはペプチドに、共有的にまたは非共有的に接合される。
【0079】
ED−B結合能を有するユビキチンベースの融合タンパク質の取得方法について、いくつかの例を、以下に示す。
a)ユビキチンに存在するリジン残基を介した前記タンパク質の接合;
b)システイン残基を介した前記ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質の接合
前記システイン残基は、C末端に位置するか、または任意の他の部位(例えば、24もしくは57位のアミノ酸残基)に位置し得る;マレイミド選択的成分による接合;
c)ペプチド性またはタンパク質性の接合−遺伝学的融合(好ましくはC末端またはN末端)
d)タグに基づく融合−前記ターゲットタンパク質ED−BのC末端またはN末端に位置するタンパク質またはペプチド。融合「タグ」、例えば、ポリヒスチジン(特に、放射性標識に関する)。
【0080】
補助目的のタンパク質に共有的および非共有的に付着するための、これらおよび他の方法は、当該技術分野において周知であるので、さらに詳細には説明しない。
【0081】
前記活性成分は、サイトカイン、好ましくは、腫瘍壊死因子(例えば、TNFα、TNFβ)、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−12、IL−10、IL−15、IL−24、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−13、IL−8、IL−1α、IL−1β)、インターフェロン(例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ)、GM−CSF、GRO(GROα、GROβ、GROγ)、MIP(MIP−1−α、MIP−1β、MIP−3α、MIP−3β)、TGF−β LIF1 CD80、CD−40リガンド B70、LT−β、Fas−リガンド、ENA−78、LDGF−PBP、GCP−2、PF4、Mig、IP−10、SDF−1α/β、BUNZO/STRC33、I−TAC、BLC/BCA−1、MDC、TECK、TARC、RANTES、HCC−1、HCC−4、DC−CK1、MCP−1−5、エオタキシン、エオタキシン−2、I−309、MPIF−1、6Ckine、CTACK、MEC、リンホタクチン、フラクタルカイン等からなる群から選択されるサイトカインである。
【0082】
本発明において使用される最も好ましいサイトカインの一つは、TNFαである。炎症性サイトカインであるTNFは、哺乳類の体内において、抗腫瘍作用を含む複数の活性を有する。TNFは、ヒトにおいて、有効量では許容できない毒性を示すために、近年、臨床的に適切ではなくなっている。近年、TNFは、メルファラン等の細胞増殖抑制物質との併用で、治療に使用される。
【0083】
さらに任意に、前記ヘテロ多量体ユビキチン結合タンパク質に接合可能な前記活性成分は、毒性化合物、好ましくは、低分子有機化合物またはポリペプチド、任意に、毒性化合物、例えば、サポリン(saporin)、トランケート緑膿菌外毒素A(truncated Pseudomonas exotoxin A)、組換えゲロニン(recombinant gelonin)、リシンーA鎖(Ricin−A chain)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ネオカルチノスタチン(neocarzinostatin)、エスペラミシン(esperamicin)、ダイネミシン(dynemicin)、ケダルシジン(kedarcidin)、マデュロペプチン(maduropeptin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、アウリスタチン(auristatin)、コレラトキシン(cholera toxin)、モデシン(modeccin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)からなる群から選択される毒性化合物である。
【0084】
本発明のさらなる実施形態において、前記本発明のヘテロ多量体ユビキチン結合タンパク質は、人工アミノ酸を含んでもよい。
【0085】
前記本発明の融合タンパク質のさらなる実施形態において、前記活性成分は、蛍光色素、好ましくは、ガンマ放射同位体のグループの放射線核種のいずれか、好ましくは、99Tc、123I、111In、または陽電子放出体のグループ、好ましくは、18F、64Cu、68Ga、86Y、124I、またはベータ放出体のグループ、好ましくは、131I、90Y、177Lu、67Cu、またはアルファ放射体のグループ、好ましくは、213Bi、211At;Alexa FluorまたはCy dyes(Berlier et al., J Histochem Cytochem. 51 (12): 1699−1712, 2003);光増感剤;プロコアグラント因子、好ましくは、組織因子(例えば、tTF(断ち切った組織因子);プロドラッグ活性の酵素、好ましくは、カルボキシぺプチダーゼ、グルクロニダーゼおよびグルコシダーゼからなる群から選択される一つの酵素;および/または機能性Fcドメイン、好ましくは、ヒト機能性Fcドメインからなる群から選択される一つの成分である。
【0086】
本発明の融合タンパク質に関するさらなる実施形態は、さらに、血清半減期を調整する成分、好ましくは、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ペプチドおよび免疫グロブリンからなる群から選択される成分を含む。
【0087】
結合特性(解離定数)
前記本発明の融合タンパク質の結合特異性は、Kdで与えられる非融合タンパク質で前述のように定義したのと同様である。本発明によれば、特異的結合親和性を定義する「Kd」は、10−7〜10−12Mの範囲である。10−5M以下の値であれば、定量化可能な結合親和性であると考えられる。適用に応じて、Kdの値は、例えば、クロマトグラフィーへの適用の場合には、10−7M〜10−11Mが好ましく、または、診断もしくは治療への適用の場合には、10−9M〜10−12Mが好ましい。さらに好ましい結合親和性は、10−7〜10−10Mであり、好ましくは、10−11Mである。
【0088】
前記結合親和性を決定する方法は、それ自体公知であり、例えば、下記の方法から選択できる:ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、Biacore(登録商標)により提供される)、蛍光分光法、等温滴定熱量測定(ITC)、超遠心分析法、FACS。
【0089】
上記修飾後、本願発明者は、実施例で述べるアミノ酸修飾ユビキチン配列が、非常に高い親和性(Kd値10−10M以下)でターゲットと結合することを見出した。
【0090】
ユビキチンの二量体化
本発明において、「二量体」は、2つの単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質であると考えられる。前記二量体が2つの異なる修飾単量体を含む場合、前記二量体は、「ヘテロマー二量体」または「ヘテロ二量体」と呼ばれる。したがって、前記本発明の「ヘテロ二量体」は、特異的結合パートナーED−Bに対して共同で一価の結合特性を示す、2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質の融合物であると考えられる。前記本発明の修飾ヘテロ二量体ED−B結合ユビキチンタンパク質は、各単量体ユビキチンタンパク質を個々にスクリーニングし、その後、これら2つを結合することによっては、得ることができず、前記ED−Bリガンドへの共同での一価の結合活性を示す第1単量体ユニットおよび第2単量体ユニットからなるヘテロ二量体をスクリーニングすることにより、得ることができることを強調しておく。前記各サブユニットは、ED−Bへの結合親和性がかなり制限され、結合した二量体修飾ユビキチンタンパク質のみが、前述の優れた結合特性を有することが期待される(例えば、図4参照)。
【0091】
本発明によれば、遺伝学的にヘッドトゥテイルで結合された2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、ED−Bの同じエピトープに結合し、両方の結合ドメイン領域が共に作用することでのみ効果を示す。前記単量体の前記BDRは、単独の連続的な結合領域を形成する。
【0092】
したがって、フィブロネクチンのED−Bに効果的に結合する、前記本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、二量体化される。前述のように、前記単量体は、直接連結されてもよいし、リンカーを介して連結されてもよい。種々の取り得るリンカーが、使用され得る。
【0093】
各単量体ユビキチンは、2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の修飾を示す。前記単量体タンパク質は、遺伝学的に互いに融合される。前記ターゲットへの結合は、前記BDRの共同によりなされる。すなわち、前記BDRは、共同して、フィブロネクチンの前記ED−Bドメインに一価で結合可能な、共通の結合領域を一つ形成する。
【0094】
ED−Bに結合する修飾ユビキチンへテロ二量体
Kd=10−7〜10−12MでED−Bに結合し、フィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示す、前記本発明のユビキチンのヘテロ二量体は、下記の2つの選択肢から選択される。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換、および、
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
【0095】
実施形態において、前記融合タンパク質は、第1ユビキチン単量体の6、8、63〜66位のアミノ酸の置換、ならびに、第2ユビキチン単量体の6、8、62〜66位、および、任意に2位のアミノ酸の置換を有する、前記ユビキチン単量体が、遺伝学的に融合されたヘテロ二量体であり、好ましくは、
前記第1ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換、
8位におけるロイシン(L)のトリプトファンまたはフェニルアラニン(W、F)への置換、
63位におけるリジン(K)のアルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
64位におけるグルタミン酸(E)のリジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換、
66位におけるトレオニン(T)のプロリン(P)への置換;
前記第2ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはグルタミン(Q)への置換
8位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)またはセリン(S)への置換
62位におけるグルタミン(Q)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換
63位におけるリジン(K)のセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)またはグルタミン(Q)への置換
64位におけるグルタミン酸(E)のアスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T)またはグルタミン(Q)への置換
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換
66位におけるトレオニン(T)のグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)への置換
任意に、2位におけるグルタミン(Q)のアルギニン(R)、ヒスチジン(H)またはロイシン(K)への置換が好ましい。
【0096】
得られた修飾ユビキチンへテロ二量体が、Kd=10−7〜10−12Mでフィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED−B)に対する特異的結合親和性を示し、フィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示し、且つ、ユビキチンタンパク質の構造的安定性が破壊されず、妨害されない限り、各単量体におけるこれらの置換の選択肢は、互いに組み合わせることができる。
【0097】
最も好ましい置換は、下記のとおりある。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくともK6W、L8W、K63R、E64K、S65FおよびT66Pの置換;
および、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65WおよびT66Eの置換;任意にさらにQ2Rの置換、または
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくともQ2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sの置換;
および、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6X、L8X、Q62X、K63X、E64X、S65XおよびT66Xの置換;任意にさらにQ2Xの置換、Xは、任意のアミノ酸(図2参照)。
【0098】
ED−Bへの結合タンパク質を発生させる前記第1ユビキチン単量体において、特に好ましい置換は、下記のとおりである。
2位:Q→T、4位:F→W、6位:K→H、62位:Q→N、63位:K→F、64位:E→K、65位:S→L、66位:T→S
【0099】
2つの単量体のヘッドトゥテイルでの結合には、リンカーを使用しなくてもよいし、どのようなリンカーを使用してもよい。好ましいリンカーは、配列番号32のリンカーまたは、GIG配列、SGGGGIG配列もしくはSGGGGSGGGGIG配列のリンカーである。
【0100】
好ましい実施形態において、2つの結合決定領域(BDR)を有し、ED−Bに対して共に作用するユビキチンヘテロ二量体は、配列番号33または34のアミノ酸配列を含む。さらに好ましいタンパク質は、下記配列(配列番号47)が提示される。下記配列において、XXXXは、どのようなアミノ酸でよい。リンカーは、SGGGGSGGGGIG配列が使用される。他の種類のリンカー、またはリンカーなしも、代替可能と理解される。
【化1】
【0101】
これらの配列のタンパク質のコンセンサス配列の例を、図2に示す。
【0102】
薬学的活性成分としてTNFαを含む、前記本発明の好ましい融合タンパク質は、配列番号35または36の配列を有する。
【0103】
本発明のさらなる態様において、本発明は、前述のタンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをも包含する。また、前記ポリヌクレオチドを含むベクターは、本発明に包含される。
【0104】
本発明のさらなる態様において、前述のタンパク質もしくは融合タンパク質、および/または、前記本発明の組換えタンパク質もしくは組換え融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む、宿主細胞は、包含される。
【0105】
本発明のタンパク質の使用、例えば、ED−Bに対する特異的結合特性を有し、TNFα等のエフェクターに融合したヘテロ二量体ユビキチンの使用
前記本発明の修飾ユビキチンED−B結合タンパク質は、例えば、in vitroまたはin vivoで使用する診断薬、および治療薬の調製に使用される。前記本発明のタンパク質は、例えば、直接的なエフェクター分子(修飾物質、拮抗物質、作用物質)または抗原認識ドメインとして使用できる。ED−B抗原が大量に出現する腫瘍の例を、図1の表に示す。
【0106】
選択する融合パートナーに応じて、本発明の医薬組成物は、癌、例えば、乳癌および結腸直腸癌、またはED−Bが大量に出現する任意の他の腫瘍性疾患(図1に列記したこれらの例を参照)に適用される。
【0107】
前記組成物は、治療上の有効量を含むように適応される。投与量は、治療対象の組織、疾患の種類、患者の年齢および体重、ならびにさらに公知の要因によって決まる。
【0108】
前記組成物は、薬学的または診断的に許容されるキャリアを含み、任意に、さらに、従来公知の助剤および添加剤を含み得る。これらは、特に制限されず、例えば、安定化剤、界面活性剤、塩類、緩衝剤、着色剤等を含む。
【0109】
前記医薬組成物は、局所塗布用の液状製剤、クリーム、ローションの剤形;エアロゾル;粉末、細粒、錠剤、座剤、カプセル剤の剤形;エマルジョン、リポソーム製剤の剤形とし得る。前記組成物は、無菌、非発熱原性、等張性で、薬学的に従来公知で許容される添加剤を含むことが好ましい。また、U.S. PharmacopoeiaまたはRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mac Publishing Company(1990)の規則を参照できる。
【0110】
ヒトおよび獣医学の医薬療法および予防法の分野において、少なくとも一つの本発明のヘテロマーED−B結合ユビキチンタンパク質を含む、薬学的に有効な薬剤を、それ自体公知な方法により調製できる。生薬製剤に応じて、これらの組成物を、注射、点滴、全身投与、直腸投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与または他の従来から使用されている投与方法により、非経口的に投与できる。医薬品の種類は、治療対象の疾患の種類、疾患の重症度、治療対象の患者、および医学分野の当業者に公知の他の要因によって決まる。
【0111】
一実施形態において、前記医薬組成物は、前記本発明のタンパク質、融合タンパク質またはこれらの混合物を含み、さらに、1以上の化学療法剤、好ましくは、下記表に示すものから選択される化学療法剤を含む。
【0112】
【表1】
【0113】
好ましい実施形態において、前記化学療法剤は、メルファラン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ダクチノマイシン、フルオロデオキシウラシル、シスプラチン、パクリタキセルおよびゲムシタビン、またはキナーゼ阻害剤群から選択される。
【0114】
本発明の「医薬組成物」は、組成物の形態で提供されてもよい。種々の活性成分および希釈剤および/または担体は、互いに混合され、混合製剤の形態でもよい。前記活性成分は、部分的にまたは全体的に別々の形態で存在する。このような混合または混合製剤の一例は、複数の部品からなるキットである。
【0115】
本発明の「組成物」は、少なくとも2つの薬理学的な活性化合物を含む。これらの化合物は、同時に投与してもよいし、1分〜数日の時間間隔で個々に投与してもよい。これらの化合物は、同じ経路で投与してもよいし、異なる経路、例えば、一方の活性化合物を経口投与し、他方の活性化合物を非経口投与することも可能である。また、前記活性化合物は、一つの薬剤、例えば、一つの点滴液に処方されてもよいし、個々に処方された両化合物を含むキットとして処方されてもよい。また、両方の化合物は、2以上の包装でも提供可能である。
【0116】
特に好ましい組み合わせは、前記本発明の融合タンパク質ならびにメルファランおよび/またはドキソルビシン(リポソーム製剤)である。ATC L01分類の抗悪性腫瘍剤以外に、前記本発明のTNF融合タンパク質は、サイトカインおよびその誘導体、放射性医薬品、治療用細胞(cell based therapeutics)ならびにナノ粒子を含む、他の抗悪性腫瘍剤と併用できる。
【0117】
腫瘍透過処理活性により、前記本発明のTNF融合タンパク質は(また、前記本発明の他の組換えタンパク質/融合タンパク質も)、世界保健機関により設定された解剖治療化学分類法(ATC)において、L01に示される全ての抗悪性腫瘍剤と併用できる。
【0118】
驚くべきことに、TNFαに融合したユビキチンヘテロ二量体の融合タンパク質、好ましくは、配列番号35または36の配列を有する融合タンパク質が、治療において有利に適用できることがわかった。TNFαは、毒性が高いため、通常、最小治療閾を下回る低用量でしか投与できない(このため、治療的に不活性である)。TNFαの毒性のため、治療的に有効な濃度への到達には、TNFαを使用する際、現在、四肢分離かん流アプローチが選択される。四肢かん流は、腕および足に直接抗癌剤を輸送するのに使用できる医療技術である。四肢への血流および四肢からの血流を、止血帯で一次的に停止させ、抗癌剤を直接四肢の血液に注入する。これにより、癌が発生している領域に高い投与量のTNFαを、患者に受け入れさせることができる。
【0119】
しかし、前記本発明のTNFα融合タンパク質を適用することにより、非毒性であって且つ治療的に有効な濃度でTNFαを投与できる。TNFαは、前記本発明の(結合)融合タンパク質に連結されるため、疾病部位(例えば、腫瘍部位)に直接活性を示し、「遊離」のTNFαを、徹底的に低減できる。
【0120】
前記本発明の融合タンパク質としてTNFαを投与することにより、TNFαによる全身性の副作用を、著しく低減できる。前記本発明のTNFα融合タンパク質の使用により、治療効果に達するためのTNFαの全投与量を、大幅に低減でき、特に化学療法剤(上記参照)との併用において、全身の腫瘍の治療に有利に使用できる(四肢かん流の必要性および制約がない)。
【0121】
さらなる実施形態において、前記医薬組成物は、複数の部品からなるキットの形態でもよく、前記本発明の組換えユビキチンタンパク質/融合タンパク質、および1以上の化学療法剤が個々に提供される。
【0122】
前記本発明のヘテロ二量体ED−B結合タンパク質の製造方法
前記本発明のED−B結合タンパク質は、例えば、単純な有機合成戦略、固相支援合成技術等の、任意の従来公知の種々の技術により、または、市販の自動合成装置により調製できる。一方、従来の遺伝子組換え技術単独で、または、従来の合成技術との組み合わせにより、調製することもできる。
【0123】
本発明の他の態様において、組換え修飾ユビキチンタンパク質の発生方法が提供される。前記方法は、少なくとも下記の工程を含む。
a)単量体ユビキチンタンパク質から生じる異なる修飾がなされた二量体ユビキチンタンパク質群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つの修飾ユビキチン単量体を含む二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含む、前記工程
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
b)潜在的なリガンドとして、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)を提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と接触させる工程
d)スクリーニング処理により、修飾二量体ユビキチンタンパク質を同定する工程であり、
前記修飾二量体ユビキチンタンパク質は、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程。
任意に、
e)前記修飾二量体ユビキチンタンパク質を、前記結合親和性で、単離する工程
【0124】
任意に、前記修飾は、DNAレベルでの遺伝子工学、および、原核生物、真核生物またはin vitroにおける修飾タンパク質の発現により行われてもよい。
【0125】
さらなる実施形態において、前記修飾工程は、化学的合成工程を含む。
【0126】
本発明の一態様において、異なる修飾がなされたタンパク質群は、互いに異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質をコードする、2つのDNAライブラリーを遺伝学的に融合することにより得られる。
【0127】
さらなる態様において、前記修飾へテロ二量体ユビキチンタンパク質を、薬学的活性成分、任意に、サイトカイン、好ましくは、TNFα、または、診断用活性成分と融合させるように、また、前記組換え修飾へテロ二量体ユビキチンタンパク質を、前記薬学的活性成分、任意に、TNFα、または、前記診断用活性成分を介して形成されるように、前記方法は適用される。
【0128】
本発明によれば、修飾タンパク質は、さらに、化学的合成により調製されてもよい。この実施形態において、請求項1の前記c)工程からd)工程は、一つの工程で行われる。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、前記本発明のヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を形成する、前述の修飾単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含むライブラリーに関する。
【0130】
本発明のさらなる態様において、前述の2つのライブラリーの融合により得られるDNAを含む融合ライブラリーが提供され、各ライブラリーは、ヘテロ二量体ユビキチン融合タンパク質を得るために、異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質ユニットをコードし、前記単量体ユニットは、互いにヘッドトゥテイル配置で結合され、前記ライブラリーは、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示すユビキチンのヘテロ二量体融合タンパク質をコードする。前記相互結合は、当業者に公知のリンカーまたは前述のリンカーのいずれか1つにより行われる。本発明の一実施形態において、TNFαは、同時に薬学的活性化合物としての役割も果たすリンカーとして使用される。
【0131】
複合ライブラリーの製造は、実施例1で概要を述べる。ただし、ライブラリーの品質に注意を払わなければならない。足場技術におけるライブラリーの品質は、そもそも、複雑性(個々の変異体の数)および機能性(得られた候補の構造的およびタンパク質の化学的完全性)に左右される。両方の特性が互いにネガティブな影響を与える場合もあり、前記足場における修飾部位の数の増加によるライブラリーの複雑性の増大が、変異体のタンパク質の化学的完全性の低下をまねくおそれもある。これにより、溶解度、凝集性が低下し、および/または収量が低下する場合もある。この理由は、エネルギー的に良好なタンパク質パッケージを有する本来の足場から大きく逸脱するためである。
【0132】
このため、適切な足場ライブラリーを構築するために、両極端な、ターゲットへの結合性を最適化するために、本来の配列に可能な限り多くの変異を導入すること、および、ネガティブなタンパク質化学的効果を避けるために、可能なかぎり本来の一次配列を保存することの間で、天秤にかけることとなる。
【0133】
本開示は、前記本発明の態様または実施形態を考慮して、前述の特徴の考え得る組み合わせも包含することに留意する。
【0134】
ターゲットであるED−Bに対する結合親和性を有する修飾ユビキチンタンパク質の選択、および、結合親和性を発生させる修飾アミノ酸の決定
例えば、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質をコードする少なくとも2つのDNAライブラリーが、各単量体ユビキチンユニットにおいて、選択されたアミノ酸に異なる修飾をすることにより確立された後、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質をコードするDNA分子を得るために、これらのライブラリーは、例えば、リンカー技術により遺伝学的に融合される。本発明によれば、これらのライブラリーのDNAがタンパク質を発現し、このようにして得られた修飾二量体タンパク質がED−Bに接触されて、結合親和性が存在する場合には、パートナーへの結合が可能となる。
【0135】
接触工程およびスクリーニング工程が、ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質について、既に行われていることが本発明の重要な態様である。この工程により、ED−Bへの一価の結合活性を提供するユビキチンタンパク質のスクリーニングが可能である。
【0136】
本発明における接触は、適切な提示方法および選択方法、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、または細菌表面ディスプレイ等の方法、好ましくは、ファージディスプレイ方法により、行われることが好ましい。徹底した開示のために、下記の参考文献を参照できる;Hoess, Curr. Opin. Struct. Biol.. 3 (1993), 572−579;Wells and Lowmann, Curr. Opin. Struct. Biol. 2 (1992), 597−604;Kay et al., Phage Display of Peptides and Proteins−A Laboratory Manual (1996), Academic Press。前述の方法は、当業者に公知であり、本発明における修飾に使用できる。
【0137】
本発明によれば、前記修飾タンパク質が、所定の結合パートナーに対して、定量化できる結合親和性を有するかどうかの決定は、1以上の下記の方法により行うことが好ましい:ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、および超遠心分析法。
【0138】
ファージディスプレイ選択法
本願に適用されるファージディスプレイ法の一種は、結合特性を示すユビキチン変異体についての、本発明における選択手法の一例として、後述する。同様に、例えば、細菌上(bacterial surface display;Daugherty et al., 1998, Protein Eng. 11(9):825−832)もしくは酵母細胞上に提示する方法(yeast surface display; Kieke et al., 1997 Protein Eng. 10(11):1303−10)、または、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun, 1997 Proc Natl Acad Sci U S A. 94(10):4937−4942; He and Taussig, 1997 Nucleic Acids Res. 25(24):5132−5134)、cisディスプレイ(Odegrip et al., 2004 Proc Natl Acad Sci U S A. 101(9):2806−2810)もしくはmRNAディスプレイ等の無細胞選択システムを、適用できる。後者の場合、遺伝子型および表現型の一過性の物理的な結合が、リボソームを介して、適切なmRNAへのタンパク質変異体の連結により達成される。
【0139】
前記ファージディスプレイ法において、ユビキチンの組換え変異体は、繊維状ファージ上に提示される。一方、この変異体のコードDNAは、一本鎖の形状でファージエンベロープパッケージされ、同時に提示される。このため、親和性濃縮の枠組みにおいて、所定の特性を有する変異体を、ライブラリーから選択でき、その遺伝情報を、それぞれ、適切な細菌に感染させることにより増幅でき、また異なる濃縮サイクルに添加できる。ファージ表面での変異したユビキチンの提示は、アミノ末端シグナル配列、好ましくはPelBシグナル配列、および、前記ファージのカプシドまたは表面タンパク質への遺伝子融合により達成され、カプシドタンパク pIIIまたはそのフラグメントのカルボキシ末端融合が好ましい。また、コードされた融合タンパク質は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによる検出および/または精製のためのアフィニティータグもしくは抗体エピトープ、または、前記親和性濃縮過程における融合タンパク質の特異的切断のためのプロテアーゼ認識配列等のさらなる機能性成分を含んでもよい。また、例えば、ユビキチン変異体の遺伝子およびファージカプシドタンパク質またはそのフラグメントのコード領域の間に、アンバー停止コドンを存在させてもよい。前記アンバー停止コドンは、1つのアミノ酸の導入により、部分的に、適切なサプレッサー株における翻訳の際に認識されない。
【0140】
ED−Bへの結合特性を有するユビキチン変異体の単離に関する選択工程に適切であり、前述の融合タンパク質の遺伝子カセットが挿入された細菌ベクターは、ファージミドという。中でも、繊維状ファージの遺伝子間領域(例えば、M13もしくはf1)、または、その部分を含む。例えば、M13K07等のヘルパーファージによる前記ファージミドを輸送する細菌細胞の重複感染の際、ファージカプシド中に、ファージミドDNAの閉鎖鎖がパッケージングされる。このようにして発生したファージミドは、細菌により分泌され、前記カプシドタンパク質 pIIIまたはそのフラグメントとの融合により、コードされた各ユビキチン変異体を、細菌表面に提示する。本来のpIIIカプシドタンパク質は、適切な細菌株への再感染できるように、ファージミドに存在する。このため、対応するDNAの増幅の可能性は、保持される。このため、前記ユビキチン変異体の表現型、すなわち、潜在的な結合特性とその遺伝子型との間の物理的な結合が、確保される。
【0141】
得られたファージミドを、当業者に公知の手法により、ファージ上に提示されたユビキチン変異体のED−Bへの結合により選択できる。このために、前記提示されたユビキチン変異体は、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一次的に固定化され、結合しない変異体を分離した後に、特異的に溶出し得る。前記溶出は、例えば、100mM トリエチルアミン等の基本溶液により行うことが好ましい。また、前記溶出は、酸性条件下で、タンパク質分解または感染細菌の直接添加により行うことができる。このようにして、得られたファージミドは、ED−Bへの結合特性を有するユビキチン変異体の、連続的な選択サイクルおよび増幅サイクルにより、再度増幅され、濃縮され得る。
【0142】
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、ファージミドの形態、すなわち、ファージに融合され、または、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、可溶性のタンパク質の形態で行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、または前記文献に記載されている。前記特性評価は、例えば、単離された変異体の一次配列のDNA配列の決定を含んでもよい。また、単離された変異体の親和性および特異性は、例えば、標準的な生化学的方法、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、超遠心分析法、またはその他の方法により検出できる。安定性分析については、例えば、化学的または物理的変性についての分光法が、当業者に公知である。
【0143】
リボソームディスプレイ選択法
本発明のさらなる実施形態において、ユビキチン変異体のリボソームディスプレイ法を、無細胞転写/翻訳系の手法により準備し、対応するmRNAおよびリボソームが複合体として提示される。このために、前述のDNAライブラリーは、基礎として使用され、変異体の遺伝子は、対応する発現およびタンパク質生合成の制御配列との融合の形態で提示される。前記遺伝子ライブラリー3’末端での前記停止コドンの欠失、および、初期の3つのタンパク質からなる複合体に適した実験条件(低温、高濃度のMg2+)により、前記mRNAリボソームは、in vitroでの転写/翻訳中において維持される。
【0144】
各単量体ユビキチンユニットにおける選択されたアミノ酸の異なる修飾により、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質を含むタンパク質ライブラリーが確立された後に、本発明によれば、前記修飾二量体は、結合親和性を有する場合には、ED−Bに接触され、パートナー同士の結合を可能にする。これらのタンパク質ライブラリーは、前記修飾タンパク質と前記ED−Bターゲットタンパク質との間で接触可能な方法で、前記修飾タンパク質を提示する任意の他の方法をディスプレイし、または使用する、ディスプレイ法ライブラリーの形態でもよい。前記ディスプレイ法は、任意に、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、TATファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイまたはmRNAディスプレイ法である。
【0145】
10−7〜10−12Mの範囲のKdの特異的結合親和性によるED−Bへの結合活性に関して、修飾ユビキチン変異体の選択を、当業者に公知の方法により行うことができる。このために、例えば、リボソーム複合体で提示される前記ユビキチン変異体は、それぞれ、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一時的に固定化され、または、溶液中で結合した後に磁性粒子に結合され得る。非結合変異体の分離に続けて、結合活性を有する変異体の遺伝子情報を、リボソーム複合体の破壊により、mRNAの形態で特異的に溶出できる。前記溶出は、50mM EDTAで行うのが好ましい。このようにして得られた前記mRNAは、単離され、適切な方法を使用してDNAに逆転写され(逆転写反応)、このようにして得られた前記DNAは、再度増幅され得る。
【0146】
in vitroでの転写/翻訳、選択および増幅の連続サイクルにより、所定のハプテンまたは抗原に結合特性を有するユビキチン変異体を、濃縮できる。
【0147】
ED−B結合タンパク質の特性評価
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、前述のように、可溶性のタンパク質の形態で行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、前記文献に記載されている。
【0148】
好ましくは、所定の結合パートナーに対する結合親和性を有するタンパク質の検出工程の後に、検出されたタンパク質の単離工程および/または濃縮工程が続く。
【0149】
前記本発明の修飾ユビキチンタンパク質の発現に続いて、それ自体公知の方法によりさらに、精製および濃縮される。前記選択された方法は、例えば、使用する発現ベクター、宿主組織、使用する意図した領域、タンパク質の大きさ、およびその他の要因等、それ自体当業者に公知の複数の要因により決定される。簡易に精製するために、前記本発明の修飾タンパク質は、分離材料への高い親和性を有する他のペプチド配列に融合させることができる。ユビキチンタンパク質の機能性に有害な効果を有さないか、または、特定のプロテアーゼ切断部位の導入により精製後に分離可能な融合が、好ましく選択される。このような方法は、それ自体当業者に公知である。
【0150】
図面の簡単な説明
図1は、種々の腫瘍におけるED−Bの発生を列記した表を示す。
【0151】
図2は、ED−Bへの驚くほど強力な結合親和性を有することが見出された、さらなる16種類の配列のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。前記コンセンサスアミノ酸部位は、前記第1単量体の結合決定領域である、2、4、6、62、63、64、65、66位である。一方、コンセンサスアミノ酸置換は、Q2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sである。図2に示すように、4種類のファミリーの配列を濃縮できた(コンセンサス配列、文字サイズはアミノ酸の発生頻度に対応する)。85および87位は、前記ヘテロ二量体タンパク質において、前記第2単量体における6および8位に対応する部位であり、141〜145位は、62〜64位に対応する。暗青色で示したTWHNFKLSは、1071−C12由来である。赤色で示した残基は、前記4種類のファミリーの配列のうちの1種類に属する。赤色で示した残基が、主に濃縮され(178/457配列)、HIT ELISAによれば、最も強力な結合分子を含む。
【0152】
図3は、親和性を向上させた四量体化を示す。修飾ユビキチン単量体からなる四量体と比較した、修飾ユビキチン単量体のKd値を、表に示す。ユビキチン変異体5E1および1H4を、例として示す。ED−B結合を、c−FN(細胞性フィブロネクチン)への結合と比較する。前記図は、前記単量体(5E1は4.51μM、1H4は9.98μM)と比較したターゲットであるED−Bへの四量体変異体(例えば、5E1は56nM、1H4は1.4nM)の結合において、親和性が著しく高いことを示している。
【0153】
図4は、ヘテロ二量体を発生させる、前方(第1)修飾ユビキチン単量体(BDR1を有する)と異なる修飾がされた後方(第2)ユビキチン単量体(BDR2を有する)との遺伝子組み換えが、親和性および特異性を有意に向上させることを示す。細胞および組織切片に結合する前記修飾ユビキチン分子を、Biacore、蛍光偏光測定により分析した。ヒトED−Bへの複数の変異体の結合の濃度依存性ELISA(conc.−ELISA)を示す。
【0154】
図4Aは、単量体41B10についての、Kd=9.45μMの結合親和性を示す。
【0155】
図4Bは、41B10が異なる第2単量体と結合して得られた46H9についての、Kd=131nMの結合親和性を示す。
【0156】
図5は、サイトカイン(例えば、TNFα)と融合した特異的変異体を示す。前記融合タンパク質は、前記修飾ユビキチン単量体を三量体形成し、生物学的に活性な分子である。
【0157】
図5Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合エフェクター融合タンパク質の模式図である。同図において、緑色(上部の構造)は、エフェクター、例えば、サイトカイン、好ましくは、TNFα;茶色、薄い茶色は、前記修飾ユビキチン単量体(Affilin(登録商標))である。
【0158】
図5Bは、前記修飾ユビキチンエフェクター接合5E1−TNFコンジュゲートが、アポトースシス促進活性(L929アポトーシスアッセイで測定)を有すること示す。
【0159】
図5Cは、1H4−TNFα融合物のED−Bへの結合親和性(Kd=15.1nM)が高いことを示す(一致した線により連結された黒丸)。BSAへの結合をコントロールとしてプロットした(線により連結されていない黒丸)。
【0160】
図6は、サイトカイン、例えば、TNFαに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
・修飾ユビキチンベースのED−B結合サイトカイン融合物のアポトーシス誘導活性:EC50 0.78±0.24pM
・遊離サイトカインのアポトーシス誘導活性:EC50 3.14±3.59pM
【0161】
図6Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd 50.7nM)。
【0162】
図6Bは、遺伝学的にサイトカインTNFαに融合し、前記ヘテロ二量体24H12が多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd=5.6nM)。
【0163】
図6Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体クローン9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。細胞基質のフィブロネクチンをコントロールとして使用した場合と比較して、ターゲットであるED−Bに対して、Kd ELIZA値が向上され、前記ターゲットへの特異的結合が確認された。
【0164】
図6Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜15μM 9E12)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、前記ヘテロ二量体変異体9E12とED−Bとの間の相互作用を分析するチップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析した。会合解離曲線の分析からは、Kdを、決定できなかった。
【0165】
図6Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜15μM 41B10)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、前記ヘテロ二量体変異体41B10とED−Bとの間の相互作用を分析するチップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、623nM(623×10−9M、6.2×10−7M)であった。
【0166】
図7は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。前記異なる変異体は、小文字でマークされる共通の配列モジュールを共有する。前記変異体について、ED−B結合を分析した。図7は、修飾ユビキチンへテロ二量体が得られる、単量体の種々の組み合わせを示す。ヘテロ二量体変異体46−A5、50−G11および46−H4は、すべて同一の、BDR1を有する第1(前方)修飾単量体(同図において、「a」で示す)を有するが、第2(後方)ユビキチン単量体は、BDR2における異なる部位が修飾されている。変異体52−D10および52−B3は、BDR1を有する46−H9と比較して、異なる第1(前方)修飾単量体を有し、BDR2を有する同一の第2(後方)ユビキチン単量体(同図において、「e」で示す)を有している。
【0167】
前記修飾ユビキチンヘテロ二量体は、下記配列を有する:
46−H4:配列番号25、45−H9:配列番号26、46−A5:配列番号27、50−G11:配列番号28、52−B3:配列番号29、52−D10:配列番号30。
【0168】
実験過程において、配列LEHHHHHH(配列番号31)を有するHisタグにより、前述の配列を修飾した。
【0169】
図7に示すように、46−H4は、ED−Bへの優れた結合親和性を有する(Kd=189nM)。46−A5および52−D10は、結合活性を有さない。また、他の修飾ユビキチンタンパク質は、ED−Bへの結合活性が46−H4と比較して低い。したがって、ヘテロ二量体変異体における両単量体が、ターゲットへの高い結合親和性のために必要とされると結論付けることができ、両単量体がターゲットに対する一価の結合を示す。
【0170】
高いED−B結合活性を有する前記修飾ユビキチンヘテロ二量体46−H9は、前記2つの単量体の両結合ドメイン領域における下記のアミノ酸置換により、野生型ユビキチン単量体と比較して同定される。
前記第1モジュール(BDR1)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64A、S65T、T66L
前記第2モジュール(BDR2)において、(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
50G11
前記第1モジュール(46H9)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュールにおいて、(c)K6M、L8R、Q62M、K63N、E64A、S65R、T66L
46H4
前記第1モジュール(46H9)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュールにおいて、(d)K6G、L8W、Q62T、K63Q、E64Q、S65T、T66R
52B3
前記第1モジュールにおいて、(g)Q2R、F4P、K6Y、Q62P、K63P、E64F、S65A、T66R
前記第2モジュール(46H9)において、K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
52D10(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュールにおいて、Q2V、F4C、K6R、Q62T、K63A、E64P、S65G、T66D
前記第2モジュール(46H9)において、(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
46A5(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュール(46H9)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュールにおいて、(b)K6L、L8M、Q62L、K63A、E64F、S65A
【0171】
図8は、配列アライメントを示す。1行目:野生型ユビキチンタンパク質の2つの単量体(1行目)は、77位から88位までの12個のアミノ酸のリンカーSGGGGSGGGGIGにより結合される。BDR2を有する第2単量体は、89位のメチオニンから始まる。この二量体野生型ユビキチンタンパク質は、第1単量体および第2単量体の2つのBDRにおいて異なる修飾を有する、前記修飾へテロ二量体変異体46−H9(2行目)で整列されている。ターゲットへの一価の結合のために、両BDRは、ターゲットとの結合において、共に作用する。
【0172】
図9は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。前記第2単量体の最後のC末端アミノ酸において、グリシンからアラニンに置換されている。3行目は、二量体である野生型ユビキチンであり、リンカーアライメントを示さない(このため、77位のメチオニンから第2単量体が開始する)、「Ubi−Dimer wt」を示す。4行目は、ヒトの野生型ユビキチンである「Ubi−Monomer wt」を示す。
【0173】
図10は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。変異体1041−D11は、非常に高いED−Bへの結合親和性を示す(Kd=6.9nM=6.9×10−9M)。ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89−t0という)への結合親和性を示すことを、黒丸で示し、この変異体が、ネガティブコントロール(6789−t0という)には結合しないこと(白丸)と比較する。
【0174】
図11は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11は、非常に高いED−Bへの結合親和性を示す(IC50=140nM)。
【0175】
図12は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜200nM 1041−D11)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、SAチップ(Biacore)に固定化された、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89という)への結合を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、1nM(1×10−9M)であり、1041−D11とED−Bとの複合体の長期間における半減期を示すkoff率は、7.7×10−4s−1であった。
【0176】
図13は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。マウス血清もしくはラット血清またはコントロールとしてのPBST中での、37℃で1時間での前記変異体のプレインキュベーション等について、種々の条件を示す。Kd値は、すべて10〜20nMである。したがって、ED−Bへの前記ヘテロ二量体1041−D11の結合は、血清による顕著な影響を受けないと結論付けることができる。
【0177】
図14は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【0178】
図14Aは、1041−D11とED−Bとの複合体形成を示す。3回のHPLCのランを重ねている。SE−HPLC後の、保持時間21.651分の青色のピークは、純粋な1041−D11に由来し、保持時間26.289分の黒色のピークは、フィブロネクチンフラグメント67B89を表し、保持時間21.407分の赤色のピークは、1041−D11と67B89との混合物の結果を示す。1041−D11のピークの保持時間が短くなる側へのシフト、および、67B89のピークの消失は、1041−D11と可溶性ED−Bとの複合体の形成を示す。
【0179】
図14Bは、3回のSE−HPLCのラン、1041−D11(青色、21.944分)、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789(黒色、26.289分)および1041−D11と6789との混合物(21.929分および26.289分にピークを有する赤色線)を重ねて示す。前記1041−D11のピークのシフトは、ほとんど観察されなかった。6789のピークが消失しなかったこととあわせて、この事実は、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789に、有意に結合しないことを示す。
【0180】
図15は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の培養細胞への結合を示す。
【0181】
図15Aは、固定化されたヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。図15において、1列目は、抗ED−B抗体を使用したコントロールを示し、2列目は、タンパク質濃度58.7nMでの変異体のインキュベーションを示し、3列目は、10倍高濃度(587nM)の1041−D11タンパク質でのインキュベーションを示し、4列目は、PBSでのネガティブコントロールである。1行目において、ヒトWi38繊維芽細胞を、位相差で示し、2行目において、免疫蛍光法で示し、3行目において、核のDAPI染色を示す。前記変異体1041−D11は、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、Wi38に結合すると結論付けることができる。EDBを低レベルで発現するNHDF細胞を使用するコントロールを行った(データ示さず)。前記変異体は、それらの細胞には結合しなかった。
【0182】
図15Bは、バイタル(vital)ヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への結合を示す。前記ネガティブコントロールのNHDF細胞は、主要な正常繊維芽細胞であり、EDB−フィブロネクチンを低レベルで発現する。1行目および3行目は、種々のタンパク質濃度での変異体およびネガティブコントロールを示す。2行目および4行目は、EDB抗体を使用するコントロールのインキュベーションを示す。1〜2行目は、前記変異体とWi38細胞株へのポジティブコントロールを示す。3〜4行目は、NHDF細胞のインキュベーションを示す。前記変異体1041−D11が、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、Wi38に結合するのが観察できた。
【0183】
図15Cは、固定化されたマウスBalb 3T3細胞への結合を示す。前記変異体について、3つの異なるタンパク質濃度(1、10、50nM)でテストした。1行目は、細胞への前記変異体(SPVF−28−1041−411−TsX9)を示し、2行目は、ポジティブコントロール(Fv28−EDB−抗体)を示し、3行目は、ネガティブコントロール(UB2_TsS9;配列番号1に相当する非修飾ユビキチン)でのインキュベーションを示す。前記変異体1041−D11が、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、マウスBalb 3T3細胞に結合するのが観察できた。
【0184】
図15Dは、固定化されたマウスST−2細胞への結合を示す。前記変異体について、3つの異なるタンパク質濃度(1、10、50nM)でテストした。1行目は、細胞への前記変異体(SPVF−28−1041−411−TsX9)を示し、2行目は、ポジティブコントロール(Fv28−EDB−抗体)を示し、3行目は、ネガティブコントロール(UB2_TsS9;配列番号1に相当する非修飾ユビキチン)でのインキュベーションを示す。前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11が、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、マウスBalb ST−2細胞に結合するのを観察できた。
【0185】
図16Aは、哺乳類組織切片における、ターゲットへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の特異性を示す。7つの検体からのF9腫瘍細胞について、評価した。10nM〜100nMの範囲の異なる濃度でのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の免疫組織学的検査において、マウス由来のF9腫瘍でのED−B特異的血管染色(vascular staining)を示した。ED−Bは、腫瘍血管構造の高特異的マーカーである。ターゲットタンパク質であるED−Bは、血管の反管腔側に局在する。変異体1041−D11は、特異的にF9腫瘍由来の組織切片において、血管構造を装飾する。得られた結果は、抗体フラグメントL19に匹敵する。さらに、48組織をテストした。FDA関連パネルにおける48通りの組織について、非特異的な染色は観察されなかった。
【0186】
図16Bは、野生型ユビキチン(同図において、Ub2(NCP2))との比較における、腫瘍組織での1041−D11の蓄積を示す。F9腫瘍組織について、30分から16時間の間の異なる時点で、1041−D11および野生型ユビキチンの存在を分析した。腫瘍組織における1041−D11の最も高い蓄積は、投与後30分および16時間で観察された。一方、F9腫瘍組織における野生型ユビキチンの蓄積は、低かった。前記変異体は、野生型ユビキチンと比較して、ED−Bを発現する腫瘍に濃縮される。このことは、腫瘍組織への1041−D11の直接的ターゲッティングの証拠となる。また、癌モデルにおける腫瘍への1041−D11のblood−ratioは、動物における1041−D11変異体in vivo活性を明らかに証明している(データを示さず)。
【0187】
図17は、TNFα融合タンパク質1041−D11のED−Bに対する高い選択性および特異性を示す。
【0188】
図17Aおよび17B:1041−D11TNFα融合タンパク質におけるTNFαのアポトーシス誘導活性を、細胞ベースアッセイ(cell based assay)(L929細胞)によりテストした。前記両図は、前記1041−D11−TNFα融合タンパク質(図17B)が、遊離TNFαと同程度に活性であることを、明らかに示している。
【0189】
図17Cは、ターゲットであるED−Bへの、ヘテロ二量体ユビキチン1041−D11TNFα融合タンパク質の高い選択性を証明している。前記ヒトED−Bフィブロネクチンドメイン67B89は、1041−D11変異体に、見かけのKD値1.8nMで結合され(黒丸)、ターゲットへの高い親和性を示す。ED−Bドメインを欠損するヒトフィブロネクチン(h6789)は、1041−D11TNFαに結合されない(白丸)。
【0190】
図17D+Eは、修飾ユビキチンED−B結合1041−D11TNFα融合タンパク質についての、Biacoreアッセイによる結合分析を示す。結果から、KD値1.13nMを示す1041−D11TNFα融合タンパク質の高い親和性が証明された。
【0191】
図17Fは、培養細胞における変異体1041−D11で観察された高い結合特異性が、1041−D11がTNFαに融合されても維持されることを示す。前記融合タンパク質は、EDB発現細胞に特異的に結合する。したがって、1041−D11TNFα融合タンパク質は、非常に高い親和性および特異性でターゲットであるED−B(ターゲット(+))に結合する。ED−Bを含まない血清(ターゲット(−))では、交差反応は観察されなかった。
【0192】
図18は、TNFαに融合した変異体1041−D11とメルファランとの併用による、7日間のマウスの処置期間中のin vivoでの相対的腫瘍成長を示す。データから、細胞増殖抑制剤であるメルファランと組み合わせた1041−D11−TNFαは、mTNFαとメルファランとの組み合わせ、またはメルファラン単独の場合より効果的に、相対的腫瘍成長を減少させることが、明らかに示された。7日間の処置後の前記腫瘍成長は、1041−D11−mTNFαによる高効率での減少を示す。このことは、融合タンパク質1041−D11−TNFαとメルファランとの併用による腫瘍治療の効能の明らかな証拠である。ED−Bは、マウスおよびヒトを含む、種々の哺乳類において同一である。このため、前記結果から、ヒトにおける変異体1041−D11−TNFαの性能が、予測される。
【実施例】
【0193】
下記実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものである。本発明は、特に、ユビキチンの修飾を例にあげて実証されている。しかし、本発明は、これに限定されず、以下の実施例は、単に、前述の記載に基づいた本発明の実施可能性を示しているにすぎない。本発明の完全な開示のため、本願および付属書類に引用されている文献についても言及しているが、これらの引用文献は全て、引用により、その開示全体が本願に取り込まれている。
【0194】
[実施例1]
修飾ユビキチンタンパク質に基づくヘテロ二量体ED−B結合タンパク質の同定
【0195】
ライブラリーの構築とクローニング
特に示さない限り、例えば、Sambrook et alに記載されているような、確立された組換え遺伝学的手法を使用した。合計15の選択されたアミノ酸部位における協調した変異誘発によって、高度な複雑性を有するヒトユビキチンヘテロ二量体のランダムライブラリーを用意した。NNKトリプレットによって置換された修飾アミノ酸は、近位(第1)ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸、および遠位(第2)ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸を含む。両ユビキチン単量体は、少なくともGIG配列、または少なくともSGGGG配列を有するグリシン/セリンリンカーによって遺伝的に結合(ヘッドトゥテイル配置)しており、リンカー配列の例としては、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIG(配列番号32)またはSGGGGSGGGGがあげられるが、その他のリンカーでもよい。
【0196】
TATファージディスプレイ選択
ヘテロ二量体ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてTATファージディスプレイを使用し、ターゲットに対して濃縮した。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットは、タンパク質結合表面上に、またはタンパク質に共有結合されたビオチン化残基を介して、非特異的に固定化され得る。ビオチンを介するストレプトアビジンビーズまたはニュートラアビジンストリップ上への固定化が好ましい。ターゲット結合ファージは、溶液中または固定化ターゲット上のいずれかにおいて選択される。例えば、ビオチン化され固定化されたターゲットとファージとを、インキュベートし、続いて、マトリックスに結合したファージの洗浄およびマトリックス結合ファージの溶出を行う。ターゲットのインキュベーションに続く各サイクルにおいて、前記ビーズを磁力により溶液から分離し、数回洗浄した。最初の選択サイクルにおいて、ビオチン化ターゲットを、ニュートラアビジンストリップに固定化し、一方、2回目から4回目のサイクルにおいて、溶液における選択を行い、続いて、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)上に、ターゲットとファージとの複合体を固定化した。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のファージを、酸性溶液での溶出により遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のファージ溶出を行った。溶出したファージを再増幅した。バインダーの特異性を誘導するため、選択に際し、ターゲットに類似するタンパク質を含めてもよい。
【0197】
TATファージディスプレイ選択の代替:リボソームディスプレイ選択
ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてリボソームディスプレイを使用して、ターゲットに対して濃縮した(Zahnd et al., 2007、Ohashi et al., 2007)。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットを、標準的な方法によってビオチン化し、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)に固定化した。リボソーム、mRNAおよび新生ユビキチンポリペプチドを含む三元複合体を、PURExpres(登録商標) In Vitro Protein Synthesis Kit(NEB社製)を用いて構築した。選択の一次ラウンドを2回行い、三元複合体をインキュベートし、続いて、類似する選択のラウンドを2回行った。ターゲットインキュベーションに続く各サイクルにおいて、ビーズを磁力により溶液から分離し、ストリンジェンシーを増加させながら、リボソームディスプレイバッファーで洗浄した。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、前記ビーズを再度磁力により溶液から分離し、50mM EDTAの添加により、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のmRNAをリボソームから遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のmRNAの溶出を行った(Lipovsek and Pluckthun, 2004)。各サイクルの後、RNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen社製、ドイツ)、Turbo DNA−free Kit(Applied Biosystems社製、アメリカ)、およびTranscriptor Reverse Transcriptase(Roche社製、ドイツ)を用いて、RNAの精製とcDNAの合成を行った。
【0198】
濃縮プールのクローニング
4回目の選択サイクルの後、合成cDNAを、F1プライマー(GGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATG)(配列番号9)およびWUBI(co)RD_xhoプライマー(AAAAAAAAACTCGAGACCGCCACGCAGACGCAGAACCAG)(配列番号10)を用いたPCRにより増幅し、制限ヌクレアーゼNdeIおよびXhoI(Promega社製、アメリカ)で切断し、適合性付着端を介して発現ベクターpET−20b(+)(Merck社製、ドイツ)に連結した。
【0199】
単一コロニーのヒット解析
NovaBlue(DE3)細胞(Merck社製、ドイツ)への形質転換の後、アンピシリン耐性単一コロニーを、200μl SOBAG培地(100μg/ml アンピシリンおよび20g/l グルコースを含むSOB培地)において、37℃で6時間培養した。500μlの自己誘導培地ZYM−5052(Studier社製、2005)を用い、96ディープウェルプレート(Genetix社製、イギリス)において、37℃で16時間培養することにより、ED−B結合修飾ユビキチンを発現させた。4℃、3600×gで、15分間遠心分離して、細胞を回収した。その後、ウェルあたり300μlの溶解バッファーを用いて、37℃で30分間インキュベートし、前記細胞を溶解した。前記溶解バッファーは、0.2×BugBuster(登録商標)(Merck社製、ドイツ)、0.3mg/mlリゾチーム(VWR社製、ドイツ)、0.2mM PMSF(Roth社製、ドイツ)、3mM MgCl2および0.2U/ml Benzonase(VWR社製、ドイツ)を含む、50mM NaH2PO4、300mM NaCl(pH8)とした。4℃、3600×gで、30分間遠心分離した後、得られた上清を、4μg/ml ED−B、およびセイヨウワサビぺルオキシダーゼ(POD)とのユビキチン特異的FabフラグメントコンジュゲートでコートしたNunc MediSorp plates(Thermo Fisher Scientific社製、アメリカ)を用いて、ELISAによりスクリーニングした。検出試薬としてTMB−Plus(Biotrend社製、ドイツ)を用いた。ウェルあたり50μlの0.2M H2SO4溶液を用いて、黄色を発色させ、プレートリーダーにおいて450nmと620nmを測定した。
【0200】
通常、数回、例えば、4サイクルの選択ディスプレイを、ED−Bに対して行った。最後の2サイクルの選択において、結合分子を、過剰量の遊離ED−Bを用いて溶出した。これらのED−B結合変異体を、他のものとの間で同定した。
46H9配列
MGIVVRTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIPHPTLLHLVLRLRGGSGGGGSGGGGIGMQIFVHTMTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIKPIAELHLVLRLRGG(配列番号6)
9E12配列
MRIPVYTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIPPFARLHLVLRLRGGSGGGGSGGGGIGMQIFVMTRTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIMNARLLHLVLRLRGG(配列番号7)
22D1配列
MLILVRTLTDKTITLEVEPSDTIGNVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNISVGAMLHLVLRLRGGSGGGGSGGGGIGMQIFVLTWTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIRRLPPLHLVLRLRGG(配列番号8)
【0201】
野生型ユビキチン単量体(Ubi monomer wt)と野生型ユビキチン二量体(ubi dimer wt)、野生型ユビキチンタンパク質(図9におけるUb2−TsX、各単量体の45位の置換およびC末端に2つの置換を有する)、および修飾ユビキチンヘテロ二量体変異体1041−D11との配列アライメントを、図9に示す。デユビキチナーゼは、ユビキチンのGGの後ろを切断し、AAの後ろを切断しないため、Ub2−TsXにおいて、前記単量体のC末端の置換(GGからAA)は、血清における安定性を増加させる。野生型ユビキチンの二次構造は、前記C末端における置換を有するユビキチンと比較して、ほぼ同一である。
【0202】
1041−D11(図9、配列番号36)または1045−D10と呼ばれる、優れたED−B結合親和性を有する修飾ユビキチンは、野生型と比較して、後述のアミノ酸置換によって同定される。
第1モジュール
K6W、L8W、K63R、E64K、S65F、T66P
第2モジュール
K6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65W、T66E
任意に、Q2R(当該置換は、変異体1041−D11に存在し、変異体1045−D10には存在しない)
融合タンパク質に適した好ましいリンカーは、配列番号32のリンカーまたはGIG配列のリンカーである。ただし、代わりに使用できる、多くのリンカーが考えられる。
【0203】
さらに好ましい例として、下記の配列のタンパク質(配列番号47)が提示され、前記配列において、前記配列のXXXXは、どのようなアミノ酸でもよい。リンカーとして、ここでは、SGGGGSGGGGIGが使用される(イタリックで示す)。ただし、他の種類のリンカー、またはリンカーなしも、代替可能である。
【化2】
タンパク質の例と、これらの配列とのコンセンサス配列は、図2に示す。
【0204】
[実施例2]
ED−B結合修飾ユビキチン変異体とヒトTNFα(hTNFα)からの融合タンパク質の生成
【0205】
前記変異体を、修飾ユビキチン、例えば、ヘテロ二量体変異体1041−D11と、マウスまたはヒトTNFαとの間の融合タンパク質として、大腸菌内で発現させる。融合タンパク質のタンパク質解析は、タンパク質発現と純度、非凝集能、細胞培養におけるTNFα活性、ターゲットタンパク質ED−Bへの親和性、選択性、細胞培養における特異的結合を含む。F9腫瘍を有するマウスにおける腫瘍の縮小を誘導するための動物実験における必須条件は、マウスTNFαとの融合物である。
【0206】
工程1:融合タンパク質のクローニングのためのベクターの生成(pETSUMO−TNFα)
pETSUMOadaptは、修飾ベクターpETSUMO(Invitrogen社製)であり、付加マルチクローニングサイト(MCS)の挿入によって修飾されている。pETSUMOadaptへのTNFαのクローン化から開始し、ED−Bに結合する修飾ユビキチン変異体を挿入するための制限部位を導入した。得られた構築物は、下記DNA配列(配列番号11)の構造体His6−SUMO−TNFαの構造を有する。
ATGGGCAGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCAGCGGCCTGGTGCCGCGCGGCAGCGCTAGCATGTCGGACTCAGAAGTCAATCAAGAAGCTAAGCCAGAGGTCAAGCCAGAAGTCAAGCCTGAGACTCACATCAATTTAAAGGTGTCCGATGGATCTTCAGAGATCTTCTTCAAGATCAAAAAGACCACTCCTTTAAGAAGGCTGATGGAAGCGTTCGCTAAAAGACAGGGTAAGGAAATGGACTCCTTAAGATTCTTGTACGACGGTATTAGAATTCAAGCTGATCAGACCCCTGAAGATTTGGACATGGAGGATAACGATATTATTGAGGCTCACAGAGAACAGATTGGTGGTGTGCGTAGCAGCAGCCGTACCCCGAGCGATAAACCGGTGGCGCATGTGGTGGCGAATCCGCAGGCGGAAGGCCAGCTGCAGTGGCTGAACCGTCGTGCGAATGCGCTGCTGGCCAACGGCGTGGAACTGCGTGATAATCAGCTGGTTGTGCCGAGCGAAGGCCTGTATCTGATTTATAGCCAGGTGCTGTTTAAAGGCCAGGGCTGCCCGAGCACCCATGTGCTGCTGACCCATACCATTAGCCGTATTGCGGTGAGCTATCAGACCAAAGTGAACCTGCTGTCTGCGATTAAAAGCCCGTGCCAGCGTGAAACCCCGGAAGGCGCGGAAGCGAAACCGTGGTATGAACCGATTTATCTGGGCGGCGTGTTTCAGCTGGAAAAAGGCGATCGTCTGAGCGCGGAAATTAACCGTCCGGATTATCTGGATTTTGCGGAAAGCGGCCAGGTGTATTTTGGCATTATTGCGCTGTAATAA
【0207】
TNFα配列を、BamHIおよびXhoI部位の導入により、PCRで増幅した。
使用したプライマーは、以下の通りである。
【化3】
前記fwプライマー(配列番号12)は、TNFαの最初の15塩基対(下線部)を認識し、BamHI配列(太字部)を有する。前記revプライマー(配列番号13)は、TNFαの最後の塩基対、終止コドン(下線部)およびXhoI制限部位(太字部)を含む。
【0208】
PCR反応ミックス(100μl)
84.5μl H2O;
10μl 10×Pwoバッファー+Mg;
2μl 10mM dNTPs(=200μM);
各0.5μl 100μM プライマーfw/rev(=各0.5μM);
2μl DNA(=0.25μg);
0.5μl Pwoポリメラーゼ(=2.5U;Roche)
【0209】
PCRプログラム
94℃で3分、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分(工程2〜4:30サイクル)、72℃で5分、続いて4℃で処理し、続いて、Qiagen−MinElute−Kit(10μl EBに溶出)によるPCR産物の精製を行った。前記PCR産物を、BamHI−XhoI制限およびライゲーションにより、ベクターpETSUMOadaptのMCSに導入した。
【0210】
制限ミックス(100μl)
ベクター:83μl H2O;
10μl 10×NEバッファー3;
1μl 100×BSA;
3μl BamHI(=30U;NEB),
1.5μl XhoI(=30U;NEB);
1.65μl ベクター;
3h、37℃でインキュベーション
PCR産物:76.5μl H2O;
10μl 10×NEバッファー3;
1μl 100×BSA;
3μl BamHI(=30U;NEB),
1.5μl XhoI(=30U;NEB);
8μl 挿入断片;
3h、37℃でインキュベーション
1%アガロースゲル(100V、60分間ラン)において制限ミックスを分離;
切断されたベクターフラグメント(5659bp)と挿入断片(491bp)を、Qiagen gel extraction kitで精製(30μl EBに溶出)。
【0211】
ライゲーション(20μl)
15.2μl H2O;
2μl 10×T4−DNAリガーゼバッファー;
2.26μl ベクター(200ng);
0.54μl 挿入断片(40ng)
5分間、65℃でインキュベーション;
16℃に冷却;
1μl T4−DNAリガーゼ(=3U;NEB)添加;
16時間、16℃でインキュベーション
【0212】
NaAc/イソプロパノール沈殿
ライゲーションミクスチャー(20μl)+2.2μl 3M NaAc(pH5.0)+22.2μl イソプロパノール;
30分間、−20℃;
15分間、4℃、13000Upm;
500μlの70% EtOHにペレットを再懸濁;
スピン;
10μlのH2Oにペレットを再懸濁
【0213】
形質転換
エレクトロコンピテントNovablue(DE3)細胞(40μlアリコート)と10μlのライゲーション産物とを混合;
0.1cm エレクトロポレーションキュベットに移動;
エレクトロポレーターでパルスを印加(1.8kV、50μF、100 Ohm);
37℃、220Upm、45分間、1mlのSOC培地と、溶液とをインキュベート;
カナマイシン含有LBプレートに、100μlを播き、37℃、一晩インキュベーション
【0214】
工程2:修飾ユビキチンベースのEDB融合タンパク質のクローニング
EDB結合修飾ユビキチンベースの変異体とTNFαとの融合物の生成のために、PCRにより、対象であるEDB修飾ユビキチンベースの配列をpET20bベクターから増幅し、BsaIおよびBamHI制限部位を導入する。この方法は、単量体および二量体EDB修飾ユビキチンベースの変異体に好適である。単量体WTユビキチン(Wubi)用のプライマーは、下記のとおりである。
【化4】
【0215】
前記fwプライマー(配列番号14)は、修飾ユビキチンの最初の15塩基対(下線部)を認識し、BsaI配列(太字部)を有する。前記revプライマー(配列番号15)は、修飾ユビキチンの最後の15塩基対を認識し、アミノ酸リンカー(SGGGG配列)およびBamHI制限部位(太字部分)を挿入する。修飾ユビキチンベースの変異体それぞれについて、特異的fwプライマーを使用する。単量体EDB修飾ユビキチンベースの変異体1H4、5E1および4B10のプライマーは、下記のとおりである。
【化5】
【0216】
前記revプライマーは、全ての単量体修飾ユビキチンベースの変異体に使用する。二量体修飾ユビキチンベースの変異体用のrevプライマーは、下記のとおりである。
【化6】
【0217】
二量体WTユビキチン(WubiHubi)のクローニング用および二量体EDB修飾ユビキチンベースの変異体用のfwプライマーは、下記のとおりである。
【化7】
【0218】
PCRミックス(100μl)
84.5μl H2O;
10μl 10×Pwoバッファー+Mg;
2μl 10mM dNTPs(=200μM);
各0.5μl 100μM プライマーfw/rev(=0.5μM);
2μl DNA(変異体により決定);
0.5μl Pwoポリメラーゼ(=2.5U;Roche)
【0219】
PCRプログラム
1.94℃で3分
2.94℃で30秒
3.60℃で30秒
4.72℃で2分(工程2〜4:30サイクル)
5.72℃で5分、続いて4℃
【0220】
アガロースゲルでPCR産物を精製し、必要なバンドを切り出し、Qiagen−gel extraction kitで精製する。BsaI−BamHI制限により、前記PCR産物をクローニングする(pETSUMO−TNFα内に)。
【0221】
制限ミックス(100μl)
75μl H2O;
10μl 10×NEバッファー3;
1μl 100×BSA;
3μl BsaI(=30U;NEB);
8μl DNA(ベクターまたはPCR産物)2時間、50℃でインキュベーション、
10分間、65℃、
3μl BamHIの添加(=30U;NEB)、
2時間、37℃
1%アガロースゲルにおいて制限ミックスを分離;
切断されたベクターフラグメントおよび挿入断片を、Qiagen−gel extraction kitで精製(30μl EBに溶出)。
【0222】
ライゲーション(20μl)
12.5μl H2O;
2μl 10×T4−DNAリガーゼバッファー;
5μl ベクター(66ng);
0.5μl 挿入断片(変異体の種類により変わる)
5分間、65℃でインキュベーション;
16℃に冷却;
1μl T4−DNAリガーゼ(=3U;NEB)添加;
16時間、16℃でインキュベーション
【0223】
NaAc/イソプロパノール沈殿(工程1参照)
【0224】
形質転換
エレクトロコンピテントNovablue(DE3)細胞の形質転換は、前述のとおりである。結果として、下記の融合構築物が得られた。すなわち、His6−SUMO−修飾ユビキチン−SGGGG−TNFαを有するpETSUMOadaptにおけるEDB修飾ユビキチンとTNFαとの融合構築物である(単量体修飾ユビキチンの場合、359個のアミノ酸からなり、二量体修飾ユビキチンの場合、447個のアミノ酸からなる)。
【0225】
[実施例3]
ユビキチンベースのTNFα融合タンパク質の発現と精製
【0226】
DNA配列解析により、SUMO−TNFα融合タンパク質の正しい配列が示された。変異体の発現のために、前培養物をLB/カナマイシンで1:100に希釈し、前記培養液を、600nmの光学密度(OD600)0.5まで、200rpm、37℃で攪拌することで、クローンを振とうフラスコで培養した。発現は、IPTG(最終濃度1mM)の添加で誘導した。30℃、4時間、200rpmで、培養を続けた。4℃、6000×gで20分間遠心分離し、細菌細胞を回収した。前記細胞ぺレットを、ベンゾナーゼおよびリゾチームを含むNPI20バッファー30mlに懸濁した。細胞を、氷上で超音波処理(3×20秒)によって破砕した。懸濁液を、4℃、40000×gで30分間遠心分離した後、可溶性タンパク質を含む上清を得た。両タンパク質を、室温でのアフィニティークロマトグラフィーにより、精製した。Ni−アガロース(5ml、GE Healthcare社製)の一本のカラムを、50mlのNPI−20で平衡化した。可溶性タンパク質を含む前記上清を、前記カラムにアプライし、続いて、NPI−20で洗浄した。前記結合タンパク質を、NPI−20から50%NPI−500(100ml)の直線勾配で溶出した。各画分は、SDS−PAGEにより、その純度を解析した。好適な画分をプールし、SUMOヒドロラーゼ切断バッファー(50mM Tris,300mM NaCl、pH8.0)で平衡化したゲルろ過カラム(Superdex 75、1.6×60cm、GE Healthcare社製)に、流速1ml/分で、アプライした。
【0227】
切断反応は、製造元(Invitrogen社)の使用説明書にしたがって行った。切断後、前記タンパク質をNi−アガロースカラム(5ml、GE Healthcare社製)にアプライした。Hisタグ化SUMOヒドロラーゼおよびHisタグ化SUMOは、前記カラムに結合し、正しい融合タンパク質(Hisタグフリー)は、前記カラムを通過した。前記タンパク質の純度は、rpHPLC解析およびゲル電気泳動によって、証明した。前記三量体(TNFαを介する)が正しい分子量を有することは、分析用SEC解析(10/30 Superdex G75、GE Healthcare社製)を用いて確認した。
【0228】
[実施例4]
修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体のヒトED−Bに対する結合分析
【0229】
実施例4A:濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
ユビキチンベースの変異体のヒトED−Bに対する結合を、濃度依存ELISAによって分析した。精製タンパク質を、ヒトED−B、BSAおよび細胞フィブロネクチン(cFN)でコーティングされた複数のNUNC−medisorpプレートに、量を増加させてアプライした。ウェルあたり抗原50μl(10μg/ml)でのコーティングを、40℃で一晩行った。前記プレートを、0.1% Tween20を含むPBS(pH7.4;PBST)で洗浄した後、前記ウェルを、37℃で2時間、ブロッキング溶液(PBS pH7.4;3% BSA;0.5% Tween20)を用いてブロッキングした。前記ウェルを、PBSTでさらに3回洗浄した。前記ウェルにおいて、異なる濃度の修飾ユビキチンベースのED−B結合タンパク質(50μl量)を、室温で1時間インキュベートした(図10、開始濃度として、500nMの1041−D11タンパク質を使用した)。PBSTで前記ウェルを洗浄した後、抗ユビキチンfabフラグメント(AbyD)PODコンジュゲートを、PBSTに適切に希釈(例えば、1:2000または1:6500)して、アプライした。前記プレートを、ウェルあたり300μlのバッファーPBSTで、3回洗浄した。50μlのTMB基質溶液(KEM−EN−Tec)を各ウェルに加え、15分間インキュベートした。ウェルあたり50μlの0.2M H2SO4を加えて、反応を停止させ、前記ELISAプレートを、TECAN Sunrise ELISA−Readerを用いて読み取った。参照波長を620nmとして、450nmで吸光光度測定を行った。図1は、みかけKD値11nMという、ED−Bに対する1H4の特異的結合を明瞭に示している。変異体5E1は、みかけKD値7.7μM、4B10は、みかけKD値280nMを、それぞれ示している。図10は、変異体1041−D11のED−Bに対する非常に高い結合親和性を示す(KD=6.9nM)。このように、ユビキチン野生型のわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)により、ED−Bに対する非常に高い結合親和性がもたらされる。
【0230】
実施例4B:競合的濃度依存ELISAによる、修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
競合的濃度依存ELISAにより、量が増加する遊離のターゲットの存在下、フィブロネクチンフラグメント(67B89)を含む固定化ED−Bに対するユビキチン変異体1041−D11の結合を分析した。ELISAの条件は、1041−D11タンパク質を、ED−B(67B89)(0μM〜10μM)、またはネガティブコントロール6789(0μM〜10μM)で、1時間プレインキュベートし、その後、その混合物を、Medisorp−plate上に配置したターゲット67B89に添加した以外は、実施例5Aで述べたとおりである。これに続き、前記変異体を、対応する抗体によって検出した(抗ユビキチン−Fab−POD;希釈度1:6500)。図11は、変異体1041−D11が、ED−Bに対して非常に高い結合親和性を有することを示す(IC50=140nM)。図10に示した結果が裏付けられている。すなわち、ユビキチン野生型のわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)のみにより、ED−Bに対する非常に高い結合親和性がもたらされる。
【0231】
実施例4C:結合活性の血清安定性を同時に分析する、濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当該技術分野における公知の方法により、前述(実施例5Aおよび5B)と同様に、ELISAを行った。ED−B(67B89ともいう)を、マイクロタイタープレートにコーティングし、前記変異体を、ED−Bに結合させ、特異的ユビキチン抗体により検出した(抗ユビキチン−Fab−POD)。この分析において、前記変異体は、異なる方法で処理した。すなわち、前記変異体を、37℃で1時間、マウス血清中でインキュベートする処理(図13参照、青丸部分)、前記変異体を、37℃で1時間、ラット血清中でインキュベートする処理(図13、赤丸部分)、または、前記変異体を、37℃で1時間、PBSでインキュベートする処理(図13、黒丸部分)である。図13は、変異体1041−D11の全てのKDが、10.3nM(PBS)から20.74nM(マウス血清)の間にあることを示す。
【0232】
実施例4D:Biacore分析による修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当業者に公知の方法を用いて、CM5チップ(Biacore)に固定化したフィブロネクチンフラグメント(67B89という)を含むED−Bに対する結合について、前記変異体を異なる濃度で分析した(例えば、0〜200nMの変異体、好ましくは1041−D11)。得られたデータは、BIA評価ソフトウェアおよび1:1−Langmuir−fittingにより処理した。図12に示すように、変異体1041−D11のKDは、1.0nMであった。結合速度定数は、kon=7.6×105M−1s−1、koff=7.7×10−4s−1であった。図17Dに示すように、融合タンパク質1041−D11−TNFαのKDは、1.13nMであった。結合速度定数は、kon=4.5×105M−1s−1、koff=5.0×10−4s−1であった。
【0233】
実施例4E:SE−HPLCによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の複合体構造の分析
複合体構造の分析のために、Tricorn Superdex75 5/150 GLカラム(GE−Healthcare社製)(V=3ml)を使用し、50μlのタンパク質をアプライした。さらなる条件は、バッファー:1×PBS(pH7.3)、流速:0.3ml/分、ラン:45分(サンプルの注入:15分後)とした。
【0234】
条件:0.72nmol 1041−D11タンパク質+0.72nmol ED−B(67B89またはネガティブコントロール6789ともいう)を、室温で1時間インキュベートし、複合体構造を分析するために、カラムにアプライした。図14では、前記変異体のみを黒で示し、ターゲットED−Bのみを青で示し、ED−Bとの複合体を構成する変異体結合をピンクで示す。図14Aは、前記変異体を有するED−Bを示す。図14Bは、ED−Bを有さない変異体を示す。同図は、変異体1041−D11が、ED−B(67B89)と複合体を構築するが、6789とは複合体を構築しないことを示す。
【0235】
[実施例5]
TNFαの生物学的分析
【0236】
TNFα修飾ユビキチンベースのED−B結合融合体の生理学的TNFα活性を、L929アポトーシス分析によって決定した(Flick et al.、1984 J. Immunol. Methods. 68:167−175)。この分析では、TNFαが、ピコモル範囲のEC50値で、アクチノマイシンD感受性細胞の細胞死を効果的に促進する。細胞を、FBSと抗生物質を含む培地に再懸濁した。密度3.5×105細胞/mlの細胞懸濁液100μlを、96ウェル標準細胞培養プレートのウェルに播き、加湿したCO2インキュベーターで一晩インキュベートした。その後、前記培養培地を除去し、FBS、アクチノマイシンDおよび抗生物質を含む培地50μlを各ウェルに加え、その後、さらに30分間インキュベートした。その後、50μlのテスト項目と、10−7から10−18Mの適切な濃度範囲のTNFα修飾ユビキチンベースのED−B結合融合体またはヒト組換えTNFαコントロールを添加した。さらに48時間インキュベートした後、細胞生存の尺度である代謝活性を、WST−1試薬(Roche社製)を用いて決定した。
【0237】
1つのテスト項目あたり、少なくとも3通りの独立した実験を行い、各実験は3回行った。TNFα修飾ユビキチンベースのED−B結合融合タンパク質の各テストは、分析間のばらつきの情報を得るために、ヒト組換えTNFαの投与量範囲のテストと並行させた。
【0238】
定量評価は、EC50値、すなわち、半数の細胞の生存を促進するテスト項目濃度による値に基づく。
【表2】
mub:修飾ユビキチンベースのED−B結合
【0239】
修飾ユビキチンベースのED−B結合融合体の、1つのユビキチン単量体構築物(Wubi)および3つのユビキチン二量体構築物のTNFαを分析した。TNFα部分に結合した修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体に依存して、TNFαに関連する活性は、約1桁分増加(SPWF−28_24−H12_TNF−alpha)または減少した(SPWF−28_22−D1_TNF−alpha、Wubi−Hubi−TNF−alpha)。変異体1041−D11 TNFα分析は、図17参照。
【0240】
[実施例6]
細胞培養分析におけるユビキチン変異体の結合分析
【0241】
培養細胞に対する前記変異体1041−D11の結合をテストした。ED−Bが高発現レベルである正常ヒト胎児肺線維芽細胞(Wi38細胞)、マウス胚性線維芽細胞株(Balb 3T3)、マウス骨髄(ST−2)または単球/マクロファージ(RAW264.7)由来のストローマ細胞株、NHDF細胞およびマウス線維芽細胞(LM)を含む、異なる培養細胞を分析した。
【0242】
前記変異体1041−D11(異なる濃度)またはED−B特異的抗体(500nM FV28 CH4/F1 1×PBS)を、Wi38細胞(60000細胞/ml、ATCC由来)とともにインキュベートし(1時間、37℃)、その後、メタノールで固定化し(5分、−20℃)、ブロッキングした(5%ウマ/PBS、1時間)。その後、rabbit−a−Strep−Tag−IgG(GenScript社製 A00875、1:500)とともに1時間インキュベートし、a−rabbit−IgG*Alexa488−AK(Invitrogen社製 A11008、1:1000)とともに1時間インキュベートした。核を、DAPIで染色した。図15Aの1列目は、EDB抗体を用いたコントロールを示し、2列目は、58.7nMのタンパク質濃度での変異体のインキュベーションを示し、3列目は、10倍高濃度(587nM)の1041−D11タンパク質のインキュベーションを示し、4列目は、PBSでのネガティブコントロールである。1行目には、ヒトWi38線維芽細胞を位相差で示し、2行目には、免疫蛍光法を示し、3行目には、DAPI染色を示す。これらの写真から、前記変異体1041−D11は、細胞外マトリックスに含まれるED−Bに対する高い特異性で、固定化Wi38細胞に結合すると結論づけられる。ネガティブコントロール細胞型NHDFは、EDBフィブロネクチンを低レベルで発現する主要な正常線維芽細胞である(データを示さず)。前記変異体は、それらの細胞に結合しない。
【0243】
図15Bは、バイタル(vital)Wi38細胞での変異体1041−D11の分析を示す。ネガティブコントロール細胞型NHDFは、EDBフィブロネクチンを低レベルで発現する主要な正常線維芽細胞である。前記細胞を、チャンバースライドに播いた(NUNC、6000細胞/ml)。結合能の分析のため、前記細胞を、−20℃で5分間、100%MeOHで固定した。非特異的結合をブロックするために、前記細胞を、37℃で1時間、5%ウマ血清でインキュベートした。前記細胞を、異なる濃度の前記変異体1041−D11と、ポジティブコントロールであるED−B特異的抗体FV28 CH4/F1またはネガティブコントロールであるUB_2とで、室温で1時間、テストした。rabbit−a−Strep−Tag−IgG(GenScript社製 A00875、1:500)との1時間のインキュベーション、a−rabbit−IgG* Alexa488−AK(Invitrogen社製 A11008、1:1000)との1時間のインキュベーションにより、機能を証明した(proving)。核を、DAPIで染色した。図15Bの1行目および3行目は、異なるタンパク質濃度の変異体およびネガティブコントロールを示す。2行目および4行目は、EDB抗体を用いたコントロールのインキュベーションを示す。最初の2行は、Wi38細胞株における前記変異体とポジティブコントロールを示す。3行目および4行目は、NHDF細胞のインキュベーションを示す。写真からわかるように、前記変異体1041−D11は、細胞外マトリックスに含まれるED−Bに対する高い特異性で、バイタル(vital)Wi38細胞に結合することがわかる。低EDBを含まないNHDF細胞を用いた対照試験を行った(データ示さず)。前記変異体は、それらの細胞に結合しない。
【0244】
異なる細胞タイプ、例えば、Balb3T3(ATCC、Kat−Nr.30−2002)、Raw(Lonza社製、Kat−Nr.BE12−115F/U1)、ST−2(Lonza社製、Kat−Nr.BE12−115F/U1)を用いて、同様の実験を行った。図15CおよびDは、ED−Bの結合が、マウスBalb3T3とST−2細胞に高い特異性であることを示す。単球/マクロファージ(Raw)への結合は、見られなかった(データ示さず)。
【0245】
概要を前述したとおり、図16Aは、組織切片における1041−D11の特異性を示す。7サンプルからのF9腫瘍組織を評価した。500nM 1041−D11を用いた免疫組織化学から、マウス由来のF9腫瘍におけるED−B特異的血管が染色される結果が得られた。ED−Bは、腫瘍脈管構造に対する高い特異性のマーカーである。ターゲットタンパク質EDBは、血管の反管腔側に位置する。1041−D11は、F9腫瘍由来の組織切片において、血管構造を特異的に装飾する。得られた結果は、抗体フラグメントL19の組織特異性に匹敵する。さらに、48組織をテストした。FDA関連パネルにおいて、48組織のいずれにも、非特異的染色は観察されなかった。図16Bは、野生型ユビキチンと比較した、腫瘍細胞における1041−D11の蓄積を示す。このように、ED−Bに特異的に結合する修飾ユビキチンベースの融合タンパク質は、癌に対するED−Bに基づくターゲット治療に好適である。
【0246】
[実施例7]
1041D11−TNFαのin vivoでの有効性
【0247】
1041−D11−TNFαの治療上の有効性を確立するために、化合物をマウスモデルのF9テラトーマ(Borsi et al.、2003 Blood 102, 4384−4392参照)によりテストした。マウスにおけるED−B発現は、in vivoの状態でヒトに匹敵し、癌に対する1041−D11−mTNFαの治療上の影響、好ましくはこれをメルファラン等の細胞傷害性化合物と併用した際の治療上の影響を、評価するのに適している。F9テラトーマは、高い血管密度を有する高悪性度の腫瘍である。Borsi et alには、EDB抗体を介するマウスTNFαのターゲティングは、メルファランの有効性を向上させ、それは腫瘍の成長の遅延によって実証されていると記載されている。有効性研究のための実験計画は、Borsi、2003から採用した。
【0248】
ステージ1では、腫瘍と体重、体重減少および生存との割合に関係するエンドポイントについて、薬理的に活性かつ許容可能な投与量を明らかにした。本願発明者は、1041D11−TNFαが、最も高い投与量(6.75pmol/g)で許容されるが、腫瘍の成長に対して抑制効果を有さず(3、4および8日後に体重の10%を上回る→動物死亡)、一方、最も低投与量(0.25pmol/g)の1041D11−TNFαが、腫瘍の成長を遅らせるようであることを見出した。使用したさらに別の投薬グループでは、投与量2.25pmol/g 1041D11−TNFαから、低下させた。
【0249】
研究のステージ2では、腫瘍成長の遅延をエンドポイントとするメルファランの投与量依存的な有効性を明らかにした(動物体重減少>10%、腫瘍>体重の10%、腫瘍の潰瘍化)。研究では、1041D11/mTNFαおよびマウスTNFαについて、メルファランとの併用をテストした。168匹の動物を使用し、14投薬グループ(グループあたり8匹のマウス、F9腫瘍の大きさが300〜400mm3の時点で採用)について、テストサンプルを静脈(i.v.)に投与し、24時間後にメルファランを腹腔内(i.p.)に注射した。表1は、投薬スケジュールを示す。
【表3】
【0250】
図18は、処置期間中(7日間)の相対的腫瘍成長を示す。図18aは、メルファランと併用した本発明の化合物1041−D11−TNFαが、メルファランと併用したmTNFαまたはメルファラン単独よりも効果的に、相対的腫瘍成長を減少させることを明確に示す。処置後7日間の腫瘍成長速度は、1041−D11−mTNFαによる腫瘍の有意な減少を示す。これは、メルファランとの併用の有効性の明確な証拠である。
【0251】
刊行物
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【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に結合可能な、新規ヘテロ多量体タンパク質に関する。さらに、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した前記ヘテロ多量体結合タンパク質を含む、融合タンパク質に関する。本発明は、さらに、このようなヘテロ多量体結合タンパク質または融合タンパク質の製造方法、および、前記ヘテロ多量体結合タンパク質を含む医薬組成物および/または診断用組成物を対象とする。さらに、本発明は、前記タンパク質をコードするDNAを含むライブラリーに関する。
【0002】
さらなる実施形態において、本発明は、前記ヘテロ多量体結合タンパク質または前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、および、前記タンパク質、前記融合タンパク質、前記ベクターおよび/または前記ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を対象とする。好ましい実施形態において、前記ヘテロ多量体結合タンパク質または前記融合タンパク質は、薬物または診断用薬剤に含まれる。さらに、前記組換えタンパク質または前記融合タンパク質の製造方法、ならびに、医学的治療方法における前記タンパク質についても記載されている。
【背景技術】
【0003】
免疫グロブリンではないアミノ酸からなる結合分子の需要が高まりつつある。現在に至るまで、抗体は、最もよく確立された結合分子に類別されるが、免疫グロブリン分子にはいくつかの主要な欠点があるため、高い親和性と特異性でリガンドをターゲットとするために、新しい結合分子が、なお求められている。免疫グロブリン分子は、非常に容易に製造でき、ほとんど全てのターゲットを対象とするが、極めて複雑な分子構造を有している。そのため、容易に取扱い可能な、より小さな分子によって、抗体を代用することが絶えず求められている。これら代替結合剤は、例えば、疾病の診断、予防、および治療の医療分野において、有用である。
【0004】
相対的に規定された三次元構造を有するタンパク質は、通常、足場タンパク質と呼ばれ、前記代替結合剤の設計の開始物質として用いられる。これら足場タンパク質は、一般的に、特異的またはランダムな配列のバリエーションを許容する、1以上の領域を含んでおり、そのような配列のランダム化は、しばしば、特異的結合分子を選択できる、タンパク質ライブラリーの製造のため行われる。抗体よりもサイズが小さく、且つ、ターゲット抗原への親和性が、抗体に匹敵するか、あるいはより高い分子は、薬物動態的な性質および免疫原性の点から、抗体よりも優れていると予想される。
【0005】
従前の多くのアプローチは、結合タンパク質の開始物質として足場タンパク質を用いている。例えば、国際公開第99/16873号パンフレット(特許文献1)において、特定のリガンドに結合活性を示すリポカリンファミリー(いわゆるアンチカリン)の修飾タンパク質が開発された。リポカリンファミリーのペプチド構造は、遺伝子工学的方法を用いて、天然のリガンド結合ポケットにおけるアミノ酸置換によって修飾されている。免疫グロブリンのように、アンチカリンは、分子構造の同定または結合に使用できる。抗体と類似する方法で、可動性ループ構造が修飾され、これらの修飾により、天然のものとは異なるリガンドの認識が可能となる。
【0006】
国際公開第01/04144号パンフレット(特許文献2)には、それ自体には結合部分がないβシート構造タンパク質のタンパク質表面における、結合ドメインの人工的な生成が記載されている。この手法によれば、高い親和性と特異性でリガンドと相互作用する、新規に生成された人工結合ドメイン(例えば、眼水晶体構造タンパク質であるγクリスタンのバリエーション)が得られる。アンチカリンに関して先に述べたような可動性ループ構造から形成される、すでに存在する結合部位の修飾とは対照的に、これらの結合ドメインは、βシートの表面に新規に生成される。しかし、国際公開第01/04144号パンフレットには、新規結合特性を生じるための、相対的に大きなタンパク質の改変について記載されているのみである。国際公開第01/04144号パンフレットのタンパク質は、その大きさのため、ある程度の労力を必要とする方法でしか、遺伝子工学レベルで修飾できない。さらに、これまで公開されたタンパク質においては、タンパク質の全体構造を維持するために、全アミノ酸のうち、比較的小さいパーセンテージのみが修飾されていた。そのため、従前は存在しない結合特性の発生に利用できるのは、タンパク質表面の比較的に小さい領域のみである。さらに、国際公開第01/04144号パンフレットには、γ−クリスタンへの結合特性の生成のみが記載されている。
【0007】
国際公開第04/106368号パンフレット(特許文献3)には、ユビキチンタンパク質に基づく人工結合タンパク質の製造が記載されている。ユビキチンは、小さい単量体の細胞質タンパク質であり、配列が高度に保存され、原虫から脊椎動物にいたるまでの全ての公知の真核細胞に存在する。生物において、ユビキチンは、細胞タンパク質のコントロールされた分解の制御において重要な役割を担う。この目的のために、分解予定のタンパク質は、酵素カスケードを通過する間に、ユビキチンまたはポリユビキチン鎖と共有結合し、この標識により選択的に分解される。最近の研究結果によると、ユビキチンまたはユビキチンによるタンパク質の標識は、それぞれ、数種のタンパク質の移入または遺伝子制御等の他の細胞プロセスにおいても、重要な役割を担っている。
【0008】
その生理的機能の明確化に加え、ユビキチンは、そもそもその構造およびタンパク質の化学特性のために、研究対象となっている。ユビキチンのポリペプチド鎖は、非常にコンパクトなα/β構造に折りたたまれた76アミノ酸からなる(Vijay−Kumar, 1987(非特許文献1))。前記ポリペプチド鎖のほぼ87%は、水素結合によって、二次構造エレメントの形成に関与する。二次構造は、3.5αヘリックスターン、ならびに4つの鎖からなる逆平行βシートである。これらの要素の特徴的な配置(逆平行βシートがタンパク質表面に露出し、その裏側にαヘリックスがパックされ、これが前記逆平行βシート上に垂直に延びている)は、一般的に、いわゆるユビキチン様フォールディングモチーフと考えられている。さらなる構造的な特徴は、αヘリックスとβシートの間のタンパク質内側における、標識疎水性領域である。
【0009】
ユビキチンの人工的な調製は、そのサイズが小さいため、化学合成によっても、生物学的手法によっても行うことができる。有利なフォールディング特性のため、ユビキチンは、大腸菌等の微生物を使用した遺伝子工学により、比較的大量に、そのサイトゾルまたは細胞膜周辺腔に製造できる。一般的に、後者のストラテジーは、周辺質において酸化状態が優勢であるため、分泌タンパク質の製造に使用される。簡易且つ効果的な細菌調製のために、ユビキチンは、その製造に問題がある他の外来タンパク質に対する融合パートナーとして使用できる。ユビキチンとの融合によって、溶解度の改善およびそれによる製造収率の改善が、達成できる。
【0010】
抗体または他の代替足場と比べ、ユビキチンタンパク質に基づく人工結合タンパク質(Affilin(登録商標)ともいう)は、多くの利点を有している。例えば、小さいサイズ、高い安定性、高い親和性、高い特異性、費用対効果の高い微生物による製造、血清半減期の調整等である。しかしながら、特定のターゲットに対する高い親和性の新しい治療方法の点から、それらのタンパク質をさらに開発する必要がある。国際公開第05/05730号パンフレット(特許文献4)には、人工結合タンパク質を得るためのユビキチン足場の使用が、概略的に記載されているが、フィブロネクチンのED−Bとの特異的且つ高親和性の結合を得るために、ユビキチンタンパク質を修飾する方法は、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第99/16873号パンフレット
【特許文献2】国際公開第01/04144号パンフレット
【特許文献3】国際公開第04/106368号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/05730号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2008/022759号パンフレット
【特許文献6】国際公開第97/45544号パンフレット
【特許文献7】国際公開第07/054120号パンフレット
【特許文献8】国際公開第99/58570号パンフレット
【特許文献9】国際公開第01/62800号パンフレット
【特許文献10】国際公開第06/119897号パンフレット
【特許文献11】国際公開第07/128563号パンフレット
【特許文献12】国際公開第01/62298号パンフレット
【特許文献13】国際公開第07/115837号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Vijay−Kumar, 1987
【非特許文献2】Menrad u. Menssen, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
国際公開第2008/022759号パンフレット(特許文献5)には、組換え結合タンパク質が記載されており、FYNキナーゼのSrcホモロジー3ドメイン(SH3)が、新しい結合タンパク質を得るために使用されている。タンパク質治療および/またはタンパク質診断を開発するために、RTループおよび/またはSrcループの変異によりターゲット特異性を設計できることが見出された。足場として利用されるリポカリンにおいてと同様に、変異誘発されたアミノ酸残基は、抗体/抗原結合機能の基礎をなす原理を擬態する、可変性および可動性のループ領域内に存在している。相互作用部位の全体的な可動性は、これによって抗体がエピトープに結合するものであるが、主にエントロピーによって駆動されるプロセスである。しかしながら、このプロセスは、可動相補性決定領域の会合による移動度の欠失によって、不利なエントロピーの寄与を導く。それとは反対に、足場としてユビキチンを使用し、本願発明者は、そもそもアミノ酸残基を可動性ループ領域内では変更せず、βシートの領域の強固で不動のβ鎖またはβ鎖の近くに隣接した領域内で変更した。ED−Bとの結合領域である、ユビキチンの不動且つ強固なβ鎖またはβ鎖の近くに隣接した範囲において、アミノ酸残基を選択する利点は、特に以下のとおりである。結合パートナーは、強い結合に適した相補的形状をすでに示していると考えられている。したがって、これらの相互作用は、結合パートナーのより強固な構造の形状、電荷、および親水性/疎水性要素における相補性に関与する。これらの強固な本体の相補作用は、界面を最適化し、生物機能を適応させる。
【0014】
フィブロネクチン(FN)は、健康な組織および体液において大量に発現する、重要なクラスの高分子量細胞外マトリックス糖タンパク質である。これらの主な役割は、細胞と多くの異なる細胞外マトリックスとの接着の促進である。培養下の非形質転換細胞の表面におけるフィブロネクチンの存在、ならびに形質転換細胞の場合におけるそれらの不在により、フィブロネクチンは、重要な接着タンパク質として同定された。フィブロネクチンは、多数の様々な他の分子、例えば、コラーゲン、ヘパラン硫酸プロテオグリカンおよびフィブリンと相互作用し、細胞の形状および細胞骨格の形成を制御する。さらに、それらは、胚形成の間の細胞移入および細胞分化に関与する。それらは、創傷の治療においても、重要な役割を担い、マクロファージおよび他の免疫細胞の移入を促進し、また、血餅の形成においても、血管の損傷領域への血小板の接着を可能とすることにより、重要な役割を担う。
【0015】
フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)は、プライマリーRNA転写物の代替スプライシングによってフィブロネクチン分子に挿入された、小さいドメインである。前記分子は、細胞外マトリックスのフィブロネクチン分子において、存在するかまたは取去されているかのいずれかであり、新しい血管の周辺に大量に発現するが、全ての成常成人の組織(子宮と卵巣を除く)においては、実質的に検出不能であるため、血管新生や組織の再構築と関連する最も選択的なマーカーの一つとなっている。ED−Bは、主として癌に関与することが知られている。高レベルのED−B発現は、胸、非小細胞肺、結腸直腸、膵臓、ヒトの肌、肝細胞、頭蓋内髄膜腫、グリオブラストーマを含む多くのヒトの固体癌のエンティティにおける一次病変、ならびに転移性部位において検出された(Menrad u. Menssen, 2005(非特許文献2))。さらに、ED−Bは、診断剤と結合でき、診断ツールとして有利に使用できる。一例として、例えば、動脈硬化プラークの分子の画像化や、例えば、癌患者の免疫シンチグラフィーによる、癌検出おける使用があげられる。さらに多くの診断用に使用できると考えられる。
【0016】
フィブロネクチンのヒトエクストラドメインB(ED−B)の91アミノ酸のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。前記タンパク質の発現のため、開始メチオニンを加えなければならない。ED−Bは、哺乳類、例えば、げっ歯類、ウシ、霊長類、肉食動物、ヒト等に大量に存在する。ヒトED−Bと100%の配列同一性を有する動物の例は、ラット(Rattus norvegicus)、ウシ(Bos taurus)、マウス(Mus musculus)、ウマ(Mus musculus)、アカゲザル(Macaca mulatta)、ハイイロオオカミ(Canis lupus familiaris)、チンパンジー(Pan troglodytes)である。
【0017】
ED−Bは、新生血管構造に特異的に蓄積し、癌における分子介入のターゲットとなる。フィブロネクチンのED−Bドメインに対する抗体または抗体断片の多くは、当該技術分野において、癌および他の兆候の潜在的な治療薬として公知である(例えば、国際公開第97/45544号パンフレット(特許文献6)、国際公開第07/054120号パンフレット(特許文献7)、国際公開第99/58570号パンフレット(特許文献8)、国際公開第01/62800号パンフレット(特許文献9)参照)。ヒト一本鎖Fv抗体断片ScFvL19(L19ともいう)は、フィブロネクチンのED−Bドメインに特異的であり、実験腫瘍モデルおよび癌患者の両方において、選択的に新生脈管構造の腫瘍(tumor neovasculature)を標的にすることが確認されている。さらに、IL−12、IL−2、IL−10、IL−15、IL−24またはGM−CSF等のサイトカインと、抗ED−B抗体または抗ED−B抗体断片を含むコンジュゲートは、特に、癌、血管新生または腫瘍の成長を阻害する医薬製造のための標的薬剤として記載されている(例えば、国際公開第06/119897号パンフレット(特許文献10)、国際公開第07/128563号パンフレット(特許文献11)、国際公開第01/62298号パンフレット(特許文献12)参照)。細胞傷害性または免疫刺激薬剤のような適切なエフェクター機能と抱合させた、抗ED−B抗体またはL19等抗ED−B抗体断片による固体腫瘍の新生脈管構造の選択的なターゲティングは、動物実験では成功することが判明している。膵臓癌の治療のため、インターロイキン−2(IL−2)部と抗ED−B抗体部とを含む融合タンパク質を、小分子ゲムシタビン(2’−デオキシ−2’、2’−デフルオロロシチジン)と併用した(例えば、国際公開第07/115837号パンフレット(特許文献13)参照)。
【0018】
前記先行技術文献には、新しいED−B結合タンパク質の製造のため、抗体を含む様々な足場タンパク質を使用することが記載されている。現在入手可能な化合物よるED−Bのターゲティングには、ある種の不都合が伴う。ED−B抗原に対して、同等またはより高い親和性を有する、より小さい分子(本発明の、ヘテロ多量体ユビキチンに基づくED−B結合タンパク質等)は、抗体や他の結合タンパク質に対して、顕著な利点を有すると期待される。
【0019】
癌は、世界的に主要な死亡原因であるため、癌治療のための改善された薬剤の必要性が高まっている。現在の化学療法剤および放射線治療は、選択性が低いという欠点があり、多くの化学療法剤は、腫瘍部位に蓄積せず、そのため腫瘍内において十分なレベルに到達できない。癌を効果的に治療する、強力な医薬品に対する需要が存在する。
【0020】
本発明の課題は、フィブロネクチンの細胞外ドメイン(ED−B)に非常に高い親和性で特異的に結合できる、ユビキチンベースのヘテロ多量体結合タンパク質の提供である。本発明のさらなる課題は、例えば、癌の治療に使用する、ED−Bに非常に高い結合特異性を有する新規の結合タンパク質の同定および提供である。さらに、前記ヘテロ多量体結合分子を製造するための方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記課題は、提出した独立請求項の主題によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項、ならびに下記の記載、実施例および図面に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、種々の腫瘍におけるED−Bの発生を列記した表を示す。
【図2】図2は、ED−Bへの驚くほど強力な結合親和性を有することが見出された、さらなる16種類の配列のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。
【図3】図3は、修飾ユビキチン単量体からなる四量体と比較した、修飾ユビキチン単量体のKd値を、表に示す。
【図4A】図4Aは、単量体41B10についての、Kd=9.45μMの結合親和性を示す。
【図4B】図4Bは、41B10が異なる第2単量体と結合して得られた46H9についての、Kd=131nMの結合親和性を示す。
【図5A】図5Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合エフェクター融合タンパク質の模式図である。
【図5B】図5Bは、前記修飾ユビキチンエフェクター接合5E1−TNFコンジュゲートが、アポトースシス促進活性(L929アポトーシスアッセイで測定)を有すること示す。
【図5C】図5Cは、1H4−TNFα融合物のED−Bへの結合親和性(Kd=15.1nM)が高いことを示す。
【図6A】図6は、サイトカイン、例えば、TNFαに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
【図6B】図6Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd 50.7nM)。
【図6C】図6Bは、遺伝学的にサイトカインTNFαに融合し、前記ヘテロ二量体24H12が多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd=5.6nM)。
【図6D】図6Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体クローン9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。
【図6E】図6Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図6F】図6Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。
【図7】図7は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。
【図8】図8は、配列アライメントを示す。
【図9】図9は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。
【図10】図10は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。
【図11】図11は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。
【図12】図12は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。
【図13】図13は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。
【図14】図14は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【図15A】図15Aは、固定化されたヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。
【図15B】図15Bは、バイタル(vital)ヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への結合を示す。
【図15C】図15Cは、固定化されたマウスBalb 3T3細胞への結合を示す。
【図15D】図15Dは、固定化されたマウスST−2細胞への結合を示す。
【図16A】図16Aは、哺乳類組織切片における、ターゲットへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の特異性を示す。
【図16B】図16Bは、野生型ユビキチンとの比較における、腫瘍組織での1041−D11の蓄積を示す。
【図17A】図17Aは、1041−D11TNFα融合タンパク質におけるTNFαのアポトーシス誘導活性についての、細胞ベースアッセイ(cell based assay)(L929細胞)によるテストを示す。
【図17B】図17Bは、1041−D11TNFα融合タンパク質におけるTNFαのアポトーシス誘導活性についての、細胞ベースアッセイ(L929細胞)によるテストを示す。
【図17C】図17Cは、ターゲットであるED−Bへの、ヘテロ二量体ユビキチン1041−D11TNFα融合タンパク質の高い選択性を証明している。
【図17D】図17Dは、修飾ユビキチンED−B結合1041−D11TNFα融合タンパク質についての、Biacoreアッセイによる結合分析を示す。
【図17E】図17Eは、修飾ユビキチンED−B結合1041−D11TNFα融合タンパク質についての、Biacoreアッセイによる結合分析を示す。
【図17F】図17Fは、培養細胞における変異体1041−D11で観察された高い結合特異性が、1041−D11がTNFαに融合されても維持されることを示す。
【図18】図18は、TNFαに融合した変異体1041−D11とメルファランとの併用による、7日間のマウスの処置期間中のin vivoでの相対的腫瘍成長を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
より具体的には、本願発明者は、ヒトフィブロネクチンのED−Bに結合可能なタンパク質を提供する。前記タンパク質は、2つの単量体(ユビキチンユニット)が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含み、さらなる修飾、好ましくは、他のアミノ酸の置換を任意で含み、
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
前記修飾単量体ユビキチンユニットが、配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも85%および少なくとも90%の群から選択される少なくとも一つのアミノ酸同一性を有し、
前記フィブロネクチンのED−Bドメインに対する前記タンパク質の特異的結合親和性がKd=10−7〜10−12Mであり、前記タンパク質が、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示す。
【0024】
好ましい実施形態において、前記タンパク質は、組換えタンパク質である。
【0025】
本発明のさらなる実施形態では、各単量体ユビキチンユニットにおいて、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、7、8、9個または全てのアミノ酸が、修飾される。本発明においては、各単量体ユニット、すなわち、第1ユニットおよび第2ユニットにおいて、これらの変異は、それぞれ組み合わせることができると理解される。例えば、前記第1ユニットが、6つの修飾を含むことができ、一方、前記第2ユニットが、7つまたは8つの修飾を含み、前記第1単量体ユニットが8つの修飾を、前記第2単量体ユニットが7つの修飾を含んでもよい、等である。前述に列挙する各アミノ酸は、前記第1ユニット、前記第2ユニットから選択でき、その後、前記両ユニットは、組み合わせられる。好ましい置換は、以下に記載する。
【0026】
「フィブロネクチンのエクストラドメインB」または省略した「ED−B」は、配列番号2との配列同一性が、少なくとも70%、任意に75%以上、さらに任意に80%、85%、90%、95%、96%、または97%以上、または100%を示し、上記のED−Bの機能性を有する、全てのタンパク質を含む。
【0027】
「結合可能なタンパク質」または「結合タンパク質」は、さらに後述するED−Bに対する結合ドメインを含むユビキチンタンパク質を指す。このようなユビキチンベースの結合タンパク質は、いずれも、例えば、多量体化部位(multimerization moieties)、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー等の結合ドメインでない付加的なタンパク質ドメイン、および/または、非タンパク性のポリマー分子を含んでもよい。非タンパク性のポリマー分子は、例えば、ヒドロキシエチルでんぷん、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン等である。
【0028】
抗体およびそのフラグメントは、当業者に周知である。前記本発明の結合タンパク質は、抗体またはそのフラグメント、例えば、FabもしくはscFvフラグメント等ではない。また、前記本発明の結合ドメインは、抗体に存在する免疫グロブリンフォールドを含まない。
【0029】
本明細書において、「リガンド」、「ターゲット」および「結合パートナー」は、同意語として使用され、置き換え可能である。リガンドは、前述のヘテロ多量体修飾ユビキチンタンパク質に、ここで定義される親和性をもって結合可能な任意の分子である。
【0030】
「ユビキチンタンパク質」は、配列番号1のユビキチン、および、下記の定義によるその修飾物を包含する。ユビキチンは、真核生物において、高度に保存されている。例えば、今日まで研究されてきた全ての哺乳類において、ユビキチンは、同一のアミノ酸配列を有する。ヒト、げっ歯類、ブタおよび霊長類由来のユビキチン分子が、特に好ましい。また、任意の他の真核生物起源のユビキチンを使用することもできる。例えば、酵母由来のユビキチンは、配列番号1と3つのアミノ酸が異なるのみである。前記「ユビキチンタンパク質」に包含される前記ユビキチンタンパク質は、通常、配列番号1に対し、70%を超える、好ましくは75%を超える、80%を超える、85%を超える、90%を超える、95%を超える、96%を超える、または97%までのアミノ酸同一性を示す。
【0031】
「修飾ユビキチンタンパク質」は、前記ユビキチンタンパク質の修飾、アミノ酸の置換、挿入または欠失のいずれか一つ、または、それらの組み合わせを指す。ただし、上記修飾のいずれか一つによりなされる修飾で、最も好ましいのは置換である。前記修飾数は、配列番号1に対して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つであるアミノ酸同一性を有する、前記修飾単量体ユビキチンユニットのように、厳密に限定されている。それゆえ、単量体ユニットにおける全置換数は、80%のアミノ酸同一性に対応して、最大で15個のアミノ酸に限定される。前記ヘテロ二量体ユビキチン分子における修飾アミノ酸の全数は、前記ヘテロ二量体タンパク質に基づく、20%のアミノ酸の修飾に対応して、30個である。前記二量体修飾ユビキチンタンパク質の前記アミノ酸同一性は、配列番号1の基本単量体配列を有する二量体非修飾ユビキチンタンパク質と比較して、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも83%および少なくとも90%のいずれか一つから選択される。
【0032】
配列番号1のアミノ酸配列に対する前記ユビキチン誘導体の配列同一性の程度の決定には、例えば、SIM Local similarity program(Xiaoquin Huang and Webb Miller, Advances in Applied Mathematics, vol. 12: 337− 357, 1991)またはClustal,W.を使用できる(Thompson et al., Nucleic Acids Res., 22(22): 4673−4680, 1994.)。好ましくは、配列番号1に対する前記修飾タンパク質の配列同一性の程度は、配列番号1の完全配列に対して相対的に決定される。
【0033】
前記本発明の「ヘテロ二量体融合タンパク質」または「ヘテロ二量体タンパク質」は、2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質と考えられる。前記2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質は、前記特異的結合パートナーであるED−Bに対する一価の結合特性(結合ドメイン)を共同でもたらす、2つの相互作用結合ドメイン領域を有する。ヘテロ二量体は、2つの単量体ユビキチン分子の融合により得られ、これらの両分子は、前述のように異なる修飾がなされる。
【0034】
一価の結合活性を有するヘテロ多量体結合タンパク質(ここでは、ヘテロ二量体タンパク質)を生成するための、異なる修飾ユビキチン単量体の多量体化の利点は、ED−Bに対する新規な高親和性の結合特性を発生するために修飾され得るアミノ酸残基の総数の増加にある。主要な利点は、多くのアミノ酸が修飾されても、ED−Bに対する前記新規に生成された結合タンパク質の足場全体の安定性の低下させることなく、タンパク質の化学的完全性(protein−chemical integrity)が維持されることである。ED−Bに対する新規結合部位を発生させるために修飾され得る残基の総数は、前記修飾残基が2つの単量体ユビキチンタンパク質に割り当てられることで増加する。修飾数は、修飾単量体ユビキチン分子数に応じて、2倍にできる。ユビキチンベースのED−B結合タンパク質のモジュール構造は、2つの単量体ユビキチン分子に前記修飾アミノ酸が含まれると、前記修飾アミノ酸の総数を増加できる。本発明の方法は、ED−Bに対する一価の特異性(一つのシングルエピトープ)を有するヘテロ二量体ユビキチン分子の同定を提供する。
【0035】
したがって、これらの修飾残基の全量が、前記二量体を形成する前記2つの単量体ユニットに割り振られるため、結合パートナーに対して共通の結合部位を有するヘテロ二量体の使用は、最終的な結合分子の前記タンパク質の化学的完全性に過度に影響を与えない修飾残基数を増加させる可能性を切り開く。ED−Bに結合する前記ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質は、タンパク質ライブラリーに存在する。
【0036】
「一価」は、前記修飾二量体ユビキチンの前記第1および前記第2単量体ユニットにおいて生成された両結合領域が共に、ED−Bに相乗的に組み合わせられるように結合する機能、すなわち、両結合領域が、共同で一価の結合活性を形成する役割を果たす機能と理解されるべきである。前記二量体分子における前記第1および前記第2修飾ユビキチン両方の各結合領域を、別々に取り除いた場合、ED−Bへの結合は、前記二量体分子より明らかに効率および親和性が低下するだろう。前記修飾ユビキチンが、各単量体タンパク質を単独で使用するよりも、より効率的にED−Bに結合可能となるように、両結合領域は、アミノ酸の連続領域として前記ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質表面に形成されるユビキチン結合部位を形成する。本発明によれば、最も有力な結合ユビキチン分子をスクリーニングした後に、前記2つの単量体タンパク質が互いに連結されるのではなく、既に前記ヘテロ二量体ユビキチンが存在する状態でスクリーニング工程を行うことが、特に重要である。最も有力な結合ユビキチン分子の配列情報を取得した後に、任意の他の方法、例えば、化学合成または遺伝子工学手法により、例えば、前記2つの同定した単量体ユビキチンユニット同士を連結することにより、これらの分子を得てもよい。
【0037】
本発明によれば、1つのリガンドに結合する前記2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、例えば、遺伝学的手法を使用して、互いにヘッドトゥテイル融合で結合される。前記異なる修飾融合ユビキチン単量体は、一価で結合し、両方の「結合ドメイン領域」(「BDR」)が共に作用する場合にのみ効果的である。「結合ドメイン領域」は、前記ターゲットへの結合に関与する、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸が修飾されたユビキチン単量体における領域として定義される。
【0038】
前記ヘテロ二量体タンパク質を形成する前記修飾および結合ユビキチン単量体は、一つの連続的な結合領域を介して同じエピトープに結合する。前記ヘテロマーのこの連続的な領域は、2つの異なる修飾ユビキチン単量体により形成される前記2つのモジュールの両結合決定領域により形成される。
【0039】
「ヘッドトゥテイル融合」は、2つのタンパク質が、前記二量体に含まれるユニット数に応じて、N−C−N−C方向においてそれらを連結することにより、互いに融合することと理解される。このヘッドトゥテイル融合において、前記ユビキチン単量体は、リンカーを介すことなく、直接連結されてもよい。または、前記ユビキチン単量体の融合は、リンカーを介して行うことができる。前記リンカーは、例えば、少なくともGIGのアミノ酸配列もしくは少なくともSGGGGのアミノ酸配列を有するリンカー、または、任意の他のリンカー、例えば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIGもしくはSGGGGSGGGGがあげられる。2つのユビキチン単量体の遺伝学的融合用の他のリンカーも、当該技術分野では公知であり、使用できる。
【0040】
本発明の前記修飾ユビキチンタンパク質は、ターゲットまたはリガンド(両用語は、同じ意味として使用される)としてのED−Bに対する新規な結合親和性を有する人工タンパク質である。「置換」は、例えば、元のアミノ酸への化学基もしくは残基の置換または付加によるアミノ酸の化学的修飾も含む。βシート領域の少なくとも一つのβシート鎖に位置するアミノ酸、または、前記βシート鎖に隣接した3個までのアミノ酸に位置するアミノ酸を含む前記タンパク質の少なくとも一つの表面露出領域におけるアミノ酸の置換が、重要である。
【0041】
本発明によれば、ED−Bに特異的な新規の結合ドメイン発生のための前記アミノ酸の置換を、任意の所望のアミノ酸に行うことができる。すなわち、ED−Bに対する新規の結合特性を発生させる修飾のために、任意の所望のアミノ酸をこの目的に使用できるように、アミノ酸が、置換されたアミノ酸のそれと同様の特定の化学的特性または側鎖を有する必要はない。
【0042】
本発明によれば、前記選択されたアミノ酸の修飾工程は、好ましくは、ランダム変異導入法による遺伝学的レベルでの突然変異、すわなち、前記選択されたアミノ酸のランダム置換により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、前記各タンパク質に属するDNAを改変する遺伝子工学的手法により行われる。好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現は、その後、原核生物または真核生物において行われる。
【0043】
置換は、特に、ユビキチンタンパク質のβシートの4つのβ鎖の表面露出アミノ酸、または、前記βシート鎖に隣接する3つ以内の表面露出アミノ酸において行われる。各β鎖は、通常、5〜7個のアミノ酸からなる。配列番号1に関して、例えば、前記β鎖は、通常、アミノ酸残基2〜7、12〜16、41〜45および65〜71を包含する。付加的に且つ好ましく修飾され得る領域は、前記βシート鎖に隣接する3つ目までのアミノ酸(すなわち、1番目、2番目または3番目)の部位を含む。付加的に且つ好ましく修飾され得る前記好ましい領域は、特に、アミノ酸残基8〜11、62〜64および72〜75を含む。前記好ましい領域は、2つのβ鎖が互いに結合したβターンを含む。好ましいβターンは、アミノ酸残基62〜64があげられる。前記βシート鎖に密接する最も好ましいアミノ酸は、8位のアミノ酸である。また、アミノ酸置換のさらなる好ましい例は、36、44、70および/または71位である。例えば、付加的に且つ好ましく修飾され得る領域は、62、63および64位のアミノ酸(3個のアミノ酸)、72、73位のアミノ酸(2個のアミノ酸)または8位のアミノ酸(1個のアミノ酸)を含む。
【0044】
好ましい実施形態において、前記アミノ酸残基は、アミノ酸置換により改変される。欠失および挿入も可能である。付加または欠失され得るアミノ酸数は、単量体ユビキチンサブユニットにおいて、1、2、3、4、5、6、7または8個のアミノ酸に限定され、それに応じて、前記二量体ユビキチンタンパク質については、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16個のアミノ酸に限定される。一実施形態において、アミノ酸挿入はなされない。さらなる実施形態において、欠失は行われない。
【0045】
本発明の修飾ユビキチンタンパク質が、請求項で特定され明細書で説明された前記置換に加えて、1以上のアミノ酸の欠失および/または付加を含む場合には、野生型ヒトユビキチン(配列番号1)に与えられる前記アミノ酸部位を、対応するタンパク質同士で分配するために、前記修飾ユビキチンについてアライメントさせなければならない。融合タンパク質の場合(後述を参照)、各単量体ユビキチンサブユニットのナンバリング(およびアライメント)は、同様の方法、すなわち、例えば、各サブユニットの1位のアミノ酸から開始される二量体のアライメントによりなされる。
【0046】
単量体ユビキチン、好ましくは、例えば、ヒト等の哺乳類由来の単量体ユビキチンにおいて、β鎖または前記βシート鎖に隣接する3個以内のアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも25%が修飾されることができ、好ましくは置換され、本発明によれば、従来は存在しなかった結合特性が発生する。最大で、β鎖または前記βシート鎖に隣接する3個以内のアミノ酸の部位に存在するアミノ酸の約50%、さらに好ましくは最大で約40%、約35%、約30%以下、または約25%以下が修飾され、好ましくは置換される。通常、一つのβ鎖において、1〜4個のアミノ酸が修飾される。一実施形態では、好ましくは、第1β鎖および第4β鎖、例えば、2〜7位もしくは65〜71位のアミノ酸残基の領域において、6個のアミノ酸のうちの3個が修飾される。
【0047】
ヘテロ二量体の構成ユニットとして使用される本発明の修飾単量体ユビキチンは、合計でアミノ酸の20%以下を占める。これを考慮すると、配列番号1に対する前記修飾ユビキチンタンパク質の配列同一性は、少なくとも80%である。本発明のさらなる実施形態において、アミノ酸レベルでの配列同一性は、配列番号1のアミノ酸配列に対して、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも87%、さらに、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%である。本発明は、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、97%以上のアミノ酸配列同一性の前記修飾ユビキチンタンパク質をも包含する。
【0048】
本発明のさらなる実施形態において、ユビキチンは、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位における、3、4、5、6、または7個のアミノ酸において修飾される。他の実施形態において、これらの部位において修飾されるユビキチンは、既に前修飾(pre−modified)されていた。例えば、さらなる修飾は、74および75位のアミノ酸または45位のアミノ酸における修飾を含むことができ、この修飾により、より良好な安定性またはタンパク質化学特性を発生する。修飾ユビキチン単量体は、配列番号1のユビキチンにおける、合計9、10、11、12、13、14および、最大で15個のアミノ酸が修飾され、好ましくは置換されることで得られる。一例によれば、修飾単量体ユビキチンは、14個の置換および1個の欠失を有するものが得られた。ユビキチンの総アミノ酸数に基づいて、これは、約20%の割合に相当する。このことは、非常に驚くべきことであり、通常、もっと低い割合で、十分にタンパク質のフォールディングを阻害してしまうため、予測できなかったことである。
【0049】
本発明の一実施形態において、これらのアミノ酸は、タンパク質表面上に連続的な領域を形成する、新規なED−B結合特性を有する領域の発生のために修飾される。このようにして、ED−Bへの結合特性を有する連続的な領域を発生させることができる。本発明において、「連続的な領域」は、以下の通りである。側鎖の電荷、空間的構造および疎水性/親水性により、それに対応して、アミノ酸は、その環境と相互作用する。前記環境は、溶媒、通常は、水または、例えば、空間的に近いアミノ酸等の他の分子であり得る。タンパク質に関する構造情報および各種ソフトウェアの手段により、前記タンパク質表面の特徴を決定できる。例えば、タンパク質の原子と溶媒との接触領域を、この接触領域がどのような構造であるか、溶媒に接触しやすい表面領域はどれか、または、前記改変が表面においてどのように分布しているか、についての情報を含むこの方法により可視化できる。連続的な領域は、例えば、適切なソフトウェアを使用したこの種の可視化により明らかにされ得る。このような方法は、当業者に公知である。本発明によれば、基本的に、表面露出領域全体が、新規な結合特性の発生のために修飾される表面上の前記連続的な領域として使用され得る。一実施形態において、この目的のための修飾は、αへリックス領域を含んでもよい。ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質において、結合決定領域は、1つの結合決定領域の2倍の長さを有する1つの連続的な領域を共同で形成する、2つの前記表面露出領域を含む。
【0050】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位の少なくとも一方を含む、前記タンパク質の少なくとも1つの表面露出領域におけるアミノ酸の修飾が、重要である。前記「βシート構造」は、本質的にシート状で、ほぼ完全に伸長されている(stretched)ことにより定義される。一方、ポリペプチド鎖の連続したセグメントから形成されるαへリックスに対して、βシートは、ポリペプチド鎖の異なる領域により形成され得る。このようにして、一次構造において離れて位置する領域同士が、近傍同士となることができる。β鎖は、概して、5〜10個のアミノ酸長を有し(通常は、ユビキチンにおける5〜6残基)、ほぼ完全なストレッチ構造を有する。前記β鎖は、互いに近接し、一方の鎖のCO基と他方の鎖のNH基との間で水素結合が形成される。逆もまた同様である。βシートは、複数の鎖から形成され、シート状構造を有し、Cα原子の部位が、シート状平面の上方または下方の間で交互に入れ替わる。アミノ酸側鎖は、このパターンに追随し、そして、上端もしくは下端に向く。前記β鎖の方向により、前記シートは、平行シートおよび逆平行シートに分類される。本発明によれば、両方とも、変異可能であり、請求されたタンパク質の調製に使用可能である。
【0051】
前記β鎖および前記βシート構造の突然変異のために、表面に近いβ鎖または前記β鎖(前記βシートの1つの鎖)に隣接する3つ以内のアミノ酸部位が、ユビキチンにおいて選択される。表面露出アミノ酸は、利用可能なX線結晶構造により同定できる。利用できる結晶構造がない場合、利用可能な一次構造または3次元タンパク質構造モデルに関して、表面露出βシート領域および個々のアミノ酸部位の接触性を予測するコンピュータ解析手法による試みをなし得る。このようにして、潜在的な表面露出アミノ酸についての情報を入手し得る。さらなる開示は、例えば、J. Mol. Biol., 1987 Apr 5; 194(3):531−44. Vijay−Kumar S, Bugg C.E., Cook W.Jから得ることができる。
【0052】
前記βシートまたは前記β鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位における修飾を行えるが、突然変異を生成させるアミノ酸部位の前選択は時間がかかるため、除外し得る。前記βシート構造または前記βシート鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸をコードするDNA領域を、DNA環境(DNA environment)から単離し、ランダム突然変異に供し、その後、それらを予め除去したタンパク質をコードするDNAに再度組み込む。続いて、所望の結合特性を有する変異体の選択工程を行う。
【0053】
本発明の他の実施形態において、表面に近い、前記β鎖または前記β鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位は、前述のように選択され、これらの選択された領域内部の突然変異誘発された前記アミノ酸部位は、同定される。ついで、このようにして選択されたアミノ酸部位は、部位特異的突然変異によりDNAレベルで、突然変異され得る。すなわち、特定のアミノ酸をコードするコドンが、予め選択された他の特定のアミノ酸をコードするコドンにより置換され、または、この置換がランダム突然変異との関連で行われる。前記置換されるアミノ酸部位は、新規な部分をコードするコドンのみではなく、未定のアミノ酸も定義される。
【0054】
「表面露出アミノ酸」は、周囲の溶媒に接触可能なアミノ酸である。タンパク質におけるアミノ酸の接触性が、モデルトリペプチドGly−X−Glyにおけるアミノ酸の接触性と比較して8%以上である場合、前記アミノ酸は、「表面露出」と呼ばれる。これらのタンパク質領域または個々のアミノ酸部位は、それぞれ、本発明により選択される、潜在的な結合パートナーに対する好ましい結合部位でもある。また、参考文献として、Caster et al., 1983 Science, 221, 709 − 713, and Shrake & Rupley, 1973 J. Mol. Biol. 79(2):351−371があげられ、開示の全てを、本願に取り込む。
【0055】
元のタンパク質および互いのタンパク質から新たに発生させた人工結合部位の領域における、アミノ酸置換によるユビキチンタンパク質足場の変異体を、対象とされた各配列セグメントのターゲット突然変異により、発生できる。この場合、極性、電荷、溶解性、疎水性/親水性等の所定の特性を有するアミノ酸を、それぞれ、各特性を有するアミノ酸で交換または置換できる。置換の他に、「突然変異」、「修飾」および「交換」は、挿入および欠失も含む。タンパク質レベルにおいて、前記修飾を、当業者に公知の方法によるアミノ酸側鎖の化学的改変により行ってもよい。
【0056】
ユビキチンの突然変異方法
各配列セグメントの突然変異の開始点として、例えば、当業者に公知の方法により、調製され、改変され、増幅されたユビキチンのcDNAを使用できる。一次配列の比較的狭い領域(例えば、1〜3個のアミノ酸)におけるユビキチンの部位特異的改変には、市販の試薬および方法が利用可能である(「Quick Change」、Stratagene;「Mutagene Phagemid in vitro Mutagenesis Kit」、Biorad)。大きい領域の部位特異的な突然変異には、具体的な態様として、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が、当業者に利用可能である。この目的のために、所望の部位が変性された塩基対組成を有する合成オリゴデオキシヌクレオチドの混合は、例えば、変異の誘導に使用できる。これは、イノシン等のゲノムDNAに自然には発生しない塩基対類似体の使用によってもなされ得る。
【0057】
βシート領域のβ鎖または前記βシート鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位の1つ以上の突然変異の開始点は、例えば、ユビキチンのcDNAでもよいし、ゲノムDNAでもよい。また、ユビキチンタンパク質をコードする遺伝子は、合成的に調製されてもよい。
【0058】
突然変異に利用可能な公知の他の手法は、部位特異的突然変異の方法、ランダム突然変異の方法、PCRを使用する突然変異または類似の方法である。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、突然変異が生成される前記アミノ酸部位は予め定められている。修飾されるアミノ酸の選択は、修飾されるべきアミノ酸に関して、請求項1の限定を満たすように行われる。いずれの場合にも、異なる変異のライブラリーは、通常、公知の方法によりスクリーニングされて確立される。修飾されたユビキチンタンパク質について、十分な構造情報が利用可能な場合には、通常、修飾されるアミノ酸の前選択が、特に簡易に行われ得る。
【0060】
本発明によれば、例えば、標的変異、および、従来技術であるPCR、化学的突然変異、細菌の突然変異誘発株を使用する、長い配列セグメントの突然変異を使用できる。
【0061】
本発明の一実施形態において、前記突然変異は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドの集合により行われる。ただし、他のコドン(トリプレット)を使用できることも理解すべきである。前記βシート構造が維持されるように、前記変異が行われる。通常、前記突然変異は、タンパク質の表面上に露出される安定なβシート領域の外側で行われるのが好ましい。それには、部位特異的突然変異およびランダム突然変異の両方が含まれる。一次構造の比較的狭い領域(例えば、3〜5個のアミノ酸)を含む部位特異的突然変異は、市販のキットにより発生できる。前記市販のキットは、Stratagene(登録商標)(QuickChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標) phagemid in vitro mutagenesis kit)(US5,789,166;US4,873,192参照)があげられる。
【0062】
より広い領域を部位特異的突然変異に供する場合、DNAカセットを調製しなければならず、突然変異される領域は、変異された部位および変異されていない部位を含むオリゴヌクレオチドの集合により得られる(Nord et al., 1997 Nat. Biotechnol. 8, 772−777; McConell and Hoess, 1995 J. Mol. Biol. 250, 460−470.)。ランダム突然変異は、突然変異誘発株におけるDNAの伝播、または、PCR増幅(エラープローンPCR)により導入され得る(例えば、Pannekoek et al., 1993 Gene 128, 135 140)。このためには、エラー率の高いポリメラーゼが使用される。導入される突然変異の度合いを高め、異なる変異同士をそれぞれ組み合わせるために、PCR断片における変異を、DNAシャッフリングの手法により組み合わせることができる(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に関するこれらの突然変異戦略についての報告として、Kuchner and Arnold (1997) TIBTECH 15, 523−530の報告が提供される。選択されたDNA領域に、このランダム突然変異を行うためにも、突然変異に使用されるDNAカセットを、構築しなければならない。
【0063】
ランダム修飾は、当該技術分野において、十分に確立された公知の方法により行われる。「ランダムに修飾されたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列」は、いくつかの部位が、ヌクレオチドまたはアミノ酸により挿入、欠失または置換され、特性が予測できないヌクレオチド配列またはアミノ酸配列である。多くの場合、挿入された前記ランダムヌクレオチド(アミノ酸)配列、または、ヌクレオチド(アミノ酸)配列は、「完全にランダム」であろう(例えば、ランダム化合成またはPCRを介した突然変異の結果として)。ただし、前記ランダム配列は、共通の機能的特性(例えば、発現産物のリガンドへの反応性)を有する配列を含み得る。また、前記ランダム配列は、最終的な発現産物が、例えば、異なるアミノ酸の分布においても、完全にランダムな配列であるという意味で、ランダムでもよい。
【0064】
ランダム化された断片をベクター中に適切に導入するために、本発明では、前記ランダムヌクレオチドは、部位特異的PCRを介した突然変異の方式により、発現ベクター中に導入されるのが好ましい。ただし、他の選択肢は、当業者に公知であり、例えば、合成ランダム配列ライブラリーを同様にベクターに挿入可能である。
【0065】
融合PCRにより変異体またはライブラリーを発生させるために、例えば、3回のPCR反応を行ってもよい。2回のPRC反応は、部分的に重なった中間体フラグメントを発生するように行われる。3回目のPCR反応は、前記中間体フラグメントを融合するように行われる。
【0066】
ライブラリーまたは変異体株の構築方法は、所望の制限酵素認識部位周辺のプライマー(制限酵素認識部位プライマー)の第1セット、および、例えば、目的のコドンの上流および下流周辺のプライマー(変異原性プライマー)の第2セットを構築する工程を含んでもよい。制限酵素認識部位プライマーは、フォワード制限酵素認識部位プライマーおよびリバース制限酵素認識部位プライマーを含む。変異原性プライマーは、フォワード変異原性プライマーおよびリバース変異原性プライマーを含む。一実施形態において、前記プライマーは、目的のコドンの上流および下流について構築される。前記制限酵素認識部位プライマーおよび前記変異原性プライマーは、第1中間体フラグメントおよび第2中間体フラグメントの構築に使用される。2回のPCR反応により、これらの直線状の中間体フラグメントが生成される。これらの各直線状の中間体フラグメントは、少なくとも一つの目的の変異コドン、フランキングヌクレオチド配列および切断部位を含む。前記3回目のPCR反応では、前記2つの中間体フラグメントならびに前記フォワード制限酵素認識部位プライマーおよび前記リバース制限酵素認識部位プライマーが使用され、直線状の融合産物が生成される。一方、前記直線状の産物の結合していない末端は、制限酵素で切断され、前記直線状の産物に付着末端が作製される。前記直線状の産物の前記付着末端は、DNAリガーゼの使用により融合され、環状の産物、例えば、環状のポリヌクレオチド配列が生成される。
【0067】
前記中間体フラグメントの構築のために、フォワードプライマーおよびリバースプライマーの2つのセットについての設計および合成が行われる。前記2つのセットは、制限酵素切断部位をおよびそのフランキングヌクレオチド配列を含む第1セット、ならびに、目的の変異コドンを少なくとも一つ含む第2セット(変異原性プライマー)を含む。当業者は、前記変異の数が所望の変異アミノ酸修飾の数に対応することを認識するであろう。本願発明者は、他の制限酵素が前記工程に使用可能かを熟考した。この切断部位の正確な位置、ならびに、前記フォワードプライマーおよび前記リバースプライマーの対応する配列は、適宜改変され得る。当該技術分野において利用可能な他の方法も、代替として使用され得る。
【0068】
本発明において、足場に導入される発現産物のランダム化フラグメントを有することを除けば、少なくとも一つの融合パートナーをコードするヌクレオチド配列に融合される、ランダム化ヌクレオチド配列を有することにより、融合パートナーに前記ランダム配列を連結する必要がある。融合パートナーは、例えば、前記発現産物の発現および/または精製/単離および/または、さらに安定化を促進できる。
【0069】
本発明の一例によれば、単量体ユビキチンの2、4、6、8、62、63、64、65、66および/または68位における、少なくとも6個のアミノ酸のランダム置換を、非常に簡易にPCRの手段により行うことができる。前述の部位が、前記タンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端の近くに位置しているためである。したがって、操作されるコドンは、対応するcDNA鎖の5’末端および3’末端である。そこで、突然変異PCR反応に使用される前記第1オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される2、4、6および/または8位のコドンから離れており、ユビキチンの配列におけるアミノ末端のコード鎖に対応する。したがって、前記第2オリゴデオキシヌクレオチドは、変異される62、63、64、65、66および/または68位から離れており、少なくとも部分的に、カルボキシ末端のポリペプチド配列の非コード鎖に対応する。両方のオリゴデオキシヌクレオチドにより、ポリメラーゼ連鎖反応は、鋳型として単量体ユビキチンをコードするDNA配列を使用して行うことができる。
【0070】
また、得られた増幅産物を、例えば、制限エンドヌクレアーゼの認識配列を導入するフランキングオリゴデオキシヌクレオチドを使用する、他のポリメラーゼ連鎖反応に添加できる。本発明によれば、所定のハプテンまたは抗原に対する結合特性を有するユビキチン変異体の単離のための次の選択工程での使用に適したベクター系中に得られた前記遺伝子カセットを導入するのが好ましい。
【0071】
ユビキチンの修飾領域
基本的に、結合パートナーであるED−Bに接触可能かどうか、および、タンパク質の全体構造が、推測上修飾に耐性を示すかどうかで、修飾領域は、選択され得る。
【0072】
表面露出β鎖における修飾の他に、前記タンパク質の他の表面露出領域も修飾でき、前記β鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位において行われるのが好ましい。これらの修飾領域は、新規に発生させるED−Bに対する高い結合親和性に関与する。
【0073】
本発明の他の任意の実施形態において、前記タンパク質における4つのβ鎖の1つもしくは2つにおけるアミノ酸、好ましくは2つにおけるアミノ酸、または、好ましくは前記4つのβ鎖の2つに隣接する3つ以内のアミノ酸部位が、修飾され、新規の結合特性が発生する。前記4つのβ鎖の3つもしくは4つにおける修飾、または前記β鎖の3つもしくは4つに隣接する3つ以内のアミノ酸部位の修飾も、ED−B結合発生のために、任意で行ってもよい。
【0074】
アミノ末端およびカルボキシ末端鎖におけるアミノ酸、または、アミノ末端およびカルボキシ末端鎖に隣接する3つ以内のアミノ酸部位が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、ED−Bへの新規の結合部位を発生させる。この点において、前記カルボキシ末端βシート鎖に隣接する4つ以内のアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換され、および、前記アミノ末端β鎖に隣接する1つ以内のアミノ酸が修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換される。
【0075】
哺乳類のユビキチン、好ましくはヒトのユビキチンにおける下記の部位の表面露出アミノ酸の少なくとも3つが、修飾されるのが特に好ましく、好ましくは置換される:2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位。前記アミノ酸グループの少なくとも4つのアミノ酸は、結合パートナーであるED−Bに対して従来は存在しなかった結合親和性を有する修飾タンパク質の発生に特に適していることが見出された、ユビキチンの表面に連続的な表面露出領域を形成する。これらのアミノ酸残基の少なくとも3つは、修飾されなければならない。任意に、前記アミノ酸残基の3、4、5、6、7、8、9または10個が修飾され、任意にアミノ酸残基の付加を組み合わせることもできる。
【0076】
上記修飾後、本願発明者は、実施例で述べるアミノ酸修飾ユビキチン配列が、非常に高い親和性(Kd値10−9以下)でED−Bと結合することを見出した。
【0077】
融合タンパク質
他の好ましい実施形態において、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した、前記本発明の結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。
【0078】
さらなる態様において、本発明は、薬学的活性成分および/または診断用活性成分と融合した、前記本発明のヘテロ二量体結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。本発明の融合タンパク質は、非ポリペプチド成分、例えば、非ペプチドリンカー、非ペプチドリガンド、例えば、治療または診断に関連する放射線核種を含んでもよい。低分子の有機化合物または非アミノ酸化合物、例えば、糖、オリゴ糖、多糖、脂肪酸等を含んでもよい。本発明の好ましい一実施形態において、前記ユビキチンベースのED−B結合ヘテロマー分子は、治療または診断特性を有するタンパク質またはペプチドに、共有的にまたは非共有的に接合される。
【0079】
ED−B結合能を有するユビキチンベースの融合タンパク質の取得方法について、いくつかの例を、以下に示す。
a)ユビキチンに存在するリジン残基を介した前記タンパク質の接合;
b)システイン残基を介した前記ヘテロ二量体ユビキチン結合タンパク質の接合
前記システイン残基は、C末端に位置するか、または任意の他の部位(例えば、24もしくは57位のアミノ酸残基)に位置し得る;マレイミド選択的成分による接合;
c)ペプチド性またはタンパク質性の接合−遺伝学的融合(好ましくはC末端またはN末端)
d)タグに基づく融合−前記ターゲットタンパク質ED−BのC末端またはN末端に位置するタンパク質またはペプチド。融合「タグ」、例えば、ポリヒスチジン(特に、放射性標識に関する)。
【0080】
補助目的のタンパク質に共有的および非共有的に付着するための、これらおよび他の方法は、当該技術分野において周知であるので、さらに詳細には説明しない。
【0081】
前記活性成分は、サイトカイン、好ましくは、腫瘍壊死因子(例えば、TNFα、TNFβ)、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−12、IL−10、IL−15、IL−24、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−9、IL−11、IL−13、IL−8、IL−1α、IL−1β)、インターフェロン(例えば、IFNα、IFNβ、IFNγ)、GM−CSF、GRO(GROα、GROβ、GROγ)、MIP(MIP−1−α、MIP−1β、MIP−3α、MIP−3β)、TGF−β LIF1 CD80、CD−40リガンド B70、LT−β、Fas−リガンド、ENA−78、LDGF−PBP、GCP−2、PF4、Mig、IP−10、SDF−1α/β、BUNZO/STRC33、I−TAC、BLC/BCA−1、MDC、TECK、TARC、RANTES、HCC−1、HCC−4、DC−CK1、MCP−1−5、エオタキシン、エオタキシン−2、I−309、MPIF−1、6Ckine、CTACK、MEC、リンホタクチン、フラクタルカイン等からなる群から選択されるサイトカインである。
【0082】
本発明において使用される最も好ましいサイトカインの一つは、TNFαである。炎症性サイトカインであるTNFは、哺乳類の体内において、抗腫瘍作用を含む複数の活性を有する。TNFは、ヒトにおいて、有効量では許容できない毒性を示すために、近年、臨床的に適切ではなくなっている。近年、TNFは、メルファラン等の細胞増殖抑制物質との併用で、治療に使用される。
【0083】
さらに任意に、前記ヘテロ多量体ユビキチン結合タンパク質に接合可能な前記活性成分は、毒性化合物、好ましくは、低分子有機化合物またはポリペプチド、任意に、毒性化合物、例えば、サポリン(saporin)、トランケート緑膿菌外毒素A(truncated Pseudomonas exotoxin A)、組換えゲロニン(recombinant gelonin)、リシンーA鎖(Ricin−A chain)、カリケアマイシン(calicheamicin)、ネオカルチノスタチン(neocarzinostatin)、エスペラミシン(esperamicin)、ダイネミシン(dynemicin)、ケダルシジン(kedarcidin)、マデュロペプチン(maduropeptin)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ダウノルビシン(daunorubicin)、アウリスタチン(auristatin)、コレラトキシン(cholera toxin)、モデシン(modeccin)、ジフテリア毒素(diphtheria toxin)からなる群から選択される毒性化合物である。
【0084】
本発明のさらなる実施形態において、前記本発明のヘテロ多量体ユビキチン結合タンパク質は、人工アミノ酸を含んでもよい。
【0085】
前記本発明の融合タンパク質のさらなる実施形態において、前記活性成分は、蛍光色素、好ましくは、ガンマ放射同位体のグループの放射線核種のいずれか、好ましくは、99Tc、123I、111In、または陽電子放出体のグループ、好ましくは、18F、64Cu、68Ga、86Y、124I、またはベータ放出体のグループ、好ましくは、131I、90Y、177Lu、67Cu、またはアルファ放射体のグループ、好ましくは、213Bi、211At;Alexa FluorまたはCy dyes(Berlier et al., J Histochem Cytochem. 51 (12): 1699−1712, 2003);光増感剤;プロコアグラント因子、好ましくは、組織因子(例えば、tTF(断ち切った組織因子);プロドラッグ活性の酵素、好ましくは、カルボキシぺプチダーゼ、グルクロニダーゼおよびグルコシダーゼからなる群から選択される一つの酵素;および/または機能性Fcドメイン、好ましくは、ヒト機能性Fcドメインからなる群から選択される一つの成分である。
【0086】
本発明の融合タンパク質に関するさらなる実施形態は、さらに、血清半減期を調整する成分、好ましくは、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ペプチドおよび免疫グロブリンからなる群から選択される成分を含む。
【0087】
結合特性(解離定数)
前記本発明の融合タンパク質の結合特異性は、Kdで与えられる非融合タンパク質で前述のように定義したのと同様である。本発明によれば、特異的結合親和性を定義する「Kd」は、10−7〜10−12Mの範囲である。10−5M以下の値であれば、定量化可能な結合親和性であると考えられる。適用に応じて、Kdの値は、例えば、クロマトグラフィーへの適用の場合には、10−7M〜10−11Mが好ましく、または、診断もしくは治療への適用の場合には、10−9M〜10−12Mが好ましい。さらに好ましい結合親和性は、10−7〜10−10Mであり、好ましくは、10−11Mである。
【0088】
前記結合親和性を決定する方法は、それ自体公知であり、例えば、下記の方法から選択できる:ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、Biacore(登録商標)により提供される)、蛍光分光法、等温滴定熱量測定(ITC)、超遠心分析法、FACS。
【0089】
上記修飾後、本願発明者は、実施例で述べるアミノ酸修飾ユビキチン配列が、非常に高い親和性(Kd値10−10M以下)でターゲットと結合することを見出した。
【0090】
ユビキチンの二量体化
本発明において、「二量体」は、2つの単量体ユビキチンタンパク質を含むタンパク質であると考えられる。前記二量体が2つの異なる修飾単量体を含む場合、前記二量体は、「ヘテロマー二量体」または「ヘテロ二量体」と呼ばれる。したがって、前記本発明の「ヘテロ二量体」は、特異的結合パートナーED−Bに対して共同で一価の結合特性を示す、2つの異なる修飾単量体ユビキチンタンパク質の融合物であると考えられる。前記本発明の修飾ヘテロ二量体ED−B結合ユビキチンタンパク質は、各単量体ユビキチンタンパク質を個々にスクリーニングし、その後、これら2つを結合することによっては、得ることができず、前記ED−Bリガンドへの共同での一価の結合活性を示す第1単量体ユニットおよび第2単量体ユニットからなるヘテロ二量体をスクリーニングすることにより、得ることができることを強調しておく。前記各サブユニットは、ED−Bへの結合親和性がかなり制限され、結合した二量体修飾ユビキチンタンパク質のみが、前述の優れた結合特性を有することが期待される(例えば、図4参照)。
【0091】
本発明によれば、遺伝学的にヘッドトゥテイルで結合された2つの異なる修飾ユビキチン単量体は、ED−Bの同じエピトープに結合し、両方の結合ドメイン領域が共に作用することでのみ効果を示す。前記単量体の前記BDRは、単独の連続的な結合領域を形成する。
【0092】
したがって、フィブロネクチンのED−Bに効果的に結合する、前記本発明の修飾ユビキチンタンパク質は、二量体化される。前述のように、前記単量体は、直接連結されてもよいし、リンカーを介して連結されてもよい。種々の取り得るリンカーが、使用され得る。
【0093】
各単量体ユビキチンは、2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の修飾を示す。前記単量体タンパク質は、遺伝学的に互いに融合される。前記ターゲットへの結合は、前記BDRの共同によりなされる。すなわち、前記BDRは、共同して、フィブロネクチンの前記ED−Bドメインに一価で結合可能な、共通の結合領域を一つ形成する。
【0094】
ED−Bに結合する修飾ユビキチンへテロ二量体
Kd=10−7〜10−12MでED−Bに結合し、フィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示す、前記本発明のユビキチンのヘテロ二量体は、下記の2つの選択肢から選択される。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換、および、
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
【0095】
実施形態において、前記融合タンパク質は、第1ユビキチン単量体の6、8、63〜66位のアミノ酸の置換、ならびに、第2ユビキチン単量体の6、8、62〜66位、および、任意に2位のアミノ酸の置換を有する、前記ユビキチン単量体が、遺伝学的に融合されたヘテロ二量体であり、好ましくは、
前記第1ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換、
8位におけるロイシン(L)のトリプトファンまたはフェニルアラニン(W、F)への置換、
63位におけるリジン(K)のアルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
64位におけるグルタミン酸(E)のリジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)への置換、
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換、
66位におけるトレオニン(T)のプロリン(P)への置換;
前記第2ユビキチン単量体において、
6位におけるリジン(K)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)、セリン(S)またはグルタミン(Q)への置換
8位におけるロイシン(L)のトレオニン(T)、アスパラギン(N)またはセリン(S)への置換
62位におけるグルタミン(Q)のトリプトファン(W)またはフェニルアラニン(F)への置換
63位におけるリジン(K)のセリン(S)、トレオニン(T)、アスパラギン(N)またはグルタミン(Q)への置換
64位におけるグルタミン酸(E)のアスパラギン(N)、セリン(S)、トレオニン(T)またはグルタミン(Q)への置換
65位におけるセリン(S)のフェニルアラニン(F)またはトリプトファン(W)への置換
66位におけるトレオニン(T)のグルタミン酸(E)またはアスパラギン酸(D)への置換
任意に、2位におけるグルタミン(Q)のアルギニン(R)、ヒスチジン(H)またはロイシン(K)への置換が好ましい。
【0096】
得られた修飾ユビキチンへテロ二量体が、Kd=10−7〜10−12Mでフィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED−B)に対する特異的結合親和性を示し、フィブロネクチンの前記エクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示し、且つ、ユビキチンタンパク質の構造的安定性が破壊されず、妨害されない限り、各単量体におけるこれらの置換の選択肢は、互いに組み合わせることができる。
【0097】
最も好ましい置換は、下記のとおりある。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくともK6W、L8W、K63R、E64K、S65FおよびT66Pの置換;
および、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65WおよびT66Eの置換;任意にさらにQ2Rの置換、または
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくともQ2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sの置換;
および、第2単量体ユニットにおける、少なくともK6X、L8X、Q62X、K63X、E64X、S65XおよびT66Xの置換;任意にさらにQ2Xの置換、Xは、任意のアミノ酸(図2参照)。
【0098】
ED−Bへの結合タンパク質を発生させる前記第1ユビキチン単量体において、特に好ましい置換は、下記のとおりである。
2位:Q→T、4位:F→W、6位:K→H、62位:Q→N、63位:K→F、64位:E→K、65位:S→L、66位:T→S
【0099】
2つの単量体のヘッドトゥテイルでの結合には、リンカーを使用しなくてもよいし、どのようなリンカーを使用してもよい。好ましいリンカーは、配列番号32のリンカーまたは、GIG配列、SGGGGIG配列もしくはSGGGGSGGGGIG配列のリンカーである。
【0100】
好ましい実施形態において、2つの結合決定領域(BDR)を有し、ED−Bに対して共に作用するユビキチンヘテロ二量体は、配列番号33または34のアミノ酸配列を含む。さらに好ましいタンパク質は、下記配列(配列番号47)が提示される。下記配列において、XXXXは、どのようなアミノ酸でよい。リンカーは、SGGGGSGGGGIG配列が使用される。他の種類のリンカー、またはリンカーなしも、代替可能と理解される。
【化1】
【0101】
これらの配列のタンパク質のコンセンサス配列の例を、図2に示す。
【0102】
薬学的活性成分としてTNFαを含む、前記本発明の好ましい融合タンパク質は、配列番号35または36の配列を有する。
【0103】
本発明のさらなる態様において、本発明は、前述のタンパク質または融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドをも包含する。また、前記ポリヌクレオチドを含むベクターは、本発明に包含される。
【0104】
本発明のさらなる態様において、前述のタンパク質もしくは融合タンパク質、および/または、前記本発明の組換えタンパク質もしくは組換え融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、または、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを含む、宿主細胞は、包含される。
【0105】
本発明のタンパク質の使用、例えば、ED−Bに対する特異的結合特性を有し、TNFα等のエフェクターに融合したヘテロ二量体ユビキチンの使用
前記本発明の修飾ユビキチンED−B結合タンパク質は、例えば、in vitroまたはin vivoで使用する診断薬、および治療薬の調製に使用される。前記本発明のタンパク質は、例えば、直接的なエフェクター分子(修飾物質、拮抗物質、作用物質)または抗原認識ドメインとして使用できる。ED−B抗原が大量に出現する腫瘍の例を、図1の表に示す。
【0106】
選択する融合パートナーに応じて、本発明の医薬組成物は、癌、例えば、乳癌および結腸直腸癌、またはED−Bが大量に出現する任意の他の腫瘍性疾患(図1に列記したこれらの例を参照)に適用される。
【0107】
前記組成物は、治療上の有効量を含むように適応される。投与量は、治療対象の組織、疾患の種類、患者の年齢および体重、ならびにさらに公知の要因によって決まる。
【0108】
前記組成物は、薬学的または診断的に許容されるキャリアを含み、任意に、さらに、従来公知の助剤および添加剤を含み得る。これらは、特に制限されず、例えば、安定化剤、界面活性剤、塩類、緩衝剤、着色剤等を含む。
【0109】
前記医薬組成物は、局所塗布用の液状製剤、クリーム、ローションの剤形;エアロゾル;粉末、細粒、錠剤、座剤、カプセル剤の剤形;エマルジョン、リポソーム製剤の剤形とし得る。前記組成物は、無菌、非発熱原性、等張性で、薬学的に従来公知で許容される添加剤を含むことが好ましい。また、U.S. PharmacopoeiaまたはRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mac Publishing Company(1990)の規則を参照できる。
【0110】
ヒトおよび獣医学の医薬療法および予防法の分野において、少なくとも一つの本発明のヘテロマーED−B結合ユビキチンタンパク質を含む、薬学的に有効な薬剤を、それ自体公知な方法により調製できる。生薬製剤に応じて、これらの組成物を、注射、点滴、全身投与、直腸投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、経皮投与または他の従来から使用されている投与方法により、非経口的に投与できる。医薬品の種類は、治療対象の疾患の種類、疾患の重症度、治療対象の患者、および医学分野の当業者に公知の他の要因によって決まる。
【0111】
一実施形態において、前記医薬組成物は、前記本発明のタンパク質、融合タンパク質またはこれらの混合物を含み、さらに、1以上の化学療法剤、好ましくは、下記表に示すものから選択される化学療法剤を含む。
【0112】
【表1】
【0113】
好ましい実施形態において、前記化学療法剤は、メルファラン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ダクチノマイシン、フルオロデオキシウラシル、シスプラチン、パクリタキセルおよびゲムシタビン、またはキナーゼ阻害剤群から選択される。
【0114】
本発明の「医薬組成物」は、組成物の形態で提供されてもよい。種々の活性成分および希釈剤および/または担体は、互いに混合され、混合製剤の形態でもよい。前記活性成分は、部分的にまたは全体的に別々の形態で存在する。このような混合または混合製剤の一例は、複数の部品からなるキットである。
【0115】
本発明の「組成物」は、少なくとも2つの薬理学的な活性化合物を含む。これらの化合物は、同時に投与してもよいし、1分〜数日の時間間隔で個々に投与してもよい。これらの化合物は、同じ経路で投与してもよいし、異なる経路、例えば、一方の活性化合物を経口投与し、他方の活性化合物を非経口投与することも可能である。また、前記活性化合物は、一つの薬剤、例えば、一つの点滴液に処方されてもよいし、個々に処方された両化合物を含むキットとして処方されてもよい。また、両方の化合物は、2以上の包装でも提供可能である。
【0116】
特に好ましい組み合わせは、前記本発明の融合タンパク質ならびにメルファランおよび/またはドキソルビシン(リポソーム製剤)である。ATC L01分類の抗悪性腫瘍剤以外に、前記本発明のTNF融合タンパク質は、サイトカインおよびその誘導体、放射性医薬品、治療用細胞(cell based therapeutics)ならびにナノ粒子を含む、他の抗悪性腫瘍剤と併用できる。
【0117】
腫瘍透過処理活性により、前記本発明のTNF融合タンパク質は(また、前記本発明の他の組換えタンパク質/融合タンパク質も)、世界保健機関により設定された解剖治療化学分類法(ATC)において、L01に示される全ての抗悪性腫瘍剤と併用できる。
【0118】
驚くべきことに、TNFαに融合したユビキチンヘテロ二量体の融合タンパク質、好ましくは、配列番号35または36の配列を有する融合タンパク質が、治療において有利に適用できることがわかった。TNFαは、毒性が高いため、通常、最小治療閾を下回る低用量でしか投与できない(このため、治療的に不活性である)。TNFαの毒性のため、治療的に有効な濃度への到達には、TNFαを使用する際、現在、四肢分離かん流アプローチが選択される。四肢かん流は、腕および足に直接抗癌剤を輸送するのに使用できる医療技術である。四肢への血流および四肢からの血流を、止血帯で一次的に停止させ、抗癌剤を直接四肢の血液に注入する。これにより、癌が発生している領域に高い投与量のTNFαを、患者に受け入れさせることができる。
【0119】
しかし、前記本発明のTNFα融合タンパク質を適用することにより、非毒性であって且つ治療的に有効な濃度でTNFαを投与できる。TNFαは、前記本発明の(結合)融合タンパク質に連結されるため、疾病部位(例えば、腫瘍部位)に直接活性を示し、「遊離」のTNFαを、徹底的に低減できる。
【0120】
前記本発明の融合タンパク質としてTNFαを投与することにより、TNFαによる全身性の副作用を、著しく低減できる。前記本発明のTNFα融合タンパク質の使用により、治療効果に達するためのTNFαの全投与量を、大幅に低減でき、特に化学療法剤(上記参照)との併用において、全身の腫瘍の治療に有利に使用できる(四肢かん流の必要性および制約がない)。
【0121】
さらなる実施形態において、前記医薬組成物は、複数の部品からなるキットの形態でもよく、前記本発明の組換えユビキチンタンパク質/融合タンパク質、および1以上の化学療法剤が個々に提供される。
【0122】
前記本発明のヘテロ二量体ED−B結合タンパク質の製造方法
前記本発明のED−B結合タンパク質は、例えば、単純な有機合成戦略、固相支援合成技術等の、任意の従来公知の種々の技術により、または、市販の自動合成装置により調製できる。一方、従来の遺伝子組換え技術単独で、または、従来の合成技術との組み合わせにより、調製することもできる。
【0123】
本発明の他の態様において、組換え修飾ユビキチンタンパク質の発生方法が提供される。前記方法は、少なくとも下記の工程を含む。
a)単量体ユビキチンタンパク質から生じる異なる修飾がなされた二量体ユビキチンタンパク質群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つの修飾ユビキチン単量体を含む二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含む、前記工程
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
b)潜在的なリガンドとして、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)を提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と接触させる工程
d)スクリーニング処理により、修飾二量体ユビキチンタンパク質を同定する工程であり、
前記修飾二量体ユビキチンタンパク質は、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程。
任意に、
e)前記修飾二量体ユビキチンタンパク質を、前記結合親和性で、単離する工程
【0124】
任意に、前記修飾は、DNAレベルでの遺伝子工学、および、原核生物、真核生物またはin vitroにおける修飾タンパク質の発現により行われてもよい。
【0125】
さらなる実施形態において、前記修飾工程は、化学的合成工程を含む。
【0126】
本発明の一態様において、異なる修飾がなされたタンパク質群は、互いに異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質をコードする、2つのDNAライブラリーを遺伝学的に融合することにより得られる。
【0127】
さらなる態様において、前記修飾へテロ二量体ユビキチンタンパク質を、薬学的活性成分、任意に、サイトカイン、好ましくは、TNFα、または、診断用活性成分と融合させるように、また、前記組換え修飾へテロ二量体ユビキチンタンパク質を、前記薬学的活性成分、任意に、TNFα、または、前記診断用活性成分を介して形成されるように、前記方法は適用される。
【0128】
本発明によれば、修飾タンパク質は、さらに、化学的合成により調製されてもよい。この実施形態において、請求項1の前記c)工程からd)工程は、一つの工程で行われる。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、前記本発明のヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を形成する、前述の修飾単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含むライブラリーに関する。
【0130】
本発明のさらなる態様において、前述の2つのライブラリーの融合により得られるDNAを含む融合ライブラリーが提供され、各ライブラリーは、ヘテロ二量体ユビキチン融合タンパク質を得るために、異なる修飾がされた単量体ユビキチンタンパク質ユニットをコードし、前記単量体ユニットは、互いにヘッドトゥテイル配置で結合され、前記ライブラリーは、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示すユビキチンのヘテロ二量体融合タンパク質をコードする。前記相互結合は、当業者に公知のリンカーまたは前述のリンカーのいずれか1つにより行われる。本発明の一実施形態において、TNFαは、同時に薬学的活性化合物としての役割も果たすリンカーとして使用される。
【0131】
複合ライブラリーの製造は、実施例1で概要を述べる。ただし、ライブラリーの品質に注意を払わなければならない。足場技術におけるライブラリーの品質は、そもそも、複雑性(個々の変異体の数)および機能性(得られた候補の構造的およびタンパク質の化学的完全性)に左右される。両方の特性が互いにネガティブな影響を与える場合もあり、前記足場における修飾部位の数の増加によるライブラリーの複雑性の増大が、変異体のタンパク質の化学的完全性の低下をまねくおそれもある。これにより、溶解度、凝集性が低下し、および/または収量が低下する場合もある。この理由は、エネルギー的に良好なタンパク質パッケージを有する本来の足場から大きく逸脱するためである。
【0132】
このため、適切な足場ライブラリーを構築するために、両極端な、ターゲットへの結合性を最適化するために、本来の配列に可能な限り多くの変異を導入すること、および、ネガティブなタンパク質化学的効果を避けるために、可能なかぎり本来の一次配列を保存することの間で、天秤にかけることとなる。
【0133】
本開示は、前記本発明の態様または実施形態を考慮して、前述の特徴の考え得る組み合わせも包含することに留意する。
【0134】
ターゲットであるED−Bに対する結合親和性を有する修飾ユビキチンタンパク質の選択、および、結合親和性を発生させる修飾アミノ酸の決定
例えば、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質をコードする少なくとも2つのDNAライブラリーが、各単量体ユビキチンユニットにおいて、選択されたアミノ酸に異なる修飾をすることにより確立された後、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質をコードするDNA分子を得るために、これらのライブラリーは、例えば、リンカー技術により遺伝学的に融合される。本発明によれば、これらのライブラリーのDNAがタンパク質を発現し、このようにして得られた修飾二量体タンパク質がED−Bに接触されて、結合親和性が存在する場合には、パートナーへの結合が可能となる。
【0135】
接触工程およびスクリーニング工程が、ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質について、既に行われていることが本発明の重要な態様である。この工程により、ED−Bへの一価の結合活性を提供するユビキチンタンパク質のスクリーニングが可能である。
【0136】
本発明における接触は、適切な提示方法および選択方法、例えば、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、細胞表面ディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、または細菌表面ディスプレイ等の方法、好ましくは、ファージディスプレイ方法により、行われることが好ましい。徹底した開示のために、下記の参考文献を参照できる;Hoess, Curr. Opin. Struct. Biol.. 3 (1993), 572−579;Wells and Lowmann, Curr. Opin. Struct. Biol. 2 (1992), 597−604;Kay et al., Phage Display of Peptides and Proteins−A Laboratory Manual (1996), Academic Press。前述の方法は、当業者に公知であり、本発明における修飾に使用できる。
【0137】
本発明によれば、前記修飾タンパク質が、所定の結合パートナーに対して、定量化できる結合親和性を有するかどうかの決定は、1以上の下記の方法により行うことが好ましい:ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、および超遠心分析法。
【0138】
ファージディスプレイ選択法
本願に適用されるファージディスプレイ法の一種は、結合特性を示すユビキチン変異体についての、本発明における選択手法の一例として、後述する。同様に、例えば、細菌上(bacterial surface display;Daugherty et al., 1998, Protein Eng. 11(9):825−832)もしくは酵母細胞上に提示する方法(yeast surface display; Kieke et al., 1997 Protein Eng. 10(11):1303−10)、または、リボソームディスプレイ(Hanes and Pluckthun, 1997 Proc Natl Acad Sci U S A. 94(10):4937−4942; He and Taussig, 1997 Nucleic Acids Res. 25(24):5132−5134)、cisディスプレイ(Odegrip et al., 2004 Proc Natl Acad Sci U S A. 101(9):2806−2810)もしくはmRNAディスプレイ等の無細胞選択システムを、適用できる。後者の場合、遺伝子型および表現型の一過性の物理的な結合が、リボソームを介して、適切なmRNAへのタンパク質変異体の連結により達成される。
【0139】
前記ファージディスプレイ法において、ユビキチンの組換え変異体は、繊維状ファージ上に提示される。一方、この変異体のコードDNAは、一本鎖の形状でファージエンベロープパッケージされ、同時に提示される。このため、親和性濃縮の枠組みにおいて、所定の特性を有する変異体を、ライブラリーから選択でき、その遺伝情報を、それぞれ、適切な細菌に感染させることにより増幅でき、また異なる濃縮サイクルに添加できる。ファージ表面での変異したユビキチンの提示は、アミノ末端シグナル配列、好ましくはPelBシグナル配列、および、前記ファージのカプシドまたは表面タンパク質への遺伝子融合により達成され、カプシドタンパク pIIIまたはそのフラグメントのカルボキシ末端融合が好ましい。また、コードされた融合タンパク質は、例えば、アフィニティークロマトグラフィーによる検出および/または精製のためのアフィニティータグもしくは抗体エピトープ、または、前記親和性濃縮過程における融合タンパク質の特異的切断のためのプロテアーゼ認識配列等のさらなる機能性成分を含んでもよい。また、例えば、ユビキチン変異体の遺伝子およびファージカプシドタンパク質またはそのフラグメントのコード領域の間に、アンバー停止コドンを存在させてもよい。前記アンバー停止コドンは、1つのアミノ酸の導入により、部分的に、適切なサプレッサー株における翻訳の際に認識されない。
【0140】
ED−Bへの結合特性を有するユビキチン変異体の単離に関する選択工程に適切であり、前述の融合タンパク質の遺伝子カセットが挿入された細菌ベクターは、ファージミドという。中でも、繊維状ファージの遺伝子間領域(例えば、M13もしくはf1)、または、その部分を含む。例えば、M13K07等のヘルパーファージによる前記ファージミドを輸送する細菌細胞の重複感染の際、ファージカプシド中に、ファージミドDNAの閉鎖鎖がパッケージングされる。このようにして発生したファージミドは、細菌により分泌され、前記カプシドタンパク質 pIIIまたはそのフラグメントとの融合により、コードされた各ユビキチン変異体を、細菌表面に提示する。本来のpIIIカプシドタンパク質は、適切な細菌株への再感染できるように、ファージミドに存在する。このため、対応するDNAの増幅の可能性は、保持される。このため、前記ユビキチン変異体の表現型、すなわち、潜在的な結合特性とその遺伝子型との間の物理的な結合が、確保される。
【0141】
得られたファージミドを、当業者に公知の手法により、ファージ上に提示されたユビキチン変異体のED−Bへの結合により選択できる。このために、前記提示されたユビキチン変異体は、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一次的に固定化され、結合しない変異体を分離した後に、特異的に溶出し得る。前記溶出は、例えば、100mM トリエチルアミン等の基本溶液により行うことが好ましい。また、前記溶出は、酸性条件下で、タンパク質分解または感染細菌の直接添加により行うことができる。このようにして、得られたファージミドは、ED−Bへの結合特性を有するユビキチン変異体の、連続的な選択サイクルおよび増幅サイクルにより、再度増幅され、濃縮され得る。
【0142】
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、ファージミドの形態、すなわち、ファージに融合され、または、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、可溶性のタンパク質の形態で行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、または前記文献に記載されている。前記特性評価は、例えば、単離された変異体の一次配列のDNA配列の決定を含んでもよい。また、単離された変異体の親和性および特異性は、例えば、標準的な生化学的方法、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴分光法、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、超遠心分析法、またはその他の方法により検出できる。安定性分析については、例えば、化学的または物理的変性についての分光法が、当業者に公知である。
【0143】
リボソームディスプレイ選択法
本発明のさらなる実施形態において、ユビキチン変異体のリボソームディスプレイ法を、無細胞転写/翻訳系の手法により準備し、対応するmRNAおよびリボソームが複合体として提示される。このために、前述のDNAライブラリーは、基礎として使用され、変異体の遺伝子は、対応する発現およびタンパク質生合成の制御配列との融合の形態で提示される。前記遺伝子ライブラリー3’末端での前記停止コドンの欠失、および、初期の3つのタンパク質からなる複合体に適した実験条件(低温、高濃度のMg2+)により、前記mRNAリボソームは、in vitroでの転写/翻訳中において維持される。
【0144】
各単量体ユビキチンユニットにおける選択されたアミノ酸の異なる修飾により、ヘテロ二量体修飾ユビキチンタンパク質を含むタンパク質ライブラリーが確立された後に、本発明によれば、前記修飾二量体は、結合親和性を有する場合には、ED−Bに接触され、パートナー同士の結合を可能にする。これらのタンパク質ライブラリーは、前記修飾タンパク質と前記ED−Bターゲットタンパク質との間で接触可能な方法で、前記修飾タンパク質を提示する任意の他の方法をディスプレイし、または使用する、ディスプレイ法ライブラリーの形態でもよい。前記ディスプレイ法は、任意に、ファージディスプレイ、リボソームディスプレイ、TATファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイまたはmRNAディスプレイ法である。
【0145】
10−7〜10−12Mの範囲のKdの特異的結合親和性によるED−Bへの結合活性に関して、修飾ユビキチン変異体の選択を、当業者に公知の方法により行うことができる。このために、例えば、リボソーム複合体で提示される前記ユビキチン変異体は、それぞれ、例えば、マイクロタイタープレート上に結合したターゲット物質に、一時的に固定化され、または、溶液中で結合した後に磁性粒子に結合され得る。非結合変異体の分離に続けて、結合活性を有する変異体の遺伝子情報を、リボソーム複合体の破壊により、mRNAの形態で特異的に溶出できる。前記溶出は、50mM EDTAで行うのが好ましい。このようにして得られた前記mRNAは、単離され、適切な方法を使用してDNAに逆転写され(逆転写反応)、このようにして得られた前記DNAは、再度増幅され得る。
【0146】
in vitroでの転写/翻訳、選択および増幅の連続サイクルにより、所定のハプテンまたは抗原に結合特性を有するユビキチン変異体を、濃縮できる。
【0147】
ED−B結合タンパク質の特性評価
このようにして得られた前記ユビキチン変異体のさらなる特性評価は、適切な発現ベクター内の対応する遺伝子カセットのクローニング後、前述のように、可溶性のタンパク質の形態で行うことができる。適切な方法は、当業者に公知であるか、前記文献に記載されている。
【0148】
好ましくは、所定の結合パートナーに対する結合親和性を有するタンパク質の検出工程の後に、検出されたタンパク質の単離工程および/または濃縮工程が続く。
【0149】
前記本発明の修飾ユビキチンタンパク質の発現に続いて、それ自体公知の方法によりさらに、精製および濃縮される。前記選択された方法は、例えば、使用する発現ベクター、宿主組織、使用する意図した領域、タンパク質の大きさ、およびその他の要因等、それ自体当業者に公知の複数の要因により決定される。簡易に精製するために、前記本発明の修飾タンパク質は、分離材料への高い親和性を有する他のペプチド配列に融合させることができる。ユビキチンタンパク質の機能性に有害な効果を有さないか、または、特定のプロテアーゼ切断部位の導入により精製後に分離可能な融合が、好ましく選択される。このような方法は、それ自体当業者に公知である。
【0150】
図面の簡単な説明
図1は、種々の腫瘍におけるED−Bの発生を列記した表を示す。
【0151】
図2は、ED−Bへの驚くほど強力な結合親和性を有することが見出された、さらなる16種類の配列のコンセンサス部位およびアミノ酸置換を示す。前記コンセンサスアミノ酸部位は、前記第1単量体の結合決定領域である、2、4、6、62、63、64、65、66位である。一方、コンセンサスアミノ酸置換は、Q2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sである。図2に示すように、4種類のファミリーの配列を濃縮できた(コンセンサス配列、文字サイズはアミノ酸の発生頻度に対応する)。85および87位は、前記ヘテロ二量体タンパク質において、前記第2単量体における6および8位に対応する部位であり、141〜145位は、62〜64位に対応する。暗青色で示したTWHNFKLSは、1071−C12由来である。赤色で示した残基は、前記4種類のファミリーの配列のうちの1種類に属する。赤色で示した残基が、主に濃縮され(178/457配列)、HIT ELISAによれば、最も強力な結合分子を含む。
【0152】
図3は、親和性を向上させた四量体化を示す。修飾ユビキチン単量体からなる四量体と比較した、修飾ユビキチン単量体のKd値を、表に示す。ユビキチン変異体5E1および1H4を、例として示す。ED−B結合を、c−FN(細胞性フィブロネクチン)への結合と比較する。前記図は、前記単量体(5E1は4.51μM、1H4は9.98μM)と比較したターゲットであるED−Bへの四量体変異体(例えば、5E1は56nM、1H4は1.4nM)の結合において、親和性が著しく高いことを示している。
【0153】
図4は、ヘテロ二量体を発生させる、前方(第1)修飾ユビキチン単量体(BDR1を有する)と異なる修飾がされた後方(第2)ユビキチン単量体(BDR2を有する)との遺伝子組み換えが、親和性および特異性を有意に向上させることを示す。細胞および組織切片に結合する前記修飾ユビキチン分子を、Biacore、蛍光偏光測定により分析した。ヒトED−Bへの複数の変異体の結合の濃度依存性ELISA(conc.−ELISA)を示す。
【0154】
図4Aは、単量体41B10についての、Kd=9.45μMの結合親和性を示す。
【0155】
図4Bは、41B10が異なる第2単量体と結合して得られた46H9についての、Kd=131nMの結合親和性を示す。
【0156】
図5は、サイトカイン(例えば、TNFα)と融合した特異的変異体を示す。前記融合タンパク質は、前記修飾ユビキチン単量体を三量体形成し、生物学的に活性な分子である。
【0157】
図5Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合エフェクター融合タンパク質の模式図である。同図において、緑色(上部の構造)は、エフェクター、例えば、サイトカイン、好ましくは、TNFα;茶色、薄い茶色は、前記修飾ユビキチン単量体(Affilin(登録商標))である。
【0158】
図5Bは、前記修飾ユビキチンエフェクター接合5E1−TNFコンジュゲートが、アポトースシス促進活性(L929アポトーシスアッセイで測定)を有すること示す。
【0159】
図5Cは、1H4−TNFα融合物のED−Bへの結合親和性(Kd=15.1nM)が高いことを示す(一致した線により連結された黒丸)。BSAへの結合をコントロールとしてプロットした(線により連結されていない黒丸)。
【0160】
図6は、サイトカイン、例えば、TNFαに融合した、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子の親和性および活性を示す。
・修飾ユビキチンベースのED−B結合サイトカイン融合物のアポトーシス誘導活性:EC50 0.78±0.24pM
・遊離サイトカインのアポトーシス誘導活性:EC50 3.14±3.59pM
【0161】
図6Aは、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd 50.7nM)。
【0162】
図6Bは、遺伝学的にサイトカインTNFαに融合し、前記ヘテロ二量体24H12が多量体化された、修飾ユビキチンベースのED−B結合へテロ二量体分子24H12の親和性を示す(Kd=5.6nM)。
【0163】
図6Cは、ヘテロ二量体修飾ユビキチンライブラリー選択からの代表的な候補、例えば、ヘテロ二量体クローン9E12、22D1、24H12、41B10の分析を示す。細胞基質のフィブロネクチンをコントロールとして使用した場合と比較して、ターゲットであるED−Bに対して、Kd ELIZA値が向上され、前記ターゲットへの特異的結合が確認された。
【0164】
図6Dは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子9E12の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜15μM 9E12)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、前記ヘテロ二量体変異体9E12とED−Bとの間の相互作用を分析するチップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析した。会合解離曲線の分析からは、Kdを、決定できなかった。
【0165】
図6Eは、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾ヘテロ二量体ユビキチン分子41B10の、無標識相互作用分析による分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜15μM 41B10)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、前記ヘテロ二量体変異体41B10とED−Bとの間の相互作用を分析するチップ(Biacore)に固定化されたED−Bへの結合を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、623nM(623×10−9M、6.2×10−7M)であった。
【0166】
図7は、結合親和性および結合特異性に対する、異なる修飾がなされたユビキチン変異体の寄与を示す。前記異なる変異体は、小文字でマークされる共通の配列モジュールを共有する。前記変異体について、ED−B結合を分析した。図7は、修飾ユビキチンへテロ二量体が得られる、単量体の種々の組み合わせを示す。ヘテロ二量体変異体46−A5、50−G11および46−H4は、すべて同一の、BDR1を有する第1(前方)修飾単量体(同図において、「a」で示す)を有するが、第2(後方)ユビキチン単量体は、BDR2における異なる部位が修飾されている。変異体52−D10および52−B3は、BDR1を有する46−H9と比較して、異なる第1(前方)修飾単量体を有し、BDR2を有する同一の第2(後方)ユビキチン単量体(同図において、「e」で示す)を有している。
【0167】
前記修飾ユビキチンヘテロ二量体は、下記配列を有する:
46−H4:配列番号25、45−H9:配列番号26、46−A5:配列番号27、50−G11:配列番号28、52−B3:配列番号29、52−D10:配列番号30。
【0168】
実験過程において、配列LEHHHHHH(配列番号31)を有するHisタグにより、前述の配列を修飾した。
【0169】
図7に示すように、46−H4は、ED−Bへの優れた結合親和性を有する(Kd=189nM)。46−A5および52−D10は、結合活性を有さない。また、他の修飾ユビキチンタンパク質は、ED−Bへの結合活性が46−H4と比較して低い。したがって、ヘテロ二量体変異体における両単量体が、ターゲットへの高い結合親和性のために必要とされると結論付けることができ、両単量体がターゲットに対する一価の結合を示す。
【0170】
高いED−B結合活性を有する前記修飾ユビキチンヘテロ二量体46−H9は、前記2つの単量体の両結合ドメイン領域における下記のアミノ酸置換により、野生型ユビキチン単量体と比較して同定される。
前記第1モジュール(BDR1)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64A、S65T、T66L
前記第2モジュール(BDR2)において、(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
50G11
前記第1モジュール(46H9)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュールにおいて、(c)K6M、L8R、Q62M、K63N、E64A、S65R、T66L
46H4
前記第1モジュール(46H9)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュールにおいて、(d)K6G、L8W、Q62T、K63Q、E64Q、S65T、T66R
52B3
前記第1モジュールにおいて、(g)Q2R、F4P、K6Y、Q62P、K63P、E64F、S65A、T66R
前記第2モジュール(46H9)において、K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
52D10(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュールにおいて、Q2V、F4C、K6R、Q62T、K63A、E64P、S65G、T66D
前記第2モジュール(46H9)において、(e)K6H、L8M、Q62K、K63P、E64I、S65A、T66E
46A5(ED−Bに結合しない)
前記第1モジュール(46H9)において、(a)Q2G、F4V、K6R、Q62P、K63H、E64P、S65T、T66L
前記第2モジュールにおいて、(b)K6L、L8M、Q62L、K63A、E64F、S65A
【0171】
図8は、配列アライメントを示す。1行目:野生型ユビキチンタンパク質の2つの単量体(1行目)は、77位から88位までの12個のアミノ酸のリンカーSGGGGSGGGGIGにより結合される。BDR2を有する第2単量体は、89位のメチオニンから始まる。この二量体野生型ユビキチンタンパク質は、第1単量体および第2単量体の2つのBDRにおいて異なる修飾を有する、前記修飾へテロ二量体変異体46−H9(2行目)で整列されている。ターゲットへの一価の結合のために、両BDRは、ターゲットとの結合において、共に作用する。
【0172】
図9は、「Ub2_TsX9」(両単量体の45位がトリプトファンに修飾され、2つの単量体の間にリンカーGIG(77〜79位;80位のメチオニンから第2単量体が開始)を示すユビキチン)に対する、修飾ユビキチンへテロ二量体変異体1041−D11(1行目)の配列アライメントを示す。前記第2単量体の最後のC末端アミノ酸において、グリシンからアラニンに置換されている。3行目は、二量体である野生型ユビキチンであり、リンカーアライメントを示さない(このため、77位のメチオニンから第2単量体が開始する)、「Ubi−Dimer wt」を示す。4行目は、ヒトの野生型ユビキチンである「Ubi−Monomer wt」を示す。
【0173】
図10は、ヒトED−Bへの前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、濃度依存性ELISAを示す。変異体1041−D11は、非常に高いED−Bへの結合親和性を示す(Kd=6.9nM=6.9×10−9M)。ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89−t0という)への結合親和性を示すことを、黒丸で示し、この変異体が、ネガティブコントロール(6789−t0という)には結合しないこと(白丸)と比較する。
【0174】
図11は、フィブロネクチンフラグメントを含む固定化されたED−B(67B89)へのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合についての、量が増加する遊離ターゲットの存在下での、競合濃度依存性ELISAを示す。ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11は、非常に高いED−Bへの結合親和性を示す(IC50=140nM)。
【0175】
図12は、Biacore(登録商標)を使用した、前記修飾へテロ二量体ユビキチン分子1041−D11の、無標識相互作用分析における分析結果を示す。種々の濃度(図中の凡例:0〜200nM 1041−D11)の前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体について、SAチップ(Biacore)に固定化された、フィブロネクチンフラグメントを含むED−B(67B89という)への結合を分析した。会合解離曲線の分析から、Kdは、1nM(1×10−9M)であり、1041−D11とED−Bとの複合体の長期間における半減期を示すkoff率は、7.7×10−4s−1であった。
【0176】
図13は、結合活性の血清安定性分析を同時に分析する濃度依存性ELISAにおける、ED−Bへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。マウス血清もしくはラット血清またはコントロールとしてのPBST中での、37℃で1時間での前記変異体のプレインキュベーション等について、種々の条件を示す。Kd値は、すべて10〜20nMである。したがって、ED−Bへの前記ヘテロ二量体1041−D11の結合は、血清による顕著な影響を受けないと結論付けることができる。
【0177】
図14は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11とフィブロネクチンフラグメントとの複合体形成の、SE−HPLCによる分析を示す。
【0178】
図14Aは、1041−D11とED−Bとの複合体形成を示す。3回のHPLCのランを重ねている。SE−HPLC後の、保持時間21.651分の青色のピークは、純粋な1041−D11に由来し、保持時間26.289分の黒色のピークは、フィブロネクチンフラグメント67B89を表し、保持時間21.407分の赤色のピークは、1041−D11と67B89との混合物の結果を示す。1041−D11のピークの保持時間が短くなる側へのシフト、および、67B89のピークの消失は、1041−D11と可溶性ED−Bとの複合体の形成を示す。
【0179】
図14Bは、3回のSE−HPLCのラン、1041−D11(青色、21.944分)、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789(黒色、26.289分)および1041−D11と6789との混合物(21.929分および26.289分にピークを有する赤色線)を重ねて示す。前記1041−D11のピークのシフトは、ほとんど観察されなかった。6789のピークが消失しなかったこととあわせて、この事実は、ED−Bを含まないフィブロネクチンフラグメント6789に、有意に結合しないことを示す。
【0180】
図15は、ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の培養細胞への結合を示す。
【0181】
図15Aは、固定化されたヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の結合を示す。図15において、1列目は、抗ED−B抗体を使用したコントロールを示し、2列目は、タンパク質濃度58.7nMでの変異体のインキュベーションを示し、3列目は、10倍高濃度(587nM)の1041−D11タンパク質でのインキュベーションを示し、4列目は、PBSでのネガティブコントロールである。1行目において、ヒトWi38繊維芽細胞を、位相差で示し、2行目において、免疫蛍光法で示し、3行目において、核のDAPI染色を示す。前記変異体1041−D11は、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、Wi38に結合すると結論付けることができる。EDBを低レベルで発現するNHDF細胞を使用するコントロールを行った(データ示さず)。前記変異体は、それらの細胞には結合しなかった。
【0182】
図15Bは、バイタル(vital)ヒト胎児肺繊維芽細胞(Wi38)への結合を示す。前記ネガティブコントロールのNHDF細胞は、主要な正常繊維芽細胞であり、EDB−フィブロネクチンを低レベルで発現する。1行目および3行目は、種々のタンパク質濃度での変異体およびネガティブコントロールを示す。2行目および4行目は、EDB抗体を使用するコントロールのインキュベーションを示す。1〜2行目は、前記変異体とWi38細胞株へのポジティブコントロールを示す。3〜4行目は、NHDF細胞のインキュベーションを示す。前記変異体1041−D11が、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、Wi38に結合するのが観察できた。
【0183】
図15Cは、固定化されたマウスBalb 3T3細胞への結合を示す。前記変異体について、3つの異なるタンパク質濃度(1、10、50nM)でテストした。1行目は、細胞への前記変異体(SPVF−28−1041−411−TsX9)を示し、2行目は、ポジティブコントロール(Fv28−EDB−抗体)を示し、3行目は、ネガティブコントロール(UB2_TsS9;配列番号1に相当する非修飾ユビキチン)でのインキュベーションを示す。前記変異体1041−D11が、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、マウスBalb 3T3細胞に結合するのが観察できた。
【0184】
図15Dは、固定化されたマウスST−2細胞への結合を示す。前記変異体について、3つの異なるタンパク質濃度(1、10、50nM)でテストした。1行目は、細胞への前記変異体(SPVF−28−1041−411−TsX9)を示し、2行目は、ポジティブコントロール(Fv28−EDB−抗体)を示し、3行目は、ネガティブコントロール(UB2_TsS9;配列番号1に相当する非修飾ユビキチン)でのインキュベーションを示す。前記ヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11が、細胞外マトリックスを含むED−Bに高い特異性で、マウスBalb ST−2細胞に結合するのを観察できた。
【0185】
図16Aは、哺乳類組織切片における、ターゲットへのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の特異性を示す。7つの検体からのF9腫瘍細胞について、評価した。10nM〜100nMの範囲の異なる濃度でのヘテロ二量体ユビキチン変異体1041−D11の免疫組織学的検査において、マウス由来のF9腫瘍でのED−B特異的血管染色(vascular staining)を示した。ED−Bは、腫瘍血管構造の高特異的マーカーである。ターゲットタンパク質であるED−Bは、血管の反管腔側に局在する。変異体1041−D11は、特異的にF9腫瘍由来の組織切片において、血管構造を装飾する。得られた結果は、抗体フラグメントL19に匹敵する。さらに、48組織をテストした。FDA関連パネルにおける48通りの組織について、非特異的な染色は観察されなかった。
【0186】
図16Bは、野生型ユビキチン(同図において、Ub2(NCP2))との比較における、腫瘍組織での1041−D11の蓄積を示す。F9腫瘍組織について、30分から16時間の間の異なる時点で、1041−D11および野生型ユビキチンの存在を分析した。腫瘍組織における1041−D11の最も高い蓄積は、投与後30分および16時間で観察された。一方、F9腫瘍組織における野生型ユビキチンの蓄積は、低かった。前記変異体は、野生型ユビキチンと比較して、ED−Bを発現する腫瘍に濃縮される。このことは、腫瘍組織への1041−D11の直接的ターゲッティングの証拠となる。また、癌モデルにおける腫瘍への1041−D11のblood−ratioは、動物における1041−D11変異体in vivo活性を明らかに証明している(データを示さず)。
【0187】
図17は、TNFα融合タンパク質1041−D11のED−Bに対する高い選択性および特異性を示す。
【0188】
図17Aおよび17B:1041−D11TNFα融合タンパク質におけるTNFαのアポトーシス誘導活性を、細胞ベースアッセイ(cell based assay)(L929細胞)によりテストした。前記両図は、前記1041−D11−TNFα融合タンパク質(図17B)が、遊離TNFαと同程度に活性であることを、明らかに示している。
【0189】
図17Cは、ターゲットであるED−Bへの、ヘテロ二量体ユビキチン1041−D11TNFα融合タンパク質の高い選択性を証明している。前記ヒトED−Bフィブロネクチンドメイン67B89は、1041−D11変異体に、見かけのKD値1.8nMで結合され(黒丸)、ターゲットへの高い親和性を示す。ED−Bドメインを欠損するヒトフィブロネクチン(h6789)は、1041−D11TNFαに結合されない(白丸)。
【0190】
図17D+Eは、修飾ユビキチンED−B結合1041−D11TNFα融合タンパク質についての、Biacoreアッセイによる結合分析を示す。結果から、KD値1.13nMを示す1041−D11TNFα融合タンパク質の高い親和性が証明された。
【0191】
図17Fは、培養細胞における変異体1041−D11で観察された高い結合特異性が、1041−D11がTNFαに融合されても維持されることを示す。前記融合タンパク質は、EDB発現細胞に特異的に結合する。したがって、1041−D11TNFα融合タンパク質は、非常に高い親和性および特異性でターゲットであるED−B(ターゲット(+))に結合する。ED−Bを含まない血清(ターゲット(−))では、交差反応は観察されなかった。
【0192】
図18は、TNFαに融合した変異体1041−D11とメルファランとの併用による、7日間のマウスの処置期間中のin vivoでの相対的腫瘍成長を示す。データから、細胞増殖抑制剤であるメルファランと組み合わせた1041−D11−TNFαは、mTNFαとメルファランとの組み合わせ、またはメルファラン単独の場合より効果的に、相対的腫瘍成長を減少させることが、明らかに示された。7日間の処置後の前記腫瘍成長は、1041−D11−mTNFαによる高効率での減少を示す。このことは、融合タンパク質1041−D11−TNFαとメルファランとの併用による腫瘍治療の効能の明らかな証拠である。ED−Bは、マウスおよびヒトを含む、種々の哺乳類において同一である。このため、前記結果から、ヒトにおける変異体1041−D11−TNFαの性能が、予測される。
【実施例】
【0193】
下記実施例は、本発明をさらに説明するために提供するものである。本発明は、特に、ユビキチンの修飾を例にあげて実証されている。しかし、本発明は、これに限定されず、以下の実施例は、単に、前述の記載に基づいた本発明の実施可能性を示しているにすぎない。本発明の完全な開示のため、本願および付属書類に引用されている文献についても言及しているが、これらの引用文献は全て、引用により、その開示全体が本願に取り込まれている。
【0194】
[実施例1]
修飾ユビキチンタンパク質に基づくヘテロ二量体ED−B結合タンパク質の同定
【0195】
ライブラリーの構築とクローニング
特に示さない限り、例えば、Sambrook et alに記載されているような、確立された組換え遺伝学的手法を使用した。合計15の選択されたアミノ酸部位における協調した変異誘発によって、高度な複雑性を有するヒトユビキチンヘテロ二量体のランダムライブラリーを用意した。NNKトリプレットによって置換された修飾アミノ酸は、近位(第1)ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸、および遠位(第2)ユビキチン単量体内の2、4、6、8、62、63、64、65、66、68位から選択された少なくとも3個のアミノ酸を含む。両ユビキチン単量体は、少なくともGIG配列、または少なくともSGGGG配列を有するグリシン/セリンリンカーによって遺伝的に結合(ヘッドトゥテイル配置)しており、リンカー配列の例としては、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIG(配列番号32)またはSGGGGSGGGGがあげられるが、その他のリンカーでもよい。
【0196】
TATファージディスプレイ選択
ヘテロ二量体ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてTATファージディスプレイを使用し、ターゲットに対して濃縮した。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットは、タンパク質結合表面上に、またはタンパク質に共有結合されたビオチン化残基を介して、非特異的に固定化され得る。ビオチンを介するストレプトアビジンビーズまたはニュートラアビジンストリップ上への固定化が好ましい。ターゲット結合ファージは、溶液中または固定化ターゲット上のいずれかにおいて選択される。例えば、ビオチン化され固定化されたターゲットとファージとを、インキュベートし、続いて、マトリックスに結合したファージの洗浄およびマトリックス結合ファージの溶出を行う。ターゲットのインキュベーションに続く各サイクルにおいて、前記ビーズを磁力により溶液から分離し、数回洗浄した。最初の選択サイクルにおいて、ビオチン化ターゲットを、ニュートラアビジンストリップに固定化し、一方、2回目から4回目のサイクルにおいて、溶液における選択を行い、続いて、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)上に、ターゲットとファージとの複合体を固定化した。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のファージを、酸性溶液での溶出により遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のファージ溶出を行った。溶出したファージを再増幅した。バインダーの特異性を誘導するため、選択に際し、ターゲットに類似するタンパク質を含めてもよい。
【0197】
TATファージディスプレイ選択の代替:リボソームディスプレイ選択
ユビキチンライブラリーを、例えば、選択システムとしてリボソームディスプレイを使用して、ターゲットに対して濃縮した(Zahnd et al., 2007、Ohashi et al., 2007)。当該技術分野において公知である他の選択方法を用いることもできる。前記ターゲットを、標準的な方法によってビオチン化し、Streptavidin−coated Dynabeads(登録商標)(Invitrogen社製)に固定化した。リボソーム、mRNAおよび新生ユビキチンポリペプチドを含む三元複合体を、PURExpres(登録商標) In Vitro Protein Synthesis Kit(NEB社製)を用いて構築した。選択の一次ラウンドを2回行い、三元複合体をインキュベートし、続いて、類似する選択のラウンドを2回行った。ターゲットインキュベーションに続く各サイクルにおいて、ビーズを磁力により溶液から分離し、ストリンジェンシーを増加させながら、リボソームディスプレイバッファーで洗浄した。最初の2回の選択サイクルでの洗浄後、前記ビーズを再度磁力により溶液から分離し、50mM EDTAの添加により、ターゲットが結合した修飾ユビキチン分子のmRNAをリボソームから遊離させた。選択サイクルにおいて、過剰量のターゲットを用いた競合的溶出により、3回目および4回目のmRNAの溶出を行った(Lipovsek and Pluckthun, 2004)。各サイクルの後、RNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen社製、ドイツ)、Turbo DNA−free Kit(Applied Biosystems社製、アメリカ)、およびTranscriptor Reverse Transcriptase(Roche社製、ドイツ)を用いて、RNAの精製とcDNAの合成を行った。
【0198】
濃縮プールのクローニング
4回目の選択サイクルの後、合成cDNAを、F1プライマー(GGAGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATACATATG)(配列番号9)およびWUBI(co)RD_xhoプライマー(AAAAAAAAACTCGAGACCGCCACGCAGACGCAGAACCAG)(配列番号10)を用いたPCRにより増幅し、制限ヌクレアーゼNdeIおよびXhoI(Promega社製、アメリカ)で切断し、適合性付着端を介して発現ベクターpET−20b(+)(Merck社製、ドイツ)に連結した。
【0199】
単一コロニーのヒット解析
NovaBlue(DE3)細胞(Merck社製、ドイツ)への形質転換の後、アンピシリン耐性単一コロニーを、200μl SOBAG培地(100μg/ml アンピシリンおよび20g/l グルコースを含むSOB培地)において、37℃で6時間培養した。500μlの自己誘導培地ZYM−5052(Studier社製、2005)を用い、96ディープウェルプレート(Genetix社製、イギリス)において、37℃で16時間培養することにより、ED−B結合修飾ユビキチンを発現させた。4℃、3600×gで、15分間遠心分離して、細胞を回収した。その後、ウェルあたり300μlの溶解バッファーを用いて、37℃で30分間インキュベートし、前記細胞を溶解した。前記溶解バッファーは、0.2×BugBuster(登録商標)(Merck社製、ドイツ)、0.3mg/mlリゾチーム(VWR社製、ドイツ)、0.2mM PMSF(Roth社製、ドイツ)、3mM MgCl2および0.2U/ml Benzonase(VWR社製、ドイツ)を含む、50mM NaH2PO4、300mM NaCl(pH8)とした。4℃、3600×gで、30分間遠心分離した後、得られた上清を、4μg/ml ED−B、およびセイヨウワサビぺルオキシダーゼ(POD)とのユビキチン特異的FabフラグメントコンジュゲートでコートしたNunc MediSorp plates(Thermo Fisher Scientific社製、アメリカ)を用いて、ELISAによりスクリーニングした。検出試薬としてTMB−Plus(Biotrend社製、ドイツ)を用いた。ウェルあたり50μlの0.2M H2SO4溶液を用いて、黄色を発色させ、プレートリーダーにおいて450nmと620nmを測定した。
【0200】
通常、数回、例えば、4サイクルの選択ディスプレイを、ED−Bに対して行った。最後の2サイクルの選択において、結合分子を、過剰量の遊離ED−Bを用いて溶出した。これらのED−B結合変異体を、他のものとの間で同定した。
46H9配列
MGIVVRTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIPHPTLLHLVLRLRGGSGGGGSGGGGIGMQIFVHTMTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIKPIAELHLVLRLRGG(配列番号6)
9E12配列
MRIPVYTLTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIPPFARLHLVLRLRGGSGGGGSGGGGIGMQIFVMTRTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIMNARLLHLVLRLRGG(配列番号7)
22D1配列
MLILVRTLTDKTITLEVEPSDTIGNVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNISVGAMLHLVLRLRGGSGGGGSGGGGIGMQIFVLTWTGKTITLEVEPSDTIENVKAKIQDKEGIPPDQQRLIWAGKQLEDGRTLSDYNIRRLPPLHLVLRLRGG(配列番号8)
【0201】
野生型ユビキチン単量体(Ubi monomer wt)と野生型ユビキチン二量体(ubi dimer wt)、野生型ユビキチンタンパク質(図9におけるUb2−TsX、各単量体の45位の置換およびC末端に2つの置換を有する)、および修飾ユビキチンヘテロ二量体変異体1041−D11との配列アライメントを、図9に示す。デユビキチナーゼは、ユビキチンのGGの後ろを切断し、AAの後ろを切断しないため、Ub2−TsXにおいて、前記単量体のC末端の置換(GGからAA)は、血清における安定性を増加させる。野生型ユビキチンの二次構造は、前記C末端における置換を有するユビキチンと比較して、ほぼ同一である。
【0202】
1041−D11(図9、配列番号36)または1045−D10と呼ばれる、優れたED−B結合親和性を有する修飾ユビキチンは、野生型と比較して、後述のアミノ酸置換によって同定される。
第1モジュール
K6W、L8W、K63R、E64K、S65F、T66P
第2モジュール
K6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65W、T66E
任意に、Q2R(当該置換は、変異体1041−D11に存在し、変異体1045−D10には存在しない)
融合タンパク質に適した好ましいリンカーは、配列番号32のリンカーまたはGIG配列のリンカーである。ただし、代わりに使用できる、多くのリンカーが考えられる。
【0203】
さらに好ましい例として、下記の配列のタンパク質(配列番号47)が提示され、前記配列において、前記配列のXXXXは、どのようなアミノ酸でもよい。リンカーとして、ここでは、SGGGGSGGGGIGが使用される(イタリックで示す)。ただし、他の種類のリンカー、またはリンカーなしも、代替可能である。
【化2】
タンパク質の例と、これらの配列とのコンセンサス配列は、図2に示す。
【0204】
[実施例2]
ED−B結合修飾ユビキチン変異体とヒトTNFα(hTNFα)からの融合タンパク質の生成
【0205】
前記変異体を、修飾ユビキチン、例えば、ヘテロ二量体変異体1041−D11と、マウスまたはヒトTNFαとの間の融合タンパク質として、大腸菌内で発現させる。融合タンパク質のタンパク質解析は、タンパク質発現と純度、非凝集能、細胞培養におけるTNFα活性、ターゲットタンパク質ED−Bへの親和性、選択性、細胞培養における特異的結合を含む。F9腫瘍を有するマウスにおける腫瘍の縮小を誘導するための動物実験における必須条件は、マウスTNFαとの融合物である。
【0206】
工程1:融合タンパク質のクローニングのためのベクターの生成(pETSUMO−TNFα)
pETSUMOadaptは、修飾ベクターpETSUMO(Invitrogen社製)であり、付加マルチクローニングサイト(MCS)の挿入によって修飾されている。pETSUMOadaptへのTNFαのクローン化から開始し、ED−Bに結合する修飾ユビキチン変異体を挿入するための制限部位を導入した。得られた構築物は、下記DNA配列(配列番号11)の構造体His6−SUMO−TNFαの構造を有する。
ATGGGCAGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCAGCGGCCTGGTGCCGCGCGGCAGCGCTAGCATGTCGGACTCAGAAGTCAATCAAGAAGCTAAGCCAGAGGTCAAGCCAGAAGTCAAGCCTGAGACTCACATCAATTTAAAGGTGTCCGATGGATCTTCAGAGATCTTCTTCAAGATCAAAAAGACCACTCCTTTAAGAAGGCTGATGGAAGCGTTCGCTAAAAGACAGGGTAAGGAAATGGACTCCTTAAGATTCTTGTACGACGGTATTAGAATTCAAGCTGATCAGACCCCTGAAGATTTGGACATGGAGGATAACGATATTATTGAGGCTCACAGAGAACAGATTGGTGGTGTGCGTAGCAGCAGCCGTACCCCGAGCGATAAACCGGTGGCGCATGTGGTGGCGAATCCGCAGGCGGAAGGCCAGCTGCAGTGGCTGAACCGTCGTGCGAATGCGCTGCTGGCCAACGGCGTGGAACTGCGTGATAATCAGCTGGTTGTGCCGAGCGAAGGCCTGTATCTGATTTATAGCCAGGTGCTGTTTAAAGGCCAGGGCTGCCCGAGCACCCATGTGCTGCTGACCCATACCATTAGCCGTATTGCGGTGAGCTATCAGACCAAAGTGAACCTGCTGTCTGCGATTAAAAGCCCGTGCCAGCGTGAAACCCCGGAAGGCGCGGAAGCGAAACCGTGGTATGAACCGATTTATCTGGGCGGCGTGTTTCAGCTGGAAAAAGGCGATCGTCTGAGCGCGGAAATTAACCGTCCGGATTATCTGGATTTTGCGGAAAGCGGCCAGGTGTATTTTGGCATTATTGCGCTGTAATAA
【0207】
TNFα配列を、BamHIおよびXhoI部位の導入により、PCRで増幅した。
使用したプライマーは、以下の通りである。
【化3】
前記fwプライマー(配列番号12)は、TNFαの最初の15塩基対(下線部)を認識し、BamHI配列(太字部)を有する。前記revプライマー(配列番号13)は、TNFαの最後の塩基対、終止コドン(下線部)およびXhoI制限部位(太字部)を含む。
【0208】
PCR反応ミックス(100μl)
84.5μl H2O;
10μl 10×Pwoバッファー+Mg;
2μl 10mM dNTPs(=200μM);
各0.5μl 100μM プライマーfw/rev(=各0.5μM);
2μl DNA(=0.25μg);
0.5μl Pwoポリメラーゼ(=2.5U;Roche)
【0209】
PCRプログラム
94℃で3分、94℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分(工程2〜4:30サイクル)、72℃で5分、続いて4℃で処理し、続いて、Qiagen−MinElute−Kit(10μl EBに溶出)によるPCR産物の精製を行った。前記PCR産物を、BamHI−XhoI制限およびライゲーションにより、ベクターpETSUMOadaptのMCSに導入した。
【0210】
制限ミックス(100μl)
ベクター:83μl H2O;
10μl 10×NEバッファー3;
1μl 100×BSA;
3μl BamHI(=30U;NEB),
1.5μl XhoI(=30U;NEB);
1.65μl ベクター;
3h、37℃でインキュベーション
PCR産物:76.5μl H2O;
10μl 10×NEバッファー3;
1μl 100×BSA;
3μl BamHI(=30U;NEB),
1.5μl XhoI(=30U;NEB);
8μl 挿入断片;
3h、37℃でインキュベーション
1%アガロースゲル(100V、60分間ラン)において制限ミックスを分離;
切断されたベクターフラグメント(5659bp)と挿入断片(491bp)を、Qiagen gel extraction kitで精製(30μl EBに溶出)。
【0211】
ライゲーション(20μl)
15.2μl H2O;
2μl 10×T4−DNAリガーゼバッファー;
2.26μl ベクター(200ng);
0.54μl 挿入断片(40ng)
5分間、65℃でインキュベーション;
16℃に冷却;
1μl T4−DNAリガーゼ(=3U;NEB)添加;
16時間、16℃でインキュベーション
【0212】
NaAc/イソプロパノール沈殿
ライゲーションミクスチャー(20μl)+2.2μl 3M NaAc(pH5.0)+22.2μl イソプロパノール;
30分間、−20℃;
15分間、4℃、13000Upm;
500μlの70% EtOHにペレットを再懸濁;
スピン;
10μlのH2Oにペレットを再懸濁
【0213】
形質転換
エレクトロコンピテントNovablue(DE3)細胞(40μlアリコート)と10μlのライゲーション産物とを混合;
0.1cm エレクトロポレーションキュベットに移動;
エレクトロポレーターでパルスを印加(1.8kV、50μF、100 Ohm);
37℃、220Upm、45分間、1mlのSOC培地と、溶液とをインキュベート;
カナマイシン含有LBプレートに、100μlを播き、37℃、一晩インキュベーション
【0214】
工程2:修飾ユビキチンベースのEDB融合タンパク質のクローニング
EDB結合修飾ユビキチンベースの変異体とTNFαとの融合物の生成のために、PCRにより、対象であるEDB修飾ユビキチンベースの配列をpET20bベクターから増幅し、BsaIおよびBamHI制限部位を導入する。この方法は、単量体および二量体EDB修飾ユビキチンベースの変異体に好適である。単量体WTユビキチン(Wubi)用のプライマーは、下記のとおりである。
【化4】
【0215】
前記fwプライマー(配列番号14)は、修飾ユビキチンの最初の15塩基対(下線部)を認識し、BsaI配列(太字部)を有する。前記revプライマー(配列番号15)は、修飾ユビキチンの最後の15塩基対を認識し、アミノ酸リンカー(SGGGG配列)およびBamHI制限部位(太字部分)を挿入する。修飾ユビキチンベースの変異体それぞれについて、特異的fwプライマーを使用する。単量体EDB修飾ユビキチンベースの変異体1H4、5E1および4B10のプライマーは、下記のとおりである。
【化5】
【0216】
前記revプライマーは、全ての単量体修飾ユビキチンベースの変異体に使用する。二量体修飾ユビキチンベースの変異体用のrevプライマーは、下記のとおりである。
【化6】
【0217】
二量体WTユビキチン(WubiHubi)のクローニング用および二量体EDB修飾ユビキチンベースの変異体用のfwプライマーは、下記のとおりである。
【化7】
【0218】
PCRミックス(100μl)
84.5μl H2O;
10μl 10×Pwoバッファー+Mg;
2μl 10mM dNTPs(=200μM);
各0.5μl 100μM プライマーfw/rev(=0.5μM);
2μl DNA(変異体により決定);
0.5μl Pwoポリメラーゼ(=2.5U;Roche)
【0219】
PCRプログラム
1.94℃で3分
2.94℃で30秒
3.60℃で30秒
4.72℃で2分(工程2〜4:30サイクル)
5.72℃で5分、続いて4℃
【0220】
アガロースゲルでPCR産物を精製し、必要なバンドを切り出し、Qiagen−gel extraction kitで精製する。BsaI−BamHI制限により、前記PCR産物をクローニングする(pETSUMO−TNFα内に)。
【0221】
制限ミックス(100μl)
75μl H2O;
10μl 10×NEバッファー3;
1μl 100×BSA;
3μl BsaI(=30U;NEB);
8μl DNA(ベクターまたはPCR産物)2時間、50℃でインキュベーション、
10分間、65℃、
3μl BamHIの添加(=30U;NEB)、
2時間、37℃
1%アガロースゲルにおいて制限ミックスを分離;
切断されたベクターフラグメントおよび挿入断片を、Qiagen−gel extraction kitで精製(30μl EBに溶出)。
【0222】
ライゲーション(20μl)
12.5μl H2O;
2μl 10×T4−DNAリガーゼバッファー;
5μl ベクター(66ng);
0.5μl 挿入断片(変異体の種類により変わる)
5分間、65℃でインキュベーション;
16℃に冷却;
1μl T4−DNAリガーゼ(=3U;NEB)添加;
16時間、16℃でインキュベーション
【0223】
NaAc/イソプロパノール沈殿(工程1参照)
【0224】
形質転換
エレクトロコンピテントNovablue(DE3)細胞の形質転換は、前述のとおりである。結果として、下記の融合構築物が得られた。すなわち、His6−SUMO−修飾ユビキチン−SGGGG−TNFαを有するpETSUMOadaptにおけるEDB修飾ユビキチンとTNFαとの融合構築物である(単量体修飾ユビキチンの場合、359個のアミノ酸からなり、二量体修飾ユビキチンの場合、447個のアミノ酸からなる)。
【0225】
[実施例3]
ユビキチンベースのTNFα融合タンパク質の発現と精製
【0226】
DNA配列解析により、SUMO−TNFα融合タンパク質の正しい配列が示された。変異体の発現のために、前培養物をLB/カナマイシンで1:100に希釈し、前記培養液を、600nmの光学密度(OD600)0.5まで、200rpm、37℃で攪拌することで、クローンを振とうフラスコで培養した。発現は、IPTG(最終濃度1mM)の添加で誘導した。30℃、4時間、200rpmで、培養を続けた。4℃、6000×gで20分間遠心分離し、細菌細胞を回収した。前記細胞ぺレットを、ベンゾナーゼおよびリゾチームを含むNPI20バッファー30mlに懸濁した。細胞を、氷上で超音波処理(3×20秒)によって破砕した。懸濁液を、4℃、40000×gで30分間遠心分離した後、可溶性タンパク質を含む上清を得た。両タンパク質を、室温でのアフィニティークロマトグラフィーにより、精製した。Ni−アガロース(5ml、GE Healthcare社製)の一本のカラムを、50mlのNPI−20で平衡化した。可溶性タンパク質を含む前記上清を、前記カラムにアプライし、続いて、NPI−20で洗浄した。前記結合タンパク質を、NPI−20から50%NPI−500(100ml)の直線勾配で溶出した。各画分は、SDS−PAGEにより、その純度を解析した。好適な画分をプールし、SUMOヒドロラーゼ切断バッファー(50mM Tris,300mM NaCl、pH8.0)で平衡化したゲルろ過カラム(Superdex 75、1.6×60cm、GE Healthcare社製)に、流速1ml/分で、アプライした。
【0227】
切断反応は、製造元(Invitrogen社)の使用説明書にしたがって行った。切断後、前記タンパク質をNi−アガロースカラム(5ml、GE Healthcare社製)にアプライした。Hisタグ化SUMOヒドロラーゼおよびHisタグ化SUMOは、前記カラムに結合し、正しい融合タンパク質(Hisタグフリー)は、前記カラムを通過した。前記タンパク質の純度は、rpHPLC解析およびゲル電気泳動によって、証明した。前記三量体(TNFαを介する)が正しい分子量を有することは、分析用SEC解析(10/30 Superdex G75、GE Healthcare社製)を用いて確認した。
【0228】
[実施例4]
修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体のヒトED−Bに対する結合分析
【0229】
実施例4A:濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
ユビキチンベースの変異体のヒトED−Bに対する結合を、濃度依存ELISAによって分析した。精製タンパク質を、ヒトED−B、BSAおよび細胞フィブロネクチン(cFN)でコーティングされた複数のNUNC−medisorpプレートに、量を増加させてアプライした。ウェルあたり抗原50μl(10μg/ml)でのコーティングを、40℃で一晩行った。前記プレートを、0.1% Tween20を含むPBS(pH7.4;PBST)で洗浄した後、前記ウェルを、37℃で2時間、ブロッキング溶液(PBS pH7.4;3% BSA;0.5% Tween20)を用いてブロッキングした。前記ウェルを、PBSTでさらに3回洗浄した。前記ウェルにおいて、異なる濃度の修飾ユビキチンベースのED−B結合タンパク質(50μl量)を、室温で1時間インキュベートした(図10、開始濃度として、500nMの1041−D11タンパク質を使用した)。PBSTで前記ウェルを洗浄した後、抗ユビキチンfabフラグメント(AbyD)PODコンジュゲートを、PBSTに適切に希釈(例えば、1:2000または1:6500)して、アプライした。前記プレートを、ウェルあたり300μlのバッファーPBSTで、3回洗浄した。50μlのTMB基質溶液(KEM−EN−Tec)を各ウェルに加え、15分間インキュベートした。ウェルあたり50μlの0.2M H2SO4を加えて、反応を停止させ、前記ELISAプレートを、TECAN Sunrise ELISA−Readerを用いて読み取った。参照波長を620nmとして、450nmで吸光光度測定を行った。図1は、みかけKD値11nMという、ED−Bに対する1H4の特異的結合を明瞭に示している。変異体5E1は、みかけKD値7.7μM、4B10は、みかけKD値280nMを、それぞれ示している。図10は、変異体1041−D11のED−Bに対する非常に高い結合親和性を示す(KD=6.9nM)。このように、ユビキチン野生型のわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)により、ED−Bに対する非常に高い結合親和性がもたらされる。
【0230】
実施例4B:競合的濃度依存ELISAによる、修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
競合的濃度依存ELISAにより、量が増加する遊離のターゲットの存在下、フィブロネクチンフラグメント(67B89)を含む固定化ED−Bに対するユビキチン変異体1041−D11の結合を分析した。ELISAの条件は、1041−D11タンパク質を、ED−B(67B89)(0μM〜10μM)、またはネガティブコントロール6789(0μM〜10μM)で、1時間プレインキュベートし、その後、その混合物を、Medisorp−plate上に配置したターゲット67B89に添加した以外は、実施例5Aで述べたとおりである。これに続き、前記変異体を、対応する抗体によって検出した(抗ユビキチン−Fab−POD;希釈度1:6500)。図11は、変異体1041−D11が、ED−Bに対して非常に高い結合親和性を有することを示す(IC50=140nM)。図10に示した結果が裏付けられている。すなわち、ユビキチン野生型のわずかな修飾(各単量体において8個の置換まで)のみにより、ED−Bに対する非常に高い結合親和性がもたらされる。
【0231】
実施例4C:結合活性の血清安定性を同時に分析する、濃度依存ELISAによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当該技術分野における公知の方法により、前述(実施例5Aおよび5B)と同様に、ELISAを行った。ED−B(67B89ともいう)を、マイクロタイタープレートにコーティングし、前記変異体を、ED−Bに結合させ、特異的ユビキチン抗体により検出した(抗ユビキチン−Fab−POD)。この分析において、前記変異体は、異なる方法で処理した。すなわち、前記変異体を、37℃で1時間、マウス血清中でインキュベートする処理(図13参照、青丸部分)、前記変異体を、37℃で1時間、ラット血清中でインキュベートする処理(図13、赤丸部分)、または、前記変異体を、37℃で1時間、PBSでインキュベートする処理(図13、黒丸部分)である。図13は、変異体1041−D11の全てのKDが、10.3nM(PBS)から20.74nM(マウス血清)の間にあることを示す。
【0232】
実施例4D:Biacore分析による修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の結合分析
当業者に公知の方法を用いて、CM5チップ(Biacore)に固定化したフィブロネクチンフラグメント(67B89という)を含むED−Bに対する結合について、前記変異体を異なる濃度で分析した(例えば、0〜200nMの変異体、好ましくは1041−D11)。得られたデータは、BIA評価ソフトウェアおよび1:1−Langmuir−fittingにより処理した。図12に示すように、変異体1041−D11のKDは、1.0nMであった。結合速度定数は、kon=7.6×105M−1s−1、koff=7.7×10−4s−1であった。図17Dに示すように、融合タンパク質1041−D11−TNFαのKDは、1.13nMであった。結合速度定数は、kon=4.5×105M−1s−1、koff=5.0×10−4s−1であった。
【0233】
実施例4E:SE−HPLCによる修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体の複合体構造の分析
複合体構造の分析のために、Tricorn Superdex75 5/150 GLカラム(GE−Healthcare社製)(V=3ml)を使用し、50μlのタンパク質をアプライした。さらなる条件は、バッファー:1×PBS(pH7.3)、流速:0.3ml/分、ラン:45分(サンプルの注入:15分後)とした。
【0234】
条件:0.72nmol 1041−D11タンパク質+0.72nmol ED−B(67B89またはネガティブコントロール6789ともいう)を、室温で1時間インキュベートし、複合体構造を分析するために、カラムにアプライした。図14では、前記変異体のみを黒で示し、ターゲットED−Bのみを青で示し、ED−Bとの複合体を構成する変異体結合をピンクで示す。図14Aは、前記変異体を有するED−Bを示す。図14Bは、ED−Bを有さない変異体を示す。同図は、変異体1041−D11が、ED−B(67B89)と複合体を構築するが、6789とは複合体を構築しないことを示す。
【0235】
[実施例5]
TNFαの生物学的分析
【0236】
TNFα修飾ユビキチンベースのED−B結合融合体の生理学的TNFα活性を、L929アポトーシス分析によって決定した(Flick et al.、1984 J. Immunol. Methods. 68:167−175)。この分析では、TNFαが、ピコモル範囲のEC50値で、アクチノマイシンD感受性細胞の細胞死を効果的に促進する。細胞を、FBSと抗生物質を含む培地に再懸濁した。密度3.5×105細胞/mlの細胞懸濁液100μlを、96ウェル標準細胞培養プレートのウェルに播き、加湿したCO2インキュベーターで一晩インキュベートした。その後、前記培養培地を除去し、FBS、アクチノマイシンDおよび抗生物質を含む培地50μlを各ウェルに加え、その後、さらに30分間インキュベートした。その後、50μlのテスト項目と、10−7から10−18Mの適切な濃度範囲のTNFα修飾ユビキチンベースのED−B結合融合体またはヒト組換えTNFαコントロールを添加した。さらに48時間インキュベートした後、細胞生存の尺度である代謝活性を、WST−1試薬(Roche社製)を用いて決定した。
【0237】
1つのテスト項目あたり、少なくとも3通りの独立した実験を行い、各実験は3回行った。TNFα修飾ユビキチンベースのED−B結合融合タンパク質の各テストは、分析間のばらつきの情報を得るために、ヒト組換えTNFαの投与量範囲のテストと並行させた。
【0238】
定量評価は、EC50値、すなわち、半数の細胞の生存を促進するテスト項目濃度による値に基づく。
【表2】
mub:修飾ユビキチンベースのED−B結合
【0239】
修飾ユビキチンベースのED−B結合融合体の、1つのユビキチン単量体構築物(Wubi)および3つのユビキチン二量体構築物のTNFαを分析した。TNFα部分に結合した修飾ユビキチンベースのED−B結合変異体に依存して、TNFαに関連する活性は、約1桁分増加(SPWF−28_24−H12_TNF−alpha)または減少した(SPWF−28_22−D1_TNF−alpha、Wubi−Hubi−TNF−alpha)。変異体1041−D11 TNFα分析は、図17参照。
【0240】
[実施例6]
細胞培養分析におけるユビキチン変異体の結合分析
【0241】
培養細胞に対する前記変異体1041−D11の結合をテストした。ED−Bが高発現レベルである正常ヒト胎児肺線維芽細胞(Wi38細胞)、マウス胚性線維芽細胞株(Balb 3T3)、マウス骨髄(ST−2)または単球/マクロファージ(RAW264.7)由来のストローマ細胞株、NHDF細胞およびマウス線維芽細胞(LM)を含む、異なる培養細胞を分析した。
【0242】
前記変異体1041−D11(異なる濃度)またはED−B特異的抗体(500nM FV28 CH4/F1 1×PBS)を、Wi38細胞(60000細胞/ml、ATCC由来)とともにインキュベートし(1時間、37℃)、その後、メタノールで固定化し(5分、−20℃)、ブロッキングした(5%ウマ/PBS、1時間)。その後、rabbit−a−Strep−Tag−IgG(GenScript社製 A00875、1:500)とともに1時間インキュベートし、a−rabbit−IgG*Alexa488−AK(Invitrogen社製 A11008、1:1000)とともに1時間インキュベートした。核を、DAPIで染色した。図15Aの1列目は、EDB抗体を用いたコントロールを示し、2列目は、58.7nMのタンパク質濃度での変異体のインキュベーションを示し、3列目は、10倍高濃度(587nM)の1041−D11タンパク質のインキュベーションを示し、4列目は、PBSでのネガティブコントロールである。1行目には、ヒトWi38線維芽細胞を位相差で示し、2行目には、免疫蛍光法を示し、3行目には、DAPI染色を示す。これらの写真から、前記変異体1041−D11は、細胞外マトリックスに含まれるED−Bに対する高い特異性で、固定化Wi38細胞に結合すると結論づけられる。ネガティブコントロール細胞型NHDFは、EDBフィブロネクチンを低レベルで発現する主要な正常線維芽細胞である(データを示さず)。前記変異体は、それらの細胞に結合しない。
【0243】
図15Bは、バイタル(vital)Wi38細胞での変異体1041−D11の分析を示す。ネガティブコントロール細胞型NHDFは、EDBフィブロネクチンを低レベルで発現する主要な正常線維芽細胞である。前記細胞を、チャンバースライドに播いた(NUNC、6000細胞/ml)。結合能の分析のため、前記細胞を、−20℃で5分間、100%MeOHで固定した。非特異的結合をブロックするために、前記細胞を、37℃で1時間、5%ウマ血清でインキュベートした。前記細胞を、異なる濃度の前記変異体1041−D11と、ポジティブコントロールであるED−B特異的抗体FV28 CH4/F1またはネガティブコントロールであるUB_2とで、室温で1時間、テストした。rabbit−a−Strep−Tag−IgG(GenScript社製 A00875、1:500)との1時間のインキュベーション、a−rabbit−IgG* Alexa488−AK(Invitrogen社製 A11008、1:1000)との1時間のインキュベーションにより、機能を証明した(proving)。核を、DAPIで染色した。図15Bの1行目および3行目は、異なるタンパク質濃度の変異体およびネガティブコントロールを示す。2行目および4行目は、EDB抗体を用いたコントロールのインキュベーションを示す。最初の2行は、Wi38細胞株における前記変異体とポジティブコントロールを示す。3行目および4行目は、NHDF細胞のインキュベーションを示す。写真からわかるように、前記変異体1041−D11は、細胞外マトリックスに含まれるED−Bに対する高い特異性で、バイタル(vital)Wi38細胞に結合することがわかる。低EDBを含まないNHDF細胞を用いた対照試験を行った(データ示さず)。前記変異体は、それらの細胞に結合しない。
【0244】
異なる細胞タイプ、例えば、Balb3T3(ATCC、Kat−Nr.30−2002)、Raw(Lonza社製、Kat−Nr.BE12−115F/U1)、ST−2(Lonza社製、Kat−Nr.BE12−115F/U1)を用いて、同様の実験を行った。図15CおよびDは、ED−Bの結合が、マウスBalb3T3とST−2細胞に高い特異性であることを示す。単球/マクロファージ(Raw)への結合は、見られなかった(データ示さず)。
【0245】
概要を前述したとおり、図16Aは、組織切片における1041−D11の特異性を示す。7サンプルからのF9腫瘍組織を評価した。500nM 1041−D11を用いた免疫組織化学から、マウス由来のF9腫瘍におけるED−B特異的血管が染色される結果が得られた。ED−Bは、腫瘍脈管構造に対する高い特異性のマーカーである。ターゲットタンパク質EDBは、血管の反管腔側に位置する。1041−D11は、F9腫瘍由来の組織切片において、血管構造を特異的に装飾する。得られた結果は、抗体フラグメントL19の組織特異性に匹敵する。さらに、48組織をテストした。FDA関連パネルにおいて、48組織のいずれにも、非特異的染色は観察されなかった。図16Bは、野生型ユビキチンと比較した、腫瘍細胞における1041−D11の蓄積を示す。このように、ED−Bに特異的に結合する修飾ユビキチンベースの融合タンパク質は、癌に対するED−Bに基づくターゲット治療に好適である。
【0246】
[実施例7]
1041D11−TNFαのin vivoでの有効性
【0247】
1041−D11−TNFαの治療上の有効性を確立するために、化合物をマウスモデルのF9テラトーマ(Borsi et al.、2003 Blood 102, 4384−4392参照)によりテストした。マウスにおけるED−B発現は、in vivoの状態でヒトに匹敵し、癌に対する1041−D11−mTNFαの治療上の影響、好ましくはこれをメルファラン等の細胞傷害性化合物と併用した際の治療上の影響を、評価するのに適している。F9テラトーマは、高い血管密度を有する高悪性度の腫瘍である。Borsi et alには、EDB抗体を介するマウスTNFαのターゲティングは、メルファランの有効性を向上させ、それは腫瘍の成長の遅延によって実証されていると記載されている。有効性研究のための実験計画は、Borsi、2003から採用した。
【0248】
ステージ1では、腫瘍と体重、体重減少および生存との割合に関係するエンドポイントについて、薬理的に活性かつ許容可能な投与量を明らかにした。本願発明者は、1041D11−TNFαが、最も高い投与量(6.75pmol/g)で許容されるが、腫瘍の成長に対して抑制効果を有さず(3、4および8日後に体重の10%を上回る→動物死亡)、一方、最も低投与量(0.25pmol/g)の1041D11−TNFαが、腫瘍の成長を遅らせるようであることを見出した。使用したさらに別の投薬グループでは、投与量2.25pmol/g 1041D11−TNFαから、低下させた。
【0249】
研究のステージ2では、腫瘍成長の遅延をエンドポイントとするメルファランの投与量依存的な有効性を明らかにした(動物体重減少>10%、腫瘍>体重の10%、腫瘍の潰瘍化)。研究では、1041D11/mTNFαおよびマウスTNFαについて、メルファランとの併用をテストした。168匹の動物を使用し、14投薬グループ(グループあたり8匹のマウス、F9腫瘍の大きさが300〜400mm3の時点で採用)について、テストサンプルを静脈(i.v.)に投与し、24時間後にメルファランを腹腔内(i.p.)に注射した。表1は、投薬スケジュールを示す。
【表3】
【0250】
図18は、処置期間中(7日間)の相対的腫瘍成長を示す。図18aは、メルファランと併用した本発明の化合物1041−D11−TNFαが、メルファランと併用したmTNFαまたはメルファラン単独よりも効果的に、相対的腫瘍成長を減少させることを明確に示す。処置後7日間の腫瘍成長速度は、1041−D11−mTNFαによる腫瘍の有意な減少を示す。これは、メルファランとの併用の有効性の明確な証拠である。
【0251】
刊行物
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に結合可能なタンパク質であって、
前記タンパク質は、2つの単量体ユビキチンユニットが、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含み、さらなる修飾、好ましくは、他のアミノ酸の置換を任意で含み、
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
前記修飾単量体ユビキチンユニットが、配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも85%および少なくとも90%の群から選択される少なくとも一つのアミノ酸同一性を有し、
前記フィブロネクチンのED−Bドメインに対する前記タンパク質の特異的結合親和性がKd=10−7〜10−12Mであり、前記タンパク質が、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示す、
タンパク質。
【請求項2】
前記置換が、下記(1)または(2)を含む、請求項1記載のタンパク質。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくともK6W、L8W、K63R、E64K、S65FおよびT66Pの置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくともK6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65WおよびT66Eの置換、任意にさらにQ2Rの置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくともQ2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sの置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位の置換、任意にさらに2位の置換
【請求項3】
さらに追加で1〜7個のアミノ酸が修飾され、
前記アミノ酸は、任意に、36、44、70および71位の1以上のアミノ酸から選択され、
さらに、任意に、62、63、および64または72、ならびに、73または8位を追加した1以上のアミノ酸から選択される、請求項1または2記載のタンパク質。
【請求項4】
ユビキチン単量体同士が、直接的に結合されるか、またはリンカーにより、
好ましくは、少なくともGIG配列またはSGGGG配列、好ましくは、SGGGGIG配列またはSGGGGSGGGGIG配列(配列番号32)を有するリンカーにより結合される、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
薬学的活性成分または診断用成分と融合した、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を含む融合タンパク質。
【請求項6】
配列番号33、34もしくは47のユビキチンヘテロ二量体を含む、
または、配列番号33、34もしくは47の配列と少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有する、
請求項5記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記薬学的活性成分が、サイトカイン、ケモカイン、細胞傷害性化合物、または酵素であり、
前記診断用活性成分が、蛍光化合物、光増感剤、または放射性核種である、
請求項5または6記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記薬学的活性成分が、TNFαまたはその誘導体であり、
好ましくは、前記融合タンパク質は、配列番号35または36の配列を有し、
または、配列番号47は、TNFαもしくはその誘導体と融合し、
または、前記融合タンパク質は、配列番号35もしくは36の配列、またはTNFαもしくはその誘導体に融合した配列番号47と、少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有する、
請求項5から7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
フィブロネクチンのED−Bドメインと結合可能な、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、または、請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質を、それぞれ薬学的に効果的な量で含み、
1以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
さらに、1以上の化学療法剤を含み、
前記化学療法剤が、好ましくは、メルファラン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ダクチノマイシン、フルオロデオキシウラシル、シスプラチン、パクリタキセルおよびゲムシタビンから選択されるか、あるいはキナーゼ阻害剤群、または放射性医薬品から選択される、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
混合製剤の形態または複数の部品からなるキットの形態である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、または、請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、
請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質、
請求項14記載のベクター、
および/または請求項12記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
診断上許容される担体と、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、または請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質とを含む、診断用組成物。
【請求項16】
以下の工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質の製造方法。
a)単量体ユビキチンタンパク質から生じる異なる修飾がなされた二量体ユビキチンタンパク質群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つの修飾ユビキチン単量体を含む二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾
がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含む、前記工程
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
b)潜在的なリガンドとして、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)を提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と接触させる工程
d)スクリーニング処理により、修飾二量体ユビキチンタンパク質を同定する工程であり、
前記修飾二量体ユビキチンタンパク質は、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程
任意に、
e)前記修飾二量体ユビキチンタンパク質を、前記結合親和性で、単離する工程
【請求項17】
前記異なる修飾がなされたタンパク質群が、異なる修飾がなされた単量体ユビキチンタンパク質をそれぞれコードする2つのDNAライブラリーの遺伝的融合により得られる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を、薬学的活性成分または診断用成分と融合させる、請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の製造方法。
【請求項19】
医学的治療方法または診断方法に使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、または請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
請求項1から4のいずれか一項に記載の修飾単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含むライブラリー。
【請求項21】
請求項20記載の2つのライブラリーの融合により得られるDNAを含む融合ライブラリーであり、
各ライブラリーが、ヘテロ二量体ユビキチン融合タンパク質を得るために、異なる修飾がなされた単量体ユビキチンタンパク質ユニットをコードし、
前記単量体ユニットは、互いにヘッドトゥテイル配置で結合され、
前記ライブラリーは、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示すユビキチンのヘテロ二量体融合タンパク質をコードする、融合ライブラリー。
【請求項22】
請求項20または21記載のDNAライブラリーの発現により得られる、タンパク質ライブラリー。
【請求項1】
フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に結合可能なタンパク質であって、
前記タンパク質は、2つの単量体ユビキチンユニットが、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された修飾ヘテロ二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含み、さらなる修飾、好ましくは、他のアミノ酸の置換を任意で含み、
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
前記修飾単量体ユビキチンユニットが、配列番号1に対し、少なくとも80%、少なくとも85%および少なくとも90%の群から選択される少なくとも一つのアミノ酸同一性を有し、
前記フィブロネクチンのED−Bドメインに対する前記タンパク質の特異的結合親和性がKd=10−7〜10−12Mであり、前記タンパク質が、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示す、
タンパク質。
【請求項2】
前記置換が、下記(1)または(2)を含む、請求項1記載のタンパク質。
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくともK6W、L8W、K63R、E64K、S65FおよびT66Pの置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくともK6T、L8Q、Q62W、K63S、E64N、S65WおよびT66Eの置換、任意にさらにQ2Rの置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくともQ2T、F4W、K6H、Q62N、K63F、E64K、S65LおよびT66Sの置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位の置換、任意にさらに2位の置換
【請求項3】
さらに追加で1〜7個のアミノ酸が修飾され、
前記アミノ酸は、任意に、36、44、70および71位の1以上のアミノ酸から選択され、
さらに、任意に、62、63、および64または72、ならびに、73または8位を追加した1以上のアミノ酸から選択される、請求項1または2記載のタンパク質。
【請求項4】
ユビキチン単量体同士が、直接的に結合されるか、またはリンカーにより、
好ましくは、少なくともGIG配列またはSGGGG配列、好ましくは、SGGGGIG配列またはSGGGGSGGGGIG配列(配列番号32)を有するリンカーにより結合される、請求項1から3のいずれか一項に記載のタンパク質。
【請求項5】
薬学的活性成分または診断用成分と融合した、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を含む融合タンパク質。
【請求項6】
配列番号33、34もしくは47のユビキチンヘテロ二量体を含む、
または、配列番号33、34もしくは47の配列と少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有する、
請求項5記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記薬学的活性成分が、サイトカイン、ケモカイン、細胞傷害性化合物、または酵素であり、
前記診断用活性成分が、蛍光化合物、光増感剤、または放射性核種である、
請求項5または6記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記薬学的活性成分が、TNFαまたはその誘導体であり、
好ましくは、前記融合タンパク質は、配列番号35または36の配列を有し、
または、配列番号47は、TNFαもしくはその誘導体と融合し、
または、前記融合タンパク質は、配列番号35もしくは36の配列、またはTNFαもしくはその誘導体に融合した配列番号47と、少なくとも90%または95%のアミノ酸同一性を有する、
請求項5から7のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
フィブロネクチンのED−Bドメインと結合可能な、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、または、請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質を、それぞれ薬学的に効果的な量で含み、
1以上の薬学的に許容される担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
さらに、1以上の化学療法剤を含み、
前記化学療法剤が、好ましくは、メルファラン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド、ダクチノマイシン、フルオロデオキシウラシル、シスプラチン、パクリタキセルおよびゲムシタビンから選択されるか、あるいはキナーゼ阻害剤群、または放射性医薬品から選択される、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
混合製剤の形態または複数の部品からなるキットの形態である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、または、請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、
請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質、
請求項14記載のベクター、
および/または請求項12記載のポリヌクレオチドを含む宿主細胞。
【請求項15】
診断上許容される担体と、
請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質、または請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質とを含む、診断用組成物。
【請求項16】
以下の工程を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質の製造方法。
a)単量体ユビキチンタンパク質から生じる異なる修飾がなされた二量体ユビキチンタンパク質群を提供する工程であり、
前記群が、互いにヘッドトゥテイル配置で結合された2つの修飾ユビキチン単量体を含む二量体ユビキチンタンパク質を含み、
前記二量体タンパク質の各単量体は、配列番号1の2、4、6、8、62、63、64、65、66および68位における、少なくとも6個のアミノ酸の置換により、異なる修飾
がなされ、
前記置換は、下記(1)または(2)を含む、前記工程
(1)第1単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける、少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
(2)第1単量体ユニットにおける、少なくとも2、4、6、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、および、
第2単量体ユニットにおける少なくとも6、8、62、63、64、65および66位のアミノ酸の置換、任意にさらに2位のアミノ酸の置換
b)潜在的なリガンドとして、フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)を提供する工程
c)前記異なる修飾がなされたタンパク質群を、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と接触させる工程
d)スクリーニング処理により、修飾二量体ユビキチンタンパク質を同定する工程であり、
前記修飾二量体ユビキチンタンパク質は、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)と、Kd10−7〜10−12Mの範囲の特異的結合親和性で結合し、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して、一価の結合活性を示すタンパク質である、前記工程
任意に、
e)前記修飾二量体ユビキチンタンパク質を、前記結合親和性で、単離する工程
【請求項17】
前記異なる修飾がなされたタンパク質群が、異なる修飾がなされた単量体ユビキチンタンパク質をそれぞれコードする2つのDNAライブラリーの遺伝的融合により得られる、請求項16記載の方法。
【請求項18】
請求項1から4のいずれか一項に記載のタンパク質を、薬学的活性成分または診断用成分と融合させる、請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質の製造方法。
【請求項19】
医学的治療方法または診断方法に使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の組換えタンパク質、または請求項5から8のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項20】
請求項1から4のいずれか一項に記載の修飾単量体ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含むライブラリー。
【請求項21】
請求項20記載の2つのライブラリーの融合により得られるDNAを含む融合ライブラリーであり、
各ライブラリーが、ヘテロ二量体ユビキチン融合タンパク質を得るために、異なる修飾がなされた単量体ユビキチンタンパク質ユニットをコードし、
前記単量体ユニットは、互いにヘッドトゥテイル配置で結合され、
前記ライブラリーは、前記フィブロネクチンのエクストラドメインB(ED−B)に対して一価の結合活性を示すユビキチンのヘテロ二量体融合タンパク質をコードする、融合ライブラリー。
【請求項22】
請求項20または21記載のDNAライブラリーの発現により得られる、タンパク質ライブラリー。
【図1】
【図4A】
【図4B】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図11】
【図12】
【図14】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図18】
【図2】
【図3】
【図5A】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図17F】
【図4A】
【図4B】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図11】
【図12】
【図14】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図18】
【図2】
【図3】
【図5A】
【図8】
【図9】
【図10】
【図13】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図15D】
【図16A】
【図16B】
【図17F】
【公表番号】特表2012−523227(P2012−523227A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504036(P2012−504036)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069665
【国際公開番号】WO2011/073208
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501139870)シル プロテインズ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Scil Proteins GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich−Damerow−Str. 01, D−06120, Halle, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069665
【国際公開番号】WO2011/073208
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501139870)シル プロテインズ ゲーエムベーハー (7)
【氏名又は名称原語表記】Scil Proteins GmbH
【住所又は居所原語表記】Heinrich−Damerow−Str. 01, D−06120, Halle, Germany
【Fターム(参考)】
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