説明

フィラメント固定機構、発熱機構および蒸着装置

【課題】フィラメントと融着することなく、フィラメントを十分に固定することのできるフィラメント固定機構を提供する。
【解決手段】フィラメントの端部4ATを挟んで対向配置された第1および第2の部材20,30と、フィラメントの端部4ATと共に第1および第2の部材20,30の間に挟まれた押さえ板40と、第2の部材30を第1の部材20に締結するボルト50とを備える。第1の部材20は、ボルト50の締め付け方向と交差する方向に支柱部21から突き出した腕部22,23を有する。第2の部材30は、平板部31の両端部に立設する鉤部32,33を有する。ボルト50を締め付け方向に回転させることで、腕部22,23と鉤部32,33とが当接したのち、押さえ板40と支柱部21の接触領域21Sとによってフィラメントの端部4ATが十分強固に把持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定物質を被蒸着基板の表面に蒸着する蒸着装置、ならびに、そのような蒸着装置における蒸発源に用いられる発熱機構およびフィラメント固定機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の電子デバイスや光学デバイスに含まれる薄膜構造を作製するにあたっては、物理的気相成長法(PVD;Physical Vapor Deposition)や化学的気相成長法(CVD;Chemical Vapor Deposition )などの薄膜形成技術が用いられている。
【0003】
物理的気相成長法としては、ターゲット(蒸発源)を加熱して気化・蒸発させる真空蒸着法、不活性ガスをグロー放電や高周波によってプラズマ化してターゲットをスパッタリング状態とするスパッタリング法、基板を高電位として、イオン化したターゲットを基板に堆積させるイオンプレーティング法等がある。スパッタリング法は、微細な膜厚の調節が可能であるが、堆積速度が遅く量産化に問題がある。イオンプレーティング法では、基板の温度が上昇するので基板材料が限定され、また、マスクによる微細加工ができないという問題を有する。
【0004】
真空蒸着法は、加熱方法の違いにより、抵抗加熱法、高周波誘導加熱法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法などに分類される。近年では、金属のような導電体か不導体かを問わず蒸着による成膜が可能であることや、比較的精細な膜質の堆積が可能であることなどの特質を有することから、電子ビーム蒸着法が頻繁に用いられている。この電子ビーム蒸着法は、一般に、ターゲット物質(作製される薄膜の材料となる蒸着用物質)を電子ビームで叩いて物理的に加熱して溶融し、その一部を昇華させ、それを成膜対象となる被蒸着基板の表面に堆積させることで所望の物質からなる薄膜を形成する、というものである。電子ビームの発生は、タングステン(W)を主材料としたフィラメントに電流を流して熱電子を放出させることによって行われることが多い。このような電子ビーム蒸着を行う成膜装置については、例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2004−131782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなフィラメントは、一般に、その両端が一対の金属部材によって把持されることで通電されるようになっている。図8および図9に、フィラメントの端部を把持する、従来の固定具の一例を示す。図8は固定具の要部構成を表す斜視図であり、図9は図8に示したIX−IX切断線に沿った矢視方向の断面図である。この固定具は、フィラメント150の端部を挟んで対向する基部110および押さえ部材120と、押さえ部材120を基部110に固定する2本のボルト140とを備えている。基部110にはねじ穴111が2つ設けられており、押さえ部材120には2つのねじ穴111と各々対応する位置に2つの開口121が設けられている。開口121の内面の一部には、ボルト140の頭部の直径よりも小さな内径を有する係合部122が設けられている。ボルト140は開口121を貫通し、そのねじ部がねじ穴111と嵌合するようになっている。ここで、ボルト140を締め付け方向に回すことでボルト140の頭部が開口121の係合部122と係合するので、基部110と押さえ部材120とが締結されることとなる。この結果、基部110と押さえ部材120との間に挟まれたフィラメント150の端部が固定される。
【0006】
しかしながら、図8および図9に示したような固定具では、2本のボルト140を互いに均等な力で締め付けることが困難である。このため、2本のボルト140による締結力の不均衡が生じやすく、場合によってはフィラメント150の端部と基部110の表面との接触が不十分となり、接触抵抗の増大を招くことがあった。また、一旦、適正かつ均等な力で2本のボルト140を締め付けた場合であっても、フィラメント150の発熱に伴いボルト140の膨張が生ずるので、蒸着作業を繰り返し行った場合にはボルト140による締結力が低下してしまい、接触抵抗の増大を招くことがあった。このようにフィラメントと固定具との接触面での接触抵抗が増大してしまうと、固定具が溶融し、フィラメントと融着してしまうおそれがあるため、改善が望まれていた。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、フィラメントと融着することなく、フィラメントを十分に固定することのできるフィラメント固定機構、ならびにそれを備えた発熱機構および蒸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフィラメント固定機構は、フィラメントの端部を把持するものであって、以下の(A1)〜(A3)に示した各構成要件を備えるようにしたものである。
(A1)フィラメントの端部と接する接触面を有する電極。
(A2)フィラメントの端部を電極の接触面との間に挟み込むように配置された押さえ板。
(A3)押さえ板におけるフィラメントの端部に対応する領域の少なくとも一部を接触面に向かうように押し付ける付勢手段。
ここで、「押さえ板におけるフィラメントの端部に対応する領域」とは、押さえ板のうち、付勢手段による付勢方向において投影した場合にフィラメントの端部と重なることとなる領域を意味する。
【0009】
本発明の発熱機構は、フィラメントと、そのフィラメントの両端をそれぞれ把持するフィラメント固定機構とを備えるようにしたものである。フィラメント固定機構は、上記(A1)〜(A3)に示した各構成要件を有するものである。さらに、本発明の蒸着装置は、このような発熱機構を有する蒸発源を備えるようにしたものである。
【0010】
本発明のフィラメント固定機構、発熱機構および蒸着装置では、付勢手段により、押さえ板におけるフィラメントの端部に対応する領域の少なくとも一部を接触面に向かうように押し付けることで、押さえ板と電極の接触面とでフィラメントの端部を把持するようにしたので、フィラメントの端部と電極の接触面との良好な接触状態が容易に実現される。
【0011】
本発明のフィラメント固定機構、発熱機構および蒸着装置では、電極が、接触面を有する第1の部材と、フィラメントの端部および押さえ板を接触面との間に挟み込むように配置され、かつ、付勢手段を保持する第2の部材とを含むようにするとよい。その場合、第1および第2の部材は、付勢手段による付勢力によって互いに係合する係合部をそれぞれ有するようにする。また、係合部は、フィラメントを挟んで2組設けるようにすることで、良好な接触状態がより安定して維持される。また、第1の部材の係合部と、第2の部材における係合部とが互いに当接する当接面は、付勢手段による付勢方向に対して傾斜するようにすることが望ましい。そのような傾斜を有することで、付勢手段による付勢方向と直交する方向における第1の部材と第2の部材とのずれが生じにくくなる。
【0012】
本発明のフィラメント固定機構、発熱機構および蒸着装置では、付勢手段として、例えばの一部に設けられた嵌合穴(ねじ穴)と嵌合するボルトを採用することができる。その場合、ボルトの先端部が、接触面と重複する領域に位置することとなる。
【0013】
本発明のフィラメント固定機構、発熱機構および蒸着装置では、押さえ板とフィラメントの端部との接触領域と、電極の接触面とフィラメントの端部との接触領域とは、互いに等しいことが望ましい。こうすることで、電極の接触面とフィラメントの端部との接触領域の全てに亘ってより偏りの小さな応力が付与されることとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のフィラメント固定機構によれば、付勢手段により、押さえ板におけるフィラメントの端部に対応する領域の少なくとも一部を電極の接触面に向かうように押し付けることで、押さえ板と電極の接触面とでフィラメントの端部を把持するようにしたので、フィラメントの端部と電極の接触面との接触抵抗を確実に低減することができる。これにより、フィラメントとの融着を発生させることなく、フィラメントを機械的に十分、強固に固定することができる。
【0015】
したがって、このようなフィラメント固定機構を用いた発熱機構によれば、より長時間に亘って安定した発熱を行うことができる。また、フィラメントの長寿命化を図ることもできる。さらに、このような発熱機構を搭載した蒸着装置によれば、より長時間に亘って安定した蒸着処理を行うことができるうえ、生産効率の向上を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明における実施の形態について、図面を参照して各々詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態としての電子ビーム蒸着装置の概略構成を表したものである。この電子ビーム蒸着装置は、蒸着処理容器1の内部に、坩堝2、坩堝冷却系3、電子銃4、シャッター5、モニタ6、ヒータ8、基板ホルダ9、真空度計測器10およびホルダ回転機構11を備えている。但し、ホルダ回転機構11の一部は蒸着処理容器1の外部に設けられている。蒸着処理容器1の外側には、真空排気系12と、制御回路系13と、電源回路系14とが設けられている。この電子ビーム蒸着装置は、坩堝2に収容された蒸着用物質15(後出)を蒸発させ、それを基板ホルダ9に保持された被蒸着基板16(後出)の表面に堆積させ、薄膜を形成するものである。
【0018】
坩堝2は、蒸着用物質15を収容するものであり、例えば酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウムまたは酸化硅素などによって構成されている。坩堝2は、その周囲の一部が坩堝冷却系3によって覆われている。坩堝冷却系3は、蒸着用物質15に対する電子ビームの照射に伴う坩堝2の過度な温度上昇から守るために冷却するものであり、具体的には、例えばウォータジャケットのような水冷方式の冷却装置などが好適である。
【0019】
電子銃4は、タングステン(W)を主材料としてなるフィラメント4Aと、フィラメント4Aを固定する一対の固定機構4Bと、電子放出用の穴を有すると共にフィラメント4Aを覆うように設けられたガン部材4Cとを、その主要部として備えたものである。電子銃4は、外部の電源回路系14から電力を供給されるとフィラメント4Aが赤熱して熱電子を放出するように設定されている。この電子銃4から放出された熱電子は、例えば図示しない偏向ヨーク等によって電磁気的に飛程を制御されて坩堝2に収容された蒸着用物質16へと照射される。蒸着用物質15は、電子銃4からの熱電子の照射によって加熱され、溶融したのち徐々に蒸発(気化)する。蒸着用物質15を収容した坩堝2と電子銃4とが本発明の蒸発源に相当する。
【0020】
シャッター5は、坩堝2と基板ホルダ9に保持された被蒸着基板16との間に配置され、坩堝2から被蒸着基板16へ向かう蒸着用物質15の通過を制御する開閉可能な部材である。すなわち、蒸着処理中には開状態となり、坩堝2から蒸発した気体状の蒸着用物質15の通過を許可する一方、蒸着処理の前後においては、坩堝2からの気体状の蒸着用物質15の通過を遮断するものである。シャッター5は、制御回路系13と接続されており、開状態または閉状態とする指令信号が入力されることにより、駆動するようになっている。
【0021】
モニタ6は、坩堝2から蒸発する蒸着用物質15の蒸発レートを観測するものであり、例えば水晶の振動数の変化を利用した水晶モニタである。モニタ6では、センサ部(図示せず)が水晶によって構成されており、その表面への蒸着用物質15の付着に伴う水晶の振動数変化に基づき蒸発レートを算出するようになっている。
【0022】
ヒータ8は、例えば被蒸着基板16の表面に形成される薄膜の耐久性向上を目的として、被蒸着基板16を所定温度に加熱するものである。
【0023】
基板ホルダ9は、蒸着用物質15を堆積させる対象となる被蒸着基板16を機械的に保持するものである。この電子ビーム蒸着装置では、基板ホルダ9が複数設けられており、それぞれに被蒸着基板16が取り付けられている。
【0024】
ホルダ回転機構11は、蒸着処理の際、堆積物の位置的な偏りを回避するために基板ホルダ9を回転させるものである。ホルダ回転機構11は、基板ホルダ9を支持する支持部11Aと、電動機などの駆動力源として機能する駆動部11Cと、駆動部11Cの動力を支持部11Aへ伝達する支軸11Bとを有している。すなわち、各基板ホルダ9(および被蒸着基板16)は、支軸11Bを回転中心として公転するようになっている。
【0025】
真空排気系12は、排気管12Aから吸引を行い、蒸着処理容器1の内部を所定の真空度にまで真空化するためのものである。蒸着処理容器1の内部の真空度については、真空度計測器10によって計測する。なお、蒸着処理容器1には、ガス導入口(図示せず)が設けられている。
【0026】
制御回路系13は、シャッター5へ指令信号を発し、シャッター5の開閉動作の制御を行う機能と、電源回路系14へ指令信号を発し、坩堝2からの蒸着用物質15の蒸発量を制御する機能と、真空排気系12の制御を行う機能とを有している。
【0027】
具体的には、制御回路系13は、蒸着処理を開始するにあたり、真空排気系12を駆動させることで蒸着処理容器1の内部を真空化したのち、電源回路系14に指令信号を発することによりフィラメント4Aへ電力を供給して熱電子を放出させ、蒸着用物質15の蒸発を開始させるように機能する。また、制御回路系13は、モニタ6からの蒸発レートのデータに基づき、電源回路系14を介してフィラメント4Aからの熱電子の放出量を調節することで、坩堝2からの蒸着用物質15の蒸発レートを制御する機能をも有している。
【0028】
続いて、図2および図3を参照して、固定機構4Bの構成について詳細に説明する。図2は固定機構4Bの全体構成を表す斜視図(組図)であり、図3は固定機構4Bの分解斜視図である。
【0029】
固定機構4Bは、フィラメント4Aの端部4ATを挟んで対向配置され、互いに係合する係合部をそれぞれ有する第1および第2の部材20,30と、フィラメント4Aの端部4ATと共に第1および第2の部材20,30の間に挟まれた押さえ板40と、第2の部材30を第1の部材20に締結するボルト50とを備えている。これら第1および第2の部材20,30、押さえ板40、ボルト50は、いずれも例えば金属材料によって構成されている。図4〜図6は、第1の部材20、第2の部材30および押さえ板40の各部品をそれぞれ表したものであり、図4(A)〜図4(C)が、第1の部材20の平面図、側面図、正面図を順に表し、図5(A)〜図5(C)が、第2の部材30の平面図、側面図、正面図を順に表し、図6(A)〜図6(C)が、押さえ板40の平面図、側面図、正面図を順に表している。
【0030】
第1の部材20は、上面21Aを有する支柱部21と、その上面21Aの側において支柱部21を挟むように対向配置された腕部22,23と、上面21Aの反対側において支柱部21を挟むように対向配置された脚部24,25とが一体となったものである。支柱部21は、ボルト50の締め付け方向(Z軸方向)に延在する角柱状をなすものであり、その上面21Aの一部は、フィラメント4Aの端部4ATと接する接触領域21S(図3参照)となっている。腕部22,23は、押さえ板40がボルト50によって付勢される方向(ボルト50の締め付け方向)と交差する方向(Y軸方向)に支柱部21から突き出したものである。腕部22,23の上面22A,23Aは支柱部21の上面21Aと共に共通の平面を構成している。腕部22,23における上面22A,23Aと反対側の面は、第2の部材30の一部と当接する当接面22T,23Tとなっている。この当接面22T,23Tは、ボルト50の締め付け方向に対して傾斜している。
【0031】
第2の部材30は、ほぼ中央にねじ穴31Kを有すると共におおよそ平板状をなす平板部31と、その平板部31の両端部に立設する鉤部32,33とが一体となったものである。鉤部32,33は、腕部32A,33Aと、その先端に設けられた爪部32B,33Bとを有している。爪部32B,33Bは、第1の部材20の当接面22T,23Tと当接する当接面32T,33Tを有している。これらの当接面22T,23Tおよび当接面32T,33Tは、傾斜角度が互いに一致していることが望ましい。
【0032】
押さえ板40は、その中央にボルト50の先端と嵌合する円柱状の内面の溝41が設けられた平板状の部材である。押さえ板40の平面形状は、例えば第1の部材20における上面21Aと同等の形状となっている。ボルト50の先端が溝41に収まることにより、押さえ板40が所定の位置から水平方向において外れてしまうのを防ぐことができる。
【0033】
このような部品からなる固定機構4Bは、第2の部材30によって保持されたボルト50を締め付け方向に回転させることにより、押さえ板40が支柱部21に向かう方向(−Z方向)へ押し付けられる。この際、第2の部材30の爪部32B,33Bは第1の部材20の腕部22,23と係合し、当接面32T,33Tと当接面22T,23Tとが当接することとなるので、さらにボルト50を締め付け方向に回転させることで、押さえ板40と支柱部21の上面21Aとによってフィラメント4Aの端部4ATを十分強固に把持することとなる。
【0034】
このように、本実施の形態によれば、ボルト50により、押さえ板40における接触領域21Sと対応する領域(フィラメントの端部4ATに対応する領域)の一部を上面21Aに向かうように押し付けることで、押さえ板40と上面21Aとでフィラメント4Aの端部4ATを把持するようにしたので、端部4ATと上面21Aとの良好な接触状態が容易に実現される。よって、フィラメント4Aと第1の部材20との接触抵抗を確実に低減することができる。そのうえ、上面21Aの近傍における発熱を低減しつつ効率的な放熱も可能となる。これにより、固定機構4Bは、自らの各部材とフィラメント4Aとの融着を発生させることなく、フィラメント4Aを機械的に十分強固に固定することができる。
【0035】
したがって、このような固定機構4Bを用いた発熱機構としての電子銃4によれば、より長時間に亘って安定した発熱を行うことができる。また、フィラメント4Aの長寿命化を図ることもできる。さらに、このような電子銃4を搭載した本実施の形態の蒸着装置によれば、より長時間に亘って安定した蒸着処理を行うことができるうえ、生産効率の向上を図ることもできる。
【0036】
ここで、押さえ板40と端部4ATとの接触領域と、接触面21Aにおける接触領域21Sとが互いに一致する場合には、接触領域21Sの全面に亘ってより偏りの小さな応力が付与されることとなるのでより好ましい。
【0037】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態では、電子銃を用いて蒸着用物質を加熱することで熱電子を取り出すようにしているが、本発明ではこれに限定されず、抵抗加熱方式や高周波誘導加熱法などを採用することもできる。
【0038】
さらに、上記実施の形態では、電極を、互いに分割された第1および第2の部材20,30によって構成するようにしたが、本発明では、これに限定されるものではない。例えば図7に示した変形例のように、開口60Kを有する一体化した基部60としてもよい。但し、上記実施の形態のように、電極を第1の部材20と第2の部材30とに分割することで、上面21Aの平滑な状態を維持するための研磨や清掃の作業が容易となるので好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明における一実施の形態としての電子ビーム蒸着装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した固定機構の全体構成を表す斜視図(組図)である。
【図3】図1に示した固定機構の全体構成を表す分解斜視図である。
【図4】図1に示した固定機構を構成する第1の部材20の構成を表す平面図、正面図および側面図である。
【図5】図1に示した固定機構を構成する第2の部材30の構成を表す平面図、正面図および側面図である。
【図6】図1に示した固定機構を構成する押さえ板40の構成を表す平面図、正面図および側面図である。
【図7】図1に示した固定機構の変形例における全体構成を表す斜視図である。
【図8】従来の固定機構の構成を表す斜視図である。
【図9】図8に示した従来の固定機構の断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…蒸着処理容器、2…坩堝、3…坩堝冷却系、4…電子銃、4A…フィラメント、4AT…端部、4B…固定機構、4C…ガン部材、5…シャッター、6…モニタ、8…ヒータ、9…基板ホルダ、10…真空度計測器、11…ホルダ回転機構、12…真空排気系、13…制御回路系、14…電源回路系、15…蒸着用物質、16…被蒸着基板、20…第1の部材、21S…接触領域、30…第2の部材、40…押さえ板、50…ボルト。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントの端部を把持するフィラメント固定機構であって、
前記フィラメントの端部と接する接触面を有する電極と、
前記フィラメントの端部を前記接触面との間に挟み込むように配置された押さえ板と、
前記押さえ板における前記フィラメントの端部に対応する領域の少なくとも一部を前記接触面に向かうように押し付ける付勢手段と
を備えたことを特徴とするフィラメント固定機構。
【請求項2】
前記電極は、前記接触面を有する第1の部材と、前記フィラメントの端部および押さえ板を前記接触面との間に挟み込むように配置され、かつ、前記付勢手段を保持する第2の部材とを含み、
前記第1および第2の部材は、前記付勢手段による付勢力によって互いに係合する係合部をそれぞれ有する
ことを特徴とする請求項1記載のフィラメント固定機構。
【請求項3】
前記フィラメントを挟んで2組の前記係合部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のフィラメント固定機構。
【請求項4】
前記付勢手段は、前記第2の部材の一部に設けられた嵌合穴と嵌合するボルトであり、
前記ボルトの先端部が、前記フィラメントの端部に対応する領域に位置する
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のフィラメント固定機構。
【請求項5】
前記第1の部材の係合部と、前記第2の部材における係合部とが互いに当接する当接面は、前記付勢手段による付勢方向に対して傾斜している
ことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項記載のフィラメント固定機構。
【請求項6】
前記押さえ板と前記フィラメントの端部との接触領域と、前記電極の接触面と前記フィラメントの端部との接触領域とは、互いに等しい
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項記載のフィラメント固定機構。
【請求項7】
フィラメントと、
前記フィラメントの両端部をそれぞれ把持する請求項1から請求項6のいずれか1項記載のフィラメント固定機構と
を備えた発熱機構。
【請求項8】
請求項7記載の発熱機構を有する蒸発源を備えたことを特徴とする蒸着装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−251431(P2008−251431A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93325(P2007−93325)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】