フィルタ、分波器および通信機器
【課題】バランス入出力型のフィルタにおいて、フィルタ特性を改善し、かつ小型化も可能にする。
【解決手段】フィルタ2は、第1の入力端子n1と第1の出力端子s1との間に直列に接続された複数の直列共振器L1−S1〜S4と、並列に接続された複数の並列共振器L1−P1〜P3を有する、第1のフィルタ部1−1と、第2の入力端子n2と第2の出力端子s1との間に直列に接続された複数の直列共振器L2−S1〜S4と並列に接続された複数の並列共振器L2−P1〜P3を有する、第2のフィルタ部1−2とを備える。第1のフィルタ部1−1において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスLh1に接続され、前記第2のフィルタ部1−2において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスLh2に接続される。
【解決手段】フィルタ2は、第1の入力端子n1と第1の出力端子s1との間に直列に接続された複数の直列共振器L1−S1〜S4と、並列に接続された複数の並列共振器L1−P1〜P3を有する、第1のフィルタ部1−1と、第2の入力端子n2と第2の出力端子s1との間に直列に接続された複数の直列共振器L2−S1〜S4と並列に接続された複数の並列共振器L2−P1〜P3を有する、第2のフィルタ部1−2とを備える。第1のフィルタ部1−1において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスLh1に接続され、前記第2のフィルタ部1−2において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスLh2に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話、PHS、無線LAN等の移動体通信、高周波無線通信で使用されうるフィルタ、分波器(デュプレクサ)、高周波モジュール及び通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波通信用のフィルタとして、外乱に対する受信感度改善の観点からアンテナ端子が不平衡ポートで、受信端子が平衡ポートであるフィルタが求められている。例えば、このようなフィルタとして、例えば、SAW(Surface-Acoustic-Wave)を用いた2重結合フィルタ=DMS(Double-Mode)フィルタが実用化されている。
【0003】
また、DMSを用いずに平衡-不平衡型のデュプレクサを実現する従来技術として、バラン(インピーダンス変換回路)と不平衡型のラダー型フィルタの組み合わせによりこれを実現する手法が知られている。これは、図17に示すように、フィルタを2つ組み合わせた4端子フィルタ(バランス入出力型受信フィルタ81)を形成し、片側の2端子(入力1、入力2)にバラン71を接続する技術である。バラン71と送信フィルタ61がアンテナ端子Antに接続される。バランス入出力型受信フィルタ81の構成は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
図18は、バラン71とバランス入出力型受信フィルタ81の構成の一例を示す図である。図18に示すバランス入出力型受信フィルタ81は、並列共振器P1〜P4を共有しグランドに対する接点を持たない2つのラダー型フィルタで構成される。この構成は、フルラダー型回路と呼ばれる。
【0005】
図19は、バランス入出力型受信フィルタ81の構成の他の一例を示す図である。図19に示すバランス入出力型受信フィルタ81では、2つのラダー型フィルタ82、83が対称に配置され、並列共振器L1−P1〜P4、L2−P1〜P4は不平衡型のフィルタと同様に接地されている。これはハーフラダー型回路を呼ばれる。
【0006】
フルラダー型回路、ハーフラダー型回路ともに経路1、2の受信(Rx)帯域での位相角を比較すると、180°異なっている(逆位相になっている)。すなわち、これらの回路は、不平衡-平衡出力型のフィルタになっている。しかし、実際にこれらの回路を使用しようとすると下記のような問題が生じる場合がある。図20(a)は、図18に示すフルラダー型回路の送信端子Tx−アンテナ端子Ant間およびアンテナ端子Ant−受信端子Rx間の通過特性を示すグラフである。図20(b)は、送信端子TxからRxへのアイソレーション特性である。図21(a)および図21(b)は、図19に示すハーフラダー型回路の通過特性およびアイソレーション特性をそれぞれ示すグラフである。これらのグラフから分かるように、フルラダー型回路、ハーフラダー型回路いずれにおいても、受信フィルタの送信帯域における抑圧およびアイソレーション特性が受信帯域近傍で急峻な引き込みがあった後フライバックしてしまい、相手帯域の良好な抑圧、アイソレーション特性が得られていない。一般に、受信フィルタの相手帯域抑圧、アイソレーションは約44〜55dB以上が必要とされるがこの回路構成ではこれを実現する事は難しい。さらに、フルラダー型回路は、原理的にコモンモードが除去できない、という問題もある。
【0007】
このような問題に対して、例えば、各並列共振器の一端に個別にインダクタンスを付加し接地させる手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−19876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、各並列共振器にインダクタンスを付加することは実際に複雑で困難である。各並列共振器に、特性を改善できる程度のインダクタンスを付与するには、様々な穂法があるが、いずれの方法を用いても、フィルタを所望のサイズで形成するのが困難である。また、多数のインダクタンスを近接して配置することはインダクタンス間の電磁結合を招き特性劣化の原因となりうる。
【0009】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、平衡-不平衡型フィルタに用いることができるバランス入出力型のフィルタにおいて、例えば、フィルタの通過帯域外の抑圧、アイソレーション、コモンモード抑圧、バランス特性などのフィルタ特性を改善し、かつ小型化も可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示するフィルタは、第1の入力端子と第1の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と、並列に接続された複数の並列共振器を有する、第1のフィルタ部と、第2の入力端子と第2の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と並列に接続された複数の並列共振器を有する、第2のフィルタ部とを備え、前記第1のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される。
【0011】
上記構成により、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部それぞれにおいて、少なくとも2つの並列共振器の一端がまとめて1つのインダクタンスに接続される。このように、並列共振器の一端がインダクタンスに接続されることで、例えば、通過帯域外の抑圧、コモンモード抑圧、およびバランス特性などのフィルタ特性が改善する。さらに、複数の並列共振器がインダクタンスを共有するので、フィルタの小型化が可能になる。その結果、小型で、特性の良いフィルタ素子が実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本願明細書の開示によれば、平衡-不平衡型フィルタに用いることができるバランス入出力型のフィルタにおいて、例えば、フィルタの通過帯域外の抑圧、アイソレーション、コモンモード抑圧、バランス特性などのフィルタ特性を改善し、かつ小型化も可能にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態において、フィルタは、入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランをさらに備える態様であってもよい。これにより、フィルタ特性が改善され、かつ小型化された平衡―不平衡型フィルタを実現することができる。
【0014】
本発明の実施形態では、前記第1のフィルタ部において、前記複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続される態様であってもよい。
【0015】
上記構成により、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部それぞれにおいて、並列共振器の組ごとに固有のインダクタンスが接続される。これにより、例えば、通過帯域外抑圧特性のようなフィルタ特性をより細かく調整することができる。
【0016】
本発明の実施形態において、前記第1のフィルタ部において、少なくとも1つの並列共振器が前記第2のフィルタ部の並列共振器と接続されるか、あるいは、前記第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は少なくとも1つの並列共振器を共有しており、前記第1のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続される態様であってもよい。この構成により、フィルタの小型化が一層容易になる。
【0017】
本発明の実施形態において、フィルタは、前記第1のフィルタ部の前記第1の入力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の出力端子側との間、あるいは、前記第1のフィルタ部の前記第1の出力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の入力端子側との間に、容量を有してもよい。この構成により、フィルタ特性をより改善することが可能である。
【0018】
本発明の実施形態では、前記第1のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される態様であってもよい。
【0019】
第1のフィルタ部および第2のフィルタ部それぞれにおいて、全ての並列共振器の一端がまとめて1つのインダクタンスに接続される。そのため、フィルタ特性が一層改善され、かつフィルタの小型化がさらに容易になる。
【0020】
本発明の実施形態において、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の前記直列共振器および前記並列共振器は、基板上に設けられ、前記インダクタンスは、前記基板上に設けられた伝送線路によって形成される態様であってもよい。
【0021】
この構成により、例えば、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部が形成される基板上の導体パターンでインダクタンスを実現することができる。そのため、より一層小型のフィルタを実現することができる。
【0022】
本発明の実施形態において、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部は、パッケージ内に形成され、前記インダクタンスは、前記パッケージ内に設けられる態様であってもよい。
【0023】
この構成により、例えば、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部が形成されるパッケージ内にインダクタンスが形成される。そのため、より一層小型のフィルタを実現することができる。
【0024】
本発明の実施形態において、前記バランは、集中定数を用いた回路で形成されてもよい。これにより、小型で安価なフィルタを実現することができる。
【0025】
本発明の実施形態において、前記並列共振器および前記直列共振器は、SAWあるいはFBARであってもよい。
【0026】
本発明の実施形態の一つに、上記フィルタを受信用フィルタとして備える分波器であって、共通端子から入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記フィルタの前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランと、前記共通端子に接続された送信用フィルタとをさらに備える分波器も含まれる。また、上記フィルタを有するモジュールまたは通信機器も本実施形態に含まれる。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。このデュプレクサは、平衡−不平衡変換器2(以下、バラン2と称する)、バランス入出力型フィルタである受信フィルタ1および送信フィルタ3を備える。シングル型端子(シングルエンド)であるアンテナ端子(共通端子)Antは、送信フィルタ3およびバラン2に接続されている。バラン2は、アンテナ端子Antを介して入力されたシングル信号(受信信号)をバランス信号に変換して出力する素子である。したがって、バラン2の入力端子は1系統であるシングル端子で構成され、出力端子は2系統であるバランス端子(入力n1、入力n2)で構成されている。
【0028】
この入力n1および入力n2が、受信フィルタ1のバランス入力端子となり、出力s1および出力s2がバランス出力端子となる。すなわち、受信フィルタ1は、入力n1および入力n2から入力された受信信号(バランス信号)のうち、所定の周波数帯域(受信周波数帯域)のみを通過させ、出力s3および出力s4からバランス出力するフィルタである。したがって、出力s1および出力s2は、受信端子Rx1、Rx2と呼ぶこともできる。
【0029】
なお、図示しないが、送信フィルタ3とバラン2との間に、位相整合回路が接続されてもよい。この位相整合回路は、例えば、受信フィルタ1のインピーダンスの位相を調整することにより、送信フィルタ3から出力される送信信号が受信フィルタ1側に流れ込むのを防ぐ役割を果たすことができる。
【0030】
バラン2は、アンテナ端子Antに入力された信号の位相を約90°遅らせて入力n1に出力すると同時に、アンテナ端子Antに入力された信号の位相を約90°進ませて入力n2にも出力する。図1に示す例では、バラン2は、インダクタL1、L2、キャパシタC1、C2を用いて構成される。なお、バラン2の回路構成は、図1に示す例に限られない。
【0031】
受信フィルタ1は4端子フィルタであり、入力n1−出力s1間にラダー型のフィルタ1−1(第1のフィルタ部)が接続され、入力n2−出力s2にラダー型のフィルタ1−2(第2のフィルタ)が接続される。フィルタ1−1は、入力n1−出力s1間に直列に接続された直列共振器L1−S1〜S4と、入力n1−出力s1間の線路上のノードとグランドとの間に接続された並列共振器L1−P1〜P3を備える。フィルタ1−2も同様に、直列共振器L2−S1〜S4および並列共振器L1−P1〜P3を備える。いずれも多段のラダー型フィルタである。
【0032】
フィルタ1−1において、並列共振器L1−P1〜P3のグランド側の一端は、1つの固有のインダクタンスLh1に接続されている。すなわち、並列共振器L1−P1〜P3の一端はまとめられた上に、固有のインダクタンスに接続されている。同様に、フィルタ2−1においても、並列共振器L2−P1〜P3のグランド側の一端は、1つのインダクタンスLh2に接続されている。インダクタンスLh1、Lh2の値は、受信フィルタ1が求められる特性に応じて適宜設定される。
【0033】
[効果の説明]
このように、並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3とグランドとの間にインダクタンスを設けることにより、例えば、受信フィルタの送信帯域抑圧、コモンモード抑圧、およびバランス特性等のフィルタ特性が改善される。図2は、複数の並列共振器ごとにインダクタンスを付加する場合の構成を示す図である。図2に示す受信フィルタ91が備えるラダー型のフィルタ92およびフィルタ93では、各並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3の一端が各々インダクタンスLk11〜14、21〜24にそれぞれ接続されている。この構成でもフィルタ特性をある程度改善することはできる。しかし、並列共振器ごとに別個にインダクタンスを設ける場合に比べて、図1に示すように複数の並列共振器に対してまとめて設ける方が、インダクタンスの値が小さくてすむ。さらに、インダクタンスの数も少なくてもすむ。その結果、フィルタの小型が可能になる。
【0034】
すなわち、図2に示すように各並列共振器にインダクタンスを付与することは実際に複雑で困難である。図2の構成の場合、各並列共振器に付与するインダクタンスは約0.5〜1.0nHが相当であると考えられる。これを実現するには、様々な方法を用いることができるが、いずれの方法を用いても外形サイズは少なくとも5mm×5mm角以上は必要と考えられる。そのため、図2に示す構成では、近年要求されている3mm×3mm角または2.5mm×2.0mm角のパッケージには収まらない可能性が高い。
【0035】
これに対して、図1に示す構成では、付加するインダクタンスの値が小さくてすむ上に、付加する数も少なくてすむ。そのため、図1に示すデュプレクサは小型化が可能になり、例えば、上記の3mm×3mm角または2.5mm×2.0mm角のパッケージに収まる可能性も高くなる。
【0036】
図3に、図1に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図3Aは、図1に示すデュプレクサの送信端子Tx−アンテナ端子Ant間の通過特性(実線)およびアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の通過特性(破線)を示すグラフである。図3Bは、送信端子Txから受信端子Rx1、Rx2へのアイソレーション特性を示すグラフである。図3Bのグラフにおいて、破線は、入力n1→出力s1を含む経路1のアイソレーション、一点鎖線は、入力n1→出力s1を含む経路2のアイソレーション、実線は経路1および経路2の合成アイソレーションを示す。図3Cおよび図3Dは、図1に示す受信フィルタ1の受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。
【0037】
一方、図4に、図2に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図4Aは、図2に示すデュプレクサの通過特性を示すグラフであり、図4Bは、アイソレーション特性を示すグラフである。図4Cおよび図4Dは、図2に示す受信フィルタ91の受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。
【0038】
図3および図4から、図1の受信フィルタ1は、通過特性、アイソレーション特性およびバランス特性において、図2に示す受信フィルタ91と同等もしくは、良好な特性を持っていることがわかる。例えば、図3Bと図4Bを比較すると、Tx帯およびRx帯境界におけるアイソレーション特性に存在するピークは、受信フィルタ1の方が受信フィルタ91より小さい。そのため、受信フィルタ1は、Tx帯高周波側端部におけるアイソレーション値がインダクタンス値の製造ばらつき、温度変化による周波数シフトの影響を受けにくく良好な特性を持っていることがわかる。
【0039】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。図5に示す受信フィルタ1aにおいて、フィルタ1a−1の1段目の並列共振器L1−P1のと、それに対応する、フィルタ1a−2の1段目の並列共振器L2−P1とが接続されている。このように、受信フィルタを構成する2つのフィルタ1a―1、1a―2でうち少なくとも一組の対応する並列共振器を互いに接続してもよい。このように、共振器を接続することで、配線パターン等が簡素になり、構造を単純にすることができる。
【0040】
図6に、図5に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図6Aは、図5に示すデュプレクサの通過特性を示すグラフであり、図6Bは、アイソレーション特性を示すグラフである。図6Cおよび図6Dは、図5に示す受信フィルタ1aの受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。
【0041】
これらのグラフからも、図5に示す構成で、図1に示した構成と同等の特性が得られることがわかる。例えば、図6Bに示す経路1、2の合成アイソレーション特性は、送信帯域(Tx帯域)内で2つの引き込み部を持つため全体としてフラットな特性になる。これに対して、図3Bおよび図4Bでは当該帯域のアイソレーション特性の引き込み部は一つであり、全体としてV字形の特性を持つ。そのため、比較的フラットなアイソレーション特性を持つ図5に示す構成のデュプレクサは、図1、図2の構成のデュプレクサよりも、アイソレーション値が、前述した、インダクタの製造ばらつき、温度変化による周波数シフトの影響を受けにくいといえる。
【0042】
なお、本実施形態では、1組の並列共振器が接続される例を示したが、2つ以上の対応する並列共振器が接続されてもよい。また、本実施形態では、2つのフィルタ1a−1、1a―2で対応する並列共振器を接続する代わりに、2つのフィルタ1a−1、1a―2が、1つの並列共振器を共有する構成にすることもできる。例えば、図5に示す互いに接続された並列共振器L1−P1、L2−P1を、1つの共振器で置き換えた構成とすることができる。このような構成でも同様の効果を得ることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。図7に示す受信フィルタ1bにおいて、並列共振器L1−P1〜P3は、1段目の並列共振器L1−P1と、2、3段目の共振器L1−P2、P3との2組に分類され、それぞれの組の並列共振器がインダクタンスLb11、Lb12に接続される。並列共振器L1−P1はインダクタンスLb12に、並列共振器L1−P2、P3はインダクタンスLb11に接続されている。なお、並列共振器の組の構成は、図7に示す例に限定されない。
【0044】
フィルタ1b−2においても、同様に、並列共振器L2−P1〜P3が二組(L1−P1とL1−P2、P3)に分けられ、それぞれの組の並列共振器の一端がまとめられた上にそれぞれ固有のインダクタンスLb21、Lb22が接続されている。このような構成にすることにより、共振周波数の組ごとに接続されるインダクタンスの値を調整することができる。その結果、例えば、送信帯域抑圧特性等のようなフィルタ特性をより細かく調整することが可能になる。なお、図7に示す構成でも、図1に示した構成のディプレクサとほぼ同等の特性を得ることができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。図8に示す受信フィルタ1cは、入力n1と出力s2との間に、容量Chが設けられた構成である。受信フィルタ1cにおける、この容量Chの橋渡しの他の構成は、図1に示す受信フィルタ1と同様である。このように、一方のフィルタ1c−1の入力端(入力n1)と他方のフィルタ1c−2の出力端(出力s2)、との間に対角の容量Chを設けることにより、より一層、受信フィルタ2の送信帯域抑圧に優れた平衡-不平衡型フィルタを実現することができる。
【0046】
図9に、図8に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図9Aは、図8に示すデュプレクサの通過特性を示すグラフであり、図9Bは、アイソレーション特性を示すグラフである。図9Cおよび図9Dは、図8に示す受信フィルタ1cの受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。これらのグラフからも、図8に示す構成においては、図1に示した構成の特性(図3)に比べて、アイソレーション特性(図9D)および送信帯域抑圧特定(図9C)が改善されているといえる。このように、バランス出力型フィルタの4端子のうち、対角の端子間に容量Ch(対角容量)を付与することによって、経路1と経路2のアイソレーション波形が異なる。その結果、合成アイソレーション特性が平坦化する。そのため、図3に示すV字形状のアイソレーション特性を持つディプレクサに比べても、図8に示すデュプレクサは、Tx帯高周波および低周波端でのアイソレーション値が改善される。
【0047】
なお、本実施形態とは逆に、フィルタ1c−2の入力端(入力n2)とフィルタ1c−1の出力端(出力s1)、との間に対角の容量Chを設けてもよい。また、第2または第3の実施形態における受信フィルタに対角の容量Chを設けても、同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第5の実施形態)
[パッケージの構成例]
第5に実施形態は、上記第1〜4の実施形態におけるデュプレクサの実装例に関する。図10は、図1に示したデュプレクサの実装形態を示す図である。図10Aは、パッケージ内に実装された状態を上から見た場合の上面図、図10Bは、パッケージも含むA−A線断面図である。図10に示す例では、キャビティ29を有するセラミックパッケージ36に、バランチップ12、送信フィルタチップ13、および受信フィルタチップ11がフリップチップ実装される。バランチップ12は、図1におけるバラン2を形成するIPDチップである。送信フィルタチップ13は送信フィルタ3を形成するチップであり、受信フィルタチップ11は受信フィルタ1を形成するチップである。これらの各チップとセラミックパッケージ36とは、例えば、Auバンプ35により導通される。これらのチップが実装されたセラミックパッケージ36の上部には、メタルリッド27がキャップとして設けられる。これにより、キャビティ29は気密封止される。
【0049】
セラミックパッケージ36は、例えば、チップが実装されるダイアタッチ層26、およびその下の中間層25を含む積層パッケージとすることができる。この場合、中間層25の裏側にはフットパットが設けられ、フットパット層が形成される。
【0050】
図10Cは、セラミックパッケージ36のダイアタッチ層26の配線レイアウトの一例を示す図である。図10Dは、ダイアタッチ層26の下層である中間層25の表面における配線レイアウトの一例を示す図である。図10Eは、ダイアタッチ層26の下層であるフットパット層におけるフットパットの配置を示す図である。
【0051】
図10C、図10Dにおいては、白抜きの丸は、チップとセラミックパッケージ36とをつなぐバンプを示している。また、黒抜きの丸は、他の層と導通するビアを示している。なお、図10C〜図10Dにおける各端子の符号(Rx1、Rx2、Tx、Ant、n1、n2)は、図1に示す符号に対応している。「GND」は接地(グランド)を意味する。また、図10C〜図10Eにおいては、説明に関係する線路および端子のレイアウトを少なくとも示し、その他のレイアウトは省略している。
【0052】
図10Bに示すダイアタッチ層では、バランチップ12のアンテナ端子Antは線路パターンとビアにより中間層25を介して図10Eに示すAntフットパットに接続される。また、図10Bに示すダイアタッチ層26において、バランチップ12の出力端子と受信フィルタチップ11の入力n1、n2は、線路パターンにより接続されている。さらに、受信フィルタチップ11の受信端子Rx1、Rx2は、ビアにより中間層25を通って図10Eのフットパット層のRx1フットパットおよびRx2フットパットにそれぞれ接続されている。
【0053】
[バランチップの構成例]
図11(a)は、バランチップ12の構成を示す平面図である。図11に示す例では、石英の基板37上のアンテナ端子Antバンプと入力n1バンプとの間にキャパシタC2、入力n1バンプとGNDバンプの間にインダクタL1が形成される。また、アンテナ端子Antバンプと入力n2バンプとの間にインダクタL1、入力n2バンプとGNDバンプとの間にキャパシタC1が形成される。インダクタL2、L3は、例えば、銅等の金属膜を用いたスパイラルインダクタにより形成することができる。また、キャパシタC2、C3は、例えば、MIMキャパシタで形成される。
【0054】
図11(b)は、MINキャパシタの構成例を示す断面図である。MINキャパシタは、基板37上に設けられた下部電極31、誘電体32および上部電極33の積層体で構成される。上部電極33は銅配線34により基板37上の導体に接続される。このように、インダクタおよびキャパシタの集中定数を用いた回路でバラン2を形成することにより、小型で安価な平衡-不平衡型フィルタを実現することができる。
【0055】
[受信フィルタの構成例]
図12は、図1に示した受信フィルタ1を形成する受信フィルタチップ11の構成を示す平面図である。図12において示される各部の符号は、図1に示す各部の符号の対応している。図12に示す例では、圧電基板39上に設けられた弾性表面波素子により、ラダー型フィルタの直列共振器L1−S1〜S4、L2−S1〜S4および並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3が形成されている。弾性表面波素子は、線路パターンを介して、入力n1、n2、受信端子Rx1、Rx2またはグランド端子GNDに接続される。
【0056】
グランド端子GNDから延びる2本の伝送線路により、インダクタンスLh1、Lh2がそれぞれ形成している。このように、各フィルタ1−1、1−2に固有のインダクタンスLh1、Lh2の少なくとも一部を、チップ表面上の導体パターンにより形成することで、より一層小型な平衡-不平衡型のフィルタ素子を実現することができる。
【0057】
図13は、図7に示した受信フィルタ1bの一部変形したフィルタ1b´を形成する受信フィルタチップ11の構成を示す平面図である。図13において図7に示す部分と対応する部分については同じ符号を付している。図13に示す例でも、ラダー型のフィルタ1b´−1、1b´−2の直列共振器L1−S1〜S4、L2−S1〜S4および並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3は弾性表面波素子により形成されている。グランド端子GNDから延びる4本の伝送線路が、インダクタンスLb11、Lb12、Lb21、Lb22をそれぞれ形成している。
【0058】
フィルタ1b´―1では、並列共振器L1−P1、P2がインダクタンスLb12に、L1―P3がインダクタンスLb11に接続されている。フィルタ1b´―2では、並列共振器L2−P1、P2がインダクタンスLb22に、L2−P3がインダクタンスLb21に接続されている。
【0059】
図14は、図5に示した受信フィルタ1aの一部変形したフィルタ1a´を形成する受信フィルタチップ11の構成を示す平面図である。図14において図5に示す部分と対応する部分については同じ符号を付している。図14に示すフィルタ1a´では、並列共振器L1−P1とL2−P1が互いに接続され、さらに、並列共振器L1−P3とL2−P3も互いに接続されている。グランド端子GNDから延びる2本の伝送線路により、インダクタンスLa1、La2がそれぞれ形成されている。インダクタンスLa1は、並列共振器L1−P2に、インダクタンスLa2は並列共振器L2−P2に接続されている。
【0060】
[対角の容量の構成例]
次に、セラミックパッケージ36において、図8に示した対角の容量Chが形成される場合の構成例を説明する。図15(a)は、ダイアタッチ層26において、線路パターンで容量Chが形成された場合の構成を示す平面図である。図15(a)においては、Rx2フットパットの位置を点線で示している。図15(b)は、図15(a)のA−A線断面図である。入力n1のバンプから線路パターンがRx2フットパットの上方まで延びている。このように、入力n1のバンプに繋がる線路パターン(配線)が、受信端子Rx2のフットパッドの直上まで伸びる構成とすることにより、この線路パターンと受信端子Rx2のフットパッドとが、セラミックを誘電帯層とする平行平板型のキャパシタを形成することになる。そのため、線路パターンとフットパッドの重なり部分Wを調整することで所望のキャパシタンス値を得ることができる。このように、対角の容量Chは、簡単な構成により実現することができる。そのため、例えば、パッケージの大型化や、配線構造の複雑化による干渉等の問題を引き起こすことなく、容易に、フィルタ特性を改善させることが可能になる。
【0061】
以上、デュプレクサの実装例について説明したが、デュプレクサの実装例は上記に限定されない。例えば、インダクタンスLh1は、上記の他、金属ワイヤ、プリント板状のスパイラルインダクタ等を用いて形成されてもよい。また、上記実装例では、受信フィルタの共振器が弾性表面波素子(SAW(surface Acoustic Wave)デバイス)で形成されているが、共振器はこれに限られない。共振器は、例えば、FBAR(Film-Bulk-Acoustic-Resonator)、あるいは弾性境界波デバイス等で形成されてもよい。
【0062】
(第6の実施形態)
本実施形態は、上記の第1〜第5の実施形態で示したデュプレクサを備える通信機器である。
【0063】
図16は、図1に示す回路構成のデュプレクサを含む通信機器40の概略構成を示す図である。図16に示す構成要素において、図1に示す回路の構成要素と対応する部分には、同じ番号を付す。図16に示す通信機器40においては、モジュール基板41上に、送信フィルタ3、受信フィルタ1、バラン2、パワーアンプ42、RFIC43、ベースバンドIC44が設けられている。受信フィルタ1、送信フィルタ3は、それぞれ半導体チップで形成することができる。バラン2は、例えば、IPDチップで形成されてもよい。
【0064】
モジュール基板41に形成された配線パターンにより、アンテナ端子(共通端子)Antと送信フィルタ3およびバラン2との接続、バラン2と受信フィルタ1との接続がなされている。なお、アンテナ端子Antは通信機器40が備えるアンテナ(図示せず)に接続される。
【0065】
送信端子Txはパワーアンプ42を介してRFIC43に接続され、受信端子Rx1、Rx2もRFIC43に接続されている。RFIC43はベースバンドIC44に接続されている。RFIC43は、半導体チップおよびその他の部品により構成されている。RFIC43には、受信端子Rx1、Rx2から入力された受信信号を処理するための受信回路および、パワーアンプ42を介してアンテナ端子Antに出力する送信信号を処理するための送信回路を含む回路を集積している。なお、パワーアンプ42は、RFIC43の送信回路から出力された送信信号を増幅して送信フィルタ3の送信端子Txへ入力する回路である。
【0066】
また、ベースバンドIC44も半導体チップおよびその他の部品により構成されている。ベースバンドIC44には、RFIC43に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC43に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0067】
図示しないが、ベースバンドIC44には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC44で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器40のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器40が備える入力機器もベースバンドIC44に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC44が送信信号に変換することができる構成になっている。
【0068】
なお、通信機器40の構成は、図17に示す例に限られない。また、通信機器40の一部に用いられる部品の集合であるモジュールであって、上記第1〜第6の実施形態のデュプレクサを含むモジュールも本発明の実施形態に含まれる。
【0069】
[効果、その他]
以上、第1〜第5の実施形態によれば、小型で、特性の良いラダー型の平衡-不平衡型フィルタフィルタが実現できる。従来、平衡-不平衡型フィルタフィルタには、SAWを用いたDMSフィルタが用いられていた。しかし、耐電力性や周波数特性は、ラダー型の不平衡型回路に及ばなかった。そのため、FBARを用いたラダー型のフィルタにより平衡-不平衡型フィルタが要求されていた。本実施形態によれば、FBARを用いたラダー型のフィルタにより平衡-不平衡型フィルタを実現することができる。
【0070】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0071】
(付記1)
第1の入力端子と第1の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と、並列に接続された複数の並列共振器を有する、第1のフィルタ部と、
第2の入力端子と第2の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と並列に接続された複数の並列共振器を有する、第2のフィルタ部とを備え、
前記第1のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される、フィルタ。
【0072】
(付記2)
入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランをさらに備える、付記1に記載のフィルタ。
【0073】
(付記3)
前記第1のフィルタ部において、前記複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続される、付記1に記載のフィルタ。
【0074】
(付記4)
前記第1のフィルタ部において、少なくとも1つの並列共振器が前記第2のフィルタ部の並列共振器と接続されるか、あるいは、前記第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は少なくとも1つの並列共振器を共有しており、
前記第1のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続される、付記1に記載のフィルタ。
【0075】
(付記5)
前記第1のフィルタ部の前記第1の入力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の出力端子側との間、あるいは、前記第1のフィルタ部の前記第1の出力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の入力端子側との間に、容量を有する、付記1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0076】
(付記6)
前記第1のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される、付記1に記載のフィルタ。
【0077】
(付記7)
前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の前記直列共振器および前記並列共振器は、基板上に設けられ、
前記インダクタンスは、前記基板上に設けられた伝送線路によって形成される、付記1〜6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0078】
(付記8)
前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部は、パッケージ内に形成され、
前記インダクタンスは、前記パッケージ内に設けられる、付記1〜6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0079】
(付記9)
前記バランは、集中定数を用いた回路で形成される、付記1〜8のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0080】
(付記10)
前記並列共振器および前記直列共振器は、SAWあるいはFBARである、付記1〜9のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0081】
(付記11)
付記1〜10のいずれか1項に記載のフィルタを受信用フィルタとして備える分波器であって、
共通端子から入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記フィルタの前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランと、
前記共通端子に接続された送信用フィルタとをさらに備える分波器。
【0082】
(付記12)
付記1〜10のいずれか1項に記載のフィルタを有するモジュール。
【0083】
(付記13)
付記1〜10のいずれか1項に記載のフィルタを有する通信機器。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図2】複数の並列共振器ごとにインダクタンスを付加する場合の構成を示す図
【図3】図1に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図4】図2に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図5】第2の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図6】図5に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図7】第3の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図8】第4の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図9】図8に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図10】図1に示したデュプレクサの実装形態を示す図
【図11】図11(a)は、バランチップ12の構成を示す平面図である。図11(b)は、MINキャパシタの構成例を示す断面図である。
【図12】図1に示した受信フィルタの受信フィルタチップの構成を示す平面図
【図13】図7に示した受信フィルタに対応する受信フィルタチップの構成を示す平面図
【図14】図5に示した受信フィルタに対応する受信フィルタチップの構成を示す平面図
【図15】ダイアタッチ層26に形成された容量Chの構成を示す図
【図16】通信機器40の概略構成を示す図
【図17】フィルタを2つ組み合わせた4端子フィルタの構成図
【図18】バラン71とバランス入出力型受信フィルタ81の構成の一例を示す図
【図19】バランス入出力型受信フィルタ81の構成の他の一例を示す図
【図20】図18に示すフルラダー型回路の各種特性を示すグラフ
【図21】図19に示すハーフラダー型回路の各種特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0085】
1 受信フィルタ
2 バラン
3 送信フィルタ
11 受信フィルタチップ
12 バランチップ
13 送信フィルタチップ
25 中間層
26 ダイアタッチ層
27 メタルリッド
29 キャビティ
36 セラミックパッケージ
37 基板
39 圧電基板
40 通信機器
41 モジュール基板
42 パワーアンプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、携帯電話、PHS、無線LAN等の移動体通信、高周波無線通信で使用されうるフィルタ、分波器(デュプレクサ)、高周波モジュール及び通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高周波通信用のフィルタとして、外乱に対する受信感度改善の観点からアンテナ端子が不平衡ポートで、受信端子が平衡ポートであるフィルタが求められている。例えば、このようなフィルタとして、例えば、SAW(Surface-Acoustic-Wave)を用いた2重結合フィルタ=DMS(Double-Mode)フィルタが実用化されている。
【0003】
また、DMSを用いずに平衡-不平衡型のデュプレクサを実現する従来技術として、バラン(インピーダンス変換回路)と不平衡型のラダー型フィルタの組み合わせによりこれを実現する手法が知られている。これは、図17に示すように、フィルタを2つ組み合わせた4端子フィルタ(バランス入出力型受信フィルタ81)を形成し、片側の2端子(入力1、入力2)にバラン71を接続する技術である。バラン71と送信フィルタ61がアンテナ端子Antに接続される。バランス入出力型受信フィルタ81の構成は、例えば、特許文献1に記載されている。
【0004】
図18は、バラン71とバランス入出力型受信フィルタ81の構成の一例を示す図である。図18に示すバランス入出力型受信フィルタ81は、並列共振器P1〜P4を共有しグランドに対する接点を持たない2つのラダー型フィルタで構成される。この構成は、フルラダー型回路と呼ばれる。
【0005】
図19は、バランス入出力型受信フィルタ81の構成の他の一例を示す図である。図19に示すバランス入出力型受信フィルタ81では、2つのラダー型フィルタ82、83が対称に配置され、並列共振器L1−P1〜P4、L2−P1〜P4は不平衡型のフィルタと同様に接地されている。これはハーフラダー型回路を呼ばれる。
【0006】
フルラダー型回路、ハーフラダー型回路ともに経路1、2の受信(Rx)帯域での位相角を比較すると、180°異なっている(逆位相になっている)。すなわち、これらの回路は、不平衡-平衡出力型のフィルタになっている。しかし、実際にこれらの回路を使用しようとすると下記のような問題が生じる場合がある。図20(a)は、図18に示すフルラダー型回路の送信端子Tx−アンテナ端子Ant間およびアンテナ端子Ant−受信端子Rx間の通過特性を示すグラフである。図20(b)は、送信端子TxからRxへのアイソレーション特性である。図21(a)および図21(b)は、図19に示すハーフラダー型回路の通過特性およびアイソレーション特性をそれぞれ示すグラフである。これらのグラフから分かるように、フルラダー型回路、ハーフラダー型回路いずれにおいても、受信フィルタの送信帯域における抑圧およびアイソレーション特性が受信帯域近傍で急峻な引き込みがあった後フライバックしてしまい、相手帯域の良好な抑圧、アイソレーション特性が得られていない。一般に、受信フィルタの相手帯域抑圧、アイソレーションは約44〜55dB以上が必要とされるがこの回路構成ではこれを実現する事は難しい。さらに、フルラダー型回路は、原理的にコモンモードが除去できない、という問題もある。
【0007】
このような問題に対して、例えば、各並列共振器の一端に個別にインダクタンスを付加し接地させる手法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−19876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、各並列共振器にインダクタンスを付加することは実際に複雑で困難である。各並列共振器に、特性を改善できる程度のインダクタンスを付与するには、様々な穂法があるが、いずれの方法を用いても、フィルタを所望のサイズで形成するのが困難である。また、多数のインダクタンスを近接して配置することはインダクタンス間の電磁結合を招き特性劣化の原因となりうる。
【0009】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであり、平衡-不平衡型フィルタに用いることができるバランス入出力型のフィルタにおいて、例えば、フィルタの通過帯域外の抑圧、アイソレーション、コモンモード抑圧、バランス特性などのフィルタ特性を改善し、かつ小型化も可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示するフィルタは、第1の入力端子と第1の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と、並列に接続された複数の並列共振器を有する、第1のフィルタ部と、第2の入力端子と第2の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と並列に接続された複数の並列共振器を有する、第2のフィルタ部とを備え、前記第1のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される。
【0011】
上記構成により、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部それぞれにおいて、少なくとも2つの並列共振器の一端がまとめて1つのインダクタンスに接続される。このように、並列共振器の一端がインダクタンスに接続されることで、例えば、通過帯域外の抑圧、コモンモード抑圧、およびバランス特性などのフィルタ特性が改善する。さらに、複数の並列共振器がインダクタンスを共有するので、フィルタの小型化が可能になる。その結果、小型で、特性の良いフィルタ素子が実現できる。
【発明の効果】
【0012】
本願明細書の開示によれば、平衡-不平衡型フィルタに用いることができるバランス入出力型のフィルタにおいて、例えば、フィルタの通過帯域外の抑圧、アイソレーション、コモンモード抑圧、バランス特性などのフィルタ特性を改善し、かつ小型化も可能にすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態において、フィルタは、入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランをさらに備える態様であってもよい。これにより、フィルタ特性が改善され、かつ小型化された平衡―不平衡型フィルタを実現することができる。
【0014】
本発明の実施形態では、前記第1のフィルタ部において、前記複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続される態様であってもよい。
【0015】
上記構成により、第1のフィルタ部および第2のフィルタ部それぞれにおいて、並列共振器の組ごとに固有のインダクタンスが接続される。これにより、例えば、通過帯域外抑圧特性のようなフィルタ特性をより細かく調整することができる。
【0016】
本発明の実施形態において、前記第1のフィルタ部において、少なくとも1つの並列共振器が前記第2のフィルタ部の並列共振器と接続されるか、あるいは、前記第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は少なくとも1つの並列共振器を共有しており、前記第1のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続される態様であってもよい。この構成により、フィルタの小型化が一層容易になる。
【0017】
本発明の実施形態において、フィルタは、前記第1のフィルタ部の前記第1の入力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の出力端子側との間、あるいは、前記第1のフィルタ部の前記第1の出力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の入力端子側との間に、容量を有してもよい。この構成により、フィルタ特性をより改善することが可能である。
【0018】
本発明の実施形態では、前記第1のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、前記第2のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される態様であってもよい。
【0019】
第1のフィルタ部および第2のフィルタ部それぞれにおいて、全ての並列共振器の一端がまとめて1つのインダクタンスに接続される。そのため、フィルタ特性が一層改善され、かつフィルタの小型化がさらに容易になる。
【0020】
本発明の実施形態において、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の前記直列共振器および前記並列共振器は、基板上に設けられ、前記インダクタンスは、前記基板上に設けられた伝送線路によって形成される態様であってもよい。
【0021】
この構成により、例えば、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部が形成される基板上の導体パターンでインダクタンスを実現することができる。そのため、より一層小型のフィルタを実現することができる。
【0022】
本発明の実施形態において、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部は、パッケージ内に形成され、前記インダクタンスは、前記パッケージ内に設けられる態様であってもよい。
【0023】
この構成により、例えば、前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部が形成されるパッケージ内にインダクタンスが形成される。そのため、より一層小型のフィルタを実現することができる。
【0024】
本発明の実施形態において、前記バランは、集中定数を用いた回路で形成されてもよい。これにより、小型で安価なフィルタを実現することができる。
【0025】
本発明の実施形態において、前記並列共振器および前記直列共振器は、SAWあるいはFBARであってもよい。
【0026】
本発明の実施形態の一つに、上記フィルタを受信用フィルタとして備える分波器であって、共通端子から入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記フィルタの前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランと、前記共通端子に接続された送信用フィルタとをさらに備える分波器も含まれる。また、上記フィルタを有するモジュールまたは通信機器も本実施形態に含まれる。
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。このデュプレクサは、平衡−不平衡変換器2(以下、バラン2と称する)、バランス入出力型フィルタである受信フィルタ1および送信フィルタ3を備える。シングル型端子(シングルエンド)であるアンテナ端子(共通端子)Antは、送信フィルタ3およびバラン2に接続されている。バラン2は、アンテナ端子Antを介して入力されたシングル信号(受信信号)をバランス信号に変換して出力する素子である。したがって、バラン2の入力端子は1系統であるシングル端子で構成され、出力端子は2系統であるバランス端子(入力n1、入力n2)で構成されている。
【0028】
この入力n1および入力n2が、受信フィルタ1のバランス入力端子となり、出力s1および出力s2がバランス出力端子となる。すなわち、受信フィルタ1は、入力n1および入力n2から入力された受信信号(バランス信号)のうち、所定の周波数帯域(受信周波数帯域)のみを通過させ、出力s3および出力s4からバランス出力するフィルタである。したがって、出力s1および出力s2は、受信端子Rx1、Rx2と呼ぶこともできる。
【0029】
なお、図示しないが、送信フィルタ3とバラン2との間に、位相整合回路が接続されてもよい。この位相整合回路は、例えば、受信フィルタ1のインピーダンスの位相を調整することにより、送信フィルタ3から出力される送信信号が受信フィルタ1側に流れ込むのを防ぐ役割を果たすことができる。
【0030】
バラン2は、アンテナ端子Antに入力された信号の位相を約90°遅らせて入力n1に出力すると同時に、アンテナ端子Antに入力された信号の位相を約90°進ませて入力n2にも出力する。図1に示す例では、バラン2は、インダクタL1、L2、キャパシタC1、C2を用いて構成される。なお、バラン2の回路構成は、図1に示す例に限られない。
【0031】
受信フィルタ1は4端子フィルタであり、入力n1−出力s1間にラダー型のフィルタ1−1(第1のフィルタ部)が接続され、入力n2−出力s2にラダー型のフィルタ1−2(第2のフィルタ)が接続される。フィルタ1−1は、入力n1−出力s1間に直列に接続された直列共振器L1−S1〜S4と、入力n1−出力s1間の線路上のノードとグランドとの間に接続された並列共振器L1−P1〜P3を備える。フィルタ1−2も同様に、直列共振器L2−S1〜S4および並列共振器L1−P1〜P3を備える。いずれも多段のラダー型フィルタである。
【0032】
フィルタ1−1において、並列共振器L1−P1〜P3のグランド側の一端は、1つの固有のインダクタンスLh1に接続されている。すなわち、並列共振器L1−P1〜P3の一端はまとめられた上に、固有のインダクタンスに接続されている。同様に、フィルタ2−1においても、並列共振器L2−P1〜P3のグランド側の一端は、1つのインダクタンスLh2に接続されている。インダクタンスLh1、Lh2の値は、受信フィルタ1が求められる特性に応じて適宜設定される。
【0033】
[効果の説明]
このように、並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3とグランドとの間にインダクタンスを設けることにより、例えば、受信フィルタの送信帯域抑圧、コモンモード抑圧、およびバランス特性等のフィルタ特性が改善される。図2は、複数の並列共振器ごとにインダクタンスを付加する場合の構成を示す図である。図2に示す受信フィルタ91が備えるラダー型のフィルタ92およびフィルタ93では、各並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3の一端が各々インダクタンスLk11〜14、21〜24にそれぞれ接続されている。この構成でもフィルタ特性をある程度改善することはできる。しかし、並列共振器ごとに別個にインダクタンスを設ける場合に比べて、図1に示すように複数の並列共振器に対してまとめて設ける方が、インダクタンスの値が小さくてすむ。さらに、インダクタンスの数も少なくてもすむ。その結果、フィルタの小型が可能になる。
【0034】
すなわち、図2に示すように各並列共振器にインダクタンスを付与することは実際に複雑で困難である。図2の構成の場合、各並列共振器に付与するインダクタンスは約0.5〜1.0nHが相当であると考えられる。これを実現するには、様々な方法を用いることができるが、いずれの方法を用いても外形サイズは少なくとも5mm×5mm角以上は必要と考えられる。そのため、図2に示す構成では、近年要求されている3mm×3mm角または2.5mm×2.0mm角のパッケージには収まらない可能性が高い。
【0035】
これに対して、図1に示す構成では、付加するインダクタンスの値が小さくてすむ上に、付加する数も少なくてすむ。そのため、図1に示すデュプレクサは小型化が可能になり、例えば、上記の3mm×3mm角または2.5mm×2.0mm角のパッケージに収まる可能性も高くなる。
【0036】
図3に、図1に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図3Aは、図1に示すデュプレクサの送信端子Tx−アンテナ端子Ant間の通過特性(実線)およびアンテナ端子Ant−受信端子Rx1、Rx2間の通過特性(破線)を示すグラフである。図3Bは、送信端子Txから受信端子Rx1、Rx2へのアイソレーション特性を示すグラフである。図3Bのグラフにおいて、破線は、入力n1→出力s1を含む経路1のアイソレーション、一点鎖線は、入力n1→出力s1を含む経路2のアイソレーション、実線は経路1および経路2の合成アイソレーションを示す。図3Cおよび図3Dは、図1に示す受信フィルタ1の受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。
【0037】
一方、図4に、図2に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図4Aは、図2に示すデュプレクサの通過特性を示すグラフであり、図4Bは、アイソレーション特性を示すグラフである。図4Cおよび図4Dは、図2に示す受信フィルタ91の受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。
【0038】
図3および図4から、図1の受信フィルタ1は、通過特性、アイソレーション特性およびバランス特性において、図2に示す受信フィルタ91と同等もしくは、良好な特性を持っていることがわかる。例えば、図3Bと図4Bを比較すると、Tx帯およびRx帯境界におけるアイソレーション特性に存在するピークは、受信フィルタ1の方が受信フィルタ91より小さい。そのため、受信フィルタ1は、Tx帯高周波側端部におけるアイソレーション値がインダクタンス値の製造ばらつき、温度変化による周波数シフトの影響を受けにくく良好な特性を持っていることがわかる。
【0039】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。図5に示す受信フィルタ1aにおいて、フィルタ1a−1の1段目の並列共振器L1−P1のと、それに対応する、フィルタ1a−2の1段目の並列共振器L2−P1とが接続されている。このように、受信フィルタを構成する2つのフィルタ1a―1、1a―2でうち少なくとも一組の対応する並列共振器を互いに接続してもよい。このように、共振器を接続することで、配線パターン等が簡素になり、構造を単純にすることができる。
【0040】
図6に、図5に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図6Aは、図5に示すデュプレクサの通過特性を示すグラフであり、図6Bは、アイソレーション特性を示すグラフである。図6Cおよび図6Dは、図5に示す受信フィルタ1aの受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。
【0041】
これらのグラフからも、図5に示す構成で、図1に示した構成と同等の特性が得られることがわかる。例えば、図6Bに示す経路1、2の合成アイソレーション特性は、送信帯域(Tx帯域)内で2つの引き込み部を持つため全体としてフラットな特性になる。これに対して、図3Bおよび図4Bでは当該帯域のアイソレーション特性の引き込み部は一つであり、全体としてV字形の特性を持つ。そのため、比較的フラットなアイソレーション特性を持つ図5に示す構成のデュプレクサは、図1、図2の構成のデュプレクサよりも、アイソレーション値が、前述した、インダクタの製造ばらつき、温度変化による周波数シフトの影響を受けにくいといえる。
【0042】
なお、本実施形態では、1組の並列共振器が接続される例を示したが、2つ以上の対応する並列共振器が接続されてもよい。また、本実施形態では、2つのフィルタ1a−1、1a―2で対応する並列共振器を接続する代わりに、2つのフィルタ1a−1、1a―2が、1つの並列共振器を共有する構成にすることもできる。例えば、図5に示す互いに接続された並列共振器L1−P1、L2−P1を、1つの共振器で置き換えた構成とすることができる。このような構成でも同様の効果を得ることができる。
【0043】
(第3の実施形態)
図7は、第3の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。図7に示す受信フィルタ1bにおいて、並列共振器L1−P1〜P3は、1段目の並列共振器L1−P1と、2、3段目の共振器L1−P2、P3との2組に分類され、それぞれの組の並列共振器がインダクタンスLb11、Lb12に接続される。並列共振器L1−P1はインダクタンスLb12に、並列共振器L1−P2、P3はインダクタンスLb11に接続されている。なお、並列共振器の組の構成は、図7に示す例に限定されない。
【0044】
フィルタ1b−2においても、同様に、並列共振器L2−P1〜P3が二組(L1−P1とL1−P2、P3)に分けられ、それぞれの組の並列共振器の一端がまとめられた上にそれぞれ固有のインダクタンスLb21、Lb22が接続されている。このような構成にすることにより、共振周波数の組ごとに接続されるインダクタンスの値を調整することができる。その結果、例えば、送信帯域抑圧特性等のようなフィルタ特性をより細かく調整することが可能になる。なお、図7に示す構成でも、図1に示した構成のディプレクサとほぼ同等の特性を得ることができる。
【0045】
(第4の実施形態)
図8は、第4の実施の形態におけるバランス入出力型フィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図である。図8に示す受信フィルタ1cは、入力n1と出力s2との間に、容量Chが設けられた構成である。受信フィルタ1cにおける、この容量Chの橋渡しの他の構成は、図1に示す受信フィルタ1と同様である。このように、一方のフィルタ1c−1の入力端(入力n1)と他方のフィルタ1c−2の出力端(出力s2)、との間に対角の容量Chを設けることにより、より一層、受信フィルタ2の送信帯域抑圧に優れた平衡-不平衡型フィルタを実現することができる。
【0046】
図9に、図8に示すデュプレクサの各種特性のグラフを示す。図9Aは、図8に示すデュプレクサの通過特性を示すグラフであり、図9Bは、アイソレーション特性を示すグラフである。図9Cおよび図9Dは、図8に示す受信フィルタ1cの受信端子Rx1およびRx2間の振幅バランスの周波数特性および位相バランスの周波数特性を表すグラフである。これらのグラフからも、図8に示す構成においては、図1に示した構成の特性(図3)に比べて、アイソレーション特性(図9D)および送信帯域抑圧特定(図9C)が改善されているといえる。このように、バランス出力型フィルタの4端子のうち、対角の端子間に容量Ch(対角容量)を付与することによって、経路1と経路2のアイソレーション波形が異なる。その結果、合成アイソレーション特性が平坦化する。そのため、図3に示すV字形状のアイソレーション特性を持つディプレクサに比べても、図8に示すデュプレクサは、Tx帯高周波および低周波端でのアイソレーション値が改善される。
【0047】
なお、本実施形態とは逆に、フィルタ1c−2の入力端(入力n2)とフィルタ1c−1の出力端(出力s1)、との間に対角の容量Chを設けてもよい。また、第2または第3の実施形態における受信フィルタに対角の容量Chを設けても、同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第5の実施形態)
[パッケージの構成例]
第5に実施形態は、上記第1〜4の実施形態におけるデュプレクサの実装例に関する。図10は、図1に示したデュプレクサの実装形態を示す図である。図10Aは、パッケージ内に実装された状態を上から見た場合の上面図、図10Bは、パッケージも含むA−A線断面図である。図10に示す例では、キャビティ29を有するセラミックパッケージ36に、バランチップ12、送信フィルタチップ13、および受信フィルタチップ11がフリップチップ実装される。バランチップ12は、図1におけるバラン2を形成するIPDチップである。送信フィルタチップ13は送信フィルタ3を形成するチップであり、受信フィルタチップ11は受信フィルタ1を形成するチップである。これらの各チップとセラミックパッケージ36とは、例えば、Auバンプ35により導通される。これらのチップが実装されたセラミックパッケージ36の上部には、メタルリッド27がキャップとして設けられる。これにより、キャビティ29は気密封止される。
【0049】
セラミックパッケージ36は、例えば、チップが実装されるダイアタッチ層26、およびその下の中間層25を含む積層パッケージとすることができる。この場合、中間層25の裏側にはフットパットが設けられ、フットパット層が形成される。
【0050】
図10Cは、セラミックパッケージ36のダイアタッチ層26の配線レイアウトの一例を示す図である。図10Dは、ダイアタッチ層26の下層である中間層25の表面における配線レイアウトの一例を示す図である。図10Eは、ダイアタッチ層26の下層であるフットパット層におけるフットパットの配置を示す図である。
【0051】
図10C、図10Dにおいては、白抜きの丸は、チップとセラミックパッケージ36とをつなぐバンプを示している。また、黒抜きの丸は、他の層と導通するビアを示している。なお、図10C〜図10Dにおける各端子の符号(Rx1、Rx2、Tx、Ant、n1、n2)は、図1に示す符号に対応している。「GND」は接地(グランド)を意味する。また、図10C〜図10Eにおいては、説明に関係する線路および端子のレイアウトを少なくとも示し、その他のレイアウトは省略している。
【0052】
図10Bに示すダイアタッチ層では、バランチップ12のアンテナ端子Antは線路パターンとビアにより中間層25を介して図10Eに示すAntフットパットに接続される。また、図10Bに示すダイアタッチ層26において、バランチップ12の出力端子と受信フィルタチップ11の入力n1、n2は、線路パターンにより接続されている。さらに、受信フィルタチップ11の受信端子Rx1、Rx2は、ビアにより中間層25を通って図10Eのフットパット層のRx1フットパットおよびRx2フットパットにそれぞれ接続されている。
【0053】
[バランチップの構成例]
図11(a)は、バランチップ12の構成を示す平面図である。図11に示す例では、石英の基板37上のアンテナ端子Antバンプと入力n1バンプとの間にキャパシタC2、入力n1バンプとGNDバンプの間にインダクタL1が形成される。また、アンテナ端子Antバンプと入力n2バンプとの間にインダクタL1、入力n2バンプとGNDバンプとの間にキャパシタC1が形成される。インダクタL2、L3は、例えば、銅等の金属膜を用いたスパイラルインダクタにより形成することができる。また、キャパシタC2、C3は、例えば、MIMキャパシタで形成される。
【0054】
図11(b)は、MINキャパシタの構成例を示す断面図である。MINキャパシタは、基板37上に設けられた下部電極31、誘電体32および上部電極33の積層体で構成される。上部電極33は銅配線34により基板37上の導体に接続される。このように、インダクタおよびキャパシタの集中定数を用いた回路でバラン2を形成することにより、小型で安価な平衡-不平衡型フィルタを実現することができる。
【0055】
[受信フィルタの構成例]
図12は、図1に示した受信フィルタ1を形成する受信フィルタチップ11の構成を示す平面図である。図12において示される各部の符号は、図1に示す各部の符号の対応している。図12に示す例では、圧電基板39上に設けられた弾性表面波素子により、ラダー型フィルタの直列共振器L1−S1〜S4、L2−S1〜S4および並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3が形成されている。弾性表面波素子は、線路パターンを介して、入力n1、n2、受信端子Rx1、Rx2またはグランド端子GNDに接続される。
【0056】
グランド端子GNDから延びる2本の伝送線路により、インダクタンスLh1、Lh2がそれぞれ形成している。このように、各フィルタ1−1、1−2に固有のインダクタンスLh1、Lh2の少なくとも一部を、チップ表面上の導体パターンにより形成することで、より一層小型な平衡-不平衡型のフィルタ素子を実現することができる。
【0057】
図13は、図7に示した受信フィルタ1bの一部変形したフィルタ1b´を形成する受信フィルタチップ11の構成を示す平面図である。図13において図7に示す部分と対応する部分については同じ符号を付している。図13に示す例でも、ラダー型のフィルタ1b´−1、1b´−2の直列共振器L1−S1〜S4、L2−S1〜S4および並列共振器L1−P1〜P3、L2−P1〜P3は弾性表面波素子により形成されている。グランド端子GNDから延びる4本の伝送線路が、インダクタンスLb11、Lb12、Lb21、Lb22をそれぞれ形成している。
【0058】
フィルタ1b´―1では、並列共振器L1−P1、P2がインダクタンスLb12に、L1―P3がインダクタンスLb11に接続されている。フィルタ1b´―2では、並列共振器L2−P1、P2がインダクタンスLb22に、L2−P3がインダクタンスLb21に接続されている。
【0059】
図14は、図5に示した受信フィルタ1aの一部変形したフィルタ1a´を形成する受信フィルタチップ11の構成を示す平面図である。図14において図5に示す部分と対応する部分については同じ符号を付している。図14に示すフィルタ1a´では、並列共振器L1−P1とL2−P1が互いに接続され、さらに、並列共振器L1−P3とL2−P3も互いに接続されている。グランド端子GNDから延びる2本の伝送線路により、インダクタンスLa1、La2がそれぞれ形成されている。インダクタンスLa1は、並列共振器L1−P2に、インダクタンスLa2は並列共振器L2−P2に接続されている。
【0060】
[対角の容量の構成例]
次に、セラミックパッケージ36において、図8に示した対角の容量Chが形成される場合の構成例を説明する。図15(a)は、ダイアタッチ層26において、線路パターンで容量Chが形成された場合の構成を示す平面図である。図15(a)においては、Rx2フットパットの位置を点線で示している。図15(b)は、図15(a)のA−A線断面図である。入力n1のバンプから線路パターンがRx2フットパットの上方まで延びている。このように、入力n1のバンプに繋がる線路パターン(配線)が、受信端子Rx2のフットパッドの直上まで伸びる構成とすることにより、この線路パターンと受信端子Rx2のフットパッドとが、セラミックを誘電帯層とする平行平板型のキャパシタを形成することになる。そのため、線路パターンとフットパッドの重なり部分Wを調整することで所望のキャパシタンス値を得ることができる。このように、対角の容量Chは、簡単な構成により実現することができる。そのため、例えば、パッケージの大型化や、配線構造の複雑化による干渉等の問題を引き起こすことなく、容易に、フィルタ特性を改善させることが可能になる。
【0061】
以上、デュプレクサの実装例について説明したが、デュプレクサの実装例は上記に限定されない。例えば、インダクタンスLh1は、上記の他、金属ワイヤ、プリント板状のスパイラルインダクタ等を用いて形成されてもよい。また、上記実装例では、受信フィルタの共振器が弾性表面波素子(SAW(surface Acoustic Wave)デバイス)で形成されているが、共振器はこれに限られない。共振器は、例えば、FBAR(Film-Bulk-Acoustic-Resonator)、あるいは弾性境界波デバイス等で形成されてもよい。
【0062】
(第6の実施形態)
本実施形態は、上記の第1〜第5の実施形態で示したデュプレクサを備える通信機器である。
【0063】
図16は、図1に示す回路構成のデュプレクサを含む通信機器40の概略構成を示す図である。図16に示す構成要素において、図1に示す回路の構成要素と対応する部分には、同じ番号を付す。図16に示す通信機器40においては、モジュール基板41上に、送信フィルタ3、受信フィルタ1、バラン2、パワーアンプ42、RFIC43、ベースバンドIC44が設けられている。受信フィルタ1、送信フィルタ3は、それぞれ半導体チップで形成することができる。バラン2は、例えば、IPDチップで形成されてもよい。
【0064】
モジュール基板41に形成された配線パターンにより、アンテナ端子(共通端子)Antと送信フィルタ3およびバラン2との接続、バラン2と受信フィルタ1との接続がなされている。なお、アンテナ端子Antは通信機器40が備えるアンテナ(図示せず)に接続される。
【0065】
送信端子Txはパワーアンプ42を介してRFIC43に接続され、受信端子Rx1、Rx2もRFIC43に接続されている。RFIC43はベースバンドIC44に接続されている。RFIC43は、半導体チップおよびその他の部品により構成されている。RFIC43には、受信端子Rx1、Rx2から入力された受信信号を処理するための受信回路および、パワーアンプ42を介してアンテナ端子Antに出力する送信信号を処理するための送信回路を含む回路を集積している。なお、パワーアンプ42は、RFIC43の送信回路から出力された送信信号を増幅して送信フィルタ3の送信端子Txへ入力する回路である。
【0066】
また、ベースバンドIC44も半導体チップおよびその他の部品により構成されている。ベースバンドIC44には、RFIC43に含まれる受信回路から受け取った受信信号を、音声信号やパッケットデータに変換するための回路と、音声信号やパッケットデータを送信信号に変換してRFIC43に含まれる送信回路に出力するため回路とが集積される。
【0067】
図示しないが、ベースバンドIC44には、例えば、スピーカ、ディスプレイ等の出力機器が接続されており、ベースバンドIC44で受信信号から変換された音声信号やパケットデータを出力し、通信機器40のユーザに認識させることができる。また、マイク、ボタン等の通信機器40が備える入力機器もベースバンドIC44に接続されており、ユーザから入力された音声やデータをベースバンドIC44が送信信号に変換することができる構成になっている。
【0068】
なお、通信機器40の構成は、図17に示す例に限られない。また、通信機器40の一部に用いられる部品の集合であるモジュールであって、上記第1〜第6の実施形態のデュプレクサを含むモジュールも本発明の実施形態に含まれる。
【0069】
[効果、その他]
以上、第1〜第5の実施形態によれば、小型で、特性の良いラダー型の平衡-不平衡型フィルタフィルタが実現できる。従来、平衡-不平衡型フィルタフィルタには、SAWを用いたDMSフィルタが用いられていた。しかし、耐電力性や周波数特性は、ラダー型の不平衡型回路に及ばなかった。そのため、FBARを用いたラダー型のフィルタにより平衡-不平衡型フィルタが要求されていた。本実施形態によれば、FBARを用いたラダー型のフィルタにより平衡-不平衡型フィルタを実現することができる。
【0070】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0071】
(付記1)
第1の入力端子と第1の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と、並列に接続された複数の並列共振器を有する、第1のフィルタ部と、
第2の入力端子と第2の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と並列に接続された複数の並列共振器を有する、第2のフィルタ部とを備え、
前記第1のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される、フィルタ。
【0072】
(付記2)
入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランをさらに備える、付記1に記載のフィルタ。
【0073】
(付記3)
前記第1のフィルタ部において、前記複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続される、付記1に記載のフィルタ。
【0074】
(付記4)
前記第1のフィルタ部において、少なくとも1つの並列共振器が前記第2のフィルタ部の並列共振器と接続されるか、あるいは、前記第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は少なくとも1つの並列共振器を共有しており、
前記第1のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続される、付記1に記載のフィルタ。
【0075】
(付記5)
前記第1のフィルタ部の前記第1の入力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の出力端子側との間、あるいは、前記第1のフィルタ部の前記第1の出力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の入力端子側との間に、容量を有する、付記1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0076】
(付記6)
前記第1のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、全ての並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される、付記1に記載のフィルタ。
【0077】
(付記7)
前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部の前記直列共振器および前記並列共振器は、基板上に設けられ、
前記インダクタンスは、前記基板上に設けられた伝送線路によって形成される、付記1〜6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0078】
(付記8)
前記第1のフィルタ部および前記第2のフィルタ部は、パッケージ内に形成され、
前記インダクタンスは、前記パッケージ内に設けられる、付記1〜6のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0079】
(付記9)
前記バランは、集中定数を用いた回路で形成される、付記1〜8のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0080】
(付記10)
前記並列共振器および前記直列共振器は、SAWあるいはFBARである、付記1〜9のいずれか1項に記載のフィルタ。
【0081】
(付記11)
付記1〜10のいずれか1項に記載のフィルタを受信用フィルタとして備える分波器であって、
共通端子から入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記フィルタの前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランと、
前記共通端子に接続された送信用フィルタとをさらに備える分波器。
【0082】
(付記12)
付記1〜10のいずれか1項に記載のフィルタを有するモジュール。
【0083】
(付記13)
付記1〜10のいずれか1項に記載のフィルタを有する通信機器。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】第1の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図2】複数の並列共振器ごとにインダクタンスを付加する場合の構成を示す図
【図3】図1に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図4】図2に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図5】第2の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図6】図5に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図7】第3の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図8】第4の実施の形態におけるフィルタを含むデュプレクサの回路構成を示す図
【図9】図8に示すデュプレクサの各種特性を示すグラフ
【図10】図1に示したデュプレクサの実装形態を示す図
【図11】図11(a)は、バランチップ12の構成を示す平面図である。図11(b)は、MINキャパシタの構成例を示す断面図である。
【図12】図1に示した受信フィルタの受信フィルタチップの構成を示す平面図
【図13】図7に示した受信フィルタに対応する受信フィルタチップの構成を示す平面図
【図14】図5に示した受信フィルタに対応する受信フィルタチップの構成を示す平面図
【図15】ダイアタッチ層26に形成された容量Chの構成を示す図
【図16】通信機器40の概略構成を示す図
【図17】フィルタを2つ組み合わせた4端子フィルタの構成図
【図18】バラン71とバランス入出力型受信フィルタ81の構成の一例を示す図
【図19】バランス入出力型受信フィルタ81の構成の他の一例を示す図
【図20】図18に示すフルラダー型回路の各種特性を示すグラフ
【図21】図19に示すハーフラダー型回路の各種特性を示すグラフ
【符号の説明】
【0085】
1 受信フィルタ
2 バラン
3 送信フィルタ
11 受信フィルタチップ
12 バランチップ
13 送信フィルタチップ
25 中間層
26 ダイアタッチ層
27 メタルリッド
29 キャビティ
36 セラミックパッケージ
37 基板
39 圧電基板
40 通信機器
41 モジュール基板
42 パワーアンプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端子と第1の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と、並列に接続された複数の並列共振器を有する第1のフィルタ部と、
第2の入力端子と第2の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と並列に接続された複数の並列共振器を有する第2のフィルタ部とを備え、
前記第1のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される、フィルタ。
【請求項2】
入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランをさらに備える、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第1のフィルタ部において、前記複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続される、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第1のフィルタ部において、少なくとも1つの並列共振器が前記第2のフィルタ部の並列共振器と接続されるか、あるいは、前記第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は少なくとも1つの並列共振器を共有しており、
前記第1のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続される、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第1のフィルタ部の前記第1の入力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の出力端子側との間、あるいは、前記第1のフィルタ部の前記第1の出力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の入力端子側との間に、容量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタを受信用フィルタとして備える分波器であって、
共通端子から入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記フィルタの前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランと、
前記共通端子に接続された送信用フィルタとをさらに備える分波器。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタを有するモジュール。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタを有する通信機器。
【請求項1】
第1の入力端子と第1の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と、並列に接続された複数の並列共振器を有する第1のフィルタ部と、
第2の入力端子と第2の出力端子との間に直列に接続された複数の直列共振器と並列に接続された複数の並列共振器を有する第2のフィルタ部とを備え、
前記第1のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、少なくとも2つの並列共振器の一端が1つのインダクタンスに接続される、フィルタ。
【請求項2】
入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランをさらに備える、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記第1のフィルタ部において、前記複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、複数の並列共振器は、少なくとも2つの組に分類され、組ごとに並列共振器の一端がまとめられて1つのインダクタンスに接続される、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記第1のフィルタ部において、少なくとも1つの並列共振器が前記第2のフィルタ部の並列共振器と接続されるか、あるいは、前記第1のフィルタ部および第2のフィルタ部は少なくとも1つの並列共振器を共有しており、
前記第1のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続され、
前記第2のフィルタ部において、前記接続あるいは共有されている共振器の他の共振器のうち少なくとも2つの共振器の一端は1つのインダクタンスに接続される、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記第1のフィルタ部の前記第1の入力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の出力端子側との間、あるいは、前記第1のフィルタ部の前記第1の出力端子側と前記第2のフィルタ部の前記第2の入力端子側との間に、容量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタを受信用フィルタとして備える分波器であって、
共通端子から入力された信号を逆位相の2つに信号に分けて、前記フィルタの前記第1の入力端子と前記第2の入力端子にそれぞれ出力するバランと、
前記共通端子に接続された送信用フィルタとをさらに備える分波器。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタを有するモジュール。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルタを有する通信機器。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−41097(P2010−41097A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198432(P2008−198432)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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