説明

フィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置

【課題】コストを低減したフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 被打ち込み部材58の上に載置された被加工板を、複数のパンチ部57aが列設されたパンチにより打ち抜き、打ち抜き片を被打ち込み部材58の内部に押し込んで被加工板に複数の貫通孔を形成するフィルターの製造方法であって、被打ち込み部材58は、繊維を含む樹脂材からなり、繊維は、パンチ部57aの列設方向に配向している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工板に複数の貫通孔が設けられたフィルターの製造方法及びこれを具備する液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は種々な液体を噴射するもので、中でも広く使用されているものに、インクジェット式記録装置がある。インクジェット式記録装置は、複数のノズル開口から液体であるインク滴を吐出するインク噴射ヘッドを備えている。このインク噴射ヘッドによりインク滴を記録媒体である記録紙等の表面に着弾させて画像や文字を印刷するようになっている。
【0003】
そして、インク噴射ヘッド内に設けられたインクの供給流路には、インク内に混入した異物、即ち、何らかの原因で供給流路内に残留している合成樹脂等の微細片や気泡を取り除くための平板状のフィルターが配置されている。このフィルターとして、薄板にパンチ加工によって複数の貫通孔を設けたものが提案されている(特許文献1等参照)。特許文献1では、下受けダイとパンチとの間に軟質部材を設け、打ち抜き片を軟質部材の内部に押し込むことにより、パンチを受ける凹部を形成する必要がなくなると共にパンチとの位置あわせが不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−272631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数のパンチ部が列設されたパンチの場合、パンチの先端のパンチ部を軟質部材内に押し込むと、特に両端のパンチ部に負荷がかかりやすく、長期間に亘って使用するとパンチ部の湾曲や破断などの破損が生じ易いという問題があった。したがって、このようなパンチを長期間に亘って使用すると、所望の貫通孔を形成することができなくなり、歩留まりが低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、パンチ部は、微細な貫通孔を形成するためには高精度な寸法が要求されるものの、湾曲や破断といった破損によって寿命が短くなり、頻繁な交換が必要になってしまうという問題がある。これらの問題により、フィルターのコストが高くなってしまう。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッド等の液体噴射ヘッドに搭載されるフィルターに限定されず、他の装置に搭載されるフィルターにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、コストを低減したフィルターの製造方法及び液体噴射ヘッド並びに液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、被打ち込み部材の上に載置された被加工板を、複数のパンチ部が列設されたパンチにより打ち抜き、打ち抜き片を前記被打ち込み部材の内部に押し込んで前記被加工板に複数の貫通孔を形成するフィルターの製造方法であって、
前記被打ち込み部材は、繊維を含む樹脂材からなり、前記繊維は、前記パンチ部の列設方向に配向していることを特徴とするフィルターの製造方法にある。
【0010】
かかる態様では、被打ち込み部材として、繊維を含む樹脂材からなり且つ当該繊維が配向しているものを用い、被打ち込み部材をパンチ部の列設方向に繊維が配向するようにすることで、打ち込みの際、被打ち込み部材の肉寄せがパンチ部の列設方向とは直交する方向に生じるように制御でき、パンチ部の列設方向への肉寄せを抑制することができる。これにより、パンチ部の湾曲や破断などの破損が抑制され、フィルターの歩留まりが向上すると共にパンチの寿命が長くなり、フィルターを低コストで製造することができる。
また、前記被打ち込み部材は、繊維強化プラスチックからなることが好ましい。
【0011】
被打ち込み部材が繊維強化プラスチックを用いることにより、容易にパンチ部の列設方向に繊維が配向するようにすることができ、パンチ部の列設方向への肉寄せを抑制できる。また、かかる被打ち込み部材は、軽量で硬度が高く、被加工板の打ち抜き片を押し込むのに好適なものであり、フィルターの生産効率を向上させることができる。
【0012】
本発明の他の態様は、上記の製造方法により製造したフィルターを具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、液体の吐出不良を防止して、信頼性を向上した液体噴射ヘッドを低コストで実現できる。
【0013】
さらに本発明の他の態様は、このような液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体の吐出不良を防止して、信頼性を向上した液体噴射装置を低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係るフィルターの平面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係るパンチを示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図8】打ち込みの際の被打ち込み部材を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態1に係るフィルターの製造方法を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態1に係るパンチ部の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
ここで本発明のフィルターの製造方法により製造したフィルターを具備する液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置について説明する。なお、図1は、本発明の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略斜視図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置1は、例えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異なる色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装着されたインクジェット式記録ヘッド10(以下、記録ヘッド)を具備する。記録ヘッド10はキャリッジ3に搭載されており、記録ヘッド10が搭載されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0017】
次に、本実施形態に係る記録ヘッド10について説明する。なお、図2は、実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図であり、図3はその断面図である。
【0018】
図2及び図3に示すように、インクジェット式記録ヘッド10を構成するヘッドホルダーの一例であるカートリッジケース11は、上述したインクカートリッジ(図示なし)が装着されるカートリッジ装着部12を有する。例えば、本実施形態では、このカートリッジ装着部12に、ブラックインク及び複数色のカラーインクが充填された各インクカートリッジがそれぞれ装着されるようになっている。また、カートリッジケース11の底面には、一端が各カートリッジ装着部12に開口し、他端が後述するヘッドケース側に開口する複数のインク連通路(第1の液体流路)13がそれぞれ形成された管状の流路形成部14が突設されている(図3参照)。
【0019】
カートリッジケース11の上面側、すなわち、カートリッジ装着部12のインク連通路13の開口部分には、インクカートリッジに挿入される複数のインク供給針15が、インク内の気泡や異物を除去するためのフィルター16を介して固定されている。
【0020】
カートリッジケース11の下面側には、シール部材17及び回路基板18を挟んで、ヘッド部材19が固定されている。本実施形態に係るヘッド部材19は、複数の圧電素子を有する圧電素子ユニット20を収容するための中空箱体状の部材であるヘッドケース21と、このヘッドケース21のカートリッジケース11とは反対側の端面に固定されるヘッド本体22とで構成されている。ヘッド本体22は、複数のノズル23が穿設されたノズルプレート24と、ノズル23に連通する圧力発生室25を含む流路が形成された流路形成基板26と、流路形成基板26のノズルプレート24とは反対面側に配される振動板27とで構成されている。これらノズルプレート24及び振動板27と流路形成基板26とはそれぞれ接着剤によって接合されている。またヘッドケース21には、一端側が圧力発生室25に連通すると共に他端側がカートリッジケース11のインク連通路13に連通するインク供給路28が設けられている。インク連通路13とインク供給路28との接続部分は、シール部材17によって密封されている。
【0021】
このようにカートリッジケース11の下面側に、シール部材17、回路基板18、ヘッド部材19を構成するヘッドケース21及びヘッド本体22の順で配し、これら各部材の外側にヘッド本体22のノズル23を露出する窓部29を有する枠体30をはめ込み、ネジ31によってカートリッジケース11に固定することで、インクジェット式記録ヘッド10が形成される。
【0022】
ここで、フィルター16について詳細に説明する。なお、図4は、フィルターの平面図である。
図4に示すように、フィルター16は、ステンレス(SUS)等の金属材料からなる平坦な被加工板51(例えば、厚さ15μm)に多数の微細な貫通孔52(例えば、内径が15μmの穴が1cmに数万穴)を穿設して円形に切断したものであり、フィルター16の直径は例えば、8〜9mm程度とされている。貫通孔52の内径は、ノズル23よりも小さく設定されている。なお、フィルター16の貫通孔52としては、正方形や六角形の穴とすることも可能であり、この場合、対角線の長さがノズル23よりも小さく設定されていればよい。異物がフィルター16を通過してもノズル23から排出されるからである。また、本実施形態では、貫通孔52は、隣接する貫通孔52のピッチが、例えば、4μm程度に設定されている。
【0023】
また、平坦な被加工板51には格子状に延びる凹凸線53が形成され、カール力(多数の微細な貫通孔52が穿設されたことに基づく曲がり方向の残留応力)が除去されて平坦状態が維持されている。凹凸線53を設けたことにより、極薄のフィルター16であってもカールが除去されて平坦状態が維持され、取り扱いが容易になって組み立て時の生産性を向上させることが可能になる。凹凸線53は、山の高さが、例えば、20μm〜50μm程度に設定され、隣接する凹凸線53同士のピッチが、例えば、60μm程度に設定されている。
【0024】
ここで、本実施形態のフィルター16の製造方法について図5〜8を用いて説明する。
まず、図5に示す金型装置54に被加工板51を載置する。
ここで、金型装置54について説明する。図5に示すように、金型装置54は、平盤状の基台55、平盤状の被打ち込み部材58を有しており、パンチ57が基台55の上部にストリッパー56を介して設けられている。
【0025】
このパンチ57は、図6に示すように、矩形体状の本体の端面に複数本(本実施形態では5本)の角型のパンチ部57aが列設されている。複数のパンチ部57aが列設されたパンチ57を使用することにより、一度の打ち抜きで一列に並んだ複数(本実施形態では5個)の貫通孔を形成することができる。パンチ57のパンチ部57aの一辺は、例えば、13μmに形成されている。このパンチ部57aで被加工板51を打ち抜くことにより、被加工板51(フィルター16)の貫通孔の対角線の長さが約15μmとなるようになっている。なお、パンチ57のパンチ部57aの形状は円形であってもよい。
【0026】
また、被打ち込み部材58は、繊維を含む樹脂材からなり且つ繊維が所定の方向に配向したものであり、繊維の配向がパンチ部57aの列設方向となるように基台55上に配置されている。被打ち込み部材58は、被加工板51をパンチ部57aで打ち抜いた際に、パンチ部57aの先端と打ち抜き片とが内部に押し込まれるものである。
【0027】
かかる被打ち込み部材58は、強化材となる繊維と、プラスチックとを複合化させた繊維強化プラスチックからなるのが好ましい。軽量で硬度が高く、被加工板51の打ち抜き片を押し込むのに好適なものであるためである。繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、樹脂繊維、金属繊維、植物繊維、鉱物繊維などが挙げられ、繊維強化プラスチックのマトリックスとしては、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、ABS(ABS樹脂)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、メチルアクリレート等の熱可塑性樹脂が挙げられる。本実施形態では、ガラス繊維を含有する繊維強化プラスチック(FRP)を用いた。なお、繊維強化プラスチックは、カップリング剤や、充填材などを含んでいてもよい。
【0028】
また、被打ち込み部材58の厚さは、少なくとも被加工板51の厚さの2倍以上であることが好ましい。例えば、本実施形態では、被加工板51の厚さが15μmであるのに対し、被打ち込み部材58の厚さを0.1mm〜0.2mm程度としている。被打ち込み部材58をこのような厚さとすることで、被打ち込み部材58の内部に打ち抜き片を確実に留めることができると共に、被加工板51は完全に貫通させることができるので、貫通不良などによる貫通孔52の周縁部のバリ発生を抑制できる。
【0029】
なお、被打ち込み部材58の硬さは、被加工板51の厚さや貫通孔52の大きさ、ピッチ等により適宜調整する。硬さの調整は、繊維の種類、配合割合、樹脂の種類を選択することにより行う。
【0030】
次に、このような金型装置54のパンチ57のパンチ部57aを、被加工板51に貫通させて貫通孔52を形成する。このとき、図7(a)に示すように、パンチ57のパンチ部57aの先端は、被加工板51を貫通して、被打ち込み部材58に挿入される。これにより、打ち抜き片62が被打ち込み部材58の内部に押し込まれる。
【0031】
そして、ストリッパー56を上昇させ打ち抜き片62が被打ち込み部材58内に留まった状態で、図7(b)に示すように、被打ち込み部材58と共に被加工板51を1ピッチ分移動させて、再び被加工板51にパンチ57のパンチ部57aを貫通させて貫通孔52を形成する。この動作を繰り返すことで、多数の貫通孔52を被加工板51に形成する。
【0032】
パンチ57のパンチ部57aを被打ち込み部材58内に打ち込むと、パンチ部57aの打ち込みによる変形で被打ち込み部材58に肉寄せが発生するが、本発明では、図8に示すように、被打ち込み部材58をパンチ部57aの列設方向に繊維が配向するように配置していることにより、主にパンチ部57aの列設方向とは直交する方向(図8の矢印方向)に肉寄せが生じる。これは、被打ち込み部材58の繊維は、繊維の配向方向に広がり難いが、繊維の配向方向とは直交する方向には広がり易く、打ち込みによって排除される部分(図8のパンチ部57aの部分)の肉が、繊維の配向方向よりも、繊維の配向方向とは直交する方向(図8の矢印方向)に移動しやすいためである。したがって、パンチ部57aの列設方向の負荷が低減される。特に、複数のパンチ部57aが列設されたパンチ57を用いた場合、列設方向の端部のパンチ部57aに大きな応力がかかるが、本発明では、上述したように、主にパンチ部57aの列設方向とは直交する方向に肉寄せが生じて、パンチ部57aの横方向への押圧力が抑制される。したがって、列設方向の端部のパンチ部57aに応力が集中することがなく、各パンチ部57aに生じる負荷は均一となり、パンチ部57aの湾曲や破断などの破損が抑制され、フィルターの歩留まりが向上すると共にパンチ57の寿命が長くなり、フィルターを低コストで製造することができる。
【0033】
上述した被打ち込み部材58を用いることで、基台55側にパンチ57のパンチ部57aを受けるための凹部を設けることなく、貫通孔52を打ち抜くことが可能になる。また、パンチ57のパンチ部57aと凹部との位置合わせが不要になり、被加工板51に貫通孔を容易に形成することができる。
【0034】
また、基台55及び被打ち込み部材58として、表面は凹凸がなく平坦のものを用いることにより、被打ち込み部材58に多数の被加工板51の打ち抜き片62を押し込む際に、押し込み量を均一にすることができ、多数の打ち抜き片62を確実に被打ち込み部材58の内部に留めることができる。
【0035】
また、被打ち込み部材58と共に被加工板51を1ピッチ分移動させてパンチ57による打ち込みが繰り返されるため、かえりが発生してもストリッパー56の端面につぶされる等の横かえりが発生する虞が全くない。ちなみに、下側にパンチ57のパンチ部57aが挿入される凹部を備えたダイを使用した場合、被加工板51を移動させると、凹部以外のダイの上面とストリッパー56の端面との間でかえりが潰されて貫通孔52が変形する虞がある。上述した金型装置54を用いることで、貫通孔52が変形する虞が生じない。
【0036】
なお、フィルター16は、一枚の被加工板51に複数個一体的に形成された後、1枚のフィルター16のサイズに打ち抜く(切り抜く)ことで形成する。具体的には、図9に示すように、貫通孔52が多数形成された被加工板51は小判抜き型65により抜かれてフィルター16の形状に打ち抜かれる。小判抜き型65の上型65aと下型65bの対向面にはそれぞれ凹凸線53を形成するための凹凸部66が設けられ、フィルター16の形状に打ち抜かれると同時に、表面に凹凸線53が形成される。なお、フィルター16の周囲に溶着代を残した状態で凹凸線53を形成するようにしてもよい。凹凸部66が設けられた小判抜き型65を用いることにより小判抜き時に加圧矯正によるカール取りが同時に行える。
【0037】
なお、パンチは、上述したパンチ57に限定されるものではない。図10にパンチ部の他の例を示す。例えば、図10(a)に示すように、パンチ57Bは、断面視においてパンチ部57bの先端が凹となって端部が鋭角となっていてもよい。このとき、パンチ部57bの端部が、被打ち込み部材58の繊維の配向方向とは直交するようにしてパンチ57Bを用いるのが好ましい。また、図10(b)に示すように、パンチ57Cは、断面視においてパンチ部57cの先端部の幅が漸小する片刃状となっていてもよい。このとき、パンチ部57cの片刃部分が、被打ち込み部材58の繊維の配向方向とは直交するようにしてパンチ57Cを用いるのが好ましい。また、図10(c)に示すように、パンチ57Dは、断面視においてパンチ部57dの先端部の幅が中央部に向かって漸小するようになっていてもよい。このとき、パンチ部57dの先端部が、被打ち込み部材58の繊維の配向方向とは直交するようにしてパンチ57Dを用いるのが好ましい。このようなパンチを用いることにより、被打ち込み部材58の繊維を切断しやすく、繊維を含む樹脂材からなる被打ち込み部材58に、より打ち込みやすくなり、パンチ部への負荷を低減させることができる。
【0038】
また、パンチは、一列を構成するパンチ部が5本未満であっても5本より多くてもよく、パンチ部が2列以上あってもよい。ただし、パンチ部が2列以上ある場合は、パンチ部の列数が一列を構成するパンチ部の数よりも少ないものが好適である。これは、パンチ部の列数が一列を構成するパンチ部の数よりも多いと、並列方向(ここでいう一列とは直交する方向)の肉寄せが問題となるからである。
【0039】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態1では、カートリッジケース11とインク供給針15との間に設けられたフィルター16について説明したが、本発明のフィルターは、インクジェット式記録ヘッド10に代表される液体噴射ヘッドに用いられたフィルターであれば、その設置場所等については特に限定されるものではない。もちろん、フィルター16は、インクジェット式記録ヘッド10以外に、インクジェット式記録装置1に代表される液体噴射装置に搭載されるものであってもよい。液体噴射装置に搭載されるフィルターとしては、例えば、インク等の液体を貯留する貯留タンクなどの貯留手段が、キャリッジ3に搭載されず、装置本体4に固定されるものにおいて、貯留手段とインクジェット式記録ヘッド10との間に設けられたフィルターなどであってもよい。
【0040】
もちろん、上述したインクジェット式記録装置1では、インクジェット式記録ヘッド10がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0041】
また、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【0042】
また、本発明は、インクジェット式記録ヘッドに代表される液体噴射ヘッドに搭載されるフィルターの製造方法に限られず、他の装置に搭載されるフィルターの製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 インクジェット式記録装置、 16 フィルター、 17 シール部材、 18 回路基板、 19 ヘッド部材、 20 圧電素子ユニット、 21 ヘッドケース、 22 ヘッド本体、 23 ノズル、 24 ノズルプレート、 25 圧力発生室、 26 流路形成基板、 27 振動板、 28 インク供給路、 29 窓部、 30 枠体、 31 ネジ、 51 被加工板、 52 貫通孔、 53 凹凸線、 54 金型装置、 55 基台、 56 ストリッパー、 57 パンチ、 58 被打ち込み部材、 62 打ち抜き片、 65 小判抜き型、 66 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被打ち込み部材の上に載置された被加工板を、複数のパンチ部が列設されたパンチにより打ち抜き、打ち抜き片を前記被打ち込み部材の内部に押し込んで前記被加工板に複数の貫通孔を形成するフィルターの製造方法であって、
前記被打ち込み部材は、繊維を含む樹脂材からなり、
前記繊維は、前記パンチ部の列設方向に配向していることを特徴とするフィルターの製造方法。
【請求項2】
前記被打ち込み部材は、繊維強化プラスチックからなることを特徴とする請求項1に記載のフィルターの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法によって製造されたフィルターを具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項3記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−167395(P2010−167395A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14649(P2009−14649)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】