説明

フィルター材及びガス発生器

【課題】高いガス冷却効果及びスラグ捕集効果を有するガス発生器用フィルター材と、それを用いたガス発生器とを提供する。
【解決手段】フィルター材7は、複数の貫通孔1それぞれの周囲に形成されている突出部2を有する金属板3を巻き回して、複数層の中空円筒からなるものである。金属板3は、長手方向に隣り合う貫通孔1間において、貫通孔1の径の幅を少なくとも有する帯状の障壁領域8を備え、下記式を満たすものである。
+(π2t+2d)/N−(P/N+π2t/N)≦Pn+1
≦P+(π2t+2d)/N+(P/N+π2t/N
ここで、n:自然数、P:前記金属板の巻き回しn周目部分において、長手方向に隣り合う貫通孔の中心間距離、t:金属板と突出部との合計厚さ、d:各貫通孔の径、N:前記金属板の巻き回し1周分あたりの長手方向1列の貫通孔数である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の衝突事故時に乗員が受ける衝撃を緩和して乗員の安全を図るガス発生器、及び、このガス発生器に用いるフィルター材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突時に生じる衝撃から乗員を保護するために、エアバックを瞬時に展開させるガス発生器は、展開にあたりエアバッグが損傷を受けないように、ガス発生室内でガス発生剤を燃焼させて発生した高温高圧のガスを冷却して適温にすると共に、前記ガス中に含有されている金属酸化物を主成分とする高温のスラグを捕集してガスを清浄するという役割を持つフィルター材を備えている。発生したガスは、フィルター材を内側から外側へ通過し、フィルター材の外側に沿ってガス発生器に設けられた複数個のガス放出孔を通って、ガス発生器からエアバック内へ流入し、エアバッグを展開する。
【0003】
したがって、エアバック用ガス発生器に用いられるフィルター材には十分なガス冷却及びスラグ捕集効果を発揮させるための機能が要求される。例えば、ガス冷却効果を有するフィルター材として、下記特許文献1のものが挙げられる。この特許文献1に開示されているフィルター材は、突起部の先端をつぶして平坦化したフック金属板を多数巻きして形成された筒状体からなり、筒状体から剥がれないように金属板が固着されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−249017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のようなガス発生器用フィルター材では、ガス冷却効果及び保形強度をある程度有するものの、金属板の各層における貫通孔の位置が、巻き回したとき全層において一致する場合があり、当該一致した貫通孔を通過するガスはスラグ捕集されることなくフィルター材を通過するため、ガス冷却効果及びスラグ捕集効果が十分に発揮されないことがあった。
【0006】
そこで、本発明は、従来に比べさらなるガス冷却効果及びスラグ捕集効果を有するガス発生器用のフィルター材と、それを用いたガス発生器とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
(1) 本発明は、長手方向に対して傾斜方向に所定の間隔で形成された複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔のそれぞれの周囲に突出部とを有する金属板を巻き回して、複数層からなる中空円筒状に成形したガス発生器用のフィルター材であって、前記金属板が、長手方向に隣り合う前記貫通孔間において、前記貫通孔の径の幅を少なくとも有する帯状の障壁領域を備え、前記障壁領域が、前記貫通孔の径の幅を少なくとも有する帯状に形成されているものである。
【0008】
+(π2t+2d)/N−(P/N+π2t/N)≦Pn+1
≦P+(π2t+2d)/N+(P/N+π2t/N) (a)
【0009】
ここで、上記式(a)においては、n:自然数、P:前記金属板の巻き回しn周目部分において、長手方向に隣り合う貫通孔の中心間距離、t:金属板と突出部との合計厚さ、d:各貫通孔の径、N:前記金属板の巻き回し1周分あたりの長手方向1列の貫通孔数である。
【0010】
(2) なお、本発明のフィルター材においては、前記金属板と突出部との合計厚さtが、0.55mm〜0.85mmであることが好ましい。また、前記貫通孔の径dが、0.7mm〜1.1mmであることが好ましい。さらに、前記金属板の厚さが、0.15mm〜0.25mmであることであることが好ましい。
【0011】
上記(1)又は(2)の構成によれば、金属板の各層における貫通孔の位置は、巻き回したとき全層において一致することはなく、フィルター材を通過するガスは、少なくとも一度は金属板の表面に衝突するので、さらなるガス冷却効果及びスラグ捕集効果を有するガス発生器用フィルター材を提供することができる。
【0012】
(3) 本発明のガス発生器は、ガス放出孔を有するハウジングと、前記ハウジング内に形成され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、点火薬を内包しており、前記ハウジング内に装着され、前記燃焼室内のガス発生剤を着火燃焼させるガス発生剤点火手段とを備えたガス発生器であって、前記ハウジングの内周に周方向にわたって、上記(1)又は(2)のフィルター材をさらに備え、前記ガス放出孔を前記ハウジングの外側から径方向に投影すると、該投影部分と前記フィルター材の無孔部分とが重複している。
【0013】
上記(3)の構成によれば、ガス発生室で発生したガスは、少なくとも一度はフィルター材を構成する金属板の表面に衝突し、冷却されるとともに、スラグ含有量の極めて少ない清浄なガスが、前記ハウジングの内周に衝突した上でガス放出孔から放出されるので、従来に比べさらなるガス冷却効果及びスラグ捕集効果を有するガス発生器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルター材について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るガス発生器用のフィルター材を示す斜視図、図2は、図1のフィルター材における隣り合う貫通孔の間隔(ピッチ)を説明するために用いる図である。
【0015】
図1において、フィルター材7は、貫通孔1を有する金属板3を略3回巻き回し、中空円筒状に成形されている。貫通孔1は、金属板3の長さ方向に対して傾斜方向に規則的に、金属板3の長さ方向について一方の面から、角錐体のピンを用いて貫通孔1が形成され、その周囲に突出部2が不連続に形成されている。ここで、金属板3としては、例えばステンレス鋼、鉄、鋼などを使用することができる。
【0016】
金属板3の貫通孔1は、突出部が角錐体のピン状部材を突き刺して形成されている。このため、金属板3を巻き回して中空円筒状に成形すると、金属板3間に空隙層6が形成される。またこのとき、突出部2はピン先端の角錐体の側面に沿って形成され、不連続となっている。このことによって、金属板3の層と突出部2とは不規則に接することになり、空隙層6には比較的障害の少ないより開放的な空間が形成され、ガスが円滑に空隙層6を移動する。
【0017】
次に、貫通孔1の長手方向の各配置位置について、図2に示すようなモデルを用いて説明する。図2においては、隣り合う貫通孔1aと貫通孔1bとが、ピッチPだけ離れて金属板3の1周目部分に形成されている。ここで、金属板3の巻き回し1周目部分の内径=D、金属板3の巻き回し2周目部分の内径=D、各貫通孔の径=d、金属板3の巻き回し1周目部分のピッチ=P、金属板3の巻き回し2周目部分のピッチ=P、金属板3における長手方向の1cmあたりの貫通孔数=N、金属板3と突出部2との合計厚さ=tとする。また、貫通孔1a及び貫通孔1bが形成されている金属板3の1周目部分に形成されていないが、2周目部分に形成されている仮想貫通孔があるとして、この仮想貫通孔を貫通孔1aと貫通孔1bとの間に投影した際、貫通孔1aと貫通孔1bとは重ならず、貫通孔1aと貫通孔1bとの間の障壁領域8(貫通孔1a中心と貫通孔1b中心とを結ぶ線を中心として、貫通孔1aの径以上の幅を有し、フィルター材7内部でガスが発生した場合、外へ流出していく際に衝突する帯状の領域(図2中の二点鎖線で囲まれた領域))と仮想貫通孔の投影領域とが完全に重なるように、少なくともP>2(d+T)とする。ここで、Tは金属板3の板厚のことである。
【0018】
すると、ピッチPは、P=πD/N、P=πD/Nと表される。ここで、D=D+2tであるから、金属板3の2周目部分のピッチP(図示せず)は、P=π(D+2t)/Nと表される。また、P−P=π(D+2t)/N−πD/N=2πt/Nとなり、金属板3の1周目部分と2周目部分とのピッチ差P−Pは、金属板3の1周目部分と2周目部分との周長差2πtを、金属板3における巻き回し1周分あたりの長手方向1列の貫通孔数Nで割った値となる。このとき、各層毎に(一周ずつ)長手方向1列の穴数が同数でないと、貫通孔の投影領域を障壁領域8と重なるようにすることが確実にはならない。
【0019】
以上のことを踏まえた上で、Pの許容範囲を考える。仮想貫通孔を、貫通孔1a及び貫通孔1bが形成されている金属板3の所定の1周目部分に投影した際、該投影領域が、貫通孔1aと貫通孔1bとは重ならずに、障壁領域8と完全に重なるようにするには、以下のようにする必要がある。すなわち、貫通孔1aと仮想貫通孔の投影領域とが、縁同士で接触するような状態(図2の貫通孔1aと仮想貫通孔1cとを参照)から、貫通孔1bと仮想貫通孔の投影領域とが、縁同士で接触するような状態(図2の貫通孔1bと仮想貫通孔1cとを参照)までの間Lに、上記仮想貫通孔の投影領域が存在する必要がある。つまり、2周目における1つの仮想貫通孔の投影領域の最大移動可能量はL=P−2dであるが、2周目全体の仮想貫通孔を考慮しなければならないことから、1つの仮想貫通孔あたりの最大許容範囲量は、±L/Nとなる。したがって、P−L/N≦P≦P+L/Nの関係を満たす必要がある。
【0020】
ここで、P−P=2πt/Nであるので、P=P+2πt/Nである。したがって、L=P−2d=P−2d+2πt/Nである。これらから、P−L/N≦P≦P+L/Nにおいて、P−L/N及びP+L/NのP、Lにそれぞれ代入して不等式をまとめなおすと、P+(π2t+2d)/N−(P/N+π2t/N)≦P≦P+(π2t+2d)/N+(P/N+π2t/N)となる。
【0021】
この結果から、n+1周目(nは自然数)のピッチPn+1は、P+(π2t+2d)/N−(P/N+π2t/N)≦Pn+1≦P+(π2t+2d)/N+(P/N+π2t/N)の範囲となることがわかる。
【0022】
なお、このような貫通孔1の配置関係が、長手方向の貫通孔1の各列において実施されている。また、金属板3の短手方向における貫通孔1の配置関係においては、ある層の貫通孔1の投影領域が他の層の貫通孔1と重ならないようになっていればよい。
【0023】
次に、フィルター材7内部でガス発生剤が燃焼することにより高温高圧のガスが発生した場合、フィルター材7における該ガスの流れについて説明する。上述したフィルター材7において、フィルター材7内側4に流入した高温高圧のガスは、先ずフィルター材7内側4第1層における貫通孔1を通過し、該第1層と第2層との間の第1空隙層に噴出される。噴出と同時に、ガスは該第2層の金属板3の内側面に形成された障壁領域8に衝突し、ガス中に含有されているスラグは障壁領域8に付着し、その結果スラグの一部が除去されることとなる。ガスは第1空隙層を移動し、さらに該第2層における貫通孔1へと移動する。そして同様に、ガスは該第2層における貫通孔1を通過し、該第2層と第3層との間の第2空隙層に噴出され、ガスは該第3層の金属板3の内側面に形成された障壁領域8に衝突し、スラグの一部が除去される。このような現象が多数の貫通孔1と各層の金属板3面とを介して繰り返され、ガスは含有されているスラグを十分に捕集されると共に、面積/体積比の大きな金属板3に熱を奪われ、効率よく冷却される。この結果、フィルター材7の外側5層の貫通孔1から噴出されるガスは、スラグ含有量の極めて少ない清浄な適温のガスとなり、エアバッグ内に供給される。なお、金属板3の各層における貫通孔1を径方向にそれぞれ投影した際、該各投影領域は、他の層に存在する貫通孔1に重なることはなく、少なくとも1度は障壁領域8と重なるものとなっている。したがって、スラグ捕集が十分に行われる。
【0024】
以上のように、本発明におけるガス発生器用のフィルター材7は、多数の貫通孔1及びその突出部2を有する1枚の金属板3を複数回巻き回して中空円筒状に成形され、金属板3間には空隙層が形成される。金属板3を使用することから、十分な保形強度を有し、且つ高温ガスによる溶損も無い。また金属板3が多数の貫通孔1を有すること、空隙層が形成されること、及び障壁領域8を有することから、ガスは含有されているスラグを十分に捕集されると共に、面積/体積比の大きな金属板3に熱を奪われて効率よく冷却される。
【0025】
さらに、貫通孔の孔形状、孔径、孔間ピッチ、開口割合、及び貫通孔を突き刺す面などのパラメータを変化させるという単純な作業によって、ガス冷却及びスラグ捕集効果を比較的容易且つ正確に制御することができる。
【0026】
次に、図面を参照しつつ、本発明に係るフィルター材7を用いたガス発生器の例について説明する。図3及び図4は、本発明に係るフィルター材7を用いたガス発生器の例である。
【0027】
<第2実施形態>
図3は、図1に示す第1実施形態と同様の構成のフィルター材7を備えた、一般に助手席用エアバッグに用いられる長尺円筒形の、本発明の第2実施形態に係るガス発生器Xの断面図を示している。ガス発生器Xは、長尺円筒体からなるハウジング11内にガス発生剤12が装填され、その外周部に長手方向に沿って図1に示す第1実施形態と同様の構成のフィルター材7が配置され、ハウジング11の一端部には伝火剤9と点火器10とからなる点火手段14が配置されている。ハウジング11は、長尺で一端が開口された有底円筒形状の外筒材15と、孔16cに嵌合固定された点火手段14を備え、該外筒材15の開口端を覆う蓋部材16とで構成されている。該蓋部材16の外周縁部に形成された環状リブ16aと外筒材15の開口先端15bとが突合され、摩擦圧接されて、密閉空間が形成されている。点火手段14の伝火剤9がフィルター材7内に隣接する蓋部材16の凸部16bと微小隙間を隔てるように、配置されており、蓋部材16に嵌め込まれる鍔付きキャップ部材21によってガス発生剤12から区画されている。
【0028】
外筒材15の周面には、エアバッグ(図示せず)に通じる複数のガス放出孔15aが外筒材15の軸方向及び周方向に所定間隔ごとに形成されている。17はアルミ箔等で薄板帯状に形成されたバーストプレートであって、各ガス放出孔15aを閉塞するように外筒材15の内周面に貼着されている。これはガス発生剤12の燃焼時の圧力を調整すると共に、外部から水分やゴミがガス発生器X内に侵入するのを防止する役割を果たすものである。
【0029】
フィルター材7は、ハウジング11の内周に周方向にわたって備えられ、ガス放出孔15aをハウジング11の外側から径方向に投影すると、該投影部分とフィルター材7の障壁領域8のいずれかとが完全重複している。これにより、ガス発生剤12の燃焼により発生したガスは、少なくとも一度はフィルター材7を構成する金属板3の表面に衝突し、全く濾過(スラグ捕集)されることのないガスがガス放出孔15aから放出されるのを防止することができる。
【0030】
フィルター材7の一端は、蓋部材16側からクッション材22によって閉塞され、他端はクッション材25によって閉塞されている。クッション材22、25としては、シリコン発泡体やセラミックファイバ等の成形物が好適である。尚、これらクッション材22、25は、フィルター材7端面からのガス流出の観点からは必ずしも必要なものではなく、前述したように、フィルター材7の端面に切削仕上げ加工を行うことによって、これらクッション材22、25を省略することも可能である。しかしながら、ハウジング11の摩擦圧接時における寸法変化と、ガス発生剤12の振動による粉化を考慮すると、係るクッション材22、25の配置は好ましいと言える。
【0031】
次に、このガス発生器Xの作動について説明する。衝突センサ(図示しない)が車両の衝突を検知すると、その衝突検知信号によって、点火手段14の点火器10が点火されて伝火剤9を着火し、その火炎がキャップ部材21の孔21aからガス発生剤12に向けて噴出され、ガス発生剤12が着火し、高温高圧ガスが発生する。発生した高温高圧のガスはフィルター材7内に流入し、該フィルター材7を半径方向及び周方向に渡って通過して前記フィルター材7外周面と外筒材15内面との間の空間G内に流入する。さらにガス発生剤12の燃焼が進み、外筒材15内が所定圧力に達すると、各ガス放出孔15aを閉塞しているバーストプレート17が破裂し、上述したガスが各ガス放出孔15aからエアバッグ(図示しない)に放出され、エアバッグを急速に膨張展開させる。尚、ガスはフィルター材7内を流通する過程において、前述したように金属板3との衝突を繰り返しながら、次第に含有スラグ成分が除去され、冷却されて各ガス放出孔15aからエアバッグ内に放出されることになる。
【0032】
以上のように、本実施形態におけるガス発生器Xに用いられるフィルター材7は、上述した効果の他に、従来のフィルター材に比べて孔のムラがないから圧力損失にバラツキが少ないという効果も併せ持つ。従って、ガス発生器の特性制御において、圧力損失のバラツキの影響を考慮する必要が少なくなり、設計が容易となる効果も期待される。
【0033】
尚、助手席用ガス発生器Xの構成としては、図3に示されているものに限定されず、例えばハウジング11内が仕切り部材によってガス発生剤12を収容するガス発生室とフィルター材7が装着されたフィルター室とに区画された構成、該フィルター室の左右両側に該ガス発生室が形成され、複数の点火手段14が設けられた構成なども採用できる。
【0034】
<第3実施形態>
次に、図4は、図1に示す第1実施形態と同様の構成のフィルター材7を用いた、本発明の第3実施形態に係るガス発生器Yの1例を示す断面図である。ガス発生器Yは、外筒材31aを具備する上容器31と、外筒材31aに対向する端部32aと、内筒材32bとを有する下容器32とを有するガス発生器用ハウジング30から構成される。このガス発生器用ハウジング30は、溶接部36において、外筒材31aと端部32aとを夫々溶接接合して形成される。内筒材32b内には点火手段35と着火薬39とが配置され、その外側室にはガス発生剤12とフィルター材7とリテーナリング41、42とスポンジ43、44とが配置され、上容器31の外筒材31aにはガス放出孔38が形成されている。なお、リテーナリング41、42は、それぞれ上容器31、下容器32の内側有底部に沿って設けられている。また、スポンジ43、44は、それぞれガス発生剤12を挟み込むようにリテーナリング41、42の内部側に沿って設けられている。
【0035】
本実施形態で用いられるフィルター材7も、前述の通り1枚の金属板3を複数回巻き回して成形された中空円筒体であり、金属板3の貫通孔1の周囲に形成される突出部2によって、フィルター材7の外周面とハウジング30の外筒材31a内周面との間には、空間Gが形成されている。また、フィルター材7は、ハウジング30の内周に周方向にわたって備えられ、ガス放出孔38をハウジング30の外側から径方向に投影すると、該投影部分とフィルター材7の障壁領域8とが完全重複している。これにより、発生したガスのフィルター材7及びハウジング30内の流通過程において、含有スラグが除去されるとともに冷却されて、ガス放出孔38からエアバッグ内に放出される事になる。
【0036】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や変形例に限定されるものではない。例えば、図1のフィルター材7の貫通孔1は、長手方向及び短手方向に規則的に配列されたものとなっているが、図5に示すような千鳥格子状に配列された貫通孔51と、長手方向に隣り合う貫通孔51間に形成される障壁領域58(図5中の二点鎖線で囲まれた領域)とを、それぞれ複数有する金属板53を用いたフィルター材としてもよい。この場合も、長手方向に配列されている貫通孔51の一列ごとについて、上述したフィルター材7の説明における計算式を用いて、貫通孔51の配置を決定でき、フィルター材7と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルター材の斜視図である。
【図2】図1のフィルター材における隣り合う貫通孔の間隔を説明するために用いる図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るガス発生器を示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るガス発生器を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係るガス発生器用フィルター材の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1、51 貫通孔
2 突出部
3、53 金属板
3a、3b 金属板終始端部
4 フィルター材内側
5 フィルター材外側
6 空隙層
7 フィルター材
8 障壁領域
9 伝火剤
10 点火器
11、30 ハウジング
12 ガス発生剤
14、35 点火手段
15、31a 外筒材
15a ガス放出孔
16 蓋部材
32b 内筒材
36 溶接部
39 着火薬
43、44 スポンジ
X、Y ガス発生器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に対して傾斜方向に所定の間隔で形成された複数の貫通孔と、前記複数の貫通孔のそれぞれの周囲に突出部とを有する金属板を巻き回して、複数層からなる中空円筒状に成形したガス発生器用のフィルター材であって、
前記金属板が、長手方向に隣り合う前記貫通孔間において、前記貫通孔の径の幅を少なくとも有する帯状の障壁領域を備え、
下記式を満たすことを特徴とするフィルター材。
+(π2t+2d)/N−(P/N+π2t/N)≦Pn+1
≦P+(π2t+2d)/N+(P/N+π2t/N
ここで、n:自然数、P:前記金属板の巻き回しn周目部分において、長手方向に隣り合う貫通孔の中心間距離、t:金属板と突出部との合計厚さ、d:各貫通孔の径、N:前記金属板の巻き回し1周分あたりの長手方向1列の貫通孔数である。
【請求項2】
前記板と突出部との合計厚さtが、0.55mm〜0.85mmであることを特徴とする請求項1に記載のフィルター材。
【請求項3】
前記貫通孔の径dが、0.7mm〜1.1mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルター材。
【請求項4】
前記金属板の厚さが、0.15mm〜0.25mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルター材。
【請求項5】
前記複数の貫通孔が、長手方向及び短手方向のそれぞれに規則的に配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルター材。
【請求項6】
前記複数の貫通孔が、千鳥状に配列されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルター材。
【請求項7】
ガス放出孔を有するハウジングと、
前記ハウジング内に形成され、燃焼により高温ガスを発生するガス発生剤が装填されている燃焼室と、
点火薬を内包しており、前記ハウジング内に装着され、前記燃焼室内のガス発生剤を着火燃焼させるガス発生剤点火手段とを備えたガス発生器であって、
前記ハウジングの内周に周方向にわたって、請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルター材をさらに備え、
前記ガス放出孔を前記ハウジングの外側から径方向に投影した際、該投影領域と前記フィルター材の前記障壁領域とが重なっていることを特徴とするガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−272618(P2008−272618A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116418(P2007−116418)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(000230386)日本ラインツ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】