フィルタ処理装置、フィルタ処理方法、光記録媒体駆動装置、評価値測定方法
【課題】デジタルフィルタにおける乗算器に設定可能なタップ係数のビット幅を拡張することなく、タップ係数を拡張した場合と等価な効果が得られるようにする。
【解決手段】上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を設定しておく。その上で、当該目標タップ係数における、上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とを、上記乗算器に対し、その時間軸上での設定比率が上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率となるようにして設定する。これによりタップ係数を拡張した場合と等価な効果が得られる。
【解決手段】上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を設定しておく。その上で、当該目標タップ係数における、上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とを、上記乗算器に対し、その時間軸上での設定比率が上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率となるようにして設定する。これによりタップ係数を拡張した場合と等価な効果が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルフィルタを備えて入力信号についてのフィルタ処理を行うフィルタ処理装置とその方法に関する。
また、光記録媒体からの再生信号に基づき信号品質の評価指標となる品質評価値の測定を行う光記録媒体駆動装置とその評価値測定方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−47181号公報
【特許文献2】特開平5−55875号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により記録信号の再生が行われる光ディスク記録媒体として、例えばBD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる高記録密度ディスクが普及している。
このような高記録密度ディスクについては、その記録情報の再生にあたりPRML(Partial Response Maximum Likelihood)復号(パーシャルレスポンス最尤復号)が行われる場合がある。
【0004】
周知のようにPRML復号方式は、再生信号との間のユークリッド距離が最小となるパーシャルレスポンス系列を検出する方式であり、パーシャルレスポンスという過程と最尤検出という過程とが組み合わされた技術となる。
パーシャルレスポンス系列は、ビット系列にターゲットレスポンスで定義される重み付け加算を施すことで得られる。光ディスクシステムにおいてはPR(1,2,2,1)が良く用いられ、これはビット系列に1,2,2,1の重みを付けて加算した値をパーシャルレスポンス値として返すものである。
【0005】
PRML復号を行うにあたっては、再生信号に対して所定のPR特性が与えられるべく、再生信号にイコライジング処理(PR等化処理)を施すようにされる。
PRML復号では、上記最尤検出としてビタビ検出を行うが、このビタビ検出では、上記イコライジング処理によりパーシャルレスポンスの過程となるように調整された再生信号を入力し、当該再生信号と、想定され得るビット系列のパーシャルレスポンスとの間のユークリッド距離を調べ、その距離が最も近くなるビット系列を検出結果として得るものである。
【0006】
また、一方で光ディスクシステムでは、記録時において、いわゆるOPC(Optimum Power Control)やライトストラテジ調整などの、記録波形調整パラメータに関するキャリブレーション動作が行われる。
【0007】
これら波形調整パラメータに関するキャリブレーション動作のうち、特にライトストラテジ調整を行う際には、記録信号品質を評価するための評価値として、例えば上記特許文献1などに開示されているdSAMなど、再生信号のエッジ位置の誤差を表す評価値が用いられる。
【0008】
図8は、例えばBDなどの高記録密度ディスクに対応してPRML復号を行う光ディスクシステムにおいて、上記dSAMなどのエッジ位置の誤差を表す評価値を得るための従来例としての構成を示している。
先ず、上述したPRML復号を実現するための構成として、イコライザ100、ビタビ復号器101が備えられる。
イコライザ100は、デジタルサンプリングした再生信号(以下、再生信号DSとする)を入力し、当該再生信号DSに対し、FIRフィルタ100a(FIR:Finit Impulse Response)により所要の周波数特性を与えることで、上述したPR等化処理を行う。
【0009】
上記イコライザ100による等化処理が施された上記再生信号DS(以下、等化信号ykと称する)は、ビタビ復号器101に供給される。
ビタビ復号器101は上記等化信号ykに基づくビタビ復号処理(最尤復号処理)を行って復号データDTを得る。
【0010】
ここで、上記ビタビ復号器101により得られた復号データDTはイコライザ100に対しても供給される。これは、上記イコライザ100が、いわゆる適応等化処理を行うことによる。
すなわち後述もするが、この場合のイコライザ100は、上記復号データDT(ビット系列)に対して例えばPR(1、2,2,1)などの所定のPR特性に基づく重み付け加算を行って得た信号波形(パーシャルレスポンス系列)を目標波形とした等化処理を行うようにされている。
【0011】
また、上記イコライザ100により得られた等化信号ykは、評価器102に対しても供給される。
評価器102は、上記等化信号ykに基づき、上述したdSAMなどのエッジ位置の誤差を表す品質評価値を測定する。
具体的に、この場合の評価器102には、上記等化信号ykと再生クロックCK、及び復号データDTとに基づきマーク長ごとに上記品質評価値を測定するマーク長ごと評価値測定部102aと、当該マーク長ごと評価値測定部102aによりマーク長ごとに測定された評価値をマーク長ごとに平均化する平均化部102bとが設けられている。
なお確認のために述べておくと、測定した品質評価値を平均化するのは、評価値の精度・安定性を高めるためである。
また確認のために述べておくと、上記復号データDTは、マーク長ごと評価値測定部102aが、入力される等化信号ykのマーク長を識別するために用いられる。
【0012】
ここで、上述のようにこの場合のイコライザ100は適応等化処理を行うものとされているが、このような適応等化処理を行うことで、光ディスクの個体ごとの再生信号の周波数特性(及び位相特性)のばらつき等を効果的に吸収でき、再生信号品質の向上を図ることができる。
しかしながら、上述したライトストラテジ調整などのキャリブレーション動作を行う際には、このような適応等化処理が悪影響を与える虞がある。具体的に、ライトストラテジ調整では、例えば記録パルスエッジ位置など記録パラメータを変更しつつ光ディスク上の異なる位置で試し書きを行うなど、それぞれ異なる記録条件の設定下で試し書きを行い、それらの記録部分の評価値を得た結果に基づき、最適とされる記録条件を導出するようにされる。このような動作が行われる場合において、適応等化処理が行われてしまうと、記録条件の差が吸収されてしまう虞があり、その結果、適正な調整動作とすることができなくなってしまう虞がある。
【0013】
このため、従来の光ディスクシステムでは、イコライザ100による等化処理について、通常のデータ再生時にのみタップ係数を可変とする適応等化処理を実行させるものとし、キャリブレーション動作時には、固定のタップ係数を用いた等化処理(つまりタップ係数不変の等化処理)を行うようにしている。
【0014】
このとき、キャリブレーション動作時に対応して設定する上記固定のタップ係数としては、例えば予め光ディスク上での適応等化処理のタップ係数収束結果を複数回且つ複数箇所で測定しておき、その結果を例外値排除(例えばソートして上下の値のいつくかを排除)及び平均化するなどして、所望のパーシャルレスポンス等化が為され、且つ記録条件の差が吸収されないようなタップ係数を求めておき、これを装置側に保持させておくことになる。
【0015】
図9は、上記のようなタップ係数可変による適応等化処理と、固定タップ係数による等化処理のとの切り換えを行う場合に対応したイコライザ100の内部構成を例示している。
なおこの図では図8に示したビタビ復号器101も併せて示している。
【0016】
図示するようにイコライザ100内において、再生信号DSは、FIRフィルタ100aに対して入力される。FIRフィルタ100aには、遅延回路105、乗算器106、及び加算器107が備えられる。この場合のFIRフィルタ100aとしては、図のように2つの遅延回路105A、105B、3つの乗算器106-1、106-2、106-3が備えられ、タップ数=3のFIRフィルタとされる。
このFIRフィルタ100aにおいては、図中の加算器107による加算結果が、等化信号ykとしてビタビ復号器101に供給される。
また、上記加算器107より出力された等化信号ykはタップ係数更新処理部108に対しても供給される。
【0017】
タップ係数更新処理部108は、上記ビタビ復号器101から供給された復号データDTに対し例えば(1,2,2,1)などの所定のPR特性に基づく係数を重み付け加算して得た信号波形(パーシャルレスポンス系列)を目標波形として、該目標波形と等化信号ykの波形との誤差(つまり等化誤差)を計算し、該誤差を最小とするようなタップ係数を計算する。
このように計算されたタップ係数は、乗算器106-1、106-2、106-3のぞれぞれに対応して設けられたタップ係数設定部109-1、109-2、109-3に対して供給される。
【0018】
タップ係数設定部109-1、109-2、109-3には、それぞれセレクタ111-1、111-2、111-3が備えられる。
これらのセレクタ111-1、111-2、111-3には、上記タップ係数更新処理部108からのタップ係数が入力されると共に、固定係数110-1、110-2、110-3が入力される。固定係数110-1、110-2、110-3は、上述のようにして予め求めておいた固定のタップ係数である。
【0019】
各セレクタ109には、外部より再生/評価値測定識別信号が供給される。この再生/評価値測定識別信号は、通常再生状態であるかキャリブレーション動作に伴う評価値測定状態であるかの別を表す信号である。
各セレクタ109は、上記再生/評価値測定識別信号により通常再生状態である旨が示される場合は、タップ係数更新処理部108から供給されたタップ係数を選択出力する。
一方、上記再生/評価値測定識別信号により評価値測定状態である旨が示される場合は、固定係数110としてのタップ係数を選択出力する。
これにより、通常再生時に対応しては、再生信号品質の改善が図られれるべく適応等化処理を行うことができ、一方で評価値測定時には、予め定められた固定のタップ係数による等化処理が行われることで、所望のPR等化が為され且つ記録条件の差が吸収されずに適正なキャリブレーション動作が行われるようにすることができる。
【0020】
確認のため、図8、図9に示した従来例としての構成により実現されるキャリブレーション時に対応した動作について、図10を参照して説明しておく。
この図10では、キャリブレーションに伴い、記録条件1、及び記録条件2としての2つの異なる記録条件について試し書きが行われる場合を例示している。
上述のように従来例においては、キャリブレーション動作時には固定のタップ係数が設定されるので、図のように記録条件1、記録条件2の何れの設定下においてもタップ係数の設定状態としては固定係数設定状態が維持される。
【0021】
また、図からも明らかなように、評価器102は、各記録条件の設定下において、マーク長ごとのエッジ位置誤差の測定、及び測定したエッジ位置誤差をマーク長ごとに平均化する動作を行う。これにより記録条件ごとに、マーク長ごとの評価値(平均評価値)を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、図9に示したイコライザ100において、等化処理の目標特性への等化精度(周波数・位相特性の分解能)は、FIRフィルタ100aのタップ数や、タップ係数のビット数(ビット幅)によって決定されるものとなる。すなわち、タップ数やタップ係数のビット数がより多ければ、目標特性への等化精度は向上し、逆に少なければ等化精度は低下する。
【0023】
一方で、特許文献1に開示されるdSAMなど、エッジ位置の誤差を表す評価値としては、ライトストラテジなどの記録パラメータの調整精度向上のために、場合によってはT/32やT/64(ここでTはチャネルビットを表す)といった非常に高い誤差検出精度が要求される。
このように高い誤差検出精度を実現するにあたっては、イコライザ100としては、PRML復号によるデータ再生で要求される等化精度よりも高い等化精度が得られるようにされる必要があり、これに伴い、FIRフィルタ100aのタップ数やタップ係数のビット数をデータ再生時に必要な分より増やすことが要求される。
【0024】
しかしながら、デジタルフィルタにおいて、タップ数やタップ係数のビット数の増加は、デバイスのコストアップを助長する。特に、タップ係数のビット数を増やした場合には、一般的に乗算器106としてのデジタル乗算回路の規模は入力ビット数の増加に対し2のべき乗で増加する点を考慮すると、大幅なコストアップを招いてしまうことになる。
【0025】
本発明は上記のような問題点に鑑み為されたものであり、デジタルフィルタにおける乗算器に設定可能なタップ係数のビット幅を拡張することなく、タップ係数を拡張した場合と等価な効果が得られるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題の解決のために、本発明では、フィルタ処理装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明のフィルタ処理装置は、デジタルフィルタを備えて入力信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理装置であって、タップ係数が可変設定される乗算器を備える。
また、上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を保持する目標タップ係数保持部を備える。
また、上記目標タップ係数における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定する係数択一設定部を備える。
その上で、上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするように上記係数択一設定部を制御する係数設定比率制御部を備えるものである。
【0027】
上記のようにして本発明では、デジタルフィルタを構成する乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数が多い数値とされた目標タップ係数を保持しておくようにしている。例えば、上記設定可能タップ係数が整数であるとすれば、小数点以下の数値も含む(よりビット数の多い)目標タップ係数を保持(設定)するものである。
そして、上記目標タップ係数としての数値における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定可能としている。これは、上記目標タップ係数の数値が例えば「1.4」であれば、「1」(設定可能桁部分数値)と「2」(最小桁値加算数値)とのうちの一方を乗算器に対し択一的に設定可能にするというものである。
その上で、上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値(例えば「2」)と上記設定可能桁部分数値(例えば「1」)との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするようにしている。例えば、上記目標タップ係数の値から上記設定可能桁部分数値を減算した値をXとしたとき、上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率は「X:1−X」に設定する。このことによると、上記例では「2」と「1」との設定比率は4:6とされる。
詳しくは後述するが、このようなタップ係数の時間軸上での可変設定が行われることで、当該フィルタ処理装置の後段にて先に説明した測定評価値の平均化処理のように少なくとも積分を伴う処理が行われる場合には、上記乗算器に対して上記目標タップ係数が設定された場合と等価な効果を得ることができる。すなわち、タップ係数のビット幅を上記設定可能タップ係数のビット幅よりも拡張したことと等価な効果が得られるようにできる。
これにより、例えば乗算器には整数によるタップ係数しか設定できない場合であっても、上記目標タップ係数としての小数部も含むタップ係数(よりビット数の多いタップ係数)を設定したフィルタ処理を行った場合と同等の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
上記のようにして本発明のフィルタ処理装置(フィルタ処理方法)によれば、その後段にて従来行われていた測定評価値の平均化処理のような少なくとも積分を伴う処理が行われる場合において、上記乗算器に対して上記目標タップ係数が設定された場合と等価な効果を得ることができ、つまりは、タップ係数のビット幅を設定可能タップ係数のビット幅よりも拡張したことと等価な効果が得られるようにできる。換言すれば、乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張せずとも、当該乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張したことと等価な効果を得ることができるものである。
【0029】
このようにして本発明のフィルタ処理装置によれば、フィルタ処理の精度向上が図られたことと等価な効果が得られるようにしつつ、デジタルフィルタのハードウエア規模の大幅な拡大、及びそれに伴う大幅なコストアップの防止を図ることができる。
【0030】
また、本発明の光記録媒体駆動装置(評価値測定方法)は、光記録媒体からの再生信号に対し上記本発明としてのフィルタ処理を施し、該フィルタ処理の施された再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定し且つ上記複数回測定された評価値を少なくとも積分するものである。
このような本発明の光記録媒体駆動装置によれば、乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張せずとも、当該乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張した場合と同等の精度による評価値を得ることができる。
すなわち、このような本発明の光記録媒体駆動装置によれば、デジタルフィルタのハードウエア規模の大幅な拡大やそれに伴う大幅なコストアップの防止を図りつつ、評価値の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態としての光記録媒体駆動装置の内部構成を示した図である。
【図2】実施の形態としての光記録媒体駆動装置が備えるイコライザ(実施の形態としてのフィルタ処理装置)の内部構成を示した図である。
【図3】実施の形態としての評価値測定手法について説明するための図である。
【図4】実施の形態としてのタップ係数の可変設定動作によりエッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度の向上が図られる点について説明するための図である。
【図5】タップ係数設定部の内部構成を示した図である。
【図6】タップ係数設定部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】変形例としてのタップ係数設定部の内部構成を示した図である。
【図8】PRML復号を行う光ディスクシステムにおいて再生信号のエッジ位置の誤差を表す評価値を得るための従来例としての構成を示した図である。
【図9】従来例としてのイコライザの内部構成を示した図である。
【図10】従来例としてのイコライザが評価値測定時に対応して行う動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.装置構成>
[1-1.ディスクドライブ装置の内部構成]
[1-2.イコライザの内部構成]
<2.実施の形態としての評価値測定手法>
[2-1.具体的な手法]
[2-2.タップ係数設定部の構成・動作]
[2-3.実施の形態のまとめ]
<3.変形例>
【0033】
<1.装置構成>
[1-1.ディスクドライブ装置の内部構成]
図1は、本発明の光記録媒体駆動装置の一実施形態としての、ディスクドライブ装置1の内部構成を示している。
なおこの図1ではディスクドライブ装置1における主に記録/再生、評価値測定に係る構成を抽出して示しており、例えばトラッキング・フォーカスなどの各種のサーボ系など他の構成については図示を省略している。
【0034】
図1において、光ディスクDは、円盤状の光記録媒体である。光記録媒体は、光の照射により記録信号の再生が行われる記録媒体を指す。
光ディスクDは、記録/再生時には図中のスピンドルモータ(SPM)2によって回転される。
【0035】
光学ヘッド3(光ピックアップ)は、レーザダイオードから出射したレーザ光を、所定の光学系により対物レンズを介して光ディスクDに照射する。また光学ヘッド3は、光ディスクDからの反射光を、所定の光学系を介してフォトディテクタに導き、反射光量に応じた電気信号を得る。また複数のフォトディテクタで検出された各光量信号に対して演算処理を行い、記録された情報の再生信号sA(再生RF信号)や、トラッキング、フォーカスなどの各種サーボエラー信号を生成する。
【0036】
記録時には、記録信号発生部8から記録信号DLが光学ヘッド3に供給される。記録信号DLは、光学ヘッド3内のレーザダイオードの駆動信号であり、レーザダイオードは記録信号DLに応じて発光駆動される。
記録時には、光ディスクDに記録しようとする記録データが、記録データエンコーダ9で、例えばRLL(1,7)変調等のエンコード処理が施され、そのエンコード信号DRが記録信号発生部8に供給される。記録信号発生部8では、エンコード信号DRに応じたレーザ駆動信号としての記録信号DLを生成する。
ここで、レーザ駆動信号としてのパルスレベルやパルス幅、パルスエッジタイミング等の、いわゆるライトストラテジ設定は、コントローラ10から指示される。つまり記録信号発生部8は、レーザを発光させる強度を設定する機能と、発光時間/タイミングを設定する機能を有しており、レーザ駆動信号としての記録信号DLを調整することで、光ディスクDに対する記録条件を調整することが可能とされている。
【0037】
再生時には、光学ヘッド3で読み出された再生信号sAは再生クロック生成/サンプリング部4に供給される。再生クロック生成/サンプリング部4では、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いて再生信号sAに同期した再生クロックCKを生成し、また再生信号sAのデジタルサンプリングを行ってサンプリング信号(デジタル再生信号)DSを出力する。
上記再生クロックCKはイコライザ5、ビタビ復号器6、及び評価器11での処理に用いられる。
また上記サンプリング信号DSは、イコライザ5に対して供給される。
【0038】
イコライザ5は、FIR(Finit Impulse Response)フィルタ5aを備え、上記再生信号DSに対し所要の周波数特性を与えることで、PR(Partial Response)等化処理を行う。
本実施の形態のイコライザ5としても、先の従来例として説明したイコライザ100と同様に、データ再生時に対応して適応等化処理を行うようにされる。このためイコライザ5には、図示するようにビタビ復号器6による復号データDTが入力される。
なお、イコライザ5の内部構成については後述する。
【0039】
上記イコライザ5により等化処理が施された再生信号DS(以下、等化信号ykと称する)は、ビタビ復号器6、及び評価器11に対して供給される。
【0040】
ビタビ復号器6は、いわゆるビタビ復号処理により再生信号の2値化処理を行う。すなわち ビタビ復号器6は、上記イコライザ5での等化処理により再生信号DSが所定のPRクラスに適合するように波形整形された等化信号ykについて、該等化信号ykと、想定され得るビット系列のパーシャルレスポンスとの間のユークリッド距離を調べ、その距離が最も近くなるビット系列を検出結果として出力する。
【0041】
上記ビタビ復号器6による復号処理で得られた復号データ(2値データ列)DTは、再生データデコーダ7に供給され、RLL(1,7)変調等に対する復調処理やエラー訂正処理、デインターリーブなどの処理が施され、これによって復調された再生データが得られる。
【0042】
また、ビタビ復号器6から出力された復号データDTは、評価器11に対しても供給される。
評価器11は、上述した等化信号ykと、上記復号データDTと、再生クロックCKとに基づき、再生信号のエッジ位置の誤差を表す品質評価値を測定する。
具体的に、評価器11には、上記等化信号yk、再生クロックCK、復号データDTに基づきマーク長(記録マーク長)ごとに上記品質評価値を測定するマーク長ごと評価値測定部11aと、当該マーク長ごと評価値測定部11aによりマーク長ごとに測定された評価値をマーク長ごとに平均化する平均化部11bとが設けられている。
【0043】
この場合のマーク長ごと評価値測定部11aは、上記品質評価値を、上記等化信号ykのゼロクロスタイミングと上記再生クロックCKのエッジタイミングとの誤差として測定する。
具体的に、マーク長ごと評価値測定部11aは、上記等化信号ykのゼロクロス点ごとに、該ゼロクロス点のタイミングと上記再生クロックCKのエッジタイミングとの誤差を品質評価値として測定すると共に、上記復号データDTに基づき、測定した品質評価値をマーク長ごとに分けて格納する。
【0044】
なお確認のために述べておくと、上記のように測定した品質評価値を復号データDTに基づきマーク長ごとに分けるためには、上記マーク長ごと評価値測定部11aに対する等化信号ykと復号データDTとの入力タイミングを同期させることになる。このため実際には、マーク長ごと評価値測定部11aに対しては、上記等化信号ykが所定時間分(ビタビ復号の処理時間分)遅延されて入力されるように構成する。
【0045】
なお勿論、上記マーク長ごと評価値測定部11aとしては、上記エッジ位置の誤差を表す品質評価値として、先の特許文献1に記載されるようなdSAMを測定するように構成することもできる。
また特許文献1に記載されるように、評価値はマーク長のみではなくマーク長とスペース長との組み合わせごとに測定することもできる。
【0046】
また評価器11において、平均化部11bは、上記のようにしてマーク長ごと評価値測定部11aによりマーク長ごとに測定された品質評価値を、マーク長ごとに平均化する。具体的には、上述のようにしてマーク長ごとに分けて格納された品質評価値をそれぞれ平均化する。
評価器11により得られたマーク長ごとの品質評価値は、コントローラ10に対して供給される。
【0047】
コントローラ10は、CPU(Centeral Processing Unit)、ROM、RAMなどを有するマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10は、上記ROM等に格納されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、ディスクドライブ装置1の全体制御を行う。
特に本実施の形態の場合、コントローラ10は、上記評価器11により得られた品質評価値に基づき再生信号品質を評価し、その評価結果に応じて記録条件設定処理(ライトストラテジ設定)を行う。
【0048】
ここで、ライトストラテジの調整動作時には、コントローラ10は、記録データエンコーダ9に対する試し書きデータ(テストパターンデータ)の出力指示や、記録信号発生部8に対する記録波形の調整パラメータの指示を行って、記録条件を逐次変えながらの試し書き動作を実行させる。
そして、このように試し書きを行った箇所についての再生を実行させ、これに伴い評価器11にて測定(計算)される品質評価値を取得し、該取得した品質評価値に基づき記録条件ごとの再生信号品質評価を行い、その結果に基づき最適とされる記録条件の設定処理を行う。
【0049】
また、コントローラ10は、再生/評価値測定識別信号を生成・出力する。この再生/評価値測定識別信号は、通常のデータ再生が行われる状態にあるか、又は上記のようなライトストラテジの調整動作に伴い品質評価値の測定動作が行われる状態にあるかの別を表す信号となる。
図示するようにして再生/評価値測定識別信号は、イコライザ5に対して供給される。
【0050】
[1-2.イコライザの内部構成]
図2は、図1に示したイコライザ5の内部構成を示している。
なお図2ではイコライザ5の内部構成と共に図1に示したビタビ復号器6も併せて示している。
先ず、イコライザ5には、FIRフィルタ5aが備えられている。
FIRフィルタ5aには、図示するようにして入力信号として再生信号DSが与えられる。そしてFIRフィルタ5aには、上記再生信号DSを入力するラインに対して遅延回路15A、及び遅延回路15Bが挿入され、上記遅延回路15Aへの入力前の再生信号DSを分岐出力するタップT1、及び上記遅延回路15Aを経た再生信号DSを分岐出力するタップT2、さらに上記遅延回路15Bを経た再生信号DSを分岐出力するタップT3の計3つのタップが形成されている。
また、FIRフィルタ5aには、上記タップT1、T2、T3に対してそれぞれ対応するタップ係数を与えるための乗算器16-1、乗算器16-2、乗算器16-3が設けられている。
さらに、上記乗算器16-1、16-2、16-3による乗算結果を加算して、FIRフィルタ5aの出力信号である等化信号ykを得る加算器17が備えられる。
図示するようにして加算器17にて得られた等化信号ykは、ビタビ復号器6に対して供給される。
【0051】
ここで、本実施の形態のFIRフィルタ5aにおいては、各乗算器16に対し、整数によるタップ係数の設定のみが可能とされているとする。つまり各乗算器16のハードウエア規模は、整数によるタップ係数の設定のみを許容する規模とされている。
【0052】
また、イコライザ5には、タップ係数更新処理部18と、当該タップ係数更新処理部18により得られた適応等化用係数としてのタップ係数を上記乗算器16-1、16-2、16-3に設定するためのタップ係数設定部19-1、19-2、19-3が設けられている。
【0053】
図示するように上記タップ係数更新処理部18には、FIRフィルタ5aからの等化信号ykが入力されると共に、ビタビ復号器6による復号処理で得られた復号データDTが入力される。
タップ係数更新処理部18は、先に説明した適応等化処理を実現するために各乗算器16にそれぞれ設定されるべきタップ係数(適応等化用係数)を計算する。具体的にタップ係数更新処理部18は、上記復号データDTに対し例えば(1,2,2,1)などの所定のPR特性に基づく係数を重み付け加算して得た信号波形(パーシャルレスポンス系列)を目標波形として、該目標波形と等化信号ykの波形との誤差(つまり等化誤差)を計算し、該誤差を最小とするタップ係数を計算する。
【0054】
なお確認のために述べておくと、上記復号データDTに基づく上記等化誤差の計算が正しく行われるようにすべく、上記タップ係数更新処理部18に対して入力する等化信号ykについても、所定時間分(ビタビ復号の処理時間分)の遅延を与えるようにする。
【0055】
上記のようにしてタップ係数更新処理部18により計算されたタップ係数(乗算器16ごとのタップ係数)は、適応等化用係数として、タップ係数設定部19-1、19-2、19-3に対して供給される。確認のために述べておくと、乗算器16-1に設定されるべき適応等化用係数はタップ係数設定部19-1に、また乗算器16-2に設定されるべき適応等化用係数はタップ係数設定部19-2に、また乗算器16-3に設定されるべき適応等化用係数はタップ係数設定部19-3にそれぞれ供給される。
【0056】
タップ係数設定部19は、先に従来例として説明したタップ係数設定部109と同様に、再生/評価値測定識別信号が通常のデータ再生時である旨を示す場合には、タップ係数更新処理部18から供給された適応等化用係数を対応する乗算器16に対して出力する(設定する)。
つまり本実施の形態においても、通常のデータ再生時に対応しては適応等化処理が実行されるものであり、この点は従来例の場合と同様となる。
【0057】
ここで、本実施の形態としてのタップ係数設定部19の内部構成や、評価値測定時に対応して行われる動作については後述する。
【0058】
<2.実施の形態としての評価値測定手法>
[2-1.具体的な手法]
前述もしたように、エッジ位置の誤差を表す評価値としては、場合によってはT/32やT/64(Tはチャネルビットを表す)といった非常に高い誤差検出精度が要求される。
このように高い誤差検出精度を実現するにあたっては、イコライザ5としては、PRML復号によるデータ再生で要求される等化精度よりも高い精度が得られるようにされる必要がある。
このとき、イコライザ5による等化精度は、FIRフィルタ5aのタップ数やタップ係数のビット数に依存して決まり、従って上記のような高い誤差検出精度を実現するにあたっては、これらタップ数やタップ係数のビット数を増やせばよい。
【0059】
しかしながら前述の通り、タップ数やタップ係数のビット数を増加させた場合は、デバイスのコストアップが避けられないものとなる。特に、タップ係数のビット数を増やした場合には、一般的に乗算器16としてのデジタル乗算回路の規模は入力ビット数の増加に対し2のべき乗で増加する点を考慮すると、大幅なコストアップを招いてしまうことになる。
【0060】
また、高精度が要求されるのは評価値測定時のみであり、上記のようにタップ数やタップ係数のビット数を増加させてしまうと、通常のデータ再生時には等化処理がオーバースペックとなってしまい、その意味で無駄が生じると言える。
【0061】
そこで本実施の形態では、評価値測定時に対応して以下で説明するようなタップ係数の可変設定を行うようにすることで、FIRフィルタ5aのタップ係数のビット数を増加(ビット幅を拡張)させることなく、タップ係数のビット幅を拡張した場合と等価な効果が得られるようにする。
【0062】
図3は、上記タップ係数の可変設定動作を含む本実施の形態としての評価値測定手法について説明するための図である。
先ず、ライトストラテジ調整を行うにあたっては、先に説明したようにしてそれぞれ異なる記録条件の設定下での試し書きを行い、それら異なる記録条件が設定された下で記録された信号についての評価値測定を行うことになる。
この図3に示されるように、ここでは、記録条件1と記録条件2の2つの異なる記録条件により試し書きが行われる場合を例示している。
【0063】
ここで、先に説明した従来例においては、品質評価値の測定時には、タップ係数として予め定められた固定の係数を設定するものとしていた(図10を参照)。
すなわち、上記固定のタップ係数として、例えば予め光ディスクD上での適応等化処理のタップ係数収束結果を複数回且つ複数箇所で測定しておき、その結果を例外値排除(例えばソートして上下の値のいつくかを排除)及び平均化するなどして、所望のパーシャルレスポンス等化が為され且つ記録条件の差が吸収されないような係数を求めておき、評価値測定時にはこのように求められた固定のタップ係数を設定するというものである。
前述した通り、評価値測定時に対応してこのように予め定められた固定タップ係数を設定した等化処理を行う(つまり適応等化処理を行わない)ことで、記録条件の差が吸収されて適正なキャリブレーション動作とすることができなくなってしまうといったことの防止が図られる。
【0064】
本実施の形態においても、このように評価値測定時に対応して設定されるべき固定のタップ係数を予め求めておき、それを装置側に対して保持させておく点は従来例の場合と同様となる。
但し本実施の形態では、このように評価値測定時に対応して設定されるべき固定のタップ係数として、従来例の場合よりもさらに下桁側の数値を含むより詳細な値を装置に対して保持させておくものとする。
具体的に、例えば従来例においても乗算器(106)には整数によるタップ係数のみが設定可能とされていて、上記固定のタップ係数としてもその整数部の値のみを保持させていたと仮定すると、本実施の形態では、整数部の値と共に小数点以下の値も併せて保持させておくというものである。
【0065】
図3においては、上述のようにしてタップ係数の収束結果を実測するなどして予め求めたタップ係数が、例えば「1.4」であった場合を例示している。
本実施の形態では、このようにして予め求められたタップ係数を、目標係数として装置側に保持させておく。
【0066】
そして本実施の形態において、評価値測定時には、上記のようにして保持された目標係数をそのまま乗算器16に対して設定するものとはせず、上記目標係数の値に応じたタップ係数の可変設定を行う。
具体的に、本例の場合は乗算器16には整数によるタップ係数のみが設定可能とされているので、上記目標係数の数値に応じて、その整数部の値と、該整数部の値に対して「1」を加算した数値とを、時間軸上でのそれらの設定比率が上記目標係数の小数部の値に応じた設定比率となるようにして可変設定する。
【0067】
より具体的に、目標係数が上記「1.4」であるとすると、その整数部の値は「1」で該整数部の値に「1」を加算した値は「2」となる。これらの値を、その時間軸上での設定比率が上記目標係数の小数部の値に応じた設定比率となるようにして可変設定する。
【0068】
ここで、係数「2」と係数「1」とを時分割設定して等価的に「1.4」の係数が設定されたものとするためには、図示するようにして係数「2」と係数「1」との時間軸上での設定比率を4:6とすればよい。
本例においては、上記目標係数の整数部の値と該整数部の値に「1」を加算した値との時間軸上での設定比率を、次のように設定する。
すなわち、上記目標係数の整数部の値に「1」を加算した値をA、上記目標係数の整数部の値をB、上記目標係数の値からその整数部の値を減算した値(上記の例では「0.4」)をxとしたとき、
A:B=x:1−x
に設定するものである。
【0069】
このような設定比率による係数の可変設定は、図示するようにして記録条件ごとに独立して行うものである。つまりこの場合、1つの記録条件についての評価値測定期間を1つの単位期間として、該単位期間内における時間軸上の係数設定比率が上記の比率となるようにして上記A、Bの各係数の可変設定を行うものである。
【0070】
そして、このような係数A、Bの可変設定が行われる一方で、各記録条件についてのそれぞれの評価値測定期間には、先に説明した評価器11による品質評価値(エッジ位置誤差)の測定が行われる。具体的には、各記録条件についてのそれぞれの評価値測定期間において、マーク長ごとのエッジ位置誤差の測定、及び測定したエッジ位置誤差をマーク長ごとに平均化する動作が行われる。
【0071】
上記のようなタップ係数の可変設定動作を含む本実施の形態としての評価値測定手法によれば、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度は、タップ係数を上記目標係数に設定した場合と同等の精度とすることができる。
【0072】
図4は、この点について説明するためのイメージ図であり、図4(a)はイコライザ5による等化処理の目標特性のイメージを示し、図4(b)は上述した係数A(目標係数整数部+1の値)を設定した場合の等化処理後の波形イメージを示し、図4(c)は上述した係数B(目標係数整数部の値)を設定した場合の等化処理後の波形イメージを示している。
【0073】
ここで、目標係数が本来は小数点以下の数値を含むものであった場合、本例のように乗算器16に整数によるタップ係数しか設定できないことによっては、タップ係数の量子化誤差に伴う等化誤差が生じる。
この点に鑑みると、例えば図4(b)は、本来は「1.4」である目標係数に対してタップ係数「2」を設定した等化処理を行ったことにより等化誤差が生じた場合の波形イメージを示すものであるとも捉えることができる。同様にして図4(c)は、本来は「1.4」である目標係数に対してタップ係数「1」を設定した等化処理を行ったことにより等化誤差が生じた場合の波形イメージを示しているものと捉えることができる。
【0074】
そして、これら図4(b)、図4(c)と図4(a)とを対比して分かるように、上記のようなタップ係数量子化誤差に伴う等化誤差が生じる場合には、等化信号ykのエッジ位置(ゼロクロス位置)にも相応の誤差が生じるものとなる。つまりこの誤差により、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度が低下してしまうものである。
【0075】
このことからも理解されるように、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度を向上させるにあたっては、タップ係数の量子化誤差を低減する、すなわち等価的に上記目標係数を設定した等化処理が行われる状態を作り上げればよいということになる。
【0076】
上述した本実施の形態としての手法によれば、係数Aの設定下及び係数Bの設定下で測定されたエッジ位置誤差の値が平均化される。これは、図4(b)の波形について測定されたエッジ位置誤差の値と図4(c)の波形について測定されたエッジ位置誤差の値とが平均化されることに相当する。
このとき、本実施の形態では、係数Aと係数Bの時間軸上での設定比率を等価的に目標係数が設定された場合と同等となるように設定しているので、上記のように係数Aの設定下及び係数Bの設定下で測定されたエッジ位置誤差の値が平均化されることによっては、最終的に得られるエッジ位置誤差の値としては、目標係数を設定した場合と同等の数値とすることができる。つまりこれにより、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度は、小数点以下の数値も含む目標係数を設定した場合と同等の精度とすることができる。
【0077】
ところで、本実施の形態では、エッジ位置誤差としての品質評価値をマーク長ごとに測定するものとしている。
このとき、或る1つのマーク長について着眼してみると、仮に、そのマーク長の信号の出現頻度が係数Aの設定下、係数Bの設定下で大幅に異なっていたとすると、係数A、係数Bの何れか一方の係数設定時における測定結果が支配的となって、それにより評価値の測定精度を効果的に向上させることができなくなってしまう虞がある。
この点を考慮すると、1つの記録条件につき光ディスクDに対して記録するテストパターンデータとしては、各マーク長の信号についての係数Aの設定下での出現頻度と係数Bの設定下での出現頻度とが同等となるようにされていることが理想的となる。
このため本実施の形態では、ライトストラテジ調整のための試し書きデータとして用いられるテストパターンデータとして、各マーク長の信号がランダムに出現するようなランダムデータを採用するものとしている。これにより、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度のより効果的な向上が図られる。
【0078】
[2-2.タップ係数設定部の構成・動作]
上記により説明した本実施の形態としてのタップ係数可変設定動作は、先の図2に示したイコライザ5内のタップ係数設定部19により実現される。
図5は、タップ係数設定部19の内部構成を示している。
なお、この図5においては、図2に示した乗算器16も併せて示している。
【0079】
図5において、タップ係数設定部19には、セレクタ20が備えられる。
このセレクタ20に対しては、先の図2に示したタップ係数更新処理部18からの適応等化用係数が入力される。またセレクタ20には、その切換制御信号として、図1に示したコントローラ10からの再生/評価値測定識別信号が入力される。
当該セレクタ20は、先の図9に示した従来例としてのタップ係数設定部109が備えるセレクタ111と同様に、再生/評価値測定識別信号に基づき、適応等化用係数の設定/非設定を切り換えるためのセレクタとして機能する。
【0080】
また、本実施の形態のタップ係数設定部19には、評価値測定時に対応して乗算器16に設定されるべき係数を上記セレクタ20に対して与えるための構成として、目標係数保持部21、加算器22、セレクタ23、カウンタ24、及びコンパレータ25が備えられる。
先ず、目標係数保持部21には、目標係数として、先に説明したようにして予めタップ係数収束結果を実測するなどして求めておいたタップ係数が設定される。
本例の場合、目標係数は整数部の値と小数部の値とを有するので、目標係数保持部21には、これら目標係数の整数部の値と小数部の値とが保持されるものとなる。
【0081】
なお確認のために述べておくと、この図5では、実際には乗算器16-1〜16-3の各乗算器16ごとに対応して設けられるタップ係数設定部19-1〜19-3を、タップ係数設定部19として1つにまとめて示しているが、上記のようにして予め求められる目標係数は、乗算器16-1〜16-3の個々の乗算器16ごとに求められるものであり、従って上記目標係数保持部21にはこれらの目標係数のうち対応する1つの係数が保持されるものである。
【0082】
上記目標係数保持部21により保持される目標係数の整数部の値は、セレクタ23と加算器22とに供給される。加算器22は、上記目標係数の整数部の値に対して「1」を加算し、その加算結果をセレクタ23に対して出力する。
【0083】
一方、上記目標係数保持部21に保持された目標係数の小数部の値は、コンパレータ25に対して供給される。また、このコンパレータ25には、カウンタ24によるカウント値も供給される。カウンタ24は、0〜n−1(nは自然数)までのカウントを繰り返し行うフリーランカウンタとされる。
上記コンパレータ25の出力信号は、上記セレクタ23の切換制御信号として当該セレクタ23に対して供給される。
【0084】
上記セレクタ23による出力は、セレクタ20に対して供給される。
セレクタ20は、上記再生/評価値測定識別信号に基づき、上記セレクタ23による出力と上述した適応等化用係数とのうち何れか一方を乗算器16に対して択一的に出力する(設定する)。
具体的に、上記再生/評価値測定識別信号により通常のデータ再生時である旨が示される場合は、上記適応等化用係数を選択出力する。また、上記再生/評価値測定識別信号により評価値測定時である旨が示される場合は、上記セレクタ23による出力を選択出力する。
【0085】
図6は、図5に示すタップ係数設定部19の動作を説明するためのタイミングチャートであり、カウンタ24のカウント値(図中カウンタ)、コンパレータ25の出力(コンパレータ出力)、セレクタ23の出力(セレクタ出力)のそれぞれの時間軸上での遷移を示している。
【0086】
先ず、先に説明したようにカウンタ24は、0〜n−1までのカウントを繰り返し行う。図示するようにカウンタ24は、0〜n−1までのカウントを、1記録条件についての評価値測定期間内にて行うようにされている。換言すれば、カウンタ24によるカウント周期は、1記録条件についての評価値測定期間をn等分した周期となるようにされているものである。
本例の場合、1記録条件についての評価値測定期間(つまり1記録条件につき行われる試し書きの記録長)は所定の長さに定められており、従って該期間長に基づき、例えば再生クロックCKを逓倍して上記評価値測定期間の1/n周期のクロックを生成し、これをカウンタ24の動作クロックとして与えるものとしている。これによりカウンタ24は、1記録条件についての評価値測定期間において0〜n−1までのカウントを行うようにされている。
【0087】
ここで、本例においては、目標係数として小数点第1位までの数値の設定を許容する場合を例示している。このことに対応して、上記nの値としては「10」を設定し、上記カウンタ24には1記録条件についての評価値測定期間において0〜9までのカウントを行わせるものとしている。
【0088】
図5に示したように、コンパレータ25に対しては、カウンタ24のカウント値と目標係数の小数部の値とが入力される。すなわち、上記のようにして1記録条件についての評価値測定期間内に0〜9の間で変化するカウント値と、例えば先に例示した目標係数=「1.4」の場合にはその小数部の値である「4」とが入力されるものである。
このとき、上記目標係数の小数部の値を「i」とおくと、コンパレータ25は、上記カウント値が「i」未満であるときと「i」以上であるときとで出力信号のレベルをH/Lで切り換えるように動作する。すなわち、上記目標係数=「1.4」の例で言えば、カウンタ24のカウント値が「4」未満/以上の別に応じて出力信号のレベルをH/Lで切り換えるものである。
【0089】
また一方で、先に説明したように上記コンパレータ25による出力信号は、セレクタ23の切換制御信号となるものであり、従ってセレクタ23は、上記カウント値が「i」未満であるときと「i」以上であるときとで、目標係数の整数部+1の値による係数(係数A)の出力と、目標係数の整数部の値による係数(係数B)の出力とを切り換えることになる。
【0090】
図6に例示されているように、本例の場合、上記コンパレータ25は、カウンタ24のカウント値が「i」未満のときは出力信号をHレベルとし、上記カウント値が「i」以上であるときは出力信号をLレベルとするように構成されている。
また上記セレクタ23は、コンパレータ25による出力信号がHレベルのときは目標係数の整数部+1の値による係数を選択出力し、上記出力信号がLレベルのときは目標係数の整数部の値による係数を選択出力するように構成されている。
つまりこれにより、セレクタ23からセレクタ20に対しては、上記カウント値が「i」未満のときは目標係数の整数部+1の値としての係数Aが与えられ、上記カウント値が「i」以上のときは目標係数の整数部の値としての係数Bが与えられるようになっている。従って、評価値測定時において乗算器16に対しては、上記カウント値が「i」未満のときは係数Aが、上記カウント値が「i」以上のときは係数Bが設定されることになる。
【0091】
このようにして図5に示したタップ係数設定部19によれば、評価値測定時において、乗算器16に対する係数Aと係数Bとの時間軸上での設定比率を、目標係数の小数部の値に応じて設定できる。具体的に、目標係数の値からその整数部の値を減算した値をxとしたとき、係数A:係数Bによる比率を「x:1−x」に設定できる。
【0092】
なお、上記の例では目標係数として小数点第1位の数値までの設定を許容するものとして、n=10に設定する場合を例示したが、例えば小数点第2位の数値までの設定を許容するなど、目標係数の下桁側の桁数が増える場合には、それに応じてnの桁数を増やすものとすればよい。例えば目標係数が「1.45」である場合には、n=100として1記録条件についての評価値測定期間に0〜99のカウントが行われるようにする。このときi=45であることから、係数A:係数Bの時間軸上での設定比率は45:55(x:1−x=0.45:0.55)に設定されることになる。
【0093】
[2-3.実施の形態のまとめ]
上記のようにして本実施の形態によれば、タップ係数のビット幅を拡張することなく、タップ係数のビット幅を拡張した場合と等価な効果を得ることができる。具体的には、タップ係数のビット幅を拡張することなく、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度の向上を図ることができる。
つまり本実施の形態によれば、タップ係数のビット幅の拡張によるFIRフィルタ5aのハードウエア規模の大幅な拡大、及びそれに伴う大幅なコストアップの防止を図りつつ、等化処理精度の向上が図られたことと等価な効果、具体的にはエッジ位置の誤差としての品質評価値の測定精度の向上効果を得ることができる。
【0094】
また、上記のように品質評価値の測定精度の向上が図られれば、当該品質評価値を利用して行われるライトストラテジなどの記録波形調整パラメータの調整動作の精度向上も図られる。
【0095】
また、本実施の形態は、タップ係数のビット幅の拡張により評価値の測定精度の向上を図るものではないので、通常のデータ再生時における等化処理がオーバースペックとなってその点での無駄が生じてしまうといったことが無いようにできる。
【0096】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、タップ係数設定部19の構成については、次の図7のように変更することもできる。
図7において、この場合のタップ係数設定部19では、先の図5に示した加算器22が省略される。またこの場合、図5に示した係数保持部21に代えて、目標係数の整数部の値(係数B)を保持する係数保持部30、目標係数の整数部+1の値(係数A)を保持する係数保持部31、及び目標係数の小数部の値を保持する係数保持部32が設けられる。
セレクタ23に対しては、上記係数保持部31が保持する係数Aと上記係数保持部30が保持する係数Bとが入力される。この場合のセレクタ23は、コンパレータ25の出力信号に基づき、上記係数Aと係数Bのうちの何れか一方を択一的にセレクタ20に対して出力する。
また、この場合のコンパレータ25には、カウンタ24のカウント値と共に上記係数保持部32が保持する目標係数の小数部の値が入力される。この場合もカウンタ24、コンパレータ25の動作は、先の図6にて説明したものと同様となる。
【0097】
また、これまでの説明において、先の図3では、1つの記録条件についての評価値測定期間内において、係数Aを比率xに応じた期間連続して設定した後、残りの期間係数Bを連続して設定する場合を例示したが、本発明においては、係数Aと係数Bの時間軸上での設定比率が結果的にx:x−1(設定可能最小桁未満数値に応じた比率)となるようにされていればよく、係数A、Bの設定の順序やそれらの切換タイミングについては特に限定されるべきものではない。
【0098】
また、これまでの説明では、イコライザ5による等化処理にFIRフィルタ5aを用いる場合を例示したが、これに代えてIIRフィルタを用いることもできる。
また、これまでの説明において例示したタップ数やタップ係数の桁数(ビット幅)などの数値はあくまで一例を挙げたものに過ぎず、それらに限定されるべきものではない。
【0099】
また、これまでの説明では、等化信号ykに基づいて測定した品質評価値を平均化する場合を例示したが、品質評価値の精度向上が図られるようにするにあたっては、測定した品質評価値を少なくとも積分するものとすればよい。
【0100】
また、これまでの説明では、イコライザ5のフィルタ処理により得られた等化信号ykに基づき、再生信号のエッジ位置の誤差を表す品質評価値を測定する場合を例示したが、本発明における評価部としては、上記イコライザ5などのフィルタ処理部によりフィルタ処理の施された再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定し、且つ複数回測定した評価値を少なくとも積分するものであればよい。
【0101】
また、これまでの説明では、本発明のフィルタ処理装置が、光記録媒体のドライブ装置に適用される場合を例示したが、本発明のフィルタ処理装置としては他の装置に対しても広く好適に適用することができる。
本発明のフィルタ処理装置によれば、当該フィルタ処理装置によるフィルタ処理後の信号についての上述のような単位時間あたりの複数回の評価値の測定、及びこのように複数回測定された評価値についての少なくとも積分が行われる場合に対応して、タップ係数のビット幅を拡張したことと等価な効果が得られるようにできる。
【符号の説明】
【0102】
1 ディスクドライブ装置、2 スピンドルモータ、3 光学ヘッド、4 再生クロック生成/サンプリング部、5 イコライザ、5a FIRフィルタ、6 ビタビ復号器、7 再生データデコーダ、8 記録信号発生部、9 記録データエンコーダ、10 コントローラ、11 評価器、11a マーク長ごと評価値測定部、11b 平均化部、15A,15B 遅延回路、16-1〜16-3 乗算器、17,22 加算器、18 タップ係数更新処理部、19-1〜19-3 タップ係数設定部、20,23 セレクタ、21 目標係数保持部、24 カウンタ、25 コンパレータ、30,31,32 係数保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルフィルタを備えて入力信号についてのフィルタ処理を行うフィルタ処理装置とその方法に関する。
また、光記録媒体からの再生信号に基づき信号品質の評価指標となる品質評価値の測定を行う光記録媒体駆動装置とその評価値測定方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2008−47181号公報
【特許文献2】特開平5−55875号公報
【背景技術】
【0003】
光の照射により記録信号の再生が行われる光ディスク記録媒体として、例えばBD(Blu-ray Disc:登録商標)などのいわゆる高記録密度ディスクが普及している。
このような高記録密度ディスクについては、その記録情報の再生にあたりPRML(Partial Response Maximum Likelihood)復号(パーシャルレスポンス最尤復号)が行われる場合がある。
【0004】
周知のようにPRML復号方式は、再生信号との間のユークリッド距離が最小となるパーシャルレスポンス系列を検出する方式であり、パーシャルレスポンスという過程と最尤検出という過程とが組み合わされた技術となる。
パーシャルレスポンス系列は、ビット系列にターゲットレスポンスで定義される重み付け加算を施すことで得られる。光ディスクシステムにおいてはPR(1,2,2,1)が良く用いられ、これはビット系列に1,2,2,1の重みを付けて加算した値をパーシャルレスポンス値として返すものである。
【0005】
PRML復号を行うにあたっては、再生信号に対して所定のPR特性が与えられるべく、再生信号にイコライジング処理(PR等化処理)を施すようにされる。
PRML復号では、上記最尤検出としてビタビ検出を行うが、このビタビ検出では、上記イコライジング処理によりパーシャルレスポンスの過程となるように調整された再生信号を入力し、当該再生信号と、想定され得るビット系列のパーシャルレスポンスとの間のユークリッド距離を調べ、その距離が最も近くなるビット系列を検出結果として得るものである。
【0006】
また、一方で光ディスクシステムでは、記録時において、いわゆるOPC(Optimum Power Control)やライトストラテジ調整などの、記録波形調整パラメータに関するキャリブレーション動作が行われる。
【0007】
これら波形調整パラメータに関するキャリブレーション動作のうち、特にライトストラテジ調整を行う際には、記録信号品質を評価するための評価値として、例えば上記特許文献1などに開示されているdSAMなど、再生信号のエッジ位置の誤差を表す評価値が用いられる。
【0008】
図8は、例えばBDなどの高記録密度ディスクに対応してPRML復号を行う光ディスクシステムにおいて、上記dSAMなどのエッジ位置の誤差を表す評価値を得るための従来例としての構成を示している。
先ず、上述したPRML復号を実現するための構成として、イコライザ100、ビタビ復号器101が備えられる。
イコライザ100は、デジタルサンプリングした再生信号(以下、再生信号DSとする)を入力し、当該再生信号DSに対し、FIRフィルタ100a(FIR:Finit Impulse Response)により所要の周波数特性を与えることで、上述したPR等化処理を行う。
【0009】
上記イコライザ100による等化処理が施された上記再生信号DS(以下、等化信号ykと称する)は、ビタビ復号器101に供給される。
ビタビ復号器101は上記等化信号ykに基づくビタビ復号処理(最尤復号処理)を行って復号データDTを得る。
【0010】
ここで、上記ビタビ復号器101により得られた復号データDTはイコライザ100に対しても供給される。これは、上記イコライザ100が、いわゆる適応等化処理を行うことによる。
すなわち後述もするが、この場合のイコライザ100は、上記復号データDT(ビット系列)に対して例えばPR(1、2,2,1)などの所定のPR特性に基づく重み付け加算を行って得た信号波形(パーシャルレスポンス系列)を目標波形とした等化処理を行うようにされている。
【0011】
また、上記イコライザ100により得られた等化信号ykは、評価器102に対しても供給される。
評価器102は、上記等化信号ykに基づき、上述したdSAMなどのエッジ位置の誤差を表す品質評価値を測定する。
具体的に、この場合の評価器102には、上記等化信号ykと再生クロックCK、及び復号データDTとに基づきマーク長ごとに上記品質評価値を測定するマーク長ごと評価値測定部102aと、当該マーク長ごと評価値測定部102aによりマーク長ごとに測定された評価値をマーク長ごとに平均化する平均化部102bとが設けられている。
なお確認のために述べておくと、測定した品質評価値を平均化するのは、評価値の精度・安定性を高めるためである。
また確認のために述べておくと、上記復号データDTは、マーク長ごと評価値測定部102aが、入力される等化信号ykのマーク長を識別するために用いられる。
【0012】
ここで、上述のようにこの場合のイコライザ100は適応等化処理を行うものとされているが、このような適応等化処理を行うことで、光ディスクの個体ごとの再生信号の周波数特性(及び位相特性)のばらつき等を効果的に吸収でき、再生信号品質の向上を図ることができる。
しかしながら、上述したライトストラテジ調整などのキャリブレーション動作を行う際には、このような適応等化処理が悪影響を与える虞がある。具体的に、ライトストラテジ調整では、例えば記録パルスエッジ位置など記録パラメータを変更しつつ光ディスク上の異なる位置で試し書きを行うなど、それぞれ異なる記録条件の設定下で試し書きを行い、それらの記録部分の評価値を得た結果に基づき、最適とされる記録条件を導出するようにされる。このような動作が行われる場合において、適応等化処理が行われてしまうと、記録条件の差が吸収されてしまう虞があり、その結果、適正な調整動作とすることができなくなってしまう虞がある。
【0013】
このため、従来の光ディスクシステムでは、イコライザ100による等化処理について、通常のデータ再生時にのみタップ係数を可変とする適応等化処理を実行させるものとし、キャリブレーション動作時には、固定のタップ係数を用いた等化処理(つまりタップ係数不変の等化処理)を行うようにしている。
【0014】
このとき、キャリブレーション動作時に対応して設定する上記固定のタップ係数としては、例えば予め光ディスク上での適応等化処理のタップ係数収束結果を複数回且つ複数箇所で測定しておき、その結果を例外値排除(例えばソートして上下の値のいつくかを排除)及び平均化するなどして、所望のパーシャルレスポンス等化が為され、且つ記録条件の差が吸収されないようなタップ係数を求めておき、これを装置側に保持させておくことになる。
【0015】
図9は、上記のようなタップ係数可変による適応等化処理と、固定タップ係数による等化処理のとの切り換えを行う場合に対応したイコライザ100の内部構成を例示している。
なおこの図では図8に示したビタビ復号器101も併せて示している。
【0016】
図示するようにイコライザ100内において、再生信号DSは、FIRフィルタ100aに対して入力される。FIRフィルタ100aには、遅延回路105、乗算器106、及び加算器107が備えられる。この場合のFIRフィルタ100aとしては、図のように2つの遅延回路105A、105B、3つの乗算器106-1、106-2、106-3が備えられ、タップ数=3のFIRフィルタとされる。
このFIRフィルタ100aにおいては、図中の加算器107による加算結果が、等化信号ykとしてビタビ復号器101に供給される。
また、上記加算器107より出力された等化信号ykはタップ係数更新処理部108に対しても供給される。
【0017】
タップ係数更新処理部108は、上記ビタビ復号器101から供給された復号データDTに対し例えば(1,2,2,1)などの所定のPR特性に基づく係数を重み付け加算して得た信号波形(パーシャルレスポンス系列)を目標波形として、該目標波形と等化信号ykの波形との誤差(つまり等化誤差)を計算し、該誤差を最小とするようなタップ係数を計算する。
このように計算されたタップ係数は、乗算器106-1、106-2、106-3のぞれぞれに対応して設けられたタップ係数設定部109-1、109-2、109-3に対して供給される。
【0018】
タップ係数設定部109-1、109-2、109-3には、それぞれセレクタ111-1、111-2、111-3が備えられる。
これらのセレクタ111-1、111-2、111-3には、上記タップ係数更新処理部108からのタップ係数が入力されると共に、固定係数110-1、110-2、110-3が入力される。固定係数110-1、110-2、110-3は、上述のようにして予め求めておいた固定のタップ係数である。
【0019】
各セレクタ109には、外部より再生/評価値測定識別信号が供給される。この再生/評価値測定識別信号は、通常再生状態であるかキャリブレーション動作に伴う評価値測定状態であるかの別を表す信号である。
各セレクタ109は、上記再生/評価値測定識別信号により通常再生状態である旨が示される場合は、タップ係数更新処理部108から供給されたタップ係数を選択出力する。
一方、上記再生/評価値測定識別信号により評価値測定状態である旨が示される場合は、固定係数110としてのタップ係数を選択出力する。
これにより、通常再生時に対応しては、再生信号品質の改善が図られれるべく適応等化処理を行うことができ、一方で評価値測定時には、予め定められた固定のタップ係数による等化処理が行われることで、所望のPR等化が為され且つ記録条件の差が吸収されずに適正なキャリブレーション動作が行われるようにすることができる。
【0020】
確認のため、図8、図9に示した従来例としての構成により実現されるキャリブレーション時に対応した動作について、図10を参照して説明しておく。
この図10では、キャリブレーションに伴い、記録条件1、及び記録条件2としての2つの異なる記録条件について試し書きが行われる場合を例示している。
上述のように従来例においては、キャリブレーション動作時には固定のタップ係数が設定されるので、図のように記録条件1、記録条件2の何れの設定下においてもタップ係数の設定状態としては固定係数設定状態が維持される。
【0021】
また、図からも明らかなように、評価器102は、各記録条件の設定下において、マーク長ごとのエッジ位置誤差の測定、及び測定したエッジ位置誤差をマーク長ごとに平均化する動作を行う。これにより記録条件ごとに、マーク長ごとの評価値(平均評価値)を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
ところで、図9に示したイコライザ100において、等化処理の目標特性への等化精度(周波数・位相特性の分解能)は、FIRフィルタ100aのタップ数や、タップ係数のビット数(ビット幅)によって決定されるものとなる。すなわち、タップ数やタップ係数のビット数がより多ければ、目標特性への等化精度は向上し、逆に少なければ等化精度は低下する。
【0023】
一方で、特許文献1に開示されるdSAMなど、エッジ位置の誤差を表す評価値としては、ライトストラテジなどの記録パラメータの調整精度向上のために、場合によってはT/32やT/64(ここでTはチャネルビットを表す)といった非常に高い誤差検出精度が要求される。
このように高い誤差検出精度を実現するにあたっては、イコライザ100としては、PRML復号によるデータ再生で要求される等化精度よりも高い等化精度が得られるようにされる必要があり、これに伴い、FIRフィルタ100aのタップ数やタップ係数のビット数をデータ再生時に必要な分より増やすことが要求される。
【0024】
しかしながら、デジタルフィルタにおいて、タップ数やタップ係数のビット数の増加は、デバイスのコストアップを助長する。特に、タップ係数のビット数を増やした場合には、一般的に乗算器106としてのデジタル乗算回路の規模は入力ビット数の増加に対し2のべき乗で増加する点を考慮すると、大幅なコストアップを招いてしまうことになる。
【0025】
本発明は上記のような問題点に鑑み為されたものであり、デジタルフィルタにおける乗算器に設定可能なタップ係数のビット幅を拡張することなく、タップ係数を拡張した場合と等価な効果が得られるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題の解決のために、本発明では、フィルタ処理装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本発明のフィルタ処理装置は、デジタルフィルタを備えて入力信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理装置であって、タップ係数が可変設定される乗算器を備える。
また、上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を保持する目標タップ係数保持部を備える。
また、上記目標タップ係数における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定する係数択一設定部を備える。
その上で、上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするように上記係数択一設定部を制御する係数設定比率制御部を備えるものである。
【0027】
上記のようにして本発明では、デジタルフィルタを構成する乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数が多い数値とされた目標タップ係数を保持しておくようにしている。例えば、上記設定可能タップ係数が整数であるとすれば、小数点以下の数値も含む(よりビット数の多い)目標タップ係数を保持(設定)するものである。
そして、上記目標タップ係数としての数値における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定可能としている。これは、上記目標タップ係数の数値が例えば「1.4」であれば、「1」(設定可能桁部分数値)と「2」(最小桁値加算数値)とのうちの一方を乗算器に対し択一的に設定可能にするというものである。
その上で、上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値(例えば「2」)と上記設定可能桁部分数値(例えば「1」)との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするようにしている。例えば、上記目標タップ係数の値から上記設定可能桁部分数値を減算した値をXとしたとき、上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率は「X:1−X」に設定する。このことによると、上記例では「2」と「1」との設定比率は4:6とされる。
詳しくは後述するが、このようなタップ係数の時間軸上での可変設定が行われることで、当該フィルタ処理装置の後段にて先に説明した測定評価値の平均化処理のように少なくとも積分を伴う処理が行われる場合には、上記乗算器に対して上記目標タップ係数が設定された場合と等価な効果を得ることができる。すなわち、タップ係数のビット幅を上記設定可能タップ係数のビット幅よりも拡張したことと等価な効果が得られるようにできる。
これにより、例えば乗算器には整数によるタップ係数しか設定できない場合であっても、上記目標タップ係数としての小数部も含むタップ係数(よりビット数の多いタップ係数)を設定したフィルタ処理を行った場合と同等の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
上記のようにして本発明のフィルタ処理装置(フィルタ処理方法)によれば、その後段にて従来行われていた測定評価値の平均化処理のような少なくとも積分を伴う処理が行われる場合において、上記乗算器に対して上記目標タップ係数が設定された場合と等価な効果を得ることができ、つまりは、タップ係数のビット幅を設定可能タップ係数のビット幅よりも拡張したことと等価な効果が得られるようにできる。換言すれば、乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張せずとも、当該乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張したことと等価な効果を得ることができるものである。
【0029】
このようにして本発明のフィルタ処理装置によれば、フィルタ処理の精度向上が図られたことと等価な効果が得られるようにしつつ、デジタルフィルタのハードウエア規模の大幅な拡大、及びそれに伴う大幅なコストアップの防止を図ることができる。
【0030】
また、本発明の光記録媒体駆動装置(評価値測定方法)は、光記録媒体からの再生信号に対し上記本発明としてのフィルタ処理を施し、該フィルタ処理の施された再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定し且つ上記複数回測定された評価値を少なくとも積分するものである。
このような本発明の光記録媒体駆動装置によれば、乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張せずとも、当該乗算器に設定するタップ係数のビット幅を拡張した場合と同等の精度による評価値を得ることができる。
すなわち、このような本発明の光記録媒体駆動装置によれば、デジタルフィルタのハードウエア規模の大幅な拡大やそれに伴う大幅なコストアップの防止を図りつつ、評価値の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態としての光記録媒体駆動装置の内部構成を示した図である。
【図2】実施の形態としての光記録媒体駆動装置が備えるイコライザ(実施の形態としてのフィルタ処理装置)の内部構成を示した図である。
【図3】実施の形態としての評価値測定手法について説明するための図である。
【図4】実施の形態としてのタップ係数の可変設定動作によりエッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度の向上が図られる点について説明するための図である。
【図5】タップ係数設定部の内部構成を示した図である。
【図6】タップ係数設定部の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図7】変形例としてのタップ係数設定部の内部構成を示した図である。
【図8】PRML復号を行う光ディスクシステムにおいて再生信号のエッジ位置の誤差を表す評価値を得るための従来例としての構成を示した図である。
【図9】従来例としてのイコライザの内部構成を示した図である。
【図10】従来例としてのイコライザが評価値測定時に対応して行う動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.装置構成>
[1-1.ディスクドライブ装置の内部構成]
[1-2.イコライザの内部構成]
<2.実施の形態としての評価値測定手法>
[2-1.具体的な手法]
[2-2.タップ係数設定部の構成・動作]
[2-3.実施の形態のまとめ]
<3.変形例>
【0033】
<1.装置構成>
[1-1.ディスクドライブ装置の内部構成]
図1は、本発明の光記録媒体駆動装置の一実施形態としての、ディスクドライブ装置1の内部構成を示している。
なおこの図1ではディスクドライブ装置1における主に記録/再生、評価値測定に係る構成を抽出して示しており、例えばトラッキング・フォーカスなどの各種のサーボ系など他の構成については図示を省略している。
【0034】
図1において、光ディスクDは、円盤状の光記録媒体である。光記録媒体は、光の照射により記録信号の再生が行われる記録媒体を指す。
光ディスクDは、記録/再生時には図中のスピンドルモータ(SPM)2によって回転される。
【0035】
光学ヘッド3(光ピックアップ)は、レーザダイオードから出射したレーザ光を、所定の光学系により対物レンズを介して光ディスクDに照射する。また光学ヘッド3は、光ディスクDからの反射光を、所定の光学系を介してフォトディテクタに導き、反射光量に応じた電気信号を得る。また複数のフォトディテクタで検出された各光量信号に対して演算処理を行い、記録された情報の再生信号sA(再生RF信号)や、トラッキング、フォーカスなどの各種サーボエラー信号を生成する。
【0036】
記録時には、記録信号発生部8から記録信号DLが光学ヘッド3に供給される。記録信号DLは、光学ヘッド3内のレーザダイオードの駆動信号であり、レーザダイオードは記録信号DLに応じて発光駆動される。
記録時には、光ディスクDに記録しようとする記録データが、記録データエンコーダ9で、例えばRLL(1,7)変調等のエンコード処理が施され、そのエンコード信号DRが記録信号発生部8に供給される。記録信号発生部8では、エンコード信号DRに応じたレーザ駆動信号としての記録信号DLを生成する。
ここで、レーザ駆動信号としてのパルスレベルやパルス幅、パルスエッジタイミング等の、いわゆるライトストラテジ設定は、コントローラ10から指示される。つまり記録信号発生部8は、レーザを発光させる強度を設定する機能と、発光時間/タイミングを設定する機能を有しており、レーザ駆動信号としての記録信号DLを調整することで、光ディスクDに対する記録条件を調整することが可能とされている。
【0037】
再生時には、光学ヘッド3で読み出された再生信号sAは再生クロック生成/サンプリング部4に供給される。再生クロック生成/サンプリング部4では、PLL(Phase Locked Loop)回路を用いて再生信号sAに同期した再生クロックCKを生成し、また再生信号sAのデジタルサンプリングを行ってサンプリング信号(デジタル再生信号)DSを出力する。
上記再生クロックCKはイコライザ5、ビタビ復号器6、及び評価器11での処理に用いられる。
また上記サンプリング信号DSは、イコライザ5に対して供給される。
【0038】
イコライザ5は、FIR(Finit Impulse Response)フィルタ5aを備え、上記再生信号DSに対し所要の周波数特性を与えることで、PR(Partial Response)等化処理を行う。
本実施の形態のイコライザ5としても、先の従来例として説明したイコライザ100と同様に、データ再生時に対応して適応等化処理を行うようにされる。このためイコライザ5には、図示するようにビタビ復号器6による復号データDTが入力される。
なお、イコライザ5の内部構成については後述する。
【0039】
上記イコライザ5により等化処理が施された再生信号DS(以下、等化信号ykと称する)は、ビタビ復号器6、及び評価器11に対して供給される。
【0040】
ビタビ復号器6は、いわゆるビタビ復号処理により再生信号の2値化処理を行う。すなわち ビタビ復号器6は、上記イコライザ5での等化処理により再生信号DSが所定のPRクラスに適合するように波形整形された等化信号ykについて、該等化信号ykと、想定され得るビット系列のパーシャルレスポンスとの間のユークリッド距離を調べ、その距離が最も近くなるビット系列を検出結果として出力する。
【0041】
上記ビタビ復号器6による復号処理で得られた復号データ(2値データ列)DTは、再生データデコーダ7に供給され、RLL(1,7)変調等に対する復調処理やエラー訂正処理、デインターリーブなどの処理が施され、これによって復調された再生データが得られる。
【0042】
また、ビタビ復号器6から出力された復号データDTは、評価器11に対しても供給される。
評価器11は、上述した等化信号ykと、上記復号データDTと、再生クロックCKとに基づき、再生信号のエッジ位置の誤差を表す品質評価値を測定する。
具体的に、評価器11には、上記等化信号yk、再生クロックCK、復号データDTに基づきマーク長(記録マーク長)ごとに上記品質評価値を測定するマーク長ごと評価値測定部11aと、当該マーク長ごと評価値測定部11aによりマーク長ごとに測定された評価値をマーク長ごとに平均化する平均化部11bとが設けられている。
【0043】
この場合のマーク長ごと評価値測定部11aは、上記品質評価値を、上記等化信号ykのゼロクロスタイミングと上記再生クロックCKのエッジタイミングとの誤差として測定する。
具体的に、マーク長ごと評価値測定部11aは、上記等化信号ykのゼロクロス点ごとに、該ゼロクロス点のタイミングと上記再生クロックCKのエッジタイミングとの誤差を品質評価値として測定すると共に、上記復号データDTに基づき、測定した品質評価値をマーク長ごとに分けて格納する。
【0044】
なお確認のために述べておくと、上記のように測定した品質評価値を復号データDTに基づきマーク長ごとに分けるためには、上記マーク長ごと評価値測定部11aに対する等化信号ykと復号データDTとの入力タイミングを同期させることになる。このため実際には、マーク長ごと評価値測定部11aに対しては、上記等化信号ykが所定時間分(ビタビ復号の処理時間分)遅延されて入力されるように構成する。
【0045】
なお勿論、上記マーク長ごと評価値測定部11aとしては、上記エッジ位置の誤差を表す品質評価値として、先の特許文献1に記載されるようなdSAMを測定するように構成することもできる。
また特許文献1に記載されるように、評価値はマーク長のみではなくマーク長とスペース長との組み合わせごとに測定することもできる。
【0046】
また評価器11において、平均化部11bは、上記のようにしてマーク長ごと評価値測定部11aによりマーク長ごとに測定された品質評価値を、マーク長ごとに平均化する。具体的には、上述のようにしてマーク長ごとに分けて格納された品質評価値をそれぞれ平均化する。
評価器11により得られたマーク長ごとの品質評価値は、コントローラ10に対して供給される。
【0047】
コントローラ10は、CPU(Centeral Processing Unit)、ROM、RAMなどを有するマイクロコンピュータで構成される。コントローラ10は、上記ROM等に格納されたプログラムに従った制御・処理を実行することで、ディスクドライブ装置1の全体制御を行う。
特に本実施の形態の場合、コントローラ10は、上記評価器11により得られた品質評価値に基づき再生信号品質を評価し、その評価結果に応じて記録条件設定処理(ライトストラテジ設定)を行う。
【0048】
ここで、ライトストラテジの調整動作時には、コントローラ10は、記録データエンコーダ9に対する試し書きデータ(テストパターンデータ)の出力指示や、記録信号発生部8に対する記録波形の調整パラメータの指示を行って、記録条件を逐次変えながらの試し書き動作を実行させる。
そして、このように試し書きを行った箇所についての再生を実行させ、これに伴い評価器11にて測定(計算)される品質評価値を取得し、該取得した品質評価値に基づき記録条件ごとの再生信号品質評価を行い、その結果に基づき最適とされる記録条件の設定処理を行う。
【0049】
また、コントローラ10は、再生/評価値測定識別信号を生成・出力する。この再生/評価値測定識別信号は、通常のデータ再生が行われる状態にあるか、又は上記のようなライトストラテジの調整動作に伴い品質評価値の測定動作が行われる状態にあるかの別を表す信号となる。
図示するようにして再生/評価値測定識別信号は、イコライザ5に対して供給される。
【0050】
[1-2.イコライザの内部構成]
図2は、図1に示したイコライザ5の内部構成を示している。
なお図2ではイコライザ5の内部構成と共に図1に示したビタビ復号器6も併せて示している。
先ず、イコライザ5には、FIRフィルタ5aが備えられている。
FIRフィルタ5aには、図示するようにして入力信号として再生信号DSが与えられる。そしてFIRフィルタ5aには、上記再生信号DSを入力するラインに対して遅延回路15A、及び遅延回路15Bが挿入され、上記遅延回路15Aへの入力前の再生信号DSを分岐出力するタップT1、及び上記遅延回路15Aを経た再生信号DSを分岐出力するタップT2、さらに上記遅延回路15Bを経た再生信号DSを分岐出力するタップT3の計3つのタップが形成されている。
また、FIRフィルタ5aには、上記タップT1、T2、T3に対してそれぞれ対応するタップ係数を与えるための乗算器16-1、乗算器16-2、乗算器16-3が設けられている。
さらに、上記乗算器16-1、16-2、16-3による乗算結果を加算して、FIRフィルタ5aの出力信号である等化信号ykを得る加算器17が備えられる。
図示するようにして加算器17にて得られた等化信号ykは、ビタビ復号器6に対して供給される。
【0051】
ここで、本実施の形態のFIRフィルタ5aにおいては、各乗算器16に対し、整数によるタップ係数の設定のみが可能とされているとする。つまり各乗算器16のハードウエア規模は、整数によるタップ係数の設定のみを許容する規模とされている。
【0052】
また、イコライザ5には、タップ係数更新処理部18と、当該タップ係数更新処理部18により得られた適応等化用係数としてのタップ係数を上記乗算器16-1、16-2、16-3に設定するためのタップ係数設定部19-1、19-2、19-3が設けられている。
【0053】
図示するように上記タップ係数更新処理部18には、FIRフィルタ5aからの等化信号ykが入力されると共に、ビタビ復号器6による復号処理で得られた復号データDTが入力される。
タップ係数更新処理部18は、先に説明した適応等化処理を実現するために各乗算器16にそれぞれ設定されるべきタップ係数(適応等化用係数)を計算する。具体的にタップ係数更新処理部18は、上記復号データDTに対し例えば(1,2,2,1)などの所定のPR特性に基づく係数を重み付け加算して得た信号波形(パーシャルレスポンス系列)を目標波形として、該目標波形と等化信号ykの波形との誤差(つまり等化誤差)を計算し、該誤差を最小とするタップ係数を計算する。
【0054】
なお確認のために述べておくと、上記復号データDTに基づく上記等化誤差の計算が正しく行われるようにすべく、上記タップ係数更新処理部18に対して入力する等化信号ykについても、所定時間分(ビタビ復号の処理時間分)の遅延を与えるようにする。
【0055】
上記のようにしてタップ係数更新処理部18により計算されたタップ係数(乗算器16ごとのタップ係数)は、適応等化用係数として、タップ係数設定部19-1、19-2、19-3に対して供給される。確認のために述べておくと、乗算器16-1に設定されるべき適応等化用係数はタップ係数設定部19-1に、また乗算器16-2に設定されるべき適応等化用係数はタップ係数設定部19-2に、また乗算器16-3に設定されるべき適応等化用係数はタップ係数設定部19-3にそれぞれ供給される。
【0056】
タップ係数設定部19は、先に従来例として説明したタップ係数設定部109と同様に、再生/評価値測定識別信号が通常のデータ再生時である旨を示す場合には、タップ係数更新処理部18から供給された適応等化用係数を対応する乗算器16に対して出力する(設定する)。
つまり本実施の形態においても、通常のデータ再生時に対応しては適応等化処理が実行されるものであり、この点は従来例の場合と同様となる。
【0057】
ここで、本実施の形態としてのタップ係数設定部19の内部構成や、評価値測定時に対応して行われる動作については後述する。
【0058】
<2.実施の形態としての評価値測定手法>
[2-1.具体的な手法]
前述もしたように、エッジ位置の誤差を表す評価値としては、場合によってはT/32やT/64(Tはチャネルビットを表す)といった非常に高い誤差検出精度が要求される。
このように高い誤差検出精度を実現するにあたっては、イコライザ5としては、PRML復号によるデータ再生で要求される等化精度よりも高い精度が得られるようにされる必要がある。
このとき、イコライザ5による等化精度は、FIRフィルタ5aのタップ数やタップ係数のビット数に依存して決まり、従って上記のような高い誤差検出精度を実現するにあたっては、これらタップ数やタップ係数のビット数を増やせばよい。
【0059】
しかしながら前述の通り、タップ数やタップ係数のビット数を増加させた場合は、デバイスのコストアップが避けられないものとなる。特に、タップ係数のビット数を増やした場合には、一般的に乗算器16としてのデジタル乗算回路の規模は入力ビット数の増加に対し2のべき乗で増加する点を考慮すると、大幅なコストアップを招いてしまうことになる。
【0060】
また、高精度が要求されるのは評価値測定時のみであり、上記のようにタップ数やタップ係数のビット数を増加させてしまうと、通常のデータ再生時には等化処理がオーバースペックとなってしまい、その意味で無駄が生じると言える。
【0061】
そこで本実施の形態では、評価値測定時に対応して以下で説明するようなタップ係数の可変設定を行うようにすることで、FIRフィルタ5aのタップ係数のビット数を増加(ビット幅を拡張)させることなく、タップ係数のビット幅を拡張した場合と等価な効果が得られるようにする。
【0062】
図3は、上記タップ係数の可変設定動作を含む本実施の形態としての評価値測定手法について説明するための図である。
先ず、ライトストラテジ調整を行うにあたっては、先に説明したようにしてそれぞれ異なる記録条件の設定下での試し書きを行い、それら異なる記録条件が設定された下で記録された信号についての評価値測定を行うことになる。
この図3に示されるように、ここでは、記録条件1と記録条件2の2つの異なる記録条件により試し書きが行われる場合を例示している。
【0063】
ここで、先に説明した従来例においては、品質評価値の測定時には、タップ係数として予め定められた固定の係数を設定するものとしていた(図10を参照)。
すなわち、上記固定のタップ係数として、例えば予め光ディスクD上での適応等化処理のタップ係数収束結果を複数回且つ複数箇所で測定しておき、その結果を例外値排除(例えばソートして上下の値のいつくかを排除)及び平均化するなどして、所望のパーシャルレスポンス等化が為され且つ記録条件の差が吸収されないような係数を求めておき、評価値測定時にはこのように求められた固定のタップ係数を設定するというものである。
前述した通り、評価値測定時に対応してこのように予め定められた固定タップ係数を設定した等化処理を行う(つまり適応等化処理を行わない)ことで、記録条件の差が吸収されて適正なキャリブレーション動作とすることができなくなってしまうといったことの防止が図られる。
【0064】
本実施の形態においても、このように評価値測定時に対応して設定されるべき固定のタップ係数を予め求めておき、それを装置側に対して保持させておく点は従来例の場合と同様となる。
但し本実施の形態では、このように評価値測定時に対応して設定されるべき固定のタップ係数として、従来例の場合よりもさらに下桁側の数値を含むより詳細な値を装置に対して保持させておくものとする。
具体的に、例えば従来例においても乗算器(106)には整数によるタップ係数のみが設定可能とされていて、上記固定のタップ係数としてもその整数部の値のみを保持させていたと仮定すると、本実施の形態では、整数部の値と共に小数点以下の値も併せて保持させておくというものである。
【0065】
図3においては、上述のようにしてタップ係数の収束結果を実測するなどして予め求めたタップ係数が、例えば「1.4」であった場合を例示している。
本実施の形態では、このようにして予め求められたタップ係数を、目標係数として装置側に保持させておく。
【0066】
そして本実施の形態において、評価値測定時には、上記のようにして保持された目標係数をそのまま乗算器16に対して設定するものとはせず、上記目標係数の値に応じたタップ係数の可変設定を行う。
具体的に、本例の場合は乗算器16には整数によるタップ係数のみが設定可能とされているので、上記目標係数の数値に応じて、その整数部の値と、該整数部の値に対して「1」を加算した数値とを、時間軸上でのそれらの設定比率が上記目標係数の小数部の値に応じた設定比率となるようにして可変設定する。
【0067】
より具体的に、目標係数が上記「1.4」であるとすると、その整数部の値は「1」で該整数部の値に「1」を加算した値は「2」となる。これらの値を、その時間軸上での設定比率が上記目標係数の小数部の値に応じた設定比率となるようにして可変設定する。
【0068】
ここで、係数「2」と係数「1」とを時分割設定して等価的に「1.4」の係数が設定されたものとするためには、図示するようにして係数「2」と係数「1」との時間軸上での設定比率を4:6とすればよい。
本例においては、上記目標係数の整数部の値と該整数部の値に「1」を加算した値との時間軸上での設定比率を、次のように設定する。
すなわち、上記目標係数の整数部の値に「1」を加算した値をA、上記目標係数の整数部の値をB、上記目標係数の値からその整数部の値を減算した値(上記の例では「0.4」)をxとしたとき、
A:B=x:1−x
に設定するものである。
【0069】
このような設定比率による係数の可変設定は、図示するようにして記録条件ごとに独立して行うものである。つまりこの場合、1つの記録条件についての評価値測定期間を1つの単位期間として、該単位期間内における時間軸上の係数設定比率が上記の比率となるようにして上記A、Bの各係数の可変設定を行うものである。
【0070】
そして、このような係数A、Bの可変設定が行われる一方で、各記録条件についてのそれぞれの評価値測定期間には、先に説明した評価器11による品質評価値(エッジ位置誤差)の測定が行われる。具体的には、各記録条件についてのそれぞれの評価値測定期間において、マーク長ごとのエッジ位置誤差の測定、及び測定したエッジ位置誤差をマーク長ごとに平均化する動作が行われる。
【0071】
上記のようなタップ係数の可変設定動作を含む本実施の形態としての評価値測定手法によれば、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度は、タップ係数を上記目標係数に設定した場合と同等の精度とすることができる。
【0072】
図4は、この点について説明するためのイメージ図であり、図4(a)はイコライザ5による等化処理の目標特性のイメージを示し、図4(b)は上述した係数A(目標係数整数部+1の値)を設定した場合の等化処理後の波形イメージを示し、図4(c)は上述した係数B(目標係数整数部の値)を設定した場合の等化処理後の波形イメージを示している。
【0073】
ここで、目標係数が本来は小数点以下の数値を含むものであった場合、本例のように乗算器16に整数によるタップ係数しか設定できないことによっては、タップ係数の量子化誤差に伴う等化誤差が生じる。
この点に鑑みると、例えば図4(b)は、本来は「1.4」である目標係数に対してタップ係数「2」を設定した等化処理を行ったことにより等化誤差が生じた場合の波形イメージを示すものであるとも捉えることができる。同様にして図4(c)は、本来は「1.4」である目標係数に対してタップ係数「1」を設定した等化処理を行ったことにより等化誤差が生じた場合の波形イメージを示しているものと捉えることができる。
【0074】
そして、これら図4(b)、図4(c)と図4(a)とを対比して分かるように、上記のようなタップ係数量子化誤差に伴う等化誤差が生じる場合には、等化信号ykのエッジ位置(ゼロクロス位置)にも相応の誤差が生じるものとなる。つまりこの誤差により、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度が低下してしまうものである。
【0075】
このことからも理解されるように、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度を向上させるにあたっては、タップ係数の量子化誤差を低減する、すなわち等価的に上記目標係数を設定した等化処理が行われる状態を作り上げればよいということになる。
【0076】
上述した本実施の形態としての手法によれば、係数Aの設定下及び係数Bの設定下で測定されたエッジ位置誤差の値が平均化される。これは、図4(b)の波形について測定されたエッジ位置誤差の値と図4(c)の波形について測定されたエッジ位置誤差の値とが平均化されることに相当する。
このとき、本実施の形態では、係数Aと係数Bの時間軸上での設定比率を等価的に目標係数が設定された場合と同等となるように設定しているので、上記のように係数Aの設定下及び係数Bの設定下で測定されたエッジ位置誤差の値が平均化されることによっては、最終的に得られるエッジ位置誤差の値としては、目標係数を設定した場合と同等の数値とすることができる。つまりこれにより、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度は、小数点以下の数値も含む目標係数を設定した場合と同等の精度とすることができる。
【0077】
ところで、本実施の形態では、エッジ位置誤差としての品質評価値をマーク長ごとに測定するものとしている。
このとき、或る1つのマーク長について着眼してみると、仮に、そのマーク長の信号の出現頻度が係数Aの設定下、係数Bの設定下で大幅に異なっていたとすると、係数A、係数Bの何れか一方の係数設定時における測定結果が支配的となって、それにより評価値の測定精度を効果的に向上させることができなくなってしまう虞がある。
この点を考慮すると、1つの記録条件につき光ディスクDに対して記録するテストパターンデータとしては、各マーク長の信号についての係数Aの設定下での出現頻度と係数Bの設定下での出現頻度とが同等となるようにされていることが理想的となる。
このため本実施の形態では、ライトストラテジ調整のための試し書きデータとして用いられるテストパターンデータとして、各マーク長の信号がランダムに出現するようなランダムデータを採用するものとしている。これにより、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度のより効果的な向上が図られる。
【0078】
[2-2.タップ係数設定部の構成・動作]
上記により説明した本実施の形態としてのタップ係数可変設定動作は、先の図2に示したイコライザ5内のタップ係数設定部19により実現される。
図5は、タップ係数設定部19の内部構成を示している。
なお、この図5においては、図2に示した乗算器16も併せて示している。
【0079】
図5において、タップ係数設定部19には、セレクタ20が備えられる。
このセレクタ20に対しては、先の図2に示したタップ係数更新処理部18からの適応等化用係数が入力される。またセレクタ20には、その切換制御信号として、図1に示したコントローラ10からの再生/評価値測定識別信号が入力される。
当該セレクタ20は、先の図9に示した従来例としてのタップ係数設定部109が備えるセレクタ111と同様に、再生/評価値測定識別信号に基づき、適応等化用係数の設定/非設定を切り換えるためのセレクタとして機能する。
【0080】
また、本実施の形態のタップ係数設定部19には、評価値測定時に対応して乗算器16に設定されるべき係数を上記セレクタ20に対して与えるための構成として、目標係数保持部21、加算器22、セレクタ23、カウンタ24、及びコンパレータ25が備えられる。
先ず、目標係数保持部21には、目標係数として、先に説明したようにして予めタップ係数収束結果を実測するなどして求めておいたタップ係数が設定される。
本例の場合、目標係数は整数部の値と小数部の値とを有するので、目標係数保持部21には、これら目標係数の整数部の値と小数部の値とが保持されるものとなる。
【0081】
なお確認のために述べておくと、この図5では、実際には乗算器16-1〜16-3の各乗算器16ごとに対応して設けられるタップ係数設定部19-1〜19-3を、タップ係数設定部19として1つにまとめて示しているが、上記のようにして予め求められる目標係数は、乗算器16-1〜16-3の個々の乗算器16ごとに求められるものであり、従って上記目標係数保持部21にはこれらの目標係数のうち対応する1つの係数が保持されるものである。
【0082】
上記目標係数保持部21により保持される目標係数の整数部の値は、セレクタ23と加算器22とに供給される。加算器22は、上記目標係数の整数部の値に対して「1」を加算し、その加算結果をセレクタ23に対して出力する。
【0083】
一方、上記目標係数保持部21に保持された目標係数の小数部の値は、コンパレータ25に対して供給される。また、このコンパレータ25には、カウンタ24によるカウント値も供給される。カウンタ24は、0〜n−1(nは自然数)までのカウントを繰り返し行うフリーランカウンタとされる。
上記コンパレータ25の出力信号は、上記セレクタ23の切換制御信号として当該セレクタ23に対して供給される。
【0084】
上記セレクタ23による出力は、セレクタ20に対して供給される。
セレクタ20は、上記再生/評価値測定識別信号に基づき、上記セレクタ23による出力と上述した適応等化用係数とのうち何れか一方を乗算器16に対して択一的に出力する(設定する)。
具体的に、上記再生/評価値測定識別信号により通常のデータ再生時である旨が示される場合は、上記適応等化用係数を選択出力する。また、上記再生/評価値測定識別信号により評価値測定時である旨が示される場合は、上記セレクタ23による出力を選択出力する。
【0085】
図6は、図5に示すタップ係数設定部19の動作を説明するためのタイミングチャートであり、カウンタ24のカウント値(図中カウンタ)、コンパレータ25の出力(コンパレータ出力)、セレクタ23の出力(セレクタ出力)のそれぞれの時間軸上での遷移を示している。
【0086】
先ず、先に説明したようにカウンタ24は、0〜n−1までのカウントを繰り返し行う。図示するようにカウンタ24は、0〜n−1までのカウントを、1記録条件についての評価値測定期間内にて行うようにされている。換言すれば、カウンタ24によるカウント周期は、1記録条件についての評価値測定期間をn等分した周期となるようにされているものである。
本例の場合、1記録条件についての評価値測定期間(つまり1記録条件につき行われる試し書きの記録長)は所定の長さに定められており、従って該期間長に基づき、例えば再生クロックCKを逓倍して上記評価値測定期間の1/n周期のクロックを生成し、これをカウンタ24の動作クロックとして与えるものとしている。これによりカウンタ24は、1記録条件についての評価値測定期間において0〜n−1までのカウントを行うようにされている。
【0087】
ここで、本例においては、目標係数として小数点第1位までの数値の設定を許容する場合を例示している。このことに対応して、上記nの値としては「10」を設定し、上記カウンタ24には1記録条件についての評価値測定期間において0〜9までのカウントを行わせるものとしている。
【0088】
図5に示したように、コンパレータ25に対しては、カウンタ24のカウント値と目標係数の小数部の値とが入力される。すなわち、上記のようにして1記録条件についての評価値測定期間内に0〜9の間で変化するカウント値と、例えば先に例示した目標係数=「1.4」の場合にはその小数部の値である「4」とが入力されるものである。
このとき、上記目標係数の小数部の値を「i」とおくと、コンパレータ25は、上記カウント値が「i」未満であるときと「i」以上であるときとで出力信号のレベルをH/Lで切り換えるように動作する。すなわち、上記目標係数=「1.4」の例で言えば、カウンタ24のカウント値が「4」未満/以上の別に応じて出力信号のレベルをH/Lで切り換えるものである。
【0089】
また一方で、先に説明したように上記コンパレータ25による出力信号は、セレクタ23の切換制御信号となるものであり、従ってセレクタ23は、上記カウント値が「i」未満であるときと「i」以上であるときとで、目標係数の整数部+1の値による係数(係数A)の出力と、目標係数の整数部の値による係数(係数B)の出力とを切り換えることになる。
【0090】
図6に例示されているように、本例の場合、上記コンパレータ25は、カウンタ24のカウント値が「i」未満のときは出力信号をHレベルとし、上記カウント値が「i」以上であるときは出力信号をLレベルとするように構成されている。
また上記セレクタ23は、コンパレータ25による出力信号がHレベルのときは目標係数の整数部+1の値による係数を選択出力し、上記出力信号がLレベルのときは目標係数の整数部の値による係数を選択出力するように構成されている。
つまりこれにより、セレクタ23からセレクタ20に対しては、上記カウント値が「i」未満のときは目標係数の整数部+1の値としての係数Aが与えられ、上記カウント値が「i」以上のときは目標係数の整数部の値としての係数Bが与えられるようになっている。従って、評価値測定時において乗算器16に対しては、上記カウント値が「i」未満のときは係数Aが、上記カウント値が「i」以上のときは係数Bが設定されることになる。
【0091】
このようにして図5に示したタップ係数設定部19によれば、評価値測定時において、乗算器16に対する係数Aと係数Bとの時間軸上での設定比率を、目標係数の小数部の値に応じて設定できる。具体的に、目標係数の値からその整数部の値を減算した値をxとしたとき、係数A:係数Bによる比率を「x:1−x」に設定できる。
【0092】
なお、上記の例では目標係数として小数点第1位の数値までの設定を許容するものとして、n=10に設定する場合を例示したが、例えば小数点第2位の数値までの設定を許容するなど、目標係数の下桁側の桁数が増える場合には、それに応じてnの桁数を増やすものとすればよい。例えば目標係数が「1.45」である場合には、n=100として1記録条件についての評価値測定期間に0〜99のカウントが行われるようにする。このときi=45であることから、係数A:係数Bの時間軸上での設定比率は45:55(x:1−x=0.45:0.55)に設定されることになる。
【0093】
[2-3.実施の形態のまとめ]
上記のようにして本実施の形態によれば、タップ係数のビット幅を拡張することなく、タップ係数のビット幅を拡張した場合と等価な効果を得ることができる。具体的には、タップ係数のビット幅を拡張することなく、エッジ位置誤差としての品質評価値の測定精度の向上を図ることができる。
つまり本実施の形態によれば、タップ係数のビット幅の拡張によるFIRフィルタ5aのハードウエア規模の大幅な拡大、及びそれに伴う大幅なコストアップの防止を図りつつ、等化処理精度の向上が図られたことと等価な効果、具体的にはエッジ位置の誤差としての品質評価値の測定精度の向上効果を得ることができる。
【0094】
また、上記のように品質評価値の測定精度の向上が図られれば、当該品質評価値を利用して行われるライトストラテジなどの記録波形調整パラメータの調整動作の精度向上も図られる。
【0095】
また、本実施の形態は、タップ係数のビット幅の拡張により評価値の測定精度の向上を図るものではないので、通常のデータ再生時における等化処理がオーバースペックとなってその点での無駄が生じてしまうといったことが無いようにできる。
【0096】
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、タップ係数設定部19の構成については、次の図7のように変更することもできる。
図7において、この場合のタップ係数設定部19では、先の図5に示した加算器22が省略される。またこの場合、図5に示した係数保持部21に代えて、目標係数の整数部の値(係数B)を保持する係数保持部30、目標係数の整数部+1の値(係数A)を保持する係数保持部31、及び目標係数の小数部の値を保持する係数保持部32が設けられる。
セレクタ23に対しては、上記係数保持部31が保持する係数Aと上記係数保持部30が保持する係数Bとが入力される。この場合のセレクタ23は、コンパレータ25の出力信号に基づき、上記係数Aと係数Bのうちの何れか一方を択一的にセレクタ20に対して出力する。
また、この場合のコンパレータ25には、カウンタ24のカウント値と共に上記係数保持部32が保持する目標係数の小数部の値が入力される。この場合もカウンタ24、コンパレータ25の動作は、先の図6にて説明したものと同様となる。
【0097】
また、これまでの説明において、先の図3では、1つの記録条件についての評価値測定期間内において、係数Aを比率xに応じた期間連続して設定した後、残りの期間係数Bを連続して設定する場合を例示したが、本発明においては、係数Aと係数Bの時間軸上での設定比率が結果的にx:x−1(設定可能最小桁未満数値に応じた比率)となるようにされていればよく、係数A、Bの設定の順序やそれらの切換タイミングについては特に限定されるべきものではない。
【0098】
また、これまでの説明では、イコライザ5による等化処理にFIRフィルタ5aを用いる場合を例示したが、これに代えてIIRフィルタを用いることもできる。
また、これまでの説明において例示したタップ数やタップ係数の桁数(ビット幅)などの数値はあくまで一例を挙げたものに過ぎず、それらに限定されるべきものではない。
【0099】
また、これまでの説明では、等化信号ykに基づいて測定した品質評価値を平均化する場合を例示したが、品質評価値の精度向上が図られるようにするにあたっては、測定した品質評価値を少なくとも積分するものとすればよい。
【0100】
また、これまでの説明では、イコライザ5のフィルタ処理により得られた等化信号ykに基づき、再生信号のエッジ位置の誤差を表す品質評価値を測定する場合を例示したが、本発明における評価部としては、上記イコライザ5などのフィルタ処理部によりフィルタ処理の施された再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定し、且つ複数回測定した評価値を少なくとも積分するものであればよい。
【0101】
また、これまでの説明では、本発明のフィルタ処理装置が、光記録媒体のドライブ装置に適用される場合を例示したが、本発明のフィルタ処理装置としては他の装置に対しても広く好適に適用することができる。
本発明のフィルタ処理装置によれば、当該フィルタ処理装置によるフィルタ処理後の信号についての上述のような単位時間あたりの複数回の評価値の測定、及びこのように複数回測定された評価値についての少なくとも積分が行われる場合に対応して、タップ係数のビット幅を拡張したことと等価な効果が得られるようにできる。
【符号の説明】
【0102】
1 ディスクドライブ装置、2 スピンドルモータ、3 光学ヘッド、4 再生クロック生成/サンプリング部、5 イコライザ、5a FIRフィルタ、6 ビタビ復号器、7 再生データデコーダ、8 記録信号発生部、9 記録データエンコーダ、10 コントローラ、11 評価器、11a マーク長ごと評価値測定部、11b 平均化部、15A,15B 遅延回路、16-1〜16-3 乗算器、17,22 加算器、18 タップ係数更新処理部、19-1〜19-3 タップ係数設定部、20,23 セレクタ、21 目標係数保持部、24 カウンタ、25 コンパレータ、30,31,32 係数保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルフィルタを備えて入力信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理装置であって、
タップ係数が可変設定される乗算器と、
上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を保持する目標タップ係数保持部と、
上記目標タップ係数における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定する係数択一設定部と、
上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするように上記係数択一設定部を制御する係数設定比率制御部と
を備えるフィルタ処理装置。
【請求項2】
上記係数設定比率制御部は、
上記目標タップ係数の値から上記設定可能桁部分数値を減算した値をXとしたとき、上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率をX:1−Xとするように制御を行う
請求項1に記載のフィルタ処理装置。
【請求項3】
デジタルフィルタを備えて入力信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理装置におけるフィルタ処理方法であって、
上記デジタルフィルタに備えられる乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数における、上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とを、上記乗算器に対し、その時間軸上での設定比率が上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率となるようにして設定する
フィルタ処理方法。
【請求項4】
光記録媒体に対するレーザ光の照射及び反射光の受光を行って上記光記録媒体に記録された信号についての再生信号を得る光学ヘッド部と、
デジタルフィルタを備えて上記再生信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理部であって、
タップ係数が可変設定される乗算器と、
上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を保持する目標タップ係数保持部と、
上記目標タップ係数における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定する係数択一設定部と、
上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするように上記係数択一設定部を制御する係数設定比率制御部と
を備えるフィルタ処理部と、
上記フィルタ処理部によりフィルタ処理の施された上記再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定すると共に、上記複数回測定した品質評価値を少なくとも積分する評価部と
を備える光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
上記評価部は、
上記品質評価値として、上記再生信号のエッジ位置の誤差を表す評価値を測定する
請求項4に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項6】
上記評価部は、
上記エッジ位置の誤差を表す評価値を少なくとも記録マーク長ごとに測定する
請求項5に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項7】
上記評価部は、
少なくとも上記記録マーク長ごとに測定した上記エッジ位置の誤差を表す評価値を、少なくとも上記記録マーク長ごとに平均化する
請求項6に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項8】
上記係数設定比率制御部は、
上記目標タップ係数の値から上記設定可能桁部分数値を減算した値をXとしたとき、上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率をX:1−Xとするように制御を行う
請求項4に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項9】
光記録媒体に対するレーザ光の照射及び反射光の受光を行って上記光記録媒体に記録された信号についての再生信号を得る光学ヘッド部と、デジタルフィルタを備えて上記再生信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理部とを備えた光記録媒体駆動装置における評価値測定方法であって、
上記デジタルフィルタに備えられる乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数における、上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とを、上記乗算器に対し、その時間軸上での設定比率が上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率となるようにして設定するタップ係数設定手順と、
上記タップ係数設定手順によるタップ係数の設定が行われた上記フィルタ処理部によってフィルタ処理の施された上記再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定すると共に、上記複数回測定した品質評価値を少なくとも積分する評価手順と
を有する評価値測定方法。
【請求項1】
デジタルフィルタを備えて入力信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理装置であって、
タップ係数が可変設定される乗算器と、
上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を保持する目標タップ係数保持部と、
上記目標タップ係数における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定する係数択一設定部と、
上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするように上記係数択一設定部を制御する係数設定比率制御部と
を備えるフィルタ処理装置。
【請求項2】
上記係数設定比率制御部は、
上記目標タップ係数の値から上記設定可能桁部分数値を減算した値をXとしたとき、上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率をX:1−Xとするように制御を行う
請求項1に記載のフィルタ処理装置。
【請求項3】
デジタルフィルタを備えて入力信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理装置におけるフィルタ処理方法であって、
上記デジタルフィルタに備えられる乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数における、上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とを、上記乗算器に対し、その時間軸上での設定比率が上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率となるようにして設定する
フィルタ処理方法。
【請求項4】
光記録媒体に対するレーザ光の照射及び反射光の受光を行って上記光記録媒体に記録された信号についての再生信号を得る光学ヘッド部と、
デジタルフィルタを備えて上記再生信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理部であって、
タップ係数が可変設定される乗算器と、
上記乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数を保持する目標タップ係数保持部と、
上記目標タップ係数における上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とについて、それらのうちの一方を択一的に出力して上記乗算器に設定する係数択一設定部と、
上記乗算器に対する上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率を、上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率とするように上記係数択一設定部を制御する係数設定比率制御部と
を備えるフィルタ処理部と、
上記フィルタ処理部によりフィルタ処理の施された上記再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定すると共に、上記複数回測定した品質評価値を少なくとも積分する評価部と
を備える光記録媒体駆動装置。
【請求項5】
上記評価部は、
上記品質評価値として、上記再生信号のエッジ位置の誤差を表す評価値を測定する
請求項4に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項6】
上記評価部は、
上記エッジ位置の誤差を表す評価値を少なくとも記録マーク長ごとに測定する
請求項5に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項7】
上記評価部は、
少なくとも上記記録マーク長ごとに測定した上記エッジ位置の誤差を表す評価値を、少なくとも上記記録マーク長ごとに平均化する
請求項6に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項8】
上記係数設定比率制御部は、
上記目標タップ係数の値から上記設定可能桁部分数値を減算した値をXとしたとき、上記最小桁値加算数値と上記設定可能桁部分数値との時間軸上での設定比率をX:1−Xとするように制御を行う
請求項4に記載の光記録媒体駆動装置。
【請求項9】
光記録媒体に対するレーザ光の照射及び反射光の受光を行って上記光記録媒体に記録された信号についての再生信号を得る光学ヘッド部と、デジタルフィルタを備えて上記再生信号に対してフィルタ処理を施すフィルタ処理部とを備えた光記録媒体駆動装置における評価値測定方法であって、
上記デジタルフィルタに備えられる乗算器に設定可能な設定可能タップ係数よりも下桁側の桁数の多い数値とされた目標タップ係数における、上記設定可能タップ係数の最小桁以上となる部分の数値である設定可能桁部分数値と、当該設定可能桁部分数値に対してその最小桁の値に1を加算した最小桁値加算数値とを、上記乗算器に対し、その時間軸上での設定比率が上記目標タップ係数における上記設定可能桁部分よりも下桁側となる部分の数値である設定可能最小桁未満数値に応じた設定比率となるようにして設定するタップ係数設定手順と、
上記タップ係数設定手順によるタップ係数の設定が行われた上記フィルタ処理部によってフィルタ処理の施された上記再生信号に基づき、信号品質の評価指標となる品質評価値を単位時間あたりに複数回測定すると共に、上記複数回測定した品質評価値を少なくとも積分する評価手順と
を有する評価値測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−44798(P2011−44798A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190124(P2009−190124)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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