説明

フィルタ回路および該フィルタ回路を備えたスイッチング電源装置

【課題】放電抵抗が電力を消費し続けるのを防ぐことができるフィルタ回路を提供する。
【解決手段】本発明に係るフィルタ回路1Aは、外部から交流電圧VACが入力される一対の電源ライン10a、11に重畳するノイズを除去するフィルタ回路であって、電源ライン10aから分岐した分岐ライン10bと、分岐ライン10bと電源ライン11の少なくともいずれか一方に介装されたスイッチ2と、分岐ライン10bと電源ライン11との間に接続され、少なくとも1つのスイッチ2を介して交流電圧VACが入力される第1コンデンサC2と、第1コンデンサC2と並列に接続された第1放電抵抗R2と、スイッチ2を上記ノイズの状態に応じて開閉する制御手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源装置のトランス一次側電源ラインに備えられ、該一次側電源ラインのノイズを除去するフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スイッチング電源装置は一対の一次側電源ライン(以下、単に「電源ライン」という)を備え、この電源ラインを介して外部からの交流電圧(例えば、商用交流電圧)が入力される。また、スイッチング電源装置はフィルタ回路を備え、このフィルタ回路で電源ラインに重畳するノイズを除去することにより、所定のEMI規格を満足するよう構成されている。
【0003】
例えば、図5に示すスイッチング電源装置は、電源ライン10a、11を分岐して交流電圧VACが負荷回路6にも入力されるようにし、当該負荷回路6と、スイッチング回路部4によって駆動される負荷回路5とを動作させるもので、フィルタ回路1Dを備えている。同図に示すように、フィルタ回路1Dは、コモンモードノイズを除去するための2つのコモンモードチョークL1、L2および2つのアクロス・ザ・ライン・コンデンサ(以下「Xコンデンサ」という)C1、C5と、ノーマルモードノイズを除去するための2つのライン・バイパス・コンデンサ(以下「Yコンデンサ」という)C3、C4とを備えている。また、フィルタ回路1Dは、ノーマルモードノイズを除去するために不図示のノーマルモードチョークを備える場合もある。フィルタ回路を構成する各要素は、どのようなノイズをどの程度除去するのかに応じて、適宜組み合わせて使用される(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
また、フィルタ回路1Dは、XコンデンサC1に並列に接続された放電抵抗R1と、XコンデンサC5に並列に接続された放電抵抗R3とを備えている。放電抵抗R1、R3は入力端子12、13間に残留電圧が発生するのを防止するためのもので、交流電圧VACの入力が停止した後、XコンデンサC1、C5を速やかに放電させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ノイズ対策応用技術」、ノイズ対策応用技術編集委員会、研良社、平成16年1月17日、p.110
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、地球環境保護の観点から、各種電気機器の省エネルギー化が求められており、特に、スイッチング電源装置については軽負荷時の消費電力の低減が強く求められている。しかしながら、図5に示す従来のスイッチング電源装置では、フィルタ回路1Dの放電抵抗R1、R3が常に電力を消費しており、低消費電力化の妨げとなっていた。
【0007】
ここで、放電抵抗R1、R3の抵抗値を大きくすれば、放電抵抗R1、R3による電力消費を容易に低減できるとも考えられる。しかしながら、XコンデンサC1、C5の放電時間を遅くすることなく、すなわち、時定数を変化させずに放電抵抗R1、R3の抵抗値を大きくするためにはXコンデンサC1、C5の容量値を小さくする必要がある。また、XコンデンサC1、C5の容量値を小さくすると、EMI規格を満足するのが困難になる。したがって、放電抵抗R1、R3の抵抗値を大きくすることによる消費電力の低減には限界があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、放電抵抗が電力を消費し続けるのを防ぐことができるフィルタ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ回路は、外部から交流電圧が入力される一対の電源ラインに重畳するノイズを除去するフィルタ回路であって、一対の電源ラインの一方から分岐した分岐ラインと、分岐ラインと一対の電源ラインの他方の少なくともいずれか一方に介装されたスイッチと、分岐ラインと一対の電源ラインの他方との間に接続され、少なくとも1つのスイッチを介して交流電圧が入力される第1コンデンサと、第1コンデンサと並列に接続された第1放電抵抗と、スイッチをノイズの状態に応じて開閉する制御手段とを有することを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、第1コンデンサおよび第1放電抵抗は、一対の電源ライン間ではなく、一対の電源ラインの一方から分岐した分岐ラインと一対の電源ラインの他方との間に接続されている。このため、一対の電源ラインに重畳するノイズが比較的大きい場合には、スイッチを閉止して第1コンデンサを実質上、一対の電源ライン間に接続(分岐ラインは一対の電源ラインの一方から分岐している)することで、第1コンデンサによりノイズを除去する一方で、一対の電源ラインに重畳するノイズが比較的小さい場合には、スイッチを開放して第1放電抵抗を一対の電源ライン間に接続されないようにすることで、第1放電抵抗による電力損失を削減することができる。
【0011】
また、本発明に係るスイッチング電源装置は、上記のフィルタ回路と、一対の電源ラインから出力される交流電圧を整流して直流電圧を生成する整流回路部と、直流電圧をスイッチングするスイッチング回路部とを備え、制御手段は、スイッチング回路部が通常動作モードにあるときは、スイッチを閉止する一方、省エネルギー動作モードにあるときは、スイッチを開放することを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、スイッチング回路部によるスイッチングノイズが比較的小さく、コンデンサによるノイズ除去の要請が低い省エネルギー動作モードではスイッチを開放し、第1コンデンサに交流電圧が印加されないようにして、第1放電抵抗による電力損失を削減することができる。一方、スイッチングノイズが比較的大きい通常動作モードではスイッチを閉止し、第1コンデンサによりスイッチングノイズを低減することができる。
【0013】
ここで、上記のフィルタ回路は、整流回路部の入力側において、一対の電源ライン間に接続された第2コンデンサと、一対の電源ライン間に第2コンデンサと並列に接続された第2放電抵抗とをさらに有するように構成することが好ましい。この構成によれば、ノイズが比較的大きく、EMI対策のために容量値の大きなコンデンサが必要な場合はスイッチを閉止して第1コンデンサおよび第2コンデンサを併用するが、ノイズが比較的小さく、容量値が比較的小さいコンデンサでも十分なEMI対策が可能な場合は、スイッチを開放して第1コンデンサを不使用とすることで、第1放電抵抗が電力を消費し続けるのを防ぐことができる。
【0014】
上記発明の使用態様として、例えば次のような2つの態様が考えられる。第1の態様は、分岐ラインの出力にヒーターが接続され、制御手段は、画像印刷装置からのプリント出力時を通常動作モードとしてスイッチを閉止する一方、画像印刷装置からプリント出力しない待機時を省エネルギー動作モードとしてスイッチを開放することを特徴とする、画像印刷装置の電源として機能するスイッチング電源装置である。第2の態様は、分岐ラインの出力がメイン電源部に接続される一方、スイッチング回路部をサブ電源部として機能させることを特徴とするスイッチング電源装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放電抵抗が電力を消費し続けるのを防ぐことができるフィルタ回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るフィルタ回路を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るフィルタ回路を示す回路図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係るフィルタ回路を示す回路図である。
【図4】雑音端子電圧の測定結果を示すグラフであって、(A)は第2実施形態に係るフィルタ回路の雑音端子電圧、(B)は従来のフィルタ回路の雑音端子電圧である。
【図5】従来のフィルタ回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフィルタ回路の好ましい実施形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係るフィルタ回路1Aを備えたスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、外部からの交流電圧VACを入力するための一対の電源ライン10a、11と、該電源ライン10a、11に重畳するノイズを除去するためのフィルタ回路1Aと、ノイズが除去された後の交流電圧を整流する整流回路部3と、整流された後の電圧をスイッチングして負荷回路5に供給すべき所定の直流電圧を生成するスイッチング回路部4とを備えている。
【0019】
同図に示すように、電源ライン10aは、入力端子12とコモンモードチョークL1との間で整流回路部3に向かうライン(電源ライン10a)と負荷回路6に向かうライン(以下、「分岐ライン10b」という)とに分岐している。これにより、このスイッチング電源装置は、負荷回路5、6の双方を動作させることができる。なお、このスイッチング電源装置は、例えば画像印刷装置の電源として機能する。この場合、負荷回路5は該画像印刷装置の制御基板であり、負荷回路6はプリント出力時に発熱するヒーターである。
【0020】
フィルタ回路1Aは、電源ライン10a、11に介装されたコモンモードチョークL1と、電源ライン10aおよび電源ライン11の間に接続されたXコンデンサC1(本発明の「第2コンデンサ」に相当)と、XコンデンサC1に並列に接続された放電抵抗R1(本発明の「第2放電抵抗」に相当)とを備えている。このうち、コモンモードチョークL1およびXコンデンサC1は、電源ライン10a、11に重畳するコモンモードノイズを除去するためのものである。また、放電抵抗R1は、交流電圧VACの入力が停止した後、XコンデンサC1を速やかに放電させて、入力端子12、13間に残留電圧が発生するのを防止するためのものである。
【0021】
フィルタ回路1Aは、分岐ライン10bに介装され、不図示の制御手段からの指令信号により閉止状態または開放状態とされるスイッチ2と、一端が電源ライン11に接続され、他端が分岐ライン10bに接続されたXコンデンサC2(本発明の「第1コンデンサ」に相当)と、XコンデンサC2に並列に接続された放電抵抗R2(本発明の「第1放電抵抗」に相当)とをさらに備えている。XコンデンサC2および放電抵抗R2は、スイッチ2が閉止状態となっている場合に限り、スイッチ2を介して電源ライン10aに接続される。
【0022】
つまり、本実施形態に係るフィルタ回路1Aでは、スイッチ2が閉止状態となっている場合に限って、XコンデンサC2および放電抵抗R2に外部からの交流電圧VACが入力される。そして、XコンデンサC2は、XコンデンサC1とともに電源ライン10a、11に重畳するコモンモードノイズを除去する。また、放電抵抗R2は、交流電圧VACの入力が停止するかまたはスイッチ2がオフ状態となって、XコンデンサC2に交流電圧VACが入力されなくなった後、XコンデンサC2を速やかに放電させる。
【0023】
より詳しくは、負荷回路5および負荷回路6を動作させる通常動作モード時は、スイッチング回路部4のスイッチングノイズが増大するために、電源ライン10a、11に重畳するノイズが比較的大きくなるので、スイッチ2を閉止状態とする指令信号が入力され、コモンモードチョークL1およびXコンデンサC1、C2で電源ライン10a、11に重畳するノイズを除去する。また、この場合は、放電抵抗R1のみならず放電抵抗R2にも交流電圧VACが入力されるので、放電抵抗R1および放電抵抗R2の双方で無駄な電力消費がなされる。
【0024】
一方、負荷回路5および/または負荷回路6が待機状態になる等した省エネルギーモード時は、電源ライン10a、11に重畳するノイズが比較的小さくなるので、スイッチ2を開放状態とする指令信号が入力され、コモンモードチョークL1およびXコンデンサC1だけでノイズを除去する。また、この場合は、放電抵抗R1には交流電圧VACが入力されるが、放電抵抗R2には交流電圧VACが入力されないので、放電抵抗R2が無駄な電力を消費し続けるのを防ぐことができる。
【0025】
[第2実施形態]
図2に、本発明の第2実施形態に係るフィルタ回路1Bを備えたスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、フィルタ回路1Bを備えている点において図1のスイッチング電源装置と異なっているが、それ以外の部分については図1のスイッチング電源装置と構成が共通している。
【0026】
なお、本実施形態に係るスイッチング電源装置は、例えば画像印刷装置の電源として機能する。この場合、負荷回路5は該画像印刷装置の制御基板であり、負荷回路6はプリント出力時に発熱するヒーターである。
【0027】
同図に示すように、フィルタ回路1Bは、電源ライン10a、11に介装された2つのコモンモードチョークL1、L2と、電源ライン10aおよび電源ライン11の間に接続されたXコンデンサC1(本発明の「第2コンデンサ」に相当)と、XコンデンサC1に並列に接続された放電抵抗R1(本発明の「第2放電抵抗」に相当)と、一端が電源ライン10aに接続され、他端が接地されたYコンデンサC3と、一端が電源ライン11に接続され、他端が接地されたYコンデンサC4とを備えている。このうち、コモンモードチョークL1、L2およびXコンデンサC1は、電源ライン10a、11に重畳するコモンモードノイズを除去するためのもので、YコンデンサC3、C4は、電源ライン10a、11に重畳するノーマルモードノイズを除去するためのものである。また、放電抵抗R1は、交流電圧VACの入力が停止した後、XコンデンサC1を速やかに放電させて、入力端子12、13間に残留電圧が発生するのを防止するためのものである。
【0028】
フィルタ回路1Bは、分岐ライン10bに介装され、不図示の制御手段からの指令信号により閉止状態または開放状態とされるスイッチ2と、一端が電源ライン11に接続され、他端が分岐ライン10bに接続されたXコンデンサC2(本発明の「第1コンデンサ」に相当)と、XコンデンサC2に並列に接続された放電抵抗R2(本発明の「第1放電抵抗」に相当)とをさらに備えている。XコンデンサC2および放電抵抗R2は、スイッチ2が閉止状態となっている場合に限り、スイッチ2を介して電源ライン10aに接続される。
【0029】
この構成においても、負荷回路5および負荷回路6を動作させる通常動作モード時は、スイッチング回路部4のスイッチングノイズが増大するために、電源ライン10a、11に重畳するノイズが比較的大きくなるので、スイッチ2を閉止状態とする指令信号が入力され、コモンモードチョークL1、L2およびXコンデンサC1、C2で電源ライン10a、11のノイズを除去する。また、この場合は、放電抵抗R1のみならず放電抵抗R2にも交流電圧VACが入力されるので、放電抵抗R1および放電抵抗R2の双方で無駄な電力消費がなされる。
【0030】
一方、負荷回路5および/または負荷回路6が待機状態になる等した省エネルギーモード時は、電源ライン10a、11に重畳するノイズが比較的小さくなるので、スイッチ2を開放状態とする指令信号が入力され、コモンモードチョークL1、L2およびXコンデンサC1だけでコモンモードノイズを除去する。また、この場合は、放電抵抗R1には交流電圧VACが入力されるが、放電抵抗R2には交流電圧VACが入力されないので、放電抵抗R2が無駄な電力を消費し続けるのを防ぐことができる。
【0031】
[第3実施形態]
図3に、本発明の第3実施形態に係るフィルタ回路1Cを備えたスイッチング電源装置を示す。このスイッチング電源装置は、外部からの交流電圧VACを入力するための一対の電源ライン10a、11と、該電源ライン10a、11に重畳するノイズを除去するためのフィルタ回路1Cと、ノイズが除去された後の交流電圧を整流する2つの整流回路部3、7と、整流回路部3によって整流された後の電圧をスイッチングして負荷回路5に供給すべき所定の直流電圧を生成するスイッチング回路部4と、整流回路部7によって整流された後の電圧をスイッチングして負荷回路9に供給すべき所定の直流電圧を生成するスイッチング回路部8とを備えている。
【0032】
同図に示すように、電源ライン10aは、入力端子12側から見て2つ目のコモンモードチョークL2と整流回路部3の間で整流回路部3に向かうライン(電源ライン10a)と整流回路部7に向かうライン(分岐ライン10b)とに分岐している。これにより、このスイッチング電源装置は、負荷回路5、9の双方を動作させることができる。なお、このスイッチング電源装置は、例えば画像印刷装置の電源として機能する。この場合、負荷回路5は該画像印刷装置のサブ基板であり、スイッチング回路部4はサブ電源部である。また、負荷回路9は該画像印刷装置のメイン基板であり、スイッチング回路部8はメイン電源部である。
【0033】
フィルタ回路1Cは、電源ライン10a、11に介装された2つのコモンモードチョークL1、L2と、電源ライン10aおよび電源ライン11の間に接続されたXコンデンサC1(本発明の「第2コンデンサ」に相当)と、XコンデンサC1に並列に接続された放電抵抗R1(本発明の「第2放電抵抗」に相当)と、一端が電源ライン10aに接続され、他端が接地されたYコンデンサC3と、一端が電源ライン11に接続され、他端が接地されたYコンデンサC4とを備えている。このうち、コモンモードチョークL1、L2およびXコンデンサC1は、電源ライン10a、11に重畳するコモンモードノイズを除去するためのもので、YコンデンサC3、C4は、電源ライン10a、11に重畳するノーマルモードノイズを除去するためのものである。また、放電抵抗R1は、交流電圧VACの入力が停止した後、XコンデンサC1を速やかに放電させて、入力端子12、13間に残留電圧が発生するのを防止するためのものである。
【0034】
フィルタ回路1Cは、分岐ライン10bに介装され、不図示の制御手段からの指令信号により閉止状態または開放状態とされるスイッチ2と、一端が電源ライン11に接続され、他端が分岐ライン10bに接続されたXコンデンサC2(本発明の「第1コンデンサ」に相当)と、XコンデンサC2に並列に接続された放電抵抗R2(本発明の「第1放電抵抗」に相当)とをさらに備えている。XコンデンサC2および放電抵抗R2は、スイッチ2が閉止状態となっている場合に限り、スイッチ2を介して電源ライン10aに接続される。
【0035】
この構成においても、負荷回路5および負荷回路9を動作させる通常動作モード時は、スイッチング回路部4やスイッチング回路部8のスイッチングノイズが増大するために、電源ライン10a、11に重畳するノイズが比較的大きくなるので、スイッチ2を閉止状態とする指令信号が入力され、コモンモードチョークL1、L2およびXコンデンサC1、C2で電源ライン10a、11に重畳するノイズを除去する。また、この場合は、放電抵抗R1のみならず放電抵抗R2にも交流電圧VACが入力されるので、放電抵抗R1および放電抵抗R2の双方で無駄な電力消費がなされる。
【0036】
一方、負荷回路5および/または負荷回路9が待機状態になる等した省エネルギーモード時は、電源ライン10a、11に重畳するノイズが比較的小さくなるので、スイッチ2を開放状態とする指令信号が入力され、コモンモードチョークL1、L2およびXコンデンサC1だけでコモンモードノイズを除去する。また、この場合は、放電抵抗R1には交流電圧VACが入力されるが、放電抵抗R2には交流電圧VACが入力されないので、放電抵抗R2が無駄な電力を消費し続けるのを防ぐことができる。
【0037】
[効果確認実験]
続いて、図2に示す第2実施形態に係るフィルタ回路1B(以下、「実施例」という)と、図5に示す従来のフィルタ回路1D(以下、「従来例」という)の消費電力を下記条件の下で測定した結果について説明する。

・交流電圧VAC: AC240[V]
・XコンデンサC1:0.8[μF]
・XコンデンサC2:1.2[μF]
・放電抵抗R1: 820[kΩ]
・放電抵抗R2: 560[kΩ]
・スイッチ2: 富士通コンポーネント製リレー“FTR−K2AK024T(AC250V/16A品)”(閉止状態/開放状態)
・負荷回路5の条件:5[V]/0.1[A]、24[V]/0[A]
・負荷回路6: 350[W]の抵抗負荷(ヒーター)

【表1】

【0038】
表1に示すように、従来例に係るフィルタ回路1Dでは、スイッチ2が開放状態となっても放電抵抗R2が0.1[W]の電力を消費し続けている。これに対して、実施例に係るフィルタ回路1Bでは、スイッチ2が開放状態となり、XコンデンサC2の放電が完了した後は、放電抵抗R2の消費電力が0[W]となった。すなわち、実施例に係るフィルタ回路1Bによれば、放電抵抗R2が電力を消費し続けるのを防ぐことができた。
【0039】
次に、実施例に係るフィルタ回路1Bと、従来例に係るフィルタ回路1Dのノイズ(雑音端子電圧)を下記条件の下で測定した結果について説明する。

・交流電圧VAC: AC240[V]
・XコンデンサC1:0.8[μF]
・XコンデンサC2:1.2[μF]
・放電抵抗R1: 820[kΩ]
・放電抵抗R2: 560[kΩ]
・スイッチ2: 富士通コンポーネント製リレー“FTR−K2AK024T(AC250V/16A品)”(オン状態)
・負荷回路5の条件:5[V]/10[A]、24[V]/10[A]
・負荷回路6: 350[W]の抵抗負荷(ヒーター)
【0040】
図4(A)は実施例に係るフィルタ回路1Bの雑音端子電圧を示すグラフ、図4(B)は従来例に係るフィルタ回路1Dの雑音端子電圧を示すグラフである。同図に示すように、測定を行った150[kHz]〜30[MHz]の範囲では、両グラフにはほとんど違いは見られなかった。すなわち、軽負荷時の消費電力を低減するためにスイッチ2を介して電源ライン10a、11にXコンデンサC2を接続したフィルタ回路1Bにおいても、電源ライン10a、11に直接XコンデンサC2を接続したフィルタ回路1Dと同等のEMI対策を行うことができた。
【0041】
以上、本発明に係るフィルタ回路の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
【0042】
例えば、フィルタ回路の構成は上記フィルタ回路1A、1B、1Cに限定されず、電源ライン10aおよび/または電源ライン11に介装されたノーマルモードチョークをさらに備えてもよい。また、コモンモードチョークやコンデンサを追加したり、配置を変更したりすることもできる。
【0043】
また、上記のスイッチ2(富士通コンポーネント製リレー“FTR−K2AK024T(AC250V/16A品)”)は単なる一例であり、例えば、閉止状態のインピーダンスが0.1[Ω]以下の他のスイッチや、ON電圧が3[V]以下のトライアックに置き換えることができる。
【0044】
また、各実施形態では、分岐ライン10bにスイッチ2を介装したが、さらに電源ライン11にスイッチを介装してもよい。
【0045】
また、各実施形態では、XコンデンサC2の両端に負荷回路6(実施形態1、2)、またはスイッチング回路部8等からなる電源回路(実施形態3)が接続されているが、これらの回路を省略し、負荷回路5の状況、すなわち電源ライン10a、11のノイズの状況に応じた指令信号がスイッチ2に入力されるよう構成することもできる。この場合は、負荷回路5が軽負荷の際(省エネルギーモード時)にスイッチ2が開放状態とされ、XコンデンサC2を使用することなく電源ライン10a、11に重畳するノイズが除去される。
【符号の説明】
【0046】
1A、1B、1C フィルタ回路
2 スイッチ
3、7 整流回路部
4、8 スイッチング回路部
5、6、9 負荷回路
10a 電源ライン(一方)
10b 分岐ライン
11 電源ライン(他方)
12、13 入力端子
1 Xコンデンサ(第1コンデンサ)
2 Xコンデンサ(第2コンデンサ)
3 Yコンデンサ
4 Yコンデンサ
1 放電抵抗(第1放電抵抗)
2 放電抵抗(第2放電抵抗)
1 コモンモードチョーク
2 コモンモードチョーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から交流電圧が入力される一対の電源ラインに重畳するノイズを除去するフィルタ回路であって、
前記一対の電源ラインの一方から分岐した分岐ラインと、
前記分岐ラインと前記一対の電源ラインの他方の少なくともいずれか一方に介装されたスイッチと、
前記分岐ラインと前記一対の電源ラインの他方との間に接続され、少なくとも1つの前記スイッチを介して前記交流電圧が入力される第1コンデンサと、
前記第1コンデンサと並列に接続された第1放電抵抗と、
前記スイッチを前記ノイズの状態に応じて開閉する制御手段と
を有することを特徴とするフィルタ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ回路と、
前記一対の電源ラインから出力される交流電圧を整流して直流電圧を生成する整流回路部と、
前記直流電圧をスイッチングするスイッチング回路部と
を備え、
前記制御手段は、前記スイッチング回路部が通常動作モードにあるときは、前記スイッチを閉止する一方、省エネルギー動作モードにあるときは、前記スイッチを開放することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記整流回路部の入力側において、前記フィルタ回路が、前記一対の電源ライン間に接続された第2コンデンサと、前記第2コンデンサと並列に接続された第2放電抵抗とをさらに有することを特徴とする請求項2に記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
画像印刷装置の電源として機能する請求項2または3に記載のスイッチング電源装置であって、
前記分岐ラインの出力にヒーターが接続され、
前記制御手段は、前記画像印刷装置からのプリント出力時を前記通常動作モードとして、前記スイッチを閉止する一方、前記画像印刷装置からプリント出力しない待機時を前記省エネルギー動作モードとして、前記スイッチを開放することを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項5】
前記分岐ラインの出力がメイン電源部に接続される一方、前記スイッチング回路部がサブ電源部として機能することを特徴とする請求項2または3に記載のスイッチング電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211283(P2011−211283A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74333(P2010−74333)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】