説明

フィルム、積層体及び包装体

フィルム1はシール層11、遮光層12とから構成されている。遮光層12は、第1の層121と第2の層122とを備えている。第1の層121は、黒色〜灰色に着色された層であり、ポリエチレン系樹脂と、カーボンブラック及び酸化チタンを含む添加剤とを含有する。第2の層122は、白色に着色された層であり、ポリエチレン系樹脂、着色用の白色添加剤としての酸化チタンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、フィルム、積層体及び包装体に関する。
【背景技術】
従来、レトルト食品等の包装体には、食品等の変質を防止するために、遮光性が要求されている。また、加熱調理等にも耐えうるように耐熱性も要求されている。このような要求を満たす包装体として、例えば、ポリエチレンテレフタレート層/アルミ箔層/ポリプロピレン層、又は、ポリエチレンテレフタレート層/アルミ蒸着層/ポリプロピレン層を備えるフィルムを製袋したものが提案されている。(例えば、特開2001−261921号公報、第9頁など参照)。
しかし、アルミ箔層又はアルミ蒸着層を備えた構成であるため、リサイクルしにくく、環境保護の要請に応えることができない。また、アルミ箔層又はアルミ蒸着層を備えた構成であるため、電子レンジでの使用ができないという問題もある。さらに、アルミ箔層又はアルミ蒸着層を形成しなければならないので、製造コストがかかるという問題もある。
このような問題を解決するために、白色顔料を含むフィルムと、黒色顔料を含むフィルムを積層した遮光性フィルムが提案されている。(例えば、特開平11−91042号公報、請求項1など参照)。
この遮光性フィルムは、十分な遮光性を有し、電子レンジにかけることも可能であったが、天然水等、包装材料からの臭気等の移行により商品価値の低下する内容物の包装材料として使用することは、ユーザー、コンバーターの支持を得られず、困難であった。
【発明の開示】
本発明は、アルミ箔層やアルミ蒸着層を有さず、高い耐熱性、遮光性及び臭気が内容物へ移行することを抑制したフィルム、積層体、包装体を提供することを目的とし、そのために以下の構成を採用するものである。
具体的には、本発明のフィルムは、遮光層と、シール層とを備えたフィルムであって、前記遮光層及び前記シール層は、熱可塑性樹脂を含有するとともに、前記遮光層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加され、その添加剤は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含み、前記フィルムの光線透過率が250〜700nmの各波長において、30%以下であることを特徴とする。
ここで、光線透過率は、透過法によって250nm以上700nm以下の各波長に対する光線透過率を測定することにより得られたものである。この光線透過率は、入射光に対する透過光を%表示したものである。
また、前記遮光層、シール層に用いられる樹脂としては、例えば、密度が930kg/m以上のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンや、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
本発明では、以下のような効果を奏することができる。
(1)フィルムは遮光層を備えており、フィルムの光線透過率は250〜700nmの各波長において、30%以下であるため、アルミ箔層又はアルミ蒸着層を備えたフィルムと同等の遮光性を備えている。
(2)また、遮光層及びシール層は、融点が125℃以上の熱可塑性樹脂を含有しているので、120℃程度の高い温度にも耐えることができる。従って、シール層を内表面側となるように包装体を製袋し、内部に被包装物を充填してから加熱殺菌処理を行っても、シール層同士が融着あるいは擬似融着することがない。
(3)遮光性を持たせる添加剤として、カーボンブラックを用い、そのカーボンブラックに含まれる多環芳香族系炭化水素が極めて微量な為、内容物へ臭気が移行することを抑制できる。
(4)さらに、アルミ箔層やアルミ蒸着層を必須としていないので、電子レンジでの加熱が可能となる。
(5)また、シール層は遮光性を有していないので、このシール層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加されていない。従って、このシール層が被包装物に
接触しても、被包装物に添加剤が付着することがない。
(6)さらに、本発明のフィルムは、アルミ箔層やアルミ蒸着層から構成される層がなくてもよいので、共押出し成形等が可能となり、その分製造コストを低減することができる。
本発明のフィルムは、遮光層と、シール層とを備えたフィルムであって、前記遮光層及び前記シール層は、密度930kg/m以上のポリエチレン系樹脂を含有するとともに、前記遮光層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加され、その添加剤は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含み、前記フィルムの光線透過率が250〜700nmの各波長において、30%以下であることを特徴とする。
この際、前記ポリエチレン系樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。
本発明では、上述した発明と同様、(1)〜(6)と同様の効果を奏することができる。
本発明のフィルムは、遮光層と、シール層とを備えたフィルムであって、前記遮光層及び前記シール層は、ポリプロピレン系樹脂を含有するとともに、前記遮光層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加され、その添加剤は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含み、前記フィルムの光線透過率が250〜700nmの各波長において、30%以下であることを特徴とする。
本発明では、上述した発明と同様、(1)〜(6)と同様の効果を奏することができるうえ、以下の効果を奏することができる。
(7)遮光層及びシール層はポリプロピレン系樹脂を含有しているので、120〜125℃程度のさらに高い温度にも耐えることができる。従って、シール層を
内表面側となるように包装体を製袋し、加熱殺菌処理を行っても、シール層同士が融着ないし擬似融着することがない。
(8)さらに、遮光層及びシール層はポリプロピレン系樹脂を含有しているので、強度、剛性が高く、耐衝撃性に優れている。
この際、前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体の何れかであることが好ましい。
プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体を含有する場合には、120℃程度の温度に耐え、ることが可能な共重合体が好ましい。一方、プロピレン−エチレンブロック共重合体を含有する場合には、125℃程度の高い温度に耐えることができるとともに、優れた耐衝撃性を備えたものとすることができる。
遮光層に添加される添加剤は、多環芳香族炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含む必要があり、更に白色添加剤を含有することが好ましい。
ここで、白色添加剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、鉛白等をあげることができるが、なかでも酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンは、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れているためである。遮光層の黒色添加剤としては、カーボンブラックのほかに鉄黒、黒鉛等を挙げることができるが、内容物へ臭気が移行することを抑制するために、前述のカーボンブラックのみを用いることが好ましい。
すなわち、前記添加剤は、前記カーボンブラック及び酸化チタンを含有することが特に好ましい。
さらに、遮光層は1層又は2層で形成することができる。
遮光層を1層で構成する場合には、カーボンブラックに重量比で5以上、40以下の酸化チタンを加える。これにより、遮光層は黒色から灰色となり、効果的
な遮光性と美観を得ることができる。
遮光層を2層とする場合には、遮光層は、前記シール層に隣接する第1の層と、この第1の層を挟んで前記シール層と反対側に位置する第2の層の2層から構成されることとなり、第1の層に黒色添加剤、第2の層に白色添加剤を用いる場合と、第1の層を、黒色添加剤及び白色添加剤を同時に含有した灰色層とし、第2の層を白色添加剤を含有した層とする場合がある。すなわち、本発明では、遮光層を2層とする場合には、第2の層は、白色添加剤を含有することが好ましい。黒色添加剤としては、前述したカーボンブラックであり、白色添加剤としては、例えば、酸化チタンがあげられる。
通常、フィルムには、印刷が直接施されたり、裏印刷されたフィルムが貼り付けられたりする。印刷の発色をよくするためには、印刷が施されたり、裏印刷されたフィルムが貼り付けられたりする面は、白色に着色する必要がある。着色方法としては、遮光層を2層で構成し、その2層のうちのシール層側と反対側に位置する層(第2の層)を塗料等で直接塗る方法が考えられるが、この方法では、塗料を塗る手間がかかる。また、裏印刷されたフィルムを貼り付ける場合には第2の層はラミネート層としての役割を果たすこととなるが、塗料等が塗布されている場合には、ラミネート強度が低くなる可能性もある。
これに対し、本発明では、遮光層の第2の層は白色添加剤を含有しているので、表面層を塗料等で塗る手間を省くことができる。さらに、塗料等を塗布する必
要がないので、ラミネート強度の低下も防止できる。
本発明の積層体は、上述した何れかのフィルムの遮光層に少なくとも一層から構成される熱可塑性樹脂フィルムを張り合わせたことを特徴とする。
この本発明の積層体は、上述したフィルムに熱可塑性樹脂フィルムを貼り付けたものである。従って、前述したフィルムの効果を奏することができる上、この熱可塑性樹脂フィルムにガスバリア性や、意匠性を付与することで、積層体にフィルムには無い新たな機能を発揮することができる。
この際、前記熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過率が10cc/m・day・atm以下であることが好ましい。
熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過率が10cc/m・day・atm以下であり、酸素透過率が非常に小さいので、ガスバリア性に優れた積層体とすることができる。
本発明では、前記熱可塑性樹脂フィルムは、熱可塑性樹脂層と、この熱可塑性樹脂層上に蒸着又はコーティングされた層とを有し、酸素透過率が10cc/m・day・atm以下であることが好ましい。
ここで、例えば、珪素酸化物を蒸着したり、珪素酸化物、アクリル系物質、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとエチレンとの共重合体、ポリ塩化ビニリデン等でコーティングしたりすることで上述した範囲の酸素透過率の熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
蒸着又はコーティングを施すことで上述した酸素透過率を備えた熱可塑性樹脂フィルムを得ることができるため、ガスバリア性の付与を容易に行うことができる。
また、前記熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過率は、前記熱可塑性樹脂フィルムがガスバリア性樹脂を含有する層を備えることで得られることが好ましい。
ここで、ガスバリア性樹脂としては、例えば、ナイロン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
本発明の包装体は、上述したフィルム又は積層体を備え、前記フィルムの前記シール層を内表面としてなることを特徴とする。
本発明の包装体は上述したフィルム又は積層体を備えているので、フィルム又は積層体と同様の効果を奏することができる。すなわち、アルミ箔層やアルミ蒸着層を使用せず、高い耐熱性と遮光性を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実施形態のフィルムの断面を模式的に示した図である。
図2は、本発明の実施形態の積層体の断面を模式的に示した図である。
図3は、本発明の実施形態の袋の斜視図である。
図4は、本発明の袋の変形例を示す斜視図である。
図5は、本発明のフィルムの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本実施形態のフィルム1が示されている。このフィルム1は、3層構成となっており、単層構成のシール層11、2層構成の遮光層12とから構成されている。
シール層11は、密度930kg/m以上のポリエチレン系樹脂と、アンチブロック剤とを含有する。このシール層11は、無色透明の層であり、遮光性添加剤は添加されていない。
遮光層12は、シール層11に隣接する第1の層121と、第1の層121に隣接する第2の層122とを備える。
第1の層121は、灰色に着色された層であり、密度930kg/m以上のポリエチレン系樹脂と、遮光性付与を目的とした添加剤とを含有する。
この添加剤は黒色添加剤である、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックと白色添加剤である酸化チタンとを含有している。前記カーボンブラックの割合は、第1の層121全体に対して0.1wt%以上、5.0wt%以下、好ましくは、0.3wt%以上、2.0wt%以下である。0.1wt%未満の場合には十分な遮光性が得らない可能性がある。また、5.0wt%を超えると美観が悪化する可能性がある。
さらに、酸化チタンの含有量は、前記カーボンブラック1に対し重量比で2以上、60以下、好ましくは5以上、40以下の割合である。2未満の場合、美観が悪化する可能性があるとともに遮光性を確保することが困難となる。また、60を超えると酸化チタンを均一に混合できない可能性がある。
なお、ここでは、第1の層121は、前記カーボンブラックと白色添加剤の双方を含有するとしたが、これに限らず、前記カーボンブラックのみ含有するとしてもよい。
第2の層122は、第1の層121を挟んでシール層11と反対側に位置する層であり、密度930kg/m以上のポリエチレン系樹脂と、白色添加剤である酸化チタンとを含有する。この第2の層122は、白色に着色された層となっている。白色添加剤の含有量は、第1の層121の色の影響により、外観が悪化しない程度の含有量であることが好ましい。
なお、ここで、第2の層122にアンチブロッキング剤を含有させてもよい。
さらに、シール層11、遮光層12には必要に応じて、熱安定剤、消臭剤、抗菌剤等を添加してもよい。
フィルム1の厚みは、例えば50μmであり、シール層11、遮光層12の第1の層121、遮光層12の第2の層122の層比は、例えば、シール層11:遮光層12の第1の層121:遮光層12の第2の層122=2:4:4である。また、フィルム1の光線透過率は、250nm以上700nm以下の各波長において、30%以下である。
ここで、光線透過率は、透過法によって250nm以上700nm以下の各波長に対する光線透過率を測定することにより得られたものである。この光線透過率は、入射光に対する透過光を%表示したものである。
このようなフィルム1は、例えば、3層Tダイ共押出しキャスト成形機を用いたTダイ共押出し法により形成される。具体的には、各層11,121,122を構成する樹脂に対応した押し出し機を3種使用し、各押し出し機から押し出された各層11,121,122を構成する樹脂をTダイに入る直前に設けた特殊ブロックで合流、積層させて成形する。
また、各押し出し機から押し出された各層11,121,122を構成する樹脂を接着型のサーキュラーダイに導入した後、インフレーション成形することにより、このようなフィルム1を製造してもよい。
このようなフィルム1の遮光層12の第2の層122には図2に示すように熱可塑性樹脂フィルム2が貼り付けられ、積層体4とされる。
熱可塑性樹脂フィルム2は、酸素透過率が10cc/m・day・atm以下となっており、ポリアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等を含有した一層構成の透明フィルム21(熱可塑性樹脂層)と、この透明フィルム21のフィルム1側の面に形成された透明の蒸着層22とを有する。
なお、ここでは、透明フィルム21を単層構成としたが、これに限らず、多層構成としてもよい。
蒸着層22は、透明フィルム2に珪素酸化物を蒸着することで得られる。
なお、本実施形態では、珪素酸化物を蒸着し、蒸着層を形成するとしたが、これに限らず、例えば、アクリル系物質、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールとエチレンとの共重合体、ポリ塩化ビニリデン等をコーティングしてもよい。
さらに、この蒸着層22のフィルム1の遮光層12の第2の層122側の面(熱可塑性樹脂フィルム2の裏面)には印刷Aが施されている。
このような熱可塑性樹脂フィルム2とフィルム1との貼り付け方法としては、例えば、接着剤を用いたドライラミネート法が挙げられる。
以上のような積層体4を用いて図3に示すような袋(包装体)5が製袋される。
この袋5は、平面矩形形状であり、その4辺がヒートシールされたものである。フィルム1のシール層11を袋の内表面とし、まず、3辺をヒートシールする。そして、袋5内部に、例えば、レトルト食品を充填し、最後に残りの1辺をヒートシールする。
従って、本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
フィルム1は、遮光層12を備えており、光線透過率は250〜700nmの各波長において、30%以下であるため、アルミ箔層又はアルミ蒸着層を備えたフィルムと同等の遮光性を備えている。従って、このフィルム1を用いた袋5内部に充填された食品の変質を防止できる。
また、遮光層12、シール層11は密度930kg/m以上のポリエチレン系樹脂を含有しているので、120℃程度の高い温度にも耐えることができる。
また、このように高い耐熱性を備えているので、フィルム1を用いて製袋した袋5に食品を充填して加熱殺菌処理を行っても、シール層11同士が融着あるいは擬似融着することがない。
さらに、アルミ箔層やアルミ蒸着層を含有していないので、電子レンジでの加熱が可能となる。また、アルミ箔層やアルミ蒸着層から構成される層がないので、共押出し成形等が可能となり、製造コストを低減することができる。
また、シール層11は無色透明の層であるため、シール層11には遮光性付与を目的とした添加剤が添加されていない。従って、このシール層11が食品に接触しても、食品に添加剤が付着することがない。
遮光層12の第1の層121は、カーボンブラック及び酸化チタンを含有しているので、効果的に遮光することができるうえ、カーボンブラック及び酸化チタンは、着色力に優れ、安価であるため使い勝手がよい。又、カーボンブラックが、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるため、内容物へ臭気が移行することを抑制できる。
さらに、第2の層122は白色に着色されているので、熱可塑性樹脂フィルム2を貼り付けた際に、熱可塑性樹脂フィルム2の印刷Aの発色をよくすることができる。従って、積層体4や袋5の外観を良好なものとすることができる。
また、第2の層122は白色に着色されているので、第2の層122に白色塗料を塗布する必要がなく、製造の手間を省くことができる。さらに、第2の層に白色塗料を塗布した場合には、第2の層と、熱可塑性樹脂フィルム2とのラミネート強度が低下する虞がある。これに対し、本実施形態では、白色塗料を塗布する必要がないので、ラミネート強度の低下を防止できる。
積層体4は、印刷Aが施された熱可塑性樹脂フィルム2を備えているため、外観が良好である。本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム2の裏面に印刷Aが施されているので、この熱可塑性樹脂フィルム2を通して印刷Aを見ることとなる。そのため、積層体4の印刷には、つやがあるように見え、外観が特に良好となる。
また、熱可塑性樹脂フィルム2の酸素透過率は10cc/m・day・atm以下と非常に低いため、積層体4は高いガスバリア性を備えるものとなる。
このように、積層体4は、フィルム1が有する機能に加え、熱可塑性樹脂フィルム2が有する機能を備えており、遮光性、耐熱性を有するとともに、外観が良好であり、また、高いガスバリア性も有することとなる。さらに、この積層体4を成形して得られる袋5も同様の機能を有することとなる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、袋5内部に食品を充填していたが、これに限らず、シャンプー、リンス等を充填してもよい。この場合には、シャンプー、リンス等の光による変質を防止することができ、長期間、品質を維持することができる。
さらに、袋を図4に示すような自立性を備えた袋6、いわゆるスタンディングパウチとしてもよい。この袋6には、自立性があるので、使い勝手がよくなる。
また、前記実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム2の透明フィルム21に蒸着を施すことでガスバリア性を付与していたが、このような方法に限らず、透明フィルム21の表面にナイロン等のガスバリア層を形成することで、ガスバリア性を付与してもよい。ナイロン等は耐熱性が高いので、ナイロン等の層を設けたことで積層体の耐熱性が低下することはない。
さらに、透明フィルム自体をガスバリア性の樹脂で構成することで、熱可塑性樹脂フィルムをガスバリア性を有するものとしてもよい。この場合には、透明フィルム上にガスバリア性を付与するための層を形成する必要がないので、熱可塑性樹脂フィルムの製造を容易なものとすることができる。
さらに、熱可塑性樹脂フィルム2の酸素透過率を10cc/m・day・atm以下としたが、10cc/m・day・atmを超えるものであってもよい。また、熱可塑性樹脂フィルムをガスバリア性を備えていないものとしてもよい。
さらに、前記実施形態では、熱可塑性樹脂フィルム2とフィルム1とを備えた積層体4で袋5を成形したが、フィルム1のみを成形して袋を製造してもよい。
この場合には、フィルム1の遮光層12の第2の層122に直接印刷を施すとよい。このようにすれば、袋の外観を良好なものとすることができる。また、熱可塑性樹脂フィルム2を使用しないため、製造コストの低減を図ることができる。
さらに、前記実施形態では、遮光層12の第2の層122は白色添加剤として酸化チタンを含有するとしたが、これに限らず、他の白色添加剤、例えば、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、鉛白等を含有するものとしてもよい。ただし、酸化チタンの方が、他の白色添加剤よりも、耐光性、耐熱性、耐薬品性に優れているため、他の白色添加剤に比べ、使い勝手がよい。
また、前記実施形態では、フィルム1の遮光層12は、第2の層122を備えるものとしたが、これに限らず、図5に示すように、第2の層122を有しない遮光層12’としてもよい。このようにすることで、第2の層を形成する手間を省くことができる。ただし、このようなフィルム1’では、第2の層122が形成されたフィルム1に比べ、白色性が劣る可能性がある。
前記実施形態では、遮光層12の第1の層121は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを含有するとしたが、更に、鉄黒、黒鉛等を含有してもよいが、内容物へ臭気が移行しないよう、慎重に選択する必要がある。
さらに、前記実施形態では、シール層11、遮光層12はポリエチレン系樹脂を含有するとしたが、ポリエチレン系樹脂にかえて、ポリプロピレン系樹脂、例えば、エチレン含有量が4%以下のプロピレン−エチレンランダム共重合体や、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体のいずれかを含有するものとしてもよい。
ポリプロピレン系樹脂を含有するものとすれば、強度、剛性が高くなり、耐衝撃性に優れたものとすることができる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体を含有する場合には、120℃程度の温度に耐えることが可能な共重合体を採用することが好ましい。一方、プロピレン−エチレンブロック共重合体を含有する場合には、125℃程度の高い温度に耐えることができるとともに、耐衝撃性に優れたものとすることができる。
本発明の効果を確認するために以下の実験を行った。
1.フィルムの構成
実施例及び比較例において、以下のような構成のフィルムを多層共押出しインフレーション成形により作製した。
【実施例1】
(1)シール層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)
厚み:10μm
(2)遮光層
(2−1)第1の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)84.5wt%
添加剤(カーボンブラック0.5wt%、酸化チタン15wt%)カーボンブラックは、多環芳香族系炭化水素が0.26ppm、ベンゾピレンが1ppb。
商品名Cabot Corporation製 BLACK PEARLS 4350
厚み:20μm
(2−2)第2の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)95wt%
添加剤(酸化チタン5wt%)
厚み:20μm
このような遮光層全体に対するカーボンブラックの含有量は、0.25wt%であり、酸化チタンの含有量は、10.0wt%である。
【実施例2】
(1)シール層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)
厚み:10μm
(2)遮光層
(2−1)第1の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)99.5wt%
添加剤(実施例1と同じカーボンブラック0.5wt%)
厚み:20μm
(2−2)第2の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名モアテック0278)95wt%
添加剤(酸化チタン5wt%)
厚み:20μm
このような遮光層全体に対するカーボンブラックの含有量は、0.25wt%であり、酸化チタンの含有量は、2.5wt%である。
【実施例3】
(1)シール層
原料:ブロックポリプロピレン(商品名 出光ポリプロF−454NP)
厚み:10μm
(2)遮光層
(2−1)第1の層
原料:ブロックポリプロピレン(商品名 出光ポリプロF−454NP)99wt%
添加剤(実施例1と同じカーボンブラック1wt%)
厚み:20μm
(2−2)第2の層
原料:ブロックポリプロピレン(商品名 出光ポリプロF−454NP)90wt%
添加剤(酸化チタン10wt%)
厚み:20μm
このような遮光層全体に対するカーボンブラックの含有量は、0.5wt%であり、酸化チタンの含有量は、5.0wt%である。
【実施例4】
(1)シール層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)
厚み:30μm
(2)遮光層
(2−1)第1の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度939kg/m 商品名 モアテック0278)89wt%
添加剤(実施例1と同じカーボンブラック1wt%、酸化チタン10wt%)
厚み:20μm
このような遮光層全体に対するカーボンブラックの含有量は、1.0wt%であり、酸化チタンの含有量は、10.0wt%である。
なお、実施例4のフィルムの遮光層は第2の層を有しないものとなっている。
(比較例1)
全層ともカーボンブラック及び酸化チタンを含有しないものとした。他の条件は実施例1と同様である。
(比較例2)
(1)シール層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度920kg/m 商品名 モアテック0138)
厚み:10μm
(2)遮光層
(2−1)第1の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度920kg/m 商品名 モアテック0138)99wt%
添加剤(カーボンブラック1wt%)
多環芳香族系炭化水素が1.5ppm、かつベンゾピレンが28ppb
商品名Cabot Corporation製 Channel Black
厚み:20μm
(2−2)第2の層
原料:直鎖状低密度ポリエチレン(密度920kg/m 商品名 モアテック0138)90wt%
添加剤(酸化チタン10wt%)
厚み:20μm
このような遮光層全体に対するカーボンブラックの含有量は、0.5wt%であり、酸化チタンの含有量は、5.0wt%である。
2.評価及び結果
実施例、比較例のフィルムを、下記のように評価した。
(1)フィルムの光線透過率、遮光性の評価方法
島津製作所製の自記分光光度計「UV−240」を用い、透過法によって250nm、400nm、700nmの各波長に対する、フィルムの光線透過率を測定した。この光線透過率は、入射光に対する透過光を%表示したものである。
(2)耐熱性評価
フィルムの加熱加圧殺菌処理を行って耐熱性の評価を行った。殺菌温度は、100℃、110℃、120℃、130℃の各温度である。
(3)臭気の評価
長方形に切った、実施例1のフィルムを2枚重ね、3辺をヒートシールして袋を作り、純粋を100cc入れて、残り1辺をヒートシールして封入した。
実施例2、比較例1,2のフィルムについても、同様にして、純水入り袋を作成した。
それらの袋を、90℃で30分間、恒温槽内におき(熱処理)、その後、封を開けて、純水の臭気を官能評価した。
熱処理後の、比較例1の袋の水の臭気(ブランク)に比べ、よりきつく臭う場合を×、臭いに差を感じないか、臭いが弱い場合は○とした。
結果を表1に示す。

表1中、○は、シール層が融着あるいは擬似融着せず、耐熱性が良好であったことを示し、×は、シール層が融着あるいは擬似融着して耐熱性が悪かったことを示す。また、△は、×ほど耐熱性が悪くはないが、シール層が融着あるいは擬似融着し、耐熱性に問題があったことを示す。
実施例1〜4では、250nmの光線では1%以下、400nmの光線では2%以下、700nmの光線では8%以下となり、光線透過率が低く、高い遮光性を備え、実施例1、2で、内容物への臭気の移行も抑制されていることが確認された。また、実施例1,2,4では120℃、実施例3では、130℃という高温にも耐えうることが確認された。
比較例1では、光線透過率が非常に高く、遮光性を備えていないことが確認された。また、比較例2では、高い遮光性は備えているものの、耐熱性が低く、内容物への臭気の移行も抑制不十分であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
本発明は、フィルム、積層体及び包装体として利用でき、特に食品等の変質を防止するために遮光性が要求されるレトルト食品等の包装体として利用できる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮光層と、シール層とを備えたフィルムであって、
前記遮光層及び前記シール層は、融点が125℃以上である熱可塑性樹脂を含有するとともに、前記遮光層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加され、
その添加剤は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含み、
前記フィルムの光線透過率が250〜700nmの各波長において、30%以下であることを特徴とするフィルム。
【請求項2】
遮光層と、シール層とを備えたフィルムであって、
前記遮光層及び前記シール層は、密度930kg/m以上のポリエチレン系樹脂を含有するとともに、前記遮光層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加され、
その添加剤は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含み、
前記フィルムの光線透過率が250〜700nmの各波長において、30%以下であることを特徴とするフィルム。
【請求項3】
遮光層と、シール層とを備えたフィルムであって、
前記遮光層及び前記シール層は、ポリプロピレン系樹脂を含有するとともに、前記遮光層には遮光性付与を目的とした添加剤が添加され、
その添加剤は、多環芳香族系炭化水素が0.5ppm以下、かつベンゾピレンが5ppb以下であるカーボンブラックを必須として含み、
前記フィルムの光線透過率が250〜700nmの各波長において、30%以下であることを特徴とするフィルム。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルムにおいて、
前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体の何れかであることを特徴とするフィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムにおいて、
前記遮光層に添加される前記添加剤が、更に酸化チタンを含むことを特徴とする、フィルム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のフィルムにおいて、
少なくとも3層以上の層を備え、
前記遮光層は、前記シール層に隣接する第1の層、この第1の層を挟んで前記シール層と反対側に位置する第2の層の2層から構成されており、前記第2の層は、白色添加剤を含有することを特徴とするフィルム。
【請求項7】
請求項6に記載のフィルムにおいて、
前記白色添加剤は酸化チタンであることを特徴とするフィルム。
【請求項8】
請求項1〜3の何れかに記載のフィルムの遮光層に、少なくとも一層から構成される熱可塑性樹脂フィルムを張り合わせたこと特徴とする積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の積層体において、
前記熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過率が10cc/m・day・atm以下であることを特徴とする積層体。
【請求項10】
請求項8に記載の積層体において、
前記熱可塑性樹脂フィルムは、熟可塑性樹脂層と、この熱可塑性樹脂層上に蒸着又はコーティングされた層とを有し、酸素透過率が10cc/m・day・atm以下であることを特徴とする積層体。
【請求項11】
請求項8に記載の積層体において、
前記熱可塑性樹脂フィルムの酸素透過率は、前記熱可塑性樹脂フィルムがガスバリア性樹脂を含有する層を備えることで得られることを特徴とする積層体。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム又は請求項8〜11のいずれかに記載の積層体を備え、
前記フィルムの前記シール層を内表面としてなることを特徴とする包装体。

【国際公開番号】WO2005/005137
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511618(P2005−511618)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010374
【国際出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(500163366)出光ユニテック株式会社 (128)
【Fターム(参考)】