説明

フィルム包装体と包装装置

【課題】シリコンウエハを安全で破損しないように包装し、簡単に開封することができるフィルム包装体と包装装置を提供する。
【解決手段】熱収縮フィルム12を巻き出すフィルム巻出し部27と、フィルム巻出し部27の途中に設けられたフィルム転向用ローラ30に対向して設けられ、熱収縮性フィルム12に長手方向に沿って第一ミシン線18aを形成する第一ミシン線用刃50を備える。熱収縮性フィルム12を筒状に形成した内側に、複数枚重ねたシリコンウエハ14を入れて両端部を溶断溶着する溶断溶着装置部66を有する。溶断溶着装置部66には、熱収縮性フィルム12に向かって移動する移動部材67を備える。移動部材67には、熱収縮性フィルム12を長手方向に交差して切断するカット用刃68と、カット用刃68の両側に平行に設けられ熱収縮フィルム12の長手方向に交差する第二ミシン線18bを形成する一対の第二ミシン線用刃70を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリコンウエハを包装するフィルム包装体とその包装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置等に使用されるシリコンウエハは、薄形で破損しやすいため、包装体にはいろいろな工夫がされていた。
【0003】
特許文献1に開示されている密閉袋体は、クリーン包装袋と、このクリーン包装袋内に収納されたハードケースから成り、ハードケースの中には複数枚のシリコンウエハが収容されている。このクリーン包装袋によれば、ハードケースにより確実にシリコンウエハが保護され、安全に運搬や保管を行うことができる。
【0004】
また、特許文献2に開示されているように、熱収縮フィルムを用いて、商品に密着した状態で包むものである。このシュリンク包装には、開封時に容易に開裂させることのできる開封部が、前記シュリンク包装の外周の一部に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−330039号公報
【特許文献2】特開2003−292030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に開示された包装体の場合は、ハードケースが必要でコストがかかり、保管や運搬の際にかさばり不便である。特許文献2の包装体の場合、開封部は、中の商品を傷つけないように開封することが難しく、シリコンウエハのような繊細な商品には適していなかった。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、シリコンウエハを安全で破損しないように包装し、簡単に開封することができるフィルム包装体と包装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数枚重ねられたシリコンウエハが熱収縮フィルムにより筒状に巻かれて包装され、前記熱収縮フィルムには開封用のミシン線が設けられているフィルム包装体である。
【0009】
前記ミシン線は、複数本が互いに交差して形成されているものである。さらに、前記ミシン線は、熱収縮性フィルムの溶断溶着部と平行な部分と直角に形成された部分とを有するものである。
【0010】
またこの発明は、フィルムロールから熱収縮フィルムを巻き出すフィルム巻出し部と、前記フィルム巻出し部の途中に設けられたフィルム転向用ローラに対向して設けられ前記熱収縮性フィルムに長手方向に沿って第一ミシン線を形成する第一ミシン線用刃と、前記熱収縮性フィルムを筒状に形成した内側に複数枚重ねたシリコンウエハを入れて両端部を溶断溶着する溶断溶着装置部と、溶断溶着された前記熱収縮性フィルムを加熱して収縮させるシュリンクトンネルとが設けられ、前記溶断溶着装置部には、前記熱収縮性フィルムに向かって移動する移動部材が設けられ、前記移動部材には、前記熱収縮性フィルムを長手方向に交差して切断するカット用刃と、前記カット用刃の両側に平行に設けられ熱収縮フィルムの長手方向に交差する第二ミシン線を形成する一対の第二ミシン線用刃が設けられている包装装置である。前記一対の第二ミシン線用刃の外側と、前記カット用刃と前記第二ミシン線用刃の間に、前記熱収縮性フィルムを押さえる押さえ片が各々設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルム包装体と包装装置は、シリコンウエハを安全で破損しないように包装し、簡単に開封することができる。さらに、包装に必要な材料が少ないためコストが安価で、軽量であり、環境にも優しい包装を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施形態のフィルム包装体の正面図である。
【図2】この実施形態のフィルム包装体の背面図である。
【図3】この実施形態の包装装置の正面図である。
【図4】この実施形態の包装装置の概略斜視図である。
【図5】この実施形態の包装装置の溶断溶着装置部の正面図である。
【図6】この実施形態の包装装置の第二ミシン線用刃の右側面図である。
【図7】この実施形態の包装装置の第一ミシン線用刃の正面図(a)と右側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図7はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のフィルム包装体10は、熱可塑性樹脂からなる熱収縮性フィルム12により商品であるシリコンウエハ14を包み、熱収縮性フィルム12を熱により収縮させて形成される。シリコンウエハ14は、同形のものが複数枚重ねられた状態で包装されている。なお、シリコンウエハ14の形状は薄い板状であり、正方形の角部が面取りされたような八角形である。フィルム包装体10には、熱収縮性フィルム12を溶断溶着した溶断溶着部16が、相対する一対の側面に形成されている。
【0014】
そして図1に示すように、シリコンウエハ14の一方の面である正面14aに対向する熱収縮性フィルム12には、開封用のミシン線18が形成されている。ミシン線18は、シリコンウエハ14の正面14aのほぼ中心に位置し両端に位置する溶断溶着部16に直角な直線である第一ミシン線18aと、溶断溶着部16の近傍で溶断溶着部16に対して平行な一対の第二ミシン線18bから成り、1本の第一ミシン線18aと2本の第二ミシン線18bで、H字形に形成されている。
【0015】
シリコンウエハ14の他方の面である背面14bに対向する熱収縮性フィルム12には、図2に示すように、相対する溶断溶着部16をつなぐように、フィルム包装体10を横断する状態に熱収縮性フィルム12の側縁部12a同士が重ね合わされている。この重ね合わせた箇所には、静電的に密着して包装されている。また、必要に応じて、熱可塑性の接着剤が印刷又は塗布され、互いに接着されるようにしても良い。
【0016】
シリコンウエハ14の包装には、図3、図4等に示す包装装置22を用いる。包装装置22には、熱収縮性フィルム12をロール状に巻いたフィルムロール24を載置する載置ローラ25,26が設けられている。載置ローラ25,26は自由回転可能に設けられている。
【0017】
載置ローラ25,26の下流側近傍には、熱収縮性フィルム12を送り出す一対のフィルム巻出しローラ23が設けられている。フィルム巻出しローラ23は、熱収縮性フィルム12を挟んで、フィルムロール24からフィルム12を引き出す。フィルム巻出しローラ23の下流側には、フィルム巻出し部27が設けられ、フィルム巻出し部27には、引き出した熱収縮性フィルム12の送り方向をガイドする複数個のフィルム転向用ローラ28,30,32,34,36,38,40,42,44,46が、熱収縮性フィルム12の上流から下流に向かって順番に設けられている。
【0018】
フィルム転向用ローラ30には、熱収縮性フィルム12に第一ミシン線18aを形成する第一ミシン線用刃50が、軸方向を同じくして互いに平行に設けられ、熱収縮性フィルム12がフィルム転向用ローラ30を通過するときに第一ミシン線用刃50により第一ミシン線18aが形成される。第一ミシン線用刃50は、図7に示すように、円盤状に形成され、回転可能に設けられている。また、フィルム転向用ローラ38,40の間には、熱収縮性フィルム12に開封方向や開封方法などを示す文字や矢印を印刷するプリンター52が設けられている。プリンター52は、熱収縮性フィルム12がフィルム転向用ローラ38,40の間を間欠移動して通過するときに、停止状態の熱収縮フィルム12に印刷を行う。
【0019】
フィルム巻出し部27の下流側には、熱収縮性フィルム12を長手方向に沿う中心で二つ折りする三角板54が設けられている。三角板54は、二等辺三角形の頂点が下流側に設けられたものであり、この頂点が下方に向かって傾斜されている。三角板54の下方には、二つ折りされた熱収縮性フィルム12の送り方向を変える複数本のフィルム転向用ローラ56が設けられている。
【0020】
フィルム転向用ローラ56の下流側には、図3、図4に示すように、左右一対の部材から構成されたフィルム成形器58が設けられている。フィルム成形器58は、二つ折りされた熱収縮性フィルム12を拡げながら熱収縮性フィルム12の送り方向を変えて表裏反転させ筒状にするものである。フィルム成形器58の下方には、筒状に広げられた熱収縮性フィルム12の側縁部12a同士を静電的に密着させるスタティックシール部60が設けられている。スタティックシール部60の下流には、熱収縮性フィルム12を送るフィルム繰り出し部61が設けられている。
【0021】
一対のフィルム成形器58の間には、ベルトコンベア62が設けられている。ベルトコンベア62は、下流側の約半分が、筒状となった熱収縮性フィルム12の中に位置し、筒状の熱収縮性フィルム12の中にシリコンウエハ14を搬入するものである。ベルトコンベア62の上流側には、ベルトコンベア62にシリコンウエハ14を載せる別のベルトコンベア64が設けられている。ベルトコンベア62の下流側の端部近傍には、フィルム繰り出しローラ61が設けられている。このフィルム繰り出しローラ61は、図示しないモータにより駆動され、熱収縮性フィルム12をベルトコンベア62と等しい速度で引いて、熱収縮性フィルム12を繰り出し可能にしている。
【0022】
ベルトコンベア62の下流側には溶断溶着装置部66が設けられている。溶断溶着装置部66は、シリコンウエハ14を内部に収容した筒状の熱収縮性フィルム12の端部を溶断溶着するものである。溶断溶着装置部66には、図5に示すように、上下方向に位置する一対のロールに張られたチェーン63が設けられ、チェーン63には移動部材67が取り付けられている。移動部材67は、チェーン63の移動に伴って、熱収縮性フィルム12に向かって上下に移動する。移動部材67の下端部には、熱収縮性フィルム12の長手方向に対して直角に交差するカット用刃68が設けられている。カット用刃68の両側には、熱収縮性フィルム12を抑える押さえ片74が設けられている。一対の押さえ片74の各外側には、第二ミシン線18bを形成する第二ミシン線用刃70が、所定間隔開けてカット用刃68に対して平行に一対設けられている。第二ミシン線用刃70は、図6に示すように、凹凸上の刃を有し、熱収縮性フィルム12にミシン線を形成可能に設けられている。一対の第二ミシン線用刃70の外側にも押さえ片72が、所定間隔開けて設けられている。
【0023】
チェーン63の、移動部材67が取り付けられていない部分には、当接部材69が取り付けられている。当接部材69は、熱収縮性フィルム12をカットするとき、移動部材67が下降して熱収縮性フィルム12に当接する際に、チェーン63の動きに伴って上昇して熱収縮性フィルム12の下面に当接し、熱収縮性フィルム12を、カット用刃68及び第二ミシン線用刃70とともに挟んで、確実に溶断溶着及び第二ミシン線18bの形成を行うものである。
【0024】
溶断溶着装置部66の下流側には、ベルトコンベア62と同じ高さのベルトコンベア76,77,78が、ベルトコンベア62の延長線上に順に設けられている。さらに、溶断溶着装置部66の下流側には、シュリンクトンネル80が設けられている。ベルトコンベア78は、シュリンクトンネル80の入り口から出口まで通過して、シュリンクトンネル80の出口から熱収縮性フィルム12が熱収縮された状態のフィルム包装体10を出す。
【0025】
次に、この実施形態の包装方法について、以下に説明する。包装装置22では、フィルムロール24から繰り出しローラ26により熱収縮性フィルム12が引き出され、第一ミシン線用刃50で熱収縮フィルム12の長手方向に沿って第一ミシン線18aを形成し、プリンター52で所定の表示を印刷する。三角板54により熱収縮性フィルム12を二つ折りし、フィルム成形器58により二つ折りされた熱収縮性フィルム12を筒状に開き、熱収縮性フィルム12の側縁部12aをスタティックシール部60で接着し筒状に形成する。そして、熱収縮性フィルム12の筒状の中に、ベルトコンベア62により複数枚のシリコンウエハ14が入れられる。熱収縮性フィルム12の前端部には、予め溶断溶着部16を形成しておく。そして、ベルトコンベア62の終端にシリコンウエハ14が来ると、シリコンウエハ14の前端部が熱収縮性フィルム12の溶断溶着部16を押す。シリコンウエハ14が溶断溶着装置部66を通過すると、シリコンウエハ14の後端部の熱収縮性フィルム12が溶断溶着される。これにより溶断溶着装置部66で積層されたシリコンウエハ14のまとまり毎にカットされて包装されるとともに、一対の押さえ片74の外側の第二ミシン線用刃70により、第二ミシン線18bが溶断溶着部16と平行に形成される。
【0026】
カットされた熱収縮性フィルム12は、シリコンウエハ14を入れた状態でシュリンクトンネル80を通過し、熱収縮されてフィルム包装体10となる。
【0027】
この実施形態のフィルム包装体と包装方法によれば、シリコンウエハ14を複数枚重ねて安全で破損しないように効率よく包装し、簡単に開封することができる。シリコンウエハ14は複数枚重ねられているため強度が高くなり、破損することがなく、破損防止の補強材が不要で、コストが安くなおかつ安全に包装することができる。ミシン線18は、第一ミシン線18aと第二ミシン線18bが交差しているため開封しやすく、開封の際に弱い力で開封することができる。これにより、開封の際にシリコンウエハ14を破損することも防ぐことができる。
【0028】
なお、この発明のフィルム包装体と包装装置は上記実施形態に限定されるものではなく、包装装置の各部材の位置や数等は適宜変更可能である。また、溶断溶着装置部の移動部材を動かす手段は、ベルト以外でもよい。フィルムの形態も、二つ折り以外にあらかじめ筒状に形成されているフィルムを使用しても良い。ミシン線の形状は上記以外でもよく、H字形以外に十字形等、自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 フィルム包装体
12 熱収縮性フィルム
14 シリコンウエハ
16 溶断溶着部
18 ミシン線
18a 第一ミシン線
18b 第二ミシン線
24 フィルムロール
27 フィルム巻出し部
28,30,32,34,36,38,40,42,44,46 フィルム転向ローラ
50 第一ミシン線用刃
66 溶断溶着装置部
67 移動部材
68 カット用刃
70 第二ミシン線用刃
72,74 押さえ片
80 シュリンクトンネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚重ねられたシリコンウエハが熱収縮フィルムにより筒状に巻かれて包装され、前記熱収縮フィルムには開封用のミシン線が設けられていることを特徴とするフィルム包装体。
【請求項2】
前記ミシン線は、複数本が互いに交差して形成されている請求項1記載のフィルム包装体。
【請求項3】
前記ミシン線は、熱収縮性フィルムの溶断溶着部と平行な部分と直角に形成された部分とを有する請求項2記載のフィルム包装体。
【請求項4】
フィルムロールから熱収縮フィルムを巻き出すフィルム巻出し部と、前記フィルム巻出し部の途中に設けられたフィルム転向用ローラに対向して設けられ前記熱収縮性フィルムに長手方向に沿って第一ミシン線を形成する第一ミシン線用刃と、前記熱収縮性フィルムを筒状に形成した内側に複数枚重ねたシリコンウエハを入れて両端部を溶断溶着する溶断溶着装置部と、溶断溶着された前記熱収縮性フィルムを加熱して収縮させるシュリンクトンネルとが設けられ、前記溶断溶着装置部には、前記熱収縮性フィルムに向かって移動する移動部材が設けられ、前記移動部材には、前記熱収縮性フィルムを長手方向に交差して切断するカット用刃と、前記カット用刃の両側に平行に設けられ熱収縮フィルムの長手方向に交差する第二ミシン線を形成する一対の第二ミシン線用刃が設けられていることを特徴とする包装装置。
【請求項5】
前記一対の第二ミシン線用刃の外側と、前記カット用刃と前記第二ミシン線用刃の間に、前記熱収縮性フィルムを押さえる押さえ片が各々設けられている請求項4記載のフィルム包装装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−116410(P2011−116410A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275794(P2009−275794)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000135575)株式会社ハナガタ (8)
【Fターム(参考)】