説明

フィルム及び印画紙の処理方法、フィルム及び印画紙の処理装置、及び、圧縮成形体

【課題】廃棄されたフィルム及び印画紙から効率良く、かつ、確実に銀を回収することが可能なフィルム及び印画紙の処理方法、フィルム及び印画紙の処理装置、並びに、このフィルム及び印画紙の処理方法において使用される圧縮成形体を提供する。
【解決手段】フィルム及び印画紙から銀を回収するフィルム及び印画紙の処理方法であって、前記フィルム及び前記印画紙を破砕する破砕工程S1と、破砕された前記フィルム及び前記印画紙を圧縮して圧縮成形体を得る圧縮成形工程S3と、前記圧縮成形体を銅製錬炉に投入する投入工程S4と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム及び印画紙から銀を回収するためのフィルム及び印画紙の処理方法、フィルム及び印画紙の処理装置、及び、このフィルム及び印画紙の処理方法において使用される圧縮成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
写真用フィルムや映画用フィルム、及び、印画紙等には、有価物である銀が含まれている。そこで、従来から、廃棄されたフィルム及び印画紙から銀を回収する様々な方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、微生物を用いて銀を含む感光層を分解し、ハロゲン化銀を回収する方法が提案されている。
また、特許文献2には、フィルム等をアルカリ性溶液で加熱処理し、この加熱処理により得られた固形分を酸処理して酸処理液を生成し、この酸処理液を電気分解して銀を回収する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1、2に記載された方法では、多量のフィルムや印画紙を処理することができず、効率的に銀を回収することは困難であった。また、銀の回収のために、複雑なプロセスが必要となり、銀の回収コストが増大するといった問題があった。
そこで、現状では、廃棄されたフィルム及び印画紙を焼却して銀を含む焼却灰を生成し、この焼却灰を銅製錬炉等に投入し、銅を製錬する過程において銀を回収する方法が広く用いられている。ここで、銅精鉱には銀が含まれていることから、従前より、銅を製錬する過程において銀を回収しており、既存のプロセスを利用して、フィルム及び印画紙から銀を回収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−231179号公報
【特許文献2】特開2004−137559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、廃棄されたフィルム及び印画紙を焼却することによって得られる焼却灰は、非常に軽く、風等によって簡単に飛散してしまうため、銀を含む焼却灰のすべてを銅製錬炉内に投入することは非常に困難であった。このため、廃棄されたフィルム及び印画紙に含まれる銀を全量回収することができなかった。
また、廃棄されたフィルム及び印画紙を、直接、銅製錬炉に投入しようとすると、炉内において燃焼したフィルム及び印画紙が浮遊することになり、燃焼したまま銅製錬炉の排気口から外部に排出され、排気口の外側に設けられたバグフィルタ等を劣化させるおそれがあった。このため、廃棄されたフィルム及び印画紙を、直接、銅製錬炉に投入することができず、銅製錬炉内で燃焼するおそれのないように焼却灰の状態で投入せざるを得なかった。
【0006】
本発明は、前述した状況に鑑みてなされたものであって、廃棄されたフィルム及び印画紙から効率良く、かつ、確実に銀を回収することが可能なフィルム及び印画紙の処理方法、フィルム及び印画紙の処理装置、及び、このフィルム及び印画紙の処理方法において使用される圧縮成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明に係るフィルム及び印画紙の処理方法は、フィルム及び印画紙から銀を回収するフィルム及び印画紙の処理方法であって、前記フィルム及び前記印画紙を破砕する破砕工程と、破砕された前記フィルム及び前記印画紙を圧縮して圧縮成形体を得る圧縮成形工程と、前記圧縮成形体を銅製錬炉に投入する投入工程と、を備えていることを特徴としている。
【0008】
この構成のフィルム及び印画紙の処理方法によれば、フィルム及び印画紙を焼却することなく、直接、銅製錬炉に投入しているので、焼却灰を回収する必要がなくなり、銀を確実に回収することが可能となる。
また、前記フィルム及び前記印画紙を細かく破砕し、前記フィルム及び前記印画紙の破砕片を圧縮して圧縮成形体を得て、この圧縮成形体を銅製錬炉に投入しているので、圧縮成形体が銅製錬炉からの排風等によって飛散せず、燃焼した状態の圧縮成形体が排気口から外部に排出されるおそれがない。また、銅製錬炉に投入する際に、圧縮成形体が燃焼して灰化しても圧縮成形体の内部まで完全に燃焼してしまうことがないので、風等によって飛散しにくくなり、圧縮成形体を確実に銅製錬炉内のスラグと接触させることができる。
【0009】
また、銅製錬炉内においてスラグに接触させられた圧縮成形体は燃焼されて含銀灰となり、この含銀灰の中の銀が銅製錬炉内のスラグ内を沈降して、スラグの下方に存在するマット(硫化銅)中に吸収される。このマットを、熔錬することによって粗銅を得て、この粗銅を電解処理して電気銅を得る際に副生されるスライム中に、銀が含まれることになる。そこで、このスライムから銀を分離精製することによって、フィルム及び印画紙から銀を回収することが可能となる。
さらに、フィルム及び印画紙は、プラスチックや紙等の可燃物を有していることから、銅製錬炉内で燃焼することにより、スラグの温度を維持することが可能となる。よって、銅製錬炉においてスラグの温度維持のために使用していた微粉炭の使用量を低減でき、銅製錬炉の操業コストの削減を図ることもできる。
【0010】
ここで、前記投入工程において、前記圧縮成形体を銅製錬炉の天井部の複数の箇所から投入することが好ましい。
この場合、圧縮成形体が、銅製錬炉に均一に投入されるため、銅製錬炉内のスラグと圧縮成形体とを効率的に接触させることが可能となり、含銀灰の中の銀を確実にマットに吸収させることができる。また、圧縮成形体がスラグ上の複数の箇所で燃焼することになり、スラグの温度が均一に保持されることになる。
【0011】
また、前記圧縮成形工程によって得られた圧縮成形体を篩い分ける選別工程を有し、前記投入工程において、サイズの大きな圧縮成形体を前記銅製錬炉の排気口に近接した位置から投入し、サイズの小さな圧縮成形体を前記銅製錬炉の排気口から離間した位置から投入することが好ましい。
圧縮成形体を篩い分け、サイズの大きな圧縮成形体を排気口に近接した位置から投入し、サイズの小さな圧縮成形体を前記銅製錬炉の排気口から離間した位置から投入することによって、排気口を通じて圧縮成形体が外部に排出されることを防止することができ、銀の回収効率の向上を図ることができる。また、排気口の外部に設置された設備の劣化等を防止することができる。
【0012】
また、前記圧縮成形体の嵩比重が、0.3g/cm以上0.9g/cm以下とされていることが好ましい。
圧縮成形体の嵩比重が0.3g/cm未満の場合には、銅製錬炉からの排風によって圧縮成形体が飛散してしまうおそれがある。一方、圧縮成形体の嵩比重が0.9g/cmを超える場合には、銅製錬炉内で圧縮成形体を完全に燃焼させるのに必要以上の時間が掛かることになる。したがって、圧縮成形体の嵩比重は、0.3g/cm以上0.9g/cm以下とすることが好ましい。
【0013】
さらに、前記圧縮成形体が、概略円柱状をなし、その外径が5mm以上20mm以下とされ、その軸線方向長さが5mm以上50mm以下とされていることが好ましい。
圧縮成形体を円柱状とすることによって、転がして移送することが可能となり、取扱い性が向上することになる。また、圧縮成形工程において、圧縮成形体を効率良く成形することができる。そして、外径が5mm以上20mm以下とされ、軸線方向長さが5mm以上50mm以下とされているので、移送配管の内部において圧縮成形体同士が絡み合うことがなく、確実に銅製錬炉に投入することができる。
【0014】
本発明に係るフィルム及び印画紙の処理装置は、フィルム及び印画紙から銀を回収するフィルム及び印画紙の処理装置であって、前記フィルム又は前記印画紙を破砕する破砕機と、破砕された前記フィルム又は前記印画紙を圧縮して圧縮成形体を製出する圧縮成形機と、前記圧縮成形体を銅製錬炉に投入する投入機と、を備えていることを特徴としている。
【0015】
この構成のフィルム及び印画紙の処理装置によれば、フィルム及び印画紙を破砕機で破砕し、破砕されたフィルム及び印画紙を圧縮成形機によって圧縮成形体とし、この圧縮成形体を投入機によって銅製錬炉に投入するので、フィルム及び印画紙を確実に銅製錬炉内に投入して銀を回収することができる。また、廃棄されたフィルム及び印画紙を効率的に処理することができる。
【0016】
ここで、前記圧縮成形機によって成形された圧縮成形体を篩い分ける選別機を備えていることが好ましい。
この場合、圧縮成形機によって成形される圧縮成形体の大きさがばらついたとしても、選別機によって圧縮成形体をサイズ毎に篩い分けることができ、サイズに応じた投入方法を適用することで、圧縮成形体を確実に銅製錬炉内のスラグに接触させることが可能となる。
【0017】
本発明に係る圧縮成形体は、銀を含むフィルム及び印画紙の破砕体を圧縮することによって成形され、その嵩比重が、0.3g/cm以上0.9g/cm以下とされていることを特徴とている。
さらに、この圧縮成形体においては、概略円柱状をなし、その外径が5mm以上20mm以下とされ、その軸線方向長さが5mm以上50mm以下とされていることが好ましい。
これらの圧縮成形体によれば、銅製錬炉に投入した際に、風等によって飛散せずにスラグと接触することになり、銀を確実に回収することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、廃棄されたフィルム及び印画紙から効率良く、かつ、確実に銀を回収することが可能なフィルム及び印画紙の処理方法、フィルム及び印画紙の処理装置、並びに、このフィルム及び印画紙の処理方法において使用される圧縮成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理装置を示す説明図である。
【図2】図1に示すフィルム及び印画紙の処理装置において用いられる圧縮成形体の説明図である。
【図3】図1に示すフィルム及び印画紙の処理装置の投入機に備えられたロータリーバルブの説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の第2の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理装置を示す説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照にして説明する。
まず、図1から図4を参照して、本発明の第1の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理方法、フィルム及び印画紙の処理装置について説明する。
図1に示すフィルム及び印画紙の処理装置10は、廃棄されたフィルム及び印画紙を破砕する破砕機11と、フィルム及び印画紙の破砕片を貯留する貯留槽13と、貯留槽13から供給されるフィルム及び印画紙の破砕片を圧縮して圧縮成形体30を成形する圧縮成形機15と、圧縮成形体20を銅製錬炉40内に投入する投入機20と、を備えている。
【0021】
破砕機11は、シート状をなすフィルム及び印画紙を、引きちぎり破るようにして細かく破砕するものであり、本実施形態では、回転する刃物に対してフィルム及び印画紙を押し付けて破砕する、一軸破砕機とされている。
この破砕機11で破砕されたフィルム及び印画紙の破砕片は、スクリューフィーダー12によって貯留槽13へと移送される。この貯留槽13は、下流側に設置された圧縮成形機15に一定量の破砕片を供給できるように、前記破砕片を一旦貯留するものである。
【0022】
圧縮成形機15は、貯留槽13からスクリューフィーダー14を介して供給された破砕片を圧縮して圧縮成形体30を生成する。なお、この圧縮成形機15では、水や結合剤等を使用せずに、圧縮加工のみで圧縮成形体30を生成する構成とされている。また、この圧縮成形機15においては、生成される圧縮成形体30の嵩比重が、0.3g/cm以上0.9g/cm以下となるように、破砕片の充填量、圧縮力、温度等の成形条件が設定されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、圧縮成形機15によって、軸線Nに沿って延びる円柱状をなす圧縮成形体30が成形されることになる。この圧縮成形体30の外径Dは、5mm以上20mm以下に設定され、圧縮成形体30の軸線N方向長さLが5mm以上50mm以下に設定されている。
【0024】
投入機20は、圧縮成形機15で生成された圧縮成形体30を貯留する貯留部21と、銅製錬炉40の天井部43に複数設けられた投入管22と、これら複数の投入管22に対して貯留部21から圧縮成形体30を供給するロータリーバルブ23と、を備えている。
ロータリーバルブ23は、図3に示すように、貯留部21の下方に設置されており、回転移動する供給配管24と、貯留部21下部の開口部を開閉するバルブ部25と、を備えている。バルブ部25を閉状態として供給配管24を移動させ、投入管22と供給配管24とが連通された時点でバルブ部25を開状態とし、貯留部21から投入管22へと圧縮成形体30を供給する。このようにして、一つの貯留部21から複数の投入管22に対して圧縮成形体30を供給する構成とされている。
【0025】
銅製錬炉40は、硫化銅を含む銅精鉱を熔錬する熔錬炉であって、排気口42を有する炉本体41と、炉本体41の上部開口部を塞ぐ天井部43と、この炉本体41内部に銅精鉱、微粉炭、硅砂、酸素を供給するランス44と、炉本体41内部のガスを排気口42を通じて外部に排出する煙道45と、を備えている。
この銅製錬炉40では、硫化銅を含む銅精鉱を酸素雰囲気中で溶解し、硫化銅の硫黄分の一部を除去するものである。この銅製錬炉40には、銅分を多く含むマットと、酸化物の集合体であるスラグと、が溶融状態で保持されており、マットが炉本体の下層に沈殿し、このマットの上方にスラグが浮遊している。
【0026】
このような構成とされたフィルム及び印画紙の処理装置10を用いたフィルム及び印画紙の処理方法について、図4のフロー図を参照して説明する。
まず、破砕機11に、廃棄されるフィルム及び印画紙を供給し、シート状をなすフィルム及び印画紙を細かく破砕した破砕片を得る(破砕工程S1)。
この破砕片を、スクリューフィーダー12を介して貯留槽13に移送し、貯留する(貯留工程S2)。
【0027】
貯留槽13からスクリューフィーダー14を用いて、圧縮成形機15に対して一定量の破砕片を供給し、圧縮成形体30を成形する(圧縮成形工程S3)。
圧縮成形体30を投入部20の貯留部21へと移送し、銅製錬炉40の天井部43に複数配設された投入配管22を通じて、銅製錬炉40内に圧縮成形体30を投入する(投入工程S4)。
【0028】
銅製錬炉40に投入された圧縮成形体30は、スラグ上において完全に燃焼して含銀灰となる。スラグ上の含銀灰の中の銀は、スラグ中を沈降していき、スラグの下方に位置するマットに吸収される(吸収工程S5)。
含銀灰の中の銀が吸収されたマットは、さらに製錬処理されて粗銅となり、この粗銅を電解処理することによって電気銅が生成される。この電解処理において発生するスライムの中に銀が含まれることになる。そこで、このスライムを分離精製することによって銀を取り出す(銀分離精製工程S6)。このようにして、廃棄されたフィルム及び印画紙から銀が回収されることになる。
【0029】
このような構成とされた本発明の第1の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理方法、及び、フィルム及び印画紙の処理装置10によれば、フィルム及び印画紙を焼却することなく、直接、銅製錬炉40に投入しているので、焼却灰を回収する必要がなくなり、銀を確実に回収することが可能となる。
また、フィルム及び印画紙を細かく破砕し、破砕されたフィルム及び印画紙を圧縮して圧縮成形体30を成形し、この圧縮成形体30を銅製錬炉40に投入しているので、圧縮成形体30が銅製錬炉40からの排風等によって容易に飛散せず、確実にスラグに接触させることができる。また、燃焼している圧縮成形体30が排気口42から外部に排出されるおそれもない。また、銅製錬炉40に投入する際に、圧縮成形体30が燃焼して灰化しても、風等によって飛散しにくく、確実に銅製錬炉40内のスラグに接触させることができる。
【0030】
また、圧縮成形体30が燃焼されることで得られた含銀灰の中の銀を、銅製錬炉40内のスラグの下方に存在するマット(硫化銅)中に吸収させる吸収工程S5と、このマットを熔錬することによって粗銅を得て、この粗銅を電解処理して電気銅を得る際に副生されるスライムから銀を分離精製する銀分離精製工程S6と、を備えているので、フィルム及び印画紙から銀を回収することが可能となる。
さらに、フィルム及び印画紙は、プラスチックや紙等の可燃物を有していることから、銅製錬炉40内で燃焼することにより、スラグの温度を維持することが可能となる。よって、銅製錬炉40においてスラグの温度維持のために使用していた微粉炭の使用量を低減でき、銅製錬炉40の操業コストの削減を図ることもできる。
【0031】
しかも、本実施形態では、投入機20が、銅製錬炉40の天井部43に配設された複数の投入管22を備えているので、圧縮成形体30が、銅製錬炉40内に均一に投入されることになり、銅製錬炉40内のスラグと圧縮成形体30とを効率的に接触させることができ、含銀灰の中の銀を確実にマットに吸収させることができる。また、圧縮成形体30がスラグ上の複数の箇所で燃焼することになり、スラグの温度が均一に保持されることになる。
【0032】
また、本実施形態では、圧縮成形体30の嵩比重が、0.3g/cm以上0.9g/cm以下とされているので、銅製錬炉40からの排風によって圧縮成形体30が飛散してしまうおそれがなく、また、銅製錬炉40内で圧縮成形体30を完全に燃焼させることができ、含銀灰を確実にスラグと接触させることができる。
さらに、圧縮成形体30が、概略円柱状をなし、その外径Dが5mm以上20mm以下とされ、その軸線N方向長さLが5mm以上50mm以下とされているので、投入管22や供給配管24の内部において、圧縮成形体30同士が絡み合うことがなく、確実に銅製錬炉40に投入することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理装置110について、図5を用いて説明する。
図5に示すフィルム及び印画紙の処理装置110は、第1の実施形態と同様に、破砕機111と、破砕されたフィルム及び印画紙を貯留する貯留槽113と、貯留槽113から供給されるフィルム及び印画紙の破砕片を圧縮して圧縮成形体を成形する圧縮成形機115と、圧縮成形体を銅製錬炉140内に投入する投入機120と、を備えており、さらに、投入機120に、選別機127が設けられている。
【0034】
選別機127は、圧縮成形機115によって成形された圧縮成形体を振動篩128によってサイズ毎に選別するものである。この選別機127においてサイズ毎に選別された圧縮成形体は、それぞれ異なった投入配管122から銅製錬炉140内に投入される。
ここで、本実施形態では、サイズが大きな圧縮成形体が銅製錬炉140の排気口142に近接した位置から投入され、サイズが小さな圧縮成形体が銅製錬炉140の排気口142から離間した位置から投入されるように構成されている。
【0035】
このような構成とされた本発明の第2の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理方法、及び、フィルム及び印画紙の処理装置110によれば、圧縮成形機115によって成形された圧縮成形体を篩い分ける選別機127を備えているので、圧縮成形機115によって成形される圧縮成形体の大きさがばらついたとしても、選別機127によって圧縮成形体をサイズ毎に篩い分けることができ、サイズに応じた投入方法を適用することで、圧縮成形体を確実に銅製錬炉140内のスラグに接触させることが可能となる。
【0036】
具体的には、サイズの大きな圧縮成形体を銅製錬炉140の排気口142に近接した位置から投入し、サイズの小さな圧縮成形体を銅製錬炉140の排気口142から離間した位置から投入することによって、排気口142を通じて圧縮成形体が外部に排出されることを防止することができ、銀の回収効率の向上を図ることができる。また、排気口142の外部に設置された設備に圧縮成形体が混入することを防止できる。
【0037】
以上、本発明の実施形態であるフィルム及び印画紙の処理方法、及び、フィルム及び印画紙の処理装置について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、図6に示すように、投入機220の貯留部221の前段に選別機227を設け、選別機227によってサイズ毎に選別された圧縮成形体を、ロータリーバルブ223によって複数の投入配管222から銅製錬炉240内に投入する構成としてもよい。
【0038】
また、圧縮成形体を概略円柱状をなすものとして説明したが、圧縮成形体の形状に特に限定はなく、タブレット状等に成形されたものであってもよい。
さらに、一軸破砕機を備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の方式の破砕機であってもよい。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の効果を確認するために行った確認実験について説明する。
【0040】
〔比較例〕
印画紙を装入したアルミナボートを電気炉内に入れて昇温するとともに、電気炉内に空気を流し、印画紙を燃焼させて燃焼灰を生成した。この作業を繰り返し、50gの印画紙を燃焼させることによって、0.75gの燃焼灰を回収した。
硫化銅50g、スラグ成分(FeO、SiO)15g、燃焼灰0.75gを、ルツボに入れて加熱し、所定温度(約1250℃)に達した時点で酸素の吹き込み(酸素の吹き込み量0.1l/min)を開始した。所定温度(約1250℃)で60分保持した後に、ルツボを冷却し、スラグと粗銅をそれぞれ全量回収した。このスラグ及び粗銅をICP分析した結果、投入した印画紙に含まれる銀量の95%に相当する銀が粗銅から検出された。一方、アルミナボートを酸洗浄し、洗浄後の酸液をICP分析した結果、投入した印画紙に含まれる銀量の4.9%に相当する銀が検出された。
このように、比較例においては、焼却灰を全量回収することができず、銀の回収ロスが生じてしまった。
【0041】
〔本発明例〕
硫化銅50g、スラグ成分(FeO、SiO)15gを、ルツボに入れて加熱し、所定温度(約1250℃)に達した時点で酸素の吹き込み(酸素の吹き込み量0.1l/min)を開始した。印画紙を破砕して圧縮成形した圧縮成形体50gを、順次ルツボ内に投入し、全量を投入した後で60分保持した。そして、ルツボを冷却し、スラグと粗銅をそれぞれ全量回収した。このスラグ及び粗銅をICP分析した結果、投入した印画紙に含まれる銀量の99.9%に相当する銀が粗銅から検出された。
このように、本発明例では、ルツボ内に投入された印画紙に含まれる銀をほぼ全量回収することができた。
【符号の説明】
【0042】
10、110、210 フィルム及び印画紙の処理装置
11、111、211 破砕機
15、115、215 圧縮成形機
20、120、220 投入機
127、227 選別機
30 圧縮成形体
40、140、240 銅製錬炉
42、142、242 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム及び印画紙から銀を回収するフィルム及び印画紙の処理方法であって、
前記フィルム及び前記印画紙を破砕する破砕工程と、
破砕された前記フィルム及び前記印画紙を圧縮して圧縮成形体を得る圧縮成形工程と、
前記圧縮成形体を銅製錬炉に投入する投入工程と、
を備えていることを特徴とするフィルム及び印画紙の処理方法。
【請求項2】
前記投入工程において、前記圧縮成形体を銅製錬炉の天井部の複数の箇所から投入することを特徴とする請求項1に記載のフィルム及び印画紙の処理方法。
【請求項3】
前記圧縮成形工程によって得られた圧縮成形体を篩い分ける選別工程を有し、
前記投入工程において、サイズの大きな圧縮成形体を前記銅製錬炉の排気口に近接した位置から投入し、サイズの小さな圧縮成形体を前記銅製錬炉の排気口から離間した位置から投入することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィルム及び印画紙の処理方法。
【請求項4】
前記圧縮成形体の嵩比重が、0.3g/cm以上0.9g/cm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフィルム及び印画紙の処理方法。
【請求項5】
前記圧縮成形体が、概略円柱状をなし、その外径が5mm以上20mm以下とされ、その軸線方向長さが5mm以上50mm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフィルム及び印画紙の処理方法。
【請求項6】
フィルム及び印画紙から銀を回収するフィルム及び印画紙の処理装置であって、
前記フィルム及び前記印画紙を破砕する破砕機と、
破砕された前記フィルム又は前記印画紙を圧縮して圧縮成形体を製出する圧縮成形機と、
前記圧縮成形体を銅製錬炉に投入する投入機と、
を備えていることを特徴とするフィルム及び印画紙の処理装置。
【請求項7】
前記圧縮成形機によって成形された圧縮成形体を篩い分ける選別機を備えていることを特徴とする請求項6に記載のフィルム及び印画紙の処理装置。
【請求項8】
銀を含むフィルム及び印画紙の破砕体を圧縮することによって成形され、その嵩比重が、0.3g/cm以上0.9g/cm以下とされていることを特徴とする圧縮成形体。
【請求項9】
概略円柱状をなし、その外径が5mm以上20mm以下とされ、その軸線方向長さが 5mm以上50mm以下とされていることを特徴とする請求項8に記載の圧縮成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−217703(P2010−217703A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66265(P2009−66265)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】