説明

フィルム外装電気デバイスの製造方法、ヒータおよびフィルム外装電気デバイス

【課題】電極端子近傍の熱融着を確実に行うことができるフィルム外装電気デバイスの製造方法、ヒータおよびフィルム外装電気デバイスを提供する。
【解決手段】本発明のフィルム外装電気デバイスの製造方法は、シーラント11どうしが接合され、加圧されることにより熱融着性樹脂層を押し延ばす面を有する延出部11cを有するシーラント11をリード端子4に被覆する工程と、電池要素2の周辺部のラミネートフィルム5、6を熱融着させる周辺加熱部52と、リード端子4に対応し、周辺加熱部52に対して凹形状となる、シーラント11とラミネートフィルム5、6とを熱融着させるリード加熱部51と、周辺加熱部52とリード加熱部51とを階段状に繋ぐ、シーラント11の延出部11cとラミネートフィルム5、6とを熱融着させる中間加熱部53を有するヒータ50a、50bを用いて熱融着を行う工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やキャパシタに代表される、電気デバイス要素を外装フィルムに収容したフィルム外装電気デバイスの製造方法、フィルム外装電気デバイスの熱融着に用いられるヒータ、およびフィルム外装電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電源としての電池は、軽量化、薄型化が強く要求されている。そこで、電池の外装材に関しても、軽量化、薄型化に限界のある従来の金属缶に代わり、さらなる軽量化、薄型化が可能であり、金属缶に比べて自由な形状を採ることが可能な外装材として、金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムを用いたものが使用されるようになった。
【0003】
電池の外装材として用いられるラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の片面にヒートシール層である熱融着性樹脂フィルムを積層するとともに、他方の面に保護フィルムを積層した3層ラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
外装材にラミネートフィルムを用いたフィルム外装電池においては、正極と負極とをセパレータを介して積層した電池要素を、熱融着性樹脂フィルムを互いに対向させてラミネートフィルムで包囲し、電池要素の周囲でラミネートフィルムを熱融着することによって電池要素を気密封止(以下、単に封止という)している。電池要素の正極および負極から電流を外部に取り出すために、正極および負極にはそれぞれ集電タブが突出して設けられており、これら集電タブをリード端子に接続し、そのリード端子をラミネートフィルムから突出させて接続している。また、セパレータとしては、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂を用いて形成した多孔性フィルムなどが用いられる。
【0005】
図5にラミネートフィルムを外装体として用いた従来の電池のリード端子部分を示す。また、図6に、従来のヒータによりリード端子部分を熱融着する状態を示す。
【0006】
フィルム外装電池100は、2枚の外装体フィルム101に電池要素103が収納され、電池要素103に接続されたリード端子104が外部に引き出された構成となっている。
【0007】
外装体フィルム101は、金属層101bおよび内面樹脂層101aとを含むラミネートフィルムであり、内面樹脂層101aの周囲同士を熱融着することによって接合されている(図6では保護フィルムは省略している)。この封止辺のうち、対向する2辺が、リード端子104の引き出し封止辺となっており、これらの辺からリード端子104が引き出されている。また、平板状金属からなるリード端子104の表面には、耐熱性樹脂層105aと金属接着性樹脂層105bとからなるシーラント105が設けられている。耐熱性樹脂層105aは金属層101bとリード端子104との短絡防止を目的とし、金属接着性樹脂層105bはリード端子104とシーラント105との接着性を向上させることを目的としたものである。
【0008】
外装体フィルム101による電池要素103の封止の概要は以下のとおりである。
【0009】
外装体フィルム101同士の熱融着には、図6に示すように、リード端子封止部の形状に対応する凹部201を有するヒータ200a、200bが用いられる。
【0010】
まず、シーラント105を、金属接着性樹脂層105bをリード端子104の側にして、リード端子104の封止予定部の両面に熱融着しておく。リード端子104を引き出した状態で、上下の外装体フィルム101の端辺で、リード端子104を挟み、外装体フィルム101同士を熱融着する。リード端子封止部においてはシーラント105と外装体フィルム101とを熱融着させる。
【特許文献1】特開2004−111303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図6に示す従来形状のヒータ200a、200bにより、従来形状のシーラント105を備えたリード端子封止部を熱融着した場合、以下の問題を生じる場合があった。
【0012】
図7に示すように、従来のヒータ200a、200bの場合、リード加熱部251と周辺加熱部252との間には大きな段差があった。また、従来のシーラント105はシーラント105どうしを接合させている端部105cが接合に要する必要最小限の幅しか設けられていなかった。このため、従来のヒータ200a、200bと従来のシーラント105との組み合わせでは、リード加熱部251と周辺加熱部252との境界部分の隅部C3に大きな空間が形成されていた。この隅部C3には、リード加熱部251により押し潰された樹脂と、周辺加熱部252により押し潰された樹脂が供給されるものの、隅部C3を所望の熱融着幅で埋めるほどの樹脂は供給されない。このため、図5のA部を拡大図である図8に示すように、シーラント105の端部105cにおける外装体フィルム101の融着領域102aに、所望の熱融着幅よりも狭いくびれ150を生じてしまう場合があった。
【0013】
シーラント105の端部105c近傍以外の融着領域102aは平坦であるため、ヒータ200a、200bにより均一な圧力を印加することができ、ヒータの幅とほぼ同じ幅の領域の対向する内面樹脂層どうしが溶融して一体化するので、ヒータの幅を所望の幅aとすれば、溶融・一体化(以下熱融着)する樹脂の領域の幅も所望の幅aで熱融着することができる。これに対して、端部105c近傍は樹脂の供給が不十分となる隅部C3に対応する部分である。このため、熱融着の幅が幅aよりも狭い幅bとなってしまいくびれ150が形成されてしまうこととなる。
【0014】
熱融着の幅が狭いくびれにおいては、外部から電池内部に浸入する水分の透過量が部分的に多くなる領域となってしまう。なぜなら、樹脂の両側の水分子濃度に差があるときは、樹脂中の単位時間に透過する水分子の量は、フィックの法則により透過方向の樹脂経路の長さに反比例するからである。このことによりくびれの形成は、電池内部への水分浸入の加速要因となり、水分が電池内で悪影響を及ぼしている電池特性劣化の加速につながる。このことはフィルム外装電池、特にフィルム外装非電解質電池特有の課題であり、単に熱融着領域の分断によるリークパスの形成さえ回避すればよいという問題ではなく、全てのシール部分において所定の幅の融着領域が要求されている。
【0015】
また、量産製造においては、シール樹脂の当初の厚さのワークごとのばらつきや、ヒータとワークの相互位置のばらつき等が多かれ少なかれどうしても生じるため、シールの樹脂埋まり性もワークごとにばらつきを生じる。そのため、従来、設計レベルではひとつのワークの全ての融着領域で所定幅を満たすように設定したつもりでも、量産時に全ての製造品についてくびれの形成を完全に防止することは難しかった。
【0016】
そこで、本発明は、電極端子近傍の熱融着を確実に行うことができるフィルム外装電気デバイスの製造方法、ヒータおよびフィルム外装電気デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明のフィルム外装電気デバイスの製造方法は、電気デバイス要素と、電気デバイス要素に接続された電極端子を被覆する被覆部材と、熱融着性樹脂層を備えた外装体フィルムとを有し、電気デバイス要素の周辺部の外装体フィルムどうし、および外装体フィルムと被覆部材とを熱融着させることで電気デバイス要素が外装体フィルムにより封止されたフィルム外装電気デバイスの製造方法において、平坦面を有する延出部を備えた被覆部材が形成された電極端子を用意する工程と、電気デバイス要素の周辺部の外装体フィルムどうしを熱融着させる周辺加熱部と、電極端子に対応し、周辺加熱部に対して凹形状となる、被覆部材と外装体フィルムとを熱融着させる端子加熱部と、周辺加熱部と端子加熱部とを階段状に繋ぐ、被覆部材の延出部と外装体フィルムとを熱融着させる中間加熱部を有するヒータを用意する工程と、ヒータの中間加熱部により、外装体フィルムを介して平坦面を加圧することで平坦面と重なる領域の熱融着性樹脂層を押し延ばしながら熱融着する工程と、を含むことを特徴とする
本発明のフィルム外装電気デバイスの製造方法は、延出部を有する被覆部材によって電極端子を被覆しておき、この延出部を中間過熱部を有するヒータによりヒートプレスすることで延出部に対応する部分の熱融着性樹脂層を押し出すようにして熱融着する。これにより、延出部における熱融着された領域の幅を電気デバイス要素の周辺部における熱融着された領域の幅よりも広く形成することができる。すなわち、本発明は、従来、幅が狭くなり、くびれとなっていた被覆部材の側端面近傍を幅広に熱融着することができ、もしくは製造ばらつきによる最悪の場合でもくびれ発生を防止することができるので、外部から水分の浸入を防止することができる。
【0018】
また、本発明のヒータは金属製であってもよい。ヒータを金属製とすることで仕上がりの断面形状が予測しやすく、また、ヒータの隅部を埋めるのに必要な樹脂の量の計算がしやすく、かつシミュレーションと実際の整合性もよいため、設計通りの樹脂が押し延ばされて所望の部位を埋めることができることとなる。
【0019】
本発明のフィルム外装電気デバイスは、電気デバイス要素と、電気デバイス要素に接続された電極端子を被覆する被覆部材と、電気デバイス要素の周辺部および被覆部材を熱融着して電気デバイス要素を封止する、熱融着性樹脂層を備えた外装体フィルムとを有するフィルム外装電気デバイスにおいて、被覆部材は、平坦面を有する延出部を備えており、電極端子と被覆部材と外装体フィルムとが接合された領域を含む第1の厚さの第1の接合領域と、外装体フィルムどうしが接合された、第1の厚さよりも薄い第2の厚さの第2の接合領域と、延出部と外装体フィルムとが接合された領域を含み、第1の厚さよりも薄くかつ第2の厚さよりも厚く、第1の接合領域と第2の接合領域とを繋ぐようにして形成された平坦な第3の接合領域とを有しており、第3の接合領域において延出部の平坦面と重なる領域の熱融着製樹脂が押し延ばされていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明のフィルム外装電気デバイスは、延出部における熱融着された領域の幅が電気デバイス要素の周辺部における熱融着された領域の幅よりも広いものであってもよい。
【0021】
また、本発明のフィルム外装電気デバイスは、延出部の、電極端子から延出している方向への長さは1.5mm以上かつ、第2の接合領域の熱融着の幅以下であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被覆部材の側端面近傍にくびれを生じることなく熱融着することができるので、外部から水分の浸入を防止することができ、電池を長寿命化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態の例について図面を参照して説明する。
【0024】
図1にフィルム外装電池の分解斜視図を示す。なお、図1は、本実施形態の集電部保護部材を外した状態のフィルム外装電池を示すものである。
【0025】
フィルム外装電池1は、電池要素2と、電池要素2に設けられた正極側および負極側の集電部3と、電池要素2を電解液とともに収納する、2枚のラミネートフィルム5、6からなる外装体と、集電部3に接続されたリード端子4とを有する。
【0026】
電池要素2は、複数の正極板と複数の負極板とを、セパレータを介して交互に積層して構成されている。
【0027】
各正極板はアルミニウム箔に正極電極が塗布されており、負極は銅箔に負極電極が塗布されており、積層領域から延出している、電極材料が塗布されていない集電タブは、正極板の集電タブ同士、および負極板の集電タブ同士がそれぞれ一括して超音波溶接されて、中継部である集電部3が形成される。これと同時に集電部3へのリード端子4の接続も超音波溶接によりなされる。
【0028】
外装体は、電池要素2をその厚み方向両側から挟んで包囲する2枚のラミネートフィルム5、6からなる。各ラミネートフィルム5、6は、熱融着性を有する熱融着性樹脂層、金属層、および保護層を積層してなるものであり、PP(ポリプロピレン)からなる熱融着性樹脂層が電池の内側の層となるようにしてラミネートフィルム5、6の熱融着部7を熱融着することで、電池要素2が封止される。
【0029】
ラミネートフィルム5、6としては、電解液が漏洩しないように電池要素2を封止できるものであれば、この種のフィルム外装電池に用いられるフィルムを用いることができ、一般的には、金属薄膜層と熱融着性樹脂層とを積層したラミネートフィルムが用いられる。この種のラミネートフィルムとしては、例えば、厚さ10μm〜100μmの金属箔に厚さ3μm〜200μmの熱融着性樹脂を貼りつけたものが使用できる。金属箔、すなわち、金属層の材質としては、Al、Ti、Ti系合金、Fe、ステンレス、Mg系合金などが使用できる。熱融着性樹脂、すなわち、熱融着性樹脂層としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。また、保護層としては、ナイロン等が好適である。
【0030】
リード端子4は、耐熱性樹脂層11aと金属接着性樹脂層11bとからなるシーラント11によって被覆されている。耐熱性樹脂層11aはラミネートフィルム5、6の金属薄膜層とリード端子4との短絡防止を目的としたものであり、金属接着性樹脂層11bまたはラミネートフィルムの熱融着製樹脂層よりも融点の高い樹脂からなるもの、あるいは電子線照射などで架橋された樹脂からなるものであり、材料としては熱融着製樹脂層に用いられる材料と同様の材料が使用できる。金属接着性樹脂層11bはリード端子104とシーラント11との接着性を向上させることを目的としたものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンの酸変性物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリエステル、アクリル樹脂、1液または2液型接着剤、エポキシ系接着剤、ABS樹脂などが使用できる。シーラント11は、リード端子4の側端部4cからはみ出すように延出させている延出部11cを有する。延出部11cではシーラントどうしが互いに接合している。
【0031】
シーラント11はリード端子4に予め被覆しておき、その後、ラミネートフィルム5、6の熱融着を行う。なお、リード端子4が延出する部分のラミネートフィルム5、6の熱融着は、ラミネートフィルム5、6がリード端子4に対して直接熱融着されるのではなく、シーラント11が設けられた部分に対して熱融着がなされる。延出部11cは、当該熱融着がなされることで延出部11cの押出し面11d上のラミネートフィルム5、6の熱融着性樹脂層を延出部11cより外側に押出すように機能する。
【0032】
次に、図2に、熱融着を行う際の、ヒータと、ラミネートフィルムと、リード端子の配置関係を模式的に示す。なお、図2は、リード端子4の部分を図1に示す矢印B方向からみたものである。また、図3にヒータでヒートプレスした状態の、フィルム外装電池1のリード端子4近傍を模式的に示す一部拡大図を示す。さらに、図4に、リード端子の側端部の一部拡大透視図を示す。
【0033】
ヒータ50a、50bの間にラミネートフィルム5、6が挟みこまれ、さらにこれらラミネートフィルム5、6の間にシーラント11で被覆したリード端子4が配置されており、ヒータ50a、50bが図2に示す矢印C方向に移動して、ラミネートフィルム5、6をヒートプレスすることでラミネートフィルム5、6の熱融着、ラミネートフィルム5、6とシーラント11との熱融着がなされる。
【0034】
ヒータ50a、50bの加圧面側には、電池要素2の周縁部分を熱融着する周辺加熱部52、周辺加熱部52に対して凹形状となるリード加熱部51、およびリード加熱部51と周辺加熱部52とを階段状に繋ぐ中間加熱部53が形成されている。ヒータ50a、50bは互いに各加熱部51、53、52が対向するように配置されている。従来のヒータの構成は、中間加熱部53に相当する部分がなかったかもしくは好適な形状となっていなかったため、リード加熱部51に相当する部分と周辺加熱部52に相当する部分との段差が急に変化する態様であった。これに対して本実施形態では、中間加熱部53として新規な平坦部を設け、リード加熱部51と周辺加熱部52との間の段差を段階的に変化させている。
【0035】
周辺加熱部52は、ラミネートフィルム5、6の、電池要素2の周縁部分をヒートプレスし、周辺部52hを形成する。周辺部52hはラミネートフィルム5、6どうしが接合された領域であり、その断面厚さはt3である。周辺部52hは幅aで熱融着される(図4参照)。
【0036】
リード加熱部51は、シーラント11で被覆したリード端子4と延出部11cの一部をヒートプレスし、リード部51hを形成する。このリード部51hは、リード端子4とシーラント11とラミネートフィルム5、6とが積層された領域を含み、その断面厚さはt1である。より詳細には、図3に示すように、リード加熱部51は、リード端子4の側端部4cから距離L1だけ幅広に形成されている。つまり、リード加熱部51は、リード端子4の幅に対して2L1だけ幅広に形成されていることになる。中間加熱部53のリード側端面53aまでの距離L1を設けることで、ヒートプレス時に中間加熱部53がリード端子4に過剰な圧力をかけることなく、延出部11cに所定の圧力をかけることができる。なお、距離L1は0.5〜1.5mmの範囲内とするのが好ましい。0.5mm以下ではヒータとワークの相互位置のブレによってリード端子4の端部に圧力がかかりリード端子4を破損してしまう場合があり、1.5mm以上では隅部C1を埋めるに必要な樹脂が多くなりすぎ、くびれ発生の懸念が増大し、本発明の目的の実現が困難になる。
【0037】
中間加熱部53は、延出部11cの部分をヒートプレスして中間平坦部53hを形成する。中間平坦部53hは、シーラント11どうしが接合された延出部11cとラミネートフィルム5、6とが積層された領域(図3に示すL3の領域)を含み、その断面厚さはt2である。この中間平坦部53hは図3に示すL2+L3の長さであり、リード部51hと周辺部53hとを繋ぐようにして形成されている。ここで、L3はリード加熱部51と中間加熱部53との境界となるリード側端面53aから延出部11cの端面までの距離である。また、L2は延出部11cの端面から中間加熱部53と周辺加熱部52との境界となる周辺側端面53bまでの距離である。また、中間加熱部53は、ラミネートフィルム5、6の潰し量がリード加熱部51と周辺加熱部52の潰し量に比べて大きくなるようにしている。換言すれば、中間加熱部53は、中間加熱部53におけるラミネートフィルム5、6の厚さA3がリード加熱部51および周辺加熱部52におけるラミネートフィルム5、6の厚さA1、A2に比較して薄くなるように形成されている。
【0038】
リード加熱部51、中間加熱部53および周辺加熱部52のヒートプレスにより形成される熱融着部7は、リード部51h、中間平坦部53hおよび周辺部52hを含み、各部分の厚さの関係はt1>t2>t3の関係となっている。
【0039】
なお、延出部11cの長さは、1.5mm以上とするのが好ましい。本発明者らの検討によると、延出部11cによって、熱融着樹脂層を押し延ばして本発明の効果を確実に得るためには、押し延ばす領域の幅(図3の横方向の長さ)、すわなち、L3は1mm以上必要である。このことと、前述のように、リードの側端部4cから中間加熱部53のリード側端面53aまでの距離L1を製造ばらつきと考え、0.5mm以上確保することが好ましいことを考え併せると、延出部11cの長さは1.5mm以上が好ましい。
【0040】
一方、延出部11cの長さは、熱融着領域の幅よりも短いことが好ましい。延出部11cと中間平坦部53hが重なる領域(L3)は、その両側の領域に向かって内面樹脂層の樹脂が押し延ばされていることになるが、その樹脂の量は各寸法によって下記のように変化する。すわなち、熱融着領域の幅aよりもL3が小さいときには、L3の中央を境に左側の樹脂が左に移動し右側の樹脂が右に移動する(図3における左右方向)ので、L3が長くなるほど、L3の左右に押し延ばされる樹脂が増加するが、その増加はL3=aとなったところで止まる。L3>aのときにはL3が長くなっても左右に押し延ばされる樹脂の量はそれ以上には増加しなくなる。その理由はヒートプレスされる領域がプレス軸方向からみて長方形の場合、その領域外にはみ出す樹脂は短辺側よりも長辺側に多く出るのでL3>aの場合ではプレス面積が増えても増加分の樹脂は左右方向ではなく、前後方向(図3における紙面と垂直な方向)に押し出されることとなるためである。このことからL3>aの場合には樹脂の透過面積を増やしても水分透過を増やすデメリットのみとなるので、延出部11cの長さは熱融着領域の幅よりも短いことが好ましい。
【0041】
図7に示したように、従来のヒータ200a、200bの場合、本実施形態の中間加熱部53がないため、リード加熱部251と周辺加熱部252との間は大きな段差があった。また、従来のシーラント105は本実施形態の延出部11cに相当する部分が実質的になかった。このため、従来のヒータ200a、200bと従来のシーラント105との組み合わせでは、リード加熱部251と周辺加熱部252との境界部分の隅部C3に大きな空間が形成されることとなる。この隅部C3には、リード加熱部251により押し潰された樹脂と、周辺加熱部252により押し潰された樹脂が供給されるものの、隅部C3を埋めるほどの樹脂を十分に供給することができないため、くびれを生じてしまっていた。
【0042】
一方、本実施形態ではヒータ50a、50bに中間加熱部53を設けるとともにシーラント11に延出部11cを設けている。本実施形態では、これらを組合わせることで、リード加熱部51と中間加熱部53との境界部分に隅部C1が形成され、中間加熱部53と周辺加熱部52との境界部分には隅部C2が形成されることとなる。本実施形態では、2つの隅部C1、C2が形成されることとなるが、隅部C1、C2の各空間容積は、従来の隅部C3の空間容積に比べると小さくなる。また、中間加熱部53は延出部11cの部分のラミネートフィルム5、6を厚さA3となるまで押し潰す。隅部C1には、リード加熱部51で押し潰された樹脂と、中間加熱部53で多く押し潰された樹脂とが流れ込む。また、隅部C2には、周辺加熱部52で押し潰された樹脂と、中間加熱部53で多く押し潰された樹脂とが流れ込む。つまり、本実施形態では、隅部C1、C2の空間容積を小さするとともに、これら小さな空間に十分な量の樹脂を供給することができる構成とし、シーラント11の端部近傍にくびれが生じないようにしている。図4に示すように、中間加熱部53によってヒートプレスされた延出部11cの部分の熱融着部7の幅cは、樹脂が押出されるため、周辺加熱部52による熱融着部7の幅aよりも広く形成されている。
【0043】
なお、ヒータ50a、50bの材質としてはゴム製よりも金属ブロックからなるものが好ましい。その理由は、樹脂を押し延ばしたい部位に選択的かつ効果的に圧力を加えたほうが、意図した通りの樹脂の流れが実現でき、隅部C1、C2の埋まり性の制御に都合がよいからである。換言すれば、仕上がりの断面形状が予測しやすいため、隅部C1、C2を埋めるのに必要な樹脂の量の計算がしやすく、かつシミュレーションと実際の整合性もよいため、設計通りの樹脂が押し延ばされて所望の部位を埋めることができる。それに比べて、表面がゴム製のヒータでは圧力分布によって表面形状が変化してしまうので仕上がりの断面形状の予想が困難になり、上記樹脂の流れのシミュレーションが困難になったり精度が悪くなってしまう。
【0044】
以上、本実施形態によれば、従来くびれていた熱融着領域に十分な樹脂を供給して熱融着がなされる幅を広くすることができるので、外部からの水分の浸入を防止することができ、電池を長寿命化することができる。
【0045】
なお、リード加熱部51と中間加熱部53との段差と、中間加熱部53と周辺加熱部52との段差とは同じ高さでなくともよい。また、図3では隅部C1、C2の部分のヒータ50a、50bの形状が直角となっている例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、ヒータ50a、50bの隅部C1の形状を、シーラント11の斜面(隅部C1に対応する部分)に併せて傾斜面をもたせたり、あるいはR形状としてもよい。
【0046】
また、本実施形態では中間加熱部53によって段差が1段増加した構成としたが、隅部の空間容積をさらに小さくするために段差が2段以上増加する構成としてもよい。
【0047】
なお、本実施形態では、中間加熱部53の潰し量を他の領域よりも大きい場合を説明したが、くびれの発生を防止可能であれば必ずしも中間加熱部53の潰し量はそのような潰し量とすることはなく、A1<A3<A2であってもよい(この場合、融着領域の幅の最も大きい場所は延出部とは異なる場所となる)。さらにいえば、リード部51h、中間平坦部53hおよび周辺部52hの厚さの関係が上述したようにt1>t2>t3であり、かつ中間平坦部53hと延出部11cとが重なり合っていれば(図3に示すL3の領域)、シール条件次第でくびれの発生は防止でき、本発明の効果は得られる。
【0048】
また、上述した実施形態においては、中間加熱部53によってヒートプレスすることで中間平坦部53hの熱融着部7は、周辺部52hの幅aよりも広い幅cになると説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、幅aと同等以上の幅となりくびれが生じなければ本発明の効果は得られる。
【0049】
なお、本実施形態ではリード端子上に形成する被覆樹脂として耐熱性樹脂層と金属接着性樹脂層とを有する2層構造のシーラントを2枚用い、金属接着性樹脂層を内側にして互いに接合する場合としたが、その他の構成でもよく、例えば、金属接着性樹脂層のみからなるシーラントでもよく、2枚を接合せずに折り曲げた1枚を巻いてから接合してもよく、樹脂形成予定部に空間が設けられた金型にリード端子を挟み込み、その予定部に樹脂を流し込み、冷却または反応硬化により固体化することでリード端子上に樹脂を被覆する方法でもよい。延出部の厚さは図3ではリード端子と重なる部分より薄い例を示しているが、同じ厚さでもよい。この場合、断面を見たときに被覆樹脂の全体の外形形状は長方形になる。
【0050】
また、上述した実施形態では、図1において延出部11cがシーラント11の両側2箇所形成された例を示したが、本願発明はこれに限定されるものではなく、本願発明はシーラント11の片側にのみ延出部11cが形成されているような場合も対象としている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のフィルム外装電池の一例の分解斜視図である。
【図2】本発明のヒータと、ラミネートフィルムと、本発明のシーラントを備えたリード端子の配置を示す模式図である。
【図3】本発明のヒータでヒートプレスした状態の、リード端子近傍を模式的に示す一部拡大図である。
【図4】本発明の電池におけるリード端子の側端部の一部拡大透視図である。
【図5】ラミネートフィルムを外装体として用いた従来の電池のリード端子部分の一例を示す図である。
【図6】従来のヒータと、ラミネートフィルムと、従来のシーラントを備えたリード端子の配置を示す模式図である。
【図7】従来のヒータでヒートプレスした状態の、リード端子近傍を模式的に示す一部拡大図である。
【図8】従来の電池におけるリード端子の側端部の一部拡大透視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 フィルム外装電池
2 電池要素
3 集電部
4 リード端子
4c 側端部
5 ラミネートフィルム
7 熱融着部
11 シーラント
11a 耐熱性樹脂層
11b 金属接着性樹脂層
11c 延出部
11d 押出し面
50a ヒータ
51 リード加熱部
51h リード部
52 周辺加熱部
52h 周辺部
53 中間加熱部
53a リード側端面
53b 周辺側端面
53h 中間平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気デバイス要素と、前記電気デバイス要素に接続された電極端子を被覆する被覆部材と、熱融着性樹脂層を備えた外装体フィルムとを有し、前記電気デバイス要素の周辺部の前記外装体フィルムどうし、および前記外装体フィルムと前記被覆部材とを熱融着させることで電気デバイス要素が前記外装体フィルムにより封止されたフィルム外装電気デバイスの製造方法において、
平坦面を有する延出部を備えた前記被覆部材が形成された前記電極端子を用意する工程と、
前記電気デバイス要素の周辺部の前記外装体フィルムどうしを熱融着させる周辺加熱部と、前記電極端子に対応し、前記周辺加熱部に対して凹形状となる、前記被覆部材と前記外装体フィルムとを熱融着させる端子加熱部と、前記周辺加熱部と前記端子加熱部とを階段状に繋ぐ、前記被覆部材の前記延出部と前記外装体フィルムとを熱融着させる中間加熱部を有するヒータを用意する工程と、
前記ヒータの前記中間加熱部により、前記外装体フィルムを介して前記平坦面を加圧することで前記平坦面と重なる領域の前記熱融着性樹脂層を押し延ばしながら熱融着する工程と、を含むことを特徴とするフィルム外装電気デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記ヒータは金属製である、請求項1に記載のフィルム外装電気デバイスの製造方法。
【請求項3】
電気デバイス要素と、前記電気デバイス要素に接続された電極端子を被覆する被覆部材と、前記電気デバイス要素の周辺部および前記被覆部材を熱融着して電気デバイス要素を封止する、熱融着性樹脂層を備えた外装体フィルムとを有するフィルム外装電気デバイスにおいて、
前記被覆部材は、平坦面を有する延出部を備えており、
前記電極端子と前記被覆部材と前記外装体フィルムとが接合された領域を含む第1の厚さの第1の接合領域と、
前記外装体フィルムどうしが接合された、前記第1の厚さよりも薄い第2の厚さの第2の接合領域と、
前記延出部と前記外装体フィルムとが接合された領域を含み、前記第1の厚さよりも薄くかつ前記第2の厚さよりも厚く、前記第1の接合領域と前記第2の接合領域とを繋ぐようにして形成された平坦な第3の接合領域とを有しており、
前記第3の接合領域において前記延出部の前記平坦面と重なる領域の熱融着製樹脂が押し延ばされていることを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項4】
前記延出部における熱融着された領域の幅が前記電気デバイス要素の周辺部における熱融着された領域の幅よりも広い、請求項3に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項5】
前記延出部の、前記電極端子から延出している方向への長さは1.5mm以上かつ、前記第2の接合領域の熱融着の幅以下である、請求項3または4に記載のフィルム外装電気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−242548(P2007−242548A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66309(P2006−66309)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(302036862)NECラミリオンエナジー株式会社 (37)
【Fターム(参考)】