説明

フィルム外装電気デバイス

【課題】 電気デバイス要素の封止の信頼性を低下させることなく、異常発熱に伴うガス発生によるフィルム内部の圧力の異常上昇時の安全弁の開放圧力を簡便に設定できるフィルム外装電気デバイスを提供すること。
【解決手段】 互いに分離された複数の電極層である正極および負極から構成された電池要素と電池要素の正極および負極にそれぞれ接続された外部端子である正極リード3および負極リード4と、正極リード3および負極リード4の一部を突出させて電池要素を上下から包囲し封止する外装フィルム5とを有し、外装フィルム5の周縁部の対向面同士が熱融着されることによって電池要素が封止され、上記正極または負極に接続されて外部に引き出されるように形成された熱伝導リードの端部が熱融着される外装フィルム5の一部に挟み込まれた状態で熱融着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やキャパシタに代表される、電気デバイス要素を外装フィルムに封止収容したフィルム外装電気デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器等の電源としての電池は、軽量化、薄型化が強く要求されている。そこで、電池の外装材に関しても、軽量化、薄型化に限界のある従来の金属缶に代わり、さらなる軽量化、薄型化が可能であり、金属缶に比べて自由な形状を採ることが可能な金属薄膜フィルム、または金属薄膜と熱融着性樹脂フィルムとを積層したラミネートフィルムが使用されるようになった。
【0003】
電池の外装材に用いられるラミネートフィルムの代表的な例としては、金属薄膜であるアルミニウム薄膜の片面にヒートシール層である熱融着性樹脂フィルムを積層するとともに、他方の面に保護フィルムを積層したラミネートフィルムが挙げられる。
【0004】
外装材にラミネートフィルムを用いたフィルム外装電池においては、一般に、正極、負極、および電解質等で構成される電池要素を、熱融着性樹脂フィルムが内側になるようにして外装材で包囲し、その外装材の周縁部を熱融着することによって電池要素を気密封止(以下、単に封止と呼ぶ)している。熱融着性樹脂フィルムには、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが用いられ、保護フィルムには、例えばナイロンフィルムやポリエチレンテレフタレートフィルムが用いられる。電池要素の封止に際しては、電池要素の正極および負極を外装材の外部へ引き出すために、正極および負極にはそれぞれ外部端子(リード端子)が接続され、これらリード端子を外装材から突出させている。
【0005】
電池の使用時において、電池に規格範囲外の電圧が印加されたりすると、電解液溶媒の電気分解により発熱及びガス種が発生し、電池の温度上昇及び内圧が上昇することがある。さらに、電池が規格範囲外の高温で使用されたりしても、電解質塩の分解などによりガス種のもとになる物質が生成されたりする。基本的には、規格範囲内で電池を使用してガスを発生させないようにすることが理想であるが、電池の保護回路が何らかの原因で故障して異常な電圧が印加されたり、何らかの原因で周囲が異常に高温となったりすると、場合によっては大量にガスが発生することもある。
【0006】
このような、電池内部でのガスの発生は、電池の内圧上昇をもたらす。内圧が極度に上昇し電池が暴発することを防ぐために、外装材として金属缶を用いた電池の多くは、電池の内圧が上昇した際にガスを電池の外部に逃がす圧力安全弁を有している。しかし、フィルムを外装材とするフィルム外装電池においては、圧力安全弁を設けることが構造上難しい。フィルム外装電池では内圧が上昇しすぎるとフィルムが膨張し、最終的には外装材が破裂しその箇所からガスが噴出するが、破裂がどの箇所で発生するか特定できないため、破裂した箇所によっては周囲の機器等に悪影響を及ぼすことがある。
【0007】
そこで、従来のフィルム外装電池においては、こういった電池内部でのガスの発生による不具合を解消するため、例えば特許文献1には、封止する熱融着部の一部を他の部分よりも低い温度で熱融着して安全弁としたフィルム外装電池が開示されている。また、特許文献2には、熱融着部の一部に非熱融着性樹脂シートを介在させそこを安全弁としたフィルム外装電池が開示されている。いずれの場合も、外装フィルムで封止する熱融着部の一部に融着強度を弱くした部分を作り、この部分に安全弁としての機能を持たせている。
【0008】
一方、特許文献3には、熱融着部の端の一部を外側から切除した構成が開示され、特許文献4には、内部(電池側)と外部を隔てる熱融着部の幅がその一部で狭くなるように熱融着部の一部の内側に三角形状の熱融着されない部分を設けた構成が開示されている。これらは、熱融着部の一部に熱融着部の幅が部分的に狭くなるような部分を設け、そこを安全弁として機能させようとするものである。
【0009】
また、特許文献5では電池のガス発生による内部圧力の上昇によって外装フィルムのふくれの引き剥がしの応力が集中する部分を設けて安全弁とする構造が開示され、特許文献6では内部圧力の検出手段とヒーターを設け、熱融着によって封止された一部分をヒーターによって外から加熱溶融させる構造が開示されている。これらも、電池のガス発生による内部圧力を利用して安全弁を機能させようとするものである。
【0010】
【特許文献1】特開2000−100399号公報
【特許文献2】特許第354155号
【特許文献3】特開2002−56835号公報
【特許文献4】特開平10−55792号公報
【特許文献5】特開2005−203262号公報
【特許文献6】特開2005−251470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の熱融着部の一部の融着強度を弱くしたフィルム外装電池における安全弁構造では、熱融着部の劣化により電解液の漏出等の不具合が発生するおそれがある。また、熱融着強度の調整が難しく、異常発生時の安全弁の開放圧力を正確に設定することができないという難点もあった。
【0012】
また、熱融着部の幅を部分的に狭くした上述の従来の構造では、実用的な開放圧力を実現するためには、安全弁として機能する部分での熱融着部の幅は例えば1mmといった非常に狭い幅としなければならず、そのため、封止の信頼性が低下したり、製造上の熱融着部の幅の誤差が安全弁としての開放圧力に大きく影響し、結果的に開放圧力を正確に設定できないといった難点があった。このような狭い熱融着部の幅が必要となる理由としては、ラミネートフィルムを外装材とする電池では、電極取り出しのためのリード端子の引き出し部での熱融着強度(封止強度)が弱くなりがちであり、このリード端子の引き出し部からのガス放出を防止するために、それより先に比較的低圧で安全弁を開放させなければならないことが挙げられる。
【0013】
さらに、内部圧力の上昇による応力が集中する部分を安全弁とする構造では封止の工程が複雑になるために常に高い信頼性を有するフィルム外装電池デバイスを製造することが困難であり、また、内部圧力の検出手段とヒーターを設ける構造では、内部圧力を検知する機構が必要となり電池回路が煩雑となるなどの問題があった。
【0014】
上述のような問題は、電池に限らず、電気二重層キャパシタなどのキャパシタや電解コンデンサなどのような、電気エネルギーを内部に蓄積し化学反応および物理反応で発熱を伴いガスが発生しうる電気デバイス要素を外装フィルムで封止したフィルム外装電気デバイスに共通の問題である。
【0015】
そこで、本発明の課題は、電気デバイス要素の封止の信頼性を低下させることなく、異常発熱に伴うガス発生によるフィルム内部の圧力の異常上昇時の安全弁の開放圧力を簡便に設定できるフィルム外装電気デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を達成するため、本発明のフィルム外装電気デバイスは、互いに分離された複数の電極層を有する電気デバイス要素と、前記電極層に接続された2つの外部端子と、前記電気デバイス要素を包囲する外装フィルムとを有し、前記外装フィルムの周縁部の対向面同士が熱融着されることによって前記外部端子が前記外装フィルムから突出した状態で前記電気デバイス要素が封止されたフィルム外装電気デバイスにおいて、前記電気デバイス要素の外部に引き出されるように形成された前記電極層の端部または前記電極層と接触し前記電気デバイス要素の外部に引き出されるように形成された金属片の端部が前記熱融着される外装フィルムの一部に挟み込まれた状態で熱融着され、その前記電極層の端部または前記金属片の端部が挟みこまれた部分を前記外装フィルムの内部の圧力が一定圧力(開放圧力)より高くなった場合にその内部と外部とを通気させる安全弁としている。
【0017】
また、前記安全弁を構成する外装フィルムの一部を除去することにより前記開放圧力の調整手段を設けてもよい。
【0018】
また、前記開放圧力の調整手段が前記安全弁を構成する前記外装フィルムの少なくとも一方に形成された孔または切込みであってもよい。
【0019】
また、前記安全弁を構成する前記電極層の端部の先端または前記金属片の端部の先端が前記熱融着される前記外装フィルムの内部に位置するように形成することにより前記開放圧力の調整手段を設けてもよい。
【0020】
また、前記電極層の端部または前記金属片の端部は前記外部端子とは空間的に分離されて形成されていてもよい。
【0021】
また、前記外部端子の少なくとも1つは前記金属片と一体であるか、もしくは前記金属片に接続されていてもよい。
【0022】
また、前記電気デバイス要素は、化学電池であってもよい。
【0023】
上記のとおり構成された本発明のフィルム外装電気デバイスでは、異常加熱を伴うガス発生時において電極層の一部または電極層に接触した金属片が安全弁の部分において外装フィルムで熱融着されているので、電気デバイス要素で発生した熱が電極層または金属片を伝わり安全弁を加熱して安全弁の融着部分の剥離を発生させ、ガス発生による内圧上昇が前記剥離部に応力を加えてさらに剥離が進行するとフィルム外装デバイスの内部と外部が通気する。これにより発生したガスが安全弁から放出され、フィルム外装電気デバイスの不用意な破裂が防止される。開放圧力は安全弁に設けられた上述の開放圧力の調整手段によって容易に調整、設定が可能である。しかも、従来知られている構成に比べ本発明の構成は単純であるため作製が容易であり、また、本発明で使用する安全弁はフィルム外装電気デバイスの異常加熱とガス発生による内部圧力の上昇の2つの現象を利用するので、内圧を開放する安全弁として高い信頼性で動作する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、電気デバイス要素の封止の信頼性を低下させることなく、異常発熱に伴うガス発生によるフィルム内部の圧力の異常上昇時の安全弁の開放圧力を簡便に設定できるフィルム外装電気デバイスが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明によるフィルム外装電気デバイスの一実施の形態であるフィルム外装電池の外観斜視図であり、図2はその基本的な構成を説明するための分解斜視図である。
【0027】
図1および図2において、互いに分離された複数の電極層である正極および負極を帯状に形成し、さらにそれを巻回したものを圧縮することにより扁平状とした略直方体状の電池要素2と電池要素2の正極および負極にそれぞれ接続された外部端子である正極リード3および負極リード4と、正極リード3および負極リード4の一部を突出させて電池要素2を上下から包囲し封止する外装フィルム5,6とを有し、外装フィルム5および6の周縁部(図1の斜線部)の対向面同士が熱融着されることによって正極リード3および負極リード4の一部が外装フィルム5,6から突出した状態で電池要素2が封止される。
【0028】
電池要素2は、それぞれ電極材料が両面に塗布された帯状の金属箔からなる複数の正極と複数の負極とが、セパレータを挟んで重ね合わされ、これ捲回した後、扁平上に圧縮することによって、正極と負極が交互に積層させて構成されている。各正極および各負極の一端からはそれぞれ電極材料が塗布されていない未塗布部分が突出して設けられており、正極の未塗布部、および負極の未塗布部にそれぞれ正極リード3および負極リード4が接続されている。正極および負極は、電極材料の未塗布部分を反対向きに突出させて重ねられ捲回されており、したがって、正極リード3は電極の巻き始めの電池要素中心部から、負極リード4は、電極の巻き終わりの電池要素の外周部からこのフィルム外装電池1の同一方向へそれぞれ引き出されている。
【0029】
リチウムイオン電池などの非水電解質電池の場合、正極を構成する金属箔にはアルミニウム箔が用いられ、負極を構成する金属箔には銅箔が用いられる。そして、正極リード3にはアルミニウム板が用いられ、負極リード4にはニッケル板または銅板が用いられる。負極リード4を銅板で構成する場合、表面にニッケルめっきを施してもよい。また、電極材料としてはマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムなどが用いられる。
【0030】
セパレータは、ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂から作られた、マイクロポーラスフィルム(微多孔フィルム)、不織布あるいは織布など、電解液を含浸することができるシート状の部材を用いることができる。
【0031】
外装フィルム5,6はラミネートフィルムからなり、外装フィルム5には、電池要素2を包囲する空間である電池要素収納部を形成するため、中央領域にカップ部5bを有する。このカップ部5bの加工は、深絞り成形によって行うことができる。本実施の形態の場合、外装フィルム6にはカップ部は形成されていない構成を例に示しているが、両方の外装フィルム5,6にカップ部が形成されているものであってもよいし、また、カップ部を形成せずに外装フィルム5、6の柔軟性を利用して電池要素2を包囲してもよい。
【0032】
外装フィルム5,6を構成するラミネートフィルムとしては、柔軟性を有しており、かつ電解液が漏洩しないように電池要素2を封止できるものであれば、この種のフィルム外装電池に一般に用いられるフィルムを用いることができる。一般的には金属薄膜層と熱融着性樹脂層とを積層した構成、あるいは、金属薄膜層の熱融着性樹脂層と反対側の面にさらにポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルやナイロン等のフィルムからなる保護層を積層した構成が挙げられる。電池要素2を封止するに際しては、熱融着層を対向させて電池要素2を包囲する。
【0033】
上記の金属薄膜層としては、例えば、厚さ10μm〜100μmの、Al、Ti、Ti合金、Fe、ステンレス、Mg合金などの箔を用いることができる。熱融着性樹脂層に用いられる樹脂としては、熱融着が可能な樹脂であれば特に制限はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの酸変成物、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル等、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが使用できる。熱融着性樹脂層の厚さは10μm〜200μmが好ましく、より好ましくは30μm〜100μmである。
【0034】
本実施の形態においては、電池要素2が発熱を伴いガス発生した際に、電池要素2の熱を伝導することで外装フィルム5,6の熱融着部分の一部を融解するため電池要素2の外部に引き出されるように形成された熱伝導リード7が設けられている。
【0035】
熱伝導リード7は電池要素2の正極または負極の電極材料が塗布されていない未塗布部に接続されて設けられる。熱伝導リード7の材質としては、熱伝導性が良好で耐熱性を有するものが好ましく、例えば正極リード3、負極リード4、または電極材料が塗布される金属箔と同じ材質にしても良い。また、正極または負極の端部が電池要素2の外部に引き出されるように形成されて熱伝導リード7を構成してもよい。
【0036】
熱伝導リード7の先端部は外装フィルム5,6のそれぞれの熱融着される一部の領域5aおよび6aで挟み込まれて熱融着され、安全弁10を構成している。
【0037】
また、本実施の形態においては、安全弁10が通気する内部圧力、すなわち開放圧力の調整手段8を設けており、図1および図2においては、一例として具体的に外装フィルム5の領域5aの一部に孔を設けた場合を示している。
【0038】
熱伝導リード7は、電池要素2の異常発熱の際の熱を伝導し、これにより安全弁10の外装フィルムの熱伝導リード7を挟み込んだ領域5aおよび6aを溶融させる。そして、領域5aおよび6aの溶融、かつ内部圧力の上昇により領域5aまたは6aの外装フィルムが剥離することで安全弁10の内部と外部が通気することとなり封止が解除される。すなわち、安全弁10は、フィルム外装電池1の保護回路が何らかの原因で故障して異常な電圧が電池要素2に印加されたり、何らかの原因で周囲が異常に高温となったりすることでフィルム外装電池1の内部に大量にガスが発生して内圧が上昇した場合、電池要素2の異常発熱を利用することで、安全弁10の封止を解除してガスを外部に排出させるものである。
【0039】
図1および図2の例では、安全弁10を正極リード3および負極リード4が突出した方向と反対側の外装フィルム5,6の周縁部に設けた場合の例を示したが、これに限定されるものではなく、電池要素2の機能に支障をきたさずに安全弁が動作できるのであれば、どの方向にも設けられてもよいし、さらには正極リード3および負極リード4が突出している周縁部に設けるものであってもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、場合によっては熱伝導リード7の挟み込みによって領域5aおよび6aにおける封止特性が低下しないように工夫する必要がある。例えば、熱伝導リード7の表面に熱融着性の樹脂を塗布しておくことや、熱伝導リード7と外装フィルム5、6との間に隙間が形成されにくいように熱伝導リード7の断面形状を形成するなどの方法により熱伝導リード7が挟みこまれた部分における封止特性を確保する必要がある。
【0041】
次に、本発明および本実施の形態に用いることができる安全弁の開放圧力の調整手段の具体例の平面図を図3に示す。
【0042】
図3(a)に示す開放圧力の調整手段は、外装フィルム5および6の少なくとも一方に形成された円孔である。すなわち安全弁10の封止を解除するために必要な外装フィルム5,6の熱融着部の加熱により溶融すべき領域あるいは熱融着領域を減少させて開放圧力を調整するものであり、その円孔の位置、大きさによって調整できる。また、上記と同様な作用効果を生じさせるためには、図3(b)に示すような外装フィルム5または6の切れ込みであってもよい。また、熱伝導リード7を挟みこむ領域、すなわち熱伝導リード7により加熱される熱融着領域の大きさを変えて開放圧力を調整することも可能であり、図3(c)に示すように、外装フィルム5および6の端と熱伝導リードの端を一致させてもよく、また図3(d)のように熱伝導リード7の端を外装フィルム5および6の端より内側にしてもよい。このような形状とした場合、電池要素2の異常加熱および異常ガス発生による内圧上昇により領域5a、6aの部分の加熱および外装フィルム5および6の膨れにより先ず熱伝導リード7の端部に引き剥がし応力がかかり、その端部の剥離が外装フィルム5および6の端まで進行することにより安全弁10の封止が解除される。この場合、熱伝導リード7の端と外装フィルム5および6の端との間の距離により開放圧力が設定される。
【0043】
図3(e)は正極リード3または負極リード4の熱融着部に安全弁を設けた場合の開放圧力の調整手段の一例を示す図である。正極リード3または負極リード4が外装フィルム5および6に挟み込まれた状態で熱融着され、その熱融着される領域の外装フィルム5および6の少なくとも一方に円孔を形成したものである。このような形状とした場合、正極リード3または負極リード4が伝熱リードの機能を果たし、正極リード3または負極リード4を挟み込んだ領域5aと6aが加熱により溶融され内部圧力により安全弁が開放される。このように、正極または負極リードの熱融着部に安全弁を設ける場合の開放圧力の調整手段としては外装フィルムを円孔形状に除去する以外にも様々な熱融着領域の大きさを変える手段を用いることができる。
【0044】
以上のように、所定の位置に安全弁を設けることにより、フィルム外装電池1が破裂する前に特定の位置からガスを噴出させることができ、フィルム外装電池1の破裂や意図しない方向へのガスの噴出を防止することができる。
【0045】
また、従来のように外装フィルムの熱融着強度を部分的に弱くする必要はなく、封止信頼性が低下することはない。また、従来のように熱融着強度を部分的に弱くした圧力開放構造や内部圧力の上昇による応力が集中する部分を安全弁とする構造、内部圧力の検出手段とヒーターを設ける構造に比べて、複雑な封止工程や煩雑な回路を必要としないので、高い信頼性を有するフィルム外装電気デバイスを容易に製造することが可能である。また、異常発熱に伴うガス発生によるフィルム内部の圧力の異常上昇時の安全弁の開放圧力を簡便に設定できる。
【0046】
本発明の実施の形態について代表的な幾つかの例を挙げて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更され得ることは明らかである。
【0047】
例えば、上述した例では2枚の外装フィルムで電池要素をその上下方向から挟んで周囲の4辺を熱融着したものを示したが、その他にも、1枚の外装フィルムを2つ折りにして電池要素を挟み、開放している3辺を熱融着することによって電池要素を封止してもよい。
【0048】
さらに、図1には、正極リード3と負極リード4をフィルム外装電池1の同じ辺から突出させた例を示したが、これらは対向する辺から突出させてもよい。
【0049】
電池要素の構造について、上述した例では正極、負極およびセパレータを帯状に形成し、セパレータを挟んで正極および負極を重ね合わせ、これを捲回した後、扁平状に圧縮することによって、正極と負極を交互に配置させた捲回型構造を示したが、複数の正極板および負極板を交互に積層した積層型構造の電池要素であってもよい。
【0050】
また、電池要素としては、正極、負極および電解質を含むものであれば、通常の電池に用いられる任意の電池要素が適用可能である。一般的なリチウムイオン二次電池における電池要素は、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、リン酸鉄リチウム等の正極活物質をアルミニウム箔など金属箔の両面に塗布した正極と、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料、合金材料、酸化物材料等を銅箔などの金属箔の両面に塗布した負極とを、セパレータを介して対向させ、それにリチウム塩を含む電解液を含浸させて形成される。電池要素としては、この他に、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池、あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の電池要素が挙げられる。
【0051】
さらに、本発明は、電気二重層キャパシタなどのキャパシタや電解コンデンサなどに例示されるキャパシタ要素のような、電気エネルギーを内部に蓄積し化学反応および物理反応で発熱を伴いガスが発生しうる電気デバイス要素を外装フィルムで封止した電気デバイスにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明によるフィルム外装電気デバイスの一実施の形態であるフィルム外装電池の外観斜視図。
【図2】本発明によるフィルム外装電気デバイスの一実施の形態であるフィルム外装電池の基本的な構成を説明するための分解斜視図。
【図3】本発明および本実施の形態に用いることができる安全弁の開放圧力の調整手段の具体例の平面図。図3(a)は、開放圧力の調整手段を示す図、図3(b)は、外装フィルムの切れ込みを示す図、図3(c)は、外装フィルムの端と熱伝導リードの端を一致させた状態を示す図、図3(d)は、熱伝導リードの端を外装フィルムの端より内側にした状態を示す図、図3(e)は、正極リードまたは負極リードの熱融着部に安全弁を設けた場合の開放圧力の調整手段の一例を示す図。
【符号の説明】
【0053】
1 フィルム外装電池
2 電池要素
3 正極リード
4 負極リード
5,6 外装フィルム
5a,6a 領域
5b カップ部
7 熱伝導リード
8 開放圧力の調整手段
10 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに分離された複数の電極層を有する電気デバイス要素と、前記電極層に接続された2つの外部端子と、前記電気デバイス要素を包囲する外装フィルムとを有し、前記外装フィルムの周縁部の対向面同士が熱融着されることによって前記外部端子が前記外装フィルムから突出した状態で前記電気デバイス要素が封止されたフィルム外装電気デバイスにおいて、前記電気デバイス要素の外部に引き出されるように形成された前記電極層の端部または前記電極層と接触し前記電気デバイス要素の外部に引き出されるように形成された金属片の端部が前記熱融着される外装フィルムの一部に挟み込まれた状態で熱融着され、その前記電極層の端部または前記金属片の端部が挟みこまれた部分を前記外装フィルムの内部の圧力が一定圧力(開放圧力)より高くなった場合にその内部と外部とを通気させる安全弁としたことを特徴とするフィルム外装電気デバイス。
【請求項2】
前記安全弁を構成する外装フィルムの一部を除去することにより前記開放圧力の調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項3】
前記開放圧力の調整手段が前記安全弁を構成する前記外装フィルムの少なくとも一方に形成された孔または切込みであることを特徴とする請求項2記載の請求項1記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項4】
前記安全弁を構成する前記電極層の端部の先端または前記金属片の端部の先端が前記熱融着される前記外装フィルムの内部に位置するように形成することにより前記開放圧力の調整手段を設けたことを特徴とする請求項1記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項5】
前記電極層の端部または前記金属片の端部は前記外部端子とは空間的に分離されて形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項6】
前記外部端子の少なくとも1つは前記金属片と一体であるか、もしくは前記金属片に接続されていることを特徴とする請求項1,2または3記載のフィルム外装電気デバイス。
【請求項7】
前記電気デバイス要素は、化学電池であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに1項に記載のフィルム外装電気デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−311163(P2007−311163A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138652(P2006−138652)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】